JP2015059168A - 脂肪族ポリエステルの製造装置 - Google Patents

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Yoshiaki Mori
義昭 森
真一郎 松園
Shinichiro Matsuzono
真一郎 松園
一裕 牧野
Kazuhiro Makino
一裕 牧野
久保 和也
Kazuya Kubo
和也 久保
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Abstract

【課題】脂肪族ポリエステルの製造装置において、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管の内壁に触媒の固形物が付着しにくく、触媒を連続して供給することが可能であり、品質の良好な脂肪族ポリエステルを長期間安定して製造することが可能な脂肪族ポリエステルの製造装置を提供する。
【解決手段】少なくとも脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールをエステル化するエステル化反応槽、該エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する重縮合反応槽、及び該エステル化反応槽と該重縮合反応槽とを連結する移送配管を備えた脂肪族ポリエステルの製造装置であって、該移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられ、さらに触媒供給配管が該移送配管に接続されている脂肪族ポリエステルの製造装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、脂肪族ポリエステルの製造装置に関する。詳しくは、脂肪族ポリエステルを製造する装置において、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管の内壁に触媒の固形物が付着しにくく、触媒を長期間安定的に連続して供給することが可能であり、脂肪族ポリエステルを長期間安定的に製造可能な脂肪族ポリエステルの製造装置に関する。
ジカルボン酸とジオールとを原料とし、エステル化及び重縮合反応して得られるポリエステルはフィルム、繊維、容器など種々の用途に利用されている。中でも、ポリブチレンサクシネートに代表される脂肪族ポリエステルは、その原料を植物資源由来のものに求めることができること、良好な物性および生分解性を有することなどから、農業資材、土木資材、植生資材、包装材等の製品に加工され、広範に利用されつつある。
一般に、ポリエステルの重縮合反応は、回分法、連続法、或いは回分法と連続法とを組み合わせた方法で行われる。これらの中で工業的に大量生産する場合は、生産性、品質安定性、経済性などの面から連続法が有利であり、芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど大量生産されているものでは連続方法によるものが圧倒的に多い。
また、経済的に有利なポリエステルの製造方法としては、ジカルボン酸とジオールとの直接エステル化反応、或いは、ジカルボン酸のアルキルエステルとジオールとのエステル交換反応によりエステル低重合体を製造後、加熱減圧下重縮合反応を行い、生成するジオールを反応系から留去して高重合度のポリエステルを製造する方法が古くから知られており、重縮合反応には通常触媒が用いられる。
脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルと脂肪族ジオールとを主成分とする脂肪族ポリエステルの製造方法としては、例えば、テトラブチルチタネート等の有機アルコキシ金属化合物を触媒として重縮合反応を行い、鎖延長剤としてジイソシアネートやジフェニルカーボネートを添加してポリマー鎖長を延ばすことにより高分子量化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、チタン化合物触媒を用いた重縮合反応により脂肪族ポリエステルを製造する方法の改良として、例えば、マグネシウム化合物をチタン系触媒に共存させてポリブチレンサクシネート系またはポリブチレンアジピネート系ポリエステルを製造する方法が提案されており、具体的には、チタン化合物とマグネシウム化合物を1,4−ブタンジオールに溶解してエステル化反応物に添加後、昇温して重合することでポリブチレンサクシネートを回分法で製造する方法が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平4−189822号公報 特開2001−98065号公報
ところが、本発明者等の検討によれば、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボ
ン酸アルキルエステルと脂肪族ジオールとを主成分とするポリエステルの連続的製造方法において、これらの触媒を溶液状態としてエステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する配管を通じて反応系に連続的に添加すると、触媒が固化して触媒の固形物が配管の内壁に付着し、触媒を連続して供給することが困難になり、また、得られるポリエステルの物性に問題を生じることが判明した。図7に移送配管の内壁に付着した析出物を示す。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、脂肪族ポリエステルの製造装置において、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管の内壁に触媒の固形物が付着しにくく、触媒を連続して供給することが可能であり、品質の良好な脂肪族ポリエステルを長期間安定して製造することが可能な脂肪族ポリエステルの製造装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーを設け、さらに該移送配管及び/又は該スタティックミキサーに触媒供給配管を接続し、該触媒供給配管から触媒を供給することにより、触媒を連続して供給することが可能であり、品質の良好な脂肪族ポリエステルを長期間安定して製造することが可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 少なくとも脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールをエステル化するエステル化反
