JP2015096704A - ロッカーアームの支持機構 - Google Patents

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川原 和周
Kazuchika Kawahara
和周 川原
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【課題】シリンダヘッドへの組み付けが容易なロッカーアームの支持機構の提供。【解決手段】支持機構50は、圧縮コイルばね80、座面71、座面71周縁からばね80の反対側に延びる周側面72を有する台座70、ロッカーアーム40の揺動支点部42を支持する支持部61、座面71との間でばね80を挟むように他端面80bと当接する天井面62、ばね80を包囲しかつ周側面72に沿ってばね80の伸縮方向に移動可能な筒状の外壁部63を有する支持移動体60を備える。支持移動体60は、外壁部63の内周面63cに環状溝部64を有する。台座70は、座面71の周縁に立設される内壁部73と、内壁部73に設けられ溝部64と重なる挿通孔75とを有する。ばね80は、ばね80を構成する線材の端部からなり他端面80bのコイル状の外周縁よりも外側に突出し挿通孔75を通って溝部64に挿入され、外壁部63に係止可能な係止端部81aを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の動弁装置における、ロッカーアームの支持機構に関する。
内燃機関の動弁装置として、シリンダヘッドのピボットに対して上から当接する揺動支点部と、カムに対して下から当接するローラと、バルブに対して上から当接するバルブ当接部とを有するロッカーアームを備え、カムの回転に伴って、揺動支点部を中心としてロッカーアームを揺動させることでバルブを往復駆動するものがある。この種の動弁装置においては、バルブステムが熱膨張を起した場合のバルブの開閉動作を保証するために、カムのベース円部がローラ側を向いているとき(ベース状態)に、カムとローラとの間にタペットクリアランスと呼ばれる隙間ができるように構成されている。
しかし、上記の構造によれば、ベース状態のときに、カムとロッカーアームとの間に隙間があるために、ロッカーアームがカムに対して傾く場合がある。すると、カムがロッカーアーム本体を傾動させる際にローラに対して面当たりせず、がたつきや異音が生じる場合がある。
この問題を解決するために、従来、ピボットとピボット挿入孔の底面との間にスプリングを介装する構造等が提案されている(特許文献1参照)。このような構造を採用することにより、必要なタペットクリアランスを確保したうえで、カムに対するロッカーアームの姿勢を安定させる事が可能となる。
特開2005−2936号公報
しかしながら、上述した従来構造では、ピボット挿入孔の底面に、スプリングを入れ込むための構造が必要となるため、シリンダヘッドの構成を変更する必要があった。また、ピボットとスプリングは、互いに固定されていないため、それらをピボット挿入孔に組み付ける作業が煩わしい。特に、スプリングはピボット挿入孔に圧縮された状態で収容する必要があるため、弾性力等によりスプリングがピボット挿入孔から離脱し易く、紛失するおそれがあった。
本発明の目的は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シリンダヘッドへの組み付けが容易なロッカーアームの支持機構を提供することを目的とする。
本発明に係るロッカーアームの支持機構は、線材をコイル状に巻回してなる筒型の圧縮コイルばねと、前記圧縮コイルばねの一端面と当接する座面と、この座面の周縁から前記圧縮コイルばねの反対側に延びる周側面とを有する台座と、ロッカーアームの揺動支点部を支持する支持部と、この支持部の反対側にあり前記座面との間で前記圧縮コイルばねを挟むように前記圧縮コイルばねの他端面と当接する天井面と、前記圧縮コイルばねを包囲し、かつ前記周側面に沿って前記圧縮コイルばねの伸縮方向に移動できるように、前記天井面の周縁から前記台座側に延びる筒状の外壁部とを有する支持移動体と、を備えるロッカーアームの支持機構であって、前記支持移動体は、前記外壁部の内周面のうち前記座面を取り囲む部分に、内側から外側に向かって凹んだ環状の溝部を有し、前記台座は、前記外壁部と前記圧縮コイルばねとの間に配されるように前記座面の周縁に立設される内壁部と、この内壁部を厚み方向に貫通する孔からなりかつ前記溝部と重なる挿通孔とを有し、前記圧縮コイルばねは、前記他端面側に配される前記線材の端部からなり、前記他端面におけるコイル状の外周縁よりも外側に突出し、前記挿通孔を通って前記溝部に挿入され、前記外壁部に対して係止可能な係止端部を有することを特徴とする。
