JP2015088431A - 溶融塩電池用電極およびその製造方法、ならびに溶融塩電池 - Google Patents

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篤史 福永
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Abstract

【課題】溶融塩電池において、所定温度で電池反応を停止させて、安全性を確保できる溶融塩電池用電極およびその製造方法、ならびに溶融塩電池を提供する。【解決手段】溶融塩電池用電極は、電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含み、前記導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を含み、前記膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解する。【選択図】図1

Description

本発明は、ナトリウム溶融塩電池などの溶融塩電池用の電極およびその製造方法、ならびに溶融塩電池に関する。
近年、太陽光、風力などの自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目を集めている。また、多くの電気エネルギーを蓄えることができる高エネルギー密度の電池として、非水電解質二次電池の需要が拡大している。非水電解質二次電池の中では、リチウムイオン二次電池が、軽量かつ高い起電力を有する点で有望である。しかし、リチウムイオン二次電池は、有機溶媒を含む有機電解液を用いているため、耐熱性が低い。また、非水電解質二次電池の市場の拡大に伴い、リチウム資源の価格も上昇しつつある。このような観点から、耐熱性が高く、安価な電池の開発が求められている。
また、リチウムイオン二次電池では、負極の表面に樹枝状に金属リチウムが析出し易く、析出した金属リチウムがセパレータを突き破って内部短絡が発生する場合がある。内部短絡が発生すると、短絡電流が過剰に流れることにより、電池温度が高くなる。電池温度が高くなると、金属リチウムおよび/または活物質が関与した副反応が負極および/または正極で起こり、さらに熱が発生したり、および/または発火したりすることがある。このような事態を防ぐため、リチウムイオン二次電池では、ポリエチレンなどのポリオレフィン製の微多孔膜をセパレータとして用いている(特許文献1など)。セパレータに使用されるポリエチレンの融点は125〜135℃程度である。そのため、電池温度が融点付近になると、ポリエチレンが軟化または溶融して微多孔膜の空孔が閉塞して、電池反応が停止し、これにより、内部短絡が抑制され、電池温度の上昇が抑制される。このようなセパレータの機能は、シャットダウン機能と呼ばれている。
高耐熱性および低価格の観点から、難燃性で、かつ安価なアルカリ金属(特にナトリウム)を含む溶融塩を電解質として用いる溶融塩電池の開発が進められている。溶融塩は、熱安定性に優れているため、安全性の確保が比較的容易であり、かつ、高温域での継続的使用にも適している。
溶融塩電池は、リチウムイオン二次電池に比べて、耐熱性が高いが、過度に高温に晒されると、安全性が損なわれる。そのため、電池の温度が高くなった場合に、電池反応を停止させる機能を有する電池の開発が求められている。
特許文献2には、溶融塩電池のセパレータを、イオン透過性の多孔質基材と、所定温度以上で溶融することで多孔質基材の孔を閉塞する閉塞部材とで形成することが検討されている。閉塞部材には、ポリプロピレンが使用されている。
特開2013−30497号公報(背景技術の欄) 特開2012−22811号公報
溶融塩を電解質として用いる溶融塩電池では、溶融塩の耐熱性が高いため、リチウムイオン二次電池の場合に比べてかなり高温まで電池反応を行うことができる。例えば、ナトリウム溶融塩を電解質として用いるナトリウム溶融塩電池では、300℃付近の温度でも通電可能である。しかし、耐熱性が高くても、電池の温度が過度に高くなると安定に充放電を行うことができなくなる場合がある。
リチウムイオン二次電池では、電池が高温になるのを防ぐため、シャットダウン機能を有するセパレータが使用されている。しかし、リチウムイオン二次電池で使用されるようなポリエチレン製微多孔膜は融点が低いため、溶融塩電池のセパレータとして使用しても、安全に電池反応を行うことができる温度よりもかなり低い温度でシャットダウン機能が発揮されてしまう。また、溶融塩電解質の種類によっては、溶融塩電池の作動温度が、ポリエチレンの融点よりも高いことがあるため、ポリエチレンをセパレータに使用することが難しい場合がある。
溶融塩電池に関する特許文献2では、セパレータの閉塞部材はポリプロピレン製である。ポリプロピレンの融点は155〜165℃程度であるため、ポリエチレン製のセパレータに比べるとより高い温度まで電池反応を行うことができると考えられる。しかし、安全な範囲でありながら、より高い温度で電池反応を停止できれば、溶融塩電池の高い耐熱性を有効に発揮させることができる。
また、セパレータのシャットダウン機能により、電池反応を停止する場合、何らかの理由で電池が異常発熱して電池温度が高くなりすぎると、セパレータ自体が溶融するメルトダウンが起こる場合がある。セパレータのメルトダウンが起こると、電池反応が再開される上、セパレータの機能が失われて、電池の安全性を確保できなくなる。シャットダウン機能を有するセパレータは、メルトダウンもし易いため、セパレータのみで内部短絡を抑制したり、および/または電池の安全性を確保したりすることには限界がある。
そこで、作動温度が高い溶融塩電池においては。セパレータ以外の電池の構成要素に、高温での電池反応を停止させるシャットダウン機能を保持させることが望まれる。
本発明の目的は、溶融塩電池において、所定温度(例えば、100〜350℃)で電池反応を停止させることができる溶融塩電池用電極およびその製造方法、ならびに溶融塩電池を提供することである。
本発明の一局面は、電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含み、前記導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を含み、前記膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解する溶融塩電池用電極に関する。
本発明の他の一局面は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、イオン伝導性を有する溶融塩電解質とを含み、前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方は、上記の電極である溶融塩電池に関する。
本発明のさらに他の一局面は、
電極活物質と黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1、
前記電極前駆体を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B1、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記電極前駆体に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C1を含む溶融塩電池用電極の製造方法に関する。
本発明の別の一局面は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B2、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記炭素質材料に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を、加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C2、および
前記膨張性材料を含む導電剤と電極活物質とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極を形成する工程D2を含む溶融塩電池用電極の製造方法に関する。
本発明によれば、所定温度(例えば、100〜350℃)で溶融塩電池の電池反応を停止させることができる溶融塩電池用電極およびその製造方法、ならびに溶融塩電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電極を概略的に示す縦断面図である。 本発明の他の一実施形態に係る電極を概略的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る溶融塩電池を概略的に示す縦断面図である。 実施例2で作製した膨張性材料およびこの膨張性材料の作製に使用した高配向性熱分解グラファイト(HOPG:Highly Oriented Pyrolytic Graphite)の測定温度変化に伴う質量変化を示すグラフ(TG(Thermogravimetry)曲線)である。 実施例2で作製した膨張性材料の膨張前の写真(倍率5倍)である。 図5aの膨張性材料を、200℃で加熱して膨張させた後の写真(倍率3倍)である。
[発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一実施形態は、(1)電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含み、前記導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を含み、前記膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解する溶融塩電池用電極に関する。
ナトリウム溶融塩電池などの溶融塩電池では、溶融塩電解質の耐熱性が高いため、作動温度が比較的高くても、継続的に使用することができる。例えば、溶融塩電解質として、例えば、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン(FSA-:bis(fluorosulfonyl)amide anion)と、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン(MPPY+:1−methyl−1−propylpyrrolidinium cation)との塩(MPPYFSA)を用いる場合、ナトリウム溶融塩電池を、300℃近くの温度で作動させることができる。
ところが、ナトリウム溶融塩電池では、過充電時に負極の表面に金属ナトリウムが析出し易く、ナトリウム炭化物が生成する場合もある。金属ナトリウムおよびナトリウム炭化物は活性が高く(つまり、不安定で)、副反応を起こし易い。ナトリウム溶融塩電池において、金属ナトリウムは粒子状の形態で析出する。金属ナトリウムの融点は98℃であるため、電池の作動温度が金属ナトリウムの融点以上になると、金属ナトリウム粒子が負極から脱落し易く、脱落した粒子は、浮遊したり、および/またはセパレータを通過して、正極に到達したりする。正極に到達した金属ナトリウム粒子は、酸化されてナトリウムイオンに変換され、セパレータを通って、負極に到達する。ナトリウム溶融塩電池では、このような現象が繰り返し起こるため、正極と負極との間に短絡電流が流れ易い。短絡電流が継続的に流れると、短絡電流が流れる際の抵抗も無視できないため、電池が発熱し易くなる。また、過充電状態が続いたり、および/または過充電状態の頻度が高くなったりしても、電池が発熱し易い。リチウムイオン二次電池に比べて耐熱性が高い溶融塩電池であっても、過度に電池温度が高まると、溶融塩電池を安定に作動させることが難しくなる。
リチウムイオン二次電池では、セパレータのシャットダウン機能を利用して、高温での電池反応を停止する方法などが採用されている。しかしながら、リチウムイオン二次電池と溶融塩電池とでは、電池の作動温度が異なる。よって、リチウムイオン二次電池で使用されるようなシャットダウン機能を有するセパレータを用いるだけでは、溶融塩電池の高温での電池反応を停止する効果を十分に得ることは難しい。
