JP2015060819A - 非水電解液、及び該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

非水電解液、及び該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも高い正極電位を有するリチウムイオン二次電池に適用した場合でも、ガスの発生、すなわち電解液の分解が抑制され、サイクル特性に優れる非水電解液、及び、該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】所定の三重結合含有リン酸エステル化合物(A)と、
シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)と、
シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)と、
非水溶媒と、
を含有する、非水電解液。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液、及び該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度、高耐久性といった優れた特徴を持つことから、携帯電話などのモバイル電子機器用電源として汎用されており、近年では電気自動車などの自動車用電源としても利用されている。
幅広く普及したリチウムイオン電池であるが、モバイル電子機器や電気自動車のユーザーからは、依然として電池の高エネルギー密度化の要請がある。これに応えるべく、電池のエネルギー密度を向上させる試みが活発になされており、中でも、正極活物質の充電深度の拡大や高電位正極の開発が注目されている。
特許文献1によると、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO)は、正極電位がリチウム基準4.3Vになるまで充電すると、充電容量が約155mAh/gであるのに対して、4.5Vになるまで充電すると、充電容量が190mAh/g以上となる。このように、満充電時の正極の電位を引き上げることで、正極活物質の利用率が向上し、結果として電池のエネルギー密度を高めることができる。
リチウムイオン二次電池では、非水溶媒にリチウム電解質を溶解させた電解液を用いている。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート類と、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類と、を特定の比率で混合してなるカーボネート溶媒が採用されている。カーボネート溶媒は、満充電時の正極電位がリチウム基準で4.3V程度に達する従来のリチウムイオン二次電池に適用した場合は十分な耐酸化性及び耐還元性を併せ持ち、リチウムイオン伝導性にも優れることから、汎用されている。しかし、従来よりも正極電位が高い電池においては、カーボネート溶媒が分解してしまうため、分解物の堆積や電池内部でのガス発生が起こり、サイクル特性などの電池特性が低下するという問題が生じる。
上記の問題を解決するために、特許文献2では、非水溶媒として、フッ素化された非水溶媒を使用し、電解液の耐酸化性を向上させる方法が提案されている。具体的には、フッ素化エステル及びフッ素化エーテルを合計50体積%と高濃度で用いることにより、電解液の耐酸化性向上を図っている。
また、特許文献3では、非水電解液中に、特定のリン酸エステルと、亜硫酸エステル化合物と、を組み合わせて含有させることで、電池のサイクル特性を向上させる方法が提案されている。例えば、非水電解液中に、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.7質量%と、1,3−プロパンスルトンを0.4質量%とを含有させることによりサイクル特性の向上を図っている。
国際公開2008−114739号公報 国際公開2012−132976号公報 国際公開2012−120597号公報
しかしながら、特許文献2に開示されているフッ素化された非水溶媒を用いる場合、非水溶媒へのリチウム電解質の溶解性が低下すると共に、電解液のイオン伝導性が大幅に低下するため、電池の入出力特性が損なわれるという問題がある。
また、特許文献3に開示されている、トリス(2−プロピニル)フォスフェート及び1,3−プロパンスルトンを組み合わせた非水電解液を用いる場合、電池のサイクル特性を向上させる効果は充分ではなく、ガス発生抑制効果も満足できるものではない。
上述のように、従来技術では、高い正極電位を有するリチウムイオン二次電池において、サイクル劣化やガス発生を充分に抑制する解決策は示されていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも高い正極電位を有するリチウムイオン二次電池に適用した場合でも、ガスの発生、すなわち電解液の分解が抑制され、サイクル特性に優れる非水電解液、及び、該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、非水溶媒中に、三重結合を有する特定のリン酸エステル化合物(A)と、シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)と、シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)とをそれぞれ一種以上含有する非水電解液を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
一般式(1)で表される三重結合含有リン酸エステル化合物(A)と、
シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)と、
シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)と、
非水溶媒と、
を含有する、非水電解液。
(式(1)中、aは、1以上3以下の整数を表し、bは、それぞれ独立に0以上10以下の整数を表し、Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルコキシ基、及び置換されてもよい炭素数6以上15以下のアリール基からなる群より選ばれる一種を表し、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子及び置換されていてもよい炭素数1以上10以下の有機基からなる群より選ばれる一種を表す。)
〔2〕
上記(A)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、前項〔1〕に記載の非水電解液。
〔3〕
上記(B)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、3質量%以上30質量%以下であり、
上記(C)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、前項〔1〕又は〔2〕に記載の非水電解液。
〔4〕
上記(B)成分が、LiPFを含む、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の非水電解液。
〔5〕
上記(B)成分が、LiPFと、LiPO及び/又はLiBFと、を含む、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の非水電解液。
〔6〕
上記(C)成分が、LiB(C、LiBF(C)、LiP(C、LiPF(C、及びLiPF(C)からなる群より選ばれる一種以上のリチウム塩化合物を含む、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の非水電解液。
〔7〕
上記(A)成分が、上記一般式(1)におけるR2、R3、R4が、全て水素原子である三重結合含有リン酸エステル化合物を含む、前項〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の非水電解液。
〔8〕
正極と、負極と、前項〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の非水電解液とを備え、
満充電時の上記正極の電位がリチウム基準で4.4V以上5.5V以下である、リチウムイオン二次電池。
本発明によれば、従来よりも高い正極電位を有するリチウムイオン二次電池に適用した場合でも、ガスの発生、すなわち電解液の分解が抑制され、サイクル特性に優れる非水電解液、及び、該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔非水電解液〕
本実施形態に係る非水電解液は、一般式(1)で表される三重結合含有リン酸エステル化合物(A)と、
シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)と、
シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)と、
