JP2015086470A - 非水電解液環境での溶出量の少ないステンレス鋼板およびその製造方法ならびに非水電解液二次電池の外装部材 - Google Patents

非水電解液環境での溶出量の少ないステンレス鋼板およびその製造方法ならびに非水電解液二次電池の外装部材 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解液環境で良好な耐食性・耐溶出性を有する、金属空気二次電池の外装材に好適なステンレス鋼を提供する。【解決手段】不働態皮膜中の平均Crカチオン分率が20〜60%、平均Niカチオン分率が5%未満であり、含水量が20ppm〜10%の非水電解液中において、自然電位に保持した際の電流値が10μA・cm−2未満であることを特徴とする、ステンレス鋼板。【選択図】 なし

Description

本発明は、耐溶出性が重要となる次世代電池用材料などに好適な、非水電解液環境における電解液への母材溶出量が少ないステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、金属塩を正極として用いる電池の中においても、特に高いエネルギー密度を有することから、小型の携帯情報端末用電源、大型の定置型電源やハイブリッド自動車用のバッテリーなど様々な用途に広く用いられている。
これらリチウムイオン二次電池などの非水電解液を内包する外装材として、従来から軽量で比強度の高いアルミニウム系材料が使用されている。軟質で加工性が良く、リチウムイオン二次電池で広く用いられる電解質に含有されるフッ素系イオンに対して、高い耐食性を示す材料である。しかし、アルミニウム系材料は、塩化物を含む大気環境および水環境での耐食性に劣る。また、突き刺し強度も十分ではない。そのため、アルミニウム系材料を外装材として用いる場合は、アルミニウム箔にラミネート加工を施し、積層フィルムとして用いるのが一般的である。
リチウムイオン二次電池の理論エネルギー密度は1000Wh/Lが限界とされている。そこで、更なる高エネルギー密度を有する革新型電池の開発が進められている。その候補として金属空気電池がある。金属空気電池は、亜鉛空気一次電池として実用化されている。亜鉛より卑な金属、例えばリチウムなどを用い、二次電池化を達成することで極めて高いエネルギー密度を実現可能であり、その実用化・高効率化に向け、様々な検討が活発に行われている。
金属空気電池では、外界から空気を導入して電解液中の金属イオンと反応させて発電するという機構上、大気中に存在する水分の電解液中への混入を避けることは非常に困難である。ここで、電解液中に混入した水分と大気中のCOが反応し、炭酸が形成されることが予想される。排気ガスなどが原因で大気中にNO、SOが存在する場合は、それぞれが非水電解液中に混入した水分と反応し、硝酸と硫酸が生成される可能性がある。加えて、外界からの飛来塩分が混入した場合は塩分が電解液中の水分に溶解し、酸性の塩化物環境を形成する可能性がある。したがって、実用される金属空気電池用の外装材は、厳しい腐食性環境に曝されることになり、かつ使用される期間が長いほど腐食性環境は厳しくなっていくことが推測される。
金属空気電池用の外装材としても、リチウムイオン二次電池と同様に、ラミネート加工を施したアルミニウム系材料を用いることが可能と推定されている。しかし、実用上では金属空気電池用の非水電解液環境とは炭酸、硝酸、硫酸の混在した低pHの微量水分を含む環境であり、更に塩化物が混入した腐食性の強い環境となることも想定される。こうした環境においてアルミニウム系材料は耐食性を有しておらず、ラミネート部分で耐食性を担保しなければならない。すなわち、ラミネート部分のわずかな欠陥や経年劣化から母材に腐食が発生し、液漏れに繋がる可能性が高いという問題がある。
そこで、これらの硝酸イオン・硫酸イオンを含む塩化物環境において高い耐食性を示し、突き刺し強度も高いステンレス鋼を、金属空気電池のケース材として用いることが検討されている。ステンレス鋼を用いる場合、突き刺し強度・耐食性に優れるため、ラミネート加工を省略できるだけでなく、剛性に優れることから、充放電サイクルに伴う内圧変化による変形を抑制できる。これは金属空気電池を積層して使用する場合、充放電特性および安全性を大きく改善することが可能である。
電池外装材用ステンレス鋼や非水電解液用ステンレス鋼に関する先行技術として、以下のものがある。
