JP2020001189A - インクジェット記録方法、及び、積層印刷物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率よく使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
特許文献1には、高低差が1.5mmを超える凹凸模様を形成する金属系基材を含み、該基材上には樹脂組成物で形成されるインキ受理層が配置された建築板を、長さが1〜8mmであるバーナーの炎口から、バーナーの炎口1cm2当たり30〜200L/分の流速で噴射される燃焼性ガスが燃焼して生じる火炎で表面処理した後、活性光線硬化型インキでインクジェット印刷することを含む、化粧建築板の製造方法が開示されている。
また、本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記インクジェット記録方法により得られた印刷物を用いる積層印刷物の製造方法を提供することである。
<1> アルミニウム箔基材と上記アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層とを有する積層体を準備する工程、上記積層体における第一の下塗り層上に第二の下塗り組成物により第二の下塗り層を形成する工程、上記第二の下塗り層上にインクジェット法によりインク組成物を吐出する工程、並びに、吐出されたインク組成物を、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において、紫外線発光ダイオードにより積算光量400mJ/cm2以上の紫外線照射を行い硬化させる工程を含み、上記第一の下塗り層が、熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含み、上記第二の下塗り組成物が、イソシアネート基を有する化合物、ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含み、上記インク組成物が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び、着色剤を含むインクジェット記録方法。
<2> 上記第一の下塗り層に含まれる上記熱硬化型樹脂が、エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を硬化してなる樹脂を含む<1>に記載のインクジェット記録方法。
<3> 上記第一の下塗り層に含まれる上記熱硬化型樹脂が、エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂を硬化してなる樹脂を含む<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法。
<4> 上記第二の下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、70質量%以上であり、かつ、
上記インク組成物中におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、70質量%以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
<5> 上記第二の下塗り層を形成する工程と上記インク組成物を吐出する工程との間に、上記第二の下塗り層に紫外線照射し半硬化させる工程を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
<6> 上記硬化させる工程において、上記インク組成物を吐出する工程と上記紫外線照射する工程との間に、上記インク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
<7> 上記インク組成物を吐出する工程において、バーコードを含む画像を形成する<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
<8> 上記第一の下塗り層が、着色剤を更に含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
<9> <1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物と樹脂基材とを熱により貼り合わせる工程を含む積層印刷物の製造方法。
<10> 上記貼り合わせる工程において、160℃以上の熱を貼り合わせ部分に付与する<9>に記載の積層印刷物の製造方法。
また、本発明の他の一実施形態によれば、上記インクジェット記録方法により得られた印刷物を用いる積層印刷物の製造方法を提供することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、樹脂成分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー(株)製HLC−8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー(株)製TSK gel Multipore HXL−M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示に係るインクジェット記録方法は、アルミニウム箔基材と上記アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層とを有する積層体を準備する工程、上記積層体における第一の下塗り層上に第二の下塗り組成物により第二の下塗り層を形成する工程、上記第二の下塗り層上にインクジェット法によりインク組成物を吐出する工程、並びに、吐出されたインク組成物を、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において、紫外線発光ダイオードにより積算光量400mJ/cm2以上の紫外線照射を行い硬化させる工程を含み、上記第一の下塗り層が、熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含み、上記第二の下塗り組成物が、イソシアネート基を有する化合物、ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含み、上記インク組成物が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び、着色剤を含む。
また、本開示に係るインクジェット記録方法は、ブリスター包装印刷に好適であり、ブリスター包装におけるバーコードを含む印刷に特に好適である。
詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推定している。
ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含む下塗り組成物により形成された下塗り層だけでは、アルミニウム箔基材との密着性が得られない。
熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含む第一の下塗り層を設け、更に、インク組成物を、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において、紫外線発光ダイオードにより積算光量400mJ/cm2以上の紫外線照射を行い硬化させることにより、第一の下塗り層と硬化したインク組成物との密着性は向上するが不足し、また、インク組成物のにじみが起きてしまう。そのため、イソシアネート基を有する化合物を、ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含む第二の下塗り組成物に添加し、第二の下塗り層を設けることにより、第二の下塗り層を介して、インク膜と第一の下塗り層との密着性が向上しインク組成物のにじみも発生せず、更に、上記酸素濃度及び積算光量でインク組成物を硬化させることにより、インク膜の密着性が向上するため、得られる印刷物の耐熱密着性に優れると推定している。
本開示に係るインクジェット記録方法は、アルミニウム箔基材と上記アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層とを有する積層体を準備する工程(単に、「積層体を準備する工程」ともいう。)を含み、上記第一の下塗り層が、熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含む。
本開示に係るインクジェット記録方法に用いられるアルミニウム箔基材としては、アルミニウム含有量が50質量%以上、好ましくは90質量%以上である箔状の基材であればよく、公知のアルミニウム箔基材を使用することができる。
