JP2015092239A - 反射防止物品、及び画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制された反射防止物品を提供する。
【解決手段】透明基材1の少なくとも一方の面に、樹脂組成物又はその硬化物からなる微小突起2が密接して配置された微小突起構造体3を有する反射防止物品10であって、微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、dmax≦Λminなる関係を有し、且つ、微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、微小突起表面の高さ方向の傾きが、突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、複数ある微小突起の平均アスペクト比が1.2以上であり、波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下である、反射防止物品。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止物品、及び画像表示装置に関する。
近年、フィルム形状の反射防止物品である反射防止フィルムに関して、透明基材(透明フィルム)の表面に多数の微小突起を密接して配置することにより、反射防止を図る方法が提案されている(特許文献1、2参照)。この方法は、入射光に対する屈折率を厚み方向に連続的に変化させ、これにより屈折率の不連続界面を消失させて反射防止を図るものである。
斯かる反射防止フィルムは各種用途に使用し得るが、代表的用途は画像表示裝置の画面に設置して日光等の外光の反射を防止し画質を向上させる用途である。
特許文献3には、反射防止機能を有する光学素子として、アスペクト比が0.6〜1.5であって、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状又は放物面状を有する凸部からなり、特定のピッチで配置された複数の構造体を有する特定の光学素子が開示されている。特許文献3によれば、構造体の弾性率を1〜1200MPa以下とし、アスペクト比を0.6〜1.5とすることにより、構造体が変形して、構造体間にしみこんだ汚れが押し出されるとされている。
特開昭50−70040号公報 特開2011−33892号公報 特許第5075234号公報
画像表示装置において、透明基材の表面に多数の微小突起を密接して配置する反射防止部材を用いると、色調が変化する場合があった。特に反射防止物品が赤みを有する場合には、表示装置の色再現性が低下し、目視上の障害となった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制された反射防止物品、及び、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制された画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明に係る反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、樹脂組成物又はその硬化物からなる微小突起が密接して配置された微小突起構造体を有する反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、
max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、
複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起の平均アスペクト比が1.2以上であり、
波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下であることを特徴とする。
本発明の反射防止性物品においては、前記微小突起構造体を構成する複数の微小突起が、頂点を複数有する多峰性微小突起と、頂点が1つの単峰性微小突起からなり、
前記微小突起の微小突起高さHの度数分布における平均突起高さをHAVGとし、標準偏差をσとし、
H<HAVG−σの領域を低高度領域とし、
AVG−σ≦H≦HAVG+σの領域を中高度領域とし、
AVG+σ<Hの領域を高高度領域とした場合に、
各領域内の前記多峰性微小突起の数Nmと、前記度数分布全体における前記多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、
中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、
中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たすことが、耐擦傷性を向上し、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能がより広帯域の波長域に於いて発現され、微小突起構造体の耐擦傷性がより向上する点から好ましい。
本発明に係る画像表示装置は、表示パネルの少なくとも一面側に、前記本発明に係る反射防止物品を備えることを特徴とする。
本発明によれば、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制された反射防止物品、及び、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制された画像表示装置を提供することができる。
図1は、本発明に係る反射防止物品の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明に係る反射防止物品の別の一例を示す概略断面図である 図3は、微小突起の形状の説明に供する、微小突起の模式断面図である。 図4は、微小突起の形状の説明に供する、微小突起の模式断面図(図4(a))、及び斜視図(図4(b))である。 図5は、頂点を複数有する多峰性微小突起の説明に供する断面図(図5(a))、斜視図(図5(b))、平面図(図5(c))である。 図6は、複数の微小突起によって構成される凸状突起群の斜視図(図6(a))及び平面図(図6(b))である。 図7は、微小突起構造体の一例を示す模式断面図である。 図8は、本発明に係る反射防止物品の製造方法の一例を示す概略図である。 図9は、本発明に係る画像表示装置の一例を模式的に示す斜視図である。 図10は、不規則配置された微小突起構造体の説明に援用する、原子間力顕微鏡により求められた、反射防止物品の微小突起構造体の一例を示す拡大写真である。 図11は、図10の微小突起構造体の例における、微小突起の極大点を示す図である。 図12は、図10の微小突起構造体の例における、ドロネー図を示す図である。 図13は、図12のドロネー図から作成した隣接極大点間距離の度数分布のヒストグラムである。 図14は、図10の微小突起構造体の例における、微小突起高さの度数分布のヒストグラムである。 図15は、微小突起高さに関する、低高度領域、中高度領域、高高度領域についての説明の用に供する、微小突起高さの度数分布の模式的なヒストグラムである。 図16は、金型の製造工程の一例を示すフローチャートである。 図17は、図16の金型の製造工程により形成される微細穴の形成過程を示す模式図である。 図18は、図16の金型の製造工程において、深さの異なる微細穴が形成される過程の説明に供する模式図である。 図19は、実施例13の反射防止物品の微小突起高さHの度数分布を示すヒストグラムである。 図20は、実施例14の反射防止物品の微小突起高さHの度数分布を示すヒストグラムである。 図21は、多峰性微小突起の一例を示す拡大写真である。 図22は、微小突起の形状の一例を示す斜視図である。 図23は、図22の例に示される微小突起の、平面図、正面図、及び側面図である。 図24は、図22の微小突起とは別の微小突起の形状の一例を示す斜視図である。 図25は、図24の例に示される微小突起の、平面図、正面図、及び側面図である。 図26は、図22及び図24の微小突起とは別の微小突起の形状の一例を示す斜視図である。 図27は、図26の例に示される微小突起の、正面図、及び側面図である。
以下、本発明に係る反射防止物品、及び、本発明に係る画像表示装置について順に詳細に説明する。
なお、本明細書において「物品」は、「板」、「シート」、「フィルム」等の態様を含む概念であり、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「平面」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
[反射防止物品]
本発明に係る反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、樹脂組成物又はその硬化物からなる微小突起が密接して配置された微小突起構造体を有する反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、
max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、
複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定され
る微小突起の平均アスペクト比が1.2以上であり、
波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下であることを特徴とする。
上記本発明に係る反射防止物品について図を参照して説明する。図1は、本発明に係る反射防止物品の一例を模式的に示す断面図である。図1に例示される反射防止物品10は、透明基材1の一面側に、微小突起構造体3を有する。尚、図1は、微小突起構造体3の部分を拡大図示したものであり、透明基材1は微小突起構造体3に隣接する部分のみ図示してある。
微小突起構造体3の表面は、微小突起2が密接して配置されて微細凹凸形状を有し、前記微小突起2は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起2の隣接突起間隔d(図1)の最大値をdmaxとしたときに、
max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起2を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起2の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有している。微小突起構造体3がこのような構造を有することにより、Λmin以上の波長を有する光の反射防止を図ることができる。
更に、本発明の反射防止物品は、前記微小突起2表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起2の平均アスペクト比が1.2以上であり、波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下であることによって、反射防止物品の赤みが抑制される。
従来の反射防止物品の中には、色味を有するものがあった。色味を有する反射防止物品を用いた画像表示装置は、色調が変化することがあり、特に赤みを有する場合、表示装置の色再現性が低下し、目視上の障害となった。本発明者らは鋭意検討の結果、色味が、反射防止物品の微小突起の形状に起因するとの知見を得た。
微小突起構造体表面における光の反射率は光の波長によって異なり、前記微小突起が、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、
max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有する微小突起構造体において、特に、微小突起の傾斜が中腹から麓にかけて漸次緩やかになる形状であると、残留反射光スペクトルが長波長ほど増加しやすいことを見出した。
本発明者らは、更なる検討の結果、微小突起の傾斜が中腹から麓にかけて漸次緩やかになる形状、すなわち、各微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少する場合に、複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起2の平均アスペクト比が1.2以上であることによって、残留反射光が抑制されることを見出し、更に波長550nmの光の反射率と波長700nmの光の反射率に着目して特定値以下に設定することにより、人間の視覚を近似する色空間のaとbを特定値以下とすることができ、目視上障害となる赤みを抑えることができることを見出した。
このようなことから、本発明の反射防止物品は、目視上の障害となる赤みが抑制され、且つ、優れた反射防止性を備えている。
<透明基材>
本発明に用いられる透明基材は、反射防止物品に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。透明基材に用いられる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース、セルロイド等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。
前記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
