JP2015084658A - 成分富化玄米およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
原料となる米は、信州大学農学部の圃場で収穫された、2010年度または2011年度産コシヒカリ玄米を用いた。玄米は実験に使用するまで、ポリエチレン袋に入れて密封し、冷蔵庫に貯蔵した。加圧装置は、株式会社東洋高圧製の高圧処理装置「まるごとエキス(登録商標)」を使用した。加圧処理時の圧力保持と、温度調整は、前記高圧処理装置の制御装置を未補正で使用した。処理玄米の乾燥は、送風定温乾燥器(WFO-501W 232090 東京理化器械株式会社製)を用いて実施した。
上記実験例1で製造した成分富化精白米を、ロータースピードミル(p-14 フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて製粉し、成分富化米粉の試料とした。
実験例1と同様のコシヒカリ玄米をコントロール玄米とした。また、これを精米して、未処理の精白米を製造し、これをコントロール精白米の試料とした。また、コントロール精白米を実験例2と同様の家庭用ミルで製粉し、これをコントロール米粉の試料とした。
実験例1、2および3で製造した成分富化精白米およびコントロール精白米断面について、実体顕微鏡を用いて観察を行った。図1は、成分富化精白米およびコントロール精白米断面の実体顕微鏡像である。図中左上の未処理と記載された図は、コントロール精白米の断面を示し、図中右下の100MPa、55℃、24hと記載された図は、成分富化精白米の断面を示す。この結果から、成分富化精白米において、ひび割れが少なく、コントロール精白米と同程度の砕粒率であることが認められた。これは、本実施例において、成分富化の加工を施しても、粒割れ等による精米歩合の低下が防止されていることを示している。また、ひび割れが少ないことにより、精白米、および米粉の食味を向上させるのに寄与している。
実験例1で製造した成分富化玄米について、加工時に浸漬する水量による精米歩合の変化を測定した。加工した玄米を乾燥後、家庭用精米機(RSKM5B 株式会社サタケ製)により精米した。図2は、添加水量と、玄米の吸水率、精米歩合の関係を示すグラフを示す。この結果から、添加水量が増加するに従って精米歩合も向上し、添加水量が50重量%以上となると、精米歩合が80%を超えることが認められた。
実験例1で製造した成分添加玄米について、断面を肉眼観察し、種皮由来でない成分の含浸を確認した。図3は、成分添加玄米および低圧、常温で加工した玄米の断面写真を示す。図中、左の2例が低圧、常温の玄米を示し、右の2例が高圧、高温の成分添加玄米である。また、上記高圧、高温の例のうち、左側は加工時間3時間の例であり、右側は加工時間24時間の例である。図から、成分添加玄米において、色素が内部まで含浸している様子が認められた。また、加工時間が長くなるに従って、含浸の程度が向上している様子が認められた。
実験例1、2および3で製造した成分富化玄米、成分富化精白米およびコントロール精白米の表面、および断面について、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。図4は、成分富化精白米表面のSEM像(5000倍)である。また、図5は、コントロール精白米表面のSEM像(5000倍)である。また、図6は、成分富化精白米断面のSEM像(1000倍)である。また、図7は、コントロール精白米断面のSEM像(1000倍)である。また、図8は、成分富化玄米切片のSEM像(5000倍)である。また、図9は、コントロール玄米切片のSEM像(5000倍)である。この結果から、成分富化玄米の切片、成分富化精白米の表面および断面において、でんぷんの形状が崩れており、角が取れた角丸状になっていることが認められた。このでんぷんの形状は、米、および米粉の食感、触感を向上させるのに寄与している。
本発明に係る成分富化精白米の可溶性総ポリフェノール量およびフェノール酸量を定量した。米試料中の総ポリフェノール量はChandrikaらの方法を参考に、一部改変したFolin-Ciocalteu法で測定した。米に含まれるポリフェノール類の主要な成分はフェルラ酸であることから、総ポリフェノール量をフェルラ酸当量で表わした。
本発明に係る成分富化精白米に富化された成分として、チアミンの定量を行った。測定は、HPLC法を用いて行い、チアミン塩酸塩として定量した。図10は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるチアミンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール米を示し、水/温/圧をされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、0.22mg/100gと、コントロール米の0.09mg/100gと比較して、約2.4倍の量のチアミンを含有することが認められた。
成分富化玄米に富化された成分として、ナイアシンの定量を行った。測定は、Lactobacillus plantarum ATCC8014菌株を使用した微生物定量法を用いて行った。なお、この際、ニコチン酸相当量、トリプトファンは考慮していない。図11は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるナイアシンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール精白米を示し、水/温/圧をされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、4.32mg/100gと、コントロール米の1.78mg/100gと比較して、約2.4倍の量のナイアシンを含有することが認められた。
成分富化玄米に富化された成分として、γ-アミノ酪酸の定量を行った。測定は、アミノ酸自動分析法を用いて行った。その結果、コントロール精白米では、含有量が検出限界以下であったため、定量できなかったのに対し、成分富化精白米では、16mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのγ-アミノ酪酸を含有することが認められた。
成分富化玄米に富化された成分として、フィチン酸の定量を行った。測定は、バナドモリブデン酸吸光光度法を用いて行い、メソイノシットヘキサリン酸として定量した。その結果、コントロール精白米では、155mg/100gであったのに対し、成分富化精白米では、183mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのフィチン酸を含有することが認められた。
成分富化玄米および成分富化米粉の物性を評価するため、米粉の平均粒径と、でんぷん損傷率を測定した。粒度の測定には、レーザー回折・散乱式粒度分析計(MT3000LOW-DRY 日機装株式会社製)を使用し、乾式法による粒度分布計測値から、平均粒径を求めた。粒度分布の測定は、各試料3回ずつ行い、平均値(μm)を算出した。また、でんぷん損傷率の測定には、STARCH DAMAGE KIT(K-SDAM Megazyme社製)を使用した。結果を表2に示す。
Claims (13)
- 玄米を、該玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化することを特徴とする成分富化玄米の製造方法。
- 前記水が、所望の成分が添加された成分添加水であって、前記加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化すると共に、所望の成分を、前記成分添加水から前記胚乳に浸透移行させ、該胚乳の前記所望の成分を富化することを特徴とする請求項1記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記所望の成分が、ビタミンB1、ビタミンB3、γ-オリザノール、γ-アミノ酪酸から選択される少なくとも1種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項2記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記玄米が、前記水と共に密閉容器に封入された状態で前記浸漬させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記加圧が、少なくとも0.2MPaの圧力であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記加圧が、少なくとも100MPaの圧力であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記水に浸漬された前記玄米に、加温する工程を更に含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
- 前記加温時の温度が、20℃〜60℃の温度であることを特徴とする請求項7に記載の成分富化玄米の製造方法。
- 請求項1から8のいずれか1項記載の製造方法により製造された、糠成分および前記所望の成分が富化した成分富化玄米。
- 胚乳部分のでんぷんが、角の取れた角丸状であり、かつ、胚乳部分のでんぷん損傷率が15.0%以下であることを特徴とする請求項9記載の成分富化玄米。
- 請求項9または10のいずれか1項記載の成分富化玄米を、精米した成分富化精白米。
- 請求項11記載の成分富化精白米を、製粉した成分富化米粉。
- 請求項12記載の成分富化米粉を食品組成物として含む、加工食品。
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