(車両の概要)
以下に、本発明の切替バルブ付ポンプ装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、図1Aおよび図1Bを用いて本実施形態の切替バルブ付ポンプ装置100が搭載される車両1,8の駆動系の概略構成について説明する。なお、図1Bにおいて、図1Aと同一構成部は同一番号を付して詳細な説明を省略する。
図1Aに示すように、車両1は、四輪駆動車であり、エンジン2と、トランスミッション3と、副変速機4と、前輪Wfl,Wfr側のプロペラシャフト5Fと、後輪Wrl,Wrr側のプロペラシャフト5Rと、左前輪Wfl側のドライブシャフト6FLと、右前輪Wfr側のドライブシャフト6FRと、左後輪Wrl側のドライブシャフト6RLと、右後輪Wrr側のドライブシャフト6RRと、フロントLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)7Fと、センタLSD7Cと、リアLSD7Rと、3つの切替バルブ付ポンプ装置100とを備えて構成される。
各LSD7F,7C,7Rには、駆動力伝達用の多板クラッチ72および油圧式のシリンダ装置73を有する油圧式のクラッチ装置7(図4参照)が備えられている。
フロントLSD7Fは、エンジン2の駆動力を左前輪Wfl側のドライブシャフト6FLと右前輪Wfr側のドライブシャフト6FRとに配分するとともに、クラッチ装置7の係合力に応じて、左前輪Wfl側のドライブシャフト6FLと右前輪Wfr側のドライブシャフト6FRとの差動を制限する差動制限付き差動装置である。
センタLSD7Cは、前輪Wfl,Wfr側のプロペラシャフト5Fと後輪Wrl,Wrr側のプロペラシャフト5Rとに対してフロントLSD7Fと同様に作動する差動制限付き差動装置である。
リアLSD7Rは、左後輪Wrl側のドライブシャフト6RLと右後輪Wrr側のドライブシャフト6RRとに対してフロントLSD7Fと同様に作動する差動制限付き差動装置である。
副変速機4には、区画された2つの領域41a,41bの流体圧差に応じて駆動する油圧式のシリンダ装置41(図4参照)が備えられている。副変速機4のシリンダ装置41は、センタLSD7Cのクラッチ装置7を作動する切替バルブ付ポンプ装置100により作動する。
ここで、副変速機4の概略構造について図2を参照して説明する。副変速機4は、サンギヤ43、プラネタリギヤ44、プラネタリキャリア45およびリングギヤ46でなる遊星歯車機構を備えている。サンギヤ43は、トランスミッション3からの入力軸31の一端側に形成されている。リングギヤ46は、副変速機4のハウジング47の内壁に固定されている。入力軸31および出力軸21は、同軸で配置され、連結部材48を介してスプライン結合可能に構成されている。また、プラネタリキャリア45および出力軸21も、連結部材48を介してスプライン結合可能に構成されている。そして、連結部材48は、シリンダ装置41のピストン42に連結されたシフトフォーク49に係合されている。
例えば、図2の一点鎖線より上側に示すように、シリンダ装置41のピストン42が領域41a側に位置するときは、連結部材48を介して入力軸31および出力軸21は連結されるので、入力軸31に入力された駆動力の変速比は1/1であり、減速されずに出力軸21に出力するHiモードである。また、図2の一点鎖線より下側に示すように、シリンダ装置41のピストン42が領域41b側に位置するときは、連結部材48を介してプラネタリキャリア45および出力軸21は連結されるので、入力軸31に入力された駆動力の変速比はサンギヤ43、プラネタリギヤ44、リングギヤ46の歯数に応じた減速比で減速され出力軸に出力するLoモードである。そして、ピストン42の位置を領域41a側から領域41b側へ移動させることでHiモードからLoモードへ、領域41b側から領域41a側へ移動させることでLoモードからHiモードへ切り替えられる。
フロントLSD7Fと、フロントLSD7Fのクラッチ装置7を作動する切替バルブ付ポンプ装置100とにより、駆動力伝達装置が構成される。リアLSD7Rも同様である。センタLSD7Cと、副変速機4と、切替バルブ付ポンプ装置100と、トランスミッション3からの入力軸31とにより、駆動力伝達装置が構成される。
この車両1において、エンジン2等からの駆動力は、トランスミッション3、副変速機4を介してセンタLSD7Cに伝達される。そして、センタLSD7Cは、伝達された駆動力をプロペラシャフト5F,5Rに配分する。また、切替バルブ付ポンプ装置100から供給される作動油(本発明の「流体」に相当)により作動するクラッチ装置7の多板クラッチ72の係合力に応じて、プロペラシャフト5F,5Rの差動を制限する。
プロペラシャフト5F,5Rに配分された駆動力は、フロントLSD7FおよびリアLSD7Rに伝達される。フロントLSD7Fは、伝達された駆動力をセンタLSD7Cと同様の作用によりドライブシャフト6FL,6FRに配分する。リアLSD7Rは、伝達された駆動力をセンタLSD7Cと同様の作用によりドライブシャフト6RL,6RRに配分する。
図2に示す車両8は、図1に示す車両1のセンタLSD7Cの代わりに油圧式のカップリング装置9を備えて構成される。カップリング装置9には、駆動力伝達用の多板クラッチ72およびシリンダ装置73を有するクラッチ装置7が備えられている。そして、カップリング装置9と、カップリング装置9のクラッチ装置7を作動する切替バルブ付ポンプ装置100とにより、駆動力伝達装置が構成される。
