JP2015067459A - フツリン酸ガラス、プレス成形用プリフォーム、および光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、光学素子の製造に使用するフツリン酸ガラスであって、低屈折率かつ低分散で、異常分散性の光学特性を有し、プリフォーム成形時に脈理を生じにくく、プレス成形時に失透が生じにくい光学ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、カチオン%表示で、P5+ 10〜45%、Al3+ 1〜40%、Mg2+ 0〜20%、Ca2+ 0〜25%、Sr2+ 0〜25%、Ba2+ 0〜35%、Li+ 24〜60%、Na+ 0〜10%、K+ 0〜10%、Y3+ 0〜10%、B3+ 0〜15%、を含有し、F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有するフツリン酸ガラスを提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、カチオン%表示で、P5+ 10〜45%、Al3+ 1〜40%、Mg2+ 0〜20%、Ca2+ 0〜25%、Sr2+ 0〜25%、Ba2+ 0〜35%、Li+ 24〜60%、Na+ 0〜10%、K+ 0〜10%、Y3+ 0〜10%、B3+ 0〜15%、を含有し、F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有するフツリン酸ガラスを提供する。
【選択図】なし
Description
本発明はフツリン酸ガラス、プレス成形用プリフォーム、および光学素子に関する。
近年、プレス成形技術の向上により、プレス成形によって光学素子を製造する方法が主流となっている。プレス成形は、球状や円筒形などのガラス(以下、プリフォームという)を金型中でガラス転移温度または屈伏点程度以上に加熱し、プレスして特定の形状に成形する手法である。
光学素子に使用する光学ガラスは、所望する光学特性ごとに、ガラスの主成分が異なる。低屈折率かつ低分散の光学特性を有するガラスとしては、高い可視光透過率と異常分散性を示すことから、フツリン酸ガラスが主に使用されている(例えば、特許文献1参照)。低分散性および異常分散性は、色収差の補正に有効であり、高い可視光透過率は撮像光学系を構成する光学素子材料として有利な特性である。
一方で、フツリン酸ガラスは、揮散しやすい成分であるフッ素を必須成分として含有する。そのため、フツリン酸ガラスにおいては、所望の光学特性に加えて、プリフォーム成形や光学素子の生産効率や歩留まりを高めるために、フッ素の揮発を抑制する所望の熱的特性が求められる。
例えば、プレス成形時において、成形温度が高温になり過ぎると、プリフォーム表面から成分が揮散し、金型表面にフッ化物などの揮散成分が付着する。この揮発成分がガラス表面に付着すると光を散乱し、クモリ欠点となる。したがって、金型の耐久性の向上、クモリ欠点を防止するためにも、フツリン酸ガラスは、ガラス転移温度および屈伏点が低いことが望ましい。
すなわち、フツリン酸ガラスは、上記した光学特性を有し、かつ、製造効率を高める観点から、ガラス転移温度および屈伏点を低くすることが求められている。
プレス成形に適したフツリン酸ガラスとして、例えば、P5+と、Al3+ と、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+ から選ばれる2価のカチオン成分を2種以上と、Li+とを必須のカチオン成分として含有するとともに、F−とO2−との合計量に対するF−のモル比F−/(F−+O2−)が0.25〜0.85であるガラスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このガラスは、Li+の含有量が少ないため、ガラス転移温度が高く、製造しやすさの点で充分とはいえない。
本発明は、光学素子の製造に好適なフツリン酸ガラスであって、低屈折率かつ低分散の光学特性を有し、プリフォーム成形時に脈理を生じにくく、プレス成形時に失透が生じにくい光学ガラスの提供を目的とする。
本発明のフツリン酸ガラスは、カチオン%表示で、
P5+ 5〜45%、
Al3+ 1〜40%、
Mg2+ 0〜20%、
Ca2+ 0〜25%、
Sr2+ 0〜25%、
Ba2+ 0〜35%、
Li+ 24〜60%、
Na+ 0〜10%、
K+ 0〜10%、
