JP2015065225A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びこれを用いた表示装置、照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及びこれを用いた表示装置、照明装置 Download PDF

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【課題】本発明は、外部量子効率が高く、寿命の長い有機EL素子を提供することを課題とする。【解決手段】対向配置された電極間に発光層60が備えられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層60が、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含み、ホスト材料が、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなる有機エレクトロルミネッセンス素子とする。【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」いう場合がある。)及びこれを用いた表示装置、照明装置に関する。
有機EL素子は、対向配置された電極間に発光層が配置されているものである。有機EL素子の発光機構は、キャリア注入型である。有機EL素子の電極に電圧を印加すると、発光層で電子およびホール(正孔)が再結合して発光材料が励起状態となり、発光材料の励起状態が基底状態に戻る際に発光する。励起状態には、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)とがある。発光材料の一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)の生成比率は、S1:T1=1:3であると考えられている。
発光層の発光材料に用いられる有機化合物は、通常、基底状態が一重項状態である。一重項励起状態(S1)からの発光は、同じスピン多重度間の電子遷移である(この発光は蛍光と呼ばれる)。一方、三重項励起状態(T1)からの発光は、異なるスピン多重度間の電子遷移である(この発光は燐光と呼ばれる)。通常、室温で蛍光を発する化合物(以下、「蛍光性化合物」という)からは、蛍光のみが観測され、燐光は観測されない。したがって、発光材料として蛍光性化合物を用いた有機EL素子では、内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S1:T1=1:3であることを根拠に25%とされている。
一方、発光材料として燐光を発する化合物(以下、「燐光性化合物」という)を用いた有機EL素子では、内部量子効率の理論的限界は100%となる。つまり、発光材料として燐光性化合物を用いることで、蛍光性化合物を用いた場合と比較して高い発光効率を得ることが可能になる。
このような理由から、近年、発光効率の高い有機EL素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光層を有する有機EL素子の開発が盛んに行われている。特に、燐光性化合物として、その燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されている。例えば、特許文献1には、燐光性化合物として、イリジウムを中心金属とする有機金属錯体が開示されている。
燐光性化合物を用いた発光層を有する有機EL素子を形成する場合、燐光性化合物の濃度消光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、マトリクス中に燐光性化合物が分散されている発光層を形成することがある。この場合、マトリクスとなる化合物は、ホスト材料と呼ばれている。また、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物は、ゲスト材料と呼ばれている。
国際公開 WO/00/70655 特表2011−527122号公報
Y.Kawamura et al.,Phys.Rev.Lett.,96,017404(2006) A. Endo et al.,Adv.Mater.21,1(2009) A. Endo et al.,Appl.Phys.Lett.,98,083302(2011) H.Uoyama et al.,Nature492,234,(2012) D.Song et al.,Appl.Phys.Lett.,97,243304(2010) A.Tsuboyama et al.,J.AM.CHEM.SOC.125,12971(2003) S.Kera et al.,Phys.Rev.B75,121305(R)(2007)
一般に、有機EL素子における光取り出し効率は20%〜30%程度と言われている。また、発光材料として燐光性化合物を用いた有機EL素子の外部量子効率の限界は、25%程度と考えられている。
従来の有機EL素子においては、外部量子効率を向上させるとともに、寿命を長くすることが要求されている。
本発明は、外部量子効率が高く、寿命の長い有機EL素子を提供することを目的とする。また、本発明は、外部量子効率が高く、寿命の長い有機EL素子を備える表示装置および照明装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を鑑みて、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含む発光層を有する有機EL素子において、ホスト材料が励起状態となった場合のホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動過程に着目して、以下に示すように、検討を重ねた。
ホスト材料の励起状態から燐光性化合物であるゲスト材料の励起状態へのエネルギー移動のタイプには、フェルスター(Forster)エネルギー移動と、デクスター(Dexter)エネルギー移動とがある。フェルスターエネルギー移動としては、(1)ホスト材料の一重項励起状態(S1)からゲスト材料のS1へのエネルギー移動と、(3)ホスト材料の三重項励起状態(T1)からゲスト材料のS1へのエネルギー移動と、(4)ホスト材料のS1からゲスト材料のT1へのエネルギー移動とがある。デクスターエネルギー移動としては、(2)ホスト材料のT1からゲスト材料のT1へのエネルギー移動がある。
燐光性化合物からなるゲスト材料では、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動によりS1となったゲスト材料は、T1に項間交差(ISC)して燐光を発する。また、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動により、T1となったゲスト材料も燐光を発する。
ホスト材料のT1は、ホスト材料の励起状態の75%を占める。したがって、有機EL素子の発光効率を向上させるためには、ホスト材料のT1からゲスト材料のS1又はT1に効率よくエネルギー移動させることが重要である。
本発明者は、まず、ホスト分子が三重項励起状態(T1)である場合は、一重項励起状態(S1)である場合に比べて、燐光性化合物であるゲスト分子へのエネルギー移動が起こりにくく、発光効率が低下しやすいことを見出した。
すなわち、上記のエネルギー移動において、(1)及び(4)はホスト側の遷移とゲスト側の遷移とが共に許容であるため、非常に効率的にエネルギー移動が起きる。これに対して、(3)はゲスト材料が燐光性化合物であるために起きるが、ホスト側の遷移は禁制であるため、(1)、(4)に比べてエネルギー移動の効率は低い。また、(2)では、フェルスターエネルギー移動は生じない。