特許文献1には、表層の窒素濃度を低減し、加工性を改善した電池外装材用ステンレス鋼が開示されている。しかし、これはラミネート加工を前提としたものであり、ステンレス鋼自体の非水電解液中での耐食性や耐溶出性を改善するものではない。
特開2004−52100号公報
本発明の課題は、金属空気電池用の外装材としてアルミニウム系材料を用いた場合に、必須となるラミネート加工を省略した、無垢の金属材料のみで構成された金属空気電池用の外装材を提供することである。
これにより、ラミネート加工分の原料費・工程数を削減して製造コストを低減できるのみならず、軽量化・省スペース化を達成できる。金属材料としてアルミニウム系材料より高強度の材料を用いた場合、内圧による電池の変形を抑制することも可能である。大型電源に金属空気電池を適用する場合、複数のセルを積層して使用するため、これらのメリットは更に大きくなる。
金属空気電池用の外装材として無垢の金属材料を適用する場合に課題となるのは、前述した非水電解液中に形成された腐食性環境への耐食性および耐溶出性、そして電池ケースとして求められる強度を同時に満たすことである。
ステンレス鋼はアルミニウム系材料と比較して高強度であるため、電池ケースとして要求される強度を確保することが容易であり、材料コストも安い。また、酸性の塩化物環境、特に硝酸を含む環境において高い耐食性を有する材料である。ある程度のCrを含む一般的なステンレス鋼(例えばSUS304)を用いる場合、金属空気電池用の非水電解液中に形成される腐食性環境において、貫通腐食が発生する可能性は極めて低い。
しかしながら、電池に用いられる電解液では、わずかなコンタミでも顕著に電池反応に影響が出ることがあり、無垢の金属材料を用いる場合、極めて高い耐溶出性が要求される。一般的なステンレス鋼は、本環境で腐食に至ることは考えにくいものの、わずかにFe、Cr、Niが非水電解液中に溶出し、電池反応を阻害する可能性がある。
そこで、本発明の目的は、上記の問題を解決し、金属空気電池用の外装材として要求される強度・加工性を有し、非水電解液中に形成される腐食環境において腐食が発生しないのみならず、非水電解液への汚染がない、新規なステンレス鋼を提供するものである。
発明者らは、詳細な研究の結果、電解処理、浸漬処理または雰囲気焼鈍により、ステンレス鋼の表面に形成された不働態皮膜を非水電解液環境に最適化することで、耐溶出性を付加し、金属空気電池用の外装材として好適なステンレス鋼を提供可能なことを見出した。
すなわち本発明は、不働態皮膜中の平均Crカチオン分率が20〜60%、平均Niカチオン分率が5%未満であり、含水量が10ppm〜10%の非水電解液中において、自然電位に保持した際の電流値が10μA・cm−2未満であることを特徴とする、非水電解液での溶出量の少ないステンレス鋼板である。
第2の発明は、上記非水電解液での溶出量の少ないステンレス鋼板よりなる、非水電解液二次電池の外装部材である。
第3の発明は、TFSI、TFSA、BETI、PF、BF、CHSO、CFCO、CFSO、(CFSON、(CSON、(CPFのいずれかをアニオンとするイオン液体またはそのイオン液体と有機溶媒との混合液中において、10〜100℃、0.6〜2V.Ag/Agで0.5〜90min.の定電位保持を行うことを特徴とする、非水電解液での溶出量の少ないステンレス鋼板の製造方法である。
本発明の接点材料用ステンレス鋼板は、大気中あるいは水溶液中で形成された不働態皮膜から非水電解液中での定常状態における不働態皮膜へと変質する際における、電解液中への金属イオンの溶出が発生しない。また、金属空気二次電池環境において良好な耐食性を有しており、強度・加工性も従来のステンレス鋼と同様で外装材として適用可能なレベルである。さらに、製品としての加工後においても、表面の大部分では形成された皮膜が残存しており、溶出が発生するのはわずかな露出部分であるため、電解液の汚染は大幅に抑制可能である。これにより、耐食性・耐溶出性の点から必須であったラミネート加工を省略することができ、機器のコスト低減に寄与しうる。
本発明の目的は、前述したとおり、金属空気二次電池環境において、腐食が発生しないこと、さらに非水電解液中での耐溶出性に優れ、電解液の汚染を抑制できること、外装材として適用可能な強度・加工性を有していること、の三点を同時に達成することである。
〔強度・加工性〕