Y3+ 0〜10%、
B3+ 0〜15%、
を含有し、
F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有することを特徴とする。
P5+ 5〜45%、
Al3+ 1〜40%、
Mg2+ 0〜20%、
Ca2+ 0〜25%、
Sr2+ 0〜25%、
Ba2+ 0〜35%、
Li+ 24〜60%、
Na+ 0〜10%、
K+ 0〜10%、
Y3+ 0〜10%、
B3+ 0〜15%、
を含有し、
F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有することを特徴とする。
本発明のフツリン酸ガラスは、低屈折率かつ低分散の光学特性を有する。また、Li+の含有量が多いため、ガラス転移温度や屈伏点を低くできる。そのため、成形温度を低くでき、ガラス表面から成分の揮発を抑制し、金型の耐久性を高められる。さらに、熱的に安定で、高い液相粘性を示す。そのため、体積の大きいプリフォームであっても失透などの内部欠陥のないプリフォームを製造でき、これを用いて大口径のレンズをプレス成形法により製造できる。
(光学ガラス)
本発明のフツリン酸ガラス(以下、本ガラスと略す)を以下に説明する。本明細書では、以下、特に断りのない限り「%」は、カチオン成分の割合を、モル比をベースにしたカチオン%で表示するとともに、各アニオン成分の割合を、モル比をベースにしたアニオン%で表示するものとする。
本発明のフツリン酸ガラス(以下、本ガラスと略す)を以下に説明する。本明細書では、以下、特に断りのない限り「%」は、カチオン成分の割合を、モル比をベースにしたカチオン%で表示するとともに、各アニオン成分の割合を、モル比をベースにしたアニオン%で表示するものとする。
本ガラスにおいて、P5+はガラスのネットワークフォーマーであり、必須成分である。P5+の含有量は5〜45%である。5%未満ではガラスの安定性が低下するおそれがある。また、P5+の含有量を高くするには、原料として正リン酸で導入することが好ましい。P5+が45%超とすると正リン酸中の水がフッ素と反応し、HFガスとして揮発するおそれがある。また、酸化物原料で導入する場合は、酸素比率が大きくなりすぎるため、所望の光学特性を満たさない。P5+の上限は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、33%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。また、下限は、7%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、13%以上がより一層好ましい。なお、P5+の原料は、白金るつぼの侵食を抑制し、成分の揮発抑制の観点から、リン酸塩の使用が好ましい。
本ガラスにおいて、Al3+はガラスの安定性を向上させる成分であり、必須成分である。Al3+の含有量は1〜40%である。1%未満ではガラスの安定性が低下し、40%超ではガラス転移温度および液相温度が高くなるおそれがある。Al3+の上限は、37%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、33%以下がより一層好ましく、30%以下がさらに好ましく、27%以下が特に好ましい。また、Al3+の下限は、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がより一層好ましく、10%以上が特に好ましい。
本ガラスにおいて、Mg2+はガラスの安定性を向上させる成分であるが、必須成分ではない。Mg2+の含有量は0〜20%である。Mg2+の上限は、耐失透性の観点から、17%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、13%以下がより一層好ましい。また、Mg2+の下限は、0%超が好ましく、1%以上がより好ましい。
本ガラスにおいて、Ca2+はガラスの安定性を向上させる成分であるが、必須成分ではない。Ca2+の含有量は0〜25%である。Ca2+の上限は、耐失透性の観点から、22%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、17%以下がより一層好ましい。また、Ca2+の下限は、0%超が好ましく、1%以上がより好ましい。