前記透明基材の厚みは、本発明の反射防止物品の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記透明基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
本発明に用いられる透明基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、透明基材と後述する中間層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を透明基材上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材、及び中間層の双方に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。
プライマー層の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
また、図2に示すように、前記透明基材の一方の面を賦形する等により、当該透明基材の表面に後述する微細凹凸構造体が形成され、透明基材と微細凹凸構造体とが単層構造となっていてもよい。
<微小突起構造体>
本発明の反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、樹脂組成物又はその硬化物からなる微小突起が密接して配置された微小突起構造体を有する。
微小突起構造体における微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、dmax≦Λminなる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有するものである。
前記微小突起は、隣接する突起間隔d(図1参照)が、反射防止を図る波長帯域の最短波長Λmin以下(d≦Λmin)となるよう密接して配置される。本発明に係る反射防止物品を、画像表示装置表面上に配置して視認性を向上せしめることを主目的として使用する場合は、この最短波長Λminは、個人差、視聴条件を加味した可視光領域の最短波長(通常380nm)に設定され、間隔dは、ばらつきを考慮して通常100〜300nmとされる。
またこの間隔dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。本発明に係る反射防止物品では、微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
前記微小突起は、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有することにより、該断面積占有率が一定の場合に比べて反射防止効果を発揮する。前記微小突起構造体と、外界(通常は空気)との間の急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次変化する屈折率変化に変えることが可能となり、界面に於ける光反射が減るからである。
前記微小突起構造体を構成する各微小突起は、基材に植立するように、さらに基材より先端側に向かうに従って徐々に断面積が小さくなるような(先細りとなるような)形状を有している。
更に本発明において、微小突起は、前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少する形状を有している。ここで、「高さ方向」は、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面に対する法線であって、微小突起の頂点を通るものである。また、「高さ方向の傾き」は、頂点を通り前記高さ方向を表す法線を含む微小突起の断面(以降、この面を主切断面と呼称する)において、微小突起断面の輪郭曲線の接線が、高さ方向と直交する方向(図3に引いた左右方向の仮想的直線、水平方向とも呼称する)に対して成す角度(図3に於ける符号14、15,16を参照)を微小突起表面の高さ方向の傾きという。
又、後述する頂点を複数有する多峰性微小突起の場合の主切断面であるが、前記法線方向から見た場合に於いて、同一微小突起に属する複数の頂点からなる仮想的多角形の重心を通る前記法線を含む微小突起の断面を当該多峰性微小突起の主切断面と定義する。
このことについて、図を参照して説明する。図3は、微小突起の形状の説明に供する、微小突起の模式断面図である。図3の例は、ある特定の1つの主切断面に於ける微小突起の断面図である。例として、微小突起2の高さHの1/2の高さ17から最深部18へ向かう方向に、点a、点b及び点cをとる。点aにおける接線11、点bにおける接線12、及び点cにおける接線13とすると、点aにおける接線の傾き14、点bにおける接線の傾き15、及び点cにおける接線の傾き16は、この順に減少している。このように、本発明における微小突起2は、前記主切断面において、当該突起の高さHの1/2の高さ17から最深部18方向に近づくに従い接線の傾きが連続的に減少する形状を有している。
なお、本発明において、傾きの大小比較は、傾きの絶対値で行うものとする。
このような微小突起の形状の具体例としては、例えば、シグモイド曲線の回転体、正規分布曲線(ガウス曲線)の回転体等が挙げられる。
又、斯かる微小突起表面の傾きの特性が頂点を通る全ての主切断面に於いて同一では無い場合に於いては、高さ方向と直交する水平面内に於ける360度全周の中で、少なくとも、突起の頂点(乃至複数頂点の重心)を通る主切断面のうち合計120度(1/3円周)以上の角度範囲内、より好ましくは180度以上の角度範囲内で、「微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少」の特性を有すれば、本発明の効果を奏し得る。
また、本発明において微小突起は、前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少する形状を有し、更に、微小突起の頂部に平面を有するものであることが好ましい。ここで、平面とは厳密な意味での平面に限られず、30nm未満の誤差程度の凹凸を有する面を含むものとする。当該形状について、図4を参照して説明する。図4は、微小突起の形状の説明に供する、微小突起の模式断面図(図4(a))、及び斜視図(図4(b))、である。図4(a)の例において、微小突起2A及び2Bは、前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少する形状を有し、更に、図4(b)の例に示されるように微小突起2Bの頂部には平面を有している。頂部の平面の形状は特に限定されないが、円形又は楕円形であることが好ましい。
頂部の平面の面積S2の底部の面積S1に対する比(S2/S1)は0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましく、0.3〜0.55であることが更に好ましい。S2/S1が上記範囲内にあることにより、波長700nm前後の光の反射率を低下して、赤みを抑制することができる。また、S2/S1が上記範囲内にあることにより、反射防止物品に、画像表示装置用途において好ましい青みを付与することができる。なお、底部の面積S1は、微小突起の谷底で囲まれた部分の面積を表す。
本発明において微小突起構造体は、微小突起として頂点を複数有するもの(以下、「多峰性微小突起」と称する場合がある。)を更に有することが反射防止物品の耐擦傷性が向上する点から好ましい。なお、多峰性微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を「単峰性微小突起」と称する場合がある。多峰性微小突起は、単峰性微小突起に比して、頂点近傍の寸法に対する裾の部分の太さが相対的に太く、さらに、外力をより多くの頂点で分散して受ける為、各頂点に加わる外力を低減し、微小突起を損傷し難いようにすることができると考えられる。よって、本発明においては、前記微小突起群の中に多峰性の微小突起を含むことにより、機械的強度及び耐擦傷性がさらに向上する。また仮に微小突起が損傷した場合でも、その損傷箇所の面積を低減することができ、これによっても反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。更に、多峰性の微小突起の半分程度は、最高峰高さ(麓が同じ微小突起に属する最も高い峰の高さ)が突起高さの平均値HAVG以上の微小突起に生じる為、外力を先ず各峰部分が受止めて犠牲的に損傷することによって、該微小突起の峰より低い本体部分、及び該多峰性の微小突起よりも高さの低い微小突起の損耗を防ぐ。これによっても反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。
なお、本発明において、多峰性微小突起、単峰性微小突起に於いて高さの極大点である各頂点の近傍領域をなす各凸部を、適宜、「峰」と称する。
図5は、この頂点を複数有する多峰性微小突起の説明に供する断面図(図5(a))、斜視図(図5(b))、平面図(図5(c))である。なおこの図5は、理解を容易にするために模式的に示す図であり、図5(a)は、連続する微小突起の頂点を結ぶ折れ線により断面を取って示す図である。この図5(b)及び(c)において、xy方向は、透明基材1の面内方向であり、z方向は微小突起の高さ方向である。反射防止物品10において、多くの微小突起5は、透明基材1より離れて頂点に向かうに従って徐々に断面積(高さ方向に直交する面(図5においてXY平面と平行な面)で切断した場合の断面積)が小さくなって、1つの頂点が形成されている。一方、多峰性微小突起としては、例えば、複数の微小突起が結合したかのように、先端部分に溝gが形成され、頂点が2つになったもの(5A)、頂点が3つになったもの(5B)、さらには頂点が4つ以上のもの(図示略)等が挙げられる。なお単峰性微小突起5の形状は、概略、回転放物面の様な頂部の丸い形状、或いは円錐の様な頂点の尖った形状で近似することができる。一方、多峰性微小突起5A、5Bの形状は、概略、単峰性微小突起5の頂部近傍に溝状の凹部を切り込んで、頂部を複数の峰に分割したような形状で近似される。多峰性微小突起5A、5Bの主切断面形状は、極大点を複数個含み各極大点近傍が上に凸の曲線になる代数曲線Z=a+a+・・+a2n2n+・・で近似されるような形状である。
多峰性微小突起の「峰」は微小突起の各極大点近傍領域であって、各極大点間の高さの極小領域即ち溝g(図5参照)によって相互に区画された該溝gよりも高高度領域を言う。そして、多峰性微小突起に於いては、複数の峰が同一微小突起の麓部に共有されていることが特徴である。又、図5の如く、微小突起の高さ方向(麓部から頂部に向かう+Z方向)に向かって該高さ方向と直交する仮想的切断面で切断した断面積が漸次減少する(該断面積が高さZの広義の単調減少関数となる)形態が、反射率低減の点で好ましい。
各微小突起の高さに高低差の有る微小突起群は、反射防止性能が広帯域化され、白色光のような多波長の混在する光、あるいは広帯域スペクトルを持つ光に対して、全スペクトル帯域で低反射率を実現するのに有利である。これは、かかる微小突起群によって良好な反射防止性能を発現し得る波長帯域が、隣接突起間距離dの他に、突起高さにも依存する為である。
また、多峰性微小突起が混在する場合には、単峰性微小突起のみによる場合に比して反射防止の性能を向上することができるのは、図5に示すような多峰性微小突起5A、5B等は、隣接突起間距離が同じ場合であっても、また突起高さが同じ場合であっても、単峰性微小突起と比べて、より光の反射率が低減するからであり、多峰性微小突起5A、5B等は、頂部より下(中腹及び麓)の形状が同じ単峰性微小突起よりも、頂部近傍における有効屈折率の高さ方向の変化率が小さくなる為である。
なお多峰性微小突起は、反射防止性を向上する効果を発揮する点からは、表面に存在する全微小突起中における多峰性微小突起の個数の比率は10%以上90%以下であることが好ましい。特に多峰性微小突起による反射防止性を向上する効果を十分に奏する為には、該多峰性微小突起の個数の比率は20%以上85%以下、好ましくは350%以上80%以下とすることが好ましい。
また、前記微小突起構造体を構成する微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起とからなる一群の微小突起の集合(本発明において「凸状突起群」と称する。)を構成していても良い。当該微小突起の集合を有することにより、反射防止性に優れ、微小突起の強度にも優れている。
図6に、複数の微小突起によって構成される凸状突起群の斜視図(図6(a))及び平面図(図6(b))を示す。図6に示す凸状突起群24は、相対的に高さの高い頂部微小突起3Cと、その周囲に隣接して配置された相対的に高さの低い複数の周辺微小突起3Dからなる。尚、図6(a)及び図6(b)は、理解を容易にするために模式的に示す図であり、xy方向は、基材の面内方向であり、z方向は微小突起の高さ方向である。
なお、本発明において、前記頂部微小突起は、前記周辺微小突起よりも相対的に高さが高く、高さの差が10nm以上のものをいい、当該高さの差は、20nm以上であることが好ましい。また、前記高さの差は、微小突起構造体表面のざらつき感を抑える観点から、50nm以下であることが好ましい。
