JP2014048138A - 感光性ドライフイルムレジストを用いた多重層薄膜サーモパイルとこれを用いた放射温度計およびその多重層薄膜サーモパイルの製造方法 - Google Patents

感光性ドライフイルムレジストを用いた多重層薄膜サーモパイルとこれを用いた放射温度計およびその多重層薄膜サーモパイルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基板に形成した空洞に各層サーモパイルを有する多重層薄膜が、所定の形状、厚み、寸法が容易に形成できること、貫通孔が層薄膜の所定の箇所に容易に形成できること、貫通孔を介して上下の層サーモパイル同士および基板と容易に導通できることで、画一的で安価な高感度の多重層薄膜サーモパイルと高感度な放射温度計およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板に形成した空洞に、感光性ドライフイルムレジストを貼り付け、ダイアフラムを形成して、その上に多重層薄膜を構成する電気絶縁性の層薄膜を、フォトレジスト膜を主体として形成し、貫通孔を通して、上下間の層薄膜サーモパイル同士を直列接続させて、合成サーモパイルを構成し、多重層薄膜サーモパイルを作る。これを用いた放射温度計と、空洞を犠牲層などで充填しないで、感光性ドライフイルムレジストを貼り付けて作成する製造方法を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、温度センサであるサーモパイルの高感度化するために温度感応部を多重層薄膜とした多重層薄膜サーモパイルに関し、多重層薄膜の受光部の寸法や形状を決定づける基板に形成した空洞を、感光性ドライフイルムレジストで塞いで、その上に形成した多重層薄膜サーモパイルとこれを用いた放射温度計およびその多重層薄膜サーモパイルの製造方法に関するものである。
サーモパイルは、複数の熱電対を直列に接続して同一の温度差ΔTに対して、センサ出力である熱起電力が大きくなるように構成した温度センサであり、また温度差のみを検出する温度差センサである。
温度センサには、サーミスタや白金抵抗体、ダイオードなどの絶対温度センサと、熱電対やサーモパイルとしての温度差センサがある。温度差センサは、温度差しか検出しないので、ある点の基準温度に対して他の点の温度差のみを厳密に検出できるゼロ位法が適用できるから高精度の温度センサとなり(特許文献1)、このために耳式体温計などの高精度赤外線温度センサでは、ほとんどサーモパイルが使用されている(特許文献2)所以である。
従来、無機材料で形成した多重層サーモパイルが提案されていた(特許文献3)。しかしながら、ダイアフラムとしての受光部がシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などでは、多重層化にCVD膜などでの形成のために、高価なサーモパルになり、微細なサーモパイルのパターンを形成するための平坦化技術が困難であり、更にクラックや歪が生じやすいなどの問題があった。
更に、シリコン酸化膜などの無機材料の物質を多重層サーモパイルの各層薄膜を絶縁層薄膜として選ぶと、この各層薄膜を形成する工程、フォトレジスト膜を形成する工程、更にフォトレジスト膜を露光してパターン化する工程、フォトレジスト膜をマスクとして各層薄膜をエッチング除去する工程、フォトレジスト膜を除去する工程が必要になり、工程数が極めて多くなり、更にこれらを繰り返して多重層薄膜を構成すると、その多重化分だけその工程が増えて、結局、高価な多重層薄膜サーモパイルになってしまい、各層薄膜の絶縁層薄膜として、フォトレジスト膜を用いた方が良いということで、本出願人は、各層薄膜の絶縁層薄膜を、フォトレジスト膜とすることを提案した(特願2011- 44604)。
従来、熱型赤外線センサにサーモパイルを用いた時の受光部での温接点を形成する薄膜は、空洞上にダイアフラムなどの形で形成して基板から熱分離する必要がある。この空洞の形成方法には、本出願人が提案したように、空洞を形成したのちに犠牲層で充填して、その上に多重層薄膜を形成し、その後、犠牲層を除去する方法(特願2011- 44604)、もしくは、従来からの方法で(特許文献3)、基板の裏面などから既に形成してある多重層薄膜に影響を与えないように、ほぼ最終工程に形成していた。例えば、基板がシリコン単結晶であると、空洞を作るためのシリコンの異方性エッチング液(エッチャント)は、強アルカリ性であり、有機物や多くの金属などを溶かしてしまうために、基板から熱分離する薄膜として、このエッチャントに耐性のある物質を選択しなければならないこと、基板から熱分離する薄膜には、やはり、このエッチャントに耐性のある物質しか残せないという、製造上、大きな制約があった。
空洞は、熱型赤外線センサの受光部の基板からの熱分離のために設けられるが、その寸法が、熱型赤外線センサの感度、熱応答などの重要な特性を決定するので、その寸法は、大量生産では、画一的になることが重要である。基板に設けられた空洞の上に、多重層サーモパイルを形成するに当たり、空洞を犠牲層で埋めることなく、多重層サーモパイルを形成する方法が模索されていた。このとき、基板に形成してある集積回路などと、多重層サーモパイルとが容易に電気的に接続できることも重要である。