上記アルミニウム箔基材の材質は、アルミニウム単体であってもよいし、アルミニウム合金であってもよい。
また、上記アルミニウム箔基材は、公知の方法により、表面処理されたものであってもよい。
上記アルミニウム箔基材の厚さは、1μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜60μmであることがより好ましく、10μm〜40μmであることが特に好ましい。
上記アルミニウム箔基材の材質や厚さは、作製する印刷物の用途により、適宜選択すればよい。
上記第一の下塗り層は、熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含む。
上記第一の下塗り層に含まれる上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性樹脂を硬化してなる樹脂であればよく、公知の熱硬化性樹脂を硬化してなる樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エステル系樹脂等が挙げられる。
上記熱硬化型樹脂は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
中でも、上記熱硬化性樹脂としては、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、エポキシ系樹脂とメラミン系樹脂との混合樹脂が特に好ましい。
中でも、上記アクリル系樹脂は、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、自己架橋型アクリル樹脂又はメラミン樹脂架橋型アクリル樹脂が特に好ましい。
上記アクリル系樹脂としては、例えば、DIC(株)製の「アクリディック 54−172−60」、「アクリディック A−322」、「アクリデック A−405」、「アクリディック A−452」 BASF社製の「JONCRYL 500」、「JONCRYL 512」、「JONCRYL 901」、「JONCRYL 906」、三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤナール SE−5437」、「ダイヤナール SE−5102」、「ダイヤナール SE−192」、「ダイヤナール SE−5179」、「ダイヤナール SE−5661」「ダイヤナール SE−5377」、「ダイヤナール SE−5248」、「ダイヤナール SE−1466」、「ダイヤナール SE−5466」、「ダイヤナール SE−5456」、「ダイヤナール SE−5601」、「ダイヤナール SE−5650」、「ダイヤナール SE−5487」、「ダイヤナール SE−5649」、「ダイヤナール SE−5482」、「ダイヤナール SE−5616」、「ダイヤナール SE−653」等が挙げられる。
上記第一の下塗り層に含まれる上記アクリル系樹脂の含有量は、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、第一の下塗り層の全質量に対し、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましく、20質量%〜40質量%であることが特に好ましい。
中でも、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、ニトロセルロースであることが特に好ましい。
ニトロセルロースとしては、例えば、Nobel NC社製 DHX1−2、DHX3−5、DHX4−6、DHX5−10、DHX8−13、DHX11−16、DHX30−50等が挙げられる。
また、酢酸綿を主原料としたセルロースアセテートとしては、例えば、Eastman社製、 Cellulose Acetate (CA−320S NF/EP、CA−320S、CA−394−60LF、CA−398−10、CA−398−10NF/EP、CA−398−3、CA−398−30、CA−398−6)、CAB−381−0.1、CAB−381−0.5、CAB−381−2 BP、CAB−381−2、CAB−381−20、CAB−500−5、CAB−531−1、CAB−551−0.01、CAB−551−0.2、CAB−553−0.4)等が挙げられる。
また、CAPと呼ばれるセルロースアセテートプロピオネートとしては、例えば、Eastman社製Cellulose Acetate Propionate (CAP−482−0.5、CAP−482−20、CAP−504−0.2)等が挙げられる。
上記第一の下塗り層に含まれる上記繊維素系樹脂の含有量は、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、第一の下塗り層の全質量に対し、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜25質量%であることがより好ましく、5質量%〜20質量%であることが特に好ましい。
上記第一の下塗り層に含まれる上記着色の含有量は、得られる印刷物の耐熱密着性の観点から、第一の下塗り層の全質量に対し、1質量%〜40質量%であることが好ましく、5質量%〜35質量%であることがより好ましい。
上記第一の下塗り層の形成量(コート量)は、特に限定するものではないが、単位面積当たり、0.5g/m2〜5.0g/m2であることがより好ましく、1.0g/m2〜3.0g/m2であることがより好ましく、1.5g/m2〜2.5g/m2であることが特に好ましい。
上記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、グラビアコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター及び押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、グラビアコーターを用いた塗布が好ましい。
また、第一の下塗り層を形成する手段としては、加熱手段を用いることが好ましい。
加熱手段としては、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。
加熱手段としては、例えば、ヒーター、熱風乾燥機等が挙げられる。
本開示に係るインクジェット記録方法は、上記積層体における第一の下塗り層上に第二の下塗り組成物により第二の下塗り層を形成する工程(単に、「第二の下塗り層を形成する工程」ともいう。)を含み、上記第二の下塗り組成物が、イソシアネート基を有する化合物、ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含む。
上記第二の下塗り組成物の詳細については、後述する。
また、第二の下塗り層は、第一の下塗り層上に形成されることが好ましく、第一の下塗り層が形成された領域と同じ領域、又は、第一の下塗り層が形成された領域よりも狭い領域に形成されることがより好ましい。
また、単位面積当たりの上記第二の下塗り層の形成量(コート量)としては、単位面積あたりのインク組成物の最大付与量(1色当たり)を1とした場合に、0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内であることがより好ましく、0.1〜3の範囲内であることが特に好ましい。
上記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した塗布装置が挙げられる。
中でも、装置コストの点で、第二の下塗り組成物の付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布が好ましい。
本開示に係るインクジェット記録方法は、上記第二の下塗り層上にインクジェット法によりインク組成物を吐出する工程(単に、「インク組成物を吐出する工程」ともいう。)を含み、上記インク組成物が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び、着色剤を含む。
上記インク組成物の詳細については、後述する。
また、第二の下塗り層を形成する手段は、上記インクジェット記録装置内に設けられていても、別の装置として設けられていてもよい。