一方、本発明の上記実施形態では、電池が所定温度(具体的には、アニオンの熱分解温度)に達すると、黒鉛型結晶構造内に挿入されたアニオンが分解してガスを発生することで、膨張性材料が極めて大きく膨張する。これにより、電極集電体から、電極活物質が脱落したり、および/または電極活物質を含む電極合剤が剥離したりして、充放電反応が行われなくなる(または充放電反応が低減される)。その結果、溶融塩電池の過熱を効果的に抑制することができる。つまり、アニオンの熱分解温度までは電池の充放電を安定に行うことができるとともに、溶融塩電池の安全性を高めることもできる。このように、上記実施形態では、溶融塩電池の電極に、所定温度で電池反応を停止(または低減)させるシャットダウン機能が付与されることになる。なお、電池反応(または充放電反応)が停止する場合には、電池反応が完全に行われなくなる場合だけでなく、電池反応が低減して、電池から実用上十分な電流を取り出せなくなる場合も含む。
ここで、溶融塩電池とは、溶融塩(イオン伝導性を有する溶融状態の塩(イオン液体))を電解質として含む電池の総称である。溶融塩電解質とは、溶融塩を含む電解質を意味する。ナトリウム溶融塩電池とは、ナトリウムイオン伝導性を示す溶融塩を電解質として含み、ナトリウムイオンが、充放電反応に関与する電荷のキャリアとなるものを言う。
(2)前記アニオンは、ビススルホニルアミドアニオンであることが好ましく、(3)前記アニオンは、FSA-、およびビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(TFSA-:bis(trifluoromethylsulfonyl)amide anion)からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。このようなアニオンを用いると、黒鉛型結晶構造内にアニオンを挿入し易いことに加え、適度な温度で膨張性材料を膨張させ易い。よって、電極のシャットダウン機能をより効果的に発揮させることができる。
(4)前記炭素質材料のラマンスペクトルで測定されるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比:D/Gは1以下であることが好ましい。D/G比がこのような範囲である場合、炭素質材料は、発達した黒鉛型結晶構造を有する。これにより、黒鉛型結晶構造内に多くのアニオンを挿入することができ、アニオンの熱分解により、膨張性材料をさらに膨張し易くなる。よって、膨張性材料の膨張時に、より容易に、電極集電体から電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。
(5)前記膨張性材料の量は、前記電極活物質100質量部に対して3〜50質量部であることが好ましい。膨張性材料の量がこのような範囲である場合、十分な電極容量を確保しながらも、膨張性材料の膨張時に、電極集電体から電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりし易い。
(6)前記アニオンの量は、前記炭素質材料100質量部に対して、3〜40質量部であることが好ましい。アニオンの量がこのような範囲である場合、膨張性材料の膨張率を高め易い。
(7)好ましい態様では、電極は、前記電極集電体に担持された電極合剤を含み、前記電極合剤は、前記電極活物質および前記導電剤を含む混合物である。膨張性材料に含まれる炭素質材料は高い導電性を有するため、電極合剤に高い導電性を付与できる。また、膨張性材料の膨張時には、電極合剤を電極集電体から容易に剥離させることができる。
(8)別の好ましい態様では、電極は、前記電極集電体に担持された電極合剤、および前記電極集電体と前記電極合剤との間に介在する導電層を含み、前記電極合剤は前記電極活物質を含み、前記導電層は前記導電剤を含む。このような電極では、高い導電性を有する膨張性材料を、電極集電体と電極合剤との間に介在させることができるため、電極における集電性を高めることができる。また、膨張性材料の膨張時には、電極集電体から電極合剤を剥離させ易く、容易に電池反応を停止させることができる。
(9)本発明の他の一実施形態は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、イオン伝導性を有する溶融塩電解質とを含み、前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方は、上記(1)に記載の電極である溶融塩電池に関する。上記の電極は、所定温度で膨張性材料が膨張することで、電池反応を停止させることができる。そのため、上記電極は、溶融塩電池の正極および負極のどちらにも使用できる。そして、電池が所定温度に達すると、正極および/または負極の集電体から、活物質を脱落させたり、および/または活物質を含む電極合剤を剥離させたりすることができる。
(10)前記溶融塩電解質は、ナトリウムイオン伝導性を有することが好ましい。このような溶融塩電解質を用いた溶融塩電池は、ナトリウム溶融塩電池と称される。ナトリウム溶融塩電池では、過充電時には、負極の表面に金属ナトリウム粒子が析出し易い。溶融塩電池の温度が金属ナトリウムの融点以上になると、金属ナトリウム粒子が負極から脱離して、浮遊して内部短絡が起こり易くなる。内部短絡が起こると電池温度がさらに高くなり、安定に充放電を行うことができなくなる場合がある。しかし、このような場合であっても、本願発明の上記実施形態では、所定温度で、電極集電体から電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることで、電池反応が不安定になる温度域を避けて、電池を作動させることができる。
(11)本発明のさらに他の一実施形態は、
電極活物質と黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1、
前記電極前駆体を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B1、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記電極前駆体に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C1
を含む溶融塩電池用電極の製造方法に関する。このような方法により、所定温度で電池反応を停止させることができる溶融塩電池用電極を簡便に得ることができる。
(12)上記(11)において、前記工程A1は、前記電極活物質および前記炭素質材料を含む混合物を、前記電極集電体に担持させることにより前記電極前駆体を形成する工程A1a、または前記炭素質材料を前記電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、前記導電層を覆うように前記電極活物質を前記電極集電体の表面に担持させることにより前記電極前駆体を形成する工程A1bであることが好ましい。このような工程を経ることにより、膨張性材料を、電極合剤(つまり、電極活物質および導電剤を含む混合物)、または電極集電体と電極合剤との間に介在する導電層に含有させることができる。よって、溶融塩電池が所定温度に達したときには、膨張性材料が膨張することで、電極合剤を電極集電体から容易に剥離させることができる。
(13)本発明の別の一実施形態は、
黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B2、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記炭素質材料に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を、加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C2、および
前記膨張性材料を含む導電剤と電極活物質とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極を形成する工程D2
を含む溶融塩電池用電極の製造方法に関する。このような製造方法によっても、所定温度で電池反応を停止させることができる溶融塩電池用電極を簡便に得ることができる。
(14)上記(13)において、前記工程D2は、前記電極活物質および前記導電剤を含む混合物を、前記電極集電体に担持させることにより前記電極を形成する工程D2a、または前記導電剤を前記電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、前記導電層を覆うように前記電極活物質を前記電極集電体の表面に担持させることにより前記電極を形成する工程D2bであることが好ましい。このような工程を経ることにより、膨張性材料を、電極合剤(つまり、電極活物質および導電剤を含む混合物)、または電極集電体と電極合剤との間に介在する導電層に含有させることができる。よって、溶融塩電池が所定温度に達したときには、膨張性材料が膨張することで、電極合剤を電極集電体から容易に剥離させることができる。
[発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る溶融塩電池用電極、その製造方法、並びに溶融塩電池の具体例を、適宜図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
(溶融塩電池用電極)
電極は、電極集電体と、電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含む。本発明の一実施形態では、導電剤が、加熱により膨張する膨張性材料を含む。膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料(第1炭素質材料)と、黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、アニオンは、100〜350℃で熱分解する。
このような電極を溶融塩電池に使用すると、電池温度が高くなり、アニオンの熱分解温度に達したときに、黒鉛型結晶構造における層間で、アニオンが熱分解して、ガスが発生する。発生したガスで層間が押し広げられて、膨張性材料が熱膨張すると、電極集電体から電極活物質とともに剥離および/または脱落する。その結果、充放電反応を行うことができなくなり、電池から十分な電流を取り出すことができなくなる。つまり、このような電極は、所定温度(具体的には、アニオンの熱分解温度)で電池反応を停止させることができるシャットダウン機能を有する。
(導電剤)
導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を必須成分として含む。膨張性材料を構成する第1炭素質材料において、黒鉛型結晶構造とは、層状の結晶構造を意味し、立方晶型結晶構造、菱面体晶型結晶構造、六方晶型結晶構造などが例示できる。第1炭素質材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体、HOPGなどが例示できる。これらの第1炭素質材料は、一種を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。このような第1炭素質材料を用いることで、黒鉛型結晶構造の層間にアニオンを挿入させることができる。また、第1炭素質材料は、高い導電性を示すため、電極に高い導電性および/または集電性を付与することができる。
第1炭素質材料における黒鉛型結晶構造の発達の程度は、例えば、ラマンスペクトルにおけるD/G比を指標として評価することができる。黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料のラマンスペクトルでは、一般に、黒鉛型結晶構造に起因するGバンドのピークが、1580cm-1付近に現れる。炭素質材料の黒鉛型結晶構造に欠陥がある場合、この欠陥に起因するDバンドのピークが、1360cm-1付近に現れる。D/G比は、Gバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比で表され、この値が小さいほど、黒鉛型結晶構造が発達していることを意味する。第1炭素質材料のD/G比は、例えば、1以下であり、0.5以下であることが好ましく、0.2以下または0.1以下であることがさらに好ましい。
第1炭素質材料における黒鉛型結晶構造の発達の程度は、X線回折(XRD:X−ray diffraction)スペクトルで測定される(002)面の平均面間隔d002を指標として評価することもできる。第1炭素質材料は、平均面間隔d002が、0.337nm未満であることが好ましい。第1炭素質材料の平均面間隔d002がこのような範囲である場合、第1炭素質材料は、発達した黒鉛型結晶構造を有し、層間に多くのアニオンを挿入することができるため、膨張性材料をアニオンの熱分解で大きく膨張させ易い。平均面間隔d002の下限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.335以上とすることができる。