このような構成によれば、圧縮コイルばねが支持移動体の内部に組み込まれているので、シリンダヘッド側に圧縮コイルばねを入れ込むための構造が不要である。
また、圧縮コイルばねの係止端部によって、支持移動体から台座が脱落することが防止され、かつ支持移動体から圧縮コイルばねが離脱することが防止される。そのため、支持機構をシリンダヘッドに組み付ける際の作業性が良く、また、支持移動体から圧縮コイルばねが離脱して紛失することが防止される。
また、係止端部は、圧縮コイルばねの一部からなるため、例えば、係止端部に相当する構成が専用部品からなる場合と比べて、部品点数を増加させることなく、支持移動体、台座及び圧縮コイルばねを互いに組み付けることが可能である。
前記支持機構において、前記圧縮コイルばねは、前記一端面におけるコイル状の外周縁が、前記他端面におけるコイル状の前記外周縁よりも大きく設定されているものであってもよい。このような構成によれば、圧縮コイルばねの他端面が筒状の外壁部内において天井面に沿って横ずれすることが抑制される。圧縮コイルばねの一端面側と、外壁部の内周面との間には、内壁部が配されている。そのため、天井面側(圧縮コイルばねの他端面側)の外壁部の内側には、圧縮コイルばねの一端面側の外壁部の内側と比べて、内壁部の厚み分だけスペースが広くなり得る。したがって、上記のように、圧縮コイルばねが、一端面におけるコイル状の外周縁が、他端面におけるコイル状の外周縁よりも大きく設定されていると、圧縮コイルばねの他端面側の横ずれが抑制され、圧縮コイルばねの変形等が抑制される。
本発明によれば、シリンダヘッドへの組み付けが容易なロッカーアームの支持機構を提供することができる。
ベース状態におけるバルブ及び動弁装置の部分断面図 ベース状態におけるピボットの拡大断面図 コイルスプリングの断面図 コイルスプリングの底面図 コイルスプリングが組み付けられている状態の台座の断面図 係止端部が開口端と干渉した状態で台座が支持移動体の開口端に組み付けられている状態を示す説明図(断面図) 係止端部が治具により挿通孔内に引っ込められている状態で台座が支持移動体の開口端に組み付けられている状態を示す説明図(断面図) 係止端部が治具により挿通孔内に引っ込められた状態で、挿通孔が外壁部の溝部と重なるように、台座が支持移動体の開口端に組み付けられている状態を示す説明図(断面図) 係止端部が挿通孔を通って外壁部の溝部に挿入され、外壁部に係止されている状態で、台座が支持移動体の開口端に組み付けられているピボットの断面図 リフト時におけるバルブ及び動弁装置の部分断面図 変形例のコイルスプリングの底面図
<実施形態1>
本発明の一実施形態を、図1乃至図10を参照しつつ説明する。本実施形態のロッカーアームの支持機構は、車両のエンジン(内燃機関の一例)の動弁装置20に備えられるピボット50である。
図1に示されるように、エンジンのシリンダヘッド1は、吸気ポート3を開閉する吸気バルブ10と、排気ポートを開閉する排気バルブ(不図示)とを有している。以下、吸気バルブ10及びこの吸気バルブ10を開閉する吸気側の動弁装置20について、詳細に説明する。排気バルブ及び排気バルブ側の動弁装置は、吸気側と同様の構成を備えているため、説明を省略する。
吸気バルブ10は、円板状の弁部材11と、この弁部材11の上面から上方に延びる丸棒状のバルブステム12とを備えている。弁部材11は、シリンダヘッド1に設けられているシリンダ(不図示)の内部空間と連通する吸気通路2に配され、シリンダと吸気通路2とを連通する吸気ポート3の開閉を行う。