このカップリング装置9は、前輪Wfl,Wfr側のプロペラシャフト5Fと後輪Wrl,Wrr側のプロペラシャフト5Rとの間に設けられ、クラッチ装置7の係合力に応じて前輪Wfl,Wfr側のプロペラシャフト5Fと後輪Wrl,Wrr側のプロペラシャフト5Rとに配分する装置である。
ここで、一例として、センタLSD7Cの詳細構造について図3を参照して説明する。図3に示すように、センタLSD7Cは、遊星歯車機構71と、多板クラッチ72と、シリンダ装置73と、ハウジング74等とを備えて構成される。
遊星歯車機構71は、サンギヤ71aと、プラネタリギヤ71bと、キャリア71cと、インターナルギヤ71dとを備える。多板クラッチ72は、インナプレート72aと、アウタプレート72bとを備える。シリンダ装置73は、シリンダ73aと、ピストン73bと、ロッド73cとを備える。
サンギヤ71aの中心には、前輪Wfl,Wfr側のプロペラシャフト5Fが嵌合されている。また、サンギヤ71aには、回転軸線方向に延びる円筒部71aaが形成されている。そして、この円筒部71aaの外周には、複数枚のインナプレート72aが所定間隔をあけて固定されている。
キャリア71cは、ハウジング74のプロペラシャフト5F側の端面74aと一体化されている。ハウジング74におけるプロペラシャフト5F側の端面74aとは反対側の端面74bには、回転軸線方向に延びる円筒部74bbが形成されている。そして、この円筒部74bbの内周には、副変速機4からの出力軸21が嵌合されている。
インターナルギヤ71dには、多板クラッチ72を覆ってサンギヤ71aの内周側に回り込む断面がU字状の円筒部71ddが形成されている。そして、サンギヤ71aの円筒部71aaの外周と対向する円筒部71ddの内周には、複数枚のアウタプレート72bがインナプレート72aと交互配置となるように固定されている。また、サンギヤ71aの円筒部71aaの内周と対向する円筒部71ddの内周には、後輪Wrl,Wrr側のプロペラシャフト5Rにギヤ機構を介して連結されたシャフト(図3では、便宜上5Rと表示する)が嵌合されている。このシャフト5Rは、プロペラシャフト5Fの中空内周部に貫通挿入されている。
シリンダ73aおよびピストン73bは、ハウジング74のプロペラシャフト5R側の端面74aの回転軸線方向外側に並列配置されている。そして、ロッド73cは、インナプレート72aとアウタプレート72bとを押圧して係合可能なように、プラネタリギヤ71b間に配置されている。
(駆動力伝達装置の概略構成)
次に、センタLSD7Cと、センタLSD7Cのクラッチ装置7を作動する切替バルブ付ポンプ装置100と、副変速機4とにより構成される駆動力伝達装置について図4を参照して説明する。
図4に示すように、切替バルブ付ポンプ装置100は、アクチュエータ110と、ロータリーポンプ120と、ロータリーバルブ130(本発明の「切替バルブ」に相当)と、変速装置140と、バルブ用駆動力断続装置150と、ポンプ用駆動力断続装置151と、位相検出機構160と、圧力検出機構170と、逆止弁180と、アキュムレータ190と、制御装置200と、第一〜第四流路P1〜P4と、給排油路P5等とを備えて構成される。なお、切替バルブ付ポンプ装置100の機械構成の詳細については後述する。
センタLSD7Cのクラッチ装置7のシリンダ装置73は、切替バルブ付ポンプ装置100と第一流路P1および第二流路P2で配管接続されている。なお、第一流路P1および第二流路P2は、配管途中で一本化されている。副変速機4のシリンダ装置41は、切替バルブ付ポンプ装置100と第三流路P3および第四流路P4で配管接続されている。また、切替バルブ付ポンプ装置100は、リザーバタンクTと給排油路P5で配管接続されている。
第一流路P1は、後述する通常モードにおいて、ロータリーポンプ120の回転駆動時に、ロータリーポンプ120から吐出される圧力に応じた作動油をクラッチ装置7のシリンダ装置73に供給し、ロータリーポンプ120の回転駆動の停止時に、シリンダ装置73内の作動油を切替バルブ付ポンプ装置100に戻すための流路である。
第二流路P2は、後述するロックモードにおいて、ロータリーポンプ120の回転駆動時に、ロータリーポンプ120から吐出された作動油を保持し、ロータリーポンプ120の回転駆動の停止時に、保持する作動油によってクラッチ装置7のシリンダ装置73に押圧力を付与するための流路である。
第三流路P3は、後述する副変速機切替モードにおいて、ロータリーポンプ120から吐出される作動油を副変速機4のシリンダ装置41の領域41aに供給し、また、シリンダ装置41の領域41bに作動油が供給されたとき、供給シリンダ装置41の領域41aから押し出される作動油を切替バルブ付ポンプ装置100に戻すための流路である。
第四流路P4は、副変速機切替モードにおいて、ロータリーポンプ120から吐出される作動油を副変速機4のシリンダ装置41の領域41bに供給し、また、シリンダ装置41の領域41aに作動油が供給されたとき、供給シリンダ装置41の領域41bから押し出される作動油を切替バルブ付ポンプ装置100に戻すための流路である。
排油路P5は、クラッチ装置7のシリンダ装置73又は副変速機4のシリンダ装置41から戻ってくる作動油をリザーバタンクTに戻すための流路である。
(切替バルブ付ポンプ装置の機械構成)
