本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、衛生的であると共に、必要な移乗介護の態様や身体的な特徴などの異なる複数の被介護者にも柔軟に対応可能とされた、新規な構造の介護用移乗装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、床面上を移動可能とされた台車部を有する本体部と、被介護者を乗せる乗載部とを備える介護用移乗装置であって、前記本体部には、前記台車部に支持されて昇降および傾動可能とされた一対の可動アームが設けられていると共に、それら一対の可動アームを昇降および傾動させるためのアクチュエータが設けられている一方、前記乗載部は、互いに独立して形成されて座部と背もたれの各一方を構成する第一の支持部と第二の支持部が連結部材によって相対傾動可能に連結された構造を有しており、それら第一の支持部と第二の支持部が一対の該可動アームの各一方に着脱可能に取り付けられることで該乗載部が一対の該可動アームによって支持されて、それら第一の支持部と第二の支持部が一対の該可動アームによって昇降および傾動せしめられるようにしたことを、特徴とする。
このような本発明の第一の態様に従う構造とされた介護用移乗装置によれば、台車部上にアクチュエータとそれによって作動する可動アームを備えた本体部に対して、乗載部が着脱可能に取り付けられることから、乗載部を本体部から取り外して交換することが可能となる。それ故、高価な本体部を交換することなく、被介護者が接触して損傷や汚れなどが問題となり易い乗載部だけを交換することにより、比較的に低コストで長期間に亘って介護用移乗装置を使用することができる。
さらに、介護施設などで複数の被介護者が介護用移乗装置を共用する場合には、被介護者ごとに乗載部を交換することで、各被介護者に適した乗載部を採用することができて、被介護者ごとに異なる身体的な特徴や障害の程度などに対応することができる。しかも、被介護者ごとに乗載部を交換すれば、衛生面でも有利である。
また、例えば、第一の支持部と第二の支持部の構造を略同じとして、第一の支持部と第二の支持部が座板と背板の何れにもなり得るようにしたり、本体部と被介護者の相対的な向きなどに応じて第一の支持部と第二の支持部の何れかを選択的に座板とすれば、被介護者がベッド上で何れの向きに寝ていても、介護用移乗装置によって被介護者を側方から抱え上げて、車椅子などに移乗させることができる。
また、第一の支持部と第二の支持部が連結部材で相互に連結されて、それら第一の支持部と第二の支持部の相対的に位置決めされていることから、乗載部を本体部の一対の可動アームに対して所定の位置で容易に取り付けることができる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された介護用移乗装置において、前記連結部材は、前記第一の支持部に側方から固定される第一の取付部と前記第二の支持部に側方から固定される第二の取付部とを関節部によって屈曲可能に連結した構造とされているものである。
第二の態様によれば、連結部材が第一の支持部と第二の支持部の側方に配されることから、乗載部が薄肉とされる。しかも、第一の支持部と第二の支持部が、連結部材の第一の取付部と第二の取付部によって補強されて、座板および背板の耐荷重性の向上が図られ得る。
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された介護用移乗装置において、前記第一の取付部が一方の前記可動アームに着脱可能に取り付けられていると共に、前記第二の取付部が他方の前記可動アームに着脱可能に取り付けられているものである。
第三の態様によれば、形状安定性に優れる第一の取付部と第二の取付部が可動アームに取り付けられることから、乗載部が可動アームによって所定の位置で安定して支持される。しかも、乗載部と本体部の間の着脱可能な取付け構造も容易に形成することができる。
本発明の第四の態様は、第二又は第三の態様に記載された介護用移乗装置において、前記第一の支持部と前記第二の支持部にはそれぞれ空所が形成されており、該第一の支持部と該第二の支持部における該空所の一方の側方部分が前記連結部材に固定されていると共に、該第一の支持部と該第二の支持部における該空所の他方の側方部分が該連結部材から他方の側方に分離可能とされているものである。
