JP2015067014A - ブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキ力を解除してブレーキカムを回転させるときの初期荷重を小さくしたブレーキ装置を提供する。
【解決手段】出力側回転部材30は、カム面23に当接可能な当接部36Bを有する。そして、ブレーキ装置3は、入力側回転部材(出力リング40)の回転操作によりブレーキカム20に回転トルクを与えるとカム面23が当接部36Bを押して出力側回転部材が回転する一方、出力側回転部材30に回転トルクを与えても、少なくとも一方の回転方向については、当接部36Bがカム面23を押してブレーキ面21が外輪の内周面に押し付けられることでブレーキカム20が回転しないように構成される。また、ブレーキ装置3は、出力側回転部材30に対し径方向外側から当接する解除片(ローラ75)をさらに備え、出力リング40は、他方の回転方向に回転させたときにローラ75に作用してローラ75を出力側回転部材30に押圧させるように構成される。
【選択図】図11

Description

本発明は、車両用シートのハイトアジャスト機構などに使用されるブレーキ装置に関する。
車両用シートのハイトアジャスト機構には、入力側に設けられた上下に揺動させるレバーの操作によって出力軸が回転するが、シートおよび乗員の重みによってシートが下がろうとする力が出力軸に掛かっても、出力軸が回転しないように構成されたブレーキ装置が用いられている(特許文献1)。
このようなブレーキ装置は、円筒状の内周面を有する外輪と、この内周面に対向する複数のブレーキカム(クランピング部材)と、ブレーキカムの内側に配置された出力側回転部材(ウィングを有するボルト)とが設けられている。そして、ブレーキカムに入力された回転力は、ブレーキカムから出力側回転部材に伝えられるが、出力側回転部材を回転させようとしても、出力側回転部材がブレーキカムに当接してブレーキカムに与える力は、主としてブレーキカムを外輪に押し付ける力として働き、出力側回転部材がブレーキカムに与える回転力が、ブレーキカムと外輪の間で発生しうる摩擦力をこえることができないために、ブレーキカムが回転できないようになっている。
特表2002−511035号公報
ところで、車両用シートに座った乗員の重みは、出力側回転部材を回転させるトルクとして働き、出力側回転部材はブレーキカムに強く当接する。そのため、出力側回転部材がブレーキカムに食い付いて、ブレーキ力を解除してブレーキカムを回転させるときに初期荷重が重くなるという問題がある。
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、ブレーキ力を解除してブレーキカムを回転させるときの初期荷重を小さくすることが可能なブレーキ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ブレーキ装置の動作を安定させることを目的とする。
前記した課題を解決する本発明は、円筒状の内周面を有する外輪と、外輪の径方向内側に周方向に複数並んで配置され、内周面に対向して当該内周面と接触可能なブレーキ面と径方向内側を向き内周面の中心軸からの距離が徐々に変化するカム面とを有するブレーキカムと、各ブレーキカムの径方向内側に配置された出力側回転部材と、各ブレーキカムに対し周方向で係合可能な係合部を有する入力側回転部材とを備えるブレーキ装置である。
出力側回転部材は、カム面に当接可能な当接部を有する。そして、ブレーキ装置は、入力側回転部材の回転操作によりブレーキカムに回転トルクを与えるとカム面が当接部を押して出力側回転部材が回転する一方、出力側回転部材に回転トルクを与えても、少なくとも一方の回転方向については、当接部がカム面を押してブレーキ面が外輪の内周面に押し付けられることでブレーキカムが回転しないように構成される。
また、ブレーキ装置は、出力側回転部材に対し径方向外側から当接する解除片をさらに備え、入力側回転部材は、他方の回転方向に回転させたときに解除片に作用して解除片を出力側回転部材に押圧させるように構成される。
このような構成によると、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させると、入力側回転部材が解除片に作用して解除片が出力側回転部材に対して径方向外側から当接する。この当接力により出力側回転部材とブレーキカムの間の押圧力が弱まるので、出力側回転部材とブレーキカムの間の摩擦力を小さくすることができる。このため、入力側回転部材を回転させてブレーキ力を解除してブレーキカムを回転させるときの初期荷重を小さくすることができる。