非水溶媒と、を含有する。
〔リン酸エステル(A)〕
本実施形態に係る非水電解液は、下記一般式(1)で表される三重結合含有リン酸エステル化合物(A)を含有する。
(式(1)中、aは、1以上3以下の整数を表し、bは、0以上10以下の整数を表し、Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルコキシ基及び置換されていてもよい炭素数6以上15以下のアリール基からなる群より選ばれる一種を表し、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子及び置換されていてもよい炭素数1以上10以下の有機基からなる群より選ばれる一種を表す。)
三重結合含有リン酸エステル化合物(A)は、その分子内に、少なくとも一つの炭素−炭素間の三重結合を有している。三重結合を有することにより、ガスの発生がより抑制され、サイクル特性が優れる。一般式(1)中のaは、1以上3以下の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。aが上記範囲内であることにより、ガスの発生がより抑制され、サイクル特性が優れる。
また、一般式(1)中のbは、0以上10以下の整数であり、好ましくは0以上5以下であり、より好ましくは1以上5以下である。bが上記範囲内であることにより、ガスの発生がより抑制され、サイクル特性がより優れる。
一般式(1)中のRは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルコキシ基及び置換されていてもよい炭素数6以上15以下のアリール基からなる群より選ばれる一種を表す。
上記アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらのアルキル基の水素原子又は炭素原子は、必要に応じて、異種元素や置換基によって置換されていてもよい。上記異種元素としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素を挙げることができる。また、上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、スルホニル基を挙げることができる。これらの中でも、ガス発生抑制の観点から、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基によって置換されたアルキル基が好ましく、フッ素原子、カルボキシ基、ホスホノ基によって置換されたアルキル基がより好ましい。また、上記アルキル基の炭素数は、ガス発生抑制の観点から、1以上15以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
次に、上記アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプトロキシ基、オクチロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基の水素原子又は炭素原子は、必要に応じて、異種元素や置換基によって置換されていてもよい。上記異種元素としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素を挙げることができる。また、上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、スルホニル基を挙げることができる。これらの中でも、ガス発生抑制の観点から、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基によって置換されたアルコキシ基が好ましく、フッ素原子、カルボキシ基、ホスホノ基によって置換されたアルコキシ基がより好ましい。また、上記アルコキシ基の炭素数は、ガス発生抑制の観点から、1以上15以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
上記アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。これらのアリール基の水素原子又は炭素原子は、必要に応じて、異種元素や置換基によって置換されていてもよい。上記異種元素としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素を挙げることができる。上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、スルホニル基を挙げることができる。この中でも、ガス発生をより効果的に抑制する観点から、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基によって置換されたアリール基が好ましく、フッ素原子、カルボキシ基、ホスホノ基によって置換されたアリール基がより好ましい。上記アリール基の炭素数としては、ガス発生抑制の観点から、6以上15以下であり、6以上10以下が好ましく、6以上8以下がより好ましい。
上記のなかでも、Rとしては、サイクル特性向上の観点から、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルコキシ基及び置換されていてもよい炭素数6以上10以下のアリール基からなる群より選ばれる一種であることが好ましく、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルコキシ基及び置換されていてもよい炭素数6以上8以下のアリール基からなる群より選ばれる一種であることがより好ましい。
本実施形態において、一般式(1)中のR、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子及び置換されていてもよい炭素数1〜10の有機基からなる群より選ばれる一種を表す。
上記ハロゲン原子としては、特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
また、上記有機基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基を挙げることができる。
アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基を挙げることができる。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基を挙げることができる。
アルキニル基としては、特に限定されないが、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基を挙げることができる。
アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプトロキシ基、オクチロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基を挙げることができる。
アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基を挙げることができる。
これらの有機基の水素原子又は炭素原子は、必要に応じて、異種元素や置換基によって置換されていてもよい。上記異種元素としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素を挙げることができる。上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、スルホニル基を挙げることができる。この中でも、ガス発生をより効果的に抑制する観点から、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基によって置換された有機基が好ましく、フッ素原子、カルボキシ基、ホスホノ基によって置換された有機基がより好ましい。また、上記有機基の炭素数は、ガス発生抑制の観点から、1以上10以下であり、1以上7以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
、R、及びRとしては、ガス発生をより効果的に抑制する観点から、水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6以上10以下のアリール基、カルボキシ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6以上8以下のアリール基、カルボキシ基がより好ましい。また、一般式(1)のR、R、及びRが、全て水素原子である三重結合含有リン酸エステル化合物(A)を含むことが、さらに好ましい。このような三重結合含有リン酸エステル化合物(A)を用いることにより、ガス発生をより効果的に抑制できる傾向にある。
