本発明の1つの実施形態は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症および/またはHBV感染症の症状の、治療および予防のうち少なくとも一方のための免疫療法組成物に関する。該免疫療法組成物は、(a)酵母ビヒクル、および(b)1以上のHBV抗原を含む。1つの態様では、該HBV抗原は1以上の融合タンパク質として提供されるが、単一タンパク質のHBV抗原も提供されうる。該HBV抗原は、(i)完全長のHBV大型(L)表面抗原、中型(M)表面抗原および小型(S)表面抗原のうち少なくともいずれかの少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBV表面抗原;(ii)完全長HBVポリメラーゼまたはそのドメイン(例えば逆転写酵素(RT)ドメイン)の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBVポリメラーゼ抗原;(iii)HBVコア抗原またはHBV e抗原であって、それぞれ完全長HBVコアタンパク質および完全長HBV e抗原のうち少なくとも一方の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含む、HBVコア抗原またはHBV e抗原;ならびに、(iv)完全長HBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBV X抗原、のうち少なくともいずれかで構成される。組成物は、該組成物中の1つ以上のHBV抗原、および、個体に感染済みであるかまたは感染する可能性のあるB型肝炎ウイルスの1つ以上の抗原、のうち少なくともいずれかに対するHBV特異的免疫応答を誘発する。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば、免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、または、そのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸配列は、限定するものではないが、配列番号(SEQ ID NO:)3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27もしくは配列番号31で表わされるアミノ酸配列、または別のHBV株/単離株由来の対応する配列を含みうる。HBVポリメラーゼのアミノ酸配列は、限定するものではないが、配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号18、配列番号22、配列番号26もしくは配列番号30で表わされるアミノ酸配列、これらの配列のドメイン、例えば逆転写酵素(RT)ドメイン、または別のHBV株/単離株由来の対応する配列を含みうる。HBVコアタンパク質配列およびHBV e抗原配列の両方を含んでいるHBVプレコアタンパク質のアミノ酸配列は、限定するものではないが、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25、もしくは配列番号29で表わされるアミノ酸配列、または別のHBV株/単離株由来の対応する配列を含みうる。HBV X抗原のアミノ酸配列は、限定するものではないが、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28もしくは配列番号32で表わされるアミノ酸配列、または別のHBV株/単離株由来の対応する配列を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば、免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、または、そのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、HBV抗原として有用な、または本発明の融合タンパク質もしくは免疫療法組成物において有用なHBV表面抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号11の21〜47位、配列番号11の176〜400位、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号34の9〜407位、配列番号36の6〜257位、配列番号41の6〜257位、配列番号92の92〜343位、配列番号93の90〜488位、配列番号97、配列番号101の90〜338位、配列番号102の7〜254位、配列番号107の1〜249位、配列番号108の1〜249位、配列番号109の1〜249位、配列番号110の1〜249位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、または配列番号116の1〜399位、配列番号118の1〜399位、配列番号120の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号130の63〜461位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば、免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、または、そのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、HBV抗原として有用な、または本発明の融合タンパク質もしくは免疫療法組成物において有用なHBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号38の7〜351位、配列番号40の7〜351位、配列番号41の260〜604位、配列番号92の346〜690位、配列番号94の90〜434位、配列番号98、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号120の582〜809位、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号128の1〜228位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば、免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、または、そのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、HBV抗原として有用な、または本発明の融合タンパク質もしくは免疫療法組成物において有用なHBVコア抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば、免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、または、そのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、HBV抗原として有用な、または本発明の融合タンパク質もしくは免疫療法組成物において有用なHBV X抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号36の787〜939位、配列番号39の7〜159位、配列番号92の873〜1025位、配列番号96の90〜242位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号130の1〜60位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
1つの実施形態では、本発明は、免疫療法組成物であって、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、(i)完全長HBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBV X抗原と、(ii)完全長HBV大型表面抗原(L)の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBV表面抗原と、(iii)完全長HBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むHBVコア抗原とで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物を含む。この実施形態の1つの態様では、免疫療法組成物は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、(i)完全長HBV Xの抗原の52〜126位と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するHBV X抗原と、(ii)完全長HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するHBV表面抗原と、(iii)完全長HBVコアタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するHBVコア抗原とで構成されている融合タンパク質、を含む。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の1〜60位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の1〜60位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号109の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号107の630〜689位、配列番号100、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択される。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の63〜461位、配列番号118の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号34の9〜407位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号93の90〜488位、配列番号120の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の63〜461位、配列番号118の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号34の9〜407位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択される。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の462〜643位、配列番号118の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号34の408〜589位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号120の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号130の462〜643位、配列番号118の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号34の408〜589位、配列番号116の400〜581位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択される。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、融合タンパク質中においてN末端からC末端へ以下すなわち:HBV X抗原、HBV表面抗原、HBVコア抗原、の順序に配置構成されている。本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、融合タンパク質中においてN末端からC末端へ以下すなわち:HBV表面抗原、HBVコア抗原、HBV X抗原、の順序に配置構成されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号130、配列番号122、または配列番号150から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を含む。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号130を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。
本発明の別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号150を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号122を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。1つの態様では、融合タンパク質は、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列すなわち:(1)配列番号37のアミノ酸配列、(2)スレオニン‐セリンの2アミノ酸リンカーペプチド、(3)配列番号122のアミノ酸配列、および(4)ヘキサヒスチジンペプチド、を備えた単一ポリペプチドである。
本発明の別の実施形態では、免疫療法組成物は、(a)酵母ビヒクル、および(b)融合タンパク質であって、(i)HBV大型表面抗原(L)の少なくとも1つの免疫原性ドメインと、(ii)HBVコアタンパク質またはHBV e抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインとで構成されているHBV抗原を含む融合タンパク質、を含んでいる。該組成物は、HBV特異的免疫応答、例えばHBV大型表面抗原(L)および/またはHBVコアタンパク質もしくはHBV e抗原に対する免疫応答を誘発する。
1つの実施形態では、本発明は、免疫療法組成物であって、(a)酵母ビヒクル、および(b)融合タンパク質であって、(i)完全長HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するHBV表面抗原と、(ii)完全長HBVコアタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するHBVコア抗原とで構成されているHBV抗原を含む融合タンパク質、を含む組成物を含む。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。この実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、完全長HBVコアタンパク質またはHBV e抗原の少なくとも95%を含むアミノ酸配列に融合された、完全長HBV大型表面抗原(L)の少なくとも95%を含むアミノ酸配列で構成されている。この実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%を含むアミノ酸配列のN末端に融合された、完全長HBV大型表面抗原(L)の少なくとも95%を含むアミノ酸配列で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸2〜400;およびHBVコアタンパク質とHBV e抗原の一部とを含むHBVプレコアタンパク質のアミノ酸31〜212で構成されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号118の1〜399位、配列番号34の9〜407位、配列番号116の1〜399位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号3もしくは配列番号3の2〜400位、配列番号7もしくは配列番号7の2〜400位、配列番号11もしくは配列番号11の2〜400位、配列番号15もしくは配列番号15の2〜389位、配列番号19もしくは配列番号19の2〜399位、配列番号23もしくは配列番号23の2〜400位、配列番号27もしくは配列番号27の2〜399位、配列番号31もしくは配列番号31の2〜400位、配列番号93の90〜488位、配列番号120の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号130の63〜461位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号118の1〜399位、配列番号34の9〜407位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択される。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号118の400〜581位、配列番号34の408〜589位、配列番号116の400〜581位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号118の400〜581位、配列番号34の408〜589位、配列番号116の400〜581位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択される。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、配列番号34のアミノ酸9〜589、または異なるHBV株由来の対応する配列で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、以下すなわち:配列番号118、配列番号116、配列番号34の9〜589位、配列番号112、配列番号114、または異なるHBV株の対応する配列から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、完全長またはほぼ完全長のHBV大型表面抗原(L)および完全長またはほぼ完全長のHBVコアタンパク質で構成されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質はいずれも、配列番号37の(融合タンパク質のN末端に付加された)N末端アミノ酸配列を含むことができる。別の態様では、融合タンパク質はいずれも、配列番号89または配列番号90から選択されたN末端アミノ酸配列を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は配列番号151のアミノ酸配列を含む。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号118を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。
本発明の別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号151を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)サッカロマイセス・セレビシエ由来の加熱不活性化された全酵母;および(b)該酵母によって発現される、配列番号34のアミノ酸配列を含むHBV融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質、を含む免疫療法組成物を含む。該HBV抗原は、(i)完全長のHBV大型(L)、中型(M)または小型(S)表面抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV表面抗原と;(ii)完全長HBVポリメラーゼまたはHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの、少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVポリメラーゼ抗原と;(iii)完全長HBVコアタンパク質または完全長HBV e抗原の、少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVコア抗原と;(iv)完全長HBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV X抗原と、で構成されている。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。この実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原は、HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の肝細胞受容体領域の少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBV小型表面抗原(S)の少なくとも1つの免疫原性ドメインを含む。
この実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の完全長肝細胞受容体の少なくとも95%、完全長HBV小型表面抗原(S)の少なくとも95%、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメインの少なくとも95%、完全長HBVコアタンパク質またはHBV e抗原の少なくとも95%、および完全長X抗原の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸120〜368のうち少なくとも95%を含むHBV大型表面抗原(L);HBVポリメラーゼのRTドメインのアミノ酸453〜680のうち少なくとも95%を含むHBVポリメラーゼのRTドメイン;HBVコアタンパク質のアミノ酸37〜188のうち少なくとも95%を含むHBVコアタンパク質;および、HBV X抗原のアミノ酸52〜127のうち少なくとも80%を含むHBV X抗原で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、Pre‐S1の肝細胞受容体ドメインを含むHBV大型表面抗原(L)のアミノ酸21〜47;HBV小型表面抗原(S)を含むHBV大型表面抗原(L)のアミノ酸176〜400;逆転写酵素ドメインを含むHBVポリメラーゼのアミノ酸247〜691;HBVコアタンパク質およびHBV e抗原の一部を含むHBVプレコアタンパク質のアミノ酸31〜212;ならびにHBV X抗原のアミノ酸2〜154、で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸120〜368と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、HBVポリメラーゼのRTドメインのアミノ酸453〜680と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、HBVコアタンパク質のアミノ酸37〜188と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、および、HBV X抗原のアミノ酸52〜127と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、で構成されている。1つの態様では、HBV抗原は、表5に示されかつ本明細書中で配列番号42〜88または配列番号135〜140で表わされた1つ以上のT細胞エピトープを組込むように改変されている。1つの態様では、HBV大型表面抗原(L)は、配列番号97のアミノ酸配列または配列番号97と95%同一である配列を含む。1つの態様では、HBVポリメラーゼのRTドメインは、配列番号98のアミノ酸配列または配列番号98と95%同一である配列を含む。1つの態様では、HBVコアタンパク質は、配列番号99のアミノ酸配列または配列番号99と95%同一である配列を含む。1つの態様では、HBV X抗原は、配列番号100のアミノ酸配列または配列番号100と95%同一である配列を含む。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、完全長HBV大型表面抗原(L)のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である。1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、以下すなわち:配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号34の9〜407位、配列番号93の90〜488位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、配列番号118の1〜399位、配列番号120の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号130の63〜461位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、配列番号97、配列番号107の1〜249位、配列番号108の1〜249位、配列番号109の1〜249位、配列番号110の1〜249位、配列番号11の21〜47位、配列番号11の176〜400位、配列番号36の6〜257位、配列番号41の6〜257位、配列番号92の92〜343位、配列番号101の90〜338位、配列番号102の7〜254位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原は、HBVポリメラーゼのRTドメインの少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている。1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸配列は、配列番号98、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号38の7〜351位、配列番号40の7〜351位、配列番号41の260〜604位、配列番号92の346〜690位、配列番号94の90〜434位、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号120の582〜809位、配列番号128の1〜228位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、完全長HBVコアタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である。1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、配列番号34の408〜589位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号99、配列番号9の37〜188位、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、または異なるHBV株由来の対応する配列から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBV X抗原は、完全長HBV X抗原と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列で構成されている。1つの態様では、HBV X抗原は、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号36の787〜939位、配列番号39の7〜159位、配列番号92の873〜1025位、配列番号96の90〜242位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
1つの態様では、HBV X抗原は、完全長HBV X抗原の52〜126位と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列で構成されている。1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、配列番号100、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号122の582〜641位、配列番号130の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
この実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、配列番号36の6〜939位、配列番号92の92〜1025位、配列番号101の90〜778位、配列番号102の7〜694位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
この実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号124、配列番号126、配列番号132または配列番号134、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を含む。
いずれの融合タンパク質も、1つの態様では、配列番号37、配列番号89、または配列番号90から選択されたN末端配列を含むことができる。
この実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号36、配列番号92、配列番号101、または配列番号102、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を含む。
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、ならびに(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、(i)HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の肝細胞受容体領域の少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBV小型表面抗原(S)の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV表面抗原と、(ii)HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメインの少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVポリメラーゼ抗原と、(iii)HBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVコア抗原とで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。1つの態様では、該HBV抗原は、HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の完全長肝細胞受容体の少なくとも95%と、完全長HBV小型表面抗原の少なくとも95%と、HBVポリメラーゼの完全長逆転写酵素ドメインの少なくとも95%と、完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%とで構成されている。1つの態様では、該HBV抗原は、完全長HBV大型表面抗原(L)の少なくとも95%と、HBVポリメラーゼの完全長逆転写酵素ドメインの少なくとも95%と、完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%とで構成されている。
この実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、配列番号120の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、配列番号118の1〜399位、配列番号41の6〜257位、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号11の21〜47位、配列番号11の176〜400位、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号34の9〜407位、配列番号36の6〜257位、配列番号92の92〜343位、配列番号93の90〜488位、配列番号97、配列番号101の90〜338位、配列番号102の7〜254位、配列番号107の1〜249位、配列番号108の1〜249位、配列番号109の1〜249位、配列番号110の1〜249位、配列番号122の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号130の63〜461位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸配列は、配列番号120の582〜809位、配列番号128の1〜228位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号41の260〜604位、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号38の7〜351位、配列番号40の7〜351位、配列番号92の346〜690位、配列番号94の90〜434位、配列番号98、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号120の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号41の605〜786位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号120、配列番号128、配列番号41の6〜786位、もしくは配列番号41、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は(i)HBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVポリメラーゼ抗原と、(ii)HBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVコア抗原とで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、HBVポリメラーゼの完全長RTドメインと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列と、完全長HBVコアタンパク質と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列とで構成されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸配列は、配列番号38の7〜351位、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号40の7〜351位、配列番号41の260〜604位、配列番号92の346〜690位、配列番号94の90〜434位、配列番号98、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号120の582〜809位、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号128の1〜228位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号38の352〜533位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号38のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は(i)HBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV X抗原と、(ii)HBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVコア抗原とで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。この実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、完全長HBV X抗原と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列と、完全長HBVコアタンパク質と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列とで構成されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号39の160〜341位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、配列番号39の7〜159位、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号36の787〜939位、配列番号92の873〜1025位、配列番号96の90〜242位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号130の1〜60位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号39のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV大型表面抗原(L)の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV表面抗原を含む融合タンパク質、を含み、HBV特異的免疫応答を誘発する免疫療法組成物に関する。この実施形態の1つの態様では、HBV表面抗原は、完全長HBV大型表面抗原(L)の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、HBV表面抗原のアミノ酸配列は、配列番号93の90〜488位、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号11の21〜47位、配列番号11の176〜400位、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号34の9〜407位、配列番号36の6〜257位、配列番号41の6〜257位、配列番号92の92〜343位、配列番号93の90〜488位、配列番号97、配列番号101の90〜338位、配列番号102の7〜254位、配列番号107の1〜249位、配列番号108の1〜249位、配列番号109の1〜249位、配列番号110の1〜249位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、配列番号116の1〜399位、配列番号118の1〜399位、配列番号120の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号130の63〜461位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号93のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメインの少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVポリメラーゼ抗原を含む融合タンパク質、を含み、HBV特異的免疫応答を誘発する免疫療法組成物に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原は、HBVポリメラーゼの完全長逆転写酵素ドメインの少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、HBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸配列は、配列番号40の7〜351位、配列番号94の90〜434位、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号38の7〜351位、配列番号41の260〜604位、配列番号92の346〜690位、配列番号98、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号120の582〜809位、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号128の1〜228位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号40もしくは配列番号94のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBVコア抗原を含む融合タンパク質、を含み、HBV特異的免疫応答を誘発する免疫療法組成物に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様では、HBV抗原は、完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号95の90〜271位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、該タンパク質は、配列番号95のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)完全長HBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されているHBV X抗原を含む融合タンパク質、を含み、HBV特異的免疫応答を誘発する免疫療法組成物に関する。1つの態様では、HBV抗原は完全長HBV X抗原の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、配列番号96の90〜242位、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号36の787〜939位、配列番号39の7〜159位、配列番号92の873〜1025位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号130の1〜60位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、該タンパク質は、配列番号96のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明の別の実施形態は、上記または本明細書中他所に記載された免疫療法組成物のうち任意の2個、3個または4個、特に、単一のHBVタンパク質に関して上述された免疫療法組成物のうち任意の2個、3個または4個を含む免疫療法組成物に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、各々が異なるHBV遺伝子型に由来する2個、3個または4個のHBV表面抗原タンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、各々が異なるHBV遺伝子型に由来する2個、3個または4個のHBVポリメラーゼタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、各々が異なるHBV遺伝子型に由来する2個、3個または4個のHBV X抗原の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、各々が異なるHBV遺伝子型に由来する2個、3個または4個のHBVコアタンパク質の少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質は、完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質は、HBVコアタンパク質のアミノ酸31〜212で構成されている。1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Cを含み、また1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Dを含み、また1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Aを含み、また1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Bを含む。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質は、HBVコアタンパク質のアミノ酸37〜188で構成されている。1つの態様では、融合タンパク質は、遺伝子型A、遺伝子型B、遺伝子型Cおよび遺伝子型Dに由来する4つのHBVコアタンパク質を含む。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、任意の1つ以上のHBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号95の90〜271位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。1つの態様では、該HBV抗原は、配列番号105のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
本発明のさらに別の実施形態は、(a)酵母ビヒクル、および(b)少なくとも2個のHBVコアタンパク質と少なくとも2個のHBV X抗原とを含む融合タンパク質であって、各々のHBVコアタンパク質は異なるHBV遺伝子型に由来し、かつ各々のHBV X抗原は異なるHBV遺伝子型に由来する融合タンパク質、を含む免疫療法組成物に関する。該組成物はHBV特異的免疫応答を誘発する。1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Cを含み、1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Dを含み、1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Aを含み、1つの態様では、HBV遺伝子型は遺伝子型Bを含む。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質は完全長HBVコアタンパク質の少なくとも95%で構成されている。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質はHBVコアタンパク質のアミノ酸31〜212を含む。1つの態様では、各々のHBVコアタンパク質はHBVコアタンパク質のアミノ酸37〜188を含む。1つの態様では、各々のHBV X抗原は完全長HBV X抗原の少なくとも95%を含む。1つの態様では、各々のHBV X抗原はHBV X抗原のアミノ酸52〜127を含む。
1つの態様では、HBVコア抗原のアミノ酸配列は、配列番号95の90〜271位、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
1つの態様では、HBV X抗原のアミノ酸配列は、配列番号96の90〜242位、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号36の787〜939位、配列番号39の7〜159位、配列番号92の873〜1025位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号130の1〜60位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一である。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号106のアミノ酸配列、または異なるHBV株由来の対応する配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を有する。
融合タンパク質、HBV抗原、またはそのような融合タンパク質もしくはHBV抗原を含む免疫療法組成物に関して、本明細書中に、例えば上記および下記に記載された実施形態のうちいずれにおいても、1つのさらなる実施形態では、融合タンパク質は、付加配列を加えるために該融合タンパク質のN末端において付加がなされてもよい。1つの態様では、該N末端配列は、配列番号37と95%同一であるアミノ酸配列、配列番号89と95%同一であるアミノ酸配列、または配列番号90と95%同一であるアミノ酸配列から選択される。1つの態様では、N末端配列は、配列番号37、配列番号37の1〜5位、配列番号89、もしくは配列番号90、または異なるHBV株由来の対応する配列から選択される。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の実施形態のうちいずれかの1つの態様では、融合タンパク質は酵母ビヒクルによって発現される。上記または本明細書中の他所に記載された本発明の実施形態のうちいずれかの別の態様では、酵母ビヒクルは全酵母である。全酵母は、1つの態様では、殺処理される。1つの態様では、全酵母は加熱不活性化される。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の実施形態のうちいずれかの1つの態様では、酵母ビヒクルは、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)およびヤロウィア属(Yarrowia)から選択された属の酵母に由来するものであってよい。1つの態様では、酵母ビヒクルはサッカロマイセス属に由来する。1つの態様では、酵母ビヒクルはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の実施形態のうちいずれかの1つの態様では、組成物は対象者(被験者)または患者に投与するために製剤化される。1つの態様では、組成物は、対象者または患者への注射により(例えば、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射のような非経口的経路により)投与するために製剤化される。1つの態様では、組成物は、ヒトへの投与に適した薬学的に許容可能な賦形剤中で製剤化される。1つの態様では、組成物は90%を越える酵母タンパク質を含有する。1つの態様では、組成物は90%を越える酵母タンパク質を含有し、かつ患者に投与するために製剤化される。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の実施形態のうちいずれかの1つの態様では、融合タンパク質は酵母内で凝集していない。1つの態様では、融合タンパク質は酵母内で封入体を形成しない。1つの態様では、融合タンパク質は酵母内でVLPまたはその他の大型抗原粒子を形成しない。1つの態様では、融合タンパク質は酵母内でVLPまたはその他の大型抗原粒子を形成する。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の任意の実施形態の1つの態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Aに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Bに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Cに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Dに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Eに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Fに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Gに由来する。別の態様では、HBV配列はHBV遺伝子型Hに由来する。1つの態様では、HBV配列は、上記のHBV遺伝子型のうち任意のものの組み合わせ、または任意の既知のHBV遺伝子型もしくは遺伝子亜型のうち任意のものの組み合わせに由来する。
本発明の別の実施形態は、本発明の免疫療法組成物の一部として上記に、または本明細書中の他所に記載された融合タンパク質のうちいずれかに関する。この実施形態の1つの態様では、融合タンパク質はHBV抗原を含み、該HBV抗原は、限定するものではないが、(a)HBV大型表面抗原(L)、HBVコアタンパク質およびHBV X抗原で構成されているHBV抗原、(b)HBV大型表面抗原(L)およびHBVコアタンパク質で構成されているHBV抗原、(c)HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の肝細胞受容体、HBV小型表面抗原(S)、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン、HBVコアタンパク質またはHBV e抗原、およびHBV X抗原で構成されているHBV抗原、(d)HBV大型表面抗原(L)、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン、HBVコアタンパク質またはHBV e抗原、およびHBV X抗原で構成されているHBV抗原、(e)HBV大型表面抗原(L)、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン、およびHBVコアタンパク質で構成されているHBV抗原、(f)HBVポリメラーゼ(RTドメイン)およびHBVコアタンパク質で構成されているHBV抗原、(g)HBV X抗原およびHBVコアタンパク質で構成されているHBV抗原、(h)HBV大型表面抗原(L)のPre‐S1の肝細胞受容体、HBV小型表面抗原(S)、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン、およびHBVコアタンパク質またはHBV e抗原で構成されているHBV抗原、(i)HBV大型表面抗原(L)で構成されているHBV抗原、(j)HBVコア抗原で構成されているHBV抗原、(k)逆転写酵素ドメインを含むHBVポリメラーゼで構成されているHBV抗原、(l)HBV X抗原で構成されているHBV抗原、(m)2〜4個のHBV表面抗原、HBVポリメラーゼ抗原、HBVコア抗原、またはHBV X抗原で構成されているHBV抗原であって、2〜4個のHBV抗原はそれぞれ異なるHBV遺伝子型に由来する、HBV抗原、ならびに(n)2個のHBVコア抗原および2個のHBV X抗原で構成されているHBV抗原であって、2個のHBVコア抗原の各々および2個のHBV X抗原の各々は異なるHBV遺伝子型に由来する、HBV抗原、から選択される。これらの抗原において有用な様々な配列などの、HBV抗原の各々に関する本発明の態様は、上記に記載されている。
本発明のこの実施形態の1つの態様では、融合タンパク質は、配列番号130、配列番号150、配列番号118、配列番号151、配列番号34、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号132、配列番号134、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号36、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、および配列番号110、から選択されたアミノ酸配列と、少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または同一であるアミノ酸配列を含む。
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載された融合タンパク質のうちいずれかをコードする組換え核酸分子に関する。1つの態様では、該組換え核酸分子は、限定するものではないが、配列番号33、配列番号35、配列番号91、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、または配列番号133から選択された核酸配列を含む。
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中に記載された組換え核酸分子のうちいずれかを用いてトランスフェクトされた単離細胞に関する。1つの態様では、該細胞は酵母細胞である。
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載された融合タンパク質のうちいずれかを含む組成物に関する。本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中に記載された組換え核酸分子のうちいずれかを含む組成物に関する。本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載された単離細胞のうちいずれかを含む組成物に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、対象者においてB型肝炎ウイルス(HBV)感染またはHBV感染に起因する少なくとも1つの症状を治療する方法であって、HBVに感染している対象者に、本明細書中に記載された、任意の免疫療法組成物のうちの少なくとも1つ、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物、を投与することを含む方法に関する。対象者への組成物の投与により、対象者におけるHBV感染またはHBV感染に起因する少なくとも1つの症状が軽減される。
本発明のさらに別の実施形態は、HBV抗原に対する抗原特異的細胞性免疫応答を誘発する方法であって、対象者に、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物、を投与することを含む方法に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、対象者においてHBV感染を予防する方法であって、HBVに感染したことのない対象者に、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物、を投与することを含む方法に関する。
本発明の別の実施形態は、個体集団をHBVに対して免疫する方法であって、該個体集団に、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物、を投与することを含む方法に関する。
本発明の別の実施形態は、HBV感染またはHBV感染の症状の治療のために使用するための、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物に関する。
本発明の別の実施形態は、HBV感染またはHBV感染の症状の予防のために使用するための、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、HBV感染またはHBV感染の症状を治療するための医薬の調製における、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物の使用に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、HBV感染またはHBV感染の症状を予防するための医薬の調製における、本明細書中に記載された、任意の1つ以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物の使用に関する。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の方法または使用に関する実施形態のうちいずれかの1つの態様では、該方法は、本明細書中に記載された、少なくとも2個、3個または4個以上の組成物、例えば任意のHBV抗原、融合タンパク質、または酵母系免疫療法組成物の投与を含みうる。1つの態様では、HBV感染の予防または治療に有用な追加の組成物または化合物が投与されてもよい(例えば、抗ウイルス化合物、インターフェロン、その他の免疫療法組成物、またはこれらの組み合わせ)。1つの態様では、様々な組成物または化合物が個体に同時に投与される。1つの態様では、様々な組成物または化合物が個体に順次投与される。1つの態様では、様々な組成物はそれぞれ個体の異なる部位への注射によって投与される。1つの態様では、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物の1回量は合計40Y.U.〜合計80Y.U.であり、投与量ごとに個体の異なる2、3または4つの部位に等分して投与される。
上記または本明細書中の他所に記載された本発明の方法または使用に関する実施形態のうちいずれかの1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者においてセロコンバージョンが引き起こされるか、または対象者集団におけるセロコンバージョン率が改善する。1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者において血清HBsAgの低減もしくは血清HBsAgの消失がもたらされるか、または対象者集団における血清HBsAgの消失率が改善する。1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者において血清HBeAgの低減もしくは血清HBeAgの消失がもたらされるか、または対象者集団における血清HBeAgの消失率が改善する。1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者においてHBVウイルス負荷が低減されるか、または対象者集団におけるHBVウイルス負荷の低減率が改善する。1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者において感染細胞中のHBV DNAが検出不能となるか、または対象者集団におけるHBV DNA陰性の割合が高まる。1つの態様では、対象者への組成物の投与により、該対象者において肝損傷の低減もしくは肝機能の改善がもたらされるか、または対象者集団における肝損傷率の低減もしくは肝機能改善率の上昇がもたらされる。1つの態様では、対象者への組成物の投与は、対象者または対象者集団におけるALTの正常化を高める。
本明細書中に記載された、HBV抗原、融合タンパク質、免疫療法組成物、または、HBV抗原、融合タンパク質もしくは免疫療法組成物の任意の使用方法に関する実施形態のうちいずれかにおいて、1つの態様では、該組成物は、少なくとも1つの生体応答調整物質をさらに含むか、または該生体応答調整物質と併用される。1つの態様では、組成物は、HBV感染の症状を治療または改善するのに有用な1つ以上の追加の化合物をさらに含むか、または該化合物と併用される。1つの態様では、組成物は、少なくとも1つの抗ウイルス化合物をさらに含むか、または該抗ウイルス化合物と併用される。1つの態様では、該抗ウイルス薬はヌクレオチドアナログ系逆転写酵素阻害薬である。抗ウイルス化合物には、限定するものではないが、テノフォビル、ラミブジン、アデフォビル、テルビブジン、エンテカビル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの態様では、抗ウイルス化合物はテノフォビルである。1つの態様では、抗ウイルス化合物はエンテカビルである。1つの態様では、組成物は、少なくとも1つのインターフェロンをさらに含むか、または該インターフェロンと併用される。1つの態様では、インターフェロンはインターフェロン‐αである。1つの態様では、インターフェロンはPEG化インターフェロン‐α2aである。1つの態様では、インターフェロンはインターフェロン‐λである。
発明の詳細な説明
本発明は、概して、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の予防および治療のうち少なくとも一方を行うための組成物および方法に関する。本発明は、酵母系免疫療法組成物(「酵母系HBV免疫療法」とも呼ばれる)であって、酵母ビヒクルと、個体においてHBV感染に対する予防的および/または治療的免疫応答を誘発するように設計されたHBV抗原とを含む組成物、ならびに、HBV感染およびHBV感染に関連する症状の予防および/または治療を行うためのそのような組成物の使用を含む。本発明はさらに、本発明の酵母系組成物において使用される組換え核酸分子、ならびに該核酸分子によってコードされるタンパク質および融合タンパク質であって、HBV感染のための任意の免疫療法組成物かつ/または任意の治療もしくは予防プロトコールにおいて、例えば、本発明のHBV特異的な酵母系組成物をHBV感染のための任意の1つ以上の他の治療用もしくは予防用の組成物、作用物質、薬物、化合物、およびプロトコールのうち少なくともいずれかと組み合わせる任意の治療もしくは予防プロトコールなどにおいて、使用するためのものも含んでいる。