一般的なステンレス鋼は、アルミニウム系材料と比較して強度・剛性に優れることから、同等以下の肉厚で十分な強度を得ることができる。また、深絞り加工が中心であるため、金属空気二次電池の外装に求められる加工性は、比較的加工性に劣るフェライト系を含め、一般的なステンレス鋼の成分範囲および製造条件の中で達成可能である。
〔耐食性〕
金属空気二次電池用の非水電解液は、そのほとんどがルイス中性であり、本質的に腐食性を有していないため、非水電解液単体での耐食性は問題にされない。しかしながら、金属空気電池を実用するためには、外気を吸入し、空気極として作用させる必要があり、この際に前述した炭酸・硫酸・硝酸イオンおよび塩化物イオンを含有した低pHの水分に起因する腐食性環境が形成される。この環境で腐食しないだけの耐食性を確保するのは、ある程度の成分範囲(特にCr、Mo)を制限するか、なんらかの表面処理を行い、不働態皮膜中のCrカチオン分率を制限することで達成可能である。ここで、微量水分を含む非水電解液中では、ステンレス鋼の自然電位および分極挙動は、水溶液中や大気環境と異なるため、水溶液中・大気中の知見は適用できない。本発明者らは種々の検討を行い、非水電解液中での自然電位における不働態皮膜中のCrカチオン分率が低すぎると腐食が発生することを見出した。
〔非水電解液中における耐溶出性〕
ステンレス鋼において耐食性と似て非なるものである。ステンレス鋼に腐食が発生した場合は、多量の金属イオンが電解液に溶出するのは当然であるが、腐食が発生しなかった場合でも、微量の溶出が起こることがある。ステンレス鋼の耐食性は、表面の不働態皮膜により維持されている。ここで、不働態皮膜の曝されている環境が変化した場合、その環境に応じた不働態皮膜へと構造が変化し、電解液中にFe、Cr、Niなどの金属イオンが溶出することがある。ステンレス鋼に形成された不働態皮膜は、製造時の環境や処理条件に応じたものであり、非水電解液中の環境とは異なる。したがって、金属空気電池の製造中および使用中に、非水電解液中での不働態皮膜へと構造が徐々に変質し、それに伴い微量の金属イオンが電解液に溶出する。この金属イオンの微量溶出は、板厚減少としては1nmにも満たず、耐食性を考慮する際には問題とされないものの、金属空気二次電池においては、電池反応に影響を与え、電池性能を悪化させることが判明した。
そこで、本発明者らは、種々の検討の結果、金属空気二次電池環境において十分な耐食性と耐溶出性を得るためには、不働態皮膜の構造を、非水電解液中における定常状態と類似の構造にすること、その不働態皮膜が金属空気二次電池環境において耐食性を有していることが必要であることを見出した。
実用上は、不働態皮膜中の平均Crカチオン分率が20〜60%、平均Niカチオン分率が5%未満であり、含水量が20ppm〜10%の非水電解液中において、自然電位に保持した際の電流値が10μA・cm−2未満であれば良い。
〔不働態皮膜の膜厚〕
ある環境の定常状態における不働態皮膜の膜厚は、その環境でのステンレス鋼の自然電位に比例する。大気中・水溶液中で形成された不働態皮膜の膜厚は、母材の組成にもよるが通常は1〜4nmである。非水電解液中においても、含水量と電位によるが、ほぼ同等の膜厚となる。発明者らは、様々な含水量の非水電解液中において種々の電位で定電位試験を行い、非水電解液中において定常状態となった不働態皮膜の膜厚と構造について詳細な検討を行った。その結果、非常に含水量が少なく(20ppm)、自然電位に近い電位に保持された場合において、ステンレス鋼が環境から遮断され、溶出が事実上停止するために必要な膜厚は最も薄くなり、0.5nm程度であることが明らかとなった。したがって、使用中の溶出を抑制するためには、不働態皮膜の膜厚は最低0.5nm以上必要であり、必要な膜厚は環境と皮膜中のCrカチオン分率によって変わるものの、2nm程度あればほぼ問題なく適用可能である。
〔不働態皮膜中のCrカチオン分率〕
非水電解液中においては、水の含有量が少ないため、水溶液中と比較して過不働態溶解が発生しにくく、Crのカチオン分率が高くなる。Crカチオン分率の高い不働態皮膜は良好な耐食性を示し、20%以上で金属空気二次電池に形成される腐食性環境で使用可能となる。しかし、60%を超えると過不働態溶解が発生しやすくなり、Crイオンの溶出による電解液の汚染を招くため、20%から60%とした。
〔不働態皮膜中のNiカチオン分率〕
