以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における液圧緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3と圧側通路4と、伸側通路3を開閉する伸側弁体Veと、圧側通路4を開閉する圧側弁体Vpと、内部圧力で伸側弁体Veに当接する伸側スプールSeを押圧して伸側通路3を閉塞する方向へ伸側弁体Veを附勢する伸側背圧室Ceと、内部圧力で圧側弁体Vpに当接する圧側スプールSpを押圧して圧側通路4を閉塞する方向へ当該圧側弁体Vpを附勢する圧側背圧室Cpと、伸側室R1を伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpに連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える伸側圧力導入通路Peと、圧側室R2を伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpに連通するとともに通過する液体の流れに抵抗与える圧側圧力導入通路Ppと、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpを上流として双方に連通される調整通路Pcと、調整通路Pcの下流を伸側室R1へ連通するとともに調整通路Pcから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側排出通路Epと、調整通路Pcの下流を圧側室R2へ連通するとともに調整通路Pcから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側排出通路Eeと、調整通路Pcに設けられて調整通路Pcの上流圧力を制御する電磁圧力制御弁6とを備えて構成されている。
なお、この液圧緩衝器Dの伸側室R1と圧側室R2内には、作動油等の液体が充填されているほか、シリンダ1の図1中下方には図示はしないが、シリンダ1内を摺動するフリーピストンが設けられており、このフリーピストンによってシリンダ1内に気体室が形成される。また、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド7の一端に連結され、ピストンロッド7は、シリンダ1の図中上端部から外方へ突出されている。なお、ピストンロッド7とシリンダ1との間は図示しないシールでシリンダ1内が液密状態とされている。図示したところでは、液圧緩衝器Dがいわゆる片ロッド型に設定されているため、液圧緩衝器Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド7の体積は、上記した気体室内の気体の体積が膨張あるいは収縮し上記フリーピストンがシリンダ1内を上下方向に移動することによって補償されるようになっている。このように液圧緩衝器Dは、単筒型に設定されているが、フリーピストンおよび気体室の設置に変えて、シリンダ1の外周や外部にリザーバを設けて当該リザーバによって上記ピストンロッド7の体積補償を行ってもよい。
ピストンロッド7は、この場合、ピストン2を保持するピストン保持部材8と、一端がピストン保持部材8に連結されてピストン保持部材8とともに電磁圧力制御弁6を収容する中空な収容部Lを形成する電磁弁収容筒9と、一端が電磁弁収容筒9に連結されるとともに他端がシリンダ1の上端から外方へ突出するロッド部材10とで形成されている。
ピストン保持部材8は、外周に環状のピストン2が装着される保持軸8aと、保持軸8aの図1中上端外周に設けたフランジ8bと、フランジ8bの図1中上端外周に設けた筒状のソケット8cとを備えている。また、ピストン保持部材8は、保持軸8aの先端から開口して軸方向に伸び上記ソケット8c内に通じる縦孔8dと、フランジ8bの図1中下端に上記保持軸8aを囲むようにして設けた環状溝8eと、環状溝8eをソケット8c内に連通するポート8fと、保持軸8aの外周から開口して縦孔8dに通じる横孔8g,8hと、保持軸8aの図1中下端外周に設けた螺子部8iと、フランジ8bの上端に形成されて縦孔8dに通じる溝8jとを備えて構成されている。
保持軸8aに設けた縦孔8d内には、筒状であって外周に設けた環状溝23aで縦孔8d内に横孔8g,8hとを連通させる連通路24を形成するセパレータ23が挿入されている。このセパレータ23の図1中下端には、当該下端の開口を囲む環状弁座23bが設けられている。縦孔8dは、セパレータ23内を介して圧側室R2をソケット8c内へ連通させるが、横孔8g,8hがセパレータ23によって縦孔8d内を介しては圧側室R2およびソケット8c内に通じないようになっている。
ソケット8cの図1中上端外周には、環状の凹部8kが設けられており、また、ソケット8cには、凹部8kからソケット8c内に通じる貫通孔8mが設けられている。凹部8kには、環状板22aが装着されており、この環状板22aが図1中上方からばね部材22bによって附勢されて、貫通孔8mを閉塞している。
電磁弁収容筒9は、有頂筒状の収容筒部9aと、収容筒部9aよりも外径が小径であって当該収容筒部9aの頂部から図1中上方へ伸びる筒状の連結部9bと、収容筒部9aの側方から開口して内部へ通じる透孔9cとを備えて構成されている。そして、電磁弁収容筒9の収容筒部9aの内周にピストン保持部材8のソケット8cを螺着することで、電磁弁収容筒9にピストン保持部材8が一体化されるとともに、これら電磁弁収容筒9とピストン保持部材8とで収容筒部9a内に電磁圧力制御弁6が収容される収容部Lが形成され、収容部L内に詳しくは後述する調整通路Pcが設けられる。
上記したように電磁弁収容筒9にピストン保持部材8が一体化されると、透孔9cが凹部8kに対向して、貫通孔8mと協働して、収容部Lを伸側室R1に連通するようになっており、環状板22aとばね部材22bとで、収容部L内から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁22が形成されている。よって、圧側排出通路Epは、透孔9c、凹部8k、貫通孔8mおよび当該逆止弁22によって形成されている。