前記したブレーキ装置において、入力側回転部材は、解除片に当接して解除片を押圧する、周方向に対して傾斜した傾斜面を有する構成とすることができる。
そして、ブレーキカムは、周方向に3つ並んで設けられた構成とすることができる。
ブレーキカムが周方向に3つ並んでいることで、出力側回転部材とブレーキカムの間に働く力のバランスが良くなり、ブレーキ装置の動作が安定する。
前記したブレーキ装置においては、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、係合部とブレーキカムとが周方向で係合する前に、解除片が出力側回転部材に押圧されるように設定された構成とすることができる。
このように構成することで、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、解除片が出力側回転部材に押圧された後に、係合部とブレーキカムとが周方向で係合するので、解除片が出力側回転部材のブレーキカムへの食い付きを確実に弱めた後に、入力側回転部材がブレーキカムを作動させる。これにより、ブレーキカムを作動させるときの初期荷重を確実に小さくすることができる。
このブレーキ装置においては、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、係合部とブレーキカムとが周方向で係合する前に、当接部とカム面の当接が解除されるように設定されていてもよい。
この場合には、ブレーキ力を完全に解除した後に、入力側回転部材がブレーキカムを作動させるので、ブレーキカムを回転させるときの初期荷重を十分に小さくすることができる。
また、前記した、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、係合部とブレーキカムとが周方向で係合する前に、解除片が出力側回転部材に押圧されるように設定された構成においては、さらに、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、当接部とカム面の当接が解除される前に、係合部とブレーキカムとが周方向で係合するように設定された構成とすることができる。
この場合にも、ブレーキ力を解除してブレーキカムを回転させるときの初期荷重を小さくすることができる。
本発明によれば、入力側回転部材を他方の回転方向に回転させるときの初期荷重を小さくすることができる。
また、ブレーキカムを周方向に3つ並べて配置した場合には、出力側回転部材とブレーキカムの間に働く力のバランスが良くなるので、ブレーキ装置の動作を安定させることができる。
乗物用シートの側面図である。 クラッチユニットの分解斜視図である。 出力リングおよびローラを省略した、ブレーキ装置の横断面図である。 クラッチユニットの、図3のZ−Z断面図である。 ブレーキ装置の横断面図である。 ラチェット装置の横断面図である。 ラチェット装置の動作を説明する図であり、操作入力部材を時計回りに回転させた場合を示す。 ラチェット装置の動作を説明する図であり、図7の状態から、操作入力部材を反時計回りに戻した場合を示す。 ブレーキ装置の動作を説明する図であり、出力リングに時計回りの回転力を与えた場合を示す。 ブレーキ装置の動作を説明する図であり、出力側回転部材に反時計回りの回転力を与えた場合を示す。 図10の状態から、出力リングを時計回り方向に少し回した状態を示す図である。 図11の状態から、出力リングを時計回り方向にさらに回した状態を示す図である。 変形例に係るブレーキ装置の横断面図である。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、一実施形態のクラッチユニット1は、乗物用シートの一例としての車両用シートSのシートクッションS1の高さを調整するための公知のハイトアジャスト機構に適用されるものである。クラッチユニット1は、操作入力部材50にレバーLVが取り付けられ、レバーLVの操作により、後述する出力側回転部材30を回転させてハイトアジャスト機構を駆動してシートクッションS1の高さを調整可能である。具体的には、レバーLVを中立位置Nから上げると、シートクッションS1が所定量上がり、レバーLVを中立位置Nから下げると、シートクッションS1が所定量下がるようになっている。なお、レバーLVを、上または下の位置から中立位置Nに戻すときには、出力側回転部材30が回転しないようになっている。