NiはFeやCrと比較して酸素との親和性が低く、イオン液体中のアニオンと溶媒和しやすいため、非水電解液中で溶出が発生しやすい。また、不働態皮膜中のNiの多くはNiOとして存在しているが、NiOは酸性溶液中で容易に溶解し、電解液の汚染を招く。しかし、ステンレス鋼の不働態皮膜、すなわちCrおよびFeの酸化物・水酸化物中では、少量のNiイオンが含有されても非水電解液への溶出が抑制される。実用上、Niイオンの溶出を抑制するには、不働態皮膜中のNiカチオン分率を5%未満とすれば良い。
〔自然電位における電流密度〕
金属空気二次電池の電解液においては、大気由来の水分や各種イオン、電池反応の副反応による生成物などがあり、特に長期間の使用時における定常状態を定義することは非常に困難である。本発明者らは種々の検討を行った結果、上記の構造を有する不働態皮膜については、含水量20ppm〜10%までにおいて自然電位で保持した際の平均電流密度を10μA・cm−2未満に制限した場合、長サイクルの電池試験を行った場合におけるステンレス鋼から電解液への溶出量を実用上問題ないレベルに低減できることが判明した。
〔製造方法〕
上記の構造・特性を有する不働態皮膜を有するステンレス鋼を得るためには、JISステンレス鋼で分類される各種ステンレス鋼の内、SUS301、SUS304、SUS304L、SUS304Cu、SUS304J1、SUS305、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS315J1、SUS315J2、SUSXM7、SUSXM15J1、SUS317、SUS890L、SUS405、SUS409、SUS409L、SUS410L、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS444、SUS445J1、SUS445J2、SUS447J1、SUSXM27、SUS329J4Lなど、日新製鋼株式会社独自鋼種のNSSシリーズでは、NSSHT2000、NSS304M2、NSS304ES、NSSXM7、NSS305M1、NSS305M3、NSSSCR、NSSER−1、NSSER−4、NSSHR−1、NSSWR−1、NSSNCA−2、NSS409M1、NSSHT980、NSSHT1770、NSS430M3、NSS430M4、NSS444N、NSS442M3、NSSNCA−1、NSS436、NSSEM−2、NSSEM−3、NSS445M2、NSSWCR、NSS447M1、NSS431DP−2などを原板とし、圧延・焼鈍を行って得られたものに、以下の表面改質処理を行えば良い。
〔表面改質処理〕
イオン液体中において、10〜100℃、0.6〜2V.Ag/Agで20s以上の定電位保持を行う。本発明の表面改質処理は、水の活量が低い非水電解液中で処理することが重要である。したがって、溶液として用いるイオン液体は、電位窓内に保持温度にて液体であり、保持電位が電位窓に含まれており、不働態皮膜の主要構成物質であるCrと直接反応しないものが使用できる。例えば、FSI(FSA)、TFSI(TFSA)、BETI、PF、BF、CHSO、CFCO、CFSO、(CFSON、(CSON、(CPFのいずれかをアニオンとするイオン液体を用いることができる。このとき、イオン液体中には最大で1%までの水が含まれていても良く、さらに不働態皮膜中のCrカチオン分率を制御する目的で1000ppmまでのNO を添加していても良い。また、イオン液体以外の非水電解液としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート系の公知の有機溶媒およびその混合液(例えば鎖状カーボネートを混合したもの)、アセトニトリルおよびその混合液を用いた場合でも同様の表面改質処理を行うことができる。
本発明の実施例を以下に示す。
厚さ0.5〜1.0mmの種々のステンレス鋼板を切削加工により15mmφの円盤に切り出し、全面を#600まで湿式研磨した。その後、EMI−TFSI中で1.5V.SCE、2min.の定電位保持を行い、不働態皮膜を改質して試験片とした。これを「改質有り」と表記する。研磨ままの試験片も同様に各種測定および試験に供した。これは「改質無し」と表記する。
Figure 2015086470
不働態皮膜の膜厚と平均組成は、オージェ分光分析の深さプロファイルの値より求めた。加速電圧は1keV、測定範囲は0.5mm×0.5mmとし、酸素の強度が最大値の半分となるところを不働態皮膜/母材界面とした。