第四の態様によれば、例えば、移乗先である車椅子やベッドなどの上に、被介護者を載せた第一の支持部と第二の支持部を重ね合わせた状態において、第一の支持部と第二の支持部に形成された空所を通じて被介護者が移乗先である車椅子やベッドなどに接触するようになっている。これにより、被介護者と車椅子やベッドなどとの間から第一の支持部と第二の支持部を抜き取る際に、被介護者の体が車椅子やベッドなどの上に留まり易くなって、介護者の労力を低減することができる。
しかも、第一の支持部と第二の支持部は、空所の一方の側方に位置する部分と他方の側方に位置する部分とが分割された構造となっていると共に、一方の側方部分が連結部材に固設されていると共に、他方の側方部分が連結部材から分離可能とされている。これにより、第一の支持部と第二の支持部の他方の側方部分を連結部材から分離させて、被介護者と車椅子又はベッドなどの間から他方の側方に抜き取ると共に、一方の側方部分を連結部材ごと一方の側方に抜き取ることが可能とされている。それ故、被介護者と車椅子又はベッドなどの間から第一の支持部および第二の支持部を側方に抜き取る際に、空所の側方に位置する部分が被介護者の体に引っ掛かることがなく、被介護者を車椅子やベッドなどに容易に移乗させることができる。
本発明の第五の態様は、第二〜第四の何れか1つの態様に記載された介護用移乗装置において、前記第一の取付部と前記第二の取付部が前記関節部において相対的なねじり変位を許容されているものである。
第五の態様によれば、例えば、第一の支持部と第二の支持部が連結部材側に向かって傾斜している場合にも、第一の取付部と第二の取付部のねじり変位によって、第一の支持部と第二の支持部の相対的な傾動が許容されて、乗載部の背上げ動作が有効に実現される。
本発明の第六の態様は、第二〜第五の何れか1つの態様に記載された介護用移乗装置において、前記関節部が複数箇所で屈曲可能とされているものである。
第六の態様によれば、一対の可動アームの傾動中心軸に対して位置決めされる連結部材の関節部が複数箇所で屈曲可能とされることから、可動アームと連結部材の長さ方向での相対位置が所定の範囲で設定可能とされ得て、可動アームと連結部材の厳密な位置合わせが不要となる。
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか1つの態様に記載された介護用移乗装置において、一対の前記可動アームの表面にタッチセンサが設けられており、該タッチセンサに触れて所定の入力をすることによって一対の該可動アームの昇降および傾動を操作可能とされているものである。
第七の態様によれば、可動アームの昇降および傾動をタッチセンサによって直感的に操作することが可能となる。
本発明によれば、本体部の可動アームに対して乗載部が着脱可能に取り付けられることから、乗載部の交換に容易に対応することができて、保守管理がし易いと共に、被介護者に応じた構造の乗載部を提供することができる。しかも、乗載部は、座板および背板を構成する第一の支持部と第二の支持部が連結部材で相互に位置決めされた構造とされており、第一の支持部と第二の支持部を可動アームの所定位置に容易に位置決めして取り付けることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜4には、本発明の一実施形態としての介護用移乗装置10が示されている。介護用移乗装置10は、本体部12と乗載部14とを備えている。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、前後方向とは図2中の左右方向を、上下方向とは図3中の上下方向を、それぞれ言う。
より詳細には、本体部12は、図5に示すように、台車部16を備えている。台車部16は、床面と略平行に広がる略C字板状の脚部18に複数の車輪20が設けられた構造とされており、車輪20によって床面上を自在に移動可能とされている。本実施形態の台車部16は、人力によって移動せしめられるようになっているが、例えば、電気モータなどによって自走可能とされていても良い。
また、台車部16には、出力部22が設けられている。出力部22は、台車部16上に立設されたハウジング24に図示しないアクチュエータが収容された構造を有している。なお、アクチュエータの構造は特に限定されないが、例えば、動力シリンダと動力ピストンを備えた油圧式乃至は空圧式のアクチュエータや、電気モータに歯車列およびクランクを組み合わせて構成される電動式のアクチュエータなどが、好適に採用される。
さらに、出力部22には、タッチパネルやモニター、スイッチなどを適宜に備える操作パネル26が設けられており、操作パネル26を操作することで、後述する可動アーム28の昇降および傾動の速さや、何れか一方の可動アーム28のロックの設定と解除などを変更設定することができる。