WO2002/075262(特願2002−573629) 特開2004−31684 特開平2−165025
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、基板に形成した空洞を犠牲層で充填する必要がない状態で、基板から熱分離する多重層薄膜とこれを構成する層薄膜が、所定の形状、厚み、寸法が容易に形成できること、多重層薄膜のサーモパイルの電極が基板に貫通孔を通して所定の箇所に容易に形成できること、貫通孔を介して上下の層サーモパイル同士を容易に導通できることで、画一的で安価な高感度の多重層薄膜サーモパイルとその製造方法およびこれを用いた高感度な放射温度計を提供する。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる多重層薄膜サーモパイルは、基板から空洞により熱分離されている多重層薄膜がそれぞれの電気絶縁性の層薄膜から構成されていること、該層薄膜にそれぞれ層サーモパイルが形成されていること、これらの上下の層薄膜に形成された層サーモパイル同士は、層薄膜に形成された貫通孔を通して直列接続されて、少なくとも1つの合成サーモパイルを構成する多重層薄膜サーモパイルにおいて、前記基板に形成されている前記空洞を覆うように感光性ドライフイルムレジストが張り付けられ、その上に前記多重層薄膜が形成されている構造になっていることを特徴とするものである。
基板中に形成した空洞により、この基板から熱分離した多重層薄膜のそれぞれの層薄膜に形成されているサーモパイルを、本発明では、層サーモパイルと呼ぶことにしており、これらの層サーモパイルを電気的に直列接続したサーモパイルを合成サーモパイルと呼ぶことにしている。また、多重層薄膜サーモパイルは、この合成サーモパイルを含み、マウントされて温度センサ素子として提供できるもの、および集積回路なども搭載して電気信号を取り出せるようにして提供する装置を含むものである。
層サーモパイルを構成する熱電対には、冷接点と温接点を有するが、例えば、赤外線を受光する赤外線センサに使用した場合、一般には、熱容量が大きい基板上に形成した接点を冷接点にし、基板から熱分離した薄膜上に形成した接点は、基板温度より高い温度から放射される赤外線を受光した場合に温接点となる。しかし、基板温度より低い温度の物体からの赤外線を受光した場合は、逆に受光部の薄膜からの放射が多くなり、この受光部の薄膜は、冷えるので、基板上に形成した接点を温接点となり、受光部の薄膜に形成した接点の方が冷接点になる。基板は、受光部となる薄膜に比べて熱容量が大きいので、これをヒートシンクとして利用し、基板の温度をサーモパイルの基準温度とする。
同一面積の温度感応部に、一重層内で熱電対数を増やすと急激に内部抵抗が増加するが、多重層薄膜に形成した合成サーモパイルを構成すると、一重層薄膜に形成したサーモパイルに比べ、その内部抵抗も多重層分だけ大きくなるだけであり、熱電対数を多重層分だけ多くすることができるので、同一の温度差を計測する場合には、ほぼその分だけ大きなサーモパイルからの出力電圧が得られる。従って、多重層薄膜のサーモパイルにより高感度のサーモパイルが提供できることになる。
本発明の請求項2に係わる多重層薄膜サーモパイルは、多重層薄膜を構成する各層薄膜の主体がフォトレジスト膜であり、貫通孔は該フォトレジスト膜自体の露光・現像に基づくパターン化により作成した場合である。
多重層薄膜の主体をフォトレジスト膜で形成することにより、写真の原理を利用するから設計通りの形状、厚みおよび寸法の多重層薄膜が高精度で容易に形成できる。また、貫通孔を、層薄膜となるフォトレジスト膜自体の所定の箇所に、露光・現像によるパターン化により精度良く容易に形成できるので、この層薄膜に形成した貫通孔を通して上下の層サーモパイル同士を容易に導通することができる。サーモパイルの熱電材料のパターン化ばかりで無く、空洞も、更に基板からセンサチップを切り出す場合もフォトリソグラフィでパターン化できるので、画一的な寸法やセンサ特性が得られる。一般に、フォトレジストの薄膜は、電気絶縁性であると共に、有機材料であるから熱伝導率も小さく、このフォトレジストの層薄膜を多重化して、多重層薄膜を形成してあり、それぞれの層薄膜に形成してある層サーモパイルが貫通孔を介して直列接続されて合成サーモパイルを形成している。
フォトレジスト膜を主体とする層薄膜に形成した貫通孔を通して上下の各層サーモパイル同士を電気的に導通させて直列接続させる。このようなときに、層薄膜に形成する貫通孔の位置を、その下部層の層薄膜に形成してある貫通孔の位置とは、ずらして形成して互いに電気的の接触しないような配置にした方が良い。このような観点から上下の層サーモパイルのパターン形状において、貫通孔同士の位置が異なるようにすると共に、各層サーモパイルが全体として直列接続されて、合成サーモパイルが形成されるような層サーモパイルのパターンを設計することが大切である。
各層サーモパイルを構成する熱電対の接続方法として、これらの熱電対を直列や並列、またはこれらを組み合わせた接続にすることもできるが、同一の温度差ΔTの下で、2端子と成る合成サーモパイルの熱起電力を大きくするためには、すべての熱電対を単に直列接続する方が良い。