バルブステム12は、吸気通路2の外壁を貫通しており、弁部材11側とは逆側の端部が外側(図1の上側)に突出している。バルブステム12の上端よりもやや下方(弁部材11寄りの位置)には、円板状のばね押さえ部13が配置されている。シリンダヘッド1の外面とばね押さえ部13との間には、バルブスプリング14が圧縮状態で組み込まれている。このバルブスプリング14の弾性力によって、吸気バルブ10は、常にはバルブステム12側(図1の上方)に(即ち、弁部材11が吸気ポート3を閉塞するように)付勢されている。
動弁装置20は、シリンダヘッド1に組み付けられて、吸気バルブ10の開閉を行う機構である。動弁装置20は、カム31を有するカムシャフト30と、ロッカーアーム40と、ピボット50とを備えている。ロッカーアーム40は、カム31の回転に従って揺動し、カム31の回転運動を上下運動に変換して吸気バルブ10に伝達する。ピボット50は、ロッカーアーム40の揺動支点を支えるものである。ピボット50の詳細は、後述する。
カムシャフト30は、中空の丸棒であって、バルブステム12の先端からやや離れた位置に、バルブステム12に対して垂直に配置され、図示されない支持部材によってシリンダヘッド1に固定されている。このカムシャフト30には、カム31が固定されている。
カム31は、略卵型の輪郭を有する板カムであって、カムシャフト30を挿通するためのシャフト孔32を備えている。シャフト孔32は、カム31の一方の板面から他方の板面まで貫通する貫通孔である。カム31は、シャフト孔32にカムシャフト30が挿通されることにより、カムシャフト30に固定され、カムシャフト30とともに回転される。カム31は、回転中心(シャフト孔32の中心)から外周面までの距離が一定である円形のベース円部33と、回転中心(シャフト孔32の中心)から外周面までの距離がベース円部33よりも大きなカムノーズ部34とを有している。
ロッカーアーム40は、全体として細長い棒材であり、カムシャフト30とバルブステム12との間に、カムシャフト30と垂直に配されている。ロッカーアーム40は、ローラ49と、ローラ49を回転可能に保持するアーム本体41とを備えている。アーム本体41の一端部は、ピボット50に揺動可能に支持される揺動支点部42であり、アーム本体41の他端部は、シム15を介して吸気バルブ10に当接するバルブ当接部44である。シム15は、略円板状であり、バルブステム12の上端とバルブ当接部44との間に配置されている。シム15は、バルブクリアランスを調整するためのものであり、厚さの異なる複数のシムのなかから適切なものを選び、取り付けることで、バルブクリアランスを調整することができる。
揺動支点部42は、球状凹部43を備えている。球状凹部43は、揺動支点部42の表面(図1の下面)から内側(図1の上側)に凹んだ形をなしている。
バルブ当接部44は、吸気バルブ10がシム15を介して当接するバルブ受け面45を有している。バルブ受け面45は、バルブ当接部44において、揺動支点部42の球状凹部43が配された側の面と同じ側の面(図1の下面)に配されている。このバルブ受け面45には、バルブステム12における弁部材11側とは逆側(図1の上側)の端面が、シム15を介して当接している。
アーム本体41は、揺動支点部42とバルブ当接部44との間に、2つの側壁部46,46を有している(図1及び図3は断面図であるため、一方の側壁部46のみが図示されている)。各側壁部46は、カムシャフト30に対して垂直に配される壁である。2つの側壁部46,46は、互いに間隔を空けて、平行に配置されている。2つの側壁部46,46の間には、支持軸47が渡されている。支持軸47の両端部は、各側壁部46に形成された貫通孔48にそれぞれ圧入されている。支持軸47には、ニードルベアリングなどの軸受(不図示)を介してローラ49が回転自在に装着されている。ローラ49は、その一部が、側壁部46から、球状凹部43及びバルブ受け面45が配置されている側とは逆側(図1の上側)に突出している。この突出部分の外周面は、カム31の外周面に当接している。
ピボット50は、図2等に示されるように、支持移動体60と、台座70と、コイルスプリング(圧縮コイルばね)80とを備えている。なお、説明の便宜上、図2に示される上側をピボット50等の上側と表し、下側をピボット50等の下側と称する場合がある。