インク供給系は、例えば、インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1pl(ピコリットル)〜100pl、より好ましくは8pl〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320dpi〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400dpi〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは1,200×1,200dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本開示でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
例えば、カラー画像を形成する場合は、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を少なくとも使用することが好ましく、ホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を使用することがより好ましい。
また、ライトマゼンタやライトシアン等の淡色インク組成物、オレンジ、グリーン及びバイオレット等の特色インク組成物、クリアインク組成物、メタリックインク組成物等を使用してもよい。
なお、本開示における「画像」とは、文字や記号や図形等、個々に意味を有するものだけでなく、模様や全面着色等、意味を持たないものも含むものである。
本開示に係るインクジェット記録方法は、吐出されたインク組成物を、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において、紫外線発光ダイオードにより積算光量400mJ/cm2以上の紫外線照射を行い硬化させる工程(単に「紫外線照射を行い硬化させる工程」ともういう。)を含む。
この工程により、第二の下塗り層及びインク組成物の全体を完全硬化させる。本開示における「完全硬化」とは、第二の下塗り層及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、普通紙(例えば、富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を均一な力(500mN/cm2〜1,000mN/cm2の範囲内で一定の値)押し当てて、普通紙に液表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
また、上記紫外線照射の積算光量は、420mJ/cm2以上であることが好ましく、440mJ/cm2以上であることがより好ましい。また、上記積算光量の上限値は、特に制限はないが、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、1,000mJ/cm2以下であることがより好ましい。
また、上記紫外線照射の積算光量は、後述するインク組成物を半硬化させる紫外線照射における光量も含むものとする。すなわち、上記紫外線照射の積算光量は、最初のインク組成物の吐出からインク組成物の全体を完全硬化させるまでにおける照射した紫外線の全光量である。
上記紫外線照射を行い硬化させる工程は、一回の紫外線照射における光量は、上記積算光量を満たすように選択すればよく、また、組成、特にラジカル重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、1mJ/cm2〜500mJ/cm2程度であることが好ましく。
上記紫外線照射を行い硬化させる工程における紫外線(UV)露光光源は、紫外線発光ダイオード(UV−LED)である。
UV−LEDとしては、例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた紫外線を放出し得るLEDを開示している。また、他のUV−LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本開示において、特に好ましい紫外線源は、340nm〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
上記酸素濃度としては、酸素濃度を0.05体積%以下とすることが好ましく、酸素濃度を0.01体積%以下とすることがより好ましい。また、下限値は、0体積%、すなわち、酸素を含まない雰囲気である。上記範囲であると、得られる印刷物の耐熱密着性、及び、表面硬化性に優れる。
また、上記酸素濃度の雰囲気の調整方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができるが、窒素パージにより行われることが好ましい。
なお、本開示に係るインクジェット記録方法においては、インク組成物の全体を完全硬化させる紫外線照射の際に、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下であればよいが、後述するインク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程においても、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下で紫外線を照射することが好ましい。
本開示に係るインクジェット記録方法は、上記第二の下塗り層を形成する工程と上記インク組成物を吐出する工程との間に、上記第二の下塗り層を半硬化させる工程を含むことが好ましく、上記第二の下塗り層に紫外線照射し半硬化させる工程を含むことがより好ましい。
上記第二の下塗り層を半硬化させる工程を有することにより、イソシアネート化合物の含有量が低い下塗り組成物を用いた場合であっても、より高い密着性を有する画像が形成可能となる。
また、本開示に係るインクジェット記録方法は、上記インク組成物を吐出する工程と上記紫外線照射する工程との間に、上記インク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程を含むことが好ましい。
上記インク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程を有することにより、2種以上のインク組成物を使用してもインク組成物同士の密着性が高まり、より高い密着性を有する画像が形成可能となる。
以下、これら2つの上記半硬化させる工程をあわせて、単に「半硬化工程」ともいう。
本開示において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、第二の下塗り層又は後述するインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。第二の下塗り層又は第二の下塗り層上に吐出されたインク組成物が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、第二の下塗り層、インク組成物又はその両方は、深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
インク組成物を半硬化するための紫外線露光手段としては、上述した紫外線発光ダイオード(UV−LED)が挙げられる。
また、第二の下塗り層を半硬化するための好適な紫外線露光手段としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源が挙げられる。中でも、LED光源が好ましい。
上記第二の下塗り層を半硬化させる工程は、上述した酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において紫外線照射を行ってもよいが、インク組成物との密着性の観点から、酸素濃度が0.1体積%を超える雰囲気下において紫外線照射を行うことが好ましく、大気下において紫外線照射を行うことがより好ましい。
特に、上記第二の下塗り層の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害されやすい。従って、紫外線の付与条件を制御することにより、第二の下塗り層を半硬化させることができる。
また、増粘(粘度上昇)も、紫外線照射によって好適に行うことができる。
上記第二の下塗り層の半硬化状態を紫外線の照射により重合を開始するエチレン性不飽和化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
ここで、A(重合後)は、重合反応後のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液の含有するエチレン性不飽和化合物がアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーである場合は、810cm−1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、上記ピークの吸光度で、上記未重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
