JP2015064305A - 熱型センサとこれを用いた熱計測モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】基板1に形成した空洞10を犠牲層で充填する必要がなく、熱型センサの感温部5を基板1から熱分離するための分離薄膜が、所定形状の空洞10の上にダイアフラム状に容易に形成できて、平坦な基板1として扱えるようにすることで、歩留まりの良い安価な高感度の熱型センサと熱計測モジュールを提供する。【解決手段】基板1に形成した所定形状の空洞10に耐熱性フイルム2を張り付け、その空洞10上のダイアフラム状の感温部5に薄膜温度センサ3を形成する。薄膜温度センサ3を薄膜ヒータ9と兼用にすることもできる。薄膜温度センサ3の電極パッドを基板に張り付けた平坦で途切れがない耐熱性フイルム2上に形成して、段差による熱型センサの配線の段切れ等の問題を防ぎ歩留まりの改善を図る。また、本発明の熱型センサを備え、信号の増幅回路、演算回路を搭載した熱計測モジュールも提供する。【選択図】図1
Description
本発明は、熱型センサとその熱計測モジュールに関し、感温部の寸法や形状を決定づける基板に形成した所定の形状の空洞を、耐熱性フイルムで塞いで、その上に形成した薄膜温度センサに関するもので、熱伝導型センサとして熱型赤外線センサや薄膜ヒータと組み合わせたフローセンサなどに使用できるものである。
本出願人は、先に、フォトレジスト膜を用いた多重層薄膜サーモパイルを発明し(特許文献1)、基板に空洞を形成しておき、ここに犠牲層を埋め込み、フォトレジスト膜を形成して、更に多重層薄膜サーモパイルを形成するようにしていた。この製造工程では、基板から多重層薄膜サーモパイルの感温部を熱分離するための空洞を、製造工程の最後または最後の方で、犠牲層をエッチング除去して形成するようにしていた。しかしながら、犠牲層材料とサーモパイルの熱電材料とに、犠牲層材料のエッチング除去の際に、熱電材料がエッチングされないようなエッチング液の選択、または、熱電材料の選択が必要であり、多重層薄膜サーモパイルの製造が困難になると言う問題に悩まされていた。
本出願人は、上述の問題の回避策として、先に、温度感度領域の寸法や形状を決定づける基板に形成した空洞を、感光性ドライフイルムレジストで塞いで、その上に多重層サーモパイルである薄膜温度センサを発明した(特願2012−190719 「感光性ドライフイルムレジストを用いた多重層薄膜サーモパイルとこれを用いた放射温度計およびその多重層薄膜サーモパイルの製造方法」)。市販の感光性ドライフイルムレジストの厚みは、一般に20マイクロメートル(μm)以上あり、多重層サーモパイルの電極パッドをシリコンの基板上に形成していたために、感光性ドライフイルムレジストの厚みの分の段差が存在していた。その段差に基づく多重層サーモパイルから電極パッドへの配線に段切れが発生したり、多重層サーモパイルの各絶縁層やそれらの各絶縁層の上に形成されるサーモパイルの熱電材料のパターン化に伴うフォトレジスト膜の塗布の不均一性の問題や露光のピンボケの問題など、製造上の問題を抱えていた。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、基板に形成した空洞を犠牲層で充填する必要がない状態で、基板から熱分離するための分離薄膜が、空洞をダイアフラム状に塞ぐ形で容易に平坦に形成できること、空洞の上に形成された分離薄膜をもつ基板を、新たな基板として扱うようにできること、薄膜温度センサとしてのサーモパイルなどの熱電対や測温抵抗体の電極パッドや薄膜ヒータの電極パッドが、分離薄膜の厚みに基づく段差の問題が解消されて、分離薄膜の上に形成できること、分離薄膜が少なくともフォトリソグラフィ工程に耐えられる程度の耐熱性を有する耐熱性フイルムであることで、画一的で安価な高感度の熱伝導型の熱型センサが提供され、多重層薄膜サーモパイルなどの高感度な熱型赤外線センサや薄膜ヒータと組み合わせたフローセンサなどを提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる熱型センサは、基板(1)から空洞(10)により熱分離させる電気絶縁性の分離薄膜に、薄膜温度センサ(3)を形成した熱型センサにおいて、基板(1)に形成されている所定の形状の空洞(10)を覆うように分離薄膜としての耐熱性フイルム(2)を張り付けてあること、該耐熱性フイルム(2)の上で、かつ、空洞(10)の上に対応する感温部(5)に薄膜温度センサ(3)が形成されていること、該薄膜温度センサ(3)の電極パッドも平坦で途切れがない耐熱性フイルム(2)上に形成されていること、を特徴とするものである。
従来、シリコン基板やガラス基板などの基板1にスパッタリング堆積などの例えば、金属膜をフォトリソグラフィにより高精度にパターン化するのに、深い傷や孔などがない基板1上に、フォトレジストを塗布して、露光、現像などの工程で形成していた。基板1に深い傷や孔などがあるとフォトレジストを塗布しても傷や孔などに基づく段差のために、フォトレジストの一様な塗布が困難になり、傷や孔などの周囲にフォトレジストが塗布さえないところが出現したりして、金属膜が段切れを起こすなどの問題があるからである。また、場合によっては、金属膜自体が傷や孔などの内側に一様に堆積されないことも問題になる。熱型センサでは、基板1から熱分離するのに、熱型センサの感温部の薄膜の下部に、上述の深い傷や孔に対応する空洞10を形成することが重要で、初めから所定の形状の空洞10を有する基板1を用いて、これに耐熱性フイルム2を張り付けて置くことにより、基板1上面から見ると空洞10が耐熱性フイルム2により塞がれているので、あたかも空洞10がない基板1のように見える。この状態の基板を新たな基板として取り扱うことができる。
