JP2015017934A - 放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計 - Google Patents

放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計 Download PDF

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Yoji Fujiura
洋二 藤浦
栗山 智
Satoshi Kuriyama
栗山  智
章博 廣木
Akihiro Hiroki
章博 廣木
田口 光正
Mitsumasa Taguchi
光正 田口
功一 三村
Koichi Mimura
功一 三村
徹 沖原
Toru Okihara
徹 沖原
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Abstract

【課題】 加熱しても容易に融解しないゲルであって、ゲル中に存在する重合性モノマーが放射線により重合、白濁して、線量計として用いられることができる放射線線量計用ゲルおよび放射線線量計を提供する。
【解決手段】 エチレン性不飽和モノマー(a)を含有する水の中で、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)と多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲルであり、上記(A)が上記(B)と反応して架橋したゲルとなっており、ゲルが融解せず、照射されて白濁した部分の位置が正確に把握できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、人や動物に対して放射線治療を行う前に、人や動物の体の放射線照射位置の空間線量分布を正確に測定するための放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計に関する。
放射線治療において、標的となるガン病巣には有効な線量を、そして病巣周囲の正常組織には放射線障害を起こさない最小限の線量の照射が要求されることから、様々な放射線治療法が開発されてきた。特にガンマナイフやサイバーナイフを用いた定位放射線治療や強度変調放射線治療が普及してきている。
放射線治療を行う際、予めX線CTやMRIなどによりガン病巣の部位や形状等を特定し、その得られた3次元情報に基づいて、線量や照射方法など放射線治療計画が策定される。この3次元の線量分布を測定するための線量計として注目されているのがゲル線量計であり、近年、高精度な線量評価システムの構築を目指したゲル線量計の研究開発が盛んに行われている(たとえば、特許文献1、2)。
このポリマーゲル線量計は、重合性モノマーをゲル内に分散させたものであり、放射線照射すると線量に比例してポリマーが生成することから、その生成量(白濁度)を求めることで線量を見積もることができる。生成したポリマーはゲル内を拡散しにくく、白濁が経時的に安定しており、且つ白濁部分が透明なゲルの中に浮かんでいるように見えるため視覚的にも優れているのが特徴である。このポリマーゲル線量計においては全体をゲル化させるためのゲル母材として、ジェランガム、ゼラチンなどが使用されている。
特開2012−2669号公報 特開2002−214354号公報
しかしながら、ジェランガム、ゼラチンなどのゲルは加熱すると容易に融解するので、放射線照射後、ゲルが融解し、白濁部分が動きその位置が正確に把握できなくなる場合があり、十分安心して使用できないという問題がある。また、照射前であっても保存温度が高いと融解して液状となり取扱いにくいという問題もある。
本発明の目的は、加熱しても容易に融解しないゲルであって、ゲル中に存在する重合性モノマーが放射線により重合、白濁して、線量計として用いられることができる放射線線量計用ゲルおよび放射線線量計を提供することである。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)および多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)を反応させて得られたゲルは上記の課題を解決するゲル線量計となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、エチレン性不飽和モノマー(a)(以下単にモノマーという場合がある)を含有する水の中で、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)と多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲルである。
また本発明は、親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸、またはそれらのエステルであることを特徴とする。
また本発明は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むことを特徴とする。
また本発明は、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むことを特徴とする。
さらに本発明は、上記放射線線量計用ゲル、および該ゲルを充填可能な透明容器からなる放射線線量計である。
さらに本発明は、上記放射線線量計用ゲルまたは上記放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法である。
さらに本発明は、上記の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計である。
本発明によれば、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)と多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)が反応して架橋したゲルとなっており、該ゲルを加熱しても容易に架橋が崩れることがないので、ゲルが融解せず、照射されて白濁した部分の位置が正確に把握できる。また、ゲルの保管中の温度が室温より上昇してもゲルが融解せず取り扱いやすい。また、(A)と(B)とは室温でも架橋反応してゲルが形成されるので、加熱する必要がなく水溶液中のモノマーは系中に安定に存在することができ、放射線照射時に重合する。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそのエステルであるので、モノマーの人体への安全性が比較的高く実用化しやすい。モノマーとしてしばしば検討されている非(メタ)アクリル酸系のアクリルアミドは特定化学物質に指定され、使用環境中の濃度管理が厳しく、病院などでは非常に使用しづらいという問題がある。これに対して、上記の酸またはそのエステルは人体への安全性が比較的高く法的な拘束が少なく病院などで取り扱いやすく実用化しやすいので好ましい。