また、ピストン保持部材8における縦孔8d内には、セパレータ23の図1中下端に設けた環状弁座23bに離着座する逆止弁25が設けられており、逆止弁25は、圧側室R2側から収容部Lへ向かう液体の流れを阻止するとともに、収容部Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するようになっている。よって、伸側排出通路Eeは、セパレータ23によって、縦孔8d内に形成されている。
ロッド部材10は、筒状であって、図1中下端の内周は拡径されていて、電磁弁収容筒9の連結部9bの挿入が許容されて、当該連結部9bを螺着することができるようになっている。このように、ロッド部材10、電磁弁収容筒9およびピストン保持部材8を一体化することで、ピストンロッド7が形成される。
なお、ロッド部材10内および電磁弁収容筒9における連結部9b内には、後述するソレノイドへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端は図示はしないがロッド部材10の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
ピストン保持部材8に設けた保持軸8aの外周には、環状のピストン2とともに、ピストン2の図1中上方に圧側弁体Vp、圧側スプールSp、圧側背圧室Cpを形成する圧側チャンバ11とが組付けられ、ピストン2の図1中下方に伸側弁体Ve、伸側スプールSe、伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ12とが組付けられる。
ピストン2は、この場合、上下二分割されたディスク2a,2bを重ね合わせることで形成されており、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3と圧側通路4とが形成されている。このように、ピストン2を上下に分割されたディスク2a,2bで形成することで、複雑な形状の伸側通路3および圧側通路4を孔開け加工によらずして形成することができるので、安価かつ容易にピストン2を製造することができる。また、図1において上方側のディスク2aの上端には、圧側通路4の外周を囲む環状の弁座2cが設けられ、下方側のディスク2bの下端には、伸側通路3の外周を囲む環状の弁座2dが形成されている。
伸側弁体Veは、ピストン保持部材8の保持軸8aの挿通を許容するため孔空き円盤状とされていて、ピストン2の図1中下端に積層されて弁座2dに着座して伸側通路3を閉塞しており、内周がピストン2と伸側チャンバ12とで挟持されてピストン保持部材8の保持軸8aに固定され、外周の図1中下方側への撓みが許容され、外周の上記撓みによって伸側通路3を開くようになっている。より詳細には、伸側弁体Veと伸側チャンバ12との間には、間座50が介装されており、伸側弁体Veは、間座50で支持される部位より外周側の撓みが許容される。
伸側チャンバ12は、ピストン保持部材8における保持軸8aの外周に嵌合される筒状の装着部12aと、装着部12aの図1中下端外周に設けたフランジ部12bと、フランジ部12bの外周からピストン2側へ向けて伸びる摺接筒12cとを備えて構成されている。
この摺接筒12c内には、伸側スプールSeが収容されている。伸側スプールSeは、外周を摺接筒12cの内周に摺接させており、当該摺接筒12c内で軸方向へ移動することができるようになっている。伸側スプールSeは、環状のスプール本体13と、スプール本体13の図1中上端内周から立ち上がる環状突起14とを備えており、環状突起14が伸側弁体Veの背面となる図1中下面に当接することができるようになっている。
そして、このように、伸側チャンバ12に伸側スプールSeを組み付け、当該伸側チャンバ12を保持軸8aに組み付けると、伸側弁体Veの背面側である図1中下方側に伸側背圧室Ceが形成される。なお、スプール本体13の内径は、装着部12aの外径より大きくしているが、装着部12aの外周に摺接する径に設定されて、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで封じるようにすることも可能である。
また、伸側チャンバ12の装着部12aの内周には、環状溝12dが設けられるとともに、装着部12aの外周から当該環状溝12dに通じる切欠12eとを備えており、伸側チャンバ12を保持軸8aに組み付けると、環状溝12dは保持軸8aに設けた横孔8hに対向して、伸側背圧室Ceが横孔8hに通じるようになっている。
さらに、伸側チャンバ12には、フランジ部12bの外周から開口する圧側圧力導入通路Ppとして機能するオリフィス通路が設けられていて、圧側室R2を伸側背圧室Ce内へ通じさせている。伸側チャンバ12のフランジ部12bの図1中上端には、環状板15が積層され、この環状板15と伸側スプールSeにおけるスプール本体13との間に介装されたばね部材16によって当該環状板15がフランジ部12bへ押しつけられて圧側圧力導入通路Ppを閉塞するようになっている。なお、圧側圧力導入通路Ppは、通過する液体の流れに対して抵抗を与えればよいので、オリフィス通路だけではなく、チョーク通路といった他の絞り通路とされてもよいし、途中にリーフバルブやポペットバルブなどの抵抗を与える通路とされてもよい。
この環状板15は、液圧緩衝器Dの収縮作動時において、圧側室R2が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部12bから離座して圧側圧力導入通路Ppを開放し、伸側背圧室Ce内の圧力が圧側室R2より高くなる液圧緩衝器Dの伸長作動時にはフランジ部12bに押しつけられて圧側圧力導入通路Ppを閉塞し、圧側室R2からの液体の流れのみを許容する圧側逆止弁Tpの逆止弁弁体として機能している。また、この実施の形態の場合、環状板15には、切欠によって形成したオリフィス15aが設けられており、オリフィス15aは圧側逆止弁Tpに並列して、常に、伸側背圧室Ceを圧側室R2へ連通している。