切替バルブ付ポンプ装置100の機械構成について、図を参照して説明する。図5に示すように、切替バルブ付ポンプ装置100は、上述のアクチュエータ110等の機械構成を、一体化された中空箱状のモータハウジングHm、第一ポンプハウジングHp1および第二ポンプハウジングHp2に回転軸方向に並べて収納した小型な装置に構成されている。
すなわち、アクチュエータ110は、中空箱状のモータハウジングHmに収納されている。ロータリーポンプ120、ロータリーバルブ130および変速装置140等は、第一ポンプハウジングHp1および第二ポンプハウジングHp2を合わせることで形成される空間内に収納されている。
図5に示すように、アクチュエータ110は、回転駆動するモータであり、ステータ111と、ロータ112と、回転軸113等とを備えている。
ステータ111は、コイル等で構成され、モータハウジングHmの内周に固定されている。ロータ112は、籠状に形成され、外周に永久磁石112aが配置され、籠内から回転軸113が突出するように籠の中心に回転軸113の端部が嵌合されている。
ロータ112は、ステータ111の内周側において、第一ポンプハウジングHp1の中心部に回転軸線方向に突設された円筒部Hp1aの外周側を回転可能に配置されている。すなわち、回転軸113における籠内の部分113aの外周が、円筒部Hp1aの内周にラジアル軸受114を介して回転可能に支持されている。
図5および図6に示すように、ロータリーポンプ120は、アクチュエータ110の回転駆動により、吸入した作動油を高圧にして吐出するポンプであり、カムリング121と、アウタロータ122と、インナロータ123等とを備えている。
カムリング121は、内周を外周に対して偏心させた扁平リング状に形成されている。
アウタロータ122は、カムリング121の内径および厚さと略同一の外径および厚さであって内歯122aを有するリング状に形成され、カムリング121の内周に回転可能に配置されている。内歯122aは、複数のトロコイド曲線によって構成されている。
インナロータ123は、アウタロータ122の厚さと略同一の厚さであって内歯122aと噛み合い可能な外歯123aを有するリング状に形成され、アウタロータ122の内周に回転可能に配置されている。外歯123aは、歯数が内歯122aの歯数より少ない複数のトロコイド曲線によって構成されている。インナロータ123の中心には、ポンプ用駆動力断続装置151を介してアクチュエータ110の回転軸113が一体回転可能に嵌合されている。
ロータリーポンプ120は、第一ポンプハウジングHp1の中心部に凹設された有底筒状の空間Hp1bに回転可能に挿入されたサイドプレート125と、第二ポンプハウジングHp2の中心部に凹設された有底筒状の空間Hp2bに回転可能に挿入されたロータリーバルブ130とに挟持されている。これにより、アウタロータ122およびインナロータ123は、径方向対向領域にポンプ室124を形成し、サイドプレート125およびロータリーバルブ130のポンプ室124側の回転軸線方向のプレート端面125cおよびバルブ端面130cは、ポンプ室124の両側壁を形成する。
サイドプレート125のうち反ポンプ室側の回転軸線方向のプレート端面125dの外周側には段部125ddが形成されている。この段部125ddと当該段部125ddに対向する第一ポンプハウジングHp1との間には、ポンプ室124から吐出される作動油を流入させると共に、当該作動油の圧力でサイドプレート125に対してロータリーポンプ120側への押圧力を付与するための背圧室125eが設けられている。
ロータリーポンプ120の動作時は流体が高圧になるため、ロータリーポンプ120とサイドプレート125との間やロータリーポンプ120とモータハウジングHm、第一ポンプハウジングHp1および第二ポンプハウジングHp2との間に隙間が生じると流体が漏れるおそれがあるが、背圧室125eによる押圧力によりサイドプレート125とモータハウジングHm、第一ポンプハウジングHp1および第二ポンプハウジングHp2の位置関係を維持することができ、上記隙間からの流体の漏れを防止することができる。
サイドプレート125、ロータリーポンプ120のカムリング121およびロータリーバルブ130は、ピン127により結合されている。サイドプレート125のプレート端面125dおよびプレート周面125fと第一ポンプハウジングHp1との間には、シールリング125gが嵌め込まれている。そして、第一、第二ポンプハウジングHp1,Hp2に対してサイドプレート125、ロータリーポンプ120およびロータリーバルブ130を回転軸線方向に両側から挟み込むように配置された一対のスラスト軸受126を備えている。これにより、サイドプレート125、ロータリーポンプ120およびロータリーバルブ130は、一体的にガタ無くスムーズに回転可能となる。
サイドプレート125およびロータリーバルブ130におけるポンプ室124の両側壁125c、130cには、三日月状の吸入側溝125a,130aおよび吐出側溝125b,130bが、ポンプ室124の両側壁125c,130cの円周方向に沿って所定間隔をおいてそれぞれ凹陥形成されている。吸入側溝125a,130aおよび吐出側溝125b,130bが形成されている位置は、外歯123aと内歯122aとの間に形成される空間が移動する軌跡に形成されている。