また、上記の酸またはそのエステルはゲル中に溶解して低線量で重合するが、放射線が当たらなければ安定である。
本発明によれば、放射線線量計用ゲルが親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子を含むので、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が放射線照射により重合するとゲル中での重合体の溶解性がさらに低下しさらに白濁し易い状態となる。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むので、モノマーは水溶性が大きくゲル中に完全に溶解すると共に、低線量でも重合しやすく、且つ放射線が当たらなければ安定である。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むので、放射線によりエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸またはそのエステルと共重合して共重合体となりゲル中に析出し易くゲルを白濁させやすい。(メタ)アクリル酸アルキルは疎水性モノマーであるが微量にゲル系内に溶解している。このモノマーが共重合して分子量が大きくなると(メタ)アクリル酸アルキルの疎水性のために共重合体の水溶性が大きく低下しゲル中に析出しやすくなりその結果白濁しやすくなる。一方1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーも上記のモノマーと共重合すると架橋重合体となり水溶性が低下し、白濁しやすくなる。
エチレン性不飽和モノマー(a)が、さらに(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの両方を含むと、これらが入った共重合体は極端に水溶性が低下し、さらに白濁しやすいという相乗効果を奏する。
さらに本発明によれば、上記放射線線量計用ゲル、および該ゲルを充填可能な透明容器からなる放射線線量計は、ゲル内の温度が室温より上昇しても架橋が崩れることがなく、ゲルが融解せず、照射した白濁した部分の位置が正確に把握できる。また、保管中の温度が室温より上昇してもゲルが融解せず取り扱いやすい。
さらに本発明によれば、上記放射線線量計用ゲルまたは上記放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法は、ゲルが融解しないので照射した白濁した部分の位置が正確に把握できる。
さらに本発明によれば、上記の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計は、ゲルが融解しないので照射した白濁した部分の位置が正確に把握でき、安心して保管できる。
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本発明において、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)と多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)はいずれ水溶性であり、混合すると水中で架橋反応して、水溶液全体をゲル化することができる。
カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)としては分子中にカルボニル基を2個以上含有する樹脂であれば限定はない。上記カルボニル基を2個以上含有する樹脂としては、カルボニル基含有ビニルモノマーとその他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。本発明におけるカルボニル基はカルボニル基の炭素に隣接する両側が炭素であり、アルデヒド基、エステル基、ウレタン基などに含まれるカルボニル結合は含まない。
カルボニル基含有ビニルモノマーとしては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、炭素原子を4〜7個有するビニルアルキルケトン(たとえばビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、β−アクリロイルオキシエチルアセチルアセテート、δ−アクリロイルオキシブチルアセチルアセテート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール[オキシアルキル基の炭素原子数は1〜6]、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート;水酸基とカルボニル基を有する炭素原子数10以下の化合物(例えば、4−ヒドロキシ−2−ブタノンなど)と重合性不飽和カルボン酸(たとえば、アクリル酸、メタクリル酸など)とのエステル化物;水酸基とカルボニル基とを有する炭素原子数10以下の化合物の水酸基部分とアクリルアミドまたはメタクリルアミドのアミノ基部分との縮合反応物;水酸基とカルボニル基を有する炭素原子数10以下の化合物とイソシアネート基を有する重合性不飽和モノマー(たとえば、イソシアナトエチルメタクリレートなど)との付加物;水酸基とカルボニル基を有する炭素原子数10以下の化合物とジイソシアネート化合物(たとえば、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど)とのモノ付加物[イソシアネート基を1個有する]を水酸基含有重合性不飽和モノマー(たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなど)に付加してなるモノマーなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、好ましいものはアセチル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマーである。具体的には、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、イソシアネート基を有する重合性不飽和モノマー(たとえば、イソシアナトエチルメタクリレートなど)と4−ヒドロキシ−2−ブタノンとの付加物、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレートを挙げることができる。