なお、2種以上のインク組成物を付与する場合の各インク組成物の吐出後に行う各インク組成物を半硬化させる工程はそれぞれ、上記インク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程と同様であり、使用される露光装置及び露光条件、並びに、好ましい態様も同様である。
また、直後に後述する紫外線照射を行い硬化させる工程を行う場合、本開示に係るインクジェット記録方法は、最後に吐出されたインク組成物を半硬化する工程を含んでいてもよいし、含んでいなくともよいが、コストや簡便性の観点から、含んでいないほうが好ましい。
また、2種以上のインク組成物を吐出する場合、いずれのインク組成物も第二の下塗り層上、吐出されたインク組成物上、又は、半硬化されたインク組成物上に吐出することが好ましい。すなわち、いずれのインク組成物も、直接接するか、又は、他のインク組成物層を介して、第二の下塗り層上に吐出されることが好ましい。またその際、第二の下塗り層は半硬化されていることが、密着性の観点から好ましい。
その他の工程としては、公知の工程を含むことができる。
本開示で特に好適に使用されるインクジェット記録装置について、更に詳述する。上記の本開示に係るインクジェット記録方法は、以下に説明する本開示に用いられるインクジェット記録装置により好適に実施される。
本開示に用いられるインクジェット記録装置は、上記積層体を搬送する搬送手段と、上記積層体上に第二の下塗り層を形成する付与手段と、上記第二の下塗り層上にインク組成物をインクジェット吐出する吐出手段と、上記下塗り液及びインク組成物を全体硬化させる完全硬化手段と、を有することが好ましく、付与された下塗り組成物を半硬化する半硬化手段を更に有してもよい。
また、本開示に用いられるインクジェット記録装置は、所謂シングルパス方式のインクジェット記録装置であることが好ましい。
図1は、本開示で好ましく使用されるインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。なお、下記装置は、下塗り組成物半硬化用露光光源17を有するが、このような半硬化光源を有しない装置であっても、本開示には好適に使用することができる。
積層体12の搬送手段である、送り出しローラー24及び巻き取りローラー26により張架された積層体12は、矢印A方向に搬送され、第二の下塗り層塗布ローラー14により下塗り組成物が付与され第二の下塗り層が形成される。続いて、第二の下塗り組成物半硬化用露光光源17により第二の下塗り組成物が半硬化される。続いて、各色のインク組成物を吐出するインクジェットヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wにて、各色のインク組成物(K:ブラック、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、W:ホワイト)が吐出され、インクジェットヘッド18K、18C、18M、18Yのすぐ後に設置された半硬化用露光光源20K、20C、20M、20Yにより、吐出されたブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンインク組成物が半硬化される。最後に、窒素パージ露光光源ユニット22により、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において紫外線照射され、半硬化された上記第二の下塗り層及びインク組成物の全体が硬化される。また、インク組成物に対する紫外線照射の積算光量は、400mJ/cm2以上である。
窒素パージ露光光源ユニット22は、例えば、LED光源が不活性ガスブランケットに囲まれており、不活性ガス配管を介して不活性ガス発生装置に接続しており、不活性ガス発生装置を稼働させると、ブランケット内の空気は不活性ガスに置換される態様が好ましく挙げられる。不活性ガスは、既述の通り、窒素などを利用することができる。
図1では、搬送制度を向上させるため、ニップロール28が設けられている。下塗り組成物を完全硬化させることにより、本開示に係るインクジェット記録方法では、ニップロールの使用が可能となり、より正確な搬送性が実現され、見当のずれ(着弾位置のずれ)が抑制される。なお、ニップロール28は必須ではなく、ニップロールを有してない画像形成装置を使用してもよい。
また、本開示に係るインクジェット記録方法における搬送手段は、特に制限はなく、公知の搬送手段であればよい。
本開示に係るインクジェット記録方法に使用される第二の下塗り組成物は、イソシアネート基を有する化合物と、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤とを含む。
本開示に使用される第二の下塗り組成物は、紫外線照射により硬化可能な油性の液体組成物である。
上記第二の下塗り組成物に用いられるイソシアネート基を有する化合物としては、特に限定されず公知のイソシアネート化合物を使用することができる。脂肪族、又は芳香族イソシアネートのどちらであってもよいが、安全性や安定性の観点から脂肪族イソシアネートが好ましい。
また、本開示に使用されるイソシアネート化合物としては、上市されている製品を使用することもできる。
例えば、タケネートD103H、D204、D160N、D170N、D165N、D178NL、D110N等のタケネートシリーズ(三井化学(株)製)、コロネートHX、HXR、HXL、HXLV、HK、HK−T、HL、2096(日本ポリウレタン工業(株)製)が好ましく挙げられる
また、TM−550とCAT−RT−37−2K(東洋モートン(株)製)や、XC233−2とXA126−1等のXシリーズの無溶剤接着剤(大日精化工業(株)製)といった、イソシアネート化合物と後述するポリオール化合物との2液混合型接着剤の市販品を使用することもできる。
イソシアネート化合物の添加量は、第二の下塗り組成物の全質量に対し、2質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましく、10質量%〜75質量%が更に好ましい。
上記第二の下塗り組成物に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、公知のエチレン性化合物を用いることができ、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、アクリレート化合物であることがより好ましい。
第二の下塗り組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物を、ラジカル重合性モノマーの総含有量に対して70質量%以上含有することが好ましい。上記の範囲であれば、臭気の発生を抑制することができる。
また、第二の下塗り組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが、硬化性及び柔軟性の観点から好ましい。
なお、本開示において、モノマーとは、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満であるラジカル重合性化合物を意味する。モノマーは分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が1,000未満であることが好ましく、オリゴマーとは、一般に有限個(好ましくは5個〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましい。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、粘度が低く、また、それ自体の臭気が比較的低いため好ましい。
炭素数6〜12の脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく例示される。
これらの中でも、デカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタアクリレートがより好ましく、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレートが更に好ましい。
また、本開示において、(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上含有し、かつ、室温(25℃)における粘度が0.1Pa・s未満の化合物を意味する。粘度が上記範囲内であると、印刷物のマイグレーション及び臭気の抑制と、反応性とを両立できる。
