以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施形態は、裏面接合型の太陽電池およびそれを用いた太陽電池モジュールであり、太陽電池が発電した電力を取り出すための電極が、光が主に入射する受光面に対向する太陽電池の裏面に設けられる。裏面接合型の太陽電池では、例えば、裏面側にn型領域とp型領域とが第1方向に交互に配置される。それぞれの領域の上にはn側電極またはp側領域が設けられ、n側電極およびp側電極は第1方向に交差する第2方向に延びる。
本実施形態の太陽電池は、太陽電池の光電変換部が複数のサブセルに分割されており、隣接するサブセルの境界に分離領域が設けられる。隣接する二つのサブセルは、両者にまたがって設けられるサブ電極により直列的に接続される。本実施形態では、一つの太陽電池を複数のサブセルに分割することで、第2方向に延びるn側電極およびp側電極の長さを短くし、集電極の抵抗を下げる。電極の抵抗を下げることにより、裏面電極の集電効率を高めることができる。また、本実施形態では、複数のサブセルが直列接続された太陽電池を一体的に形成するため、それぞれのサブセルを別個に形成した後に配線材等で接続する場合と比べて製造コストを下げることができる。
(第1の実施形態)
本実施形態における太陽電池70の構成について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、第1の実施形態における太陽電池70を示す平面図である。図1は、太陽電池70の受光面70aを示す図であり、図2は、太陽電池70の裏面70bを示す図である。
図1に示すように、太陽電池70は、複数のサブセル71〜74を備える。複数のサブセル71〜74は、第1方向(y方向)に延びる境界30a〜30c(以下、総称して境界30ともいう)により分割され、第1方向に交差する第2方向(x方向)に並んで設けられる。複数のサブセル71〜74は、x方向に沿ってこの順に配置される。なお、サブセル間の境界30の詳細については、図4を用いて後述する。
図2に示すように、太陽電池70は、裏面70bに設けられるn側電極14と、p側電極15と、サブ電極20と、を備える。
n側電極14は、y方向に延びるバスバー電極14aと、x方向に延びる複数のフィンガー電極14bとを含む櫛歯状に形成される。n側電極14は、第1サブセル71に設けられる。p側電極15は、y方向に延びるバスバー電極15aと、x方向に延びる複数のフィンガー電極15bとを含む櫛歯状に形成され、第4サブセル74に設けられる。なお、n側電極14及びp側電極15のそれぞれは、複数のフィンガーのみにより構成され、バスバー電極を有さない構成であってもよい。
サブ電極20は、p側部20pと、n側部20nと、接続部20cと、を有する。サブ電極20は、隣接するサブセル間にまたがって設けられ、隣接するサブセルのうち一方のサブセルにおけるp型領域と、他方のサブセルにおけるn型領域とを接続する。例えば、第2サブセル72と第3サブセル73を接続するサブ電極20は、第2サブセル72のp型領域上に設けられるp側部20pと、第3サブセル73のn型領域上に設けられるn側部20nと、両者を接続する接続部20cとで構成される。この場合、接続部20cは、第2サブセル72と第3サブセル73の間の境界30bをまたぐように配置される。
なお、p側電極15およびp側部20pは、p型領域に相当する第2領域W2x、W2yに設けられる。一方、n側電極14およびn側部20nは、n型領域に相当する第1領域W1x、W1yの内側の第3領域W3x、W3yに設けられる。第2領域W2yと第3領域W3yの間には、n型領域とp型領域の間をy方向に分離する第4領域W4yが設けられる。第4領域W4yには、サブ電極20と、n側電極14、p側電極15または他のサブ電極20との間を分離する分離溝が設けられる。分離溝の詳細は、図3を用いて後述する。
また、隣接するサブセルの間には分離領域W5xが設けられ、サブセル間の境界30a〜30cは分離領域W5xに位置する。分離領域として、接続部20cが設けられない第1の分離領域W51xと、接続部20cが設けられる第2の分離領域W52xとが設けられる。分離領域の詳細は、図4を用いて後述する。
図3は、第1の実施形態における太陽電池70の構造を示す断面図であり、図2のA−A線断面を示す。本図は、第3サブセル73の断面構造を示すが、その他のサブセルも同様の構造を有する。
太陽電池70は、半導体基板10と、第1導電型層12nと、第1のi型層12iと、第2導電型層13pと、第2のi型層13iと、第1絶縁層16、第3導電型層17n、第3のi型層17i、第2絶縁層18、電極層19を備える。電極層19は、n側電極14、p側電極15またはサブ電極20を構成する。太陽電池70は、単結晶または多結晶半導体基板にアモルファス半導体膜を形成した裏面接合型の太陽電池である。
半導体基板10は、受光面70a側に設けられる第1主面10aと、裏面70b側に設けられる第2主面10bを有する。半導体基板10は、第1主面10aに入射される光を吸収し、キャリアとして電子および正孔を生成する。半導体基板10は、n型またはp型の導電型を有する結晶性半導体基板により構成される。結晶性半導体基板の具体例としては、例えば、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板などの結晶シリコン(Si)基板が挙げられる。
本実施形態では、半導体基板10がn型の単結晶シリコン基板により構成される場合を示す。なお、半導体基板として単結晶の半導体基板以外の半導体基板を用いてもよい。例えば、ガリウム砒素(GaAs)やインジウム燐(InP)などからなる化合物半導体の半導体基板を用いてもよい。
ここで、受光面70aとは、太陽電池70において主に光(太陽光)が入射される主面を意味し、具体的には、太陽電池70に入射される光の大部分が入射される面である。一方、裏面70bとは、受光面70aに対向する他方の主面を意味する。