図2および図4に示すように、クラッチユニット1は、ハウジング100に各部材が収納されて構成されている。なお、ハウジング100は、外輪10、取付板85およびカバー部材60の組合せにより構成されている。また、以下の説明では、カバー部材60および操作入力部材50が配置される図2の左側を「入力側」と称し、出力側回転部材30の出力ギヤ35が配置される図2の右側を「出力側」と称する。
図2に示すように、クラッチユニット1は、入力側に設けられ、操作入力部材50の揺動動作による入力トルクを伝達・遮断するラチェット装置2と、出力側に設けられ、ラチェット装置2からの入力トルクを出力側回転部材30の出力ギヤ35に伝達するとともに、出力ギヤ35からの逆入力トルクを遮断するブレーキ装置3とを備えてなる。
ラチェット装置2とブレーキ装置3の構成部品の概略を説明すると、ラチェット装置2は、操作入力部材50と、規制部材71と、ブレーキ装置3の入力側回転部材としての出力リング40と、可動片としてのローラ72と、リターンスプリング73とを備えてなる。また、ブレーキ装置3は、外輪10と、ブレーキカム20と、出力側回転部材30と、出力リング40と、解除片の一例としてのローラ75と、フリクションリング82と、ワッシャ76とを備えてなる。なお、出力リング40は、ラチェット装置2の出力部材であるとともに、ブレーキ装置3の入力部材であり、ラチェット装置2とブレーキ装置3のいずれの部品ともいうことができる。
次に、ブレーキ装置3およびラチェット装置2の構成の詳細を説明する。
まず、ブレーキ装置3の構成について説明する。
外輪10は、所定肉厚のリングからなり、円筒状の内周面11と、内周面11と同心な円筒状の外周面12と、内周面11と外周面12を繋ぐ一対の側面13,14とを有している。
外輪10とともにハウジング100の一部を構成する取付板85は、ブレーキ装置3を支持するための板金部材であり、外輪10の出力側の側面14の外周縁とレーザ溶接されている。取付板85は、シートクッションS1のフレームなどにブレーキ装置3を取り付けるための取付部として取付孔85Bが2つ形成されている。また、取付板85は、中央に出力側回転部材30を通すための貫通孔85Aが形成されている。外輪10は、取付板85と固定されていることで、クラッチユニット1は、いろいろな装置に取り付けることが可能である。
ブレーキカム20は、外輪10との間でブレーキ力を発生する部材であり、外輪10の径方向内側に周方向に等間隔で並ぶように3つ配置されている。ブレーキカム20は、周方向に延びる本体部20Aと、本体部20Aの周方向両端部から径方向外側に突出する突出部20Bとを備えて構成されている。突出部20Bの径方向外側の先端には、外輪10の内周面11に対向するブレーキ面21を有している。このブレーキ面21は、外輪10の内周面11と同じ半径の円筒面を有しており、ブレーキカム20が径方向外側に付勢されたときには、外輪10の内周面11と密着するようになっている。
ブレーキカム20は、一対のブレーキ面21の間に、ブレーキ面21より小径の円筒面状の外周面22を有している。また、ブレーキカム20の径方向内側の面は、外輪10の中心軸を向く平面となっている。この平面は、内周面11の中心軸(つまり、出力側回転部材30の中心軸)からの距離が徐々に変化しているカム面23であり、後述する出力側回転部材30と当接するように配置されている。そして、ブレーキカム20は、周方向の端部にカム面23の両端部と2つのブレーキ面21の端部とを繋ぐ端面24を有している。また、ブレーキカム20は、ブレーキ面21と外周面22との間の段差に、周方向を向く回転力入力面25が形成されている。
出力側回転部材30は、軸状の作用部31と、この作用部31の出力側に形成されたフランジ32と、作用部31から入力側に突出し、作用部31と同軸で小径の支持軸部33と、支持軸部33から入力側に突出し、支持軸部33と同軸で支持軸部33より小径の軸部37と、フランジ32から出力側に突出して形成された出力ギヤ35とを備えて構成されている。出力ギヤ35は、取付板85の貫通孔85Aを通って出力側に突出している(図4参照)。
図3に示すように、作用部31は、全体的に略円柱形状となっており、この円柱形状は、3つのカム面23に内接する円よりも僅かに大きな直径を有している。そして、作用部31は、3つのカム面23に対向する部分に、カム面23から僅かなクリアランスを介して対向した平面からなる対向面34が形成されている。作用部31の円筒状の外周面31Aと対向面34の境目にある緩やかな角は、ブレーキカム20または出力側回転部材30を回転させようとするときにカム面23と当接する部分であり、図3において対向面34の反時計回り側の縁部に相当する当接部36Aと、時計回り側の縁部に相当する当接部36Bとがある。
