JP6714231B2 - 放射線感応性ゲルインジケータ、及びその調製方法、及びその使用方法、及びその処理方法 - Google Patents
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まず本発明では、放射線感応性ゲルインジケータを、部分ケン化PVAとヨウ化カリウムと水を含むゲル状体から構成している。またこのゲル状体には、ゲル化剤としてホウ砂、pH調整剤として還元性単糖類を使用している。またゲル状体のpHに関しては、インジケータ機能を得るためにpH6超、pH8未満の範囲で調整しているが、特に機能を安定させたい場合にはpH6.5〜pH7.0の範囲で調整するのが好ましい。
<部分ケン化PVA水溶液の作製>
次に上記ゲルインジケータを調製方法について説明する。まず最初に、部分ケン化PVAを水に溶かした水溶液を作製する。具体的には、常温の水にPVA粉末を攪拌しながら投入し、加温装置(ホットスターラー等)で70〜90℃程度に加温して、PVA粉末を完全に溶解させる。その後、攪拌を続けつつ加温を停止して水溶液が50℃以下になるまで冷却を行う(なおPVA水溶液の作製方法はこの方法に限定されない)。
そして次に、上記部分ケン化PVA水溶液にヨウ化カリウム、ホウ砂および還元性単糖類を加えてゲル化させる。具体的には、ホウ砂と還元性単糖類を水に溶かした水溶液に、ヨウ化カリウムを加えて水溶液の温度が約35℃になるまで加温装置で加温する。その後、この水溶液に30℃まで加温したPVA水溶液と90℃の熱湯を加え、pH6超、pH8未満の範囲に調整した水溶液を攪拌しながらゲル化させる(なおPVA-KI水溶液のゲル化の方法はこれに限定されない)。なおゲル化後の冷却方法やグアガムの添加により、ゲルの硬度を変えることもできる。
その後、上記の方法で作製したPVA-KIゲルを、空気と反応しないようにガスバリア性を有する透明容器に封入して、遮光状体で所定時間(約12時間)静置しゲル内のガス抜きを行う。なおゲルを封入する透明容器に関しては、ガスバリア性を有していれば瓶状のもの(プラスチック製やガラス製の瓶等)や袋状のもの(樹脂シート製の袋等)を使用することができる。
一方、上記ゲルインジケータにおけるヨウ化カリウムの配合量を5.0〜9.5wt%とした場合には、PVA-KI水溶液をゲル化させた直後に赤く呈色してしまう。そのため、ゲルインジケータとして使用できるように、ゲルを40℃以上の温度で数時間(6時間程度)加温して透明にする必要がある。なおヨウ化カリウムの配合量を1〜2wt%程度に減らした場合でも、時間をかけて呈色反応が起こるため、加温処理は有効である。
次に上記ゲルインジケータの各材料について説明する。まず部分ケン化PVAについては、ケン化度95mol%以下(より好ましくは85〜90mol%の範囲)のものを使用することができ、特に水に溶かし易い粉末状のものを好適に使用できる。なおケン化度はJIS K6726に準拠して測定するものとする。また部分ケン化PVAには、市販の洗濯のりを使用することもできるが、インジケータ機能が損なわれないように不純物が少ないものを選択することが望ましい。
上記ヨウ化カリウムについても、水に溶かし易い粉末状のものを好適に使用できる。インジケータ機能が損なわれないように不純物が少ないものを選択することが望ましい。
上記ホウ砂についても、水に溶かし易い粉末状のものを好適に使用できるが、粉末より粒径が大きい結晶を使用することもできる。また上記還元性単糖類には、粉末状の果糖やブドウ糖などを好適に使用することができるが、特にゲルインジケータの消色機能(その要因であるポリヨウ素の還元)を制御し易い果糖を使用することが望ましい。
次に上記各材料の配合量について説明する。まず水の配合量に関しては、ゲル全量に対して70〜85wt%(より好ましくは76.9〜80.4wt%)の範囲とすることが望ましい。なお水の配合量を多くすることで、軟らかめのゲルを作製することができ、また少なくすることで硬めのゲルを作製できるため、用途に応じて水の配合量を調節することが望ましい。
本発明のゲルインジケータが感度を有する放射線としては、紫外線、X線、γ線、粒子線(陽子線や重粒子線)、α線、電子線および中性子線などが挙げられる。特に中性子線に関しては、水により減速された中性子線をホウ砂内のホウ素が吸収し、α線を生成するため、粒子線に感度を持つ本発明のゲルインジケータを使用すれば、中性子線の吸収の有無を判断できるものと予測される。
次に上記ゲルインジケータの使用方法について説明する。まずゲルインジケータは、透明容器(瓶や袋等)に入れた状態で使用する。そして透明なゲルインジケータに放射線を照射して、ゲルインジケータの呈色反応(透明から赤色に変化)を評価することにより、放射線が照射された部位を確認することができる。なお呈色反応の評価は、目視による感覚的な評価だけでなく、色測定(CIELAB等の色座標を用いた測定)によって明度及び輝度を数値化することにより定量的に評価することもできる。
次に上記ゲルインジケータの廃棄方法について説明する。まずゲルインジケータに対してクエン酸水溶液を添加し、ゲルを架橋しているボラートアニオンをクエン酸によって中和することによりゲルを液化させる。その後、水槽内のカルキ抜き等に使用されるチオ硫酸ナトリウムを添加してヨウ素を還元する。なおチオ硫酸ナトリウムの代わりにアスコルビン酸(ビタミンC)を用いることも可能である。