前記微小突起構造体においては、特に限定されないが、反射防止性能がさらに向上する点から、凸状突起群の周辺に配置される微小突起が、頂部微小突起から離れるに連れて、順次高さが低くなっていくように配置されていることが好ましい。
前記微小突起構造体表面に存在する全微小突起中における前記凸状突起群を構成する微小突起の個数の比率は、特に限定されないが、前記効果を発揮する点からは、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以上85%以下、更に好ましくは50%以上80%以下である。
なお、前記凸状突起群には、前記周辺微小突起にのみ隣接し、且つ前記頂部微小突起よりも高さが低い微小突起は含まれない。また、凸状突起群同士が隣接して形成される場合において、周辺微小突起が互いに隣接する凸状突起群に共有される場合がある。
前記凸状突起群を構成する微小突起の個数の比率は、例えば、前記微小突起構造体の表面をSEM等により観察し、画像解析により存在を確認できた微小突起の個数のうち、凸状突起群を構成する微小突起の個数の割合を算出することにより、求めることができる。
微小突起構造体の各微小突起は規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。微小突起が不規則に配置されている場合の隣接突起間距離及び突起高さの測定や定義、並びにこれらの設計指針について、図10〜図14を用いて説明する。尚、図10〜図14の微小突起構造体本実施形態のものとは異なるものではあるが、微小突起が複数配列した形態に於ける隣接突起間距離及び突起高さの説明に援用するものである。図10〜図14は、原子間力顕微鏡により求められた、反射防止物品の微小突起構造体の一例を示す拡大写真である。微小突起が規則的に配置されている場合、その微小突起間隔dは、突起の繰り返し周期Pにより規定することができる。一方、図10の例に示されるように微小突起が不規則に配置されている場合には、隣接する微小突起間隔dはばらつきを有することになる。このような場合、微小突起間隔dは、以下のように算定される。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(以下、AFMと呼ぶ))又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(以下、SEMと呼ぶ))を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。なお、AFMのデータは微小突起構造体の高さの面内分布データを有し、図10の写真は輝度により高さの面内分布を示している。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と呼ぶ)を検出する。極大点とは、高さが、其の近傍周辺の何れの点と比べても大(極大値)となる点を意味する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。図11は、図10の微小突起構造体の例における、微小突起の極大点を示す図である。図11において黒点により示す個所がそれぞれ各突起の極大点である。各極大点は、図10の画像データを処理することにより検出することができる。なおこの処理では4.5×4.5画素のガウシアン特性によるローパスフィルタにより事前に画像データを処理し、これによりノイズによる極大点の誤検出を防止した。また8画素×8画素による最大値検出用のフィルタを順次スキャンすることにより1nm(=1画素)単位で極大点を求めた。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図12は、図10の微小突起構造体の例における、ドロネー図を示す図である。ドロネー図は、ボロノイ図(Voronoi diagram)と双対の関係に有る。またボロノイ分割とは、各隣接母点間を結ぶ線分(ドロネー線)の垂直2等分線同士によって画成される閉多角形の集合体からなる網状図形で平面を分割することを言う。ボロノイ分割により得られる網状図形がボロノイ図であり、各閉領域がボロノイ領域である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間距離(隣接突起間距離)の度数分布を求める。図13は、図12のドロネー図から作成した隣接極大点間距離の度数分布のヒストグラムである。なお、図11の5Bに示されるように、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に分裂している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している多峰性微小突起に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない単峰性微小突起の場合の数値範囲から、隣接する極大点間の距離が明らかに大きく異なることになる。この特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば図10に示すような微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性微小突起を選んで、その隣接極大点間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに小さい方向に外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接極大点間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図13の例では、隣接極大点間距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図13は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。因みに上述の極大点検用のフィルタの設定により、このような除外する処理を実行してもよい。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布を正規分布とみなして平均値dAVG及び標準偏差σを求める。本発明においては、隣接突起間距離dの最大値dmaxをdmax=dAVG+2σと定義して算出する。図13の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなる。これにより隣接突起間距離dの最大値dmax=234nmと算出される。
同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求める。なお多峰性微小突起が含まれる場合は、1つの微小突起が頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが突起高さHのヒストグラムにおいて混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
図14は、図10の微小突起構造体の例における、微小突起の高さHの度数分布のヒストグラムである。図14の例では、微小突起の付け根位置を基準(高さ0)とする。図14の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmとなる。これによりこの例では、突起の高さは平均値HAVG=178nmとなる。
なお、微小突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でうねった凹凸形状を有する場合(例えば、図7の例に示されるように、谷底の高さが微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でウネリを有する場合)等は、(1)先ず、微小突起構造体30の微小突起表面31とは反対側の面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ微小突起構造体30の微小突起面31とは反対側の面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
隣接する微小突起32の間の谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば図7に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、可視光線帯域の最長波長λMAX以上の周期D(すなわちD>λMAXである)でうねることもある。該周期的なうねりは、透明基材の表裏面に平行な平面(図7におけるXY平面)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いは透明基材の表裏面に平行な平面(図7におけるXY平面)における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λMAXを満たす周期Dでうねった凹凸面33が多数の微小突起32からなる微小突起構造体30の表面31に重畳することによって、当該微小突起構造体表面31で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱させ、反射防止性を一段と向上させることができる。
尚、係るうねりによる凹凸面33の周期Dが全面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸面33について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
min=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離Dminを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起構造体30の表面31の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
min>λMAX
である。通常、D又はDminは1〜500μm、好ましくは10〜100μmとされる。
また、反射防止物品10の良好な平滑性を確保する場合には、前記周期Dでうねった凹凸面33の高低差(図7中のh)は、10nm以下であることが好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。一方、うねりの幾何光学的散乱を積極的に反射防止に利用する場合には、前記周期Dでうねった凹凸面33の高低差は、0.78μm以上であることが好ましく、1μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。なお、前記凹凸面33により形成される凹凸面の高低差は、例えば500nm以上離れた微小突起32の谷底部の位置の高低差を測定することにより求めることができる。微小突起32の谷底部の位置は、反射防止物品10を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより求めることができる。
前記微小突起構造体中の各微小突起が同一の高さHを有し、当該微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接突起間隔dは、微小突起配列の周期pと一致するため、dmax=pとなる。よって、反射防止効果を奏し得る条件は、dmax=p≦Λminであり、微小突起配列の周期p以上の波長を有する光に対して反射防止効果を奏することができる(例えば、特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報、特許第4270806号公報を参照することができる)。従って、例えば、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を得るためには、可視光線帯域の最短波長を380nmとした場合、微小突起配列の周期を380nm以下とすればよい。また、微小突起の高さHは、反射防止効果を得ようとする波長のうち最長波長Λmaxの0.2倍以上であることが好ましい(H≧0.2×Λmax)。従って、例えば可視光線帯域の全波長に対して優れた反射防止効果を得ようとするためには、可視光線帯域の最長波長を780nmとした場合、H≧0.2×780nm=156nmであることが好ましい。
突起が不規則に配置されている場合には、上述のようにして求めた隣接突起間距離dの最大値dmax=dAVG+2σが、dmax≦Λminを満たすことが必要であり、微小突起の高さHの平均値HAVGが、HAVG≧0.2×Λmaxを満たすことが好ましい。例えば、最低限、可視光線帯域の最長波長に於いて反射防止効果を奏し得る為には、Λmin=λmaxをとなる為、dmax=dAVG+2σ=λmax=780nmとすることが好ましい。可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためには、Λmin=λmin=380nmとなる為、射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、dmax≦300nmであり、更に好ましい条件は、dmax≦200nmである。また反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、通常、dmax≧50nmであり、好ましくは、dmax≧100nmとされる。また突起高さHについては、十分な反射防止効果を発現する為には、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmaxとしたときに、HAVG≧0.2×Λmaxとなることが好ましく、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためにはHAVG≧0.2×780nm=156nmであることが好ましく、HAVG≧160nmとすることがより好ましい。突起の高さHAVGは、反射防止効果の点から、通常350nm以下とされる。また、突起の高さの分布は、通常50〜350nmである。