ここで、本発明者は、ホスト材料として、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)とのエネルギーの差が小さい熱活性型の遅延蛍光材料を採用することにより、熱的な遷移によってホスト材料のT1からS1に逆エネルギー移動(エネルギー準位の低いT1から高いS1への移動)を起こさせ、その一重項励起状態(S1)をゲスト材料にエネルギー移動させるというメカニズムを想到した。すなわち、ホスト材料の三重項励起状態(T1)を、エネルギー移動効率が高い一重項励起状態(S1)に遷移させ、その一重項励起状態(S1)をゲスト材料にエネルギー移動させるというメカニズムにより、ホスト材料の三重項励起状態(T1)をも有効に燐光発光に利用することに想到した。
より詳細には、ホスト材料のT1からS1に逆エネルギー移動させると、ホスト材料のS1から後述するフェルスター機構によるエネルギー移動を経由して、ゲスト材料に効率よくエネルギー移動させることができる。その結果、ホスト材料のT1から直接ゲスト材料に、フェルスター機構によるエネルギー移動または後述するデクスター機構によるエネルギー移動を経由してエネルギー移動させる場合と比較して、有機EL素子の外部量子効率を向上させることができる。
また、ホスト材料として、室温においてもT1からS1への熱的な遷移が生じる材料を採用することにより、ホスト分子とゲスト分子との距離が非常に短いことを要するデクスター機構によるエネルギー移動を経由しなくてもよくなる。そのため、発光層中におけるゲスト材料の混合比率を低くできる。
また、ホスト材料として、室温においてもT1からS1への熱的な遷移が生じる材料を採用することにより、ホスト材料の励起寿命が短くなるので、不安定で分解しやすい励起状態が短時間となる。したがって、ホスト材料の分解による劣化を抑制でき、有機EL素子の寿命を長くすることができる。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わるものである。
(1)対向配置された電極間に発光層が備えられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層が、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含み、前記ホスト材料が、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(2)前記発光性化合物が、ドナー型置換基とアクセプター型置換基とを単一分子に含むものであることを特徴とする(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(3)前記発光性化合物が、前記発光性化合物の分子間の相互作用による一重項励起状態及び三重項励起状態のエネルギー分裂により、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が小さくなるように薄膜化されていることを特徴とする(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(4)前記発光性化合物が、有機金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(5)前記発光層中における前記ゲスト材料の混合比率が、1質量%以上10質量%未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動回路とを有することを特徴とする表示装置。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光部と、前記発光部を制御する制御部とを有することを特徴とする照明装置。
本発明の有機EL素子は、発光層が、燐光性化合物からなるゲスト材料とホスト材料とを含み、ホスト材料が、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなるものである。このため、本発明の有機EL素子では、室温において、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に熱的な遷移が起こる。その結果、ホスト材料のT1からS1を経由して、フェルスター機構によるエネルギー移動によりゲスト材料に効率よくエネルギー移動させることができるとともに、ホスト材料の励起寿命が短くなり、ホスト材料の劣化が抑制される。よって、本発明の有機EL素子は、外部量子効率が高く、寿命の長いものとなる。
また、本発明の表示装置および照明装置は、本発明の有機EL素子を備えたものであり、有機EL素子の外部量子効率が高く、寿命が長いため優れた性能を有する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の一例を示した断面模式図である。 図2(a)は、実施例1および比較例1の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図2(b)は、実施例1および比較例1の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。 図3は、実施例1および比較例1の有機EL素子の輝度と経過時間との関係を示したグラフである。 図4(a)は、実施例2および比較例2の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図4(b)は、実施例2および比較例2の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。 図5(a)は、実施例1および実施例3の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図5(b)は、実施例1および実施例3の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。 図6は、窒素雰囲気下で測定したBPICbPTRZ薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。 図7は、大気下で測定したBPICbPTRZ薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。 図8は、窒素雰囲気下で測定したCBP薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。 図9(a)は、窒素雰囲気下で測定したBetBubq薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。また、図9(b)は、大気下で測定したBetBubq薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。また、図9(c)は、溶液中に分散させたBetBubqの時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。 図10は、BetBubqの薄膜(単膜)の常温で測定した発光スペクトル(蛍光)と、BetBubqをクロロホルム溶液中に分散したものの常温で測定した発光スペクトル(蛍光)と、BetBubqの薄膜の低温で測定した発光スペクトル(燐光)を示したグラフである。 図11は、窒素雰囲気下で測定したBe(4TMP)薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。 図12は、本実施形態に係る有機EL素子の他の例を示した断面模式図である。 図13(a)は、実施例4および比較例3の有機EL素子に用いたホスト材料の発光スペクトルを示したグラフであり、図13(b)は、実施例4および比較例3の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。 図14(a)は、比較例4の有機EL素子に用いたホスト材料の発光スペクトルを示したグラフであり、図14(b)は、比較例4の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。 図15は、比較例4の有機EL素子の輝度と経過時間との関係を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