次に本発明の効果の実証試験について説明する。なお本試験で確認を行ったのは、(ア)室温下で透明なゲル状体の調製が可能か否か、(イ)放射線照射によって呈色反応を示すか否か、(ウ)加温によって消色反応を示すか否か、の3点である。また本試験では、部分ケン化PVAに、ケン化度86.5〜89mol%のものを使用し、完全ケン化PVAに、ケン化度98.5mol%のものを使用している。
本試験のX線照射には、日立製作所社製のX線照射装置(MBR-1520R-3)を使用し、電圧:150kV、管電流:20mA、フィルタ:Al0.5mm+Cu0.1mm、線量率:2Gy/minの照射条件で、試料に対し0.5Gyずつ照射し、積算した吸収線量が10Gyになるまで照射を行った。
本試験のγ線照射は、JAEA高崎量子応用研究所 食品照射棟第1照射室で行い、線源:60Co 803Ci、測定高さ:22.5cm、線源から試料までの距離:69cm、線量率:20Gy/hの照射条件で、試料に対し3Gyずつ照射し、積算した吸収線量が12Gyまで照射を行った。
本試験の陽子線照射は、若狭湾エネルギー研究センター 多目的シンクロトロン・タンデム加速器(W-MAST)を使用して行い、吸収線量:20Gyの照射条件で、試料上部を遮蔽し下部への照射を行った。
本試験では、ガスバリア性を有する透明容器としてPET樹脂製の容器(ASONE社製ペット広口瓶No.250)を使用し、このPET容器に試料(ゲル状体)を封入して上記各放射線の照射実験を行った。次に本試験で使用した試料(実施例及び比較例)とそれらの試験結果について説明する。
この実施例1では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、水30.0gにヨウ化カリウム15.0gを溶かしたヨウ化カリウム水溶液、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:195.0g)に対して7.7wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例では、ゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温(約25℃)で静置後、赤色に呈色したゲルを45℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的軟らかめ)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温で静置後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、赤色に呈色したゲルは、約1ヶ月以上放置しても赤色に呈色したゲル状であった。またゲル化後に加温処理をし、アルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、透明なゲル状体は約1ヶ月以上放置しても透明なゲル状体であった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
また上記実施例1のゲル状体を、光路長1cmのポリスチレン製ディスポーサブルカプセルに封入してγ線照射した後、赤色に変色したゲル状体に対し、ファイバーマルチチャンネル分光器システム(StellarNet社製)を用いて300nm〜600nmの領域での吸光度の測定を行ったところ、図1に示す結果が得られた。これによりゲル状体に対するγ線の照射量が多いほど、呈色反応が進むことが確認できた。
この実施例2では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、水30.0gにヨウ化カリウム10.0gを溶かしたヨウ化カリウム水溶液、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:190.0g)に対して5.3wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例でも、ゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温(約25℃)で静置後、赤色に呈色したゲルを45℃以上の加温処理を数時間行うことにより40℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的軟らかめ)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温で静置後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、赤色に呈色したゲルは、約1ヶ月以上放置しても赤色に呈色したゲル状であった。またゲル化後に加温処理し、アルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、透明なゲル状体は約1ヶ月以上放置しても透明なゲル状体であった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