三重結合含有リン酸エステル化合物(A)の含有量は、非水電解液100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。(A)成分の含有量が0.01質量%以上であることにより、より効果的にガス発生を抑制できる傾向にある。また、三重結合リン酸エステル化合物(A)の含有量は、非水電解液100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。(A)成分の含有量が10質量%以下であることにより、入出力特性がより向上する傾向にある。
本実施形態における一般式(1)で表される三重結合含有リン酸エステル化合物(A)としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエチニルフォスフェート、ジエチルエチニルフォスフェート、ジプロピルエチニルフォスフェート、ジブチルエチニルフォスフェート、ジペンチルエチニルフォスフェート、ジヘキシルエチニルフォスフェート、ジヘプチルエチニルフォスフェート、ジオクチルエチニルフォスフェート、ジノニルエチニルフォスフェート、ジデシルエチニルフォスフェート、ジメチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジエチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジプロピル(2−プロピニル)フォスフェート、ジブチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジペンチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジヘキシル(2−プロピニル)フォスフェート、ジヘプチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジオクチル(2−プロピニル)フォスフェート、ジノニル(2−プロピニル)フォスフェート、ジデシル(2−プロピニル)フォスフェート、ジメチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジエチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジプロピル(2−ブチニル)フォスフェート、ジブチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジペンチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジヘキシル(2−ブチニル)フォスフェート、ジヘプチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジオクチル(2−ブチニル)フォスフェート、ジノニル(2−ブチニル)フォスフェート、ジデシル(2−ブチニル)フォスフェート、ジメチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジエチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジプロピル(3−ブチニル)フォスフェート、ジブチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジペンチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジヘキシル(3−ブチニル)フォスフェート、ジヘプチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジオクチル(3−ブチニル)フォスフェート、ジノニル(3−ブチニル)フォスフェート、ジデシル(3−ブチニル)フォスフェート、エチニルフォスフェート、ジエチニルフォスフェート、トリエチニルフォスフェート、モノ(2−プロピニル)フォスフェート、ビス(2−プロピニル)フォスフェート、トリス(2−プロピニル)フォスフェート、モノ(2−ブチニル)フォスフェート、ビス(2−ブチニル)フォスフェート、トリス(2−ブチニル)フォスフェート、モノ(3−ブチニル)フォスフェート、ビス(3−ブチニル)フォスフェート、トリス(3−ブチニル)フォスフェート、ビス(2−プロピニル)メチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)エチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)プロピルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ブチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ペンチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ヘキシルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ヘプチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)オクチルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ノニルホスホネート、ビス(2−プロピニル)デシルホスホネート、ビス(2−プロピニル)フェニルホスホネート、ビス(2−プロピニル)トリルホスホネート、ビス(2−プロピニル)ナフチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)メチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)エチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)プロピルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ブチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ペンチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ヘキシルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ヘプチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)オクチルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ノニルホスホネート、ビス(2−ブチニル)デシルホスホネート、ビス(2−ブチニル)フェニルホスホネート、ビス(2−ブチニル)トリルホスホネート、ビス(2−ブチニル)ナフチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)メチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)エチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)プロピルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ブチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ペンチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ヘキシルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ヘプチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)オクチルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ノニルホスホネート、ビス(3−ブチニル)デシルホスホネート、ビス(3−ブチニル)フェニルホスホネート、ビス(3−ブチニル)トリルホスホネート、ビス(3−ブチニル)ナフチルホスホネートなどが挙げられる。三重結合含有リン酸エステル化合物(A)は一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
三重結合含有リン酸エステル化合物(A)は、実施例に記載のようにH−NMR、13C−NMR、及び31P−NMRなどを用いて同定することができる。
〔リチウム塩化合物(B)〕
本実施形態に係る非水電解液は、シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)を含有する。ここで「シュウ酸構造」とは、下記一般式(2)で表される化学構造を指し、本実施形態においては、単に「C」とも表記する。