ロータリーバルブ130には、吸入側溝130aの底部からポンプ室124に連通する吸入流路131が形成されている(図5、図7および図8参照)。吸入流路131が吸入側溝130aの底部に連通している位置は、外歯123aと内歯122aとの間に形成される空間が、最初に吸入側溝130aを通過する吸入側溝130aの始端部である。また、ロータリーバルブ130には、吐出側溝130bの底部からポンプ室124に連通する吐出流路132が形成されている(図5、図7および図8参照)。吐出流路132が吐出側溝130bの底部に連通している位置は、吐出側溝130bの中間部である。
このロータリーポンプ120は、アクチュエータ110が回転駆動すると、インナロータ123が図6の反時計回りに回転し、内歯122aで外歯123aと噛合しているアウタロータ122も図6の反時計回りに回転する。すると、外歯123aと内歯122aとの間に形成される空間が、吸入側溝130aから吐出側溝130bに移動し、ポンプ室124の吸入側の圧力よりもポンプ室124の吐出側の圧力が高くなるので、吸入流路131から吐出流路132に作動油が給送される。
ロータリーバルブ130は、アクチュエータ110の回転駆動で位相を変えることにより、ポンプ室124から吐出された作動油の複数の行先を切替可能であり、また、ポンプ室124の吸入側に連通させる複数の戻り先を切替可能な切替バルブである。これにより、流体をスムーズに戻して再利用することができる。
ロータリーバルブ130は、ポンプ室124の吐出側を第一流路P1に連通させる通常モードと、ポンプ室124の吐出側を第二流路P2に連通させるロックモードと、ポンプ室124の吐出側および吸入側のそれぞれを第三、第四流路P3,P4のそれぞれに連通させることでシリンダ装置41を駆動する副変速機切替モードとを切替可能な切替バルブである。
図5、図7および図8に示すように、ロータリーバルブ130の中心には、変速装置140のサンギヤ141の回転軸線方向に延びる円筒部141aが隙間をあけて挿通可能な孔130gが穿設されている。
ロータリーバルブ130の内部には、上述の吸入流路131および吐出流路132が形成されている。ここで、吸入流路131の吸入側溝130a内の開口131aと吐出流路132の吐出側溝130b内の開口132aとが、図8に示す左右方向に位置しているときの吸入流路131および吐出流路132の経路を説明する。
吸入流路131は、吸入側溝130a内の開口131aから回転軸線方向に反対側のバルブ端面130dに向かってロータリーバルブ130の約半分の厚さの位置まで延び、そこで直角斜め右下方に折れ曲がってバルブ外周まで延びて開口し、また、バルブ外周130eに達する前に上記回転軸線方向に折れ曲がって分岐し、バルブ端面130dまで延びて開口する経路となっている。分岐した流路は、作動油をリザーバタンクTに排出するためのドレイン用流路131cである。
すなわち、リザーバタンクT内の作動油は、吸排油路P5を通ってバルブ外周130eの開口131dからロータリーバルブ130内に入り、吸入流路131を通って開口131aからポンプ室124に吸入される。また、シリンダ装置73からの作動油は、第一流路P1を通ってドレイン用流路131cからバルブ外周130eに延びる吸入流路131を通り、バルブ外周130eの開口131dから吸排油路P5を通ってリザーバタンクTに排出される。
吐出流路132は、吐出側溝130b内の開口132aから回転軸線方向に反対側のバルブ端面130dに向かってロータリーバルブ130の約半分の厚さの位置まで延び、そこで直角斜め左上方に折れ曲がってバルブ外周130eに達する前に上記回転軸線方向に折れ曲がり、バルブ端面130dまで延びて開口する経路となっている。すなわち、ドレイン用流路131cのバルブ端面130dの開口131bと、吐出流路132のバルブ端面130dの開口132bとは、ロータリーバルブ130の中心に対し点対称となる位置(円周方向に180度隔てた位置)に穿設されている。
ロータリーバルブ130のバルブ端面130dには、ポンプ室124から吐出される作動油を流入させる周方向溝133が設けられている。この周方向溝133は、連通された圧力検出機構170によりポンプ室124から吐出される作動油の複数の行先毎の圧力を検出するために設けられている。このため、周方向溝133は、吐出流路132の途中から分岐した圧力検出用流路132cと連通している。
周方向溝133の外側および内側には、周方向溝133からの作動油の漏れを防止するためシールリング134が嵌め込まれている。このような環状の溝とすることにより、ロータリーバルブ130が回転しても1つの圧力検出機構170で全ての行先毎の圧力を検出することができる。なお、圧力検出機構170としては、静電容量や歪等を利用した圧力検出センサがある。
さらに、ロータリーバルブ130のバルブ端面130dには、変速装置140の4つのプラネタリギヤ142の各隙間に挿入されて変速装置140と同軸で回転するための4つの凸部135が等角度間隔で突設されている。
ロータリーバルブ130のバルブ外周130eには、位相検出機構160を構成する径方向断面が楔状の凹所161が45度間隔で設けられている。この凹所161は、位相検出機構160を構成する位置検出センサ162と協働してロータリーバルブ130の回転位相を検出するとともに位置決めするために設けられている。すなわち、凹所161および位置検出センサ162は、ロータリーバルブ130の回転位相検出および位置決めのために、ロータリーバルブ130を第一ハウジングHp1に対し回転拘束する状態と、ロータリーバルブ130の流路131等の切替のために、ロータリーバルブ130を第一ハウジングHp1に対し解放する状態とを切替可能な制動装置として機能する。
