以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る真円度測定装置の外観図である。図1に示すように、真円度測定装置10は、台状のベース12と、ベース12上に回転可能に設けられ、円筒状のワーク14を載置する載物台(テーブル)16と、載物台16を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動機構18と、ベース12の背面に設けられたコラム20と、コラム20に沿ってZ方向(鉛直方向)に移動可能なキャリッジ22と、キャリッジ22に取り付けられた検出器ホルダ移動機構24と、検出器ホルダ移動機構24にX方向(左右方向)に移動可能に取り付けられた第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28と、第1の検出器ホルダ26に取り付けられた第1の検出器30と、第2の検出器ホルダ28に取り付けられた第2の検出器32と、を備える。
載物台16は、ワーク14を載置して回転させるものであり、載物台16の回転角は、回転駆動機構18の駆動軸に連結されたエンコーダ64(図4参照)で検出される。
コラム20は、載物台16の回転軸に対して平行に伸びる柱であり、その下端部はベース12の背面に固定される。すなわち、載物台16の背面側にコラム20が配置される。
コラム20には、キャリッジ22がZ方向に移動可能に取り付けられる。キャリッジ22を移動させるための駆動手段(不図示)としては特に限定されるものではないが、例えば、モータ、ボールネジ、ガイドレール等の組み合わせで構成される。
検出器ホルダ移動機構24は、キャリッジ22に取り付けられ、キャリッジ22と一体となってZ方向に移動可能とされている。
検出器ホルダ移動機構24には、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28が取り付けられている。第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、検出器ホルダ移動機構24の案内面に沿ってX方向に互いに独立して移動可能に構成されている。各検出器ホルダ26、28をそれぞれX方向に移動させるための駆動手段(不図示)としては特に限定されるものではないが、例えば、モータ、ボールネジ、ガイドレール等の組み合わせで構成される。これにより、検出器ホルダ移動機構24に取り付けられた第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、X方向に互いに独立して移動可能とされている。
第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、L字型の部材で、一方の端が検出器ホルダ移動機構24に取り付けられ、他方の端にそれぞれ第1の検出器30及び第2の検出器32が取り付けられる。
第1の検出器30は、第1の測定子34と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、第1の測定子34の変位を示す電気信号を出力する。
第2の検出器32は、第2の測定子36と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、第2の測定子36の変位を示す電気信号を出力する。
ワーク14のつば部分の高さ位置(Z方向位置)の変化を検出するため、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、取り付ける方向を90度ずつ異なる2方向にすることが可能であることが望ましい。また、第1の検出器30及び第2の検出器32は、測定する円筒面の方向を180度変えるために、それぞれ第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28に対して方向を変えて取り付け可能であることが望ましい。
図2は、図1の真円度測定装置の上面図である。なお、ここでは、載物台16の回転軸を含むXZ平面を測定平面という。
図2に示すように、コラム20は、載物台16の背面に設けられる。第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、検出器ホルダ移動機構24から測定平面に垂直な方向に伸び、第1の検出器30及び第2の検出器32は、第1の測定子34及び第2の測定子36が測定平面上で変位するように取り付けられる。ワーク14の測定する円筒面の直径が異なる場合には、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28が測定平面と平行に移動するので、第1の検出器30及び第2の検出器32は、測定平面に沿ってX方向(ワーク14の中心軸に対して垂直な径方向)に移動され、各測定子34、36は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。