酵母系HBV特異的な免疫療法組成物は、本発明のこれらの組成物が、先天性免疫応答のほかに、CD4依存的なTH17およびTH1型T細胞応答ならびに抗原特異的なCD8+T細胞応答を含むHBVを特異標的とする適応的免疫応答をも引き起こすという点において、様々な種類の免疫療法の中でも独特である。HBV特異的な酵母系免疫療法によって誘発される免疫応答の範囲は、HBVを標的とするのに十分適している。第1に、HBVは、先天性免疫に直接対抗するというよりは先天性の応答から「隠れる(hiding)」ことにより、従って該応答を引き起こさないことにより、感染初期に先天性免疫応答を回避すると考えられている(ヴィーラント(Wieland)およびチャイサリ(Chisari)、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2005年、第15巻、p.9369−9380;ヴィーラント(Wieland)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、2004年、第101巻、p.6669−6674)。従って先天性免疫応答が、別のメカニズム、すなわち本発明の酵母系免疫療法組成物によって活性化されれば、HBVは先天性免疫応答に感受性となるであろうことが期待できる。第2に、HBVは感染宿主細胞において適応的免疫応答に認識されると予想される高レベルの抗原発現をもたらし(ギドッティ(Guidotti)ら、サイエンス(Science)、1999年、第284巻、p.825−829;ジン(Thimme)ら、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2003年、第77巻、p.68−76)、かつ、急性感染の排除(クリアランス)は強健なCD4+およびCD8+T細胞応答に関連付けられてきた(マイニ(Maini)ら、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、1999年、第117巻、p.1386−1396;レヘルマン(Rehermann)ら、ザ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J. Exp. Med.)、1995年、第181巻、p.1047−1058;ジン、2003年、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、第77巻、p.68−76;ヴィーラント(Wieland)およびチャイサリ(Chisari)、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2005年、第15巻、p.9369−9380)。したがって、酵母系HBV免疫療法は、適応的免疫応答の活性化によって、HBV感染細胞を有効に破壊の標的とすると予想され、かつ/またはウイルス排除を有効に増強すると予想される。さらに、酵母系免疫療法によって生成される免疫応答は、インターフェロン非依存性およびインターフェロン依存性であると考えられ(タンブリーニ(Tamburini)ら、ジャーナル・オブ・イムノセラピー(J. Immunother.)、2012年、第35巻、第1号、p.14−22);従って、HBVについての標準的治療処置の1つであるインターフェロンを用いる治療法に個体が応答する能力、または該能力の欠如は、対象者が本発明の酵母系免疫療法に応答する能力に直接影響を及ぼすとは考えられない。加えて、本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物は、HBVの免疫原性でありかつ保存された領域である複数のCTLエピトープを標的とするように設計され、かつ、エスケープのための標的となりうるHBVの領域を含んで(そのようなエスケープ変異体を標的とするために必要な組成物の改変を可能にして)、このウイルスに対する有効な免疫応答の機会を最適化する、HBVに高度に適応しうる治療法となっている。
さらに、また理論に束縛されるものではないが、酵母系HBVの免疫療法は、酵母系免疫療法産物によって運ばれる標的抗原に対して特異的に向けられるだけでなく、ウイルス上の他の(すなわち酵母‐抗原組成物によって運ばれるもの以外の)免疫学的エピトープを対象としても生じる、免疫応答を引き起こすと考えられる。換言すれば、酵母系酵母系免疫療法薬に含まれる抗原およびエピトープのうち少なくとも一方に対する一次性の細胞性免疫応答は、治療を受けた対象者の感染細胞中に存在するが酵母系免疫療法薬中には存在しない抗原およびエピトープのうち少なくとも一方に対する二次性の細胞性免疫応答をもたらし、その結果として、治療を受けた各対象者に特有な、複雑かつ予測不能な免疫応答プロファイルを生じさせることができる。これらの二次性免疫応答は、治療を受けた各対象者におけるHBV感染の分子プロファイルに特異的であり、また酵母系免疫療法薬は、他の免疫療法手法を含む他の治療法と比較すると独特の方式で上記の下流効果を促進することができる。この現象は一般に「エピトープ拡大(epitope spreading)」とも呼ばれ、また酵母系HBV免疫療法を用いる利点に相当するが、その理由は、(例えば酵母免疫療法薬に関してはその抗原を提供することによる)特定のHBV抗原に対する、また更には特定のHBV遺伝子型に対する免疫応答の誘導が、様々なさらなるHBV抗原に対する免疫系の連鎖的な標的化をもたらし、このことが、酵母系免疫療法組成物中に表される抗原とは異なるHBV遺伝子型またはHBV株に由来する抗原に対する有効な免疫応答をもたらしうると予想されるからである。
上記に議論されるように、HBVの慢性感染に至る患者は、HBV特異的なT細胞を介した免疫がより弱く(または存在せず)、かつより限られている傾向がある。従って、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物は、慢性感染者を含むHBVに感染して発病した患者を治療するための治療用組成物の必要性に対処し、さらには永続的な記憶免疫応答の生成に関して有利となりうるHBV感染予防のための新たなワクチンを提供する。実際、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物は、感染を予防することができるだけでなく、慢性感染患者をウイルスの再活性化から保護することができるという長期にわたる利益を提供することが可能な、HBVに対する永続的な記憶T細胞応答を促進すると予想される。単独療法としての、またはHBV治療のための他の治療手法との併用(例えば抗ウイルス化合物との併用)における、酵母系HBV免疫療法組成物は、HBsAgおよびHBeAgの排除を達成する慢性感染患者、完全なセロコンバージョンを達成する慢性感染患者、ならびに治療完了後に少なくとも6か月間のウイルス排除の維持を達成する慢性感染患者、のうち少なくともいずれかの割合(%)を高めると予想される。
従って、酵母系HBV免疫療法は、個体におけるウイルス負荷を免疫系がより有効に処理することができるレベルに低減するために、抗ウイルス薬および/またはインターフェロン療法、ならびにHBVのための他の治療法と組み合わされてもよい。HBVウイルスの力価は典型的には非常に高く(1011個もの肝細胞が感染する場合がある)、よって有効なCTL応答を開始する個体の能力を圧倒する場合があり;従って、酵母系免疫療法を使用したHBV特異的CTL活性の誘導と併せて抗ウイルス薬を使用してウイルス負荷を低減することは、感染個体にとって有益であると予想される。加えて、抗ウイルス薬の使用によるウイルス負荷の低減は、多数の感染肝細胞が破壊の標的とされることを背景とした免疫活性化の負の効果があったとしても、この負の効果を低減することもできる。酵母系HBV免疫療法はまた、ウイルス感染が潜伏しているコンパートメントの縮小および排除のうち少なくとも一方を行う際に役割を果たすことも予想される。例えば、PCRによってHBV陽性であると示されており、かつHBV再活性化の逃げ場になりうると考えられる多くの組織がある。HBV DNAは宿主ゲノムにインテグレートすることが可能であって、このことはHBVの潜伏存続をもたらし、また、cccDNAはHBVゲノムのスーパーコイル状の休止形態であって該形態は潜伏にも寄与する。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法が、現行の抗ウイルス戦略で観察される無病治癒率の低さに恐らく寄与している上記種類のHBVの「逃げ場」をすべて排除するにあたって役割を果たすであろうと考えている。
別の計画では、本発明の酵母系HBV免疫療法薬の使用は、単独で、または抗ウイルス治療薬もしくはその他のHBV治療薬との併用において、HBsAgの完全な排除を達成するのには十分であるが抗HB産生を達成するのには十分でない場合に、完全なセロコンバージョンを達成するために既存の予防的サブユニットワクチンが後から用いられてもよいし、該ワクチンがさらに併用されてもよい。別例として、本明細書中に記載された融合タンパク質のうちいずれかが、完全なセロコンバージョンを達成するための、またはHBV感染から対象者を防御するための、サブユニットワクチンとして、単独で、または本発明の酵母系HBV免疫療法薬との併用で、使用されてもよい。最終的には、本発明の免疫療法組成物は、抗ウイルス薬を用いた治療によって誘発されるHBVのエスケープ変異を処理するための、改変および本明細書中に記載された任意のものを含む追加の免疫療法組成物との併用のうち少なくともいずれかによく適している。
酵母系免疫療法組成物は、生物製剤または薬学的に許容可能な組成物として投与される。従って、酵母を抗原産生システムとして使用した後に該酵母から抗原を精製するよりも、本明細書中に記載されるような酵母ビヒクル全体が、患者への投与に適しているはずであり、かつ患者へ投与するために製剤化されるべきである。対照的に、既存の市販のHBVワクチン剤および開発中の多くのHBVワクチン剤は、サッカロマイセス・セレビシエにおいて生産されるがその後破砕により酵母から放出されて該酵母から精製される組換えHBVタンパク質(例えばHBsAgタンパク質)を含み、その結果として、アジュバント(例えばアルミニウムヒドロキシホスファート硫酸塩または水酸化アルミニウム)と組み合わされた最終的なワクチンは、検出可能な酵母DNAを含有せず、またわずか1〜5%の酵母タンパク質しか含有しない。他方、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物は、容易に検出可能な酵母DNAを含有し、かつ十分5%を超える酵母タンパク質を含有しており;概して、本発明の酵母系免疫療法薬は、70%超、80%超、または概ね90%を超える酵母タンパク質を含有する。
酵母系免疫療法組成物は、治療および予防のうち少なくとも一方の目的で患者を免疫するために、該患者に投与される。本発明の1つの実施形態では、酵母系組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または製剤に含めて投与するために製剤化される。該組成物は、1つの態様では、ヒト被験者への投与に適切であるように製剤化されるべきである(例えば、製造条件はヒトで使用するのに適しているべきであり、かつ、組成物の仕上げおよび投与のための適用量の免疫療法薬の調製のうち少なくともいずれかに使用されるいかなる賦形剤または製剤もヒトでの使用に適しているべきである)。本発明の1つの態様では、酵母系免疫療法組成物は、患者または対象者の注射による、例えば非経口経路による(例えば、皮下、腹腔内、筋肉内もしくは皮内注射、または別の適切な非経口経路による)投与のために製剤化される。
1つの実施形態では、酵母は抗原(例えば、ウエスタンブロットによって検出可能なもの)を発現し、かつ、該抗原は酵母内で凝集せず、該抗原は酵母内で封入体を形成せず、および/または酵母内で極めて大型の粒子(VLP)もしくは他の大型の抗原粒子を形成しない。1つの実施形態では、抗原は酵母内で可溶性タンパク質として生産され、かつ/または、酵母から分泌されないか、酵母からほとんどもしくはあまり分泌されない。別の実施形態では、理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、本明細書中に詳細に記載される表面抗原およびコア抗原などのHBV融合タンパク質中の抗原の特定の組み合わせ、および恐らくは配置構成は、該抗原を発現している酵母内でVLPの形成またはある程度の凝集をなすことができると考えている。その結果、酵母によって発現される抗原は、該抗原の全体的な構造および形態と関係するようである免疫原性を、該抗原内に担持される免疫エピトープ(例えばT細胞エピトープ)の免疫原性とは別の特性として有する。そのような融合タンパク質を発現する酵母が本発明の酵母系HBV免疫療法薬の中に提供されると、該免疫療法組成物は、(本明細書中に記載された全ての酵母系免疫療法薬と同様に)上記に議論されるような酵母ビヒクルからだけでなく、部分的には融合タンパク質抗原構造物からも(例えば、酵母内で発現されるような表面‐コア融合タンパク質もアジュバント様の特性を有する)、先天性免疫システムを活性化する特性を引き出し;加えて、該免疫療法組成物は、本明細書中に記載された全ての酵母系免疫療法薬と同様に、融合タンパク質から(様々なT細胞エピトープの提供による)抗原特異的な方式で適応免疫システムを活性化する特性を引き出す。特性のこの特定の組み合わせは、本明細書中に記載されたHBV由来の特定の表面‐コア融合タンパク質を発現している酵母系免疫療法薬に特有のようである。しかしながら、本明細書中に記載された本発明の実施形態全てにおいて、酵母系免疫療法薬は、免疫システムの樹状細胞によって容易に貪食されるはずであり、かつ該酵母および抗原は、HBVに対する有効な免疫応答を誘発するために、そのような樹状細胞によって容易に処理されるはずである。
《本発明の組成物》
本発明の1つの実施形態は、HBV感染の予防および治療のうち少なくとも一方を行うために、かつ/またはHBV感染に起因する少なくとも1つの症状を緩和するために使用することができる、酵母系免疫療法組成物に関する。該組成物は、(a)酵母ビヒクル、ならびに(b)HBVタンパク質および該タンパク質の免疫原性ドメインのうち少なくとも一方を含む1つ以上の抗原、を含む。酵母ビヒクルとの併用において、HBVタンパク質は、最も典型的には酵母ビヒクルによって(例えば、酵母完全体または酵母スフェロプラスト(任意選択でさらに処理されて酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、または酵母膜抽出物もしくはそのフラクションとされてもよい)によって)組換えタンパク質として発現されるが、1つ以上のそのようなHBVタンパク質が、本発明の組成物を形成するために、酵母ビヒクル内に入れられること、または他の方法で酵母ビヒクルと複合体形成、付着、混合されるか、もしくは酵母ビヒクルとともに投与されることは、本発明の実施形態である。本発明によれば、本発明の酵母ビヒクルに関して「異種(の)」タンパク質または「異種(の)」抗原、例えば異種の融合タンパク質などを指す場合、該タンパク質または抗原は天然において酵母によって発現されるタンパク質や抗原ではないことを意味するが、異種抗原または異種タンパク質を含む融合タンパク質は、天然においても酵母によって発現される酵母の配列もしくはタンパク質またはその一部(例えば本明細書中に記載されるようなαファクタープレプロ配列)を含むこともできる。
本発明の1つの実施形態は様々なHBV融合タンパク質に関する。1つの態様では、そのようなHBV融合タンパク質は本発明の酵母系免疫療法組成物において有用である。そのような融合タンパク質、およびそのようなタンパク質をコードする組換え核酸分子のうち少なくとも一方は、酵母を用いない免疫療法組成物において、該組成物と組み合わせて、または該組成物を生産するために使用される可能性もあり、該組成物には、限定するものではないが、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、組換えウイルスを用いる免疫療法組成物、殺処理もしくは不活化処理された病原体ワクチン、および樹状細胞ワクチンのうち少なくともいずれかが挙げられる。別の実施形態では、そのような融合タンパク質は、HBVの診断アッセイにおいて、かつ/または、HBVに対する抗体を生成するために、使用されうる。本明細書中に記載されるのは、HBV抗原の選択された部分、例えば、ポリメラーゼの選択部分および/または改変されたポリメラーゼ;表面抗原の選択部分および/または改変された表面抗原;コアの選択部分および/または改変されたコア(e抗原の少なくとも一部もしくは大部分を含む);X抗原の選択部分および/または改変されたX抗原;ならびに、該抗原(表面抗原、コア、Xおよびポリメラーゼ)のうち任意の1、2、3または4個全ての選択された部分および/または配置構成物、例えば、限定するものではないが、表面抗原およびコア(e抗原の少なくとも一部もしくは大部分を含む)の選択部分および/または配置構成物;表面抗原、コア(e抗原の少なくとも一部もしくは大部分を含む)、ポリメラーゼおよびX抗原の選択部分および/または配置構成物;表面抗原、コア(e抗原の少なくとも一部もしくは大部分を含む)、およびポリメラーゼの選択部分および/または配置構成物;ならびに表面抗原、コア(e抗原の少なくとも一部もしくは大部分を含む)、およびX抗原の選択部分および/または配置構成物、を提供する典型的なHBV融合タンパク質である。
1つの実施形態では、本明細書中に記載されるようなHBV抗原、例えば完全長タンパク質の免疫原性ドメインは、HBVに感染した宿主細胞中で過剰発現されるが非感染宿主細胞においては過剰発現されない宿主タンパク質に融合される。1つの実施形態では、本明細書中に記載されるようなHBV抗原、例えば完全長タンパク質の免疫原性ドメインは、タンパク質R2(HBV複製に必要な宿主因子)に融合され、該タンパク質は1つの実施形態では肝細胞中で発現される。R2はリボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)のタンパク質成分であり、HBVの生活環に不可欠である(例えばコーエン(Cohen)ら、ヘパトロジー(Hepatol.)、2010年、第51巻、第5号、p.1538−1546を参照)。本発明の他の実施形態は、本明細書中に提供される開示内容に照らせば明白となろう。
[B型肝炎ウイルス、遺伝子、およびタンパク質] B型肝炎ウイルス(HBV)はウイルスのヘパドナウイルス科(ヘパドナウイルス)に属し、ヒトおよび類人猿において肝臓の一時的および慢性的感染症を引き起こす。哺乳動物に感染するヘパドナウイルスは類似のDNA塩基配列およびゲノム構造を有し、オルソヘパドナウイルス属に分類される。B型肝炎ウイルス粒子は、脂質およびHBsAgとして知られる表面抗原粒子を含有する外側エンベロープを有する。コアタンパク質(HBcAg)を含有するヌクレオカプシドコアは、ウイルスDNAおよび逆転写酵素活性を備えたDNAポリメラーゼを取り囲んでいる。シーガー(Seeger)およびメーソン(Mason)、マイクロバイオロジー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・レビュー(Microbiol. Mol. Biol. Rev.)、2000年、第64巻、第1号、p.51−68において総括されるように、HBVは3.2kbの部分的に二本鎖の弛緩型環状DNA(rcDNA)ゲノムを有し、該ウイルスゲノムは感染肝細胞の核に送達されると共有結合閉環状二本鎖DNA(cccDNA)分子に変換される。宿主細胞のRNAポリメラーゼIIはcccDNAテンプレートから4個のウイルスRNAを転写し、該RNAは宿主細胞の細胞質に輸送される。該ウイルスRNAはmRNAを含み、該mRNAは転写されてウイルスのコアおよびエンベロープの構造タンパク質、ならびにプレコア、ポリメラーゼおよびXの非構造ウイルスタンパク質を生産する。翻訳されてコアおよびポリメラーゼを生産するRNAは、さらに逆転写の鋳型であるプレゲノムRNA(pgRNA)としての役割も果たす。pgRNAおよびポリメラーゼはコアタンパク質によって包み込まれてウイルスのヌクレオカプシドを生じ、ここでpgRNAは逆転写されてrcDNAとなる。その後、これらのrcDNAを含有するヌクレオカプシドはエンベロープタンパク質によって取り囲まれ、成熟ウイルス粒子として宿主細胞から分泌されるかまたはウイルスcccDNAを増幅するために核との間を往復する。
HBVゲノムによって産生される構造タンパク質および非構造タンパク質は表1に示されている。部分的に二重鎖構造のHBVゲノムは、C、X、PおよびSとして知られる4個の遺伝子を包含している(図1も参照のこと)。
遺伝子Cは、2つの密接に関連する抗原すなわち:ウイルスのカプシドを形成する「コアタンパク質」または「コア抗原」(HBcAg)と呼ばれる21kDaのタンパク質、および、ダイマーを形成するがアセンブリしてカプシドとなることはないe抗原(HBeAg)と呼ばれる17kDaタンパク質、をコードする。完全長コアタンパク質はおよそ183アミノ酸のタンパク質であって、e抗原のN末端10アミノ酸以外を全て含み、かつC末端にe抗原の産生においてはタンパク質分解により切断されるおよそ34個の追加のアミノ酸を含む。換言すると、コアタンパク質およびe抗原は共通する149アミノ酸残基(この区域は肝炎コア抗原と呼ばれることもある)を有するが、N末端およびC末端領域は異なっている。プレコアタンパク質は、コアおよびe抗原の両方に由来する配列を含むアミノ酸配列を含む前駆体タンパク質であって、e抗原は該前駆体タンパク質からタンパク質分解によるプロセシングを介して生産される。細胞内のHBeAgはプレコア残基−29〜−1(この具体的説明における残基の番号付けは、プレコアタンパク質内のコアタンパク質の最初のアミノ酸残基を「1」位として表示して提供されている)を含み、これはアミノ酸−29〜−11が切断される場所である小胞体へと該タンパク質を方向付けるシグナル配列を含有し、アミノ酸149とアミノ酸150との間の別のタンパク質分解による切断はプレコアのC末端部分(完全長コアタンパク質中に存在する)を除去し、次いで残りのHBeAg(プレコアのアミノ酸−10〜−1およびHBcAgまたはコアのアミノ酸1〜149で構成される)はe抗原として分泌される(スタンディング(Standing)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、1988年、第85巻、p.8405−8409;オウ(Ou)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、1986年、第83巻、p.1578−1582;ブラス(Bruss)およびゲーリッヒ(Gerlich)、ヴィロロジー(Virology)、1988年、第163巻、p.268−275;タカハシ(Takahashi)ら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、1983年、第130巻、p.2903−2907)。プレコア領域全体で構成されるHBeAgもヒト血清中に見出されている(タカハシ(Takahashi)ら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、1992年、第147巻、p.3156−3160)。上述のように、HBcAg(コア)はアセンブリしてウイルスのカプシドとなるダイマーを形成し、ポリメラーゼおよびウイルスDNAまたはpgRNAを内包する。HBeAg(e抗原)の機能は未知であるが、HBVの複製または感染には必要とされず、免疫システムによる攻撃からHBVを防御する免疫抑制因子であると考えられている(ミリヒ(Milich)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、1990年、第87巻、p.6599−6603;チェ(Che)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS USA)、2004年、第101巻、p.14913−14918;ヴィーラント(Wieland)およびチャイサリ(Chisari)、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2005年、第79巻、9369−9380)。明確にするために、本明細書中に記載されるHBV配列(例えば表3を参照)においては、代表的なHBV遺伝子型に由来するプレコアの配列が提示されており、コアタンパク質およびe抗原の部位は、プレコアの最初のアミノ酸を1位と指定して、プレコア配列内に表示されている。
遺伝子Pは、スペーサーによって連結された2つの主要ドメインで構成されているHBV DNAポリメラーゼ(Pol)をコードする。該ポリメラーゼのN末端ドメイン(「末端タンパク質」またはTPとも呼ばれる)は、pgRNAのパッケージングおよび非センス鎖DNAの準備に関与する。C末端ドメインはRNaseH(RH)活性を有する逆転写酵素(RT)である。
遺伝子Sは多数の開始コドンを有し、かつS、MおよびLで表示される3個のエンベロープタンパク質(本明細書中では概して「表面タンパク質」または「表面抗原」とも呼ばれる)をコードするが、該タンパク質はいずれもデーン粒子としても知られる感染性ウイルス粒子の成分である。Sは、単独で、またMおよびLと一緒に、感染細胞から多量に分泌されうる表面抗原粒子(HBsAg)も形成する(シーガー(Seeger)およびメーソン(Mason)、マイクロバイオロジー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・レビュー(Microbiol. Mol. Biol. Rev.)、2000年、第64巻、第1号、p.51−68;ベック(Beck)、「B型肝炎ウイルスの複製(Hepatitis B virus replication)」、ワールド・ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー(World Journal of Gastroenterology : WJG)、2007年、第13巻、第1号、p.48−64)。MおよびLのコドンは、Sの開始コドン上流のおよそ165(M)および489(L)ヌクレオチドにそれぞれ位置している。Sまたは「小型」表面抗原は、表面抗原の中で最も小さくかつ最も豊富である。この抗原に対して産生される抗体は、感染者においてセロコンバージョンを表わす。Mまたは「中型」表面抗原は、Sと比較するとpre‐S2という余分なタンパク質ドメインを有し、またLまたは「大型」表面抗原に特有のタンパク質ドメインはpre‐S1として知られている(したがってLは、pre‐S2ならびにMおよびSに属するさらなる配列も含有する)。Pre‐S1はウイルスの肝細胞受容体ドメイン(肝細胞受容体結合部位)を含有し、該ドメインはおよそPre‐S1のアミノ酸21位と47位との間に位置する。pre‐S1の中のエピトープはウイルス中和抗体を誘発することができる。加えて、pre‐S1ドメインはウイルスエンベロープのアセンブリの際にコア粒子にリガンドを供給する。表面抗原粒子(HBsAg)は、高用量トレラゲンとして機能することにより感染細胞の免疫異物除去を抑制することもできる(レニャ(Reignat)ら、ザ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J. Exp. Med.)、2002年、第195巻、p.1089−1101;ウェブスター(Webster)ら、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2004年、第78巻、p.5707−5719)。
遺伝子XはX抗原(HBx)(「Xタンパク質」と呼ばれることもある)をコードし、X抗原は、転写のトランス活性化、DNA修復経路の調節、細胞質カルシウムレベルの上昇、タンパク質分解経路の変調、ならびに、HBV複製の刺激を増強する、宿主細胞における細胞周期進行および細胞増殖経路の変調(ギアハート(Gearhart)ら、ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(J Virol)、2010年)に関与する。HBxは肝臓がんの発症にも関係している(キム(Kim)ら、ネイチャー(Nature)、1991年、第351巻、p.317−320;テラディロス(Terradillos)ら、オンコジーン(Oncogene)、1997年、第14巻、p.395−404)。
HBVは、そのエンベロープタンパク質内の抗原エピトープに基づいて決定される4つの主な血清型(adr、adw、ayr、ayw)のうちの1つとして見出される。ゲノム内のヌクレオチド配列変異に基づいた8つの異なるHBV遺伝子型(A〜H)が存在する。遺伝子型の地理的分布は表2に示されている(クランビス(Kramvis)ら、ワクチン(Vaccine)、2005年、第23巻、第19号、p.2409−2423;マグニウス(Magnius)およびノーダー(Norder)、インターヴィロロジー(Intervirology)、1995年、第38巻、第1−2号、p.24−34;サカモト(Sakamoto)ら、2006年、ジャーナル・オブ・ジェネラル・ヴィロロジー(J. Gen. Virol.)、第87巻、p.1873−1882;リム(Lim)ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・メディカル・サイエンス(Int. J. Med. Sci.)、2006年、第3、p.14−20)。
HBV遺伝子および該遺伝子によってコードされるタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列は、既知の遺伝子型それぞれについて当分野において既知である。表3は、HBVの8つの既知遺伝子型それぞれにおけるHBVの構造タンパク質および非構造タンパク質全ての典型的な(代表的な)アミノ酸配列の配列識別子を提示し、さらに一定の構造ドメインの部位を示している。同じHBV遺伝子型由来の同じタンパク質またはドメインについて、異なるウイルス単離物間のアミノ酸配列にわずかな変異が生じうることが知られている。しかしながら、上記に議論されるように、HBVの株および血清型ならびにHBVの遺伝子型は、血清型と遺伝子型との間でさえ高いアミノ酸同一性を示している(例えば表4を参照)。したがって、本明細書中に提示された手引きを使用しかつ典型的なHBV配列を参照すれば、当業者は、本発明の組成物および方法において使用するための、HBVに基づいた様々なタンパク質、例えば任意のHBV株(単離物)、血清型、または遺伝子型に由来する融合タンパク質を容易に生産することが可能であろうし、またそれゆえに、本発明は本明細書中に開示された具体的な配列に限定されるものではない。本開示中のいかなる場所におけるHBVタンパク質もしくはHBV抗原、または該タンパク質もしくは抗原の任意の機能的、構造的、もしくは免疫原性ドメインへの言及も、本開示において示された配列のうち1つ以上に由来する特定の配列に言及することにより、または異なるHBV単離物(株)に由来する同一、類似もしくは対応する配列に言及することにより、適宜なされることができる。
[B型肝炎ウイルスの抗原および構築物] 本発明の1つの実施形態は、新規なHBV抗原および融合タンパク質、ならびにこれらの抗原およびタンパク質をコードする組換え核酸分子に関する。本明細書中に記載されるのは、酵母系免疫療法組成物または他の組成物(例えば他の免疫療法組成物または診断用組成物)において使用されるいくつかの異なる新規なHBV抗原であって、同一の融合タンパク質内にすべて含められかつ同一の組換え核酸構築物(組換え核酸分子)によってコードされる、1つ以上のタンパク質に由来する1または複数(2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上)の抗原および免疫原性ドメインのうち少なくともいずれかを提供するHBV抗原である。本発明の組成物において使用される抗原は、動物を(予防的または治療的に)免疫するための少なくとも1つのHBVタンパク質または該タンパク質の免疫原性ドメインを含む。該組成物は、1個、2個、3個、4個、少数個、数個もしくは複数個のHBV抗原、例えば、1個、2個、3個もしくは4個以上のHBVタンパク質の、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上の免疫原性ドメインを含みうる。いくつかの実施形態では、抗原は融合タンパク質である。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は2以上のタンパク質を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、1以上のタンパク質の2以上の免疫原性ドメインおよび2以上のエピトープのうち少なくともいずれかを含むことができる。そのような抗原を含有する免疫療法組成物は、広く様々な患者において抗原特異的な免疫をもたらす可能性がある。例えば、本発明に包含される抗原または融合タンパク質には、以下すなわち:HBV表面タンパク質(表面抗原またはエンベロープタンパク質またはHBsAgとも呼ばれる)、例えば大型(L)、中型(M)および/または小型(S)の形態の表面タンパク質、ならびに該表面タンパク質のPre‐S1および/またはPre‐S2ドメイン、のうち少なくともいずれか;HBVプレコアタンパク質;HBVコアタンパク質(コア抗原またはHBcAgとも呼ばれる);HBV e抗原(HBeAgとも呼ばれる);HBVポリメラーゼ(例えば、該ポリメラーゼのRTドメインおよびTPドメインと呼ばれるドメインのうち一方または両方);HBV X抗原(X、X抗原、またはHBxとも呼ばれる);ならびに、上記のHBVタンパク質のうちいずれか1以上の任意の1以上の免疫原性ドメイン、のうち少なくともいずれかから選択された任意の1つ以上のHBVタンパク質の少なくとも一部、または完全長の該HBVタンパク質が含まれうる。1つの実施形態では、本発明の免疫療法組成物に有用な抗原は単一のHBVタンパク質に由来する(完全長、ほぼ完全長の該タンパク質、または該タンパク質の一部分であって完全長タンパク質の少なくとも1個、2個、3個、4個またはそれ以上の免疫原性ドメインを含むもの)。本発明の1つの実施形態では、免疫療法組成物は、1個、2個、3個、4個、5個またはそれ以上の個別の酵母ビヒクルであって各々が異なるHBV抗原を発現または含有している酵母ビヒクルを含む。
本発明に有用なHBV抗原の組み合わせには、限定されるものではないが、(融合タンパク質内での順序は任意として)
(1)表面タンパク質(L、MおよびSのうち少なくともいずれか1つ、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせであって、例えば、限定されるものではないがPre‐S1およびPre‐S2のうち少なくとも一方、ならびに/またはPre‐S1の肝細胞受容体ドメイン)と、(a)プレコア/コア/e(プレコア、コア、e抗原、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ);(b)ポリメラーゼ(完全長、RTドメイン、TPドメインならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ);ならびに、(c)X抗原(またはその機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)、のうちいずれか1つ以上との組み合わせ、
(2)プレコア/コア/e(プレコア、コア、e抗原、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)と、(a)表面タンパク質(L、MおよびSのうち少なくともいずれか1つ、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせであって、例えば、限定されるものではないがPre‐S1およびPre‐S2のうち少なくとも一方、ならびに/またはPre‐S1の肝細胞受容体ドメイン);(b)ポリメラーゼ(完全長、RTドメイン、TPドメインならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ);ならびに、(c)X抗原(またはその機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)、のうちいずれか1つ以上との組み合わせ、
(3)ポリメラーゼ(完全長、RTドメイン、TPドメインならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)と、(a)表面タンパク質(L、MおよびSのうち少なくともいずれか1つ、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせであって、例えば、限定されるものではないがPre‐S1およびPre‐S2のうち少なくとも一方、ならびに/またはPre‐S1の肝細胞受容体ドメイン);(b)プレコア/コア/e(プレコア、コア、e抗原、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ);ならびに、(c)X抗原(またはその機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)、のうちいずれか1つ以上との組み合わせ、または、
(4)X抗原(またはその機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)と、(a)表面タンパク質(L、MおよびSのうち少なくともいずれか1つ、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせであって、例えば、限定されるものではないがPre‐S1およびPre‐S2のうち少なくとも一方、ならびに/またはPre‐S1の肝細胞受容体ドメイン);(b)ポリメラーゼ(完全長、RTドメイン、TPドメインならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ);ならびに、(c)プレコア/コア/e(プレコア、コア、e抗原、ならびに/または、それらの機能ドメインおよび/もしくは免疫学的ドメインのうち任意の1つもしくは組み合わせ)、のうちいずれか1つ以上との組み合わせ、
が挙げられる。
本発明の1つの実施形態としての組換え核酸分子および該核酸分子によってコードされるタンパク質、例えば融合タンパク質は、酵母系免疫療法組成物において、またはHBV抗原に関する任意の他の適切な目的のために、例えば、in vitroアッセイにおいて、抗体の産生のために、もしくは、本明細書中に記載された酵母系免疫療法を基礎としない別の免疫療法組成物、例えば別のワクチンにおいて、使用されうる。酵母によるタンパク質の発現は1つの好ましい実施形態であるが、他の発現系が、酵母系免疫療法組成物以外の適用のためにタンパク質を生産するために使用されてもよい。
本発明によれば、本明細書中における用語「抗原」の一般的使用は:天然に存在するかまたは合成により得られるタンパク質の任意の部分(ペプチド、部分的タンパク質、完全長タンパク質)、細胞構成成分(細胞全体、細胞溶解物もしくは破壊された細胞)、生物体(生物体全体、溶解物もしくは破壊された細胞)、または炭水化物、もしくはその他の分子、もしくはそれらの一部を指す。抗原は、免疫システムの構成要素(例えばT細胞、抗体)が出会う同一または類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答(例えば、体液性免疫応答および細胞性免疫応答のうち少なくとも一方)を誘発することができる。
抗原は、単一エピトープほどの大きさしかなくてもよいし、単一の免疫原性ドメインほどであっても、またはより大きくてもよく、複数のエピトープまたは免疫原性ドメインを含むことができる。そのため、抗原の大きさは約8〜12アミノ酸(すなわちペプチド)ほどの大きさしかなくてもよいし、完全長タンパク質、マルチマー、融合タンパク質、キメラタンパク質、細胞全体、微生物全体、またはこれらの任意の一部分(例えば細胞全体の溶解産物または微生物の抽出物)ほどの大きさがあってもよい。さらに、抗原は炭水化物を含んでもよく、該炭水化物は酵母ビヒクル内または本発明の組成物内に入れられてもよい。当然のことであるが、いくつかの実施形態においては(例えば抗原が組換え核酸分子から酵母ビヒクルによって発現される場合)、抗原は細胞全体または微生物全体ではなく、タンパク質、融合タンパク質、キメラタンパク質またはこれらのフラグメントである。
抗原が酵母内で発現されるようになっている場合、抗原は酵母内で組換え発現されうる最小サイズのものであり、典型的には少なくとも25アミノ酸長以上、もしくは少なくとも26アミノ酸長以上、少なくとも27アミノ酸長以上、少なくとも28アミノ酸長以上、少なくとも29アミノ酸長以上、少なくとも30アミノ酸長以上、少なくとも31アミノ酸長以上、少なくとも32アミノ酸長以上、少なくとも33アミノ酸長以上、少なくとも34アミノ酸長以上、少なくとも35アミノ酸長以上、少なくとも36アミノ酸長以上、少なくとも37アミノ酸長以上、少なくとも38アミノ酸長以上、少なくとも39アミノ酸長以上、少なくとも40アミノ酸長以上、少なくとも41アミノ酸長以上、少なくとも42アミノ酸長以上、少なくとも43アミノ酸長以上、少なくとも44アミノ酸長以上、少なくとも45アミノ酸長以上、少なくとも46アミノ酸長以上、少なくとも47アミノ酸長以上、少なくとも48アミノ酸長以上、少なくとも49アミノ酸長以上、少なくとも50アミノ酸長以上であるか、または少なくとも25〜50アミノ酸長、少なくとも30〜50アミノ酸長、または少なくとも35〜50アミノ酸長、または少なくとも40〜50アミノ酸長、または少なくとも45〜50アミノ酸長である。比較的小さなタンパク質が発現されてもよく、またかなり大きなタンパク質(例えば数百アミノ酸長または実に数千アミノ酸長)が発現される場合もある。1つの態様では、完全長タンパク質、またはその構造ドメインもしくは機能ドメイン、もしくはその免疫原性ドメインであって、そのN末端およびC末端のうち少なくともいずれか一方から1以上のアミノ酸が欠けているものが発現されてもよい(例えば、N末端およびC末端のうち少なくともいずれか一方から約1〜約20アミノ酸が欠けているもの)。さらに、融合タンパク質およびキメラタンパク質も本発明で発現されうる抗原である。「標的抗原」とは、本発明の免疫療法組成物によって特異的に標的化される抗原(すなわち免疫応答の誘発が望まれる対象の抗原)である。「HBV抗原」とは、その抗原を標的とすることがB型肝炎ウイルスを標的とすることでもあるような、1以上のHBVタンパク質に由来するか、該タンパク質から設計されるか、または該タンパク質から生産される抗原である。
免疫応答の刺激に言及する場合、用語「免疫原」は用語「抗原」のサブセットであり、したがって、場合によっては用語「抗原」と互換的に使用可能である。免疫原とは、本明細書中で使用されるように、体液性および細胞性のうち少なくとも一方の免疫応答を誘発する(すなわち免疫原性である)抗原を表し、個体への該免疫原の投与が、該個体の免疫システムが遭遇する同一または類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答を開始するようになっているものである。1つの実施形態では、免疫原は、CD4+T細胞応答(例えばTH1、TH2およびTH17のうち少なくともいずれか)および/またはCD8+T細胞応答(例えばCTL応答)などの細胞性免疫応答を誘発する。
所与の抗原の「免疫原性ドメイン」とは、動物に投与された時に免疫原として作用する少なくとも1つのエピトープを含有する、抗原の任意の部分、フラグメントまたはエピトープ(例えばペプチドフラグメントもしくはサブユニット、または抗体エピトープもしくはその他の立体構造依存的エピトープ)であってよい。したがって、免疫原性ドメインは単一アミノ酸より大きく、かつ少なくとも、免疫原として作用することができる少なくとも1つのエピトープを含有するのに十分な大きさである。例えば、単一タンパク質は複数の異なる免疫原性ドメインを含有することができる。免疫原性ドメインは、立体構造依存的なドメインが考えられる体液性免疫応答の場合など、タンパク質内において直線状の配列である必要はない。
所与のタンパク質の「機能ドメイン」とは、該タンパク質に関連するか、該タンパク質に帰するか、または該タンパク質によって行なわれる少なくとも1つの生物学的または化学的機能の直接または間接的原因である配列または構造を備えている、該タンパク質の一部または機能単位である。例えば、機能ドメインは、酵素活性の活性部位、リガンド結合部位、受容体結合部位、カルシウムのような分子もしくは構成部分の結合部位、リン酸化部位、またはトランス活性化ドメインを含むことができる。HBV機能ドメインの例には、限定するものではないが、pre‐S1内のウイルスの肝細胞受容体ドメイン、またはポリメラーゼの逆転写酵素ドメインもしくはRNaseHドメインが挙げられる。
所与のタンパク質の「構造ドメイン」とは、同定可能な構造(例えば、該構造はある種類またはファミリーのタンパク質群に属しかつそのタンパク質群内のいくつかのタンパク質を示している一次または三次構造であってよい)を有し、自己安定化し、かつ/または該タンパク質の残りの部分とは独立にフォールディングしうる、該タンパク質の一部もしくは該タンパク質の全体的構造の中の要素である。構造ドメインは、該ドメインが属するタンパク質の生物学的機能と関連することが多いか、または該機能において極めて重要な役割を果たす。
エピトープは、免疫システムに対して提示された時に適切な共刺激シグナルおよび該免疫システムの活性化細胞のうち少なくとも一方と関連して免疫応答を誘発するのに十分な、所与の抗原内の単一の免疫原性部位として、本明細書中において定義される。換言すれば、エピトープは、免疫システムの構成成分によって実際に認識される、抗原の一部分であり、抗原決定基と呼ばれる場合もある。当業者であれば、T細胞エピトープはB細胞または抗体エピトープとは大きさおよび組成において異なっていること、MHCクラスI経路を通じて提示されるエピトープはMHCクラスII経路を通じて提示されるエピトープとは大きさおよび構造的属性において異なっていることを認識するであろう。例えば、MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは典型的には長さ8〜11アミノ酸であるが、MHCクラスII分子によって示されるエピトープは長さの制約がより少なく、8アミノ酸から最大25アミノ酸以上となりうる。さらに、T細胞エピトープは該エピトープが結合する特定のMHC分子に応じて予測される構造特性を有する。多数の異なるT細胞エピトープが、様々なHBV株において、また多数のヒトHLA型について同定されており、そのうちのいくつかは表5に特定されている。さらに、ネズミ科動物のある種のMHCハプロタイプについてのエピトープが本願において新たに発見されており、同じく表5または実施例に示されている。エピトープは直線状配列のエピトープであってもよいし、立体構造依存的エピトープ(保存された結合領域)であってもよい。ほとんどの抗体は立体構造依存的エピトープを認識する。
本発明の典型的な1つの実施形態は、多重タンパク質HBV抗原であり、かつこの実施例では、以下に詳細に記載される、疎水性の膜貫通ドメインをすべて含むHBV大型(L)表面抗原とコア抗原(HBcAg)とからなる融合体である、HBV抗原を含む融合タンパク質に関する。表面抗原およびコアは感染細胞の中で豊富に発現され、ウイルスの複製に必要であり、複数のCD4+およびCD8+T細胞エピトープを含有している。さらに、これらの抗原、特に表面抗原は、抗ウイルス薬療法によって誘導される可能性のある既知の突然変異部位を含有し;したがってこれらの領域は、必要に応じて、「回避」突然変異を標的とするための追加の免疫療法組成物を提供するために、改変可能である。これらのタンパク質を、特に単一の免疫療法組成物において両方のタンパク質を、標的とすることのさらなる利点は、様々なHBV遺伝子型の間で、アミノ酸レベルで高度に保存されていることである。コアおよび表面(L)タンパク質はいずれも、例えば(表4を参照)、南北アメリカおよびアジアにおいて一般的な遺伝子型である(表2)HBV遺伝子型AおよびCの間、またはAおよびHの間で高度に保存されている。コアタンパク質は、遺伝子型AおよびC、ならびに遺伝子型AおよびHの間で95%のアミノ酸同一性を示す。大型(L)表面タンパク質も異なるHBV遺伝子型の間で高度に保存されている、すなわち;遺伝子型AおよびCの間に90%のアミノ酸同一性が存在し、遺伝子型AおよびHの間に82%のアミノ酸同一性が存在する。
したがって、1つのHBV遺伝子型を使用して設計された1つの免疫療法組成物は、保存されたエピトープを直接標的とすることにより、または遺伝子型の間で保存されたエピトープを初めに標的とする結果としてのエピトープ拡大により、極めて類似したHBV遺伝子型に対して有効な免疫応答を誘導すると予想できる。別例として、本発明の酵母系免疫療法組成物の製造は簡便であるので、該免疫療法の広い適用可能性を高めるために、異なる遺伝子型由来のタンパク質、ドメインもしくはエピトープをコードするために配列を改変すること、または、同じ構築物中に異なるT細胞エピトープもしくは2以上の異なるHBV遺伝子型由来のドメインおよびタンパク質のうち少なくともいずれかを全て含めることが簡単である。そのようなHBV抗原の例は、以下に詳細に説明かつ例証される。本発明のある免疫療法組成物は、単一産物中において2つのHBV抗原すなわち表面およびコアタンパク質を標的とするように設計されたが、この手法は、さらに広範囲の細胞性免疫応答をもたらすようにその他の重要な保存された免疫原性のHBVウイルスタンパク質のタンパク質配列を組込むように、容易に拡張されうる。そのような追加の融合タンパク質および免疫療法組成物は本明細書中に説明かつ例証される。
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法に使用されるHBV抗原は、例えば酵母系免疫療法組成物との関連において、臨床用製品としての有用性を最適化または増強するように設計されたHBV抗原から選択される。そのようなHBV抗原は、以下の目標すなわち:(1)組換え治療薬またはワクチンにおいては感染性因子のゲノムの3分の2(2/3)以下が使用可能である、という米国国立衛生研究所(NIH)の組換えDNA諮問委員会(RAC)のガイドラインの順守;(2)急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染のうち少なくとも一方に対する免疫応答に関連する既知のT細胞エピトープを(下記に議論されるように、1つの態様では急性/自己限定的エピトープレパートリーに基づいた優先順位を備えて)最大数含めること;(3)標的の遺伝子型の間で最も重要な配列の違いを対象に含めるために、HBVの遺伝子型および/もしくは遺伝子亜型の中で最も保存されているか、または容易にコンセンサス配列に改変されうるかもしくは2以上の形態に含まれうる、免疫原性ドメイン、特にT細胞エピトープ(CD4+および/またはCD8+エピトープ、ならびにドミナントおよび/またはサブドミナントエピトープ)を含めることを最大限または優先とすること;ならびに/または、(4)産物中のHBV抗原の配列内の不自然な接合部の数を最小限にすること、のうち1つ以上を達成する、酵母系HBV免疫療法産物を製造するために設計されている。
従って、本発明は、いくつかの実施形態において、上述の基準のうち1つ以上を満たすためだけでなく、本明細書中に別記された設計要素および抗原設計基準のうち少なくともいずれかを含めるために、所与の株におけるHBV抗原の天然に存在する配列すなわち野生型配列からの改変を含んでいる。そのような基準および抗原設計指針は、個々のHBVタンパク質またはドメインであるHBV抗原のほかに、HBVタンパク質またはドメインの組み合わせおよび特に多重タンパク抗原/融合タンパク質を含むHBV抗原(例えば、2以上の異なるHBVタンパク質および/または該タンパク質のドメインに由来するHBV抗原、例えばHBVの表面タンパク質、ポリメラーゼ、コア、e抗原、およびX抗原のうち少なくともいずれかに由来する抗原の組み合わせなど)を含む、酵母系免疫療法薬に適用可能である。当然のことであるが、HBV抗原の複雑さが増すにつれて、上記基準のうちより多くの利用が抗原の構築において実現される。
したがって、本発明の1つの実施形態では、酵母によって発現されるタンパク質または融合タンパク質として本発明に有用なHBV抗原は、HBVゲノムの3分の2(2/3)未満に相当するヌクレオチド配列によってコードされるHBV配列を含む(すなわち、該抗原は、全体でHBVゲノムの3分の2(2/3)未満を占めるかまたは組換え治療薬および予防薬に関するRACの要求事項を満たす核酸配列によってコードされる)。1つの態様では、この実施形態は、酵母系免疫療法薬において発現するために、完全長またはほぼ完全長の形態でRACの要求事項を満たすHBV抗原を選択することにより達成されうる(例えば、X抗原は小さく、単独で使用されるとRACの要求事項を満たすことになる)。別の態様では、この実施形態は、HBV抗原に含められるタンパク質および/またはドメインの構造を、例えば、タンパク質を短縮するための配列の削除もしくはタンパク質からの内部配列の除去によって、タンパク質の選択された機能ドメイン、構造ドメインもしくは免疫原性ドメインのみを含めることによって、または、要するに抗原構築物中における特定のタンパク質を含めないことを選択することによって、改変することにより達成される。さらに、酵母系HBV免疫療法薬は、1つの実施形態では、個々の抗原構築物として生産され、次いでウイルスゲノムに関係するいかなる制約にも反しない方式で併用されてもよい。
本発明の別の実施形態では、上記に議論されるように、例えば免疫療法薬中に含まれるHBV抗原が上記に議論されたRACの要求事項のような別の設計上の留意事項を満たすために改変済みである場合、HBV抗原構築物(タンパク質または融合タンパク質)中へのT細胞エピトープの包含は最大化される。この実施形態では、酵母系免疫療法薬に有用なHBV抗原は、免疫原性ドメインの数、および1つの態様ではHBV抗原中に保持されるT細胞エピトープの数を、最大化するという目標で改変される。1つの態様では、HBV抗原中のT細胞エピトープの包含は以下すなわち:
急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染の両方への免疫応答において同定されたエピトープ > 急性/自己限定的HBV感染への免疫応答において同定されたエピトープ > 慢性HBV感染への免疫応答において同定されたエピトープ、
のように優先順位が付けられる。この実施形態では、理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、急性または自己限定的HBV感染の個体の免疫応答が、慢性HBV感染の個体の免疫応答よりもウイルス感染の排除においてより有効である可能性があると考えている。したがって、これらの急性または自己限定的な感染においてウイルスの排除に関係しているように見えるT細胞エピトープ(ドミナントであれサブドミナントであれ)の包含は、免疫された個体において有益な免疫応答を誘発する可能性がより高そうであるとして優先される。さらに、この場合も理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、酵母系免疫療法を使用する1以上のHBV標的抗原に対する免疫応答の生成は、免疫された個体において、酵母系免疫療法薬中に含まれたエピトープに対してだけではなく、個体の体内に存在する他のHBVエピトープに対しても免疫応答をもたらすであろうと考えている。この現象は、「エピトープ拡大」と呼ばれ、治療上の有益性に最も適切と思われるエピトープに集中したHBV抗原の設計を可能にし、かつ、ひいては酵母系免疫療法生成物の作用機序から、免疫システムが免疫応答を拡張して追加の標的エピトープを対象に含めることでHBVに対する治療上有効または有益な免疫応答を増強することが可能となる。
従って、1つの実施形態におけるHBV抗原は、1以上のCTLエピトープ(例えば、適切なMHCクラスI分子に関連して提示された場合、細胞傷害性リンパ球(CTL)のT細胞受容体によって認識されるエピトープ)を含む。1つの態様では、HBV抗原は1以上のCD4+T細胞エピトープ(例えば、適切なMHCクラスII分子に関連する場合、CD4+T細胞のT細胞受容体によって認識されるエピトープ)を含む。1つの態様では、HBV抗原は1以上のCTLエピトープおよび1以上のCD4+T細胞エピトープを含む。1つの態様では、本発明の免疫療法組成物に有用なHBV抗原は、表5に記載された1以上の典型的なHBV CTLエピトープを含む。当業者であれば、以下に提供される手引きを前提として、任意の遺伝子型、遺伝子亜型、または株/単離物の所与のHBV配列中の、表5の各エピトープに対応する配列の部位を、いくつかのアミノ酸が表5のものとは相違する場合があるにせよ、容易に識別することができるであろう。そのような相違の例は表5に例証されている。本発明はこれらのエピトープを含む抗原に限定されない、というのも他のエピトープが当分野で知られるようになり、かつ本発明での使用を企図されるからである。1つの実施形態では、エピトープは、遺伝子型、遺伝子亜型または株/単離物の間でエピトープに1以上のアミノ酸の相違が存在する可能性があることから、HBVの所与の遺伝子型、遺伝子亜型または株/単離物内のこれらのエピトープの配列に対応するように改変されてもよい。
本発明の1つの実施形態では、有用なHBV抗原は、1または複数の酵母系免疫療法組成物において、「ドミナント」エピトープであるとされているかまたは「ドミナント」エピトープと決定された1または複数のT細胞エピトープ(すなわち、タンパク質全体に対するT細胞応答の発現に寄与するT細胞エピトープ、および、「イムノドミナントエピトープ」とも呼ばれる、潜在的エピトープの大集団の中でCD4
+およびCD8
+T細胞応答を最も誘発しやすいかまたは最も容易に誘発する比較的少数のT細胞エピトープ群の中にあるT細胞エピトープ、のうち少なくとも一方であるT細胞エピトープ)を含む抗原を含みうる。別の実施形態では、本発明において有用なHBV抗原は、同一の、または異なるかもしくは追加の酵母系組成物において、「サブドミナント」エピトープであるとされているかまたは「サブドミナント」エピトープと決定された1または複数のT細胞エピトープ(すなわち、免疫原性であるがイムノドミナントエピトープほどではないT細胞エピトープ;該サブドミナントエピトープによって生成される免疫応答は、イムノドミナントエピトープへの免疫応答によって抑制される、または競合に負ける場合もある)を含むHBV抗原を含みうる。マウスにおけるHBV T細胞エピトープに対するCTL応答を伴うこの作用の例については、シルムベック、R.(Schirmbeck R.)ら、ザ・ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. immunology)、2010年第168巻、p.6253−6262;またはセテ(Sette)ら、ザ・ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. immunology)、2001年、第166巻、p.1389−1397、を参照のこと。本発明の1つの態様では、イムノドミナントまたはサブドミナントのエピトープを含む様々な組成物が、個体において同一の部位に投与されること、または、1つの実施形態では、個体において異なる部位に投与されること(すなわち、ドミナントエピトープを含む組成物がある部位に投与され、サブドミナントエピトープを含む組成物が異なる部位に投与されること)が考えられる。ある場合には、サブドミナントエピトープがドミナントエピトープよりも治療上有益な免疫応答を誘発する場合もある。したがって、別個の部位に投与される場合、そのような投与は、ドミナントエピトープに対する免疫応答がサブドミナントエピトープに対する免疫応答を抑制するかまたは競合して勝ることになる機会を減少させ、その結果、全体として免疫応答を最大化し、かつ個体における防御的または治療的有益性を最大化する可能性がある。異なる組成物中の異なる抗原を個体の異なる部位に投与するこの手法は、すべてのエピトープがドミナントまたはサブドミナントであっても利用することができる。イムノドミナントエピトープおよびサブドミナントエピトープはHBV感染および免疫応答において役割を果たすと認識されている(例えば、上述のセテ(Sette)ら、2001年、および上述のシルムベック(Schirmbeck)ら、2002年を参照されたい)。
本発明の1つの実施形態では、酵母系免疫療法薬において有用なHBV抗原は、遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方の間で保存された免疫原性ドメイン、特にT細胞エピトープを最大限に含み、かつ/または、いくつかの異なる遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方に由来する免疫原性ドメインを含み、かつ/または、いくつかの小さな点では異なっているが様々な個体もしくは個体集団に感染するHBV遺伝子型もしくは遺伝子亜型に基づいてそのような個体もしくは個体集団を治療するように調整されている複数の酵母系免疫療法生成物を製造するために容易に改変可能な免疫原性ドメインを含んでいる。例えば、HBV抗原は、保護または治療を受ける個体または個体集団の間で最も一般的な遺伝子型または遺伝子亜型に基づいて製造されることが可能であり、該HBV抗原はそれらの遺伝子型に由来する最も保存された免疫原性ドメインを含む。別例として、または加えて、免疫原性ドメインはそのドメインまたはエピトープのコンセンサス配列に対応するように改変されてもよいし、2以上の改変型エピトープが構築物中に含められてもよい。
酵母系免疫療法組成物のためのHBV抗原の設計に関係する本発明の任意の実施形態において、1つの態様では、HBV抗原を含む融合タンパク質のセグメント間の人為的接合部は最小化される(すなわち、非天然の配列を含めるのは可能な程度まで制限または最小化される)。理論によって束縛されるものではないが、自然状態における進化は:i)酵母のような別の細胞において良好に発現される可能性が最も高い、ウイルス内の連続した配列、およびii)それらの配列を適切に消化して免疫システムに提示することができる抗原提示細胞内のイムノプロテアソーム、をもたらしたと考えられている。本発明の酵母系免疫療法産物は、宿主の免疫システムが標的抗原を処理して提示することを可能としており;従って、多数の非天然の接合部を備えた融合タンパク質は、天然のHBVタンパク質配列をより多く保持するものと比較して、酵母系免疫療法薬においてあまり有用ではない可能性がある。
該融合タンパク質のうち任意のものを含む本明細書中に記載されたHBV抗原のうちいずれにおいても、以下のさらなる実施形態が適用されうる。第1に、一部の融合タンパク質に含まれるN末端発現配列およびC末端タグは任意選択であり、使用される場合は、タンパク質の発現、安定性を高めるため、かつ/または、タンパク質の同定および精製のうち少なくとも一方を可能にするための本明細書中に別記されたいくつかの異なる配列から選択されうる。別例として、N末端またはC末端の配列のうち一方または両方が完全に省略される。加えて、酵母で使用するのに適した様々なプロモーターが当分野で知られており、本発明によるHBV抗原の発現用に包含される。更に、短い介在型リンカー配列(例えば1、2、3、4、もしくは5アミノ酸、またはそれ以上のペプチド)が、構築物のクローニングおよび将来的な操作を容易にするための制限酵素切断部位の導入などの様々な理由で、融合タンパク質の部分間に導入されてもよい。最後に、本明細書中他所に詳細に議論されるように、本明細書中に記載された配列は例示であり、また該配列は、HBV遺伝子型、HBV遺伝子亜型、HBV株もしくは単離物、またはコンセンサス配列についての優先度、ならびにドミナントおよびサブドミナントのうち少なくとも一方のT細胞エピトープを含む好ましいT細胞エピトープの包含に対応するために、配列に置換、付加、欠失を行うべく本明細書中に詳細に別記されるようにして改変されてもよい。本発明において有用ないくつかの異なる例示のHBV抗原の説明は以下に提供される。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、またはそのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、本発明のHBV抗原として、または融合タンパク質中もしくは免疫療法組成物中において有用なHBV表面抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号11の21〜47位、配列番号11の176〜400位、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号34の9〜407位、配列番号36の6〜257位、配列番号41の6〜257位、配列番号92の92〜343位、配列番号93の90〜488位、配列番号97、配列番号101の90〜338位、配列番号102の7〜254位、配列番号107の1〜249位、配列番号108の1〜249位、配列番号109の1〜249位、配列番号110の1〜249位、配列番号112の1〜399位、配列番号114の1〜399位、または配列番号116の1〜399位、配列番号118の1〜399位、配列番号120の1〜399位、配列番号122の1〜399位、配列番号124の1〜399位、配列番号126の1〜399位、配列番号128の231〜629位、配列番号130の63〜461位、配列番号132の289〜687位、配列番号134の289〜687位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、またはそのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、本発明のHBV抗原として、または融合タンパク質中もしくは免疫療法組成物中において有用なHBVポリメラーゼ抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号2の383〜602位、配列番号6の381〜600位、配列番号10の381〜600位、配列番号10の453〜680位、配列番号14の370〜589位、配列番号18の380〜599位、配列番号22の381〜600位、配列番号26の380〜599位、配列番号30の381〜600位、配列番号36の260〜604位、配列番号38の7〜351位、配列番号40の7〜351位、配列番号41の260〜604位、配列番号92の346〜690位、配列番号94の90〜434位、配列番号98、配列番号101の339〜566位、配列番号102の255〜482位、配列番号107の250〜477位、配列番号108の250〜477位、配列番号109の250〜477位、配列番号110の250〜477位、配列番号120の582〜809位、配列番号124の582〜809位、配列番号126の642〜869位、配列番号128の1〜228位、配列番号132の1〜228位、配列番号134の61〜288位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、またはそのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、本発明のHBV抗原として、または融合タンパク質中もしくは免疫療法組成物中において有用なHBVコア抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号1の31〜212位、配列番号5の31〜212位、配列番号9の31〜212位、配列番号9の37〜188位、配列番号13の31〜212位、配列番号17の31〜212位、配列番号21の31〜212位、配列番号25の14〜194位、配列番号29の31〜212位、配列番号34の408〜589位、配列番号36の605〜786位、配列番号38の352〜533位、配列番号39の160〜341位、配列番号41の605〜786位、配列番号92の691〜872位、配列番号95の90〜271位、配列番号99、配列番号101の567〜718位、配列番号102の483〜634位、配列番号105の2〜183位、配列番号105の184〜395位、配列番号105の396〜578位、配列番号105の579〜761位、配列番号106の2〜183位、配列番号106の338〜520位、配列番号107の478〜629位、配列番号108の478〜629位、配列番号109の478〜629位、配列番号110の478〜629位、配列番号112の400〜581位、配列番号114の400〜581位、配列番号116の400〜581位、配列番号118の400〜581位、配列番号120の400〜581位、配列番号122の400〜581位、配列番号124の400〜581位、配列番号126の400〜581位、配列番号128の630〜811位、配列番号130の462〜643位、配列番号132の688〜869位、配列番号134の688〜869位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