支持移動体60は、ロッカーアーム40の揺動支点部42を支持する部材であり、全体的には、先端に丸みを帯びた突起を有するような筒型をなしている。支持移動体60は、金属加工品からなり、主として、支持部61、天井面62、外壁部63及び溝部64を備えている。
支持部61は、ロッカーアームの揺動支点部42と直に接触する部分であり、支持移動体60の先端部分をなしている。支持部61は、球状凹部43に嵌る形で揺動支点部42と接触する半球状の壁からなる凸部61aと、この凸部61aから下方に延設され、筒状の壁からなる基部61bとを備えている。また、支持部61の内側には、中空部61cが設けられている。凸部61aの中心には、ピボット50の軸方向に沿って貫通する孔部61dが設けられている。この孔部61dは、ピボット50内のエアやオイルを外部に放出等するために利用される。また、筒状の基部61bには、ピボット50の軸方向と垂直に交わる方向に沿って貫通する孔部61eが設けられている。この孔部61eも、ピボット50内のエアやオイルを外部に放出等するために利用される。
天井面62は、支持部61の下端(つまり、基部61bの下端)に設けられている天井壁62aの一部からなる。天井壁62aは、支持部61と筒状の外壁部63との間を仕切るように、支持部61の下端に設けられている。天井壁62aの中心には、ピボット50の軸方向に沿って貫通する孔部62bが設けられている。天井壁62aは、ピボット50の軸方向から見た際、円環状をなしている。天井壁62aのうち、支持部61の反対側ある下方を向いた円環状の面が、天井面62となっている。天井面62は、台座70が備える座面(後述)との間でコイルスプリング80を挟むようにコイルスプリング80の他端面と当接する部分となっている。
外壁部63は、天井面62の周縁から下方の台座70側に延びる円筒状をなしている。外壁部63の下端側に配される開口端63aは、台座70が挿入される形で装着される部分となっている。外壁部63は、台座70上に載せられたコイルスプリング80を包囲する部分となっている。外壁部63の上端63bは、天井面62の外縁に接続されている。外壁部63の内周面63cのうち、開口端63a側の内周面63cは、台座70の外周面と対向する部分となっている。そして、台座70の外周面と対向する部分の内周面63cには、内側(内周面63c側)から外側(外周面63d側)に向かって凹んだ環状の溝部64が形成されている。なお、外壁部63の外周面63dには、外壁部63を周回する形で設けられ、油路として利用される環状の溝部63eが設けられている。この溝部63eは、外壁部63の外側(外周面63d側)から内側(内周面63c側)に向かって凹んだ形をなしている。
コイルスプリング(圧縮コイルばね)80は、金属が線状に加工されてなる線材81が、コイル状に巻回されたものからなる。コイルスプリング80は、全体的には筒型をなし、自然長の状態から力を受けて長さ方向に圧縮されると、元の長さに戻ろうとして伸びる向きに反発力(弾性力)を発生する。コイルスプリング80の一方の端面80aは、台座70の座面(後述)と当接する部分となっている。また、コイルスプリング80の他方の端面80bは、天井面62aと当接する部分となっている。なお、本実施形態のコイルスプリング80は、上方(天井面62a側)に配される端面80bの方が、後方(台座70側)に配される端面80bよりも直径(外径)が大きくなるように設定されている。コイルスプリング80は、外径及び内径が略同じであり端面80a側に配される同径部82と、この同径部82に接続され端面80b側に向うにつれて外径及び内径が徐々に大きくなる拡径部83とを備えている。つまり、台座70側の端面80aは同径部82に設けられ、天井面62側の端面80bは拡径部83に設けられている。