本発明の請求項3に係わる多重層薄膜サーモパイルは、基板をシリコン単結晶とした場合である。
基板としてのシリコン単結晶は、その結晶面を使用して異方性エッチングにより、安価に、極めて精度の良い寸法の空洞を容易に形成することができること、ダイオードやトランジスタなどの電子部品や集積回路(IC)を基板上に形成できること、容易に絶縁膜が形成でき、耐熱性や耐久性に富んだ材料であり、多重層薄膜サーモパイルの基板として好適である。
本発明の請求項4に係わる多重層薄膜サーモパイルは、合成サーモパイルを複数個アレー状に前記基板に配列させて構成した場合である。
同一の基板に複数個の合成サーモパイルをアレー状に形成することにより、例えば、2個の合成サーモパイルをそれぞれ独立させて動作させると、一方を対象物体の温度検出用とし、他方を特定の温度を検出するようにして参照用として用いることもできる。また、沢山の合成サーモパイルを二次元アレー状に配列させて、それぞれをピクセルとしたイメージセンサとして動作させることもできる。例えば、これを耳式体温計の赤外線センサとして用いた場合は、外耳の低い温度に対して、鼓膜温度は高く、この鼓膜温度を測定したい場合に、温度分布の中で最も高い温度を用いて体温とすることができる。このように、耳にセンサを挿入したときに、その挿入角度などによる体温計測誤差を小さくさせることができる。もちろん、気体や液体の流れを基板に形成したヒータと組み合わせて、そのヒータの上流側と下流側に配置して作動検出するなど、多くの用途がある。
基板から熱分離している多重層薄膜に形成された合成サーモパイルは、極めて高感度であり、この合成サーモパイルと薄膜ヒータを一緒に多重層薄膜に形成することで、熱伝導型センサが提供できる。熱伝導型センサは、薄膜ヒータで薄膜を加熱して、その薄膜に接している気体、液体などの流体の熱伝導率の変化を検出するもので、フローセンサ、気圧センサ(真空センサも含む)、水素センサや湿度センサを含むガスセンサ、薄膜ヒータを温度走査させて物質のエンタルピ変化を検出するような超小型の熱分析計などとしても使用することができる。薄膜ヒータとして、金属などの薄膜抵抗体でも良いし、薄膜熱電対をヒータとして利用することもできる。また、薄膜ヒータ(マイクロヒータ)の加熱温度は、10℃程度の温度上昇で済むことが多いので、多重層薄膜は、フォトレジスト膜で良く、耐熱性のポリイミド系のフォトレジストならば更に好適である。また、熱伝導型センサとしての作用は、必ずしも薄膜ヒータで加熱中に、周囲環境の流体の熱伝導率変化に基づく多重層薄膜の温度変化を計測して各種物理量を計測するばかりでなく、むしろ、薄膜ヒータでの加熱を停止した直後からの冷却過程における周囲環境の流体の熱伝導率変化を計測した方が、加熱時のノイズからの開放や流体の種類の判定などの観点から望ましい場合もある。
本発明の請求項5に係わる多重層薄膜サーモパイルは、基板に絶対温度センサを形成し、これを前記基板の温度計測用センサとした場合である。
サーモパイルは、温度差センサであるので、絶対温度を示す絶対温度センサが必要な場合が多い。特に、多重層薄膜サーモパイルの冷接点などの一方の接点を熱容量が大きく、熱伝導率が大きい基板に形成した方がよい。特に、放射温度計に用いる場合は、サーモパイルの基準温度が必要であり、そのためには、絶対温度センサが必要である。絶対温度センサとして、白金抵抗体などの感温抵抗体薄膜、サーミスタ、ダイオードやトランジスタなどが好適であり、基板がシリコン単結晶であれば、ダイオードやトランジスタは、基板に直に形成することができるし、感温抵抗体薄膜やサーミスタは、基板上に形成されたシリコン酸化膜上に形成することもできる。また、サーモパイルを構成する熱電材料で抵抗温度係数が大きい方を抵抗温度センサとして使用するともできる。なお、本発明の表現では、多重層薄膜サーモパイルの一方の接点(例えば、冷接点)を基板に形成するとしているが、この場合、多重層薄膜サーモパイルの他方の接点(例えば、温接点)を基板から熱分離している多重層薄膜内に形成している場合を指す。従って、サーモパイルの性質上、基板から熱分離している多重層薄膜が基板温度よりも低い場合は、この領域に形成された接点が冷接点となり、基板に形成された接点が温接点ということになる。
本発明の請求項6に係わる多重層薄膜サーモパイルは、半導体の基板を用い、該基板に増幅器を含む集積回路を形成した場合である。
シリコン単結晶基板などの半導体を基板として用い、ここに空洞を形成すると、空洞部を除いた領域に増幅回路や演算回路、更には、駆動用の種々の回路などを同一基板に形成することができる。また、このIC技術により、システムを同一基板に形成して、コンパクトな放射温度計、イメージセンサ、フローセンサの装置などを提供することできる。
本発明の請求項7に係わる多重層薄膜サーモパイルは、合成サーモパイルの一方の接点を、赤外線の受光部に形成して、熱型赤外線センサとして実施した場合である。
