JP2015071519A - 多孔質SiC焼結体及び多孔質SiC焼結体の製造方法 - Google Patents

多孔質SiC焼結体及び多孔質SiC焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】SiC焼結体において、70%を超えるような高い気孔率を有した多孔質構造体にすることによって断熱性、軽量化などを飛躍的に推進させる。またこのような多孔質SiC焼結体を容易且つ確実に製造できるようにする。
【解決手段】中空の球状を呈して内部が独立気孔6となったセル部2と、隣り合うセル部2間を保持するマトリクス部3とを有して、これらセル部2及びマトリクス部3がSiCにより焼結一体化されており、セル部2相互間、マトリクス部3相互間及びマトリクス部3とセル部2との相互間で画成される気孔5が設けられて成る多孔質SiC焼結体とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質SiC焼結体及び多孔質SiC焼結体の製造方法に関する。
耐熱性、耐摩耗性などに卓越した特性を有する焼結体の代表例として、SiC焼結体を挙げることができる。このSiC焼結体を製造する方法として、一般に反応焼結法や化学気相反応法(CVR)等が知られている。
反応焼結法によりSiC焼結体を製造するには、まず所望する形体(板状など)に成形した有機ポリマー骨格体を炭化温度で焼成して炭化骨格体(カーボン製の成形体)を製造する。場合によっては、炭素粉を加圧成形して炭化骨格体を製造するようにしてもよい。そして、このようにして得た炭化骨格体に溶融したシリコン(焼結温度に熱したもの)を含浸させることで、含浸と同時進行的にSiCを生成させてゆくようにする(例えば、特許文献1等参照)。
これに対し、化学気相反応法によりSiC焼結体を製造するには、前記と同様な炭化骨格体を高温雰囲気下に設置してSiOガスを供給し、SiCを一気呵成に(全体的に)生成させるようにする(例えば、特許文献2等参照)。
ところで、SiC焼結体において、例えば数百℃、或いは1000℃を超えるような高温環境下においても十分な断熱性を発揮し、尚かつ、軽量化を維持乃至推進させるためには、全気孔率が70%を超えるような多孔質構造体に形成し、そのうえで気孔の可及的多くを閉気孔にしておくことが重要であると考えられる。従って、反応焼結の基礎(ベース材)となる炭化骨格体についても、相応の高い気孔率を有した多孔質構造体に形成しておくことが必要になる。
なお、「気孔」には、物体表面で開口しているか閉鎖しているかによって区別する「開気孔」「閉気孔」の分類と、気孔を形成するセルが独立しているか複数のセルが連通しているかによって区別する「独立気孔」「連続気孔(連通気孔)」の分類とがある。従って、開気孔や閉気孔のそれぞれにおいて独立気孔や連続気孔が存在する。ここにおいて、SiC焼結体の炭化骨格体として可及的に多く備えるべき気孔は、閉気孔であり、更に好ましくは閉気孔であって且つ独立気孔であるということになる。
因みに、特許文献1において炭化骨格体を多孔質構造体とするには、フェノール樹脂とシリコン粉末とを混合したスラリーをポリウレタンスポンジに含浸させ、これを乾燥及び焼成する方法を採用している。
なお、特許文献2では多孔質構造体にすることに着眼はしていないが、ピッチ等の有機物から製造した数μm〜10数μmのメソカーボンマイクロビーズをフェノール樹脂粉末と混合して、この混合物から成形した成形体を焼成する方法を採用することで、嵩密度1.5〜1.73g/cm3、開気孔率1Vol%以下という構造を得ている。
特開2012−171824号公報 特開2000−109368号公報
反応焼結法によるSiC焼結体の製造方法では、炭化骨格体に対して溶融シリコンの含浸と反応焼結とが同時進行するというメカニズムがネックとなり、溶融シリコンの含浸を均一化させるのが難しいという問題があった。すなわち、処理の初期段階では含浸及び反応焼結が順調に進行しても、SiCの生成層が増加するにしたがってこの生成層や未反応シリコンが気孔詰まりに繋がり、故に、溶融シリコンの含浸が部分的に鈍化することで不均一化を引き起こしたり、含浸不良(炭化骨格体の全体にシリコンが行き渡らない状況)となったりするからである。
また化学気相反応法によるSiC焼結体の製造方法では、反応に時間がかかるうえ、大