本発明は、このような耐熱性フイルム2を、耐熱性があり、フォトリソグラフィ工程に耐えられる平坦な基板1であれば、基本的には、ガラス、セラミック、半導体、耐熱性プラスチック、金属など、ほとんど任意の基板に張り付けて、傷や孔が基板のフォトリソグラフィのフォトレジスト塗布側には無い状態で、熱型センサの感温部5を空洞10の耐熱性フイルム2上に位置合わせして形成することを目的としている。
従来、基板1としてシリコン(Si)基板を用いて、基板1に形成してある信号増幅器などの集積回路と電気的に接続するためやワイヤボンディングに必要な硬い基板材料に電極パッドを形成するために、耐熱性フイルム2として感光性ドライフイルムを用いて、フォトリソグラフィによる貫通孔を設けて、熱型センサの電極パッドを直接基板1に密着させるように形成していた(特願2012−190719)。しかし、一般の市販のポリイミドフイルムなどの感光性ドライフイルムの厚みは、薄くとも20マイクロメートル(μm)以上あり、感光性ドライフイルムに形成された貫通孔の深さは、この感光性ドライフイルムの厚みになり、この段差を超えて、電極パッドを形成する必要があった。この段差は、特に多重層薄膜を用いた多重層サーモパイルでは、その層数だけフォトリソグラフィによるフォトレジスト膜のスピンコート、露光、現像と、サーモパイル材料のスパッタリング堆積の回数が嵩むので、サーモパイル材料の段差による段切れが圧制してしまうなど、製品の歩留まりにも影響があった。本発明は、上述の問題を解決したもので、本発明により、電極パッドを平坦で途切れがない耐熱性フイルム2上に形成することになるので、基板への貫通孔が不要になり、段差の問題が解消されることになる。
熱型センサとして多重層サーモパイルに適用した場合について述べると、基板中に形成した空洞により、この基板から熱分離した多重層薄膜のそれぞれの層薄膜に形成されているサーモパイルを、本発明では、層サーモパイルと呼ぶことにしており、これらの層サーモパイルを電気的に直列接続したサーモパイルを合成サーモパイルと呼ぶことにしている。また、多重層薄膜サーモパイルは、この合成サーモパイルを含み、マウントされて熱型センサとして提供できるものを含むものである。
層サーモパイルを構成する熱電対には、冷接点(基準点)と温接点(測定点)を有するが、例えば、赤外線を受光する赤外線センサに使用した場合、一般には、熱容量が大きい基板上に形成した接点を冷接点にし、基板から熱分離した分離薄膜の受光部となる感温部上に形成した接点は、基板温度より高い温度から放射される赤外線を受光した場合に温度上昇をして温接点となる。しかし、基板温度より低い温度の物体からの赤外線を受光した場合は、逆に受光部の薄膜からの放射が多くなり、この受光部の薄膜は、冷えるので、基板上に形成した接点を温接点となり、受光部の薄膜に形成した接点の方が冷接点になる。基板は、受光部となる薄膜に比べて熱容量が大きいので、これをヒートシンクとして利用し、基板の温度をサーモパイルの基準温度とする。
同一面積の感温部に、一重層内で熱電対数を増やすと急激に内部抵抗が増加するが、多重層薄膜に形成した合成サーモパイルを構成すると、一重層薄膜に形成したサーモパイルに比べ、その内部抵抗も多重層分だけ大きくなるだけであり、熱電対数を多重層分だけ多くすることができるので、同一の温度差を計測する場合には、ほぼその分だけ大きなサーモパイルからの出力電圧が得られる。従って、多重層薄膜のサーモパイルにより高感度のサーモパイルが提供できることになる。
本発明の請求項2に係わる熱型センサは、耐熱性フイルム(2)として、200℃以上の耐熱性がある材料を使用した場合である。
耐熱性フイルム2は、電気絶縁性があり、必ずしも感光性材料である必要はなく、フォトリソグラフィでの熱処理工程や熱型センサのセンサ材料、更に薄膜マイクロヒータを形成した時には、その加熱時の熱型センサとして必要な高温度に耐える耐熱材料で有れば良い。もちろん、薄膜マイクロヒータや熱型センサの形成時に使用する各種の酸またはアルカリなどの薬品(例えば、金属膜のエッチング除去のエッチャント)に耐性のある材料であることが望まれる。これらの条件を考慮して、例えば、ポリイミドフイルム、ポリカーボネート、ポリエステルフイルム、ポリプロピレンフイルムなどの有機フイルムで、ラミネートできるドライフイルムや、これらの耐熱性で電気絶縁性の数マイクロメートル厚程度の有機フイルムで極めて薄い金属フイルム(電気導電性フイルム)にコーティングしたようなフイルム、更には、無機フイルムであるセラミックスやガラスなどの20マイクロメートル厚程度の薄いフイルム上に耐熱性の接着剤が塗布されているものでも良い。また、透明な材料である必要もない。
本発明の請求項3に係わる熱型センサは、耐熱性フイルム(2)として、感光性材料を使用した場合である。
耐熱性フイルム2として、感光性材料を使用すると、上述したように基板1への貫通孔や耐熱性フイルム2の除去領域を通して基板1への電気的コンタクトができる。耐熱性フイルム2の基板1への貫通孔や除去領域は、基板1のダイシング時に切断部の周囲となる熱型センサチップの周辺部に形成すると良い。もちろん、電極パッドは、平坦な耐熱性フイルム2上に形成するが、導電性ペーストやソルダ-ホ゛ント゛などで電極パッドと基板1に初めから設けてある電極パッド(耐熱性フイルム2上の電極パッドとは別のもの)へ電気的に接続をすることができる。更に、シリコン単結晶基板などの半導体を基板1として用い、空洞10を除いた領域にダイオードやトランジスタなどの電子部品や集積回路(IC)(増幅回路、演算回路、駆動・制御用の種々の回路など)を同一基板に形成することもできる。また、このIC技術により、システムを同一基板に形成して、コンパクトな放射温度計、イメージセンサ、フローセンサの装置などを提供することできる。
本発明の請求項4に係わる熱型センサは、薄膜温度センサ(3)として、熱電対(サーモパイルを含む)(6)とした場合である。