本明細書中に記載された本発明の実施形態のうちいずれか、例えば免疫療法組成物、HBV抗原、融合タンパク質、またはそのような組成物、HBV抗原もしくは融合タンパク質の使用に関する任意の実施形態において、1つの態様では、本発明のHBV抗原として、または融合タンパク質中もしくは免疫療法組成物中において有用なHBV X抗原のアミノ酸は、限定するものではないが、配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号12の2〜154位、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号4の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号8の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号12の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号16の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号20の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号24の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号28の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号32の52〜68位と後続する84〜126位、配列番号36の787〜939位、配列番号39の7〜159位、配列番号92の873〜1025位、配列番号96の90〜242位、配列番号100、配列番号101の719〜778位、配列番号102の635〜694位、配列番号106の184〜337位、配列番号106の521〜674位、配列番号107の630〜689位、配列番号108の630〜689位、配列番号109の630〜689位、配列番号110の630〜689位、配列番号122の582〜641位、配列番号124の810〜869位、配列番号126の582〜641位、配列番号130の1〜60位、配列番号132の229〜288位、配列番号134の1〜60位、または異なるHBV株由来の対応する配列、を含みうる。
[表面抗原およびコアタンパク質を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であって、該HBV抗原は、HBV大型(L)表面抗原もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むか、または、HBV大型(L)表面抗原もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成される、融合タンパク質である。1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原およびHBVコアタンパク質のうち少なくとも一方は完全長またはほぼ完全長である。本発明の任意の実施形態によれば、「完全長」タンパク質(または完全長の機能ドメインもしくは完全長の免疫学的ドメイン)に言及する場合は、本明細書中に記載されるような、またその他のかたちで既知であるかもしくは公に利用可能な配列に記載されているような、そのタンパク質または機能ドメインもしくは免疫学的ドメインの完全長アミノ酸配列を含む。タンパク質の一種の相同体でもある、「ほぼ完全長」のタンパク質またはドメインは、完全長のタンパク質またはドメインとは、そのような完全長タンパク質または完全長ドメインのN/C末端からの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の付加または欠失すなわち脱落によって、異なっている。一般にタンパク質またはドメインに言及する場合は、完全長またはほぼ完全長の両方のタンパク質、および該タンパク質のその他の相同体を含むことができる。
1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原またはHBVコアタンパク質は、それぞれ、完全長のHBV大型(L)表面抗原もしくはHBVコアタンパク質の直鎖状配列の、または、Pre‐S1の肝細胞受容体結合部分を含むHBV大型表面抗原の一部分およびHBV小型(S)表面抗原の全てもしくは一部分の直鎖状配列の、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原、以下に記載)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質、以下に記載)、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列によって表わされる直鎖状アミノ酸配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。本発明において有用な適切なHBV表面抗原およびHBVコア抗原のための様々な他の配列は、本明細書中に記載されている。1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原またはHBVコアタンパク質は、それぞれ完全長のHBV大型(L)表面抗原もしくはHBVコアタンパク質と、または本明細書中に記載された別のHBV表面抗原もしくはHBVコア抗原、例えば配列番号97(最適化されたHBV表面抗原、以下に記載)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質、以下に記載)、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列によって表わされるアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
そのような融合タンパク質は図2に概略的に表わされている。そのような融合タンパク質を含む組成物の一例は実施例1に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図2に示されるような様々なHBV表面‐コア融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。各事例において、HBV融合タンパク質は、配列番号34で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号34の1〜6位);2)SpeI制限酵素切断部位を導入する2アミノ酸スペーサー;3)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号34の9〜407位:または配列番号11の2〜400位(配列番号11は350〜351位において配列番号11のLeu‐Val配列が配列番号34の357〜358位のGln‐Ala配列に置き換えられている点で配列番号34とは異なっている));4)HBVコア抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の31〜212位または配列番号34の408〜589位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号34の590〜595位)、を備えた単一ポリペプチドであった。配列番号34の28〜54位は、大型(L)表面タンパク質の肝細胞受容体部分を含む。配列番号34は、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられる複数のエピトープまたはドメインを含有する。例えば、配列番号34に関して209〜220位、389〜397位、360〜367位、および499〜506位は、既知のMHCクラスI結合性エピトープおよびCTLエピトープのうち少なくとも一方をなす。配列番号34の305〜328位は抗体エピトープをなす。配列番号34の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号33で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13002とも呼ばれる。
本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものにおいて使用されるアミノ酸セグメントは、任意のドメインのいずれかの端部に隣接する付加アミノ酸の使用によって改変可能であり;本明細書中に提供される記載が実例である。例えば、この実施形態による融合タンパク質は、1)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の2〜400位または配列番号34の9〜407位);および2)HBVコア抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の31〜212位または配列番号34の408〜589位)、を含み、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しないか、または異なるN末端もしくはC末端配列およびリンカーのうち少なくともいずれかを利用するか、HBV配列間にリンカーを利用しないものであってよい。1つの実施形態では、配列番号34の1〜6位で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて、その後に融合タンパク質の残りの部分が続き、ヘキサヒスチジンのC末端タグは含まれても含まれなくてもよい。該融合タンパク質はさらに、HBVタンパク質またはドメインの間に1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のリンカー(スペーサー)アミノ酸を含むこともできる。同じ代替実施形態は、本明細書中に記載されるような本発明で使用される任意の融合タンパク質またはHBV抗原構築物に当てはまる。
この融合タンパク質の設計に使用されるHBV配列ならびに本明細書中において記載および例証のうち少なくとも一方がなされる多数のその他の配列は、特定のHBV遺伝子型(例えば遺伝子型A、B、CまたはD)の単離物に基づくものである。しかしながら、1つの特定の遺伝子型、遺伝子亜型、もしくは株に基づくかまたは由来する本明細書中に記載されたHBV抗原の任意の部分に、任意の他のHBV遺伝子型、遺伝子亜型、もしくは株由来の対応する配列、または対応する配列内に生じる単一もしくは小規模なアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失の、付加または置換を行うことは、本発明の実施形態である。1つの実施形態では、HBV抗原は、本明細書中に記載されたHBV抗原の全配列を、1つ以上の異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型または株/単離物由来の対応する配列で置換することにより生産されてもよい。1つのHBV遺伝子型または遺伝子亜型に由来する配列に付加または配列置換を行って別のものとすることにより、例えば、特定の個体または個体集団(例えば、所与の国または国内地域において最も一般的なHBV遺伝子型を標的とするための、その国または国内地域の個体集団)のための免疫療法組成物の特注生産が可能となる。同様に、所与のHBV株、遺伝子型もしくは亜型に由来するか、そのようなHBV株、遺伝子型もしくは亜型により決定されたか、またはそのようなHBV株、遺伝子型もしくは亜型について公開されたコンセンサス配列の全体または一部を使用して、該コンセンサス配列とより緊密または正確に一致するように所与のHBV抗原の配列に変更を加えることも、本発明の実施形態である。本発明によれば、また当分野で一般に理解されるように、「コンセンサス配列」とは、典型的には、複数の配列がアラインメントされた後に所与の配列の特定の部位において最も一般的なヌクレオチドまたはアミノ酸を基にした配列である。
上記種類の改変の具体例として、HBV抗原は、ある単離物由来の所与の配列中のT細胞エピトープを異なる単離物由来のT細胞エピトープとより緊密もしくは正確に一致するように、または該T細胞エピトープのコンセンサス配列とより緊密もしくは正確に一致するように、変更するために改変されうる。そのようなT細胞エピトープにはドミナントエピトープおよびサブドミナントエピトープのうち少なくとも一方が挙げられる。実際に、本発明によれば、様々なHBV遺伝子型および亜型のうち少なくとも一方に由来するコンセンサス配列、または様々なHBV遺伝子型および亜型のうち少なくとも一方に由来する配列の混合物、を組込むHBV抗原が設計されうる。主要な既知の遺伝子型それぞれに由来する典型的な配列全体にわたる主要なHBVタンパク質のアラインメントは、例えば、コンセンサス配列の生成について情報が得られる公的に利用可能なソフトウェアを使用して、容易に生成されうる。更に、数多くのHBVタンパク質についてのコンセンサス配列が公開されている。様々なHBV遺伝子型、遺伝子亜型および株の間でアミノ酸レベルで高度に保存がなされているので、本明細書中に記載されたものと類似または同一の全体的構造を有するHBV抗原を作出するために、本明細書中に例証されたもの以外の遺伝子型、遺伝子亜型、または株に由来するHBVタンパク質の対応する部分を使用することは簡単である。そのような改変の例は本明細書中で説明および実証される。
例として、同じ血清型および遺伝子型の中でさえ(すなわち、株または単離物のばらつきに起因して)同じタンパク質の配列の間に僅かな相違がある場合があるが、配列同一性におけるそのような相違は比較される配列の長さ全体にわたって典型的には20%未満であり(すなわち、配列は少なくとも80%同一となる)、より典型的には、配列は、比較される配列の長さ全体にわたって、少なくとも85%同一、90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、100%同一となる。例えば、上述の融合タンパク質(配列番号34)では、該融合物中で使用された大型(L)表面抗原の配列(配列番号34の9〜407位)はHBV遺伝子型Cの単離物に由来し、かつ、同じくHBV遺伝子型Cの単離物由来の大型(L)表面抗原に由来する配列番号11の2〜400位と約99%同一である(すなわち、配列番号11の350〜351位(Gln‐Ala)には配列番号34の357〜358位(Leu‐Val)と比較して2つの異なるアミノ酸が存在する)。しかしながら、いずれの配列も、他のHBV株由来の配列がそうであるように、本明細書中に記載された融合タンパク質での使用に適している。従って、1つの実施形態では、本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものなど、本明細書中に記載されたHBV抗原のうち任意のものにおいて利用される配列は、1つ以上の異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、または株に由来する対応する配列を含むことができる。
上述の、コンセンサス配列および個々のHBV遺伝子型の利用は、本明細書中に記載された様々なHBV抗原に適用されている。例えば、コンセンサス配列の設計は、配列番号34に関して上述されたHBV表面タンパク質およびHBVコアタンパク質を含有する融合タンパク質に適用された。実施例7は、配列番号34で表わされる融合タンパク質と設計上類似しているがHBV遺伝子型A、B、CおよびDのコンセンサス配列にそれぞれ基づいているさらなる融合タンパク質について説明している。HBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づく、HBV表面タンパク質およびコアタンパク質を含む融合タンパク質(図2にも概略的に示されている)は、配列番号112で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号112の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号112の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Aの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列;(4)配列番号112の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Aのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号112の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号111で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13006とも呼ばれる。
実施例7はさらに、配列番号34で表わされる融合タンパク質に設計上類似しているがHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づくものである融合タンパク質についても述べている。図2にも概略的に示されているこの融合タンパク質は、配列番号114で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号114の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号114の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Bの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列;(4)配列番号114の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Bのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号114の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号113で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13007とも呼ばれる。
実施例7は、配列番号34で表わされる融合タンパク質に設計上類似しているがHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づくものである融合タンパク質について述べている。図2にも概略的に示されているこの融合タンパク質は、配列番号116で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号116の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号116の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列;(4)配列番号116の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Cのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号116の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号115で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13008とも呼ばれる。
実施例7は、配列番号34で表わされる融合タンパク質に設計上類似しているがHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づくものである融合タンパク質についても述べている。図2にも概略的に示されているこの融合タンパク質は、配列番号118で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号118の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号118の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列;(4)配列番号118の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号118を含みかつN末端およびC末端のペプチドおよびリンカーを備えている実施例7に記載された完全な融合タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書中に配列番号151で表わされている。配列番号118または配列番号151の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号117で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13009とも呼ばれる。
[表面抗原、コアタンパク質、ポリメラーゼおよびX抗原を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、以下すなわち:HBV表面抗原(大型(L)、中型(M)、もしくは小型(S))もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)、HBVポリメラーゼもしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン、HBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはHBV e抗原(HBeAg)もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン、およびHBV X抗原(HBx)もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、免疫原性ドメイン、を含むか、または、前記抗原もしくはドメインで構成される。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原またはこれらのドメインのうちの任意の1つ以上は完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原またはこれらのドメインのうちの任意の1つ以上は、それぞれ完全長のHBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原もしくはこれらのドメインの直鎖状配列の、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原、後述)、配列番号98(最適化されたHBVポリメラーゼ、後述)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質、後述)、もしくは配列番号100(最適化されたX抗原、後述)で表わされる直鎖状アミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%を含む。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原またはこれらのドメインのうちの任意の1つ以上は、それぞれ完全長のHBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原もしくはこれらのドメインと、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原、後述)、配列番号98(最適化されたHBVポリメラーゼ、後述)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質、後述)、もしくは配列番号100(最適化されたX抗原、後述)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である。HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ抗原、HBVコア抗原、およびHBV X抗原に適した実例となる様々な配列は本明細書中に記載されている。
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、以下すなわち:HBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメイン、HBV小型(S)表面抗原(HBsAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメイン、HBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインもしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメイン、HBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメイン、およびHBV X抗原(HBx)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメイン、を含むか、または、前記の抗原もしくはドメインで構成される。1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV小型(S)表面抗原、HBVポリメラーゼのRTドメイン、HBVコアタンパク質、X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV小型(S)表面抗原、HBVポリメラーゼのRTドメイン、HBVコアタンパク質、X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ完全長のHBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV小型(S)表面抗原、HBVポリメラーゼのRTドメイン、HBVコアタンパク質、X抗原もしくはこれらのドメインの直鎖状配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%を含む。1つの態様では、HBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV小型(S)表面抗原、HBVポリメラーゼのRTドメイン、HBVコアタンパク質、X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ完全長のHBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV小型(S)表面抗原、HBVポリメラーゼのRTドメイン、HBVコアタンパク質、X抗原もしくはこれらのドメインと、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である。
そのような融合タンパク質は図3に概略的に示されている。この融合タンパク質を含む組成物の一例は実施例2に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図3に概略的に示されるような様々なHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された。一例において、該融合タンパク質は、配列番号36で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号36の1〜5位);2)HBV遺伝子型Cの、HBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分の肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号36の6〜32位);3)完全長のHBV遺伝子型Cの小型(S)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号36の33〜257位);4)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(例えば配列番号36の258および259位);5)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号36の260〜604位);6)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号36の605〜786位);7)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号12の2〜154位または配列番号36の787〜939位);および、8)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号36の940〜945位)、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号36の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号35で表されている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13005とも呼ばれる。
この実施形態1つの代替実施例では、上述の実施形態によるかまたは後述の融合タンパク質は、1)HBV遺伝子型Cの、HBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分の肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号36の6〜32位);2)完全長のHBV遺伝子型Cの小型(S)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号36の33〜257位);3)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号36の260〜604位);4)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号36の605〜786位);および5)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号12の2〜154位または配列番号36の787〜939位)を含むことが可能であり、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しないか、または異なるN末端もしくはC末端配列を利用するか、および/または、HBV配列間にリンカーを使用するかもしくは使用しない。
1つの実施形態では、配列番号36の1〜5位で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて(またはその相同体)、その後に、説明した融合タンパク質の残りの部分が続く。実施例2はそのような融合タンパク質について説明しており、該融合タンパク質は図3の構築物の概略図でも例証されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、この場合も、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図3に概略的に示されるような様々なHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された。この第2の例では、該融合タンパク質は、配列番号92で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定または増強させるN末端ペプチド(配列番号89、配列番号92の1〜89位);2)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(Thr‐Ser)(配列番号92の90〜91位);3)HBV遺伝子型CのHBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分の肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号92の92〜118位);4)完全長のHBV遺伝子型Cの小型(S)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号92の119〜343位);5)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(Leu‐Glu)(例えば配列番号92の344‐345位);6)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号92の346〜690位);7)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号92の691〜872位);8)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号92の873〜1025位);および、9)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号92の1026〜1031位)、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号92の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号91で表されている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13004とも呼ばれる。
配列番号36および配列番号92は、配列番号34について上述されたいくつかのものなど、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられる複数のエピトープまたはドメインを含有する。加えて、この融合タンパク質中に使用される逆転写酵素ドメインは、様々な抗ウイルス薬を用いた治療に対する薬物抵抗性の応答として突然変異に至ることが知られている数か所のアミノ酸部位を含有しており、したがって、これらのうち任意の1つ以上を、特定の薬剤抵抗性(回避)突然変異を標的とする治療的または予防的な免疫療法薬を提供するためにこの融合タンパク質中で変異させてもよい。これらのアミノ酸部位は、配列番号36に関しては、アミノ酸432位(Val、ラミブジン治療後にLeuに突然変異することが知られている);439位(Leu、ラミブジン治療後にMetに突然変異することが知られている);453位(Ala、テノフォビル治療後にThrに突然変異することが知られている);463位(Met、ラミブジン治療後にIleまたはValに突然変異することが知られている);および495位(Asn、アデフォビル治療後にThrに突然変異することが知られている)である。これらのアミノ酸部位は、配列番号92に関しては、アミノ酸518位(Val、ラミブジン治療後にLeuに突然変異することが知られている);525位(Leu、ラミブジン治療後にMetに突然変異することが知られている);539位(Ala、テノフォビル治療後にThrに突然変異することが知られている);549位(Met、ラミブジン治療後にIleまたはValに突然変異することが知られている);および581位(Asn、アデフォビル治療後にThrに突然変異することが知られている)である。同定されるかまたは同定済みのさらなる薬物抵抗性突然変異が、必要に応じて、本明細書中に提供される手引きを使用してそのような突然変異を標的とするさらなる免疫療法薬を作出するために、加えられてもよい。
本発明の1つの実施形態では、配列番号36の901位のバリンまたは配列番号92の987位のバリン(または配列番号12の116位のバリンもしくは任意のX抗原もしくはそのドメインであってこの対応する部位を含んでいるもの)は、配列番号51として同定されたT細胞エピトープを作出するためにロイシンに置換される(表5を参照)。
上記に議論されるように、本発明は、臨床的有用性を高めるかまたは感染因子に関する治療薬もしくは予防薬に必要な基準を満たす酵母系免疫療法薬に含めるための、天然に存在する配列または野生型配列からのHBV抗原の改変を含む。例として、以下の議論および実施例5〜8は、RACの要求事項のうち1つ以上の基準、最も有益な免疫応答に関係する免疫原性ドメインの最大化、保存されたT細胞エピトープの最大化、特定のHBV遺伝子型についてのコンセンサス配列の利用、ならびにHBV抗原内の人為的接合部の最少化、のうち少なくともいずれかを考慮に入れる、酵母系免疫療法薬の設計および構築について説明している。例えば、以下の酵母系免疫療法組成物は、上記に指定された目的の要求事項を満たし、かつHBVの主要タンパク質すなわちHBV表面抗原、ポリメラーゼ、
コアおよびX抗原の各々の一部を含むHBV融合タンパク質を例証する。この融合タンパク質を設計するために、該融合物内の個々のHBV抗原は、タンパク質中のセグメントの大きさを縮小するために(例えばタンパク質がHBVゲノムの2/3未満に相当することが確実となるように)、また、急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染のうち少なくとも一方における免疫応答に関係しているT細胞エピトープを最大限含むため、保存されたエピトープを最大限にするため、ならびに非天然の配列を最小限にするために、最適化または改変された。当業者であれば、この手引きを使用して、本発明のHBV抗原で使用するための別例の最適化されたHBVタンパク質を製造することが可能である。
実施例5においてより詳細に記載されるように、HBV表面抗原セグメントを構築するために、HBV遺伝子型C由来の完全長の大型(L)表面抗原タンパク質は、急性/自己限定的感染に関連するT細胞エピトープを含めるための優先順位付けを使用して、N末端およびC末端配列の短縮により大きさが縮小される一方、既知のMHC T細胞エピトープを最大限含むようになされた。得られた表面抗原セグメントは配列番号97で表わされる。
HBVポリメラーゼを含む融合タンパク質のセグメントを構築するために(実施例5を参照)、HBV遺伝子型C由来の完全長ポリメラーゼのかなりの部分は(RTドメイン由来の)活性部位ドメインを含めることに重点をおいた結果として除去されたが、この活性部位ドメインはHBV遺伝子型および単離物の間で最も保存された該タンパク質の領域であり、かつ薬物抵抗性突然変異が生じることが知られているいくつかの部位を含んでいる。該HBVポリメラーゼセグメントは、上記に議論された優先順位付け戦略を使用して既知のT細胞エピトープを最大限とし、かつ該T細胞エピトープのうち1つをアミノ酸が1つだけ異なる既知のT細胞エピトープと正確に一致させて改変するように、設計された。得られたHBVポリメラーゼ抗原セグメントは配列番号98で表わされる。
HBVコア抗原を含む融合タンパク質のセグメントを構築するために(実施例5を参照)、HBV遺伝子型C由来の完全長コアタンパク質は、該タンパク質の大きさを縮小するために改変され、その一方で特定の既知T細胞エピトープとの完全一致が作出されるように配列を包含および改変することによりT細胞エピトープの数が最大化された。加えて、アルギニンリッチである(正電荷を有する)ことの多い天然の酵母RNA結合タンパク質との競合阻害により酵母に対して有毒となりうる、極端に正電荷の多いC末端を含有する配列は、除去された。得られたHBVコア抗原セグメントは配列番号99で表わされる。
HBV X抗原を含む融合タンパク質のセグメントを構築するために(実施例5を参照)、HBV遺伝子型C由来の完全長X抗原は、該タンパク質の大きさを縮小するために短縮され、その一方でほとんどの既知T細胞エピトープが最大限維持された。公開されているT細胞エピトープ配列に対応させるために単一アミノ酸の変更も導入され、セグメントの端部においてT細胞エピトープに隣接する配列は、抗原提示細胞による正確なエピトープの効率的な抗原処理および提示を容易にするために保持された。得られたHBV X抗原セグメントは配列番号100で表わされる。
最後に、実施例5に記載されるように、完全な融合タンパク質は、上述の4つのHBVセグメントを連結して臨床用に最適化された単一タンパク質を形成することにより構築された。2つの異なる実例の融合タンパク質が作出されたが、該タンパク質は各々、酵母内における該融合タンパク質の発現の増強および安定化のうち少なくとも一方のために付加された異なるN末端ペプチドを備えるものであった。本明細書中に記載された酵母系免疫療法組成物において使用されるその他のタンパク質全てに関して本明細書中で先述したように、N末端ペプチドは異なる合成もしくは天然のN末端ペプチドまたはその相同体に置き換えられても良いし、N末端ペプチドは全く含まれず部位1にメチオニンが含まれてもよい。加えて、1アミノ酸、2アミノ酸または3アミノ酸以上のリンカー配列が、必要に応じて融合タンパク質のセグメント間に付加されてもよい。例えば、Thr‐Serのような2アミノ酸リンカー配列が、融合タンパク質中のN末端ペプチドと最初のHBV抗原との間、および融合タンパク質中の2つのHBV抗原の間のうち少なくともいずれか一方に挿入されうる。さらに、上記の構築物は基本骨格として遺伝子型C由来のHBVタンパク質を使用して設計されたが、任意の他のHBV遺伝子型、遺伝子亜型、または異なる株もしくは単離物由来のHBVタンパク質がタンパク質セグメントを設計するために使用されてもよい。1つの態様では、以下のさらなる融合タンパク質において記載されているように、所与のHBV遺伝子型由来のコンセンサス配列がタンパク質セグメントの設計または形成に使用されてもよい。最後に、本明細書中に記載されるような融合タンパク質から1つ以上のセグメントが除外される場合は、残りのセグメント由来の配列は、追加のT細胞エピトープおよび残りのタンパク質のフランキング領域を含めるために、必要に応じて長さが拡張されてもよい。
実施例5は、図3に構築物の概略図によっても示されているHBV融合タンパク質について記載しており、該HBV融合タンパク質は、配列番号101で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)配列番号89で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるための、αファクタープレプロ配列であるN末端ペプチド(配列番号101の1〜89位);(2)配列番号97で表わされる、HBV大型(L)表面抗原の最適化された部分(配列番号101の90〜338位、例えば、配列番号11の120〜368位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(3)配列番号98で表わされる、HBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号101の339〜566位、例えば、配列番号10の453〜680位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(4)配列番号99で表わされる、HBVコアタンパク質の最適化された部分(配列番号101の567〜718位、例えば、配列番号9の37〜188位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(5)配列番号100で表わされる、HBV X抗原の最適化された部分(配列番号101の719〜778位、例えば、配列番号12の52〜127位にエピトープの最適化を加えたものに相当);および(6)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号101の779〜784位)、を備えた単一のポリペプチドである。1つの実施形態では、トレオニン(ThrまたはT)‐セリン(SerまたはS)のリンカー配列が配列番号89のN末端ペプチドと最初のHBVタンパク質(HBV大型表面抗原の最適化された部分)との間に使用され、その結果配列番号101の全長は2アミノ酸分長くなっている。
実施例5はさらに、図3に構築物の概略図によっても示されている融合タンパク質であって、配列番号102で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定化するように設計された合成N末端ペプチドであるN末端ペプチド(配列番号102の1〜6位);(2)配列番号97の2〜248位で表わされる、HBV大型(L)表面抗原の最適化された部分(配列番号102の7〜254位、例えば、配列番号11の120〜368位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(3)配列番号98で表わされる、HBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号102の255〜482位、例えば、配列番号10の453〜680位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(4)配列番号99で表わされる、HBVコアタンパク質の最適化された部分(配列番号102の483〜634位、例えば、配列番号9の37〜188位にエピトープの最適化を加えたものに相当);(5)配列番号100で表わされる、HBV X抗原の最適化された部分(配列番号102の635〜694位、例えば、配列番号12の52〜127位にエピトープの最適化を加えたものに相当);および(6)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号102の695〜700位)、を備えた単一のポリペプチドである融合タンパク質についても述べている。1つの実施形態では、トレオニン(ThrまたはT)‐セリン(SerまたはS)のリンカー配列が配列番号37のN末端ペプチドと最初のHBVタンパク質(HBV大型表面抗原の最適化された部分)との間に使用され、その結果配列番号102の全長は2アミノ酸分長くなっている。1つの実施形態では、上述の融合タンパク質において使用されるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分は、配列番号97の1〜248位で表わされる(その結果、配列番号102の全長は1アミノ酸分長くなる)。1つの実施形態では、T‐Sリンカーおよび配列番号97の1〜248位の両方が配列番号102において使用される。
上記に議論されるように、本発明は、タンパク質セグメントを設計または形成するために所与のHBV遺伝子型由来のコンセンサス配列を利用して、臨床的有用性を高めるかまたは感染因子に関する治療薬もしくは予防薬に必要な基準を満たす、酵母系免疫療法薬に含めるための、天然に存在する配列または野生型配列からのHBV抗原の改変を含む。例として、本発明の酵母系免疫療法薬において使用するためのさらなるHBV抗原が、この種の改変を例証するために設計された。上記に表されたHBV融合タンパク質の設計におけるように、上記さらなる融合タンパク質を生産するために、融合物内の個々のHBV抗原は、タンパク質中のセグメントの大きさを縮小するために(例えばタンパク質がHBVゲノムの2/3未満に相当することが確実となるように)、また、急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染のうち少なくとも一方における免疫応答に関連しているT細胞エピトープの包含を最大限にするため、保存されたエピトープを最大限にするため、非天然の配列を最小限にするため、ならびに、HBV配列の複数供給源から構築された遺伝子型A〜D各々についてのコンセンサス配列も利用するために、最適化または改変された(例えば、ユー(Yu)およびユエン(Yuan)ら、2010年、S、コアおよびXについては、コンセンサス配列は322個のHBV配列から生成され、Pol(RT)については、スタンフォード大学HIV薬物抵抗性データベース(Stanford University HIV Drug Resistance Database)のHBVseqおよびHBV Siteリリースノートから生成された)。HBV抗原を含む以下の4つの典型的な融合タンパク質を設計する際に、コンセンサス配列を使用しても既知の急性自己限定的T細胞エピトープのうちの1つまたは既知のポリメラーゼ回避突然変異部位のうちの1つが変化しない限りは、所与のHBV遺伝子型のコンセンサス配列が使用され、その場合、これらの部位は、これらのエピトープまたは突然変異部位について公開された配列に従うものとなされた。さらなる抗原は、コンセンサス配列のみに基づいて構築されることも考えられるし、他のエピトープが知られるようになるにつれて公開された他のエピトープを使用して構築されることも考えられる。
実施例7は、配列番号101または配列番号102で表わされる融合タンパク質(図3によって概略的に示されている)に設計上類似しているがHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づく融合タンパク質について記載している。この融合タンパク質は、配列番号107で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は、配列番号107の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号107の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号107の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号107の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号107の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドである。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13010とも呼ばれる。
実施例7はさらに、配列番号101または配列番号102で表わされる融合タンパク質(図3によって概略的に示されている)に設計上類似しているがHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づく融合タンパク質について記載している。この融合タンパク質は、配列番号108で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号108の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号108の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号108の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号108の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号108の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドである。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13011とも呼ばれる。
実施例7はさらに、配列番号101または配列番号102で表わされる融合タンパク質(図3によって概略的に示されている)に設計上類似しているがHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づく融合タンパク質について記載している。この融合タンパク質は、配列番号109で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は、配列番号109の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号109の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号109の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号109の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号109の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドである。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13012とも呼ばれる。
実施例7はさらに、配列番号101または配列番号102で表わされる融合タンパク質(図3によって概略的に示されている)に設計上類似しているがHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づく融合タンパク質について記載している。この融合タンパク質は、配列番号110で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は、配列番号110の基本配列には含まれないが、実施例7に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド 1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列、例えば2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号110の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号110の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号110の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号110の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計戦略を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択で、ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドである。配列番号37で表わされるN末端配列を含むこの融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI−13013と呼ばれる。配列番号89で表わされるN末端配列を含むこの融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI−13014と呼ばれる。
上記に議論されるように、本明細書中に記載された融合タンパク質内のHBVタンパク質セグメントの順序を変更することは本発明の1つの実施形態である。従って、上述のような4つのHBVタンパク質を利用する構築物は、表面抗原がポリメラーゼ抗原に融合され、該ポリメラーゼ抗原がコア抗原に融合され、該コア抗原がX抗原に融合される順序で提供されているが、本発明は構築物内のこの特定の順序のタンパク質に限定されるものではなく、かつ実際に、融合セグメントの他の配置構成が使用されてもよく、いくつかの態様では、該配置構成により、得られる免疫療法組成物が改善される場合もある。例えば、融合タンパク質内のセグメントの再配置により、酵母におけるHBV抗原の発現が改善または改変される場合もあれば、HBV抗原の免疫原性またはその他の機能的属性が改善または改変される場合もある。この実施形態の1つの態様では、本発明は、酵母における良好な発現および有益な機能的データの提供(例えば、免疫原性であること)のうち少なくとも一方をなす1つのHBV抗原を始めとして、かつそのHBV抗原に、HBV抗原内に含まれる潜在的な抗原またはエピトープを拡張するために追加のHBVタンパク質またはドメインを付加することを企図している。実施例8は、上述の4つのHBVタンパク質のさらなる配置構成の例を提供する。
実施例8は、HBV表面抗原、コアタンパク質、ポリメラーゼおよびX抗原由来の配列を含有する融合タンパク質であって、該配列が配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来し、かつ該融合タンパク質が配列番号110と比較して異なる順序の融合セグメントを利用している、融合タンパク質について記載している。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが、配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株由来の対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13017と呼ばれることもあり、図10に概略的に示されている。配列番号124で表わされる該融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、ポリメラーゼおよびX抗原配列を、配列番号124で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号124の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号124の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号124の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号124の582〜809位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(6)配列番号124の810〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号124は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号124の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号123で表わされている。
実施例8はさらに、HBV表面抗原、コアタンパク質、X抗原、およびポリメラーゼ由来の配列を含有する別の融合タンパク質であって、該配列は配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来するが、該融合タンパク質は配列番号110と比較して異なる順序の融合セグメントを利用する、融合タンパク質についても記載している。この抗原もHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが;配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI−13018と呼ばれることもあり、図11に概略的に示されている。配列番号126で表わされる該融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、X抗原、およびポリメラーゼ配列を、配列番号126で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号126の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号126の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号126の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号126の582〜641位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(5)配列番号126の642〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号126は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号126の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、配列番号125によって本明細書中に表わされている。
実施例8は、HBVポリメラーゼ、X抗原、表面抗原、コアタンパク質由来の配列を含有する別の融合タンパク質であって、該配列は配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来するが、該融合タンパク質は配列番号110と比較して異なる順序の融合セグメントを利用する、融合タンパク質について記載している。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが;配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13021と呼ばれることもあり、図14に概略的に示されている。配列番号132で表わされる該融合タンパク質は、順に、ポリメラーゼ、X抗原、表面抗原、およびコア配列を、配列番号132で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号132の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号132の1〜228位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(4)配列番号132の229〜288位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(5)配列番号132の289〜687位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号132の688〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号132は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号132の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、配列番号131によって本明細書中に表わされている。
実施例8はさらに、HBV X抗原、ポリメラーゼ、表面抗原、およびコアタンパク質由来の配列を含有する融合タンパク質であって、該配列は配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来するが、該融合タンパク質は配列番号110と比較して異なる順序の融合セグメントを利用する、融合タンパク質についても記載している。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが;配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13022と呼ばれることもあり、図15に概略的に示されている。配列番号134で表わされる該融合タンパク質は、順に、X抗原、ポリメラーゼ、表面抗原、およびコアタンパク質を、配列番号134で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号134の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号134の1〜60位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(4)配列番号134の61〜288位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(5)配列番号134の289〜687位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号134の688〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号134は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号134の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、配列番号133によって本明細書中に表わされている。