上記カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)としては、上記共重合体以外に、カルボニル基を2個以上含有する種々の樹脂、例えば、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂やポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、澱粉などの水溶性高分子などを挙げることができる。これらの樹脂は、たとえば、水酸基とカルボニル基を有する炭素原子数10以下の化合物(たとえば、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシー3−メチル−2−ブタノンなど)とジイソシアネート化合物(上記のものと同じ)とのモノ付加物を、水酸基を含有する種々の樹脂(たとえば、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂など)に付加して得ることができる。
水溶性高分子をアセトアセチル化した樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(以下、PVA)、ヒドロキシアルキルセルロース(以下、HAS)、澱粉などの水溶性高分子をアセトアセチル化したアセトアセチル化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース、アセトアセチル化澱粉などが挙げられる。水溶性高分子をアセトアセチル化した樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法で製造されるが、好ましくはPVA、HAS、澱粉などにジケテンを反応させて得られる。たとえばPVAの場合であると、PVAを酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、PVAをジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法およびPVAにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法などが挙げられる。PVAとしては特に限定されないが、重合度300〜2600、ケン化度85〜99モル%の範囲が好ましい。HAS、澱粉の場合も同様な方法が適用できる。
カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)の形状は固状、液状であっても水溶性であればよい。カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)のカルボニル基含有量は、0.1〜20モル%が好ましく、より好ましくは0.5〜15モル%である。0.1〜20モル%であると(B)との反応が十分にいき水溶液をゲル化させることができる。
多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)としては、化学式−CO−NH−NHで示されるヒドラジド基を分子内に2個または3個有する化合物である二価または三価のカルボン酸のヒドラジド化合物が好ましい。具体例としては、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの二価カルボン酸ジヒドラジド;クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,2,4−トリメリット酸トリヒドラジドなどの三価カルボン酸トリヒドラジドが挙げられる。好ましいのは二価カルボン酸ジヒドラジドであり、特に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジドである。三価カルボン酸トリヒドラジドだけではゲルが硬くなりすぎるので、二価カルボン酸ジヒドラジドを併用するのがよい。
上記(A)と(B)との反応は酸性触媒を用いると反応が促進できる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどの無機酸、酢酸、ギ酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アスコルビン酸、スルホン酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸が挙げられる。
カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)の量は水溶液全体の重量に対して2〜10重量%が好ましい。2重量%以上であると水溶液をゲル化させることができ、10重量%以下であると得られたゲルが硬すぎてひび割れを起こすことがなく、水の量が多く放射線線量計用ゲルとして好ましい。
多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)の量はゲル化対象の全体の重量に対して0.02〜2.0重量%が好ましい。0.02重量%以上であると水溶液をゲル化させることができ、2.0重量%以下であるとゲルが硬すぎてひび割れを起こすことがない。好ましくは0.05〜1.0重量%である。
(A)と(B)との比率は特に限定はなく、比率を変えてゲル化の程度を制御できる。
水の量は全体の重量に対して80〜94重量%が好ましい。80重量%以上であると透明なゲルが得られやすく、放射線線量計用ゲルとして好ましい。94重量%以下であると全体がゲル化しやすく、且つ放射線照射によりモノマーが重合して白濁しやすい。好ましくは85〜94重量%である。
酸触媒の量は水溶液のゲル化を促進できれば限定はなく、触媒の種類によって異なるが、水溶液全体の重量に対して0.05〜1.0重量%が好ましい。好ましくは0.1〜0.5重量%である。また、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸であると、これが触媒として作用するので、新たな酸性触媒を添加しなくてもよい。
(A)と(B)との反応機構については、カルボニル基のC=O基とヒドラジン基の−NHNHのNHが反応して水が脱離しC=N−NH−の結合が生じる。その結果架橋が生じて硬化する。反応は酸性触媒の存在下で促進でき、室温または加温、たとえば10〜50℃によって硬化し水溶液をゲル化する。反応時間は温度によって変わり、40℃であれば数十分で、室温であれば数時間で媒体がゲル化する。
