JP2015063517A - 創傷治癒剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 滲出液を吸収し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができ、細胞親和性が高く、生分解性に優れた創傷治癒剤を提供する。
【解決手段】 GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)を含む創傷治癒剤であって、
円二色性スペクトル法により求められる(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、(A)の全アミノ酸数に対する全ての(X)中のアミノ酸数と全ての(X’)のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であり、かさ密度が1〜30mg/cm3であり、水分含有率が0〜20重量%である創傷治癒剤。
アミノ酸配列(X):3種の特定の配列からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):(X)中の特定数のアミノ酸がリシン及び又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
【選択図】なし

Description

本発明は、創傷治癒剤に関する。
熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創、褥瘡性皮膚潰瘍及び糖尿病性皮膚潰瘍等の創傷を治癒するためには、創傷部を適度な湿潤環境に保ち、細胞増殖を促す環境を作り出す必要がある(非特許文献1)。そのために患部に適応される創傷被覆材として、従来、ガーゼ及び脱脂綿等が用いられている。これらは、滲出液の吸収が早い反面、細菌に感染しやすく、創面が乾燥してしまうと取り外す際に痛みや出血等を伴うという問題がある。また、創面を乾燥させないために、創傷被覆材と軟膏等を併用することも行われているが、滲出液の吸収が不充分となり、創面が過度に湿った状態になってしまう問題がある。
このように、滲出液のコントロールが創傷治癒にとって非常に重要な因子である。また、滲出液に含まれる種々の成長・増殖因子(bFGF及びTGF−β等)を創部に留まらせ、治癒を早めることができるため、滲出液を創傷部に留まらせ、かつ適度な湿潤環境を作り出すような創傷治癒剤が求められている。
そこで、創傷面の滲出液を吸収してゲル化するポリビニルアルコール重合体からなる創傷治癒剤が知られている。(例えば特許文献1)しかしながら、創傷面をゲル化したポリビニルアルコール重合体が覆うことで湿潤環境は維持できるが、肉芽形成や上皮化形成に必要な線維芽細胞等との細胞親和性に乏しく、期待できる効果は得られていない。また、ポリビニルアルコール重合体の生体内での分解性はコラーゲン等の天然物と比較して低く、物理的に除去する必要が生じる場合がある。
古田勝経著、「褥瘡外用療法のヒミツ−事例で学ぶ極意−」、南山堂、2006年、p25
特開2000−262607号公報
本発明は、滲出液を吸収し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができ、細胞親和性が高く、生分解性に優れた創傷治癒剤を提供することを目的とする。
本発明は、GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)を含む創傷治癒剤であって、円二色性スペクトル法により求められる前記タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全ての前記アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数と全ての前記アミノ酸配列(X’)のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であり、創傷治癒剤のかさ密度が1〜30mg/cm3であり、創傷治癒剤中の水分含有率が0〜20重量%である創傷治癒剤;GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)であって、円二色性スペクトル法により求められる前記タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であるタンパク質(A)を含有する水溶液を凍結乾燥する工程を有する創傷治癒剤の製造方法である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):前記アミノ酸配列(X)中の1個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列(X)中の2個のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
本発明の創傷治癒剤は、滲出液を吸収し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができ、細胞親和性が高く、生分解性に優れている。
本発明の創傷治癒剤は、GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)を含む創傷治癒剤であって、円二色性スペクトル法により求められる前記タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全ての前記アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数と全ての前記アミノ酸配列(X’)のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であり、創傷治癒剤のかさ密度が1〜30mg/cm3であり、創傷治癒剤中の水分含有率が0〜20重量%である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):前記アミノ酸配列(X)中の1個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列(X)中の2個のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
本発明において、タンパク質(A)は、天然物からの抽出、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって得られる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。天然物からの抽出、有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、タンパク質(A)を得られるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明において、タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造の合計の割合及びタンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数と全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計の割合が上記範囲であることで、滲出液を吸収してゲル化し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせ、適度な湿潤環境を保つことができる。
本発明におけるタンパク質(A)は、円二色性スペクトル法により求められるタンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であるタンパク質である。タンパク質の配列が同じでも、タンパク質の作製方法、タンパク質の精製方法、タンパク質を溶解させる溶媒のpH及び溶媒の極性等により、タンパク質中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合は異なる。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、通常60〜85%であり、好ましくは65〜80%、さらに好ましくは70〜75%である。
上記割合は、タンパク質(A)をリフォールディングすることによって増加させることができる。また、変性剤や熱等で変性させることによって低下させることができる。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合は、下記測定法によって求める。
<タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合の測定方法>
タンパク質を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、タンパク質の水溶液を作製する。作製したタンパク質の水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光株式会社製、「J−820」)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)にてβターン構造の割合とランダムコイル構造の割合とを算出し、これらの合計をβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合とする。
本発明においてタンパク質(A)は、下記アミノ酸配列(X)を少なくとも1個及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を少なくとも1個有するものである。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)中の1個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列又はアミノ酸配列(X)中の2個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
なお、タンパク質(A)は、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)をそれぞれ複数個有していてもよく、複数個ある場合のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アミノ酸配列(X)とアミノ酸配列(X’)とを共に有していてもよい。
アミノ酸配列(X)としては、細胞親和性及び創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、VPGVG配列(2)及び/又はGVGVP配列(3)が好ましい。
アミノ酸配列(X’)として、具体的には、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)、GKGRP配列(9)及びGRGRP配列(10)等が挙げられる。
アミノ酸配列(X’)は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)及びGRGRP配列(10)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(7)及び/又はGKGKP配列(8)である。
タンパク質(A)は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(Y’):ポリペプチド鎖(Y)中のの全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたポリペプチド鎖。
ポリペプチド鎖(Y)としては、具体的には、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列である。なお、b〜dは、それぞれ、アミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である。
タンパク質(A)1分子中に、ポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、ポリペプチド鎖(Y)は同一でも異なっていても良く、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列からなる群から選ばれる1種を有してもよく、2種以上を有してもいい。
また、タンパク質(A)中にポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、アミノ酸配列(X)の連続する個数は、ポリペプチド鎖(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、アミノ配列(X)の連続する個数b〜dが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、b〜dが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよい。
ポリペプチド鎖(Y)としては、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、(VPGVG)b配列及び/又は(GVGVP)c配列が好ましい。
ポリペプチド鎖(Y)は、アミノ酸配列(X)が2〜200個連続した(上記b〜dが2〜200)ポリペプチド鎖であるが、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、アミノ酸配列(X)が連続する個数は2〜100個(上記b〜dが2〜100)が好ましく、さらに好ましくは2〜50個(上記b〜dが2〜50)、特に好ましくは2〜40個(b〜dが2〜40個)である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)は、ポリペプチド鎖(Y)中の全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がリシン(K)又はアルギニン(R)で置換されたポリペプチド鎖であり、具体的には、アミノ酸配列(X)が連続したポリペプチド鎖(Y)において、アミノ酸配列(X)の一部又は全部がアミノ酸配列(X’)に置き換わったポリペプチド鎖が含まれる。
ポリペプチド鎖(Y’)において、ポリペプチド鎖(Y)中の全アミノ酸数に対するリシン(K)及びアルギニン(R)で置換されたアミノ酸数の合計数の割合は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、0.5〜10%が好ましく、さらに好ましくは1〜5%である。
ポリペプチド鎖(Y’)であるかどうかは、タンパク質(A)の配列中の全てのリシン(K)及びアルギニン(R)を、他のアミノ酸[グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、プロリン(P)又はヒスチジン(H)]に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(Y)となるかによって判断する。
タンパク質(A)中のポリペプチド鎖(Y)とポリペプチド鎖(Y’)との合計個数は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜80個であり、特に好ましくは1〜60個である。
タンパク質(A)中に、アミノ酸配列(X)の種類及び/又は連続する個数が異なるポリペプチド鎖(Y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、ポリペプチド鎖(Y)の個数はその合計である。ポリペプチド鎖(Y’)についても同様である。
本発明におけるタンパク質(A)は、タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であるものであるが、細胞親和性の観点から、52.5〜67.5%が好ましく、さらに好ましくは55〜65%である。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸配列の合計数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合を算出する。
タンパク質(A)中の全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合(%)=[{アミノ酸配列(X)の数}×{アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数}+{アミノ酸配列(X’)の数}×{アミノ酸(X’)中のアミノ酸数}]/{タンパク質(A)中の全アミノ酸の数}×100
なお、タンパク質(A)が、複数種類のアミノ酸配列(X)を有している場合には、以下のようにして上記式中の「{アミノ酸配列(X)の数}×{アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数}」を求める。