[表面抗原、コアタンパク質およびX抗原を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、HBV表面抗原(大型(L)、中型(M)、もしくは小型(S))もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)、HBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはHBV e抗原(HBeAg)もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン、およびHBV X抗原(HBx)もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン、を含むか、または、前記抗原もしくはドメインで構成されている。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ、完全長のHBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原、もしくはこれらのドメインの直鎖状配列の、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号100(最適化されたX抗原)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ、完全長のHBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBV X抗原、もしくはこれらのドメインと、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号100(最適化されたX抗原)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。本構築物において有用なさらなるHBV表面抗原、HBVコア抗原、およびHBV X抗原についての様々な適切かつ典型的な配列は、本明細書中に記載されている。
実施例8は、HBV表面抗原、コアタンパク質、およびX抗原由来の配列を含有する融合タンパク質であって、該配列が配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来する融合タンパク質について記載している。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが、配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13016と呼ばれることもあり、図9に概略的に示されている。配列番号122で表わされる該融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、およびX抗原配列を、配列番号122で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号122の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号122の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号122の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号122の582〜641位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);および(6)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号122は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号122の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号121で表わされている。
実施例8はさらに、HBV表面抗原、コアタンパク質、およびX抗原由来の配列を含有する融合タンパク質であって、配列番号122を含む融合タンパク質におけるように、該配列は配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来する、融合タンパク質について記載している。しかしながら、この融合タンパク質は、該融合タンパク質内の融合セグメントの配置構成において、配列番号122を含む融合タンパク質とは異なっている。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが、配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13020と呼ばれることもあり、図13に概略的に示されている。配列番号130で表わされる該融合タンパク質は、順に、X抗原、表面抗原、およびコア抗原配列を、配列番号130で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は、ここで例証される構築物中のX抗原セグメントと表面抗原セグメントとの間のLeu‐Gluリンカーは別として配列番号130の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号130の1〜60位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(4)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば、配列番号130の61〜62位で表わされる、(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるLeu‐Glu;(5)配列番号130の63〜461位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号130の462〜643位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号130は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号130を含みかつN末端およびC末端ペプチドならびにすべてのリンカーを備えている、実施例8に記載された完全な融合タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書中に配列番号150で表わされている。配列番号130または配列番号150の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号129で表わされている。
[表面抗原、コアタンパク質およびポリメラーゼを含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、以下すなわち:HBV表面抗原(大型(L)、中型(M)、もしくは小型(S))もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)、HBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはHBV e抗原(HBeAg)もしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン、およびHBVポリメラーゼもしくはその少なくとも1つの構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン(例えば逆転写酵素(RT)ドメイン)、を含むか、または、前記抗原もしくはそのドメインで構成されている。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBVポリメラーゼ、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBVポリメラーゼ、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ、完全長のHBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBVポリメラーゼもしくはこれらのドメインの直鎖状配列の、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号98(最適化されたポリメラーゼ)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、HBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBVポリメラーゼ、またはこれらのドメインのうち任意の1つ以上は、それぞれ、完全長のHBV表面抗原、HBVコアタンパク質、HBV e抗原、HBVポリメラーゼもしくはこれらのドメインと、または、配列番号97(最適化されたHBV表面抗原)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号98(最適化されたポリメラーゼ)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ抗原、およびHBVコア抗原についての様々な適切かつ典型的な配列は、本明細書中に記載されている。
そのような融合タンパク質の一例は図7に概略的に示されている。この融合タンパク質を含む組成物の一例は実施例3に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で様々なHBV表面‐ポリメラーゼ‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号41で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号41の1〜5位);2)HBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分のアミノHBV肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号41の6〜32位);3)HBV小型(S)表面タンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号41の33〜257位);4)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(例えば配列番号41の258および259位);5)逆転写酵素ドメインを含むHBVポリメラーゼのアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号41の260〜604位);6)HBVコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号41の605〜786位);および、7)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号41の787〜792位)、を備えた単一のポリペプチドである。該配列はさらに、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインも含有する。加えて、1つの実施形態では、この構築物の配列は、以下の抗ウイルス薬耐性突然変異すなわち:rtM204l、rtL180M、rtM204V、rtV173L、rtN236T、rtA194T(部位はHBVポリメラーゼの完全長アミノ酸配列に関して付されている)のうち1以上または全てを導入するために改変されてもよい。1つの実施形態では、それぞれが上記突然変異のうち1つを含有している6つの異なる免疫療法組成物が作出される。他の実施形態では、該突然変異の全てまたはいくつかが単一の融合タンパク質に含められる。1つの実施形態では、この構築物はさらに、表面抗原における1以上の抗ウイルス薬耐性突然変異を含有する。本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものにおいて使用されるアミノ酸セグメントは、任意のドメインのいずれかの端部に隣接する追加のアミノ酸を使用することによって改変可能であり;本明細書中に提供される実施例は典型例である。例えば、この実施形態による融合タンパク質は、1)HBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分のアミノHBV肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位もしくは配列番号41の6〜32位);2)HBV小型(S)表面タンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位もしくは配列番号41の33〜257位);3)HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含むアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位もしくは配列番号41の260〜604位);および4)HBVコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号9の31〜212位もしくは配列番号41の605〜786位)を含むことが可能であり、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しなくても、異なるN末端もしくはC末端配列を利用してもよく、かつ/または、HBV配列の間にリンカーを利用しても、リンカーを利用しなくてもよい。1つの実施形態では、配列番号41の1〜5位で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて、その後に、説明したような融合タンパク質の残りの部分が続いてもよい。
そのような融合タンパク質の別の例は実施例8に記載されている。実施例8は、HBV表面抗原、コアタンパク質、およびポリメラーゼ由来の配列を含有する融合タンパク質であって、該配列が配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来する、融合タンパク質について記載している。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが、配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13015と呼ばれることもあり、図8に概略的に示されている。配列番号120で表わされる該融合タンパク質は、順に、表面抗原、コアタンパク質、およびポリメラーゼ配列を、配列番号120で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は配列番号120の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号120の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(4)配列番号120の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号120の582〜809位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);および(6)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号120は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号120の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号119で表わされている。
そのような融合タンパク質のさらに別の例は実施例8に記載されている。実施例8は、HBVポリメラーゼ、表面抗原、およびコアタンパク質由来の配列を含有する融合タンパク質であって、該配列が配列番号110および配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来する、融合タンパク質について例示している。この融合タンパク質は、該融合タンパク質内の融合セグメントの配置構成において配列番号120を含む融合タンパク質とは異なっている。この抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが;配列番号107もしくは配列番号112(遺伝子型A)、配列番号108もしくは配列番号114(遺伝子型B)、配列番号109もしくは配列番号116(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株からの対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。この実施例では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は銅誘導性プロモーターCUP1の制御下でこの融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理され、得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13019と呼ばれることもあり、図12に概略的に示されている。配列番号128で表わされる該融合タンパク質は、順に、ポリメラーゼ、表面抗原、およびコアの配列を、配列番号128で表わされる(HBV配列でない任意選択の配列は、ここで例証される構築物中のポリメラーゼセグメントと表面抗原セグメントとの間のLeu‐Gluリンカーは別として配列番号128の基本配列には含まれないが、実施例8に記載された構築物中のように本配列に加えられてもよい)、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素すなわち:(1)任意選択で、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された、(実施例8に記載の構築物中の)配列番号37で表わされる合成のN末端ペプチドであるN末端ペプチドであって、配列番号89、配列番号90で表わされるN末端ペプチド、または本明細書中に記載されるような酵母系免疫療法薬とともに使用するのに適した別のN末端ペプチドによって置き換えられることも可能な、N末端ペプチド;(2)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるThr‐Ser;(3)配列番号128の1〜228位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(4)任意選択で、1〜3アミノ酸以上のリンカーペプチド、例えば、配列番号128の229〜230位で表わされる、(実施例8に記載の構築物中の)2アミノ酸リンカーであるLeu‐Glu;(5)配列番号128の231〜629位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号128の630〜811位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択で、(実施例8に記載の構築物中の)ヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一のポリペプチドとして含む。配列番号128は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号128の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号127で表わされている。
[ポリメラーゼおよびコアタンパク質を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、HBVポリメラーゼ(RTドメイン)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むか、または、HBVポリメラーゼ(RTドメイン)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている。1つの態様では、HBVポリメラーゼのRTドメインまたはHBVコアタンパク質のうち一方または両方は、完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBVポリメラーゼのRTドメインもしくはHBVコアタンパク質のうち一方もしくは両方またはそれらのドメインは、それぞれ、完全長のHBVポリメラーゼのRTドメインもしくはHBVコアタンパク質もしくはそれらのドメインの直鎖状配列の、または、配列番号98(最適化されたHBVポリメラーゼ)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、HBVポリメラーゼのRTドメインもしくはHBVコアタンパク質のうち一方もしくは両方またはそれらのドメインは、それぞれ、完全長のHBVポリメラーゼのRTドメインもしくはHBVコアタンパク質もしくはそれらのドメインと、または、配列番号98(最適化されたHBVポリメラーゼ)、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。HBVポリメラーゼ抗原およびHBVコア抗原についての様々な適切かつ典型的な配列は、本明細書中に記載されている。
この抗原の一例は図4に概略的に表わされている。この融合タンパク質を含む組成物の一例は実施例3に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図4に概略的に示されるような様々なHBVポリメラーゼ‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号38で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号37、または配列番号38の1〜6位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号38の7〜351位);3)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号38の352〜533位);および、4)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号38の534〜539位)、を備えた単一のポリペプチドである。該配列はさらに、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものにおいて使用されるアミノ酸セグメントは、任意のドメインのいずれかの端部に隣接する追加のアミノ酸を使用することによって改変可能であり;本明細書中に提供される実施例は典型例である。例えば、この実施形態による融合タンパク質は、1)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号38の7〜351位);および2)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号38の352〜533位)を含むことが可能であり、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しなくても、異なるN末端もしくはC末端配列を利用してもよく、かつ/または、HBV配列の間にリンカーを利用しても、リンカーを利用しなくてもよい。1つの実施形態では、配列番号37で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて、その後に融合タンパク質の残りの部分が続く。
[X抗原およびコアタンパク質を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、HBV抗原を含む融合タンパク質であり、該HBV抗原は、HBV X抗原もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインを含むか、または、HBV X抗原もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインおよびHBVコアタンパク質(HBcAg)もしくはその少なくとも1つの免疫原性ドメインで構成されている。1つの態様では、HBV X抗原またはHBVコアタンパク質のうち一方または両方は、完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、HBV
X抗原もしくはHBVコアタンパク質のうち一方もしくは両方またはそれらのドメインは、それぞれ、完全長のHBV X抗原もしくはHBVコアタンパク質もしくはそれらのドメインの直鎖状配列の、または、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号100(最適化されたX抗原)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、HBV X抗原もしくはHBVコアタンパク質のうち一方もしくは両方またはそれらのドメインは、それぞれ、完全長のHBV X抗原もしくはHBVコアタンパク質もしくはそれらのドメインと、または、配列番号99(最適化されたコアタンパク質)、配列番号100(最適化されたX抗原)で表わされるアミノ酸配列、もしくは場合に応じて別のHBV株由来の対応する配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。HBVコア抗原およびHBV X抗原についての様々な適切かつ典型的な配列は、本明細書中に記載されている。
この融合タンパク質は図5に概略的に表わされている。この融合タンパク質を含む組成物の一例は実施例3に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図5に概略的に示されるような様々なHBV X‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号39で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号37、または配列番号39の1〜6位);2)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号39の7〜159位);3)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号39の160〜341位);および、4)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号39の342〜347位)、を備えた単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものにおいて使用されるアミノ酸セグメントは、任意のドメインのいずれかの端部に隣接する追加のアミノ酸を使用することによって改変可能であり;本明細書中に提供される実施例は典型例である。例えば、この実施形態による融合タンパク質は、1)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号39の7〜159位);および2)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号39の160〜341位)を含むことが可能であり、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しなくても、異なるN末端もしくはC末端配列を利用してもよく、かつ/または、HBV配列の間にリンカーを利用しても、リンカーを利用しなくてもよい。1つの実施形態では、配列番号37で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて、その後に、説明した融合タンパク質の残りの部分が続く。
[単一のHBVタンパク質を含むHBV抗原] 本発明の1つの実施形態では、HBV抗原は、単一のHBVタンパク質(例えば表面、コア、e抗原、ポリメラーゼ、もしくはX 抗原から選択された1つのHBVタンパク質)または単一のHBVタンパク質由来の1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメインおよび免疫学的ドメインのうち少なくともいずれか)からなる。本発明のこの実施形態は、例えば、HBVの治療もしくは予防のための1つ以上の他の酵母系免疫療法組成物と組み合わせて、もしくはHBVの治療もしくは予防のための1つ以上の他の酵母系免疫療法組成物とともに順を追って、または、患者が感染に至る場合には予防的手法の後に治療的手法を続けるために、使用することが可能な酵母系免疫療法組成物を作成するために、特に有用である。例えば、この実施形態のHBV表面抗原を含む酵母系免疫療法組成物は、HBV X抗原のような異なるHBVタンパク質/抗原を含む第2の酵母系免疫療法組成物(後述)と組み合わせることが可能であり、さらに、必要に応じて追加の「単一のHBVタンパク質」の酵母系免疫療法薬(例えばHBVのプレコア、コアまたはe抗原を含む酵母系免疫療法組成物およびHBVポリメラーゼ抗原またはそのドメインを含む酵母系免疫療法組成物のうち少なくともいずれか)と組み合わせることが可能である。これらの「単一のHBVタンパク質の酵母免疫療法薬」は、互いに組み合わされるかもしくは順を追って、および/または、本明細書中の実施例その他に記載されるもののような他の多重HBVタンパク質の酵母系免疫療法薬と組み合わされるかもしくは順を追って、使用可能である。別例として、または加えて、このHBV表面抗原の酵母系免疫療法薬のような「単一のHBVタンパク質の酵母系免疫療法薬」は、任意の所与の遺伝子型または遺伝子亜型のHBV配列を使用して製造可能であり、かつ、追加のHBV表面抗原の酵母系免疫療法薬は、任意の1つ以上の追加の遺伝子型または遺伝子亜型のHBV配列を使用して製造可能である。この方策により、様々なHBV抗原の「スパイスラック」が効率よく作出されて、該抗原それぞれについての遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方が、本発明の酵母系免疫療法薬に関して、または本発明の少なくとも1つの酵母系免疫療法薬を含む方策において、提供される。従って、これらの酵母系免疫療法薬の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の任意の組み合わせが、HBVに感染している特定の患者または患者集団の治療に使用するために選択可能であり、このことは、特定の患者、患者集団、患者層、またはその他の患者群における必要性に対応するように特注生産または調整がなされるという本発明の融通性を示している。
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、以下すなわち:(a)HBV表面抗原タンパク質およびその1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)のうち少なくともいずれかであって、HBV大型(L)表面抗原のPre‐S1の肝細胞受容体部分、HBV大型(L)表面抗原、HBV中型(M)表面抗原、HBV小型(S)表面抗原(HBsAg)、もしくはこれらの任意のドメインもしくは組み合わせを含みうるもの;(b)HBVポリメラーゼ抗原であって、HBVポリメラーゼの1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)、例えばHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメイン(機能ドメイン)を含みうるもの;(c)HBVプレコア抗原、HBVコア抗原およびHBV e抗原のうち少なくともいずれか、もしくはこれらの1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)であって、HBVコアおよびHBV e抗原の両方もしくはこれらのタンパク質の一方もしくは他方に由来する配列を含有している、HBVプレコアの1つ以上のドメインもしくは部分を含みうるもの;または、(d)HBV X抗原であって、HBV X抗原の1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメイン、もしくは免疫原性ドメイン)を含みうるもの、を含むか、または前記に列挙されたもので構成される、HBV抗原である。1つの態様では、上記のタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上は、完全長またはほぼ完全長である。1つの態様では、上記のタンパク質またはドメインのうち1つ以上は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個またはそれ以上の免疫原性ドメインを含むかまたは該免疫原性ドメインで構成される。1つの態様では、上記のタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上は、対応する完全長の配列またはそのドメインの直鎖状配列の、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、上記のタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上は、対応する完全長の配列またはそのドメインと、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。HBV表面抗原、HBVポリメラーゼ抗原、HBVコア抗原、およびHBV X抗原についての様々な適切かつ典型的な配列は、本明細書中に記載されている。
表面抗原タンパク質を含む組成物の一例は実施例5に記載されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV表面タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号93で表わされる、HBVのほぼ完全長のHBV大型(L)表面抗原(該抗原の発現を増強または安定させるために選択されたN末端配列の存在に合わせるためである)すなわち:(1)配列番号89のN末端ペプチド(配列番号93の1〜89位);2)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号11の2〜400位または配列番号93の90〜488位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号93の489〜494位)、を含む単一のポリペプチドである。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに置き換えられてもよい。1つの実施形態では、この構築物はさらに、表面抗原に1つ以上の抗ウイルス薬耐性突然変異を含有する。この実施例は免疫システムによって生成される免疫原性エピトープの露出を最大限にするHBV抗原として大型(L)表面抗原を利用しているが、表面抗原の小さい部分、例えば表面抗原の任意のドメインまたはドメインの組み合わせが、本明細書中に提供される手引きを使用して生産されてもよい。加えて、例示の免疫療法薬は遺伝子型Cの配列を使用して示されているが、他の遺伝子型、遺伝子亜型、およびHBVの株もしくは単離物のうち少なくともいずれかに由来する配列が代わりに使用されてもよい。
HBVポリメラーゼ抗原を含む組成物の一例は実施例3に、また実施例5にも記載されている。実施例5に記載されたHBV抗原は図6に概略的に表わされている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で様々なHBVポリメラーゼタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号40で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号37、または配列番号40の1〜6位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号40の7〜351位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号40の352〜357位)、を備えた単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。加えて、1つの実施形態では、この構築物の配列は、以下の抗ウイルス薬耐性突然変異すなわち:rtM204l、rtL180M、rtM204V、rtV173L、rtN236T、rtA194T(部位はHBVポリメラーゼの完全長アミノ酸配列に関して付されている)のうち1以上または全てを導入するために改変されてもよい。1つの実施形態では、それぞれが上記突然変異のうち1つを含有している6つの異なる免疫療法組成物が作出される。他の実施形態では、該突然変異の全てまたはいくつかが単一の融合タンパク質に含まれている。本明細書中に記載された融合タンパク質のうち任意のものにおいて使用されるアミノ酸セグメントは、任意のドメインのいずれかの端部に隣接する追加のアミノ酸を使用することによって改変可能であり;本明細書中に提供される実施例は典型例である。例えば、この実施形態による融合タンパク質は、HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号40の7〜351位)を含むことが可能であり、かつ、N末端もしくはC末端配列を利用しなくても、異なるN末端もしくはC末端配列を利用してもよく、かつ/または、HBV配列の間にリンカーを利用しても、リンカーを利用しなくてもよい。1つの実施形態では、配列番号37で表わされるN末端ペプチドの代わりに、配列番号89または配列番号90で表わされるN末端ペプチドが利用されて、その後に、説明した融合タンパク質の残りの部分が続く。
実施例5に示される実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBVポリメラーゼタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号94すなわち:(1)配列番号89のN末端ペプチド(配列番号94の1〜89位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号94の90〜434位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号94の435〜440位)、で表わされる、ポリメラーゼ(Pol)のHBV逆転写酵素(RT)ドメインを含む単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。加えて、1つの実施形態では、この構築物の配列は、以下の抗ウイルス薬耐性突然変異すなわち:rtM204l、rtL180M、rtM204V、rtV173L、rtN236T、rtA194T(部位はHBVポリメラーゼの完全長アミノ酸配列に関して付されている)のうち1以上または全てを導入するために改変されてもよい。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに置き換えられてもよい。
HBVプレコア、コアまたはe抗原を含む組成物の一例は、実施例5に記載されている。酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBVコアタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号95すなわち:(1)配列番号89のN末端ペプチド(配列番号95の1〜89位);2)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質の一部のアミノ酸配列(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号95の90〜271位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号95の272〜277位)、で表わされる、ほぼ完全長のHBVコアタンパク質を含む単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに置き換えられてもよい。
HBV X抗原を含む、酵母系免疫療法組成物の一例は、実施例5に記載されている。酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV X抗原を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号96すなわち:(1)配列番号89のN末端ペプチド:(配列番号96の1〜89位);2)HBV遺伝子型CのX抗原の一部のアミノ酸配列(例えば配列番号12の2〜154位または配列番号96の90〜242位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号96の243〜248位)、で表わされる、ほぼ完全長のHBV X抗原を含む単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに置き換えられてもよい。
[2以上の遺伝子型に由来するHBVタンパク質を含むHBV抗原] 本発明の別の実施形態は、1つの組成物を使用して多数の個体または個体集団を治療する可能性を備えた組成物を提供するために、HBV遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方を最大限に標的とする本発明の免疫療法組成物において使用するためのHBV抗原に関する。そのような組成物は、概して製造するのにより効率的であり(すなわち、多重抗原を備えることによる製造上の利点、および遺伝子型を標的化するための統一的手法のうち少なくとも一方を有する)、種々様々の臨床状況において利用するのにより効率的である(例えば、1つの組成物が多数の異なる地理的背景にある多数の異なる種類の患者集団に貢献する可能性がある)。上記に議論されるように、そのようなHBV抗原を製造するために、(HBV遺伝子型の間で)保存された抗原および保存されたドメインのうち少なくとも一方が選択可能であり、かつ、該抗原は、保存された免疫学的ドメインを最大限含むように設計されうる。
この実施形態の1つの態様では、単一の酵母系免疫療法薬中において、抗原構築物内で2、3、4、5回またはそれ以上反復されて反復ごとに異なるHBV遺伝子型または遺伝子亜型由来の配列が使用されている単一のHBVタンパク質またはそのドメイン(例えば表面、ポリメラーゼ、コア/eまたはX)を備えたHBV抗原が提供される。この態様では、優性であるかまたは一般的な複数の遺伝子型が1つの酵母系免疫療法薬において標的化されて、臨床上および製造上の有効性を高めることができる。これらの抗原は、必要に応じて、遺伝子亜型、株または単離物の違いに起因する微妙な違いを含む場合のある該抗原内に、コンセンサスT細胞エピトープなどのコンセンサス配列を最大限含めるために改変されてもよい。
従って、本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、同じタンパク質またはドメインの、ただし異なるHBV遺伝子型の、2つ以上の反復したHBV抗原(例えば、HBVコアまたはe抗原の1つ以上のドメイン(構造ドメイン、機能ドメイン、または免疫原性ドメイン)を含みうる2以上のHBVコアまたはe抗原であって、該抗原はHBV遺伝子型CおよびHBV遺伝子型Dそれぞれに由来する同一または類似の抗原を含んで、コアタンパク質がそれぞれ異なる遺伝子型であるコア‐コア融合物を形成するもの)を含むかまたは該HBV抗原で構成されている、HBV抗原である。1つの態様では、そのような構築物中で使用されるHBVタンパク質は、完全長またはほぼ完全長のタンパク質またはドメインである。1つの態様では、HBV抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、または10個以上の免疫原性ドメインを含むかまたは該免疫原性ドメインで構成される。1つの態様では、これらのタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上が、対応する完全長配列の直鎖状配列の少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、これらのタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上が、対応する完全長配列の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
そのような抗原は実施例6に例証されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、各々が異なる遺伝子型(HBV遺伝子型A、B、CおよびD)に由来する4つのコア抗原を含む、配列番号105すなわち:1)配列番号105の1位のN末端メチオニン;2)HBV遺伝子型A由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号1の31〜212位または配列番号105の2〜183位);3)HBV遺伝子型B由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号5の30〜212位または配列番号105の184〜395位);4)HBV遺伝子型C由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の30〜212位または配列番号105の396〜578位);5)HBV遺伝子型D由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号13の30〜212位または配列番号105の579〜761位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号105の762〜767位)、で表わされる単一のポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。1位のN末端メチオニンは、配列番号37もしくはその相同体で、または配列番号89もしくは配列番号90のαプレプロ配列、もしくはその相同体、もしくは必要に応じて他の適切なN末端配列で、置き換えられてもよい。加えて、リンカー配列が、構築物のクローニングおよび操作を容易にするために必要に応じてHBVタンパク質の間に挿入されてもよい。これは例示の構築物である、というのも、広範囲の臨床適用可能性および製造上効率的な設計を備えた単一抗原の酵母系HBV免疫療法薬産物を構築するために、任意の他のHBV遺伝子型および/または遺伝子亜型の組み合わせが必要に応じてこの設計物において代用されうるからである。配列番号105のアミノ酸配列はさらに、いくつかの既知のT細胞エピトープも含有し、ある種のエピトープは所与のエピトープについて公開された配列(表5を参照)に相当するように改変済みである。
この実施形態の別の態様では、単一のHBV遺伝子型に由来する2以上のタンパク質またはドメインが、本発明において有用なHBV抗原に含められ、該タンパク質またはドメインは、HBVゲノムによってコードされる最も保存されたタンパク質配列を最大限にするように、または抗原内の治療上もしくは予防上有用な免疫原性ドメインを最大限含むように、選択されうる。次いでこれらの抗原は、同じ融合タンパク質内で、ただし異なるHBV遺伝子型または遺伝子亜型に由来する同一または類似の配列を使用して、反復される。この態様では、多数の優性または一般的な遺伝子型が同様に1つの酵母系免疫療法薬において標的化されて、この場合も臨床上および製造上の有効性を高めることができる。これらの抗原も、必要に応じて、遺伝子亜型、株または単離物の違いに起因する微妙な違いを含む場合のある該抗原内に、コンセンサスT細胞エピトープを最大限含めるために改変されてもよい。
従って、本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物または方法において使用されるHBV抗原は、各々が2回以上反復されているが反復された配列は異なるHBV遺伝子型に由来している、少なくとも2つの異なるHBVタンパク質もしくはそのドメインを含むかまたは該タンパク質もしくはドメインで構成されている、HBV抗原である(例えば、2以上のHBVコアおよび2以上のX抗原、またはこれらのドメインであって、該抗原はHBV遺伝子型CおよびHBV遺伝子型Dそれぞれに由来する同一または類似の抗原を含んで、各コアタンパク質が異なる遺伝子型であり、かつ各X抗原が異なる遺伝子型である、コア‐X‐コア‐X融合物(または融合物内で任意の他の順序のセグメント)を形成する)。1つの態様では、そのような構築物中で使用されるHBVタンパク質は、完全長またはほぼ完全長のタンパク質またはドメインである。1つの態様では、HBV抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、または10個以上の免疫原性ドメインを含むかまたは該ドメインで構成される。1つの態様では、これらのタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上は、対応する完全長配列の直鎖状配列の少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。1つの態様では、これらのタンパク質またはドメインのうち任意の1つ以上は、対応する完全長配列の配列の少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。
そのような抗原は実施例6に例証されている。この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、対の各々が異なる遺伝子型(HBV遺伝子型AおよびC)に由来する2個のコア抗原および2個のX抗原を含む、配列番号106すなわち:1)配列番号106の1位のN末端メチオニン;2)HBV遺伝子型A由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号1の31〜212位または配列番号106の2〜183位);3)HBV遺伝子型A由来の完全長のX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号4または配列番号106の184〜337位);4)HBV遺伝子型C由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の30〜212位または配列番号106の338〜520位);5)HBV遺伝子型C由来の完全長のX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号8または配列番号106の521〜674位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号106の675〜680位)、で表わされる単一ポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。1位のN末端メチオニンは、配列番号37もしくはその相同体で、または配列番号89もしくは配列番号90のαプレプロ配列、もしくはその相同体で、置き換えられてもよい。配列番号106のアミノ酸配列はさらに、いくつかの既知のT細胞エピトープも含有し、ある種のエピトープは所与のエピトープについて公開された配列(表5を参照)に相当するように改変済みである。
[HBV抗原に関するさらなる実施形態] 本発明のいくつかの態様では、野生型または参照HBVタンパク質の1、2、3、4、5、6、7、8、9個または10個以上のアミノ酸について、得られるHBVタンパク質が本発明の酵母‐HBV免疫療法組成物中の抗原として使用された時に該標的すなわち野生型または参照HBVタンパク質に対する免疫応答(増強された免疫応答でも、低下した免疫応答でも、ほとんど同じ免疫応答でもよい)を誘発するという条件で、アミノ酸の挿入、欠失、および置換のうち少なくともいずれかがなされてもよい。例えば、本発明は、HBVアゴニスト抗原の使用を含み、該抗原には、1つ以上のT細胞エピトープであって、MHC分子に対する、またはMHC提示に関連してエピトープを認識するT細胞受容体に対する、該エピトープの結合力または親和性を改善することなどにより、HBVアゴニストに対するT細胞応答を増強するように変異させたT細胞エピトープが含まれうる。したがって、HBVタンパク質アゴニストは、宿主を感染させる天然のHBVタンパク質に対するT細胞応答の効力または効率を改善することができる。
上述のHBV抗原のうち任意のもの、例えば配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号92、配列番号101、配列番号102、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号150または配列番号151を含むかまたは該配列番号で表わされるアミノ酸配列を有する融合タンパク質に関して、該融合タンパク質内の個々のHBVタンパク質に由来する(例えばHBV表面抗原、HBVポリメラーゼ、HBVコア/e抗原、およびHBV X抗原のうち少なくともいずれかに由来する)1つ以上のHBV抗原を使用して、「単一タンパク質」抗原(例えば上記HBVタンパク質のうち1つだけに由来する抗原)を構築すること、または所与の参照融合タンパク質に適用可能な場合はHBVタンパク質セグメントのうち2個または3個だけを使用して融合タンパク質を構築することは、本発明の態様である。融合タンパク質内でHBVタンパク質セグメントの順序を変更することも本発明の態様である。別の設計代案として、融合タンパク質を構築するために2個、3個、4個またはそれ以上の遺伝子型およびコンセンサス配列のうち少なくとも一方が使用される場合、HBVの遺伝子型およびコンセンサス配列のうち少なくとも一方が組み合わされてもよい。
本発明はさらに、上述の融合タンパク質のうちいずれかの相同体も含み、ならびに、そのような融合タンパク質の一部であるかまたはそうでなければ本明細書中に記載されている個々のHBVタンパク質またはその一部分(任意の機能ドメインおよび免疫原性ドメインのうち少なくとも一方を含む)の相同体、バリアントまたは突然変異体の使用も含んでいる。1つの態様では、本発明は、本明細書中に記載された融合タンパク質または個々のHBVタンパク質もしくはHBV抗原のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と、それぞれ少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する融合タンパク質または個々の(単一の)HBVタンパク質もしくはHBV抗原であって、例えば、融合タンパク質の全長にわたって、または融合タンパク質の一部を形成する該融合タンパク質中の規定のセグメントまたは規定のタンパク質もしくはそのドメイン(免疫原性ドメインもしくは機能ドメイン(すなわち少なくとも1つの生物学的活性を備えたドメイン))に関して、本明細書中の固有の配列識別子によって参照されるHBVタンパク質、HBV抗原および融合タンパク質のうちいずれかを使用することを含んでいる。数多くのCTLエピトープ(HBVに感染した患者由来の細胞傷害性リンパ球によって認識されるエピトープ)および回避突然変異(抗ウイルス薬からの選択圧によりHBVタンパク質中に発生する突然変異)が当分野において知られており、この情報も、本発明のHBV抗原に特定の配列を提供するために、本明細書中に記載されたHBV抗原の置換体の作製やバリアントまたは相同体の作出を行うために使用されうる。
[酵母系免疫療法組成物] 本発明の様々な実施形態において、本発明は、少なくとも1つの「酵母系免疫療法組成物」(この言葉は「酵母系免疫療法産物」、「酵母系免疫治療組成物」、「酵母系組成物」、「酵母系免疫療法薬」、「酵母系ワクチン」、またはこれらの言葉の派生語と互換的に使用されうる)の使用を含んでいる。「免疫療法組成物」は、対象者において少なくとも1つの治療上の利益を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物である。本明細書中で使用されるように、酵母系免疫療法組成物とは、酵母ビヒクル成分を含み、かつ対象者において少なくとも1つの治療上の利益を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物を指す。より具体的には、酵母系免疫療法組成物は、酵母ビヒクル成分を含み、細胞性免疫応答、例えば限定するものではないがT細胞を介した細胞性免疫応答などの免疫応答を誘発または誘導することができる、組成物である。1つの態様では、本発明において有用な酵母系免疫療法組成物は、CD8+およびCD4+のうち少なくとも一方のT細胞を介した免疫応答を、また1つの態様ではCD8+およびCD4+のT細胞を介した免疫応答を、誘導することが可能である。任意選択で、酵母系免疫療法組成物は体液性免疫応答を誘発することができる。本発明において有用な酵母系免疫療法組成物は、例えば、個体が、HBV感染から保護されるように、かつ/またはHBV感染もしくはHBV感染に起因する症状について治療されるように、該個体において免疫応答を誘発することができる。
本発明の酵母系免疫療法組成物は「予防的」または「治療的」のいずれかであってよい。予防的に提供される場合、本発明の組成物はHBV感染の任意の症状に先立って提供される。そのような組成物は、出生時、幼児期、または成人に対して投与されることが考えられる。免疫療法組成物の予防的投与は、その後のHBV感染の予防、結果としてHBV感染が起きた場合のより迅速またはより完全な感染の解消、および、結果として感染が起きた場合のHBV感染の症状の改善、のうち少なくともいずれかを行う役割を果たす。治療的に提供される場合、免疫療法組成物は、HBV感染の発症時または発症後に、該感染の少なくとも1つの症状を改善することを目的として、かつ好ましくは、該感染の排除、感染の長期にわたる寛解の提供、および、その後の感染またはウイルスの再活性化に対する長期免疫の提供のうち少なくともいずれかを目的として、提供される。1つの態様では、治療の目的は、検出可能なHBVウイルス負荷の消失またはHBVウイルス負荷の低減(例えばPCRによる検出可能レベル未満または<2000IU/ml)である。1つの態様では、治療の目的は、治療完了後少なくとも6か月間のウイルス排除の保持である。1つの態様では、治療の目的は、検出可能な血清HBeAgおよびHBsAgタンパク質のうち少なくとも一方の消失である。1つの態様では、治療の目的は、B型肝炎表面抗原に対する抗体(抗HBs抗体)およびHBeAgに対する抗体のうち少なくとも一方の発現である。1つの態様では、治療の目的はセロコンバージョンであり、セロコンバージョンは以下すなわち:(a)ラジオイムノアッセイによって決定される10以上のサンプルレシオユニット(sample ratio unit:SRU);(b)酵素免疫測定法によって決定される良好な結果;または(c)≧10mIU/mlの抗体濃度の検出(10SRUは抗体10mIU/mLに匹敵する)、によって定義されうる。1つの態様では、治療の目的は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの正常化、肝臓の炎症の改善、および肝臓線維症の改善のうち少なくともいずれかである。
典型的には、酵母系免疫療法組成物は、酵母ビヒクルと、該酵母ビヒクルによって発現されるか、該酵母ビヒクルに結合しているか、該酵母ビヒクルと混合された少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインとを含み、該抗原は酵母に対して異種であり、かつ該抗原は1つ以上のHBV抗原またはその免疫原性ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原またはその免疫原性ドメインは融合タンパク質として提供される。本発明の組成物および方法における使用に適したいくつかのHBV融合タンパク質は上述されている。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は2以上の抗原を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、1つ以上の抗原の2つ以上の免疫原性ドメイン、または1つ以上の抗原の2つ以上のエピトープを含むことができる。
本発明において使用される酵母系免疫療法組成物のうち任意のものにおいて、酵母ビヒクルに関する以下の態様が本発明に含まれる。本発明によれば、酵母ビヒクルは、本発明の治療用組成物において1つ以上の抗原、その免疫原性ドメインもしくはそのエピトープと共に使用することができる任意の酵母細胞(例えば全細胞もしくは完全な細胞)もしくはその派生物(以下を参照)であり、1つの態様では、酵母ビヒクルは単独で使用されてもよいしアジュバントとして使用されてもよい。したがって、酵母ビヒクルは、限定するものではないが、生きている完全な(全体の)酵母微生物(すなわち細胞壁を含むその成分をすべて有している酵母細胞)、殺処理されている(死んでいる)かもしくは不活性化された完全な酵母微生物、または完全な酵母/全酵母の派生物であって例えば:酵母スフェロプラスト(すなわち細胞壁を欠く酵母細胞)、酵母サイトプラスト(すなわち細胞壁および核を欠く酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち細胞壁、核および細胞質を欠く酵母細胞)、細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物もしくはその画分(酵母膜粒子とも呼ばれ、以前は細胞レベル以下の酵母粒子とも呼ばれた)、任意の他の酵母粒子、もしくは酵母細胞壁調製物、を含みうる。
酵母スフェロプラストは、典型的には酵母細胞壁の酵素消化によって生産される。そのような方法は、例えば、フランツゾフ(Franzusoff)ら、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth. Enzymol.)、1991年、第194巻、p.662〜674(全体が参照により本願に援用される)に記載されている。
酵母サイトプラストは、典型的には酵母細胞の脱核によって生産される。そのような方法は、例えば、クーン(Coon)、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート・モノグラフ(Natl. Cancer Inst. Monogr.)、1978年、第48巻、p.45〜55(全体が参照により本願に援用される)に記載されている。
酵母ゴーストは、典型的には透過処理または溶解処理された細胞を再密封することにより生産され、かつ、必ずしも必要ではないが、その細胞の細胞小器官のうちの少なくとも一部を含むことができる。そのような方法は、例えば、フランツゾフ(Franzusoff)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、1983年、第258巻、p.3608〜3614、およびバッセイ(Bussey)ら、バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta)、1979年、第553巻、p.185〜196(それぞれ全体が参照により本願に援用される)に記載されている。
酵母膜粒子(細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物もしくはその画分)とは、天然の核または細胞質を欠く酵母細胞膜を指す。該粒子は、天然の酵母細胞膜の大きさから、当業者に周知の音波処理またはその他の膜破壊方法とその後の再密封とによって生じた微粒子に至る範囲の大きさを含む、任意の大きさのものであってよい。細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物を生産する方法は、例えば、フランツゾフ(Franzusoff)ら、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth. Enzymol.)、1991年、第194巻、p.662〜674に記載されている。さらに酵母膜粒子の画分を使用することも可能であり、該画分は、酵母膜部分を、および、抗原または他のタンパク質が酵母膜粒子の調製に先立って酵母により組換え発現される場合は対象とする抗原または他のタンパク質を、含有する。対象とする抗原または他のタンパク質は、膜の内側、膜のいずれかの表面上、またはこれらの組み合わせにおいて担持されうる(すなわち、タンパク質は、膜の内側および外側の両方にあってもよいし、かつ/または、酵母膜粒子の膜を貫通していてもよい)。1つの実施形態では、酵母膜粒子は組換え酵母膜粒子であって、少なくとも1つの所望の対象とする抗原または他のタンパク質を膜の表面上に、または膜内に少なくとも部分的に埋め込んで備えている、完全な酵母膜、破壊された酵母膜、または破壊および再密封された酵母膜であってよい。
酵母細胞壁調製物の一例は、単離された酵母細胞壁であって、その表面上に、または細胞壁内に少なくとも部分的に埋め込んで抗原を担持している酵母細胞壁の調製物であり、該酵母細胞壁調製物は、動物に投与された時に疾患標的に対する所望の免疫応答を刺激するようになっている。
本発明の酵母ビヒクルを生産するために任意の酵母株を使用することができる。酵母は、3つの綱すなわち:子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)および不完全菌類(Fungi Imperfecti)のうちの1つに属する単細胞微生物である。免疫調節剤として使用するための酵母の種類の選択に対する1つの留意事項は、酵母の病原性である。1つの実施形態では、酵母はサッカロマイセス・セレビシエのような非病原性の株である。非病原性の酵母株の選択は、酵母ビヒクルが投与される個体への何らかの副作用を最小限にする。しかしながら、酵母の病原性が当業者に周知の任意の手段によって無効とされうる場合(例えば突然変異株)、病原性酵母が使用されてもよい。
本発明において使用されうる酵母菌株の属には、限定するものではないが、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)およびヤロウィア属(Yarrowia)が挙げられる。1つの態様では、酵母の属はサッカロマイセス属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ピチア属またはシゾサッカロマイセス属から選択され、1つの態様では、酵母の属はサッカロマイセス属、ハンゼヌラ属およびピチア属から選択され、1つの態様ではサッカロマイセス属が使用される。本発明において使用されうる酵母菌株の種には、限定するものではないが、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィル(Candida kefyr)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコックス・ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロマイセス・マルキシアヌスのラクティス種(Kluyveromyces marxianus var. lactis)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。当然のことであるが、いくつかの上記生物種は前述の生物種の内に含まれるように意図される様々な亜種、タイプ、サブタイプなどを含む。1つの態様では、本発明において使用される酵母の種にはS.セレビシエ、C.アルビカンス、H.ポリモルファ、P.パストリスおよびS.ポンベが挙げられる。S.セレビシエは、取扱が比較的簡単であり、かつ食品添加物としての使用について「安全性認定(Generally Recognized As Safe)」すなわち「GRAS」(GRAS、FDA規則案62FR18938、1997年4月17日)であることから、有用である。本発明の1つの実施形態は、S.セレビシエcir○株のような、プラスミドを極めて多くのコピー数へと複製することができる酵母株である。このS.セレビシエ株は、1つ以上の標的抗原および/または抗原融合タンパク質および/またはその他のタンパク質が高レベルで発現されることを可能にする発現ベクターを担持することができるような株の1つである。加えて、任意の突然変異酵母株、例えばN結合型グリコシル化を伸長する酵素における変異のような、発現される標的抗原またはその他のタンパク質の翻訳後修飾の低減を示す突然変異酵母株などが、本発明で使用されてもよい。