本発明においては、親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子を配合すれば、上記エチレン性不飽和モノマー(a)が放射線照射により重合するとゲル中での重合体の溶解性がさらに低下し白濁し易い状態となる。このような親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子としては、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、アルファ化デンプンおよびこれらの二種以上の混合物が挙げられる。これらの内好ましいのは、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンであり、特に好ましいのはゼラチンである。
ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを用いてもよく、またゼラチン加水分解物も用いることができ、少なくとも1個の遊離のアミノ基を持っていればよい。たとえば、牛骨の無機物をとり除いてオセインとした後、消石灰の懸濁液中に漬けておき、牛皮は適当な大きさに切断し、水洗してから石灰液中に通常2〜3ケ月間漬ける。このような石灰液による前処理を行って得られるゼラチンをアルカリ処理ゼラチンという。これに対して豚皮を希塩酸又は希硫酸に数十時間漬けて処理して得られるゼラチンを酸処理ゼラチンという。ゼラチンの形状としては、粒状、粉末、シート状のものが使用でき、分子量としては3,000〜30,000が好ましく、特にゲルの透明性かつ保形性を得るためには、分子量5,000〜20,000が好ましい。
該親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子の量は、その種類によって異なるが、水溶液全体の重量に対して0.5〜5.0重量%が好ましい。0.5重量%以上であると白濁が生じやすいという効果を確認しやすく、5.0重量%以下であると熱安定性のよいゲル化の状態を維持することができる。ここで熱安定性のよいゲル化とは40℃でゲルを加熱してもゲルが融解しないことをいう。
本発明において、ゲル中に存在し放射線線量計用ゲルを得るためのエチレン性不飽和モノマー(a)としては、放射線の作用により重合可能な不飽和基を有するものであれば特に限定されない。以下、特にことわらない限りは単にエチレン性不飽和モノマーというときは1分子中にエチレン性不飽和基を一つ有するエチレン性不飽和モノマーをいうものとする。以下にその具体例を挙げる。
(1)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸;
(i)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸としては、不飽和モノ又はポリ(2価〜6価)カルボン酸[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、シトラコン酸など];
(ii)エチレン性不飽和基を有するスルホン酸としては、脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸(ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸など)、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリルアルキルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸[2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]など;
(iii)エチレン性不飽和基を有するリン酸としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルリン酸モノエステル[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイルロキシエチルホスフェートなど]など;
(2)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸のエステル;
上記のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の炭素数1〜30のアルキルまたはヒドロキシアルキルのエステルが挙げられる。具体的には以下にカルボン酸のエステルを示すが、スルホン酸、リン酸の場合も同様であり、これらに限定されない。
(i)(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキル:ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜10、好ましく炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなど)など;
(ii)(メタ)アクリル酸アルキル:アルキル基の炭素数が1〜22、好ましくは1〜10、より好ましく炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキル(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなど)など;
(iii)その他のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸のエステル;
第3級アミノ基含有モノマー[たとえば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなど]、第4級アンモニウム塩基含有モノマー[たとえば上記3級アミノ基含有モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)など]、エポキシ基含有モノマー[例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなど]、メタクリル酸2−メトキシメチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノメタクリレート、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイル−L−アラニンメチルエステル、アクリロイル−L−プロリンメチルエステルなど;