また、第1炭素質材料の平均比重は、例えば、2〜3g/cm3、好ましくは2.1〜2.25g/cm3程度である。
アニオンは、第1炭素質材料の層間に挿入され、100〜350℃の温度で分解してガスを発生し、かつ溶融塩電池の充放電反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されない。アニオンの分解温度は、100℃以上、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは175℃以上である。また、アニオンの分解温度は、350℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。アニオンの分解温度は、例えば、100〜300℃、150〜250℃、または175〜250℃であってもよい。
アニオンの分解温度が上記のような範囲である場合、溶融塩電池の温度がアニオンの分解温度に達したときに、膨張性材料が膨張して、電池反応を停止させることができる。なお、溶融塩電池および/または使用する溶融塩電解質の種類などに応じて、電池の充放電を安定に行うことができる温度範囲の上限またはこれに近い温度で第1炭素質材料の層間に挿入されたアニオンの熱分解が起こるように、アニオンの種類を適宜選択することができる。
このようなアニオンとしては、例えば、ビススルホニルアミドアニオンが挙げられる。アニオンは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
ビススルホニルアミドアニオンとしては、例えば、FSA-(N(SO2F)2 -)、(フルオロスルホニル)(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン[(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン((FSO2)(CF3SO2)N-)など]、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン[TFSA-(N(SO2CF32 -)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル) アミドアニオン(N(SO2252 -)など]などが挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、例えば、1〜10であり、イオン液体の融点および/または粘度を低くする観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4、特に1、2、または3である。
ビススルホニルアミドアニオンのうち、FSA-、TFSA-、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンなどのビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン(PFSA-:bis(perfluoroalkylsulfonyl)amide anion)などが好ましい。中でも、FSA-およびTFSA-からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。このようなアニオンを用いると、黒鉛型結晶構造内にアニオンを挿入し易い上、適度な温度で膨張性材料を膨張させることができるため電池反応を制御し易い。
膨張性材料において、第1炭素質材料100質量部に対するアニオンの量は、例えば、3質量部以上または10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上または25質量部以上である。第1炭素質材料100質量部に対するアニオンの量は、例えば、40質量部以下、好ましくは35質量部以下または30質量部以下である。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。第1炭素質材料100質量部に対するアニオンの量は、例えば、3〜40質量部、20〜40質量部、20〜35質量部、または25〜35質量部であってもよい。
アニオンの量が上記のような範囲である場合、膨張性材料の膨張率を高め易いため、膨張時に電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりし易い。
第1炭素質材料に挿入されたアニオンの量は、例えば、アニオンを挿入する際に印加される電流値およびアニオンの電流量から、挿入されたアニオンのモル量を算出し、このモル量を質量に換算し、さらに第1炭素質材料100質量部に対する質量に換算することにより算出できる。
電極における膨張性材料の量は、電極活物質100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは10質量部以上または15質量部以上である。電極活物質100質量部に対する膨張性材料の量は、例えば、50質量部以下、好ましくは30質量部以下または25質量部以下である。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。電極活物質100質量部に対する膨張性材料の量は、3〜50質量部、10〜30質量部、または15〜25質量部であってもよい。
膨張性材料は高い膨張率を示すため、電極に含まれる膨張性材料の量が少なくとも、膨張性材料の膨張時には、電極集電体から、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。膨張性材料の量が、上記のような範囲である場合、十分な電極容量を確保しながらも、所定温度で、電極集電体から、より容易に、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。
導電剤は、膨張性材料以外の導電性成分(以下、導電助剤と称する。)を含むことができる。このような導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどのナノカーボンなどが挙げられる。このように導電助剤には、炭素質材料(第2炭素質材料)も含まれるが、導電助剤としての第2炭素質材料は、黒鉛型結晶構造を有する第1炭素質材料に比べて、黒鉛型結晶構造の割合が少なくてもよい。第2炭素質材料の平均面間隔d002は、0.337nm以上であり、0.42nmを超えることが好ましい。導電助剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。導電剤が導電助剤を含むことで、電極(または電極合剤)における導電性をさらに高めることができ、導電層にこのような導電剤を用いる場合には、集電性をさらに高めることができる。
導電剤中の膨張性材料の割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。また、導電剤中の膨張性材料の割合は、例えば、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。導電剤中の膨張性材料の割合は、例えば、20〜100質量%、好ましくは30〜70質量%または40〜70質量%であってもよい。
電極は、電極集電体と、電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質および導電剤とを含む限り特に制限されない。電極は、例えば、(a)電極集電体と電極集電体に担持された電極合剤とを含むものであってもよい。また、電極は、(b)電極集電体、電極集電体に担持された電極合剤、および電極集電体と電極合剤との間に介在する導電層を含むものであってもよい。これらの電極において、導電剤は、電極活物質とともに電極合剤に含有させてもよく、導電層に含有させてもよい。
上記(a)において、電極合剤は、好ましくは電極活物質および導電剤を含む混合物である。また、上記(b)において、電極合剤は電極活物質を含み、導電層は、膨張性材料を含む導電剤(または導電助剤)を含むことができる。(b)では、電極合剤は、少なくとも電極活物質を含有すればよく、電極活物質と導電剤(または導電助剤)とを含む混合物であってもよい。
電極合剤が膨張性材料を含む導電剤を含む場合、電極合剤の導電性を高めることができるとともに、電極合剤中で膨張性材料が膨張する際に、電極合剤が崩壊することで、電極合剤を電極集電体から剥離させることができる。また、導電層が膨張性材料を含む導電剤を含む場合、電極における集電性を高めることができるとともに、電極集電体と電極合剤との間に存在する導電層が膨張することで、電極集電体から電極合剤が剥離することになる。なお、電極合剤および導電層の双方に導電剤を含む場合、前述の電極における電極活物質100質量部に対する膨張性材料の量は、電極(または電極合剤)に含まれる電極活物質100質量部に対する電極合剤および導電層における膨張性材料の総量を意味する。
上記(b)において、導電層は、電極集電体の表面の少なくとも一部に形成すればよく、表面全体に形成してもよい。電極集電体の表面に占める導電層の面積が大きくなるほど、電極合剤が電極集電体から剥離し易くなる。
膨張性材料は高い膨張率を示すため、導電層の厚みを薄くしても、膨張性材料の膨張時に、電極集電体から、容易に、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。導電層の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
図1は、本発明の一実施形態に係る電極を概略的に示す縦断面図である。電極100は、シート状または帯状の電極集電体101と、電極集電体101の両方の表面に担持された電極合剤102とを有する。電極合剤102は、電極活物質および膨張性材料を含む混合物である。膨張性材料が電極合剤に含まれているため、溶融塩電池の温度が膨張性材料の熱分解温度以上になると、膨張性材料が膨張して、電極合剤が剥離(または崩壊)することで、電池反応を停止させることができる。
図2は、本発明の他の一実施形態に係る電極を概略的に示す縦断面図である。電極200は、シート状または帯状の電極集電体201と、電極集電体201の両方の表面に担持された電極合剤202と、電極集電体201と電極合剤202との間に介在する導電層203とを含む。導電層203は、膨張性材料を含む導電剤を含む。電極合剤202は、電極活物質を含み、必要に応じて、さらに膨張性材料を含む導電剤(または導電助剤)を含むことができる。膨張性材料を含む導電層が、電極集電体と電極合剤との間に存在するため、溶融塩電池の温度が膨張性材料の熱分解温度以上になると、膨張性材料が膨張して、電極合剤が電極集電体から剥離することで、電池反応を停止させることができる。電極合剤がさらに膨張性材料を含む場合には、膨張性材料の膨張により、さらに電極合剤を崩壊させることができる。
(電極活物質)
電極に含まれる電極活物質は、溶融塩電池の種類および電極の極性に応じて、適宜選択できる。
正極活物質としては、熱的安定性および電気化学的安定性の観点から、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)と遷移金属(Cr、Mn、Fe、Co、Niなどの周期表の第4周期の遷移金属など)とを含む化合物が好ましく使用される。このような化合物は、アルカリ金属を一種または二種以上含んでもよい。また、遷移金属を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。また、アルカリ金属および遷移金属の少なくともいずれか一方の一部を、Alなどの典型金属元素で置換してもよい。
正極活物質は、前記アルカリ金属として少なくともナトリウムを含む遷移金属化合物を含むことが好ましい。ナトリウム含有遷移金属化合物は、ナトリウム溶融塩電池の正極活物質に使用するのに適している。このようなナトリウム含有遷移金属化合物としては、ナトリウムが層間に出入りする層状構造を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