まず、各種類のアミノ酸配列(X)について、「{アミノ酸配列(X)の数}×{アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数}」を求める。その全種類についての合計値を、上記式中の「{アミノ酸配列(X)の数}×{アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数}」とする。
タンパク質(A)が、複数種類のアミノ酸配列(X)に対応する複数種類のアミノ酸配列(X’)を有する場合も同様にして、上記式中の「{アミノ酸配列(X’)の数}×{アミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数}」を求める。
タンパク質(A)において、タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合[{タンパク質(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、細胞親和性の観点から、5〜50%が好ましく、さらに好ましくは10〜47.5%であり、特に好ましくは20〜45%である。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求める。
<タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法の2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合を算出する。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合(%)=[{GAGAGS配列(1)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸の数}×100
タンパク質(A)はGAGAGS配列(1)を有するが、タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合を適度にする観点、細胞親和性の観点及び創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(1)が連続する個数は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜50個であり、特に好ましくは2〜10個である。
タンパク質(A)が、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)、GAGAGS配列(1)及びポリペプチド鎖(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列を合計2個以上有する場合は、これらの間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。介在アミノ酸配列(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)ではないペプチド配列である。介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸の数は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個である。介在アミノ酸配列(Z)として、具体的には、VAAGY配列(11)、GAAGY配列(12)及びLGP配列等が挙げられる。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全ての介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸数の割合[Σ{(介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸の数)×(介在アミノ酸配列(Z)の数)}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、0〜25%が好ましく、さらに好ましくは0〜22.5%であり、特に好ましくは0〜15%である。
タンパク質(A)は、生体内での分解性の観点から、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)及び介在アミノ酸配列(Z)以外にも、両末端に末端アミノ酸配列(T)を有していてもよい。タンパク質(A)の両末端の構造が、ポリペプチド鎖(Y)に末端アミノ酸配列(T)が結合した構造であることが好ましい。末端アミノ酸配列(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)ではないペプチド配列である。末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸の数は、生体内での分解性の観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜50個、特に好ましくは1〜40個である。末端アミノ酸配列(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(13)等が挙げられる。
タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する末端アミノ酸配列(T)のアミノ酸数の割合は、生体内での分解性の観点から、0〜25%が好ましく、さらに好ましくは0〜22.5%であり、特に好ましくは0〜15%である。
タンパク質(A)は、生物工学的手法により細菌を用いて製造することがある。このような場合、発現させたタンパク質(A)の精製又は検出を容易にするために、タンパク質(A)は末端アミノ酸配列(T)の他に、N又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるタンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
タンパク質(A)において、タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対する全ての介在アミノ酸配列(Z)、全ての末端アミノ酸配列(T)及び精製タグのアミノ酸数の合計数の割合は、生体内での分解性の観点から、0〜25%が好ましく、さらに好ましくは0〜22.5%であり、特に好ましくは0〜15%である。
タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)並びにGAGAGS配列(1)及び/又はポリペプチド鎖(S)を含む場合、創傷面を適度な湿潤環境を保つ観点から、ポリペプチド鎖(Y)又はポリペプチド鎖(Y’)とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(S)とが交互に化学結合していることが好ましい。
GAGAGS配列(1)の数と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の数との比[GAGAGS配列(1):{アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)}]は、タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合を適度にする観点から、1:2〜1:6が好ましく、さらに好ましくは1:2〜1:5である。
タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量は、生体内での分解性の観点から、15〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは30〜150kDaであり、特に好ましくは70〜120kDaである。
好ましいタンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(A1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(3)であるタンパク質
(A11)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)中のアミノ酸がリシン(K)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
