以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
(真円度測定機の構成)
まず、図1を参照しながら、本実施形態の真円度測定機10の構成について説明する。図1は、本実施形態の真円度測定機10の構成を示した概略図である。
図1に示すように、本実施形態の真円度測定機10は、本体ベース(基台)12上にワーク(測定物)Wを載置する回転テーブル14が設けられている。回転テーブル14は、X方向微動つまみ(不図示)及びY方向微動つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に微動送りがされ、X方向傾斜つまみ(不図示)及びY方向傾斜つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に傾斜調整がされるようになっている。
なお、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向(後述のアーム22の移動方向に相当)、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向(後述のキャリッジ20の移動方向)である。
回転テーブル14は、軸受(不図示)を介してモータ16によって回転可能に支持されている。モータ16の回転軸にはロータリーエンコーダ(不図示)が取り付けられ、回転角が高精度に読み込まれるようになっている。軸受には、例えば、超高精度の静圧エアーベアリングが用いられ、回転テーブル14は非常に高い回転精度(例えば、0.005μm)で回転される。ロータリーエンコーダは、ワークWの回転角度を検出する手段(回転角度検出手段)の一例であり、モータ16の回転角度を検出することによって回転テーブル14に載置されたワークWの回転角度を検出する。ロータリーエンコーダから出力される検出信号(回転角度データ)は後述の演算処理部34に入力される。なお、回転角度検出手段としてはロータリーエンコーダに限らず、例えば、回転テーブル14を駆動するモータ16の駆動信号(パルス数)の情報に基づいてワークWの回転角度を検出するようにしてもよい。
本体ベース12上には、鉛直方向(Z方向)に延びるコラム(支柱)18が立設され、コラム18にはキャリッジ20が鉛直方向(Z方向)に移動自在に支持されている。キャリッジ20には、アーム(径方向移動軸)22が水平一軸方向(X方向)に移動自在に支持されている。アーム22の先端には検出器ホルダ24が取り付けられている。検出器ホルダ24の先端には検出器26が取り付けられている。検出器26には差動変圧器を用いた電気マイクロメータが使用されており、ワークWの表面に接触する測定子28の変位量を検出するようになっている。
検出器26は、回転テーブル14の回転中心(回転軸心)に垂直な径方向(X方向)双方向(図1において左右両方向)の検出機能を有する双方向型検出器で構成される。双方向型検出器の構成は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、検出器26としては、双方向の検出機能を有するものに限定されず、片方向のみの検出機能を有するものでもよい。この場合、ワークWの側面に対して測定子28を接触させる方向(向き)に応じて検出器26の向きを変更すればよい。
検出器26の位置(X方向位置、Z方向位置)は、検出器26をX方向に移動するアーム22の位置を検出するX軸リニアエンコーダ(不図示)と、検出器26をZ方向に移動するキャリッジ20の位置を検出するZ軸リニアエンコーダ(不図示)とにより検出することが可能となっている。X軸リニアエンコーダ及びZ軸リニアエンコーダからそれぞれ出力される検出信号(検出器位置データ)は後述の演算処理部34に入力される。これにより、演算処理部34は、ワークWの直径値、円筒度、同軸度等の形状パラメータを算出する際に、X軸リニアエンコーダやZ軸リニアエンコーダで検出された検出器位置データから検出器26の位置(X方向位置、Z方向位置)を把握することが可能となっている。
本実施形態の真円度測定機10でワークWの真円度等を測定する場合は、ワークWを回転テーブル14に載置した後、最初に回転テーブル14の回転中心(回転軸心)とワークWの中心との偏心補正と、回転テーブル14の回転中心(回転軸心)に対するワークWの傾斜補正を行う。
次に、検出器26の測定子28がワークWの表面(側面)に接触した状態で回転テーブル14がモータ16によって1回転され、ワークWの表面1周分のデータが採取される。検出器26から出力された検出信号(変位データ)は演算処理部34に入力される。演算処理部34では、ロータリーエンコーダから入力される回転角度データと、検出器26から入力される変位データとからワークWの真円度などを演算処理し、その演算処理結果を表示部36に表示する。
ところで、本実施形態の真円度測定機10では、詳細を後述するように、演算処理部34は、直径値が既知の基準ワークを用いることなく、真円度測定機10の心ずれ量を精度よく求められるようにするための各種演算処理を行う機能を有する。
図2は、演算処理部34の機能構成を示した機能ブロック図である。図2に示すように、演算処理部34は、前述の各種演算処理を実行するために、以下の機能部として動作する。すなわち、演算処理部34は、ワークWに対して一方側からワークWの表面に測定子28を接触させた状態で測定が行われたときのワークWの表面形状(測定断面形状)を示す第1形状データを取得する第1形状データ取得部38と、ワークWに対して他方側からワークWの表面に測定子28を接触させた状態で測定が行われたときのワークWの表面形状(測定断面形状)を示す第2形状データを取得する第2形状データ取得部40と、第1形状データと第2形状データとを照合し、その照合した結果に基づいて真円度測定機10の心ずれ量を算出する心ずれ量算出部42として機能する。また、後述するように、演算処理部34は、心ずれ量算出部42で算出された心ずれ量の算出結果に基づいて真円度測定機10の心ずれの有無を判断する心ずれ判断部44として機能する場合もある。
(心ずれ量算出方法)
次に、本実施形態の真円度測定機10を用いた心ずれ量算出方法について説明する。