まず、本発明の一態様の有機EL素子について説明する。
本実施形態の有機EL素子は、対向配置された電極間に発光層が備えられたものである。はじめに、本実施形態の有機EL素子に備えられた発光層について説明する。
本実施形態の有機EL素子の発光層は、燐光性化合物からなるゲスト材料と、有機化合物からなるホスト材料とを含むものである。本実施形態においては、発光層が、ゲスト材料とホスト材料とを含むものであるため、発光層の結晶化を抑制できる。また、発光層中のホスト材料によって、発光層中のゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光が抑制されるため、発光効率の高い有機EL素子となる。
本実施形態においては、ホスト材料の三重項励起エネルギーの準位(T1準位)が、ゲスト材料のT1準位よりも高いものであることが好ましい。ホスト材料のT1準位がゲスト材料のT1準位よりも低いと、発光に寄与するゲスト材料の三重項励起エネルギーを、ホスト材料が消光(クエンチ)してしまうため、好ましくない。
<発光の素過程>
ここで、本実施形態の有機EL素子を説明しやすくするために、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含む発光層を備える有機EL素子における一般的な発光の素過程を説明する。
(1)電極から注入された電子及びホール(正孔)がゲスト材料において再結合し、ゲスト材料が励起状態となる場合(直接再結合過程)。
(1−1)ゲスト材料の励起状態が三重項励起状態(T1)のとき、ゲスト材料は燐光を発する。
(1−2)ゲスト材料の励起状態が一重項励起状態(S1)のとき、一重項励起状態(S1)のゲスト材料は三重項励起状態(T1)に項間交差(ISC)し、燐光を発する。
つまり、上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト材料の項間交差効率及び燐光量子収率が高ければ、高い発光効率が得られる。なお、ホスト材料の三重項励起エネルギーの準位(T1準位)はゲスト材料のT1準位よりも高いことが好ましい。
(2)電子及びホールがホスト材料において再結合し、ホスト材料が励起状態となる場合(エネルギー移動過程)。
(2−1)ホスト材料の励起状態が三重項励起状態(T1)のとき
ホスト材料の三重項励起エネルギーの準位(T1準位)がゲスト材料のT1準位よりも高い場合、ホスト材料のT1からゲスト材料に励起エネルギーが移動(デクスター機構によるエネルギー移動)し、ゲスト材料が三重項励起状態(T1)となる。三重項励起状態(T1)となったゲスト材料は、燐光を発する。
なお、ホスト材料のT1準位からゲスト材料の一重項励起エネルギーの準位(S1準位)へのエネルギー移動も形式上あり得る。しかし、多くの場合、ゲスト材料のS1準位の方が、ホスト材料のT1準位よりも高エネルギー側に位置しており、主たるエネルギー移動過程になりにくいため、ここでは割愛する。
(2−2)ホスト材料の励起状態が一重項励起状態(S1)のとき
ホスト材料のS1準位がゲスト材料のS1準位およびT1準位よりも高い場合、ホスト材料のS1からゲスト材料に励起エネルギーが移動(フェルスター機構によるエネルギー移動)し、ゲスト材料が一重項励起状態(S1)又は三重項励起状態(T1)となる。三重項励起状態(T1)となったゲスト材料は燐光を発する。また、一重項励起状態(S1)となったゲスト材料は、三重項励起状態(T1)に項間交差し、燐光を発する。
上記(2)のエネルギー移動過程において、外部量子効率を向上させるためには、ホスト材料の三重項励起エネルギーと一重項励起エネルギーの両方を、いかにゲスト材料に効率良く移動できるかが重要である。
<エネルギー移動過程>
次に、本実施形態の有機EL素子を説明しやすくするために、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料との分子間のエネルギー移動過程について説明する。
分子間のエネルギー移動の機構としては、以下の2つの機構が提唱されている。ここで、励起エネルギーを与える側の分子をホスト分子、励起エネルギーを受け取る側の分子をゲスト分子と記す。
≪フェルスター機構(双極子−双極子相互作用)≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要としない。フェルスター機構では、ホスト分子及びゲスト分子間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。このエネルギー移動の有効距離は1〜10nmとされており、比較的長い距離でもエネルギー移動が起こる。双極子振動の共鳴現象によって、ホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基底状態になり、ゲスト分子が励起状態になる。フェルスター機構の速度定数→gを数式(1)に示す。
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε(ν)は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、Kは、ホスト分子とゲスト分子の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合はK=2/3である。
≪デクスター機構(電子交換相互作用)≫
デクスター機構では、ホスト分子とゲスト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態のホスト分子の電子と基底状態のゲスト分子の電子とが交換されることを通じてエネルギー移動が起こる。このため、エネルギー移動が可能である有効半径は0.3〜1nm程度であり、非常に短い距離でしかエネルギー移動が起こらない。デクスター機構の速度定数→gを数式(2)に示す。
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数であり、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’(ν)は、ゲスト分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表す。
燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料との分子間のエネルギー移動過程は、下記(1)〜(4)の4つの過程に分類される。下記の過程(1)〜(4)において、S0は基底状態を示し、S1は一重項励起状態を示し、T1は三重項励起状態を示す。
(1)S1(ホスト)+S0(ゲスト)→S0(ホスト)+S1(ゲスト):フェルスター
(2)T1(ホスト)+S0(ゲスト)→S0(ホスト)+T1(ゲスト):デクスター
(3)T1(ホスト)+S0(ゲスト)→S0(ホスト)+S1(ゲスト):フェルスター
(4)S1(ホスト)+S0(ゲスト)→S0(ホスト)+T1(ゲスト):フェルスター
過程(1)では、ホスト側の遷移とゲスト側の遷移がともに許容なので、非常に効率良くエネルギー移動が起こる。実際、フォトルミネッセンス測定により、効率的なエネルギー移動が起こる事が既に報告されている(例えば、非特許文献1参照)。過程(2)では、フェルスター機構によるエネルギー移動は起こらない。燐光性化合物からなるホスト材料を用いた場合、過程(3)、(4)は、フェルスター機構によるエネルギー移動が起こり得る。特に、過程(4)は、ホスト側の遷移とゲスト側の遷移がともに許容なので、非常に効率良くエネルギー移動が起こると考えられる。
本発明者は、上記の<発光の素過程><エネルギー移動過程>を鑑みて、ホスト材料からゲスト材料に効率良くエネルギー移動させるべく、以下に示すように検討を重ねた。