本ガラスにおいて、Sr2+はガラスの安定性を向上させる成分であるが、必須成分ではない。Sr2+の含有量は0〜25%である。Sr2+の上限は、耐失透性の観点から、22%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、17%以下がより一層好ましい。また、Sr2+の下限は、0%超が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がより一層好ましい。
本ガラスにおいて、Ba2+はガラスの安定性を向上させ、かつ低分散を保ちつつ高屈折率を実現できる成分であるが、必須成分ではない。Ba2+の含有量は0〜35%である。Ba2+の上限は、耐失透性の観点から、31%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、29%以下がさらに好ましく、25%以下がより一層好ましい。また、Ba2+の下限は、0%超が好ましく、1%以上がより好ましく、3%以上がより一層好ましい。
本ガラスにおいて、アルカリ土類金属のカチオン成分(R2+)の含有による作用を高めるためには、これらの含有量は、合量(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)で1〜50%が好ましい。1%以上の含有で、ガラスの安定性を高める効果が高まる。一方で、50%超では、かえってガラスの安定性が低下するおそれがある。R2+の合量の上限は、47%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、43%以下がより一層好ましく、40%以下が特に好ましい。
また、R2+を上記合量で含有する場合、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+から選ばれる2種以上の使用が好ましい。さらに、アルカリ土類金属による効果を高める観点から、Ba2+を含有し、さらに、Mg2+、Ca2+およびSr2+から選ばれる1種以上の使用がより好ましい。なお、Sr2+およびBa2+は比較的多量に導入できるが、Mg2+およびCa2+の多量の導入はかえって、ガラスの安定性を低下させるおそれがある。
本ガラスにおいて、Li+は安定性を損なわずにガラス転移温度を下げる成分であり、必須成分である。Li+の含有量は、24〜60%である。Li+の含有量が24%未満では、ガラス転移温度を充分に下げることができず、安定性も低下する。また、60%超ではガラスの耐久性を損なうと同時に加工性も低下する。下記のアルカリ金属成分の含有でもガラス転移温度を下げる効果は得られるが、Li+を含有する方が、ガラスの耐水性にも優れるため、好ましい。Li+の上限は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、43%以下がより一層好ましく、41%以下がさらに好ましく、40%未満が特に好ましい。Li+の下限は、25%超が好ましく、27%以上がより好ましく、30%超がより一層好ましい。ガラスの安定性を重視する場合は、Li+の含有量を30%超〜60%とすることが好ましい。この際、Li+の上限は、59%以下がより好ましく、57%以下がより一層好ましく、55%以下がさらに好ましい。Li+の下限は、31%以上がより好ましく、32%以上がより一層好ましい。ガラスの脈理抑制を重視する場合は、Li+の含有量を24〜30%とすることが好ましい。この際、Li+の上限は、29%以下がより好ましく、28%以下がより一層好ましく、27%以下がさらに好ましい。Li+の下限は、24%超がより好ましく、25%以上がより一層好ましい。
本ガラスにおいて、ガラスの安定性と脈理抑制の効果を得るために、P5+の含有量に対するLi+の含有量のカチオン比Li+/P5+が1.00〜3.30となるようにすることが好ましい。特に、ガラスの安定性を重視する場合、Li+/P5+が1.55以上3.3未満となるようにすることが好ましい。ガラスが安定化することによって、体積の大きいプリフォームの製造が可能になり、大口径のレンズもプレス成形法によって製造することが可能になる。Li+/P5+の上限は、3.00以下がより好ましく、2.80以下がより一層好ましく、2.60以下がさらに好ましい。Li+/P5+の下限は、1.56超がより好ましく、1.57以上がより一層好ましい。また、ガラスの脈理抑制を重視する場合、Li+/P5+が1.00以上1.55未満となるようにすることが好ましい。この場合、Li+/P5+の上限は、1.54以下がより好ましく、1.53以下がより一層好ましい。Li+/P5+の下限は、1.05以上がより好ましく、1.10以上がより一層好ましい。