リチウム塩化合物(B)としては、分子内にシュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物であれば、特に限定されないが、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSbF、LiFSO、LiCFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(SOCF)(SOCFCF)、LiPO、LiPOF、LiPF(C、LiB(CF、LiB(CN)を挙げることができる。この中でも、リチウム塩化合物(B)としては、LiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiPO、及びLiPOFからなる群より選ばれる一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることが好ましく、LiPFを用いることがより好ましく、LiPFとLiBF及び/又はLiPOとを組み合わせて用いることがさらに好ましい。このようなリチウム塩化合物(B)を用いることにより、入出力特性及びサイクル特性の両方がより優れる傾向にある。リチウム塩化合物(B)は一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム塩化合物(B)の含有量は、非水電解液100質量%に対して、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、8質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。リチウム塩化合物(B)の含有量が上記範囲内であることにより、入出力特性及びサイクル特性の両方がより優れる傾向にある。
〔リチウム塩化合物(C)〕
本実施形態に係る非水電解液は、シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を含有する。リチウム塩化合物(C)としては、分子内にシュウ酸構造を有するリチウム塩化合物であれば、特に限定されないが、例えば、Li(C)、LiB(C、LiBF(C)、LiAl(C、LiAlF(C)、LiP(C、LiPF(C、LiPF(C)を挙げることができる。この中でも、リチウム塩化合物(C)としては、LiB(C、LiBF(C)、LiP(C、LiPF(C、LiPF(C)が好ましく、LiB(C、LiBF(C)がより好ましい。このようなリチウム塩化合物(C)を用いることにより、非水溶媒への溶解性及びガス発生抑制の両方がより優れる傾向にある。リチウム塩化合物(C)は一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム塩化合物(C)の含有量は、非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。リチウム塩化合物(C)の含有量が上記範囲内であることにより、ガス発生がより抑制される傾向にある。
本実施形態に係る非水電解液においては、三重結合含有リン酸エステル(A)とリチウム塩化合物(C)とを組み合わせて用いる。非水電解液のガス発生抑制効果(電解液の分解抑制効果)をより高める観点からは、三重結合含有リン酸エステル(A)とリチウム塩化合物(C)を、それぞれ非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下の含有量で、非水電解液中に共存させることが好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、ガス発生抑制効果が顕著に発揮される。このことから、リチウム塩化合物(C)の役割は、イオン伝導を担保することよりも、むしろ、正極及び負極の改質にあると考えられる。ガス発生が顕著に抑制される理由は、必ずしも明らかではない。すなわち、本実施形態に係る非水電解液が発揮する効果は、本段落で説明する作用ないし原理によるものに限定されないが、リチウム塩化合物(C)に含まれるシュウ酸部位と、三重結合含有リン酸エステル(A)の三重結合部位が、正極及び負極に協同的に作用することで、ガス発生を効果的に抑制しているものと考えられる。
〔非水溶媒〕
本実施形態に係る非水電解液は、非水溶媒を含有する。上記非水溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;γーブチロラクトン及びγーバレロラクトンなどのラクトン類;スルホランなどのスルホン類;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトンなどの亜硫酸エステル類;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル類;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;アセトニトリル及びプロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルエーテル及びジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類;酢酸メチル及びプロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル類が挙げられる。非水溶媒は一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水溶媒としては、特に限定されないが、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートを特定の比率で混合したカーボネート溶媒が好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)は、イオン伝導性の観点から、体積比で1:10〜5:1が好ましく、1:5〜3:1がより好ましく、1:3〜2:1がさらに好ましい。
環状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが好ましい。
非水溶媒は一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態に係る非水電解液は、サイクル特性向上の観点から、LiPO、又はLiBFを含むことが好ましい。
〔用途〕
本実施形態に係る非水電解液は、非水蓄電デバイス用電解液として好適に用いられる。ここで、「非水蓄電デバイス」とは、蓄電デバイス中の電解液に水溶液を用いない蓄電デバイスの総称である。非水蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウム二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウム二次電池、アルミニウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどが挙げられる。上記の中でも、実用性の観点から、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
〔リチウムイオン二次電池〕
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、上記非水電解液とを備え、満充電時の上記正極の電位がリチウム基準4.4V以上5.5V以下である。ここで、「満充電時の正極の電位」とは、充電電圧に満充電時の負極の電位を加えた値を指す。例えば、満充電時の電位がリチウム基準で約0.05Vになる黒鉛を負極活物質として単独で用いる場合、正極と黒鉛負極からなる電池を充電電圧4.35Vで満充電すると、正極の電位はリチウム基準で約4.4Vとなる。満充電時の正極の電位は、三極式セルを用いて容易に特定することができる。具体的には、満充電状態の正極を作用極、リチウム金属を参照極、満充電状態の負極を対極とする構成の三極式セルを作製した場合、作用極と参照極の電位差が「満充電状態の正極の電位」となる。
〔正極〕
本実施形態において、満充電時の正極の電位としてリチウム基準4.4V以上の十分高い水準を確保する観点から、正極は、リチウム基準4.4V以上の電位でリチウムイオンを吸蔵、放出する正極活物質を単独で、又は二種以上を組み合わせて含有することが好ましい。
リチウム基準4.4V以上の電位でリチウムイオンを吸蔵、放出する正極活物質としては、特に限定されないが、正極活物質の構造安定性の観点から、好ましくは、一般式LiNiCoMa1−x−y〔Maは、Mn及びAlからなる群より選ばれる一種以上を表し、0≦x≦1であって、0≦y≦1であり、x+y≦1である。〕で示される層状酸化物正極活物質;一般式LiMn2−xMb〔Mbは遷移金属からなる群より選ばれる一種以上を表し、0.2≦x≦0.7である。〕で示されるスピネル型酸化物正極活物質;LiMcOとLiMdO〔Mc及びMdは、別個独立に遷移金属からなる群より選ばれる一種以上を表す。〕との複合酸化物であって、一般式zLiMcO−(1−z)LiMdO〔0.05≦z≦0.95である。〕で示されるLi過剰層状酸化物正極活物質;LiMe1−xFePO〔MeはMn及びCoからなる群より選ばれる一種以上を表し、0≦x≦1である。〕で示されるオリビン型正極活物質、及びLiMfPOF〔Mfは遷移金属からなる群より選ばれる一種以上を示す。〕からなる群より選ばれる一種以上の正極活物質などが挙げられる。