(A11−1)GVGVP配列(3)が8個連続した(GVGVP)8配列(17)のポリペプチド鎖(Y11)の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)(Y’11)と、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A11−1−1)GAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(5)と(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)4配列(5)を12個及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)2配列(14)が化学結合した分子質量が約80kDaの配列(23)のタンパク質(SELP8K)
(ii)(GAGAGS)2配列(14)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約82kDaの配列(15)のタンパク質(SELP0K)
(A11−2)GVGVP配列(3)が12個連続したポリペプチド鎖の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された(GVGVP)6GKGVP(GVGVP)5配列(26)(Y’12)と、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A11−2−1)GAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(5)と(GVGVP)6GKGVP(GVGVP)5配列(26)とを有するタンパク質
(i)(GAGAGS)4配列(5)を12個及び(GVGVP)6GKGVP(GVGVP)5配列(26)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)2配列(14)が化学結合した分子質量が約105kDaの配列(24)のタンパク質
(A12)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)8配列(16)及び(GVGVP)40配列(27)をそれぞれ5個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約110kDaの配列(18)のタンパク質(SELP6.1)
(A2)アミノ酸配列(X)がVPGVG配列(2)であるタンパク質
(A21)VPGVG配列(2)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y2)とGAGAGS配列(1)を有するタンパク質
(i)GAGAGS配列(1)、(VPGVG)4配列(20)及び(VPGVG)8配列(21)をそれぞれ40個有し、これらが配列(20)、配列(1)、配列(21)の順に結合したブロックが40個化学結合してなる構造を有する分子質量約200kDaの配列(22)のタンパク質(ELP1.1)
本発明の創傷治癒剤は、上記のようなアミノ酸配列からなるタンパク質(A)を含むものであることから、ポリビニルアルコール等に比べて生分解性に優れている。
本発明の創傷治癒剤は、タンパク質(A)以外に無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
無機塩としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。なお、本明細書においてリン酸(塩)は無機塩に含まない。
創傷治癒剤中の無機塩の含有量は、細胞親和性の観点から、創傷治癒剤の重量を基準として0〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜1重量%、特に好ましくは0〜0.5重量%である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸塩としては、リン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
創傷治癒剤中のリン酸(塩)の含有量は、細胞親和性の観点から、創傷治癒剤の重量を基準として0〜2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5重量%、特に好ましくは0.001〜0.05重量%である。
本発明の創傷治癒剤は、糖及び/又は抗菌剤を含んでいてもよい。
糖としては、公知の糖を用いることができ、例えば、単糖(トリオース、テトロース、ペプトース、ヘキソース及びヘプトース等)、オリゴ糖及び多糖(デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン及びキサンタンガム等)等が挙げられる。
抗菌剤としては、公知の抗菌剤を用いることができ、例えば、銀イオン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、ペニシリン及びストレプトマイシン等が挙げられる。
創傷治癒剤中の糖の含有量は、創傷治癒剤の重量を基準として、創傷治癒の観点から、0.1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
抗菌剤の含有量は、創傷治癒剤の重量を基準として、創傷治癒の観点から、0.001〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。
本発明の創傷治癒剤は、多孔質形態を有する。
本発明の創傷治癒剤のかさ密度は、通常1〜30mg/cm3であり、創傷治癒剤のかさ密度を本範囲にすることで、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができる。滲出液吸収の観点から、好ましくは5〜30mg/cm3である。
尚、本発明の創傷治癒剤のかさ密度は、後述の方法により測定することができる。
本発明の創傷治癒剤は、創傷治癒剤中の水分含有率が0〜20重量%であり、滲出液吸収の観点から、0.5〜10重量%が好ましい。
創傷治癒剤中の水分含有率は、下記測定方法によって求めることができる。
<創傷治癒剤中の水分含有率の測定方法>
創傷治癒剤0.1gの水分含有率を微量水分測定装置(平沼産業社製、「AQ−2200」)にて測定する。
本発明の創傷治癒剤の製造方法は、上記タンパク質(A)を含有するタンパク質水溶液を凍結乾燥する工程を有する創傷治癒剤の製造方法である。
本発明の創傷治癒剤のかさ密度は、タンパク質水溶液中のタンパク質(A)の含有量を調整することで所望の値にすることができる。
タンパク質水溶液中のタンパク質(A)の含有量は、細胞親和性の観点から、タンパク質水溶液の重量を基準として、0.1〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3重量%である。
タンパク質水溶液中には、糖及び/又は抗菌剤を含んでもよい。
タンパク質水溶液中の糖の含有量は、滲出液吸収の観点から、タンパク質水溶液の重量を基準として、0.01〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。
タンパク質水溶液中の抗菌剤の含有量は、創傷治癒の観点から、タンパク質水溶液の重量を基準として、0.00001〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜0.1重量%である。
本発明における凍結乾燥としては、公知の凍結乾燥方法を用いることができる。
凍結乾燥には、一次乾燥と二次乾燥がある。一次乾燥とは、試料表面から氷を昇華させるものである。二次乾燥とは、分子間に結合している水を除くものである。
凍結乾燥において、一次乾燥の温度は、タンパク質の立体構造維持の観点から、0℃以下が好ましく、さらに好ましくは−10℃以下である。また、二次乾燥の温度は、タンパク質の立体構造維持の観点から、10〜30℃が好ましく、さらに好ましくは、10〜20℃である。
凍結乾燥時間は、タンパク質の立体構造維持の観点から、一次乾燥と二次乾燥との合計で、12〜480時間が好ましく、さらに好ましくは18〜420時間である。
本発明の創傷治癒剤を患部に適用する方法としては、従来用いられている脱脂綿と同様の方法で用いることができ、例えば、患部の壊死組織を除去した後、患部に合わせた形に加工した創傷治癒剤を乗せて、ポリウレタンフィルム等で覆う等が挙げられる。
本発明の創傷治癒剤は、滲出液を吸収し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせ、菌に感染しにくく、生分解性に優れているため、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創、褥瘡性皮膚潰瘍及び糖尿病性皮膚潰瘍等の創傷を治癒する創傷治癒剤として用いることができる。