図3は、真円度測定機10に心ずれがない状態で測定が行われるときの様子を示した概略図である。図4は、真円度測定機10に心ずれがある状態で測定が行われるときの様子を示した概略図である。なお、ここでは、ワークWの中心Cは回転テーブル14の回転中心Oに一致しているものとする。また、ワークWの中心Cとは、検出器26に対してワークWを相対的に回転させたときに得られるワークWの表面形状(測定断面形状)の最小二乗円の中心とする。
図3に示すように、検出器26の測定子28がワークWの表面に接触した状態でワークWを回転させて測定が行われる場合、検出器26の測定子28はワークWの表面の凹凸に応じて測定母線Mと平行なX方向に変位可能となっており、この測定子28の変位が検出器26で検出される。そして、演算処理部34は、ロータリーエンコーダから入力される回転角度データと、検出器26から入力される変位データとからなるワークWの表面形状を示す形状データを取得し、この形状データに基づいて各種演算処理を行い、ワークWの表面形状を規定する形状パラメータ(直径値等)を算出し、ワークWの形状の解析を実行する。
ここで、図3に示すように、測定子28がワークWの表面に当接する検出点Pが測定母線Mと一致している場合には、ワークWの表面形状を示す形状データを精度よく取得することができ、結果的に、ワークWの形状パラメータを精度よく求めることが可能となる。
しかしながら、真円度測定機10の製造時における装置固有の誤差、温度変化などの環境変化や経時変化等、種々の要因によって、測定子28がワークWの表面に当接する検出点Pが、図4に示すように、測定母線Mと一致せずに、測定母線Mに対して垂直な方向に位置ずれが生じてしまい、理想的な検出点Pとは異なる検出点P’で測定子28が接触する場合がある。この場合、理想的な検出点Pと実際の検出点P’との間のX方向(測定子28の変位方向)に垂直なY方向の距離σが測定母線Mと検出点P’とのずれ量である心ずれ量を表している(以下、心ずれ量σという。)。そして、このような心ずれ量σが存在している場合、理想的な検出点Pと実際の検出点P’との間に測定子28の変位方向(X方向)に位置ずれが生じ、この差(距離)εだけ測定誤差が生じる(以下、測定誤差εという。)。
すなわち、真円度測定機10に心ずれがない状態の場合には理想的な検出点Pで測定が行われるので、ワークWの形状パラメータの一例である直径値はD0として求められるのに対し、真円度測定機10に心ずれがある状態の場合には理想的な検出点Pとは異なる検出点P’で測定が行われるのでワークWの直径値はD0よりも小さいD1として求められる。この場合、次式 D1=D0−2εの関係が成り立つ。
したがって、真円度測定機10に心ずれがある状態で測定が行われると、真円度測定機10で得られるワークWの表面形状の測定精度が悪くなる要因となる。つまり、真円度測定機10の心ずれ量σによりワークWの表面形状の測定精度が左右されることになる。
なお、製造時における装置固有の誤差は、出荷時等の各種調整手段を適用することで、誤差を許容できるレベルまで押さえ込むことが可能であるが、経時変化や環境変化に起因する変動は時間の経過とともに変化するため、心ずれ量σに伴う測定誤差εを完全に排除することは困難である。
本実施形態の心ずれ量算出方法は、詳細を後述するように、ワークWを挟んで互いに対向する位置でそれぞれ測定が行われたときのワークWの表面形状を示す第1形状データ及び第2形状データを取得し、第1形状データと第2形状データとを照合し、その照合した結果に基づいて真円度測定機10の心ずれ量σを算出するようにしたものである。以下、詳細を説明する。
図5は、本実施形態の真円度測定機10を用いた心ずれ量算出方法の一例を示したフローチャートである。図6A及び図6Bと図7A及び図7Bは、図5に示した心ずれ量算出方法を説明するための図である。なお、図5に示したフローチャートの開始にあたっては、ワークWの中心Cと回転テーブル14の回転中心Oとがほぼ一致するようにワークWは回転テーブル14上に載置され、必要に応じて偏心補正(センタリング調整)や傾斜補正(チルチング調整)が行われているものとする。
(ステップS10:第1形状データ取得ステップ)
まず、図6A及び図6Bに示すように、ワークWに対して一方側(右側)からワークWの表面(右側面)に検出器26の測定子28を接触させた状態で、回転テーブル14によりワークWと検出器26とを相対的に回転させながら検出器26で測定子28の変位を検出する。このとき、演算処理部34は第1形状データ取得部38として機能し、ワークWの表面1周分の第1形状データAを取得する。
(ステップS12:第2形状データ取得ステップ)
次に、図7A及び図7Bに示すように、アーム22の移動により検出器26をX方向(測定母線Mと平行な方向)に移動させ、ワークWに対して他方側(左側)からワークWの表面(左側面)に検出器26の測定子28を接触させた状態で、回転テーブル14によりワークWと検出器26とを相対的に回転させながら検出器26で測定子28の変位を検出する。このとき、演算処理部34は第2形状データ取得部40として機能し、ワークWの表面1周分の第2形状データBを取得する。
(ステップS14、S16、S18:心ずれ量算出ステップ)
次に、演算処理部34は心ずれ量算出部42として機能し、第1形状データAと第2形状データBとを照合し、その照合した結果に基づいて真円度測定機10の心ずれ量σを算出する。
ここで、真円度測定機10の心ずれ量σの算出原理について、図8A〜図8C及び図9A〜図9Cを参照して説明する。図8A〜図8C及び図9A〜図9Cは心ずれ量σの算出原理を説明するための図であり、図8A〜図8Cは心ずれがない場合の測定結果、図9A〜図9Cは心ずれがある場合の測定結果をそれぞれ示したものである。
まず、真円度測定機10に心ずれがない場合には、例えば、図8Aに示す第1形状データAと図8Bに示す第2形状データBとが得られる。この場合、第1形状データAと第2形状データBとは回転中心Oを中心とする周方向に180度位相がずれた関係となっている。すなわち、第1形状データAと第2形状データBは、ワークWを挟んで互いに対向する位置を検出点P1、P2(図6B及び図7B参照)とする測定でそれぞれ得られたものであり、この検出点P1、P2の位置の違いによって上述した位相のずれが生じたものとなっている。したがって、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方を他方に対して回転中心Oを中心とする周方向に180度位相をずらす処理(位相反転処理)を行った後、図8Cに示すように、第1形状データAと第2形状データBとを重ね合せると両者は互いに一致したものとなる。すなわち、位相反転処理後の2つの形状データA、Bが互いに一致する場合には、真円度測定機10には心ずれがないものと判断することができる。
