JP2015071846A - ストリップ状スチールコード,これを用いたタイヤ用ベルト層およびタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スチールコード1は,5本のスチール製のコアワイヤ2と,スチール製のラッピングワイヤ3とによって構成される。コアワイヤ2は一対の平面部2aと一対の曲面部2bを有する断面扁平形状のものである。このコアワイヤ2が,撚られることなく上記平面部2a同士が対向するように平行に引き揃えられており,上記平行に引き揃えられたコアワイヤ2がラッピングワイヤ3によって束ねられている。スチールコード1は,コアワイヤ2の長径方向を自動車用タイヤの外周面(接地面)に垂直な方向に向けて,自動車用タイヤ中(ベルト層中)に埋め込まれる。
【選択図】図1
Description
図1は,この発明の実施例を示すもので,ストリップ状のスチールコード1の一部拡大斜視図である。図2は図1のII−II線に沿う断面図である。図3はストリップ状スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の一部をさらに拡大して示す斜視図である。
上述したストリップ状スチールコード1(図1〜図3),およびこのスチールコード1が埋め込まれたベルト層4A,4B(図5)を備えるタイヤサイズ 195/65R15の自動車用タイヤ10(図4)を試作し,これらについて,様々な観点から評価試験を行った。以下,この評価試験について詳細に説明する。
ラッピングワイヤ3が断線すると,平行配列された複数本のコアワイヤ2の拘束力が無くなり,コアワイヤ2の並びに乱れが生じてしまう。スチールコード1を巻取リールに巻き取るときに,断線検出器が用いられてラッピングワイヤ3に断線が発生しているかどうかが検査される。ラッピングワイヤ3の断線が検出された場合,スチールコード1を巻取リールに巻き取る巻取機の運転が停止される。「ラップ断線」の欄には,ラッピングワイヤ3の断線が検出されたものについて「×」が示されている。ラッピングワイヤ3の断線が検出されることなく,規定のコード長のスチールコード1を巻取リールに巻き取ることができたものについて「○」が示されている。ラップ断線が「×」と評価されたものについては,後述する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
スチールコード1は,上述したように,自動車用タイヤ10のベルト層4A,4B中に埋込まれて用いられる(図4,図5)。スチールコード1にその長手方向を中心に回転する力(回転力)が内在すると,ベルト層4A,4Bまたはベルト層4A,4Bを製造する前段階のカレンダーシートに反りが生じてしまうことがある。したがってスチールコード1は回転力を持たないものであることが要求される。「回転性」の評価は以下のように実施される。まず,巻取リールから,スチールコード1を全く回転させずに6m引出し,引き出したスチールコード1の先端5cmをペンチで下向きにほぼ直角に折り曲げる。引き出したスチールコード1が地面等に接触しないように注意しつつ,スチールコード1を自由に回転させる。スチールコード1に残留トルクがあれば,スチールコード1は長手方向を中心に回転する。スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の巻付け方向と同じ方向に回転した場合を+とし,逆方向に回転した場合を−として,それぞれの方向に回転した回転数を記録する。回転数は整数で記録し,0.5回転未満は切り捨て,0.5回転以上は切り上げる。「回転性」の評価欄には,回転数が0(すなわち,±0.5回転未満)であったものについて「○」が,回転数が0でなかったものについて「×」がそれぞれ示されている。回転性が「×」と評価されたものについては,後述する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
図6(A)に示すように,スチールコード1を15本/インチの密度でゴム5に埋め込んだ試験サンプル6を作成した。図6(B)に示すように,この試験サンプル6を直径1インチのプーリー7に掛け, 50kgfの負荷荷重を加えてシューシャインテストを実施した。シューシャインテストでは,プーリー7に掛けた試験サンプル6の長手方向の両端のそれぞれにチャック8を固定し, 50kgfの負荷荷重を維持したまま,2つのチャック8を互いに逆向きに所定ストローク往復移動させる。試験サンプル6はプーリー7において繰り返し屈曲させられる。屈曲回数 150万回でテストを停止したあと試験サンプル6を解体し,スチールコード1の折れ(断線)の有無を確認した。「耐久性」の評価欄には,スチールコード1の折れが確認されなかったものについて「○」が,折れが確認されたものについて「×」が示されている。耐久性が「×」と評価されたものについては,次に説明する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
