本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、人の周囲をより効率的に冷暖房して、人の周囲に快適な被空調領域を形成することができる、新規な構造の吹出ノズルを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、空調装置の給気ダクトの端部に取り付けられる吹出ノズルであって、前記給気ダクトを通じて供給された空調エアを吹き出す複数の吹出流路がそれぞれ筒形をなして同軸的に形成されていると共に、最外周の該吹出流路から吹き出す空調エアの流速が、他の少なくとも1つの該吹出流路から吹き出す空調エアの流速よりも遅く設定されていることを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた吹出ノズルによれば、筒形の吹出流路から吹き出された空調エアの内周側に、外周側から実質的に隔てられた被空調領域が形成される。そして、被空調領域の空気が空調エアによって冷却又は加温されることにより、被空調領域の温度が調節されるようになっている。これにより、被空調領域内に居る人が間接的に冷却又は加温されて、気流を直接吹きかけられる不快感を与えることなく、適切な体感温度を提供することができる。
さらに、複数の吹出流路が同軸的に形成されていると共に、最外周の吹出流路から吹き出す空調エアの流速が、他の少なくとも一つの吹出流路から吹き出す空調エアの流速よりも遅く設定されている。これにより、最外周の吹出流路から吹き出す空調エアと、空調エアの外周側にある空気との相対的な速度差が小さくされて、摩擦や乱流による空調エアの流速の低下や温度変化が低減される。その結果、給気ダクトから供給される空調エアの風量が比較的に小さい場合にも、所定の温度に維持された空調エアを遠くまで到達させることができる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記吹出流路が作業領域で作業者の頭上から下方に向かって空調エアを吹き出すように設置されており、吹き出した該空調エアが該作業者の両肩部に接触する環状領域に該吹出流路が開口されていると共に、該吹出流路の内周側には該作業者の頭部を覆う大きさの遮断領域が形成されているものである。
第二の態様によれば、作業者の両肩部が吹出流路から吹き出す筒状の空調エアに接触して直接的に冷却又は加温されることで、作業者の体感温度を効率的に変化させることができる。また、作業者の頭部を覆う大きさの遮断領域が設けられていることにより、頭部に空調エアが直接接触することによる作業者の不快感を防ぐことができる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記複数の吹出流路が主流路と該主流路の外周側に形成される副流路とによって構成されていると共に、該副流路から吹き出す空調エアの流速が該主流路から吹き出す空調エアの流速よりも遅く設定されているものである。
第三の態様によれば、副流路から吹き出す空調エアと外周側の空気との相対的な流速差が小さく抑えられて、乱流や摩擦による空調エアの流速低下が低減されると共に、主流路から吹き出す空調エアの温度が、外周側の空気との熱交換によって変化するのも抑えられる。
さらに、空調エアの内周側に形成される被空調領域の空気と、主流路から吹き出す空調エアとは、相対的な流速差が大きくされることから、それらの境界付近で乱流が生じて、空調エアと被空調領域の空気との間での熱交換が積極的に生ぜしめられる。これにより、被空調領域が空調エアによって効率的に冷却又は加温されて、被空調領域の温度を速やかに変化させることができる。
本発明の第四の態様は、第三の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記主流路の幅寸法が10mm以上とされていると共に、該主流路の幅寸法が該主流路の内周側に設けられた遮断領域の内法寸法に対して1/200倍以上且つ1/20倍以下とされているものである。
第四の態様によれば、主流路から吹き出す空調エアを実用的に充分な距離まで到達させることができる。更に、遮断領域を所定の寸法とすることで、充分な大きさの被空調領域を得ることができると共に、被空調領域の空気を空調エアによって有効に冷却又は加温することができる。
本発明の第五の態様は、第三又は第四の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記主流路の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、前記副流路の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比よりも小さくされているものである。