また、出力部22には、一対の可動アーム28a,28bが取り付けられている。可動アーム28a,28bは、出力部22の上端から前後各一方の側に向かって延びるロッド状の部材であって、一方の可動アーム28aの後端部と他方の可動アーム28bの前端部がヒンジ部30においてピン連結されており、可動アーム28a,28bが相対傾動を許容されている。更に、ヒンジ部30によって連結された一方の可動アーム28aの後端部と他方の可動アーム28bの前端部が、出力部22の図示しないアクチュエータに接続されており、図6に示すように、それら可動アーム28a,28bがアクチュエータによって昇降および傾動せしめられるようになっている。なお、図6では、可動アーム28aが傾動した状態を示すが、可動アーム28bも同様に傾動可能とされている。また、可動アーム28a,28bには、略矩形筒状をなす掛止部32が、長さ方向の両端部の側方にそれぞれ設けられている。
さらに、一対の可動アーム28a,28bには、タッチセンサ34が表面を覆うように設けられている。タッチセンサ34は、手指などの接触を感知するセンサであって、接触操作によって一対の可動アーム28a,28bの昇降および傾動を制御可能とされている。なお、タッチセンサ34への入力と、一対の可動アーム28a,28bの動作との関連付けは、任意に設定され得るが、例えば、以下のように設定することができる。即ち、一対の可動アーム28a,28bのタッチセンサ34,34を同時に下方から触ることで、一対の可動アーム28a,28bが上昇すると共に、タッチセンサ34,34を同時に上方から触ることで、一対の可動アーム28a,28bが下降する一方、一対の可動アーム28a,28bの何れか一方のタッチセンサ34を下方から触ることで、可動アーム28a,28bの何れか一方が、床面に対する傾斜角度が大きくなるように傾動すると共に、何れか一方のタッチセンサ34を上方から触ることで、可動アーム28a,28bの何れか一方が、床面に対する傾斜角度が小さくなるように傾動するようにできる。
一方、乗載部14は、図7に示すように、座板と背板の各一方を構成する第一の支持部36と第二の支持部38を、連結部材40によって相互に連結した構造とされている。より詳細には、第一の支持部36は、高剛性のパイプなどで形成されたフレーム41(図4参照)に、柔軟な材料で形成された緩衝体を固着した構造とされている。また、第一の支持部36は、全体としてコ字板状とされており、周上の一部に開口して厚さ方向に貫通する切欠き状の空所42が形成されている。この空所42の一方の側方部分が、後述する連結部材40に固定された固設部44とされていると共に、他方の側方部分が、後述する連結部材40に対して分離可能に取り付けられる略L字板状の分離部46とされており、それら固設部44と分離部46によって第一の支持部36が構成されている。なお、本実施形態では、第二の支持部38が第一の支持部36と略対称形状とされており、実質的には同一構造であることから、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
さらに、分離部46の端部が外側に引出可能とされており、分離部46の端部を引き出すことで、図8に示すように、第一,第二の支持部36,38の長さを延長することができるようになっている。なお、本実施形態では、分離部46の端部に固設された延長部分が予め収容されており、分離部46の端部を外側に引くことで、第一,第二の支持部36,38の長さが延長されるようになっているが、例えば、分離部46の端部に別体の延長部材を取り付けることで、第一,第二の支持部36,38の長さを延長可能としても良い。
また、第一の支持部36と第二の支持部38は、それぞれ連結部材40に取り付けられている。連結部材40は、ロッド状の剛性部材である第一の取付部48と第二の取付部50が、関節部52を介して相互に連結された構造とされている。関節部52は、第一の取付部48の後端部と第二の取付部50の前端部をピンによって軸着した構造とされて、第一の取付部48と第二の取付部50がピンを中心軸として傾動可能に連結されており、連結部材40が関節部52での屈曲を許容されている。なお、第一の取付部48および第二の取付部50には、鉤状に折れ曲がった掛止爪54が、それぞれ長さ方向の両端部分に設けられて、第一,第二の支持部36,38の取付け側とは反対の側方に突出している。