また、コラム20を測定平面に対して垂直に投影した場合に、投影されたコラム20の中心軸が載物台16の回転軸と一致するように構成される。すなわち、コラム20の中心軸と載物台16の回転軸はX方向位置が同一位置となっている。
このように本実施形態においては、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28は、測定平面に平行なZ方向に移動可能であるとともに、測定平面に平行且つ載物台16の回転軸に垂直なX方向に沿って互いに独立して移動することが可能である。つまり、第1の検出器30及び第2の検出器32は、それぞれ、測定平面に平行な面内(XZ面内)で2次元的に移動可能に構成される。したがって、第1の検出器30及び第2の検出器32は、Z方向に移動しても、姿勢は変化せず、Z方向の位置(高さ)のみが変化する。また、第1の検出器30及び第2の検出器32をX方向に移動しても、姿勢は変化せず、X方向の位置のみが変化する。言い換えれば、異なる半径の円筒面の真円度を測定するため、第1の検出器30及び第2の検出器32をX方向と平行に移動しても、第1の検出器30の第1の測定子34及び第2の検出器32の第2の測定子36は、それぞれ、測定平面でワーク14と接触する。
図3は、検出器ホルダ移動機構24の構成例を示した図であり、検出器ホルダ移動機構24の内部構造を示したものである。
図3に示すように、検出器ホルダ移動機構24には、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28をX方向に互いに独立して移動させるための駆動手段として第1の送りねじ50及び第2の送りねじ52が設けられている。
第1の送りねじ50は、第1の検出器ホルダ26の背面側に連結される第1の送りナット54に係合しており、第1の送りつまみ56を回転することにより第1の送りねじ50が回転して、第1の検出器ホルダ26がX方向と平行(図3の左右方向)に移動する。
同様に、第2の送りねじ52は、第2の検出器ホルダ28の背面側に連結される第2の送りナット58に係合しており、第2の送りつまみ60を回転することにより第2の送りねじ52が回転して、第2の検出器ホルダ28がX方向と平行(図3の左右方向)に移動する。
なお、第1の送りつまみ56及び第2の送りつまみ60の代わりに、第1の送りねじ50及び第2の送りねじ52をそれぞれ回転駆動するモータ等を設けて、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28をX方向に互いに独立して移動することも可能である。
更に本実施形態においては、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置を同一のリニアスケール40(位置検出手段)によって検出する位置検出機構25を備えている。リニアスケール40は、検出器ホルダ移動機構24にX方向に沿って設けられている。なお、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置とは、リニアスケール40の中心40aを原点とし、原点から各検出器ホルダ26、28までの距離を示す。
第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置は、リニアスケール40に対向して設けられた第1の読み取りヘッド42及び第2の読み取りヘッド44によって読み取られるようになっている。
第1の読み取りヘッド42は、第1の検出器ホルダ26に配設され、第1の検出器ホルダ26とともにリニアスケール40に対向する位置をX方向に沿って移動し、リニアスケール40の目盛りを光学的、磁気的に読み取る。第1の読み取りヘッド42の読取値は、第1の検出器30のX方向位置となる。
同様に、第2の読み取りヘッド44は、第2の検出器ホルダ28に配設され、第2の検出器ホルダ28とともにリニアスケール40に対向する位置をX方向に沿って移動し、リニアスケール40の目盛りを光学的、磁気的に読み取る。第2の読み取りヘッド44の読取値は、第2の検出器32のX方向位置となる。
本実施形態においては、リニアスケール40の中心(基準点)40aは、測定平面に対して垂直に投影した場合に、載物台16の回転軸と一致するように構成される。言い換えれば、リニアスケール40の中心40aと載物台16の回転軸とは、X方向位置が同一位置となっている。したがって、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置から、ワーク14の円筒面と測定平面が交差する線上の測定点(各検出器30、32の測定子34、36が円筒面に接触する位置)間の距離を算出することができる。この結果、ワーク14の直径を求めることが可能となる。
