JP2015063064A - インクジェット記録方法、及び、印刷物 - Google Patents
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Abstract
Description
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率よく使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
従来のインクジェット記録方法としては、特許文献1〜3に記載された方法が挙げられる。
<1> (工程a)水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)を有する記録媒体を準備する工程、(工程b)下塗り組成物(II)を下塗り層(1)上に付与し、付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して、半硬化させる工程、(工程c)半硬化された下塗り組成物(II)上に、インク組成物(III)を吐出する工程、及び、(工程d)下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)に活性光線を照射して、全体を硬化させる工程をこの順で含み、下塗り組成物(II)、及び、インク組成物(III)は、それぞれ(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)重合開始剤とを含有することを特徴とする、インクジェット記録方法、
<2> 水性ラテックス組成物(I)が、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、アクリルエステル樹脂よりなる群から選択された樹脂を含有する、<1>に記載のインクジェット記録方法、
<3> 水性ラテックス組成物(I)が、カルボン酸と反応する化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法、
<4> 下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が、成分Aとして2官能(メタ)アクリレート化合物を組成物全体の60質量%以上含有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<5> 工程dが、酸素分圧0.15atm以下にて活性線を照射する工程である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<6> 下塗り組成物(II)、及び、インク組成物(III)が、成分Bとしてアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<7> 工程b及び工程dにおける活性光線が、LEDにより照射される活性光線である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<8> 下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が、成分Aとしてアルキレングリコールジアクリレートを含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<9> インク組成物(III)が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含有する、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<11> 上記記録媒体は、膜厚が10μm以上90μm以下であり、かつ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンよりなる群から選択された成分を少なくとも1つ含有する樹脂フィルムである、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<12> <1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物。
本発明のインクジェット記録方法は、(工程a)水性ラテックス組成物(I)(以下、単に「組成物(I)」ともいう。)により形成された下塗り層(1)を有する記録媒体を準備する工程、(工程b)下塗り組成物(II)(以下、単に「組成物(II)」ともいう。)を下塗り層(1)上に付与し、付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して、半硬化させる工程、(工程c)半硬化された上記下塗り組成物(II)上に、インク組成物(III)(以下、「インク組成物」又は「組成物(III)」ともいう。)を吐出する工程、及び、(工程d)下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)に活性光線を照射して、全体を硬化させる工程をこの順で含み、下塗り組成物(II)、及び、インク組成物(III)は、それぞれ(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)重合開始剤とを含有することを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、パッケージ印刷用に好適であり、食品包装用のパッケージ印刷に特に好適である。
本発明者は鋭意検討することにより、水性ラッテクス組成物(I)により形成された下塗り層(1)の上に画像層を設けることで、密着性が改良されることを見出したが、水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)の上に直接インク組成物(III)により画像を形成すると、十分な基材密着性は得られるものの、にじみが発生するという新たな問題が生じた。
本発明者は、水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)上に、下塗り組成物(II)により半硬化状態の層を形成し、更にその上にインク組成物(III)により画像を形成することにより、基材密着性に優れ、更に、にじみも抑制された画像が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
また、組成物(II)及び組成物(III)が組成物全体の60質量%以上の多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましく、これにより、より臭気が少なく、マイグレーションが抑制された印刷物が得られるものと推定される。
更に、本発明においては、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
以下の説明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)を有する記録媒体を準備する工程を含む。
上記水性ラテックス組成物(I)は、高分子化合物(樹脂)を主成分とする分散質を、水系分散媒(溶媒)に分散させてなる。
本発明における水性ラテックス組成物(I)の好ましい態様については、後述する。
なお、本発明において「透明」とは、可視光線透過率が80%以上を意味するものとし、可視光線透過率が90%以上であることが好ましい。また、透明な被記録媒体は、透明であれば、着色していてもよいが、無色の被記録媒体であることが好ましい。
記録媒体として具体的には、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。
また、透明な記録媒体としては、これら樹脂が2種以上混合したものであってもよいし、また、これら樹脂が2層以上積層したものであってもよい。