一方、真円度測定機10に心ずれがある場合には、例えば、図9Aに示す第1形状データAと図9Bに示す第2形状データBとが得られる。この場合、第1形状データA及び第2形状データBを取得したときの検出点P1、P2の位置の違いに伴う位相のずれを補正するために上述した位相反転処理を行った後、図9Cに示すように、第1形状データAと第2形状データBとを重ね合せると両者は互いに一致しないものとなる。すなわち、位相反転処理後の2つの形状データA、Bが不一致となる場合には、真円度測定機10には心ずれがあるものと判断することができる。
これは、心ずれがある状態で前述の測定(ステップS10及びステップS12)が行われた場合には、2つの検出点P1、P2が回転中心Oを挟んで互いに対向する位置に存在しないことによるものである。
ここで、図9Cにおいて位相反転処理後の2つの形状データA、Bのずれ角度をθとし、図6Bにおいて回転中心Oと検出点P1とを結ぶ直線をNとし、直線Nと測定母線Mとがなす角度をα(以下、心ずれ角度αという。)としたとき、α=θ/2の関係が成り立つ。
したがって、位相反転処理後の2つの形状データA、Bのずれ角度θを算出することにより、そのずれ角θに基づいて心ずれ角度α(=θ/2)を求めることができる。また、図6Bにおいて、回転中心Oから検出点P1までのX方向距離をKとすると、真円度測定機10の心ずれ量σは、次式 σ=K×tanα によって求めることができる。なお、回転中心Oから検出点P1までのX方向距離Kは、上述したX軸リニアエンコーダから入力される検出器位置データから求められるものである。
また、ずれ角度θの算出方法としては、例えば、上述した位相反転処理後の2つの形状データA、Bのいずれか一方を他方に対して等角度ずつ回転させながら両者の形状データが一致するか否かを確認し、両者の形状データが一致したときの回転角度をずれ角度θとして算出することが好ましい。なお、両者の形状データが必ずしも一致する場合のみならず、両者の形状データが同一であるとみなせる場合(すなわち、両者の形状データの誤差が予め設定した閾値以下である場合)の回転角度をずれ角度θとして算出するようにしてもよい。
また、両者の形状データが一致するか否かの判定方法として、位相反転処理後の2つの形状データA、Bの各サンプリング点に対して差分を求め、その差分の合計値が最小になるときの回転角度をずれ角度θとして算出するようにしてもよい。
また、位相反転処理が行われる前の2つの形状データA、Bに対し、上述した方法と同様に、いずれか一方を他方に対して等角度ずつ回転させながら両者の形状データが一致するか否かを確認し、両者の形状データが一致したときの回転角度に180度を加算もしくは減算した値をずれ角度θとして算出するようしてもよい。
図5に戻って再びフローチャートの説明を行うと、ステップS10及びステップS12において第1形状データA、第2形状データBをそれぞれ取得した後、演算処理部34は心ずれ量算出部42として機能し、以下の処理を実行する。
すなわち、演算処理部34は、ワークWを挟んで互いに対向する位置である検出点P1、P2の位置の違いによる位相のずれを補正するために、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方を他方に対して180度位相をずらす位相反転処理を行う(ステップS14)。
次に、演算処理部34は、位相反転処理後の2つの形状データA、Bのずれ角度θを算出し(ステップS16)、さらに、ずれ角度θに基づいて心ずれ量σを算出する(ステップS18)。
ここで、上述したように、真円度測定機10に心ずれがない場合には、図8Cに示すように、位相反転処理後の2つの形状データA、Bは互いに一致したものとなる。一方、真円度測定機10に心ずれがある場合には、図9Cに示すように、位相反転処理後の2つの形状データA、Bは互いに一致せず、そのときの形状データA、Bのずれ角度θの1/2が上述した心ずれ角度α(図6B参照)に相当する。したがって、真円度測定機10の心ずれ量σは、次式σ=K×tan(θ/2)により算出することができる。なお、この式において、Kは回転中心Oから検出点P1までのX方向距離である。
次に、演算処理部34は、演算処理結果として、ステップS18で算出した心ずれ量σの算出結果を表示部36に出力する(ステップS20)。これにより、表示部36には真円度測定機10の心ずれ量σが表示され、本フローチャートは終了となる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態の真円度測定機10を用いた心ずれ量算出方法によれば、ワークWを挟んで互いに対向する位置でそれぞれ測定が行われたときのワークWの表面形状を示す第1形状データA及び第2形状データBを取得し、第1形状データAと第2形状データBとを照合し、その照合した結果に基づいて真円度測定機10の心ずれ量σを算出する。これにより、直径値が既知の基準ワークを用いることなく、簡単な測定作業で、真円度測定機10の心ずれ量σを精度よく求めることが可能となる。
また、本実施形態では、上述したように真円度測定機10の心ずれ量σを精度よく求めることができるため、その結果を利用してワークWの表面形状を規定する形状パラメータ(真円度、円筒度、直径値等)を精度よく算出することが可能となる。例えば、形状パラメータの一例であるワークWの直径Dを求める場合には、次式 D=2√(K2+σ2)によってワークWの直径Dを算出することができる(形状パラメータ算出ステップの一例)。なお、記号√(*)は、*の平方根を表す。
ここで、上述した式において、ワークWの直径Dは心ずれ量σの大きさに応じて誤差が変化することを示している。すなわち、心ずれ量σが考慮されずにワークWの直径Dが算出された場合には心ずれ量σに応じた分だけ直径に誤差が生じる結果となる。これに対して、本実施形態では、心ずれ量σを考慮した上でワークWの直径Dを求めることができるので、その結果として、ワークWの直径Dを正確に求めることが可能となる。
また、本実施形態では、2つの形状データA、Bに基づいて算出した心ずれ量σの算出結果が表示部36に出力されるようにしたが、ユーザが真円度測定機10の測定精度を簡易に判定できるように、算出した心ずれ量σの大きさに応じて真円度測定機10の心ずれの有無を判断するようにしてもよい。