次に、疎水性のイオン液体であるEMI−TFSI中または非水系の有機溶媒であるプロピレンカーボネート中で自然電位に保持した際の電流値を測定した。EMI−TFSIおよびプロピレンカーボネートは大気中に1週間以上放置し、含水率が大気中で飽和したものを用いた。電流が一定となる時間または1hまで測定し、測定面積で除して平均電流密度を算出した。実施例No.1〜10および比較例No.13〜22はEMI−TFSI中の結果であり、実施例No.11、12および比較例No.23、24については、プロピレンカーボネート中における結果である。
更に、同様の大気中で定常状態となったEMI−TFSI中でサイクリックボルタンメトリーを行った。EMI−TFSIはLiを含有させることで電位窓が拡大し、リチウムイオン電池用の電解液として用いることができるものの、単体では電位窓が動作電位域より狭いことが知られている。そこで、サイクリックボルタンメトリーにおける測定電位域は−1.7〜+1.4V.SCEとした。また、一般的な電池の耐用サイクル数は800回程度であるため、測定サイクル数は1000とした。サイクリックボルタンメトリーの全サイクルにおいて、電流挙動に大きな差異は認められず、初期浸漬時の自然電位における電流密度が10μA・cm−2を超えることはなかった。測定後のEMI−TFSIへのFe、Cr、Niイオンの溶出量の合計値を、ICP−massにより測定した。前項と同様に、実施例No.11、12および比較例No.23、24については、非水有機溶媒であるプロピレンカーボネート中において同条件のサイクリックボルタンメトリーを行ったものである。測定後、光学顕微鏡にて外観を観察し、腐食ピットの有無を確認した。
得られた不働態皮膜の膜厚および金属イオンのカチオン分率と、非水電解液中における平均電流値、金属イオンの溶出量ならびに腐食ピットの有無を下記表1にまとめた。金属イオンの溶出量が0.3ppm未満かつ腐食ピットの認められないものを合格とした。
本発明例の鋼は、非水電解液中での溶出量が少なく、耐食性も良好であった。これらの原板は、強度・加工性においても金属空気二次電池用の外装材として適用可能な特性を示す鋼種である。
これに対し、比較例No.13〜16は、平均電流密度が高く、十分に環境から遮断されていないため、金属イオンの溶出量が多かった。これは長期間の使用において電解液が汚染される可能性が高いことを示唆している。比較例No.14〜16は不働態中のCrカチオン分率は20%を超えているものの、形成された皮膜中における水酸化物の比率が高いため、非水系電解液中で安定な酸化物主体の皮膜へと変質する反応が起こった結果として電流密度が高くなり、溶出が認められた。比較例No.17〜22は不働態皮膜中のNiカチオン分率が大きいため、Niイオンの溶出が発生した結果、金属イオンの溶出量が多かった。比較例No.13および21は不働態皮膜中のCrカチオン分率が低く、本環境において耐食性を有していなかった。本実施例ではEMI−TFSIを用いて試験を行ったが、異なるカチオン(例えばPP13)や異なるアニオン(例えばFSI)で構成されたイオン液体で試験を行った場合も、電流密度の値はわずかに異なるものの、同様の結果となる。
本発明に係るステンレス鋼板は、金属空気二次電池用の外装材として利用可能である。本発明鋼は疎水性かつ導電性の良好なTFSI(TFSA)、FSI(FSA)系のイオン液体中での使用を念頭においているものの、他のイオン液体ならびに環状カーボネート、アセトニトリルなどの有機溶媒およびその混合液を非水電解液として用いた金属空気電池においても同様の特性を示す。

Claims (3)

  1. 不働態皮膜中の平均Crカチオン分率が20〜60%、平均Niカチオン分率が5%未満であり、含水量が20ppm〜10%の非水電解液中において、自然電位に保持した際の電流値が10μA・cm−2未満であることを特徴とする、非水電解液での溶出量の少ないステンレス鋼板。
  2. 請求項1に記載のステンレス鋼板よりなる、非水電解液二次電池の外装部材。
  3. FSI(FSA)、TFSI(TFSA)、BETI、PF、BF、CHSO、CFCO、CFSO、(CFSON、(CSON、(CPFのいずれかをアニオンとするイオン液体またはそのイオン液体と有機溶媒との混合液中において、10〜100℃、0.6〜2V.Ag/Agで0.5〜90min.の定電位保持を行うことを特徴とする、請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法。

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