図10に示される反射防止物品の一形態を上述の例により説明するとdmax=234nm≦Λmax=780nmとなり、dmax≦Λminの条件を満足して十分に反射防止効果を奏し得ることが判る。また可視光線帯域の最短波長λminが380nmであることから、可視光線の全波長帯域において反射防止効果を発現する十分条件dmax≦λminも満たすことが判る。また平均突起高さHAVG=178nmであって、平均突起高さHAVG≧0.2×λmax=156nmを満たすことから(可視光波長帯域の最長波長λmax=780nmとして)、十分な反射防止効果を実現するための突起の高さに関する条件も満足していることが判る。なお標準偏差σ=30nmであることから、HAVG−σ=148nm<0.2×λmax=156nmとの関係式が成立することから、統計学上、全突起の50%以上、84%以下が、突起の高さに係る条件(178nm以上)の条件を満足していることが判る。
図10の例に示される実施形態のように、単峰性微小突起と多峰性微小突起とを混在させる場合には、アスペクト比の異なる単峰性微小突起を混在させた場合と同様に、広い波長帯域で低い反射率を確保することができる点で好ましい。
尚、アスペクト比とは、微小突起の高さHを谷底に於ける径W(幅乃至太さと言う事も出来る)で除した比、H/Wとして定義される。此処で、谷底に於ける径とは、微小突起の谷底近傍の形状が円柱であれば、該円柱の(底面の)直径と一致する。微小突起の谷底近傍形状が円柱では無く、谷底を連ねた仮想的平面と微小突起とが交叉して得られる底面の径の大きさが面内方向によって異なる場合は、其の最大値を該微小突起の径とする。例えば、微小突起の底面形状が楕円の場合は、径は其の長径となる。又、微小突起の底面形状が多角形の場合は、径は其の最大の対角線長となる。又、谷底部(高さの極小点からなる領域)の幅が径に比べて小さく2割以下の場合には、各微小突起のアスペクト比H/Wの平均値(H/W)aveは、設計上は実質、平均突起高さHAVG/平均隣接突起間隔dAVGと見做すことができる。
すなわち、陽極酸化処理により微細穴を作製する場合、特開2003−43203号公報等で既に知られている様に、隣接微細穴間距離(一定値で分布の無い場合はピッチに相当)と深さとは比例する関係になる。これにより陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにより賦型用金型を作製し、この賦型用金型を使用した賦型処理によりこの種の反射防止物品を作製する場合、作製される単峰性微小突起は、付け根部分の幅と高さとの比であるアスペクト比がほぼ一定に保持される。
反射防止物品の反射防止機能は、微小突起間隔だけでなく、アスペクト比にも依存し、アスペクト比が一定である場合、例えば可視光域では十分に小さな反射率を確保できる場合でも、紫外線域ではdmaxがΛminに近付く為、可視光域に比して反射率が増大して反射防止機能が不足する。なお隣接突起間距離を一段と小さくして紫外線域で十分な反射防止機能を確保できるように設定すると、今度は、HAVGがΛmaxに近付く為、赤外線域で反射防止機能が低下することになる。
しかしながら多峰性微小突起を含む微小突起群では、同一微小突起の頂部近傍に存在する峰間距離が隣接突起間距離(通常100〜200nm程度)よりも小さい(通常10〜50nm程度)。斯かる峰間距離の寄与によって、同一隣接突起間距離の単峰性微小突起のみからなる微小突起群に比べて、実効的な隣接突起間間隔を低下させた反射防止機能を確保することができ、これにより多峰性微小突起と単峰性微小突起との混在により広い波長帯域で低い反射率を確保することができる。なお可視光域を中心にした広い波長帯域で十分に小さな反射率を確保する場合、可視光域に係る波長480〜660nm帯域の光に対する反射防止性能に寄与する隣接突起間間隔、即ち、d≦400nm、好ましくはd≦300nmとなる微小突起において、多峰性微小突起と単峰性微小突起とを混在させることが好ましい。
なお、AFM及びSEMによる観察結果、並びに微小突起の高さ分布の解析結果から、多峰性微小突起は相対的に高さの低い微小突起及び高さの高い微小突起よりも高さの中程度の微小突起でより多く生じる傾向にあることが判明した。斯かる知見を基に本発明に於いては、反射防止物品において形成される多峰性微小突起は、上述の可視光域に係る入射光に対する反射防止機能を向上させるために、以下の条件を満たすようにして形成されることが好ましい。
図15は、微小突起高さに関する、低高度領域、中高度領域、高高度領域についての説明の用に供する、微小突起高さの度数分布の模式的なヒストグラムである。図15に示すように、微小突起の高さHの度数分布における高さの平均値をHAVGとし、標準偏差をσとし、H<HAVEG−σの領域を微小突起の低高度領域とし、HAVE−σ≦H≦HAVG+σの領域を中高度領域とし、HAVG+σ<Hの領域を高高度領域とした場合に、各領域内の多峰性微小突起の数Nmと、度数分布全体における多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(a)及び(b)の関係を満たすことが好ましい。
(a)中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Nt
(b)中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Nt
上記関係を満たすことにより、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化をより具体的に図ることができる。
又これに加えて、更に、微小突起構造体の耐擦傷性を向上せしめることが出来る。
更に本発明の反射防止物品においては、前記微小突起の高さHの度数分布が高さの高い側と低い側とに各々分布の峰を有する双峰性であり、2つの峰の境界となる高さ、即ち境界高さhsを境として、該度数分布は境界高さhs未満の微小突起の分布と境界高さhs以上の微小突起の分布との2つの分布から構成され、
該境界高さhs未満の分布における前記微小突起の高さHの平均値をm1とし、
H<m1−σ1の領域を低高度領域とし、
m1−σ1≦H≦m1+σ1の領域を中高度領域とし、
m1+σ1<H<hsの領域を高高度領域とした場合に、
hs未満の分布における各領域内の前記多峰性微小突起の数Nm1と、前記度数分布全体における前記多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(c)、(d)の関係を満たし、
(c)中高度領域のNm1/Nt>低高度領域のNm1/Nt
(d)中高度領域のNm1/Nt>高高度領域のNm1/Nt
且つ、該境界高さhs以上の分布における前記微小突起の高さhの平均値をm2とし、標準偏差をσ2とし、
hs<H<m2−σ2の領域を低高度領域とし、
m2−σ2≦H≦m2+σ2の領域を中高度領域とし、
m2+σ2<Hの領域を高高度領域とした場合に、
該境界高さhs以上の分布における各領域内の前記多峰性微小突起の数Nm2と、前記度数分布全体における前記多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(e)、(f)の関係を満たすことがより好ましい。
(e)中高度領域のNm2/Nt>低高度領域のNm2/Nt
(f)中高度領域のNm2/Nt>高高度領域のNm2/Nt
上記関係を満たすことにより、より可視光域に係る入射光に対する反射率をより低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化をより具体的に図ることができ、より耐擦傷性にも優れる点から好ましい。
尚、此処で、各分布の境界高さhsは以下のようにして求める。
〔方法1〕
先ず、度数分布の高さのデータを図20の如きヒストグラム(柱状グラフ)として表示し、次いで該柱状グラフの頂部の中点を結ぶ折線を最小二乗法により平滑化した曲線(これを平滑化度数分布曲線と呼稱する)を求め、該平滑化度数分布曲線について、2つの度数分布の峰間に位置する極小点に於ける高さを求め、これを以って2つの峰間の(乃至2つの分布間の)境界高さhsとする。
尚、2つの分布の峰が共に正規分布で近似し得る場合は、以下の方法によることも出来、上記最小二乗法による方法1と許容誤差の範囲内で同等の数値を得る。尚、許容誤差の範囲内で同等とは、2つの方法で求めた境界高さhsの値に差異が有っても、上記関係不等式(c)、(d)、(e)、及び(f)が同様に成立することを意味する。
〔方法2〕
この方法では、以下の処理手順の実行により計測結果を統計的に処理し、双峰性に係る2つの分布がそれぞれ正規分布によるものとし、この正規分布に係る2つの分布曲線の交点を境界高さhsに設定する。
即ち、先ず始めに、図20の如きヒストグラムから、オペレータの目視確認により境界と推察される高さを検出し、此の高さを境界高さに仮設定する、即ち、仮設定境界高さhsINITとする(工程1)。又、この仮設定境界高さhsINITIALにより、高さの高い側と高さの低い側とに分布を分け、それぞれ平均値、標準偏差、サンプル数を検出し、これにより境界の上下の分布について、正規分布による分布曲線を検出する(工程2)。続いてこの2つの分布曲線の交点に於ける高さを計算して計算境界高さhsCALIを検出する(工程3)。尚、この分布曲線は、各突起高さにおけるサンプル数を示す曲線であり、正規分布による分布確率を示す曲線を、各分布のサンプル総数により重み付けして作成したものである。交点は、2つの分布曲線において、サンプル数が等しくなる高さである。この処理手順では、この求めた計算境界高さhsCALIと仮設定境界高さhsINITIALとの差分値が予め定めた一定値以下(例えば図20のヒストグラフの分解能以下)か否か判断し(工程4)、一定値以下の場合、計算により求めた計算境界高さhsCALIを境界高さhsに設定する。又、差分値が一定値より大きい場合、分布曲線より求めた境界を仮設定の境界に設定し直し、改めて分布曲線を計算して境界を計算する(工程5)。尚、この境界を再計算する際に、境界にサンプルが分布している場合、この境界の上下のサンプル総数により、この境界に分布するサンプル数を比例配分して標準偏差、平均値、サンプル数を再計算する。次いで、再度工程4に戻り、該差分値が一定値以下に收束するまで工程4及び工程5を繰り返す。
本発明の反射防止物品においては、複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起の平均アスペクト比(平均突起高さHAVG/平均隣接突起間隔dAVG)が、1.2以上である。前記微小突起2表面の高さ方向の傾きが当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、且つ、当該平均アスペクト比が1.2以上であることにより、赤みが抑制され、且つ、優れた反射防止性を有する。
本発明においては、前記平均アスペクト比が、1.25〜2.5であることが好ましく、更に、1.3〜2.1であることが赤みが抑制され、且つ、優れた反射防止性を有する点からより好ましい。
微細凹凸層の厚み(図1におけるT)は、適宜調整すればよいが、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜10μmであることがより好ましい。なお、本発明において微細凹凸層の厚みTは、当該微細凹凸層の透明基材との界面から、最も高い微小突起の頂部までの厚みで定義される。
本発明の反射防止物品は、波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下である。本発明の反射防止物品は、上記特定の波長の光に対する反射率を低く抑えることにより、目視上の障害となる赤みが抑制される。赤みがより抑制される点から、更に、波長550nmの光の反射率が0.15%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。また、赤みがより抑制される点から、波長700nmの光の反射率が0.4%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
本発明において、波長550nmの光の反射率及び、波長700nmの光の反射率は、上述のように微小突起構造体の形状や、後述のように微小突起構造体の材質等により調整することができる。
本発明において反射防止物品の光の反射率は、黒アクリル板に粘着剤を介して、測定対象となる反射防止性物品の透明基材側を貼合し、分光器(島津製作所製、分光光度計UV−3100PC)にて反射率を測定することにより求めることができる。