本発明では、合成サーモパイルの一方の接点(例えば、温接点)を温度感応部としての赤外線受光部の薄膜に形成し、多重層化することにより三次元配列で熱電対アレーのサーモパイル(合成サーモパイル)が製作できることになり、同一の面積の赤外線受光部で、熱電対総数の割には、内部抵抗が極めて小さな多重層薄膜サーモパイルの赤外線センサ素子が実現できる。また、多重層薄膜を構成する各層薄膜がフォトレジスト膜を使用しているので、高精度で微細な貫通孔の形成が可能になる。赤外線の受光部である温度感応部は、基板から熱分離した領域の多重層薄膜となる。また、赤外線吸収膜として、金黒などの特別の吸収膜を受光部に形成しても良いが、多重層膜が所望の赤外線波長域に吸収帯を有する場合は、この多重層膜を利用して、特に金黒などの赤外線吸収膜を形成する必要はない。
本発明の請求項8に係わる放射温度計は、請求項7記載の多重層薄膜サーモパイルを用いて、物体からの赤外線を受光して生じた多重層薄膜サーモパイルからの出力信号に基づいて物体の温度や温度分布を表示できるようにしたことを特徴とするものである。
本発明の多重層薄膜サーモパイルを用い、これを放射温度計に応用した場合である。被計測対象物体の温度を計測したり、イメージセンサとして温度分布やその画像として可視化することもできる。また、耳式体温計などの鼓膜温度計測により体温を表示させることができる。また、高感度になるがゆえに、非分散型赤外分光計(非分散型赤外線ガス分析装置)として利用することができる。赤外線光源とこの本発明の多重層薄膜サーモパイルを用い、炭酸ガスなどの特定ガスの赤外線吸収を利用したガスセンサへの応用が期待できるものである。
放射温度計として、本発明の多重層薄膜サーモパイルを利用するためには、対象となる赤外線の波長領域に吸収帯を有する赤外線吸収膜を形成する必要がある。もちろん、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜も、例えば、赤外線センサ素子を耳式体温計に適用するには、人間の体温である37℃付近の赤外線放射波長である8−14マイクロメートル(μm)付近に吸収帯を有するので、上述の多重層薄膜自体をこれらの窒化シリコン膜や酸化シリコン膜で形成しておくことも良い。しかし、その厚みの問題もあり、別に赤外線吸収膜を形成した方が良い場合も多い。
赤外線吸収膜として、よく用いられるものに、金黒があるが、多孔質クロムやニッケル薄膜なども用いられている。赤外線吸収膜は、赤外線を受光して、これを熱に変えて、受光部のサーモパイルの接点がある領域部分の薄膜の温度を上昇または下降させることが目的である。各層薄膜に形成した層サーモパイルの熱電対数には限界があり、受光部の薄膜の中央付近に、層サーモパイルを構成する熱電対アレーの接点を形成したいが、どうしても、各接点の面積と熱電対数との関係から薄膜中央からずらした領域に熱電対アレーの各接点を形成せざるを得ない。一般に、赤外線吸収膜は、受光部となる薄膜の全面に形成してあり、この薄膜の中央部が最も赤外線受光で高温になる。この中央部付近を含んだ形で、各層薄膜のうち基板から熱分離した薄膜の領域に形成した層サーモパイルの熱電対アレーの接点まで、中央部の高温の熱を伝導する熱伝導薄膜を延在形成させることで、高感度の赤外線センサ素子が達成できる。なお、赤外線吸収膜は、多重層薄膜に形成すれば良く、各層薄膜ごとに形成する必要はない。
本発明の放射温度計では、多重層薄膜サーモパイルを用いて、物体からの赤外線を温度感応部である受光部で吸収して熱に変化して、その温度変化を多重層薄膜サーモパイルの出力電気信号に基づいて物体の温度や温度分布を表示する。被計測対象物体の温度を計測したり、イメージセンサとして温度分布やその画像として可視化することもできる。また、耳式体温計などの鼓膜温度計測により体温を表示させたり、高感度になるがゆえに、炭酸ガスなどの特定ガスの赤外線吸収を利用したガスセンサへの応用も期待できる。多重層薄膜サーモパイルのセンサチップにシリコン単結晶基板を用いて、ここに集積回路を形成するとコンパクトな本発明の放射温度計が提供できる。
本発明の請求項9に係わる多重層薄膜サーモパイルの製造方法は、多重層薄膜サーモパイルの製造方法において、基板に空洞を形成する空洞形成工程、空洞を残したままで該空洞を塞ぐように基板を覆う感光性ドライフイルムレジストが張り付ける感光性ドライフイルムレジスト張り付け工程、この基板に張り付けられた感光性ドライフイルムレジストを露光しパターン化するパターン化工程、層サーモパイルを形成する層サーモパイル形成工程、電気絶縁性の各層薄膜をフォトレジスト膜としてフォトレジスト膜を塗布して各層サーモパイル形成工程する一連の工程を所定の層数だけ繰り返し、多重層サーモパイルである合成サーモパイルを形成する合成サーモパイル作成工程を含むことを特徴とするものである。基板にシリコンウエーハなどを用いて、多数の合成サーモパイルを作成した時には、それぞれの合成サーモパイルに素子分離する工程やマウントする工程も、一般には追加されるものである。
シリコン単結晶などの基板に予め異方性エッチングなどで空洞形成して(空洞形成工程)、この空洞を覆うように、感光性ドライフイルムレジストを貼り付け(感光性ドライフイルムレジスト張り付け工程)、所定の寸法や位置のフォトリソグラフィ技術によりパターン化する(パターン化工程)。このとき、空洞上には、この感光性ドライフイルムレジストから成るダイアフラムが形成される。なお、空洞が、感光性ドライフイルムレジストのダイアフラムにより密封されるときには、空洞内の圧力調整のために、パターン化工程で、ダイアフラムにピンホールやスリットを形成しておくことも良い。この感光性ドライフイルムレジストは、耐熱性に優れた方が良いので、ポリイミド系が望ましい。シリコン単結晶などの基板に、多重層薄膜サーモパイルからの電気信号を増幅・信号処理などの集積回路を予め製作している場合は、感光性ドライフイルムレジストを通しての貫通孔が形成されて多重層薄膜サーモパイルと集積回路とが導通されるように、パターン化しておくと良い。