このような三角柱状の凹みに位相検出センサ162を差し込むことにより、ロータリーバルブ130が図の反時計回りに回転しようとしたとき、位相検出センサ162が凹所161の壁に当接するので反時計回りの回転を阻止することができ、ロータリーバルブ130の回転位相を検出することができるとともに位置決めすることができる。これにより、ポンプ室124から吐出された流体の複数の行先を確実に切り替えることができる。
図5、図7および図9に示すように、第二ポンプハウジングHp2には、ロータリーバルブ130に設けられた吸入流路131に連通可能な連通吸入流路136が設けられ、ドレイン用流路131cに連通可能な連通ドレイン用流路136c、第一吸排流路139aおよび第二吸排流路139bが設けられている。また、吐出流路132に連通可能な通常吐出流路137およびロック吐出流路138が設けられている。なお、吐出流路132には、第一吸排流路139aおよび第二吸排流路139bも連通可能である。さらに、圧力検出用流路132cに常時連通する連通圧力検出用流路137cが設けられている。
第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの内周には、ロータリーバルブ130を回転して所定の位相に位置決めしたとき、吸入流路131のバルブ外周130eの開口131dと一致する連通吸入流路136の開口136aが設けられている。さらに、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部には、上記位相位置決めのとき、ドレイン用流路131cのバルブ端面130dの開口131bと一致する連通ドレイン用流路136cの開口136d、および吐出流路132のバルブ端面130dの開口132bと一致する連通吐出流路137の開口137aが設けられている。
すなわち、連通ドレイン用流路136cの開口136dおよび通常吐出流路137の開口137aの位置関係は、ドレイン用流路131cの開口131bおよび吐出流路132の開口132bの位置関係と同一であり、空間Hp2bの底部において円周方向に上下に180度隔てた位置に穿設されている。上記開口同士136d,131bおよび137a,132bが一致したとき、位相検出センサ162は、所定の凹所161に差し込まれ回転位相を検出するとともに位置決めする。
さらに、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部には、ロータリーバルブ130を上記開口同士136d,131bおよび137a,132bが一致した状態から図の時計回りもしくは反時計回りに90度回転したとき、ドレイン用流路131cのバルブ端面130dの開口131bおよび吐出流路132のバルブ端面130dの開口132bと一致する第一吸排流路139aの開口139cおよび第二吸排流路139bの開口139dが設けられている。
すなわち、第一吸排流路139aの開口139cおよび第二吸排流路139bの開口139dの位置関係は、ドレイン用流路131cの開口131bおよび吐出流路132の開口132bの位置関係と同一であり、空間Hp2bの底部において円周方向に左右に180度隔てた位置(連通ドレイン用流路136cの開口136dおよび通常吐出流路137の開口137aの位置関係に対し円周方向に90度ずれた位置)に穿設されている。上記開口同士139c,131bおよび139d,132bが一致したとき、位相検出センサ162は、凹所161に差し込まれ回転位相を検出するとともに位置決めする。
さらに、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部には、ロータリーバルブ130を上記開口同士136d,131bおよび137a,132bが一致した状態から図の反時計回りに45度回転したとき、吐出流路132のバルブ端面130dの開口132bと一致するロック吐出流路138の開口138aが設けられている。この場合、連通ドレイン用流路136cの開口136dおよび通常吐出流路137の開口137aは、バルブ端面130dに設けられている蓋130fにより閉じられるようになっている。
また、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部には、ロータリーバルブ130の周方向溝133に常時一致する連通圧力検出用流路137cの開口137dが設けられている。
次に、連通吸入流路136、連通ドレイン用流路136c、通常吐出流路137、ロック吐出流路138、第一吸排流路139a、第二吸排流路139b、連通圧力検出用流路137cの経路を説明する。
連通吸入流路136は、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの内周の開口136aから径方向下方に第二ポンプハウジングHp2の底面まで延びて開口する経路となっている。
連通ドレイン用流路136cは、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部の開口136dから回転軸線方向に空間Hp2bが設けられたハウジング端面とは反対側のハウジング端面に向かって第二ポンプハウジングHp2の約半分の厚さまで延び、そこで直角右方向に折れ曲がってハウジング側面に達する前に直角上方に折れ曲がり、通常吐出流路137に設けられているバルブ孔137bに連通する経路となっている。連通ドレイン用流路136cのバルブ孔137bに連通する口がドレイン口136eとなっている。