熱電対を複数個直列接続して同一の温度差に対して1本の熱電対よりも高出力になるように熱起電力型の温度差センサがサーモパイルである。ここでは、サーモパイルも熱電対の一種であるので、まとめて熱電対と言うことにする。熱電対は、絶対温度センサであるサーミスタや測温抵抗体とは異なり、測定点(温接点)と基準点(冷接点)との温度差だけに対応して熱起電力の出力電圧を発生する。従って、測定点と基準点との温度差がゼロであれば、出力もゼロである。そして、熱電対の熱電材料によりその感度が異なる。このことは、周囲温度が多少変化しても、絶対温度センサとは異なり、温度差だけに基づく熱起電力を発生すると言う特長がある。周囲温度が変化して基板1の温度が変化するような場合でも、赤外線を受光して基板1に対して温度上昇する熱型赤外線センサやヒータを挟んで両側の温度差を計測するようなフローセンサには、好適な温度センサ(ここでは温度差センサ)となる。
本発明の請求項5に係わる熱型センサは、熱電対(6)を多重層の各層に形成し、各層の一層の熱電対(6)よりも高出力になるように各層の熱電対(6)を電気的に接続した場合である。
多重層薄膜の主体をフォトレジスト膜で形成することにより、写真の原理を利用するから設計通りの形状、厚みおよび寸法の多重層薄膜が高精度で容易に形成できる。また、貫通孔を、層薄膜となるフォトレジスト膜自体の所定の箇所に、露光・現像によるパターン化により精度良く容易に形成できるので、この層薄膜に直列接続し形成した熱電対をここでは層サーモパイルと呼ぶことにし、貫通孔を通して上下の層サーモパイル同士を容易に導通することができる。サーモパイルの熱電材料もフォトリソグラフィでパターン化できるので、画一的な寸法やセンサ特性が得られる。一般に、フォトレジストの薄膜は、電気絶縁性であると共に、有機材料であるから熱伝導率も小さく、このフォトレジストの層薄膜を多重化して、多重層薄膜を形成してあり、それぞれの層薄膜に形成してある層サーモパイルが貫通孔を介して直列接続された合成サーモパイルも形成できる。
フォトレジスト膜を主体とする層薄膜に形成した貫通孔を通して上下の各層サーモパイル同士を電気的に導通させて直列接続させる。このようなときに、層薄膜に形成する貫通孔の位置を、その下部層の層薄膜に形成してある貫通孔の位置とは、ずらして形成して互いに電気的の接触しないような配置にした方が良い。このような観点から上下の層サーモパイルのパターン形状において、貫通孔同士の位置が異なるようにすると共に、各層サーモパイルが全体として直列接続されて、合成サーモパイルが形成されるような層サーモパイルのパターンを設計することが大切である。
各層サーモパイルを構成する熱電対の接続方法として、これらの熱電対を直列や並列、またはこれらを組み合わせた接続にすることもできるが、同一の温度差ΔTの下で、2端子と成る合成サーモパイルの熱起電力を大きくするためには、すべての熱電対を単に直列接続する方が良い。多重層薄膜サーモパイルは、合成サーモパイルを複数個アレー状に基板1に配列させて構成しても良い。
本発明の請求項6に係わる熱型センサは、薄膜温度センサ(3)として、測温抵抗体とした場合である。
耐熱性フイルム2上で、しかも空洞10に形成される薄膜温度センサ3として、白金(Pt)やニッケル(Ni)のような抵抗温度係数(TCR)の大きく酸化され難い金属を使用すると良く、しかもヒータと測温抵抗体である絶対温度センサとを兼用にすることもできる。
本発明の請求項7に係わる熱型センサは、耐熱性フイルム(2)に薄膜ヒータ(9)を設けた場合である。
ガスフローセンサや液体フローセンサなどで、流体の流れを計測するのに、熱型センサでは、一般に基板1から熱分離した電気絶縁性で耐熱性の分離薄膜(ここでは、耐熱性フイルム2)に薄膜ヒータ9と薄膜温度センサ3とを、近接もしくは、兼用にして用いる。本発明でも、耐熱性フイルム2に薄膜ヒータ9を設けて、フローセンサや気圧センサなどの熱伝導型センサとして用いる熱型センサである。薄膜ヒータ9としては、抵抗体で有れば何でもよく、例えば、薄膜温度センサ3と同時に形成できる同一材料の測温抵抗体でも良いし、1個の薄膜温度センサ3をヒータ兼絶対温度センサとして用いることもできる。また、熱電対を薄膜温度センサ3として用い、その近傍に、薄膜ヒータ9としての熱電対(抵抗体であるので、ヒータとしても利用できる)を形成したり、1個の熱電対を薄膜ヒータ9として兼用にすることも可能である。
測温抵抗体を薄膜温度センサ3として利用するときは、自己加熱しながらその時の絶対温度を計測することができる。このように、薄膜温度センサ3を薄膜ヒータ9としても使用するときは、特に、空洞10の上に対応する感温部5は温度上昇するが、空洞10以外の領域の基板1の上にヒータを構成する金属などのヒータ材料は、温度上昇がほとんどない。従って、この空洞10以外の領域の部分のヒータ材料の抵抗は、測温抵抗体として使用すると、感温部5の絶対温度を計測するのに誤差となり、精度が悪い絶対温度センサとなる。この問題の解消方法として、空洞10の上に対応する感温部5のヒータ材料の領域から4探針法として、電圧端子を取り出すことで、所望の加熱された感温部5の薄膜ヒータ9の絶対温度を正確に計測することができる。
本発明の請求項8に係わる熱型センサは、空洞(10)として、同一の基板(1)に少なくとも2個の空洞(10a)と空洞(10b)とを形成してあり、一方の空洞(10a)上の感温部(5)の耐熱性フイルム(2)に薄膜ヒータ(9)と薄膜温度センサ(3)とを形成し、空洞(10a)に近接して配置された他方の空洞(10b)上の感温部(5)の耐熱性フイルム(2)には、少なくともと1個の薄膜温度センサ(30)が配置されている場合である。
熱型センサを流体のフローセンサとして利用する場合、同一の流体の流量等の下で同一の温度になるように薄膜ヒータ9で感温部5を加熱し、流体の種類によりその近傍で同一の感温部5に配置している薄膜温度センサ3の出力特性が異なる。これは、薄膜ヒータ9からの熱は、同一の感温部5にある薄膜温度センサ3には、感温部5を構成する耐熱性フイルム2を介して伝達される熱と被測定流体を介して熱伝達される熱とがあることによる。このために流体の種類が予め分かっていないと、正しい流量などの値を決定することができない。ガスなどの流体の熱的効果による判別は、その流体の比熱や熱伝導率が異なるためで、熱伝達率を計測するか、もしくはこれに相当する効果を利用することで、その流体の種類が分かり、自動校正することができる。