応槽、該エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する重縮合反応槽、及び該エステル化反応槽と該重縮合反応槽とを連結する移送配管を備えた脂肪族ポリエステルの製造装置であって、該移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられ、さらに触媒供給配管が該移送配管及び/又は該スタティックミキサーに接続されている脂肪族ポリエステルの製造装置。
[2] 前記移送配管に少なくとも2個のスタティックミキサーが設けられている[1]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
[3] 前記触媒供給配管が、スタティックミキサーに接続されている[1]又は[2]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
[4] 前記触媒供給配管が、前記エステル化反応槽と、前記エステル化反応槽の側から
最後のスタティックミキサーとの間の移送配管及び/又はスタティックミキサーに接続されている[1]〜[3]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
[5] 前記スタティックミキサーを設けた移送配管を2系列以上有する[1]〜[4]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
[6] 少なくとも何れかのスタティックミキサーは、内径(d)と長さ(L)との比(
L/d)が2〜200である[1]〜[5]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
[7] 少なくとも何れかのスタティックミキサー内を流れるエステル化物のレイノルズ
数(Re)が500〜100,000となるように設計されている[1]〜[6]に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
本発明によれば、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管の内壁に触媒の固形物が付着しにくく、触媒を連続して供給することが可能であり、品質の良好な脂肪族ポリエステルを長期間安定して製造することが可能な脂肪族ポリエステルの製造装置を提供するが可能となる。
エステル化反応工程の一実施形態を示す概略図である。 重縮合反応工程の一実施形態を示す概略図である。 エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管、移送配管に設けられたスタティックミキサー、及び触媒供給配管の一実施形態を示す概略図である。 触媒供給用Y形弁の一実施形態を示す概略図である。 触媒供給用注入弁の一実施形態を示す概略図である。 2個のスタティックミキサーを設けた移送配管を2系列有する移送配管の配列の一実施形態を示す概略図である。 移送配管の内壁に付着した析出物。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造装置は、少なくとも脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールをエステル化するエステル化反応槽、該エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する重縮合反応槽、及び該エステル化反応槽と該重縮合反応槽とを連結する移送配管を備え、該移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられ、さらに触媒供給配管が該移送配管及び/又は該スタティックミキサーに接続されている。
その他、必要に応じて、スラリー調製槽、触媒調製槽、重縮合反応槽からの反応物をストランド形態にするダイ、ストランドを冷却する冷却器、および冷却されたストランドを切断するカッター等を備えてもよい。
<脂肪族ジカルボン酸>
脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの鎖状脂肪族ジカルボン酸;1,2−
シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などを挙げることができ、機械的物性や用途の広さ、原料の入手容易さ等の観点からは、コハク酸、アジピン酸が好ましい。尚、コハク酸、アジピン酸は植物原料由来のものを使用することができる。尚、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これら脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸として、脂肪族ジカルボン酸無水物として、又はジカルボン酸のアルキルエステルとして反応に供することができ、ジカルボン酸とジカルボン酸アルキルエステルの混合物としてもよい。ジカルボン酸アルキルエステルのアルキル基に特に制限はないが、アルキル基が長いとエステル交換反応時に生成するアルキルアルコールの沸点が高く反応液相中から揮発しにくく、結果的に末端停止剤として働き重合を阻害するため、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、中でもメチル基が好適である。
<脂肪族ジオール>
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4-ブタンジ
オール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの鎖状脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロ
ヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールが挙げられる。尚、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどは植物原料由来のものを使用する