半導体基板10の第1主面10aの上には、実質的に真性な非晶質半導体(以下、真性な半導体を「i型層」ともいう)で構成される第3のi型層17iが設けられる。本実施形態における第3のi型層17iは、水素(H)を含むi型のアモルファスシリコンにより形成される。第3のi型層17iの厚みは、発電に実質的に寄与しない程度の厚みである限りにおいて特に限定されない。第3のi型層17iの厚みは、例えば、数Å〜250Å程度とすることができる。
なお、本実施形態において、「非晶質半導体」には、微結晶半導体を含むものとする。微結晶半導体とは、非晶質半導体中の結晶粒の平均粒子径が1nm〜50nmの範囲内にある半導体をいう。
第3のi型層17iの上には、半導体基板10と同じ導電型を有する第3導電型層17nが形成されている。第3導電型層17nは、n型の不純物が添加されており、n型の導電型を有する非晶質半導体層である。本実施形態では、第3導電型層17nは、水素を含むn型アモルファスシリコンからなる。第3導電型層17nの厚みは、特に限定されない。第3導電型層17nの厚みは、例えば、20Å〜500Å程度とすることができる。
第3導電型層17nの上には、反射防止膜としての機能と保護膜としての機能を備える第1絶縁層16が形成されている。第1絶縁層16は、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などにより形成することができる。第1絶縁層16の厚みは、反射防止膜としての反射防止特性などに応じて適宜設定することができる。第1絶縁層16の厚みは、例えば80nm〜1μm程度とすることができる。
なお、上記の第3のi型層17i及び第3導電型層17nは、半導体基板10のパッシベーション層としての機能を有する。また、第1絶縁層16の積層構造は、半導体基板10の反射防止膜としての機能を有する。なお、半導体基板10の第1主面10a上に設けられるパッシベーション層の構成はこれに限られない。例えば、半導体基板10第1主面10aの上に酸化シリコンを形成し、その上に窒化シリコンを形成した構成としてもよい。
半導体基板10の第2主面10bの上には、第1積層体12と第2積層体13とが形成される。第1積層体12および第2積層体13はy方向に交互に配置される。このため、第1積層体12が設けられる第1領域W1yと、第2積層体13が設けられる第2領域W2yは、y方向に沿って交互に配列される。また、y方向に隣接する第1積層体12と第2積層体13は接触して設けられる。したがって、本実施形態では、第1積層体12および第2積層体13によって、第2主面10bの実質的に全体が被覆される。
第1積層体12は、第2主面10bの上に形成される第1のi型層12iと、第1のi型層12iの上に形成される第1導電型層12nとの積層体により構成される。第1のi型層12iは、上記の第3のi型層17iと同様に、水素を含むi型のアモルファスシリコンからなる。第1のi型層12iの厚みは、発電に実質的に寄与しない程度の厚みである限りにおいて特に限定されない。第1のi型層12iの厚みは、例えば、数Å〜250Å程度とすることができる。
第1導電型層12nは、上記第3導電型層17nと同様に、n型の不純物が添加されており、半導体基板10と同様に、n型の導電型を有する。具体的には、本実施形態では、第1導電型層12nは、水素を含むn型アモルファスシリコンからなる。第1導電型層12nの厚みは、特に限定されない。第1導電型層12nの厚みは、例えば、20Å〜500Å程度とすることができる。
第1積層体12の上には、第2絶縁層18が形成される。第2絶縁層18は、第1領域W1yのうちy方向の中央部に相当する第3領域W3yには設けられず、第3領域W3yの両端に相当する第4領域W4yに設けられる。第3領域W3yの幅は広い方が好ましく、例えば、第1領域W1yの幅の1/3より大きく、第1領域W1yの幅より小さい範囲で設定することができる。
第2絶縁層18の材質は、特に限定されない。第2絶縁層18は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンなどにより形成することができる。なかでも、第2絶縁層18は、窒化シリコンにより形成されていることが好ましい。また、第2絶縁層18は、水素を含んでいることが好ましい。
第2積層体13は、第2主面10bのうち第1積層体12が設けられない第2領域W2yと、第2絶縁層18が設けられる第4領域W4yの端部の上に形成される。このため、第2積層体13の両端部は、第1積層体12と高さ方向(z方向)に重なって設けられる。
第2積層体13は、第2主面10bの上に形成される第2のi型層13iと、第2のi型層13iの上に形成される第2導電型層13pとの積層体により構成される。
第2のi型層13iは、水素を含むi型のアモルファスシリコンからなる。第2のi型層13iの厚みは、発電に実質的に寄与しない程度の厚みである限りにおいて特に限定されない。第2のi型層13iの厚みは、例えば、数Å〜250Å程度とすることができる。
第2導電型層13pは、p型の不純物が添加されており、p型の導電型を有する非晶質半導体層である。具体的には、本実施形態では、第2導電型層13pは、水素を含むp型のアモルファスシリコンからなる。第2導電型層13pの厚みは、特に限定されない。第2導電型層13pの厚みは、例えば、20Å〜500Å程度とすることができる。
このように、本実施形態では、結晶性の半導体基板10と第2導電型層13pとの間には、実質的に発電に寄与しない程度の厚みの第2のi型層13iが設けられる。このような構造を採用することにより、半導体基板10と第2積層体13との接合界面におけるキャリアの再結合を抑制することができる。その結果、光電変換効率の向上を図ることができる。なお、本実施形態では、結晶性の半導体基板にp型またはn型の導電型を有するアモルファスシリコンを形成してpn接合を形成する太陽電池の例を示しているが、結晶性の半導体基板に不純物を拡散させてpn接合を形成された太陽電池を用いてもよい。