本ガラスにおいて、Na+およびK+はそれぞれLi+と同様にガラス転移温度を下げる成分であるが、必須成分ではない。Na+およびK+の含有量は、いずれも、0〜10%である。Na+およびK+は、Li+に比べてガラスの熱膨張係数が大きくなるため、低含有量が好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。ただし、所望される光学ガラスの要件に熱膨張係数が含まれない場合は、光学恒数の調節や軟化温度低下のために導入してもよい。なお、以下、本明細書において、実質的に含有しないとは、積極的には含有させないが、不可避不純物による混入を許容することを意味する。
本ガラスにおいて、Y3+はガラスの安定性または耐久性を向上させることができ、高屈折率でありながら分散を比較的小さくすることができる成分であるが、必須成分ではない。Y3+の含有量は、0〜10%である。10%超では、かえってガラスの安定性が低下し、ガラス転移温度が高くなる。Y3+の上限は、7%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
本ガラスにおいて、B3+はガラス化成分であり、ガラスを安定化させる効果があるが、必須成分ではない。B3+の含有量は、0〜15%である。ガラスの耐久性確保と成分の揮散抑制の観点から、15%以下が好ましい。B3+の上限は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、成分の揮散低減のためには、0.5%以下がより一層好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。また、B3+の原料は、成分の揮散を抑制し、ガラスの脈理を防止する観点から、B2O3が好ましい。
本ガラスにおいては、発明の目的を損なわない限りにおいて、上記した成分以外の成分を含有してもよいが、カチオン成分としてP5+、Al3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Li+およびY3+の合計量を95%以上とすることが、高品質な光学ガラスを安定して製造する上から好ましい。前記カチオン成分の合計量は、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、実質的に、P5+、Al3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Li+およびY3+からなることが特に好ましい。
本ガラスにおいて、上記した成分以外の成分としては、Ti4+、Zr4+、Zn2+、Bi5+、W5+、Nb5+の遷移金属イオン、Sb3+、Ga3+の3価イオン、La3+、Gd3+などのランタノイドイオンなどが挙げられる。これらの含有量は、合計で、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がより一層好ましい。
また、Si4+は、ガラスを安定化させる目的で含有してもよい。ただし、フツリン酸ガラスの製造においては、ガラスの溶解温度が低いため、過剰に導入するとガラス融液内に原料の溶け残りが生じ、溶解時に揮発が多くなり製造安定性を損なうことになる。したがってSi4+の含有量は、0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましく、0〜5%がより一層好ましい。
本ガラスにおいて、Sn2+は、ガラスが着色するおそれがあるので、実質的に含有しないことが好ましい。また、環境負荷を抑えるため、Pb2+は実質的に含有しないことが好ましい。
本ガラスにおいて、アニオン成分の割合は、所望の光学特性を実現しつつ、優れた安定性を有するガラスを得るために、F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有する。アニオン比は、0.40超〜0.90が好ましく、0.45〜0.85がより好ましく、0.50〜0.80がより一層好ましく、0.60〜0.70が特に好ましい。また、アニオン中におけるF-とO2-の合計量は、99%以上が好ましく、実質的にF-とO2-からなることがより好ましい。