第五の態様によれば、給気ダクトから同じ圧力で供給される空調エアが、入口と出口の開口面積比が異なる主流路と副流路に分流されて吹き出すことにより、副流路から吹き出す空調エアの流速を主流路から吹き出す空調エアの流速よりも遅くすることができる。
本発明の第六の態様は、第一又は第二の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記複数の吹出流路が、主流路と、該主流路の外周側に形成される第一の副流路と、該主流路の内周側に形成される第二の副流路とによって構成されていると共に、該第一の副流路および該第二の副流路から吹き出す空調エアの流速が、何れも該主流路から吹き出す空調エアの流速よりも遅く設定されているものである。
第六の態様によれば、第一の副流路から吹き出す空調エアと外周側の静止空気との相対的な流速差が小さく抑えられると共に、空調エアの内周側に形成される被空調領域の静止空気と、第二の副流路から吹き出す空調エアとの相対的な流速差も小さく抑えられる。しかも、主流路から吹き出す空調エアと第一の副流路および第二の副流路から吹き出す空調エアとの相対的な流速差は、主流路から吹き出す空調エアと静止空気との相対的な流速差よりも小さくされる。それ故、空調エアの内外周の静止空気と空調エアとの境界部分における乱流や摩擦が低減されて、空調エアの流速低下が低減されると共に、主流路から吹き出す空調エアと、第一の副流路および第二の副流路から吹き出す空調エアとの境界部分における乱流や摩擦も低減されて、主流路から吹き出す空調エアの流速低下がより効果的に防止される。従って、給気ダクトから供給される空調エアの風量を大きく増すことなく、主流路から吹き出す空調エアをより遠くまで到達させることができて、効果的な冷房または暖房が可能となる。
本発明の第七の態様は、第六の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記主流路の幅寸法が10mm以上とされていると共に、該主流路の幅寸法が前記第二の副流路の内周側に設けられた遮断領域の内法寸法に対して1/200倍以上且つ1/20倍以下とされているものである。
第七の態様によれば、主流路から吹き出す空調エアを実用的に充分な距離まで到達させることができる。更に、遮断領域を所定の寸法とすることで、充分な大きさの被空調領域を得ることができると共に、被空調領域の空気を空調エアによって有効に冷却又は加温することができる。
第八の態様は、第六又は第七の態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記主流路の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、前記第一の副流路および前記第二の副流路の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比よりも小さくされているものである。
第八の態様によれば、給気ダクトから同じ圧力で供給される空調エアが、入口と出口の開口面積比が異なる主流路と第一の副流路および第二の副流路とに分流されて吹き出されることにより、第一の副流路および第二の副流路から吹き出す空調エアの流速を、主流路から吹き出す空調エアの流速よりも簡単に遅くすることができる。なお、第一の副流路と第二の副流路は、入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
本発明の第九の態様は、第一〜第八の何れか一つの態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記吹出流路の内周側には、空調エアの風量を調整するための風量操作部が空調エアの吹出方向に突出して設けられているものである。
第九の態様によれば、風量操作部が人に向かって突出するように設けられることから、人が容易に操作して空調エアの風量を調整することができる。更に、風量操作部が吹出流路の内周側に設けられることで、人が風量操作部を見ながら操作する際にも、空調エアが顔に直接接触するのが防止されて、風量調整時の不快感や操作のし難さが回避される。
本発明の第十の態様は、第一〜第九の何れか一つの態様に記載された吹出ノズルにおいて、前記吹出流路の内周側には空調エアを吹き出す補助流路が形成されているものである。