内圧200kPaでJIS規定の標準リムに組み込んだ自動車用タイヤ10を排気量 2000ccの試験車両に装着し,訓練された3名のテストドライバーがテストコースを走行し,官能評価をした。3名のドライバーは,各スチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を装着した試験車両の操縦安定性を,比較例1のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を6点とする10段階評価で採点し,その後,3名のドライバーによる採点の平均点を算出して,これを操縦安定性の評価結果とする。分かりやすくするために,「操縦安定性」の評価欄には,実施例30のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10についての操縦安定性の評価結果を「100」に換算したときの指数が示されている。数字が大きいほど操縦安定性が良好であることを意味する。また,上述したように,ラップ断線,回転性および耐久性のいずれかの評価が「×」であったスチールコード1については,操縦安定性の評価は実施していない(表1において「−」で示す)。
内圧200kPaでJIS規定の標準リムに組み込んだ自動車用タイヤ10を排気量 2000ccの試験車両に装着し,訓練された3名のテストドライバーが悪路テストコースを走行し,官能評価をした。3名のドライバーは,各スチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を装着した試験車両の乗り心地を,比較例1のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を6点とする10段階評価で採点し,その後,3名のドライバーによる採点の平均点を算出してこれを乗り心地の評価結果とする。分かりやすくするために,「乗り心地」の評価欄には,実施例30のスチールコード1を用いた自動車タイヤ10についての乗り心地の評価結果を「100」に換算したときの指数が示されている。数字が大きいほど乗り心地が良好であることを意味する。また,上述したように,ラップ断線,回転性および耐久性のいずれかの評価が「×」であったスチールコード1については,乗り心地の評価は実施していない(表1において「−」で示す)。
比較例20および21を参照して,比較例20のスチールコード1は断面積が 0.015mm2のコアワイヤ2を,比較例21のスチールコード1は断面積が 0.017mm2のコアワイヤ2を,それぞれ用いたものである。比較例20,21のように,比較的小さい断面積を持つコアワイヤ2,すなわち細いコアワイヤ2を用いると,耐久性の評価が「×」となった。比較例20,21のコアワイヤ2を用いたスチールコード1は,シューシャインテストにおいてスチールコード1の折れ(断線)が確認されたことから,耐久性の評価が「×」となったものである。他方,実施例49,50を参照して,実施例49,50のスチールコード1はいずれも断面積が 0.019mm2のコアワイヤ2を用いたものである。実施例49,50のスチールコード1を用いると耐久性の評価が「○」となっている。耐久性に良好にするには,コアワイヤ2の断面積を 0.018mm2以上(好ましくは0.019mm2以上)とする必要がある(図7〜図10参照)。
断面積の大きいコアワイヤ2,すなわち太いコアワイヤ2を用いると,地面に接触する自動車用タイヤ10の外周面に垂直方向の剛性(面外剛性)が高くなるから,耐久性は良好になる。しかしながら,コアワイヤ2の断面積を大きくすればするほど,そのコアワイヤ2を用いたスチールコード1の重量が重くなり,結果的にそのスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10の重量も重くなってしまう。
乗り心地の観点でさらに検討すると,比較例23および24を参照して,比較例23および24のものは,コアワイヤ2の断面積はさほど大きくはない(それぞれ 0.077mm2,0.066mm2)にも関わらず,乗り心地の評価が悪化している(乗り心地の指数はそれぞれ89,94)。比較例23,24のスチールコード1のコアワイヤ2はその長径d2が 0.370mmと比較的長い。自動車用タイヤ10の外周面に対して垂直な方向を向くコアワイヤ2の長径d2が長すぎても,自動車用タイヤ10の面外剛性が高くなりすぎて乗り心地に悪影響を与えると考えられる。コアワイヤ2の長径d2を 0.350mm以下とすると,乗り心地の評価は悪化していない(実施例58,59,60,61)。乗り心地を良好にするにはコアワイヤ2の長径d2を0.350mm以下にすることが必要である(図7〜図10参照)。
次に比較例1および比較例2を参照して,コアワイヤ2の扁平率が 100%,すなわち断面が円形である丸線のコアワイヤ2を用いると,操縦安定性の評価が悪化した(操縦安定性の指数はそれぞれ89,94)。また,比較例25〜比較例27を参照して,扁平率が比較的大きい90%のコアワイヤ2を用いた場合も,操縦安定性の評価が悪化した(操縦安定性の指数はそれぞれ89,94,94)。断面が円形の,ないし円形に近いコアワイヤ2を用いると,自動車用タイヤ10の面外剛性が不足して操縦安定性に欠けることがあると考えられる。もっとも,断面が円形ないし円形に近いコアワイヤ2であっても,その直径が太く,断面積が大きいものであれば,操縦安定性の評価は向上する。しかしながら,直径を太くすればするほど(断面積が大きいほど)自動車用タイヤ10の重量が増加してしまう。扁平率を85%以下とすると,操縦安定性に影響はなかった(実施例61を参照)。重量増加を抑制し,しかも操縦安定性を良好にするには,コアワイヤ2を扁平に形成する必要があり,その扁平率を85%以下にすることが必要であることが分かる(図7参照)。