図10は、本実施形態の真円度測定機10を用いた心ずれ量算出方法の他の例を示したフローチャートである。図10において、図5に示した処理と共通する処理は同一の符号を付して、その説明を省略する。
図10に示した心ずれ算出方法では、心ずれ量σの算出が行われた後(ステップS18)、演算処理部34は心ずれ判断部44(図2参照)として機能し、心ずれ量σと予め設定した基準値とを比較し、心ずれ量σが基準値以下であるか否かを判断する(ステップS22)。そして、心ずれ量σが基準値を超える場合(Noの場合)には「心ずれあり」と判断し(ステップS24)、心ずれ量σが基準値以下である場合(Yesの場合)には「心ずれなし」と判断する(ステップS26)。その後、演算処理部34は、ステップS24又はステップS26の判断結果を表示部36に出力し(ステップS28)、本フローチャートは終了となる。ステップS22、ステップS24、及びステップS26は心ずれ判断ステップの一例である。
図10に示した心ずれ算出方法によれば、ユーザが真円度測定機10の測定精度を簡易に判定することが可能となる。したがって、真円度測定機10に要求される測定精度に応じて上述した基準値を設定することにより、「心ずれなし」と判断された場合には、本来必要としない確認、校正作業が不要となるので測定効率を向上させることができる。一方、「心ずれあり」と判断された場合には、測定精度に影響を与える可能性があることから心ずれ量σの校正処理、あるいは、ワークWの表面形状を示す形状パラメータの補正処理などを適宜行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
(他の発明)
次に、他の発明について説明する。以下、他の発明の実施形態(以下、他実施形態という。)について説明する前に、他の発明に関する背景技術及び課題ついて説明する。
[背景技術]
従来より、測定物(ワーク)の表面形状を測定する表面形状測定装置として、ワークの真円度等を測定する真円度測定機が知られている(例えば、特開平1−259211号公報(以下、「特許文献2」という)参照)。
特許文献2に開示された真円度測定機は、本体ベース(ステージ)の上に回転台が設けられるとともに、本体ベースの上にはコラムが立設され、コラムにキャリッジ(滑動体)が鉛直方向(上下方向)に移動自在に設けられている。キャリッジにはアーム(水平腕)が水平方向に移動自在に支持されており、その先端に第1検出器が設けられる。第1検出器は、ワークの表面に接触する接触子を有し、差動トランスにより接触子の変位を検出する。また、キャリッジには、アームの水平方向の移動量を検出する第2検出器が設けられている。
この真円度測定機を用いて、ワークの真円度を測定する際には、ワークの測定部分の中心(以下、「ワーク中心」という)が回転台の回転軸心(回転中心)にほぼ一致するように、ワークを回転台の上に載置する。そして、ワークの表面(測定面)に接触子が接触するように、キャリッジを移動して鉛直方向の位置を調整するとともに、アームを移動して水平方向の位置を調整する。この状態で回転台を回転させながらワークの表面に接触する接触子の変位を第1検出器で検出することにより、ワークの表面形状データを取得して、ワークの真円度等を算出する。
また、特許文献2には、真円度測定機によるワークの直径測定方法が開示されている。この直径測定方法では、まずマスタワークを回転台の上に載置し、第1検出器の接触子をマスタワークの右側面に当て、第2検出器の出力を取得し、次いで接触子をマスタワークの左側面に当てて、第2検出器の出力を取得し、第2検出器の出力の差であるマスタワークの測定直径を求め、マスタワークの測定直径とマスタワークの既知直径との差を補正値とする。そして、マスタワークの代わりに測定物であるワークをセットし、マスタワークと同様な測定によりワークの測定直径を求め、ワークの測定直径から上記補正値を減算することで、ワークの真の直径である補正直径を算出している。
[他の発明が解決しようとする課題]
しかしながら、特許文献2に開示された直径測定方法では、ワークの直径方向(回転台の回転軸心に対して垂直な径方向)に対向した2点の位置に接触子を接触させることで測定を行っているが、ワークを回転させずに測定を行うため2点のデータしかなく、真円でないものを測定した場合には、真の値(直径)を測定しているとはいえず、測定誤差が大きくなる要因となる。特にワークの真円度が低い場合には、ワークの直径を測定する方向(ワークに対して接触子を接触させる位置)によって測定結果にバラツキが生じやすく、ワークの直径を高精度かつ再現性高く測定することは困難であり、汎用性に欠けるものである。
他の発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークの表面形状を高精度かつ再現性高く測定することができ、汎用性に優れた測定を可能とする表面形状測定方法及び表面形状測定装置を提供することを目的とする。
[他の発明の実施形態]
次に、他の発明の実施形態(以下、「他実施形態」という)について説明する。なお、上述した本発明の実施形態と重複する部分もあるが、あらためて全体を通して説明する。
図11は、他実施形態の真円度測定機100を示した概略図である。図11に示すように、他実施形態の真円度測定機100は、本体ベース(基台)112上にワーク(測定物)Wを載置する回転テーブル(回転台)114が設けられている。回転テーブル114は、X方向微動つまみ(不図示)及びY方向微動つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に微動送りがされ、X方向傾斜つまみ(不図示)及びY方向傾斜つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に傾斜調整がされるようになっている。
なお、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向(後述のアーム122の移動方向に相当)、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向(後述のキャリッジ120の移動方向)である。