このなかでも、一般式LiNiCoMa1−x−yで示される層状酸化物正極活物質、又は一般式LiMn2−xMbで示されるスピネル型酸化物正極活物質が好ましい。正極活物質は、一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式LiNiCoMa1−x−yで示される層状酸化物正極活物質としては、構造安定性の観点から、LiNiCoMn1−x−y〔0≦x≦1であって、0≦y≦1であり、x+y≦1である。〕又はLiNiCoAl1−x−y〔0.7≦x≦1であって、0≦y≦0.3であり、x+y≦1である。〕で示される組成を有することが好ましい。より好ましい組成としては、LiCoO、LiNiCoMn1−x−y〔0.4≦x≦1であって、0≦y≦0.4であり、x+y≦1である。〕、LiNi0.85Co0.1Al0.05を挙げることができる。
一般式LiMn2−xMbで示されるスピネル型酸化物正極活物質としては、構造安定性の観点から、LiMn2−xNi〔0.2≦x≦0.7である。〕で示される組成を有することが好ましい。より好ましい組成としては、LiMn1.5Ni0.5を挙げることができる。スピネル型酸化物には、構造安定性、電子伝導性などの観点から、Mn原子のモル数に対して30モル%以下の範囲で、上記構造以外にさらに遷移金属又は遷移金属酸化物を含有させることができる。
正極の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の正極活物質に、アセチレンブラックなどの導電助剤や、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を適量加えて、正極合剤を調製し、これをアルミニウム箔などの集電材料に塗布乾燥後に加圧することで、集電材料上に正極合剤層が固着した正極を得ることができる。ただし、正極の作製方法は、上記例示のものに限定されない。
〔負極〕
本実施形態において、リチウムイオン二次電池を構成するための負極に用いることができる負極活物質としては、リチウムやリチウムイオンの吸蔵、放出が可能な化合物を使用することができる。
上記負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、Al、Si、Snなどの合金化合物、CuO、CoOなどの金属酸化物、チタン酸リチウムなどのリチウム含有化合物、及び炭素材料などを挙げることができる。負極活物質は、一種を単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このなかでも、炭素材料が好ましい。炭素材料を用いることにより、電池のエネルギー密度が向上し、低電位でのリチウムイオンの吸蔵、放出が可能となる傾向にある。このような炭素材料としては、特に限定されないが、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、有機天然物の焼成体、炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンブラックが挙げられる。
上記コークスとしては、特に限定されないが、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。
また、「有機高分子化合物の焼成体」とは、フェノール樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
さらに、「有機天然物の焼成体」とは、コーヒー殻などの天然由来材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
負極活物質に炭素材料を用いる場合、該炭素材料の(002)面の層間距離d002は好ましくは0.37nm以下であり、より好ましくは0.35nm以下であり、さらに好ましくは0.34nm以下である。d002の下限値は特に限定されないが、理論的には約0.335nmである。
また、炭素材料のc軸方向の結晶子の大きさは、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは8nm以上であり、さらに好ましくは25nm以上である。結晶子の上限は、特に限定されないが、通例200nm程度である。
さらに、炭素材料の平均粒径は、好ましくは3μm以上15μm以下であり、より好ましくは5μm以上13μm以下である。また、その純度は、99.9%以上であることが好ましい。
リチウムイオン二次電池を構成するための負極の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の負極活物質に、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤や、スチレンブタジエンゴムなどの結着剤を適量加えて、負極合剤を調製し、これを銅箔などの集電材料に塗布乾燥後に加圧することで、集電材料上に負極合剤層が固着した負極を得ることができる。ただし、負極の作製方法は、上記例示のものに限定されない。
〔セパレータ〕
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正負極の短絡防止などの安全性付与の観点から、正極と負極の間にセパレータを備えることが好ましい。上記セパレータとしては、特に限定されず、従来公知のリチウムイオン二次電池で採用されている各種セパレータを用いることができる。セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル系樹脂;ポリアラミドなどのポリアミド樹脂に代表される樹脂類を成形した微多孔膜又は不織布などが好適に用いられる。安全性付与の観点から、セパレータの厚みは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、電池の入出力特性向上の観点から、セパレータの厚みは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上述の正極と負極とを、セパレータを介して重ね合わせて、必要に応じて巻回して、積層電極体又は巻回電極体とした後、これを外装体に装填し、正負極と外装体の正負極端子とをリード体などを介して接続し、さらに上記非水電解液を外装体内に注入した後に外装体を封止して、リチウムイオン二次電池を作製することができる。
上記電池の外装体としては、特に限定されないが、例えば、金属製の缶容器や、金属箔ラミネートフィルムからなるラミネート容器などを好適に用いることができる。なお、リチウムイオン二次電池の形状としては、特に限定されず、例えば、円筒形、角型、コイン型、扁平形、シート状などの形状が挙げられる。
〔用途〕
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、実用上の耐久性にも優れることから、携帯電話などのモバイル電子機器用電源としてのみならず、様々な機器の電源として幅広く利用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1:正極の製造
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(日本化学工業社製)と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製)とを、90:6:4の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分40質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して正極とした。
2:負極の製造
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製)及びグラファイト粉末(TIMCAL社製)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合し、分散溶媒として水を固形分45質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して負極とした。
3:トリス(2−プロピニル)フォスフェートの合成
窒素雰囲気下で、200mLの三口フラスコに、オキシ塩化リン4.94g、2−プロピン−1−オール5.42gを投入した。三口フラスコを氷冷しながら、混合溶液にトリエチルアミン9.2gを少しずつ滴下して、滴下後30分間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。次に、三口フラスコにトルエンを50mL加えて、反応溶液を濾過し、濾液を得た。得られた濾液を減圧蒸留することで、トリス(2−プロピニル)フォスフェート5.88g(収率86%)を薄黄色液体として得た。