(3)1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマー:
N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルなど:
(4)その他のエチレン性不飽和モノマー;
アミド基含有モノマー[たとえば(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなど]、第3級アミノ基含有モノマー[たとえばジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]、第4級アンモニウム塩基含有モノマー[たとえば上記3級アミノ基含有モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)など]、その他モノマー[4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、スチレン、メチルビニルエーテルなど]など:
これらは2種以上併用してもよい。これらの内で好ましいエチレン性不飽和モノマー(a)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸、またはそれらのエステルであり、より好ましいものはエチレン性不飽和基を有するカルボン酸または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであり、特に好ましいものは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
モノマーとして単一のエチレン性不飽和モノマー(a)を用いても、(A)と(B)の比率や濃度を変えたり、親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子を添加したりすることにより紫外線照射によりゲルを白濁させることは可能であるが、エチレン性不飽和モノマー(a)の組み合わせにより容易に白濁が生ずる場合がある。
ゲルの白濁にとりエチレン性不飽和モノマー(a)の有利な組み合わせとしては、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそれらのエステルに、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むものであり、特に好ましいものはエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそれらのエステルに、(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーを含む組み合わせである。
エチレン性不飽和モノマー(a)がエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそのエステルは、モノマーの人体への安全性が比較的高く実用化しやすいので好ましい。非(メタ)アクリル酸系のアクリルアミドは特定化学物質に指定され、使用環境中の濃度管理が厳しく、病院などでは非常に使用しづらいが、酸性基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーまたはその酸のエステルは人体への安全性が比較的高く法的な拘束が少なく病院などで取り扱いやすく実用化しやすい。
エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有する酸またはそのエステルに加えて、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むと、放射線によりエチレン性不飽和基を有する酸またはそのエステルと共重合して疎水性の大きい重合体となりゲル中に析出して白濁しやすくなる。
(メタ)アクリル酸アルキルは疎水性モノマーであるが微量にゲル系内に溶解する。このモノマーが他のモノマーと共重合して分子量が大きくなるとアルキル基の疎水性のために共重合体の水溶性が低下しゲル中に析出し白濁しやすくなる。たとえば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチルの水への溶解度(20℃)はそれぞれ6重量%、1.59重量%、0.4重量%、0.028重量%、0.14重量%である。ゲル内にこの範囲内で溶解させておけば十分このような効果を奏する。また水への溶解度を上げるために水溶性の溶剤を併用して溶解性、白濁度を制御することもできる。使用できる溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトンなどが好ましい。水への溶解度などを考慮すると(メタ)アクリル酸アルキルはアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、溶解度、白濁の点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーが反応すると重合体の架橋が生じる。放射線照射により重合した架橋共重合体がゲル中を拡散・移動しないようになり、架橋重合体の水溶性の低下に繋がり白濁しやすくなる。このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが好ましい。エチレングリコールのユニット数は、1,2,3,4,9,14,23のものがあり、中でも、好ましいのは、溶解性の観点からユニット数が9以上の水溶性のものである。これらのモノマーの中には、水に溶解し難いものもあるが、ゲル中に均一に分散していて、放射線照射前のゲル全体が透明であればよい。
上記の溶解性が小さいモノマーを加えたために水溶液が若干濁っているとしても、放射線重合により重合しそのモノマーの濃度が低下し、照射線が照射されない他の箇所からモノマーが移動し、放射線が照射されない箇所のモノマー濃度が低下し、そのため放射線が照射されない箇所の透明性が増すという場合もある。
エチレン性不飽和モノマー(a)がエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそれらのエステルに、さらに(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーを含むものであると、放射線により重合した共重合体は疎水性が大きくなった重合体の架橋物であり極端に水溶性が低下し、最も白濁しやすくなる。(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの相乗効果である。
エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそれらのエステルに対する(メタ)アクリル酸アルキル、1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの配合量は特に限定はないが、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸またはそれらのエステル100重量部に対してそれぞれ好ましくは50〜90重量部、30〜70重量部である、より好ましくは60〜80重量部、40〜60重量部である。それぞれの量が50〜90重量部、30〜70重量部であると白濁しやすさの相乗効果が大きい。
本発明における放射線線量計用ゲルは、基本的にはエチレン性不飽和モノマー(a)を含む水を上記のゲル化剤(A)と(B)でゲル化したものである。
本発明におけるゲルは、ゲル化剤の他にエチレン性不飽和モノマー(a)を必須として存在させるが、放射線重合反応を促進して放射線感受性を高めるために、アスコルビン酸やテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド(THPC)などの脱酸素剤を添加することが好ましい。さらにその他の添加剤、たとえば溶剤(アルコール、アセトンなど)、着色剤、ハイドロキノンなどのフリーラジカル捕捉剤、グアイアズレンなどの紫外線吸収剤、界面活性剤、防腐剤などを混合することが出来、本発明の目的を阻害しない程度に配合してもよい。
特に溶剤としてアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類は、(A)と(B)との反応を抑制しゲル化を遅らせる効果があり、(A)と(B)との反応が速すぎる場合にはケトン類を添加するのが好ましい。
水中におけるゲル化剤[(A)+(B)]の濃度は特に限定はないが、ゲル化剤の濃度が小さい程ゲル化物中の水の量が多くなるので放射線線量計用ゲルとしては好ましいが、ゲル強度は弱くなるので、それとの関係で決めるのがよい。ゲル化剤の使用量がゲル全体に対して1〜10重量%が好ましく、2〜7重量%が特に好ましい。1重量%以上であると水全体をゲル化させることができ、10重量%以下であればエチレン性不飽和モノマー(a)の重合を阻害しにくく経済的でもある。2〜7重量%であるとエチレン性不飽和モノマー(a)の重合性、透明性、熱安定性、ゲル強度などのバランスに優れた放射線線量計用ゲルとなる。
エチレン性不飽和モノマー(a)の量は、水溶液全体に対して好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。1重量%以上であると白濁が良好であり、10重量%以下であると経済的である。脱酸素剤を添加する場合は、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは 0.1〜0.5重量%である。その他の添加材を添加する場合は、好ましくは0.01 〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。
ゲル化の方法は特に限定はないが、(i)(A)の水溶液に(B)を混合する方法、(ii)(B)の水溶液に(A)を混合する方法、(iii)(A)、(B)それぞれの水溶液を予め調整した後両者を混合する方法があるが、好ましい方法は(iii)である。その混合水溶液にエチレン性不飽和モノマー(a)やその他の添加剤を混合して室温で放置すればゲル化する。混合する場合の順序は特に限定はない。
(A)と(B)とを反応する際の温度は特に限定はないが、ゲルはモノマーを含むので加熱は好ましくなく、室温以下で行うのが好ましい。また水溶液はエチレン性不飽和モノマー(a)を含むのでゲル化後放射線照射時のエチレン性不飽和モノマー(a)の重合を阻害させないため、系内の酸素を取り除いておく必要がある。このためにはヘリウムや窒素などのガスを水溶液の状態においてバブルするのが好ましい。またゲルが生成した後エチレン性不飽和モノマー(a)を安定に存在させるためにはゲルの保管は0〜5℃が好ましい。
放射線線量計用ゲルはゲル化させた後成型してもよいが、金型中で形成してもよい。しかし、ゲルは一旦生成すれば他の容器に移すのは煩雑、困難であるので、通常実際に用いられる容器の中でゲルの作成が行うのが好ましい。ゲル化は室温でも生じるので大型の放射線線量計用ゲルの形成に有利である。
ゲル化している状態は目視で十分に確認できる。また、反応はゲル強度によっても確認出来るので必要がある場合にはゲル強度を測定する。(A)と(B)との反応物の最終のゲル強度は、好ましくは3〜1,000gであり、より好ましくは5〜600であり、特に好ましくは10〜500である。ゲル強度の測定法は下記に記載する。
(ゲル強度測定法)
ゲルを25℃に温調した後、直径15.7mmの金属球を取り付けた棒を島津オートグラフ(島津製作所社製、AGS−500B)に接続する。金属球を5cm/分の速度でゲル中に押し込み、金属球がゲル中に完全に入った直後の応力(g)を測定する。これがゲル強度(g)である。
上記のようにして作成された本発明の放射線線量計用ゲルは(a)が溶解度以内であれば透明性を高く設計できる。透明性は透過率(%)で測定が出来る。ゲルの透過率(%)は、好ましくは80〜100、特に好ましくは90〜100である。ゲルの透明度が高い程放射線の線量が測定しやすい。
(透過率の測定法)10mm厚のガラス製セル中に室温で1日放置してゲルを作成し25℃に温調した後、分光光度計(島津製作所製、UV−1200)にて可視光(700nm)の透過率を測定する。
本発明の線量計用ゲルは、最も簡単には、放射線を透過させる透明な容器に上記の水溶液を充填して静置することにより作製できる。たとえば、直方体の透明容器に上述の水溶液を充填して静置することにより、簡単に体の一部のファントムを構成することができる。容器はMRIに感応せず、放射線を透過し、耐溶剤性、気密性などを有していれば特に制限はなく、その材質はガラス、アクリル樹脂、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが好ましい。容器が透明であれば、MRIのみならず、白濁度の3次元計測が可能な光学CTを使用することで、3次元線量分布を測定できる。