以下に実施例として本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<製造例1>
[SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製]
○SELP8Kタンパク質(A1)の生産
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、タンパク質(A)の1種である配列(23)のSELP8Kタンパク質(A1)を生産する方法を示す。
○SELP8Kタンパク質(A1)の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)培養した。培養液が濁度OD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、40mlを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間培養した。培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
○SELP8Kタンパク質(A1)の精製
集菌した大腸菌を用い、下記1:菌体溶解、2:遠心分離による不溶性細片の除去、3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陰イオン交換クロマトグラフィー、6:限外濾過、7:凍結乾燥により大腸菌バイオマスからタンパク質を精製した。このようにして、分子質量が約80kDaの配列(23)のタンパク質(A1)の精製物であるSELP8Kタンパク質(A1−1)を得た。
1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
2:遠心分離による不溶性細片の除去
さらに菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
3:硫安沈殿
回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。溶解した液に対して、同様に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
4:限外濾過
3で得た溶液を分子質量30,000カットの限外濾過装置(ホロファーバー:GEヘルスケア製)に供した。3で得た溶液に対して、10倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のタンパク質を得た。
5:陰イオン交換クロマトグラフィー
限外濾過後のタンパク質を10mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解して20g/Lとし、陰イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPrime(アマシャム社製)に供した。溶出液として500mM 10mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
6:限外濾過
5で得た溶液を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のタンパク質を得た。
7:凍結乾燥
タンパク質を脱イオン水に溶解して5g/Lとし、水位が15mm以下となるようにステンレス製のバットに入れる。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス社製)に入れて、−40℃、16時間かけて凍結させる。凍結後、真空度が8Pa以下、−20℃で、90時間かけて1次乾燥、真空度が8Pa以下、20℃で、24時間かけて2次乾燥させ、精製したSELP8Kタンパク質(A1−1)を得た。
○SELP8Kタンパク質(A1−1)の同定
得られたSELP8Kタンパク質(A1−1)を下記の手順で同定した。
ラビット抗SELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対するラビット抗6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロット法により分析した。ウエスタンブロット法の手順は下記の通りとした。見かけ分子質量80kDaの位置に、各抗体に抗体反応性を示すバンドが見られた。
また、アミノ酸分析システム(Prominence島津製作所製)を用いたアミノ酸組成分析より得られたSELP8Kタンパク質(A1−1)のアミノ酸の組成比率(実測値)と、合成遺伝子配列から推測されるSELP8Kタンパク質(A1−1)のアミノ酸の組成比率(理論値)を表1に示す。
これらから、SELP8Kタンパク質(A1−1)はGVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y)中のバリン(V)のうち1個がリシン(K)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)のポリペプチド鎖(Y’11)を13個及びGAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(5)のポリペプチド鎖(Y11)を12個有し、これらが交互に化学結合してなる配列(23)のタンパク質であることを確認した。
Figure 2015063517
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ(150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3% ブロモフェノールブルー、及び30% グリセロールを含む)10μLを添加して95℃で5分間加温し、泳動用試料を調製した。この泳動用試料15μLを用いてSDS−PAGEを行った。泳動後のゲルをフッ化ポリビニリデンメンブレンにトランスファー(以下、「メンブレン」と略記)し、これをブロッキングバッファ(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1% Tween20、及び5% スキムミルクを含む)に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS−T(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1% Tween20を含む)で2分間洗浄した。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗SELP8K抗体及び抗His−tag抗体(Rockland社製)をTBS−Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行った。反応後、このメンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti−rabbit IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をTBS−Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行った。反応後、メンブレンをTBS−Tで5分間、4回洗浄した後、ECL−Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(アマシャム社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。肉眼でバンドが確認できない場合、SELP8Kタンパク質(A1−1)が分解吸収され、無くなったと判断した。
○βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定
得られたSELP8Kタンパク質(A1−1)を用いて下記の手順でβターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。
<βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を0.3mg/mlとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、SELP8Kタンパク質(A1−1)水溶液を作製した。作製したSELP8Kタンパク質(A1−1)水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光:J−820)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)を用いて、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を算出した。結果を表2に示す。