本実施形態では、半導体基板10、第1積層体12、第2積層体13により光電変換部が構成される。また、半導体基板10と第1積層体12とが接する第1領域W1yがn型領域となり、半導体基板10と第2積層体13とが接する第2領域W2yがp型領域となる。
また、本実施形態では、半導体基板10としてn型の導電型を有する半導体基板を用いていることから、電子が多数キャリアとなり正孔が少数キャリアとなる。そこで、本実施形態では、多数キャリアが集電される第3領域W3yの幅と比べて、少数キャリアが集電される第2領域W2yの幅を広くすることで、発電効率を高めている。
第1導電型層12nの上には、サブ電極20のうち電子を収集するn側部20nが形成される。一方、第2導電型層13pの上には、サブ電極20のうち正孔を収集するp側部20pが形成される。n側部20nとp側部20pの間には分離溝31が形成される。したがって、同一のサブセル上に形成されるn側部20nとp側部20pは、分離溝31により分離され、両電極の間の電気抵抗は高くなるか、または、両電極は電気的に絶縁される。
なお、第1サブセル71の場合、第1導電型層12nの上にはn側部20nの代わりにn側電極が形成される。また、第4サブセル74の場合、第2導電型層13pの上にはp側部20pの代わりにp側電極が形成される。この場合、n側電極14とサブ電極20の間や、p側電極15とサブ電極20の間は、分離溝31によって分離される。
本実施形態においては、第1導電層19aと第2導電層19bの2層の導電層の積層体により電極が構成される。第1導電層19aは、例えば、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(ITO)等に錫(Sn)、アンチモン(Sb)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)等をドープした透明導電性酸化物(TCO)により形成される。本実施形態では、第1導電層19aは、インジウム錫酸化物により形成される透明電極層である。第1導電層19aの厚みは、例えば、50〜100nm程度とすることができる。本実施形態では、第1導電層19aは、スパッタリングや化学気相成長(CVD)などの薄膜形成方法により形成される。
第2導電層19bは、銅(Cu)、錫(Sn)などの金属を含む金属電極層である。ただし、これに限定されるものでなく、金(Au)、銀(Ag)等の他の金属、他の導電性材料、又はそれらの組み合わせとしてもよい。本実施形態では、第2導電層19bは、スパッタリングにより形成される銅の下地層の上に、めっき法により形成される銅層と錫層が積層された3層構造を有する。それぞれの膜厚は、50nm〜1μm程度、10μm〜20μm程度、1μm〜5μm程度とすることができる。
なお、電極層19の構成は、第1導電層19aとの積層体に限定されず、例えば、透明導電性酸化物で構成される第1導電層19aを設けずに、金属で構成される第2導電層19bのみを設けた構成としてもよい。
図4は、第1の実施形態における太陽電池70の構造を示す断面図であり、図2のB−B線断面を示す。本図では、太陽電池70を複数のサブセル71〜74に分割する境界30a、30b、30cの構造を示す。
半導体基板10の第2主面10bの上に設けられる第1積層体12および第2積層体13は、分離領域W51x、W52xに位置する第2絶縁層18を挟んでx方向に交互に配置される。本図では、第1サブセル71および第3サブセル73の位置にn型領域となる第3領域が設けられ、第2サブセル72および第4サブセル74の位置にp型領域となる第2領域が設けられる断面を示している。したがって、n型領域とp型領域とが、分離領域W51x、W52xを挟んでx方向に対向するように設けられる。
境界30a〜30cは、第2絶縁層18が形成される分離領域W51x、W52xに設けられる。第1の分離領域W51xに設けられる境界30a、30cには、n側電極14とサブ電極20の間を分離する分離溝31、または、p側電極15とサブ電極20の間を分離する分離溝31が設けられる。一方、第2の分離領域W52xに設けられる境界30bには、分離溝が設けられない。そのため、第2の分離領域W52xに残される電極層19は、隣接するサブセル間を接続する接続部20cとなる。
次に、図5〜図17を主として参照しながら、本実施形態の太陽電池70の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、方向によって形成される断面構造が異なるため、x方向とy方向のそれぞれの断面を示しながら太陽電池70の製造方法について説明する。
まず、図5に示す半導体基板10を用意し、半導体基板10の第1主面10aおよび第2主面10bの洗浄を行う。半導体基板10の洗浄は、例えば、フッ酸(HF)水溶液などを用いて行うことができる。なお、本洗浄工程にて、第1主面10aにテクスチャ構造を形成しておくことが好ましい。
次に、半導体基板10の第1主面10aの上に、第3のi型層17iとなるi型非晶質半導体層と、第3導電型層17nとなるn型非晶質半導体層と、第1絶縁層16となる絶縁層を形成する。また、半導体基板10の第2主面10bの上に、i型非晶質半導体層21と、n型非晶質半導体層22と、絶縁層23とを形成する。第3のi型層17i、第3導電型層17n、i型非晶質半導体層21、n型非晶質半導体層22のそれぞれの形成方法は、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD法等の化学気相成長(CVD)法により形成することができる。また、第1絶縁層16、絶縁層23の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法やCVD法等の薄膜形成法などにより形成することができる。
次に、図6、7に示すように、絶縁層23をエッチングすることにより、絶縁層23の一部分を除去する。具体的には、絶縁層23のうち、後工程で半導体基板10にp型半導体層を形成する第2領域W2y、W2xに位置する部分の絶縁層23を除去する。なお、絶縁層23のエッチングは、絶縁層23が酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる場合は、例えば、フッ酸水溶液等の酸性のエッチング液を用いて、第1領域W1y、W1xに位置する部分にレジストマスクを設けて行うことができる。なお、図6は、y方向に沿った断面図を示し、図2のA−A線断面に対応する。図7は、x方向に沿った断面図を示し、図2のB−B線断面に対応する。