ナトリウム含有遷移金属化合物のうち、硫化物としては、TiS2、FeS2、NaTiS2などが例示できる。酸化物としては、NaCrO2、NaNi0.5Mn0.52、NaMn1.5Ni0.54、NaFeO2、NaFex1(Ni0.5Mn0.51-x12(0<x1<1)、Na2/3Fe1/3Mn2/32、NaMnO2、NaNiO2、NaCoO2、Na0.44MnO2などが例示できる。無機酸塩としては、ナトリウム遷移金属ケイ酸塩(Na6Fe2Si1230、Na2Fe5Si1230、Na2Fe2Si618、Na2MnFeSi618、Na2MnFeSi618、Na2FeSiO6など)、ナトリウム遷移金属リン酸塩、ナトリウム遷移金属フルオロリン酸塩(Na2FePO4F、NaVPO4Fなど)、ナトリウム遷移金属ホウ酸塩(NaFeBO4、Na3Fe2(BO43など)などのナトリウム遷移金属酸素酸塩が例示できる。ナトリウム遷移金属リン酸塩としては、NaFePO4、NaM1PO4、Na3Fe2(PO43、Na2FeP27、Na41 3(PO4227などが例示できる。なお、M1は、Ni、CoおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種である。ハロゲン化物としては、Na3FeF6、NaMnF3、Na2MnF6などのナトリウム遷移金属フッ化物などが例示できる。
正極活物質は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
ナトリウム遷移金属化合物のうち、亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)、および鉄マンガン酸ナトリウム(Na2/3Fe1/3Mn2/32など)よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、亜クロム酸ナトリウムのCrまたはNaの一部を他元素で置換してもよく、鉄マンガン酸ナトリウムのFe、MnまたはNaの一部を他元素で置換してもよい。例えば、Na1-x22 x2Cr1-y13 y12(0≦x2≦2/3、0≦y1≦2/3、M2およびM3は、それぞれ独立にCrおよびNa以外の金属元素であって、例えば、Ni、Co、Mn、FeおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種である)、Na2/3-x34 x3Fe1/3-y2Mn2/3-z15 y2+z12(0≦x3≦1/3、0≦y2≦1/3、0≦z1≦1/3、M4およびM5は、それぞれ独立にFe、MnおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)などを用いることもできる。なお、M2およびM4はNaサイト、M3はCrサイト、M5はFeまたはMnサイトを占める元素である。
負極活物質としては、例えば、金属ナトリウムなどのアルカリ金属の他、電気化学的にナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンを吸蔵および放出(もしくは、挿入および脱離)する材料、ナトリウムなどのアルカリ金属と合金化する材料などが例示できる。
負極活物質の具体例としては、ナトリウム、カリウム、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素などの金属またはその合金、もしくはその化合物;炭素質材料(第3炭素質材料)などが例示できる。なお、合金は、これらの金属以外に、さらにアルカリ土類金属を含んでもよい。金属化合物としては、アルカリ金属を含むチタン化合物が例示できる。第3炭素質材料としては、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)などが例示できる。負極活物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ハードカーボンなどの炭素質材料、アルカリ金属を含むチタン化合物などが好ましい。
アルカリ金属含有チタン化合物としては、ナトリウム含有チタン化合物、カリウム含有チタン化合物などが例示できる。ナトリウム含有チタン化合物を用いることが好ましい。ナトリウム含有チタン化合物は、ナトリウム溶融塩電池の負極活物質に使用するのに適している。
ナトリウム含有チタン化合物としては、チタン酸ナトリウムが好ましく、より具体的には、Na2Ti37およびNa4Ti512よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、チタン酸ナトリウムのTiまたはNaの一部を他元素で置換してもよい。例えば、Na2-x46 x4Ti3-y37 y37(0≦x4≦3/2、0≦y3≦8/3、M6およびM7は、それぞれ独立にTiおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)、Na4-x58 x5Ti5-y49 y412(0≦x5≦11/3、0≦y4≦14/3、M8およびM9は、それぞれ独立にTiおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)などを用いることもできる。ナトリウム含有チタン化合物は、一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。ナトリウム含有チタン化合物は、ハードカーボンと組み合わせて用いてもよい。なお、M6およびM8はNaサイト、M7およびM9はTiサイトを占める元素である。
負極活物質としてのハードカーボンは、炭素網面が層状に重なりあった黒鉛型結晶構造を有する黒鉛などの第1炭素質材料とは異なり、炭素網面が三次元的にずれた状態で重なりあった乱層構造を有する。ハードカーボンは、高温(例えば、3000℃)での加熱処理によっても、乱層構造から黒鉛構造への転換が起こらず、黒鉛結晶子の発達が見られない。そのため、ハードカーボンは、難黒鉛化性炭素(non−graphitizable carbon)とも称される。
ハードカーボンの平均面間隔d002は、例えば、0.37nm以上、好ましくは0.38nm以上である。ハードカーボンの平均面間隔d002の上限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.42nm以下とすることができる。ハードカーボンの平均面間隔d002は、例えば、0.37〜0.42nm、好ましくは0.38〜0.4nmであってもよい。
ハードカーボンの構造については、様々なモデルが提案されているが、乱層構造内には、炭素網面が三次元的にずれて重なり合うことで、空隙が形成されていると考えられている。そのため、炭素網面が層状に密に積層した状態の結晶構造を有する黒鉛などの第1炭素質材料に比べて、ハードカーボンは平均比重が低い。ハードカーボンの平均比重は、例えば、1.7g/cm3以下であり、好ましくは1.4〜1.7g/cm3または1.5〜1.7g/cm3である。ハードカーボンがこのような平均比重を有することで、充放電時のナトリウムイオンの吸蔵および放出に伴う体積変化を小さくすることができ、活物質の劣化が効果的に抑制されることになる。
ハードカーボンは、例えば、原料を固相で炭素化することにより得られる炭素質材料を包含する。固相で炭素化が起こる原料は、固形の有機物であり、具体的には、糖類、樹脂(フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリ塩化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂など)などが挙げられる。糖類には、糖鎖が比較的短い糖類(単糖類またはオリゴ糖類、例えば、砂糖など)の他、セルロース類などの多糖類[例えば、セルロースまたはその誘導体(セルロースエステル、セルロースエーテルなど);木材、果実殻(ヤシ殻など)などのセルロースを含む材料など]などが挙げられる。なお、ガラス状カーボンもハードカーボンに含まれる。
ハードカーボンは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせてもよい。
ハードカーボンの平均粒子径(体積粒度分布における累積体積50%における粒子径)は、例えば、3〜20μmであり、好ましくは5〜15μmである。
負極活物質が、金属、合金、またはハードカーボンなどの第3炭素質材料である場合、比較的高い導電性が得られ易いため、特に、上記の導電助剤を用いなくても、十分な導電性を得ることができる。一方、アルカリ金属含有チタン化合物などの金属化合物を負極活物質として用いる場合には、十分な導電性を確保するために導電助剤を用いてもよい。
電極(または電極合剤)は、必要により、結着剤を含むことができる。結着剤は、電極活物質同士を結合させ、かつ電極活物質を電極集電体に固定する役割を果たす。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂;芳香族ポリアミドなどのポリアミド樹脂;ポリイミド(芳香族ポリイミドなど)、ポリアミドイミドなどのポリイミド樹脂;スチレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム状重合体;カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩(Na塩など)などのセルロース誘導体(セルロースエーテルなど)などが例示できる。
負極に使用される結着剤としては、上記の結着剤のうち、負極電位でも安定で、還元分解されない観点から、PVDFなどのフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;SBRなどのゴム状重合体;CMCなどのセルロース誘導体などが好ましい。また、キサンタンガムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを負極の結着剤として使用してもよい。
結着剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
結着剤の量は、電極活物質100質量部当たり、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
膨張性材料は、第1炭素質材料の層間に挿入されたアニオンの熱分解により膨張して、電極集電体から、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。そのため、上記の電極は、溶融塩電池において、正極および負極のどちらにも使用でき、正極または負極のみに使用してもよく、正極および負極の双方に使用してもよい。簡便な方法で作製し易く、高い導電性を付与し易い観点から、少なくとも正極は、上記の膨張性材料を含む電極であることが好ましい。膨張性材料を含む正極は、例えば、正極活物質および炭素質材料を含む正極前駆体を作製し、正極前駆体を用いて溶融塩電池を組み立てた後に、電池内で正極前駆体に電位を印加して炭素質材料の黒鉛型結晶構造内にアニオンを挿入させることにより得ることができる。正極前駆体に印加する電位は、正極活物質が分解しない程度の電位に留めることが好ましい。
電極集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。
正極集電体を構成する金属としては、正極電位で安定であることから、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましいが、特に限定されない。負極集電体を構成する金属としては、ナトリウムと合金化せず、負極電位で安定であることから、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金などが好ましいが、特に限定されない。
集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmであり、金属繊維の不織布または金属多孔体シートの厚さは、例えば100〜600μmである。
また、電極の厚みは、特に制限されず、例えば、10〜700μm、好ましくは50〜600μmである。
(溶融塩電池用電極の製造方法)
電極は、電極集電体に、電極活物質と膨張性材料とをそれぞれ担持させることにより製造できる。膨張性材料は、第1炭素質材料の黒鉛型結晶構造における層間に、100〜350℃で熱分解するアニオンを挿入することにより得ることができる。第1炭素質材料へのアニオンの挿入は、電極の作製に先立って行うことができる(つまり、膨張性材料を調製した後、電極を作製することができる)。また、電極活物質と第1炭素質材料とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成した後、電極前駆体に含まれる第1炭素質材料にアニオンを挿入することで、膨張性材料を生成させてもよい。