回転テーブル114は、軸受(不図示)を介してモータ(回転駆動部)116によって回転可能に支持されている。モータ116の回転軸には後述の回転角度検出部162(図12参照)を構成するロータリーエンコーダ(不図示)が取り付けられ、回転角が高精度に読み込まれるようになっている。軸受には、例えば、超高精度の静圧エアーベアリングが用いられ、回転テーブル114は非常に高い回転精度(例えば、0.005μm)で回転される。回転角度検出部162(ロータリーエンコーダ)は、ワークWの回転角度を検出する手段(回転角度検出手段)の一例であり、モータ116の回転角度を検出することによって回転テーブル114に載置されたワークWの回転角度を検出する。回転角度検出部162(ロータリーエンコーダ)から出力される検出信号(回転角度データ)は後述の演算処理部134に入力される。なお、回転角度検出手段としてはロータリーエンコーダに限らず、例えば、回転テーブル114を駆動するモータ116の駆動信号(パルス数)の情報に基づいてワークWの回転角度を検出するようにしてもよい。
本体ベース112上には、鉛直方向(Z方向)に延びるコラム(支柱)118が立設され、コラム118にはキャリッジ120が鉛直方向(Z方向)に移動自在に支持されている。キャリッジ120には、アーム(径方向移動軸)122が水平一軸方向(X方向)に移動自在に支持されている。アーム122の先端には検出器ホルダ124が取り付けられている。検出器ホルダ124の先端には検出器126が取り付けられている。検出器126には差動変圧器を用いた電気マイクロメータが使用されており、ワークWの表面に接触する測定子128の変位量を検出するようになっている。
検出器126は、回転テーブル114の回転軸心に垂直な径方向(X方向)双方向(図11において左右両方向)の検出機能を有する双方向型検出器で構成される。具体的には、検出器126は、測定子128をX方向双方向に付勢するための付勢部材を有しており、変位可能範囲の中央において平行を保ち、その中央の位置における検出器126の出力を0とし、例えば図11の右側に測定子128が変位した場合にはプラスの値を出力し、左側に測定子128が変位した場合にはマイナスの値を出力する。このような双方向型検出器の構成については周知であり(例えば特許文献2を参照)、ここでは詳細な説明を省略する。
なお、他実施形態では、好ましい態様の1つとして、検出器126が双方向型検出器からなる構成を示したが、これに限らず、片方向のみの検出機能を有する片方向型検出器で構成されてもよい。この場合、ワークWの表面(測定面)に対して測定子128を接触させる方向(向き)に応じて検出器126の向きを変更すればよい。
検出器126の位置(X方向位置、Z方向位置)は、後述の検出器位置検出部160(図12参照)により検出することが可能となっている。検出器位置検出部160は、検出器126をX方向に移動するアーム122の位置を検出するX軸リニアエンコーダ(不図示)と、検出器126をZ方向に移動するキャリッジ120の位置を検出するZ軸リニアエンコーダ(不図示)とを含んで構成される。X軸リニアエンコーダ及びZ軸リニアエンコーダからそれぞれ出力される検出信号(検出器位置データ)は後述の演算処理部134に入力される。これにより、演算処理部134は、ワークWの直径、円筒度、同軸度等の形状パラメータを算出する際に、X軸リニアエンコーダやZ軸リニアエンコーダで検出された検出器位置データから検出器126の位置(X方向位置、Z方向位置)を把握することが可能となっている。
なお、検出器126の位置を検出する手段としては、リニアエンコーダに限らず、検出器126(アーム122)の直線移動を回転運動に変換する機構を介してロータリーエンコーダで検出するようにしてもよい。また、エンコーダの検出方式は特に限定されず、光学式、磁気式、レーザ式、機械式、静電容量式などの各種方式を採用することができる。また、検出器126の位置を検出できれば、エンコーダに限らず、他の任意の構成のものを採用可能である。
他実施形態の真円度測定機100でワークWの真円度等を測定する場合は、ワークWを回転テーブル114に載置した後、最初に回転テーブル114の回転中心とワークWの中心との偏心補正と、回転テーブル114に対するワークWの傾斜補正を行う。
次に、検出器126の測定子28がワークWの表面(側面)に接触した状態で回転テーブル114がモータ116によって1回転され、ワークWの表面1周分のデータが採取される。検出器126から出力された検出信号(変位データ)は演算処理部134に入力される。演算処理部134では、ロータリーエンコーダから入力される回転角度データと、検出器126から入力される変位データとからワークWの真円度などを演算処理し、その演算処理結果を表示部136に表示する。
ところで、他実施形態の真円度測定機100は、詳細を後述するように、演算処理部134は、ワークWの直径を高精度かつ再現性高く測定するための各種演算機能を行う機能を有する。
図12は、演算処理部134の機能構成を示した機能ブロック図である。図12に示すように、演算処理部134には、検出器126から出力された検出信号(変位データ)と、検出器位置検出部160(X軸リニアエンコーダ及びZ軸リニアエンコーダ)から出力された検出信号(検出器位置データ)と、回転角度検出部162(ロータリーエンコーダ)から出力された検出信号(回転角度データ)とが入力される。
演算処理部134は、前述の各種演算処理を実行するために、以下の機能部として動作する。すなわち、演算処理部134は、第1形状データ取得部138、第2形状データ取得部140、及び形状パラメータ算出部142等として機能する。
第1形状データ取得部138は、ワークWに対して一方側からワークWの表面に測定子128を接触させた状態で測定が行われたときのワークWの表面形状(測定断面形状)を示す第1形状データを取得する。
第2形状データ取得部140は、ワークWに対して他方側からワークWの表面に測定子128を接触させた状態で測定が行われたときのワークWの表面形状(測定断面形状)を示す第2形状データを取得する。
形状パラメータ算出部142は、第1形状データと第2形状データとを照合し、その照合した結果に基づいてワークWの表面形状を規定する形状パラメータ(例えば、ワークWの直径)を算出する。
形状パラメータ算出部142は、補正値算出部144と、径方向位置算出部146と、径方向位置補正部148と、直径算出部150とを備えている。
補正値算出部144は、真円度測定機100によりマスタワークの直径を測定したときの測定直径とマスタワークの既知直径との差を補正値(校正値)として求める。