アニオン成分としては、F−とO2−以外にも、ハロゲンの含有は許容される。ただし、塩化物原料はフッ化物原料に比べ、潮解性が高く、水分を含みやすいためフッ化物原料と同時に使用すると、フッ化水素となりフッ素の揮発を促進させるおそれがある。また、一般に、塩化物原料は、蒸気圧が高く揮発しやすい。そのため、本ガラスにおいては、Cl−は実質的に含有しないことが好ましい。
本ガラスの光学恒数は、屈折率(nd)は1.40〜1.58、アッベ数(νd)は65〜95、異常分散性(ΔPgF)は0.028〜0.042が好ましい。屈折率は、1.43〜1.57がより好ましく、1.45〜1.55がより一層好ましく、1.45〜1.52が特に好ましい。アッベ数は、70〜90より好ましく、75〜87がより一層好ましく、78〜85がさらに好ましく、80〜82が特に好ましい。異常分散性は、0.029〜0.041がより好ましく、0.030〜0.040がより一層好ましい。
本ガラスは、Li+の含有量が多いので、ガラス転移点を低くできる。本ガラスにおいては、ガラス転移温度は、370℃以下が好ましい。プレス成形時の金型の劣化や、プリフォームからの成分の揮散を抑制し生産性低下を防止するためには、ガラス転移温度は低いほど好ましい。したがって、ガラス転移温度は、360℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましく、340℃以下が特に好ましい。
本ガラスの屈伏点は、410℃以下が好ましい。プレス成形時の金型の劣化や、プリフォームからの成分の揮散を抑制し生産性低下を防止するためには、屈伏点は低いほど好ましい。したがって、屈伏点は、400℃以下がより好ましく、390℃以下がさらに好ましく、380℃以下が特に好ましい。
本ガラスの液相温度は、良好なプリフォーム成形のため750℃以下が好ましい。液相温度が750℃超では、プリフォーム成形時にガラス融液表面から成分が揮散し、脈理の原因になるおそれがある。したがって、液相温度は低いほど好ましく、730℃以下がより好ましく、670℃以下がさらに好ましく、650℃以下がより一層好ましい。なお、本明細書においては、液相温度は、その温度に1時間保持した場合に、ガラス融液から結晶が生成しない最低温度である。
(プリフォーム)
本発明のプリフォームは本ガラスを成形するか、成形したものをさらに研磨して得られることが好ましい。
本発明のプリフォームは本ガラスを成形するか、成形したものをさらに研磨して得られることが好ましい。
以下、本発明のプリフォームの製造方法の一例を説明するが、本発明のプリフォームの製造方法はこれに限定されるものではない。
タンク中で本ガラスのガラス原料を溶解してガラス融液とし、このガラス融液をタンクに付設したノズル先端から成形型に流出させて溶融ガラス塊(以下、ゴブという)を作製する。その際、ガラス融液は成形型の受け面で受け止められて溜まっていくが、ガラス融体によりノズル先端が濡れ上がらないように成形型をゆっくり下げていく。ゴブが目標体積となったところで、成形型を素早く下げ、表面張力によりガラス流を切断する。所望の体積のゴブを作製するために、ゴブ作製中は、多孔質の成形型に窒素ガスなどの不活性ガスを通し、ガスの流出による力でゴブを浮上させながら楕円または球状などとし、その後、冷却してプリフォームを成形する。
タンク中で本ガラスのガラス原料を溶解してガラス融液とし、このガラス融液をタンクに付設したノズル先端から成形型に流出させて溶融ガラス塊(以下、ゴブという)を作製する。その際、ガラス融液は成形型の受け面で受け止められて溜まっていくが、ガラス融体によりノズル先端が濡れ上がらないように成形型をゆっくり下げていく。ゴブが目標体積となったところで、成形型を素早く下げ、表面張力によりガラス流を切断する。所望の体積のゴブを作製するために、ゴブ作製中は、多孔質の成形型に窒素ガスなどの不活性ガスを通し、ガスの流出による力でゴブを浮上させながら楕円または球状などとし、その後、冷却してプリフォームを成形する。
成形型としては、例えば、ガラス融液を受ける面の、曲率半径Rが8mmで、ガラスを受ける部分の曲面の凹み深さが4mmの多孔質材料で形成され、R部からのみ浮上用ガスが噴出するように構成されたものが使用される。R部からのみ、窒素ガスなどの不活性ガスを噴出させる。窒素ガスなどの不活性ガスは、ゴブを浮上させるだけでなく、ゴブの周囲に充満させるようにしてもよい。成形型のサイズを大きくすることにより、より体積の大きいプリフォームを成形できる。