次に、パターニングした絶縁層23をマスクとして用いて、i型非晶質半導体層21とn型非晶質半導体層22とを、アルカリ性のエッチング液を用いてエッチングする。エッチングにより、i型非晶質半導体層21およびn型非晶質半導体層22のうち、絶縁層23により覆われてない第2領域W2y、W2xに位置する部分のi型非晶質半導体層21およびn型非晶質半導体層22を除去する。これにより、第2主面10bのうち、上方に絶縁層23が設けられない第2領域W2y、W2xが露出される。なお、第1積層体12が残る領域は第1領域W1y、W1xとなる。
次に、図8、9に示すように、第2主面10bを覆うようにi型非晶質半導体層24を形成し、i型非晶質半導体層24の上にp型非晶質半導体層25を形成する。i型非晶質半導体層24、p型非晶質半導体層25の形成方法は特に限定されないが、例えば、CVD法などの薄膜形成法により形成することができる。
次に、図10、11に示すように、i型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25のうち、絶縁層23の上に位置している部分の一部分をエッチングする。これにより、i型非晶質半導体層24から第2のi型層13iを形成し、p型非晶質半導体層25から第2導電型層13pを形成する。
次に、図12、13に示すように、絶縁層23のエッチングを行う。具体的には、第2のi型層13i、第2導電型層13pの上から、絶縁層23が露出している部分をエッチングにより除去する。これにより、絶縁層23にコンタクトホールを形成して第1導電型層12nを露出させると共に、絶縁層23から第2絶縁層18を形成する。図12に示すように、y方向の断面においては、絶縁層23が除去された領域は第3領域W3yとなり、第2絶縁層18が残る領域は第4領域W4yとなる。一方、図13に示すように、x方向の断面においては、絶縁層23が除去された領域は第3領域W3xとなり、第2絶縁層18が残る領域は分離領域W51x、W52xとなる。
次に、図14、15に示すように、第1導電型層12nおよび第2導電型層13pの上に、導電層26、27を形成する。導電層26は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極層であり、導電層27は、銅(Cu)などの金属や合金により構成される金属電極層である。導電層26、27は、プラズマCVD法等のCVD法や、スパッタリング法等の薄膜形成法により形成される。導電層27は、薄膜形成法により形成した金属電極層の上に、めっき法により電極を形成することで、電極の膜厚を厚くすることとしてもよい。
次に、図16、17に示すように、導電層26、27のうち、第2絶縁層18の上に位置している部分を分断して分離溝31を形成する。これにより、導電層26、27から第1導電層19aおよび第2導電層19bが形成され、n型電極と、p側電極と、サブ電極とに分離される。なお、導電層26、27の分断は、例えばフォトリソグラフィー法などにより行うことができる。なお、分離溝31は、図16に示す第4領域W4yと、図17に示す第1の分離領域W51xに対応する位置に設けられる。一方で、図17に示す第2の分離領域W52xに対応する位置には分離溝31を設けないこととする。
以上の製造工程により、図3および図4に示す太陽電池70を形成することができる。
つづいて、本実施形態における太陽電池70が奏する効果について説明する。
図18は、比較例に係る太陽電池170を示す平面図である。太陽電池170は、裏面接合型の太陽電池であり、裏面70bに設けられるn側電極14と、p側電極15を備える。n側電極14は、y方向に延びるバスバー電極14aと、x方向に延びる複数のフィンガー電極14bとを含む櫛歯状に形成される。同様に、p側電極15は、y方向に延びるバスバー電極15aと、x方向に延びる複数のフィンガー電極15bとを含む櫛歯状に形成される。n側電極14およびp側電極15は、それぞれの櫛歯が噛み合って互いに間挿し合うように形成される。櫛歯状に電極を形成するとともに、電極パターンに対応してn型領域とp型領域を櫛歯状に形成することで、pn接合が形成される領域を増やして発電効率が高められる。
その一方で、n側電極14およびp側電極15を櫛歯状とする場合、フィンガー電極14b、15bがx方向に長く延びることとなる。その結果、フィンガー電極14b、15bの抵抗値が高くなり、集電効率の低下につながるおそれがあった。
本実施形態では、図2に示すように、太陽電池70を複数のサブセル71〜74に分割しているため、x方向に延びるフィンガー電極14b、15bの長さを短くすることができる。これにより、フィンガー電極14b、15bが長く形成される場合と比べて、フィンガー電極14b、15bの抵抗値を低くして集電効率を高めることができる。これにより、太陽電池70の発電効率を向上させることができる。
また、本実施形態では、隣接するサブセル間を接続するサブ電極20を、n側電極14およびp側電極15を形成する過程で一括形成している。仮に、フィンガー電極が延びる方向を短くした複数の太陽電池を利用する場合、太陽電池を製造した後に配線材などを利用して別途太陽電池間を接続する工程が必要となるが、本実施形態ではサブセル間を別途接続する工程を省くことができる。そのため、製造コストの増加を抑えながら集電効率の高めた太陽電池を製造することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態における太陽電池70の構成について、図19〜図21を参照しながら詳細に説明する。本実施形態における太陽電池70は、複数のサブセル71〜74の間の境界30a、30b、30cに溝を設けることにより半導体基板10を物理的に分断する点で上述の第1の実施形態と異なる。境界30において、半導体基板10を分割することにより、太陽電池70の発電効率をさらに高めることができる。以下、第1の実施形態との相違点を中心に述べる。