コイルスプリング80の端面80aには、コイルスプリング80を構成する線材81の一部からなり、コイル状(円環状)をなした端面80aの外周縁よりも外側に突出する係止端部81aが設けられている。係止端部81aは、コイルスプリング80を構成する線材81のうち、端面80a側に配される線材81の端部からなる。図4には、端面80a側から見た状態のコイルスプリング80が示されている。係止端部81aは、端面80aにおいて、コイル状に巻回されている部分の線材81から外側に突出するように、線材81の端部が、円弧状の部分に対して外側に曲げて形成されている。係止端部81aは、端面80aにおけるコイル状の外周縁80a1よりも外側に突き出している。係止端部81aは、後述するように、支持移動体60に組み付けられた台座70及びコイルスプリング80が支持移動体60から外れないようにするためのストッパとして機能する。なお、端面80b側における線材81の端部は、コイル状(円環状)に巻回されている。
台座70は、コイルスプリング80の端面80aを受けつつ、支持移動体60の開口端63aに挿入される形で取り付けられる部材である。台座70は、支持移動体60と同様、金属加工品からなり、主として、座面71を含む座面壁71aと、周側面72を含む周壁部72aと、内壁部73と、フランジ部74とを備えている。
座面壁71aは、円筒状の周壁部の上端に設けられている。座面壁71aは、円環状の板材からなり、中心にピボット50の軸方向に貫通する貫通孔71bが設けられている。座面壁71aのうち上側(天井面62側)を向く円環状の面が、座面71となっている。座面71は、コイルスプリング80の端面80aと当接し、コイルスプリング80を受け支える部分となっている。座面71の周縁から下方(コイルスプリング80の反対側)に延びるように、周側面72が配されている。この周側面72は、上述した円筒状の周壁部72aの外周面からなる。
内壁部73は、円環状の座面71の周縁に円筒状に立設されており、上述した周壁部72aに連なっている。内壁部73の内側には、コイルスプリング80の端面80a側の部分(同径部82)が挿入される。内壁部73は、台座70が支持移動体60に装着された際、支持移動体60の外壁部63と、台座70で受けられているコイルスプリング80との間に配される。また、内壁部73には、内壁部73を厚み方向(内壁部73の内側から外側)に貫通する孔からなり、コイルスプリング80の係止端部81aを内壁部73の内側から外側に挿通させる挿通孔75が設けられている。本実施形態の場合、挿通孔75は、ピボット50の軸方向に細長く延びた形をなしている。挿通孔75は、台座70が支持移動体60に装着された際、支持移動体60の内周面63cに設けられている環状の溝部64と重なるように、内壁部73に設けられている。
フランジ部74は、周壁部72aの下端(開口端)から外側に張り出した円環状の板材からなる。フランジ部74は、台座70をピボット50の軸方向から見た場合、外壁部63の下端面と重なる程度の大きさに設定されており、支持移動体60が下降した場合に、支持移動体60の外壁部63の下端面と当接し、支持体移動体60から荷重を受ける部分となっている。
次いで、図5乃至図9を参照しつつ、上述した支持移動体60、台座70及びコイルスプリング80を互いに組み付けて、ピボット50を組み立てる手順を説明する。先ず、図5に示されるように、端面80aが座面71と当接するように同径部82が内壁部73の内側に挿入されてコイルスプリング80が台座70に組み付けられる。その際、端面80a側に設けられている係止端部81aが、内壁部73の挿通孔75を内側から外側に挿通される。台座70にコイルスプリング80が取り付けられた状態において、係止端部81aの先端部分は、図5に示されるように、内壁部73の外周面73a及び周壁部72aの周側面(外周面)72よりも外側にはみ出した状態となっている。
続いて、図6に示されるように、支持移動体60の外壁部63の内側に、台座70に取り付けられている状態のコイルスプリング80が、端面80b側から挿入される。コイルスプリング80の端面80bは、外壁部63の開口端63a内に挿入され、更に、外壁部63の奥側にある天井面62に到達するまで挿入される。その際、台座70の内壁部73も、コイルスプリング80に続いて外壁部63の開口端63a内に挿入される。コイルスプリング80の自然長は、外壁部63の軸方向における長さ(天井面80bから開口端63aまでの長さ)より長く設定されている。そのため、台座70の内壁部73が外壁部63内に挿入されると、コイルスプリング80が座面71と天井面62との間で挟まれて圧縮された状態となる。なお、この時点では、台座70は支持移動体60の外壁部63に対し、係止端部81aの先端部分が支持移動体60の開口端63aと干渉する程度まで挿入され、その状態で、一旦、台座70の外壁部63内に対する挿入が停止される。