本発明においては、ガラス組成が熱的に安定で、高い液相粘性を示すため、体積が1〜1.5cm3という大きなプリフォームであっても、失透や異物などの内部欠陥のないものが得られる。特に、上記方法によれば、さらに脈理や表面のシワや傷のないプリフォームが得られる。なお、体積が1.5cm3のプリフォームであれば、口径25mm程度のレンズをプレス成形により製造できる。
(光学素子)
本発明の光学素子は、本ガラスから形成されたプリフォームを成形して得られることが好ましい。本ガラスは、上記光学特性を有するため、光学素子として使用すれば、光学設計が容易である。このような光学素子としては、デジタルカメラなどに用いられる非球面レンズや球面レンズなどが挙げられる。
本発明の光学素子は、本ガラスから形成されたプリフォームを成形して得られることが好ましい。本ガラスは、上記光学特性を有するため、光学素子として使用すれば、光学設計が容易である。このような光学素子としては、デジタルカメラなどに用いられる非球面レンズや球面レンズなどが挙げられる。
光学素子の製造方法としては、量産性を高める観点からプレス成形法が好ましい。プレス成形法では、あらかじめ成形面を所望の形状に加工されたプレス成形型を使用する。一組の成形型を上下に対向させ、これらの間に前記した本発明のプリフォームを設置し、ガラスが成形に適した粘度に下がる温度まで成形型とプリフォームの両者を加熱して、プリフォームを軟化する。そして、これを加圧成形することにより、成形型の成形面をガラスに精密に転写する。本ガラスは、ガラス転移温度が充分低いので、プリフォームの加熱温度を低くできる。そのため、金型の耐久性を高くでき、プレス時のガラス表面からの成分の揮発を抑制できる。また、本ガラスは、前述したように、体積が1〜1.5cm3という大きなプリフォームであっても、失透や異物などの内部欠陥がなく、さらに脈理や表面のシワや傷のないプリフォームが得られるため、従来、困難であった口径の大きいレンズのプレス成形法による製造が可能となる。すなわち、体積約0.6cm3のプリフォームから口径8mmのレンズが、体積約1.0cm3のプリフォームから口径15mmのレンズが、体積約1.5cm3のプリフォームから口径25mm程度のレンズがそれぞれプレス成形法によって製造できる。
なお、プレス成形時の雰囲気は、金型表面やプリフォーム表面を保護するため非酸化性が好ましい。非酸化性雰囲気としては、アルゴン、窒素などの不活性ガス、水素などの還元性ガスまたは不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを使用できる。好ましくは窒素ガスまたは少量の水素ガスが混合された窒素ガスを使用できる。また、加圧時の圧力および時間は、ガラスの粘度などに合わせて適宜変更できる。そして、加熱、加圧した後、成形型とプレス成形品を冷却し、好ましくは歪点以下の温度となったところで、離型してプレス成形品を取り出す。
以下、本発明の具体的な態様を説明する。ただし、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。例1〜27はいずれも実施例である。表1〜3に各ガラスのカチオン%とアニオン%と以下の測定により得られた測定値を示す。なお、測定していないデータについては、表中「−」を記載している。
(ガラスの作製)
表1〜3に示す化学組成のガラスが得られるように原料を秤量した。ガラス原料としては、リン酸塩原料、フッ化物原料、酸化物原料および、炭酸塩原料を使用し目標組成となるように調合した。調合した原料を、内容積約300ccの白金製るつぼに入れ、約800〜900℃で1時間溶融、清澄、撹拌した。その後、約320〜370℃に予熱した縦100mm×横50mmの長方形のモールドに鋳込み後、約1℃/分で徐冷してサンプルとした。
表1〜3に示す化学組成のガラスが得られるように原料を秤量した。ガラス原料としては、リン酸塩原料、フッ化物原料、酸化物原料および、炭酸塩原料を使用し目標組成となるように調合した。調合した原料を、内容積約300ccの白金製るつぼに入れ、約800〜900℃で1時間溶融、清澄、撹拌した。その後、約320〜370℃に予熱した縦100mm×横50mmの長方形のモールドに鋳込み後、約1℃/分で徐冷してサンプルとした。
(評価方法)