<製造例2>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」と「6:限外濾過」との間に、下記「5−2:リフォールディング(大希釈法)」を行う以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1−2)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
5−2:リフォールディング(大希釈法)
陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出画分をタンパク質変性剤である10Mウレア溶液にて、6Mウレア溶液となるように調製し、12時間、4℃で静置した。調製した溶液を透析膜(Viskase Companies,Inc.社製)に投入し、溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。その後、脱イオン水を捨て、新たに溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。この操作を残り3回、計5回の透析を繰り返した後、透析膜中の溶液を回収した。
<製造例3>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」と「6:限外濾過」との間に、下記「5−3:リフォールディング(大希釈法)」を行う以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1−3)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
5−3:リフォールディング(大希釈法)
陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出画分をタンパク質変性剤である10Mウレア溶液にて、6Mウレア溶液となるように調製し、12時間、4℃で静置した。調製した溶液を透析膜(Viskase Companies,Inc.社製)に投入し、溶出画分の10倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。その後、脱イオン水を捨て、新たに溶出画分の3倍容量の脱イオン水にて12時間、透析した。溶出画分の3倍容量の脱イオン水による透析を残り5回繰り返した後、透析膜中の溶液を回収した。
<製造例4>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」に代えて下記「5’:アフィニティクロマトグラフィー」とする以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1−4)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
5’:アフィニティクロマトグラフィー
「4:限外濾過」後のタンパク質を、His−tagを用いたアフィニティクロマトグラフィー(GEヘルスケア社製、Ni Sepharose 6 Fast Flow)にて精製し、溶出画分を回収した。
<比較製造例1>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」に代えて下記「5’’:アフィニティクロマトグラフィー」とする以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1’−1)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
5’’:アフィニティクロマトグラフィー
「4:限外濾過」後のタンパク質を、His−tagを用いたアフィニティクロマトグラフィー(クロンテック社製、TALON(登録商標)Single Step Columns)にて精製し、溶出画分を回収した。
<比較製造例2>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陰イオン交換クロマトグラフィー」を実施せず、上記「5’:アフィニティクロマトグラフィー」行う以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1’−2)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例3>
製造例1の「SELP8Kタンパク質(A1−1)の作製」において、「SELP8Kタンパク質(A1)の精製」の「5:陰イオン交換クロマトグラフィー」を実施しない以外は同様にして、SELP8Kタンパク質(A1’−3)を作製し、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。結果を表2に示す。
<比較製造例4>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「ELP1.2をコードしたプラスミドpPT0102−2」を用いる以外は同様にして、分子質量が約37kDaの配列(25)のELP1.2タンパク質(A’−1)を得た。βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した結果を表2に示す。
<比較製造例5>
製造例1において、「SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345」に変えて、「SLP4.1をコードしたpSY1398−1」を用いる以外は同様にして、分子質量が約93kDaの配列(19)のSLP4.1タンパク質(A’−2)を得た。βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した結果を表2に示す。
Figure 2015063517
<実施例1>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液(NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、pH7.4)に溶解し(1mg/ml)、タンパク質水溶液(1)を得た。タンパク質水溶液(1)を24穴プレート(IWAKI社製)に入れた。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス社製)に入れて、−40℃、16時間かけて凍結させた。凍結後、真空度が8Pa以下、−20℃で、90時間かけて1次乾燥し、真空度が8Pa以下、20℃で、24時間かけて2次乾燥させ、創傷治癒剤(1)を得た。
<実施例2>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(2)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(2)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(2)を得た。
<実施例3>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(10mg/ml)、タンパク質水溶液(3)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(3)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(3)を得た。
<実施例4>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(1mg/ml)、タンパク質水溶液(4)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(4)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(4)を得た。
<実施例5>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(5)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(5)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(5)を得た。