比較例28および29を参照して,比較例28および29のスチールコード1を構成するコアワイヤ2の扁平率は45%であり,短径d1 が長径d2 の1/2未満となる程度に強く扁平加工されたものである。扁平率が45%のコアワイヤ2を用いたスチールコード1は,シューシャインテストでスチールコード1の折れ(断線)が確認されたことから,耐久性の評価が「×」となっている。扁平率が45%に至る程度に強く扁平加工することでコアワイヤ2の強度が大きく低下したと考えられる。扁平率を50%にとどめると,耐久性に影響はなかった(実施例58を参照)。耐久性との関係からすると,コアワイヤ2の扁平率は50%以上にする必要があることが分かる(図7参照)。
比較例9〜13を参照して,圧延率Ds/Dの値が0.85以上であると,すなわち圧延ロールを用いたスチールコード1の圧延工程における押圧力が弱すぎると,回転性の評価が「×」となった。これは,ラッピングワイヤ3に回転トルクまたは反発力が大きく残存しており,その結果としてスチールコード1に回転力が生じているものと考えられる。Ds/Dが0.80以下であれば回転性の評価は「○」となることが多かった。圧延ロールによる押圧力を大きくしてラッピングワイヤ3の塑性変形量を大きくすることで,ラッピングワイヤ3の回転トルクまたは反発力が弱められ,その結果としてスチールコード1の回転力がなくなると考えられる(図8参照)。
炭素含有量の差に関して,比較例17〜19を参照して,炭素含有量の差が0.45wt%のものは,ラッピングワイヤ3の断線が頻発した。これは,コアワイヤ2とラッピングワイヤ3の間の硬度差が大きすぎるために,圧延ロールによる押圧のときにラッピングワイヤ3が大きくつぶれてしまい,その負荷にラッピングワイヤ3が耐えることができなかったと考えられる。ラッピングワイヤ3の断線を避けるには,炭素含有量の差を0.40wt%以下とすることが必要であることが分かった(実施例41,図10参照)。
さらに比較例3〜5を参照して,比較例3〜5のものは炭素含有量の差は0.40wt%以下であるが,ラッピングワイヤ3の断線が頻発した。比較例3〜5のものはラッピングワイヤ3の直径が0.08mmであり,ラッピングワイヤ3の直径が細すぎても断線が発生しやすくなると考えられる。ラッピングワイヤ3の直径は0.10mm以上であることが必要である(実施例31,図9参照)。
2 コアワイヤ
3 ラッピングワイヤ
4A,4B ベルト層
5 ゴム
10 自動車用タイヤ
11 トレッド部
Claims (8)
- 一対の平面部と一対の曲面部を有する断面扁平形状の複数本のスチール製コアワイヤが,撚られることなく上記平面部同士が対向するように平行に引き揃えられており,
上記平行に引き揃えられた複数本のコアワイヤがスチール製ラッピングワイヤによって束ねられている,
ストリップ状スチールコード。 - 上記コアワイヤのそれぞれが,断面積が0.018mm2以上,長径が0.35mm以下,扁平率が50%〜85%である,
請求項1に記載のストリップ状スチールコード。 - 上記ラッピングワイヤの硬度が上記コアワイヤの硬度よりも低く,
隣り合うコアワイヤ間に形成される空間の少なくとも一部が,上記空間に沿って変形した上記ラッピングワイヤの少なくとも一部によって埋められている,
請求項1または2に記載のストリップ状スチールコード。 - 上記変形後のラッピングワイヤを持つ上記ストリップ状スチールコードの厚さをDsとし,上記ラッピングワイヤを変形させる前のストリップ状スチールコードの厚さをDとしたときに,Ds≦0.80Dの関係を持つ,
請求項3に記載のストリップ状スチールコード。 - 上記コアワイヤの炭素含有量(質量パーセント)をCcとし,上記ラッピングワイヤの炭素含有量(質量パーセント)をCwとしたときに,0.05≦Cc−Cw≦0.40の関係を持つ,
請求項1から4のいずれか一項に記載のストリップ状スチールコード。 - タイヤのトレッド部の内側に上記タイヤの周方向に設けられるベルト層であって,
請求項1から5のいずれか一項に記載のストリップ状スチールコードが,上記コアワイヤの長径方向を上記ベルト層の周面に垂直な方向に向けて,上記ベルト層中に埋め込まれている,
タイヤ用ベルト層。 - 請求項6に記載のタイヤ用ベルト層を備えたタイヤ。
- 一対の平面部と一対の曲面部を有する断面扁平形状の複数本のスチール製コアワイヤを,撚ることなく上記平面部同士が対向するように平行に引き揃え,
上記平行に引き揃えられた複数本のコアワイヤにスチール製ラッピングワイヤを巻き付ける,
ストリップ状スチールコードの製造方法。
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