得られたガラスについて、波長587.6nm(ヘリウムd線)における屈折率(nd)およびアッベ数(νd)と、波長435.8nmと波長486.1nm間の異常分散性(ΔPgF)と、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、屈伏点(At、単位:℃)、液相温度(LT、単位:℃)、線膨張係数(α、単位:×10−7/℃)および比重を測定した。これらの測定法を以下に述べる。
得られたガラスについて、波長587.6nm(ヘリウムd線)における屈折率(nd)およびアッベ数(νd)と、波長435.8nmと波長486.1nm間の異常分散性(ΔPgF)と、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、屈伏点(At、単位:℃)、液相温度(LT、単位:℃)、線膨張係数(α、単位:×10−7/℃)および比重を測定した。これらの測定法を以下に述べる。
光学恒数(屈折率、アッベ数、異常分散性):一辺が20mm、厚みが10mmの直方体形状に加工したサンプルを使用し、屈折率計(カルニュー光学工業社製、商品名:KPR−2000)で測定した。
屈折率の値は、小数点以下第6位を四捨五入して小数点以下第5位まで記載した。
アッベ数(νd)は、νd=(nd−1)/(nF−nC)により算出し、小数点以下第2位を四捨五入して小数点以下第1位まで記載した。ここで、nF、nCは、それぞれ水素F線および水素C線に対する屈折率である。これらの屈折率も同様に、前記した屈折率計を使用して測定した。
異常分散性(ΔPgF)は、次式により算出し、小数点以下第4位を四捨五入して小数点以下第3位まで記載した。
ΔPgF=PgF−(−0.001802398×νd+0.648327036)
式中、PgFは、部分分散比であり、PgF=(ng−nF)/(nF−nC)により算出される。ngは、水銀g線に対する屈折率であり、前記した屈折率計を使用して測定した。また、νdは上記で求めたアッベ数である。なお、異常分散性(ΔPgF)は、正常分散ガラスからの離れの度合いを示すものである。すなわち、通常の光学ガラスは部分分散比(PgF)とアッべ数(νd)との間には線形の関係があり、この直線関係をノーマルラインといい、この関係が成り立つガラスを正常分散ガラスという。ガラスの異常分散性(ΔPgF)は、このようなノーマルラインからガラスの部分分散比(PgF)がどれだけ離れているかを示したものである。
屈折率の値は、小数点以下第6位を四捨五入して小数点以下第5位まで記載した。
アッベ数(νd)は、νd=(nd−1)/(nF−nC)により算出し、小数点以下第2位を四捨五入して小数点以下第1位まで記載した。ここで、nF、nCは、それぞれ水素F線および水素C線に対する屈折率である。これらの屈折率も同様に、前記した屈折率計を使用して測定した。
異常分散性(ΔPgF)は、次式により算出し、小数点以下第4位を四捨五入して小数点以下第3位まで記載した。
ΔPgF=PgF−(−0.001802398×νd+0.648327036)
式中、PgFは、部分分散比であり、PgF=(ng−nF)/(nF−nC)により算出される。ngは、水銀g線に対する屈折率であり、前記した屈折率計を使用して測定した。また、νdは上記で求めたアッベ数である。なお、異常分散性(ΔPgF)は、正常分散ガラスからの離れの度合いを示すものである。すなわち、通常の光学ガラスは部分分散比(PgF)とアッべ数(νd)との間には線形の関係があり、この直線関係をノーマルラインといい、この関係が成り立つガラスを正常分散ガラスという。ガラスの異常分散性(ΔPgF)は、このようなノーマルラインからガラスの部分分散比(PgF)がどれだけ離れているかを示したものである。
熱的特性(ガラス転移温度、屈伏点):直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工したサンプルを、熱機械分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TMA4000SA)で熱膨張法により5℃/分の昇温速度で測定した。
液相温度:白金皿にガラス試料約5gを入れ、それぞれ600℃〜800℃まで10℃刻みにて1時間保持したものを自然放冷により冷却した後、結晶析出の有無を顕微鏡により50〜200倍の倍率で観察して、結晶の認められない最低温度を液相温度とした。
線膨張係数:直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工したサンプルを、熱機械分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TMA4000SA)を使用し、石英を標準資料として、5℃/分の昇温速度で得られた熱膨張曲線より、50〜200℃の平均値として算出した。