ばね部材16は、環状板15をフランジ部12bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板15とともに圧側逆止弁Tpを構成するとともに、伸側スプールSeを伸側弁体Veへ向けて附勢する役割をも担っている。伸側スプールSeをばね部材16で附勢することで、伸側弁体Veが撓んで伸側スプールSeがピストン2から離間する図1中下方へ押し下げられた状態となってから、伸側弁体Veの撓みが解消しても、ばね部材16によって附勢されているので、伸側スプールSeは伸側弁体Veに追従して速やかに元の位置(図1に示す位置)へ戻ることができる。伸側スプールSeの附勢を別途のばね部材で附勢することも可能であるが、圧側逆止弁Tpとばね部材16を共用することができ部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、伸側スプールSeの外径は、環状突起14の内径よりも大径に設定されていて、環状突起14が伸側弁体Veに当接するようになっているので、伸側スプールSeは伸側背圧室Ceの圧力によって常に伸側弁体Veへ向けて附勢されるので、伸側スプールSeのみを附勢することを目的としたばね部材であれば設置をしなくともよい。
ピストン2の上方に積層される圧側弁体Vpは、伸側弁体Veと同様に、孔空き円盤状とされていて、ピストン2の図1中上端に積層されて弁座2cに着座して圧側通路4を閉塞しており、内周がピストン2と圧側チャンバ11とで挟持されてピストン保持部材8の保持軸8aに固定され、外周の図1中上方側への撓みが許容され、外周の上記撓みによって圧側通路4を開くようになっている。より詳細には、圧側弁体Vpと圧側チャンバ11との間には、間座51が介装されており、圧側弁体Vpは、間座51で支持される部位より外周側の撓みが許容される。
圧側チャンバ11は、ピストン保持部材8における保持軸8aの外周に嵌合される筒状の装着部11aと、装着部11aの図1中上端外周に設けたフランジ部11bと、フランジ部11bの外周からピストン2側へ向けて伸びる摺接筒11cとを備えて構成されている。
この摺接筒11c内には、圧側スプールSpが収容されている。圧側スプールSpは、外周を摺接筒11cの内周に摺接させており、当該摺接筒11c内で軸方向へ移動することができるようになっている。圧側スプールSpは、環状のスプール本体17と、スプール本体17の図1中下端から立ち上がる環状突起18とを備えており、環状突起18が圧側弁体Vpの背面となる図1中上面に当接することができるようになっている。
そして、このように、圧側チャンバ11に圧側スプールSpを組み付け、当該圧側チャンバ11を保持軸8aに組み付けると、圧側弁体Vpの背面側である図1中上方側に圧側背圧室Cpが形成される。なお、スプール本体17の内径は、装着部11aの外径より大きくしているが、装着部11aの外周に摺接する径に設定されて、圧側背圧室Cpを圧側スプールSpで封じるようにすることも可能である。
また、圧側チャンバ11の装着部11aの内周には、環状溝11dが設けられるとともに、装着部11aの外周から当該環状溝11dに通じる切欠11eとを備えており、伸側チャンバ11を保持軸8aに組み付けると、環状溝11dは保持軸8aに設けた横孔8gに対向して、圧側背圧室Cpが横孔8gに通じるようになっている。圧側背圧室Cpは、横孔8gに通じることで、保持軸8aの縦孔8d内に形成した連通路24および横孔8hを通じて伸側背圧室Ceにも連通される。
さらに、圧側チャンバ11には、フランジ部11bの外周から開口する伸側圧力導入通路Peとして機能するオリフィス通路が設けられており、伸側室R1を圧側背圧室Cp内へ通じさせている。圧側チャンバ11のフランジ部11bの図1中下端には、環状板19が積層され、環状板19と圧側スプールSpにおけるスプール本体17との間に介装されたばね部材20によって当該環状板19がフランジ部11bへ押しつけられて伸側圧力導入通路Peを閉塞するようになっている。なお、伸側圧力導入通路Peは、通過する液体の流れに対して抵抗を与えればよいので、オリフィス通路だけではなく、チョーク通路といった他の絞り通路とされてもよいし、途中にリーフバルブやポペットバルブなどの抵抗を与える通路とされてもよい。
この環状板19は、液圧緩衝器Dの伸長作動時において、伸側室R1が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部11bから離座して伸側圧力導入通路Peを開放し、圧側背圧室Cp内の圧力が伸側室R1より高くなる液圧緩衝器Dの収縮作動時にはフランジ部11bに押しつけられて伸側圧力導入通路Peを閉塞し、伸側室R1からの液体の流れのみを許容する伸側逆止弁Teの逆止弁弁体として機能している。また、この実施の形態の場合、環状板19には、切欠によって形成したオリフィス19aが設けられており、オリフィス19aは伸側逆止弁Teに並列して、常に、圧側背圧室Cpを伸側室R1へ連通している。
さらに、圧側チャンバ11のフランジ部11bには、フランジ部11bを貫く通孔11fが設けられており、この通孔11fは、保持軸8aに組付けられると、ピストン保持部材8のフランジ8bに設けた環状溝8eとポート8fを通じて収容部L内に連通される。よって、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpは、互いが連通されるだけでなく、伸側圧力導入通路Peを介して伸側室R1に連通され、圧側圧力導入通路Ppを介して圧側室R2に連通され、さらには、環状溝8e、ポート8fおよび通孔11fによって上流通路が形成されて伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpが収容部Lへも連通されている。