図2に示すように、フリクションリング82は、ブレーキ装置3のブレーキ力が切れた瞬間に急激に出力側回転部材30の動作が開始するのを抑制するための摩擦力を発生する部材である。フリクションリング82は、出力側回転部材30の作用部31の外周に合致した孔を有するリング部82Aと、リング部82Aから径方向外側に延出し、先端部が外輪10の内周面11に圧接する3組の摩擦発生アーム82B,82Cとを備える。各組の摩擦発生アーム82B,82Cは、周方向に等間隔に配置されている。フリクションリング82は、リング部82Aの孔が作用部31と係合することで、出力側回転部材30と一体に回転するようになっている。
摩擦発生アーム82Bは、径方向外側へ行くほど、図3における時計回り方向に位置するように、径方向に対して傾斜し、摩擦発生アーム82Cは、径方向外側へ行くほど、図3における反時計回り方向に位置するように、径方向に対して傾斜している。このため、フリクションリング82は、図3の時計回り方向に回転するときには、摩擦発生アーム82Bの先端が内周面11に食い付いて大きな摩擦力を発生し、反時計回り方向に回転するときには、摩擦発生アーム82Cの先端が内周面11に食い付いて大きな摩擦力を発生するようになっている。
図2に戻り、ワッシャ76は、出力側回転部材30の軸部37の外径よりも僅かに小さい直径の孔76Aを有し、この孔76Aが軸部37に圧入されている(図4参照)。ワッシャ76の外径は、後述するカバー部材60の支持孔64より大きく、ワッシャ76により出力側回転部材30が出力側に抜けないようになっている。
出力リング40は、外輪10および出力側回転部材30などの軸心周りに回転可能であり、ラチェット装置2の回転出力をブレーキ装置3のブレーキカム20に係合して伝達する部材である。出力リング40は、薄板状の受圧リング部41と、受圧リング部41から出力側に向けて突出した、係合部の一例としての複数の係合脚42と、受圧リング部41の内周面41Aから径方向内側に板状に延びた作用板43とを備えて構成されている。受圧リング部41の内周面41Aは、円形断面を有している。
係合脚42は、等間隔で3つ設けられており、図3に示すように、一のブレーキカム20における一対の突出部20Bの間に1つずつ入るように配置されている。そして、突出部20Bと係合脚42の間に僅かな遊びが設けられている。また、各係合脚42は、径方向において同じ位置で、また、同じ大きさで配置されている。
図5に示すように、作用板43は、その中心に孔44を有している。孔44は、出力側回転部材30の作用部31の外径に合った円弧形状を有する円径部44Aと、円径部44Aから径方向外側へ向けて凹む収容凹部45を有している。収容凹部45は、出力側回転部材30の3つの対向面34に対応して、周方向に等間隔で3箇所設けられている。収容凹部45は、径方向外側に、図5における時計回り方向に行くほど径方向外側に位置する、周方向に対して傾斜した傾斜面45Aと、傾斜面45Aの反時計回り側の端部から径方向内側に延びて円径部44Aに繋がる接続面45Bと、傾斜面45Aの時計回り側の端部から径方向内側に延びて円径部44Aに繋がる接続面45Cとを有する。
ローラ75は、金属からなり、作用板43の収容凹部45にそれぞれ配置されている。ローラ75は、傾斜面45Aと、対向面34と、接続面45Cとに囲まれるように配置され、出力リング40および出力側回転部材30のいずれにも外部から力が掛かっていないときには、これらに接するか、僅かに隙間を有している。そして、このときに、ローラ75の外周面のうち最も外輪10の径方向内側に位置する部分は、対向面34の、周方向における中心位置付近に位置している。
次に、ラチェット装置2の構成について説明する。
図2に示すように、操作入力部材50は、レバーLVと係合してレバーLVと一体に揺動可能であるとともに、可動片としてのローラ72を介して出力リング40と係合することで、出力リング40にレバーLVからの回転トルクを伝達する部材である。このため、操作入力部材50は、カム板部51と、このカム板部51から入力側に延出した2つのレバー係合部52とを備えてなる。
図6に示すように、カム板部51は、外周面に3箇所の小径部53と3箇所の大径部54が交互に配置されており、小径部53と大径部54を平面からなるカム面55が接続している。小径部53と大径部54とが繋がる箇所は6箇所あるので、これに対応してカム面55は6つ形成されている。カム面55は、中心軸からの距離が徐々に変化するように形成されている。