図19および図20は、第2の実施形態における太陽電池70を示す平面図である。図19は、太陽電池70の受光面70aを示す図であり、図20は、太陽電池70の裏面70bを示す図である。本実施形態では、境界30a、30b、30cに溝が設けられており、複数のサブセル71〜74の間が分断されている。
図21は、第2の実施形態における太陽電池70の構造を示す断面図であり、図20のB−B線断面を示す。本図では、太陽電池70を複数のサブセル71〜74の間を分割する境界30a、30b、30cの構造を示す。なお、図20のA−A線断面は、第1の実施形態と同様、図3に示す構造を有する。
第1の分離領域W51xに設けられる境界30a、30cは、分離溝31と、仮溝32と、絶縁溝33と、を有する。分離溝31は、裏面70bに設けられ、電極層19を分離して隣接する電極間を電気的に絶縁する。仮溝32は、受光面70aに設けられており、受光面70aから半導体基板10の途中に至るまでの深さを有する。仮溝32は、絶縁溝33を形成するために設けられる溝であり、例えば、受光面70aへのレーザ照射により形成される。
絶縁溝33は、半導体基板10を貫通する溝であり、キャリアとなる電子または正孔が隣接するサブセル間で移動することを防ぐ。したがって、絶縁溝33は、隣接するサブセルのうち、一方のサブセルの光電変換部と他方のサブセルの光電変換部の間を高抵抗にするかまたは絶縁する絶縁部として機能する。このような絶縁部を設けることで、一方のサブセルに設けられるn型領域と、他方のサブセルに設けられるp型領域とを電気的に分離し、発生したキャリアの集電効率を高める。絶縁溝33は、例えば、仮溝32が起点となるように半導体基板10を折り曲げることにより形成される。このとき、絶縁溝33は、半導体基板10の第2主面10bの上に設けられる第1積層体12や第2絶縁層18を貫通してもよい。
なお、仮溝32と絶縁溝33は、その他の方法により一体的に形成することとしてもよい。例えば、受光面70a側から回転刃などで切削するダイシング処理や、マスクを施した受光面70aにサンドブラスト処理やエッチング処理を施して、半導体基板10を貫通する絶縁溝33を形成することとしてもよい。
第2の分離領域W52xに設けられる境界30bは、仮溝32と、絶縁溝33と、を有する。一方で、境界30bは分離溝31を有しない。第2の分離領域W52xにおいては電極層19が分離されず接続部20cが残るためである。第2の分離領域W52xにおける絶縁溝33は、第1の分離領域W51xと同様、半導体基板10を折り曲げて形成することができる。電極層19を形成した後に半導体基板10を折り曲げることで、半導体層のみが割断されて絶縁溝33が形成され、金属層は割断されずにつながったまま残る。本実施形態では、第2導電層19bとして展延性の高い材料である銅を用いているため、少なくとも第2導電層19bを残すようにして境界30bが形成される。
次に、図22〜図24を主として参照しながら、本実施形態の太陽電池70の製造方法について説明する。なお、第1の実施形態として示した図5〜図17に示す製造工程は、本実施形態において共通するため、以下では、それ以降の工程について主に説明する。
図17に示す工程に続いて、図22に示すように、受光面70aからレーザ62を照射することにより、仮溝32を形成する。レーザ62は、分離領域W51x、W52xが設けられる位置に照射される。例えば、レーザ62としてYAGレーザ等の固体レーザを用いることができる。その照射条件は、例えば、第2高調波の波長が400nm以上、周波数が1〜50kHz、集光径20〜200μm、出力1〜25Wとすることができる。このような照射条件を用いることにより、レーザの集光径と同程度の幅を有する仮溝32を形成することができる。
図23は、仮溝32を形成した受光面70aを示す図である。仮溝32は、y方向に延びるように受光面70aに形成される。これにより、受光面70aは、複数のサブセル71〜74に対応する各領域に分割される。
次に、図24に示すように、仮溝32に沿って半導体基板10を折り曲げることにより、仮溝32に沿って半導体基板10を割断して絶縁溝33を形成する。このとき、シリコンの半導体層である半導体基板10、第1のi型層12i、第1導電型層12n、第2絶縁層18や、透明電極層である第1導電層19aが割断されることとなる。その結果、分離溝31が形成される第1の分離領域W51xにおける絶縁溝33は、受光面70aから裏面70bに向けて貫通し、分離溝31が形成されない第2の分離領域W52xの絶縁溝33は、第2導電層19bの手前まで堀り込まれることとなる。これにより、分離領域W51x、W52xにおいてサブセル間を絶縁することができるとともに、第2の分離領域W52xには、隣接するサブセル間を接続するサブ電極を形成することができる。
以上の製造工程により、図21に示す太陽電池70を形成することができる。
つづいて、本実施形態における太陽電池70が奏する効果について説明する。本実施形態においては、サブセル間をの境界30に光電変換部を分断する溝が形成される。この溝は、一方のサブセルの光電変換部と他方のサブセルの光電変換部の間を高抵抗にするかまたは絶縁する絶縁部として機能する。このような絶縁部を設けることで、一方のサブセルに設けられるn型領域と、他方のサブセルに設けられるp型領域とを電気的に分離し、発生したキャリアの集電効率を高めることができる。これにより、太陽電池70の発電効率を高めることができる。
(第3の実施形態)
本実施形態における太陽電池70の構成について、図25〜図27を参照しながら詳細に説明する。第2の実施形態では、サブ電極20の接続部20cが複数のサブセル71〜74が並ぶx方向に延びることとしたが、第3の実施形態では、接続部20cがx方向に対して斜めの方向A、Bに延びる点で相違する。また、サブ電極20は、方向Aに延びる接続部と、方向Bに延びる接続部とに分岐する分岐構造を有する。分岐構造を設けることで、サブ電極20は、サブセルが分割されるx方向にかかる力に強い構造となる。以下、第2の実施形態との相違点を中心に述べる。