ポリエチレンとしては、LDPE(低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ポリプロピレンとしては、CPP(無延伸ポリプロピレン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、KOP(ポリ塩化ビニリデンコートOPP)、AOP(PVAコートOPP)、ポリエチレンテレフタレートとしては、二軸延伸ポリエステル、ナイロンとしては、ON(延伸ナイロン)、KON(延伸ナイロン)、CN(無延伸ナイロン)が好ましく用いられる。
その他、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合フィルム)、PVA(ビニロン),EVOH(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン、サラン)、セロハン(PT、MST、Kセロ)、ZX(ゼクロン(ポリアクリロニトリル、PAN))、PS(ポリスチレン、スチロール)との組み合わせを用いることも好ましい。
パッケージの用途により、最適な素材が選択され、また、多層構造のフィルムとすることで、各素材の特徴が組み合わされたフィルムを作製することができる。
また、パッケージの強度向上、酸素遮断等の目的で、AL(アルミニウム箔)、VMフィルム(アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム)等を多層構造に組み込むことも可能である。
また、近年、樹脂を、平行した2つ以上のスリットから共に押出し、成膜すると同時にラミネートまで行う、共押出しフィルムも好ましく使用される。フィルム状にできないような数μmという薄いものでも最大5〜7層まで積層可能なので、いろいろな性能・用途のフィルムがつくられている。
(工程a1)記録媒体上に水性ラテックス組成物(I)を付与する工程、
(工程a2)付与された水性ラテックス組成物(I)から溶媒を除去し、下塗り層(1)を形成する工程(以下、「溶媒除去工程」、又は、「乾燥工程」ともいう。)
本発明において、上記工程a1及び工程a2を行った後に、一連の工程として、工程b及び工程をcを行うことがより好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、記録媒体上に水性ラテックス組成物(I)を付与する手段として、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができ、塗布装置を用いることが好ましい。
上記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター及び押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、水性ラテックス組成物(I)の記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、又は、グラビアコーターを用いた塗布が好ましい。
水性ラテックス組成物(I)の付与量(単位面積当たりの質量)は、乾燥(溶媒除去)後の質量として、0.05〜5g/m2であることが好ましく、0.06〜3g/m2であることがより好ましい。水性ラテックス組成物(I)の付与量が上記範囲内であると、十分な密着性改良効果が得られる共に、柔軟性に優れた印刷物が得られるので好ましい。
なお、乾燥後とは、塗布層中から水を含む揮発成分(溶媒)を除去した後を意味する。
水性ラテックス組成物(I)から溶媒を除去する方法とは、水性ラテックス組成物(I)が含有する、水を含む溶媒を除去できれば特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
具体的には、自然乾燥、加熱乾燥(IR(赤外線加熱)乾燥、誘導加熱乾燥)、通風乾燥、温風乾燥(熱風乾燥)、真空乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。また、これらの乾燥方法を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、生産性、コストの観点から、加熱乾燥が好ましい。
なお、上述したように、本発明のインクジェット記録方法は、軟包装パッケージに好適であり、軟包装パッケージでは、上述したように、比較的に膜厚の薄い記録媒体を使用することが好ましい。従って、熱による記録媒体の変形、収縮を抑制する観点から、加熱温度は、100℃以下であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましく、35〜75℃であることが更に好ましく、40〜70℃であることが特に好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、(工程b)下塗り組成物(II)を下塗り層(1)上に付与し、付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して半硬化する工程を有する。また、下塗り組成物(II)は、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)重合開始剤を含有する。下塗り組成物(II)については、後述する。
なお、工程bは、(工程b1)下塗り組成物(II)を下塗り層(1)上に付与する工程、及び、(工程b2)付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して半硬化する工程(以下、半硬化工程ともいう。)をこの順で行うものである。以下、工程b1及び工程b2に分けて説明する。
本発明において、下塗り組成物(II)は、水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)上に付与される。
下塗り組成物(II)を付与する手段として、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができ、インクジェットノズルを用いることが好ましい。塗布装置としては、上記工程a1で挙げた塗布装置が例示される。
また、下塗り組成物(II)の付与量(単位面積あたりの質量比)としては、単位面積あたりのインク組成物(III)の最大付与量(1色当たり)を1とした場合に0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内であることがより好ましく、0.1〜3の範囲内であることが特に好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、下塗り層(1)上に付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して半硬化する工程を有する。
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り組成物(II)及び/又は後述するインク組成物(III)(以下、単に「インク」ともいう。)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。下塗り層(1)上に適用された下塗り組成物(II)又は下塗り液組成物(II)上に吐出されたインク組成物(III)が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り組成物(II)及び/又はインク組成物(III)は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。なお、紫外線等の活性光線が照射されていない場合を、未硬化状態とする。
活性光線を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、下塗り層(1)上に付与された下塗り組成物(II)の表面におけるエチレン性不飽和化合物の重合反応を不充分に行う方法である。