そして、図7に示すように、第一の取付部48の側面に第一の支持部36が取り付けられていると共に、第二の取付部50の側面に第二の支持部38が取り付けられており、それら第一の支持部36と第二の支持部38が連結部材40によって相互に連結されている。本実施形態では、第一の支持部36の固設部44が第一の取付部48に対して分離不能に固定されていると共に、分離部46が第一の取付部48に対して着脱自在に取り付けられている。同様に、第二の支持部38の固設部44が第二の取付部50に対して分離不能に固定されていると共に、分離部46が第二の取付部50に対して着脱自在に取り付けられている。
さらに、第一の取付部48と第二の取付部50が相対傾動可能に連結されていることから、第一の支持部36と第二の支持部38も相対的に傾動可能とされている。更にまた、第一の支持部36と第二の支持部38との間に隙間が形成されていると共に、該隙間に第一,第二の支持部36,38の各空所42が繋がっている。
かくの如き構造とされた乗載部14は、本体部12の一対の可動アーム28a,28bに対して着脱可能に取り付けられる。即ち、連結部材40の第一の取付部48に設けられた掛止爪54が、一方の可動アーム28aに設けられた掛止部32に差し入れられて掛止されることにより、第一の取付部48が可動アーム28aに取り付けられる。同様に、連結部材40の第二の取付部50に設けられた掛止爪54が、他方の可動アーム28bに設けられた掛止部32に差し入れられて掛止されることにより、第二の取付部50が可動アーム28bに取り付けられる。これらによって、第一の支持部36と第二の支持部38が、連結部材40を介して、一対の可動アーム28a,28bの各一方に、着脱可能に取り付けられて、乗載部14が本体部12の一対の可動アーム28a,28bによって支持されている。なお、掛止爪54を掛止部32から抜き取ることで、本体部12から乗載部14を容易に取り外すことができる。
そして、一対の可動アーム28a,28bがアクチュエータによって昇降および傾動されることにより、一対の可動アーム28a,28bに取り付けられた連結部材40の第一の取付部48と第二の取付部50が昇降および傾動される。その結果、第一の取付部48に取り付けられた第一の支持部36と、第二の取付部50に取り付けられた第二の支持部38が、一対の可動アーム28a,28bによって昇降および傾動されるようになっている。以上からも明らかなように、本体部12と乗載部14によって電動リクライニング式の腰掛が構成されており、乗載部14に後述する被介護者55が乗せられるようになっている。なお、第一,第二の支持部36,38の一方が後述する被介護者55の臀部を支持する座板を構成すると共に、他方が被介護者55の胴部および頭部を支持する背板を構成するようになっている。
このような本実施形態に従う構造とされた介護用移乗装置10によれば、乗載部14が本体部12に対して着脱可能に取り付けられることから、高価な本体部12を交換することなく、乗載部14だけを容易に交換することができる。従って、被介護者55が直接接触して汚れや損傷が生じ易い乗載部14を交換することで、介護用移乗装置10を長期に亘って低コストで使用することができる。
さらに、乗載部14を構造の異なるものと取り替えることにより、身長や体重などの身体的な特徴や障害の程度などが異なる複数の被介護者55に対して、本体部12を共用しながら、それぞれに最適な構造の乗載部14を提供することも可能となる。それ故、例えば、介護施設などにおいて、複数の被介護者55が介護用移乗装置10を使用する場合にも、被介護者55の状態に応じた乗載部14を各別に準備することで、本体部12を共用することができて、コストの低減や保管場所の省スペース化などが図られ得る。
また、乗載部14は第一の支持部36と第二の支持部38が連結部材40によって連結された構造とされており、それら第一の支持部36と第二の支持部38が相対的に位置決めされている。それ故、乗載部14を本体部12の一対の可動アーム28a,28bに取り付ける際に、第一の支持部36と第二の支持部38を一対の可動アーム28a,28bに対して各別に位置決めする必要がなく、乗載部14の本体部12への取付けが容易である。
しかも、本実施形態では、第一の支持部36と第二の支持部38の側方に連結部材40が配設されていることから、乗載部14が薄肉とされており、保管に必要なスペースが低減されている。
さらに、連結部材40は、剛性ロッド状の第一の取付部48と第二の取付部50が関節部52を介して連結された構造とされており、第一の取付部48が第一の支持部36に取り付けられていると共に、第二の取付部50が第二の支持部38に取り付けられている。それ故、第一の支持部36が第一の取付部48によって補強されると共に、第二の支持部38が第二の取付部50によって補強されて、第一,第二の支持部36,38の耐荷重性の向上が図られている。