径方向位置算出部146は、第1形状データ取得部138及び第2形状データ取得部140でそれぞれ取得された第1形状データ及び第2形状データに基づき、ワークWの表面の径方向位置(ワーク中心からワーク表面までの距離)を算出する。
径方向位置補正部148は、径方向位置算出部146で算出されたワークWの表面の径方向位置を補正する。
直径算出部150は、径方向位置補正部148で補正されたワークWの表面の補正径方向位置に基づきワークWの直径を算出し、さらに補正値算出部144で算出された補正値に基づきワークWの直径を補正する。
次に、他実施形態の真円度測定機100を用いたワークWの表面形状測定方法について説明する。この表面形状測定方法は、他の発明に係る表面形状測定方法の一例であり、ワークWの表面形状を高精度かつ再現性高く測定することができ、汎用性にも優れた測定を可能とするものである。具体的には、詳細を後述するように、ワークWに対して一方側に検出器126を配置して、ワークWと検出器126とを回転中心の周りに相対的に回転させつつ、検出器126でワークWの表面の変位を検出したときのワークWの表面形状を示す第1形状データと、ワークWに対して他方側に検出器126を配置して、ワークWと検出器126とを回転中心の周りに相対的に回転させつつ、検出器126でワークWの表面の変位を検出したときのワークWの表面形状を示す第2形状データとをそれぞれ取得し、第1形状データと第2形状データとを照合し、その照合した結果に基づいてワークWの直径を求めるようにしたものである。ワークWの直径は、ワークWの表面形状を規定する形状パラメータの一例である。
図13は、他実施形態の真円度測定機100を用いたワークWの表面形状測定方法の流れを示したフローチャートである。図14A〜図14Eは、図13のフローチャートに示した処理を説明するための図である。なお、図13に示したフローチャートの開始にあたっては、ワークWの中心と回転テーブル114の回転中心とがほぼ一致するようにワークWが回転テーブル114上に載置され、必要に応じて偏心補正(センタリング調整)や傾斜補正(チルチング調整)が行われているものとする。
まず、測定物であるワーク(測定ワーク)Wの測定に先立って、検出器位置検出部160のX軸リニアエンコーダを校正するための処理が実施される。
具体的には、まず、直径が既知のマスタワーク(基準ワーク)MWを準備し、
マスタワークMWを回転テーブル114の上に載置する。そして、ワーク中心が回転テーブル114の回転中心に正確に一致するように偏心を調整した後、図14Aに示すように、マスタワークMWの表面のX方向の一方側(0度位置)に測定子128が接触するように、アーム22をX方向に移動させる。そして、演算処理部134は、検出器126の出力が0点からプラス側(図において右側)にずれた値+α(α>0)を示したときの検出器26のX方向位置r1を検出器位置検出部160から取得する。次に、図14Bに示すように、検出器126をマスタワークMWを挟んで反対側に移して、マスタワークMWの表面のX方向の他方側(180度位置)に測定子128が接触するように、アーム122をX方向に移動させる。そして、演算処理部134は、検出器126の出力が0点からマイナス側にずれた値−αを示したときの検出器126のX方向位置r2を検出器位置検出部160から取得する。
なお、検出器位置検出部160(X軸リニアエンコーダ)により検出される検出器126のX方向位置は、回転テーブル114の回転中心(ワーク中心)を基準位置(原点)とし、図11の右側をプラス側、左側をマイナス側とする。
次に、演算処理部134は形状パラメータ算出部142の補正値算出部144として機能し、上記のようにして取得した検出器126のX方向位置r1、r2からマスタワークMWの測定直径d1=|r1−r2|を求める。そして、マスタワークMWの測定直径d1とマスタワークMWの既知直径d0との差e=d1−d0=|r1−r2|−d0を補正値(校正値)とし、この補正値を図示しない記憶部に記憶しておく。これにより、後述する直径算出部150は、記憶部に記憶されている補正値を用いて、ワークWの直径の測定を補正(校正)することができる。
(ステップS110:第1形状データ取得ステップ)
上記処理が終了すると、第1形状データ取得ステップが実施される。
具体的には、図14Cに示すように、マスタワークMWに代えてワークWを回転テーブル114の上に載置し、ワーク中心が回転テーブル114の回転中心により正確に一致するように偏心補正や傾斜補正を行った後、ワークWの表面のX方向の一方側(0度位置)に測定子128が接触するように、アーム122をX方向に移動させる。そして、演算処理部134は第1形状データ取得部138として機能し、検出器126の出力が0点からプラス側(図において右側)にずれた値+αを示したときの検出器126のX方向位置を示す検出器位置データR1を検出器位置検出部160から取得する。さらにこの状態で、図14Cに示すように、モータ116により回転テーブル114を回転駆動してワークWを回転させながら、ワークWの表面に接触する測定子128の変位を示す変位データT1を検出器126から取得するとともに、測定子128の変位を検出したときのワークWの回転角度を示す回転角度データθ1を回転角度検出部162から取得する。このとき、ワークWを1回転させる間に多数の測定点(例えば14400点)を測定し、各測定点において検出器126の出力(変位データ)T1を回転角度検出部162の出力(回転角度データ)θ1に関連付けて記憶しておく。なお、これらのデータR1、T1、θ1をまとめて第1形状データAと呼ぶことにする。
(ステップS112:第2形状データ取得ステップ)
次に、図4Dに示すように、検出器126をワークWを挟んで反対側に移して、ワークWの表面のX方向の他方側(180度位置)に測定子128が接触するように、アーム122をX方向に移動させる。そして、演算処理部134は第2形状データ取得部140として機能し、検出器126の出力が0点からマイナス側(図において左側)にずれた値−αを示したときの検出器126のX方向位置を示す検出器位置データR2を検出器位置検出部160から取得する。さらにこの状態で、図14Eに示すように、モータ116により回転テーブル114を回転駆動してワークWを回転させながら、ワークWの表面に接触する測定子128の変位を示す変位データT2を検出器26から取得するとともに、測定子128の変位を検出したときのワークWの回転角度を示す回転角度データθ2を回転角度検出部162から取得する。このとき、ワークWを1回転させる間に多数の測定点(例えば14400点)を測定し、各測定点において検出器126の出力(変位データ)T2を回転角度検出部162の出力(回転角度データ)θ2に関連付けて記憶しておく。なお、これらのデータR2、T2、θ2をまとめて第2形状データBと呼ぶことにする。