掛かりな装置が必要であることがネックとなり、製造能率が低く且つ高コストになるという問題があった。その他、炭素骨格体として高気孔率のものの形成が困難であるという技術的事情がある。従って高気孔率のものを得られない以上(炭素骨格体が緻密構造である場合には)、SiOガスが炭化骨格体の微小な隙間にも入り込んでSiCが隙間無く生成してしまうので、結果として製造されたSiC焼結体も高気孔率にはならない。
このように従来にあっては、SiC焼結体において、70%を超えるような高気孔率にすること(すなわち、多孔質SiC焼結体を製造すること)は、反応焼結法を採用するにせよ、或いは化学気相反応法を採用するにせよ、克服するうえで非常に困難な課題を有したものであった。
なお、SiCを製造するための焼結方法には、他に、液相焼結法や常圧焼結法なども知られているが、いずれの方法も原料を加圧して固着させるプロセスを必要とするため、全気孔率はせいぜい30〜40%程度にしか到達しない。また、SiC焼結体を得るための方法として、余剰カーボンを添加してその後脱炭する方法などが知られているものの、全気孔率を高くした場合、SiC粒子同士の連結箇所が過少で且つ弱くなり、保形性を確保できないほどに機械的強度が低く(弱く)なるというデメリットもある。
一方で、炭化骨格体を多孔質構造体にする方法においても、以下のような問題があった。まず、ポリウレタンスポンジのようなものを用いた方法(特許文献1等)では、全気孔率を上げることはできても同時に開気孔率が高くなってしまう問題がある。また閉気孔であっても連続気孔となる傾向が強いということがある。
すなわち、ポリウレタンスポンジを用いて製造した炭化骨格体が多孔質構造体であるとは言っても、実際には、恰もガラスウールのようなスカスカの構造体となってしまうことが実験により確かめられた(特許文献1の[0049]にも「炭化ケイ素系耐熱性超軽量多孔質構造材は、骨格及び連通気孔の表面が炭化ケイ素からなり、」との記載があって、気孔が連通気孔であることを自認している)。このようなスカスカの構造体では空気の対流を抑える効果が低く、結果的に断熱性の低いものとなる。
なお、熱移動の3要素(熱伝導、熱放射、熱対流)から考察すれば、SiCはそもそも熱伝導性が高いので、SiCで断熱性を出すためには多孔質化することが必須となる。加えて、空気の対流による伝熱を如何に抑えるかが重要となり、そのためには細かい多くの隔壁で対流を阻止する(すなわち閉気孔化する)ことが有力な手段となる。
反対に、数μm〜10数μmのメソカーボンマイクロビーズのようなものを用いた方法(特許文献2等)では、フェノール樹脂の充填率が高くなりすぎて全気孔率を上げることができない。もし仮に、粒径の粗いメソカーボンマイクロビーズ(又は他のビーズ)を用いたとしても、ビーズ間を埋めるように充填されたフェノール樹脂が全て炭化された状態として残るので、この部分の気孔率を高めることには繋がらない。これらから推察すれば、炭化骨格体の製造時に原料に対してビーズ等を混入したとしても、その粒径が小さかろうが大きかろうがそのことが直接、高気孔率化に寄与することには繋がらないと言える。
これらの総合的な結果から、SiC焼結体として70%を超えるような高気孔率の多孔質構造体とされたもの(多孔質SiC焼結体)を製造することは、これまで不可能とされていたのであって、数百℃、或いは1000℃を超えるような高温環境下においても十分な断熱性を発揮し、尚かつ、軽量であるという新素材の開発が待たれているところである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、70%を超えるような高い気孔率(好ましくは閉気孔であって且つ独立気孔である気孔の含有率)を有することによって断熱性、軽量化などを飛躍的に推進させることができるようにした多孔質SiC焼結体を提供することを目的とする。
また、このように断熱性や軽量化などを飛躍的に推進させた多孔質SiC焼結体を容易且つ確実に製造することができる多孔質SiC焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る多孔質SiC焼結体は、中空の球状を呈して内部が独立気孔となったセル部と、隣り合うセル部間を保持するマトリクス部とを有して、これらセル部及びマトリクス部がSiCにより焼結一体化されており、前記セル部相互間、前記マトリクス部相互間及びマトリクス部とセル部との相互間で画成される気孔が設けられていることを特徴とする。
全気孔率が70%を超え、嵩密度が0.1g/cm3以上0.93g/cm3以下であるものとするのが好適である。
好ましくは、前記全気孔率が80%以上であるものとする。