また、第一,第二の支持部36,38は、何れも空所42を備えており、空所42を通じて被介護者55の体の一部が空所42を通じて車椅子58などの移乗先に接触するようになっている。これにより、第一,第二の支持部36,38を被介護者55と移乗先との間から引き抜く際に、被介護者55が第一,第二の支持部36,38に載ったまま動くことなく移乗先に留まり易くなって、介護者の労力を軽減することができる。
さらに、第一,第二の支持部36,38は、空所42の一方の側方に位置する固設部44と、空所42の他方の側方に位置する分離部46とを備えており、固設部44が連結部材40に固定されていると共に、分離部46が連結部材40に対して他方の側方に分離可能のとされている。それ故、第一,第二の支持部36,38を被介護者55と車椅子58などの移乗先との間から引き抜く際に、固設部44を連結部材40ごと一方の側方に引くと共に、分離部46を連結部材40から分離させて他方の側方に引くことにより、被介護者55が空所42の側方部分に引っ掛かることがなく、第一,第二の支持部36,38をスムーズに引き抜くことができる。
なお、本実施形態に係る介護用移乗装置10は、例えば、被介護者55のベッド56から車椅子58への移乗に際して、以下のように用いられる。
すなわち、先ず、図9に示すように、介護者は被介護者55をベッド56上で側臥位にして、被介護者55の背中側のベッド56上に乗載部14を敷く。この際、連結部材40が被介護者55とは反対側に位置するように乗載部14の向きを設定して、連結部材40をベッド56の側端上に位置せしめると共に、被介護者55の頭部側に位置する支持部(ここでは第一の支持部36)の分離部46の端部を引き出しておく。なお、第一の支持部36と第二の支持部38は、略平行に広がるように配置される。
次に、図10に示すように、被介護者55を仰臥位にして、被介護者55を乗載部14の第一,第二の支持部36,38上に寝かせる。
その後、本体部12をベッド56に側方から接近させて、一対の可動アーム28a,28bを乗載部14の第一,第二の取付部48,50に取り付ける。そして、本体部12をベッド56から離れるように移動させることで、被介護者55をベッド56から介護用移乗装置10に乗り移らせる。なお、本体部12をベッド56から離れるように移動させる前に、一対の可動アーム28a,28bを上昇させて、乗載部14をベッド56の上面から離れさせることが望ましい。
次に、被介護者55の頭部側に位置する可動アーム28aを傾動させて、被介護者55の背中を支える第一の支持部36を起こすことにより、被介護者55を背起しして仰臥位から座位に移行させる。なお、本体部12の操作パネル26を操作して可動アーム28bの傾動を予めロックしておくことにより、誤って座面側を起こしてしまうのを防ぐことができる。
介護用移乗装置10上で背起しされて座位の姿勢とされた被介護者55は、第一,第二の支持部36,38ごと車椅子58上に運ばれる。そして、図13に示すように、第一,第二の支持部36,38の分離部46が、被介護者55と車椅子58の間から側方に引き抜かれて、連結部材40から取り外されると共に、本体部12が車椅子58から側方に離れるように移動せしめられることで、固設部44が被介護者55と車椅子58の間から側方に引き抜かれる。以上によって、被介護者55のベッド56から車椅子58への移乗が完了する。
また、乗載部の具体的な構造は、前記実施形態のものに限定されるものではない。具体的には、例えば、図14に示す乗載部60も採用可能である。以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
乗載部60は、第一の支持部62と第二の支持部64を連結部材40で相互に連結した構造とされている。第一,第二の支持部62,64は、前記実施形態と同様に、フレーム41を緩衝体で覆った構造とされている一方、前記実施形態とは異なり、空所42が形成されていないと共に、分離部46と固設部44に分割されることなく全体が連続した構造とされている。
そして、連結部材40の第一の取付部48が第一の支持部62の側面に取り付けられると共に、第二の取付部50が第二の支持部64の側面に取り付けられることにより、第一の支持部62と第二の支持部64が相対的な傾動を許容された状態で連結部材40を介して連結されている。なお、本実施形態では、第一の支持部62と第二の支持部64は、連結部材40に対して分離不能に固定されている。このように、第一,第二の支持部が連結部材に対して着脱可能とされることは、本発明において必須ではない。