通常吐出流路137は、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部の開口137aから回転軸線方向に空間Hp2bが設けられたハウジング端面とは反対側のハウジング端面に向かって第二ポンプハウジングHp2の約半分の厚さまで延び、そこで直角右方向に折れ曲がってハウジング側面に形成されているバルブ孔137bに至る経路となっている。このバルブ孔137bには、第一流路P1に繋がるフローコントロールバルブ152が備えられている。
フローコントロールバルブ152には、作動油を供給する状態において、フローコントロールバルブ152のクラッチ装置7側(第一流路P1側)の作動油の圧力をロータリーバルブ130側(通常吐出流路137側)の作動油の圧力より大きくする絞り152aが設けられている。
フローコントロールバルブ152は、ロータリーバルブ130が通常モードであってロータリーポンプ120の停止時に、バルブ孔137b内において圧縮バネ152bの復元力によって、通常吐出流路137側へ付勢されている。また、フローコントロールバルブ152は、ロータリーバルブ130が通常モードであってロータリーポンプ120の駆動時に、作動油の圧力差によって、圧縮バネ152bの復元力に抗してドレイン口136eを閉じる位置へ移動する。
つまり、フローコントロールバルブ152は、ドレイン口136eを閉じることでロータリーポンプ120の吐出側からクラッチ装置7側へ作動油を供給する状態と、ドレイン口136eを開くことでクラッチ装置7側からロータリーポンプ120の吸入側へ排出する状態とを切替可能なバルブである。これにより、流体を切替先にスムーズに供給することができるとともに、切替先から流体の圧力を急激に低下させることができ、駆動力伝達装置を高速に動作させることができる。
ロック吐出流路138は、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部の開口138aから回転軸線方向に空間Hp2bが設けられたハウジング端面とは反対側のハウジング端面に向かって第二ポンプハウジングHp2の約半分の厚さまで延び、そこで直角上方に折れ曲がり、ハウジング上面に備えられ第二流路P2に繋がる逆止弁180に至る経路となっている。
逆止弁180は、圧縮バネ182の作用で弁体181をロック吐出流路138の吐出口に常時押付けており、ロータリーポンプ120の停止時にロータリーポンプ120側への作動油の逆流を規制し、ロータリーポンプ120の駆動時にクラッチ装置7側への作動油の供給を許容する弁である。これにより、ロックモード時において流体の漏れを抑制することができ、流体の圧力を長時間に亘って維持することができる。
第一吸排流路139aおよび第二吸排流路139bは、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部の開口139c、139dから回転軸線方向に空間Hp2bが設けられたハウジング端面とは反対側のハウジング端面に延びて開口する経路となっている。
連通圧力検出用流路137cは、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2bの底部の開口137dから回転軸線方向に空間Hp2bが設けられたハウジング端面とは反対側のハウジング端面に向かって第二ポンプハウジングHp2の約半分の厚さまで延び、そこで直角左方向に折れ曲がってハウジング側面に延びて開口する経路となっている。
図5、図7および図10に示すように、変速装置140は、アクチュエータ110の回転駆動力をロータリーポンプ120に対し伝達するときの減速比を、ロータリーバルブ130に対し伝達するときの減速比より大きくする減速機である。変速装置140は、ロータリーバルブ130が挿入されている第二ポンプハウジングHp2の中心部に凹設された有底筒状の空間Hp2bよりさらに奥側に凹設された有底筒状の空間Hp2cに回転可能に嵌め込まれている。
変速装置140は、サンギヤ141と、4つのプラネタリギヤ142と、インターナルギヤ143とを備える。
サンギヤ141には、回転軸線方向に延びる円筒部141aが形成されている。そして、この円筒部141aの内周には、バルブ用駆動力断続装置150を介してアクチュエータ110の回転軸113が一体回転可能に嵌合されている。
4つのプラネタリギヤ142は、サンギヤ141に等角度間隔で噛み合わされている。そして、プラネタリギヤ142のサンギヤ141回りの公転に伴ってロータリーバルブ130が回転可能なように、プラネタリギヤ142間には、ロータリーバルブ130の凸部135が挿入されている。
インターナルギヤ143は、第二ポンプハウジングHp2の空間Hp2cの内周に一体で設けられている。インターナルギヤ143には、4つのプラネタリギヤ142が等角度間隔で噛み合わされている。なお、インターナルギヤ143を第二ポンプハウジングHp2とは別体で設けて第二ポンプハウジングHp2とピン結合するようにしてもよい。
バルブ用駆動力断続装置150は、ロータリーバルブ130に対してアクチュエータ110の図に示す時計回りの回転駆動力を伝達する状態と反時計回りの回転駆動力を遮断する状態とを切替可能なワンウェイクラッチである。ポンプ用駆動力断続装置151は、ロータリーポンプ120に対してアクチュエータ110の図に示す反時計回りの回転駆動力を伝達する状態と時計回りの回転駆動力を遮断する状態とを切替可能なワンウェイクラッチである。