電極の製造方法について、以下により詳細に説明する。
電極前駆体を利用する場合、例えば、電極は、電極活物質と第1炭素質材料とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1、電極前駆体を、黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B1、溶融塩電解質に浸漬した状態の電極前駆体に電位を印加して、第1炭素質材料の黒鉛型結晶構造における層間にアニオンを挿入することにより、炭素質材料を膨張性材料に変換する工程C1を経ることにより製造することができる(製造方法I)。
電極の作製に先立って、膨張性材料を調製する場合、例えば、電極は、第1炭素質材料を、黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B2、溶融塩電解質に浸漬した状態の第1炭素質材料に電位を印加して、第1炭素質材料の黒鉛型結晶構造における層間にアニオンを挿入することにより、第1炭素質材料を膨張性材料に変換する工程C2、および膨張性材料を含む導電剤と電極活物質とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極を形成する工程D2を経ることにより製造することができる(製造方法II)。
製造方法IおよびIIのいずれにおいても、アニオンは、100〜350℃で熱分解するものである。
(工程A1)
製造方法Iの工程A1は、電極活物質および第1炭素質材料を含む混合物(または電極合剤)を、電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1a、もしくは第1炭素質材料を電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、導電層を覆うように電極活物質(または電極活物質を含む電極合剤)を電極集電体の表面に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1bであることが好ましい。
工程A1aにおいて、電極前駆体は、例えば、電極集電体の表面に、電極活物質および第1炭素質材料を含む混合物を含む電極合剤を担持させることにより形成できる。より具体的には、電極前駆体は、電極集電体の表面に、電極合剤ペーストを塗布し、塗膜を乾燥し、必要により圧縮(または圧延)することにより形成できる。電極合剤ペーストは、例えば、電極活物質と、第1炭素質材料と、必要により導電助剤および/または結着剤とを、分散媒に分散させることにより得られる。
工程A1bにおいて、導電層は、例えば、電極集電体の表面に第1炭素質材料を担持させたり、もしくは電極集電体の表面に第1炭素質材料および導電助剤を含む混合物を担持させたりすることにより形成できる。また、電極集電体の表面に第1炭素質材料を担持させた後、第1炭素質材料を覆うようにさらに導電助剤を担持させてもよい。第1炭素質材料(または第1炭素質材料および導電助剤)を含む導電層は、例えば、導電層の構成成分(第1炭素質材料、もしくは第1炭素質材料および導電助剤)を電極集電体の表面にまぶすことにより形成してもよく、構成成分を分散媒に分散させた導電性ペーストを用いて形成してもよい。導電性ペーストを用いる場合、導電層は、電極集電体の表面に、導電性ペーストを塗布し、塗膜を乾燥させることにより形成できる。
工程A1bでは、導電層を形成した後、導電層を覆うように、電極活物質を電極集電体の表面に担持させる。より具体的には、電極前駆体は、電極活物質を含む電極合剤ペーストを、導電層を覆うように電極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥し、必要により圧縮(または圧延)することにより形成できる。このようにして、電極活物質を含む電極合剤を電極集電体に担持することができ、電極集電体と電極合剤との間には導電層が介在した状態となる。工程A1bでは、電極合剤ペーストは、電極活物質、および必要により結着剤を分散媒に分散させることにより得られる。必要に応じて、電極合剤ペーストは、第1炭素質材料(または第1炭素質材料および導電助剤)をさらに含んでいてもよい。
上記の電極合剤ペーストおよび導電性ペーストに使用する分散媒としては、アセトンなどのケトン;テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルアセトアミドなどのアミド;N−メチル−2−ピロリドンなどが例示できる。これらの分散媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(工程B1)
工程B1では、工程A1で得られた電極前駆体を、上記アニオンを含む溶融塩電解質に浸漬させる。このとき、溶融塩電解質は溶融状態(液体)である。
(溶融塩電解質)
溶融塩電解質は、上記アニオンを含んでいればよく、通常、カチオンを含む。カチオンとしては、電池反応に悪影響を与えないように、溶融塩電池のキャリアとなるカチオン(第1カチオン)を用いることが好ましい。第1カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンなどのアルカリ金属カチオンが例示できる。第1カチオンは、溶融塩電池の種類に応じて適宜選択でき、例えば、ナトリウム溶融塩電池では、ナトリウムイオンが使用でき、カリウム溶融塩電池では、カリウムイオンが使用できる。
第2カチオンとしては、無機カチオン(第1カチオンとは異なる無機カチオン)、有機オニウムカチオンなどの有機カチオンなどが例示できる。
無機カチオンとしては、第1カチオンとは異なるアルカリ金属カチオン(前記例示のアルカリ金属カチオン)、アルカリ土類金属カチオン(マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)、遷移金属カチオンなどの金属カチオン;アンモニウムカチオンなどが例示できる。
有機オニウムカチオンとしては、脂肪族アミン、脂環族アミンまたは芳香族アミンに由来するカチオン(例えば、第4級アンモニウムカチオンなど)の他、窒素含有へテロ環を有するカチオン(つまり、環状アミンに由来するカチオン)などの窒素含有オニウムカチオン;イオウ含有オニウムカチオン;リン含有オニウムカチオンなどが例示できる。
第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン(TEA+:tetraethylammonium cation)、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン(TEMA+:methyltriethylammonium cation)などのテトラアルキルアンモニウムカチオン(テトラC1-10アルキルアンモニウムカチオンなど)などが例示できる。
イオウ含有オニウムカチオンとしては、第3級スルホニウムカチオン、例えば、トリメチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオンなどのトリアルキルスルホニウムカチオン(例えば、トリC1-10アルキルスルホニウムカチオンなど)などが例示できる。
リン含有オニウムカチオンとしては、第4級ホスホニウムカチオン、例えば、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオンなどのテトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラC1-10アルキルホスホニウムカチオン);トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウムカチオン、ジエチルメチル(メトキシメチル)ホスホニウムカチオン、トリヘキシル(メトキシエチル)ホスホニウムカチオンなどのアルキル(アルコキシアルキル)ホスホニウムカチオン(例えば、トリC1-10アルキル(C1-5アルコキシC1-5アルキル)ホスホニウムカチオンなど)などが挙げられる。なお、アルキル(アルコキシアルキル)ホスホニウムカチオンにおいて、リン原子に結合したアルキル基およびアルコキシアルキル基の合計個数は、4個であり、アルコキシアルキル基の個数は、好ましくは1または2個である。
なお、第4級アンモニウムカチオンの窒素原子、第3級スルホニウムカチオンのイオウ原子、または第4級ホスホニウムカチオンのリン原子に結合したアルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がさらに好ましく、1、2、または3であるのが特に好ましい。
有機オニウムカチオンの窒素含有ヘテロ環骨格としては、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾール、ピリジン、ピペリジンなどの環の構成原子として1または2個の窒素原子を有する5〜8員ヘテロ環;モルホリンなどの環の構成原子として1または2個の窒素原子と他のヘテロ原子(酸素原子、イオウ原子など)とを有する5〜8員ヘテロ環が例示できる。
なお、環の構成原子である窒素原子は、アルキル基などの有機基を置換基として有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数が1〜10個のアルキル基が例示できる。アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がさらに好ましく、1、2、または3であるのが特に好ましい。
窒素含有有機オニウムカチオンのうち、特に、第4級アンモニウムカチオンの他、窒素含有ヘテロ環骨格として、ピロリジン、ピリジン、またはイミダゾールを有するものが好ましい。ピロリジン骨格を有する有機オニウムカチオンは、ピロリジン環を構成する1つの窒素原子に、2つの上記アルキル基を有することが好ましい。ピリジン骨格を有する有機オニウムカチオンは、ピリジン環を構成する1つの窒素原子に、1つの上記アルキル基を有することが好ましい。また、イミダゾール骨格を有する有機オニウムカチオンは、イミダゾール環を構成する2つの窒素原子に、それぞれ、1つの上記アルキル基を有することが好ましい。
ピロリジン骨格を有する有機オニウムカチオンの具体例としては、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジエチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、MPPY+、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン(MBPY+:1−butyl−1−methylpyrrolidinium cation)、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。これらのうちでは、特に電気化学的安定性が高いことから、MPPY+、MBPY+などの、メチル基と、炭素数2〜4のアルキル基とを有するピロリジニウムカチオンが好ましい。
ピリジン骨格を有する有機オニウムカチオンの具体例としては、1−メチルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−プロピルピリジニウムカチオンなどの1−アルキルピリジニウムカチオンが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルキル基を有するピリジニウムカチオンが好ましい。
イミダゾール骨格を有する有機オニウムカチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+: 1−ethyl−3−methylimidazolium cation)、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI+:1−buthyl−3−methylimidazolium cation)、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。これらのうち、EMI+、BMI+などのメチル基と炭素数2〜4のアルキル基とを有するイミダゾリウムカチオンが好ましい。
溶融塩電解質は、通常、第1カチオンと上記アニオンとの第1塩を含んでいる。溶融塩電解質は、第1塩に加えて、さらに、第2カチオンと上記アニオンとの第2塩を含むことができる。第1塩の中では、NaFSA、NaTFSAなどが特に好ましい。第1塩は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