このような簡易な構造の乗載部60は、部品点数の少ない簡単な構造であることから、容易に製造可能であって、安価に提供することができる。
また、図15,16に示す乗載部70も採用され得る。即ち、乗載部70は、第一の支持部62と第二の支持部64を連結部材72によって相互に連結した構造とされている。
連結部材72は、第一の取付部48と第二の取付部50を関節部74で相対傾動可能に連結した構造とされている。本実施形態の関節部74は、三つの分節部材76,76,76が相対傾動可能に相互に軸着されることで構成されており、長さ方向の複数箇所で屈曲可能とされている。
さらに、本実施形態では、第一の取付部48および第二の取付部50と関節部74との接続部分が、長さ方向の中心軸周りで相対的に回転可能とされており、第一の取付部48と第二の取付部50が相対的なねじり変位を許容されている。なお、第一,第二の取付部48,50と関節部74は、相対的に360°回転可能とされていても良いが、好適には、相対的な回転量を制限する制限手段が設けられる。
このような本実施形態に従う構造とされた乗載部70を採用すれば、関節部74が長さ方向の複数箇所で屈曲可能な多軸関節構造とされていることから、連結部材72と可動アーム28a,28bの長さ方向での相対位置をある程度の範囲で設定可能となる。それ故、連結部材72と可動アーム28a,28bが、部品の寸法誤差による位置ずれを生じたり、長さ方向の取付け位置をある程度の範囲で任意に設定可能とされている場合にも、可動アーム28a,28bの傾動に追従して連結部材72の関節部74での屈曲が有効に生ぜしめられる。
また、本実施形態では、第一,第二の取付部48,50と関節部74との接続部分が長さ方向の中心軸周りで回転可能とされて、第一の取付部48と第二の取付部50の相対的なねじり変位が許容されている。それ故、第一,第二の支持部62,64が第一,第二の取付部48,50に向かって傾斜している場合にも、第一,第二の支持部62,64の相対的な傾動による背起し動作が有効に実現される。なお、例えば、第一,第二の支持部62,64は、第一,第二の取付部48,50に向かって下傾するように取り付けられ得る。これによれば、被介護者55が第一,第二の支持部62,64から可動アーム28a,28bと反対側に転落するのをより有利に防ぐことができる。
なお、図15,16では、第一,第二の支持部62,64が第一,第二の取付部48,50に固定された構造が示されているが、例えば、図7に示された乗載部14において、一軸構造の関節部52に代えて、本実施形態で示した多軸構造の関節部74を採用することもできる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、本体部12と乗載部14の連結構造として、可動アーム28の掛止部32に対して連結部材40の掛止爪54が掛止された構造を例示したが、本体部と乗載部の連結構造は、着脱可能とされていれば特に限定されない。
前記実施形態では、第一,第二の支持部が連結部材を介して可動アームに取り付けられるようになっているが、第一,第二の支持部が可動アームに直接取り付けられていても良い。
また、連結部材は、必ずしも第一,第二の支持部の側面に取り付けられる必要はなく、例えば、第一,第二の支持部の背面や第一,第二の支持部の端部間に取り付けられていても良い。
また、前記実施形態で示した乗載部の構造は、あくまでも例示であって、被介護者の体型や障害の程度などに応じて、大きさや形、材質などの異なる各種構造の乗載部が採用され得る。
また、第一の支持部と第二の支持部は、互いに略対称形状とされていることが望ましいが、互いに異なる形状とされていても良い。例えば、第一の支持部と第二の支持部の形状や大きさなどを異ならせることで、第一の支持部を背板に適する構造とすると共に、第二の支持部を座板に適する構造とすることも可能である。
前記実施形態では、可動アームに設けられたタッチセンサを接触操作することで、可動アームの昇降や傾動が実現されるようになっていたが、例えば、ボタンやフットペダルなどによって可動アームの昇降や傾動を操作可能としても良い。
また、前記実施形態では、多軸の関節部52を有する乗載部14を例示したが、例えば、関節部をゴム弾性体や高分子エラストマなどの柔軟な材料で形成することによっても、複数箇所で屈曲可能な関節部が実現され得る。