上記のように台座70の挿入が停止された後、台座70の内側にある軸方向に沿った空間内に、棒状の治具90が台座70の下端側から挿入される。台座70の内側にある前記空間は、周壁部72aの内側の空間、座面壁71aの内側にある貫通孔71b、及び内壁部73の内側の空間が互いに連なったものである。つまり、台座70は、全体的には、円筒状をなしている。治具90は、台座70の空間内に挿入されて、コイルスプリング80の端面80a側を上方(天井面62側)に押し上げて、挿通孔75から外側にはみ出している係止端部81aの先端部分を傾けて挿通孔75内に引っ込めるために利用されるものである。本実施形態の場合、治具90の先端の外周縁を、コイルスプリング80の下側の端面80aやコイルスプリング80の内周縁等に係止させることにより、コイルスプリング80の端面80a側が上方に押し上げられる。なお、他の実施形態においては、台座70の内壁部73内に、棒状の治具が挿入された後、その治具の外周面から外側に突起を突出させ、その突起を利用してコイルスプリング80の端面80a側を上方(天井面62側)に押し上げてもよい。治具の形状、構造等は、必要に応じて適宜、設定されればよい。
治具90により、挿通孔75内に係止端部81aの先端部分が引っ込められると、図7に示されるように、係止端部81aと開口端63aとの間の干渉が解消される。このように係止端部81aの先端部分を挿通孔75内に引っ込めたままの状態で、台座70の外壁部63内に対する挿入が再開される。その際、座面71と天井面62との間でコイルスプリング80が圧縮されるように、台座70の内壁部73が外壁部60内を天井面62側に向って押し込まれる。台座70は、内壁部73に設けられている挿通孔75が、外壁部63の内周面63cにある溝部64と重なるまで押し込まれる。そして、挿通孔75が溝部64と重なったところで、外壁部63内に対する台座70の挿入が停止され、更に、台座70の内壁部73内に挿入されていた治具90が外部に引き抜かれて、治具90によるコイルスプリング80の端面80a側の押し上げも解消される。すると、挿通孔75内に引っ込められていた係止端部81aの先端部分が、コイルスプリング80の弾性力により、挿通孔75から外側に飛び出して、溝部64内に挿入される。
以上のように、係止端部81aの先端部分が挿通孔75を介して溝部64内に挿入されると、支持移動体60、台座70及びコイルスプリング80が互いに組み付けられる。係止端部81aの先端部分が溝部64内に挿入されていると、コイルスプリング80が伸びて台座70が開口端63aから外側(下方)に向かって押し戻されても、係止端部81aの先端部分が溝部64の端縁(下端側の端縁64a)に係止し、かつ挿通孔75内の係止端部81aが挿通孔75の端縁(上端側の端縁75a)に係止することにより、台座70が支持移動体60の開口端63aから外れることが防止され、かつコイルスプリング80も外壁部63内から外側に離脱することも防止される。
なお、支持移動体60の外壁部63が台座70の外周面に沿って下降し、外壁部63の下端面(開口端63a)がフランジ部74に当接した状態において、係止端部81aは、溝部64の上下方向の端縁(外壁部63の一部)と触れない位置(溝部64の上下端縁の間)に設定されている。また、本実施形態の場合、係止端部81aは外壁部63の径方向で、溝部64の端縁と干渉しないように設定されている。
シリンダヘッド1は、ピボット50を収容するピボット装着穴4を有している。ピボット50は、上述のように、支持移動体60、台座70及びコイルスプリング80が互いに組み付けられた後、ピボット装着穴4に装着される。ピボット装着穴4は、シリンダヘッド1の外面に開口しており、筒状の内周面4aと、この内周面の奥端に配され、シリンダヘッド1の外面と平行な底面4bとを備えている。ピボット装着穴4は、その内径が、支持移動体60の外壁部63の外径よりも僅かに大きく設定されている。