ことができる。これらの中で得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。尚、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、上記の中で、1,4−ブタンジオールは得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から好ましく、この場合、全脂肪族ジオールに対する1,4−ブタンジオールの割合は50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上である。
<その他原料化合物>
本発明の脂肪族ポリエステルのその他の構成成分(共重合成分)の原料としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸、及びこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等、或いはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール、或いは、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。また、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上のアルコール、3官能以上のカルボン酸などの3官能以上の多官能化合物は少量加えることにより高粘度のポリエステルを得やすい。中でも、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸などの3官能以上のオキシカルボン酸が好ましく、特にはリンゴ酸が好ましく用いられる。
その他原料化合物は、全ジカルボン酸に対して、通常0.001モル%以上、好ましくは0.05モル%以上であり、通常5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下の割合で使用される。多すぎるとゲル(未溶融物)が生成しやすく、少なすぎると粘度上昇の効果が得られにくい。
<脂肪族ポリエステル>
本発明の脂肪族ポリエステルの融点は、その原料の種類、原料の使用割合、及び反応条件により一概には言えないが、融点が、通常、200℃以下、好ましくは190℃以下、更に好ましくは160℃以下である。融点200℃以下の脂肪族ポリエステルとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを原料成分とする脂肪族ポリエステルなどがあげられる。中でもコハク酸と1,4-ブタンジオールとの脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート
)は、得られる脂肪族ポリエステルの物性の点から好ましい。
また、本発明の脂肪族ポリエステルの固有粘度(IV)は、通常、1.0〜2.5である。尚、固有粘度(IV)は、後述に記載の方法により測定される。
<脂肪族ポリエステルの製造>
以下、本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法を、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸を、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオールを、その他成分としてリンゴ酸を用いて、ポリブチレンサクシネートを製造する例として示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
ポリブチレンサクシネートの製造方法は大きく分けてコハク酸を主原料として用いるいわゆる直接重合法と、コハク酸ジアルキルエステル、好ましくはコハク酸ジメチルを主原料として用いるエステル交換法がある。前者は初期のエステル化反応で主に水が生成し、
後者は初期のエステル交換反応で主にアルコールが生成するという違いがあるが、反応留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さという観点からは直接重合法が好ましい。
<エステル化反応槽及び重縮合反応槽>
本発明に用いるエステル化反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部および軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で抜き出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。
攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械工業株式会社)、フルゾーン(登録商標)翼(株式会社神鋼環境ソリューション)等が挙げられる。エステル化反応槽は、一槽でも、あるいは連続する複数のエステル化反応槽としてもよい(以下、最後のエステル化反応槽を「最終のエステル化反応槽」という場合がある)。
本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
<エステル化反応>
脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸と脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールとのエステル化反応は連続する複数のエステル化反応槽で行うことができるが、一槽のエステル化反応槽でも行うことができる。また、品質の安定化、エネルギー効率の観点からは、原料を連続的に供給し、連続的にポリブチレンサクシネートを得るいわゆる連続法が好ましく、本発明では連続方法を採用する。
コハク酸に対する1,4−ブタンジオールの仕込みモル比の下限は通常0.95、好ましくは1.00、より好ましくは1.05であり、上限は通常2.00、好ましくは1.80、より好ましくは1.60である。仕込みモル比が少なすぎると反応速度が低下する傾向があり、多すぎると得られるポリエステルの色調が悪くなる傾向がある。またフィルム用途など溶融粘度を高くしたい場合は多官能化合物を添加することが好ましく、多官能化合物としてはリンゴ酸などが挙げられる。コハク酸に対するリンゴ酸の仕込みモル%は0.05〜0.50モル%が好ましい。上記割合が少なすぎると粘度を高くする効果が低い傾向にあり、上記割合が多すぎるとゲル化による異物が発生する場合がある。