第十の態様によれば、被空調領域内に補助流路を通じて空調エアを吹き出させることで、被空調領域をより効率的に冷却又は加温することができる。特に、広い被空調領域が設定される場合には、吹出流路から吹き出される空調エアと、補助流路から吹き出される空調エアとが、協働して被空調領域を冷却又は加温することにより、被空調領域の全体を目的とする温度に保ち易くなる。なお、補助流路は、吹出流路の内周側に形成される遮断領域の天面において、例えば周方向で不連続に設けられた複数の補助開口部などをもって構成され得る。
本発明によれば、空調エアを吹き出す吹出流路が筒形とされていることから、吹出流路から吹き出された空調エアの内周側には、外周側の空気から空調エアで実質的に隔てられた被空調領域が形成されて、被空調領域の空気が空調エアによって冷却又は加温されるようになっている。それ故、被空調領域内の人を間接的に冷却又は加温することができて、空調エアの接触による不快感を感じさせることなく、快適な体感温度を提供することができる。
しかも、同軸的に複数の吹出流路が形成されており、最外周の吹出流路から吹き出す空調エアの流速が遅く設定されていることから、空調エアとその外周側の空気との境界部分における乱流や摩擦が低減されて、空調エアをより遠くまで到達させることができると共に、外周側の空気との熱交換による空調エアの温度変化が低減される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1,2には、本発明の第一の実施形態としての吹出ノズル10が、空調装置の給気ダクト12に取り付けられた状態で示されている。以下の説明において、上下方向とは、原則として、鉛直上下方向である図1中の上下方向を言う。また、図1,2,6では、人(作業者)Hが二点鎖線で示されている。
より詳細には、吹出ノズル10は、図3,4に示すように、全体として段付きの略円筒形状を呈する外周筒部14を備えており、小径とされた外周筒部14の上部が後述する給気ダクト12の端部に取り付けられるようになっている。また、大径とされた外周筒部14の下端部には、逆向きの略有底円筒形状を呈する中央遮蔽部16が略同一中心軸上で内挿配置されており、放射状に延びる複数の連結ボルト18によって外周筒部14と相互に連結されている。
また、外周筒部14には、風量操作部としての風量調整ハンドル20が挿通配置されている。風量調整ハンドル20は、上下に延びる軸部22と、軸部22の下端に設けられた円形のハンドル部24とを備えている。更に、風量調整ハンドル20は、軸部22の上部が放射状に広がる複数の支持板25によって外周筒部14に対して軸直角方向に位置決めされていると共に、外周筒部14に対する相対回転を許容されている。更にまた、風量調整ハンドル20は、軸部22の下部が中央遮蔽部16を貫通しており、ハンドル部24が中央遮蔽部16から下方に向かって突出している。
また、外周筒部14と中央遮蔽部16の間には、中間仕切部26が設けられている。中間仕切部26は、略円筒形状を有しており、外周筒部14の内周面と中央遮蔽部16の外周面との対向面間の略中央を周方向に延びている。そして、中間仕切部26は、複数の連結ボルト18によって、周上の複数箇所で外周筒部14および中央遮蔽部16に連結されていると共に、それら連結ボルト18の周方向間に設けられた補助連結部28によって、周上の複数箇所で中央遮蔽部16に連結されている。
このような中間仕切部26が設けられることにより、外周筒部14の内周面と中央遮蔽部16の外周面との径方向間が中間仕切部26で仕切られており、中間仕切部26の内周側に主流路30が形成されていると共に、中間仕切部26の外周側に副流路32が形成されて同軸的に配されている。主流路30および副流路32は、何れも上下に延びる略円筒形状とされており、径方向の幅寸法が互いに略同じとされている。なお、本実施形態では、主流路30と副流路32によって、複数の吹出流路が構成されている。
また、外周筒部14と中央遮蔽部16の表面には、それぞれ断熱材34が貼り付けられている。断熱材34は、例えば、独立気泡を備えたポリオレフィン発泡体やウレタンフォームなどが好適に用いられ、接着剤によって外周筒部14および中央遮蔽部16の表面を覆うように固着されている。より具体的には、外周筒部14の段差部を挟んだ両側が内周面を断熱材34aで覆われていると共に、外周筒部14の下端部が外周面を断熱材34bで覆われている。更に、中央遮蔽部16の上面が断熱材34cで覆われていると共に、中央遮蔽部16の内周面が断熱材34dで覆われている。なお、本実施形態では、風量調整ハンドル20を支持する支持板25の一部も断熱材34eで覆われている。