本発明者等は、エネルギー移動可能であるホスト分子とゲスト分子との距離が非常に短いデクスター機構によるエネルギー移動を利用せず、フェルスター機構を利用するようにすれば、効率よくエネルギー移動できると考えた。
また、フェルスター機構を利用する過程(1)、(3)、(4)の中でも、特に、ホスト側の遷移とゲスト側の遷移がともに許容である過程(1)、(4)を利用することにより、効率よくエネルギー移動できると考えた。
また、ホスト分子の励起状態の寿命は、一般にT1よりもS1の方が1000000倍近く短い。数式(1)から分かるように、励起状態の寿命が短いほど、エネルギー移動の速度定数→gは大きくなる。ホスト分子のS1とT1との励起状態の寿命の差は、10の数乗の桁で異なる。したがって、ホスト分子のS1からゲスト分子にエネルギー移動させる過程(1)、(4)では、ホスト分子のT1からゲスト分子にエネルギー移動させる過程(3)と比較して、フェルスター機構のエネルギー移動の速度が非常に速くなり、効率よくエネルギー移動できる。
したがって、上記(1)〜(4)の4つの過程のうち、過程(1)、(4)を利用する有機EL素子とすることで、有機EL素子の外部量子効率を高くすることができる。
本発明者は、過程(1)、(4)のエネルギー移動を利用するには、ホスト材料として、一重項励起状態(S1)のエネルギーと三重項励起状態(T1)との差が十分に小さい発光性化合物を用いることにより、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に遷移する逆エネルギー移動が起こる(例えば、非特許文献2〜4参照)ようにすればよいことを見出した。
本実施形態の有機EL素子においては、ホスト材料として、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなるものを用いている。このため、S1のエネルギーとT1のエネルギーとが十分に近いものとなり、ホスト材料のT1が形成された場合には、熱エネルギーにより容易にS1に遷移(逆エネルギー移動)するものとなる。なお、ホスト材料として熱活性型遅延蛍光を発光する材料を用いることにより本発明の効果を奏するが、「0.25eV」は、熱活性型遅延蛍光の観測が報告されたS1とT1との最大エネルギー差(例えば、非特許文献2〜4参照)として規定したものである。
ここで、本実施形態の有機EL素子におけるホスト材料の三重項励起状態(T1)からゲスト材料の励起状態(S1またはT1)へのエネルギー移動を考えてみる。
ホスト材料のT1からのエネルギー移動においては、ホスト材料の燐光スペクトルと、ゲスト材料の最も長波長側の吸収スペクトルとの重なりが大きくなればよい。そして、ホスト材料のS1から、ホスト材料のS1の発光スペクトルと吸収スペクトルの重なりがあるゲスト材料の励起状態(S1またはT1)にエネルギー移動する。
ホスト材料の発光スペクトルと、ゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりの程度は、エネルギー移動の速度に影響する。しかし、この影響は、ホスト材料の励起状態の寿命によるエネルギー移動速度への影響と比べて小さい。
ホスト分子の燐光寿命(τ)は、ミリ秒以上と非常に長い(kr+kn(krはホスト分子の燐光発光過程の速度定数を示し、knはホスト分子の非発光過程の速度定数を示す。)が小さい)。これは、ホスト分子の三重項励起状態から基底状態(または一重項励起状態)への遷移が禁制遷移だからである。励起状態は、ホスト分子にとっては不安定で分解されやすい状態である。したがって、励起状態の寿命が短いほど、ホスト材料の分解による劣化を防止でき、有機EL素子の寿命を長くできる。
本実施形態の有機EL素子では、ホスト材料として、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に熱的な遷移が起こる発光性化合物を用いている。したがって、ホスト材料のT1からS1へのエネルギー移動が速やかである。ホスト材料の励起状態の寿命は、T1よりもS1の方が圧倒的に短い。このため、ホスト材料のT1からS1に速やかにエネルギー移動させることにより、励起状態の寿命を短くできる。よって、本実施形態の有機EL素子は、励起状態でのホスト材料の分解による劣化が生じにくく、寿命が長いものとなる。
本実施形態の有機EL素子の発光層に含まれるホスト材料は、S1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなるものである。このようなホスト材料では、時間分解発光現象を観測することにより、T1からS1へ熱的に遷移したことに起因する遅延蛍光が観測される。
本実施形態において、ホスト材料として使用するS1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物としては、例えば、ドナー型置換基とアクセプター型置換基とを単一分子に含むものが挙げられる。
アクセプター型置換基としては、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ナフタレン、芳香環テトラカルボン酸無水物、シロール誘導体が挙げられる。
また、ドナー型置換基としては、アリールシクロアルカン系化合物、アリールアミン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、カルバゾール系化合物、スチルベン系化合物、オキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、トリフェニルメタン系化合物、ピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、アントラセン系化合物、フルオレノン系化合物、アニリン系化合物、シラン系化合物、ピベンジジン系化合物等が挙げられる。
ドナー型置換基とアクセプター型置換基とを単一分子に含む発光性化合物としては、具体的には、非特許文献3に記載の化合物や、12,12'−(6−phenyl−1,3,5−triazine−2,4−diyl)bis(11−phenyl−11,12−dihydroindolo[2,3−a]carbazole)(BPICbPTRZ)、2−biphenyl−4,6−bis(12−phenylindolo[2,3−a]carbazole−11−yl)−1,3,5−triazine(PIC−TRZ)などを用いることが好ましい。
S1のエネルギーとT1のエネルギーとの差は、BPICbPTRZでは0.14eVであり、PIC−TRZでは0.11eVである。
本実施形態において、ホスト材料として使用するS1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物は、発光性化合物の分子間の相互作用によるS1およびT1のエネルギー分裂により、S1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が小さくなるように薄膜化されたものであってもよい。
このような発光性化合物としては、BetBubqなどの有機金属錯体が挙げられる。
発光性化合物の分子間の相互作用によってS1およびT1のエネルギー分裂が起こると、三重項励起エネルギーの準位(T1準位)および一重項励起エネルギーの準位(S1準位)がそれぞれ複数となる。その結果、複数のS1準位のうち最もT1準位に近いものと、複数のT1準位のうち最もS1準位に近いものとのエネルギーの差が小さくなる。よって、T1からS1へのエネルギー移動が促進される。
薄膜化することにより、ホスト材料のS1のエネルギーとT1のエネルギーとの差を小さくする場合、例えば、上記ホスト材料とゲスト材料とを用いて真空蒸着法により、10nm〜100nmの厚みの発光層を形成することが好ましい。
本実施形態においては、発光層中におけるゲスト材料の混合比率を1質量%以上10質量%未満とすることが好ましい。