本発明では、このような流体のことを種類の判別にも使用できるように、同一基板1に少なくとも独立した2個の空洞10a、10bを設けておき、これら空洞10a、10bをカバーする耐熱性フイルム2を張り付けている。一方の空洞10a上の感温部5の耐熱性フイルム2には、薄膜ヒータ9と薄膜温度センサ3とを備え、同一の空洞10a上にあるので、薄膜ヒータ9の熱が、同一の耐熱性フイルム2を介しての熱伝導と被測定流体の流れや熱拡散により運ばれる熱との合成の結果生じる薄膜温度センサ3に温度変化が生じる。また、他方の空洞10bの感温部5の耐熱性フイルム2上の薄膜温度センサ30は、空洞10aに近接しているが独立の空洞10b上に形成されているので、薄膜温度センサ30の温度上昇は、気体などの被測定流体を介して運ばれる空洞10a上の薄膜ヒータ9からの熱により決定される。被測定流体の流れを停止している状態では、気体などの被測定流体の温度依存性も含む種類にのみ依存する熱拡散による熱伝達率に依存して薄膜温度センサ30の温度上昇やその変化が決まるので、予め用意してある計測データを基にして、被測定流体の種類による影響を自動校正することができる。
本発明の請求項9に係わる熱計測モジュールは、請求項1から8のいずれかに記載の熱型センサを備え、放射温度計測、流体のフロー計測や気圧計測に必要となる少なくとも増幅回路および演算回路を備えたことを特徴とするものである。
熱型センサは、熱型センサチップの感温部5の温度変化を周囲媒体との間での熱のバランスにより決まる温度変化を計測する熱伝導型センサとして使用するものであるが、感温部5においての与えられる熱による温度変化が赤外線の吸収により生じる場合は、熱型赤外線センサとなり、薄膜ヒータによる熱による温度変化を利用する場合は、フローセンサや気圧センサなどとして実施される。基板1に半導体基板である、例えば、シリコン基板を用いると、ここに集積回路を形成しておくことができる。しかし、半導体基板で無い時には、熱型センサ素子とは別に、それらの駆動回路や増幅回路、メモリも含む演算回路、制御回路、表示回路などを別に設けてモジュール化して小型化する方が有利である。本発明の熱計測モジュールは、少なくとも、熱型センサチップを含みパッケージ化される熱型センサと、これを放射温度計測、流体のフロー計測や気圧計測のそれぞれに適用する場合に必要となる信号の増幅回路とその演算回路とを最小限度備えてモジュール化したものである。1枚のプリント基板にモジュール化することが好適である。
本発明の熱型センサでは、基板1に形成した空洞10に、犠牲層などでの空洞の穴埋めなしに耐熱性フイルム2の張り付けにより直接ダイアフラム状の感温部5が形成できる。従って、空洞10を孔(窪みで有る溝でも良い)と考えると、この所定の形状で規則的に配置形成された孔をもつ孔空き基板である基板1に、この空洞10を覆うように耐熱性フイルム2を張り付けるという、言わば、新たな基板を、従来の基板のように扱い、フォトリソグラフィ工程に用いることができると言う利点がある。
本発明の熱型センサでは、薄膜温度センサ3の電極となる電極パッドを平坦で途切れがない耐熱性フイルム2上に形成できるので、従来の大きな段差に基づく金属パターンなどの段切れの問題、大きな段差に基づく露光時のピンボケの問題、フォトレジストの塗布の困難性などの問題が解消されると言う利点がある。
本発明の熱型センサでは、耐熱性フイルム2を使用しているので、耐熱性フイルム2の上に薄膜ヒータ9を形成して、フローセンサや気圧センサなどの熱伝導型センサとしての熱型センサも提供できるという利点がある。
本発明の熱型センサでは、同一の基板1に複数の空洞10を設けることができるので、赤外線イメージセンサへの適用のように、同等な熱型センサの感温部5である受光部のアレー化が容易である。
本発明の熱型センサでは、同一の基板1に2個の空洞10を近接配置させることにより、一方の空洞10a上に設けた1個のヒータからの熱を、被測定流体を介して熱拡散による熱伝導させて、他方の空洞10b上に形成した薄膜温度センサ30の温度変化を計測することにより、被測定流体の熱伝導流体の種類の影響を自動校正できるようにすることができると言う利点がある。
本発明の熱型センサでは、耐熱性フイルム2の上に、直接、多重層の合成サーモパイルが形成できること、多重層薄膜サーモパイルの各層の分離にフォトレジスト膜が使用できるという利点がある。このように耐熱性フイルム2上に形成する多重層としての電気絶縁層である各層薄膜の主体がフォトレジスト膜である場合は、貫通孔は、このフォトレジスト膜自体の露光と現像に基づくパターン化により微細で精度が良く、しかも容易に形成できること、また、この貫通孔を通して層サーモパイル同士を容易に直列接続できること、更に、露光・現像によりパターン化できるフォトレジスト膜による多重層薄膜の形成のため工程数が少なくて済むという利点がある。
本発明の熱型センサでは、シリコン単結晶などの結晶性基板を用いることができるので、結晶方位面を利用して高精度の寸法の空洞10が容易に形成できる。従って、この空洞10の形状で決まる耐熱性フイルム2の基板1から熱分離している感温部5の寸法が高精度で決定されるので、熱応答など高精度で画一的なバラツキが極めて少ない熱型センサが提供できるという利点がある。
本発明の熱型センサでは、基板1に単結晶シリコンを用いることができるので、成熟した集積回路(IC)技術を利用できる。半導体基板に増幅器や演算回路、制御用回路などの集積回路、必要に応じてシステムを形成できるので、高感度でコンパクトな熱型センサが達成できるという利点がある。