これにより、ロータリーポンプ120とロータリーバルブ130を確実に切り替えて回転駆動させることができる。そして、ロータリーポンプ120の回転駆動とロータリーバルブ130の回転駆動を同時に動作させることはなく、流体を所定の行先に確実に供給することができる。なお、ワンウェイクラッチの代わりに、摩擦プレート型のクラッチを用いることも可能である。
図7に示すように、位相検出機構160は、径方向断面が楔状の凹所161と、位相検出センサ162とにより構成される。凹所161は、ロータリーバルブ130のバルブ外周130eに45度間隔で設けられている。位相検出センサ162は、渦電流や磁気等を利用したセンサであり、センサ部分が第二ポンプハウジングHp2の側面に固定され、先端部分がバネ163により第二ポンプハウジングHp2の内周面から径方向内方への突出量を可変にするように設けられている。
ロータリーポンプ120の動作時はロータリーバルブ130に高圧が掛かるため、バルブ用駆動力断続装置150のみではロータリーバルブ130が空回りするおそれがある。しかし、位相検出センサ162に対して周方向に係止する凹所161を設けているので、ロータリーバルブ130の空回りを阻止することができる。
図7に示すように、逆止弁180は、弁体181と、圧縮バネ182とにより構成される。弁体181は、ロータリーポンプ120の停止時は、圧縮バネ182のバネ力によりロック吐出流路138の吐出口に常時押付けられている。これにより、ロック吐出流路138への作動油の逆流を規制することができる。
また、弁体181は、ロータリーポンプ120の駆動時は、ロック吐出流路138から吐出される作動油により圧縮バネ182のバネ力に抗してロック吐出流路138の吐出口から離間される。これにより、クラッチ装置7側への作動油の供給を許容することができる。
図4に示すように、アキュムレータ190は、第二流路P2に接続され、第二流路P2内の作動油の圧力が所定圧以上の場合に当該作動油を蓄え、ロータリーポンプ120の停止時に、第二流路P2内の作動油の圧力が減少した場合に第二流路P2に対し蓄えた作動油を排出する蓄圧装置である。これにより、流体の圧力を長時間に亘って維持することができる。よって、ロータリーポンプ120の駆動を長時間停止することができ、駆動力伝達装置の消費電流を抑制することができる。
図4に示すように、制御装置200は、通常モード、ロックモードおよび副変速機切替モードに応じて、位相検出機構160で検出したロータリーバルブ130の位相に基づいて、アクチュエータ110の回転駆動を制御し、圧力検出機構170で検出した作動油の圧力に基づいて、アクチュエータ110の回転駆動を制御する機能を備えている。これにより、流体の行先が正確となるようにアクチュエータを的確に駆動制御することができる。また、流体の圧力が適正となるようにアクチュエータを的確に駆動制御することができる。
(切替バルブ付ポンプ装置の動作)
次に、切替バルブ付ポンプ装置100の通常モード、ロックモードおよび副変速機切替モードの各動作について図を参照して説明する。
通常モードにおいては、図11Aに示すように、ロータリーバルブ130の吸入流路131の開口131dは、連通吸入流路136の開口136aと一致しているとともに、ドレイン用流路131cの開口131bは、連通ドレイン用流路136cの開口136dと一致している。また、ロータリーバルブ130の吐出流路132の開口132bは、通常吐出流路137の開口137aと一致している。
この状態でロータリーポンプ120を回転駆動すると、リザーブタンクT内の作動油は、連通吸入流路136から吸入流路131を通ってポンプ室124内に吸入される。ポンプ室124内で高圧にされた作動油は、吐出流路132から通常吐出流路137を通ってフローコントロールバルブ152に吐出される。
そして、図11Bに示すように、作動油がフローコントロールバルブ152の絞り152aを通過することにより生じる圧力差によって、フローコントロールバルブ152は、ドレイン口136eを閉じる位置へ移動する。フローコントロールバルブ152を通過した作動油は、第一流路P1を通ってクラッチ装置7のシリンダ装置73に供給され、圧力検出機構170の圧力検出信号に従って多板クラッチ72を所定の圧力で係合させる。以降、多板クラッチ72を所定の圧力で係合するように、圧力検出機構170の圧力検出信号に従ってロータリーポンプ120の回転駆動を制御する。
図11Cに示すように、ロータリーポンプ120の回転駆動を停止すると、フローコントロールバルブ152内の圧力差が無くなるので、フローコントロールバルブ152は、圧縮バネ152bの復元力によりドレイン口136eを開く位置へ移動する。クラッチ装置7のシリンダ装置73内の作動油は、第一流路P1からドレイン口136eおよびドレイン用流路131cを通ってリザーブタンクTに戻される。以上により通常モードが終了する。
ロックモードにおいては、図12Aに示すように、ロータリーバルブ130のドレイン用流路131cの開口131bは、蓋130fにより閉じられている。また、ロータリーバルブ130の吐出流路132の開口132bは、ロック吐出流路138の開口138aと一致している。
この状態では、フローコントロールバルブ152の第一流路P1側および通常吐出流路137側並びにドレイン口136e側は、全て閉鎖されているので、フローコントロールバルブ152に存在する油圧は、クラッチ装置7のシリンダ装置73およびアキュムレータ190の油圧に等しい状態になる。