第2塩の具体例としては、カリウムイオンとFSA-との塩(KFSA)、カリウムイオンとTFSA-との塩(KTFSA)、MPPY+とFSA-との塩(MPPYFSA)、MPPY+とTFSA-との塩(MPPYTFSA)、EMI+とFSA-との塩(EMIFSA)、EMI+とTFSA-との塩(EMITFSA)などが挙げられる。第2塩は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
第1塩と第2塩とのモル比(=第1塩:第2塩)は、各塩の種類に応じて、例えば、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5の範囲から適宜選択できる。第1塩がナトリウム塩であり、第2塩がカリウム塩などの無機カチオンと上記アニオンとの塩である場合、第1塩と第2塩とのモル比は、例えば、30:70〜70:30、好ましくは35:65〜65:35の範囲から選択できる。また、第1塩がナトリウム塩であり、第2塩が有機カチオンと上記アニオンとの塩である場合、第1塩と第2塩とのモル比は、例えば、50:50〜99:1、好ましくは60:40〜95:5の範囲から選択できる。
電極前駆体の浸漬に使用される電解質は、アニオンの挿入に悪影響を及ぼさない範囲で、溶融塩に加え、有機溶媒を含むことができる。しかし、電解質の大部分が上記溶融塩(第1塩および第2塩)であることが好ましい。電解質中の溶融塩の含有量は、例えば、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
(工程C1)
工程C1では、工程B1で得られる溶融塩電解質に浸漬した状態の電極前駆体に、電位を印加することにより、溶融塩電解質に含まれる上記のアニオンを、黒鉛型結晶構造における層間に挿入する。これにより、第1炭素質材料は、加熱により膨張する膨張性材料に変換されて、電極が得られる。
電極前駆体に印加される電位は、アニオンの種類に応じて適宜調節でき、金属ナトリウムに対して、例えば、3.5〜4.5V、好ましくは3.6〜4.5V、さらに好ましくは4〜4.3Vである。このような電位を印加することで、アニオンを黒鉛型結晶構造における層間に効率よく挿入することができる。
工程C1は、溶融塩電解質の融点以上で行う必要があるが、この工程でアニオンが熱分解して膨張性材料が膨張しないように、アニオンの熱分解温度未満の温度で行うことが望ましい。アニオンの熱分解温度と工程C1の温度との差は、例えば、5℃以上、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。
このようにして得られる電極を溶融塩電池の組み立てに供することができる。また、工程B1および工程C1を溶融塩電池の作製過程で行うこともできる。つまり、溶融塩電池内で、工程B1および工程C1を行ってもよい。特に、電極が正極である場合、工程B1および工程C1を溶融塩電池内で行うことができ、簡便な方法で、電極および溶融塩電池を得ることができる。
(工程B2)
製造方法IIの工程B2では、第1炭素質材料を、上記アニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する。工程B2の具体的な方法は特に制限されない。例えば、第1炭素質材料を、必要に応じて結着剤(例えば、電極について例示した結着剤など)などとともに圧縮成形し、圧縮成形物(例えば、シート状成形物)を、二枚の集電体(前記例示の正極集電体など)で挟持して、溶融塩電解質に浸漬してもよい。溶融塩電解質としては、上記工程B1と同様のものが使用できる。
(工程C2)
工程C2では、工程B2で得られた溶融塩電解質に浸漬した状態の第1炭素質材料に、電位を印加することにより、溶融塩電解質に含まれる上記のアニオンを、黒鉛型結晶構造における層間に挿入する。これにより、第1炭素質材料は、加熱により膨張する膨張性材料に変換される。第1炭素質材料に電位を印加する方法は特に制限されない。例えば、工程B2で得られる第1炭素質材料の圧縮成形物を二枚の集電体で挟持したものを、溶融塩電解質に浸漬した状態で、集電体間に電位を印加することで、第1炭素質材料に電位を印加することができる。このような電位の印加により、上記のアニオンを黒鉛型結晶構造における層間に挿入することができる。
工程C2において、第1炭素質材料に印加される電位は、工程C1と同様の範囲から選択できる。また、工程C2の温度も、工程C1と同様の範囲から適宜設定できる。
工程C2で得られる膨張性材料は、必要に応じて、溶融塩電解質から分離して電極の形成工程D2に供してもよい。
(工程D2)
工程D2では、工程C2で得られた膨張性材料を用いて電極を形成する。具体的には、膨張性材料(または、膨張性材料および導電助剤)を含む導電剤と、電極活物質とを、それぞれ、電極集電体に担持させることにより電極を形成できる。
工程D2は、電極活物質および導電剤を含む混合物(または電極合剤)を、電極集電体に担持させることにより電極を形成する工程D2a、もしくは導電剤を電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、導電層を覆うように電極活物質(または電極活物質を含む電極合剤)を電極集電体の表面に担持させることにより電極を形成する工程D2bであることが好ましい。
工程D2aにおいて、電極は、電極活物質および第1炭素質材料を含む混合物に代えて、電極活物質と、膨張性材料を含む導電剤とを含む混合物を用いる以外は、工程A1aの電極前駆体の場合と同様にして形成することができる。
工程D2bにおいて、導電層は、第1炭素質材料(または、第1炭素質材料および導電助剤を含む混合物)に代えて、膨張性材料を含む導電剤を用いる以外は、工程A2bと同様にして形成することができる。また、このようにして形成される導電層を覆うように、電極合剤を電極集電体に担持させる以外は、工程A2bと同様にして形成することができる。なお、工程D2bで使用する電極合剤ペーストは、電極活物質、および必要により結着剤を分散媒に分散させることにより得られる。必要に応じて、電極合剤ペーストは、膨張性材料を含む導電剤をさらに含んでいてもよい。
工程D2、工程D2a、および工程D2bは、これらの工程でアニオンが熱分解して膨張性材料が膨張しないように、アニオンの熱分解温度未満の温度で行うことが望ましい。アニオンの熱分解温度と工程D2(もしくは、工程D2aまたは工程D2b)の温度との差は、例えば、5℃以上、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。
このようにして得られる電極を溶融塩電池の組み立てに供することができる。製造方法IIは、予め調製した膨張性材料を電極の作製に使用するため、正極だけでなく、負極を形成するのにも適している。
(溶融塩電池)
溶融塩電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に介在するセパレータと、イオン伝導性を有する溶融塩電解質とを含み、正極および負極の少なくともいずれか一方が上記電極である。
溶融塩電池において、正極が上記電極である場合、負極には、公知の溶融塩電池用負極を用いることができる。また、負極が上記電極である場合、正極には、公知の溶融塩電池用正極を用いることができる。
公知の溶融塩電池用正極は、特に制限されず、例えば、正極集電体と、正極集電体に担持された正極合剤とを含み、正極合剤は、前記例示の正極活物質を含むものなどが挙げられる。正極合剤は、必要に応じて、さらに、前記例示の導電助剤および/または前記例示の結着剤などを含むことができる。このような正極は、構成成分を分散媒(前記例示の分散媒など)に分散させた正極合剤ペーストを正極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥し、必要に応じて、圧縮(または圧延)することにより得ることができる。
公知の溶融塩電池用負極は、負極集電体と、負極集電体に担持された負極活物質層とを含む。負極活物質層は、前記例示の負極活物質を含む。負極活物質が、金属または合金などである場合、負極活物質層は、メッキ、蒸着、スパッタリングなどの方法により、負極集電体に金属または合金の被膜を形成することにより得ることができる。また、負極合剤を用いれば、負極活物質の種類によらず、負極活物質層を形成できる。負極合剤は、負極活物質と、必要に応じて、さらに、前記例示の導電助剤および/または前記例示の結着剤などを含むことができる。このような負極合剤を含む負極は、上記の正極と同様にして得ることができる。
溶融塩電池に使用される溶融塩電解質としては、前記例示の溶融塩電解質などが使用できる。電極前駆体および/または第1炭素質材料の浸漬に使用された溶融塩電解質と同じものを、電池の溶融塩電解質として使用してもよい。
溶融塩電池において使用される電解質は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができるが、電解質の大部分が上記溶融塩(第1塩および第2塩)であることが好ましい。電解質中の溶融塩の含有量は、例えば、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極とを物理的に隔絶して、内部短絡を防止する役割を果たす。セパレータは、多孔質材料からなり、その空隙には電解質が含浸され、電池反応を確保するために、イオン透過性を有する。
セパレータとしては、例えば、樹脂製の微多孔膜の他、不織布などが使用できる。セパレータは、微多孔膜または不織布の層だけで形成してもよく、組成および/または形態の異なる複数の層の積層体で形成してもよい。積層体としては、組成の異なる複数の樹脂多孔層を有する積層体、微多孔膜の層と不織布の層とを有する積層体などが例示できる。
セパレータの材質は、電池の使用温度を考慮して選択できる。微多孔膜および不織布を形成する繊維に含まれる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドケトンなどのポリフェニレンサルファイド樹脂;芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂など)などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂などが例示できる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、不織布を形成する繊維は、ガラス繊維などの無機繊維であってもよい。セパレータは、ガラス繊維、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種で形成するのが好ましい。
セパレータは、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、チタニアなどのセラミックス;タルク、マイカ、ウォラストナイトなどが例示できる。無機フィラーは、粒子状または繊維状が好ましい。セパレータ中の無機フィラーの含有量は、例えば、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。
セパレータの厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜300μm程度の範囲から選択できる。セパレータが微多孔膜である場合、セパレータの厚さは、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。また、セパレータが不織布である場合、セパレータの厚みは、好ましくは50〜300μm、さらに好ましくは100〜250μmである。
溶融塩電池は、正極と、負極と、これらの間に介在するセパレータと、溶融塩電解質とを、電池ケースに収容した状態で用いられる。正極と負極(または、負極集電体とこの表面に形成された負極合剤層の前駆体とを含む負極前駆体)とを、これらの間にセパレータを介在させて積層または捲回することにより電極群を形成し、この電極群を電池ケース内に収容してもよい。そして、負極前駆体は、溶融塩電解質と接触することで負極に変換される。このとき、金属製の電池ケースを用いるとともに、正極および負極の一方を電池ケースと導通させることにより、電池ケースの一部を第1外部端子として利用することができる。一方、正極および負極の他方は、電池ケースと絶縁された状態で電池ケース外に導出された第2外部端子と、リード片などを用いて接続される。