なお、第1形状データ取得ステップ(ステップS110)と第2形状データ取得ステップ(ステップS112)は、ワークWを挟んで(具体的には、回転テーブル14の回転軸心を挟んで)互いに対向する位置に検出器126を配置して測定が行われたものなので、第1形状データAと第2形状データBとは回転中心を中心とする周方向に180度位相がずれた関係となっている。すなわち、検出器126の位置の違いによって、第1形状データAと第2形状データBとは上述した位相のずれ(位相の反転)が生じたものとなっている。そのため、次の形状パラメータ算出ステップ(ステップS114)が行われる前に、測定位置(すなわち、ワークWに対する検出器126の検出位置)の違いに伴う位相のずれを補正するために、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方を他方に対して180度位相をずらす処理(位相反転処理)が行われるようになっている。これにより、第1形状データAと第2形状データBの位相は一致したものとなり、回転角度データθ1に対応する変位データ(検出器126の出力)T1と回転角度データθ2に対応する変位データ(検出器126の出力)T2とは互いにワークWの表面の同一位置における変位データを示したものとなる。
(ステップS114:形状パラメータ算出ステップ)
次に、演算処理部134は形状パラメータ算出部142として機能し、ステップS110及びステップS112で取得した2つの形状データ(第1形状データA及び第2形状データB)を照合し、その照合した結果に基づいて、ワークWの表面形状を規定する形状パラメータであるワークWの直径を算出する。具体的には以下のようにして行われる。
まず、径方向位置算出部146は、第1形状データAに基づき、回転角度検出部162で検出されたワークWの回転角度θ1毎にワークWの表面の径方向の位置(ワーク中心からワーク表面までの距離)S1=R1+T1を第1径方向位置として算出する。
また、径方向位置算出部146は、第2形状データBに基づき、回転角度検出部62で検出されたワークWの回転角度θ2毎にワークWの表面の径方向の位置(ワーク中心からワーク表面までの距離)S2=R2+T2を第2径方向位置として算出する。
次に、径方向位置補正部148は、径方向位置算出部146で算出したワークWの表面の2つの径方向位置(第1径方向位置S1及び第2径方向位置S2)に基づき、ワークWの回転角度θ(=θ1、θ2)毎にワークWの表面の補正径方向位置S=(S1+S2)/2を算出する。すなわち、2つの径方向位置S1、S2を単純平均して求められる中間位置を補正径方向位置Sとして算出する。例えば、θ1=45度であるときの第1径方向位置を25mm、θ2=45度であるときの第2径方向位置を30mmとしたとき、θ=45度に対応するワークWの表面の補正径方向位置は27.5mmとなる。
ここで、マスタワークMWを測定してからワークWを測定するまでの間に環境温度の変化等により、コラム118や本体ベース112の伸びや歪みが発生し、検出器位置検出部160(X軸リニアエンコーダ)が回転テーブル114の回転中心(ワーク中心)に対して相対的にX方向に誤差vだけずれた場合を考える。この場合、回転角度毎に算出されるワークWの表面の径方向位置はS1−v、S2+vとなるので、例えば、図15Aに示すように、第1形状データAのみを用いて得られるワークWの表面形状(記録図形)は基準円よりも小さくなる一方で、図15Bに示すように、第2形状データBのみを用いて得られるワークWの表面形状は基準円より大きくなる。そのため、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方の形状データのみに基づいて算出されるワークWの直径には測定誤差δ=2vが生じることになる。したがって、ワークWの直径を精度良く算出することは困難である。
一方、他実施形態では、回転角度毎に算出したワークWの表面の径方向位置S1、S2を単純平均して求められる中間位置を補正径方向位置Sとして求めているので、マスタワークMWを測定してからワークWを測定するまでの間に環境温度の変化等により、コラム118や本体ベース112の伸びや歪みが発生し、検出器位置検出部160(X軸リニアエンコーダ)が回転テーブル114の回転中心(ワーク中心)に対して相対的にX方向に誤差vだけずれても、このときの補正径方向位置はS={(S1‐v)+(S2+v)}/2として求められるので、誤差vをキャンセルすることができる。したがって、図16に示すように、ワークWの表面形状データ(記録図形)は、誤差vの影響を受けることなく、真の大きさ(基準円の大きさ)に近い形状を得ることができる。したがって、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方の測定データのみに基づいてワークWの直径を算出する場合に比べて、ワークWの直径を高精度に算出することが可能となる。
なお、他実施形態では、好ましい態様として、ワークWの径方向位置S1、S2を単純平均して求められる中間位置を補正径方向位置Sとする態様を示したが、これに限らず、例えば、各径方向位置S1、S2を加重平均することによって求めた位置S={a×S1+b×S2}/2(但し、a+b=1、a>0、b>0)を補正径方向位置とする態様としてもよい。この態様においても誤差vの影響を抑えることができ、第1形状データA及び第2形状データBのいずれか一方の形状データのみに基づいてワークWの直径を算出する場合に比べて、ワークWの直径を精度良く算出することが可能である。
次に、直径算出部150は、径方向位置補正部148で算出したワークWの補正径方向位置Sに基づき、中心法(最小自乗中心法、最大内接円法、最小外接円法など)によりワークWの直径D0を求める。そして、このようにして求めた直径D0から補正値算出部144で算出された補正値eを減算することで、真の直径D=D0−eを求める。
(ステップS116:出力ステップ)