さらに、外周筒部14の内周面に断熱材34aが固着されることにより、副流路32の入口(給気ダクト12側となる上開口)が断熱材34aによって径方向で狭窄されており、副流路32の入口の開口面積が主流路30の入口の開口面積よりも小さくされている。また、本実施形態では、中間仕切部26が外周筒部14と中央遮蔽部16の径方向対向面間の略中央に配置されて、主流路30の出口(後述する空調エア44の吹出し側となる下開口)と副流路32の出口とが、互いに略同じ径方向幅寸法で形成されており、副流路32の出口の開口面積が主流路30の出口の開口面積よりも大きくされている。これらによって、主流路30の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、副流路32の入口の開口面積に対する副流路32の出口の開口面積の比よりも小さくされている。なお、断熱材34aは、下端が中間仕切部26の上端と略同じ軸方向位置になるように配されている。
本実施形態では、主流路30の幅寸法(w)が、好適には5mm以上且つ20mm以下とされており、より好適には10mm以上とされていると共に、好適には、主流路30の幅寸法(w)が、副流路32の内周側に設けられる遮断領域の内法寸法、即ち本実施形態における中央遮蔽部16の直径(R)に対して、1/400倍以上且つ1/10以下(1/400≦w/R≦1/10)とされており、より好適には1/200倍以上且つ1/20倍以下(1/200≦w/R≦1/20)とされている。
かくの如き構造とされた吹出ノズル10は、図1,2に示すように、外周筒部14の上端部が、図示しない空調装置に接続された給気ダクト12に取り付けられるようになっている。給気ダクト12は、一般的に知られるように、筒体であって、断熱材によって外気との熱交換が低減されている。また、給気ダクト12には風量調整弁36が収容されており、風量調整弁36の制御手段が柔軟に屈曲可能とされたワイヤ部38を介して風量調整ハンドル20に接続されている。そして、風量調整ハンドル20を回して風量調整弁36を操作することにより、給気ダクト12の内孔の実質的な断面積を変更設定して、後述する空調エア44の風量を調整できるようになっている。
図1,2に示すように、給気ダクト12の端部が工場などの作業領域で作業者の頭上に開口しており、給気ダクト12の端部に吹出ノズル10が取り付けられて、吹出ノズル10の主流路30および副流路32の出口が下方に向かって開口している。なお、本実施形態では、吹出ノズル10の外周筒部14が、給気ダクト12に取り付けられて支持されると共に、外周面に固設される吊下部40が図示しない天井に吊下ワイヤ42(図1中の一点鎖線)で吊下げられることによっても支持されるようになっており、給気ダクト12との接続部分に荷重が集中するのを回避されている。
そして、空調装置から給気ダクト12を通じて供給される空調エア44が、作業者の頭上に設けられた吹出ノズル10の主流路30と副流路32から下方に向かって吹き出すようになっている。主流路30と副流路32は、何れも、吹き出した空調エア44が作業者の両肩部に接触する環状領域に開口されており、それら主流路30と副流路32から吹き出す空調エア44a,44bは、何れも略円筒形状をなしている。なお、図1,2では、主流路30と副流路32から吹き出した空調エア44a,44bが、気流の方向を指す矢印によってそれぞれ示されている。
また、主流路30と副流路32が開口する環状領域の内周側には、空調エア44の吹出しが中央遮蔽部16で遮断された遮断領域が、作業者の頭部を覆う大きさで形成されており、空調エア44の内周側には空気の流動が抑えられた被空調領域46が形成されている。被空調領域46は、空調エア44によって囲まれることで、空調エア44よりも外周側の空気に対して実質的に隔てられており、主流路30から吹き出す空調エア44aとの間で生じる熱交換によって冷却又は加温されるようになっている。更に、中央遮蔽部16が作業者の頭部を覆う大きさとされていることにより、空調エア44が作業者の頭部を外周側に外れて吹き出して、作業者の両肩部に吹きかけられるようになっていると共に、作業者の頭部が被空調領域46内に収まるようになっている。
ここにおいて、図5(a)に概略的に示すように、主流路30の入口の開口面積が副流路32の入口の開口面積よりも大きくされていると共に、主流路30の出口の開口面積が副流路32の出口の開口面積よりも小さくされており、主流路30の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、副流路32の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比よりも小さくされている。そして、同じ給気ダクト12から等圧で供給される空調エア44が、主流路30と副流路32に分流されることにより、最外周に設けられた副流路32から吹き出す空調エア44bの流速が、内周に設けられた主流路30から吹き出す空調エア44aの流速よりも遅く設定されている。なお、図5において、主流路30および副流路32の入口が図中の上方に位置していると共に、出口が下方に位置している。