図3は、溶融塩電池を概略的に示す縦断面図である。
溶融塩電池は、積層型の電極群、電解質(図示せず)およびこれらを収容する角型のアルミニウム製の電池ケース10を具備する。電池ケース10は、上部が開口した有底の容器本体12と、上部開口を塞ぐ蓋体13とで構成されている。
溶融塩電池を組み立てる際には、まず、膨張性材料を含む正極2と負極3とをこれらの間にセパレータ1を介在させた状態で積層することにより電極群が構成され、構成された電極群が電池ケース10の容器本体12に挿入される。その後、容器本体12に溶融塩を注液し、電極群を構成するセパレータ1、正極2および負極3の空隙に電解質を含浸させる工程が行われる。あるいは、電解質に電極群を含浸し、その後、電解質を含んだ状態の電極群を容器本体12に収容してもよい。なお、膨張性材料に代えて第1炭素質材料を含む正極前駆体を、上記正極2に代えて用いる以外は上記と同様にして電極群および溶融塩電池を形成し、溶融塩電池内で、正極前駆体に含まれる第1炭素質材料を膨張性材料に変換することで、正極前駆体を正極2に変換してもよい。
蓋体13の中央には、電子ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。安全弁16を中央にして、蓋体13の一方側寄りには、蓋体13を貫通する外部正極端子14が設けられ、蓋体13の他方側寄りの位置には、蓋体13を貫通する外部負極端子が設けられる。
積層型の電極群は、いずれも矩形のシート状である、複数の正極2と複数の負極3およびこれらの間に介在する複数のセパレータ1により構成されている。図3では、セパレータ1は、正極2を包囲するように袋状に形成されているが、セパレータの形態は特に限定されない。複数の正極2と複数の負極3は、電極群内で積層方向に交互に配置される。
各正極2の一端部には、正極リード片2aを形成してもよい。複数の正極2の正極リード片2aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋体13に設けられた外部正極端子14に接続することにより、複数の正極2が並列に接続される。同様に、各負極3の一端部には、負極リード片3aを形成してもよい。複数の負極3の負極リード片3aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋体13に設けられた外部負極端子に接続することにより、複数の負極3が並列に接続される。正極リード片2aの束と負極リード片3aの束は、互いの接触を避けるように、電極群の一端面の左右に、間隔を空けて配置することが望ましい。
外部正極端子14および外部負極端子は、いずれも柱状であり、少なくとも外部に露出する部分が螺子溝を有する。各端子の螺子溝にはナット7が嵌められ、ナット7を回転することにより蓋体13に対してナット7が固定される。各端子の電池ケース内部に収容される部分には、鍔部8が設けられており、ナット7の回転により、鍔部8が、蓋体13の内面に、ワッシャ9を介して固定される。
(溶融塩電池用電極および溶融塩電池の他の実施形態)
本発明の実施形態には、さらに、膨張させた膨張性材料を含む電極およびその製造方法、ならびにこのような電極を用いた溶融塩電池も含まれる。
本発明者らは、上記膨張性材料をアニオンの熱分解温度以上の温度で膨張させた材料(以下、第4炭素質材料と称する)が、所定の温度範囲で可逆的に膨張収縮することを見出した。そのため、第4炭素質材料を電極集電体に電極活物質とともに担持させた電極を用いても、第4炭素質材料の膨張を利用して、電極集電体から、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができる。このような第4炭素質材料の可逆的な膨張収縮は、第4炭素質材料内に残存したガスによるものであると考えられる。加熱により第4炭素質材料内に含まれるガスの体積が大きくなると、第4炭素質材料が膨張し、冷却によりガスの体積が小さくなることで、第4炭素質材料が収縮することになる。
第4炭素質材料は、空隙率が大きく、極めて低密度である。
第4炭素質材料は、2θ/θ法によるXRDスペクトルにおいて、2θ=32〜36°(好ましくは2θ=33〜35°)にピークを有する。このようなピークは、膨張性材料のXRDスペクトルでは確認されない。
第4炭素質材料を含む電極は、膨張性材料を含む上述の電極において、膨張性材料に代えて第4炭素質材料を含む以外は、同様の構成とすることができる。例えば、第4炭素質材料を、電極集電体に担持された電極合剤に含有させてもよく、また、電極集電体と電極合剤との間に介在する導電層に含有させてもよい。
電極において、第4炭素質材料の量は、電極活物質100質量部に対する膨張性材料の量について記載した範囲と同様の範囲から適宜選択できる。第4炭素質材料の量がこのような範囲である場合、高い容量および導電性を維持しながらも、電池温度が所定温度になったときには電極集電体から、電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりし易い。
第4炭素質材料を含む電極は、前述の方法により膨張性材料を含む電極を作製した後、アニオンの熱膨張温度以上の温度で加熱することにより膨張性材料を膨張させることで第4炭素質材料に変換することにより製造することができる。また、膨張性材料を調製した後、アニオンの熱膨張温度以上の温度で加熱することにより膨張性材料を膨張させることにより、第4炭素質材料を調製し、第4炭素質材料を用いて電極を形成する方法を採用してもよい。後者の方法は、第4炭素質材料を、膨張性材料に代えて用いる以外は、前述の製造方法IIと同様に行うことができる。
第4炭素質材料を含む電極は、溶融塩電池の正極および負極の少なくともいずれか一方に用いることができる。第4炭素質材料を含む電極を用いた溶融塩電池は、膨張性材料を含む電極に代えて、第4炭素質材料を含む電極を用いる以外は、前述の溶融塩電池と同じ構成とすることができ、前述の溶融塩電池と同様の方法により製造することができる。
第4炭素質材料を含む電極は、例えば、60〜100℃の温度範囲で可逆的に膨張および収縮させることができる。
[付記]
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含み、
前記導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を含み、
前記膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、
前記アニオンは、100〜350℃で熱分解する溶融塩電池用電極。
このような電極では、電池の温度がアニオンの熱分解温度に達すると、黒鉛型結晶構造内に挿入されたアニオンが分解してガスを発生することで、膨張性材料が極めて大きく膨張する。これにより、電極集電体から、電極活物質が脱落したり、および/または電極合剤が剥離したりして、電池反応を停止させることができる。よって、電池反応を安定に行うことができる温度範囲で電池を作動させることができる。
(付記2)
前記付記1の溶融塩電池用電極は正極であり、
前記導電剤は、前記膨張性材料および導電助剤を含み、
前記導電剤中の前記膨張性材料の割合は、30〜70質量%であることが好ましい。
このような電極(正極)では、優れたシャットダウン効果が得られることに加え、導電性および/または集電性をさらに高めることができる。
(付記3)
前記付記1または付記2の溶融塩電池用電極は、前記電極集電体に保持された電極合剤、および前記電極集電体と前記電極合剤との間に介在する導電層を含み、
前記電極合剤は前記電極活物質を含み、
前記導電層は前記導電剤を含み、
前記導電層の厚みは5〜50μmであることが好ましい。
(付記4)
電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ保持された電極活物質と導電剤とを含み、
前記導電剤は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料(第1炭素質材料)と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含む材料を、前記アニオンの熱分解温度以上の温度で加熱して、前記アニオンを熱分解することにより得られる炭素質材料(第4炭素質材料)を含み、前記熱分解温度は、100〜350℃である、溶融塩電池用電極。
このような電極を用いることで、電池が所定温度になったときに、第4炭素質材料の膨張を利用して、電極集電体から電極活物質を脱落させたり、および/または電極合剤を剥離させたりすることができ、電池反応を停止することができる。よって、電池反応を安定に行うことができる温度範囲で、電池を作動させることができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)正極前駆体の作製
NaCrO2(正極活物質)90質量部、HOPG(第1炭素質材料)2.5質量部、アセチレンブラック(導電助剤)2.5質量部およびPVDF(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、合剤ペーストを調製した。得られた合剤ペーストを、アルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ15μmの正極合剤層の前駆体を有する総厚50μmの正極前駆体を10枚作製した。なお、正極前駆体の一辺の一方の側端部には、集電用のリード片を形成した。
(2)負極の作製
ハードカーボン(負極活物質)100質量部およびPVDF(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、負極合剤ペーストを調製した。得られた負極合剤ペーストを、負極集電体としてのアルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ15μmの負極合剤層を有する総厚50μmの負極を9枚作製した。また、負極集電体の片面のみに負極合剤層を形成する以外は、上記と同様にして、2枚の負極を作製した。負極の一辺の一方の側端部には、集電用のリード片を形成した。
(3)電極群の組み立て
正極前駆体と、負極との間に、セパレータを介在させて、正極リード片同士および負極リード片同士が重なり、かつ正極リード片の束と負極リード片の束とが左右対称な位置に配置されるように積層し、電極群を作製した。電極群の両方の端部には、片面のみに負極合剤層を有する負極を、その負極合剤層が正極前駆体と対向するように配置した。セパレータとしては、ガラス繊維不織布(サイズ35×35mm、厚さ200μm)を用いた。
(4)溶融塩電池の組み立て
上記(3)で得られた電極群と、溶融塩電解質とを、アルミニウム製の容器本体に収容し、容器本体の開口部を、アルミニウム製の蓋体(封口板)で密閉して、図1に示すナトリウム溶融塩電池(A1)を組み立てた。溶融塩電解質としては、NaFSAと、MPPYFSAとを、1:9のモル比で混合したものを用いた。
(5)正極前駆体の正極への変換(膨張性材料の生成)
上記(4)で得られたナトリウム溶融塩電池の初回充電時に、電池内において、溶融塩電解質に浸漬した状態で、正極前駆体に電位を印加することで、溶融塩電解質中のFSA-を第1炭素質材料の黒鉛型結晶構造の層間に挿入させた。これにより、膨張性材料が生成し、正極前駆体が正極に変換された。具体的には、ナトリウム溶融塩電池を、60℃になるまで加熱し、時間率0.2Cレートの電流値で3.5Vになるまで定電流充電することにより初回充電を行った。このときの正極の電位は、金属ナトリウム基準で約4.2Vであると考えられる。
なお、電位の印加により第1炭素質材料に挿入されたアニオンの量を既述の方法により求めたところ、第1炭素質材料100質量部に対して、約28質量部であった。
(6)評価
(a)サイクル特性
初回充電の後、時間率0.2Cレートの電流値で、3.0Vになるまで放電を行い、このときの電池の放電容量(初回放電容量、つまり、1サイクル目の放電容量)を測定した。さらに、ナトリウム溶融塩電池を、初回充電と同じ条件で充電し、次いで、上記と同様の条件で放電し、この充放電サイクルを、2000サイクル繰り返した。初期放電容量に対する2000サイクル後の放電容量電池の放電容量の比を算出し、容量維持率(%)として評価した。
(b)シャットダウン特性