次に、演算処理部134は、演算処理結果として、ステップS114で算出した形状パラメータ(ワークWの直径D)を表示部136に出力する。これにより、表示部136にはワークWの直径Dが表示され、本フローチャートは終了となる。
次に、他実施形態の効果について説明する。
他実施形態の真円度測定機100を用いた表面形状測定方法によれば、ワークWに対して一方側に検出器126を配置して、ワークWと検出器126とを回転中心の周りに相対的に回転させつつ、検出器126でワークWの表面の変位を検出したときのワークWの表面形状を示す第1形状データAを取得する第1形状データ取得ステップと、ワークWに対して他方側に検出器126を配置して、ワークWと検出器126とを回転中心の周りに相対的に回転させつつ、検出器126でワークWの表面の変位を検出したときのワークWの表面形状を示す第2形状データBを取得する第2形状データ取得ステップと、第1形状データAと第2形状データBとを照合し、その照合した結果に基づいて、ワークWの表面形状を規定する形状パラメータであるワークWの直径を算出する形状パラメータ算出ステップと、を備える。これにより、ワークWの真円度が低い場合でも、ワークWを回転することによって得られる2つの形状データA、Bに基づいてワークWの表面形状を規定する形状パラメータ(ワークWの直径)を算出しているので、測定誤差が生じることがなく、しかもワークWに対する検出器126の測定位置(ワークWに対して測定子28を接触させる位置)によって測定結果にバラツキが生じることもない。また、この表面形状測定方法によれば、例えば楕円の長辺や短辺も精度良く算出することが可能となる。したがって、ワークWの表面形状を高精度かつ再現性高く測定することができ、汎用性にも優れた測定が可能となる。
また、他実施形態では、第1形状データAと第2形状データBとを照合することにより、その照合した結果に基づいてワークWの表面形状の測定精度を評価することが可能である(評価ステップの一例)。すなわち、第1形状データAと第2形状データBとを重ね合せたとき、ワークWの回転角度θ(=θ1、θ2)毎におけるワークWの表面の径方向位置S1、S2の差(=|S1−S2|)と予め設定した基準値とを比較し、その差が基準値以下である場合には要求される測定精度を満たしていると判断し、基準値を超える場合には要求される測定精度を満たしていないと判断することもできる。これにより、ユーザは、真円度測定機100におけるワークWの表面形状の測定精度を簡易に判断することが可能となる。この場合、演算処理部134は評価部として機能する。
なお、他実施形態では、ステップS116の形状パラメータ算出ステップにおいて、2つの形状データA、Bに基づき、ワークWの回転角度θ(=θ1、θ2)毎にワークWの表面の径方向位置を補正してからワークWの直径を算出しているが、これに限らず、例えば、次のような算出方法とすることもできる。
すなわち、径方向位置算出部146は、上述した実施形態と同様にして、ステップS112で取得した第1形状データAに基づき、ワークWの表面の第1径方向位置S1=R1+T1を算出するとともに、ステップS114で取得した第2形状データBに基づき、ワークWの表面の第2径方向位置S2=R2+T2を算出する。径方向位置算出部146で算出された第1径方向位置S1及び第2径方向位置S2は直径算出部150に入力される(図12参照)。
次に、直径算出部150は、径方向位置算出部146で算出したワークWの表面の第1径方向位置S1に基づき、中心法(最小自乗中心法、最大内接円法、最小外接円法など)によりワークWの直径(第1直径)D1を算出する。
また、直径算出部150は、径方向位置算出部146で算出したワークWの表面の第2径方向位置S2に基づき、中心法(最小自乗中心法、最大内接円法、最小外接円法など)により求められるワークWの直径(第2直径)D2を算出する。
さらに直径算出部150は、上記のようにして求めたワークWの第1直径D1及び第2直径D2に基づき、ワークWの直径D0=(D1+D2)/2を算出する。すなわち、ワークWの第1直径D1及び第2直径D2を単純平均することによってワークWの直径D0を算出する。そして、このようにして求めた直径D0から補正値算出部144で算出された補正値eを減算することで、真の直径D=D0−eを求める。
また、他実施形態では、好ましい態様として、ワークWの直径D0を第1直径D1及び第2直径D2を単純平均することによって求める態様を示したが、これに限らず、ワークWの第1直径D1及び第2直径D2を加重平均することによって直径D0={p×D1+q×D2}/2(但し、p+q=1、p>0、q>0)を求める態様を採用することもできる。
(その他)
上述した各実施形態では、検出器26、126の種類としては差動トランス方式に限定されず、少なくともワークWの表面の変位を検出することができるものであれば、接触式あるいは非接触式の種々の検出器が用いられてもよい。例えば、レーザー式の変位センサ等も使用することができる。
また、上述した各実施形態では、ワークWの表面形状を規定する形状パラメータの一例としてワークWの直径を算出する場合を説明したが、形状パラメータの種類は特に限定されず、ワークWの直径以外の形状パラメータを算出するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、好ましい態様の1つとして、第1形状データA及び第2形状データBは、それぞれワークWを1回転させたときに多数の測定点(例えば14400点)で測定されたときの1周分の測定データである場合を示したが、これに限らず、その一部の測定点で測定された測定データであってもよい。例えば、歯車の歯の表面の形状を評価する場合には、歯車の谷部を除いて歯車の歯部の表面の変位データのみを取得すればよい。すなわち、ワークWを1回転させたときの1周分の測定データを多数の測定点で連続的に取得することを必ずしも必要とするものではなく、測定対象となるワークWの形状、要求される測定精度に応じて、測定点の数、間隔等が適宜調整されることが好ましい。また、測定データを取得する範囲(ワークWの回転範囲)も必ずしも1周分に限らず、その一部の範囲であってもよい。
また、上述した各実施形態では、各々の発明をテーブル回転型の真円度測定機に適用した場合について説明したが、これに限らず、測定物の周りを検出器が回転する検出器回転型の真円度測定機に対しても適用することができ、同様な効果を得ることができる。