少量のトリス(2−プロピニル)フォスフェートを重クロロホルムに溶かして、NMR(JNM−GSX400G、日本電子株式会社製)を測定し、生成物を同定した。基準物質としては、テトラメチルシラン(H−NMR)、85質量%リン酸(31P−NMR)を、それぞれ0ppmとして用いた。トリス(2−プロピニル)フォスフェートのケミカルシフトを以下に示す。
H−NMR:
2.62(t,3H)、
4.72(dd,6H)
31P−NMR:
−0.64(s)
4:非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、上述のようにして合成したトリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPFを12.1質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液を得た。
5:試験用電池の作製
上述のようにして作製した正極と負極とを、ポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、アルミニウム箔(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正負極の端子を突設させながら挿入した。その後、上述のようにして調製した非水電解液を袋内に注入し、真空封止を行って、シート状リチウムイオン二次電池を作製した。
6:試験用電池の評価
6−1:初充放電
得られたシート状リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下、0.05Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後、4.35Vの定電圧で2時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを3サイクル繰り返した。なお、「1C」とは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、「0.05C」とはその1/20の電流値を表す。
6−2:サイクル試験
初充放電後の電池を、50℃の環境下、1Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後、4.35Vの定電圧で1時間充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。上記一連の充放電を1サイクルとして、これを100サイクル実施し、100サイクル後容量維持率(%)を測定した。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は92%と高かった。なお、100サイクル後容量維持率(%)は、以下の式で求めた。
100サイクル後容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
6−3:ガス発生試験
初充放電後の電池を、水浴中に浸して体積を測定した後、50℃の環境下、1Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後、4.35Vの定電圧で一週間連続充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。
電池を室温まで冷却させた後、水浴中に浸して体積を測定し、連続充電前後の電池の体積変化から、連続充電後発生ガス量(mL)を求めた。その結果、連続充電後発生ガス量(mL)は0.14mLと少なかった。
[実施例2]
(ビス(2−プロピニル)ヘキシルホスホネートの合成)
窒素雰囲気下、100mLの三口フラスコに、室温で2−プロピン−1−オール1.16g、脱水テトラヒドロフラン50mL、トリエチルアミン2.3gを投入した。次に、三口フラスコを氷冷しながら、ヘキシルホスホニックジクロリド2gを滴下した。滴下後、氷冷しながら2時間撹拌し、さらに室温で10時間撹拌した。得られた反応混合物を濾過後、濾液から溶媒を減圧留去し、さらに減圧蒸留することで、ビス(2−プロピニル)ヘキシルホスホネート1.98g(収率83%)を得た。
H−NMR:
0.89(t,3H)、
1.29(m,6H)、
1.65(m,2H)、
1.85(m,2H)、
2.57(t,2H)、
4.68(dd,4H)
31P−NMR:
36.19(s)
実施例1の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートの代わりに、上述のようにして得られたビス(2−プロピニル)ヘキシルホスホネートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は91%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.16mLと少なかった。
[実施例3]
(ビス(2−プロピニル)フェニルホスホネートの合成)
窒素雰囲気下、100mLの三口フラスコに、室温で2−プロピン−1−オール1.2g、脱水テトラヒドロフラン50mL、トリエチルアミン2.3gを投入した。次に、三口フラスコを氷冷しながら、フェニルホスホニックジクロリド2gを滴下した。滴下後、氷冷しながら2時間、さらに室温で10時間撹拌した。得られた反応混合物を濾過後、濾液から溶媒を減圧留去し、さらに減圧蒸留することで、ビス(2−プロピニル)フェニルホスホネート2.02g(収率85%)を得た。
H−NMR:
2.54(t,2H)、
4.75(m,4H)、
7.47(m,2H)、
7.58(t,1H)、
7.84(q,2H)
31P−NMR:
21.54(s)
実施例1の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートの代わりに、上述のようにして得られたビス(2−プロピニル)フェニルホスホネートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は88%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.18mLと少なかった。
[実施例4]
実施例1の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiBFを0.5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は92%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.13mLと少なかった。
[実施例5]
実施例1の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiPOを0.5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は93%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.12mLと少なかった。
[実施例6]
実施例1の非水電解液の調製において、LiB(Cの代わりに、LiBF(C)を用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は92%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.13mLと少なかった。
[実施例7]
実施例1の非水電解液の調製において、LiB(Cの代わりに、LiPF(Cを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は92%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.14mLと少なかった。
[実施例8]
実施例1の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、1質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は92%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.11mLと少なかった。
[実施例9]
実施例1の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、3質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は91%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.10mLと少なかった。
[実施例10]
実施例1の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は89%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.10mLと少なかった。
[実施例11]