ばね部材20は、環状板19をフランジ部11bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板19とともに伸側逆止弁Teを構成するとともに、圧側スプールSpを圧側弁体Vpへ向けて附勢する役割をも担っている。圧側スプールSpをばね部材20で附勢することで、圧側弁体Vpが撓んで圧側スプールSpがピストン2から離間する図1中上方へ押し上げられた状態となってから、圧側弁体Vpの撓みが解消しても、ばね部材20によって附勢されているので、圧側スプールSpは圧側弁体Vpに追従して速やかに元の位置(図1に示す位置)へ戻ることができる。圧側スプールSpの附勢を別途のばね部材で附勢することも可能であるが、伸側逆止弁Teとばね部材20を共用することができ部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、圧側スプールSpの外径は、環状突起18の内径よりも大径に設定されていて、環状突起18が圧側弁体Vpに当接するようになっているので、圧側スプールSpは圧側背圧室Cpの圧力によって常に圧側弁体Vpへ向けて附勢されるので、圧側スプールSpのみを附勢することを目的としたばね部材であれば設置をしなくともよい。
そして、伸側スプールSeは、伸側背圧室Ceの圧力を受けて伸側弁体Veをピストン2へ向けて附勢するが、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積は、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積から環状突起14の内径を直径とする円の面積の差分となる。同様に、圧側スプールSpは、圧側背圧室Cpの圧力を受けて圧側弁体Vpをピストン2へ向けて附勢するが、圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積は、圧側スプールSpの外径を直径とする円の面積から環状突起18の内径を直径とする円の面積の差分となる。そして、この実施の形態の液圧緩衝器Dの場合、伸側スプールSeの受圧面積は、圧側スプールSpの受圧面積よりも大きくしてある。
伸側弁体Veの背面には伸側スプールSeの環状突起14が当接するとともに、間座50に支持されているので、伸側弁体Veに伸側背圧室Ceの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起14の内径を直径とする円の面積から間座50の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積から間座50の外径を直径とする円の面積を除いた面積に伸側背圧室Ceの圧力を乗じた力を伸側荷重として、この伸側荷重によって伸側弁体Veがピストン2へ向けて附勢される。
他方、圧側弁体Vpの背面には圧側スプールSpの環状突起18が当接するとともに、間座51に支持されているので、圧側弁体Vpに圧側背圧室Cpの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起18の内径を直径とする円の面積から間座51の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、圧側スプールSpの外径を直径とする円の面積から間座51の外径を直径とする円の面積を除いた面積に圧側背圧室Cpの圧力を乗じた力を圧側荷重として、この圧側荷重によって圧側弁体Vpがピストン2へ向けて附勢される。
したがって、伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Cpの圧力が等圧である場合、伸側弁体Veが伸側背圧室Ceから受ける荷重である伸側荷重は、圧側弁体Vpが圧側背圧室Cpから受ける荷重である圧側荷重よりも大きくなるように設定されている。なお、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで閉鎖して伸側背圧室Ceの圧力を伸側弁体Veに直接に作用させない場合には、伸側荷重は伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積のみによって決まり、圧側も同様に、圧側背圧室Cpを圧側スプールSpで閉鎖して圧側背圧室Cpの圧力を圧側弁体Vpに直接に作用させない場合には、圧側荷重は圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積のみによって決まる。伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Cpの圧力が等圧である場合に、伸側弁体Veが伸側背圧室Ceから受ける伸側荷重が、圧側弁体Vpが圧側背圧室Cpから受ける圧側荷重よりも大きくなるように設定されればよいので、伸側弁体Veにも圧側弁体Vpにも直接背圧室Ce,Cpから圧力を作用させない場合には、伸側スプールSeの受圧面積を圧側スプールSpの受圧面積より大きくすれば足りる。伸側背圧室Ceの圧力を伸側弁体Veに直接に作用させるが、圧側背圧室Cpの圧力は圧側弁体Vpに直接作用させないようにしてもよいし、その逆を採用してもよい。本発明では、伸側スプールSeと圧側スプールSpを用いているので、伸側弁体Veに実質的に伸側背圧室Ceの圧力を作用させる受圧面積を伸側弁体Veのみの受圧面積よりも大きく設定することができ、圧側スプールSpと伸側スプールSeの受圧面積差も大きく設定することができるので、伸側荷重と圧側荷重に大きな差を持たせることができ伸側荷重と圧側荷重の設定幅に非常に高い自由度を与えることができる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpを上流として、伸側排出通路Eeおよび圧側排出通路Epを下流として、上述の上流通路を含んで形成される調整通路Pcでこれらを連通しており、電磁圧力制御弁6は、この調整通路Pcの途中に設けられていて、上流の伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpの圧力を制御できるようになっている。よって、電磁圧力制御弁6によって伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cp内の圧力を制御するに際して、伸側荷重を圧側荷重よりも大きくしているので、小さな圧力でも伸側荷重を大きくすることができ、伸側の減衰力を大きくしたい場合にあっても、電磁圧力制御弁6で制御すべき最大圧力を低くすることができるのである。