その後、感光性ドライフイルムレジストに直接、もしくは、フォトレジスト膜などを介して、第1層目の層サーモパイルを形成する(層サーモパイル形成工程)。層サーモパイルを構成する熱電対は、例えば、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とをそれぞれ真空蒸着とリフトオフ法とによりパターン形成すると良い。次に、電気絶縁性の層薄膜としてのフォトレジスト塗布工程・層薄膜の領域を決定し貫通孔を形成するためのパターン化工程・層サーモパイル形成工程に進みこれらの工程を繰り返して、層サーモパイルを多重化して合成サーモパイルを形成する(合成サーモパイル作成工程)。もちろん、これらの工程の中では、上下の層サーモパイル同士が層薄膜に形成された貫通孔を通して電気的に直列接続されて、少なくとも1個の合成サーモパイルが形成されて、その出力端子が、基板の領域に形成されるようにパターン化されている。その後、出力用の電極パッドからのワイヤボンディングやパッケージングなどで、多重層薄膜サーモパイルを製作することになる。電極パッドは、基板に形成した方が、ワイヤボンディング等が楽である。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、基板に形成した空洞に、犠牲層などでの空洞の穴埋めなしに感光性ドライフイルムレジストの貼り付けにより直接ダイアフラムが形成できる。この上に直接、多重層の合成サーモパイルが形成できること、感光性ドライフイルムレジストであるので、基板との導通のための導通孔やピンホール等の形成、多重層薄膜サーモパイル素子の分離のパターン形成がフォトリソグラフィで容易に形成できることが利点となる。また、感光性ドライフイルムレジスト上に形成する多重層としての電気絶縁層である各層薄膜の主体がフォトレジスト膜である場合は、貫通孔は、このフォトレジスト膜自体の露光と現像に基づくパターン化により微細で精度が良く、しかも容易に形成できること、また、この貫通孔を通して層サーモパイル同士を容易に直列接続できること、更に、露光・現像によりパターン化できるフォトレジスト膜による多重層薄膜の形成のため工程数が少なくて済むという利点がある。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、シリコン単結晶などの結晶性基板を用いることができるので、結晶方位面を利用して高精度の寸法の空洞が容易に形成できる。従って、この空洞の形状で決まる多重層薄膜の基板から熱分離している領域の寸法が高精度で決定されるので、熱応答など高精度で画一的なバラツキが極めて少ない多重層薄膜サーモパイルが提供できるという利点がある。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、基板に単結晶シリコンを用いることができるので、成熟した集積回路(IC)技術を利用できる。多重層薄膜サーモパイルの半導体基板に増幅器や演算回路、制御用回路などの集積回路、必要に応じてシステムを形成できるので、高感度でコンパクトな多重層薄膜サーモパイルやこれを用いた放射温度計が達成できるという利点がある。
サーモパイルでは、シリコン基板に高価なSOI基板を用いることが多かったが、本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、単に安価なシリコン単結晶基板を用いることができることから安価な多重層薄膜サーモパイルが提供できるという利点がある。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは熱容量の大きく熱伝導率の良い同一のシリコン基板に、合成サーモパイルの各層サーモパイルの一方の接点(冷接点もしくは温接点)を形成して基準温度にすることができるので、温度差センサであるサーモパイルの各温度感応部に対する基準温度が同一となり、高精度の温度センシングが可能となる。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、合成サーモパイルの他に、合成サーモパイルと同一の多重層薄膜、または、近接配置した異なる多重層薄膜に、少なくとも1個の薄膜ヒータ(マイクロヒータ)を形成することができるので、この構成を熱伝導型センサとして利用して、流体のフローや不純物濃度、気圧や熱分析など各種の熱に関する物理量を高感度、高精度に計測できるという利点がある。
本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、同一の基板に複数個の温度感応部を形成して、それぞれの合成サーモパイルの出力同士を差動増幅したり、アレー状に形成して、温度分布を計測したりすることができる。このことから最も高い温度や低い温度を抽出することもできるので、高感度の耳式体温計に応用し、誤差が少なく鼓膜温度を計測することができる。