上記活性光線としては、紫外線の他、例えば可視光線など並びにα線、γ線、X線、電子線などが使用可能である。これらのうち、活性光線としては、コスト及び安全性の点で、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
下塗り組成物(II)の半硬化に必要なエネルギー量は、組成、特に光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、1〜500mJ/cm2程度であることが好ましい。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性線を放出しうるLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
下塗り液を半硬化するための好適な露光手段としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源が挙げられる。中でも、LED光源が好ましい。本発明のインクジェット記録方法は、軟包装パッケージに好適であり、軟包装パッケージでは、上述したように、比較的膜厚の薄い記録媒体を使用することが好ましい。この場合、UV−LED光源を使用すると、熱による記録媒体の変形、収縮が抑制されるので好ましい。
上記半硬化工程においては、下塗り層(1)と接していない側の下塗り組成物(II)の表面が硬化していない状態であることが好ましい。
特に、上記下塗り組成物(II)の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害されやすい。従って、活性光線の付与条件を制御することにより、下塗り組成物(II)を半硬化させることができる。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光線の照射によって好適に行うことができる。
上記下塗り液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射によって重合を開始するエチレン性不飽和化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
ここで、A(重合後)は、重合反応後のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液の含有するエチレン性不飽和化合物がアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーである場合は、810cm-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、上記未重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、半硬化された上記下塗り組成物(II)上に、インク組成物(III)を吐出する工程(以下、画像形成工程ともいう。)を含む。
半硬化の状態の下塗り組成物(II)上にインク組成物(III)が吐出されることにより、得られる印刷物の画質及び柔軟性に優れる。
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の画像形成工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
インク供給系は、例えば、インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは1,200×1,200dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
例えば、カラー画像を形成する場合は、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を少なくとも使用することが好ましく、ホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を使用することがより好ましい。
また、ライトマゼンタやライトシアン等の淡色インク組成物、オレンジ、グリーン及びバイオレット等の特色インク組成物、クリアインク組成物、メタリックインク組成物等を使用してもよい。
なお、2種以上のインク組成物(III)を付与する場合の半硬化工程は、上記工程b2において述べた半硬化工程と同様であり、使用される露光装置及び露光条件、並びに、好ましい態様も同様である。
また、直後に上記全体硬化工程を行う場合、本発明のインクジェット記録方法は、最後に吐出されたインク組成物(III)を半硬化する工程を含んでいてもよいし、含んでいなくともよいが、コストや簡便性の観点から、含んでいないほうが好ましい。
また、2種以上のインク組成物(III)を吐出する場合、いずれのインク組成物(III)も半硬化された下塗り組成物(II)上、吐出されたインク組成物(III)上、又は、半硬化されたインク組成物(III)上に吐出することが好ましい。すなわち、いずれのインク組成物も、直接接するか、又は、他のインク組成物層を介して、半硬化された下塗り組成物(III)上に吐出されることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、(工程d)下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)に活性光線を照射して、全体を硬化させる工程(全体硬化工程)を含む。上記画像形成工程の後、半硬化された上記下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)の全体を硬化させる全体硬化工程を含む。
上記全体硬化工程は、半硬化された下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)の全体を硬化させる工程であり、半硬化された下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が完全硬化することが好ましい。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性線を放出しうるLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
本発明のインクジェット記録方法は、軟包装パッケージに好適であり、軟包装パッケージでは、上述したように、比較的膜厚の薄い記録媒体を使用することが好ましい。この場合、UV−LED光源を使用すると、熱による記録媒体の変形、収縮が抑制されるので好ましい。
完全硬化に必要なエネルギー量は、組成、特に光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、記録媒体上での照度は、100〜10,000mJ/cm2程度であることが好ましい。
一般的にラジカル重合系のインク組成物は特に空気と接する表面が酸素重合阻害を受けやすく、特に表面の硬化不良が起きやすい。この表面の硬化性劣化により、モノマーが膜中に残留したり、多官能モノマーによる膜の架橋構造形成により、低分子成分を膜中にとどめる性能が不十分となり、マイグレーション、臭気を著しく劣化させる。しかし、酸素濃度の低い環境下で露光することで、上記の酸素重合阻害の程度を低減させ、マイグレーション、臭気が改良されると推定される。
また、選択的に硬化膜表面のみが、酸素重合阻害をうけることで、良好な硬化性が得られる膜内部との硬化性の差が生じ、体積収縮率に分布ができてしまう結果、パッケージ用の薄い支持体がシュリンクを起しやすくなってしまう。これに関しても、酸素濃度の低い環境下で露光することで、膜表面と内部の体積収縮率を均一化させ、シュリンクを改良することができると推定される。