本発明において微小突起構造体は、樹脂組成物又はその硬化物からなる。微小突起構造体形成用の樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。当該樹脂組成物に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線等の電磁波、X線、電子線、α線等の荷電粒子線が挙げられる。
上記樹脂としては、微小突起の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。
本発明においては微小突起構造体形成用の樹脂組成物は、中でも、電離放射線硬化性成分として、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
また、上記樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましい。
以下、電離放射線硬化性成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む組成物中の各成分について順に説明する。
(1)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
中でも、硬化物が上記物性を満たし、微小突起が柔軟性と弾性復元性を両立する点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いる場合、後述する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の特性を兼ね備える。
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、微小突起が柔軟性及び復元性に優れる点から、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、10〜95質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。
(2)炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物
本発明において用いられる樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましく、炭素数12以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することがより好ましい。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、例えば、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを有する化合物等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、更に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基の他、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、光硬化性を備える点から、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。
なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、当該化合物は、前記(メタ)アクリレートにも該当し得る。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を用いる場合、当該化合物の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
本発明において好ましく用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、硬化物の貯蔵弾性率、損失正接を上記所定の範囲に調整しやすく、且つ親油性に調整しやすく、優れた乾拭き取り性を得ることができる点から、少なくとも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートとを含有することが特に好ましい。中でも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有割合が、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましく、10〜15質量部であることがより好ましい。
(3)光重合開始剤
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の含有量は、通常、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
(4)帯電防止剤
本発明においては、前記樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のもの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
(5)溶剤
本発明において樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体的としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
樹脂組成物全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお本発明において固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外のすべての成分を表す。
(6)その他の成分
本発明において用いられる微細凹凸層用の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、離型剤等が挙げられる。
<反射防止物品の製造方法>
本発明の反射防止物品は、透明基材上に樹脂組成物を用いて微小突起構造体を形成すればよく、従来公知の方法の中から適宜選択して形成することができる。
(微小突起構造体の形成)
微小突起構造体の形成方法は、例えば、前記透明基材上に、前記樹脂組成物を塗布し、所望の微小突起構造体形状を有する微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦型した後、前記樹脂組成物を硬化させることにより微小突起構造体を形成し、前記微小突起構造体形成用原版から剥離する方法等が挙げられる。
前記微小突起構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製、セラミックス製等であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。尚、金属製、非金属製何れの場合も、以降、金型と呼称する。
前記微小突起構造体形成用原版の微小突起構造体形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微小突起構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は他の層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。アルミニウム純度は、通常、99質量%以上の物が用いられる。
また、前記微細凹凸層形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール(中空円筒又は中実円柱)状であっても良いが、前記微細凹凸層形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
前記前記微小突起構造体形成用原版に微細凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微細孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。即ち、図16に示すように、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール金型を作製する。
微細な凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な孔をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、前記微細凹凸層形成用原版は、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に作製される。当該微細凹凸層形成用原版を用いて製造される微細凹凸層には、前記微細孔に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる微小突起群を備えた微細凹凸が形成され、すなわち、当該微細凹凸の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微細凹凸を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微細凹凸の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微細凹凸形状が形成される。
〔微小突起を形成する微細穴の形成過程〕
次に、多峰性微小突起を形成し、また、微小突起の高さの分布が制御された微細な穴が形成される方法について説明する。上述したように、賦型用金型(ロール版)に形成される微細穴は、陽極酸化処理及びエッチング処理の交互の繰り返しによって形成されるが、この繰り返しの陽極酸化処理における印加電圧を可変することによって、微細穴の深さ(微小突起の高さ分布)を制御することができる。ここで、陽極酸化処理における印加電圧と、形成される微細穴の間隔(ピッチ)とは、比例する関係にあるため、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにおいて、陽極酸化処理の印加電圧を可変すれば、深さ方向に掘り進める時間が相違する微細穴を混在させてその比率を制御することができる。
また、このように陽極酸化処理における印加電圧を可変する場合にあっては、太さ(径)の太い微細穴の底面に、複数の微細穴を作成して多峰性微小突起に係る微細穴とすることができる。この太さの太い微細穴の高さの制御等により、多峰性微小突起についても、高さ分布を制御することができる。
図17は、図16の金型の製造工程により形成される微細穴の形成過程を示す模式図であって、高さ分布の制御の説明に供する模式図である。
上述したように、陽極酸化処理における印加電圧と、微細穴のピッチとの関係は比例関係であるが、実際上、処理に供するアルミニウムの粒界等により微細穴のピッチにはばらつきが生じる。しかし、図17においては、このばらつきが存在しないものとして、微細穴が規則正しい配列により作製されるものとして説明する。なお、図17(a)〜図17(e)において、左側の図は、ロール金型の表面の拡大図を示し、右側の図は、左側の図におけるa−a断面図を示す。
(第1の工程)
図17(a)に示すように、まず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
(第2の工程)
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図17(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細穴f1を更に掘り下げる。
本実施形態では、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微細穴f1を二つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、賦型用金型の表面には、二つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微細穴f2が形成され、ロール版13の表面には、微細穴f1と微細穴f2とが混在する状態となる。
(第3の工程)
続いて、電圧V2よりも高い電圧V3(V3>V2)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V2から電圧V3へ徐々に上昇させ、この印加電圧の上昇を離散的(段階的)に実行すると、微小突起の高さ分布(微細穴の深さ分布)を離散的に作製することができ、この印加電圧の上昇を連続的に実行すると、微小突起の高さ分布を正規分布に設定することができる。そのため、本実施形態では、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程、第2の工程よりも長く設定することにより、図17(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細穴f1が二つ、一つに纏まるように広くかつ深く掘り進められ、また、その一つに纏められた微細穴f3の底面が略平坦に形成される(平坦微細穴形成工程)。ここで、略平坦とは、微細穴の底面が平坦な状態だけでなく、その底面が大きい曲率半径で湾曲している状態をも含む状態をいう。
(第4の工程)