第二の下塗り組成物は、ラジカル重合性モノマーとして、単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。単官能エチレン性不飽和化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリルアミド化合物、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル化合物(トリエチレングリコールジビニルエーテルなど)、単官能N−ビニル化合物(N−ビニルカプロラクタムなど)などが挙げられる。
上記第二の下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量は、密着性及びブロッキング抑止両立の観点から、組成物全体の10質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜75質量%であることが好ましく、60質量%〜72質量%であることが更に好ましい。
また、硬化性、及び、耐熱性の観点から、第二の下塗り組成物中におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能モノマーの含有量は、70質量%以上であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましく、80質量%〜100質量%であることがより好ましい。
第二の下塗り組成物は、バインダーポリマーを含んでもよい。バインダーポリマーとしては、ラジカル重合性基を有しない不活性な樹脂が好ましい。
バインダーポリマーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂等の公知のバインダーポリマーを使用できるが、アクリル樹脂が好ましく、不活性な、メチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体がより好ましい。例えば、Aldrich社製のポリメチルメタクリレート(分子量10,000、カタログ番号81497;分子量20,000、カタログ番号81498;分子量50,000、カタログ番号81501)、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体(質量比85/15、分子量75,000;カタログ番号474029)等;Lucite Intenational社製のELVACITE2013(メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体、質量比36/64、分子量37,000)、2021、2614、4025、4026、4028等;Rohm and Haas社製のParaloid DM55、B66等;Dianal America社製のBR113、115等が挙げられる。
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが更に好ましく、8,000〜100,000であることが特に好ましい。
バインダーポリマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーの含有量は、第二の下塗り組成物全体の0.2質量%〜15質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
バインダーポリマーの含有量が上記範囲内であれば、ブロッキング抑止に優れる印刷物を得ることができる。
本開示において、第二の下塗り組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。上記ラジカル重合開始剤の詳細については、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されているものが例示できる。
本開示におけるラジカル重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、アシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましく挙げられる。中でも、アシルホスフィン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物がより好ましく、アシルホスフィン化合物が更に好ましい。
芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましい。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、公知のものを用いることができるが、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本開示において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
また、α−アミノケトン化合物としては、公知のものを用いることができ、具体的には例えば、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、市販品としては、IRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)(以上、BASF社製)等が好ましく例示できる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)にて測定し、標準ポリスチレンで換算して求める。例えば、GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI(示差屈折率)検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
重量平均分子量が500〜3,000である分子量を有するラジカル重合開始剤としては、SPEEDCURE 7010(1,3-di({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxy)-2,2-bis({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxymethyl)propane、CAS No. 1003567-83-6)、OMNIPOL TX(Polybutyleneglycol bis(9-oxo-9H-thioxanthenyloxy)acetate、CAS No. 813452-37-8)、OMNIPOL BP(Polybutyleneglycol bis(4-benzoylphenoxy)acetate、CAS No. 515136-48-8)等が例示できる。重量平均分子量が500〜3,000である分子量を有するラジカル重合開始剤は、第二の下塗り組成物全体の0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜8.0質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜5.0質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜2.4質量%であることが特に好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れる。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。
中でも、増感剤としては、チオキサントン類が好ましく、イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示に用いられる第二の下塗り組成物は、ポリオール化合物を含有してもよい。
ポリオール化合物としてはジオール化合物が好ましい。
ポリオール化合物としては、特に限定されないが、イソシアネート化合物がTM−550である場合には、CAT−RT−37−2K(東洋モートン(株)製)、イソシアネート化合物がXC233−2である場合には、XA126−1等のXシリーズの無用剤接着剤(大日精化工業(株)製)といった、イソシアネート化合物とポリオール化合物との2液混合型接着剤として市販されている製品を用いることが可能である。
本開示に用いられる第二の下塗り組成物がポリオール化合物を含有する場合、第二の下塗り組成物の全質量に対するポリオール化合物の含有量は、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。
本開示に用いることができる第二の下塗り組成物は、着色剤を含有してもよいが、白色着色剤を含有するか、又は含有しないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