更に好ましくは、前記全気孔率が90%以上であるものとする。
閉気孔率は30%以上であるものとするのが好適である。
一方、本発明に係る多孔質SiC焼結体の製造方法は、有機マイクロバルーンとこの有機マイクロバルーンよりも粒径が小さなシリコン粉末とを混合して得た成形素材から成形体を成形し、この成形体を非酸化性雰囲気中にて有機マイクロバルーンの炭化温度で焼成することにより炭化骨格体に変化させ、その後、この炭化骨格体とシリコンとが反応焼結を起こす温度まで昇温させて焼成することを特徴とする。
前記有機マイクロバルーンの炭化により得られるカーボンとシリコンとのモル比を等量にすることを目安として有機マイクロバルーンとシリコン粉末とを混合するのが好適である。
前記成形体を成形するに際し、バインダーを前記有機マイクロバルーンと前記シリコン粉末と一緒に混合するとよい。
なお、バインダーを添加する場合には、有機マイクロバルーンとシリコン粉末との混合割合を決めるに際して、バインダーが炭化してできるカーボン量をも考慮に入れることとしてモル比が等量となるようにシリコン粉末を追加することが、強度を確保する上で好ましいと言える。
前記有機マイクロバルーンは、フェノール樹脂により形成されたものとするのがよい。
前記有機マイクロバルーンは、平均粒径が1μm以上200μm以下とするのが好適である。
前記有機マイクロバルーンの平均粒径は、より好ましくは5μm以上100μm以下とするのがよい。
前記シリコン粉末は、平均粒径が1μm以上20μm以下とするのが好適である。
本発明に係る多孔質SiC焼結体は、70%を超えるような高い気孔率を有することによって断熱性、軽量化などを飛躍的に推進させることができるものであり、また本発明に係る多孔質SiC焼結体の製造方法により、70%を超えるような高い気孔率を有した多孔質SiC焼結体を容易且つ確実に製造することができる。
本発明に係る多孔質SiC焼結体及びこの多孔質SiC焼結体を製造する第1の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形素材であり(b)は成形体であり(c)は炭化骨格体であり(d)は多孔質SiC焼結体である。 本発明に係る多孔質SiC焼結体及びこの多孔質SiC焼結体を製造する第2の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形体であり(b)は炭化骨格体であり(c)は多孔質SiC焼結体である。 本発明に係る多孔質SiC焼結体及びこの多孔質SiC焼結体を製造する第3の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形体であり(b)は炭化骨格体であり(c)は多孔質SiC焼結体である。 第1の製造方法(図1)で製造した多孔質SiC焼結体を模式的に示した断面図である。 第1の製造方法(図1)で製造した多孔質SiC焼結体Aの断面を写した電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
本発明に係る多孔質SiC焼結体1は、図4(後述する第1の製造方法を説明した図1(d)も合わせて参照)に示すように、中空の球状を呈したセル部2を多数内在している。また、隣り合うセル部2とセル部2との間にはマトリクス部3が介設されるようになっている。なお、これらセル部2とマトリクス部3とはSiCにより焼結一体化されており、両者間に物理的な境界は存在しない。
マトリクス部3は、セル部2とセル部2との間を突っ張らせて乖離状態に保持(スペースを形成)させたり、セル部2とセル部2との外周面を僅かに隆起させ又は直接的に接触させた状態として両セル部2同士を固着させたりしている。言い換えれば、マトリクス部3は、隣り合うセル部2の相互間を固定させるための支持部材である。
マトリクス部3の形体や配置(ボリュウム、長さ、本数、方向性など)に規則性はない。またセル部2についてもその形状や大きさ、配置等に規則性はない。そのため、セル部2とセル部2との相互間や、マトリクス部3とマトリクス部3との相互間、更にはマトリクス部3とセル部2との相互間には、ランダム的に多くの気孔5が画成されている。この気孔5は、スリット状や球状などの独立気孔であったり、場合によっては不定形の連続気孔であったりする。
このように、この多孔質SiC焼結体1は、各セル部2の中空内部に形成される球状の独立気孔6だけでなく、マトリクス部3とセル部2の外周面との間で画成される多数の気孔5をも有したものであって、従来のSiC焼結体などとは比較にならないほどに高い気孔率を有した多孔質構造体となっている。