なお、本実施の形態では、伸側スプールSeは、内周が伸側チャンバ12の装着部12aの外周に摺接しておらず、伸側背圧室Ceの圧力が伸側弁体Veの背面側であって環状突起14の当接部位の内側にも作用して当該伸側弁体Veを附勢するので、伸側荷重の設定に当たり、伸側背圧室Ceの圧力で伸側弁体Veを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。圧側スプールSpも内周が圧側チャンバ11の装着部11aの外周に摺接しておらず、圧側背圧室Cpの圧力が圧側弁体Vpの背面側であって環状突起18の当接部位の内側にも作用して当該圧側弁体Vpを附勢するので、圧側荷重の設定に当たり、圧側背圧室Cpの圧力で圧側弁体Vpを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。
また、伸側弁体Veと圧側弁体Vpは、共に、内周がピストンロッド7に固定されるようになっているが、ピストンロッド7にフローティング支持させるようにして、ピストン2に対して全体が離間できるようにしてもよい。
電磁圧力制御弁6は、この実施の形態では、非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に圧力制御を行うよう設定され、また、調整通路Pcの途中には、電磁圧力制御弁6を迂回するフェール弁FVが設けられている。
電磁圧力制御弁6は、図1および図2に示すように、弁収容筒30aと制御弁弁座30dとを備えた弁座部材30と、制御弁弁座30dに離着座する電磁弁弁体31と、電磁弁弁体31に推力を与えこれを軸方向に駆動するソレノイドSolとを備えて構成されている。
そして、弁座部材30は、ピストン保持部材8のソケット8c内に嵌合されて、フランジ8bの図2中上端に積層される環状のバルブハウジング32の内周に弁収容筒30aを挿入することで径方向へ位置決められつつ、収容部L内に収容されている。
バルブハウジング32は、図2に示すように、環状であって、図2中上端に設けた環状窓32aと、環状窓32aから開口して図2中下端に通じるポート32bと、図2中上端内周から開口してポート32bに通じる切欠溝32cと、外周に設けられて軸方向に沿って設けた溝32dと、上記環状窓32aの外周を囲む環状のフェール弁弁座32eとを備えて構成されている。
このバルブハウジング32をソケット8c内に挿入してフランジ8bの図2中上端に積層すると、ポート32bがポート8fのフランジ8bの上端に面する開口に対向してポート32bおよび切欠溝32cがポート8fに連通され、さらに、溝32dがフランジ8cに設けた溝8jに対向してこれらが連通されるようになっている。
よって、ポート32bおよび切欠溝32cは、環状溝8e、ポート8fおよび通孔11fによって形成される上流通路を通じて伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpに連通されている。また、溝32dは、溝8jを通じてセパレータ23内、逆止弁25で形成される伸側排出通路Eeを通じて圧側室R2に連通されるとともに、透孔9c、凹部8k、貫通孔8mおよび逆止弁22によって形成される圧側排出通路Epを通じて伸側室R1に連通されている。
バルブハウジング32内には、筒状の弁座部材30における弁収容筒30aが収容されている。この弁座部材30は、有底筒状であって図2中上端外周にフランジ30bを備えた弁収容筒30aと、弁収容筒30aの側方から開口して内部へ通じる透孔30cと、弁収容筒30aの図2中上端に軸方向へ向けて突出する環状の制御弁弁座30dとを備えて構成されている。
また、弁座部材30の弁収容筒30aの外周には、環状のリーフバルブであるフェール弁弁体33が装着されており、弁収容筒30aをバルブハウジング32に挿入して弁座部材30をバルブハウジング32に組み付けると、フェール弁弁体33は、内周が弁座部材30におけるフランジ30bとバルブハウジング32の図2中上端内周とで挟持されて固定されるともに、外周側がバルブハウジングに設けた環状のフェール弁弁座32eに初期撓みが与えられた状態で着座し、環状窓32aを閉塞する。このフェール弁弁体33は、ポート32bを通じて環状窓32a内に作用する圧力が開弁圧に達すると撓んで、環状窓32aを開放してポート32bを伸側排出通路Eeおよび圧側排出通路Epへ連通させるようになっており、このフェール弁弁体33とフェール弁弁座32eとでフェール弁FVを形成している。
また、弁収容筒30aをバルブハウジング32に挿入して弁座部材30をバルブハウジング32に組み付けると、バルブハウジング32に設けた切欠溝32cが弁収容筒30aに設けた透孔30cが対向して、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpがポート32bを通じて弁収容筒30a内に連通される。
弁座部材30の図1中上方には、環状であってフランジ30bの図1中上端に当接する弁固定部材35が積層されており、さらに、弁固定部材35の図1中上方には電磁弁収容筒9内に収容されるソレノイドSolが配置されていて、電磁弁収容筒9にピストン保持部材8を螺着して一体化する際に、バルブハウジング32、フェール弁弁体33、弁座部材30、弁固定部材35およびソレノイドSolが電磁弁収容筒9とピストン保持部材8に挟持されて固定される。なお、弁固定部材35には、弁座部材30のフランジ30bに当接しても、弁固定部材35の内周側の空間が弁座部材30の外周側の空間に連通できるように切欠溝35aが設けられている。この連通は、切欠溝35aではなく、ポートなどの孔で行うようにしてもよい。
ソレノイドSolは、巻線37と巻線37に通電するハーネスHとをモールド樹脂で一体化した有頂筒状のモールドステータ36と、有頂筒状であってモールドステータ36の内周に嵌合される第一固定鉄心38と、モールドステータ36の図1中下端に積層される環状の第二固定鉄心39と、第一固定鉄心38と第二固定鉄心39との間に介装されて磁気的な空隙を形成するフィラーリング40と、第一固定鉄心38と第二固定鉄心39の内周側に軸方向移動可能に配置された筒状の可動鉄心41と、可動鉄心41の内周に固定されるシャフト42とを備えて構成されており、巻線37に通電することによって、可動鉄心41を吸引してシャフト42に図1中下方向きの推力を与えることができるようになっている。