本発明のほとんどの実施形態では、酵母系免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原、その免疫原性ドメイン、またはそのエピトープを含んでいる。本発明での使用が企図される抗原には、HBVタンパク質もしくはそのドメインの突然変異体、バリアントおよびアゴニストを含む、任意のHBV抗原またはその免疫原性ドメインであって、HBV感染に対して宿主を予防的もしくは治療的に免疫する目的で誘発することが望まれる免疫応答の対象であるものが挙げられる。本発明の様々な実施形態において有用なHBV抗原は、上記に詳細に記載されている。
任意選択で、本発明の酵母系免疫療法組成物の構成成分として使用されるタンパク質、例えば融合タンパク質は、酵母内における組換え抗原の発現または発現の安定性を改善または増強するのに特に有用である構築物を使用して生産される。典型的には、所望の抗原性タンパク質またはペプチドは、そのアミノ末端において以下すなわち:(a)酵母ビヒクル内における融合タンパク質の発現を安定させるか、または発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止する特定の合成ペプチド(そのようなペプチドは、例えば2004年8月12日に公開された米国特許出願公開第2004−0156858A1号明細書(全体が参照により本願に援用される)に詳細に記載されている);(b)内在性酵母タンパク質の少なくとも一部分、例えば、限定するものではないがαファクターであって、いずれの融合パートナーも酵母内におけるタンパク質の発現の安定性の改善をもたらし、かつ/または酵母細胞による該タンパク質の翻訳後修飾を防止するもの(そのようなタンパク質も上述の米国特許出願公開第2004−0156858A1号明細書に詳細に記載されている);ならびに(c)融合タンパク質が酵母の表面で発現されるようにする酵母タンパク質(例えば本明細書中により詳細に記載されたAgaタンパク質)の少なくとも一部、のうち少なくともいずれかに融合される。加えて、本発明は、特にタンパク質の選択および同定に使用するために、抗原をコードする構築物のC末端に融合されるペプチドの使用を任意選択で含む。そのようなペプチドには、限定するものではないが、任意の合成または天然ペプチド、例えばペプチドタグ(例えばヘキサヒスチジン)または任意の他の短いエピトープタグが挙げられる。本発明による抗原のC末端に取り付けられるペプチドは、上記に議論されたN末端ペプチドの付加の有無にかかわらず使用されうる。
1つの実施形態では、融合タンパク質において有用な、抗原とは異種の少なくとも2つのアミノ酸残基で構成されている合成ペプチドが抗原のN末端に連結され、該ペプチドは酵母ビヒクル内における融合タンパク質の発現を安定させるかまたは発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止する。該合成ペプチドおよび抗原のN末端部分はともに、以下の必要条件すなわち:(1)融合タンパク質の1位のアミノ酸残基はメチオニンであること(すなわち合成ペプチド中の第1のアミノ酸がメチオニンであること);(2)融合タンパク質の2位のアミノ酸残基はグリシンまたはプロリンではないこと(すなわち合成ペプチド中の第2のアミノ酸はグリシンまたはプロリンではないこと);(3)融合タンパク質の2〜6位のアミノ酸残基はいずれもメチオニンではないこと(すなわち、2〜6位のアミノ酸は、合成ペプチドの一部であれ、合成ペプチドが6アミノ酸より短い場合はタンパク質であれ、メチオニンを含まないこと);および(4)融合タンパク質の2〜6位のアミノ酸はいずれもリジンまたはアルギニンではないこと(すなわち、2〜6位のアミノ酸は、合成ペプチドの一部であれ、合成ペプチドが5アミノ酸より短い場合はタンパク質であれ、リジンまたはアルギニンを含まないこと)、を有する融合タンパク質を形成する。合成ペプチドは2アミノ酸ほどの短さであってもよいが、1つの態様では、2〜6アミノ酸(3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸を含む)であり、また6アミノ酸より長く、全ての整数で最大約200アミノ酸、300アミノ酸、400アミノ酸、500アミノ酸まで、またはそれ以上であってもよい。
1つの実施形態では、融合タンパク質は、M‐X2‐X3‐X4‐X5‐X6のアミノ酸配列を含み、前記配列中、Mはメチオニンであり;X2は、グリシン、プロリン、リジンまたはアルギニン以外の任意のアミノ酸であり;X3は、メチオニン、リジンまたはアルギニン以外の任意のアミノ酸であり;X4は、メチオニン、リジンまたはアルギニン以外の任意のアミノ酸であり;X5は、メチオニン、リジンまたはアルギニン以外の任意のアミノ酸であり;X6は、メチオニン、リジンまたはアルギニン以外の任意のアミノ酸である。1つの実施形態では、X6残基はプロリンである。酵母における抗原の発現の安定性を増強し、かつ/または酵母における該タンパク質の翻訳後修飾を防止する例示の合成配列には、配列M‐A‐D‐E‐A‐P(配列番号37)が挙げられる。同じ特性を備えた別の例示の合成配列はM‐Vである。発現産物の安定性の増強に加えて、これらの融合パートナーは、構築物中の免疫抗原に対する免疫応答に悪影響を及ぼさないようである。加えて、合成融合ペプチドは、抗体のような選択作用物質によって認識されうるエピトープを提供するように設計可能である。
1つの実施形態では、HBV抗原は、N末端においてαファクタープレプロ配列(αファクターシグナルリーダー配列とも呼ばれ、そのアミノ酸配列は配列番号89または配列番号90によって本明細書中に例証されている)のような酵母タンパク質に連結される。酵母のαファクタープレプロ配列の他の配列も当分野において周知であり、本発明における使用のために含まれる。
本発明の1つの態様では、酵母ビヒクルは、発現されたタンパク質産物の送達または移動によって、部分的または全体的に、酵母ビヒクルの表面上に抗原が発現または提供されるように操作される(細胞外発現)。本発明のこの態様を遂行する1つの方法は、酵母ビヒクルの表面に1つ以上のタンパク質を配置するためのスペーサーアームを使用することである。例えば、抗原または対象とする他のタンパク質と、該抗原または対象とする他のタンパク質を酵母細胞壁へ向けて方向付けるタンパク質との融合タンパク質を作出するために、スペーサーアームを使用することができる。例えば、他のタンパク質の方向付けを行うために使用されうるような1つのタンパク質は、抗原または他のタンパク質が酵母の表面に位置するように、該抗原または他のタンパク質が酵母細胞壁へ向けて方向付けられることを可能にする酵母タンパク質(例えば細胞壁タンパク質(cell wall protein)2(cwp2)、Aga2、Pir4またはFlo1タンパク質)である。酵母タンパク質以外のタンパク質がスペーサーアームに使用されてもよいが;いかなるスペーサーアームタンパク質についても、最も望ましいのは免疫原性応答(immunogenic response)をスペーサーアームタンパク質ではなく標的抗原に対して向かわせることである。そのため、他のタンパク質がスペーサーアームに使用される場合、使用されるスペーサーアームタンパク質は、標的抗原に対する免疫応答が圧倒されるほど大きな免疫応答をスペーサーアームタンパク質自体に対して生成するべきではない。当業者は、スペーサーアームタンパク質に対して、標的抗原に関する免疫応答に比べて小さな免疫応答となるように目指すべきである。スペーサーアームは、必要に応じて、抗原が酵母から容易に採取または移出処理されることを可能にする切断部位(例えばプロテアーゼ切断部位)を有するように構築されうる。免疫応答の大きさを決定する任意の既知の方法が使用可能であり(例えば抗体産生、溶解アッセイなど)、かつ当業者によく知られている。
標的抗原または他のタンパク質を酵母表面上に露出されるように位置決めする別の方法は、標的物を酵母細胞壁につなぎ留めるためにグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)のようなシグナル配列を使用することである。別例として、位置決めは、抗原または対象とする他のタンパク質を小胞体(ER)内への移動を介して分泌経路へと方向付け、その結果該抗原が細胞壁に結合されるタンパク質(例えばcwp)に結合するようにするシグナル配列を追加することにより、遂行されてもよい。
1つの態様では、スペーサーアームタンパク質は酵母タンパク質である。該酵母タンパク質は、約2アミノ酸〜約800アミノ酸の酵母タンパク質で構成されうる。1つの実施形態では、該酵母タンパク質は約10〜700アミノ酸である。別の実施形態では、該酵母タンパク質は約40〜600アミノ酸である。本発明の他の実施形態は、少なくとも250アミノ酸、少なくとも300アミノ酸、少なくとも350アミノ酸、少なくとも400アミノ酸、少なくとも450アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも550アミノ酸、少なくとも600アミノ酸、または少なくとも650アミノ酸である酵母タンパク質を含む。1つの実施形態では、酵母タンパク質は少なくとも450アミノ酸の長さである。抗原の表面発現の最適化に関する別の留意事項は、必要な場合には、抗原およびスペーサーアームの組み合わせが、モノマーとして、もしくはダイマーとして、もしくはトライマーとして発現されるべきか、または互いに連結された更に多数のユニットとして発現されるべきか、ということである。このモノマー、ダイマー、トライマーなどの使用は、抗原の適切な間隔(スペーシング)または折りたたみを可能とし、その結果として該抗原の(全てではないにせよ)ある部分がより免疫原性となる様式で酵母ビヒクルの表面に提示されるようになっている。
酵母タンパク質の使用は、酵母ビヒクル中の融合タンパク質の発現を安定させることを可能とし、発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止し、かつ/または、融合タンパク質を酵母内の特定のコンパートメントへ方向付ける(例えば酵母細胞の表面で発現されるようにする)。酵母の分泌経路内への送達については、使用する例示の酵母タンパク質には、限定するものではないが、Aga(例えば、限定するものではないが、AgalおよびAga2のうち少なくとも一方);SUC2(酵母インベルターゼ);αファクターシグナルリーダー配列;CPY;細胞壁内への局在および保持のためにはCwp2p;娘細胞形成の初期段階における酵母細胞の芽への局在のためにはBUD遺伝子群;Flo1p;Pir2p;ならびにPir4p、が挙げられる。
他の配列は、タンパク質を酵母ビヒクルの他の部分へ、例えば、サイトゾル内またはミトコンドリアまたは小胞体または核へと方向付け、保持し、かつ/または安定させるために、使用されうる。上記の実施形態のうちいずれかに使用されうる適切な酵母タンパク質の例には、限定するものではないが、TK、AF、SEC7;グルコース抑制性の発現(repressible expression in glucose)およびサイトゾル局在のためにはホスホエノールピルビル酸カルボキシキナーゼPCK1、ホスホグリセロキナーゼPGKおよびトリオースリン酸イソメラーゼTPI遺伝子産物;細胞が熱処理に供されると発現が誘導され、かつそのタンパク質は熱安定性が高い、熱ショック蛋白質SSA1、SSA3、SSA4、SSC1;ミトコンドリア内への移行のためにはミトコンドリアタンパク質CYC1;ACT1、が挙げられる。
酵母系免疫療法組成物を製造するために、酵母ビヒクルを製造し、かつ酵母ビヒクルを抗原ならびに対象とする他のタンパク質および/または作用物質のうち少なくともいずれかとともに、発現、組み合わせ、および関連付けのうち少なくともいずれかを行う方法が、本発明によって企図される。
本発明によれば、用語「酵母ビヒクル‐抗原複合体」または「酵母‐抗原複合体」は、酵母ビヒクルの抗原との任意の関連を述べるために総称的に使用され、また、そのような組成物が上述のような免疫応答を誘発するために使用される場合は、「酵母系免疫療法組成物」と互換的に使用されうる。そのような関連には、酵母(組換え酵母)による該抗原の発現、酵母内への抗原の導入、酵母への抗原の物理的結合、ならびに、バッファーもしくは他の溶液中または調合物中などにおける酵母および抗原の混合が含まれる。この種の複合体は以下に詳細に説明される。
1つの実施形態では、酵母ビヒクルを調製するために使用される酵母細胞は、タンパク質(例えば抗原)が該酵母細胞によって発現されるように、該タンパク質をコードする異種核酸分子でトランスフェクトされる。そのような酵母は本明細書中において組換え酵母または組換え酵母ビヒクルとも呼ばれる。その後、酵母細胞は完全な細胞として樹状細胞内に入れられてもよいし、酵母細胞は殺処理されてもよく、または例えば酵母スフェロプラスト、サイトプラスト、ゴーストもしくは細胞レベル以下の粒子の形成などによって派生物化されることも可能であり、該派生物はいずれもその後樹状細胞内に入れられる。酵母スフェロプラストは、抗原または他のタンパク質を発現する組換えスフェロプラストを生産するために、組換え核酸分子を用いて直接トランスフェクトされてもよい(例えば、スフェロプラストが全酵母から製造され、次いでトランスフェクトされる)。
一般に、酵母ビヒクルならびに抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方は、本明細書中に記載された任意の技術によって関連付けることができる。1つの態様では、酵母ビヒクルに、抗原および作用物質のうち少なくとも一方の細胞内封入がなされた。別の態様では、抗原および作用物質のうち少なくとも一方を、共有結合または非共有結合により酵母ビヒクルに結合させた。さらに別の態様では、酵母ビヒクルと、抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方は、混合によって関連付けがなされた。別の態様、および1つの実施形態では、抗原および作用物質のうち少なくとも一方が、酵母ビヒクルによって、または酵母ビヒクルが得られる元の酵母細胞もしくは酵母スフェロプラストによって、組換え発現される。
本発明の酵母ビヒクルによって産生されるいくつかの抗原および/または他のタンパク質は、酵母ビヒクルによって合理的に産生されうる任意の数の抗原および/または他のタンパク質であり、典型的には少なくとも1個〜少なくとも約6個またはそれ以上の範囲であり、例えば約2個〜約6個の異種抗原および/または他のタンパク質である。
本発明の酵母ビヒクルにおける抗原または他のタンパク質の発現は、当業者に周知の技術を使用して遂行される。簡潔に述べると、少なくとも1つの所望の抗原または他のタンパク質をコードする核酸分子は、宿主酵母細胞内に形質転換された時に該核酸分子の構成的発現または調節された発現のいずれかを行うことができるように該核酸分子が転写調節配列に作動可能に連結される様式で、発現ベクター内に挿入される。1つ以上の抗原および他のタンパク質のうち少なくとも一方をコードする核酸分子は、1つ以上の発現調節配列に作動可能に連結された1つ以上の発現ベクター上に存在しうる。特に重要な発現調節配列は、プロモーターおよび上流活性化配列のような、転写開始を制御するものである。任意の適切な酵母プロモーターが本発明において使用可能であり、様々なそのようなプロモーターは当業者に周知である。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のためのプロモーターには、限定するものではないが、以下の酵母タンパク質:アルコール脱水素酵素I(ADH1)もしくはII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、翻訳伸長因子EF‐1α(TEF2)、グリセリンアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;トリオースリン酸デヒドロゲナーゼについてはTDH3とも呼ばれる)、ガラクトキナーゼ(GAL1)、ガラクトース‐1‐リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GAL7)、UDPガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、チトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)および酸性ホスファターゼ(PHO5)をコードする遺伝子のプロモーター、例えばADH2/GAPDHプロモーターおよびCYC1/GAL10プロモーターのようなハイブリッドプロモーター、ならびに例えば細胞内グルコース濃度が低いとき(例えば約0.1〜約0.2パーセント)に誘導されるADH2/GAPDHプロモーター、さらにはCUP1プロモーターおよびTEF2プロモーターが挙げられる。同様に、エンハンサーとも呼ばれるいくつかの上流活性化配列(UAS)が知られている。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のための上流活性化配列には、限定するものではないが、以下のタンパク質すなわち:PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7およびGAL10をコードする遺伝子のUAS、さらには、1つの態様で使用されているADH2のUASと共に、GAL4遺伝子産物によって活性化される他のUAS、が挙げられる。ADH2のUASはADR1遺伝子産物によって活性化されるので、異種遺伝子がADH2のUASに作動可能に連結されている場合はADR1遺伝子を過剰発現させることが好ましい場合がある。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のための転写終止配列には、αファクター、GAPDHおよびCYC1遺伝子の終止配列が含まれる。
メチル栄養性(methyltrophic)酵母において遺伝子を発現させる転写調節配列には、
アルコールオキシダーゼおよびギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写調節領域が含まれる。
本発明による酵母細胞内への核酸分子のトランスフェクションは、核酸分子が細胞内へ導入されうる任意の方法、例えば、限定するものではないが、拡散、能動輸送、浴槽音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合によって遂行されうる。トランスフェクトされる核酸分子は、酵母染色体に統合されてもよいし、当業者に周知の技術を使用して染色体外のベクター上に維持されてもよい。そのような核酸分子を担持している酵母ビヒクルの例は本明細書中に詳細に開示されている。上記に議論されるように、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、および酵母膜粒子すなわち細胞壁調製物も、所望の核酸分子を用いて完全体の酵母微生物または酵母スフェロプラストをトランスフェクトし、その中で抗原を生産し、次いで当業者に周知の技術を使用して該微生物またはスフェロプラストをさらに操作して、所望の抗原または他のタンパク質を含有するサイトプラスト、ゴーストまたは細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物もしくはその画分を製造することにより、組換え生産されうる。
組換え酵母ビヒクルの製造ならびに該酵母ビヒクルによる抗原および他のタンパク質のうち少なくとも一方の発現のための有効な条件には、酵母株を培養可能な有効な培地が含まれる。有効な培地とは、典型的には、同化可能な炭水化物、窒素およびリン酸供給源のほかに適切な塩類、無機質、金属、ならびにビタミンおよび成長因子のような他の栄養素を含む水性の培地である。培地は複合栄養素を含むことも可能であるし、規定の最少培地であってもよい。本発明の酵母株は、様々な容器の中で、例えば、限定するものではないがバイオリアクタ、エルレンマイヤーフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿において培養されうる。培養は、その酵母株について適切な温度、pHおよび酸素含量で行なわれる。そのような培養条件は、十分に当業者の専門知識の範囲内にある(例えば、ガスリー(Guthrie)ら(編)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、1991年、第194巻、米国サンディエゴのアカデミックプレス(Academic Press)、を参照)。
本発明のいくつかの実施形態では、酵母を中性のpH条件下で増殖させる。本明細書中で使用されるように、用語「中性のpH」の一般的な使用法は約pH5.5〜約pH8のpH範囲を指し、1つの態様では、約pH6〜約8の範囲を指す。当業者は、pH計で測定する場合には軽微な変動(例えば10分の1程度または100分の1程度)が生じうることを認識しているであろう。そのため、酵母細胞を増殖させるための中性のpHの使用とは、酵母細胞が培養状態にある時間の大部分の間、該酵母細胞が中性のpHにおいて増殖することを意味している。1つの実施形態では、酵母を、少なくともpH5.5のレベルに維持された培地(すなわち、培地のpHは、pH5.5未満に低下することは許されない)において増殖させる。別の態様では、酵母を約6、6.5、7、7.5または8に維持されたpHレベルで増殖させる。酵母の培養における中性のpHの使用は、免疫調節のために酵母をビヒクルとして使用するのに望ましい特徴であるいくつかの生物学的作用を促進する。例えば、中性のpHにおける酵母の培養は、細胞世代時間に対する悪影響(例えば、倍加時間の遅延)を伴わない酵母の良好な増殖を可能にする。酵母は、自身の細胞壁の柔軟性(pliability)を失うことなく高密度に増殖し続けることができる。中性のpHの使用は、すべての集菌密度において、柔軟な細胞壁を備えた酵母および細胞壁溶解酵素(例えばグルカナーゼ)への感受性の高い酵母のうち少なくとも一方の生産を可能にする。この特質が望ましいのは、可撓性を有する(flexible)細胞壁を備えた酵母が、より酸性の条件下で増殖させた酵母と比較して、例えば酵母を貪食した抗原提示細胞によるサイトカイン(例えばTH1型サイトカイン、例えば、限定するものではないが、IFN‐γ、インターロイキン12(IL‐12)およびIL‐2、さらにはIL‐6のような炎症誘発性サイトカイン)の分泌を促進することにより、様々な免疫応答または免疫応答の増大を引き起こしうるからである。加えて、細胞壁内にある抗原をより利用しやすくなることも、そのような培養方法によってもたらされる。別の態様では、いくつかの抗原について中性のpHを使用することで、そのような抗原を発現する酵母が低いpH(例えばpH5)の培地で培養される場合には不可能である、ジチオトレイトール(DTT)を用いた処理によるジスルフィド結合した抗原の解放が可能となる。
1つの実施形態では、酵母のグリコシル化量の制御が、酵母による、特に表面上での抗原の発現を制御するために使用される。酵母のグリコシル化量は、糖部分が嵩高になりやすいことから、表面上に発現された抗原の免疫原性および抗原性に影響を及ぼす可能性がある。そのため、酵母表面上の糖部分の存在、およびその存在による標的抗原周辺の三次元空間への影響は、本発明による酵母の調節において考慮されるべきである。酵母のグリコシル化量を低減する(または、必要であれば増大させる)ために任意の方法が使用されうる。例えば、グリコシル化が低いものとして選択された酵母突然変異株(例えばmnn1、och1およびmnn9突然変異体)を使用することも考えられるし、突然変異によって標的抗原上のグリコシル化受容体配列を排除することも考えられる。別例として、簡略化されたグリコシル化パターンを備えた酵母(例えばピチア属)を使用することも考えられる。さらに、グリコシル化を低減または変更する方法を用いて酵母を処理することも可能である。
本発明の1つの実施形態では、酵母ビヒクルにおける抗原または他のタンパク質の組換え発現の代わりとして、酵母ビヒクルに、タンパク質もしくはペプチドが、または抗原としての役割を果たしかつ/もしくは本発明による免疫調節物質もしくは生体応答修飾物質として有用である炭水化物もしくは他の分子が、細胞内に入れられる。続いて、今や細胞内に抗原および他のタンパク質のうち少なくとも一方を含有している酵母ビヒクルは、個体に投与されてもよいし、樹状細胞のような担体に入れられてもよい。ペプチドおよびタンパク質は、当業者に周知の技術により、例えば拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、貧食作用、結氷融解サイクルおよび浴槽音波処理などにより、本発明の酵母ビヒクルに直接挿入されうる。ペプチド、タンパク質、炭水化物、または他の分子を直接入れることが可能な酵母ビヒクルには、完全体の酵母のほかに、スフェロプラスト、ゴーストまたはサイトプラストが含まれ、これらは生成させた後で抗原および他の作用物質を入れることができる。別例として、完全体の酵母に抗原および/または作用物質が入れられ、次いでそこからスフェロプラスト、ゴースト、サイトプラストまたは細胞レベル以下の粒子が調製されてもよい。任意の数の抗原および/または他の作用物質、例えば、微生物またはその一部への封入によって提供されるであろうような、少なくとも1、2、3、4個または任意の全ての整数であって何百もしくは何千までの抗原および/または他の作用物質が、本実施形態の酵母ビヒクルに封入可能である。
本発明の別の実施形態では、抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方は酵母ビヒクルに物理的に取り付けられる。抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方の酵母ビヒクルへの物理的結合は、共有結合および非共有結合による結合法を含む当分野における任意の適切な方法、例えば、限定するものではないが、抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方を酵母ビヒクルの外側表面に化学的に架橋すること、または、抗原および他の作用物質のうち少なくとも一方を酵母ビヒクルの外側表面に、例えば抗体もしくは他の結合パートナーの使用によって生物学的に連結すること、によって遂行されうる。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、フォトアフィニティーラベリング、カルボジイミドによる処理、ジスルフィド結合を形成可能な化学物質による処理、および当分野において標準的な他の化学架橋剤による処理を含む方法によって達成されうる。別例として、酵母細胞膜の脂質二重層の電荷または細胞壁の組成を変化させる化学物質を酵母ビヒクルと接触させることにより、酵母の外側表面を特定の電荷特性を有する抗原および/または他の作用物質と融合または結合しやすくしてもよい。抗体、結合ペプチド、可溶性受容体、および他のリガンドのような標的を有する物質も、融合タンパク質として抗原に組み込まれる場合もあれば、他の方法で、酵母ビヒクルへの抗原の結合のために抗原に結合させる場合もある。
抗原または他のタンパク質が酵母の表面上で発現されるかまたは該表面に物理的に取り付けられる場合、1つの態様では、スペーサーアームは、該表面における抗原または他のタンパク質の発現または含有量を最適化するように注意深く選択されうる。スペーサーアームの大きさは、酵母の表面上において結合をなすために抗原または他のタンパク質がどの程度露出されるかに影響を及ぼす可能性がある。よって、どの抗原または他のタンパク質が使用されているかに応じて、当業者は、酵母表面上における該抗原または他のタンパク質のための適切な間隔をもたらすスペーサーアームを選択することになる。1つの実施形態では、スペーサーアームは少なくとも450アミノ酸の酵母タンパク質である。スペーサーアームについては上記に詳細に議論されている。
さらに別の実施形態では、酵母ビヒクルおよび抗原または他のタンパク質は、より受動的、非特異的または非共有結合性の結合メカニズムによって、例えば酵母ビヒクルおよび抗原または他のタンパク質をともにバッファー中または他の適切な調合物(例えば混合剤)の中で穏やかに混合することによって、互いに関連付けられる。
本発明の1つの実施形態では、酵母ビヒクルおよび抗原または他のタンパク質はいずれも樹状細胞またはマクロファージのような担体内に細胞内封入されて、本発明の治療用組成物またはワクチンを形成する。別例として、抗原または他のタンパク質は酵母ビヒクルが存在しない状態で樹状細胞内に入れられてもよい。
1つの実施形態では、完全体の酵母(異種の抗原または他のタンパク質の発現の有無に関わらず)は、酵母細胞壁調製物、酵母膜粒子または酵母フラグメント(すなわち、完全体ではないもの)を製造するような方法で粉砕または加工処理されることが可能であり、酵母フラグメントは、いくつかの実施形態では、免疫応答を増強するために抗原を含む他の組成物(例えばDNAワクチン剤、サブユニットタンパク質ワクチン剤、殺処理または不活性化された病原体)とともに提供されてもよいし、前記組成物とともに投与されてもよい。例えば、酵素処理、化学処理または物理的力(例えば機械的分断または音波処理)が、酵母を破壊してアジュバントとして使用される分割物とするために使用されてもよい。
本発明の1つの実施形態では、本発明において有用な酵母ビヒクルには、殺処理または不活性化済みの酵母ビヒクルが含まれる。酵母の殺処理または不活性化は、当分野で既知の様々な適切な方法のうちいずれかによって為されうる。例えば、酵母の熱不活性化は酵母を不活性化する標準的な方法であり、当業者は、必要に応じて、当分野で既知の標準法によって標的抗原の構造変化をモニタリングすることができる。別例として、酵母を不活性化する他の方法、例えば化学的方法、電気的方法、放射活性を用いる方法、UVを用いる方法などが使用されうる。例えば、「メソッズ・オブ・エンザイモロジー(Methods of Enzymology)」、1990年、第194巻、コールド・スプリング・ハーバー出版(Cold Spring Harbor Publishing)のような標準的な酵母培養の教科書に開示されている方法論を参照のこと。使用される不活性化方策のうちいかなるものも、標的抗原の二次、三次、または四次構造を考慮してその免疫原性を最適化するような構造を保存するべきである。
酵母ビヒクルは、当業者に既知のいくつかの技術を使用して、本発明の酵母系免疫療法組成物または免疫療法産物、例えば対象者に直接投与されるかまたは最初に樹状細胞のような担体に入れられる調製物に、製剤化されうる。例えば、酵母ビヒクルは凍結乾燥法によって乾燥されてもよい。酵母ビヒクルを含む製剤は、製パン作業または醸造作業に使用される酵母について行われるような、固形物またはタブレット中に酵母をパッキングすることによっても調製されうる。加えて、酵母ビヒクルは、宿主または宿主細胞によって忍容される等張バッファーのような薬学的に許容可能な賦形剤と混合されてもよい。そのような賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、およびその他の水性の生理学的に平衡な塩類溶液が挙げられる。固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドのような非水性ビヒクルも使用されうる。他の有用な調合物には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、グリセロールまたはデキストランのような粘性促進剤を含有する懸濁剤が挙げられる。賦形剤は、微量の添加剤、例えば等張性および化学的安定性を増強する物質なども含有することができる。バッファーの例には、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液およびトリス緩衝液が挙げられる一方、保存剤の例にはチメロサール、m‐またはo‐クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。標準的な調合物は、液体注射剤、または注射用の懸濁剤もしくは溶液剤として適切な液体中に取り込まれうる固形剤、のいずれであってもよい。したがって、非液体の調合物では、賦形剤は例えば、投与に先立って滅菌水もしくは生理食塩水を加えることが可能な、デキストロース、ヒト血清アルブミン、および/または保存剤を含むことができる。
本発明の1つの実施形態では、組成物は、生体応答修飾化合物とも呼ばれうる追加の作用物質を含むか、またはそのような作用物質/修飾物質を産生する能力を備えることができる。例えば、酵母ビヒクルが少なくとも1つの抗原および少なくとも1つの作用物質/生体応答修飾化合物を用いてトランスフェクトまたは封入されてもよいし、本発明の組成物が少なくとも1つの作用物質/生体応答修飾物質と共に投与されてもよい。生体応答修飾物質には、免疫応答を調節することができるアジュバントおよび他の化合物であって免疫調節化合物と呼ばれうるもの、および、酵母系免疫療法薬のような別の化合物または作用物質の生物学的活性(そのような生物学的活性は免疫システムの作用には限定されない)を修飾する化合物が含まれる。ある免疫調節化合物は防御免疫応答を刺激することができる一方、他の免疫調節化合物は有害な免疫応答を抑制することが可能であり、免疫調節薬が所与の酵母系免疫療法薬との組み合わせにおいて有用であるかどうかは、少なくとも部分的には、治療もしくは予防される病状もしくは病態、および治療される個体のうち少なくともいずれかに依存しうる。ある種の生体応答修飾物質は優先的に細胞性免疫応答を増強し、他の生体応答修飾物質は優先的に体液性免疫応答を増強する(すなわち、細胞性免疫が体液性免疫と比較して高レベルである免疫応答を刺激することができる、またはその逆)。ある種の生体応答修飾物質は、酵母系免疫療法薬の生物学的特性と共通した1つ以上の特性を有するか、または酵母系免疫療法薬の生物学的特性を増強もしくは補完する。免疫応答の刺激または抑制を測定するための、ならびに、細胞性免疫応答と体液性免疫応答とを区別するため、および、あるタイプの細胞性応答を別のものと区別する(例えばTH17応答とTH1応答)ための、当業者に既知のいくつかの技術が存在する。
本発明において有用な作用物質/生体応答修飾物質には、限定するものではないが、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、脂質誘導体、ペプチド、タンパク質、多糖類、低分子薬物、抗体およびその抗原結合フラグメント(例えば、限定するものではないが、抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、抗ケモカイン抗体)、ビタミン、ポリヌクレオチド、核酸結合性の構成部分、アプタマー、ならびに増殖調節因子が挙げられる。いくつかの適切な作用物質には、限定するものではないが、IL‐1またはIL‐1もしくはIL‐1Rのアゴニスト、抗IL‐1または他のIL‐1アンタゴニスト;IL‐6またはIL‐6もしくはIL‐6Rのアゴニスト、抗IL‐6または他のIL‐6アンタゴニスト;IL‐12またはIL‐12もしくはIL‐12Rのアゴニスト、抗IL‐12または他のIL‐12アンタゴニスト;IL‐17またはIL‐17もしくはIL‐17Rのアゴニスト、抗IL‐17または他のIL‐17アンタゴニスト;IL‐21またはIL‐21もしくはIL‐21Rのアゴニスト、抗IL‐21または他のIL‐21アンタゴニスト;IL‐22またはIL‐22もしくはIL‐22Rのアゴニスト、抗IL‐22または他のIL‐22アンタゴニスト;IL‐23またはIL‐23もしくはIL‐23Rのアゴニスト、抗IL‐23または他のIL‐23アンタゴニスト;IL‐25またはIL‐25もしくはIL‐25Rのアゴニスト、抗IL‐25または他のIL‐25アンタゴニスト;IL‐27またはIL‐27もしくはIL‐27Rのアゴニスト、抗IL‐27または他のIL‐27アンタゴニスト;I型インターフェロン(IFN‐αを含む)またはI型インターフェロンもしくはその受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト;II型インターフェロン(IFN‐γを含む)またはII型インターフェロンもしくはその受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト;抗CD40抗体、CD40L、抗CTLA‐4抗体(例えば無反応性T細胞を放出するため);T細胞共刺激因子(例えば抗CD137、抗CD28、抗CD40);アレムツズマブ(例えばCamPath(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(例えばONTAK(商標));抗CD4;抗CD25;抗PD‐1、抗PD‐L1、抗PD‐L2;FOXP3を阻害する作用物質(例えばCD4+/CD25+制御性T細胞の活性無効化/死滅させるため);Flt3リガンド、イミキモド(Aldara(商標))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、サルグラモスチム(Leukine(商標));ホルモン、例えば限定するものではないがプロラクチンおよび成長ホルモン;Toll様受容体(TLR)アゴニスト、例えば限定するものではないが、TLR‐2アゴニスト、TLR‐4アゴニスト、TLR‐7アゴニスト、およびTLR‐9アゴニスト;TLRアンタゴニスト、例えば限定するものではないが、TLR‐2アンタゴニスト、TLR‐4アンタゴニスト、TLR‐7アンタゴニストおよびTLR‐9アンタゴニスト;抗炎症薬および免疫調節薬、例えば、限定するものではないが、COX‐2阻害薬(例えばセレコキシブ、NSAIDS)、グルココルチコイド、スタチン、ならびにサリドマイドおよびそのアナログであって例えばIMiD(商標)(サリドマイドの構造的および機能的アナログ(例えばREVLIMID(登録商標)(レナリドマイド)、ACTIMID(登録商標)(ポマリドマイド));炎症誘発性物質、例えば真菌成分もしくは細菌成分、または任意の炎症誘発性サイトカインもしくはケモカイン;免疫療法ワクチン剤、例えば、限定するものではないが、ウイルス由来のワクチン剤、細菌由来のワクチン剤、または抗体由来のワクチン剤;ならびに、任意の他の免疫調節薬、免疫強化物質、抗炎症薬、および炎症誘発性物質のうち少なくともいずれか、が挙げられる。そのような作用物質の任意の組み合わせも本発明によって企図され、またそのような作用物質のうち任意のものであって酵母系免疫療法薬と組み合わされたもの、または該免疫療法薬とともに手順に従って(例えば、同時に、連続して、または他の形式で)投与されるものは、本発明に包含される組成物である。そのような作用物質は当分野において良く知られている。これらの作用物質は単独で使用されてもよいし、本明細書中に記載された他の作用物質と組み合わされてもよい。
作用物質には、所与のタンパク質もしくはペプチドまたはそのドメインの、アゴニストおよびアンタゴニストが含まれうる。本明細書中で使用されるように、「アゴニスト」とは、例えば、限定するものではないが、受容体またはリガンドに結合して反応を生成または誘発する低分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合物質などの任意の化合物または作用物質であって、該受容体またはリガンドに結合する天然の物質の作用を模倣する物質を含みうる。「アンタゴニスト」とは、例えば、限定するものではないが、アゴニストの作用を阻止もしくは阻害または低減する低分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合物質などの任意の化合物または作用物質である。
本発明の組成物は、HBV感染の予防もしくは治療に有用な任意の他の化合物もしくは組成物、またはHBV感染の任意の症状を治療もしくは改善する任意の化合物を、さらに含んでもよいし、または該化合物もしくは組成物とともに(同時に、連続して、または断続的に)投与されてもよい。様々な作用物質が、HBV感染の予防および/または治療もしくは改善に有用であることが知られている。そのような作用物質には、限定するものではないが、抗ウイルス化合物、例えば、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害薬(nRTI)が挙げられるが、これに限定はされない。本発明の1つの態様では、適切な抗ウイルス化合物には、限定するものではないが:テノフォビル(VIREAD(登録商標))、ラミブジン(EPIVIR(登録商標))、アデフォビル(HEPSERA(登録商標))、テルビブジン(TYZEKA(登録商標))、エンテカビル(BARACLUDE(登録商標))、およびこれらの組み合わせ、ならびに/または、インターフェロン、例えばインターフェロンα2aもしくはPEG化インターフェロンα2a(PEGASYS(登録商標))またはインターフェロンλなどが挙げられる。これらの作用物質は、典型的には長期間(例えば、1〜5年またはそれ以上にわたって毎日または毎週)投与される。加えて、本発明の組成物は、予防的免疫療法および治療的免疫療法のうち少なくとも一方を含む他の免疫療法組成物とともに使用されてもよい。例えば、HBVの予防的ワクチン剤は1980年代の初め以来市販されてきた。これら市販のワクチン剤は、精製された組換えB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を提供する非感染性のサブユニットウイルスワクチンであり、出生時より投与されうる。治療用の免疫療法組成物はHBV治療について米国で承認されていないが、そのような組成物には、HBVタンパク質もしくはエピトープのサブユニットワクチン、HBVウイルスベクターワクチン、サイトカイン、およびその他の免疫調節物質(例えばTLRアゴニスト、免疫調節薬剤)が含まれうる。
本発明はさらに、本明細書中に記載された組成物のうち任意のもの、または本明細書中に記載された組成物の個々の成分のうち任意のもの、を含むキットを含む。
《本発明の組成物の投与または使用のための方法》
本発明の組成物であって、本明細書中に記載された酵母系免疫療法組成物、HBVタンパク質および融合タンパク質を含むHBV抗原、ならびに上述のそのようなHBVタンパク質または融合タンパク質をコードする組換え核酸分子、のうち少なくともいずれかの任意の1つ以上(例えば2、3、4、5個以上の組み合わせ)を含みうる組成物、ならびに、本明細書中に記載されるそのような酵母系組成物、抗原、タンパク質、融合タンパク質、または組換え分子を含む他の組成物は、様々なin vivoおよびin vitroの方法において、例えば、限定するものではないが、HBV感染症およびその後遺症の治療および予防のうち少なくとも一方を行うために、HBVの診断アッセイにおいて、または、HBVに対する抗体を生産するために、使用可能である。
本発明の1つの実施形態は、個体または個体集団において、慢性のB型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療、および、慢性のHBV感染の少なくとも1つの症状の予防、改善または治療、のうち少なくともいずれかを行う方法に関する。該方法は、HBVに慢性感染している個体または個体集団に、本発明の1つ以上の免疫療法組成物を投与するステップを含む。1つの態様では、該組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上のHBV抗原を含む免疫療法組成物であって、該組成物には酵母系免疫療法組成物が含まれうる。1つの態様では、該組成物は、本明細書中に記載されるようなHBV抗原を含むタンパク質または融合タンパク質、および、そのようなタンパク質または融合タンパク質をコードする組換え核酸分子、のうち少なくともいずれかを含む。1つの実施形態では、個体または個体集団は慢性HBV感染症に罹患している。1つの態様では、個体または個体集団は、HBV感染の治療に有用な少なくとも1つの他の治療化合物を用いてさらに治療される。そのような治療化合物には、限定するものではないが、直接作用する抗ウイルス薬(例えば、上記または本明細書中他所に記載されたもの)、ならびに、インターフェロンおよび/またはその他の免疫療法薬もしくは免疫調節薬剤、のうち少なくともいずれかが挙げられる。1つの態様では、そのような治療化合物には、宿主を標的とした治療薬(例えば、ウイルス複製を妨害することができるシクロフィリン阻害剤、またはウイルスの生活環(再感染)を妨害することができる再侵入阻害剤(re-entry inhibitor))が挙げられる。
「標準治療」または「SOC」は、一般に、特定の疾患の治療に関する現在認められている標準治療を指す。慢性HBV感染症では、SOCはいくつかの異なる承認された治療プロトコールのうちの1つであってよく、例えば、限定するものではないが、インターフェロン療法および抗ウイルス薬療法のうち少なくとも一方が挙げられる。HBV感染の治療用に現在承認されている抗ウイルス薬には、テノフォビル(VIREAD(登録商標))、ラミブジン(EPIVIR(登録商標))、アデフォビル(HEPSERA(登録商標))、テルビブジン(TYZEKA(登録商標))およびエンテカビル(BARACLUDE(登録商標))が挙げられる。慢性HBV感染について現時点で最も処方されることの多い抗ウイルス薬は、テノフォビルおよびエンテカビルである。慢性HBV感染の治療に有用なインターフェロンには、インターフェロンαのようなI型インターフェロン、例えば、限定するものではないが、インターフェロンα2またはPEG化インターフェロンα2(例えばPEGASYS(登録商標))が挙げられる。1つの実施形態では、インターフェロンは、III型インターフェロン、例えば、限定するものではないがインターフェロンλ1、インターフェロンλ2、およびインターフェロンλ3のうち少なくともいずれかである。本発明の免疫療法組成物は、1つ以上の抗ウイルス薬および/またはインターフェロンおよび/またはその他の免疫療法薬もしくは免疫調節薬剤に先立って、前記薬剤と同時に、前記薬剤とともに断続的に、および/または前記薬剤の後に、投与されうる。他の治療化合物も、本発明の免疫療法組成物を用いる治療に先立って、または該治療の後で、投与されうる。
HBV感染は、典型的には、感染者の血液中のHBsAg(B型肝炎ウイルス表面抗原)およびHBeAg(e抗原)のうち少なくとも一方の検出により、個体において診断される。血清中のHBeAgの検出は活発なウイルス複製を反映しており、かつ感染の臨床転帰はe抗原の状態と相関しうるが、長期的な寛解(または治癒)については、現在の治療法を使用する場合はHBsAgセロコンバージョンを用いるとより良好に予測される(以下を参照)。IgMコア抗体の検出も、感染の最初の6〜12か月間に急性HBV感染を検出するために使用されうる。6か月を超えて血液中にHBsAgが持続すると、典型的には慢性HBV感染と同定される。加えて、慢性HBV感染はHBV DNAの同定(>2000IU/ml)により診断可能であり、これは血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のうち少なくとも一方のレベルの上昇(例えば正常の上限の二倍超)の検出または同定と組み合わされてもよい。
ウイルス感染からの回復(完全寛解、またはHBV治療のエンドポイント)は、それぞれHBeAgおよびHBsAgの消失であるHBeAg/HBsAgセロコンバージョン、ならびにB型肝炎表面抗原に対する抗体(抗HBs)およびHBeAgに対する抗体のうち少なくとも一方の出現によって判断される。臨床研究から、セロコンバージョン、または防御抗体(抗HBs)レベルは、以下すなわち:(a)ラジオイムノアッセイによって決定される10以上のサンプルレシオユニット(SRU);(b)酵素免疫測定法によって決定される良好な結果;または(c)≧10mIU/mlの抗体濃度の検出(10SRUは抗体10mIU/mLに匹敵する)、として定義されている。セロコンバージョンは、現在の標準治療(すなわち抗ウイルス薬またはインターフェロン)では慢性感染者において生じるのに数年を要する可能性がある。患者は、ウイルスDNAの消失または著明な低減(PCRによる検出レベル未満または<2000IU/ml)、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの正常化、および肝臓の炎症および線維化の改善についてもモニタリングされうる。「ALT」は十分に検証された肝損傷の尺度であり、肝臓の炎症の代用としての役割を果たす。過去の大規模な肝炎の治験では、ALTレベルの低下および正常化(ALT正常化)のうち少なくとも一方が、連続生検によって決定されるような肝機能の改善および肝臓線維化の低減と相関することが示されている。
本発明の別の実施形態は、個体または個体集団におけるHBV感染の予防、慢性HBV感染の予防、およびHBV感染の重症度の低減のうち少なくともいずれかを行うために、個体または個体集団をHBVに対して免疫する方法に関する。該方法は、HBVに感染していない(またはHBVに感染していないと考えられる)個体または個体集団に、本発明の組成物を投与するステップを含む。1つの態様では、該組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上のHBV抗原を含む免疫療法組成物、例えば1つ以上の酵母系免疫療法組成物である。1つの態様では、該組成物は、本明細書中に記載されるようなHBV抗原を含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む。
本明細書中で使用されるように、HBV感染を「治療する」という言葉、またはその任意の言い換え(例えば、「HBV感染について治療される」など)は、一般に、感染(急性または慢性)が生じてしまった時点で本発明の組成物を適用または投与することであって、検出可能なウイルス力価の低減または排除(例えばウイルスDNAの低減(PCRによって検出可能なレベル未満または<2000IU/ml))、セロコンバージョンへの到達(HBsAgおよびHBeAgのうち少なくとも一方に対する抗体の出現ならびに血清からのこれらのタンパク質の同時消失または低減)、個体における感染に起因する少なくとも1つの症状の低減、感染によって引き起こされる症状および下流の続発症のうち少なくとも一方の発症および/または重症度の遅延または予防、感染に起因する臓器または生理システムの障害(例えば硬変)の低減(例えば、異常なALTレベルの低減、肝臓の炎症の低減、肝臓の線維化の低減)、肝細胞癌(HCC)の予防ならびに頻発および発病率の低減のうち少なくともいずれか、感染によって悪影響を受ける臓器またはシステム機能における改善(血清ALTレベルの正常化、肝臓の炎症の改善、肝臓の線維化の改善)、感染に対する免疫応答の改善、感染に対する長期記憶免疫応答の改善、HBVウイルスの再活性化の低減、ならびに、個体または個体集団の健康全般の改善、のうち少なくともいずれかを目的として行われることを指す。
1つの態様では、治療の目的は、治療の完了後少なくとも6か月間にわたるウイルス排除の保持である。1つの態様では、治療の目的は、検出可能な血清HBeAgおよび/またはHBsAgタンパク質の消失である。1つの態様では、治療の目的は、B型肝炎表面抗原に対する抗体(抗HBs)および/またはHBeAgに対する抗体の出現である。1つの態様では、治療の目的はセロコンバージョンであり、セロコンバージョンは以下すなわち:(a)ラジオイムノアッセイによって決定される10以上のサンプルレシオユニット(SRU);(b)酵素免疫測定法によって決定される良好な結果;または(c)≧10mIU/mlの抗体濃度の検出(10SRUは抗体10mIU/mLに匹敵する)によって定義されうる。
HBV感染を「予防する」こと、またはその任意の言い換え(例えば「HBV感染の予防」など)は、一般に、HBVによる感染が生じてしまう前に本発明の組成物を適用または投与することであって、HBVによる感染の予防、HBVによる慢性感染の予防(すなわち、個体がそれ以上の治療介入を受けることなく急性HBV感染を排除することを可能にすること)、または、後に万一感染が生じたとき、重症度、ならびに/または、慢性感染によってもたらされる感染期間および生理学的損傷のうち少なくともいずれかを少なくとも低減することであって、例えば、個体における感染に起因する少なくとも1つの症状の重症度もしくは発生率の予防または低減、ならびに、個体もしくは個体集団において、感染によって引き起こされる症状および下流の続発症のうち少なくとも一方の発症および/または重症度の遅延または予防、のうち少なくともいずれかを目的として行われることを指す。1つの態様では、本発明は、例えば本発明の組成物の投与後にHBV急性感染に至った個体が該感染を排除しかつ慢性感染に至らないことを可能にすることによって、慢性HBV感染を予防するために使用されうる。
本発明は、本発明の1つ以上の免疫療法組成物、例えば酵母系免疫療法組成物の、対象者への送達(投与、免疫処置)を含む。投与作業はex vivoで実施されてもin vivoで実施されてもよいが、典型的にはin vivoで行なわれる。ex vivo投与とは、患者から取り出された細胞(樹状細胞)の集団に、酵母ビヒクル、抗原、および任意の他の作用物質または組成物が該細胞に入り込むような条件下で本発明の組成物を投与し、かつ該細胞を患者に戻すことのように、調節ステップの一部を患者の体外で実施することを指す。本発明の治療用組成物は、任意の適切な投与方式によって、患者に戻されてもよいし、患者に投与されてもよい。
組成物の投与は、全身投与、粘膜投与、または標的部位の所在場所近く(例えば感染部位の近く)への投与のうち少なくともいずれかであってよい。適切な投与経路は、予防または治療される病態の種類、使用される抗原、および標的の細胞集団もしくは組織に応じて、当業者には明白となろう。様々な許容可能な投与方法には、限定するものではないが、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、リンパ節内(intranodal)投与、冠動脈内投与、動脈内投与(例えば頚動脈内)、皮下投与、経皮送達、気管内投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例えばエアロゾル)、頭蓋内、脊髄内、眼内、耳内(aural)、鼻腔内、経口、経肺投与、カテーテルの注入、および組織内への直接噴射、が挙げられる。1つの態様では、投与経路には以下すなわち:静脈内、腹腔内、皮下、皮内、リンパ節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経口、眼内、関節内、頭蓋内、および脊髄内、が含まれる。非経口送達には、皮内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、肺内、静脈内、皮下、心房(atrial)カテーテルおよび静脈カテーテルの経路が挙げられる。耳内送達には点耳剤が挙げられ、鼻腔内送達には点鼻剤または鼻腔内注射が挙げられ、眼内送達には点眼剤が挙げられる。エアロゾル(吸入)送達も当分野において標準的な方法を用いて実施されうる(例えば、ストライブリング(Stribling)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1992年、第189巻、p.11277−11281を参照)。粘膜免疫を調節する他の投与経路はウイルス感染の治療に有用となりうる。そのような経路には、気管支、皮内、筋肉内、鼻腔内、他の吸入式、直腸、皮下、局所、経皮、経膣および尿道の経路が含まれる。1つの態様では、本発明の免疫療法組成物は皮下投与される。
本発明の酵母系免疫療法組成物に関し、一般に、適切な一回量は、適切な期間にわたって1回以上投与される場合、所与の種類の細胞、組織、または患者の身体の領域に、1つ以上のHBV抗原またはエピトープに対する抗原特異的な免疫応答を誘発するのに有効な量で酵母ビヒクルおよび抗原(含まれる場合)を有効に提供することができる用量である。例えば、1つの実施形態では、本発明の酵母ビヒクルの1回量は、組成物を投与されている生物体の体重1キログラムあたり約1×105〜約5×107個の酵母細胞相当量である。1つの態様では、本発明の酵母ビヒクルの1回量は、用量あたり(すなわち生物体あたり)約0.1Y.U.(細胞1×106個)〜約100Y.U.(細胞1×109個)であって、細胞0.1×106個きざみとしてあらゆる中間的な用量を含む(すなわち1.1×106、1.2×106、1.3×106・・・)。1つの実施形態では、用量には、1Y.U〜40Y.U.の用量、1Y.U.〜50Y.U.の用量、1Y.U.〜60Y.U.の用量、1Y.U.〜70Y.U.の用量、または1Y.U.〜80Y.U.の用量が含まれ、また1つの態様では、10Y.U.と、40Y.U.、50Y.U.、60Y.U.、70Y.U.、または80Y.U.との間が挙げられる。1つの実施形態では、該用量は、個体の異なる部位に、ただし同じ投与期間中に投与される。例えば、40Y.U.の用量が、1つの投与期間中に個体の4か所の異なる部位に10Y.U.用量を注射することによって投与されてもよいし、20Y.U.の用量が、同じ投与期間中に、個体の4か所の異なる部位に5Y.U.用量を注射することにより、もしくは個体の2か所の異なる部位に10Y.U.用量を注射することにより、投与されてもよい。本発明は、一回量を形成するために、個体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10か所またはそれ以上の異なる部位へ、ある量の酵母系免疫療法組成物(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9 10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20 Y.U.またはそれ以上)を投与することを含む。
治療用組成物の「ブースター」または「ブースト」は、例えば、抗原に対する免疫応答が減弱したとき、または免疫応答を提供するためもしくは特定の1または複数の抗原に対する記憶応答を誘導するための必要に応じて、投与される。ブースターは、約1、2、3、4、5、6、7、または8週間隔から、月1回まで、隔月に1回まで、三月に1回まで、年1回まで、最初の投与の数年後まで、投与可能である。1つの実施形態では、投与スケジュールは、生物体の体重1kgあたり約1×105〜約5×107個の酵母細胞に相当する組成物が、数週間から数か月、数年の期間にわたって少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上投与されるものである。1つの実施形態では、用量は、週1回として1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回量またはそれ以上が投与され、続いてHBVウイルスの所望の抑制または排除を達成するための必要に応じて、月1回の用量となる。例えば、用量は、個体がセロコンバージョンを達成するまで、HBV DNAの力価が2000IU/ml未満に低下するまで、および、ALTレベルが正常化するまで、のうち少なくともいずれかとなるまで投与されうる。1つの実施形態では、用量は、4週のプロトコールで(4週ごと、すなわち第1日、第4週、第8週、第12週などであって、2〜10回用量または臨床医の決定によりそれ以上長く)投与される。個体がセロコンバージョンを達成した後でも、望ましい場合は追加用量が投与される可能性があるが、そのような投薬は必須ではない。
本明細書中に記載された酵母系免疫療法組成物の投与に関し、単一の組成物が個体または個体集団に投与されてもよいし、そのような組成物の組み合わせが投与されてもよい。例えば、本発明は、いくつかの「単一タンパク質」組成物または特定の遺伝子型を対象とした組成物のほかに、複数タンパク質組成物および複数の遺伝子型または遺伝子亜型を標的とする組成物を提供する。従って、所与の個体または個体集団においてHBV感染を最も有効に予防または治療するために、「スパイスラック」手法で2以上の組成物が選択されてもよい。
本発明の1つの態様では、1つ以上の追加の治療薬剤が、酵母系免疫療法組成物とともに連続して投与される。別の実施形態では、1つ以上の追加の治療薬剤は、酵母系免疫療法組成物が投与される前に投与される。別の実施形態では、1つ以上の追加の治療薬剤は、酵母系免疫療法組成物が投与された後に投与される。1つの実施形態では、1つ以上の追加の治療薬剤は、酵母系免疫療法組成物との交互の投薬で投与されるか、または、酵母系組成物が追加の治療薬の1回以上の連続した投薬の間に、もしくは該投薬とともに、所定間隔で投与されるか、もしくはその逆であるプロトコールにおいて、投与される。1つの実施形態では、酵母系免疫療法組成物は、追加の治療薬剤の投与を始める前のある期間にわたって1回以上の用量で投与される。換言すれば、酵母系免疫療法組成物がある期間の間に単独療法として投与され、次に該薬剤の投与が、新しい用量の酵母系免疫療法と同時に、または酵母系免疫療法との交互方式で、追加される。別例として、該薬剤は、酵母系免疫療法組成物の投与を始める前のある期間にわたって投与されてもよい。1つの態様では、該薬剤を発現もしくは担持するために酵母が遺伝子組換え処理されるか、または、異なる酵母が該薬剤を発現もしくは担持するために遺伝子組換え処理もしくは製造される。
本発明の1つの態様では、インターフェロン療法または抗ウイルス化合物療法の治療過程が始まる時に、追加用量の免疫療法組成物が、同じ期間にわたって、またはその期間の少なくとも一部について投与され、かつ、インターフェロンまたは抗ウイルス化合物の治療過程が終了した時点で投与され続けてもよい。しかしながら、全期間を通じた免疫療法の投薬スケジュールは、インターフェロンまたは抗ウイルス化合物のスケジュールとは異なっていてよいし、典型的には異なるものと予想される。例えば、免疫療法組成物は、インターフェロンまたは抗ウイルス薬の最後の所定の(直近の)投薬の後で同じ日数または少なくとも3〜4日(または最後の投薬の後の任意の適切な日数)投与されてもよく、毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、もしくは3〜6か月ごと、または医師により決定されるさらに長い間隔で、投与されうる。免疫療法組成物の単独療法投与が利用される場合は、その初期において、該免疫療法組成物は、4〜12週間にわたって週1回、その後月1回投与されることが好ましい(追加のインターフェロン療法または抗ウイルス薬療法が該プロトコールに加えられるかどうかには関わらない)。1つの態様では、免疫療法組成物は、4〜5週間にわたって週1回投与され、その後完全な治療プロトコールの終了まで月1回投与される。
本発明の態様では、免疫療法組成物および他の薬剤は一緒に(同時に)投与することができる。本明細書中で使用されるように、同時使用とは必ずしも全ての化合物の全ての用量が同日において同時に投与されることを意味しない。むしろ、同時使用とは、それぞれの治療要素(例えば免疫療法とインターフェロン療法、または免疫療法と抗ウイルス薬療法)がほぼ同じ時期(互いに数時間または最大でも1〜7日以内)に開始され、かつ同じ全体期間にわたって投与されることを意味し、留意すべきはそれぞれの要素が異なる投薬スケジュール(例えば、インターフェロンは週1回、免疫療法は月1回、抗ウイルス薬は毎日または毎週)を有しうることである。加えて、同時投与期間の前後に、該薬剤または免疫療法組成物のうちいずれか1つが他の薬剤を伴わずに投与されてもよい。
本発明の免疫療法組成物をテノフォビルまたはエンテカビルのような抗ウイルス薬とともに使用することにより、該抗ウイルス薬を使用する時間経過をより短くすることを可能にすることが、本発明によって企図される。同様の結果は、本発明の免疫療法薬をインターフェロンと組み合わせる場合にも期待される。抗ウイルス薬またはインターフェロンについての投薬要件も、本発明の免疫療法薬と組み合わせる結果として低減または改変されて、該薬物に対する患者の忍容性を概ね改善する可能性がある。加えて、本発明の免疫療法組成物が、抗ウイルス療法のみではセロコンバージョンまたはウイルス応答の保持をなすことのできない患者についてこれらのエンドポイントを可能にするようになることが企図される。換言すれば、本発明の免疫療法組成物が抗ウイルス薬またはインターフェロンと組み合わされると、抗ウイルス薬またはインターフェロンを単独で用いてセロコンバージョンを達成するよりも多数の患者がセロコンバージョンを達成することになる。HBV感染に関する現在のSOCの下では、抗ウイルス薬は、6か月から1年、2年、3年、4年、5年またはより長く(例えば無期限に)投与される可能性がある。そのような治療を本発明の免疫療法組成物と組み合わせることによって、抗ウイルス薬の投与のための期間が数か月または数年短縮される可能性がある。単独療法としての、または、抗ウイルス薬および免疫調節薬を用いる方法のうち少なくともいずれかと組み合わせた、本発明の免疫療法組成物の使用は、HBsAgおよびHBeAgのうち少なくとも一方の消失;HBeAgセロコンバージョン、HBsAgセロコンバージョン、または完全なセロコンバージョン;ならびに多数の個体における、治療の完了後少なくとも6か月にわたるウイルス排除の保持、を達成するのに有効であろうことが企図される。患者によっては、本発明による免疫療法は、単独療法として、または、抗ウイルス手法および免疫調節手法のうち少なくともいずれかと組み合わせて、使用された時、HBsAgおよびHBeAgのうち少なくとも一方の消失は達成するがセロコンバージョン(抗HBs抗体または抗HBeAg抗体の出現)は達成しない場合がある。この状況では、患者において完全寛解を達成するために、現行の予防的組換えHBVサブユニットワクチンのような薬剤を、単独で、または本発明の酵母系免疫療法および抗ウイルス薬もしくは他の免疫調節薬のうち少なくともいずれかと組み合わせて追加で使用することは、本発明の実施形態である。