実施例1の非水電解液の調製において、LiB(Cを1質量%添加する代わりに、0.5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は91%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.13mLと少なかった。
[比較例1]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は76%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.54mLと多かった。
[比較例2]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は88%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.34mLと多かった。
[比較例3]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPFを12.1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は86%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.21mLと多かった。
[比較例4]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%と、LiBFを0.5質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は84%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.32mLと多かった。
[比較例5]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%と、LiPOを0.5質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は88%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.28mLと多かった。
以上の実施例1〜11、及び比較例1〜5で得られた結果を、表1に示す。表1から、実施例1〜11のリチウムイオン二次電池は何れも、三重結合含有リン酸エステル(A)及びリチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例1、三重結合含有リン酸エステル(A)を含まない非水電解液を用いた比較例2、4及び5、並びにリチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例3と比して、サイクル特性が向上し、ガス発生量が低減していることが明らかとなった。以上より、本発明の効果は、非水電解液中に三重結合含有リン酸エステル(A)とシュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を共存させた場合に、特有の効果であることが示された。
[実施例12]
1:正極活物質の製造
遷移金属元素のモル比として1:3の割合の硫酸ニッケルと硫酸マンガンとを、水に溶解し、金属イオン濃度の総和が2mol/Lになるようにニッケル−マンガン混合水溶液を調製した。次いで、このニッケル−マンガン混合水溶液を、70℃に加温した濃度2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液1650mL中に、12.5mL/minの添加速度で120分間滴下した。なお、滴下時には、撹拌の下、200mL/minの流量の空気を水溶液中にバブリングしながら吹き込んだ。これにより析出物質が発生し、得られた析出物質を蒸留水で十分洗浄し、乾燥して、ニッケルマンガン化合物を得た。得られたニッケルマンガン化合物と粒径2μmの炭酸リチウムとを、リチウム:ニッケル:マンガンのモル比が1:0.5:1.5になるように秤量し、1時間乾式混合した後、得られた混合物を酸素雰囲気下において1000℃で5時間焼成し、LiNi0.5Mn1.5で表される正極活物質を得た。
2:正極の製造
上述のようにして得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製)とを、88:6:6の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分40質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して正極とした。
3:負極の製造
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製)及びグラファイト粉末(TIMCAL社製)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合し、分散溶媒として水を固形分45質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して負極とした。
4:非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPFを12.1質量%と、LiB(Cを1質量%と、を添加して非水電解液とした。
5:試験用電池の作製
上述のようにして作製した正極と負極とを、ポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、アルミニウム箔(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正負極の端子を突設させながら挿入した。その後、上述のようにして調製した非水電解液を袋内に注入し、真空封止を行って、シート状リチウムイオン二次電池を作製した。
6:試験用電池の評価
6−1:初充放電
得られたシート状電池を、25℃の環境下、0.05Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後、4.8Vの定電圧で2時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを3サイクル繰り返した。
6−2:サイクル試験
初充放電後の電池を、50℃の環境下、1Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後、4.8Vの定電圧で1時間充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。上記一連の充放電を1サイクルとして、これを100サイクル実施し、100サイクル後容量維持率(%)を測定した。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は78%と高かった。なお、100サイクル後容量維持率(%)は、以下の式で求めた。
100サイクル後容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
5−3:ガス発生試験
初充放電後の電池を、水浴中に浸して体積を測定した後、50℃の環境下、1Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後、4.8Vの定電圧で一週間連続充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。
電池を室温まで冷却させた後、水浴中に浸して体積を測定し、連続充電前後の電池の体積変化から、連続充電後発生ガス量(mL)を求めた。その結果、連続充電後発生ガス量(mL)は1.17mLと少なかった。
[実施例13]
実施例12の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートの代わりに、ビス(2−プロピニル)ヘキシルホスホネートを用いた以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は74%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.21mLと少なかった。
[実施例14]
実施例12の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートの代わりに、ビス(2−プロピニル)フェニルホスホネートを用いた以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は67%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.26mLと少なかった。
[実施例15]
実施例12の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiBFを0.5質量%添加した以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は79%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.15mLと少なかった。