さらに、弁座部材30内には、電磁弁弁体31が摺動自在に挿入されている。電磁弁弁体31は、詳しくは、弁座部材30における弁収容筒30a内に摺動自在に挿入される小径部31aと、小径部31aの図2中上方側である反弁座部材側に設けられて弁収容筒30aには挿入されない大径部31bと、小径部31aと大径部31bとの間に設けた環状の凹部31cと、大径部31bの反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部31dと、電磁弁弁体31の先端から後端へ貫通する連絡路31e、連絡路31eの途中に設けたオリフィス31fとを備えて構成されている。
また、電磁弁弁体31にあっては、上述のように、凹部31cを境にして反弁座部材側の外径を小径部31aより大径として大径部31bが形成されており、この大径部31bの図2中下端に制御弁弁座30dに対向する着座部31gを備え、電磁弁弁体31が弁座部材30に対して軸方向へ移動することで着座部31gが制御弁弁座30dに離着座するようになっている。つまり、電磁弁弁体31と弁座部材30とを備えて電磁圧力制御弁6が構成されており、着座部31gが制御弁弁座30dに着座すると電磁圧力制御弁6が閉弁するようになっている。
また、弁座部材30のフランジ30bとばね受部31dとの間には、電磁弁弁体31を弁座部材30から離間する方向へ附勢するコイルばね34が介装されており、このコイルばね34の附勢力に対して対抗する推力を発揮するソレノイドSolが設けられている。したがって、電磁弁弁体31は、コイルばね34によって常に弁座部材30から離間する方向へ附勢されており、ソレノイドSolからのコイルばね34に対抗する推力が作用しないと、弁座部材30から最も離間する位置に位置決められる。なお、この場合、コイルばね34を利用して、電磁弁弁体31を弁座部材30から離間させる方向へ附勢するようにしているが、コイルばね34以外にも附勢力を発揮することができる弾性体を使用することができる。
そして、電磁弁弁体31は、弁座部材30に対して最も離間すると、透孔30cに小径部31aを対向させて透孔30cを閉塞し、ソレノイドSolに通電して弁座部材30に対して最も離間する位置から弁座部材側へ所定量移動させると、常に、凹部31cを透孔30cに対向させて透孔30cを開放するようになっている。
電磁弁弁体31が透孔30cを開放し、着座部31gが制御弁弁座30dから離坐すると透孔30cが電磁弁弁体31の凹部31cおよび弁固定部材35に設けた切欠溝35aを通じて伸側排出通路Eeおよび圧側排出通路Epに連通されるようになっており、ソレノイドSolの推力を調節することで、電磁弁弁体31を弁座部材30側へ附勢する力をコントロールすることができ、電磁圧力制御弁6の上流の圧力の作用とコイルばね34による電磁弁弁体31を図2中において押し上げる力がソレノイドSolによる電磁弁弁体31を押し下げる力を上回ると電磁圧力制御弁6は開弁して、電磁弁圧力制御弁6の上流側の圧力をソレノイドSolの推力に応じて制御することができる。そして、電磁圧力制御弁6の上流は、ポート32bおよび上流通路を介して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpに通じているので、この電磁圧力制御弁6によって伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpの圧力を同時に制御することができる。また、電磁圧力制御弁6の下流は、伸側排出通路Eeおよび圧側排出通路Epに通じており、電磁圧力制御弁6を通過した液体は、液圧緩衝器Dの伸長作動時には低圧側の圧側室R2へ、液圧緩衝器Dの収縮作動時には低圧側の伸側室R1へ排出されることになる。よって、調整通路Pcは、上記した上流通路およびポート32b、切欠溝32c、収容部Lの一部、溝32dによって形成される。
また、電磁圧力制御弁6は、ソレノイドSolへ通電できないフェール時には、弁座部材30における透孔30cを電磁弁弁体31における小径部31aで閉塞する遮断ポジションを備えて、圧力制御弁としてだけではなく、開閉弁としても機能する。フェール弁FVは、ポート32bに通じる環状窓32aを開閉するようになっていて、その開弁圧が電磁圧力制御弁6の制御可能な上限圧を超える圧力に設定されており、電磁圧力制御弁6を迂回してポート32bを伸側排出通路Eeおよび圧側排出通路Epに連通することができるようになっているので、電磁圧力制御弁6の上流側の圧力が制御上限圧を超えるような場合、フェール弁FVが開弁して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpの圧力をフェール弁FVの開弁圧に制御できるようになっている。したがって、たとえば、フェール時において電磁圧力制御弁6が遮断ポジションをとっている場合には、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpの圧力はフェール弁FVにより制御されることになる。
さらに、電磁弁弁体31は、弁座部材30の弁収容筒30a内に挿入されると、弁収容筒30a内であって透孔30cより先端側に空間Kを形成する。この空間Kは、電磁弁弁体31に設けた連絡路31eおよびオリフィス31fを介して電磁弁弁体外に連通されている。これにより、電磁弁弁体31が弁座部材30に対して図2中上下方向である軸方向に移動する際、上記空間Kがダッシュポットとして機能して、電磁弁弁体31の急峻な変位を抑制するとともに、電磁弁弁体31の振動的な動きを抑制することができる。