なお、上記サンプル作製時に目視で観察した結果、実施例のガラスはいずれも、溶解性に問題がないこと、および、得られたガラスサンプルには泡や脈理のないことを確認した。
(プレス成形用プリフォームの作製)
例25の硝材をガラス溶融炉で900℃に加熱溶融・清澄し、800℃で均質化させ、流出管に導入した。流出管に導入した溶融ガラスをノズルから流出させ、成形型上に供給して、プレス成形用プリフォームを作製した。成形型では、溶融ガラスを窒素ガスで浮上させながら楕円または球状にし、成形した。作製されたプリフォームを、偏光顕微鏡(OLYMPUS社製 商品名:BX50)により50〜200倍の倍率で観察し、失透がないことを確認した。体積は1.5cm3であった。
例25の硝材をガラス溶融炉で900℃に加熱溶融・清澄し、800℃で均質化させ、流出管に導入した。流出管に導入した溶融ガラスをノズルから流出させ、成形型上に供給して、プレス成形用プリフォームを作製した。成形型では、溶融ガラスを窒素ガスで浮上させながら楕円または球状にし、成形した。作製されたプリフォームを、偏光顕微鏡(OLYMPUS社製 商品名:BX50)により50〜200倍の倍率で観察し、失透がないことを確認した。体積は1.5cm3であった。
デジタルカメラなどの光学系に用いられる光学素子として、好適な光学ガラスを提供できる。
Claims (15)
- カチオン%表示で、
P5+ 5〜45%、
Al3+ 1〜40%、
Mg2+ 0〜20%、
Ca2+ 0〜25%、
Sr2+ 0〜25%、
Ba2+ 0〜35%、
Li+ 24〜60%、
Na+ 0〜10%、
K+ 0〜10%、
Y3+ 0〜10%、
B3+ 0〜15%、
を含有し、
F−をF−とO2−との合計量に対してアニオン比(F−/(F−+O2−))0.30〜0.90で含有することを特徴とするフツリン酸ガラス。 - 前記アニオン比(F−/(F−+O2−))が0.40超〜0.90である請求項1記載のフツリン酸ガラス。
- P5+の含有量に対するLi+の含有量のカチオン比(Li+/P5+)が1.00〜3.30である請求項1または2記載のフツリン酸ガラス。
- Li+を30超〜60カチオン%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- P5+の含有量に対するLi+の含有量のカチオン比(Li+/P5+)が1.55以上3.30未満である請求項4記載のフツリン酸ガラス。
- Li+を24〜30カチオン%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- P5+の含有量に対するLi+の含有量のカチオン比(Li+/P5+)が1.00以上1.55未満である請求項6記載のフツリン酸ガラス。
- 屈折率(nd)が1.40〜1.58、アッベ数(νd)が65〜95、異常分散性(ΔPgF)が0.028〜0.042である請求項1〜7のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- アルカリ土類金属成分の合計量(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)が1〜50カチオン%である請求項1〜7のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- ガラス転移温度(Tg)が370℃以下である請求項1〜9のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- 屈伏点(At)が410℃以下である請求項1〜10のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- 内部に失透を含まない体積1cm3以上のプレス成形用プリフォームが得られる請求項1〜11のいずれか1項記載のフツリン酸ガラス。
- 請求項1〜12のいずれか1項記載のフツリン酸ガラスよりなるプレス成形用プリフォーム。
- 請求項13記載のプリフォームをプレス成形してなる光学素子。
- 直径が8mm以上のレンズである請求項14記載の光学素子。
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