通常、大気(1気圧)下では酸素の分圧は0.21atm(気圧)であるので、酸素の分圧を0.1atm以下に下げるためには、(a)露光時の大気を減圧して0.47気圧以下にするか、(b)空気と酸素以外の気体(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス)を空気に対して53vol%以上混合することにより達成できる。
本発明における貧酸素雰囲気については、特に限定されず上記いずれの方法も用いることができる。
酸素分圧の下限には特に制限はない。真空又は雰囲気を空気以外の気体(例えば窒素)で置換することにより酸素分圧を事実上0にすることができるが、これも好ましい方法である。
不活性ガス置換による酸素濃度は、0.01〜10体積%に制御することが好ましく(なお、このとき、酸素分圧は0.0001〜0.10atmに制御される。)、0.1〜5体積%に制御することがより好ましい。
上記減圧下とは、500hPa(0.05MPa)以下、好ましくは100hPa(0.01MPa)以下の状態を指す。
ラミネート加工により、印刷物からの組成物の成分の溶出、ブロッキング、臭気を抑制でき、特に食品パッケージ用として、好ましく使用できる。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、上記記録媒体上に水性ラテックス組成物(I)を付与する付与手段と、上記記録媒体上に付与された水性ラテックス組成物(I)から溶媒を除去する乾燥手段と、水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)上に下塗り組成物(II)を付与する付与手段と、付与された下塗り組成物(II)を半硬化する半硬化手段と、半硬化された上記下塗り組成物(II)上にインク組成物(III)をインクジェット吐出する吐出手段と、半硬化された上記下塗り液(II)及びインク組成物(III)を全体硬化させる完全硬化手段とを有することが好ましい。
また、本発明のインクジェット記録装置は、所謂シングルパス方式のインクジェット記録装置であることが好ましい。
窒素パージ露光光源ユニット22は、例えば、LED光源が不活性ガスブランケットに囲まれており、不活性ガス配管を介して不活性ガス発生装置に接続しており、不活性ガス発生装置を稼働させると、ブランケット内の空気は不活性ガスに置換される態様が好ましく挙げられる。不活性ガスは、既述の通り、N2などを利用することができる。
図1では、搬送制度を向上させるため、ニップロール28が設けられている。水性ラテックス組成物(I)により下塗り層が形成されていることにより、本発明のインクジェット記録方法では、ニップロールの使用が可能となり、より正確な搬送性が実現され、見当のずれ(着弾位置のずれ)が抑制される。なお、ニップロール28は必須ではなく、ニップロールを有してない画像形成装置を使用してもよい。
本発明のインクジェット記録方法に使用される、水性ラテックス組成物(I)(組成物(I))、下塗り組成物(II)(組成物(II))、及び、インク組成物(III)(インク組成物、又は、組成物(III))について説明する。本発明において、組成物(I)は、水性ラテックス組成物であり、組成物(II)及び組成物(III)は、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)重合開始剤を含有する。
また、本発明において、インク組成物(III)は、活性光線硬化型のインク組成物であり、水性インク組成物や溶剤インク組成物とは異なる。インク組成物(III)は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、インク組成物の全質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
組成物(I)及び組成物(II)は、着色剤を含有しないか、着色剤の含有量が1質量%以下であることが好ましく、着色剤を含有しないか、着色剤の含有量が0.5質量%以下であることがより好ましく、着色剤を含有しないか、着色剤の含有量が0.1質量%以下であることが更に好ましく、着色剤を含有しないことが特に好ましい。
なお、組成物(I)及び組成物(II)の黄変による着色を抑制するために、少量の青色顔料を含有させる等の態様を排除するものではない。
以下、本発明で使用される組成物(I)、組成物(II)及び組成物(III)について、詳細に説明する。
本発明において、水性ラテックス組成物(I)は、高分子化合物(樹脂)を主成分とする分散質を、水系分散媒(溶媒)に分散させてなる。すなわち、水を主たる溶媒とする液層中に、樹脂が固相として乳化し、懸濁したもので、乾燥して成膜できる物を指す。
水系分散媒は、水を50質量%以上含有し、他に、所望により水混和性有機溶媒を添加した混合物を用いることができる。水混和性有機溶剤としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
水と併用する水混和性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノール、t−ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノt−ブチルエーテル)、n−ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノn−ブチルエーテル)が例示され、イソプロピルアルコール、t−ブチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブが好ましい。
なお、上記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
分散媒における有機溶剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
水としては、純水、蒸留水、イオン交換水等を使用することができる。
樹脂成分は、乾燥により被膜を形成可能なものであれば、特に限定されないが、密着性向上の観点から、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、アクリルエステル樹脂よりなる群から選択された樹脂であることが好ましい。上記樹脂であると、基材との相溶性が高いため、密着性改良効果が高いと推定される。
ポリエステル樹脂として瓦応化学工業(株)製の各種プラスコート、東洋紡績(株)製の各種バイロナール(例えば、バイロナールMD−1200、MD−1245、MD−1500)、バイロン(例えば、バイロン200)、大日本インキ化学(株)製ファインテックスESシリーズ、松本油脂製薬(株)製KPシリーズ、高松油脂(株)製ペスレジンAシリーズが例示される。
アクリルエステル樹脂として東亞合成(株)製ジュリマーATシリーズ、ジュリマーETシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製ファインテックス6161、K−96、Voncoat シリーズ、星光化学工業(株)製ハイロスシリーズ(例えば、ハイロスNL−1189、BH−997L)、ダイセル化学工業(株)製セビアンシリーズ、日本ゼオン(株)製Nipolシリーズ、JSR(株)製AEシリーズ、東亞合成(株)製アロンシリーズ、高松油脂(株)製NSシリーズ、日信化学工業(株)製ビニブランシリーズなどが挙げられる(いずれも商品名)。
樹脂の酸価が上記範囲内であると、後述する架橋剤と併用した場合に架橋形成により高い密着性が得られ、また、必要となる架橋剤の量が適当である。
重量平均分子量が上記範囲内であると、ロールにした際、転写しにくくなるので好ましい。
樹脂の含有量が上記範囲内であると、組成物中の分散状態に優れ、また、分散媒の除去が容易であるので好ましい。
架橋剤を含有することにより、得られる下塗り層(1)の硬度が向上し、また、密着性が向上するので好ましい。