つづいて、液圧緩衝器Dの作動について説明する。液圧緩衝器Dが伸長してピストン2が図1中上方へ移動すると、圧縮される伸側室R1から拡大される圧側室R2へ液体が伸側弁体Veを押して撓ませて伸側通路3を通過して移動する。伸側弁体Veは、伸側背圧室Ceの圧力に起因する上述した伸側荷重を受けてピストン2側へ向けて附勢されており、伸側通路3側から受ける伸側室R1の圧力によって伸側弁体Veを撓ませようとする力と、撓み量に応じて伸側弁体Ve自体が持つばね反力で弁座2dへ着座する位置へ戻ろうとする力および上記伸側荷重とがバランスするように撓んで伸側通路3を開放することになる。
また、伸側室R1内の液体は、伸側逆止弁Teを押し開いて伸側圧力導入通路Peを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した液体は、逆止弁25を押し開いて伸側排出通路Eeを介して低圧側の圧側室R2へ排出される。なお、伸側圧力導入通路Peは、液体の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらし、液体が流れている状態では、調整通路Pcの下流では、伸側室R1よりも低圧となるため、圧側排出通路Epに設けた逆止弁22は開かず閉塞されたままとなる。
伸側圧力導入通路Peは、圧側背圧室Cpに通じるだけでなく、連通路24を介して伸側背圧室Ceに通じているので、圧側背圧室Cpと伸側背圧室Ceの内部圧力はほぼ等圧となる。圧側背圧室Cpの圧力は、低圧側の圧側室R2よりも高くなるが、液体の流れが生じない圧側通路4を閉塞する圧側弁体Vpを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、上記したように電磁圧力制御弁6が設けてあり、電磁圧力制御弁6のソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、伸側背圧室Ce内の圧力を調整して伸側荷重を所望の荷重に制御することができる。以上により、電磁圧力制御弁6によって伸側弁体Veの開度を制御することができ、これによって、液圧緩衝器Dの伸長作動を行う際の伸側減衰力を制御することができる。
反対に、液圧緩衝器Dが収縮してピストン2が図1中下方へ移動すると、圧縮される圧側室R2から拡大される圧側室R1へ液体が圧側弁体Vpを押して撓ませて圧側通路4を通過して移動する。圧側弁体Vpは、圧側背圧室Cpの圧力に起因する上述した圧側荷重を受けてピストン2側へ向けて附勢されており、圧側通路4側から受ける圧側室R2の圧力によって圧側弁体Vpを撓ませようとする力と、撓み量に応じて圧側弁体Vp自体が持つばね反力で弁座2cへ着座する位置へ戻ろうとする力および上記圧側荷重とがバランスするように撓んで圧側通路4を開放することになる。
また、圧側室R2内の液体は、圧側逆止弁Tpを押し開いて圧側圧力導入通路Ppを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した液体は、逆止弁22を押し開いて圧側排出通路Epを介して低圧側の伸側室R1へ排出される。なお、圧側圧力導入通路Ppは、液体の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらすので、液体が流れている状態では、調整通路Pcの下流では、圧側室R2よりも低圧となるため、伸側排出通路Eeに設けた逆止弁25は開かず閉塞されたままとなる。
圧側圧力導入通路Ppは、伸側背圧室Ceに通じるだけでなく、連通路24を介して圧側背圧室Cpに通じているので、圧側背圧室Cpと伸側背圧室Ceの内部圧力はほぼ等圧となる。伸側背圧室Ceの圧力は、低圧側の伸側室R1よりも高くなるが、液体の流れが生じない伸側通路3を閉塞する伸側弁体Veを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、上記したように電磁圧力制御弁6が設けてあり、電磁圧力制御弁6のソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、圧側背圧室Cp内の圧力を調整して圧側荷重を所望の荷重に制御することができる。以上により、電磁圧力制御弁6によって圧側弁体Vpの開度を制御することができ、これによって、液圧緩衝器Dの収縮作動を行う際の圧側減衰力を制御することができる。
車両用の緩衝器にあっては、伸長作動時の伸側減衰力を収縮作動時の圧側減衰力に比して大きくする必要があり、片ロッド型に設定される液圧緩衝器Dでは伸側室R1の圧力を受ける受圧面積がピストン2の断面積からロッド部材10の断面積を除いた面積となることもあって、伸長作動時における伸側室R1の圧力は、収縮作動時における圧側室R2の圧力に比して非常に大きくする必要がある。
これに対して本発明の液圧緩衝器Dにあっては、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとが等圧である場合に、伸側弁体Veを附勢する伸側荷重が圧側弁体Vpを附勢する圧側荷重よりも大きくしてある。また、本発明では、伸側スプールSeを用いることで、伸側スプールSeを用いずに伸側弁体Veの背面側に伸側背圧室Ceの圧力を作用させるだけの構造に比較して、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を伸側弁体Veの背面面積よりも大きく稼ぐことができ、伸側弁体Veに対して大きな伸側荷重を作用させることができる。さらに、伸側スプールSeと圧側スプールSpを用いることで、伸側荷重と圧側荷重の設計自由度も向上する。
よって、本発明の液圧緩衝器Dにあっては、伸長作動時において伸側減衰力を調整するために伸側荷重を非常に大きくする必要がある場合に、伸側背圧室Ceの圧力が小さくとも大きな伸側荷重を出力させるように設定することができ、大型なソレノイドSolを使用せずとも伸側減衰力の制御幅を確保することができる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpの圧力制御をそれぞれ独立した弁体を駆動して行うのではなく、圧側荷重に比して伸側荷重を大きくすることで伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpの圧力を連通して制御しても伸側減衰力の制御幅を確保することができるので、電磁圧力制御弁6には一つの電磁弁弁体31を設ければ足り、その構造は非常に簡単となり、コストも低減される。