図25は、第3の実施形態に係る太陽電池70を示す平面図である。図26は、太陽電池のp型領域の構造を示す断面図であり、図25のE−E線断面を示す。図27は、太陽電池のn型領域の構造を示す断面図であり、図25のF−F線断面を示す。なお、A−A線断面においては、図3に示した第1の実施形態に係る太陽電池70と同様の構造を有する。
第3の実施形態における太陽電池70は、複数のサブセル71〜74が並ぶx方向に、n型領域またはp型領域が分離領域W5xを挟んで連続して設けられる。E−E線に沿った断面では、図26に示すように、p型領域となる第2領域W2xと、第2絶縁層18が設けられる分離領域W5xとがx方向に交互に配置される。同様に、F−F線に沿った断面では、図27に示すようにn型領域となる第3領域W3xと、第2絶縁層18が設けられる分離領域W5xとがx方向に交互に配置される。そのため、第2実施形態では、隣接するサブセルのうち、一方のサブセルに設けられるn型領域と、他方のサブセルに設けられるp型領域とがy方向にずれて配置されることとなる。これにより、n型領域の上に設けられるn側部20nと、p型領域の上に設けられるp側部20pとを接続する接続部20cは、x方向ではなく、x方向に対して斜めの方向A、Bに延びて設けられる。
図28は、第3の実施形態におけるサブ電極20の構造を示す平面図である。本図では、第2サブセル72と第3サブセル73の間を接続するサブ電極20を示す。
説明の便宜上、第2サブセル72において+y方向に交互に配置されるn型領域およびp型領域を、紙面の下から順番に第1のn型領域N1、第1のp型領域P1、第2のn型領域N2、第2のp型領域P2とよぶ。同様に、第3サブセル73において+y方向に交互に配置されるn型領域およびp型領域を、下から順番に第3のn型領域N3、第3のp型領域P3、第4のn型領域N4、第4のp型領域P4とよぶ。
サブ電極20は、複数のp側部20p1、20p2と、複数のn側部20n1、20n2と、複数の接続部20c1、20c2、20c3と、p側分岐部20dpと、n側分岐部20dnと、を有する。
第1のp側部20p1は、第2サブセル72の第1のp型領域P1の上に設けられ、第2のp側部20p2は、第2サブセル72の第2のp型領域P2の上に設けられる。第1のn側部20n1は、第3サブセル73の第3のn型領域N3の上に設けられ、第2のn側部20n2は、第3サブセル73の第4のn型領域N4の上に設けられる。
第1接続部20c1は、第2サブセル72の第1のp側部20p1と、第3サブセル73の第1のn側部20n1とを接続する。したがって、第1接続部20c1は、+x方向と−y方向の間の方向A(紙面上における右斜め下方向)に延びる。第2接続部20c2は、第2サブセル72の第1のp側部20p1と、第3サブセル73の第2のn側部20n2とを接続する。したがって、第2接続部20c2は、+x方向と+y方向の間の方向B(紙面上における右斜め上方向)に延びる。第3接続部20c3は、第2サブセル73の第2のp側部20p2と、第3サブセル73の第2のn側部20n2とを接続する。したがって、第3接続部20c3は、+x方向と−y方向の間の方向Aに延びる。このように、接続部20c1〜20c3は、分離領域W5xにおいてx方向およびy方向の双方に交差する斜めの方向AまたはBに延びる。
p側分岐部20dpは、第1のp側部20p1から第1接続部20c1および第2接続部20c2に分岐する分岐構造である。p側分岐部20dpにより、第2サブセル72の第1のp型領域P1は、第1のp型領域P1に対向する第3サブセル73の第3のp型領域P3の両隣に位置する第3のn型領域N3および第4のn型領域N4の双方と接続される。
p側分岐部20dpは、分岐先となる第3サブセル73に近い領域W5bではなく、分岐元である第2サブセル72に近い領域W5aに配置される。これにより、第1接続部20c1および第2接続部20c2の長さを長くすることができる。分岐された接続部の長さを長くとることで、x方向にかかる張力をy方向に効果的に分散させることができ、分岐構造による張力緩和の効果を高めることができる。
n側分岐部20dnは、第2のn側部20n2から第2接続部20c2および第3接続部20c3に分岐する分岐構造である。n側分岐部20dnにより、第3サブセル73の第4のn型領域N4は、第4のn型領域N4に対向する第2サブセル72の第2のn型領域N2の両隣に位置する第1のp型領域P1および第2のp型領域P2の双方と接続される。
n側分岐部20dnは、分岐先となる第2サブセル72に近い領域W5aではなく、分岐元である第3サブセル73に近い領域W5bに配置される。これにより、分離領域W5xにおいて、第2接続部20c2および第3接続部20c3の長さを長くすることができる。分岐された接続部の長さを長くとることで、x方向にかかる張力をy方向に効果的に分散させることができ、分岐構造による張力緩和の効果を高めることができる。
なお、本実施形態では、図25に示すように、p側分岐部とn側分岐とを交互に配置することで、サブ電極20をジグザグ状に形成する。これにより、サブ電極20にかかる張力の緩和効果をさらに高めることができる。
次に、図29〜図39を主として参照しながら、本実施形態の太陽電池70の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、p型領域が形成されるE−E線に対応する断面と、n型領域が形成されるF−F線に対応する断面とで構造が異なるため、それぞれの断面を示しながら太陽電池70の製造方法について説明する。
まず、図5に示す半導体基板10を用意し、半導体基板10の第1主面10aの上に、第3のi型層17iとなるi型非晶質半導体層と、第3導電型層17nとなるn型非晶質半導体層と、第2絶縁層18となる絶縁層23を形成する。また、半導体基板10の第2主面10bの上に、i型非晶質半導体層21とn型非晶質半導体層22と、第1絶縁層16を形成する。