架橋剤は、上記樹脂又は基材が表面に有する官能基との反応性を有することが好ましく、例えば、カルボン酸(カルボキシ基)、水酸基等と反応する化合物であることが好ましく、カルボン酸(カルボキシ基)と反応する化合物であることがより好ましい。
カルボン酸と反応する化合物としては、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物が例示される。
また、水酸基と反応する化合物としては、イソシアネート化合物が例示される。
なお、上記架橋剤の分子量は特に限定されず、高分子化合物でもよく、低分子化合物でもよい。
オキサゾリン化合物の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。更に、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(以上、日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
カルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、特開2011−153209号公報に記載の環状構造のカルボジイミド等がある。
カルボジイミド化合物としては、例えばカルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(以上、日清紡績(株)製)等も使用できる。
下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)は、それぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)重合開始剤を含有する。
本発明において、組成物(II)、及び、組成物(III)は、いずれも、(成分A)ラジカル重合性化合物を含有する。
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、公知のエチレン性化合物を用いることができ、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、アクリレート化合物であることがより好ましい。
下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)は、それぞれ多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましく、組成物の全質量に対して60質量%以上含有することがより好ましい。多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が60質量%以上であると、マイグレーション及び臭気の発生が抑制される。
下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)における多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、70〜98質量%であることが更に好ましく、75〜97質量%であることが特に好ましい。
本発明において、下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)は、2官能(メタ)アクリレート化合物を60質量%以上含有することが好ましく、70〜98質量%含有することがより好ましく、75〜97質量%含有することが特に好ましい。
2官能(メタ)アクリレートモノマーは、低粘度であり、また、反応性に優れるので好ましい。
なお、本発明において、モノマーとは、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満であるラジカル重合性化合物を意味する。モノマーは分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が1,000未満であることが好ましく、オリゴマーとは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましい。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、粘度が低く、また、それ自体の臭気が比較的低いため好ましい。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく例示される。
これらの中でも、デカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタアクリレートがより好ましく、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレートが更に好ましい。
また、本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上含有し、かつ、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満の化合物を意味する。粘度が上記範囲内であると、印刷物のマイグレーション及び臭気の抑制と、反応性とを両立できる。
ポリアルキレングリコールジアクリレートとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリプロピレングリコールジアクリレートであることが好ましい。
また、ポリアルキレングリコールジアクリレートにおけるアルキレングリコール単位の繰りかえし数、すなわち、アルキレンオキシ基の繰り返し数は、2以上であり、2〜100であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。
下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)中におけるポリアルキレングリコールジアクリレートの含有量は、組成物の全質量の、1〜50質量%であることが好ましく、2〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。上記態様であると、反応性に優れ、使用する開始剤の量を低減することができる。
組成物(II)及び組成物(III)は、成分Aとして、単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。単官能エチレン性不飽和化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリルアミド化合物、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル化合物、単官能N−ビニル化合物などが挙げられる。
また、エチレン性不飽和化合物としては、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物等も挙げられる。
組成物(II)における成分Aの総含有量は、硬化性の観点から、組成物全体の80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることが好ましく、90〜97質量%であることが更に好ましい。
組成物(III)における成分Aの総含有量は、硬化性の観点から、組成物全体の70〜98質量%であることが好ましく、75〜95質量%であることがより好ましく、80〜93質量%であることが更に好ましい。
本発明において、組成物(II)及び組成物(III)は、(成分B)重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。上記重合開始剤の詳細については、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されているものが例示できる。
本発明における重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上の併用してもよい。