本実施形態では、フェルスター機構を利用するので、エネルギー移動可能であるホスト分子とゲスト分子との距離が非常に短いデクスター機構によるエネルギー移動を利用する場合と比較して、ホスト分子とゲスト分子との距離を離すことができる。したがって、デクスター機構によるエネルギー移動を利用する場合と比較して、発光層中におけるゲスト材料の混合比率を少なくして、高価な材料であるゲスト材料の使用量を減らすことができる。
発光層中におけるゲスト材料の混合比率が1質量%以上であると、高い外部量子効率が得られる。上記の混合比率は、より一層外部量子効率を向上させるために3質量%以上であることがより好ましい。また、上記の混合比率を10質量%未満とすることで、十分な外部量子効率を確保しつつコストを低減できる。上記の混合比率は、より一層コストを低減するために、6質量%以下であることがより好ましい。
燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含む発光層を備える有機EL素子では、外部量子効率は、発光層中におけるゲスト材料の混合比率に大きく依存している(例えば、非特許文献5参照)。すなわち、ゲスト材料の混合比率を低くすると、外部量子効率が低下する。しかし、ゲスト材料は高価なものであるため、外部量子効率を低下させることなく、ゲスト材料の使用量を減らすことが要求されている。
しかし、従来の燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含む発光層を備える有機EL素子では、電極から注入された電子及びホール(正孔)が、ゲスト材料において再結合し、ゲスト材料が励起状態となる場合に生じるゲスト材料の発光を利用している(例えば、非特許文献5参照)。このため、従来の有機EL素子では、ゲスト材料の使用量を減らすと、発光効率が著しく低下する。例えば、ホスト材料として4、4´−Bis(carbazol−9−yl)biphenyl(以下、「CBP」と呼ぶ。)を用いた場合、発光層中のゲスト材料の濃度を8重量%から2重量%に低下させると、発光効率が約半分になる(例えば、非特許文献5、特許文献2参照)。このため、従来の有機EL素子では、発光効率を低下させずに、ゲスト材料の使用量を減らすことは困難であった。
本実施形態においてゲスト材料として使用される燐光性化合物としては、下記式(1)に示される化合物または下記式(2)に示される化合物を用いることが好ましい。
式(1)中、点線の円弧は、酸素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。
、X’’は、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。X、X’’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(1)中、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。
式(1)中、M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。
式(2)中、点線の円弧は、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。
、X’’は、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。X、X’’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(2)中、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。
式(2)中、M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。
式(2)中、XとXとを結ぶ実線の円弧は、XとXとが少なくとも1つの他の原子を介して結合していることを表し、XとXとともに環構造を形成していてもよい。X、Xは、酸素原子、窒素原子、炭素原子のいずれかを表す。X、Xは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。XからM’への矢印は、XがM’原子へ配位していることを表す。m’は、1〜3の数である。
上記式(1)及び式(2)における点線の円弧で表される環構造としては、炭素数2〜20の芳香環や複素環が挙げられる。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾオキソール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、およびフェナントリジン環、チオフェン環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環等の複素環が挙げられる。
上記式(1)及び式(2)において、X、X’’で表される環構造の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアリール基、アリールアミノ基、シアノ基、アミノ基、アシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、カルバゾール基等が挙げられる。
上記式(1)及び式(2)において、X、X’’が結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成している場合、点線の円弧で表される2つの環構造と新たな環構造を合わせた環構造としては、例えば、下記(3−1)、(3−2)に示す構造が挙げられる。
上記式(1)及び式(2)に示す化合物において、M’で表される金属原子としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金が挙げられる。
上記式(2)に示される化合物は、下記式(4−1)に示される構造または(4−2)に示される構造を有するものであることが好ましい。
式(4−1)、(4−2)中、R〜Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。R〜Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(4−2)において、R〜Rが1価の置換基の場合、環構造が複数の1価の置換基を有していてもよい。
式(4−1)、(4−2)中、窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。式(4−1)中、酸素原子からM’への矢印は、酸素原子がM’原子へ配位していることを表す。
上記式(1)または式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式(5−1)〜(5−13)、(6−1)〜(6−8)、(7−1)〜(7−7)で表される化合物等が挙げられる。
本実施形態においてゲスト材料として使用される燐光性化合物としては、上述のものの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、上記式(5−1)で表されるイリジウム トリス(2−フェニルピリジン)(Ir(ppy))、上記式(6−6)で表されるイリジウム トリス(1−フェニルイソキノリン)(Ir(piq))、上記式(7−6)で表されるイリジウム ビス(2−メチルジベンゾ−[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトナート)(Ir(MDQ)(acac))、上記式(7−7)で表されるイリジウム トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン](Ir(mppy))等を用いることが好ましい。
本実施形態においてゲスト材料として使用される燐光性化合物としては、Pt錯体である上記式(7−8)に示されるTLEC025を用いてもよい。