エステル化の反応温度は、通常、下限が150℃、好ましくは180℃、より好ましくは200℃であり、上限は260℃、好ましくは250℃、より好ましくは240℃である。温度が低すぎるとエステル化反応速度が遅く反応時間を長時間必要とし、脂肪族ジオールの脱水分解など好ましくない反応が多くなる。温度が高すぎると脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解が多くなり、また反応槽内に飛散物が増加し異物発生原因となりやすく反応物に濁り(ヘーズ)を生じやすくなる。
又、エステル化の反応温度は一定温度であることが好ましい。一定温度であることによりエステル化率が安定する。一定温度とは設定温度±5℃、好ましくは±2℃である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、50kPa〜200kPaであり、下限は好ましくは60kPa、更に好ましくは70kPa、上限は好ましくは130kPa、更に好ましくは110kPaである。圧力が小さすぎると反応槽内に飛散物が増加し反応物のヘーズが高くなり異物増加の原因となりやすく、又脂肪族ジオールの反応系外への留出が多くなり重縮合反応速度の低下を招きやすい。圧力が大きすぎると、脂肪族ジオールの脱水分解が多くなり、重縮合速度の低下を招きやすい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
<重縮合反応>
重縮合反応は、連続する複数の重縮合反応槽(以下、複数の重縮合反応槽を有する場合の、最初の重縮合反応槽を「最初の重縮合反応槽」、最後の重縮合反応槽を「最終の重縮合反応槽」という場合がある)で行われる。エステル化反応槽で得られたエステル化物(脂肪族ポリエステル低重合体)は、最終のエステル化反応槽から抜き出され移送配管を通じて、最初の重縮合反応槽に移される。重縮合反応は、通常、減圧下で行なわれる。重縮合反応槽内での反応圧力は、下限が通常0.01kPa以上、好ましくは0.03kPa以上であり、上限が通常3.5kPa以下、好ましくは3.0kPa以下であり、複数の重縮合反応槽を経るに従って減圧とする。この点から、最終の重縮合反応槽の上限は、1.4kPa以下、好ましくは0.4kPa以下として行う。重縮合反応時の圧力が高すぎると、重縮合時間が長くなり、それに伴い脂肪族ポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示す脂肪族ポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。一方、超高真空重縮合設備を用いて製造する手法は重縮合反応速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要となるため、経済的には不利である。
反応温度は、下限が通常215℃、好ましくは220℃であり、上限が通常270℃、好ましくは260℃の範囲である。温度が低すぎると、重縮合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となる為、経済的に不利である。一方、温度が高すぎると製造時のポリエステルの熱分解が引き起こされやすく、高重合度の脂肪族ポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不充分で高重合度のポリエステルが得にくく、その成形品の機械物性が劣る傾向となる。一方、反応時間が長すぎると、脂肪族ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、その成形品の機械物性が劣る傾向となるばかりでなく、脂肪族ポリエステルの耐久性に悪影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。ここで反応時間とは、複数の重縮合反応槽における反応時間の合計を意味する。
<エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管>
本発明における脂肪族ポリエステル製造装置には、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管が備えられている。より詳細には、移送配管は、最終のエステル化反応槽と最初の重縮合反応槽とを連結しており、移送配管中には、エステル化物が流れている。移送配管の内径は、移送配管中を流れるエステル化物の量等により異なるが、好ましくは、内径5mm〜250mmである。
<スタティックミキサー及び触媒供給配管>
本発明における移送配管には、少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられており、さらに移送配管及び/又はスタティックミキサーに触媒供給配管が接続されている。
本発明におけるスタティックミキサーは、駆動部のないラインミキサーであり、移送配管中のエステル化物の流れを乱す機能を有するものであれば、特に限定されない。スタティックミキサーは、エステル化物の流れを乱すために、1個のスタティックミキサーの内部が複数の部材(以下、「エレメント」という場合がある)で構成されている。例えば、平板を捩ったエレメントを、角度を変えて交互に配置する等して、エステル化物の流れを乱すことができる。スタティックミキサーの個数は、スタティックミキサーを構成するエレメント構造およびエレメントの個数で調整でき、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物の付着を抑制することができれば特に限定されないが、1系列の移送配管に、通常1個以上、好ましくは2個以上であり、一方好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。以下、エステル化反応槽側から最初のスタティックミキサーを「第一のスタティックミキサー」という場合がある。また、以下、エステル化反応槽側から最後のスタティックミキサーを「最終のスタティックミキサー」という場合がある。