<実施例6>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(10mg/ml)、タンパク質水溶液(6)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(6)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(6)を得た。
<実施例7>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(1mg/ml)、タンパク質水溶液(7)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(7)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(7)を得た。
<実施例8>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(8)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(8)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(8)を得た。
<実施例9>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(10mg/ml)、タンパク質水溶液(9)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(9)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(9)を得た。
<実施例10>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(25mg/ml)、タンパク質水溶液(10)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(10)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(10)を得た。
<実施例11>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(12.5mg/ml)、タンパク質水溶液(11)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(11)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(11)を得た。
<実施例12>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(30mg/ml)、タンパク質水溶液(12)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(12)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(12)を得た。
<実施例13>
SELP8Kタンパク質(A1−2)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(13)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(13)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(13)を得た。
<実施例14>
SELP8Kタンパク質(A1−3)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(14)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(14)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(14)を得た。
<実施例15>
SELP8Kタンパク質(A1−4)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(15)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(15)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(15)を得た。
<比較例1>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(0.01mg/ml)、タンパク質水溶液(1’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(1’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(1’)を得た。
<比較例2>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(150mg/ml)、タンパク質水溶液(2’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(2’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(2’)を得た。
<比較例3>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(3’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(3’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(3’)を得た。
<比較例4>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(4’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(4’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(4’)を得た。
<比較例5>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(50mg/ml)、タンパク質水溶液(5’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(5’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(5’)を得た。
<比較例6>
SELP8Kタンパク質(A1−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(100mg/ml)、タンパク質水溶液(6’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(6’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(6’)を得た。
<比較例7>
SELP8Kタンパク質(A1’−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(7’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(7’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(7’)を得た。
<比較例8>
SELP8Kタンパク質(A1’−2)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(8’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(8’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(8’)を得た。
<比較例9>
SELP8Kタンパク質(A1’−3)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(9’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(9’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(9’)を得た。
<比較例10>