次に、図29に示すように、i型非晶質半導体層21と、n型非晶質半導体層22と、絶縁層23の一部領域をエッチングする。なお、図29は、p型領域が形成されるE−E線断面に対応する。これにより、エッチングにより絶縁層23が除去される第2領域W2xと、絶縁層23が残って第2絶縁層18となる分離領域W5xとが形成される。一方、図30に示すように、n型領域を形成すべき位置においては、i型非晶質半導体層21、n型非晶質半導体層22、絶縁層23のエッチング処理を行わない。図30は、n型領域が形成されるF−F線断面に対応する図である。このとき、図25のA−A線断面に対応する図は、図6である。
次に、図31および図32に示すように、第2主面10bを覆うようにi型非晶質半導体層24を形成し、i型非晶質半導体層24の上にp型非晶質半導体層25を形成する。なお、図31は、図29に示す第2主面10bの上にi型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25を形成した状態を示す。図32は、図30に示す絶縁層23の上にi型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25を形成した状態を示す。このとき、図25のA−A線断面に対応する図は、図8である。
次に、図33に示すように、絶縁層23、i型非晶質半導体層24、p型非晶質半導体層25をエッチングする。これにより、絶縁層23が除去される第3領域W3xと、絶縁層23が残って第2絶縁層18となる分離領域W5xとが形成される。一方、図31に示すp型領域を形成すべき位置においては、i型非晶質半導体層24、p型非晶質半導体層25のエッチング処理を行わない。このとき、図25のA−A線断面に対応する図は、図12である。
次に、図34および図35に示すように、第1導電型層12nおよび第2導電型層13pの上に、導電層26、27を形成する。このとき、図25のA−A線断面に対応する図は、図14である。
次に、図36および図37に示すように、分離領域W5xに分離溝31を形成する。分離溝31を形成することにより、導電層26、27を、図25に示すn側電極14と、p側電極15と、サブ電極20とに分離する。このとき、図25のA−A線断面に対応する図は、図16である。
次に、図38および図39に示すように、受光面70aからレーザを照射することにより、仮溝32を形成する。その後、仮溝32に沿って半導体基板10を折り曲げることで、半導体基板10を割断して絶縁溝33を形成する。これにより、太陽電池70は、分離領域W5xを挟んで複数のサブセルに分割される。
以上の製造工程により、図26、25に示す太陽電池70を形成することができる。
つづいて、本実施形態における太陽電池70が奏する効果について説明する。
本実施形態では、上述の実施形態と同様、太陽電池70を複数のサブセル71〜74に分割しているため、x方向に延びるフィンガー電極14b、15bの長さを短くすることができる。これにより、フィンガー電極14b、15bが細長く形成される場合と比べて、フィンガー電極14b、15bの抵抗値を低くして集電効率を高めることができる。
本実施形態では、隣接するサブセル間を接続するサブ電極20が分岐構造を有しており、分離領域W5xを跨ぐようにジグザグ状にサブ電極20が形成される。そのため、太陽電池70が複数のサブセルに分割されてx方向に力がかかる場合であっても、サブセル間を接続するサブ電極20に対して加わる力を斜め方向に分散させることができる。このため、電極層を一括形成した後に絶縁溝33を設ける製造方法を採用したとしても、サブ電極20が切断されにくい。したがって、分岐構造を有するサブ電極20とすることで、太陽電池70を製造する際の歩留まり低下を抑えることができる。
本実施形態では、一つのサブセル内においてy方向に交互に配置される複数のn型領域またはp型領域のうち、同じ導電型を有する領域がサブ電極20によって並列的に接続される。これにより、隣接するサブセル間においてn型領域とp型領域とを1対1で接続する場合よりも、分離領域W5xの上に設けられる接続部20cの電極面積を増やし、サブ電極20の抵抗を下げることができる。これにより、サブ電極20による集電効率を高め、太陽電池70の発電効率を向上させることができる。
(第4の実施形態)
本実施形態における太陽電池モジュール100の構成について、図40および図41を参照しながら詳細に説明する。
図40は、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール100の構造を示す断面図である。
太陽電池モジュール100は、上述の実施形態に示した太陽電池70を配線材80によって複数接続した後、保護基板40、封止層42、バックシート50によって封止したものである。太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池70と、配線材80と、保護基板40と、封止層42と、バックシート50を備える。
保護基板40及びバックシート50は、太陽電池70を外部環境から保護する部材である。受光面70a側に設けられる保護基板40は、太陽電池70が発電のために吸収する波長帯域の光を透過する。保護基板40は、例えば、ガラス基板である。バックシート50は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂シートや、保護基板40と同じガラス基板で構成される。
封止層42は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂材料である。これにより、太陽電池モジュール100の発電層への水分の浸入等を防ぐとともに、太陽電池モジュール100全体の強度を向上させる。
図41は、第4の実施形態における配線材80の構造を示す平面図である。