本発明の熱型センサでは、基板1として、平坦でフォトリソグラフィに耐える基板であれば任意の基板1で良く、必ずしも半導体基板である必要はなく、ガラス、セラミック、耐熱性プラスチックや金属までも使用できること、更に複数の空洞10を予め形成してある基板1に耐熱性フイルム2を張り合わせた基板を用いてフォトリソグラフィ工程を行うだけで済むので、安価な熱型センサが提供できるという利点がある。
本発明の熱型センサでは、同一の基板1に複数個の空洞10とそれぞれ上に薄膜温度センサ3を形成し、これを特に熱電対としての多重層サーモパイルとして形成することで、それぞれの出力同士を差動増幅したり、アレー状に形成して、高感度の温度分布を計測したりすることができると言う利点がある。このことから最も高い温度や低い温度を抽出することもできるので、高感度の耳式体温計に応用し、誤差が少なく鼓膜温度を計測することができる。
本発明の熱型センサでは、薄膜温度センサ3として多重層薄膜サーモパイルにすると、熱起電力が大きいので、これを直流電源として使用することもできる。
以下、本発明の熱型センサをガスフローセンサや熱型赤外線センサに適用した場合の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の熱型センサの概念を説明するための一実施例を示す熱型センサチップの平面概略図で、ガスフローセンサとして実施した場合である。図2及び図3は、本発明の熱型センサのセンサチップにおける図1のX-Xにおける横断面概略図である。図2は、熱型センサの空洞10が基板1を貫通している矩形の孔の場合であり、図3は、熱型センサの空洞10が基板1に形成されている矩形の溝(凹部)の場合で、空洞10が閉じられた空間になる。しかし、この場合、環境の気圧変化に弱いので、ここでは図示しないが、基板1か、もしくは耐熱性フイルム2に外部と繋がる小さな連通孔を、薄膜温度センサ3などのパターンに関係がないところに形成することで、空洞10内の圧力バランスを取ることができる。どちらの場合でも、空洞10が、耐熱性フイルム2でダイアフラムとして塞ぐ形で張り付けられており、基板1の上部に張り付けられた途切れがない耐熱性フイルム2で段差がなくほぼ平坦になっている。耐熱性フイルム2としては、ポリイミドフイルムが300℃以上の高温にも耐え、しかも電気的にも絶縁体で有り、熱伝導率も小さいので、熱型センサの基板1から熱分離するための分離薄膜として好適である。耐熱性フイルム2の厚みは、熱型センサの感温部5となる空洞10の寸法にも依るが、例えば、空洞10の1辺が1mm長の正方形である場合は、感温部5の熱答速度と感度を考慮すると、20マイクロメートル(μm)以下が望ましい。
基板1としては、シリコン単結晶などの半導体基板はもちろんのこと、ガラス、セラミックス、耐熱性プラスチックや電気伝導性の良い金属板でもフォトリソグラフィ工程の薬品や処理温度、薄膜温度センサ3の材料の堆積、例えば、スパッタリング堆積、の環境下に耐えられる平坦な基板ならば任意の基板が使用できる。ここでは、例えば、3mm角の熱型センサチップが切り出せるように、400μm厚みの4インチ径の硬質ガラスのウエーハで、1辺が1mm長の正方形の空洞10としての孔が碁盤の目のように空けてあるウエーハを用いて、この上に、ポリイミドドライフイルムである20μm厚みの耐熱性フイルム2を張り付けて取り扱う場合を示す。ローラを用いて基板1に耐熱性フイルム2を張り付けた後、その上面に、熱型センサの薄膜温度センサ3の材料である、ここでは、ニッケル(Ni)薄膜を基板温度150℃に保ちながらスパッタリング堆積する。基板温度は、Ni薄膜の結晶化促進のためである。厚みを0.3μm程度として、パターン化させた時に、薄膜温度センサ3の抵抗値が大きめの50Ω程度になるようにすると良い。フォトレジスト膜を塗布して露光、現像およびNi薄膜のパターン化により図1に示すような形状の薄膜温度センサ3が丁度、空洞10の上の感温部5に位置するように形成する。
薄膜温度センサ3は、ここでは測温抵抗体としてのNi薄膜を使用しているので、その抵抗温度係数(TCR)が大きいので、薄膜ヒータ9としても兼用で使用し、TCRを利用してヒータ加熱前の薄膜温度センサ3の抵抗値、更に加熱中の抵抗値を利用すると共に、予め用意してある校正データを利用して、室温時の絶対温度と加熱中の絶対温度を知ることができる。ガスフローセンサとして利用するときには、気流があると所定の電力でヒータ加熱された薄膜温度センサ3は、温度低下するのでその温度変化から気体の流れの速度や流量を公知の熱伝導型センサの原理により計測することができる。
ここでは、薄膜温度センサ3は、薄膜ヒータ9としても動作させるが、その電極パッド23a、23bは、途切れがない平坦な耐熱性フイルム2上に形成されているので、従来のように耐熱性フイルム2の段差に基づく薄膜温度センサ3材料であるNi膜のスパッタリング堆積時の膜厚の均一性の問題、パターン化のためのフォトレジスト膜の塗布時の均一性の問題、パターン化されたNi薄膜の段切れなどでの不良の問題等が解消され、歩留まりが良くなる。なお、平坦な耐熱性フイルム2上に形成されている電極パッド23a、23bからの電気配線は、耐熱性フイルム2がソルダーペーストや導電性ペーストを用いて外部のパッケージの電極と接合すると良い。
図4は、本発明の熱型センサをガスフローセンサに適用した時の他の一実施例を示す熱型センサチップの平面概略図である。上述の実施例1の図1、図2及び図3と同様であるが、異なる点は、図4では、1個の空洞10上の感温部5となる領域の耐熱性フイルム2に、測温抵抗体とした薄膜温度センサ3を薄膜ヒータ9と兼用にしているが、この薄膜ヒータ9の被測定気流の上流側と下流側とに、それぞれ薄膜温度センサ3aと薄膜温度センサ3bとして薄膜の熱電対6が対形成されていることであり、更に、空洞10の寸法を流れ方向に多少長くなるようにしている。ここでは、例えば、これらの熱電対6である薄膜温度センサ3aと薄膜温度センサ3bとの差動動作出力から公知の方法で気流の速度や流量を計測できるようにしている。熱電対6は、基準点(冷接点)19である基板1の温度と測定点(温接点)18との温度差にだけ比例した出力を発生するので(温度差がゼロであれば、熱起電力出力も本質的にゼロである)、室温である周囲温度の影響を受け難く、更に開放起電力で温度変化の情報である信号電圧を計測できるので、熱電対6の内部抵抗の影響が無視できると共に、熱電対6を構成する熱電材料が定まれば、そのゼーベック係数で熱起電力の温度係数が定まり、基板1からの温度差及び薄膜温度センサ3aと薄膜温度センサ3bとの温度差が容易に計測できるので好都合である。