また上記実施例1と実施例2のゲル状体を、光路長1cmのポリスチレン製ディスポーサブルカプセルに封入してX線照射した後、赤色に変色したゲル状体に対し、ファイバーマルチチャンネル分光器システム(StellarNet社製)を用いて300nm〜600nmの領域での吸光度の測定を行ったところ、図2に示す結果が得られた。これによりゲル状体に対するX線の照射量が多いほど、呈色反応が進むこと、並びにゲル状体のX線に対する感度がヨウ化カリウムの配合量に依存することが確認できた。
この実施例3では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、ヨウ化カリウム15.0g、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:165.0g)に対して9.1wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例でも、ゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温(約25℃)で静置後、赤色に呈色したゲルを45℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的硬め)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温で静置後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、赤色に呈色したゲルは、約1ヶ月以上放置しても赤色に呈色したゲル状であった。またゲル化後に加温処理し、アルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、透明なゲル状体は約1ヶ月以上放置しても透明なゲル状体であった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
この実施例4では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、ヨウ化カリウム10.0g、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:160.0g)に対して6.3wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例でも、ゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温(約25℃)で静置後、赤色に呈色したゲルを45℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的硬め)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温で静置後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、赤色に呈色したゲルは、約1ヶ月以上放置しても赤色に呈色したゲル状であった。またゲル化後に加温処理し、アルミホイルで遮光をし、室温で保管したところ、透明なゲル状体は約1ヶ月以上放置しても透明なゲル状体であった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
この実施例5では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、水30gにヨウ化カリウム1.8gを溶かしたヨウ化カリウム水溶液、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:181.8g)に対して1.0wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例では、ゲル化後に40℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的硬め)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温(約25℃)で保管したところ、約2週間透明を維持した。その後、ゲル状体は薄く呈色し、更にそのゲル状体を1ヶ月程度放置したところ透明になった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
この実施例5では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、水30gにヨウ化カリウム3.6gを溶かしたヨウ化カリウム水溶液、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:183.6g)に対して2.0wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例でも、ゲル化後に40℃以上の加温処理を数時間行うことにより透明なゲル状体(比較的硬め)を調製できたことから、(ア)の条件を満たすことが確認できた。なおゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温で静置後、加温処理せずにアルミホイルで遮光をし、室温(約25℃)で保管したところ、約12時間以内に薄く呈色した。その後、24時間以上経過するとゲル状体が全体的に赤色に呈色し、更にそのゲル状体を約1ヶ月程度放置したところ透明になった。また本実施例で作製したゲル状体に、X線、γ線および陽子線をそれぞれ照射したところ、全ての放射線について呈色反応を示したことから、(イ)の条件も満たすことが確認できた。また本実施例のゲル状体を、赤色に呈色させた状態で45℃以上の温度に加温したところ、消色反応を示して透明に戻ったことから、(ウ)の条件を満たすことも確認できた。