カム面55と受圧リング部41の内周面41Aとの間には、それぞれ、ローラ72が配置されている。ローラ72は、後述する動作説明で分かるように、操作入力部材50および出力リング40に対し係合・離脱することで入力トルクの伝達・遮断を行うものである。ローラ72は、カム面55に対応して計6つ配置されている。
ここで、図2に戻り規制部材71について説明すると、規制部材71は、ローラ72の位置を規制する部材であり、複数のローラ72の出力側の側面を覆う側壁部71Aと、側壁部71Aの外周縁から入力側に向けて延出した3つの規制部71Bとを備えて構成されている。規制部71Bは、軸方向においてローラ72の軸方向の長さよりも長く、後述するようにその先端がカバー部材60の嵌合穴66に圧入嵌合している。
図6に示すように、規制部71Bは、レバーLVを操作していない非作動時において大径部54の径方向外側で同じ回転位置に配置されており、カム面55と受圧リング部41の間にあるローラ72の周方向についての移動を規制している。隣接する規制部71Bの間に配置された2つのローラ72の間には、圧縮コイルバネからなるリターンスプリング73がそれぞれ初期荷重を与えられて配置されている。このため、図6の非作動時において、各ローラ72は規制部71Bに接している。ここで、規制部71Bは、外輪10の径方向において、ローラ72の中心が位置するところを含むように配置され、ローラ72の、周方向に最も出っ張っているところに接している。これにより、規制部71Bは、ローラ72を安定して支持することができる。なお、図6においては、ローラ72を、規制部71Bに接した状態で表しているが、ローラ72は、カム面55と内周面41Aに挟持されることで、規制部71Bから僅かに離れていてもよい。
レバー係合部52は、円弧状の断面でカム板部51から延出している。レバー係合部52は、レバーLVと係合している(図示省略)。
図2に示すように、カバー部材60は、円板状の側壁部61と、側壁部61の外周縁から出力側に延びる円筒状の外周部62と、外周部62の出力側の端部から径方向外側に広がるフランジ63とを備えてなる。フランジ63は、図4に示すように、外輪10の側面13に合わされ、その外周縁に沿って側面13とレーザ溶接により溶接されている。外輪10は、このようにカバー部材60が溶接されることで補強されている。この溶接は、フランジ63の全周に渡ってなされている。
図2に示すように、側壁部61には、その中心に円形の支持孔64と、支持孔64の周囲で円弧形状に延びる2つの円弧孔65と、円弧孔65よりも径方向外側に位置し、周方向に3つ等間隔で配置された嵌合穴66とが形成されている。
支持孔64は、出力側回転部材30の支持軸部33と嵌合し、出力側回転部材30を軸支する部分である。
円弧孔65は、操作入力部材50のレバー係合部52に対応して設けられ、レバー係合部52よりも広い角度範囲で円弧状に形成されている。これにより、円弧孔65は、レバー係合部52を受け入れるとともに、レバー係合部52が円弧孔65の中において所定角度範囲で移動することが可能となっている。
嵌合穴66は、規制部材71の3つの規制部71Bに対応して3つ設けられた貫通孔であり、規制部材71がカバー部材60に対し相対回転しないように、カバー部材60と嵌合されている。規制部材71とカバー部材60とは、複数箇所で嵌合していることで、規制部材71の回転の規制をしっかりと行うことができる。
次に、以上のように構成されたクラッチユニット1の動作について説明する。
まず、ラチェット装置2の動作について説明する。
図6に示す中立位置において、ローラ72は、出力リング40の内周面41Aと操作入力部材50のカム面55の間に位置するが、これらの間には僅かな隙間があり、これらに挟持されてはいない。ローラ72は、リターンスプリング73により規制部71Bに押し付けられている。レバーLVの操作により操作入力部材50を時計回り方向に少し回動させると、カム面55が時計回りに回動してローラ72に接し、内周面41Aとカム面55の間でローラ72が挟持される。これにより、操作入力部材50と出力リング40は一体に回転できるようになる。
そのため、図7に示すように、操作入力部材50を時計回りに回していけば、出力リング40と操作入力部材50とが一体になったまま、時計回りに回動する。すなわち、操作入力部材50を回動させた入力トルクが出力リング40に伝達される。