薄膜温度センサ3aと薄膜温度センサ3bとを熱電対6にしているので、熱電材料の一方の熱電導体A16として、例えば、アルメル薄膜、他方の熱電導体B17として、例えば、クロメル薄膜をスパッタリング堆積させて形成すると良い。そして、薄膜ヒータ9と兼用にする薄膜温度センサ3の材料として、TCRが大きく、抵抗率も大きく、更に、酸化され難い材料である一方の熱電材料の熱電導体A16であるアルメル薄膜を用いることが、製作工程上、望ましい。もちろん、熱電対6をニッケル(Ni)と金(Au)とすると、それぞれ合金材料ではないので、多少これらの金属のゼーベック係数が小さいが、ゼーベック係数の大きさが実験上の再現性の良い結果が得られやすい。このような時には、薄膜ヒータ9と兼用にする薄膜温度センサ3の材料として、一方のNiを用いると良い。
図5は、本発明の熱型センサをガスフローセンサに適用した時の他の一実施例を示す熱型センサチップの平面概略図である。上述の実施例2の図4と同様であるが、異なる点は、図5では、同一の基板1に2個の空洞10である一方の空洞10aと近接配置した他方の空洞10bとを備えてあり、空洞10aの方の構造は前実施例2の図4の空洞10の構造と同一であるが、他方の空洞10b上の感温部5となる領域の耐熱性フイルム2には、薄膜温度センサ30としての熱電対6が形成されている点である。気流を止めた状態で、一方の空洞10aでの薄膜ヒータ9で熱せられた被測定気体の熱拡散に基づく気体の熱伝達率の大きさにより、他方の空洞10b上の薄膜温度センサ30の温度を上昇の大きさが異なることを利用して、周囲被測定気体の種類が判別でき、予め気体の種類が分からなくとも自動校正できるようにしたガスフローセンサを提供するものである。もちろん、ガス種による気流がない状態での温度上昇を予め本発明の熱型センサを用いて校正用データとして取得しておき、このデータを基にして自動校正できるようにするものである。他の点は前述の実施例と同様なので、詳細な説明は省略する。
図6は、本発明の熱型センサを多重層薄膜サーモパイルに適用した時の概念を説明するための一実施例を示す平面概略図で、熱型赤外線センサ素子として実施し、基板1としてシリコン(Si)の(100)面の結晶面を上面にした場合である。ここでは、多重層薄膜サーモパイルの合成サーモパイルであるが、図面が煩雑になるので、最上層部の層サーモパイルのみを表示している。図7は、本発明の熱型センサを多重層薄膜サーモパイルに適用した図6のX-Xにおける横断面概略図である。本発明の熱型センサの多重層薄膜サーモパイルでは、必要に応じて多重層薄膜サーモパイルの電気信号を増幅したり、信号処理をしたりするための集積回路110やpn接合ダイオードなどの絶対温度センサ34を搭載した単結晶シリコン(Si)の基板1を用いることができるので、本実施例は、集積回路110等を搭載している例である。なお、多重層薄膜サーモパイルの合成サーモパイルの電極パッド23a、23bは、平坦な耐熱性フイルム2としてのポリイミドの感光性ドライフイルムレジスト上に形成されているので、Si基板1に形成してある集積回路に電気的に配線してある基板用電極パッド36a、36bと合成サーモパイルの電極パッド23a、23bとは、ソルダーペーストや導電性ペーストを用いて配線し、パッケージングすることができるようにしている。
所定の寸法の空洞10を既知技術である異方性エッチング技術でSi単結晶の基板1の裏面から形成して、その空洞10を耐熱性フイルム2としてポリイミドの感光性ドライフイルムレジストで塞ぐように張り付けて、その空洞10に感温部5としてのダイアフラムが形成されるようにしている。このダイアフラムは赤外線の受光部7となり、感温部5として作用する。そして、感光性ドライフイルムレジストは、電気絶縁性のフォトレジスト膜の一種であるからその特徴を生かして、貫通孔11の形成や感光性ドライフイルムレジストを所定の形状に残すことができる。なお、絶対温度センサ34は、基準となる基板1の絶対温度を知るために設けてある。
感光性ドライフイルムレジストの上に形成する多重層薄膜15は、基板1に形成された空洞10を有しているために、熱的に基板1から分離された構造になっている。この多重層薄膜15を構成する電気絶縁性の各層薄膜12として、この実施例では、フォトレジスト膜を主体として、その上に層サーモパイル13が形成されてあり、上下の層サーモパイル13の熱起電力が大きくなるように、感光性材料であるフォトレジスト膜の特徴を生かしてそれ自体に、露光・現像してパターン化形成した貫通孔11を利用し、上下層薄膜導通部24を介して直列接続されて、全体として合成サーモパイル14が形成されている。合成サーモパイル14の出力は、電極23Aと電極23Bから外部に熱起電力の基づく信号として取り出すことができるようにしている。本実施例では、電極パッド23aと電極パッド23bは、基板1に形成し集積回路に直結された電極パッドであり、熱型センサチップの周辺の感光性ドライフイルムレジストが除去されて露出した電極パッド36a、36bとを、ソルダーペースト300を用いて配線している場合である。