続いて、電圧V3よりも高い電圧V4(V4>V3)を印加して陽極酸化工程A4を実行した後に、エッチング工程E4を実行する。この工程では、目的とする突起間間隔によるピッチにより微細穴を作成する。この陽極酸化工程A4においても、印加電圧は、電圧V3から電圧V4へ徐々に上昇させる。これにより、上記第3の工程により掘り進められた微細穴f3の一部が更に掘り進められ、その結果、図17(d)に示すように、微細穴f4となり、この微細穴f4が高さの高い単峰性微小突起を形成する。
(第5の工程)
続いて、印加電圧を上記第1の工程における電圧V1に変更して陽極酸化工程A5を実行した後に、エッチング工程E5を実行する。この工程では、陽極酸化工程A3において形成された微細穴f3であって、第4の工程の陽極酸化工程A4の影響を受けていない微細穴f3の底面に、図17(e)に示すように、微細穴を複数個形成し、多峰性微小突起に対応する微細穴f5を形成する(多峰突起用微細穴形成工程)。ここで、印加する電圧V1の大きさを調整することによって、微細穴f5の底面に形成される微細穴の数を増減したり、その微細穴の間隔を調整したりすることができる。
以上より、賦型用金型の表面には、高さの異なる微小突起を形成する微細穴f1、f2、f4や、多峰性微小突起を形成する微細穴f5が形成される。
ここで、この一連の工程では、第1の工程及び第2の工程により作製された深さの異なる微細穴f1、f2を、第3の工程で掘り進めて底面の略平坦な微細穴f3を作製し、第4の工程において、この微細穴f3を掘り進めて単峰性微小突起に係る微細穴f4を作製し、また、第5の工程において、この微細穴f3の底面を加工して多峰性微小突起に係る微細穴f5を作製している。ここで、第1の工程から第4の工程に係る陽極酸化工程の印加時間、処理時間、エッチング工程の処理時間等を制御して、各工程で作製される微細穴の深さを制御することにより、微小突起の高さの分布や、多峰性微小突起の高さの分布を制御することができる。なお、上述の第1の工程〜第5の工程は、必要に応じて回数を省略したり、繰り返したり、工程を一体化したりすることができる。
図18は、図16の金型の製造工程において、微小突起の高さ分布の制御に係る深さの異なる微細穴が形成される過程の説明に供する模式図である。
(第1の工程)
ここで図18(a)に示すように、第1の工程において、先ず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細な穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
(第2の工程)
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図18(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細な穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細な穴f1を更に掘り下げる。
ここで印加電圧V2をV2=2×V1に設定すると、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微細な穴f1を一つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、賦型用金型の表面には、一つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微細な穴f2が形成され、成形型の表面には、微細な穴f1と微細な穴2とが混在する状態となる。
(第3の工程)
続いて、電圧V1と電圧V2の間の電圧V3(V2>V3>V1)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細な穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V3として、縦横に面内に配列した微細な穴f2の間に存在する図示の如くの特定の微細な穴f1を一つ置きに広く且つ深く掘り下げる。ここで印加電圧V3をV3=(V1)1/2に設定すると、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程よりも長く設定することにより、図18(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細な穴f1のうち、4個の微細な穴f2で囲まれる最小の四角形の中心に位置する微細な穴f1が選択的に深く掘り下げられる。且つ同時に、第2の陽極酸化工程A2形成された微細な穴f2のうちで図18(c)で図示される位置関係に有る一部のものが更に掘り下げられ、微細な穴f3となる。
その結果、図18(c)に示すように、微細な穴f1(これが最も高さの低い微小突起に対応する穴となる)の周囲をf1よりも深い微細な穴f2及びf3(それぞれ中程度及び高程度の高さの微小突起に対応する穴となる)によって周囲を包囲された穴群が面内に配列した表面構造を有する成形型が得られる。
このように複数回の陽極酸化処理における印加電圧の切り替えにより掘り進める微細穴が異なることにより、微細穴の深さを大きく異ならせることができ、これにより意図する分布により微小突起の高さを制御することができる。
図8に、微小突起構造体形成用の樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、微小突起構造体形成用原版としてロール金型を用いた場合に、透明基材上に微小突起構造体を形成する方法の一例を示す。
図8に示す方法では、樹脂供給工程において、帯状フィルム形態の透明基材45に、ダイ41により微小突起構造体形成用の樹脂組成物を塗布し、微小突起形状を受容する受容層46を形成する。樹脂組成物の塗布方法については、ダイ41による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ43により、微細凹凸層形成用原版であるロール金型42の周側面に透明基材を加圧押圧し、これにより透明基材の中間層側に受容層46を密着させると共に、ロール金型42の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に、受容層46を構成する樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により第二の樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材の中間層側表面に微細凹凸層3を作製する。続いて剥離ローラ44を介してロール金型42から、硬化した微細凹凸層3と一体に透明基材1を剥離する。必要に応じてこの透明基材1に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止物品10が得られる。これにより反射防止物品は、ロール材による長尺の透明基材1に、微細凹凸層形成用原版であるロール金型42の周側面に作製された微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦型処理によりフィルム形状の反射防止物品を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により反射防止物品を作成する場合等、賦型処理に係る工程、微小突起構造体形成用原版は、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて適宜変更することができる。
本発明の反射防止物品は、目視上の障害となる赤みを抑える点から、JIS Z 8729(2004)に規定されるL表色系における色座標a及びbが共に2以下であることが好ましい。反射防止物品の色座標aは、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制される点から、中でも、−2〜2であることが好ましく、−1.5〜1.8であることがより好ましい。また、反射防止物品の色座標bは、反射防止性に優れ、且つ、赤みが抑制される点から、中でも、−5〜2であることが好ましく、−3〜1.5であることがより好ましい。
反射防止物品の色座標a及びbは、島津製作所社製、分光光度計UV3100PC等により測定することができる。
<反射防止物品の用途>
本発明の反射防止物品は、後述する画像表示装置用途のほか、種々の用途に適用することができる。具体的には、画像表示パネルの最表面に本発明の反射防止物品を其の微小突起構造体を外側(画像観察者側)に向けて配置することが出来る。この場合は、日光、電燈光等の外(来)光が画面で反射して画像の視認性を阻害することを低減できる。画像表示パネルの画面上に間隙を介して設置されるタッチパネル、各種の窓材、各種光学フィルタ等による表面側部材の裏面(画像表示パネル側)に配置する用途に適用することができる。なおこの場合には、画像表示パネルと表面側部材との間の光の干渉によるニュートンリング等の干渉縞の発生の防止、画像表示パネルの出光面と表面側部材の入光面側との間の多重反射によるゴースト像の防止、さらには画面から出光されてこれら表面側部材に入光する画像光について、反射損失の低減等の効果を奏することができる。
或いは、タッチパネルを構成する透明電極として、フィルム或いは板状の透明基材上に本発明特定の微小突起群を形成し、更に該微小突起群上にITO(酸化インジウム錫)等の透明導電膜を形成したものを用いることが出来る。この場合には、該タッチパネル電極とこれと隣接する対向電極又は各種部材との間での光反射を防止して、干渉縞、ゴースト像等の発生を低減させる効果を奏することが出来る。
また店舗のショウウインドウや商品展示箱、美術館に於ける絵画等の展示物の展示窓、展示箱、額縁等に使用する硝子板表面(外界側)、或いは表面及び裏面(商品又は展示物側面)の両面に配置するようにしても良い。なおこの場合、該硝子板表面の光反射防止による商品、美術品等の顧客や観客に対する視認性を向上することができる。
また眼鏡、望遠鏡、写真機、ビデオカメラ、銃砲の照準鏡(狙撃用スコープ)、双眼鏡、潜望鏡等の各種光学機器に用いるレンズ又はプリズムの表面に配置する場合にも広く適用することができる。この場合、レンズ又はプリズム表面の光反射防止による視認性を向上することができる。またさらに書籍の印刷部(文字、写真、図等)表面に配置する場合にも適用して、文字等の表面の光反射を防止し、文字等の視認性向上することができる。また看板、ポスター、其の他各種店頭、街頭、外壁等における各種表示(道案内、地図、禁煙、入口、非常口、或いは立入禁止等)の表面に配置して、これらの視認性を向上することができる。またさらに白熱電球、発光ダイオード、螢光燈、水銀燈、EL(電場発光)等を用いた照明器具の窓材(場合によっては、拡散板、集光レンズ、光学フィルタ等も兼ねる)の入光面側に配置するようにして、窓材入光面の光反射を防止し、光源光の反射損失を低減し、光利用効率を向上することができる。またさらに時計、其の他各種計測機器の表示窓表面(表示観察者側)に配置して、これら表示窓表面の光反射を防止し、視認性を向上することができる。
またさらに、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物の操縦室(運転室、操舵室)の窓の室内側、室外側、あるいはその両側の表面に配置して窓における室内外光を反射防止して、操縦者(運転者、操舵者)の外界視認性を向上することができる。またさらに、防犯等の監視、銃砲の照準、天体観測等に用いる暗視装置のレンズないしは窓材表面に配置して、夜間、暗闇での視認性を向上することができる。
またさらに、住宅、店舗、事務所、学校、病院等の建築物の窓、扉、間仕切、壁面等を構成する透明基板(窓硝子等)の表面(室内側、室外側、あいはその両側)の表面に配置して、外界の視認性、あるいは採光効率を向上することができる。またさらに、各種店舗、美術館、博物館等で用いる商品乃至展示品を収納し、展示する各種の展示箱乃至ショウケースの透明窓(又は扉)部の表面、裏面、又は表裏両面に配置して、展示する商品乃至展示品の視認性向上することができる。またさらに、温室、農業用ビニールハウスの透明シート、ないしは透明板(窓材)の表面に配置して、太陽光の採光効率を向上することができる。さらにまた、太陽電池表面に配置して、太陽光の利用効率(発電効率)を向上することができる。
[画像表示装置]
本発明に係る画像表示装置は、表示パネルの少なくとも一面側に、前記本発明に係る反射防止物品を備えることを特徴とする。
本発明の画像表示装置50は、図9に示すように、表示パネル51の表示面52に、前記本発明に係る反射防止物品10を備えている。当該反射防止物品10は、表示面52と直接貼り合わされてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、反射防止物品10と、表示面52との間に、他の部材を有していてもよい。当該他の部材としては、例えば、公知のタッチパネル部材等が挙げられる。
なお、本発明の画像表示装置にあっては、単に表示機能のみを有する装置(例えば、LCDモニター、CRTモニター等)でも良いが、装置の機能の一部として表示機能を有する装置も該当する。例えば、携帯情報端末、カーナビゲーションシステム等である。