SELP8Kタンパク質(A’−1)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(10’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(10’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(10’)を得た。
<比較例11>
SELP8Kタンパク質(A’−2)を、20mMリン酸緩衝液に溶解し(5mg/ml)、タンパク質水溶液(11’)を得た。
実施例1において、「タンパク質水溶液(1)」に代えて「タンパク質水溶液(11’)」を用いる以外は同様にして、創傷治癒剤(11’)を得た。
<評価1>
○かさ密度の測定
予め重量[(G1)、単位:g]を小数点以下1桁まで測定した50mL容量の遠沈管[アズワン(株)製]に、タンパク質水溶液(1)〜(15)及び(1’)〜(11’)をそれぞれ10ml入れ、実施例1〜12及び比較例1〜9の条件で凍結乾燥させた。
凍結乾燥後の遠沈管の重さ(G2)(単位:g)をそれぞれ小数点以下1桁まで測定した。また、遠沈管中の創傷治癒剤の体積(Vol)(ml)を、遠沈管の目盛りから読み取った。
得られた重量(G1)、(G2)及び体積(V)から、下記式によりかさ密度を算出し、結果を表3に示す。
かさ密度(g/ml)={(G2)−(G1)}/(Vol)
<評価2>
○創傷治癒剤中の水分含有率の測定
創傷治癒剤(1)〜(15)及び(1’)〜(11’)をそれぞれ0.1g用いて、微量水分測定装置(平沼産業社製、「AQ−2200」)にて創傷治癒剤中の水分含有率を測定した。評価結果を表3に示す。
<評価3>
○肉芽組織高及び上皮化長の測定
(健常モルモットを用いた全層欠損層モデルでの治療試験)
健常モルモット♀ std Hartley(日本エスエルシー社製)7週齢を麻酔下で除毛し、消毒したモルモット背部皮膚に脂肪層が完全に露出した創面10mm×10mmの全層皮膚欠損創を作製し、止血、乾燥した後、創傷面に創傷治癒剤(1)〜(15)及び(1’)〜(11’)を各々置き、ポリウレタンフィルムを貼付した。その後、各創傷部の上にガーゼをのせて、ナイロン糸で創傷部周囲と固定した。治療期間5、10日目に検体を擬死させ、創傷部を含む皮膚を採取し、病理標本(HE染色)を作製した。それぞれの創傷治癒剤について、病理標本を11個作製した。
作製した治療期間5日目の病理標本用いて、パニキュラス(筋様膜)からの肉芽組織高をマイクロルーラーを使用して測定した。評価結果は表3に示す。なお、評価結果は、病理標本11個の平均値である。
また、治療期間10日目の病理標本用いて、正常組織から伸長した上皮化長をマイクロルーラーを使用して測定した。評価結果は表3に示す。なお、評価結果は、病理標本11個の平均値である。
<評価4>
○水分保持率の測定
(湿潤環境維持評価)
10mm角の創傷治癒剤(1)〜(15)及び(1’)〜(11’)に100μLの生理食塩水をたらし、37℃、湿度50%の環境下にて5日間静置した。その後、創傷治癒剤中に含まれている水分量[(J)、単位:μL]について、微量水分測定装置を用いて測定した。測定した水分量(J)から、水分保持率(%)を算出した。結果を表3に示す。
水分保持率(%)=創傷治癒剤中に含まれている水分量(J)/100(μL)×100
Figure 2015063517
表3の結果から、本発明の創傷治癒剤(1)〜(15)を用いた場合、肉芽組織高及び上皮化長が大きく、細胞親和性が高く、創傷治癒に優れていることが分かる。また、本発明の創傷治癒剤(1)〜(15)は、水分保持率が12.3〜26.7%と適度であることから、吸収した生理食塩水を蒸散させる割合と、保持する割合とが適度であり、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができることが分かる。
本発明の創傷治癒剤は、滲出液を吸収し、吸収した滲出液を適度に創傷部に留まらせることができ、細胞親和性が高く、生分解性に優れている。したがって、熱傷、採皮創、皮膚剥削創及び外傷性皮膚欠損創等の疾患ないし創傷による患部を治癒する創傷治癒剤として有効である。

Claims (8)

  1. GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)を含む創傷治癒剤であって、
    円二色性スペクトル法により求められる前記タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全ての前記アミノ酸配列(X)中のアミノ酸数と全ての前記アミノ酸配列(X’)のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であり、創傷治癒剤のかさ密度が1〜30mg/cm3であり、創傷治癒剤中の水分含有率が0〜20重量%である創傷治癒剤。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):前記アミノ酸配列(X)中の1個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列(X)中の2個のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
  2. 前記GAGAGS配列(1)の個数と前記アミノ酸配列(X)及び前記アミノ酸配列(X’)の合計個数との比[GAGAGS配列(1):{アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計}]が1:2〜1:6である請求項1に記載の創傷治癒剤。
  3. 前記タンパク質(A)が、前記アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、
    前記タンパク質(A)中の前記ポリペプチド鎖(Y)と前記ポリペプチド鎖(Y’)との合計個数が1〜100個である請求項1又は2に記載の創傷治癒剤。
    ポリペプチド鎖(Y’):前記ポリペプチド鎖(Y)中の全アミノ酸数の0.1〜20%のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたポリペプチド鎖。
  4. 前記タンパク質(A)が、前記GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S)を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の創傷治癒剤。
  5. 前記タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量が15〜200kDaである請求項1〜4のいずれかに記載の創傷治癒剤。
  6. 前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(1)中のアミノ酸数の割合が5〜50%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の創傷治癒剤。
  7. 前記タンパク質(A)が、(GAGAGS)4配列(5)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)を有するタンパク質(A11−1−1)である請求項1〜6のいずれか1項に記載の創傷治癒剤。
  8. GAGAGS配列(1)並びに下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を有するタンパク質(A)であって、円二色性スペクトル法により求められる前記タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合が60〜85%であり、前記タンパク質(A)の全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)中のアミノ酸数及び全てのアミノ酸配列(X’)中のアミノ酸数の合計数の割合が50〜70%であるタンパク質(A)を含有する水溶液を凍結乾燥する工程を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の創傷治癒剤の製造方法。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):前記アミノ酸配列(X)中の1個のアミノ酸がリシン(K)もしくはアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列(X)中の2個のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列。
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