また、第二の下塗り組成物が着色剤を含有する場合、組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、下塗り液全体の質量に対し、0.01質量%〜30質量%であることが好ましい。
本開示において、第二の下塗り組成物は、分散剤を含有してもよい。
特に、第二の下塗り組成物が上記着色剤を含有する場合、着色剤の分散のため、分散剤を含むことが好ましい。
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本開示における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
第二の下塗り組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、組成物全体の質量に対し、0.05質量%〜15質量%であることが好ましい。
第二の下塗り組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
第二の下塗り組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、組成物全体の質量に対し、0.0001質量%〜5質量%であることが好ましく、0.001質量%〜2質量%であることがより好ましい。
本開示において、第二の下塗り組成物は、必要に応じて、上記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含んでもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、組成物の全質量に対し、200ppm〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル(TEMPOL)、クペロンAl等が挙げられる。
本開示においては、第二の下塗り層をインクジェット法により設ける場合、吐出性を考慮し、第二の下塗り組成物の25℃における粘度は、40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。第二の下塗り組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中への第二の下塗り組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。
上記の第二の下塗り組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定される。
なお、第二の下塗り組成物の25℃における表面張力の測定方法としては、公知の方法を用いることができるが、吊輪法、又は、ウィルヘルミー法で測定することが好ましい。例えば、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定する方法、又は、KSV INSTRUMENTS LTD社製 SIGMA702を用いて測定する方法が好ましく挙げられる。
上記第二の下塗り組成物の調製方法としては、各成分を撹拌混合することにより調製することができる。
ここで、下塗り液の調製時には、下塗り液に含まれる全ての成分を同時に撹拌混合してもよいし、イソシアネート化合物及び/又はラジカル重合開始剤以外の各成分を撹拌混合した溶液を保存しておき、イソシアネート化合物及び/又はラジカル重合開始剤は使用前に追加することにより下塗り液を調製してもよい。
本開示に係るインクジェット記録方法において、第二の下塗り組成物は、調製後一日以内に記録媒体に塗布されることが、塗布性の観点から好ましい。
本開示に係るインクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、着色剤とを含む。
インク組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量は、硬化性の観点から、組成物全体の70質量%〜98質量%であることが好ましく、70質量%〜95質量%であることがより好ましく、80質量%〜93質量%であることが更に好ましい。
また、硬化性、及び、耐熱性の観点から、インク組成物中におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましく、80質量%〜100質量%であることがより好ましい。
その他、上記ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤は、第二の下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤と同義であり、好ましい態様も同様である。また、多官能エチレン性不飽和化合物(より好ましくは、多官能エチレン性不飽和モノマー)として、ポリアルキレングリコールジアクリレートを含むことが好ましい。
ポリアルキレングリコールジアクリレートとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリプロピレングリコールジアクリレートであることが好ましい。
また、ポリアルキレングリコールジアクリレートにおけるアルキレングリコール単位の繰り返し数、すなわち、アルキレンオキシ基の繰り返し数は、2以上であり、2〜100であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。
第二の下塗り組成物及びインク組成物は、それぞれ2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
また、本開示において、インク組成物は、活性光線硬化型のインク組成物であり、水性インク組成物や溶剤インク組成物とは異なる。インク組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、インク組成物の全質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
本開示において、インク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、着色剤を含有する。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本開示においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本開示においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.(カラーインデックス)ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
本開示において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01質量%〜30質量%であることが好ましい。
本開示に用いられるインク組成物は、分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分を含有してもよい。
インク組成物における分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分は、第二の下塗り組成物における分散剤、界面活性剤、及び、その他の成分と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5mPa・s〜40mPa・s、更に好ましくは7mPa・s〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25℃〜80℃、より好ましくは25℃〜50℃)における粘度が、3Pa・s〜15mPa・sであることが好ましく、3Pa・s〜13mPa・sであることがより好ましい。インク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物の液滴着弾時のインクにじみを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
本開示に係る印刷物は、本開示に係るインクジェット記録方法により得られた印刷物であることが好ましい。
また、本開示に係る印刷物は、耐熱密着性に優れるため、後述する本開示に係る積層印刷物の製造方法に好適に用いることができる。
本開示に係る印刷物の形状、及び、形成される画像には、特に制限はなく、所望に応じ、適宜選択すればよい。
また、本開示に係る印刷物は、バーコードを含む画像を有する印刷物であってもよい。
本開示に係る積層印刷物の製造方法は、本開示に係るインクジェット記録方法により得られた印刷物と樹脂基材とを熱により貼り合わせる工程を含む。