ピボット50は、支持部61側がシリンダヘッド1の外面よりも外側に突出する形で、ピボット装着穴4に収容されている。本実施形態の場合、ピボット50の軸方向は、バルブステム12の長手方向に対して略平行であり、かつ、ロッカーアーム40の長手方向に対して略垂直に配されている。
ピボット50の支持移動体60は、ピボット装着穴4に挿入された状態で、軸方向に昇降可能である。支持移動体60(及び外壁部63)は、台座70の周側面72に沿って軸方向(コイルスプリング80の伸縮方向)に移動可能である。支持移動体60の昇降時、外壁部63の内周面63cは、台座70の周側面72及び内壁部73の外周面73aに対して摺接する。また、支持移動体60の昇降時、外壁部63の外周面63dは、ピボット装着穴4の内周面4aに対して摺接する。なお、シリンダヘッド1内には、オイル供給路(オイルギャラリ)5が設けられており、オイル供給路5からピボット装着穴4にオイルが供給される。
カムシャフト30が回転すると、カム31とローラ49との当接により、ロッカーアーム40が、その揺動支点部42を支点として揺動する。この揺動にともなってバルブステム12が往復移動することにより、吸気バルブ10が開閉される。
その際、カム31から加えられる力の大きさに応じてコイルスプリング80が伸縮し、シリンダヘッド1からの支持移動体60の突出高さ(シリンダヘッド1の外面から凸部61aの頂点までの距離)が変動することによって、カム31の外周面が常にローラ49の外周面に当接するように、カム31の外外周面とローラ49の外周面との間の隙間(クリアランス)を調整している。
図1に示されるように、カム31のベース円部33がローラ49に当接している状態(ベース状態)では、吸気バルブ10はバルブスプリング14の付勢力により上方に付勢され、閉状態(弁部材11が吸気ポート3を塞いだ状態)となる。このとき、ピボット50の支持移動体60は、コイルスプリング80の付勢力により上方(凸部61a側)に付勢され、ロッカーアーム40を押し上げる。
また、図10に示されるように、カム31のカムノーズ部34がローラ49に当接している状態(リフト時)には、カム31によりロッカーアーム40が押し下げられる。これに伴い、バルブ当接部44により吸気バルブ10が押し下げられ、吸気バルブ10が開弁する。このとき、カム31によりロッカーアーム40を介して支持移動体60が押し下げられ、支持移動体60はコイルスプリング80の付勢力に抗して台座70側へ押し下げられる。
以上のように、本実施形態のピボット50は、線材をコイル状に巻回してなる筒型の圧縮コイルばねと、前記圧縮コイルばねの一端面と当接する座面と、この座面の周縁から前記圧縮コイルばねの反対側に延びる周側面とを有する台座と、ロッカーアームの揺動支点部を支持する支持部と、この支持部の反対側にあり前記座面との間で前記圧縮コイルばねを挟むように前記圧縮コイルばねの他端面と当接する天井面と、前記圧縮コイルばねを包囲し、かつ前記周側面に沿って前記圧縮コイルばねの伸縮方向に移動できるように、前記天井面の周縁から前記台座側に延びる筒状の外壁部とを有する支持移動体と、を備えるピボット50であって、前記支持移動体は、前記外壁部の内周面のうち前記座面を取り囲む部分に、内側から外側に向かって凹んだ環状の溝部を有し、前記台座は、前記外壁部と前記圧縮コイルばねとの間に配されるように前記座面の周縁に立設される内壁部と、この内壁部を厚み方向に貫通する孔からなりかつ前記溝部と重なる挿通孔とを有し、前記圧縮コイルばねは、前記他端面側に配される前記線材の端部からなり、前記他端面におけるコイル状の外周縁よりも外側に突出し、前記挿通孔を通って前記溝部に挿入され、前記外壁部に対して係止可能な係止端部を有することを特徴とする。
このような構成によれば、コイルスプリング(圧縮コイルばね)80が支持移動体60の内部に組み込まれているので、シリンダヘッド1側にコイルスプリング80を入れ込むための構造が不要である。