測定を行う場合には、円筒状のワーク14は、載物台16上に、ワーク14の円筒面の中心軸が載物台16の回転軸にほぼ一致するように載置する。第1の測定子34及び第2の測定子36がワーク14の測定する位置に接触するように、キャリッジ22を移動してZ方向の位置を調整し、第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28を移動してX方向の位置を調整する。この状態で、ワーク14の真円度を測定する。
ワーク14の真円度の測定方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、第1の検出器30及び第2の検出器32の検出値(第1の測定子34及び第2の測定子36の変位データ)の平均値を用いて測定する方法が好ましく用いられる。これによれば、Z方向の運動精度に影響を受けることなく高精度な測定が可能となる。なお、第1の検出器30及び第2の検出器32のいずれか一方の検出値のみを用いて真円度を測定してもよい。
また、ワーク14の直径は、第1の読み取りヘッド42及び第2の読み取りヘッド44の読取値(第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置)と、第1の検出器30及び第2の検出器32の検出値(第1の測定子34及び第2の測定子36の変位データ)の平均値とを元に算出する。
なお、ワーク14の真円度や直径の算出方法は従来より周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
高精度の測定を行う場合には、ワーク14を回転して、ワーク14の円筒面の中心軸と載物台16の回転軸との偏心を測定し、載物台16に設けられたXY移動機構で、ワーク14の円筒面の中心軸が載物台16の回転軸により正確に一致するように調整した後に測定を行う。このとき、第1の測定子34及び第2の測定子36は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
図4は、本実施形態の真円度測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御部62には、同一のリニアスケール40から読み取られた第1の読み取りヘッド42及び第2の読み取りヘッド44の読取値(各検出器30、32の位置データ)、エンコーダ64の検出値(載物台16の回転角度データ)、及び第1の検出器30及び第2の検出器32の検出値(各測定子34、36の変位データ)が入力される。
制御部62は、各入力データ(各検出器30、32の位置データ、載物台16の回転角度データ、及び各測定子34、36の変位データ)に基づき、ワーク14の円筒面の真円度や直径を算出し、その算出結果を出力部66に出力する。
以上のとおり、本実施形態の真円度測定装置10においては、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置は同一のリニアスケール40(位置検出手段)により検出される。このため、温度変化による影響でリニアスケール40が伸縮しても、リニアスケール40の伸縮に伴う変位量は一様である。したがって、検出器毎にリニアスケールが別々に設けられる場合に比べて、温度変化に起因する誤差の影響を受けることなく、ワーク14の直径を高精度に測定することが可能となる。
次に、検出器ホルダ移動機構24の他の形態について説明する。
図5は、検出器ホルダ移動機構24の別の構成例を示した図であり、検出器ホルダ移動機構24の内部構造を示したものである。図5において、これまでに示した図の構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。
図5に示す構成例では、検出器ホルダ移動機構24にマグネット70を設け、マグネット70に対向する位置に第1のムービングコイル72及び第2のムービングコイル74を設けている。
マグネット70の中心(基準点)70aは、測定平面に対して垂直に投影した場合に、載物台16の回転軸と一致するように構成される。言い換えれば、マグネット70の中心70aと載物台16の回転軸とは、X方向位置が同一位置となっている。
第1のムービングコイル72は、第1の検出器ホルダ26の背面に連結されており、マグネット70と第1のムービングコイル72との相互作用により、第1のムービングコイル72とともに第1の検出器ホルダ26がX方向に移動する。
同様に、第2のムービングコイル74は、第2の検出器ホルダ28の背面に連結されており、マグネット70と第2のムービングコイル74との相互作用により、第2のムービングコイル74とともに第2の検出器ホルダ28がX方向に移動する。
各ムービングコイル72、74には、それぞれ第1のホールセンサ76及び第2のホールセンサ78が取り付けられている。第1のホールセンサ76及び第2のホールセンサ78は、マグネット70により形成される磁界を検出する磁気センサであり、各ホールセンサ76、78の出力に基づいて第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置を算出することができる。