すなわち、この多孔質SiC焼結体1は全気孔率が70%を超えるものとできる。好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上に達するものとすることもできる。また、多孔質SiC焼結体1の閉気孔率は30%以上であるものとするのが好適である。閉気孔率は多ければ多いほどよい。ただ製造の容易さやコストなどとの関連において、80%程度を上限と設定することが推奨される。
更に、多孔質SiC焼結体1の嵩密度は0.1g/cm3以上0.93g/cm3以下とすることができる。このようにすることで、数百℃を超えるような高温環境下においても高い断熱性を発揮し、尚かつ、水に浮くほどの軽量化を達成できるものとなっている。多孔質を活かした他の用途では、防音性を要求される資材としても採用可能である。
セル部2において、独立気孔6の平均内径は1μm〜200μm、より好ましくは5μm〜100μmとするのがよい。この独立気孔6の平均内径は、セル部2を形成させるために用いる成形素材(後述する有機マイクロバルーンであって図4及び図1(a)の符号10)の平均粒径をどの範囲とするかによって決まる。この有機マイクロバルーン10の粒径については後述する。
なお、前記のように、マトリクス部3の長さ(セル部2とセル部2との固着間隔)は一定ではないが、おおよそセル部2の内径と同等以下とするのが好適である。このセル部2の固着間隔は、成形素材に用いる原料(有機マイクロバルーン10と共に使用するシリコン粉末など)の平均粒径や充填率、混合率などに起因するところが大きい。
次に、この多孔質SiC焼結体1の製造方法を説明する。
図1は第1の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形素材であり(b)は乾燥体であり(c)は炭化骨格体であり(d)は多孔質SiC焼結体である。まず、図1(a)に示すように、本発明では、有機マイクロバルーン10と、シリコン11の粉末とを最初の段階で混合することによって成形素材12を準備する。またこの第1の製造方法では、次の工程での成形を容易にさせるために更にスラリー状態としたバインダー13をも加えて、これら三者を一緒に混合させるようにしている。このように、従来の反応焼結法で採用していた溶融シリコンの含浸手順や、従来の化学気相反応法で採用していたSiOガス供給とは、シリコン11の供給手順が全く異なっている。
有機マイクロバルーン10は中空の球形状(完全球である必要はなく卵形状や膨れ気味の円盤状等といった多少の異形化は含む)を呈したものであって、その殻の部分の材質は、安定したバルーン形状を保持でき、非酸化性雰囲気中にて焼成した際に炭化するもので
あれば特に限定されないが、炭化させた際の残炭率(炭素残留率)が高いものがより好ましい。具体的には、フェノール樹脂やポリイミド樹脂、などである(分子中に芳香環を含むものが特に好ましいと思われる)。
また、有機マイクロバルーン10は、その平均粒径が1μm以上200μm以下とするのが好適である。平均粒径が1μmより小さいものでは、有機マイクロバルーン10全体に対する殻の占有割合が高くなることに伴って、多孔質SiC焼結体1としたときの嵩密度を高めてしまう。そのため、多孔質SiC焼結体1の全気孔率が小さくなる不具合となる。反対に、平均粒径が200μmを超えるものでは、空気の対流を抑える効果が小さくなり、結果的に多孔質SiC焼結体1の断熱性を十分に高められなくなる。また、強度的にも低下傾向を示すような不具合となる。より好ましくは、有機マイクロバルーン10の平均粒径は5μm以上100μm以下とするのがよい。
シリコン11の粉末は、有機マイクロバルーン10よりも粒径が小さなものを用いるのが好適であり、平均粒径が1μm以上20μm以下とするのがよい。なかでも、5μm前後とするのが一層好適であることが実験により確かめられている。平均粒径が1μmより小さくすることにはメリットが殆どなく、寧ろ、入手の難しさや高コスト化等を招来することになるので好適ではない。また、平均粒径が20μmを超えると有機マイクロバルーン10とシリコン11との密度差を原因として、シリコン粉末の沈降と分離とが顕著に起こるようになり、有機マイクロバルーン10とシリコン11とを均一に混合させるうえで障害となる。