図7の状態からレバーLVを反時計回りに揺動させて中立位置に戻すときには、ローラ72からカム面55が反時計回りに逃げていき、ローラ72はカム面55と内周面41Aには挟持されないので、図8に示すように、出力リング40が図7の位置で静止したまま、操作入力部材50が中立位置に向けて回動する。すなわち、操作入力部材50を戻すときの入力トルクは出力リング40には伝達されず、遮断される。操作入力部材50は、リターンスプリング73の付勢力により中立位置に向けて操作するのが補助されるとともに、中立位置に維持される。
レバーLVを中立位置から上に上げ、また、上の位置から中立位置に戻すときの動作は、上述の下への揺動の場合と回転方向が逆なだけで同様であるので説明を省略する。
このようにして、レバーLVの操作により出力リング40が回動するときのブレーキ装置3の動作について説明する。なお、ここでは、カム面23に出力側回転部材30が食い付いていないものとする。
図9に示すように、入力側回転部材としての出力リング40から時計回りの回転トルク(入力トルク)が入力された場合、出力リング40の係合脚42の時計回り方向を向く端面42Aが回転力入力面25に当接し、回転力入力面25を押すことで、ブレーキカム20が時計回りに回転し始める。そして、各ブレーキカム20は、各カム面23が出力側回転部材30の当接部36Bに当接して、出力側回転部材30に時計回りの回転力を与える(矢印参照)。これにより、出力リング40を時計回りに回転させると、出力リング40、ブレーキカム20および出力側回転部材30が一体となって時計回りに回転する。
図10に示すように、出力側回転部材30に、図における反時計回り方向(第1回転方向とは逆の第2回転方向)の回転力を与えると、3つの当接部36Bが対応する各ブレーキカム20のカム面23に当接し、カム面23を径方向外側へ押す。このカム面23を押す力F1に応じて、その当接点において働く摩擦力F2は、僅かながらブレーキカム20を反時計回りに回転させようと作用する。
また、力F1は、ブレーキカム20を、ブレーキ面21において外輪10の内周面11に押し付ける力F3を発生させる。そして、この力F3に応じて、内周面11とブレーキ面21の間には、ブレーキカム20を反時計回りに回転させようとする力に抵抗する摩擦力F4が作用する。本実施形態のブレーキ装置3においては、摩擦力F2によるブレーキカム20を反時計回りに回転させようとする力が、摩擦力F4を超えることができないので、出力側回転部材30、ブレーキカム20および出力リング40は外輪10に対して回転することができない。すなわち、出力側回転部材30に反時計回り方向の回転トルクを与えても、ブレーキ面21が内周面11に押し当てられることでブレーキカム20は回転することができない。このようにして、ブレーキ装置3は、ブレーキ力を発生することができる。
本実施形態においては、ブレーキカム20、出力側回転部材30は、鏡像対称(図3で線対称)に構成され、出力リング40も、収容凹部45を除いては鏡像対称に構成されているので、出力リング40を反時計回りに回転させた場合には、力の掛かり方および回転方向が反転し、出力リング40、ブレーキカム20および出力側回転部材30は一体となって反時計回りに回転する。一方、出力側回転部材30を時計回りに回転させようとする場合には、力の掛かり方が反転して反時計回りの場合と同様に作用し、出力側回転部材30、ブレーキカム20および出力リング40は外輪10に対して回転することができない。すなわち、ブレーキ装置3は、ブレーキ力を発生することができる。
ところで、図10に示すように出力側回転部材30を反時計回りに強く回転させてブレーキ力を発生した場合、当接部36Bがカム面23に強く当接することで、当接部36Bがカム面23に食い付くことがある。これは、例えば、車両用シートSに乗員が座ったときの重みが出力側回転部材30を図10の反時計回りに回転させる力を発生する場合である。このような場合、出力側回転部材30の反時計回り方向の回転トルクを解除しても、カム面23が当接部36Bに押し返すことで、当接部36Bとカム面23との間に大きな摩擦力が発生する。このため、仮に、出力リング40の収容凹部45とローラ75が無い場合には、出力リング40の係合脚42が回転力入力面25に当接したとしても、この当接部36Bとカム面23との食い付きにより、ブレーキカム20は容易には回転しない。しかし、本実施形態のブレーキ装置3では、収容凹部45とローラ75があることにより、次のように、比較的容易にブレーキカム20を回転させることができる。