また、コイルスプリング80の係止端部81aによって、支持移動体60から台座70が脱落することが防止され、かつ支持移動体60からコイルスプリング80が離脱することが防止される。そのため、ピボット50をシリンダヘッド1のピボット装着穴4に組み付ける際の作業性が良く、また、支持移動体60からピボット50が離脱して紛失することが防止される。
また、係止端部81aは、コイルスプリング80の一部からなるため、例えば、係止端部81aに相当する構成が専用部品からなる場合と比べて、ピボット50の部品点数を増加させることなく、支持移動体60、台座70及び圧縮コイルばね(コイルスプリング)80を互いに組み付けることが可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、コイルスプリング80の係止端部81a1は、図4に示されるように、端面80aにおいて、線材81の端部が、円弧状の部分に対して外側に曲げられることにより形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、図11に示されるコイルスプリング80Aの係止端部81Aaのように、端面80Aaにおいて、線材81Aの端部が、円弧状の部分に対して内側に一旦、折り曲げられた後、コイルスプリング80の内側を横切り、かつコイル状に巻回されている部分の線材81A(コイル状の外周縁80Aa1)よりも外側に突出するような形状からなるものであってもよい。
(2)上記実施形態では、ロッカーアーム40は、所謂ローラーロッカーアームであったが、ロッカーアームはローラーロッカーアームに限られず、ピボット50によってロッカーアームが支持されるタイプのロッカーアームであればよい。
(3)ピボット50の配置方向は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定される。例えば、軸方向が鉛直方向と一致するように、ピボット50がシリンダヘッド1に対して取り付けられてもよいし、軸方向が水平方向と一致するように、ピボット50がシリンダヘッド1に対して取り付けられてもよい。
1…シリンダヘッド、20…動弁装置、40…ロッカーアーム、42…揺動支点部、50…ピボット(ロッカーアームの支持機構)、60…支持移動体、61…支持部、62…天井面、63…外壁部、64…溝部、70…台座、71…座面、72…周側面、73…内壁部、74…フランジ部、75…挿通孔、80…圧縮コイルばね(コイルスプリング)、80a…一端面、80b…他端面、81…線材、81a…係止端部、82…同径部、83…拡径部、90…治具

Claims (2)

  1. 線材をコイル状に巻回してなる筒型の圧縮コイルばねと、
    前記圧縮コイルばねの一端面と当接する座面と、この座面の周縁から前記圧縮コイルばねの反対側に延びる周側面とを有する台座と、
    ロッカーアームの揺動支点部を支持する支持部と、この支持部の反対側にあり前記座面との間で前記圧縮コイルばねを挟むように前記圧縮コイルばねの他端面と当接する天井面と、前記圧縮コイルばねを包囲し、かつ前記周側面に沿って前記圧縮コイルばねの伸縮方向に移動できるように、前記天井面の周縁から前記台座側に延びる筒状の外壁部とを有する支持移動体と、を備えるロッカーアームの支持機構であって、
    前記支持移動体は、前記外壁部の内周面のうち前記座面を取り囲む部分に、内側から外側に向かって凹んだ環状の溝部を有し、
    前記台座は、前記外壁部と前記圧縮コイルばねとの間に配されるように前記座面の周縁に立設される内壁部と、この内壁部を厚み方向に貫通する孔からなりかつ前記溝部と重なる挿通孔とを有し、
    前記圧縮コイルばねは、前記他端面側に配される前記線材の端部からなり、前記他端面におけるコイル状の外周縁よりも外側に突出し、前記挿通孔を通って前記溝部に挿入され、前記外壁部に対して係止可能な係止端部を有することを特徴とするロッカーアームの支持機構。
  2. 前記圧縮コイルばねは、前記一端面におけるコイル状の外周縁が、前記他端面におけるコイル状の前記外周縁よりも大きく設定されている請求項1に記載のロッカーアームの支持機構。
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