有機マイクロバルーン10とシリコン11との混合割合は、有機マイクロバルーン10を炭化温度で焼成して得られるカーボンを基準として、このカーボンとシリコン11とのモル比を等量にすることを目安として決定する。ここにおいて等量は完全一致という意味ではなく、略対等となる量とおく。おおよそ、有機マイクロバルーン10を「1」とおいて、シリコン11を「1.2」(バインダーを加えない場合)前後となるように設定するとよい。
この成形素材12の準備過程では、有機マイクロバルーン10とシリコン11の粉末とが均一に分散するように混合(攪拌)することが重要となる。この第1の製造方法では、前記したようにスラリー状態のバインダー13を加えているため、このバインダー13が有機マイクロバルーン10とシリコン11の粉末とを均一分散させるうえで有益に作用する。とはいえ、シリコン11は有機マイクロバルーン10よりも粒径が小さな粉末であるから、乾燥状況下にあっても均一分散は比較的容易に実現できる。すなわち、バインダー13をスラリー状態にすることは殊更限定されるものではない。また、そもそもバインダー13を加えること自体、限定されるものではない。
バインダー13としては、特に限定はされないが、非酸化性雰囲気中にて焼成した際に炭化するものが好ましい。なお、バインダー13はスラリー状態でもドライ状態でもよい。このバインダー13の混合比は、有機マイクロバルーン10の重量に対して50重量部以下となるようにしておくのが好適である。50重量部を超えると、多孔質SiC焼結体1としたときのマトリクス部3が過密になって全気孔率が低下する不具合に繋がる。
そして、次に図1(b)に示すように、この成形素材12を流し込み成型法などにより、例えば板状などの所望形状を呈する成形体14に成形する。なお、成形しようとする成形体14が複雑な形状や肉厚の薄い形状等である場合、或いは成形体14にした後の取り扱いで破損が予測される場合などでは、有機マイクロバルーン10とシリコン11との固着強度を高める理由から、バインダー13の混合は推奨される。また、バインダー13は、前記の適切混合量を守ることでマトリクス部3の形成や気孔5の形成に好適となる場合がある。
バインダー13をスラリー状態で混合している場合には、流し込み成型時に同時に加熱をも行って成形体14を乾燥させるようにする。この乾燥過程では、バインダー13が毛管作用等に伴って有機マイクロバルーン10の相互間に隅々まで吸引され、狭い隙間では表面張力で塊状に集まる現象が起こる。従って、このことが後にマトリクス部3を形成させるうえで有益に作用することになる。また、バインダー13の使用量を可及的に抑える
効果(バインダー量を減らしても成形体14の強度を維持する効果)をも招来することになり、好適と言える。
そして、次に図1(c)に示すように、この成形体14を真空雰囲気や不活性ガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中に入れ、有機マイクロバルーン10の炭化温度(600〜800℃程度)で焼成する。この段階の焼成ではシリコン11はいまだ未反応の状態を維持する。この焼成により、有機マイクロバルーン10はその球状を引き継いだカーボン製の中空球15に変化すると共に、バインダー13はこの中空球15のまわりを取り囲むように分散する炭化成分16として変化する。また、中空球15のまわり(バインダー13が変化した炭化成分16中)にシリコン11が残存する構造の炭化骨格体17が得られる。
そして、次に図1(d)に示すように、この炭化骨格体17を酸化性雰囲気に置いたままで、この炭化骨格体17とシリコン11とが反応焼結を起こす温度へ昇温させる。この昇温によって炭化骨格体17を焼成することにより、カーボン製の中空球15が依然としてその球状を引き継いだままSiCによるセル部2へと置換され、また中空球15のまわりの炭化成分16がセル部2とセル部2との間を固着させるようにしてSiCによるマトリクス部3へと置換される。
このようにして、多数のセル部2によって形成される独立気孔6と、セル部2とセル部2との相互間や、マトリクス部3とマトリクス部3との相互間、更にはマトリクス部3とセル部2との相互間に多数形成される気孔5とを有した多孔質SiC焼結体1が得られる。
なお、バインダー13を用いた場合について付言すれば、バインダー13が炭化する際に一部が分解し、ガス化して消失するが、この消失時に気孔5を形成することに繋がり、気孔5を増やす効果を生じている。