本発明の多重層薄膜サーモパイルは、熱起電力が大きいので、これを直流電源として使用することもできる。
本発明の多重層薄膜サーモパイルは、高感度の赤外線センサになるので、コンパクトで高感度、かつ安価な放射温度計が提供できる。
本発明の多重層薄膜サーモパイルの製造方法は、シリコンなどの基板に、予め所定の位置や大きさの空洞を形成して、その上に10マイクロメートル程度の薄い有機物の感光性ドライフイルムレジストを、空洞を充填するような犠牲層なしに張り付けて、ダイアフラムが形成できるので、クラックや歪に強いダイアフラムが形成できる。そして、その感光性を利用して導通孔を作り、基板と多重層薄膜サーモパイルとの導通が容易に達成できるという利点がある。
本発明の多重層薄膜サーモパイルの概念を説明するための一実施例を示す平面概略図で、熱型赤外線センサ素子として実施した場合である。(実施例1) 本発明の多重層薄膜サーモパイルの図1のX-Xにおける横断面概略図である。(実施例1) 本発明の図1と図2に示す多重層薄膜サーモパイルを形成する初期の工程で、空洞を有する基板に感光性ドライフイルムレジストを貼り付け、第1層サーモパイルを形成し、更に絶縁性の層薄膜としてスピンコートしたフォトレジスト膜を塗布した時の横断面概略図である。(実施例1) 本発明の多重層薄膜サーモパイルを用いた放射温度計であり、これをイメージセンサに適用した場合で、その一実施例を示す平面概略図である。多重層薄膜サーモパイルのアレーとして、同一の基板1に合成サーモパイルアレー140を形成した場合である。(実施例2) 本発明の多重層薄膜サーモパイルの製造方法を説明するための特徴的な工程を示すブロック図である。(実施例3)
以下、本発明の多重層薄膜サーモパイル等の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の多重層薄膜サーモパイルの概念を説明するための一実施例を示す平面概略図で、熱型赤外線センサ素子として実施した場合である。ここでは、多重層薄膜サーモパイルの合成サーモパイルであるが、図面が煩雑になるので、最上層部の層サーモパイルのみを表示している。図2は、本発明の多重層薄膜サーモパイルにおける図1のX-Xにおける横断面概略図である。本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、必要に応じて多重層薄膜サーモパイルの電気信号を増幅したり、信号処理をしたりするための集積回路110やpn接合ダイオードなどの絶対温度センサ34を搭載した単結晶シリコン(Si)の基板1を用いることができるので、本実施例は、集積回路110とうを搭載している例である。所定の寸法の空洞10を既知技術である異方性エッチング技術で基板1の裏面から形成して、その空洞10を感光性ドライフイルムレジストで塞ぐように張り付けて、その空洞10にダイアフラムが形成されるようにしている。このダイアフラム部は赤外線の受光部7となり、温度感応部5として作用する。そして、感光性ドライフイルムレジストは、電気絶縁性のフォトレジスト膜の一種であるからその特徴を生かして、貫通孔11の形成や感光性ドライフイルムレジストを所定の形状に残すことができる。なお、絶対温度センサ34は、基準となる基板1の絶対温度を知るために設けてある。
感光性ドライフイルムレジストの上に形成する多重層薄膜15は、基板1に形成された空洞10を有しているために、熱的に基板1から分離された構造になっている。この多重層薄膜15を構成する電気絶縁性の各層薄膜12として、この実施例では、フォトレジスト膜を主体として、その上に層サーモパイル13が形成されてあり、上下の層サーモパイル13の熱起電力が大きくなるように、感光性材料であるフォトレジスト膜の特徴を生かしてそれ自体に、露光・現像してパターン化形成した貫通孔11を利用し、上下層薄膜導通部24を介して直列接続されて、全体として合成サーモパイル14が形成されている。合成サーモパイル14の出力は、電極23Aと電極23Bから外部に熱起電力の基づく信号として取り出すことができるようにしている。本実施例では、電極23Aと電極23Bは、基板1に形成してある集積回路に直結された場合である。
多重層薄膜15は、フォトレジスト膜からなる各層薄膜12をスピンコートにより容易に形成できる。このフォトレジスト膜は互いに接着力が大きいので、他の接着剤などは、一般に不要である。また、フォトレジスト膜は、感光性材料なので、容易に、しかも高精度に、所望の形状にパターン化できるので、端子となる電極、例えば、電極端子A21や電極端子B22を露出させたり、貫通孔11を各層薄膜12に高精度で形成することもできる。なお、各層サーモパイル13の一方の接点A18(例えば、冷接点)は、熱容量の大きいためにヒートシンクとして作用する基板1の上に位置するようにしてあり、他の接点B19(例えば、温接点)は、基板1から熱分離した多重層薄膜15のうち、受光部7で温度感応部5となるダイアフラム構造の中央付近に形成するようにする。