なお、図5(b)に概略的に示すように、主流路30の入口を拡開させることにより、主流路30の入口の開口面積が副流路32の入口の開口面積よりも大きくされていると共に、主流路30の出口の開口面積が副流路32の出口の開口面積よりも小さくされた構造によっても、副流路32の空調エア44bの流速を、主流路30の空調エア44aの流速よりも遅く設定することができる。また、主流路30と副流路32の開口面積の違いは、本実施形態では、径方向の幅寸法の違いによって設定されるようになっているが、例えば、主流路30の出口乃至は副流路32の入口を周上で部分的に塞いで、主流路30と副流路32の周長を異ならせることによっても実現可能である。
このように、流速の速い主流路30の空調エア44を取り囲むように、流速の遅い副流路32の空調エア44bが吹き出すことで、主流路30の空調エア44aと空調エア44よりも外周側にある空気とが直接的に接することがなく、それら主流路30の空調エア44aと外周側の空気との間に低速とされた副流路32の空調エア44bが介在される。これにより、外周側の空気と空調エア44の境界における速度差が低減されて、乱流や摩擦による流速の低下や熱交換による空調エア44の温度変化などが低減される。
しかも、主流路30の空調エア44aと副流路32の空調エア44bとの境界における速度差は、主流路30の空調エア44aと外周側の静止空気との速度差に比して小さくされることから、主流路30の空調エア44aと副流路32の空調エア44bとの境界における乱流や摩擦が低減されて、主流路30の空調エア44aの流速低下や温度変化がより有利に低減される。
一方、主流路30の空調エア44aと被空調領域46の空気との境界における速度差が大きいことから、主流路30の空調エア44aと被空調領域46の空気との間では熱交換が積極的に生ぜしめられて、被空調領域46が主流路30の空調エア44aによって効率的に冷却又は加温される。更に、被空調領域46内の空気は、空調エア44によって外周側の空気から実質的に隔てられていることから、適切に冷却又は加温された空調状態が安定して維持され易くなっている。
また、本実施形態の吹出ノズル10では、中央遮蔽部16の直径(R)が200mm≦R≦2000mmとされており、作業者の頭部を覆う大きさとされている。これにより、作業者の頭部に空調エア44が直接吹きかけられることによる不快感が防止されている。特に、中央遮蔽部16の直径(R)を、作業者の肩幅よりも小さく設定すれば、温度を感じ易い肩部や胸部に空調エア44が接触することで、体感温度を効率的に変化させることができる。
さらに、本実施形態では、主流路30の幅寸法(w)が、好適には5mm以上且つ20mm以下とされており、より好適には10mm以上とされていると共に、好適には、主流路30の幅寸法(w)が、中央遮蔽部16の直径(R)に対して、1/400倍以上且つ1/10以下(1/400≦w/R≦1/10)とされており、より好適には1/200倍以上且つ1/20倍以下(1/200≦w/R≦1/20)とされている。これにより、被空調領域46が主流路30の空調エア44aによって充分に冷却又は加温されて、被空調領域46を目的とする温度に設定することができる。
なお、図6には、本実施形態に係る吹出ノズル10の使用例が示されている。即ち、空調を使用しない状態では、図6(a)に示すように、給気ダクト12に収容された開閉弁48によって給気ダクト12の内孔を閉塞することで、給気ダクト12の他の末端に空調エア44が効率的に分配されるようにできる。なお、開閉弁48は、給気ダクト12の内形に対応する略円板形状とされており、径方向に延びる図示しない回転軸によって軸支されている。更に、回転軸にはそれぞれ紐状とされた二本の開閉操作部50,50の一端が固定されており、下方に垂れ下がったそれら開閉操作部50,50の他端を選択的に引き下げることで、回転軸を回転操作して、開閉弁48を開位置と閉位置に切り替えることができる。
次に、空調の使用を開始する際には、図6(b)に示すように、一方の開閉操作部50を引き下げる。これにより、図6(c)に示すように、開閉弁48が開位置まで回転して、給気ダクト12の内孔が連通状態とされることから、給気ダクト12から空調エア44が供給されて、吹出ノズル10の主流路30および副流路32から下方に向かって吹き出す。なお、図6では、簡単のために、主流路30の空調エア44aと副流路32の空調エア44bが、一点鎖線で一体として示されている。