炭化骨格体17を得るための炭化温度での焼成を行った後、次に多孔質SiC焼結体1とさせるための焼結温度での焼成に移行させるタイミング(炭化骨格体17が得られたタイミング)は、焼成炉の炉内圧によって知ることができる。すなわち、炭化温度での焼成中、フェノール樹脂の分解によってガスが発生すると炉内圧が上がり、その後、フェノール樹脂の分解が終わると炉内圧が低下するので、この炉内圧の挙動から焼結温度での焼成タイミングを知ることができる。
図2は多孔質SiC焼結体1を製造する第2の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形体であり(b)は炭化骨格体であり(c)は多孔質SiC焼結体である。
この第2の製造方法が、第1の製造方法(図1)と最も異なるところは、成形素材として使用するバインダー13をドライ状態としている点にある。そのため、この成形素材から成形体14を成形する際には加圧(圧縮)成形法などを採用するのが好適となる。その他の手順等は第1の製造方法と略同じであるのでここでの詳説は省略する。
図3は多孔質SiC焼結体1を製造する第3の製造方法を概念的に説明した模式図であって(a)は成形体であり(b)は炭化骨格体であり(c)は多孔質SiC焼結体である。
この第3の製造方法が、第1の製造方法(図1)と最も異なるところは、成形素材にバインダーを不使用にしている点にある。そのため、この場合も、成形素材から成形体14を成形する際には加圧(圧縮)成形法などを採用するのが好適となる。その他の手順等は第1の製造方法と略同じであるのでここでの詳説は省略する。
[実施例1]
第1の製造方法(図1)を採用する。
フェノールマイクロバルーン「Malayan Adhesives & Chemicals Sdn Bhd社製BJO−0480」10gと、シリコン粉末「高純度化学社製シリコンE23PB」15.2gと、バインダー(フェノール樹脂「住友ベークライト(株)社製PR−50273」4gにエタノール24gを加えたもの)とを混合して成形素材を得た。
この成形素材を型枠に流し込み、加熱してエタノールを蒸発させ、厚さ5mmの成形体に成形した。
得られた成形体を非酸化雰囲気中にて炭化温度800℃にて焼成し、有機マイクロバルーンとバインダー中のフェノール樹脂とを炭化(カーボン)させた。
その後、焼結温度1420℃まで昇温させることにより、有機マイクロバルーンとシリコンとを反応焼結させ、多孔質SiC焼結体Aを製造した。
得られた多孔質SiC焼結体Aは、全気孔率89%、閉気孔率38%、嵩密度0.34g/cm3であった。また熱伝導率は0.04W/mKであった(レーザーフラッシュ法)。
図5は、第1の製造方法(図1)で製造した本実施例の多孔質SiC焼結体Aについて、その断面を写した電子顕微鏡写真である。この図5から明らかなように、多孔質SiC焼結体Aは気孔(図1(d)の符号5,6に対応するもの)を多く内在したものであり、そのうち閉気孔をはじめ、閉気孔であり且つ独立気孔であるものも十分量が存在するものであった。また閉気孔が小さくもなく大きくもなく、適度な大きさ(内径)を有しているので、空気の対流を阻止するうえで適切となっており、故に、伝熱性を低く抑える効果を十分に発揮するものであった。すなわち、断熱材としての使用に適している。また、多孔質であるが故に、軽量であり、防音性をも有するものである。
[実施例2]
第2の製造方法(図2)を採用する。
フェノールマイクロバルーン「Malayan Adhesives & Chemicals Sdn Bhd社製BJO−0480」10gと、シリコン粉末「高純度化学社製シリコンE23PB」11.7gと、バインダー(PVB)2.4gとを混合して成形素材を得た。
この成形素材を型枠に入れ、100℃、5MPaで加圧成形し、厚さ8mmの成形体に成形した。
得られた成形体を非酸化雰囲気中にて炭化温度800℃にて焼成し、有機マイクロバルーンとバインダー中のフェノール樹脂とを炭化させた。
その後、焼結温度1420℃まで昇温させることにより、有機マイクロバルーンとシリコンとを反応焼結させ、多孔質SiC焼結体Bを製造した。
得られた多孔質SiC焼結体Bは、全気孔率85%、嵩密度0.45g/cm3であった。
[実施例3]
第3の製造方法(図3)を採用する。
フェノールマイクロバルーン「Malayan Adhesives & Chemicals Sdn Bhd社製BJO−0480」10gと、シリコン粉末「高純度化学社製シリコンE23PB」11.7gとを混合して成形素材を得た。
この成形素材を型枠に入れ、250℃、5MPaで加圧成形し、厚さ8mmの成形体に成形した。