この状態でロータリーポンプ120を回転駆動すると、図12Bに示すように、リザーブタンクT内の作動油は、連通吸入流路136から吸入流路131を通ってポンプ室124内に吸入される。ポンプ室124内で高圧にされた作動油は、吐出流路132からロック吐出流路138を通って逆止弁180を開ける。
そして、逆止弁180を通過した作動油は、第二流路P2を通ってクラッチ装置7のシリンダ装置73に供給され、圧力検出機構170の圧力検出信号に従って多板クラッチ72を所定の圧力で係合させる。多板クラッチ72が所定の圧力で係合すると、逆止弁180を通過した作動油は、アキュムレータ190に供給される。圧力検出機構170の圧力検出信号に従ってアキュムレータ190の圧力が所定圧になると、ロータリーポンプ120の回転駆動を停止する。
図12Cに示すように、吐出流路132からロック吐出流路138を通る作動油の供給が停止すると、逆止弁180は圧縮バネ182の復元力により閉じる。そして、多板クラッチ72の圧力が低下すると、アキュムレータ190から作動油が供給され、多板クラッチ72を所定の圧力で係合させる。そして、アキュムレータ190の圧力が低下したら、ロータリーポンプ120を再度回転駆動し、ロックモードが終了するまで上述の動作を繰り返す。
副変速機切替モード(Hi)においては、図13Aに示すように、ロータリーバルブ130の吐出流路132の開口132bは、第二吸排流路139bの開口139dと一致しているとともに、ドレイン用流路131cの開口131bは、第一吸排流路139aの開口139cと一致している。また、ロータリーバルブ130の吸入流路131の開口131dは、閉じている。
この状態でロータリーポンプ120を回転駆動すると、シリンダ装置4の領域41a内の作動油は、第三流路P3から第一吸排流路139aおよびドレイン用流路131cを通ってポンプ室124内に吸入される。そして、ポンプ室124内の作動油は、吐出流路132から第二吸排流路139bおよび第四流路P4を通って副変速機4のシリンダ装置4の領域41bに供給され、ピストン42を領域41a側に移動して変速Hiに切り替える。以上により副変速機切替モード(Hi)が終了する。
副変速機切替モード(Lo)においては、図13Bに示すように、ロータリーバルブ130の吐出流路132の開口132bは、第一吸排流路139aの開口139cと一致しているとともに、ドレイン用流路131cの開口131bは、第二吸排流路139bの開口139dと一致している。また、ロータリーバルブ130の吸入流路131の開口131dは、閉じている。
この状態でロータリーポンプ120を回転駆動すると、シリンダ装置4の領域41b内の作動油は、第四流路P4から第二吸排流路139bおよびドレイン用流路131cを通ってポンプ室124内に吸入される。そして、ポンプ室124内の作動油は、吐出流路132から第一吸排流路139aおよび第三流路P3を通って副変速機4のシリンダ装置4の領域41aに供給され、ピストン42を領域41b側に移動して変速Loに切り替える。以上により副変速機切替モード(Lo)が終了する。
本実施形態の切替バルブ付ポンプ装置によれば、アクチュエータ110の回転駆動力をロータリーポンプ120に対し伝達するときの減速比を、ロータリーバルブ130に対し伝達するときの減速比より大きくしているので、1つのアクチュエータ110でロータリーポンプ120およびロータリーバルブ130の回転駆動をそれぞれ行うことができる。よって、切替バルブ付ポンプ装置100を簡易に制御することができ、ポンプ効率の向上およびバルブ位置決め精度の向上を両立させることができる。
(その他)
なお、上述の実施形態では、ロータリーポンプ120のカムリング121を別体で設けたが、カムリング121の形状をサイドプレート125に設けても良い。これにより、ロータリーポンプ120とロータリーバルブ130との間の油漏れを低減し、サイドプレート125およびロータリーバルブ130の一体回転をよりスムーズに行うことができる。
また、上述の実施形態では、アクチュエータ110とロータリーポンプ120とロータリーバルブ130と変速装置140とを一体化したが、アクチュエータ110にロータリーポンプ120を直結し、ギヤ機構(変速装置140)やベルト・プーリ機構等を介してアクチュエータ110とロータリーバルブ130とを連結するように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、ロータリーバルブ130の回転位相を位相検出機構160で検出する構成としたが、アクチュエータ110にロータリーエンコーダを備え、もしくはアクチュエータ110としてステッピングモータを用いて回転位相を検出する構成としてもよい。また、ロータリーバルブ130内の作動油の圧力を圧力検出機構170で検出する構成としたが、アクチュエータ110の駆動電流により作動油の圧力を検出する構成としてもよい。
また、上述の実施形態では、変速装置140として減速機を用いてロータリーバルブ130を回転するように構成したが、変速装置140として増速機を用いてロータリーポンプ120を回転するように構成してもよい。これにより、変速装置140を簡易な構成とすることができるので、切替バルブ付ポンプ装置100の低コスト化を図ることができる。また、変速装置140として第一減速機を用いてロータリーポンプ120を回転し、第一減速機より減速比が大きい第二減速機を用いてロータリーバルブ130を回転するように構成してもよい。これにより、ロータリーポンプ120のポンプ圧を高めることができる。