この比較例1では、実施例1の部分ケン化PVAを完全ケン化PVAに替えてゲル状体の作製を行った。
<比較例1の試験結果>
本比較例では、透明なゲル状体を作製することはできたが、このゲル状体に、X線、γ線および陽子線を照射しても呈色反応を示さなかったことから、(イ)の条件を満たさないことが確認できた。
この比較例2では、実施例1の果糖を使用せずにゲル状体の作製を行った。なお本比較例において、各材料を混ぜた状態でpHを測定したところ、pH9.93であった。
<比較例2の試験結果>
本比較例でも、透明なゲル状体を作製することはできたが、このゲル状体に、X線、γ線および陽子線を照射しても呈色反応を示さなかったことから、(イ)の条件を満たさないことが確認できた。
この比較例3では、実施例1の材料に酸性物質を添加して、pH6以下となるようにゲル状体の作製を行った。
<比較例3の試験結果>
本比較例では、ゲル状体の作製直後、ゲル状体が直ぐに赤色に変色し、加温処理を行っても透明な状態に戻らなかったことから、(ア)の条件を満たさないことが確認できた。
この比較例4では、実施例1の果糖の代わりにマンニトールを使用してゲル状体の作製を行った。
<比較例4の試験結果>
本比較例では、透明なゲル状体を作製することができ、またX線、γ線および陽子線の照射によって呈色反応も示したが、45℃以上に加温しても消失反応が生じず透明に戻らなかったことから、(ウ)の条件を満たさないことが確認できた。
この比較例5では、水81.0gに部分ケン化PVA9.0gを溶かした部分ケン化PVA水溶液、水30gにヨウ化カリウム20gを溶かしたヨウ化カリウム水溶液、並びに水45.8gにホウ砂6.0gと果糖8.2gを溶かしたホウ砂果糖水溶液を加温混合してゲル状体を作製した。なお本実施例では、ヨウ化カリウムの配合量をゲル全量(総質量:200g)に対して10.0wt%とし、ゲル状体のpHが、pH6.5〜pH7.0の範囲に収まるように調整した。本実施例の配合量についてまとめた表を以下に示す。
本実施例では、ゲル化後、ガスバリア製容器に封入し、室温(約25℃)で静置後、赤色に呈色したゲル状体を45℃以上の加温処理を数時間行ったところ、透明なゲル状体にはなったが、そのゲル状体をアルミホイルで遮光し、室温で約1日保管したところ、放射線を照射しなくても常温でゲル状体が赤色の呈色反応を示し、透明を維持することができなかったことから、(ア)の条件を満たさないことが確認できた。
上記実施例1〜6及び比較例1〜5の試験結果をまとめた表を以下に示す。
Claims (9)
- ヨウ化カリウムを加えた部分ケン化PVA水溶液をゲル化させて成るpH6超、pH8未満のゲル状体であって、ゲル化剤としてホウ砂が含まれると共に、pH調整剤として還元性単糖類が含まれていることを特徴とする放射線感応性ゲルインジケータ。
- 還元性単糖類として果糖が使用されていることを特徴とする請求項1記載の放射線感応性ゲルインジケータ。
- pH6.5〜pH7.0のゲル状体であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線感応性ゲルインジケータ。
- ヨウ化カリウムの配合量が5.0〜9.5wt%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の放射線感応性ゲルインジケータ。
- 部分ケン化PVA水溶液にヨウ化カリウムを加え、更にホウ砂および還元性単糖類を加えてpH6超、pH8未満の状態でゲル化させることを特徴とする放射線感応性ゲルインジケータの調製方法。
- ヨウ化カリウムを配合量5.0〜9.5wt%の範囲で加えると共に、ゲル化後に加温処理を行ってゲル状体を透明な状態にすることを特徴とする請求項5記載の放射線感応性ゲルインジケータの調製方法。
- 請求項1に記載された放射線感応性ゲルインジケータの使用方法であって、透明なゲルインジケータに10℃〜40℃の温度環境下で放射線を照射して赤色に呈色させた後、このゲルインジケータを45℃以上の温度で加温して色を消失させることを特徴とする放射線感応性ゲルインジケータの使用方法。
- 請求項1に記載された放射線感応性ゲルインジケータの使用方法であって、透明なゲルインジケータに10℃〜40℃の温度環境下で放射線を照射して赤色に呈色させた後、このゲルインジケータを45℃以上の温度で加温して色を消失させることを特徴とする放射線感応性ゲルインジケータの使用方法。
- 請求項1に記載された放射線感応性ゲルインジケータの処理方法であって、ゲルインジケータにクエン酸水溶液を添加して液化させた後、この液中にチオ硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸を添加してヨウ素を還元し、更に塩化ナトリウムを添加して析出させたPVAを液中から分離して取り除くことを特徴とする放射線感応性ゲルインジケータの処理方法。
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