また、温度調節などを目的として風量を調整する場合には、図6(d)に示すように、風量調整ハンドル20を手で回すことにより、風量調整弁36を回転させて、給気ダクト12の内孔の実質的な開口面積を変更設定する。これにより、吹出ノズル10から吹き出す空調エア44の風量を変更することができる。風量調整ハンドル20は、作業者の頭上を覆う中央遮蔽部16から下方に向かって突出しており、作業者の手が届き易くなっていると共に、中央遮蔽部16で空調エア44が遮られた遮断領域に設けられていることから、上を向いて風量調整ハンドル20を操作する際に、空調エア44が顔に吹きかけられることもなく、操作が容易とされている。
また、空調の使用を終了する際には、図6(e)に示すように、他方の開閉操作部50を引き下げる。これにより、図6(a)に示すように、開閉弁48が閉位置まで回転して、給気ダクト12の内孔が遮断されることから、吹出ノズル10からの空調エア44の吹き出しが停止される。
図7には、本発明の第二の実施形態としての吹出ノズル60が示されている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。また、給気ダクト12の構造や吹出ノズル60の使用例は、第一の実施形態と同様であることから、ここでは図示および説明を省略する。更に、図7では、分かり易さのために、吹出ノズル60の使用状態で吹き出す空調エア44の一部が、二点鎖線によって仮想的に示されている。
より詳細には、吹出ノズル60は、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64とを備えている。第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64は、何れも略円筒形状とされており、第一の中間仕切部62が第二の中間仕切部64よりも大径とされている。更に、第二の中間仕切部64は、上部が上方に向かって次第に小径となるテーパ形状とされている。そして、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64は、同一中心軸上に配設されて、第一の中間仕切部62が第二の中間仕切部64の外周側を所定の距離を隔てて取り囲むように配置されている。更に、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64は、大径とされた外周筒部14の下端部と中央遮蔽部16との径方向間に配設されており、複数の連結ボルト18によって、外周筒部14および中央遮蔽部16に周上の複数箇所で連結されている。
このように、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64が配設されることにより、外周筒部14の下端部の内周面と中央遮蔽部16の外周面との間が、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64によって仕切られて、三つの流路が形成されている。即ち、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64の間に主流路66が形成されている一方、外周筒部14と第一の中間仕切部62の間に第一の副流路68が形成されていると共に、中央遮蔽部16と第二の中間仕切部64の間に第二の副流路70が形成されている。なお、本実施形態の吹出流路は、主流路66と、主流路66の外周側に形成される第一の副流路68と、主流路66の内周側に形成される第二の副流路70とによって構成されている。
また、本実施形態では、第二の中間仕切部64の上部がテーパ形状とされていることで主流路66の入口が拡げられている一方、断熱材34aによって第一の副流路68の入口が狭められていると共に、第二の中間仕切部64の上部がテーパ形状とされていることで第二の副流路70の入口が狭められている。これにより、主流路66の入口の開口面積が第一の副流路68の入口の開口面積および第二の副流路70の入口の開口面積よりも大きくされている。なお、第一の中間仕切部62と第二の中間仕切部64は、テーパ形状とされた上部を除く部分が、外周筒部14と中央遮蔽部16の径方向間で等間隔となるように配置されている。
そして、主流路66の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比が、第一の副流路68の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比よりも小さくされていると共に、第二の副流路70の入口の開口面積に対する出口の開口面積の比よりも小さくされている。これらによって、第一の副流路68および第二の副流路70から吹き出す空調エア44b,44cの流速が、主流路66から吹き出す空調エア44aの流速よりも遅くされている。