本明細書中で使用されるように、用語「抗ウイルス薬」とは、任意の化合物または薬物、典型的には低分子阻害剤または抗体であって、直接的な抗ウイルス治療効果を備えたウイルス生活環の1以上のステップを標的とするものを指す。本発明の1つの実施形態では、本発明の免疫療法組成物とともに同じ治療プロトコールにおいて投与される抗ウイルス化合物または薬物は、テノフォビル(VIREAD(登録商標))、ラミブジン(EPIVIR(登録商標))、アデフォビル(HEPSERA(登録商標))、テルビブジン(TYZEKA(登録商標))およびエンテカビル(BARACLUDE(登録商標))、もしくはこれらの任意のアナログもしくは誘導体、またはそのような化合物、薬物、アナログもしくは誘導体を含むかもしくは含有している任意の組成物から選択される。
テノフォビル(フマル酸テノホビルジソプロキシルまたはTDF)、すなわち({[(2R)‐1‐(6‐アミノ‐9H‐プリン‐9‐イル)プロパン‐2‐イル]オキシ}メチル)ホスホン酸は、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤(nRTI)である。HBV感染の治療については、テノフォビルは、典型的には300mg(フマル酸テノホビルジソプロキシル)の用量で毎日1回服用される丸剤として成人に投与される。小児患者についての用量決定は患者の体重に基づき(体重1kg当たり8mg、最大300mgまでを毎日1回)、錠剤または経口用粉剤として提供されうる。
ラミブジン、すなわち2’,3’‐ジデオキシ‐3’‐チアシチジン(一般に3TCと呼ばれる)は強力なヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(nRTI)である。HBV感染の治療については、ラミブジンは、100mgの用量で毎日1回(3か月〜12歳の小児については3.1〜4.4mg/kg(1.4〜2mg/ポンド)で1日2回)服用される丸剤または経口液剤として投与される。
アデフォビル(アデフォビルジピボキシル)、すなわち9‐[2‐[[ビス[(ピバロイルオキシ)メトキシ]‐ホスフィニル]‐メトキシ]エチル]アデニンは、経口投与されるヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤(ntRTI)である。HBV感染の治療については、アデフォビルは、10mgの用量で毎日1回服用される丸剤として投与される。
テルビブジン、すなわち1‐(2‐デオキシ‐β‐L‐エリスロ‐ペントフラノシル)‐5‐メチルピリミジン‐2,4(1H,3H)‐ジオンは、合成チミジンヌクレオシドアナログ(チミジンのL‐異性体)である。HBV感染の治療については、テルビブジンは、600mgの用量で毎日1回服用される丸剤または経口液剤として投与される。
エンテカビル、すなわち2‐アミノ‐9‐[(1S,3R,4S)‐4‐ヒドロキシ‐3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチリデンシクロペンチル]‐6,9‐ジヒドロ‐3H‐プリン‐6‐オンは、ウイルスの逆転写、DNA複製および転写を阻害するヌクレオシドアナログ(グアニンアナログ)である。HBV感染の治療については、エンテカビルは、0.5mgの用量で毎日1回(ラミブジン治療抵抗性またはテルビブジン耐性の突然変異については毎日1mg)服用される丸剤または経口液剤として投与される。
本発明の1つの実施形態では、本発明の免疫療法組成物を用いる治療プロトコールにおいて投与されるインターフェロンは、インターフェロンであり、また1つの態様ではインターフェロンαであり、また1つの態様ではインターフェロンα2bであるか(皮下注射により週3回投与);またはPEG化インターフェロンα2a(例えばPEGASYS(登録商標))である。本明細書中で使用されるように、用語「インターフェロン」は、二本鎖RNAの存在に応答して免疫システムの細胞および種々様々の細胞によって典型的に産生されるサイトカインを指す。インターフェロンは、宿主細胞内におけるウイルス複製を阻害すること、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージを活性化すること、リンパ球への抗原提示を高めること、ならびにウイルス感染に対する宿主細胞の抵抗性を誘導することにより、免疫応答を支援する。I型インターフェロンにはインターフェロンαが挙げられる。IIIインターフェロンにはインターフェロンλが挙げられる。本発明の方法において有用なインターフェロンには、任意のI型またはIII型インターフェロンであって、例えばインターフェロンα、インターフェロンα2が含まれ、1つの態様では、より長寿命の形態のインターフェロン、例えば、限定するものではないが、PEG化インターフェロン、インターフェロン融合タンパク質(アルブミンに融合したインターフェロン)、およびインターフェロンを含む放出制御製剤(例えばミクロスフェア中のインターフェロンまたはポリアミノ酸ナノ粒子を備えたインターフェロン)、が挙げられる。1つのインターフェロン、PEGASYS(登録商標)(PEG化インターフェロンα2a)は、遺伝子組換えインターフェロンα2a(およその分子量[MW]20,000ダルトン)を単一の分岐型ビス‐モノメトキシポリエチレングリコール(PEG)鎖(およそのMW40,000ダルトン)と共有結合によりコンジュゲートしたものである。PEG部分は単一部位においてリジンへの安定したアミド結合を介してインターフェロンα部分に連結されている。PEG化インターフェロンα2aのおよその分子量は60,000ダルトンである。
インターフェロンは典型的には筋肉内または皮下注射によって投与され、300〜1000万ユニットの用量で投与可能であり、1つの実施形態では300万ユニットを用いることが好ましい。インターフェロンの用量は、1週間に1、2、3、4、5、または6回から、週1回、隔週、3週ごと、または毎月まで様々となりうる規則的なスケジュールで投与されうる。現在利用可能な、かつ、本発明によるインターフェロン用の好ましい投薬スケジュールである、インターフェロンの通常用量は、週1回で提供される。HBVの治療については、PEG化インターフェロンα2aは、現在、180mgの用量(1.0mlバイラルまたは0.5mlの充填済みシリンジ)で週に一度、合計48週間にわたって皮下投与される。投薬の量およびタイミングは、医師の選択および推奨によって、また使用される特定のインターフェロンに関する推奨に従って様々であってよく、かつ当業者が適正量を決定する能力の範囲内にある。本発明の免疫療法組成物とともにインターフェロン療法を使用することにより、インターフェロンの用量の濃度および投薬回数のうち少なくとも一方(インターフェロンに要する時間およびインターフェロンの投薬間隔のうち少なくとも一方)が低減されうることが企図される。
本発明の方法では、組成物および治療用組成物は、任意の脊椎動物を含む動物に、特に脊椎動物哺乳綱に属する任意の動物であって、例えば、限定するものではないが、霊長類、げっ歯類、家畜および家庭のペットに、投与されうる。家畜には、食用の哺乳動物、または有用産物を生産する哺乳動物(例えば羊毛生産用の羊)が含まれる。治療または予防を行う哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマおよびブタが含まれる。
「個体」とは、哺乳動物のような脊椎動物であって、例えば、限定するものではないがヒトが含まれる。哺乳動物には、限定するものではないが家畜、競技用動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。用語「個体」は、用語「動物」、「対象者」または「患者」と互換的に使用することができる。
[本発明において有用な一般的技法]
本発明の実施には、別途指定のないかぎり、従来の分子生物学的技法(組換え技法を含む)、微生物学的技法、細胞生物学的技法、生化学的技法、核酸化学的技法および免疫学的技法(当業者には良く知られている)を使用することになろう。そのような技法は文献に十分に説明されており、該文献は例えば、ガスリー(Guthrie)ら編、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods of Enzymology)、第194巻、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1990年;スキナー(Skinner)ら編、「酵母の生物学および活動(Biology and activities of yeasts)」、アカデミックプレス(Academic Press)、1980年;ローズ(Rose)ら、「酵母の遺伝学における方法:実験コースマニュアル(Methods in yeast genetics : a laboratory course manual)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1990年;プリングル(Pringle)ら編、「酵母サッカロマイセス属:細胞周期および細胞生物学(The Yeast Saccharomyces: Cell Cycle and Cell Biology)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1997年;ジョーンズ(Jones)ら編、「酵母サッカロマイセス属:遺伝子発現(The Yeast Saccharomyces: Gene Expression)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1993年;ブローチ(Broach)ら編、「酵母サッカロマイセス属:ゲノム動態、タンパク質合成、およびエネルギー論(The Yeast Saccharomyces: Genome Dynamics, Protein Synthesis, and Energetics)」、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1992年;サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第二版、1989年ならびにサムブルック(Sambrook)およびラッセル(Russel)、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第三版、2001年(合わせて本明細書中では「サムブルック」と呼ばれる);F.M.オースベル(F.M. Ausubel)ら編、「分子生物学最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1987年(2001年までの追補を含む);マリス(Mullis)ら編、「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR: The Polymerase Chain Reaction)」、1994年;ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体、実験の手引き(Antibodies, A Laboratory Manual)」、米国ニューヨークのコールド・スプリング・ハーバー出版(Cold Spring Harbor Publications)、1988年;ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体使用法:実験の手引き(Using Antibodies: A Laboratory Manual)」、米国ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバーのコールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1999年(合わせて本明細書中では「ハーローおよびレーン」と呼ばれる)、ビューケージ(Beaucage)ら編、「核酸化学最新プロトコール(Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry)」、米国ニューヨーク、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley and Sons, Inc.)、2000年;C.クラーセン(C. Klaassen)編、「カサレおよびドゥルの毒物学:毒物の基礎科学(Casarett and Doull's Toxicology The Basic Science of Poisons)」第6版、2001年、ならびに、S.プロトキン(S. Plotkin)およびW.オレンスタイン(W. Orenstein)編、「ワクチン(Vaccines)」第3版、1999年、である。
[一般的定義]
「TARMOGEN(商標)」(グローブイミューン・インコーポレイテッド(GlobeImmune, Inc.)、米国コロラド州ルイビル)は、一般に、酵母ビヒクルであって1つ以上の異種抗原を細胞外(該酵母ビヒクルの表面上に)、細胞内(内部もしくは細胞質に)、または細胞外および細胞内の両方に発現している酵母ビヒクルを指す。TARMOGEN(商標)製品については広く説明されている(例えば米国特許第5,830,463号明細書を参照)。ある種の酵母系免疫療法組成物、ならびに該組成物の製造方法および一般的使用方法についても、例えば米国特許第5,830,463号明細書、米国特許第7,083,787号明細書に、米国特許第7,736,642号明細書、スタッブス(Stubbs)ら、ネイチャー・メディシン(Nat. Med.)、2001年、第7巻、p.625−629、ルー(Lu)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2004年、第64巻、p.5084−5088、そしてバーンスタイン(Bernstein)ら、ワクチン(Vaccine)、2008年1月24日、第26巻、第4号、p.509−21(前記文献はそれぞれ全体が参照により本願に援用される)に詳細に記載されている。
本明細書中で使用されるように、用語「アナログ」とは、別の化合物に構造上類似しているが組成においてわずかに異なる化合物を指す(例えば1つの原子を異なる元素の原子に置き換える場合、または特定の官能基の存在下において、1つの官能基を別の官能基に置き換える場合など)。したがって、アナログは、基準の化合物に関して機能および外観は類似または同等であるが異なる構造または起原を有する化合物である。
用語「置換(される)」、「置換誘導体」および「誘導体」は、化合物について述べるために使用される場合、非置換化合物に結合している少なくとも1つの水素が異なる原子または化学的構成部分に置き換えられることを意味する。
誘導体は親化合物に類似した物理的構造を有するが、該誘導体は親化合物とは異なる化学的かつ/または生物学的特性を有する場合がある。そのような特性には、限定するものではないが、親化合物の活性の上昇または低下、親化合物と比較して新しい活性、バイオアベイラビリティの上昇または低下、有効性の増大または低減、in vitroおよびin vivoのうち少なくとも一方における安定性の上昇または低下、ならびに吸収特性の増大または低減、のうち少なくともいずれかが挙げられる。
一般に、用語「生物学的に活性」とは、化合物(タンパク質またはペプチドなど)が、in vivo(すなわち自然な生理的環境下)またはin vitro(すなわち実験室条件下)で測定または観察されるような、細胞または生物体の代謝その他のプロセスに影響を有する少なくとも1つの検出可能な活性を有することを示す。
本発明によれば、用語「調節する、変調する(modulate)」は「調節する(regulate)」と互換的に使用可能であり、概して特定の活性の上方調節または下方調節を指す。本明細書中で使用されるように、用語「上方調節する(upregulate)」は、一般に以下すなわち:特定の活性に関する、誘発、開始、増大、増進、ブースティング、改善、増強、増幅、促進、または提供、のうちのいずれかを述べるために使用されうる。同様に、用語「下方調節する」は、一般に以下すなわち:特定の活性に関する、低下、低減、阻害、緩和、軽減、減少、阻止、または抑制、のうちのいずれかを述べるために使用されうる。
本発明の1つの実施形態では、本明細書中に記載されたアミノ酸配列はいずれも、指定されたアミノ酸配列のC末端およびN末端のうち少なくとも一方に隣接する少なくとも1個から最大約20個までの追加の異種アミノ酸を備えて生産されうる。生じるタンパク質またはポリペプチドについては、指定されたアミノ酸配列「〜で本質的に構成されている(consisting essentially of)」と称することが可能である。本発明によれば、異種アミノ酸とは、本来は指定のアミノ酸配列に隣接して見出されない(すなわち自然界でin vivoでは見られない)か、または指定のアミノ酸配列の機能とは関係がないか、または、指定のアミノ酸配列をコードする天然に存在する核酸配列が遺伝子内に存在しているときに隣接しているヌクレオチドによっては(仮に天然に存在する配列中のそのようなヌクレオチドがその所与のアミノ酸配列の由来元である生物にとって標準的なコドン選択性を用いて翻訳されたとしても)コードされない、アミノ酸の配列である。同様に、「〜で本質的に構成されている(consisting essentially of)」という言葉は、本明細書中で核酸配列に関して使用される場合、指定されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、指定されたアミノ酸配列をコードする核酸配列の5’末端および3’末端のうち少なくとも一方にそれぞれ少なくとも1個から最大で約60個までの追加の異種ヌクレオチドが隣接しうる核酸配列を指す。該異種ヌクレオチドは、本来は指定のアミノ酸配列をコードする核酸配列が天然の遺伝子内に存在しているときには隣接して見出されない(すなわち自然界でin vivoでは見られない)か、または、指定のアミノ酸配列を有するタンパク質に何らかの付加機能を付与するかもしくは該タンパク質の機能を変更するタンパク質をコードしない。
本発明によれば、「〜に選択的に結合する(selectively binds to)」という言葉は、本発明の抗体、抗原結合フラグメントまたは結合パートナーが指定されたタンパク質に優先的に結合する能力を指す。より具体的には、「選択的に結合する」という言葉は、あるタンパク質(例えば抗体、該抗体のフラグメント、または抗原の結合パートナー)の別のタンパク質への特異的結合であって、任意の標準的なアッセイ(例えば免疫学的検定法)で測定されるような結合のレベルが、該アッセイのバックグラウンドの対照より統計的に有意に高いものを指す。例えば、免疫学的検定法を実施する場合、対照としては、典型的には、抗体または抗原結合フラグメントのみを含有する(すなわち抗原の非存在下にある)反応用ウェル/チューブが含まれ、この場合、抗原の非存在下における抗体または抗原結合フラグメントによる反応(例えば該ウェルへの非特異的な結合)の量がバックグラウンドであると考えられる。結合は、酵素免疫測定法(例えばELISA、イムノブロットアッセイなど)を含む、当分野において標準的な様々な方法を使用して測定されうる。
本発明において使用されるタンパク質またはポリペプチドに言及する場合、完全長タンパク質、融合タンパク質、またはそのようなタンパク質の任意のフラグメント、ドメイン、立体構造依存的エピトープ、もしくは相同体、例えばタンパク質の機能ドメインおよび免疫学的ドメインなどが含まれる。より具体的には、単離タンパク質とは、本発明によれば、例えば、その本来の環境から取り出されている(すなわち、人為操作を受けている)タンパク質であり(ポリペプチドまたはペプチドを含む)、精製タンパク質、部分精製タンパク質、組換え生産されたタンパク質、および合成により生産されたタンパク質が含まれうる。それゆえ、「単離(された)」とはタンパク質が精製された程度を反映していない。好ましくは、本発明の単離タンパク質は組換え生産される。本発明によれば、「改変」および「突然変異」という用語は、特に本明細書中に記載されたタンパク質またはその一部のアミノ酸配列(または核酸配列)の改変/突然変異に関しては、互換的に使用することができる。
本明細書中で使用されるように、用語「相同体」は、天然に存在するタンパク質またはペプチド(すなわち「原型」または「野生型」タンパク質)の軽微な改変により、天然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なるが、天然に存在する形態の基本的なタンパク質および側鎖の構造を維持しているタンパク質またはペプチドを指すために使用される。そのような変更点には、例えば、限定するものではないが:1個または数個のアミノ酸側鎖の変更;1個または数個のアミノ酸の変更、例えば欠失(例えばタンパク質またはペプチドの短縮型)挿入および置換のうち少なくともいずれかなど;1個または数個の原子の立体化学の変更;ならびに、軽微な誘導体化、例えば、限定するものではないが:メチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン酸化(palmitation)、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加;のうち少なくともいずれかが挙げられる。相同体は、天然に存在するタンパク質またはペプチドと比較して、増強された、低下した、またはほぼ同様の、特性を有することができる。相同体には、タンパク質のアゴニストまたはタンパク質のアンタゴニストも含まれうる。相同体は、タンパク質を製造するための当分野において既知の技法、例えば、限定するものではないが、単離された天然に存在するタンパク質の直接的改変、直接的タンパク質合成、または、例えばランダム突然変異誘発もしくは標的を定めた突然変異誘発を達成するための古典的もしくは組換えのDNA技法を使用した、タンパク質をコードする核酸配列の改変によって、製造されうる。
所与のタンパク質の相同体は、基準タンパク質のアミノ酸配列と、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一(または45%〜99%の全ての整数区切りでの任意のパーセント同一率)であるアミノ酸配列を含むか、該アミノ酸配列で本質的に構成されるか、または該アミノ酸配列で構成されるものであってよい。1つの実施形態では、相同体は、基準タンパク質の天然に存在するアミノ酸配列と、100%未満同一、約99%未満同一、約98%未満同一、約97%未満同一、約96%未満同一、約95%未満同一など、1%区切りで約70%未満同一までのアミノ酸配列を含むか、該アミノ酸配列で本質的に構成されるか、または該アミノ酸配列で構成される。
相同体は、「ほぼ完全長」であるタンパク質またはタンパク質のドメインを含む場合があり、「ほぼ完全長」とは、そのような相同体が、完全長のタンパク質、機能ドメインまたは免疫学的ドメイン(そのようなタンパク質、機能ドメインまたは免疫学的ドメインは本明細書中に記載されているかまたはそうでなければ公に利用可能な配列において既知もしくは記載されている)に対して、そのような完全長タンパク質または完全長機能ドメインまたは完全長免疫学的ドメインのN末端およびC末端のうち少なくとも一方における1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の付加または欠失により、異なっていることを意味している。
本明細書中で使用されるように、別段の定めがない限り、パーセント(%)の同一性に言及する場合は以下すなわち:(1)標準デフォルトパラメータを用いてblastpをアミノ酸の検索に、blastnを核酸の検索に使用するBLAST 2.0 Basic BLAST相同性検索であって、クエリ配列はデフォルトで複雑度の低い領域についてフィルタリングされるもの(アルトシュル、S.F.(Altschul, S.F.)、マッデン、T.L.(Madden, T.L.)、シェーファー、A.A.(Schaeaeffer, A.A.)、チャン、J.(Zhang, J.)、チャン、Z.(Zhang, Z.)、ミラー、W.(Miller, W.)およびリプマン、D.J.(Lipman, D.J.)、「ギャップを許容するBLASTおよびPSI‐BLAST:新世代タンパク質データベース検索プログラム(Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs.)」ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、1997年、第25巻、p.3389−3402、参照により全体が本願に援用される)(2)BLAST 2アラインメント(後述のパラメータを使用);(3)および標準デフォルトパラメータを備えたPSI‐BLAST(位置特異的反復BLAST)、のうち少なくともいずれかを使用して行なわれる相同性の評価を指す。BLAST 2.0 Basic BLASTとBLAST 2との間の標準パラメータの若干の相違により、2つの特定配列がBLAST 2プログラムを使用すると有意な相同性を有するものとして認識される可能性がある一方で、該配列のうちの1つをクエリ配列として使用してBLAST 2.0 Basic BLASTで行われる検索は第2の配列を上位一致に同定しない可能性があることに留意すべきである。加えて、PSI‐BLASTは、自動化された使いやすい版の「プロファイル」検索を提供するが、これは配列相同体を探す感度のよい方法である。該プログラムは最初にギャップを許容するBLASTデータベース検索を実施する。PSI‐BLASTプログラムは、返されてきたあらゆる有意なアラインメントからの情報を使用して位置特異的なスコア行列を構築し、該スコア行列は次回のデータベース検索のためにクエリ配列を交換する。したがって、当然ながら上記プログラムのうちいずれか1つを使用することにより同一性(%)を決定することができる。
2つの特定配列は、タツソワ(Tatusova)およびマッデン(Madden)、「タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するための新しいツール、BLAST 2配列(Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」、FEMS マイクロバイオロジー・レターズ(FEMS Microbiol Lett.)、1999年、第174巻、p.247−250(参照により全体が本願に援用される)に記載されるようなBLAST 2配列を使用して相互にアラインメントされうる。BLAST 2配列アラインメントは、2つの配列の間で、得られるアラインメントにおいてギャップ(欠失および挿入)の導入を許容するGapped BLAST探索(BLAST 2.0)を実施するために、BLAST 2.0アルゴリズムを使用してblastpまたはblastnにおいて実施される。本明細書中では明確にするために、BLAST 2配列アラインメントは以下の標準デフォルトパラメータを使用して行なわれる。
blastnについては、BLOSUM62行列0を使用:
一致に対する得点(Reward for match)=1
不一致に対するペナルティ(Penalty for mismatch)=−2
ギャップ開始(5)およびギャップ伸長(2)ペナルティ
ギャップx_dropoff(50)期待値(10)ワードサイズ(11)フィルタ(on)
blastpについては、BLOSUM62行列0を使用:
ギャップ開始(11)およびギャップ伸長(1)ペナルティ
ギャップx_dropoff(50)期待値(10)ワードサイズ(3)フィルタ(on)。
単離核酸分子は、その本来の環境から取り出されている(すなわち、人為操作を受けている)核酸分子であり、その本来の環境とは自然界において該核酸分子が見出されるゲノムまたは染色体である。それゆえ、「単離(された)」とは、必ずしも該核酸分子が精製されている程度を反映せず、該分子が、自然界において該核酸分子が見出されるゲノム全体または染色体全体を含まないことを示す。単離核酸分子は遺伝子を含むことができる。遺伝子を含んでいる単離核酸分子は、そのような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、該遺伝子に関連したコード領域および制御領域を含み、ただし同じ染色体上に本来見出される追加の遺伝子を含んでいない。単離核酸分子はさらに、指定の核酸配列と、該配列に隣接して(すなわち該配列の5’末端および3’末端のうち少なくとも一方に)、自然界において通常はその指定の核酸配列に隣接していない追加の核酸(すなわち異種配列)とを含むこともできる。単離核酸分子は、DNA、RNA(例えばmRNA)、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体(例えばcDNA)を含むことができる。「核酸分子」という言葉は主として物理的な核酸分子を指し、「核酸配列」という言葉は主として核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの言葉は、特にタンパク質またはタンパク質のドメインをコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、互換的に使用可能である。
組換え核酸分子とは、本明細書中に記載された任意の1つ以上のタンパク質をコードする任意の核酸配列のうち少なくとも1つであって、トランスフェクトされる細胞における該核酸分子の発現を有効に調節することができる任意の転写調節配列のうち少なくとも1つに作動可能なように連結されたもの、を含みうる分子である。「核酸分子」という言葉は主として物理的な核酸分子を指し、「核酸配列」という言葉は主として核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの言葉は、特にタンパク質をコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、互換的に使用可能である。加えて、「組換え分子」という言葉は主に、転写調節配列に作動可能なように連結された核酸分子を指すが、動物に投与される「核酸分子」という言葉と互換的に使用可能である。
組換え核酸分子は組換えベクターを含むが、該ベクターは任意の核酸配列、典型的には異種配列であり、本発明の融合タンパク質をコードする単離核酸分子に作動可能なように連結され、該融合タンパク質の組換え生産を可能にする能力を有し、かつ、本発明による宿主細胞内に核酸分子を送達することができる。そのようなベクターは、天然においては該ベクター内に挿入されるべき単離核酸分子に隣接して見出されることのない核酸配列を含有することができる。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれであってもよく、原核生物のベクターまたは真核生物のベクターのいずれであってもよく、かつ、本発明においてはウイルスまたはプラスミドであることが好ましい。組換えベクターは、核酸分子のクローニング、配列決定およびその他の操作において使用可能であり、かつそのような分子の送達において(例えばDNA組成物またはウイルスベクターを用いる組成物などで)使用されうる。組換えベクターは、核酸分子の発現において使用されることが好ましく、発現ベクターと呼ぶこともできる。好ましい組換えベクターは、トランスフェクトされた宿主細胞中で発現される能力を有する。
本発明の組換え分子において、核酸分子は、転写調節配列、翻訳調節配列、複製開始点、および他の調節配列であって宿主細胞との適合性を有しかつ本発明の核酸分子の発現を制御する調節配列などの調節配列を含有する発現ベクターに、作動可能なように連結される。特に、本発明の組換え分子は、1つ以上の発現調節配列に作動可能なように連結される核酸分子を含んでいる。「作動可能なように連結される」という言葉は、核酸分子を、宿主細胞内へトランスフェクトされた(すなわち、形質転換、形質導入またはトランスフェクトされた)時に該分子が発現されるような方式で発現調節配列に連結することを指す。
本発明によれば、用語「トランスフェクション」は、外因性の核酸分子(すなわち組換え核酸分子)が細胞内に挿入されうる任意の方法を指すために使用される。用語「形質転換」は、当該用語が藻類、細菌および酵母のような微生物細胞内への核酸分子の導入を指して使用される場合、用語「トランスフェクション」と互換的に使用可能である。微生物系においては、用語「形質転換」は、微生物体による外因性の核酸の獲得を原因とする遺伝的変化について述べるために使用され、用語「トランスフェクション」と本質的に同義である。したがって、トランスフェクション技術には、限定するものではないが、形質転換、細胞の化学処理、粒子衝突、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、感染およびプロトプラスト融合が挙げられる。
以降の実験結果は例示を目的として提供されるものであり、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
実施例1
次の実施例は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療または予防のための酵母系免疫療法組成物の製造について説明する。
この実施形態では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で、それぞれ図2に示された基本構造を有する様々なHBV表面‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された。各例において、HBV融合タンパク質は、配列番号34で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号34の1〜6位);2)SpeI制限酵素切断部位を導入する2アミノ酸スペーサー(The‐Ser);3)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号34の9〜407位であってこれは配列番号11の2〜400位に相当し、配列番号11は350〜351位において配列番号11のLeu‐Val配列が配列番号34の357〜358位のGln‐Ala配列に置き換わる点で配列番号34とは異なっている);4)HBVコア抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号34の408〜589位または配列番号9の31〜212位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(配列番号34の590〜595位)、を備えたおよそ595アミノ酸の単一ポリペプチドであった。配列番号34の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号33で表わされている。配列番号34の28〜54位は、大型(L)表面タンパク質の肝細胞受容体部分を含む。配列番号34は、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられる複数のエピトープまたはドメインを含有する。例えば、配列番号34に関して209〜220位、389〜397位、360〜367位、および499〜506位は、既知のMHCクラスI結合性エピトープおよびCTLエピトープのうち少なくとも一方を含む。配列番号34の305〜328位は抗体エピトープを含む。この融合タンパク質およびこのタンパク質を含む対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中では一般に「Score」、「MADEAP‐Score」、「M‐Score」、または「GI‐13002」と呼ぶことができる。
簡潔に述べると、完全長のコア抗原に融合されたほぼ完全長の大型表面抗原(L)をコードするDNAは、酵母での発現用にコドンが最適化され、次いでEcoRIおよびNotIで消化されて、酵母2um発現ベクター中でCUP1プロモーター(pGI‐100)またはTEF2プロモーター(pTK57‐1)の後ろに挿入された。これらの構築物によりコードされた融合タンパク質は本明細書中に配列番号34で表わされ(ヌクレオチド配列である配列番号33によってコードされている)、かつ予想されるおよその分子量は66kDaである。生じるプラスミドは、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール・トランスフェクションによりサッカロマイセス・セレビシエW303α酵母に導入され、初代トランスフェクタントはウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で選択された。コロニーは、UDMまたはULDM(ウリジンおよびロイシン欠落培地)に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させた。ウリジンを欠いた液体培養(U2培地:20g/lグルコース;6.7g/lの酵母窒素原基礎培地であって硫酸アンモニウム;各々0.04mg/mLのヒスチジン、ロイシン、トリプトファンおよびアデニンを含有)、またはウリジンおよびロイシンを欠いた液体培養(UL2培地:20g/lグルコース;6.7g/lの酵母窒素原基礎培地であって硫酸アンモニウム;ならびに各々0.04 mg/mLのヒスチジン、トリプトファン、およびアデニンを含有)にプレートからの接種が行われ、スタータ培養物は30℃、250rpmで20時間増殖させた。4.2g/lのビス‐トリスを含有するpH緩衝培地(BT‐U2;BT‐UL2)も、中性pH条件下での該酵母の増殖を評価するために接種させた。初代培養物は同じ調合の最終培養物に接種するために使用され、密度または1.1〜4.0YU/mL(a density or 1.1 to 4.0 YU/mL)に到達するまで増殖が継続された。
TEF2株(構成的発現)については、細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理された。生細胞も比較のために処理された。CUP1株(誘導発現)については、発現を0.5mMの硫酸銅を含んだ同じ培地中で30℃、250rpmで5時間誘導した。細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理された。生細胞も比較のために処理された。
TEF2およびCUP1培養物の加熱殺処理後、細胞はPBSで3回洗浄された。全タンパク質発現量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイによって測定され、抗原の発現は抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法により測定された。抗原の量は、同じウエスタンブロット上で処理された組換えのヘキサヒスチジンタグ付きNS3タンパク質の標準曲線からの内挿法によって定量された。結果は図16(加熱殺処理)および図17(生酵母)に示されている。これらの図面は、本発明の酵母系免疫療法組成物が両プロモーターを使用してHBV表面‐コア融合タンパク質を良好に発現し、かつ加熱殺処理された細胞および生きている酵母細胞のいずれにおいてもウエスタンブロットによって識別可能であることを示している。計算された、この酵母系免疫療法薬による抗原発現は、1Y.U.(酵母単位;1酵母単位(Y.U.)は1×107個の酵母細胞または酵母細胞等価物である)あたり〜5000ngタンパク質、または1Y.U.あたり76pmolタンパク質であった。
実施例2
次の実施例は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療または予防のための別の酵母系免疫療法組成物の製造について説明する。
酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で、図3に概略的に示されるような構造をそれぞれ有している様々なHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された。各事例において、融合タンパク質は、配列番号36で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号36の1〜5位);2)HBV遺伝子型CのHBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分の肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号36の6〜32位);3)完全長のHBV遺伝子型Cの小型(S)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号36の33〜257位);4)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(Leu‐Glu)(配列番号36の258および259位);5)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号36の260〜604位);6)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号36の605〜786位);7)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号36の787〜939位);ならびに8)ヘキサヒスチジンタグ(配列番号36の940〜945位)、を備えたおよそ945アミノ酸の単一ポリペプチドであった。この融合タンパク質およびこのタンパク質を含む対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中では一般に「MADEAP‐Spex」、「M‐Spex」、または「GI‐13005」と呼ぶことができる。
配列番号36の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号35で表わされている。配列番号36の予想されるおよその分子量は106〜107kDaである。配列番号36は、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられる複数のエピトープまたはドメイン、例えば配列番号34について上述されたいくつかを含有している。加えて、この融合タンパク質に使用される逆転写酵素ドメインは、抗ウイルス薬を用いた治療に対する薬物抵抗性の応答として突然変異に至ることが知られており、したがって特定の薬剤抵抗性(回避)突然変異を標的とする治療的または予防的免疫療法薬を提供するためにこの融合タンパク質中で変異させる場合もある、いくつかのアミノ酸部位を含有している。これらのアミノ酸部位は、配列番号36に関しては、アミノ酸部位で:432位(Val、ラミブジン治療後にLeuに変異することが知られている);439位(Leu、ラミブジン治療後にMetに変異することが知られている);453位(Ala、テノフォビル治療後にThrに変異することが知られている);463位(Met、ラミブジン治療後にIleまたはValに変異することが知られている);および、495位(Asn、アデフォビル治療後にThrに変異することが知られている)である。
該抗原に異なるN末端ペプチドを利用して第2の酵母系免疫治療薬を作出するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で、やはり図3に概略的に示されるような基本構造を有している様々なHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された。この第2の事例では、配列番号36で表わされる融合物中の上述の合成N末端ペプチドの代わりに、αファクタープレプロ配列(配列番号89で表わされる)が使用された。簡潔に述べると、この新たな融合タンパク質は、配列番号92で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定化または増強するN末端ペプチド(配列番号89、配列番号92の1〜89位);4)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(Thr‐Ser)(配列番号92の90〜91位);3)HBV遺伝子型CのHBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分の肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号92の92〜118位);4)完全長のHBV遺伝子型Cの小型(S)表面抗原のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号92の119〜343位);5)配列のクローニングおよび操作を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(Leu‐Glu)(例えば、配列番号92の344〜345位);6)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号92の346〜690位);7)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号92の691〜872位);8)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号92の873〜1025位);ならびに、9)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号92の1026〜1031位)、を備えた単一ポリペプチドであった。この融合タンパク質およびこのタンパク質を含む対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中では一般に「α‐Spex」、「a‐Spex」、または「GI‐13004」と呼ぶことができる。
配列番号92の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号91で表わされている。配列番号92の予想されるおよその分子量は123kDaである。配列番号92は、融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられる複数のエピトープまたはドメイン、例えば配列番号34および配列番号36について上述されたいくつかを含有している。加えて、この融合タンパク質に使用される逆転写酵素ドメインは、抗ウイルス薬を用いた治療に対する薬物抵抗性の応答として突然変異に至ることが知られており、したがって特定の薬剤抵抗性(回避)突然変異を標的とする治療的または予防的免疫療法薬を提供するためにこの融合タンパク質中で変異させる場合もある、いくつかのアミノ酸部位を含有している。これらのアミノ酸部位は、配列番号92に関しては、アミノ酸部位で:518位(Val、ラミブジン治療後にLeuに変異することが知られている);525位(Leu、ラミブジン治療後にMetに変異することが知られている);539位(Ala、テノフォビル治療後にThrに変異することが知られている);549位(Met、ラミブジン治療後にIleまたはValに変異することが知られている);および、581位(Asn、アデフォビル治療後にThrに変異することが知られている)である。
配列番号36および配列番号92で表わされるアミノ酸配列を含むこれらの免疫療法組成物を作出するために、表面抗原の上記保存領域(pre‐S1の肝細胞受容体領域または大型表面抗原(hepatocyte receptor region of pre-S1 or large surface antigen)、および完全長の小型表面抗原)ならびにポリメラーゼの逆転写酵素領域をコードするDNAを、完全長コアおよび完全長X抗原に融合させた。該DNAは酵母での発現用にコドンを最適化され、次いでEcoRIおよびNotIで消化されて、酵母2um発現ベクター中でCUP1プロモーター(pGI‐100)またはTEF2プロモーター(pTK57‐1)の後ろに挿入された。生じるプラスミドは、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール・トランスフェクションによりサッカロマイセス・セレビシエW303α酵母に導入され、初代トランスフェクタントはウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で選択された。コロニーは、UDMまたはULDM(ウリジンおよびロイシン欠落培地)に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させた。
ウリジンを欠いた液体培養(U2)またはウリジンおよびロイシンを欠いた液体培養(UL2)はプレートからの接種を受け、スタータ培養物は30℃、250rpmで20時間増殖させた。4.2g/lのビス‐トリスを含有するpH緩衝培地(BT‐U2;BT‐UL2)も、中性pH条件下での該酵母の増殖を評価するために接種させた(データは示さない)。初代培養物は同じ調合の最終培養物に接種するために使用され、密度または1.1〜4.0 YU/mL(a density or 1.1 to 4.0 YU/mL)に到達するまで増殖が継続された。TEF2株(構成的発現)については、細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理された。CUP1株(誘導発現)については、発現を0.5mMの硫酸銅を含んだ同じ培地中で30℃、250rpmで5時間誘導した。細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理された。生細胞も比較のために処理された。(データは示さない)。
TEF2およびCUP1培養物の加熱殺処理後、細胞はPBSで3回洗浄された。全タンパク質発現量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイによって測定され、抗原の発現は抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法により測定された。抗原の量は、同じウエスタンブロット上で処理された組換えのヘキサヒスチジンタグ付きNS3タンパク質の標準曲線からの内挿法によって定量された。
配列番号36で表わされる融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法薬(GI‐13005)について、結果は図18に示されている。図18は、本発明の酵母系免疫療法組成物がいずれのプロモーターを使用しても融合タンパク質を良好に発現し、かつ加熱殺処理された酵母細胞ではウエスタンブロットにより同定可能であることを示している(発現は生きた酵母細胞においても達成されたが、データは示されていない)。計算された、この酵母系免疫療法薬による抗原発現は、UL2での増殖については、1Y.U.あたり〜1200ngタンパク質すなわち1Y.U.あたり11pmolタンパク質であった。
配列番号92で表わされる融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法薬(GI‐13004)について、結果は図19に示されている。図19は、CUP1プロモーターの制御下におけるこの酵母系免疫療法組成物の発現(図19ではα‐SPEXとして識別される)を、無関係な抗原を発現する酵母系免疫療法薬(対照酵母)、および配列番号36で表わされるHBV融合タンパク質(SPEX)を発現している酵母系免疫療法組成物と、比較して示している。図19は、酵母系免疫療法薬が適切な融合タンパク質を良好に発現し、かつ加熱殺処理された酵母細胞ではウエスタンブロットにより同定可能であることを示している。計算された、この酵母系免疫療法薬による抗原発現(α‐SPEX)は、UL2での増殖について1Y.U.あたり〜5000ngタンパク質すなわち1Y.U.あたり41pmolタンパク質であった。
実施例3
次の実施例は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療または予防のためのさらなる酵母系免疫療法組成物の製造について説明する。
この実験では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図4に概略的に示されるような様々なHBVポリメラーゼ‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、融合タンパク質は、配列番号38で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号37;配列番号38の1〜6位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号38の7〜351位);3)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号38の352〜533位);および、4)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号38の534〜539位)、を備えたおよそ527アミノ酸の単一ポリペプチドである。配列番号38の予測される分子量はおよそ58kDaである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。さらなる構築物では、配列番号37のN末端ペプチドは、本明細書中に詳細に記載されているのと同じ配列番号37の基本的構造要件を満たす配列番号37の相同体に代表される異なる合成N末端ペプチドに置き換えられるか、または、配列番号37のN末端ペプチドは配列番号89もしくは配列番号90のN末端ペプチドに置き換えられ、かつ、別の構築物においては、N末端ペプチドは省略されて1位にメチオニンが含まれる。
別の実験では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図5に概略的に示されるような様々なHBV X‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、融合タンパク質は、配列番号39で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号37;配列番号39の1〜6位);2)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型CのX抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号39の7〜159位);3)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号39の160〜341位);および4)ヘキサヒスチジンタグ(配列番号39の342〜347位)、を備えたおよそ337アミノ酸の単一ポリペプチドである。配列番号39の予測されるおよその分子量は37kDaである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。さらなる構築物では、配列番号37のN末端ペプチドは、本明細書中に詳細に記載されているのと同じ配列番号37の基本的構造要件を満たす配列番号37の相同体に代表される異なる合成N末端ペプチドに置き換えられるか、または、配列番号37のN末端ペプチドは配列番号89もしくは配列番号90のN末端ペプチドに置き換えられ、かつ、別の構築物においては、N末端ペプチドは省略されて1位にメチオニンが含まれる。
別の実験では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図6に概略的に示されるような様々なHBVポリメラーゼタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号40で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(配列番号37、または配列番号40の1〜6位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号40の7〜351位);および3)ヘキサヒスチジンタグ(配列番号40の352〜357位)、を備えた単一ポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。加えて、1つの実施形態では、この構築物の配列は、以下の抗ウイルス薬抵抗性突然変異すなわち:rtM204l、rtL180M、rtM204V、rtV173L、rtN236T、rtA194T(部位はHBVポリメラーゼの完全長アミノ酸配列に関して付されている)のうち1以上または全てを導入するために改変されてもよい。1つの実施形態では、6つの異なる免疫療法組成物が作出され、該組成物それぞれが上記突然変異のうち1つを含有している。他の実施形態では、該突然変異の全てまたはいくつかが単一の融合タンパク質に含まれている。さらなる構築物では、配列番号37のN末端ペプチドは、本明細書中に詳細に記載されているのと同じ配列番号37の基本的構造要件を満たす配列番号37の相同体に代表される異なる合成N末端ペプチドに置き換えられるか、または、配列番号37のN末端ペプチドは配列番号89もしくは配列番号90のN末端ペプチドに置き換えられ、かつ、別の構築物においては、N末端ペプチドは省略されて1位にメチオニンが含まれる。
別の実験では、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で図7に概略的に示されるような様々なHBVポリメラーゼ‐表面‐コア融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号41で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるN末端ペプチド(例えば配列番号41の1〜5位);2)HBV大型(L)表面タンパク質のpre‐S1部分のアミノHBV肝細胞受容体ドメインのアミノ酸配列(Lに特有)(例えば配列番号11の21〜47位または配列番号41の6〜32位);3)HBV小型(S)表面タンパク質のアミノ酸配列(例えば配列番号11の176〜400位または配列番号41の33〜257位);4)配列のクローニングおよび取扱を容易にする2アミノ酸スペーサー/リンカー(例えば配列番号41の258および259位);5)逆転写酵素ドメインを含むHBVポリメラーゼのアミノ酸配列(例えば配列番号10の247〜691位または配列番号41の260〜604位);6)HBVコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の31〜212位または配列番号41の605〜786位);ならびに、7)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号41の787〜792位)、を備えた単一ポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。加えて、1つの実施形態では、この構築物の配列は、以下の抗ウイルス薬抵抗性突然変異すなわち:rtM204l、rtL180M、rtM204V、rtV173L、rtN236T、rtA194T(部位はHBVポリメラーゼの完全長アミノ酸配列に関して付されている)のうち1以上または全てを導入するために改変されてもよい。1つの実施形態では、6つの異なる免疫療法組成物が作出され、該組成物それぞれが上記突然変異のうち1つを含有している。他の実施形態では、該突然変異の全てまたはいくつかが単一の融合タンパク質に含まれている。1つの実施形態では、この構築物はさらに、表面抗原における1以上の抗ウイルス薬抵抗性突然変異を含有する。さらなる構築物では、配列番号41の1〜5位で表されるN末端ペプチドは、本明細書中に詳細に記載されているのと同じ配列番号41の(もしくは配列番号37の)1〜5位の基本的構造要件を満たす配列番号41の1〜5位の相同体に代表される異なる合成N末端ペプチドに置き換えられるか、または、配列番号41の1〜5位のN末端ペプチドは配列番号89もしくは配列番号90のN末端ペプチドに置き換えられ、かつ、別の構築物においては、N末端ペプチドは省略されて1位にメチオニンが含まれる。
上述の融合タンパク質およびそのようなタンパク質を発現する酵母系免疫療法組成物のうちのいずれかを製造するために、簡潔に述べると、該融合タンパク質をコードするDNAは酵母での発現用にコドンを最適化され、次いでEcoRIおよびNotIで消化されて、酵母2um発現ベクター中でCUP1プロモーター(pGI‐100)またはTEF2プロモーター(pTK57‐1)の後ろに挿入される。生じるプラスミドは、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール・トランスフェクションによりサッカロマイセス・セレビシエW303α酵母に導入され、初代トランスフェクタントはウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で選択される。コロニーは、UDMまたはULDM(ウリジンおよびロイシン欠落培地)に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させる。
ウリジンを欠いた液体培養(U2)またはウリジンおよびロイシンを欠いた液体培養(UL2)はプレートからの接種を受け、スタータ培養物は30℃、250rpmで20時間増殖させる。4.2g/lのビス‐トリスを含有するpH緩衝培地(BT‐U2;BT‐UL2)も、中性pH条件下での酵母の増殖を評価するために接種されうる。初代培養物は同じ調合の最終培養物に接種するために使用され、密度または1.1〜4.0YU/mL(a density or 1.1 to 4.0 YU/mL)に到達するまで増殖が継続される。TEF2株(構成的発現)については、細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理される。CUP1株(誘導発現)については、発現を0.5mMの硫酸銅を含んだ同じ培地中で30℃、250rpmで5時間誘導する。細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理される。生細胞も比較のために処理される。
TEF2およびCUP1培養物の加熱殺処理後、細胞はPBSで3回洗浄される。全タンパク質発現量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイによって測定され、タンパク質の発現は抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法により測定される。融合タンパク質の量は、同じウエスタンブロット上で処理された組換えのヘキサヒスチジンタグ付きNS3タンパク質の標準曲線からの内挿法によって定量される。
実施例4
次の実施例は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療または予防のためのさらなる酵母系免疫療法組成物の製造について述べている。
本実施例は、それぞれが1つのHBVタンパク質を発現するように設計された4つの異なる酵母系免疫療法組成物の製造について述べる。これらの「単一HBVタンパク質の酵母免疫療法薬」は、互いに組み合わせて、もしくは順を追って使用されてもよいし、かつ/または、他の酵母系免疫療法薬、例えば本明細書中に記載された多重HBVタンパク質の酵母系免疫療法薬を含む実施例1〜3および5〜8のうちいずれかに記載されたものとともに組み合わせて、もしくは順を追って使用されてもよい。加えて、本実施例に記載されるもののような「単一HBVタンパク質の酵母免疫療法薬」は任意の所与の遺伝子型または遺伝子亜型についてのHBV配列を使用して製造可能であり、かつ、さらなるHBV表面抗原の酵母系免疫療法薬が、それぞれ本発明の酵母系免疫療法薬に関連して提供されるかまたは本発明の少なくとも1つの酵母系免疫療法薬を含む免疫処置/投与の方策において提供される様々なHBV抗原ならびに遺伝子型および/もしくは遺伝子亜型の「スパイスラック」を提供するために、任意の1つ以上のさらなる遺伝子型または遺伝子亜型についてのHBV配列を使用して製造可能である。
本実施例では、次の4種の酵母系免疫療法薬産物が製造される。
[HBV表面抗原] サッカロマイセス・セレビシエは、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下でHBV表面タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号93で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:1)配列番号89のN末端ペプチド:(配列番号93の1〜89位);2)ほぼ完全長の(1位を差し引いた)HBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号11の2〜400位または配列番号93の90〜488位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号93の489〜494位)、を備えた単一ポリペプチドである。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに、置き換えられてもよい。
[HBVポリメラーゼ抗原] サッカロマイセス・セレビシエは、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で以下のHBVポリメラーゼタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号94で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:1)配列番号89のN末端ペプチド:(配列番号94の1〜89位);2)HBV遺伝子型Cのポリメラーゼの逆転写酵素ドメインを含む部分のアミノ酸配列(例えば配列番号10の347〜691位または配列番号94の90〜434位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号94の435〜440位)、を備えた単一ポリペプチドである。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに、置き換えられてもよい。