本発明の画像表示装置は、赤みが抑制され、且つ反射防止性に優れているため、色再現性に優れた画像表示装置とすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(製造例1:微小突起構造体形成用原版1の作製)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微小突起構造体形成用原版1を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であって、孔の深さ方向の傾きが、当該孔の深さの1/2の深さから原版の表面に近づくに従い連続的に漸次減少し、頂部に平面を有する形状であった。
(製造例2〜12:微小突起構造体形成用原版2〜12の作製)
製造例1において、エッチング条件と、陽極酸化電圧とを種々に変更することにより、表1の通り、アスペクト比の異なる微小突起構造体形成用原版2〜12を得た。いずれも、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であって、孔の深さ方向の傾きが、当該孔の深さの1/2の深さから原版の表面に近づくに従い連続的に漸次減少し、頂部に平面を有する形状であった。
(比較製造例1:微小突起構造体形成用原版13の作製)
製造例1において、陽極酸化の条件を変更し、微小突起構造体形成用原版13を得た。
尚、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、深さ方向に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であって、孔の深さ方向の傾きが当該孔の深さの1/2の深さから原版13の表面に近付くに従い連続的に漸次増加し、頂部に平面を有する形状であった。
(製造例13:微小突起構造体形成用樹脂組成物の調製)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の微小突起構造体形成用樹脂組成物を調製した。
<樹脂組成物Aの組成>
・エチレンオキサイド変性(EO変性)ビスフェノールAジアクリレート 55質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(実施例1:反射防止物品1の製造)
製造例13で得られた微小突起構造体形成用樹脂組成物を、製造例1の微小突起構造体形成用原版1の微細凹凸面が覆われ、微小突起構造体を有する微細凹凸層の硬化後の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して微小突起構造体形成用樹脂組成物を硬化させた。その後、原版より剥離し、透明基材と、平均突起高さ/平均隣接突起間距離で定義されるアスペクト比が1.4で、且つ、微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少する形状を有する微小突起からなる微小突起構造体を備え、頂部に平面を有し、頂部平面の面積の、底部の面積に対する比の値が0.35である、反射防止物品1を得た。
(実施例2〜12:反射防止物品2〜12の製造)
実施例1において、微小突起構造体形成用原版1の代わりに微小突起構造体形成用原版2〜12をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止物品2〜12を得た。
(比較例1:反射防止物品13の製造)
実施例1において、微小突起構造体形成用原版1の代わりに微小突起構造体形成用原版13を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の反射防止物品13を得た。
[評価]
<反射率測定>
黒アクリル板(日東樹脂工業製、製品名CLAREX)に粘着剤(パナック製、製品名パナクリーンPDR5)を介して、各実施例及び各比較例で得られた反射防止性物品の透明基材側を貼合し、島津製作所製、分光光度計UV−3100PCにて反射率を測定した。波長550nmの光の反射率、及び、波長700nmの光の反射率の結果を表1に示す。
<色度評価>
実施例1〜12及び比較例1の反射防止物品の色度を、島津製作所社製、分光光度計UV−3100PCにて測定し、L表色系における色座標a及びbをそれぞれ求めた。結果を表1に示す。色座標a及びbが共に2以下であれば、赤みが抑制され、反射防止性に優れていると評価される。
[結果のまとめ]
平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起の平均アスペクト比が1.1の微小突起を有する比較例1の反射防止物品は、波長550nmの光の反射率が0.50%、波長700nmの光の反射率が、1.10%であり、また、色座標a及びbがともに2以上であり、反射防止性が悪く、赤みが生じていることが分かった。
平均アスペクト比が1.2以上の微小突起を有する、実施例1〜12の反射防止物品は、波長550nmの光の反射率が0.2%以下、且つ、波長700nmの光の反射率が0.5%以下であり、色座標a及びbがともに2以下であった。このことから、実施例1〜15の反射防止物品は、反射防止性に優れ、赤みが抑制されていることが明らかとなった。
また実施例1〜12の反射防止物品は、微小突起構造体が頂部に平面を有するため、色度aが小さくなり赤みが抑制された。特に、実施例6、9及び10の反射防止物品は、bが負の値をとり、画像表示装置において好ましい青みが付与されることが明らかとなった。
次に、多峰性微小突起を有する反射防止物品の実施例について説明する。
〔実施例13〕
図19は、実施例13の反射防止物品の微小突起高さHの度数分布を示すヒストグラムである。
実施例の反射防止物品を製造する賦型用金型は、上述の図17を用いて説明した金型の製造工程において、第2工程、第3工程、第4工程で陽極酸化処理の印加電圧を連続的に変化させたものである。より具体的に、図19の例は、陽極酸化工程とエッチング工程とを5回繰り返した場合であり、第1回目の陽極酸化工程の印加電圧をV1(15V〜35Vの範囲の一定電圧である)とした場合に、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目の陽極酸化工程の印加電圧をそれぞれ2V1、3.5V1、5V1、V1とした例である。なお陽極酸化処理は、濃度0.02Mのシュウ酸水溶液を使用して100秒実施した。エッチング工程は、濃度0.02Mのシュウ酸水溶液を使用して45秒間エッチング処理した後、濃度1.0Mのリン酸水溶液を使用して110秒間エッチング処理した。
上述の方法により製造された実施例13の反射防止物品は、図19に示すように、微小突起の高さの平均値がHAVE=145.7nmであり、その標準偏差がσ=22.1nmである。
ここで、微小突起の高さHの度数分布において、低高度領域は、H<HAVG−σ=123.6nmとなり、中高度領域は、HAVG−σ=123.6nm≦H≦HAVG+σ=167.8nmとなり、高高度領域は、H>HAVG+σ=167.8nmとなる。度数分布全体の微小突起の総数Ntとして、263個を標本抽出した。また、其の中で、中高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、23個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.087となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、2個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.008となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、5個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0.019となる。
従って、本実施例13の反射防止物品は、上述の(a)、(b)の関係、すなわち、
(a)中高度領域のNm/Nt=0.087>低高度領域のNm/Nt=0.008
(b)中高度領域のNm/Nt=0.087>高高度領域のNm/Nt=0.019
を満足する。
以上より、実施例13の反射防止物品は、中高度領域における多峰性微小突起の数(Nm)と度数分布における微小突起の総数(Nt)との比率(Nm/Nt)が、低高度領域及び高高度領域の比率よりも大きくなるように多峰性微小突起が形成されているので、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化を図ることができる。
また、この反射防止物品は、このような高さ分布において、多峰性微小突起(頂点数が2つ及び3つのものをそれぞれ二峰、三峰により示す)についても、ほぼ高さの平均値が一致した正規分布とすることができるので、視野角特性を制限することができ、携帯電話機や携帯ゲーム機等に使用される小型ディスプレイに使用することができる。また、効率良く多峰性微小突起の耐擦傷性を向上させることができる。
更に、上述の構成にすることによって、反射防止物品は、高さが高い(180nm以上)微小突起に分布する多峰性微小突起の比率が小さく、単峰性微小突起の比率が多いので、他の物体が微小突起に摩擦接触したとしても、高さの高い単峰性微小突起が先に接触することとなり、反射防止機能を主に向上させる多峰性微小突起に接触してしまうのを抑制することができる。
なお、これら多峰性微小突起の特徴は、賦型用金型の対応する形状を備えた微細穴により作製される多峰性微小突起の固有の特徴であり、特開2012−037670号公報に開示の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起によっては得ることができない特徴である。すなわち樹脂の充填不良による多峰性微小突起は、本来、単峰性微小突起として作製される微細穴に十分に樹脂が充填されないことにより作製されるものであるので、頂点間の間隔が極めて微小であり、これにより耐擦傷性を十分に向上することが困難であり、また上述したような光学特性の向上も困難である。
また、充填不良による多峰性微小突起にあっては、再現性が乏しく、これにより均一な製品を量産できない欠点もあり、これに対して、この実施形態に係る多峰性微小突起は、いわゆる金型により高い再現性を確保することができる。また、上述の実施例について詳述するように、多峰性微小突起の高さ分布について制御できるのに対し、充填不良の多峰性微小突起については、このような制御が困難である。
図22及び図23は、実施例13に於ける実際の微小突起の形状の一例を示す。図22は、微小突起の形状の一例を示す斜視図であり、図23は、図22の例に示される微小突起の、平面図(図23(a))、正面図(図23(b))、及び側面図(図23(c))である。これら図22及び図23は、等高線図である。上述したように、複数回の陽極酸化処理における印加電圧を切り替えることにより、この図22及び図23による微小突起においては、高さの大きく異なる3つの峰が合体して1つの微小突起が形成されており、ほぼ中央より外方に向かって形成された3本の放射状の溝(沢状の極小部)によりこの3つの峰に係る領域に分割されて微小突起が作製されていることが判る。なおこの図22及び図23は、AFMによる計測結果によるデータを部分的に選択して詳細に示したものである。またこの図22及び図23における数字の単位はnmである。X座標及びY座標は、所定の基準位置からの座標値である。
図24及び図25は、実施例13に於ける図22の微小突起とは別の微小突起の形状の一例を示す。図24は、微小突起の形状の一例を示す斜視図であり、図25は、図24の例に示される微小突起の、平面図(図25(a))、正面図(図25(b))、及び側面図(図25(c))である。
この図24及び図25の微小突起においては、ほぼ高さの等しい3つの峰が合体して1つの微小突起が作製され、該3つの峰は、頂部のほぼ中央部より外方に向かって延びた3本の放射状の溝によって区劃されていることが判る。
図26及び図27は、実施例13に於ける図22及び図24の微小突起とは別の微小突起の形状の一例を示す。図26は、微小突起の形状の一例を示す斜視図であり、図27は、図26の例に示される微小突起の、正面図(図27(a))、及び側面図(図27(b))である。この図26及び図27の微小突起においては、横に一列に並んだ複数の微小突起が結合したかのような形状により形成され、この並び方向と、並び方向と直交する方向とでアスペクト比が異なるように作成されている。このような方向によってアスペクト比が異なる微小突起により反射防止物品は、その反射防止特性に方向性を持たせることができる。尚、此の微小突起に於いては、各峰間の溝は該並び方向と直行する方向に伸びている。
なおこのようにして観察される結果によれば、多峰性微小突起における各峰の内側においては、各峰の外側に比して表面の粗さが荒いように観察され、多峰性微小突起は、このように峰の内側と外側との粗さの相違により、賦型処理時の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起との相違を見て取ることができる。なおこれらの斜視図等において、等高線が表されていない箇所は、計測の都合上、データが得られていない箇所である。
実施例13の反射防止物品は、平均アスペクト比が1.8、波長550nmの光の反射率が0.07%、且つ、波長700nmの光の反射率が0.50%であり、色座標a及びbがそれぞれ、1.6、0.2であった。このことから、実施例13の反射防止物品は、反射防止性に優れ、赤みが抑制されていることが明らかとなった。