以上より、電磁圧力制御弁6におけるソレノイドSolを小型化することができることに加え、電磁圧力制御弁6の構造も簡単となり、液圧緩衝器Dのピストン部へ適用しても液圧緩衝器Dが大型化されない。よって、本発明の液圧緩衝器Dによれば、液圧緩衝器Dの構造が簡単となって小型化でき、車両への搭載性の悪化を招くこともなく、ソレノイドSolが伸側減衰力を大きくするうえで大きな推力を発揮しなくて済むために、減衰力を小さくする場合の消費電力を小さくして省電力化することができる。
伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積よりも大きくしたので、容易に伸側荷重を圧側荷重に比して大きくすることができる。
また、伸側圧力導入通路Peに伸側逆止弁Teに並列するオリフィス19aを設け、圧側圧力導入通路Ppに圧側逆止弁Teに並列するオリフィス15aを設けることで、伸側背圧室Ce内と圧側背圧室Cp内の圧籠りを防止することができ、伸側弁体Veおよび圧側弁体Vpの開き遅れなどが抑制され、液圧緩衝器Dに安定した減衰力を発揮させることができる。
ピストンロッド7の外周側に、伸側通路3と圧側通路4とを備えたピストン2と、ピストン2に積層された伸側弁体Veおよび圧側弁体Vpと、筒状であって内周に伸側スプールSeが摺動自在に挿入されるとともに伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ12と、筒状であって内周に圧側スプールSpが摺動自在に挿入されるとともに圧側背圧室Cpを形成する圧側チャンバ11とを装着するとともに、上記伸側チャンバ12に圧側圧力導入通路Ppを設け、圧側チャンバ11に伸側圧力導入通路Peを設けるようにしたので、液圧緩衝器Dのピストン部に減衰力調整に要する各部材を集中配置することができる。
さらに、伸側スプールSeの伸側弁体Veへの附勢と圧側圧力導入通路Ppを開閉する圧側逆止弁Tpにおける逆止弁弁体としての環状板15の附勢とを一つのばね部材16で行い、圧側スプールSpの圧側弁体Vpへの附勢と伸側圧力導入通路Peを開閉する伸側逆止弁Teにおける逆止弁弁体としての環状板19の附勢とを一つのばね部材20で行うようにしたので、一つのばね部材16,20にて逆止弁Te,TpとスプールSe,Spの戻り側への復元を行うことができ、部品点数を削減することができる。
また、液圧緩衝器Dは、ピストンロッド7に、先端に設けられてピストン2、伸側弁体Ve、圧側弁体Vp、伸側チャンバ12および圧側チャンバ11が外周に装着される保持軸8aと、保持軸8aの先端から開口する縦孔8dと、内部に設けられて縦孔8dに通じて電磁圧力制御弁6を収容する収容部Lと、当該収容部Lを伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Cpに連通する上流通路と、収容部Lを伸側室R1に連通する圧側排出通路Epとを設け、縦孔8d内に挿入されて外周に設けた環状溝23aで縦孔8d内に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとを連通する連通路24を形成するとともに内周に伸側排出通路Eeを形成するセパレータ23を備えるので、無理なく、ピストンロッド7に電磁圧力制御弁6を収容するとともに、電磁圧力制御弁6とは軸方向にずらしてピストンロッド7の外周に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとを設けることができる。
さらに、電磁圧力制御弁6が非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に圧力制御を行うよう設定され、調整通路Pcの途中に設けられて電磁圧力制御弁を迂回するフェール弁FVを備え、フェール弁FVの開弁圧を電磁圧力制御弁6による最大制御圧力より大きくしたので、フェール時には、伸側荷重と圧側荷重が最大となり、液圧緩衝器Dは、もっとも大きな減衰力を発揮して、フェール時にあっても車体姿勢を安定させることができる。
なお、電磁圧力制御弁6が遮断ポジションをとる際に、電磁弁弁体31の小径部31aを透孔30cに対向させて透孔30cを閉塞して閉弁するようになっているが、完全に、透孔30cを閉塞せずに遮断ポジションにて凹部31cを少しし透孔30cに対向させるなどして絞り弁として機能させることも可能である。このようにすることで、フェール時の液圧緩衝器Dの減衰特性において、ピストン速度が低い領域にて電磁圧力制御弁6における遮断ポジション絞り弁の特性を付加することができ、フェール時にあっても車両における乗り心地を向上させることができる。
さらに、電磁圧力制御弁6は、筒状であって内外を連通する透孔30cを有して調整通路Pcの一部を形成する弁収容筒30aと弁収容筒30aの端部に設けられた環状の制御弁弁座30dとを備えた弁座部材30と、弁収容筒30a内に摺動自在に挿入される小径部31aと、大径部31bと、当該小径部31aと当該大径部31bとの間に設けられて透孔30cに対向可能な凹部31cと、大径部31bの端部を制御弁弁座30dに離着座させる電磁弁弁体31とを備え、透孔30cに小径部31aを対向させることで調整通路Pcを遮断する。よって、電磁弁弁体31を弁座部材30から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積は、制御弁弁座30dの内径を直径とする円の面積から凹部31cの外径を直径とする円の面積を引いた面積となって、非常に受圧面積を小さくすることができ、開弁時の流路面積を大きくすることができるので、電磁弁弁体31の動きが安定する。また、小径部31aの外周を透孔30cに対向させて透孔30cを閉塞するから遮断ポジションにあっては、上流側から圧力を受けても閉弁したままとなり、フェール弁FVのみを有効とすることができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。