[HBVコア抗原] サッカロマイセス・セレビシエは、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で以下のHBVコアタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号95で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:1)配列番号89のN末端ペプチド:(配列番号95の1〜89位);2)HBV遺伝子型Cのコアタンパク質の一部のアミノ酸配列(例えば配列番号9の31〜212位または配列番号95の90〜271位)、および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号95の272〜277位)、を備えた単一ポリペプチドである。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに、置き換えられてもよい。
[HBV X抗原] サッカロマイセス・セレビシエは、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で以下のHBV X抗原を発現するように遺伝子組換え処理される。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号96で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:1)配列番号89のN末端ペプチド:(配列番号96の1〜89位);2)HBV遺伝子型CのX抗原の一部のアミノ酸配列(例えば、配列番号12の2〜154位または配列番号96の90〜242位);および、3)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号96の243〜248位)、を備えた単一ポリペプチドである。別例として、N末端ペプチドは、配列番号37もしくはその相同体、または本明細書中に記載された別のN末端ペプチドに、置き換えられてもよい。
これらの免疫療法組成物を作出するために、簡潔に述べると、該融合タンパク質をコードするDNAは酵母での発現用にコドンを最適化され、次いでEcoRIおよびNotIで消化されて、酵母2um発現ベクター中でCUP1プロモーター(pGI‐100)またはTEF2プロモーター(pTK57‐1)の後ろに挿入される。得られたプラスミドは、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール・トランスフェクションにより酵母サッカロマイセス・セレビシエW303αに導入され、初代トランスフェクタントはウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で選択される。コロニーは、UDMまたはULDM(ウリジンおよびロイシン欠落培地)に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させる。
ウリジンを欠いた液体培養(U2)またはウリジンおよびロイシンを欠いた液体培養(UL2)はプレートからの接種を受け、スタータ培養物は30℃、250rpmで20時間増殖させる。4.2g/lのビス‐トリスを含有するpH緩衝培地(BT‐U2;BT‐UL2)にも、中性pH条件下での酵母の増殖を評価するために接種がなされてもよい。初代培養物は同じ調合の最終培養物に接種するために使用され、密度または1.1〜4.0 YU/mL(a density or 1.1 to 4.0 YU/mL)に到達するまで増殖が継続される。TEF2株(構成的発現)については、細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理される。CUP1株(誘導発現)については、発現を0.5mMの硫酸銅を含んだ同じ培地中で30℃、250rpmで5時間誘導する。細胞は回収され、洗浄され、PBS中にて56℃で1時間加熱殺処理される。
生細胞も比較のために処理される。
TEF2およびCUP1培養物の加熱殺処理後、細胞はPBSで3回洗浄される。全タンパク質発現量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイによって測定され、タンパク質の発現は抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法により測定される。融合タンパク質の量は、同じウエスタンブロット上で処理された組換えのヘキサヒスチジンタグ付きNS3タンパク質の標準曲線からの内挿法によって定量される。
実施例5
次の実施例は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の治療または予防のための、いくつかの異なる酵母系免疫療法組成物の製造について説明する。
本実施例は、以下の目的すなわち:(1)必要に応じて、組換えDNA諮問委員会(Recombinant DNA Advisory Committee:RAC)のガイドラインに準拠する酵母系免疫療法用臨床製品を製造するために、約690アミノ酸未満(HBVゲノムの3分の2未満に相当する)を含む多重抗原HBV構築物を製造すること;(2)急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染のうち少なくとも一方に対する免疫応答に関連する既知のT細胞エピトープを最大数含有する多重抗原HBV構築物を製造すること;(3)遺伝子型の間で最も保存されているT細胞エピトープを含有する多重抗原HBV構築物を製造すること;ならびに/または(4)1つ以上のコンセンサス配列、コンセンサスエピトープ、および特定の遺伝子型由来のエピトープのうち少なくともいずれかに一層厳密に一致するように改変された多重抗原HBV構築物を製造すること;のうち1つ以上を達成するように設計されたタンパク質を発現する、酵母系免疫療法薬の製造について説明する。本実施例において実証された改変物は、本明細書中において記載または企図された任意の他の酵母系免疫療法薬に対して、個々に、または併せて、適用可能である。
1つの実験では、上記に明示された目的の要件を満たし、かつHBVの主要タンパク質すなわち:HBV表面抗原、ポリメラーゼ、コアおよびX抗原の各々の一部を含む融合タンパク質を発現する酵母を含む、酵母系免疫療法組成物が設計された。この融合タンパク質を設計するために、該融合物中の個々のHBV抗原は(完全長と比較して)大きさが縮小され、また該融合セグメントは、表5に特定されたものに対応する既知のT細胞エピトープを最大限含めるように個々に改変された。この融合タンパク質にT細胞エピトープを含めるにあたっての優先順位は以下すなわち:
急性/自己限定的HBV感染および慢性HBV感染の両方に対する免疫応答において同定されたエピトープ > 急性/自己限定的HBV感染に対する免疫応答において同定されたエピトープ > 慢性HBV感染に対する免疫応答において同定されたエピトープである。
人為的な結合部もこの融合タンパク質の各セグメントの設計においては最小限にとどめたが、その理由は、理論によって束縛されるものではないが、自然状態における進化は以下すなわち:i)良好に発現するウイルス中の連続した配列;および、ii)それらの配列を適切に消化して免疫システムに提示することができる抗原提示細胞のイムノプロテアソーム、をもたらしてきたと考えられるからである。従って、多数の不自然な結合部を備えた融合タンパク質は、より自然なHBVタンパク質配列を保持しているものと比較すると、酵母系免疫療法薬にはあまり有用ではない可能性がある。
融合タンパク質に使用するためのHBV表面抗原を含むセグメントを構築するために、HBV遺伝子型C由来の完全長の大型(L)表面抗原タンパク質は、N末端およびC末端配列の切捨てにより大きさが縮小された(例えば配列番号11で表わされるもののような完全長のL表面抗原タンパク質と比較して、大型抗原の1〜119位および369〜400位が除去された)。残りの部分は、一部には、上述のT細胞エピトープを含める優先順位を使用して、表5に特定されたものに相当する既知のMHCクラスI T細胞エピトープを最大限含めるように選択された。得られた表面抗原セグメントは配列番号97で表わされる。
融合タンパク質に使用するためのHBVポリメラーゼを含むセグメントを構築するために、HBV遺伝子型C由来の完全長ポリメラーゼ(約842アミノ酸の極めて大きなタンパク質である)のかなりの部分は、該タンパク質のHBV遺伝子型および単離物の間で最も保存された領域である活性部位ドメイン(RTドメイン由来)を含めることに集中することにより、除去された。RTドメインは、薬物抵抗性突然変異が生じることが知られているいくつかの部位も含んでおり;したがって、構築物のこの部分は、標的を設定した治療法の回避突然変異体を標的とするために、必要に応じ、別の構築物においてさらに改変されてもよい。より少数のHBVタンパク質を含む融合タンパク質では、ポリメラーゼセグメントの大きさは、必要であれば拡張されてもよい。HBVポリメラーゼの選択された部分は、上記に議論された優先順位戦略を使用して、既知のT細胞エピトープが最大限となるように含められた。したがって省かれた完全長ポリメラーゼの配列には、RTドメインの外側の配列、およびRTドメイン内の配列であって既知のT細胞エピトープを含有していないか、または2つのエピトープであって該エピトープが同定された遺伝子型Aの患者においてそれぞれ17%もしくは5%未満にしか同定されていないエピトープ(デズモンド(Desmond)ら、2008年および表5を参照)を含む配列、が含まれた。HBVポリメラーゼの遺伝子型Cのセグメント内の残りのT細胞エピトープのうち1つを除いた全てが、遺伝子型Aの分析に由来する公開されたエピトープと完全一致し、単一アミノ酸の不一致を備えた残る1つのエピトープは、公開されたエピトープに対応するように改変された。得られたHBVポリメラーゼ抗原セグメントは配列番号98で表わされる。
融合タンパク質に使用するためのHBVコア抗原を含むセグメントを構築するために、HBV遺伝子型C由来の完全長コアタンパク質(例えば、配列番号9の31〜212位置に類似)は、以下のように改変された、すなわち:i)遺伝子型Cに由来するタンパク質のT細胞エピトープ内の単一アミノ酸が、表5に記載された既知のT細胞エピトープに完全一致するように改変され;ii)T細胞エピトープを含んでいないN末端の7アミノ酸が除去されて、タンパク質中の最初の既知T細胞エピトープのN末端側に隣接するいくつかのアミノ酸が保存され;かつ、iii)コアの24個のC末端アミノ酸が除去されることにより、既知エピトープは欠失せず、極度に正に荷電したC末端が除去された。正に荷電したC末端は、酵母内で発現される抗原からの除去に適した候補である、というのも、そのような配列は、一部の構築物中では、アルギニン豊富である(正に荷電している)ことの多い天然の酵母RNA結合タンパク質との競合的阻害により、酵母に対して有毒である可能性があるからである。従って、コアのこの部分の除去は許容可能である。得られたHBVコア抗原セグメントは、配列番号99で表わされる。
融合タンパク質に使用するためのHBV X抗原を含むセグメントを構築するために、HBV遺伝子型C由来の完全長X抗原(例えば、配列番号12に類似)は、X抗原の中でクラスター化している表5の既知T細胞エピトープのほとんどを備えたX抗原のセグメントを製造するために、N末端およびC末端が切り詰められた。該エピトープのうちの2つは公開されたT細胞エピトープ配列に対応させるために単一アミノ酸の変更による改変が施され、セグメントの端部においてT細胞エピトープに隣接する配列は、抗原提示細胞による効率的なプロセシングおよび正しいエピトープの提示を促進するために保持された。得られたHBV X抗原セグメントは配列番号100で表わされる。
4つのHBVタンパク質セグメントをすべて含有する完全な融合タンパク質を構築するために、上述の4つのHBVセグメントは、HBVゲノムによってコードされる全てのタンパク質にわたるT細胞エピトープを最適に含み、かつ期待される臨床用途のためのウイルスタンパク質の基準を満たすことが予想される単一タンパク質を形成するために、連結された(表面‐pol‐コア‐X)。
2つの異なる融合タンパク質が最終的に作出され、該融合タンパク質は各々、酵母における融合タンパク質の発現を増強および/または安定化するために付加された異なるN末端ペプチドを備えるものであった。加えて、ヘキサヒスチジンペプチドが、タンパク質の同定の助けとなるようにC末端に含められた。本明細書中に記載された酵母系免疫療法組成物において使用されるその他のタンパク質全てに関し、さらなる構築物では、本実施例において利用された配列番号37または配列番号89のN末端ペプチドは、異なる合成N末端ペプチド(例えば本明細書中に詳細に記載されているのと同じ配列番号37の基本的構造要件を満たす配列番号37の相同体)に置き換えられてもよいし、または、配列番号89もしくは配列番号90のN末端ペプチドの相同体に置き換えられてもよく、別の構築物においては、N末端ペプチドは省略されて1位にメチオニンが含まれる。加えて、1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸のリンカー配列が、必要に応じて融合タンパク質のセグメント間に加えられてもよい。さらに、これらの構築物は遺伝子型CのHBVタンパク質を骨格として用いて設計されたが、任意の他のHBV遺伝子型、遺伝子亜型、または異なる株もしくは単離物由来のHBVタンパク質が、実施例7において例証されるように、これらのタンパク質セグメントを設計するために使用されてもよい。最後に、本明細書中に記載されるような融合タンパク質から1つ以上のセグメントが除外される場合、残りのセグメント由来の配列が拡張されて該タンパク質の追加のT細胞エピトープおよび隣接領域が含められてもよい(例えば、実施例8を参照)。
上述のHBVセグメントで構築された融合タンパク質を含む、酵母系免疫療法組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターの制御下で上記に議論されるように最適化された様々なHBV表面‐ポリメラーゼ‐コア‐X融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。
1つの構築物では、該融合タンパク質は、配列番号101で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)配列番号89で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるための、αファクタープレプロ配列であるN末端ペプチド(配列番号101の1〜89位);(2)配列番号97で表わされるHBVの大型(L)表面抗原の最適化された部分(配列番号101の90〜338位);(3)配列番号98で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号101の339〜566位);(4)配列番号99で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分(配列番号101の567〜718位);(5)配列番号100で表わされるHBV X抗原の最適化された部分(配列番号101の719〜778位);および(6)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号101の779〜784位)、を備えた単一ポリペプチドである。
第2の構築物では、該融合タンパク質は、配列番号102で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素:(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドであるN末端ペプチド(配列番号102の1〜6位);(2)配列番号97の2〜248位で表わされる、HBVの大型(L)表面抗原の最適化された部分(配列番号102の7〜254位);(3)配列番号98で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号102の255〜482位);(4)配列番号99で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分(配列番号102の483〜634位);(5)配列番号100で表わされるHBV X抗原の最適化された部分(配列番号102の635〜694位);および(6)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号102の695〜700位)、を備えた単一ポリペプチドである。
これらの融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、実施例1〜4に詳細に記載された同じプロトコールを使用して製造される。
実施例6
以下の実施例は、多数の個体または個体集団を治療する潜在能力を備えた単一組成物を提供するために、単一組成物に保存された抗原およびエピトープのうち少なくとも一方を含めることに関連してHBV遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方を最大限に標的化する、追加の酵母系HBV免疫療法組成物の製造について述べる。
同一の酵母系HBV免疫療法薬中に複数の異なる遺伝子型を含む構築物を調製するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号105で表わされる、それぞれ異なる遺伝子型(HBV遺伝子型A、B、CおよびD)に由来する4つのコア抗原を含む、すなわち:1)配列番号105の1位のN末端メチオニン;2)HBV遺伝子型A由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号1の31〜212位または配列番号105の2〜183位);3)HBV遺伝子型B由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号5の30〜212位または配列番号105の184〜395位);4)HBV遺伝子型C由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の30〜212位または配列番号105の396〜578位);5)HBV遺伝子型D由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号13の30〜212位または配列番号105の579〜761位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号105の762〜767位)、を含む単一ポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。1位のN末端メチオニンは、配列番号37もしくはその相同体で、または配列番号89もしくは配列番号90のαプレプロ配列もしくはその相同体、もしくは必要に応じて他の適切なN末端配列で、置き換えられてもよい。加えて、必要であれば、構築物のクローニングおよび操作を容易にするためにリンカー配列がHBVタンパク質の間に挿入されてもよい。これは例示の構築物である、というのも、HBV遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方の任意の他の組み合わせが必要に応じて本設計物に代わりに組込まれて、広範囲の臨床適用可能性および製造に有効な設計を備えた単一抗原の酵母系HBV免疫療法薬産物を構築することも可能であるからである。配列番号105のアミノ酸配列はさらにいくつかの既知のT細胞エピトープも含有し、かつ、あるエピトープは、例えば、配列を表5に示されたエピトープと比較することにより同定可能な所与のエピトープについて、公開された配列に対応するように改変済みである。
同一の酵母系HBV免疫療法薬中に2以上のHBV抗原および2以上の遺伝子型を含む構築物を調製するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導性プロモーターCUP1またはTEF2プロモーターのような適切なプロモーターの制御下でHBV融合タンパク質を発現するように遺伝子組換え処理される。該タンパク質は、配列番号106で表わされる、2つのコア抗原および2つのX抗原であって対のうち各々1つが異なる遺伝子型(HBV遺伝子型AおよびC)に由来するコア抗原およびX抗原を含む、すなわち:1)配列番号106の1位のN末端メチオニン;2)HBV遺伝子型A由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号1の31〜212位または配列番号106の2〜183位);3)HBV遺伝子型A由来の完全長X抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、または配列番号106の184〜337位);4)HBV遺伝子型C由来のほぼ完全長のコアタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号9の30〜212位または配列番号106の338〜520位);5)HBV遺伝子型C由来の完全長X抗原のアミノ酸配列(例えば、配列番号8、または配列番号106の521〜674位);および、5)ヘキサヒスチジンタグ(例えば配列番号106の675〜680位)、を含む単一ポリペプチドである。該配列はさらに、該融合タンパク質の免疫原性を増強すると考えられるエピトープまたはドメインを含有する。1位のN末端メチオニンは、配列番号37もしくはその相同体で、または配列番号89もしくは配列番号90のαプレプロ配列もしくはその相同体で、置き換えられてもよい。配列番号106のアミノ酸配列はさらにいくつかの既知のT細胞エピトープも含有し、かつ、あるエピトープは、例えば、配列を表5に示されたエピトープと比較することにより同定可能な所与のエピトープについて、公開された配列に対応するように改変済みである。
これらの融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、実施例1〜4に詳細に記載された同じプロトコールを使用して製造される。
実施例7
以下の実施例は、1つの組成物を用いて多数の個体または個体集団を治療する潜在能力を備えた組成物を提供するために、HBV遺伝子型についてのコンセンサス配列を使用し、さらには、保存された抗原およびエピトープのうち少なくとも一方を含めることに関連してHBV遺伝子型および遺伝子亜型のうち少なくとも一方を最大限に標的化する、追加の酵母系HBV免疫療法組成物の製造について述べる。
表面タンパク質、コア、ポリメラーゼ、およびX抗原それぞれに由来するHBVセグメントを含むいくつかの構築物を設計するために、配列番号101および配列番号102について実施例5に記載された融合タンパク質構造(ならびにしたがって配列番号97(表面抗原)、配列番号98(ポリメラーゼ)、配列番号99(コア抗原)および配列番号100(X抗原)で表わされる上記融合タンパク質の下位部分)が、鋳型として使用された。複数のHBV配列供給源から構築されたHBV遺伝子型A、B、CおよびD各々のコンセンサス配列(例えば、S、コアおよびXについてはユ(Yu)およびユエン(Yuan)ら、2010年(コンセンサス配列は322個のHBV配列から生成)、Pol(RT)については、スタンフォード大学HIV薬物抵抗性データベース(Stanford University HIV Drug Resistance Database)のHBV配列およびHBV部位リリースノート(HBVseq and HBV Site Release Notes)から)に関して、鋳型構造物中の配列は、同じ部位に対応するコンセンサス配列に置き換えられ、ただし、コンセンサス配列の使用が既知の急性自己限定的T細胞エピトープのうちの1つまたは既知のポリメラーゼ回避突然変異部位のうちの1つを変更した場合は除き、この場合には、上記部位は、これらのエピトープまたは突然変異部位について公開された配列に従った。コンセンサス配列のみに基づいて、またはエピトープが知られるようになるにつれて他の公開されたエピトープを使用して、追加の抗原が構築されることも考えられる。
HBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づく第1の構築物は、以下のように設計された。融合セグメントの大きさを(完全長と比較して)縮小し、表5に特定されたものに相当する既知のT細胞エピトープを最大限含め(上記に議論されたような優先度)、かつ、人為的結合部を最小限とするように設計された、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100を使用して、新たな融合セグメントがHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づいて作出された。新たな表面抗原セグメントは配列番号107の1〜249位で表わされる。新たなポリメラーゼ(RT)セグメントは配列番号107の250〜477位で表わされる。新たなコアセグメントは配列番号107の478〜629位で表わされる。新たなX抗原セグメントは配列番号107の630〜689位で表わされる。この完全型融合タンパク質は、HBV配列が配列番号107で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号107の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号107の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号107の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号107の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号107の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ(配列番号107の689位に続く6個のヒスチジン残基、を備えた単一ポリペプチドである。この完全型融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13010とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「SPEXv2‐A」または「Spex‐A」と呼ばれることもある。
HBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づく第2の構築物は、以下のように設計された。融合セグメントの大きさを(完全長と比較して)縮小し、表5に特定されたものに相当する既知のT細胞エピトープを最大限含め(上記に議論されたような優先度)、かつ、人為的結合部を最小限とするように設計された、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100を使用して、新たな融合セグメントがHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づいて作出された。新たな表面抗原セグメントは配列番号108の1〜249位で表わされる。新たなポリメラーゼ(RT)セグメントは配列番号108の250〜477位で表わされる。新たなコアセグメントは配列番号108の478〜629位で表わされる。新たなX抗原セグメントは配列番号108の630〜689位で表わされる。この融合タンパク質は、配列番号108で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号108の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号108の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号108の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号108の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号108の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。この完全型融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13011とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「SPEXv2‐B」または「Spex‐B」と呼ばれることもある。
HBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づく第3の構築物は、以下のように設計された。融合セグメントの大きさを(完全長と比較して)縮小し、表5に特定されたものに相当する既知のT細胞エピトープを最大限含め(上記に議論されたような優先度)、かつ、人為的結合部を最小限とするように設計された、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100を使用して、新たな融合セグメントがHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づいて作出された。新たな表面抗原セグメントは配列番号109の1〜249位で表わされる。新たなポリメラーゼ(RT)セグメントは配列番号109の250〜477位で表わされる。新たなコアセグメントは配列番号109の478〜629位で表わされる。新たなX抗原セグメントは配列番号109の630〜689位で表わされる。この融合タンパク質は、配列番号109で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号109の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号109の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号109の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号109の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号109の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。この完全型融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13012とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「SPEXv2‐C」または「Spex‐C」と呼ばれることもある。
HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づく第4の構築物は、以下のように設計された。融合セグメントの大きさを(完全長と比較して)縮小し、表5に特定されたものに相当する既知のT細胞エピトープを最大限含め(上記に議論されたような優先度)、かつ、人為的結合部を最小限とするように設計された、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100を使用して、新たな融合セグメントがHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいて作出された。新たな表面抗原セグメントは配列番号110の1〜249位で表わされる。新たなポリメラーゼ(RT)セグメントは配列番号110の250〜477位で表わされる。新たなコアセグメントは配列番号110の478〜629位で表わされる。新たなX抗原セグメントは配列番号110の630〜689位で表わされる。この融合タンパク質は、配列番号110で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号110の基本配列には含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号110の1〜249位で表わされるHBV大型(L)表面抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(4)配列番号110の250〜477位で表わされるHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(5)配列番号110の478〜629位で表わされるHBVコアタンパク質の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;(6)配列番号110の630〜689位で表わされるHBV X抗原の最適化された部分であって、上記に議論された設計方策を利用するHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列である部分;および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。この完全型融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13013とも呼ばれる。配列番号37のN末端ペプチドが配列番号89のαファクター配列と置き換えられることを除いて同様の融合タンパク質(配列番号110を含有する)を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中でGI‐13014と呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「SPEXv2‐D」、「Spex‐D」、または「M‐SPEXv2‐D」(GI‐13013について)もしくは「a‐SPEXv2‐D」(GI‐13014について)と呼ばれることもある。
酵母系免疫療法薬に使用するためのさらなるHBV融合タンパク質は、上述の融合タンパク質(配列番号107〜110)においてなされたものと同様の変更が、様々なHBV融合タンパク質において、例えばHBV表面タンパク質およびHBVコアタンパク質を含有する配列番号34で表される融合タンパク質において、どのようになされうるかを実証するために、4つのHBV遺伝子型のコンセンサス配列の適用を用いて設計された。上記さらなるHBV抗原および対応する酵母系免疫療法組成物を設計するために、配列番号34について上述された融合タンパク質構造(ならびに、したがって上記融合タンパク質の下位部分(表面抗原およびコア))が、鋳型として使用された。上記の構築物について上述されるように、HBV遺伝子型A、B、CおよびDそれぞれのコンセンサス配列が複数のHBV配列供給源から構築され(例えばSおよびコアについては、ユ(Yu)およびユエン(Yuan)ら、2010年)、かつ、鋳型構造物中の配列は、同じ部位に対応するコンセンサス配列に置き換えられたが、ただし、コンセンサス配列の使用が既知の急性自己限定的T細胞エピトープのうちの1つまたは既知のポリメラーゼ回避突然変異部位のうちの1つを変更した場合は除き、この場合には、上記部位は、これらのエピトープまたは突然変異部位について公開された配列に従った。
HBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づく第1の構築物は、以下のように設計された。配列番号34を鋳型として使用して、本明細書中では配列番号112で表わされる新たな融合タンパク質がHBV遺伝子型Aのコンセンサス配列に基づいて作出された。この融合タンパク質は、配列番号112で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号112の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号112の1〜399位で表わされるHBV遺伝子型Aの大型(L)表面抗原のコンセンサス配列;4)配列番号112の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Aのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号112を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号111で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13006とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「Score‐A」とも呼ばれうる。
HBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づく第2の構築物は、以下のように設計された。配列番号34を鋳型として使用して、本明細書中では配列番号114で表わされる新たな融合タンパク質がHBV遺伝子型Bのコンセンサス配列に基づいて作出された。この融合タンパク質は、配列番号114で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号114の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号114の1〜399位で表わされるHBV遺伝子型Bの大型(L)表面抗原のコンセンサス配列;4)配列番号114の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Bのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号114を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号113で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13007とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「Score‐B」とも呼ばれうる。
HBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づく第3の構築物は、以下のように設計された。配列番号34を鋳型として使用して、本明細書中では配列番号116で表わされる新たな融合タンパク質がHBV遺伝子型Cのコンセンサス配列に基づいて作出された。この融合タンパク質は、配列番号116で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号116の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号116の1〜399位で表わされるHBV遺伝子型Cの大型(L)表面抗原のコンセンサス配列;4)配列番号116の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Cのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号116を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号115で表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13008とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「Score‐C」とも呼ばれうる。
HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づく第4の構築物は、以下のように設計された。配列番号34を鋳型として使用して、本明細書中では配列番号118で表わされる新たな融合タンパク質がHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいて作出された。この融合タンパク質は、配列番号118で表わされる、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号118の基本配列には含まれないが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号118の1〜399位で表わされるHBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のコンセンサス配列;4)配列番号118の400〜581位で表わされるHBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列;および(5)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドである。配列番号118ならびにN末端およびC末端のペプチドならびにリンカーペプチドを含む完全型融合タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書中において配列番号151で表わされる。配列番号118または配列番号151を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、配列番号117によって本明細書中に表わされている。この融合タンパク質を発現する、酵母系免疫療法組成物は、本明細書中ではGI‐13009とも呼ばれる。該融合タンパク質および対応する酵母系免疫療法薬は、本明細書中において「Score‐D」とも呼ばれうる。
GI‐13010(配列番号107を含む)、GI‐13011(配列番号108を含む)、GI‐13012(配列番号109を含む)、GI‐13013(配列番号110を含む)、GI‐13006(配列番号112を含む)、GI‐13007(配列番号114を含む)、GI‐13008(配列番号116を含む)およびGI‐13009(配列番号118を含む)の酵母系免疫療法組成物が、上記に他の組成物について説明したように製造された。簡潔に述べると、融合タンパク質をコードするDNAは、酵母での発現用にコドンを最適化され、次いで酵母2um発現ベクター内でCUP1プロモーター(pGI‐100)の後ろにに挿入された。得られたプラスミドは、酢酸リチウム/ポリエチレングリコールトランスフェクションにより酵母サッカロマイセス・セレビシエW303αに導入された。各プラスミドの酵母形質転換体はウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で単離された。コロニーは、ULDM(ウリジンおよびロイシン欠落培地)に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させた。ウリジンおよびロイシンを欠くスタータ培養液(UL2;調合は実施例1に提示)にプレートから接種が行われ、スタータ培養物は30℃、250rpmで18時間増殖させた。初代培養物はUL2の最終培養物に接種するために使用され、密度2YU/mLに到達するまで増殖が継続された。培養物を0.5mM硫酸銅で3時間誘導し、次いで細胞はPBSで洗浄され、56℃で1時間加熱殺処理され、PBSで3回洗浄された。全タンパク質含量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイで測定され、HBV抗原発現は抗hisタグモノクローナル抗体を使用したウエスタンブロット法で測定された。
結果は図20に示されている。図20に示されたブロットのレーンは、次の酵母系免疫療法薬:レーン1(v1.0;Score)=GI‐13002(配列番号34を発現);レーン2(v2.0;ScA)=GI‐13006(配列番号112を発現);レーン3(v2.0;ScB)=GI‐13007(配列番号114を発現);レーン4(v2.0;ScC)=GI‐13008(配列番号116を発現);レーン5(v2.0;ScD)=GI‐13009(配列番号118を発現);レーン6(v1.0;Sp)=GI‐13005(配列番号36を発現);レーン7(v1.0;a‐Sp)=GI‐13004(配列番号92を発現);レーン8(v2.0;SpA)=GI‐13010(配列番号107を発現);レーン9(v2.0;SpB)=GI‐13011(配列番号108を発現);レーン10(v2.0;SpC)=GI‐13012(配列番号109を発現);レーン11(v2.0;SpD)=GI‐13013(配列番号110を発現)、に由来するタンパク質を含有する。
結果は、表面抗原およびコアの組み合わせを含むそれぞれのHBV抗原(「Score」抗原)、すなわちGI‐13002(Score)、GI‐13006(ScA;Score‐A)、GI‐13007(ScB;Score‐B)、GI‐13008(ScC;Score‐C)、GI‐13009(ScD;Score‐D)が酵母において着実に発現したことを示している。上記および同様の実験における典型的なScore v2.0発現レベルは、およそ90〜140pmol/YU(すなわち5940ng/YU〜9240ng/YU)の範囲であった。4つのHBVタンパク質すべてを含むHBV抗原(表面、ポリメラーゼ、コアおよびX、すなわち「Spex」)の発現レベルは変動的であった。具体的には、GI‐13010(SpA;Spex‐A)、GI‐13011(SpB;Spex‐B)、GI‐13012(SpC;Spex‐D)およびGI‐13013(SpD;Spex‐D)からの抗原の発現は、「Score」抗原、ならびにGI‐13005(Sp;Spex)およびGI‐13004(a‐Sp;a‐Spex)由来の抗原の発現よりもかなり低かった。GI‐13012(SpC;Spex‐C)における抗原の発現はかろうじて検出可能であった。総合すると、これらの結果から、群としては、表面抗原およびコアを含むHBV抗原は酵母において非常に良好に発現する一方、表面抗原、ポリメラーゼ、コアおよびXすべてを含むHBV抗原は酵母における発現が変動的であり、概して「Score」抗原ほど良好には発現しない。
実施例8
以下の実施例は、HBV遺伝子型のコンセンサス配列を使用し、かつ加えて、酵母におけるHBV抗原の発現の改変または改善、および該HBV抗原の免疫原性または他の機能的属性の改善または改変、のうち少なくともいずれかを行うために、融合タンパク質内におけるHBVタンパク質セグメントの代替構成/代替配置の使用を実証する、さらなる酵母系HBV免疫療法組成物の製造について述べる。
本実施例では、表面抗原がコアに融合された組み合わせのN末端またはC末端に、X抗原およびポリメラーゼ抗原のうち少なくとも一方を追加する、新たな融合タンパク質が設計された。これらの構築物は、一部には、本明細書中において通常「Score」と呼ばれる構成に配置された融合タンパク質(例えば配列番号34、配列番号112、配列番号114、配列番号116および配列番号118)は酵母において非常に良好に発現するので、この基本構成(すなわち表面抗原がコアタンパク質に融合されたもの)を利用して、追加のHBVタンパク質成分を含むHBV抗原を製造すると有利である可能性がある、という論理的根拠に基づいて設計された。そのような方策により、多重タンパク質抗原の発現の改善、および、免疫療法に関連したそのような抗原の機能性の改善または改変、のうち少なくともいずれかがなされる可能性がある。例えば、理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、3個または4個全てのHBVタンパク質を使用するHBV抗原の発現が、基本要素として表面‐コア(順番通り)を使用し、次にこの構築物に他の抗原を追加して融合タンパク質を構築することにより改善される可能性も考えられることを提示した。
従って、本発明のこの実施形態を例証するために、8種の新たな融合タンパク質が設計および構築され、これらのタンパク質を発現する酵母系免疫療法産物が製造された。各事例において、該融合タンパク質は、配列番号118で表わされる融合タンパク質のセグメントに由来する表面‐コア融合タンパク質であって、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を利用し、かつ保存された免疫学的エピトープを最大限使用するように最適化された、実施例7に記載された表面‐コア融合タンパク質を基本要素として使用した。この基本構成に、ポリメラーゼセグメントおよびX抗原セグメントのうち少なくとも一方の全ての可能な配置が、配列番号110で表わされる融合タンパク質(タンパク質セグメントの大きさを縮小し、保存された免疫学的エピトープを最大限使用し、かつHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を利用するために構築された実施例7に記載された多重タンパク質HBV融合タンパク質である)に由来するセグメントを利用して追加された。得られたこれら8種の抗原はHBV遺伝子型Dのコンセンサス配列に基づいているが、配列番号107および配列番号112のうち少なくとも一方(遺伝子型A)、配列番号108および配列番号114のうち少なくとも一方(遺伝子型B)、配列番号109および配列番号116のうち少なくとも一方(遺伝子型C)で表わされる融合タンパク質由来の対応する融合セグメントを使用して、または、異なるHBV遺伝子型、遺伝子亜型、コンセンサス配列もしくは株に由来する対応する配列を使用して、同様の全体構造を有する融合タンパク質を製造することは容易であろう。
第1の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図8に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13015と呼ばれうる。本明細書中では「Score‐Pol」とも呼ばれ、かつ配列番号120で表わされるこの融合タンパク質は、順に、表面抗原、コアタンパク質、およびポリメラーゼの配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号120の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号120の1〜399位(配列番号118の1〜399位に相当)で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列;(4)配列番号120の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号120の582〜809位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);および(6)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号120は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号120の融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号119で表わされている。
第2の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図9に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13016と呼ばれうる。本明細書中では「Score‐X」とも呼ばれ、かつ配列番号122で表わされるこの融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、およびX抗原の配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号122の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号122の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号122の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号122の582〜641位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);および(6)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号122は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号122を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号121で表わされている。
第3の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図10に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13017と呼ばれうる。本明細書中では「Score‐Pol‐X」とも呼ばれ、かつ配列番号124で表わされるこの融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、ポリメラーゼおよびX抗原の配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号124の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号124の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号124の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号124の582〜809位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(6)配列番号124の810〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号124は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号124を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号123で表わされている。
第4の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図11に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13018と呼ばれうる。本明細書中では「Score‐X‐Pol」とも呼ばれ、かつ配列番号126で表わされるこの融合タンパク質は、順に、表面抗原、コア、X抗原、およびポリメラーゼの配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号126の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号126の1〜399位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);4)配列番号126の400〜581位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);(5)配列番号126の582〜641位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(5)配列番号126の642〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号126は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号126を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号125で表わされている。
第5の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図12に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13019と呼ばれうる。本明細書中では「Pol‐Score」とも呼ばれ、かつ配列番号128で表わされるこの融合タンパク質は、順に、ポリメラーゼ、表面抗原、およびコアの配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は、ここで例示される構築物中のポリメラーゼセグメントと表面抗原セグメントとの間のLeu‐Gluリンカーを例外として配列番号128の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号120の1〜228位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(4)配列番号128の229〜230位で表わされるLeu‐Gluのリンカーペプチド(任意選択);(5)配列番号128の231〜629位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号128の630〜811位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号128は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号128を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号127で表わされている。
第6の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図13に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13020と呼ばれうる。本明細書中では「X‐Score」とも呼ばれ、かつ配列番号130で表わされるこの融合タンパク質は、順に、X抗原、表面抗原、およびコアの配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は、ここで例示される構築物中のXセグメントと表面抗原セグメントとの間のLeu‐Gluリンカーを例外として配列番号130の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号130の1〜60位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(4)配列番号130の61〜62位で表わされるLeu‐Gluのリンカーペプチド(任意選択);(5)配列番号130の63〜461位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号130の462〜643位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号130は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号130ならびにN末端およびC末端のペプチドおよびリンカーを含む完全型融合タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書中において配列番号150で表わされる。配列番号130または配列番号150を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号129で表わされている。
第7の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図14に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13021と呼ばれうる。本明細書中では「Pol‐X‐Score」とも呼ばれ、かつ配列番号132で表わされるこの融合タンパク質は、順に、ポリメラーゼ、X抗原、表面抗原、およびコアの配列を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号132の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号132の1〜228位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(4)配列番号132の229〜288位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(5)配列番号132の289〜687位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号132の688〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号132は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号132を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号131で表わされている。
第8の組成物を製造するために、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)は、銅誘導プロモーターCUP1の制御下で図15に概略的に示される新たなHBV融合タンパク質を発現するように、遺伝子組換え処理された。得られた酵母‐HBV免疫療法組成物は本明細書中ではGI‐13022と呼ばれうる。本明細書中では「X‐Pol‐Score」とも呼ばれ、また配列番号134で表わされるこの融合タンパク質は、順に、X抗原、ポリメラーゼ、表面抗原、およびコアタンパク質を、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素(「任意選択」として表示される非HBV配列は配列番号134の基本配列に含まれなかったが、実際には本実施例に記載される融合タンパク質に付加された):(1)配列番号37で表わされる、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与し、かつ発現を安定させるように設計された合成N末端ペプチドである任意選択のN末端ペプチド;(2)任意選択のThr‐Serリンカーペプチド;(3)配列番号134の1〜60位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBV X抗原の最適化された部分(配列番号110の630〜689位に相当);(4)配列番号134の61〜288位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコンセンサス配列を使用するHBVポリメラーゼの逆転写酵素(RT)ドメインの最適化された部分(配列番号110の250〜477位に相当);(5)配列番号134の289〜687位で表わされる、HBV遺伝子型Dの大型(L)表面抗原のほぼ完全長の(1位を差し引いた)コンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の1〜399位に相当);(6)配列番号134の688〜869位で表わされる、HBV遺伝子型Dのコア抗原のコンセンサス配列のアミノ酸配列(配列番号118の400〜581位に相当);および(7)任意選択のヘキサヒスチジンタグ、を備えた単一ポリペプチドとして含む。配列番号134は、表5に見ることができる多数のT細胞エピトープ(ヒトおよびネズミ科動物)を含有する。配列番号134を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(酵母での発現用にコドンを最適化)は、本明細書中に配列番号133で表わされている。
上述の各々の酵母系免疫療法組成物を製造するために、各プラスミドの酵母形質転換体がウラシルを欠く固体の最少プレート培地(UDM;ウリジン欠落培地)で単離された。コロニーは、ULDMプレートおよびUDMプレート上に再度画線播種され、30℃で3日間増殖させた。ウリジンおよびロイシンを欠く(UL2)、またはウリジンを欠く(U2)スタータ培養液にプレートから接種が行われ、スタータ培養物は30℃、250rpmで18時間増殖させた。初代培養物はU2またはUL2の中間培養物に接種するために使用され、密度およそ2YU/mLに到達するまで増殖が継続された。中間培養物は密度0.05YU/mLとなるように最終培養物に接種するために使用され、最終培養物は細胞密度が1〜3YU/mLに達するまでインキュベートされた。次いで最終培養物を0.5mM硫酸銅で3時間誘導し、細胞はPBS中で洗浄され、56℃で1時間加熱殺処理され、PBS中で3回洗浄された。全タンパク質含量はTCA沈澱反応/ニトロセルロース結合アッセイを用いて測定され、HBV抗原発現は抗hisタグモノクローナル抗体を使用したウエスタンブロット法で測定された。GI‐13008(配列番号116;「Score‐C」)またはGI‐13009(配列番号118;「Score‐D」)として実施例7に記載された2つの酵母免疫療法組成物からの溶解産物が、基本の表面‐コア抗原産物を発現する酵母との比較の基準として使用された。
図21は、UL2培地中で培養された酵母における全8種の構築物の発現を、実施例7にGI‐13009(配列番号118;「Score‐D」)として記載された酵母免疫療法薬中の構築物の発現と比較して示すブロット(1μgのタンパク質をローディング)である。図21を参照すると、レーン1および2は分子量マーカーを含み、レーン4〜6は、これらのレーンから生成される標準曲線からの内挿法によって抗原を定量するために同じブロット上で処理された組換えヘキサヒスチジンタグ付きNS3タンパク質を含む。レーン7〜14は、UL2培地で増殖させた、番号(例えばGI‐13015)で表示されるそれぞれの酵母系免疫療法薬に由来する溶解産物を含み、レーン15は、GI‐13009比較物からの溶解産物を含む。U2培地で培養された酵母由来のさらなるウエスタンブロット、およびゲル上への様々な量のタンパク質のローディングを評価する追加のブロットはここでは示さないが、全体として、結果から、8種の抗原全てが少なくとも1つの増殖培地において検出可能なレベルで発現されることが示された。