重合開始剤としては、アシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましく挙げられる。中でも、アシルホスフィン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物がより好ましく、アシルホスフィン化合物が更に好ましい。
芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましい。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、公知のものを用いることができるが、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮しうる範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
また、α−アミノケトン化合物としては、公知のものを用いることができ、具体的には例えば、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、市販品としては、IRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)(以上、BASF社製)等が好ましく例示できる。
また、重合開始剤としては、例えば、LAMBSON社製のSPEEDCURE 7040、BASF社製のLUCIRIN TPOが挙げられる。
また、下塗り組成物(II)は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
上記インク組成物(III)は、重合開始剤として、式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、上記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、また、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキル基であることがより好ましく、エチル基又はイソプロピル基であることが更に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が例示され、塩素原子であることが好ましい。
これらの中でも、R1及びR2はそれぞれ独立にエチル基、イソプロピル基又は塩素原子であることが特に好ましい。
式(1)中、jは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。jが2以上の整数の場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、kは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。kが2以上の整数の場合、複数存在するR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、xは2〜4の整数を表し、3又は4であることが好ましく、4であることがより好ましい。
なお、式(1)において、連結基であるX1を除いたチオキサントン構造(式(1)中、[ ]内に表された構造)を複数(x個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R1の置換位置は、特に限定されないが、6位又は7位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
また、R2の置換位置は、特に限定されないが、1位、2位又は3位であることが好ましく、1位であることがより好ましい。
式(1’)中、R11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(1’)中、rはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、rが2以上のとき、複数存在するR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
x’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y1は少なくともx’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、x’個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(x’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(1’)中、A1は下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(1)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
上記の反応は溶媒の存在下で行うことが好ましく、適当な溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示される。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
反応終了後、反応混合物から公知の手段によって単離し、必要に応じて洗浄し、乾燥することによって、生成物を分離することができる。
上記インク組成物(III)は、重合開始剤として、式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(2)中、mは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。mが2以上の整数の場合、複数存在するR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、nは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。nが2以上の整数の場合、複数存在するR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、yは2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
なお、式(2)において、連結基であるX2を除いたベンゾフェノン構造(式(2)中、[ ]内に表された構造)を複数(y個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R3の置換位置は、特に限定されないが、2’位又は3’位であることが好ましく、3’位であることがより好ましい。
また、R4の置換位置は、特に限定されないが、2位、3位又は4位であることが好ましい。
式(2’)中、R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(2’)中、tはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、tが2以上のとき、複数存在するR21はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
y’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y2は少なくともy’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、y’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(y’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(2’)中、A2は下記式(i)〜式(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(2)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