また、本実施形態においてゲスト材料として使用される燐光性化合物は、常温で燐光発光する材料であることが好ましい。
次に、本実施形態の発光層を備える本実施形態の有機EL素子の全体構成を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の一例を示した断面模式図である。図1に示す有機EL素子は、基板10上に、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウム錫)からなるITO電極20と、正孔注入層30と、正孔輸送層40と、電子阻止層50と、発光層60と、電子輸送層70と、電極層80とがこの順で積層されたものである。
図1に示す有機EL素子では、発光層60として、上述した実施形態の発光層が設けられている。
図1に示す有機EL素子においては、正孔注入層30、正孔輸送層40、電子阻止層50、発光層60、電子輸送層70の全てが、有機材料からなる有機層である。したがって、図1に示す有機EL素子は、5層の有機層がITO電極20と電極層80との間に配置されたものとなっている。
なお、正孔注入層30、正孔輸送層40、電子阻止層50および電子輸送層70は、全て設けられていることが好ましいが、必要に応じて設けられるものである。したがって、正孔注入層30、正孔輸送層40、電子阻止層50および電子輸送層70のうちの一部または全部が設けられていなくてもよい。
図1に示す有機EL素子では、基板10として、光を透過する透明な基板が用いられている。基板10は、透明な材料からなるものであればよく、用途に応じて種々の材料を用いることができる。具体的には、基板10として、ガラス基板やプラスチック基板などを用いることができる。
ITO電極20は、ITOからなる透明な導電薄膜である。ITO電極20は、陽極として機能する。したがって、ITO電極20には、駆動時に正電圧が印加され、正孔が注入される。本実施形態においては、陽極としてITO電極20を用いた例を挙げているが、ITO電極20に代えて、他の透明導電材料をからなる電極を用いてもよい。
正孔注入層30は、ITO電極20と正孔輸送層40の中間の仕事関数を有するものである。正孔注入層30は、ITO電極20に注入される正孔を正孔輸送層40に注入する橋渡しを行うバッファ層である。正孔注入層30の材料としては、バッファ層としての機能が得られる種々の有機材料を用いることができる。例えば、正孔注入層30の材料として、下記の式(8)に示す化合物(以下、「PEDOT:PSS」と呼ぶ。)を用いることができる。
正孔輸送層40は、正孔注入層30から注入された正孔を発光層60へと輸送する層である。正孔輸送層40の材料としては、正孔を輸送する機能が得られる種々の有機材料を用いることができる。例えば、正孔輸送層40の材料として、下記の式(9)に示す化合物(以下、「α−NPD」と呼ぶ。)を用いることができる。
電子阻止層50は、正孔輸送層40から輸送された正孔を発光層60へと輸送する層である。電子阻止層50を設けることで、三重項励起状態のエネルギーが小さい場合であっても、三重項励起状態が消光されること防ぐことができる。電子阻止層50の材料としては、電子阻止層50としての機能が得られる種々の有機材料を用いることができる。例えば、電子阻止層50の材料として、下記の式(10)に示す化合物(以下、「DBTPB」と呼ぶ。)を用いることができる。
電子輸送層70は、電極層80から注入された電子を発光層60に輸送するための層である。電子輸送層70の材料としては、電子を輸送する機能の得られる種々の有機材料を用いることができる。例えば、電子輸送層70の材料として、下記の式(11)に示す2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンゾイミダール)(以下、「TPBI」と呼ぶ。)を用いることができる。
電極層80は、陰極として機能するものであり、駆動時に負電圧が印加されるものである。電極層80は、金属薄膜からなる。電極層80に用いられる金属薄膜としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀−マグネシウム合金、カルシウム等を用いることができる。
図1に示す有機EL素子に含まれる各層の膜厚は、特に限定されない。また、図1に示す有機EL素子の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の如何なる製造方法を用いてもよい。
また、本実施形態においては、基板10と発光層60との間に、陽極として機能するITO電極20が配置された順構造のものを例に挙げて説明したが、本発明の有機EL素子は、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造のものであってもよい。
また、本発明の有機EL素子は、無機化合物を用いて有機EL素子を構成する層の一部を形成した有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子(HOILED素子)であってもよい。
次に、本発明の一態様の表示装置について説明する。
本実施形態の表示装置は、上記の有機EL素子を用いた表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動回路とを有するものである。
本実施形態の表示装置は、本実施形態の有機EL素子を用いたものであり、有機EL素子の外部量子効率が高く、寿命が長いため優れた性能が得られる。
次に、本発明の一態様の照明装置について説明する。
本実施形態の表示装置は、上記の有機EL素子を用いた発光部と、前記発光部を制御する制御部とを有するものである。
本実施形態の照明装置は、本実施形態の有機EL素子を用いたものであり、有機EL素子の外部量子効率が高く、寿命が長いため優れた性能が得られる。
以上、本発明の好ましい実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
<実施例1>
透明基板上に、以下に示す材料を用いて以下に示す膜厚で各層を形成し、図1に示す有機EL素子を製造した。
「ITO電極20」ITO、膜厚:150nm
「正孔注入層30」PEDOT:PSS、膜厚:35nm
「正孔輸送層40」α−NPD、膜厚:10nm
「電子阻止層50」DBTPB、膜厚:10nm
「発光層60」ホスト材料:下記の式(12)に示すBPICbPTRZ、ゲスト材料:上記式(7−7)で表されるIr(mppy)(緑色燐光性化合物)、発光層中におけるゲスト材料の混合比率({ゲスト材料/(ホスト材料+ゲスト材料)}×100)6質量%、膜厚:35nm
「電子輸送層70」TPBI、膜厚:40nm
「電極層80」アルミニウム、膜厚:100nm
<比較例1>
ホスト材料として、下記の式(13)に示すCBPを用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を製造した。
実施例1および比較例1の有機EL素子について、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とをそれぞれ測定し、評価した。
図2(a)は、実施例1および比較例1の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図2(b)は、実施例1および比較例1の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。
図2(a)に示すように、実施例1および比較例1の発光スペクトルは、波長域および波形が近似していた。
また、図2(b)に示すように、実施例1では比較例1よりも外部量子効率が高かった。特に、電流密度の高い領域では、実施例1と比較例1との外部量子効率の差が顕著であった。これは、比較例1では、電流密度の高い領域において、ホスト材料の三重項励起状態のエネルギーが、ゲスト材料にエネルギー移動せずに消滅したことによるものと推定される。