全体的な発現結果は、U2またはUL2培地において標的抗原の検出可能な発現をなした培養物についての、GI‐13008(Score‐C)およびGI‐13009(Score‐D)における抗原の発現と比較した棒グラフとして、図22にまとめられている。図22を参照すると、HBV抗原は、上記に各構築物について記載されたような融合タンパク質中の抗原の配置を指す表現を、該抗原を発現した対応する酵母の培養に使用された培地と共に使用して、それぞれの棒の下に表示されている(すなわち、「Pol‐Score‐U2」は、配列番号128で表わされ、かつU2培地中でGI‐13019によって発現されたポリメラーゼ‐表面‐コア融合タンパク質であるHBV抗原を指す)。結果から、「X‐Score」(GI‐13020によって発現される;配列番号130)と表示された抗原の発現が〜122pmol/YUで特に活発であり、これはモル濃度ベースでScore‐C(GI‐13008)またはScore‐D(GI‐13009)について得られた発現レベルのおよそ79〜80%であることが示された(いずれの培地も)。U2培地でGI‐13015(Score‐Pol;配列番号120)、GI‐13016(Score‐X;配列番号122)、GI‐13017(Score‐Pol‐X;配列番号124)およびGI‐13018(Score‐X‐Pol;配列番号126)によって発現された抗原の発現は、本実験における定量化レベルを下回ったが、これらの抗原はそれぞれ、同一の酵母系免疫療法薬をUL2培地で増殖させた場合には発現された(図22を参照)。概して、ポリメラーゼ逆転写酵素(RT)ドメインを含有している抗原構成は、X抗原が加わるかどうかに関わらずS‐coreのみを含有するものよりも蓄積が低レベルであった。本実施例および先行する実施例において示されたデータを全体として解釈すると、表面‐コア(「Score」または「SCORE」;すべての同様の構築物)およびX‐表面‐コア(「X‐Score」あるいは「X‐SCORE」;GI‐13020)の抗原構成は、試験された全ての酵母系HBV免疫療法薬の中で最も高発現する抗原構成であった。
実施例9
以下の実施例は、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物の安全性、免疫原性およびin vivoにおける有効性を実証するための、マウスでの前臨床実験について説明する。
前臨床試験において酵母系HBV免疫療法組成物を評価するために、本発明の酵母系HBV免疫療法組成物による抗原特異的リンパ球の誘導を検出する様々なin vitroおよびin vivoのアッセイ、例えばリンパ球増殖、細胞媒介性細胞傷害、サイトカイン分泌、および腫瘍接種からの保護(例えば、in vivoでHBVタンパク質を発現するように遺伝子組換え処理された腫瘍の殺滅)などが使用された。
これらの試験を支援するために、当初は実施例1および2に記載された酵母系HBV免疫療法組成物が使用され、さらなる試験は実施例7および8または本明細書中他所に記載された酵母系HBV免疫療法組成物を使用して行なわれた。しかしながら、これらの試験は、本発明の任意の酵母系HBV免疫療法組成物に容易に適用可能であり、本明細書中に提供された結果から、同じ基本抗原または類似の抗原構築物を含む他のHBV組成物を推定することができる。これらの初期実験の結果は下記に説明される。
任意の酵母系HBV免疫療法組成物に適応可能な一般的なプロトコールとして、マウス(例えばメスのBALB/cおよびC57BL/6マウスのうち少なくとも一方)に、適切な量の酵母系HBV免疫療法組成物、例えば4〜5YUが注射される(2つの異なる注射部位に2〜2.5YUの注射で皮下投与)。任意選択で、抗CD40抗体の注射剤が該酵母組成物の翌日に投与される。マウスは毎週または隔週で1、2または3回投与で免疫され、最後のブースター投与は任意選択で毎週投与または隔週投与の最終回から3〜4週間後に投与される。マウスは最後の注射の7〜9日後に殺処理される。各群から集められた脾臓細胞懸濁液および/またはリンパ節懸濁液が調製されて、HBV抗原を発現する酵母を含みうるHBVペプチドおよび/またはHBV抗原の形態のHBV特異刺激を利用するin vitro刺激(IVS)条件に供される。対照培養物は非HBVペプチドで刺激されるが、該ペプチドには、オボアルブミンペプチド、または無関係のウイルスのペプチド(例えばHIV由来のペプチド)が挙げられる。酵母系HBV免疫療法組成物の投与によって誘導された免疫応答を評価するために標準的なアッセイが使用されるが、該アッセイには、3H‐チミジン取込み反応により評価されるリンパ球増殖、51Cr‐標識された標的細胞(または終夜CTLのために標識された他の標的)を使用する細胞媒介性細胞傷害アッセイ(CTLアッセイ)、サイトカインアッセイまたはELISPOTによるサイトカイン分泌の定量(例えばIFN‐γ、IL‐12、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐2のうち少なくともいずれか、など)、ならびに腫瘍接種(例えば、HBV抗原を発現するように遺伝子組換え処理された腫瘍細胞を用いたin vivo接種)からの保護、が挙げられる。
酵母系HBV免疫療法組成物は、上述のアッセイによって測定されるようなHBV抗原特異的T細胞応答を誘発する能力によって実証されるように、免疫原性であることが予想される。
初期の実験では、実施例1および2に記載された酵母系HBV免疫療法産物のうち2つについて、該産物を用いた免疫により抗原特異的なCD4+T細胞増殖が誘発されるかどうかを判断するために、リンパ球増殖アッセイ(LPA)で試験が行われた。より具体的には、CUP1プロモーターの制御下にて配列番号34で表わされる融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法産物(GI‐13002)であって、「SCORE」としても知られ、かつより具体的には上記の実施例1に記載されているもの、および、CUP1プロモーターの制御下にて配列番号92で表わされる融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法産物(GI‐13004)であって、「a‐SPEX」としても知られ、かつより具体的には実施例2に記載されているものをそれぞれ使用して、マウスを免疫し、リンパ球増殖アッセイ(LPA)を使用して該産物両方において標的とされた表面抗原および/またはコア抗原に特異的なCD4+T細胞を評価した。
メスのBALB/cマウスは、5YUの「SCORE」またはa‐SPEXを用いてマウスの2つの異なる部位(2.5YU/側腹部)の皮下に週1回として3回免疫された。対照マウスは、空ベクターの酵母を用いてワクチン接種されたか(「YVEC」と表示)、またはワクチン接種されなかった(「無処置」と表示)。3回目の免疫処置の1週間後に、マウスは安楽死処理され、脾臓ならびに大動脈周辺および鼠蹊部の流入領域リンパ節(LN)が採取および処理されて単個細胞浮遊液となされた。この2種類の結節由来のLN細胞は合わされて、組換えのコアおよび表面抗原の混合物(「S/Core混合」)、または、SAgで免疫されたBALB/cマウス由来のT細胞の増殖を誘発することが過去に報告されているクラスII拘束性ミモトープペプチド(GYHGSSLY、配列番号103、「クラスII SAgミモトープペプチド」と表示)(ラジャデイヤクシャ(Rajadhyaksha)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、1995年、第92巻、p.1575−1579)を用いて、in vitroで刺激された(IVS)。
脾臓細胞は磁気細胞分離法(Magnetic Activated Cell Sorting:MACS)によるCD4+T細胞の富化に供され、LNについて記載されたのと同じ抗原とともにインキュベートされた。4日間インキュベートされた後、IVS培養物はトリチウム(3H)チミジンで18時間パルス標識され、細胞内DNAがガラス繊維ミクロフィルター上に採取された。取り込まれた3Hチミジンのレベルはシンチレーション計数によって測定された。SCOREで免疫されたマウス由来の同型のLN培養物も並列してアッセイされた。T細胞の活性化を評価する追加の手段としてELISpotによるインターフェロンγ(IFN‐γ)産生が使用された。
図23、図24および図26に示されるように、SCOREまたはa‐SPEXで免疫されたマウス由来のCD4+T細胞は、組換えS抗原およびコア抗原混合物に応答して増殖した。SCOREで免疫されたマウス由来の脾臓T細胞(図23)は、YVECで免疫されたマウス(空ベクターの対照)または無処置のマウス由来のT細胞よりも>5倍の増殖レベルを示し、作用が表面‐コア融合タンパク質に特異的である(すなわち抗原特異的T細胞応答である)ことを示していた。HBVミモトープペプチドとともにインキュベートされた、SCOREで免疫されたマウス由来のT細胞も、ペプチドでパルスされたYVEC対照または無処置対照よりも高いレベルに増殖し、酵母系免疫療法産物の応答が抗原特異的であることのさらなる証拠を提示した。これらの作用はさらに、IVSに加えられた抗原の量に依存し、最適活性は3μg/ml(組換え抗原)または30μg/mL(ペプチド)で生じている。
図24に示されるように、SCOREで免疫されたマウス由来のLN細胞も上記の同じ抗原を用いたIVSに応答して増殖したが、SCOREで免疫された動物と無処置またはYVECで免疫された動物との間の増殖の差は、単離された脾臓CD4+T細胞の場合よりも小さかった。
ELISpotデータ(図25)は、SCOREで免疫されS+C混合物で再刺激されたマウス由来のLN調製物が、無処置の動物由来のLNよりも>10倍多くのIFN‐γ分泌細胞を含有することを示している。HBVペプチド(配列番号103)を用いたIVSはIFN‐γ応答も誘発した。具体的には、SCORE LN調製物は、無処置のLN調製物よりも>3.5倍多くのIFN‐γ産生細胞を含有していた(図25)。これらのデータを総合すると、SCORE(表面抗原およびコアを含む融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法)が脾臓およびLNの両方においてHBV抗原特異的なT細胞応答を誘発すること、ならびに、これらの応答は精製抗原を用いたIVSによって用量依存的な様式で増幅されうることが示される。
a‐SPEXを用いた同様の分析(図26)は、この酵母系HBV免疫療法産物もT細胞増殖反応を誘発することを示した。a‐SPEXは、組換え抗原混合物を用いて実施されたIVSにおいて、YVECと比較して約30%の増大を誘発した。全体として、a‐SPEXで観察された応答はSCOREで観察されたものより低かった。応答の規模の差は、a‐SPEXにおける抗原発現がモル濃度ベースでSCOREの抗原発現の半分未満であるという事実を反映している可能性がある。あるいは、理論によって束縛されるものではないが、これらの結果は、酵母によって発現される抗原の構成が、発現レベル、エンドソーム/プロテアソームによるプロセシング効率、またはその他の免疫応答のパラメータに影響を及ぼすことを示しているのかもしれない。100μg/mLのペプチドを使用したa‐SPEXマウス由来のT細胞の増殖は、YVECをワクチン接種されたマウスにおける増殖よりも少なくとも2倍大きかった(図26、右側の3列)。
実施例10
以下の実施例は、本発明の2つの酵母系HBV免疫療法薬についての、サイトカイン像を使用した免疫学的評価について述べる。
本発明の酵母系HBV免疫療法薬を用いた免疫処置の結果として誘発された細胞性免疫応答を特徴解析する1つの方法は、免疫された動物由来の脾臓調製物のex vivo刺激で産生されたサイトカイン像を評価することである。
これらの実験では、メスのC57Bl/6マウスは、GI‐13002(「SCORE」、配列番号34で表わされるHBV表面‐コア融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法薬、実施例1)、およびGI‐13005(「M‐SPEX」、CUP1プロモーターの制御下にて配列番号36で表わされるHBV表面‐pol‐コア−X融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法薬、実施例2)、YVEC(空ベクターの対照酵母)を用いて免疫されたか、または免疫されなかった(無処置)が、これは以下のとおりに行われた:2YUの酵母系免疫療法薬または対照酵母が、第0日、第7日、および第28日に動物の2つの異なる部位に皮下注射された。抗CD40抗体が第1日目に腹腔内(IP)注射により投与されて、酵母系免疫療法薬により提供される活性化のレベルを越える樹状細胞(DC)の付加的活性化が提供された。抗CD40抗体処理は任意選択であるが、該抗体の使用は、直接的なペンタマー染色による抗原特異的CD8+T細胞の検出を試みる場合(そのようなデータは本実験では示さない)、抗原特異的CD8+T細胞のレベルをブーストすることができる。最後の免疫処置の9日後に、脾臓が採取および処理されて単個細胞浮遊液となされた。該細胞は、2つのHBVペプチドプールの混合物とともに(図27および図28では「P」、および図29Aおよび29Bでは「HBVP」と表示)、または、マイトマイシンC処理されたナイーブな同系脾細胞を2つのペプチドでパルスしたものとともに(図27および図28では「PPS」、および図29Aおよび29Bでは「HPPS」と表示)、48時間のin vitro刺激(IVS)培養に供された。該ペプチドはH−2Kb拘束性であり、次の配列すなわち:ILSPFLPLL(配列番号65、表5を参照)およびMGLKFRQL(配列番号104)を有していた。培養物は、IL1β、IL‐12およびIFN‐γの反復的Luminex(登録商標)分析に供された。
これらのサイトカインは、該サイトカインが、HBVに対する生産的または有効な免疫応答に関係していると考えられる免疫応答の種類に関係していることから、評価が行われた。IL‐1βは抗原提示細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインであり、酵母系免疫療法組成物を用いた免疫処置によって誘導されることが知られているサイトカインである。IL‐12も抗原提示細胞によって産生され、CD8+細胞傷害性リンパ球(CTL)活性を促進する。IFN‐γは、適応的免疫応答の出現においてCD8+細胞傷害性リンパ球によって産生され、Th1 CD4+T細胞の分化も促進した。
図27(IL‐1β)、図28(IL‐12)、図29A(IFN‐γ;SCOREで免疫)、および図29B(IFN‐γ;M‐SPEXで免疫)に示された結果は、3種全てのサイトカインが、Scoreで免疫されたマウス由来の脾細胞(図27、図28および図29Aに「Sc」で表示)によって、ペプチドプール単独を用いた直接的IVSに応答して産生されること、ならびに、該応答は、SCOREで免疫されたマウスに関して、YVEC(図27、図28ならびに図29Aおよび29Bに「Y」で表示)または無処置の(図27、図28および図29Aの中の表示された「N」および29B)マウスに関するよりも大きいことを示しており、SCOREを用いた免疫処置はこれら3種のサイトカインの産生をもたらす抗原特異的免疫応答を誘発することが実証されている。ペプチドでパルスされた同系脾細胞を用いたIVSも、低規模ではあるが抗原特異的応答を誘発した。M‐SPEXをワクチン接種されたマウス由来の脾細胞(図27、図28および図29Bに「Sp」で表示)は、SCOREをワクチン接種されたマウス由来の脾細胞よりも全体的に低いレベルでサイトカインを産生した。しかしながら、M‐SPEXに応答して産生されたIL12p70の量はYVECまたは無処置によって産生された量よりも多く、抗原特異的免疫応答がこの酵母系免疫療法組成物によって誘導されたことを示している。高レベルの抗原を発現し、かつ実施例9に記載されたアッセイにおいてCD4+増殖反応を誘導したa‐SPEX(GI‐13004;実施例2)は、高レベルのサイトカイン産生を誘発するであろうことが予想される。
さらなるサイトカインアッセイは、2つの同じ酵母系免疫療法産物のうち1つを用いて免疫されたメスのBALB/cマウスを使用して実施された。これらの実験では、メスのBALB/cマウスは、SCORE(GI‐13002;図30A〜30Dにおいて「Sc」と表示)、M‐SPEX(GI‐13005;図30A〜30Dにおいて「Sp」と表示)、YVEC(図30A〜30Dにおいて「Y」と表示)を用いて免疫されたか、または免疫処置は行われなかったが(無処置、図30A〜30Dにおいて「N」と表示)、これは以下のとおりである:2YUの酵母産物は、第0日、第11日、第39日、第46日、第60日および第67日に2つの部位に投与された。上記の実験のように、抗CD40抗体がi.p.投与された。最後の免疫処置の9日後(第76日)、脾臓が採取され、単個細胞浮遊液へと処理され、組換えHBV表面タンパク質およびコアタンパク質の混合物を用いて48時間のIVSに供された(図30A〜30Dにおいて「HBV Sag+Core Ag」と表示)。上清が収集され、IL1β、IL‐6、IL‐13およびIL12p70の産生についてLuminex(登録商標)により評価された。IL‐6は、抗原提示細胞およびT細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインであり、酵母系免疫療法産物の作用機序における重要なサイトカインであると考えられる。IL‐13もT細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインであり、IL‐4、およびTh2 CD4+免疫応答の促進と密接に関係している。
図30A(IL‐1β)、図30B(IL‐6)、図30C(IL‐13)および図30D(IL‐12)に示された結果は、SCOREで免疫されたマウス由来の脾細胞が表面およびコア抗原混合物に応答してIL‐1β、IL‐6、IL12p70およびIL‐13を産生したこと、ならびに、応答の規模はYVECで免疫されたマウスまたは無処置のマウス由来の脾細胞に関するよりも高かったことを示している。この抗原特異性は、BALB/cマウスにおけるLPA(実施例9を参照)およびC57Bl/6マウスにおけるサイトカイン放出アッセイ(上記参照)について得られた結果と一致している。
M‐SPEXで免疫されたマウス由来の脾細胞はIL‐1βについて抗原特異的シグナルを生成したが(図30A)、他のサイトカインについては生成しなかった。C57Bl/6における知見と同様に、SCOREとM‐SPEXとの間のこの明白な潜在能の差は、後者の抗原含量がより少ないことによって説明されるかもしれない。高レベルの抗原を発現するa‐SPEX(配列番号92で表わされる融合タンパク質を発現、実施例2に記載)は、改善された抗原特異的サイトカイン産生を誘導するであろうことが予想され、さらに、この産物または他のHBV抗原(HBV Xおよびポリメラーゼ抗原)を組込んだ他の産物によって発現されるさらなる抗原を特徴づけるIVSアッセイは、さらなる免疫原性を明らかにすると予想される。
実施例11
次の実施例は、HBVに関する酵母系免疫療法組成物のin vivoでの免疫原性試験について述べる。
この実験では、CUP1プロモーターの制御下にて配列番号34で表わされる融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法産物(GI‐13002)であって、「SCORE」としても知られ、またより具体的には実施例1に記載されている免疫療法産物は、SCOREで免疫されたマウス由来のT細胞がレシピエントの重症複合免疫不全(SCID)マウスに移入された後で該SCIDマウスに腫瘍移植がなされる、養子免疫細胞移入法において使用された。
簡潔に述べると、メスのC57BL/6マウス(4〜6週齢)は、第0日、第7日および第14日に、2つの部位(2.5YUを側腹部、2.5YUを首筋)においてGI‐13002(SCORE)、YVEC(空のベクターを含有する酵母)を用いて皮下に免疫されたか、または免疫処置されなかった(無処置)。SCOREで免疫されたマウスの1コホートは、各免疫処置の1日後に50μgの抗CD40抗体を用いてさらに腹腔内(i.p.)注射された。第24日にマウスは殺処理され、全脾細胞が調製および計数された。200μLのPBS中に含めた2500万個の脾細胞が、ナイーブなレシピエントである4〜6週齢のメスのSCIDマウスにi.p.注射された。移入後24時間で、該レシピエントに、300,000個のSCORE抗原を発現するEL4腫瘍細胞(「EL‐4‐Score」と表示)または無関係のオボアルブミン抗原を発現する腫瘍細胞を用いて胸郭エリアに皮下(s.c.)接種がなされた。腫瘍の成長は、腫瘍接種後10日から開始して1〜2日間隔でデジタルノギス測定によってモニタリングされた。
図31に示された腫瘍接種後10日における結果から、GI‐13002(SCORE)またはGI‐13002+抗CD40抗体で免疫されたマウス由来の脾細胞は、SCORE抗原を発現するEL4腫瘍を用いた接種からの同程度の保護を誘発するが、YVECまたは無処置のマウス由来では誘発しないことが実証された(図31、左から1番目および2番目の棒)。接種後10日に腫瘍を有するマウスの数は、図31の各棒の上に示されている。GI‐13002で免疫されたマウス由来のT細胞は、無関係な抗原を発現するEL4腫瘍の成長に対しては効果がなかった(図示せず)。YVECで免疫されたマウス由来の脾細胞(図31、中央の棒)は腫瘍の成長に影響しなかった、というのも、この群の腫瘍の大きさおよび数は、脾細胞を受け取っていないマウス(図31、最も右の棒)または無処置のマウスから脾細胞を受け取ったマウス(図31、右から2番目の棒)のものと同程度であったからである。これらの結果は、表面抗原‐コア融合タンパク質を発現する酵母系免疫療法組成物を使用した免疫処置により、腫瘍接種からSCIDマウスを保護する抗原特異的免疫応答が生成することを示している。樹状細胞(DC)を活性化する抗CD40抗体の共同投与は、保護の程度に影響を及ぼさなかった。
実施例12
次の実施例は、インターフェロン‐γ(IFN‐γ)ELISpotアッセイを使用して、HBVに関する2つの酵母系免疫療法組成物の免疫原性試験について述べる。
この実験は、実施例7に記載された2つの最適化された酵母系免疫療法組成物について、同組成物で免疫されたマウスにおいてHBV抗原特異的T細胞を誘導する能力を評価するために設計された。該実験はさらに、計算アルゴリズムを用いて設計された新規なHBVペプチド配列および公開された出版物から得られた配列が、これらの免疫療法組成物によって生成されたT細胞応答を再刺激するために使用可能かどうかも試験した。
この実験では、GI‐13008(「Score‐C」、配列番号116を含む)として実施例7に記載された酵母系免疫療法組成物、およびGI‐13013(「Spex‐D」、配列番号110を含む)として実施例7に記載された酵母系免疫療法組成物が、免疫原性について評価された。この実験で使用されたペプチド配列は表7に示されている。ZGP‐5およびZGP‐7と表示された配列は公開出版物に由来し、残りのペプチドはBIMASまたはSYFPEITHI予測アルゴリズムを用いて計算により同定された。接頭語「Db」または「Kb」はC57BL/6マウスのハプロタイプすなわち:それぞれH‐2DbおよびH2‐Kbを指す。
メスのC57BL/6マウス(4〜6週齢)は、第0日、第7日および第14日に、2つの部位(2.5YUを側腹部、2.5YUを首筋)においてGI‐13008(Score‐C)、GI‐13013(Spex‐D)、YVEC(空ベクターの酵母対照)を用いて皮下に免疫されたか、または免疫処置されなかった(無処置)。20日目にマウスは殺処分され、全脾細胞が調製され、赤血球の除去が行われ、計数され、5%のウシ胎児血清を含有する完全RPMIに、表7に列挙されたペプチド刺激剤(D
bおよびK
bペプチドについては10μM;ZGPペプチドについては30μg/mL)、または組換えHBV SAgおよびコア抗原の混合物(合計で3μg/mL)を加えたものの中で細胞200,000個/ウェルとして4日間インキュベートされた。コンカナバリンAが陽性対照の刺激剤として添加された。
結果(図32)は、GI‐13008(Score‐C)を用いたC57BL/6マウスの免疫処置が、次のペプチドすなわち:Db9‐84、Kb8‐277およびKb8‐347のうち少なくともいずれか、ZGP‐5、ならびにZGP‐7に対する際立った特異性を備えた、HBV表面(S)抗原およびコア抗原を対象とするIFN ELISpot反応を誘発することを示している。これらのペプチドは、培地のみが入ったウェルからの応答、またはGI‐13013(Spex‐D)で免疫されたマウス、YVECで免疫されたマウス、または免疫されていないマウス由来の脾細胞を含有するウェルからの応答よりも大きなIFN応答を誘発した。組換えS+コア抗原混合物もIFN応答を誘発したが、ただしこの特定の刺激剤グループにおけるYVEC対照細胞は、S+コア抗原混合物に関する抗原特異的寄与の評価を妨げるバックグラウンド信号を生成した。これらのデータは、表面‐コア融合タンパク質を発現するGI‐13008(Score‐C)が、選択されたペプチドを用いてex vivoで再刺激されうるHBV抗原特異的免疫応答を誘発すること、および、これらの応答がGI‐13013(Spex‐D)によって誘発されるものより容易に検出可能であることを示している。
実施例13
次の実施例は、HBVのための酵母系免疫療法組成物が、市販のHBV予防ワクチンの接種を受けた対象者由来の末梢血単核細胞(PBMC)からのIFNγ産生を刺激する能力に関して試験された実験について述べる。
この実験では、GI‐13002(「Score」、配列番号34を含む、実施例1)として知られる酵母系免疫療法産物は、アルミニウム系アジュバント上に吸着された組換え精製B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を含有する予防ワクチンである市販のHBV予防ワクチン(ENGERIX(登録商標)‐B、グラクソスミスクライン(GlaxoSmithKline))を接種された対象者から単離されたPBMCからのIFN産生を刺激する能力に関して試験された。
簡潔に述べると、血液が採取され、HLA‐A*0201対立遺伝子を発現する健康なHBV非感染のヒト対象者からPBMCが単離された。PBMCは後の分析用に凍結された。次いで該対象者はENGERIX(登録商標)−Bのワクチン接種を受け(注射1)、注射後第12日および第29日に血液が採取され、PBMCが単離および凍結された。対象者はENGERIX(登録商標)−Bを用いた2回目のワクチン接種を受け(注射2、「ブースト」)、ブースト後第10、21および32日に血液が採取された。各時点についてPBMCが単離および凍結された。
一連のPBMC試料が得られて凍結された後、すべての時点の細胞が融解され、洗浄され、空ベクターの酵母対照(YVEC)またはGI‐13002とともに酵母:PBMC比を5:1として、37℃/5%CO2インキュベータ内で3日間インキュベートされた。その後、細胞はIFN ELISpotプレートに移され、18時間インキュベートされ、標準的手順に従ってELISpotを発色させるために処理された。
図33(縦の列は初回免疫の前後およびブースト後の時間を表示する)に示されるように、GI‐13002で処理されたPBMCについて、ブースト後21日の時点においてYVECで処理されたPBMCの応答より高い実質的なELISpot応答が観察された(GI‐13002のELISpotからYVECのELISpotを差し引いてPBMC100万個あたり〜230スポット)。YVECを差し引いたScoreのELISpotのレベルは他の時点について観察された数を上回り、ワクチン接種前の試料について得られたシグナルを2.8倍上回った。GI‐13002およびYVECの酵母系組成物間の唯一の実質的な構造上の差異は、GI‐13002が担持するベクター内に表面‐コア融合タンパク質(HBV抗原)が存在する(すなわちYVECは「空の」ベクターを有する)ことである。したがって、該結果は、GI‐13002が対象者のPBMCにおいてT細胞の抗原特異的刺激を誘発したことを示している。ENGERIX(登録商標)‐Bワクチンは組換え表面抗原を含有するがコア抗原は含まないことから、また対象者はHBVウイルス陰性であった(HBVに感染したことがない)ことから、この結果は、観察されたIFN産生がコア抗原特異的ではなくHBsAg特異的(表面抗原特異的)なT細胞に由来したことを示している。
実施例14
次の実施例は、ネズミ科動物免疫処置モデルにおけるin vivoでのHBVのための酵母系免疫療法組成物の評価について述べる。
この実験では、GI‐13009(「SCORE‐D」、配列番号118を含む、実施例7)として知られる酵母系免疫療法産物、およびGI‐13020(「X‐SCORE」、配列番号130を含む、実施例8)として知られる酵母系免疫療法産物が、C57BL/6マウス、BALB/cマウス、およびHLA‐A2トランスジェニックマウス(B6.Cg‐Tg(HLA‐A/H2‐D)2Enge/J;米国ジャクソン研究所(The Jackson Laboratory)、米国バージニア大学特許財団(University of Virginia Patent Foundation)のライセンスの下で提供)に投与された。上記の実験に使用されたHLA‐A2トランスジェニックマウスは、ヒトHLA‐A2.1遺伝子のα‐1ドメインおよびα‐2ドメインと、マウスH‐2Dd遺伝子のα‐3膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含有する種間雑種のクラスIMHC遺伝子AADを、ヒトHLA‐A2.1プロモーターの指揮下で発現する。このキメラ型HLA‐A2.1/H2‐Dd MHCクラスI分子は、HLA‐A2.1クラスI分子によって提示されたペプチドを認識することが可能な一層完全なT細胞レパートリーを提供するために、マウスT細胞の効率的な正の選択を仲介する。HLA‐A2.1/H2‐DdクラスI分子を背景としたマウスT細胞によって提示および認識されるペプチドエピトープは、HLA‐A2.1+のヒトにおいて提示されるものと同じである。従って、このトランスジェニック系統は、HLA‐A2に提示される抗原に対するヒトのT細胞免疫応答のモデル化を可能にする。
これらの実験の目的は、ヒトMHC(HLA)分子を発現するものなど様々なMHC対立遺伝子を備えたマウスにおける、酵母系HBV免疫療法薬を用いた免疫処置によって生成されるHBV抗原特異的免疫応答の広さおよび規模を評価することであった。免疫原性試験は、適切なHBV抗原を用いた脾臓細胞またはリンパ節細胞のex vivo刺激によって免疫処置後に行われ、その後、IFN‐γ/IL‐2二色式ELISpot、リンパ球増殖アッセイ(LPA)、Luminex(登録商標)多重サイトカイン分析、および細胞内サイトカイン染色(ICCS)のうち少なくともいずれかによってT細胞応答の評価が行われた。ICCSはIFN‐γおよびTNF‐αの抗原特異的産生に対するCD4+およびCD8+T細胞の寄与を決定するために使用された。
下記の実験それぞれにおいて、マウスは、酵母系HBV免疫療法薬または酵母系対照物(後述)を用いて、同じレジメンに従って、すなわち1部位あたり2.5YUの酵母組成物を2つの部位(側腹部、首筋)に週1回で3週間注射として、皮下へのワクチン接種を受けた。対照物には、YVEC(空のベクターを含有する(すなわち抗原を含まない)対照酵母)、OVAX2010(非HBV抗原であるオボアルブミンを発現する対照の酵母免疫療法組成物)、ならびに可溶性組換え抗原(オボアルブミンまたはHBV抗原)を伴うYVECおよび抗CD40抗体の組み合わせ、が含まれた。具体的な実験および処置コホートは以下の表8および9に示されている。マウスは3回目の免疫処置の8日後(HLA‐A2トランスジェニック、実験1)または14日後(C57BL/6およびBALB/c、実験2)に安楽死に供され、下記に示されるように、脾臓および鼠径リンパ節が切除されて様々な抗原刺激(HBVのクラスIおよびクラスII MHC拘束性ペプチド、組換えタンパク質、およびHBV抗原を発現する腫瘍細胞株)とともに5日間インキュベートされた。Luminex(登録商標)分析については、培養上清が採取され、抗原添加の48時間後に10種の異なるサイトカイン(Th1型およびTh2型)の産生について評価された。ELISpotアッセイについては、細胞は上記5日間のin vitro刺激(IVS)の最後の24時間についてIFN‐γ抗体コーティングプレート上でインキュベートされ、その後標準化されたスポット検出および計数が行われた。LPAについては、細胞は上記5日間のIVSの最後の18時間について3Hチミジンでパルス標識され、次いで新たに合成されたDNAに取り込まれたアイソトープの量がシンチレーション計数によって測定された。ICCSについては、全7日間の刺激の後、死細胞を除去するためにフィコール勾配遠心分離に供され、次いで1ウェルあたり(96ウェルのU底プレート)100万個の生細胞が様々な濃度範囲の同じ抗原刺激とともに5時間インキュベートされ(力価測定)、次に透過処理され(permeablized)、細胞内のIFN‐γおよびTNF‐α+細胞表面マーカーCD4およびCD8を認識する蛍光色素結合抗体を用いる染色に供された。サイトカインを発現するCD4+またはCD8+T細胞の比率(%)はフローサイトメトリーによって決定された。
表8は、実験1の実験コホートおよびプロトコールについて記載している。この実験では、マウスのHLA‐A2コホートは上述のプロトコールを使用して免疫され、該マウスは3回目の免疫処置の8日後に免疫分析のために安楽死させた。A群(「YVEC」)には、酵母YVEC対照物が上述の免疫処置スケジュールに従って接種され;B群(「SCORE‐D(GI‐13009‐UL2)」)には、UL2培地で増殖させたGI‐13009(実施例7を参照)が上述の免疫処置スケジュールに従って接種され;C群(「X‐SCORE(GI‐13020‐U2)」)には、U2培地で増殖させたGI‐13020(実施例8を参照)が上述の免疫処置スケジュールに従って接種された。
実験1のマウスから採取されたリンパ節細胞のIFN‐γ ELISpotアッセイ結果は図34に示されている。この図は、様々なHBVペプチドを用いた免疫処置マウス由来のリンパ節細胞の再刺激の結果を、培地対照と比較して示している(「TKO20」と表記されたペプチドは、免疫療法薬X‐SCOREに含まれるがSCORE‐Dには存在しないX抗原由来のペプチド(X52〜60)であることに留意されたい)。この結果から、SCORE‐D(GI‐13009)で免疫されたマウスおよびX‐SCORE(GI‐13020)で免疫されたマウスのいずれに由来するリンパ節細胞も、各3μg/mlの組換えHBV表面抗原およびコア抗原の混合物を用いたin vitro刺激に応答してIFN‐γを産生するT細胞を有することが示された(図34;「S&C3」と表示)。このELISpot応答は、同じ刺激剤で処理されたYVECで免疫されたマウス(酵母対照)について観察された応答よりも大きく、酵母系免疫療法組成物(SCORE‐DおよびX‐SCORE)中のHBV表面抗原およびコア抗原のうち少なくとも一方がIFN‐γ応答の誘導に必要であることが示された。更に、この結果から、IVSにおけるHBV抗原を使用する再刺激は、培地のみの入ったウェルがはるかに低いELISpot応答を示したことから、効率的なIFN‐γ産生をもたらすことを示している。
図34はさらに、急性HBV曝露でクリアランスを示す患者において重要であることが当分野において知られている、HBVコア由来の選択されたHLA‐A2拘束性エピトープ(TKP16;コア:115〜124 VLEYLVSFGV;配列番号75)は、X‐SCOREで免疫されたマウスにおいて、培地のみのウェルで観察される応答よりも大きな応答を誘発することを示している。ELISpotアッセイについてのペプチド濃度およびインキュベート時間をさらに改良すると、これらの抗原について観察される応答の規模が増大し、かつ変動が小さくなると予想される。
図35は、実験1のSCORE‐Dで免疫されたマウスから採取された脾臓細胞由来のIFN‐γELISpotアッセイ結果を示す。「Core11‐27」と表示されたHBVコアペプチド(ATVELLSFLPSDFFPSV(配列番号72))はSCORE‐Dによって発現される抗原内に含まれる一方、「X92‐100」と表示されたHBV XペプチドはSCORE‐Dによって発現される抗原内に含まれず、したがってこの実験においては対照ペプチドである。図35に示されるように、SCORE‐Dで免疫されたHLA‐A2トランスジェニックマウス由来の脾臓細胞は、「Core11‐27」と表示される既知のHLA‐A2拘束性HBVコアエピトープを用いたin vitro刺激に際してIFN‐γELISpot応答を生じた。この応答は、無関係のペプチド(「X92‐100」と表示)を用いてin vitroで刺激された脾臓細胞、培地のみ、またはYVECで免疫されたマウス由来の脾細胞についての任意のIVS処理ウェルから観察される応答よりも大きかった。
したがって、実験1の最初の結果は、SCORE‐DおよびX‐SCOREはいずれも、酵母系免疫療法組成物で免疫されたHLA‐A2トランスジェニックマウスにおいてHBV抗原特異的なT細胞応答を誘発することを示している。
表9は、実験2の実験コホートおよびプロトコールについて記載している。この実験では、C57BL/6およびBALB/cのマウスコホートは上述のプロトコールを使用して免疫され、マウスは3回目の免疫処置の2週間後に免疫分析のために安楽死させた。A群(「無処置」)は処置を受けておらず;B群(「YVEC」)には、酵母YVEC対照物が上述の免疫処置スケジュールに従って接種され;C群(「X‐SCORE(GI‐13020‐U2)」)には、U2培地で増殖させたGI‐13020(実施例8を参照)が上述の免疫処置スケジュールに従って接種され;D群(「SCORE‐D(GI‐13009‐UL2)」には、UL2培地で増殖させたGI‐13009(実施例7を参照)が上述の免疫処置スケジュールに従って接種され;E群(「OVAX2010」)には、オボアルブミンを発現する酵母対照物が上述の免疫処置スケジュールに従って接種された。
図36は、実験2(表9)に示されるように免疫されたC57BL/6マウスから単離されたリンパ節細胞についてのELISpotアッセイの結果を示す。これらの結果から、X‐SCOREおよびSCORE‐Dはいずれも野生型C57BL/6マウスにおいてIFN‐γ応答を誘発することが実証された。精製された、ピチア・パストリスで発現された表面抗原およびコア抗原を用いてin vitroで刺激された、X‐SCOREで免疫されたマウス由来のリンパ節細胞は(yS&Cと表示;ピチア属菌で発現された表面抗原およびコア抗原の1:1混合物を用いたIVS、各3μg/mL)、有意なIFN‐γ免疫応答を生じた。X‐SCOREおよびSCORE‐Dのいずれで免疫されたマウス由来の同じリンパ節細胞調製物も、大腸菌で発現された表面抗原およびコア抗原で刺激された場合(cS&Cと表示;大腸菌で発現された表面およびコア抗原の1:1混合物を用いたIVS、各3μg/mL)、ピチア属で発現された組換え抗原について観察されるよりも全体に高いELISpot応答を生じた。図36の「無刺激」と表示された縦の列は、cRPMI培地のみが提供された(抗原無しの)IVS条件を示している。概して、X‐SCOREを用いた免疫処置はSCORE‐Dよりも高い作用を誘発し、いずれの酵母系HBV免疫療法組成物も、YVECで免疫された(酵母対照)マウスまたは無処置のマウスについて観察されるよりも高い応答を誘発した。これらのデータから、SCORE‐DおよびX‐SCOREはいずれも、C57BL/6マウス由来のex vivoリンパ節細胞調製物において検出可能なHBV抗原特異的免疫応答を生じることが示される。
図37は、実験2(表9)で行われたC57BL/6マウスの細胞内サイトカイン染色(ICCS)アッセイの結果を示す。該結果から、X‐SCOREまたはSCORE‐Dのいずれかを用いたC57BL/6マウスの免疫処置により、「VWL」と表示される表面抗原由来のMHCクラスI分子H‐2Kb拘束性ペプチド(VWLSVIWM;配列番号152)に特異的なIFN‐γ産生CD8+T細胞が誘発されることが示された。この作用は、ICCSの手順の5時間インキュベーションの間に細胞に添加されたペプチドの濃度に依存し;より濃度の高いペプチドほど、酵母系HBV免疫療法薬(SCORE‐DおよびX‐SCORE)と、無関係な酵母対照物(OvaxおよびYvec)とで、IFN‐γを産生するCD8+T細胞のレベルの差が大きくなり、ペプチド10μg/mLでは最大の隔たりが生じた。
実験2のICCSアッセイはさらに、X‐SCOREおよびSCORE‐Dを用いたC57BL/6マウスの免疫処置により、ICCSの手順の5時間インキュベーションの間に0.5μg/mLのペプチドが添加される条件において、「ZGP‐5」と表示されるコアタンパク質由来のMHCクラスII拘束性HBVペプチド(VSFGVWIRTPPAYRPPNAPIL;配列番号148)に特異的なIFN‐γ産生CD4+T細胞が誘発されることも示した(図38)。
上述のELISpot結果と合わせると、これらのデータは、SCORE‐DおよびX‐SCOREのいずれの酵母系免疫療法組成物も、組換えHBV抗原およびHBVペプチドを用いたリンパ節および脾臓細胞のex vivo刺激によって検出される、HBV抗原特異的なエフェクターCD4+ およびCD8+T細胞を誘発することを示している。T細胞応答は野生型C57BL/6マウス(H2Kb)およびHLA‐A2トランスジェニックマウスのいずれにおいても生じ、これらのワクチン剤が多様な主要組織適合型を背景として免疫応答を誘発する潜在能力を示している。
本実施例において上述されたHLA‐A2マウスおよびC57BL/6マウスについての結果、ならびに実施例9、10、11および12に記載された実験の結果に基づくと、SCORE‐DまたはX‐SCOREのいずれかで免疫されたBALB/cマウスを用いた結果は、酵母系HBV免疫療法組成物がこれらのマウスにおいてHBV抗原特異的なエフェクターCD4+ およびCD8+T細胞を誘発することも実証するであろうことが予想される。実際に、BALB/cコホートの初期の結果はCD8+T細胞応答について陽性であった(データは示さない)。さらに、リンパ球増殖アッセイおよびLuminex(登録商標)サイトカイン放出分析は、SCORE‐DおよびX‐SCOREがいずれも酵母免疫療法薬中に存在するHBV抗原配列を特異的標的とする免疫応答を誘導すること、およびこれらの応答は3種のマウス系統(HLA‐A2トランスジェニック、C57BL/6およびBALB/c)全てにおいて観察されるであろうことを示すことになると予想される。
実施例15
次の実施例は、HBVのための酵母系免疫療法組成物が、様々なHBV抗原に曝露された提供者から単離されたPBMCからのIFN産生を刺激する能力について評価される実験について述べる。
この実験では、GI‐13009として知られる酵母系免疫療法産物(「Score‐D」、配列番号118を含む、実施例7)、およびGI‐13020として知られる酵母系免疫療法産物(「X‐Score」、配列番号130を含む、実施例8)は、該産物が様々なHBV抗原に曝露された提供者から単離されたPBMCからのIFNγ産生を刺激する能力に関して試験される。この実験では、1群の提供者はENGERIX(登録商標)‐B(グラクソスミスクライン)またはRECOMBIVAX HB(商標)(メルク・アンド・カンパニー(Merck and Co., Inc.))でワクチン接種済みであり、1群の提供者はHBV抗原と未接触(ナイーブ)であり(「正常」)、1群の提供者は慢性HBV患者(HBVに慢性感染した対象者)である。ENGERIX(登録商標)‐Bは、酵母細胞で生産され、精製され、次いでアルミニウムベースのアジュバント上に吸着された組換え精製B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を含有する予防用組換えサブユニットワクチンである。RECOMBIVAX HB(商標)は、酵母細胞で生産されて含有する酵母タンパク質が1%未満となるように精製されたHBV表面抗原(HBsAg)に由来する予防用組換えサブユニットワクチンである。提供者は全員HLA‐A*0201対立遺伝子を発現する。
ドナーPBMCは、6ウェルの平底組織培養プレート(107個のPBMC/ウェル)中で、10%ウシ胎児血清を含有する完全RPMI培地中で5%CO2インキュベータにて3時間インキュベートされる。付着しない細胞は除去および廃棄され、付着した細胞は、未熟な樹状細胞(iDC)を生成するために、組換えヒトインターロイキン‐4(IL‐4)および組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)(それぞれ20ng/mLおよび50ng/mL)で5日間処理される。次いで、iDCは、成熟DCを生成するために、抗CD40抗体(1μg/ml)、YVEC(空のベクターを含む酵母対照)、または酵母系産物GI‐13020もしくはGI‐13009とともに、37℃の5%CO2インキュベータで48時間インキュベートされる。抗CD40抗体で処理されたDCについては、細胞は、標準的な方法を使用してHLA‐A*0201拘束性HBVペプチドでさらにパルスされる。全てのDC群はPBSで洗浄され、次いでセルハーベスタを用いてプレートからPBS中へ取り出される。細胞は放射線照射され(30Gy)、1:10のDC:PBMC比で自己由来のドナーPBMCを刺激するために使用される。刺激は7日間実施され(第1ラウンド)、そのうち最後の4日間は組換えヒトIL‐2を含有する培地中で実施される。刺激されたPBMCはその後フィコール勾配遠心分離に供され、単離された生細胞は上述のように調製された酵母パルスDCまたはペプチドパルスDCを用いる第2ラウンドのIVSに供される。刺激されたPBMCはその後、IFN‐γに特異的な抗体でコーティングされた96ウェルプレート中で20U/mLのrhIL‐2の存在下でHBVペプチドまたは対照物とともにインキュベートされ、ELISpot検出は標準的な製造者による手順を使用して実施される。SCORE‐DもしくはX‐SCOREで処理された自己由来のDCを用いて、またはHBVペプチドでパルスされたDCを用いて刺激されたPBMCは、YVECで処理されたDCまたはパルスされていないDCを用いて刺激されたPBMCよりも強く外因性HBVペプチドに応答するであろうこと、ならびに、この作用は、HBV抗原に曝露していないナイーブな提供者よりもHBV ENGERIX(登録商標)またはRECOMBIVAX HB(商標)ワクチンの被接種者についてより顕著であろうことが予想される。
実施例16
次の実施例は、ヒトにおいて本発明の酵母系HBV免疫療法組成物の免疫原性を実証するための、ヒトPBMCを使用する前臨床実験について述べる。
具体的には、これらの実験は、HBV表面抗原特異的および/またはHBVコア抗原特異的なCD8+T細胞が、HBVキャリアの末梢血単核細胞(PBMC)において、HBV表面抗原およびHBVコアを含有する酵母系HBV免疫療法組成物を用いた2回のin
vitro刺激(IVS)の後に検出されうるかどうかを判定するために設計される。
PBMCは、(血清HBsAgの状態に基づいて)HBVについて陽性であると確認されたヒト提供者から得られる。全DNAが0.5mLの全血から単離され、試験のための適切なHBVペンタマーを同定するためにHLAについて分類される(下記の表を参照)。
樹状細胞(DC)は、上述の提供者から単離されたPBMCから、GM‐CSFおよびIL‐4の存在下で5日間PBMCを培養することにより調製される。続いてDCは、酵母系HBV免疫療法組成物(例えば実施例1〜8のいずれかまたは本明細書中他所に記載されたもの)または対照酵母(例えば、空のベクターもしくは抗原をコードする挿入物を含まないベクターで形質転換されたサッカロマイセス・セレビシエ酵母である「YVEC」)とともに、1:1(酵母:DC)の比でインキュベートされる。対照のDC培養物には、HBVペプチド、対照ペプチド(非HBVペプチド)とともに、または何も含めずにインキュベートされるDCも含まれる。
48時間の共培養の後、DCは自己由来のT細胞(すなわち上記提供者からのT細胞)の刺激用の抗原提示細胞(APC)として使用される。IVS(in vitro刺激)と呼ばれる刺激の各サイクルは、IL‐2の非存在下での3日間の培養と、その後の組換えIL‐2(20U/ml)存在下でのさらなる4日間とで構成される。IVS 2の終了時、T細胞は、対照のテトラマーもしくはペンタマー、または上記に同定されたHBVペプチドエピトープに特異的なテトラマーもしくはペンタマーを用いて染色される。テトラマーまたはペンタマーで陽性に染色されるCD8+T細胞の比率(%)はフローサイトメトリーによって定量される。
本発明の酵母‐HBV免疫療法薬を用いた、HBV陽性の提供者由来のドナーT細胞の刺激は、対照と比較して、提供者の少なくとも一部または大多数においてテトラマー/ペンタマーで陽性のCD8+T細胞の比率を高め、HBV感染者由来のヒトT細胞が、酵母系免疫療法によって運ばれたHBVタンパク質を免疫原として認識する能力を有することを示すことが予想される。
上記に類似したさらなる実験が、正常な(HBV非感染の)個体由来のドナーPBMCを使用して実行される。本発明の酵母‐HBV免疫療法薬を用いた、正常な提供者由来のドナーT細胞の刺激は、対照と比較して、提供者の少なくとも一部または大多数においてテトラマー/ペンタマーで陽性のCD8+T細胞の比率を高め、非感染者由来のヒトT細胞も、酵母系免疫療法によって運ばれたHBVタンパク質を免疫原として認識する能力を有することを示すことが予想される。
さらなる実験では、上述の実験の提供者のうち3人に由来するHBV特異的T細胞を、酵母系HBV免疫療法薬(例えば実施例1〜8のいずれかまたは本明細書中他所に記載されたもの)とともにインキュベートされたDCを使用して、(上述のように)IVS 2サイクルにわたってin vitroで増殖させる。3回目のIVSは、CD40Lの存在下で成熟させてHBVペプチドでパルスされたDCを用いて実行される。5日目にCD8+T細胞が単離されて、HBV抗原を発現する腫瘍細胞標的に対する一晩の細胞傷害性リンパ球(CTL)アッセイに、様々なエフェクター:標的(ET)比で使用される。対照テトラマー/ペンタマーとHBV特異的テトラマー/ペンタマーとを用いて陽性に染色されるCD8+T細胞の比率(%)が測定される。
提供者の一部または全員に由来するT細胞が、HBV抗原を発現する標的を殺滅することのできるCD8+CTLを生成する能力を有するであろうことが予想される。これらのデータは、酵母‐HBV免疫療法組成物が、HBV抗原を発現する腫瘍細胞を殺滅する能力を有するHBV特異的CTLを生成することができることを実証するであろう。
実施例17
次の実施例は、健康なボランティアにおける第1相臨床試験について述べる。
12週間、非盲検の用量漸増第1相臨床試験は、GI‐13009として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「SCORE‐D」、配列番号118を含む、実施例7)、またはその代わりに、GI‐13020として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「X‐SCORE」、配列番号130を含む、実施例8)を使用して実施される。本明細書中に記載されたその他の酵母系HBV免疫療法組成物(例えば実施例1〜8に記載されたもののうちいずれか)が、同様の第1相臨床試験において利用されてもよい。第1相臨床試験のための酵母系HBV免疫療法産物は、最も強力な正味の免疫応答プロファイル(例えば、陽性の結果を最も良く予測するT細胞エピトープについての応答の大きさ、およびある範囲のエピトープにわたる免疫応答の幅)を含む考察に基づいて、前臨床研究(例えば実施例9〜17のうちのいずれか1つに記載されたもの)から選択される。
対象者は、過去または現時点でHBV感染の兆候または記録を持たない、免疫が機能している健康なボランティアである。
上記基準を満たすおよそ48人の対象者(6治療群、1群あたり対象者8人)に、酵母系HBV免疫療法組成物が、2つの異なる投薬プロトコールのうち1つを用いて連続用量コホート漸増(sequential dose cohort escalation)プロトコールで、すなわち:
プロトコールA:初回‐ブースト投薬(1日目で開始して4回の週1回投薬、続いて4週および8週における2回の月1回投薬)
治療群1A:20Y.U.(2か所の異なる部位に10Y.U.用量を投与);
治療群2A:40Y.U.(4か所の異なる部位に10Y.U.用量を投与);
治療群3A:80Y.U.(4か所の異なる部位に20Y.U.用量を投与)
4週毎の投薬(1日目、4週目および8週目に投与される全3回の投薬)
治療群1B:20Y.U.(2か所の異なる部位に10Y.U.用量を投与);
治療群2B:40Y.U.(4か所の異なる部位に10Y.U.用量を投与);
治療群3B:80Y.U.(4か所の異なる部位に20Y.U.用量を投与)、
のように投与される。
用量はすべて皮下に投与され、かつ1回量は、上記のように身体上の2か所または4か所の部位に(診察時ごとに(every visit))分割される。安全性および免疫原性(例えばELISpotおよびT細胞増殖によって測定される抗原特異的T細胞応答)が評価される。具体的には、ELISpotに基づいたアルゴリズムが応答細胞分類別に(for categorical responders)開発されている。調節性T細胞(Treg)を測定するELISpotアッセイも評価され、またHBV抗原に応答したCD4+T細胞増殖が評価されて抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)の出現と関連付けられる。
酵母系HBV免疫療法薬は、忍容性が良好であり、かつELISpotアッセイ、リンパ球増殖アッセイ(LPA)、HBV抗原によるex vivoT細胞刺激、および/またはASCAのうち1つ以上によって測定されるような免疫原性を示すであろうことが予想される。
実施例18
次の実施例は、B型肝炎ウイルスに慢性感染した対象者における第1b/2a相臨床試験について述べる。
HBV感染者は該疾患の自然経過の一部として肝炎の不安定な増悪を経験しやすいことから、酵母系HBV免疫療法は、抗ウイルス薬による治療法を用いた部分的または完全なウイルス制御からある程度の期間の後に、セロコンバージョン率を向上させるという主要有効性の目標(primary efficacy goal)とともに、開始される。この第1の強化療法では、酵母系HBV免疫療法は、セロコンバージョン率が継続的な抗ウイルス薬療法との併用で改善されうるかどうかを判断するために、患者がPCRによるHBV DNA陰性を達成した後で、該患者において使用される。
非盲検の用量漸増第1b/2a相臨床試験は、GI‐13009として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「SCORE‐D」、配列番号118を含む、実施例7)を使用して実行されるか、またはその代わりに、GI‐13020として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「X‐SCORE」、配列番号130を含む、実施例8)が使用される。本明細書中に記載された他の酵母系HBV免疫療法組成物(例えば実施例1〜8に記載されたもののうちいずれか)が、同様の第1相臨床試験において利用されてもよい。対象者は、免疫が機能しており、B型肝炎ウイルス(HBV)に慢性感染しているがHBV DNAレベルで測定されるように抗ウイルス薬療法(すなわち、フマル酸テノホビルジソプロキシル、またはTDF(VIREAD(登録商標)))によって良好に制御されている。対象者は、HBV DNAについて陰性(PCRによる検出可能レベル未満または<2000IU/ml)であるが、本試験について適格であるためには、対象者は、HBeAg陽性であってかつ肝硬変または代償不全の兆候のない者でなければならない。
この試験の第1段階では、上記の基準を満たすおよそ40人の対象者(1治療群あたり約5人の対象者)に、0.05Y.U.〜80Y.U.の範囲(例えば0.05Y.U.、10Y.U.、20Y.U.および40〜80Y.U.)の用量を用いる連続用量コホート漸増プロトコールで、酵母系HBV免疫療法組成物が投与される。1つのプロトコールでは、5回の週1回用量が皮下投与され(週1回投薬を4週間)、その後2〜4回の月1回用量も皮下投与され、酵母系HBV免疫療法を用いた治療(初回‐ブーストプロトコール)の間も抗ウイルス薬療法が継続されることになろう。第2のプロトコールでは、4週毎投薬プロトコールに従って、対象者に、上述と同じ用量漸増法を使用して1日目、4週および8週に投与される合計3回分が投与される。任意選択で、1つの試験では、1つの患者コホート(患者5〜6人)は免疫療法+抗ウイルス薬療法の継続と同じスケジュールで偽薬(PBS)の皮下注射を受けることになる。慎重な停止規則がALTフレアおよび減圧症(decompression)の徴候について設けられる。
この試験の第2段階では、対象者(n=60)は、抗ウイルス薬(TDF)単独または抗ウイルス薬+酵母系HBV免疫療法プロトコール(用量1および用量2)を48週まで継続するために、1治療群あたり30人に無作為化される。
安全性、HBV抗原の動態、HBeAgおよびHBsAgセロコンバージョン、ならびに免疫原性(例えばELISpotによって測定される抗原特異的T細胞応答)が評価される。加えて、用量依存的な生化学的負荷(ALT)およびウイルス負荷がモニタリングされる。具体的には、12週、24週、48週における3つの治療群の間の治療中の血清HBsAg低下の尺度が測定され、HBsAgの消失/セロコンバージョンは48週において測定される。
酵母系免疫療法およびTDFを投与されている対象者における、HBsAg消失速度の増大および48週における>20%のセロコンバージョンのうち少なくとも一方は、TDFのみを投与されている対象者と比較すると、臨床的に有意な向上と考えられる。酵母系HBV免疫療法組成物は、慢性的に感染したHBV患者に治療上の利点を提供するものと予想される。該免疫療法は、送達されるすべての用量において安全かつ忍容性が良好であると予想される。少なくとも最高用量の酵母系HBV免疫療法を投与されている患者は、ELISPOTによって決定されるような治療により出現するHBV特異的T細胞応答を示すと予想され、また事前にベースラインのHBV特異的T細胞応答を備えていた患者は、治療中にHBV特異的T細胞応答の向上を示すと予想される。酵母系HBV免疫療法を受けている患者は、抗ウイルス薬の群と比較して、かつ/または、用いられる場合には偽薬対照群と比較して、セロコンバージョン率の向上を示すと予想される。ALT正常化における向上が、酵母系HBV免疫療法を受けている患者において予想される。
別例の試験では、HBeAg陰性の患者であって他の基準(免疫が機能している、HBVに慢性感染している、抗ウイルス薬で良好に制御されている、代償不全の徴候がない)を満たしている患者が、上述と同様の用量漸増試験において(または上述の試験で同定された最大耐用量もしくは最適用量で)治療される。患者は、安全性、免疫原性およびHBsAgセロコンバージョンについてモニタリングされる。
実施例19
次の実施例はB型肝炎ウイルスに慢性感染した対象者における第1b/2a相臨床試験について述べる。
非盲検の用量漸増第1b/2a相臨床試験は、GI‐13009として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「SCORE‐D」、配列番号118を含む、実施例7)を使用して行われるか、またはその代わりに、GI‐13020として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「X‐SCORE」、配列番号130を含む、実施例8)が使用される。本明細書中に記載された他の酵母系HBV免疫療法組成物(例えば実施例1〜8に記載されたもののうちいずれか)が、同様の第1b/2a相臨床試験において利用されてもよい。対象者は、免疫が機能しており、B型肝炎ウイルス(HBV)に慢性感染しているが抗ウイルス薬療法(例えばテノフォビル(VIREAD(登録商標)))によって少なくとも3か月間制御されている。対象者は本試験に登録するためにウイルスを完全に排除している必要はない、すなわち、患者は、HBV DNAについて陽性であっても陰性であってもよい(陰性であることはPCRによる検出可能レベル未満または<2000IU/mlとして判定される)が;しかし本試験に適格であるためには、対象者は肝硬変または代償不全の兆候を有していない。患者はHBeAg陽性であるとよいが、HBeAg陰性の患者が本試験に含まれることも可能である。
上記の基準を満たしている30〜40人の対象者(1コホートあたり6〜10人の患者)に、0.05Y.U.〜40Y.U.の範囲の用量(例えば0.05Y.U.、0.5Y.U.、4Y.U.、40Y.U.)を用いて、または0.05Y.U.〜80Y.U.の範囲の用量(例えば0.05Y.U.、10Y.U.、20Y.U.、40/80Y.U.)を用いて、連続用量コホート漸増プロトコールで酵母系HBV免疫療法組成物が投与される。1つのプロトコールでは、5回の週1回用量が皮下投与され(週1回投薬を4週間)、その後2〜4回の月1回用量も皮下投与され、酵母系HBV免疫療法を用いた治療(初回‐ブーストプロトコール)の間も抗ウイルス薬療法が継続されることになろう。第2のプロトコールでは、4週毎投薬プロトコールに従って、対象者に、上述と同じ用量漸増法を使用して1日目、4週および8週に投与される合計3回分が投与される。1つの試験では、1つの患者コホート(患者5〜6人)は、免疫療法+抗ウイルス薬療法の継続と同じスケジュールで偽薬(PBS)の皮下注射を受けることになる。慎重な停止規則がALTフレアおよび減圧症(decompression)の徴候について設けられる。
安全性、HBeAgおよびHBsAgセロコンバージョン、ウイルス制御(例えばウイルス陰性の達成またはウイルス陰性へ向かう傾向)、ならびに免疫原性(例えばELISpotによって測定される抗原特異的なT細胞応答)が評価される。加えて、用量依存的な生化学的負荷(ALT)およびウイルス負荷がモニタリングされる。
24週までにHB‐SAgが>1log10低減されること、または12週までにHB‐eAgが>1log10低減されることが、第2a相のエンドポイントであると考えられる。HBVセロコンバージョンについては、24週までに10%、および48週までに15%のSAgセロコンバージョン、ならびに、24週までに25%または48週までに50%のeAgセロコンバージョン率が成功基準である。
酵母系HBV免疫療法組成物は、慢性感染したHBV患者に治療上の利点を提供するものと予想される。該免疫療法は、送達されるすべての用量において安全かつ忍容性が良好であると予想される。少なくとも最高用量の酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、ELISPOTによって決定されるような治療により出現するHBV特異的T細胞応答を示すと予想され、また事前にベースラインのHBV特異的T細胞応答を備えていた患者は、治療中にHBV特異的T細胞応答の向上を示すと予想される。酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、与えられた抗ウイルス薬について利用可能な比較データと比較して、かつ/または、偽薬の対照群と比較して、セロコンバージョン率の改善を示すであろう。酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、ウイルスの消失(例えばPCRによって測定されるようなウイルス陰性)における改善を示すであろう。ALT正常化における向上が、酵母系HBV免疫療法を受けている患者において予想される。
実施例20
次の実施例は、B型肝炎ウイルスに慢性感染した対象者における第2相臨床試験について述べる。
HBVに慢性感染した患者における無作為化第2相臨床試験は、治療を受けたことのない、HBeAg陽性(場合によってはHBeAg陰性)の、ALT>2×ULNおよびウイルス負荷>100万コピーである対象者を治療する。対象者(1治療群あたり約60人の対象者は第1相試験のシグナルに基づいて調整)は、少なくとも6か月の事前の抗ウイルス薬療法を受けていなければならず、少なくとも1か月の間隔をあけて連続2回の診察時においてウイルス陰性でなければならない。対象者は2つの治療群に無作為化割付される。治療群1の患者は、24〜48週間の酵母系HBV免疫療法を受ける(例えばGI‐13009として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「SCORE‐D」、配列番号118を含む、実施例7)、またはその代わりに、GI‐13020として本明細書中に記載された酵母系HBV免疫療法組成物(「X‐SCORE」、配列番号130を含む、実施例8))。免疫療法を受ける患者は全て抗ウイルス薬療法(例えばテノフォビル(VIREAD(登録商標)))を継続する。治療群2の患者は、継続的な抗ウイルス薬療法とともに偽薬(PBS対照の注射)を受ける。主要評価項目はセロコンバージョンおよびウイルス陰性であることである。本明細書中に記載されたさらなる酵母系HBV免疫療法組成物(例えば実施例1〜8に記載されたもののうちいずれか)も、同様の設計の第2相臨床試験において利用されうる。
セロコンバージョンを達成する患者は、酵母免疫療法および抗ウイルス薬(治療群1)または抗ウイルス薬のみ(治療群2)のいずれかの6〜12か月の強化療法を受けた後に、6か月の治療休止日となる。6か月の休止日の終了後に依然として寛解状態である患者の数が、該試験の副次的評価項目を表わす。さらなる評価項目には、上記のヒト臨床試験について記載する実施例で議論されるように、安全性、免疫原性およびALT正常化が含まれる。
酵母系HBV免疫療法組成物は、慢性的に感染したHBV患者に治療上の利点を提供するものと予想される。該免疫療法は、安全かつ忍容性が良好であると予想される。酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、ELISPOTによって決定されるような治療により出現したHBV特異的T細胞応答を示すと予想され、また事前にベースラインのHBV特異的T細胞応答を備えていた患者は、治療中にHBV特異的T細胞応答の向上を示すと予想される。酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、偽薬対照群と比較して、セロコンバージョン率の改善を示すと予想される。酵母系HBV免疫療法を受ける患者は、ウイルスの消失(例えばPCRによって測定されるようなウイルス陰性)における改善を示すと予想される。ALT正常化における向上が、酵母系HBV免疫療法を受けている患者において予想される。
本発明の様々な実施形態について詳細に説明してきたが、当然ながら当業者にはそれらの実施形態の改変形態および修正形態が思い浮かぶであろう。しかしながら、明らかに了解されることであるが、添付の特許請求の範囲に記載されるように、そのような改変形態および修正形態は本発明の範囲内にある。