図5に示した構成例によれば、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置は、同一のマグネット70により形成される磁気を各ホールセンサ76、78で検出することによって算出することができる。したがって、温度変化による影響でマグネット70が伸縮しても、温度変化に伴う測定誤差は一様となるので、温度変化に起因する誤差の影響を受けることなく、ワーク14の直径を高精度に測定することが可能となる。
図6は、検出器ホルダ移動機構24の更に別の構成例を示した図であり、検出器ホルダ移動機構24の内部構造を示したものである。図6において、これまでに示した図の構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。
図6に示す構成例では、検出器ホルダ移動機構24に送りねじ80を設け、送りねじ80に係合する第1の送りナット82及び第2の送りナット84を設けている。
送りねじ80の中心(基準点)80aは、測定平面に対して垂直に投影した場合に、載物台16の回転軸と一致するように構成される。言い換えれば、送りねじ80の中心80aと載物台16の回転軸とは、X方向位置が同一位置となっている。
第1の送りナット82は、第1の駆動モータ86の駆動力によって回転動作しながらX方向に移動する。第1の送りナット82は、第1の検出器ホルダ26の背面に連結される第1の支持部材88に対して回転自在に支持されている。したがって、第1の送りナット82が回転動作により、第1の送りナット82とともに第1の検出器ホルダ26がX方向に移動する。
同様に、第2の送りナット84は、第2の駆動モータ90の駆動力によって回転動作しながらX方向に移動する。第2の送りナット84には、第2の検出器ホルダ28の背面に連結される第2の支持部材92に対して回転自在に支持されている。したがって、第2の送りナット84が回転動作により、第2の送りナット84とともに第2の検出器ホルダ28がX方向に移動する。
第1の駆動モータ86及び第2の駆動モータ90の駆動軸には、それぞれ第1のロータリエンコーダ94及び第2のロータリエンコーダ96が連結されている。第1のロータリエンコーダ94及び第2のロータリエンコーダ96は、それぞれ各駆動モータ86、90の回転量(すなわち、各送りナット82、84のX方向の移動量)を検出する回転量検出手段であり、各ロータリエンコーダ94、96の出力に基づいて第1の検出器ホルダ26及び第2の検出器ホルダ28のX方向位置を算出することができる。
図6に示した構成例によれば、第1の検出器30及び第2の検出器32のX方向位置は、同一の送りねじ80に係合した送りナット82、84のX方向の移動量から求められている。したがって、温度変化による影響で送りねじ80が伸縮しても、温度変化に伴う測定誤差は一様となるので、温度変化に起因する誤差の影響を受けることなく、ワーク14の直径を高精度に測定することが可能となる。
なお、本実施形態の真円度測定装置10は、ワーク回転型の真円度測定装置で構成されているが、本発明はこれに限定されず、ワークを回転させずに検出器を回転又は上下動させて測定を行う検出器回転型の真円度測定装置にも応用できる。
図7は、検出器回転型の真円度測定装置の外観図である。図7に示すように、検出器回転型の真円度測定装置100は、ベース112に水平方向(XY方向)に移動自在に支持されたXYテーブル116が設けられるとともに、ベース112にコラム120が立設され、コラム120に設けられたZガイド122にキャリッジ124が鉛直方向(Z方向)移動自在に支持されている。キャリッジ124の前側にはスピンドル126が回転自在に支持されている。スピンドル126の下端には支持アーム128が固着され、支持アーム128には第1のスライドブロック130と第2のスライドブロック132が水平一軸移動自在に支持されている。第1のスライドブロック130の下面には第1の検出器ホルダ134が設けられ、第1の検出器ホルダ134には第1の検出器136及び第1の測定子138が取り付けられている。一方、第2のスライドブロック132の下面には第2の検出器ホルダ140が設けられ、第2の検出器ホルダ140には第2の検出器142及び第2の測定子144が取り付けられている。
ワーク114を測定する場合には、まずキャリッジ124をZガイド122に沿って移動し、測定子138、144をワーク114に当て、支持アーム128を回転させ、その時の測定子138、144の変位を検出器136、142で読み取る。
以上のように構成される検出器回転型の真円度測定装置100においても、本実施形態の真円度測定装置10と同様に、各検出器136、142の位置を同一の位置検出手段(本例ではリニアスケール146)で検出することにより、温度変化に伴う誤差による影響を一様にしか受けることなく、ワーク114の直径を高精度に算出することが可能となる。
以上、本発明の真円度測定装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。