また、実施例1および比較例1の有機EL素子を一定電流で駆動させて、経過時間に対する輝度の変化を測定した。その結果を図3に示す。
図3は、実施例1および比較例1の有機EL素子の輝度と経過時間との関係を示したグラフである。
図3に示すように、実施例1では比較例1と比較して、寿命が長いことが確認できた。
図2および図3に示すように、ホスト材料として、BPICbPTRZを用いた実施例1では、CBPを用いた比較例1と比較して、発光効率が高く、寿命が長かった。その理由は、実施例1では、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に遷移が起こり、ホスト材料のT1からS1を経由してフェルスター機構によるエネルギー移動を利用して、ゲスト材料に効率よくエネルギー移動できたためと推定される。BPICbPTRZでは、S1はT1よりもエネルギー準位が高く、実験は室温で行われたものであるから、この場合の遷移は熱的な遷移であると考えられる。
<実施例2>
ゲスト材料として、赤色の燐光性化合物である上記式(6−6)に示されるIr(piq)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を製造した。
そして、実施例2の有機EL素子について、実施例1と同様にして、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とを測定し、評価した。
<比較例2>
ホスト材料として、CBPを用いたこと以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を製造した。
そして、比較例2の有機EL素子について、実施例1と同様にして、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とを測定し、評価した。
図4(a)は、実施例2および比較例2の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図4(b)は、実施例2および比較例2の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。
図4(b)に示すように、実施例2においても高い外部量子効率が得られることが分かった。また、実施例2では比較例2と比較して高い外部量子効率が得られた。特に、電流密度の高い領域では、実施例2と比較例2との外部量子効率の差が顕著であった。
図2〜図4に示すように、ゲスト材料として、Ir(mppy)を用いた場合でも、吸収波長の異なるIr(piq)を用いた場合でも、高い外部量子効率が得られた。このことから、ゲスト材料の吸収波長に関わらず、実施例2においても実施例1と同様に、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に遷移が起こっていると推定される。よって、実施例2においても、ホスト材料のT1からS1を経由してフェルスター機構によるエネルギー移動を利用して、ゲスト材料に効率よくエネルギー移動できていると推定される(非特許文献6参照)。
また、実施例1、比較例1、実施例2、比較例2の結果から、ホスト材料としてT1からS1に遷移が起こるものを用いた場合には、ホスト材料の励起寿命が短くなるので、フェルスター機構のエネルギー移動の速度が非常に速くなり、効率よくエネルギー移動できると推定される。したがって、ホスト材料の発光スペクトルと、ゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりの程度がそれほど大きくなくても、効率よくエネルギー移動できると考えられる。よって、ホスト材料としてT1からS1に遷移が起こるものを用いた場合、使用可能なゲスト材料の組み合わせの自由度が非常に高いと言える。
<実施例3>
発光層中におけるゲスト材料の混合比率を1質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を製造した。
実施例3の有機EL素子について、実施例1と同様にして、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とをそれぞれ測定し、評価した。
図5(a)は、実施例1および実施例3の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図5(b)は、実施例1および実施例3の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。
図5(b)に示すように、ゲスト材料の混合比率を1質量%とした実施例3でも、実施例1と同様に、高い外部量子効率が得られた。
「時間分解発光現象の測定」
BPICbPTRZおよびCBPが遅延発光を示す材料(T1からS1に遷移が起こる材料)であるかどうかを調べるために、以下に示す方法により、時間に依存した発光過程を調べた。
時間分解発光現象の測定には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス、C4334)を用いた。時間分解発光現象の測定を行う際には、まず、サンプルとして、BPICbPTRZ薄膜およびCBP薄膜を作成した。次いで、YAGレーザー(励起波長355nm)から、パルスジェネレータ−を用いてストリークカメラと同期させて、一定周期で各サンプルにレーザー(パルスレーザー)を照射した。そして、各サンプルから放出されるフォトンを観測し、画像として検出した。観測結果の画像では、横軸を波長とし、縦軸を時間として、観測されたフォトンを点で示した。
図6は、窒素雰囲気下で測定したBPICbPTRZ薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。また、図7は、大気下で測定したBPICbPTRZ薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。
図6に示すように、窒素雰囲気下で測定したBPICbPTRZ薄膜では、遅延蛍光発光に由来するフォトンが顕著に観測されている。通常、蛍光材料の蛍光寿命は、数ナノ秒である。したがって、パルスレーザーを照射した直後に観測された多数のフォトンは、通常の蛍光発光に由来するものであると考えられる。よって、パルスレーザーを照射してから数ナノ秒以後に観測されたフォトンは、遅延蛍光発光に由来するものであると考えられる。
これに対し、図7に示す大気下で測定したBPICbPTRZ薄膜では、遅延蛍光発光に由来するフォトンが観測されていない。その理由は、大気下で測定した場合、酸素によって三重項励起状態が消光したことによるものと推定される。
図6および図7に示す観測結果より、窒素雰囲気下で測定したBPICbPTRZ薄膜から観測された遅延蛍光は、三重項励起状態から一重項励起状態への遷移による遅延蛍光であると結論付けられる。
図8は、窒素雰囲気下で測定したCBP薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。
図8に示すように、窒素雰囲気下で測定したCBP薄膜からは、遅延蛍光発光に由来するフォトンが観測されず、一般的な発光現象のみが観測されている。
図6〜図8に示すように、窒素雰囲気下と大気下で薄膜の時間分解発光現象を観測し、窒素雰囲気下でのみ遅延蛍光を発光する材料であるか否かを調べることにより、三重項励起状態から一重項励起状態へ遷移する材料であるか否かを確認できる。
次に、下記の式(14)に示すBetBubqが遅延発光を示す材料であるかどうかを調べるために、上述したBPICbPTRZ薄膜およびCBP薄膜と同様にして、時間に依存した発光過程を調べた。
図9(a)は、窒素雰囲気下で測定したBetBubq薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。また、図9(b)は、大気下で測定したBetBubq薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。