なお、第一の副流路68から吹き出す空調エア44bの流速と、第二の副流路70から吹き出す空調エア44cの流速は、互いに同じであっても良いし、何れか一方が他方よりも遅くされていても良い。好適には、主流路66の外周側を囲む第一の副流路68から吹き出す空調エア44bの流速が、第二の副流路70から吹き出す空調エア44cの流速よりも遅くされることで、空調エア44と外周側の空気との境界部分における乱流を低減しつつ、被空調領域46の空気と空調エア44との間での熱交換を有効に生ぜしめることができる。
また、本実施形態では、主流路66の幅寸法(w)が、好適には5mm以上且つ20mm以下とされており、より好適には10mm以上とされている。更に、好適には、主流路66の幅寸法(w)が、第二の副流路70の内周側に設けられる遮断領域の内法寸法、即ち本実施形態における中央遮蔽部16の直径(R)に対して、1/400倍以上且つ1/10以下(1/400≦w/R≦1/10)とされており、より好適には1/200倍以上且つ1/20倍以下(1/200≦w/R≦1/20)とされている。
また、本実施形態では、中央遮蔽部16に複数の補助流路72が形成されている。補助流路72は、中央遮蔽部16の上底壁部およびそれを覆う断熱材34cを貫通する孔であって、吹出ノズル60の内部空間と被空調領域46を連通するように形成されている。そして、被空調領域46の内周部分にも、補助流路72を通じて空調エア44dが吹き出されるようになっている。更に、補助流路72は、開口面積が充分に小さくされていることが望ましく、それによって、補助流路72から吹き出す空調エア44dが、作業者の頭部にまで直接到達することなく、乱流によって被空調領域46内に拡散される。また、補助流路72の出口に空調エア44dの吹出方向を変更するためのルーバーを設けることにより、補助流路72の空調エア44dが作業者の頭部にまで直接到達するのを防ぐこともできる。
このような構造とされた吹出ノズル60によれば、主流路66から吹き出す空調エア44aの内外周両側に、それぞれ主流路66の空調エア44aよりも低速とされた第一の副流路68から吹き出す空調エア44bと第二の副流路70から吹き出す空調エア44cとの各一方が同軸的に形成される。これにより、主流路66の空調エア44aは、外周側の空気だけでなく内周側の空気に対しても接することがなく、乱流や摩擦による流速の低下がより効果的に低減される。それ故、主流路66の空調エア44aの到達距離を有利に延ばすことができて、有効な被空調領域46を空調エア44の吹出口からより遠くまで形成することができる。
さらに、本実施形態の吹出ノズル60では、中央遮蔽部16に複数の補助流路72が形成されており、被空調領域46の内周部分にも補助流路72から空調エア44dが吹き出して、被空調領域46がより効率的に冷却又は加温されるようになっている。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、円筒形の吹出流路が例示されているが、吹出流路は筒形であれば円筒形には限定されず、例えば、四角筒形なども採用され得る。
さらに、吹出流路の数は、複数であれば良く、四つ以上でも良い。なお、流速の速い空調エアを吹き出す主流路の外周側や内周側に、流速の遅い空調エアを吹き出す副流路を複数設ける場合には、それら副流路から吹き出す空調エアの流速が、主流路から離れるに従って次第に遅くなっていることが望ましい。
前記実施形態では、複数の吹出流路の出口の開口幅が相互に同じとされているが、例えば、出口の開口面積が相互に同じとされていても良い。
また、前記実施形態では、筒状に吹き出された空調エアが作業者の両肩部に接触する軸直寸法とされているが、空調エアの軸直寸法は特に限定されるものではなく、例えば、作業者の全身を囲む大きさであっても良い。この場合に、本発明に係る吹出ノズルでは、給気ダクトから供給される空調エアの風量が比較的に小さくても、空調エアの到達距離を大きく得ることができて、作業者の全身を囲む被空調領域を有効に形成することができる。
本発明に係る吹出ノズルは、例えば、工場における作業者の周囲を冷却又は加温するスポット空調装置において、好適に採用される。尤も、本発明の適用範囲は、工場用の空調装置に限定されるものではなく、広範囲に人が点在する状況で用いられるスポット空調装置の吹出ノズルとして、種々の場面に用いられ得る。