図10に示した当接部36Bがカム面23に食い付いた状態から出力リング40を時計回り方向に回転させると、図11に示すように、ローラ75が出力リング40の傾斜面45Aと出力側回転部材30の対向面34との間に挟まって、ローラ75が対向面34に当接し、対向面34を径方向内側に押す。このとき、係合脚42の時計回り方向を向く端面42Aは、未だ回転力入力面25に当接していない。
この状態からさらに出力リング40を時計回り方向に回転させると、図12に示すように、傾斜面45Aと対向面34との間に形成されるクサビ状の空間の中で、ローラ75が狭い側に向けて転がる。このため、傾斜面45Aがローラ75を径方向内側に強く押し付け、ローラ75が対向面34に強く当接する。これにより、出力側回転部材30が僅かに変形することで、当接部36Bとカム面23の当接力が弱まる。本実施形態においては、一例として、当接部36Bとカム面23の当接(押し付いた状態)が解除される前に、係合脚42の端面42Aが回転力入力面25に周方向で係合する設定とされている。このため、当接部36Bとカム面23の食い付きが弱まった状態で端面42Aと回転力入力面25に係合するので、比較的軽い力でブレーキカム20および出力側回転部材30を時計回り方向に回転させることができる。すなわち、ブレーキカム20を回転させるときの初期荷重を小さくすることができる。
なお、傾斜面45Aの位置を変更すれば、係合脚42の端面42Aと回転力入力面25が周方向で係合する前に、当接部36Bとカム面23の当接が解除されるように設定することもできる。この場合には、係合脚42の端面42Aと回転力入力面25が周方向で係合するときには、当接部36Bとカム面23の食い付きは完全に解消されているので、より小さな力でブレーキカム20および出力側回転部材30を動かし始めることができる。そして、この場合には、当接部36Bとカム面23の当接が解除された瞬間に、ブレーキ力が解除されることになるが、フリクションリング82の摩擦発生アーム82B,82Cが外輪10の内周面11との間で摩擦力を発生しているので、出力側回転部材30が急激に回転することはない。
以上のようにして、本実施形態のクラッチユニット1によれば、以下のような効果を奏することができる。
ブレーキ装置3において、出力リング40の傾斜面45Aがローラ75に作用して、ローラ75が出力側回転部材30に径方向外側から当接し、この当接力により当接部36Bとカム面23との間の押圧力が弱まるので、当接部36Bとカム面23の間の摩擦力を小さくすることができる。このため、出力リング40を回転させてブレーキ力を解除してブレーキカム20を回転させるときの初期荷重を小さくすることができる。
そして、ブレーキ装置3では、ブレーキカム20が3つ設けられることで、ブレーキカム20に回転トルクを与えたときに、ブレーキカム20のカム面23が、3方向から出力側回転部材30を掴むので、出力側回転部材30の軸心が安定し、安定した動作を行わせることができる。
また、出力リング40を図11の時計回り方向に回転させたときに、ローラ75が対向面34に押圧された後に、係合脚42の端面42Aと回転力入力面25が周方向で係合するので、ローラ75が、出力側回転部材30のブレーキカム20への食い付きを確実に弱めた後に、出力リング40がブレーキカム20を作動させる。これにより、ブレーキカム20を作動させるときの初期荷重を確実に小さくすることができる。
そして、当接部36Bとカム面23の当接が解除される前に、係合脚42の端面42Aが回転力入力面25に周方向で係合する場合には、ブレーキカム20を作動させるときの初期荷重を小さくでき、さらに、係合脚42の端面42Aと回転力入力面25が周方向で係合する前に、当接部36Bとカム面23の当接が解除されるように設定すれば、初期荷重をより一層小さくすることができる。
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、係合脚42と回転力入力面25が係合する前に、ローラ75が出力側回転部材30の対向面34に押圧される設定とされていたが、係合脚42と回転力入力面25が係合するのと同時に、ローラ75が出力側回転部材30の対向面34に押圧される設定とすることもできる。
前記実施形態においては、図11の時計回り方向に出力リング40を回転させる場合にのみに傾斜面45Aがローラ75に作用するように構成していたが、図13に示す変形例のように、傾斜面45Aを、ローラ75に関して対称に配置することで、反時計回り方向に出力リング40を回転させる場合にも、傾斜面45Aをローラ75に作用させて、初期荷重を小さくすることができる。