〔実施例14〕
図20は、実施例14の反射防止物品の微小突起の高さHの度数分布を示す図である。なお図20においては、微小突起の高さHをhと、平均突起高さをHAVGをmと、標準偏差をσをσとそれぞれ記載する。
実施例14の反射防止物品を製造する賦型用金型は、上述の図17を用いて説明した金型の製造工程において、第1〜第5の工程のうちで、第2工程では段階的に電圧を上昇させて第3工程及び第4工程の処理を併せて実行し、第4工程では、図19(実施例13)の例による最高電圧に比して一段とより高い電圧により陽極酸化処理を実行し、またさらにこの第4工程に対応して第5工程を実行したものである。
より具体的に図20の例は、図19の例と同一の繰り返し回数、溶液及び処理時間により陽極酸化工程、エッチング工程を実行した。この図20の例では、第1回目の陽極酸化工程の印加電圧をV1(15V〜35Vの範囲の一定電圧である)とした場合に、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目の陽極酸化工程の印加電圧をそれぞれ2.5V1、4V1、6V1、V11/2〜V1とした例である。2回目から4回目の陽極酸化工程では、2回目の陽極酸化処理の開始電圧及び4回目の陽極酸化処理の終了電圧がそれぞれ2.5V1及び6V1となるように設定して、徐々に印加電圧を増大させた。
この図20の例では、高さの高い側と低い側とに分布の峰を有する、微小突起の高さ分布が離散的、すなわち、双峰性を持つ分布を示しており、各分布の峰に対応して多峰性微小突起の分布が形成される。
実施例14の反射防止物品は、度数分布が双峰性の分布となり、この度数分布全体の微小突起の高さの平均値がm=195.7nmであり、標準偏差がσ=57.2nmであった。
ここで、実施例14の反射防止物品は、微小突起の高さhの度数分布において、低高度領域は、h<m−σ=138.5nmとなり、中高度領域は、m−σ=138.5nm≦h≦m+σ=252.9nmとなり、高高度領域は、h>m+σ=252.9nmとなる。
度数分布全体の微小突起の総数Ntは、131個である。また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、21個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.160となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、3個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、0個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0となる。
従って、本実施例の反射防止物品は、上述の(a)、(b)の関係、すなわち、
(a)中高度領域のNm/Nt=0.160>低高度領域のNm/Nt=0.023
(b)中高度領域のNm/Nt=0.160>高高度領域のNm/Nt=0
を満足する。
また、上述したように、実施例14の反射防止物品の微小突起の高さhの度数分布は、双峰性、すなわち2つの分布の峰が存在する。この場合、各分布の峰についても、低高度領域、中高度領域、高高度領域を定め、それぞれの峰の各領域の多峰性微小突起の数と、度数分布全体の微小突起の総数Ntとの比の大小を評価する必要がある。
具体的には、各峰間の境界となる高さをhsとしたとき、hs未満の分布の峰(高さが低い側の分布の峰)については、高さhの平均値をm1とし、標準偏差をσ1とし、h<m1−σ1の領域を低高度領域とし、m1−σ1≦h≦m1+σ1の領域を中高度領域とし、m1+σ1<h<hsの領域を高高度領域とした場合に、hs未満の分布の峰における各領域の多峰性微小突起の数Nm1と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(c)、(d)の関係を満たす必要がある。
(c) 中高度領域のNm1/Nt>低高度領域のNm1/Nt
(d) 中高度領域のNm1/Nt>高高度領域のNm1/Nt
また、hs以上の分布(高さが高い側の分布)については、高さhの平均値をm2とし、標準偏差をσ2とし、hs<h<m2−σ2の領域を低高度領域とし、m2−σ2≦h≦m2+σ2の領域を中高度領域とし、m2+σ2<hの領域を高高度領域とした場合に、hs以上の分布における各領域の多峰性微小突起の数Nm2と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(e)、(f)の関係を満たす必要がある。
(e) 中高度領域のNm2/Nt>低高度領域のNm2/Nt
(f) 中高度領域のNm2/Nt>高高度領域のNm2/Nt
ここで、境界高さhs未満(高さが低い側)の分布における微小突起の高さhの平均値がm1=52.9nmであり、標準偏差がσ1=24.8nmである。各分布の境界は、度数分布の高さのデータを統計的に処理することによってhs=100nmと求められる。
そのため、境界高さhs未満の分布の低高度領域は、h<m1−σ1=28.1nmとなり、中高度領域は、m1−σ1=28.1nm≦h≦m1+σ1=77.7nmとなり、高高度領域は、m1+σ1=77.7nm<h<hs=100nmとなる。
また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、2個であるので、中高度領域のNm1/Ntは、0.015となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、低高度領域のNm1/Ntは、0となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、高高度領域のNm1/Ntは、0となる。
従って、本実施例の反射防止物品は、境界高さhs未満の分布において、上記(c)、(d)の関係、すなわち、
(c) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>低高度領域のNm1/Nt=0
(d) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>高高度領域のNm1/Nt=0
の関係を満たす。
また、境界高さhs以上(高さが高い側)の分布の微小突起については、高さhの平均値がm2=209.2nmであり、標準偏差がσ2=39.4nmである。
そのため、hs以上の分布の低高度領域は、hs=100nm≦h<m2−σ2=169.9nmとなり、中高度領域は、m2−σ2=169.9nm≦h≦m2+σ2=248.7nmとなり、高高度領域は、m+σ=248.7nm<hとなる。
また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、19個であるので、中高度領域のNm2/Ntは、0.145となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、3個であるので、低高度領域のNm2/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、0個であるので、高高度領域のNm2/Ntは、0となる。
従って、本実施例の反射防止物品は、境界高さhs以上の分布においても、上記(e)、(f)の関係、すなわち、
(e) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>低高度領域のNm2/Nt=0.023
(f) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>高高度領域のNm2/Nt=0
の関係を満たす。
以上より、実施例14の反射防止物品は、中高度領域の多峰性微小突起の数(Nm)と度数分布における微小突起の総数(Nt)との比率(Nm/Nt)が、低高度領域及び高高度領域の比率よりも大きくなるように多峰性微小突起が形成されているので、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化を図ることができる。
また、実施例14の反射防止物品は、度数分布が双峰性であり、上述の(c)〜(f)の関係を満たすので、各分布における多峰性微小突起の分布を、各分布の頂部近傍に集中させることができる。これにより、斜め方向からの光学特性を向上して広い視野角特性を向上することができる。また、低い側の分布の多峰性微小突起によって、紫外線域の反射防止機能を向上させ、高い側の分布に存在する多峰性微小突起によって、可視光域の反射防止機能を向上させているため、広帯域化された反射防止機能を更に向上することができる。
実施例14の反射防止物品は、平均アスペクト比が1.9、波長550nmの光の反射率が0.05%、且つ、波長700nmの光の反射率が0.4536%であり、色座標a及びbがそれぞれ、1.5、0.1であった。このことから、実施例14の反射防止物品は、反射防止性に優れ、赤みが抑制されていることが明らかとなった。
〔耐擦傷性の評価〕
実施例13及び14の反射防止物品に、押し付け力100g及び200gによりスチールウールを押し付けて往復させた後の表面の変化を目視により確認した結果、目視上、傷、濁りは見られなかった。このような結果から、多峰性微小突起により充分に耐擦傷性に優れていることが判る。
また実施例13及び14の反射防止物品に、指紋を付着させた後、不織布を用いて溶剤を含まない乾いた状態での拭きを50往復させた時の、5°正反射率ΔY(%)を測定した。なお、指紋を付着させた状態では、5°正反射率が4%となるように設定した。不織布は、KBセーレン社製、ザヴィーナミニマックス(登録商標)150mm□を使用した。また何ら指紋による汚れを付着させない状態における5°正反射率の初期値は、0.5%であった。この検討結果によれば、多峰性微小突起により付着した汚れがふき取り易くなって反射防止性能を指紋付着前に近い状態である正反射率0.6%にまで回復していることが判り、このことは多峰性微小突起を設けた場合には、微小突起の付け根側に汚れが深くもぐり込まないことによるものと考えられる。
実施例13及び14の結果によれば、頂点が複数からなる多峰性微小突起と頂点が1つの単峰性微小突起とを適切な分布で混在させることにより、従来に比して耐擦傷性を向上することができる。また指紋に対する耐汚染性(易拭取り性)にも向上が見られる。
1 透明基材
2、2A、2B 微小突起
3 微小突起構造体
3A、3B 多峰性微小突起
3C 頂部微小突起
3D 周辺微小突起
5、5A、5B 微小突起
10 反射防止物品
11 点aにおける接線
12 点bにおける接線
13 点cにおける接線
14 点aにおける接線の傾き
15 点bにおける接線の傾き
16 点cにおける接線の傾き
17 高さHの1/2高さ
18 最深部
21 極大点(母点)
22 線分(ドロネー線)
23 微小突起
24 凸状突起群
30 微小突起構造体
31 微小突起構造体表面
32 微小突起
33 うねりによる凹凸面
41 ダイ
42 ロール金型(原版)
43 押圧ローラ
44 剥離ローラ
45 透明基材
46 受容層
50 画像表示装置
51 表示パネル
52 表示面
g 溝

Claims (3)

  1. 透明基材の少なくとも一方の面に、樹脂組成物又はその硬化物からなる微小突起が密接して配置された微小突起構造体を有する反射防止物品であって、
    前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、
    max≦Λmin
    なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
    前記微小突起表面の高さ方向の傾きが、当該突起の高さHの1/2の高さから最深部方向に近づくに従い連続的に漸次減少し、
    複数ある微小突起の平均突起高さHAVGと平均隣接突起間隔dAVGの比で規定される微小突起の平均アスペクト比が1.2以上であり、
    波長550nmの光の反射率が0.2%以下であり、波長700nmの光の反射率が0.6%以下である、反射防止物品。
  2. 前記微小突起構造体を構成する複数の微小突起が、頂点を複数有する多峰性微小突起と、頂点が1つの単峰性微小突起からなり、
    前記微小突起の微小突起高さHの度数分布における平均突起高さをHAVGとし、標準偏差をσとし、
    H<HAVG−σの領域を低高度領域とし、
    AVG−σ≦H≦HAVG+σの領域を中高度領域とし、
    AVG+σ<Hの領域を高高度領域とした場合に、
    各領域内の前記多峰性微小突起の数Nmと、前記度数分布全体における前記多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、
    中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、
    中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たす、請求項1に記載の反射防止物品。
  3. 表示パネルの少なくとも一面側に、請求項1又は2に記載の反射防止物品を備える、画像表示装置。
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