多重層薄膜15は、フォトレジスト膜からなる各層薄膜12をスピンコートにより容易に形成できる。このフォトレジスト膜は互いに接着力が大きいので、他の接着剤などは、一般に不要である。また、フォトレジスト膜は、感光性材料なので、容易に、しかも高精度に、所望の形状にパターン化できるので、端子となる電極を露出させたり、貫通孔11を各層薄膜12に高精度で形成することもできる。なお、各層サーモパイル13の一方の基準点19(例えば、冷接点)は、熱容量の大きいためにヒートシンクとして作用する基板1の上に位置するようにしてあり、他の測定点18(例えば、温接点)は、基板1から熱分離した多重層薄膜15のうち、受光部7で感温部5となるダイアフラム構造の中央付近に形成するようにする。
本発明の熱型センサの多重層薄膜サーモパイルを熱型の赤外線センサ素子として利用する場合は、赤外線の受光部7を形成してあり、そこに各層サーモパイル13がそれぞれ形成されている各層薄膜12を接合した多重層薄膜15が基板1から空洞10を介して熱的に分離した形状にしている。各層サーモパイル13は、直列接続した複数の薄膜の熱電対6から構成されているが、無機や有機の熱電材料からなる熱電対6で形成することができる。一般には、正と負の大きなゼーベック係数を有する半導体や、アンチモン(Sb)とビスマス(Bi)のなどの半金属、さらに金属の薄膜の組み合わせ、例えば、アルメルとクロメルによる薄膜の熱電対6で構成する。
本実施例では記述していないが、受光部7のダイアフラム構造の中央付近が最も高温になるが、この付近を均一な温度にするために金属薄膜や熱電導体などで形成した熱伝導薄膜を中央付近に形成し、その上に温接点である測定点18を配置形成するようにしても良い。
図8は、本発明の図6と図7に示す熱型センサを多重層薄膜サーモパイルとして実施した場合の製作初期の工程で、空洞10を有する基板1に耐熱性フイルム2としての感光性ドライフイルムレジストを張り付け、フォトリソグラフィにより所定のパターン化をして、第1層サーモパイルを形成した時の横断面概略図である。ここでは、更に第2層サーモパイルとの絶縁を容易にするために、例えば、耐熱性のあるポリイミドのフォトレジスト膜をスピンコートで形成し、フォトリソグラフィにより第1層サーモパイルと第2層サーモパイルとが電気的に接続されるように貫通孔11をも形成した場合の概略図である。液状のフォトレジストをスピンコートで薄膜状に形成するので、各層サーモパイルの段差を埋めて、平坦化もしやすいという利点がある。このように、フォトレジスト膜をスピンコートで形成し、その上に各層サーモパイルを形成する工程を、所定の多重層分(例えば、10層の層サーモパイル)繰り返して、合成サーモパイルを形成することができる。その結果の横断面概略図を示したのが、図7である。
上述のようにして形成した多重層薄膜サーモパイルとしての熱型赤外線センサ素子は、所望の赤外線波長領域で透過する、例えば、Si単結晶フィルタなどの窓材やフィルタを用い、さらに、金属やプラスチックのパッケージにマウントして、外部に電気的に取り出すような公知の端子を取り付けて、素子として取り扱うことができるようにする。もちろん、サーミスタやpn接合ダイオードなどの絶対温度センサ34を基板1に形成するなどして、更に電気出力を増幅させるアンプや演算回路などを一体化したモジュールとした多重層薄膜サーモパイルとして取り扱うことができるようにしても良い。
図9は、本発明の熱型センサを多重層薄膜サーモパイルとして実施した場合で、空洞10を碁盤の目のように形成する二次元アレー化し、それぞれに受光部7を持つイメージセンサに適用した場合の一実施例を示す平面概略図である。多重層薄膜サーモパイルのアレーとして、同一の基板1に合成サーモパイルアレー140を形成した場合である。もちろん、空洞10を2から3個の複数個設けて、これら複数個の合成サーモパイルアレー140でも良い。
合成サーモパイルアレー140のそれぞれの合成サーモパイル14が形成されているそれぞれの多重層薄膜15を基板1から熱分離するための空洞10のアレーは、実施例1で示したように基板1を貫通する形の空洞10のアレーでも良いし、微細な寸法の空洞10では、基板1の中に凹部としての貫通しない状態の溝8としての空洞10のアレーでも良い。
本実施例では、シリコン単結晶の基板1のイメージセンサとして、赤外線の各受光部7がピクセルとなり、これをX-Y平面上に二次元配列した受光部アレー70があり、垂直走査回路121と水平走査回路122により特定の受光部が選択できるようになっている。そして、これらの回路を用いて、イメージセンサとして水平及び垂直の走査が達成される。そして、それぞれの受光部7に形成してある合成サーモパイル14からの信号出力を同一基板1に設けてある増幅器や演算回路としての集積回路110により処理されて、基板1に設けたイメージセンサ表示のための集積回路110で信号処理して、基板1の外部に設けた表示装置により画像を表示するようにしている。
上述の放射温度計では、ゲルマニウムレンズやフレネルレンズなどのレンズ系を備え、その焦点面に本発明の多重層薄膜サーモパイルの受光部7や合成サーモパイルアレー140を設置して、被温度計測物体からの赤外線を受光して、その温度分布または温度を計測して、特定の場所の温度やその周辺の温度分布、さらには、イメージとして表示するものである。
上述の多重層薄膜サーモパイルを熱型赤外線センサ素子や赤外線イメージセンサとして用いた場合に、周囲が1気圧のガスにそれらの受光部7や受光部アレー70が晒されると、周囲ガスへの熱伝導のために感度が小さくなる。このために、受光部7や受光部アレー70を真空中に閉じ込めて使用するように、真空封止したパッケージにすると良い。
図10は、本発明の熱型センサを備え、放射温度計測、流体のフロー計測や気圧計測に必要となる少なくとも増幅回路および演算回路を備えた熱計測モジュールを説明するためのブロック図である。
ここでは、本発明の熱型センサと増幅回路および演算回路を搭載すると共に、薄膜ヒータ9を一定電力制御や薄膜ヒータの温度を一定に制御する制御回路をも搭載した場合の熱計測モジュールの構成ブロック図である。ガスフローセンサや液体のフローセンサ、更には、上述のような熱型赤外線センサとして多重層の高感度サーモパルを用いたイメージセンサや放射温度計用の熱計測モジュールが提供できる。