ラチェット装置2に用いられる可動片は、ローラ72に限られず、カム面55と内周面41Aに係合・離脱可能な小片であれば形状は限定されず、球体やくさびであってもよい。同様に、ブレーキ装置3に用いられる解除片は、ローラ75に限られず、傾斜面45Aと対向面34の間に係合・離脱可能な小片であれば形状は限定されず、球体やくさびであってもよい。
前記実施形態においては、解除片としてのローラ75が対向面34に当接する構成としていたが、ローラ75が出力側回転部材30の作用部31の円形状の外周面31Aに当接するように構成することもできる。
前記実施形態において、出力側回転部材30に回転トルクを与えた場合に、正逆いずれの方向であっても、ブレーキ力が発生するように構成されていたが、出力側回転部材30に、一方の回転方向についてはブレーキカム20に係合する部分を設けるなどして、ブレーキ力が発生しないように構成してもよい。
また、ブレーキ装置3、ラチェット装置2およびクラッチユニット1は、車両用シートSのハイトアジャスト機構に用いられるだけでなく、他の装置に任意に適用することができる。
1 クラッチユニット
2 ラチェット装置
3 ブレーキ装置
10 外輪
11 内周面
12 外周面
20 ブレーキカム
21 ブレーキ面
23 カム面
25 回転力入力面
30 出力側回転部材
34 対向面
35 出力ギヤ
36A 当接部
36B 当接部
40 出力リング
42 係合脚
42A 端面
43 作用板
44 孔
45 収容凹部
45A 傾斜面
50 操作入力部材
60 カバー部材
75 ローラ
82 フリクションリング
85 取付板
100 ハウジング
S 車両用シート
S1 シートクッション

Claims (6)

  1. 円筒状の内周面を有する外輪と、
    前記外輪の径方向内側に周方向に複数並んで配置され、前記内周面に対向して当該内周面と接触可能なブレーキ面と前記径方向内側を向き前記内周面の中心軸からの距離が徐々に変化するカム面とを有するブレーキカムと、
    前記各ブレーキカムの前記径方向内側に配置された出力側回転部材と、
    前記各ブレーキカムに対し周方向で係合可能な係合部を有する入力側回転部材とを備え、
    前記出力側回転部材は、前記カム面に当接可能な当接部を有し、
    前記入力側回転部材の回転操作により前記ブレーキカムに回転トルクを与えると前記カム面が前記当接部を押して前記出力側回転部材が回転する一方、前記出力側回転部材に回転トルクを与えても、少なくとも一方の回転方向については、前記当接部が前記カム面を押して前記ブレーキ面が前記外輪の前記内周面に押し付けられることで前記ブレーキカムが回転しないように構成され、
    前記出力側回転部材に対し径方向外側から当接する解除片をさらに備え、
    前記入力側回転部材は、他方の回転方向に回転させたときに前記解除片に作用して前記解除片を前記出力側回転部材に押圧させるように構成されたことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 前記入力側回転部材は、前記解除片に当接して解除片を押圧する、前記周方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
  3. 前記ブレーキカムは、周方向に3つ並んで設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキ装置。
  4. 前記入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、前記係合部と前記ブレーキカムとが周方向で係合する前に、前記解除片が前記出力側回転部材に押圧されるように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のブレーキ装置。
  5. 前記入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、前記係合部と前記ブレーキカムとが周方向で係合する前に、前記当接部と前記カム面の当接が解除されるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
  6. 前記入力側回転部材を他方の回転方向に回転させたときに、前記当接部と前記カム面の当接が解除される前に、前記係合部と前記ブレーキカムとが周方向で係合するように設定されていることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
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