配線材80は、隣接する太陽電池70のうち一方の太陽電池70のn側電極14と、他方の太陽電池70のp側電極15を接続する。配線材80は、第1接点81と、第2接点82と、を有する。第1接点81は、一方の太陽電池70の第1サブセル71aに設けられるバスバー電極14aと接続される。第2接点82は、他方の太陽電池70の第4サブセル74bに設けられるバスバー電極15aと接続される。これにより、複数の太陽電池70は、配線材80によって互いに直列的に接続される。なお、配線材80によって太陽電池70の間を並列的に接続することとしてもよい。
本実施形態における太陽電池モジュール100では、複数の太陽電池70を直列接続することにより、太陽電池70を単体として用いる場合と比べて出力電圧を高めることができる。また、本実施形態に係る太陽電池70は、複数のサブセル71〜74が直列接続されていることから、比較例に係る太陽電池170と比べて太陽電池70一つあたりの出力電圧も高い。したがって、太陽電池モジュール100では、使用する太陽電池70の枚数を少なくしても出力電圧を高めることができる。これにより、小型かつ出力電圧の高い太陽電池モジュール100を提供することができる。
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
(変形例1)
図42は、変形例1における太陽電池70の構造を示す断面図である。変形例1では、隣接するサブセル間を分割する境界30a〜30cに充填部35が設けられる点で上述の実施形態と異なる。
充填部35は、隣接するサブセル同士を接着させる機能を有する。充填部35は、隣接するサブセル間を絶縁できるよう絶縁性の材料で構成されることが望ましい。また、受光面70aから半導体基板10に向かって入射する光を遮らないよう透明な材料であることが望ましい。充填部35は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリイミド等の樹脂材料である。
充填部35を設けることにより、サブセル間を分割する境界30a〜30cの強度を高めることができ、太陽電池70全体としてより強度の高い構造とすることができる。これにより、太陽電池70の信頼性を高めることができる。
(変形例2)
図43は、変形例2における太陽電池70の構造を示す断面図である。変形例2では、分離領域W51x、W52xに絶縁溝を設ける代わりに、絶縁体11が設けられる点で上述の実施形態と異なる。
変形例2における半導体基板10は、絶縁体11を有する。絶縁体11は、半導体基板10を貫通するように分離領域W51x、W52xに相当する位置に設けられる。絶縁体11は、半導体基板10よりも導電性の低い無機材料で構成される。絶縁体11は、例えば、酸化シリコンや、酸窒化シリコンや、窒化シリコンである。半導体基板10を貫通するように絶縁体11を設けることで、半導体基板10を割断することなく、隣接するサブセル間において半導体基板10を介したキャリアの移動を防ぐことができる。
変形例2における太陽電池70を製造するためには、半導体基板10としてn型の単結晶シリコン基板の代わりに、単結晶シリコン基板の一部領域に絶縁体11が設けられた基板を用いればよい。例えば、半導体基板10として切り出す前のn型単結晶シリコンのインゴットを用意し、基板として切り出す面に垂直な方向にインゴットを切断し、その切断面に絶縁体11となる窒化シリコン(SiN)層を貼り合わせる。絶縁体11を挟み込んだインゴットを基板として切り出すことにより、絶縁体11を有する半導体基板10を製造することができる。
変形例2では、半導体基板10を貫通する絶縁溝が設けられていないため、太陽電池70の全体としてより強度の高い構造とすることができる。これにより、太陽電池70の信頼性を高めることができる。
(変形例3)
図44は、変形例3における太陽電池70の構造を示す断面図である。変形例3では、変形例2では、分離領域W51x、W52xに絶縁体11を設けるとともに、絶縁体11を劈開するように絶縁溝33が形成される。これにより、サブセル間の絶縁性を高めることができる。
なお、変形例3のさらなる変形例として、絶縁体11を設ける代わりに上述の実施形態にかかる太陽電池70における絶縁溝33の表面に酸化処理を施すこととしてもよい。絶縁溝33の表面にシリコン層が酸化された酸化部を形成することにより、サブセル間の絶縁性を高めることができる。なお、酸化処理の代わりに窒化処理を施すこととしてもよく、その他、単結晶シリコン基板よりも導電性の低い部材で絶縁溝33の表面が覆われるように表面処理を施すこととしてもよい。
(変形例4)
図45は、変形例4における太陽電池70を示す平面図である。上述の実施形態では、太陽電池70を4つのサブセル71〜74に分割することとしたが、変形例4では2つのサブセル71、72に分割される。
第1サブセル71には、n側電極14が設けられ、第2サブセル72にはp側電極15が設けられる。第1サブセル71と第2サブセル72の間には、両者を分割する境界30が形成される。境界30をまたぐように、第1サブセル71と第2サブセル72の間を接続するサブ電極20が設けられる。
なお、太陽電池70が有するサブセルの数は、これらに限らず、3つのサブセルや5以上のサブセルに分割することとしてもよい。図45では、第2の実施形態に対応する場合を示したが、第3の実施形態の太陽電池70のようにサブ電極を斜め方向に配置する太陽電池70のサブセル数を2つにしてもよいし、3つのサブセルや5つ以上のサブセルに分割することとしてもよい。
(変形例5)
図46は、変形例5における太陽電池70を示す平面図である。変形例5では、上述の第3の実施形態と同様の構造を有するが、p側分岐部20dpおよびn側分岐部20dnが分離領域W5xの中心線Cにより近い位置に配置される点で第3の実施形態と異なる。p側分岐部20dpおよびn側分岐部20dnの位置を中心線Cの近くに配置することで、複数のサブセルが並ぶx方向と、接続部20c1〜20c3が延びる方向A、Bとの角度を大きくすることができる。これにより、サブ電極20が有する分岐構造による張力緩和の効果をさらに高めることができる。