本発明の熱型センサや熱計測モジュールは、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうることは言うまでもない。
本発明の熱型センサは、上述のように、基板1から熱分離するために予め所定の形状の空洞10を設けておき、これを塞ぐようにして耐熱性フイルム2を張り付けてダイアフラムを有する空洞10を形成し、その空洞10のダイアフラムとなる感温部5の領域に薄膜温度センサ3や薄膜ヒータ9を形成してある熱伝導型センサである。薄膜温度センサ3として測温抵抗体や熱電対などが利用できると共に、これらを薄膜ヒータ9としても兼用にできることから、基板1として必ずしも半導体基板である必要がなく、耐熱性がありフォトリソグラフィ工程に耐える材料であれば、ほぼ任意に選択できることや製造工程が極めて少なくできることなどから、極めて製造コストが下がり、気体や液体のフローセンサ、気圧センサや熱型赤外線センサとして極めて安価で高性能の熱型センサが提供できる。
1 基板
2 耐熱性フイルム
3、30 薄膜温度センサ
5 感温部
6 熱電対
7 受光部
9 薄膜ヒータ
10、10a、10b 空洞
11 貫通孔
12 層薄膜
13 層サーモパイル
14 合成サーモパイル
15 多重層薄膜
16 熱電導体A
17 熱電導体B
18 測定点
19 基準点
20 配線
21、21a,21b 電極パッド
22、22a,22b 電極パッド
23、23a,23b 電極パッド
24 上下層薄膜導通部
25 赤外線吸収膜
34 絶対温度センサ
35 絶対温度センサ用電極パッド
36a、36b 基板用電極パッド
51 シリコン酸化膜
70 受光部アレー
110 集積回路
121 垂直走査回路
122 水平走査回路
140 合成サーモパイルアレー
220、220a,220b 電極パッド
300 ソルダーペースト
2 耐熱性フイルム
3、30 薄膜温度センサ
5 感温部
6 熱電対
7 受光部
9 薄膜ヒータ
10、10a、10b 空洞
11 貫通孔
12 層薄膜
13 層サーモパイル
14 合成サーモパイル
15 多重層薄膜
16 熱電導体A
17 熱電導体B
18 測定点
19 基準点
20 配線
21、21a,21b 電極パッド
22、22a,22b 電極パッド
23、23a,23b 電極パッド
24 上下層薄膜導通部
25 赤外線吸収膜
34 絶対温度センサ
35 絶対温度センサ用電極パッド
36a、36b 基板用電極パッド
51 シリコン酸化膜
70 受光部アレー
110 集積回路
121 垂直走査回路
122 水平走査回路
140 合成サーモパイルアレー
220、220a,220b 電極パッド
300 ソルダーペースト
Claims (9)
- 基板(1)から空洞(10)により熱分離させる電気絶縁性の分離薄膜に、薄膜温度センサ(3)を形成した熱型センサにおいて、基板(1)に形成されている所定の形状の空洞(10)を覆うように分離薄膜としての耐熱性フイルム(2)を張り付けてあること、該耐熱性フイルム(2)の上で、かつ、空洞(10)の上に対応する感温部(5)に薄膜温度センサ(3)が形成されていること、該薄膜温度センサ(3)の電極パッドも平坦で途切れがない耐熱性フイルム(2)上に形成されていること、を特徴とする熱型センサ。
- 耐熱性フイルム(2)として、200℃以上の耐熱性がある材料を使用した請求項1記載の熱型センサ。
- 耐熱性フイルム(2)として、感光性材料を使用した請求項1から2のいずれかに記載の熱型センサ。
- 薄膜温度センサ(3)として、熱電対(サーモパイルを含む)(6)とした請求項1から3のいずれかに記載の熱型センサ。
- 熱電対(6)を多重層の各層に形成し、各層の一層の熱電対(6)よりも高出力になるように各層の熱電対(6)を電気的に接続した請求項4記載の熱型センサ。
- 薄膜温度センサ(3)として、測温抵抗体とした請求項1から3のいずれかに記載の熱型センサ。
- 耐熱性フイルム(2)に薄膜ヒータ(9)を設けた請求項1から6のいずれかに記載の熱型センサ。
- 空洞(10)として、同一の基板(1)に少なくとも2個の空洞(10a)と空洞(10b)とを形成してあり、一方の空洞(10a)上の感温部(5)の耐熱性フイルム(2)に薄膜ヒータ(9)と薄膜温度センサ(3)とを形成し、空洞(10a)に近接して配置された他方の空洞(10b)上の感温部(5)の耐熱性フイルム(2)には、少なくともと1個の薄膜温度センサ(30)が配置されている請求項1から7のいずれかに記載の熱型センサ。
- 請求項1から8のいずれかに記載の熱型センサを備え、放射温度計測、流体のフロー計測や気圧計測に必要となる少なくとも増幅回路および演算回路を備えたことを特徴とする熱計測モジュール。
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CN115493177A (zh) * | 2022-11-15 | 2022-12-20 | 北京深态环境科技有限公司 | 分布式热能控制系统、方法、装置以及电子设备 |
US11686695B2 (en) | 2018-01-05 | 2023-06-27 | Hahn-Schickard-Gesellschaft für angewandte Forschung e.V. | Evaluation arrangement for a thermal gas sensor, methods and computer programs |
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-
2013
- 2013-09-25 JP JP2013199075A patent/JP2015064305A/ja active Pending
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