また、式(2)で表される化合物としては、式(2−1)で表される化合物がより好ましい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。
中でも、増感剤としては、チオキサントン類が好ましく、イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明において、インク組成物(III)は、形成された画像部の視認性を向上させるため、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる水性ラテックス組成物(I)及び下塗り組成物(II)は、着色剤を含有してもよいが、上述したように、白色着色剤を含有するか、又は含有しないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物(III)の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
インク組成物(III)中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
また、水性ラテックス組成物(I)又は下塗り組成物(II)が着色剤を含有する場合、組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、水性ラテックス組成物(I)の全固形分量の0.01〜30質量%であることが好ましい。なお、全固形分量とは、水を含む溶剤等の揮発成分を除いた総質量を意味する。また、下塗り組成物(II)の全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
本発明において、インク組成物(III)は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。
また、本発明に用いられる水性ラテックス組成物(I)及び下塗り組成物(II)は、分散剤を含有してもよい。
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
水性ラテックス組成物(I)、下塗り組成物(II)又はインク組成物(III)中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
水性ラテックス組成物(I)、下塗り組成物(II)又はインク組成物(III)には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が含有する界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
これらの中でも、乳化剤としての優れた機能を有することから、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等の、炭素数12以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルを好ましく例示することができる。また、該アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
本発明において、下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)は、必要に応じて、上記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含んでもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、組成物の全質量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物(III)を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。インク組成物(III)は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物(III)の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物(III)の液滴着弾時のインクにじみを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
上記の組成物(I)、組成物(II)及び組成物(III)の粘度は、E型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定される。
なお、組成物(II)又は組成物(III)の25℃における表面張力の測定方法としては、公知の方法を用いることができるが、吊輪法、又は、ウィルヘルミー法で測定することが好ましい。例えば、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定する方法、又は、KSV INSTRUMENTS LTD社製 SIGMA702を用いて測定する方法が好ましく挙げられる。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を示すものとする。
<着色剤>
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SR341:3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート(Sartomer社製)
・CTFA:サイクリックトリメチロールプロパントリアクリレート(SR531、Sartomer社製)
・SR344:ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(Sartomer社製)
・SR9003:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート
・IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、BASF社製、分子量419)
・Speedcure7010(前述した化合物I−B、Lambson社製、分子量1,899)
・ビニルクロロ−アセタート(特表2008−520623号公報の実施例22に記載の方法で調製した。)
・WBR016U(アクリットWBR−016U、ポリエーテル系ウレタンエマルジョン、大成ファインケミカル(株)、固形分濃度:26質量%)
・プラスコートZ−592(水溶性ポリエステル樹脂、互応化学(株)、固形分濃度:25質量%)
・ジュリマーET−410(アクリル系エマルション、東亞合成(株)、固形分濃度:30質量%)
<架橋剤>
・エポクロスK−2020E(オキサゾリン基含有エマルション、(株)日本触媒製、固形分濃度:39質量%)
・カルボジライトV−02−L2(カルボジイミド系水性樹脂用架橋剤、(株)日清紡績製、固形分濃度:40質量%)
・UV−12(FLORSTAB UV12、ニトロソ系重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩、Kromachem社製)
・エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エーテル型非イオン性界面活性剤)、花王(株)製)
・BYK−307(シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK Chemie社製)
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR9003を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