図9(a)および図9(b)に示すように、BetBubqは、窒素雰囲気下と大気下とでそれぞれ遅延蛍光の発光を観測した場合に、窒素雰囲気下でのみ遅延蛍光を発光する材料であった。よって、BetBubqもBPICbPTRZと同様に、三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギー移動が起こる材料であることがわかった。
また、クロロホルム溶液中にBetBubqを分散させた状態としたこと以外はBetBubq薄膜と同様にして、時間分解発光現象を観測した。その結果を図9(c)に示す。
図9(c)に示すように、溶液中にBetBubqを分散させた場合には、遅延蛍光が観測されなかった。このことから、BetBubqは、薄膜状態である場合に遅延蛍光が観測される材料であると考えられる。
また、BetBubq薄膜の遅延蛍光が、分子の相互作用により促進されている事を実証するため、BetBubqの薄膜(単膜)の常温で測定した発光スペクトル(蛍光)と、BetBubqをクロロホルム溶液中に分散したものの常温で測定した発光スペクトル(蛍光)とを測定した。その結果を図10に示す。
図10に示すように、BetBubqを溶液中に分散した場合には、矢印Aの位置に蛍光が観測されている。これに対し、BetBubq薄膜では、BetBubqを溶液中に分散した場合よりも、発光スペクトル(蛍光)が短波長側と長波長側の両方にブロードになっている。この違いが生じた原因は、薄膜において隣接する分子間の相互作用により、エネルギーの異なる複数の電子状態が生成したことによるものと考えられる(例えば、非特許文献7参照)。
また、BetBubqの薄膜の低温で測定した発光スペクトル(燐光)を測定した。その結果を図10に合わせて示す。
T1からS1に遷移したことに起因する遅延蛍光が起こる条件として、S1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が0.25eV以下であることが挙げられる。上述したように、BetBubq薄膜では、分子間の相互作用により、エネルギーの異なる複数の電子状態が生成する。その結果、図10に示すように、S1とT1が近くなる電子状態が生成されて、S1のエネルギーとT1のエネルギーとの差が0.25eV以下となり、S1からT1への積極的な遷移が起こり、遅延蛍光が生じると考えられる。
次に、下記の式(15)に示す有機金属錯体であるBe(4TMP)が遅延発光を示す材料であるかどうかを調べるために、上述したBPICbPTRZ薄膜およびCBP薄膜と同様にして、時間に依存した発光過程を調べた。
図11は、窒素雰囲気下で測定したBe(4TMP)薄膜の時間分解発光現象の観測結果を示したグラフである。
図11に示すように、Be(4TMP)は、窒素雰囲気下で遅延蛍光を発光する材料ではなかった。
<実施例4>
透明基板10上に、以下に示す材料を用いて以下に示す膜厚で各層を形成し、図12に示す有機EL素子を製造した。
「ITO電極20」ITO、膜厚:150nm
「正孔注入層30」PEDOT:PSS、膜厚:35nm
「正孔輸送層40」α−NPD、膜厚:40nm
「発光層60」ホスト材料:BetBubq、ゲスト材料:上記式(7−8)で表されるTLEC025(赤色燐光性化合物)、発光層中におけるゲスト材料の混合比率({ゲスト材料/(ホスト材料+ゲスト材料)}×100)6質量%、膜厚:35nm
「電子輸送層70」TPBI、膜厚:40nm
「電極層80」アルミニウム、膜厚:100nm
<比較例3>
ホスト材料として、CBPを用いたこと以外は、実施例4と同様にして有機EL素子を製造した。
実施例4および比較例3の有機EL素子について、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とをそれぞれ測定し、評価した。
図13(a)は、実施例4および比較例3の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図13(b)は、実施例4および比較例3の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。
図13(a)に示すように、実施例4および比較例3のホスト材料の発光スペクトルは、波長域および波形が近似していた。
また、図13(b)に示すように、実施例4では比較例3よりも外部量子効率が高かった。その理由は、実施例4では、ホスト材料の三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)に遷移が起こり、ホスト材料のT1からS1を経由してフェルスター機構によるエネルギー移動を利用して、ゲスト材料に効率よくエネルギー移動できたためと推定される。
<比較例4>
ホスト材料としてBe(4TMP)を用い、ゲスト材料としてIr(mppy)(緑色燐光性化合物)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして有機EL素子を製造した。
比較例4の有機EL素子について、発光スペクトルと、外部量子効率と電流密度との関係とをそれぞれ測定し、評価した。
図14(a)は、比較例4の有機EL素子の発光スペクトルを示したグラフであり、図14(b)は、比較例4の有機EL素子の外部量子効率と電流密度との関係を示したグラフである。
図14(b)に示すように、ホスト材料として、Be(4TMP)を用いた比較例4では、外部量子効率が不十分であった。
また、比較例4の有機EL素子を一定電流で駆動させて、実施例1と同様にして、経過時間に対する輝度の変化を測定した。その結果を図15に示す。
図15は、比較例4の有機EL素子の輝度と経過時間との関係を示したグラフである。
図15に示すように、比較例4では、寿命が短かった。
本発明の有機EL素子は、これを用いた表示装置、液晶のバックライト等の照明装置など多様な分野に利用できる。
10 基板
20 ITO電極
30 正孔注入層
40 正孔輸送層
50 電子阻止層
60 発光層
70 電子輸送層
80 電極層

Claims (7)

  1. 対向配置された電極間に発光層が備えられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記発光層が、燐光性化合物からなるゲスト材料と、ホスト材料とを含み、前記ホスト材料が、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が0.25eV以下の発光性化合物からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記発光性化合物が、ドナー型置換基とアクセプター型置換基とを単一分子に含むものであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記発光性化合物が、前記発光性化合物の分子間の相互作用による一重項励起状態及び三重項励起状態のエネルギー分裂により、一重項励起状態のエネルギーと三重項励起状態のエネルギーとの差が小さくなるように薄膜化されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記発光性化合物が、有機金属錯体であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記発光層中における前記ゲスト材料の混合比率が、1質量%以上10質量%未満であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動回路とを有することを特徴とする表示装置。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光部と、前記発光部を制御する制御部とを有することを特徴とする照明装置。
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