ナトリウム溶融塩電池を、外部電源(定電流電源)に接続し、電池温度、ならびに正極端子および負極端子間の抵抗をモニターしながら、時間率1Cレートの電流値で充電した。充電は、電池の充電状態(SOC:state of charge)100%を超え、正極端子および負極端子間に電流が流れなくなるまで(または外部電流の上限電圧に達して電池に電流が供給されなくなるまで)行った。
また、充放電を行った(または試みた)後の電池を分解して、正極合剤層の状態を目視で観察した。
比較例1
実施例1の(5)正極前駆体の正極への変換を行わない以外は、実施例1と同様にして溶融塩電池(B1)を作製し、評価を行った。つまり、比較例1では、アニオンが挿入されていない状態の第1炭素質材料を含む実施例1の正極前駆体を正極として用いた。
実施例1の電池A1では、電池温度が約200℃で、正極端子および負極端子間に電流が流れなくなった。電流が流れなくなった後の電池を分解したところ、正極では、著しい正極合剤の剥離が見られた。それに対し、比較例1の電池B1では、電池温度が350℃に達しても正極端子および負極端子間に電流が流れていた。これは、電池A1では、正極中の膨張性材料が約200℃で膨張して、正極集電体から正極合剤が剥離することで、電流が流れなくなったためと考えられる。電池B1における正極は、電池温度が350℃になるまで充電した後も、正極合剤の剥離および/または脱落はほとんど見られなかった。
また、電池A1では、2000サイクル充放電を繰り返した後も、約80%の高い容量維持率が得られた。
実施例2
(1)膨張性材料の調製
HOPG(第1炭素質材料)100質量部と、PVDF(結着剤)5質量部とを混合して、シート状に成形した。得られる成形物を、2枚のアルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)で挟持し、溶融塩電解質中に浸漬させた。成形物を溶融塩電解質に浸漬した状態で、アルミニウム箔間に5Vの電位を印加した。これにより、溶融塩電解質中のアニオンをHOPGの黒鉛型結晶構造の層間に挿入させ、これにより膨張性材料を生成させた。得られた膨張性材料を含むシート状成形物を、粉砕し、粉砕物を次工程に用いた。なお、溶融塩電解質としては、NaFSAと、MPPYFSAとを、1:9のモル比で混合したものを用いた。
なお、得られた膨張性材料において、HOPG100質量部に対するアニオンの量を実施例1に準じて求めたところ、約28質量部であった。
(2)正極の作製
NaCrO2(正極活物質)90質量部、上記(1)で得られた膨張性材料10質量部、アセチレンブラック(導電助剤)2.5質量部およびPVDF(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、正極合剤ペーストを調製した。得られた正極合剤ペーストを、アルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ15μmの正極合剤層を有する総厚50μmの正極を10枚作製した。なお、正極の一辺の一方の側端部には、集電用のリード片を形成した。
(3)溶融塩電池の組み立ておよび評価
上記(2)で得られた正極を用い、実施例1と同様にして溶融塩電池を組み立てた。得られた電池を用いて実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例2の電池A2は、実施例1と同様に、電池温度が約200℃で電流が流れなくなった。電流が流れなくなった後の電池の正極では、正極合剤が集電体から著しく剥離していた。
また、電池A2では、2000サイクル充放電を繰り返した後も、約80%の高い容量維持率が得られた。
(4)膨張性材料の熱膨張試験
市販の示唆熱−熱重量同時分析器を用いて、上記(1)で得られた膨張性材料の分析を行った。膨張性材料のサンプルの初期質量を100質量%とし、測定温度の変化に伴う質量変化を求めた。結果を図4に示す。図4は、測定温度変化に伴う膨張性材料の質量変化を示すグラフ(TG曲線)である。なお、図4には、HOPG(第1炭素質材料)のTG曲線も合わせて示した。
図4に示されるように、HOPGは、約30℃から約500℃まで測定温度を上げても、質量に変化が見られなかった。これに対し、膨張性材料は、温度が上昇するにつれて、100℃付近からわずかに質量が減少し、約200℃で急激に質量が低下した。その後、約350℃まで測定温度を上げても、質量の変化はほとんどみられなかった。
また、膨張性材料の膨張前の写真(倍率10倍)を図5aに、200℃に加熱して膨張させた後の写真を図5bに、それぞれ示す。図5aおよび図5bのスケールは同じである。膨張前に長さ0.5mmであった膨張性材料(図5a)は、200℃で加熱することにより、極めて大きく膨張し(図5b)、膨張した材料の長さは約50mmであった。
本発明の一実施形態によれば、溶融塩電池の電池反応を所定の温度で停止させることができるため、安定に電池反応を行うことができる温度範囲で電池を作動させることができる。よって、溶融塩電池は、例えば、家庭用または工業用の大型電力貯蔵装置、電気自動車またはハイブリッド自動車の電源などとして有用である。
100,200:電極
101,201:電極集電体
102,202:電極合剤
203:導電層
1:セパレータ
2:正極
2a:正極リード片
3:負極
3a:負極リード片
7:ナット
8:鍔部
9:ワッシャ
10:電池ケース
12:容器本体
13:蓋体
14:外部正極端子
16:安全弁
第1炭素質材料における黒鉛型結晶構造の発達の程度は、X線回折(XRD:X−ray diffraction)スペクトルで測定される(002)面の平均面間隔d002を指標として評価することもできる。第1炭素質材料は、平均面間隔d002が、0.337nm未満であることが好ましい。第1炭素質材料の平均面間隔d002がこのような範囲である場合、第1炭素質材料は、発達した黒鉛型結晶構造を有し、層間に多くのアニオンを挿入することができるため、膨張性材料をアニオンの熱分解で大きく膨張させ易い。平均面間隔d002の下限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.335nm以上とすることができる。
また、第1炭素質材料の平均比重は、例えば、2〜3g/cm3、好ましくは2.1〜2.25g/cm3程度である。
第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン(TEA+:tetraethylammonium cation)、メチルトリエチルアンモニウムカチオン(TEMA+:methyltriethylammonium cation)などのテトラアルキルアンモニウムカチオン(テトラC1-10アルキルアンモニウムカチオンなど)などが例示できる。
蓋体13の中央には、電ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。安全弁16を中央にして、蓋体13の一方側寄りには、蓋体13を貫通する外部正極端子14が設けられ、蓋体13の他方側寄りの位置には、蓋体13を貫通する外部負極端子が設けられる。

Claims (14)

  1. 電極集電体と、前記電極集電体にそれぞれ担持された電極活物質と導電剤とを含み、 前記導電剤は、加熱により膨張する膨張性材料を含み、
    前記膨張性材料は、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料と、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されたアニオンとを含み、
    前記アニオンは、100〜350℃で熱分解する溶融塩電池用電極。
  2. 前記アニオンは、ビススルホニルアミドアニオンである請求項1に記載の溶融塩電池用電極。
  3. 前記アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、およびビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の溶融塩電池用電極。
  4. 前記炭素質材料のラマンスペクトルで測定されるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比:D/Gは1以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の溶融塩電池用電極。
  5. 前記膨張性材料の量は、前記電極活物質100質量部に対して3〜50質量部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の溶融塩電池用電極。
  6. 前記アニオンの量は、前記炭素質材料100質量部に対して、3〜40質量部である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の溶融塩電池用電極。
  7. 前記電極集電体に担持された電極合剤を含み、
    前記電極合剤は、前記電極活物質および前記導電剤を含む混合物である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の溶融塩電池用電極。
  8. 前記電極集電体に担持された電極合剤、および前記電極集電体と前記電極合剤との間に介在する導電層を含み、
    前記電極合剤は前記電極活物質を含み、
    前記導電層は前記導電剤を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の溶融塩電池用電極。
  9. 正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、イオン伝導性を有する溶融塩電解質とを含み、
    前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方は、請求項1に記載の電極である溶融塩電池。
  10. 前記溶融塩電解質は、ナトリウムイオン伝導性を有する請求項9に記載の溶融塩電池。
  11. 電極活物質と黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極前駆体を形成する工程A1、
    前記電極前駆体を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B1、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
    前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記電極前駆体に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C1を含む溶融塩電池用電極の製造方法。
  12. 前記工程A1は、
    前記電極活物質および前記炭素質材料を含む混合物を、前記電極集電体に担持させることにより前記電極前駆体を形成する工程A1a、または
    前記炭素質材料を前記電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、前記導電層を覆うように前記電極活物質を前記電極集電体の表面に担持させることにより前記電極前駆体を形成する工程A1bである請求項11に記載の溶融塩電池用電極の製造方法。
  13. 黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料を、前記黒鉛型結晶構造における層間に挿入されるアニオンを含む溶融塩電解質に浸漬する工程B2、ここで、前記アニオンは、100〜350℃で熱分解するものであり、
    前記溶融塩電解質に浸漬した状態の前記炭素質材料に、金属ナトリウムに対して3.5〜4.5Vの電位を印加して、前記黒鉛型結晶構造における層間に前記アニオンを挿入することにより、前記炭素質材料を、加熱により膨張する膨張性材料に変換する工程C2、および
    前記膨張性材料を含む導電剤と電極活物質とをそれぞれ電極集電体に担持させることにより電極を形成する工程D2を含む溶融塩電池用電極の製造方法。
  14. 前記工程D2は、
    前記電極活物質および前記導電剤を含む混合物を、前記電極集電体に担持させることにより前記電極を形成する工程D2a、または
    前記導電剤を前記電極集電体の表面に担持させて導電層を形成し、前記導電層を覆うように前記電極活物質を前記電極集電体の表面に担持させることにより前記電極を形成する工程D2bである請求項13に記載の溶融塩電池用電極の製造方法。
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