表2に示す割合で各素材をミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて室温(25℃)で5,000回転/分にて20分撹拌混合し、実施例1〜14、比較例1〜4で使用した組成物(I)、組成物(II)及び組成物(III)をそれぞれ調製した。なお、表2〜4における各成分の含有量の単位は、質量部である。また、表中の「−」の記載は、当該成分を含有していないことを意味する。
図1に示すように、ロール搬送系の最上流部にローラー塗布機を配置し、その下流にて60℃の熱風に1分間さらし乾燥させ、更にその下流に組成物(II)用ヘッド(クリア用ヘッド)、LED光源、ブラック用ヘッド、LED光源、シアン用ヘッド、LED光源、マゼンタ用ヘッド、LED光源、W用ヘッド、窒素パージLED露光機を配置した。水性ラテックス組成物(I)は、乾燥後に1.0g/m2となるように、基材に付与した。
インクジェットヘッドとして、東芝テック(株)製CA3ヘッドを各色4つずつ並列に配置し、ヘッドを45℃に加温して、42pLの打滴サイズで描画できるよう、周波数をコントロールした。光源として、ピークは長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technolohy社製)を不活性ガスブランケット内に配置し、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN2ガス発生装置Maxi−Flow30(Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、ブランケット内のN2濃度を表2に記載の範囲になるよう、2〜10L/分の流量でN2をフローさせ、N2濃度を設定した。支持体(基材、被記録媒体)としては、OPP(延伸ポリプロピレン、厚み:25μm、フタムラ化学(株)製、FOR−AQ)、PET(厚み:12μm、フタムラ化学(株)製、FE2001)、ナイロン(厚み:15μm、ユニチカ(株)製、ON)を用いた。
30m/minの速度で走査させ、100%ベタ画像の描画を行い、以下に示す諸性能のテストを行った。
なお、組成物(II)、及び、各組成物(III)(着色インク組成物)が半硬化状態に保てるようにLED光源の光量を調節した。
なお、実施例9、10は、実施例2と同様に組成物(I)、組成物(II)を形成し、組成物(III)については、実施例2の組成物(III)を印画後、実施例5の組成物(III)を印画し、その後実施例6の組成物(III)を印画した。
印刷物表面に水:エタノール=70:30混合液10mLを滴下し、混合溶媒が揮発しないように、印刷物全体をガラス密閉容器に入れて、40℃で10日間放置した。その後、水、エタノール混合溶液中に含有する、フィルムからの全溶出量(オーバーオールマイグレーション量:OML)を算出し、1〜5段階で評価を行った。なお、全容出量の測定は、10日間放置後に、水エタノール混合液を揮発させ、残存成分の質量を測定することにより行った。
5:溶出量が50ppb以下
4:溶出量が50ppbを超え、200ppb以下
3:溶出量が200ppbを超え、1,000ppb以下
2:溶出量が1,000ppbを超え、2,000ppb以下
1:溶出量が2,000ppbを超える
評価が3以上であれば、実用上問題がない。
図2に示すように、PET基材上に1cm×1cmのベタ画像周辺に、1mmの空白を設け、上記空白の周囲に実施例13のイエローインクと実施例1のシアンインクにて緑色のベタ画像(図中の点画部)を印画することで、にじみ程度を目視で観察した。
下記基準をもとに評価を実施した。
上記画像を5枚印画して観察したうち、
3:1枚もにじみが観察されない
2:1又は2枚ににじみが観察される
1:3枚以上ににじみが観察される
評価が2以上であれば、実用上問題がない。
上記インクジェット画像記録方法によって得られたPET基材上の画像(21cm×29.7cm)を、30cm×30cmのジップ付きビニール袋に内包し、24時間放置した。
その後、ジップを解放し、臭気の評価を行った。評価は、10人の平均値を四捨五入し評価値とした。
5:ほぼ無臭である
4:わずかな臭気があるがほとんど気にならない
3:ある程度の臭気があるが、不快なレベルでない
2:強い臭気がある
1:非常に強い臭気がある
評価が3以上であれば、実用上問題がない。
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像について、テープ剥離試験を行った。PET基材のテープ剥離試験を行った。
3:全く剥離しない
2:画像の全面積の剥離が20%以下である
1:画像の全面積の剥離が20%を超える
評価が2以上であれば実用上問題ない。
Claims (12)
- (工程a)水性ラテックス組成物(I)により形成された下塗り層(1)を有する記録媒体を準備する工程、
(工程b)下塗り組成物(II)を下塗り層(1)上に付与し、付与された下塗り組成物(II)に活性光線を照射して、半硬化させる工程、
(工程c)半硬化された下塗り組成物(II)上に、インク組成物(III)を吐出する工程、及び、
(工程d)下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)に活性光線を照射して、全体を硬化させる工程をこの順で含み、
下塗り組成物(II)、及び、インク組成物(III)は、それぞれ(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)重合開始剤とを含有することを特徴とする、
インクジェット記録方法。 - 水性ラテックス組成物(I)が、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、アクリルエステル樹脂よりなる群から選択された樹脂を含有する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 水性ラテックス組成物(I)が、カルボン酸と反応する化合物を含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が、成分Aとして2官能(メタ)アクリレート化合物を組成物全体の60質量%以上含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 工程dが、酸素分圧0.15atm以下にて活性線を照射する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 下塗り組成物(II)、及び、インク組成物(III)が、成分Bとしてアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 工程b及び工程dにおける活性光線が、LEDにより照射される活性光線である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 下塗り組成物(II)及びインク組成物(III)が、成分Aとしてアルキレングリコールジアクリレートを含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- インク組成物(III)が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- パッケージ印刷用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体は、膜厚が10μm以上90μm以下であり、かつ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンよりなる群から選択された成分を少なくとも1つ含有する樹脂フィルムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物。
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