得られた成形体を非酸化雰囲気中にて炭化温度800℃にて焼成し、有機マイクロバルーンとバインダー中のフェノール樹脂とを炭化させた。
その後、焼結温度1420℃まで昇温させることにより、有機マイクロバルーンとシリコンとを反応焼結させ、多孔質SiC焼結体Cを製造した。
得られた多孔質SiC焼結体Cは、全気孔率91%、嵩密度0.28g/cm3であった。
[結果]
実施例1により得られた多孔質SiC燒結体A、実施例2により得られた多孔質SiC燒結体B、実施例3により得られた多孔質SiC燒結体Cについて、それぞれ破損確認試験を実施した。その結果を表1に示す。
破損確認試験は、各燒結体A,B,Cから一辺が2cmの正方形板状の供試体(面積4cm2)に加工後、これら各供試体の上面中央部に負荷を加えて1分間、静置し、その後における供試体の変形やクラックの有無などを目視で確認する方法で実施した。
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、多孔質SiC焼結体1において、その形状は板状とすることが限定されるものではなく、シート状(薄板)、棒状、管状、ブロック状などとしてもよい。また、多孔質SiC焼結体1としての用途についても何ら限定されるものではなく、高熱環境や騒音環境などに曝される機械部品や内外装材などとして使用することができる。
炭化骨格体17を得るための炭化温度での焼成を行った後、次に多孔質SiC焼結体1とさせるための焼結温度での焼成に移行する際に、焼成温度を変えて連続して焼成を行うことは限定されるものではなく、各焼成工程を切り離してもよい(炭化骨格体17として常温に戻した状態でストックするようなことも可能である)。
1 多孔質SiC焼結体
2 セル部
3 マトリクス部
5 気孔
6 独立気孔
10 有機マイクロバルーン
11 シリコン
12 成形素材
13 バインダー
14 成形体
15 中空球
16 炭化成分
17 炭化骨格体

Claims (10)

  1. 中空の球状を呈して内部が独立気孔となったセル部と、隣り合うセル部間を保持するマトリクス部とを有して、これらセル部及びマトリクス部がSiCにより焼結一体化されており、前記セル部相互間、前記マトリクス部相互間及びマトリクス部とセル部との相互間で画成される気孔が設けられていることを特徴とする多孔質SiC焼結体。
  2. 全気孔率が70%を超え、嵩密度が0.1g/cm3以上0.93g/cm3以下であることを特徴とする請求項1記載の多孔質SiC焼結体。
  3. 前記全気孔率が90%以上であることを特徴とする請求項2記載の多孔質SiC焼結体。
  4. 閉気孔率が30以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔質SiC焼結体。
  5. 有機マイクロバルーンとこの有機マイクロバルーンよりも粒径が小さなシリコン粉末とを混合して得た成形素材から成形体を成形し、この成形体を非酸化性雰囲気中にて有機マイクロバルーンの炭化温度で焼成することにより炭化骨格体に形成し、その後、この炭化骨格体とシリコンとが反応焼結を起こす温度まで昇温させて焼成することを特徴とする多孔質SiC焼結体の製造方法。
  6. 前記有機マイクロバルーンの炭化により得られるカーボンとシリコンとのモル比を等量にすることを目安として有機マイクロバルーンとシリコン粉末とを混合することを特徴とする請求項5に記載の多孔質SiC焼結体の製造方法。
  7. 前記成形体を成形するに際し、バインダーを前記有機マイクロバルーンと前記シリコン粉末と一緒に混合することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の多孔質SiC焼結体の製造方法。
  8. 前記有機マイクロバルーンは、フェノール樹脂により形成されていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の多孔質SiC焼結体の製造方法。
  9. 前記有機マイクロバルーンは、平均粒径が1μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の多孔質SiC焼結体の製造方法。
  10. 前記シリコン粉末は、平均粒径が1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載の多孔質SiC焼結体の製造方法。
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