[実施例16]
実施例12の非水電解液の調製において、LiB(Cの代わりに、LiBF(C)を用いた以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は77%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.16mLと少なかった。
[実施例17]
実施例12の非水電解液の調製において、LiB(Cの代わりに、LiPF(Cを用いた以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は77%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.18mLと少なかった。
[実施例18]
実施例12の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、1質量%添加した以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は79%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.04mLと少なかった。
[実施例19]
実施例12の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、3質量%添加した以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は77%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.01mLと少なかった。
[実施例20]
実施例12の非水電解液の調製において、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、5質量%添加した以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は68%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は0.97mLと少なかった。
[実施例21]
実施例12の非水電解液の調製において、LiB(Cを1質量%添加する代わりに、0.5質量%添加した以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は75%と高く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.18mLと少なかった。
[比較例6]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例12の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は32%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は4.32mLと多かった。
[比較例7]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例12の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は64%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は2.62mLと多かった。
[比較例8]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、トリス(2−プロピニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPFを12.1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例12の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は60%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は1.47mLと多かった。
[比較例9]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを12.1質量%と、LiBFを0.5質量%と、LiB(Cを1質量%とを添加して非水電解液とした。実施例12の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例12と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率(%)は65%と低く、連続充電後発生ガス量(mL)は2.61mLと多かった。
以上の実施例12〜21、及び比較例6〜9で得られた結果を、表2に示す。表2から、実施例12〜21のリチウムイオン二次電池は何れも、三重結合含有リン酸エステル(A)及びリチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例6、三重結合含有リン酸エステル(A)を含まない非水電解液を用いた比較例7及び9、リチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例8と比して、サイクル特性が向上し、ガス発生量が低減していることが明らかとなった。以上より、本発明の効果は、非水電解液中に三重結合含有リン酸エステル(A)とシュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を共存させた場合に、特有の効果であることが示された。また、満充電時の上記正極の電位がリチウム基準で4.8Vという高電圧であっても、ガスの発生、すなわち電解液の分解が抑制され、サイクル特性に優れることが示された。
本発明の非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、各種民生機器用電源、自動車用電源への産業上利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. 一般式(1)で表される三重結合含有リン酸エステル化合物(A)と、
    シュウ酸構造を有さないリチウム塩化合物(B)と、
    シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)と、
    非水溶媒と、
    を含有する、非水電解液。
    (式(1)中、aは、1以上3以下の整数を表し、bは、それぞれ独立に0以上10以下の整数を表し、Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1以上15以下のアルコキシ基、及び置換されてもよい炭素数6以上15以下のアリール基からなる群より選ばれる一種を表し、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子及び置換されていてもよい炭素数1以上10以下の有機基からなる群より選ばれる一種を表す。)
  2. 上記(A)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の非水電解液。
  3. 上記(B)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、3質量%以上30質量%以下であり、
    上記(C)成分の含有量が、非水電解液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水電解液。
  4. 上記(B)成分が、LiPFを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解液。
  5. 上記(B)成分が、LiPFと、LiPO及び/又はLiBFと、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解液。
  6. 上記(C)成分が、LiB(C、LiBF(C)、LiP(C、LiPF(C、及びLiPF(C)からなる群より選ばれる一種以上のリチウム塩化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液。
  7. 上記(A)成分が、上記一般式(1)におけるR2、R3、R4が、全て水素原子である三重結合含有リン酸エステル化合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水電解液。
  8. 正極と、負極と、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水電解液とを備え、
    満充電時の上記正極の電位がリチウム基準で4.4V以上5.5V以下である、リチウムイオン二次電池。
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