本発明の多重層薄膜サーモパイルを熱型の赤外線センサ素子として利用する場合は、赤外線の受光部7を形成してあり、そこに各層サーモパイル13がそれぞれ形成されている各層薄膜12を接合した多重層薄膜15が基板1から空洞10を介して熱的に分離した形状にしている。各層サーモパイル13は、直列接続した複数の薄膜の熱電対6から構成されているが、無機や有機の熱電材料からなる熱電対6で形成することができる。一般には、正と負のゼーベック係数を有する半導体や、アンチモン(Sb)とビスマス(Bi)のなどの半金属、さらに金属の薄膜の組み合わせによる薄膜の熱電対6で構成する。
本実施例では記述していないが、受光部7のダイアフラム構造の中央付近が最も高温になるが、この付近を均一な温度にするために金属薄膜や熱電導体などで形成した熱伝導薄膜を中央付近に形成し、その上に温接点である接点B19を配置形成するようにしても良い。
図3は、本発明の図1と図2に示す多重層薄膜サーモパイルを形成する初期の工程で、空洞を有する基板に感光性ドライフイルムレジストを貼り付け、フォトリソグラフィにより所定のパターン化をして、第1層サーモパイルを形成した時の横断面概略図である。ここでは、更に第2層サーモパイルとの絶縁を容易にするために、例えば、耐熱性のあるポリイミドのフォトレジスト膜をスピンコートで形成し、フォトリソグラフィにより第1層サーモパイルと第2層サーモパイルとが電気的に接続されるように貫通孔11をも形成した場合の概略図である。液状のフォトレジストをスピンコートで薄膜状に形成するので、各層サーモパイルの段差を埋めて、平坦化もしやすいという利点がある。このように、フォトレジスト膜をスピンコートで形成し、その上に各層サーモパイルを形成する工程を、所定の多重層分(例えば、10層の層サーモパイル)繰り返して、合成サーモパイルを形成することができる。その結果の横断面概略図を示したのが、図2である。
上述のようにして形成した本発明の多重層薄膜サーモパイルとしての熱型赤外線センサ素子は、所望の赤外線波長領域で透過する、例えば、Si単結晶フィルタなどの窓材やフィルタを用い、さらに、金属やプラスチックのパッケージにマウントして、外部に電気的に取り出すような公知の端子を取り付けて、素子として取り扱うことができるようにする。もちろん、電気出力を増幅させるアンプやサーミスタやpn接合ダイオードなどの絶対温度センサ34を基板1に形成するなどして、一体化したモジュールとした多重層薄膜サーモパイルとして取り扱うことができるようにしても良い。
図4は、本発明の多重層薄膜サーモパイルを用いた放射温度計であり、これをイメージセンサに適用した場合で、その一実施例を示す平面概略図である。多重層薄膜サーモパイルのアレーとして、同一の基板1に合成サーモパイルアレー140を形成した場合である。もちろん、2個の合成サーモパイルアレー140でも良い。
合成サーモパイルアレー140のそれぞれの合成サーモパイル14が形成されているそれぞれの多重層薄膜15を基板1から熱分離するための空洞10のアレーは、実施例1で示したように基板1を貫通する形の空洞10のアレーでも良いし、微細な寸法の空洞10では、基板1の中に凹部としての貫通しない状態の空洞10のアレーでも良い。
本実施例では、シリコン単結晶の基板1のイメージセンサとして、赤外線の各受光部7がピクセルとなり、これをX-Y平面上に二次元配列した受光部アレー70があり、垂直走査回路121と水平走査回路122により特定の受光部が選択できるようになっている。そして、これらの回路を用いて、イメージセンサとして水平及び垂直の走査が達成される。そして、それぞれの受光部7に形成してある合成サーモパイル14からの信号出力を同一基板1に設けてある増幅器や演算回路としての集積回路110により処理されて、基板1に設けたイメージセンサ表示のための集積回路110で信号処理して、基板1の外部に設けた表示装置により画像を表示するようにしている。
上述の放射温度計では、ゲルマニウムレンズやフレネルレンズなどのレンズ系を備え、その焦点面に本発明の多重層薄膜サーモパイルの受光部7や合成サーモパイルアレー140を設置して、被温度計測物体からの赤外線を受光して、その温度分布または温度を計測して、特定の場所の温度やその周辺の温度分布、さらには、イメージとして表示するものである。
上述の多重層薄膜サーモパイルを熱型赤外線センサ素子や赤外線イメージセンサとして用いた場合に、周囲が1気圧のガスにそれらの受光部7や受光部アレー70が晒されると、周囲ガスへの熱伝導のために感度が小さくなる。このために、受光部7や受光部アレー70を真空中に閉じ込めて使用するように、真空封止したパッケージにすると良い。
図13は、本発明の多重層薄膜サーモパイルの製造方法を説明するための特徴的な工程を示すブロック図である。
基板に空洞を形成する空洞形成工程、空洞を残したまま、該空洞を塞ぐように基板を覆う感光性ドライフイルムレジストが張り付ける感光性ドライフイルムレジスト張り付け工程、この基板に張り付けられた感光性ドライフイルムレジストを露光しパターン化するパターン化工程、層サーモパイルを形成する層サーモパイル形成工程、電気絶縁性の各層薄膜をフォトレジスト膜としてフォトレジスト膜を塗布して各層サーモパイル形成工程する一連の工程を所定の層数だけ繰り返し、多重層サーモパイルである合成サーモパイルを形成する合成サーモパイル作成工程を含むことを少なくとも必要としている。
上述の実施例では記述しなかったが、本発明の多重層薄膜サーモパイルを同一の空洞上に2分割して設け、それらの中間部の多重層薄膜に薄膜ヒータを形成して、熱伝導型センサを構成してガスフローセンサなどに応用することもできる。