また、本開示に係る積層印刷物は、本開示に係る積層印刷物の製造方法により製造されたものである。
上記積層印刷物としては、包装印刷物が好適に挙げられ、ブリスター包装体(ブリスターパック)がより好適に挙げられる。また、ブリスター包装体としては、薬剤を容易に取りだすことができる、PTP(press through pack)が好適に挙げられる。
上記樹脂基材の材質としては、特に制限はないが、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。
また、上記樹脂基材は、例えば、ブリスター包装機で金型を使用し加熱処理することでポケットを形成することができる。上記ポケットの大きさや形状等は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択すればよい。
ブリスター包装体の内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であることが好ましく、製剤であることが好ましい。また、製剤の他、食品、化粧品、医療機器、電子部品等も挙げられる。また、上記製剤としては、医薬品製剤(薬剤)の他、洗浄剤、農薬等を含む。
上記接着層としては、特に制限は無く、公知の接着剤を、公知の方法により塗布して形成することが可能である。
また、上記貼り合わせる工程においては、圧着させることが好ましい。上記圧着時に付与する圧力としては、特に制限はなく、使用する上記印刷物及び樹脂基材等に応じて適宜選択すればよい。
また、熱を付与する時間についても、特に制限はなく、使用する上記印刷物及び樹脂基材等に応じて適宜選択すればよいが、0.5秒〜10秒であることが好ましい。
上記貼り合わせ工程において用いられる貼り合わせ手段及び加熱手段としては、特に制限はなく、公知の貼り合わせ手段及び公知の加熱手段を用いることができる。
上記切り離し線の形状は、特に制限はなく、公知の形状であればよい。
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SR9003:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer社製)
・SR341:3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート(Sartomer社製)
・SR489D:トリデシルアクリレート(Sartomer社製)
・DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(BASF社製)
・SR344:ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(Sartomer社製)
・IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、BASF社製、分子量419)
・Speedcure7010L(Lambson社製、分子量1,899)
・TM550(NCO型ウレタンエステル樹脂、東洋モートン(株)製)
・タケネートD160N(ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD170N(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD178NL(ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、三井化学ポリウレタン(株)製)
・UV7630B(ウレタンアクリレート、紫光UV−7630B、日本合成化学工業(株)製)
・UV−22(Irgastab(登録商標) UV-22、Poly[oxy(methyl-1,2-ethanediyl)]-α,α’,α”-1,2,3-propanetriyltris[ω-[(1-oxo-2-propen-1-yl)oxy]-2,6-bis(1,1-dimethylethyl)-4-(phenylenemethylene)cyclohexa-2,5-dien-1-one、BASF社製)
・BYK−307(シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK Chemie社製)
・PT−OPニス(エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂含有、T&K TOKA(株)製)
・OP20# Hクリヤー(エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂含有、大阪印刷インキ製造(株)製)
・ADZ クリヤー(エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂含有、T&K TOKA(株)製)
・YL432 PTP OPワニス(エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂含有、東洋インキ(株)製)
・アクリディック A−322(アクリル系樹脂、DIC(株)製)
・JONCRYL 901(アクリル系樹脂、DIC(株)製)
・ダイヤナール SE−5650(アクリル系樹脂、DIC(株)製)
・DHX4−6(ニトロセルロース、Nobel NC社製)
・CAB−381−2(セルロースアセテート、Eastman社製)
・CAP−482−20(セルロースアセテートプロピオネート、Eastman社製)
・酸化チタン(CR−Super 70、石原産業(株)製、平均粒径:0.25μm〜0.30μm)
・メチルエチルケトン(MEK、大伸化学(株)製)
・トルエン(大伸化学(株)製)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM、大伸化学(株)製)
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR9003を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
<第一の下塗り組成物の調製>
表2〜表4に示す割合で各素材を撹拌混合し、実施例1〜25、及び、比較例1〜8で使用した第一の下塗り組成物をそれぞれ調製した。なお、表2〜表4における各成分の含有量の単位は、質量部である。また、表2〜表4中の「−」の記載は、上記成分を含有していないことを意味する。また、表2〜表4に示すエポキシ・メラミン混合樹脂の量は、エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂の総含有量であり、例えば、実施例1ではPT−OPニスに含まれるエポキシ・メラミン混合樹脂としての量である。
表2〜表4に示す割合で各素材を、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて室温(25℃)で5,000回転/分にて20分撹拌混合し、実施例1〜25、及び、比較例1〜8で使用した第二の下塗り組成物及びインク組成物をそれぞれ調製した。また、比較例2において使用した第二の下塗り組成物は、実験に使用するまで、室温(25℃)下で一日間保管した。なお、表2〜表4における各成分の含有量の単位は、質量部である。また、表2〜表4中の「−」の記載は、上記成分を含有していないことを意味する。
下記に示すアルミニウム箔基材上に、下記に示す条件により、第一の下塗り組成物を塗布し、下記に示す乾燥条件により、熱硬化させ、アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層を有する積層体をそれぞれ作製した。
基材の厚さ:20μm
基材番号:1N30(JIS H 4000)
質別:H18(JIS H 4000)
塗工方式:グラビア
塗布量:2g/m2
乾燥方式:熱風
乾燥炉:100℃、180℃、270℃の各炉長3mの3ゾーンの乾燥炉を使用した。
加工速度:100m/min
図1に示すように、ロール搬送系の最上流部にローラー塗布機(第二の下塗り組成物の塗布量:2g/m2(塗布膜厚2μm))を配置し、その下流にLED光源、ブラック用ヘッド、LED光源、シアン用ヘッド、LED光源、マゼンタ用ヘッド、LED光源、W用ヘッド、窒素パージLED露光機を配置した。