本発明に係る放射線線量計用ゲルは、高感度に3次元線量分布を測定できることから、治療計画に関するインフォームドコンセントに役立つ。医師側は、患者側に放射線治療計画を説明しやすくなり、一方、患者側は明瞭な照射領域を提示されることで、放射線治療をイメージできるようになり、放射線治療に対する安心感を得られる。更に、本発明に係るポリマーゲル線量計用ゲルは、ゲルのサイズや形状を任意で簡便に調節できることから、患者の体型に合わせたテーラーメイドの水等価ファントム(生体組織等価ファントム)にも活用できる。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)の水溶液の作成)
攪拌機を備えた1Lビーカーにイオン交換水450gを入れ、攪拌しながら「ゴーセノール Z−210」(アセトアセチル基を有する特殊変性PVOH、日本合成化学社製)50gを少しずつ投入した。ビーカーを加熱して70〜75℃で3時間攪拌して、「ゴーセノール Z−210」が均一に溶解したことを確認した後加熱を留めて冷却した。「ゴーセノール Z−210」の10重量%水溶液500gを得た。
(多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)の水溶液の作成)
攪拌機を備えた500mLビーカーにイオン交換水285gを入れ、攪拌しながら「ADH」(日本化成社製、アジピン酸ジヒドラジド)15gを投入した。室温で30分攪拌して、「ADH」の5重量%水溶液300gを得た。
(ゼラチン水溶液の作成)
攪拌機を備えた500mLビーカーにイオン交換水285gを入れ、攪拌しながら「ゼラチンSE−1」(アルカリ処理ゼラチン、ニッピゼラチン工業社製)15gを加え40〜70℃に加温して均一に溶解し、ゼラチンの5重量%水溶液300gを得た。
(THPC水溶液の作成)
攪拌機を備えた500mLビーカーにイオン交換水285gを入れ、攪拌しながら「THPC」(テトラ(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリドの約80%水溶液、東京化成工業社製)15gを加え室温で30分間攪拌して均一に溶解し、THPCの4重量%水溶液300gを得た。
(実施例1)
室温において、200mlのビーカーに「ゴーセノール Z−210」の10重量%水溶液 37g、「ADH」の5重量%水溶液 6.6gおよびゼラチンの5重量%水溶液28gを入れ、さらにアセトン0.9g、脱イオン水19.5gを入れて攪拌した。ビーカー内の水溶液を攪拌しながらメタクリル酸 2.8g、「NKエステル9G」(ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール数が約9つ)、新中村化学工業社製)0.7g、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製)0.8g、THPCの4重量%水溶液3.7gを入れて攪拌した。水溶液がほぼ透明になった時点でヘリウムガスを3分間バブリングした。この時点では若干粘性のある水溶液であった。その後約20mlの円筒状のアクリルビン(径25mm、長さ45mm)5本に充填して蓋をした。このアクリルビンをアルミホイルで包み光を遮断して、冷蔵庫に保管した。約5時間後にゲル化したことを確認した。このようにして本発明の放射線線量計用ゲルが得られた。
(実施例2〜5、比較例1)
表1に示した配合量を用いて実施例1と同様にして本発明の放射線線量計用ゲル、比較の放射線線量計用ゲルを得た。メタクリル酸を用いない場合は、触媒としてクエン酸を添加した。
Figure 2015017934
これらの放射線線量計用ゲルにIPU EXL−15SPで10MV X線を照射して0.5Gy、1Gy、2Gyで白濁が生じるかどうか確認した。その結果を表2に示した。また、ゲルの熱安定性、ゲルの透明性などの評価結果を合わせて示した。
Figure 2015017934
(試験法)
・ゲルの熱安定性
ゲルを40℃に加熱した時ゲルが融解するかどうかを肉眼で判定した。
○:融解せず ×:融解した
・ゲルの透明性
ゲルの透明性を目視で判定した。
○:透明 △:かすみ ×:不透明または析出物あり
・ゲルの白濁度
○:はっきりと白濁が認められる △:かすかに白濁が認められる ×:白濁が認められない
本発明のゲル化剤(A+B)を用いてゲル化した実施例1〜5の放射線線量計用ゲルは、40℃に加熱してもゲルは融解せず熱安定性が良好であり、白濁した部分の位置が温度の変化に対して安定に存在することができる。また、0.5Gyの低線量においても白濁しやすいことがわかる。
エチレン性不飽和モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの両方を含んだ場合、それぞれ一方を含む場合に比較して、白濁が低線量でもおこりやすいことがわかる。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和モノマー(a)を含有する水の中で、カルボニル基を2個以上含有する樹脂(A)と多価カルボン酸ヒドラジド化合物(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲル。
  2. さらに親水性の天然高分子または親水性の天然由来の高分子を含むことを特徴とする請求項1記載の放射線線量計用ゲル。
  3. 前記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸、またはそれらのエステルであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線線量計用ゲル。
  4. 前記エチレン性不飽和モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の放射線線量計用ゲル。
  5. 前記エチレン性不飽和モノマー(a)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の放射線線量計用ゲル。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線線量計用ゲル、および該ゲルを充填可能な透明容器からなる放射線線量計。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線線量計用ゲルまたは請求項6記載の放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法。
  8. 請求項7記載の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計。
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