上述の実施例では、基板1として単結晶シリコンを用いた場合を示したが、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウムリン、シリコンカーガイドなどの半導体材料でも、もちろん良い。また、結晶性を利用したり、集積回路などを基板1に形成しない場合であれば、アルミナ基板や石英などのガラス基板などを利用することもできる。
本発明の多重層薄膜サーモパイルは、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうることは言うまでもない。
本発明の多重層薄膜サーモパイルは、上述のように、基板1から熱分離するために予め空洞10を設けておき、これを塞ぐようにして感光性ドライフイルムレジストが張り付けて、その上にフォトレジスト膜を主体とした多重層薄膜15に形成したサーモパイル3を温度感応部5に設けた温度差を検出する温度センサ素子である。空洞10を犠牲層などで充填しないで形成でき、更に感光性ドライフイルムレジストの特性を生かして任意のパターン形状ができるので、合成サーモパイルと基板1との電気的接続も容易である。また、本発明の多重層薄膜サーモパイルでは、多重層薄膜15が複数の重なった層薄膜12を有し、その各層薄膜12には、それぞれ層サーモパイル13が形成されており、上下の層サーモパイル13間をフォトレジスト膜自体に形成した貫通孔11を利用して直列接続させることが容易であるので、高感度で小型かつ安価に製造できるものである。本発明により、温度差のみを検出できるS/Nの高い温度センサ素子として、高感度の熱型赤外線センサやフローセンサなどにも応用できるものである。従って、微小温度差を高精度で、しかも高感度に計測する必要がある赤外線放射温度計やイメージセンサ、特に耳式体温計の温度差センサとしても有望であり、また、微流量の液体や気体のフローセンサやピラニ真空計などの高感度温度差計測に最適である。
1 基板
2 感光性ドライフイルムレジスト
3 サーモパイル
5 温度感応部
6 熱電対
7 受光部
10 空洞
11 貫通孔
12 層薄膜
13 層サーモパイル
14 合成サーモパイル
15 多重層薄膜
16 熱電導体A
17 熱電導体B
18 接点A
19 接点B
20 配線
23、23A,23B 電極
24 上下層薄膜導通部
25 赤外線吸収膜
34 絶対温度センサ
51 シリコン酸化膜
70 受光部アレー
110 集積回路
121 垂直走査回路
122 水平走査回路
140 合成サーモパイルアレー

Claims (9)

  1. 基板から空洞により熱分離されている多重層薄膜がそれぞれの電気絶縁性の層薄膜から構成されていること、該層薄膜にそれぞれ層サーモパイルが形成されていること、これらの上下の層薄膜に形成された層サーモパイル同士は、層薄膜に形成された貫通孔を通して直列接続されて、少なくとも1つの合成サーモパイルを構成する多重層薄膜サーモパイルにおいて、前記基板に形成されている前記空洞を覆うように感光性ドライフイルムレジストが張り付けられ、その上に前記多重層薄膜が形成されている構造になっていることを特徴とする多重層薄膜サーモパイル。
  2. 多重層薄膜を構成する各層薄膜の主体がフォトレジスト膜であり、貫通孔は該フォトレジスト膜自体の露光・現像に基づくパターン化により作成した請求項1記載の多重層薄膜サーモパイル。
  3. 前記基板をシリコン単結晶とした請求項1から2のいずれかに記載の多重層薄膜サーモパイル。
  4. 合成サーモパイルを複数個アレー状に前記基板に配列させて構成した請求項1から3のいずれかに記載の多重層薄膜サーモパイル。
  5. 基板に絶対温度センサを形成し、これを前記基板の温度計測用センサとした請求項1から4のいずれかに記載の多重層薄膜サーモパイル。
  6. 半導体の基板を用い、該基板に増幅器を含む集積回路を形成した請求項1から5のいずれかに記載の多重層薄膜サーモパイル。
  7. 合成サーモパイルの一方の接点を、赤外線の受光部に形成して、熱型赤外線センサとして実施した請求項1から6のいずれかに記載の多重層薄膜サーモパイル。
  8. 請求項7記載の多重層薄膜サーモパイルを用いて、物体からの赤外線を受光して生じた多重層薄膜サーモパイルからの出力信号に基づいて物体の温度や温度分布を表示できるようにしたことを特徴とする放射温度計。
  9. 多重層薄膜サーモパイルの製造方法において、基板に空洞を形成する空洞形成工程、空洞を残したまま、該空洞を塞ぐように基板を覆う感光性ドライフイルムレジストが張り付ける感光性ドライフイルムレジスト張り付け工程、この基板に張り付けられた感光性ドライフイルムレジストを露光しパターン化するパターン化工程、層サーモパイルを形成する層サーモパイル形成工程、電気絶縁性の各層薄膜をフォトレジスト膜としてフォトレジスト膜を塗布して各層サーモパイル形成工程する一連の工程を所定の層数だけ繰り返し、多重層サーモパイルである合成サーモパイルを形成する合成サーモパイル作成工程を含むことを特徴とする多重層薄膜サーモパイルの製造方法。
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