インクジェットヘッドとして、東芝テック(株)製CA3ヘッドを各色4つずつ並列に配置し、ヘッドを45℃に加温して、42pLの打滴サイズで描画できるよう、周波数をコントロールした。LED光源として、ピーク波長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technolohy社製)を使用した。窒素パージは、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN2ガス発生装置Maxi−Flow30(Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、ブランケット内の窒素濃度を99.9体積%以上、酸素濃度を0.1体積%以下となるように、2L/分〜10L/分の流量で窒素をフローさせ、窒素濃度を設定した。
50m/minの速度で走査させ、得られたアルミニウム箔基材上に第一の下塗り層を有する積層体に第二の下塗り層を形成し、LED光源(半硬化用の光量30mJ/cm2)を用いて第二の下塗り層を半硬化状態にした。その上にインク組成物を吐出して、更にLED光源(半硬化用の光量10mJ/cm2)を用いてインク組成物を半硬化状態にし、下記に示す画像の描画を行った。その後、積算光量が表2〜表4に記載となるようにLED光源によって画像を完全に硬化させた。以下に示す諸性能のテストを行った。
なお、窒素パージ露光前のLED光源は、第二の下塗り層及びインク組成物が、半硬化状態に保てるように光量を調節した。
なお、本開示における「完全硬化」とは、第二の下塗り層及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、普通紙(例えば、富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を均一な力(500mN/cm2〜1,000mN/cm2の範囲内で一定の値)押し当てて、普通紙に液表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
〔文字〕
文字高3mmの“オンデマンドPTP”との文字、及び、文字高1.5mmの“押し出す”との文字を描画した。
〔バーコード〕
図2に示すバーコードであるGSIデータバー(最小エレメント幅:0.254mm)を、バーコードの数字の文字高1mm、バーコードの黒線部分の高さ3mm、バーコードの全体の横方向の幅18.5mmの大きさで描画した。
薬を1錠ずつポケットに包装するブリスター包装機であるCKD社製のFBP−300Eを用いて、図3(なお、図3における長さの数値の単位は、mmである。)に示す0.8mm程度の格子柄の金型(格子を形成する金型部分の幅:0.1mm〜0.3mm)を押し当て、温度190℃〜280℃、機械最大圧力0.48MPa、0.2m/秒(充填低速条件100ショット)でシールを行い、積層印刷物を得た。得られた積層印刷物における印刷面にセロハンテープ2.4mmを、上記で形成した文字部分、及び、バーコード部分に強く貼り付け、一気に剥がして密着の良否を判定した。剥がしたテープにインク膜が付着していなければ合格とする。
なお、機械で可能な条件の内、最も過酷な条件を実施した。合格した温度のうち最も高い温度(耐熱温度(充填温度))に応じて、以下のように評価した。
5:280℃で上記評価を行っても合格であった。
4:耐熱温度が250℃以上280℃未満であった。
3:耐熱温度が220℃以上250℃未満であった。
2:耐熱温度が190℃以上220℃未満であった。
1:耐熱温度が190℃未満であった。
上記耐熱密着性評価において、280℃でシールを行った積層印刷物について、ISO/IEC 15416/15415の規格に基づき評価(下記の8種の判定項目によるA〜D及びFの段階評価)を行い、バーコード読み取り性を評価した。後述する総合判定がA〜Dであれば、実用性に問題ないレベルである。
1:Element/Edge
2:Decode
3:Decodability
4:Reflectance Minimum
5:Symbol Contrast
6:Ecmin
7:Modulation
8:Defects
下記のレーザー式によるバーコードの読み取り条件で、得られた積層印刷物について上記判定項目をそれぞれ評価した。
測定装置:WEBSCAN社製TruCheck TC−843
測定方法:シワが入らないように積層印刷物を平らな面に置き、計測機をその上において計測した。
判定項目:上記8種の判定項目について評価した。
測定開口径:6mil
各判定項目の評価:10回読み取り、その得られた数値結果を平均し、IEC 15416/15415の規格に準拠してA〜Fで判定した。
下記のカメラ式によるバーコードの読み取り条件で、得られた積層印刷物について上記判定項目をそれぞれ評価した。
測定装置:LVS社製INTEGRA 9510
測定方法:シワが入らないように積層印刷物を計測機の上において蓋を閉めて計測した。
判定項目:上記8種の判定項目について評価した。
各判定項目の評価:10回読み取り、その得られた数値結果を平均し、IEC 15416/15415の規格に準拠してA〜Fで判定した。
レーザー式及びカメラ式の評価結果のうち、最も悪い判定結果を、総合判定として採用した。
A:最良
B:優
C:良
D:可
F:不可
また、表2〜表4の結果から明らかなように、実施例1〜25に示す本開示に係るインクジェット記録方法は、積層印刷物を形成した場合であっても、バーコード読み取り性に優れる。
表3の実施例23〜25に示すように、上記紫外線照射を行い硬化させる工程において、好ましくは積算光量420mJ/cm2以上、より好ましくは積算光量440mJ/cm2以上であると、得られる印刷物の耐熱密着性により優れる。
Claims (10)
- アルミニウム箔基材と上記アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層とを有する積層体を準備する工程、
前記積層体における第一の下塗り層上に第二の下塗り組成物により第二の下塗り層を形成する工程、
前記第二の下塗り層上にインクジェット法によりインク組成物を吐出する工程、並びに、
吐出されたインク組成物を、酸素濃度0.1体積%以下の雰囲気下において、紫外線発光ダイオードにより積算光量400mJ/cm2以上の紫外線照射を行い硬化させる工程を含み、
前記第一の下塗り層が、熱硬化型樹脂、アクリル系樹脂、及び、繊維素系樹脂を含み、
前記第二の下塗り組成物が、イソシアネート基を有する化合物、ラジカル重合性モノマー、及び、ラジカル重合開始剤を含み、
前記インク組成物が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び、着色剤を含む
インクジェット記録方法。 - 前記第一の下塗り層に含まれる前記熱硬化型樹脂が、エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を硬化してなる樹脂を含む請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第一の下塗り層に含まれる前記熱硬化型樹脂が、エポキシ系樹脂及びメラミン系樹脂を硬化してなる樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第二の下塗り組成物におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、70質量%以上であり、かつ、
前記インク組成物中におけるラジカル重合性モノマーの総含有量に対する多官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、70質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。 - 前記第二の下塗り層を形成する工程と前記インク組成物を吐出する工程との間に、前記第二の下塗り層に紫外線照射し半硬化させる工程を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記硬化させる工程において、前記インク組成物を吐出する工程と前記紫外線照射を行い硬化させる工程との間に、前記インク組成物に紫外線照射し半硬化させる工程を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク組成物を吐出する工程において、バーコードを含む画像を形成する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第一の下塗り層が、着色剤を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物と樹脂基材とを熱により貼り合わせる工程を含む
積層印刷物の製造方法。 - 前記貼り合わせる工程において、160℃以上の熱を貼り合わせ部分に付与する請求項9に記載の積層印刷物の製造方法。
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