触媒供給配管が接続される箇所は限定されないが、エステル化反応槽と最終のスタティックミキサーとの間の移送配管に接続されることが好ましい。このとき、移送配管への触媒供給配管の接続箇所は、最終のスタティックミキサーの入口に近い移送配管であることが好ましく、最終のスタティックミキサーの入口を基点として、最終のエステル化反応槽側へ、スタティックミキサーの内径(d)の0〜200倍の位置とすることが好ましい。ここで、0倍とは、触媒供給配管の外表面とスタティックミキサーの入口が、製作可能な範囲で最も近い距離を意味する。このような形態とすることにより、エステル化物と重縮合触媒との混合液をスタティックミキサーで十分に混合するとともに、混合液の流れを乱すことにより、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物の付着を抑制することができる。
また、触媒供給配管が接続される箇所の別の好ましい態様としては、スタティックミキサーに接続することである。この場合、スタティックミキサーへの触媒供給配管の接続箇所は、エステル化物の流れ方向に対して、より上流側であることが好ましい。上流側に接続することにより、スタティックミキサー内に供給された重縮合触媒は、下流側のエレメントにより、エステル化物と十分に混合することができるとともに、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物の付着を抑制することができる。
さらに、別の好ましい態様としては、エステル化物の流れをより乱す観点から、スタティックミキサーを移送配管に少なくとも2個設け、触媒供給配管が、第一のスタティックミキサーと最終のスタティックミキサーとの間の移送配管に接続されていることが好ましい。このように、第一のスタティックミキサーと最終のスタティックミキサーとの間の移送配管に触媒供給配管を接続する理由は、エステル化物と重縮合触媒とを十分に混合するとともに、移送配管内でのエステル化物と重縮合触媒との混合液の流れを乱すことにより、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物の付着を抑制するためである。また、最終のスタティックミキサーと最初の重縮合反応槽との間の移送配管に触媒供給配管を接続してもよい。
また、本発明は、スタティックミキサーを設けた移送配管を2系列以上有することが好ましい。この態様は、スタティックミキサーを設けた移送配管を並列に2系列以上有することを意味する。より好ましくは、少なくとも2個以上のスタティックミキサーを設けた移送配管を並列に2系列以上有することである。2系列以上有することにより、1系列が洗浄や補修、さらには何らかの原因で使用できなくなった際等に、他の1系列を使用して脂肪族ポリエステルを長期間安定的に製造することができる。
なお、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物が付着することを抑制するために、スタティックミキサー内でのエステル化物の流動が以下の式(1)を満たすように、スタティックミキサーが設計されていることが好ましい。
レイノルズ数(Re)=d1×u1×ρ1/μ1=500〜100,000 (1)
(ここで、u1はスタティックミキサー内でのエステル化物の空塔速度[m/s]であり、u1=v1/(π×d1/4)、πは円周率、v1はスタティックミキサー内でのエステル化物の容積流量[m/sec]、d1はスタティックミキサーの内径[m]、ρ1はエステル化物の密度[kg/m]、μ1はエステル化物の粘度[Pa・s]である。)
レイノルズ数(Re)は、より好ましくは750〜50,000、さらに好ましくは1,000〜20,000である。レイノルズ数(Re)が、前記下限未満であると、混合が不十分で触媒が配管に付着する傾向がある。一方、前記上限を超えると、スタティックミキサーでの圧力損失が大きくなる傾向がある。
さらに、本発明は、少なくとも何れかのスタティックミキサーの内径(d)と長さ(L)との比(L/d)が2〜200であることが好ましい。より好ましくは5〜100である。L/dが前記下限未満であると、混合が不十分で触媒が配管に付着する傾向がある。一方、前記上限を超えると、スタティックミキサーでの圧力損失が大きくなる傾向がある。
<重縮合触媒及び触媒添加>
エステル化反応及び重縮合反応は、触媒を使用することにより反応が促進される。エステル化反応においてはエステル化反応触媒が無くても十分な反応速度を得ることができるが、本発明における重縮合反応においては、反応促進のため触媒を用いる。
本発明における触媒供給配管は、以下に詳述する重縮合触媒のうち少なくとも1種を供
給する。
重縮合触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物が用いられる。金属元素としては、具体的には、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。その中では、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムが好ましい。更に、脂肪族ポリエステルの熱安定性に影響を与えるカルボキシル基末端濃度を低減させる為には、上記金属の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステンであり、特に、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましく、更には反応活性の点からチタンが好ましい。
触媒として用いるチタン化合物としては、テトラアルキルチタネート及びその加水分解物が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネート、及びこれらの加水分解物が挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。
特に、チタン化合物を用いる場合には、重縮合触媒として、アルカリ土類金属化合物を併用するのが好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、炭酸マグネシウム、酸化カ
ルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属の酢酸塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩等が挙げられ、中でも、マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい。チタン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の割合は、通常、アルカリ土類金属/Ti(モル比)として、0.1/1〜10/1、好ましくは、0.5/1〜2/1である。
また、チタン化合物及びアルカリ土類金属化合物、更にリン化合物を予め混合して得られた触媒も有効である。リン化合物としては、正燐酸、ポリ燐酸、及び、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等のリン酸エステル等の5価の燐化合物、並びに、亜燐酸、次亜燐酸、及び、ジエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3価の燐化合物等が挙げられる。チタン化合物に対するリン化合物の割合は、P/Ti(モル比)として、通常0.1/1〜10/1、好ましくは、0.5/1〜2/1である。
チタン化合物及びアルカリ土類金属化合物、更にリン化合物を予め混合して得られた触媒の中でも、リン化合物として酸性リン酸エステル(リン酸の部分エステル)を使用することによって得られた触媒は、重合活性が高く生産性が良好であり、又、得られる脂肪族ポリエステルの物性の点で好ましい。この場合の、チタン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の割合、及び、チタン化合物に対する酸性リン酸エステルの割合は、上記アルカリ土類金属/Ti(モル比)及びP/Ti(モル比)と同様である。
触媒成分を混合する際は、通常、溶媒を使用し、溶媒としては、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物を均一溶液とできれば特に限定されないが、アルコールが好適に用いられ、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコール、及び、グリコール等の2価のアルコール等が挙げられる。このうち、化合物の溶解性や取り扱いの容易さから、1価のアルコールが好ましく用いられる。これらのアルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記アルコールの中でも、特にチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、酸性リン酸エステル化合物の溶解性が高いこと、及び、後述の通り、これらを混合して得られた触媒溶液を濃縮して使用する場合には、沸点が低く除去しやすいことから、エタノールが好ましい。
尚、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及びリン酸エステル化合物をアルコールと混合することにより得られる液状物をそのまま触媒として使用することも可能であるが、これを濃縮してアルコールを留去して得られるものが好ましい。
その製造方法としては、(i)アルコール、チタン化合物、アルカリ金属化合物及び酸性リン酸エステル化合物を混合、溶解、反応させる工程、及び、(ii)工程(i)で得た反応溶液からアルコールなどを留去することにより濃縮を行うと同時に更に反応を進め、粘稠な液体状触媒、又は固体状触媒、あるいはこれらの混合物を得る工程、により製造する方法が挙げられる。工程(i)の反応は、通常、常温程度で各成分が溶解する時間混合することにより行われるが、この時、用いられるアルコールは反応には関与せず、単に溶媒としてのみ働くものと考えられる。
尚、得られる触媒の形態が、粘稠な液体状触媒、固体状触媒、あるいはこれらの混合物と得られる触媒の形態が異なるのは、濃縮の度合いによるものである。工程(ii)で得
られる触媒はそのままか、あるいは1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールなどのグリコールなどに溶解させてから容易に回収することができる。なお、濃縮時に留去されるものは溶媒として用いられるアルコールと、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の反応によって副生するアルコール、有機酸などである。
このようにして得られる触媒は、溶媒として用いられたアルコールを除く原料の総重量よりも必ず重量が減少している。得られる触媒の重量W1と、混合に用いた、即ち、上記工程(i)の工程でアルコールと混合したチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の重量の和W0との比W1/W0は、通常0.45以上0.85以下である。この比は用いられる原料化合物の種類、組成比によって変化する。
また、上記工程(ii)でアルコールなどを留去し濃縮されて得られた液体状触媒、又は固体状触媒、あるいはこれらの混合物中に残留する調製溶媒として使用したアルコールの量は5wt%以下であり、好ましくは1wt%以下、最も好ましくは0.2wt%以下である。残留アルコール量が5wt%より多いと重合留出系への負荷が大きくなる傾向がある。
上記重縮合触媒の中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート及びブチルチタネートダイマー等のチタン化合物、並びに、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、酸性リン酸エステル化合物及びアルコールを混合することにより得られる液状物またはその濃縮物が好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート及びチタンテトラアセチルアセトネート、並びに、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、酸性リン酸エステル化合物及びアルコールを混合することにより得られる液状物またはその濃縮物が好ましい。
これらの重縮合触媒の添加量は、生成する脂肪族ポリエステルに対して、金属量として、通常、0.1重量ppm以上、好ましくは0.5重量ppm以上、より好ましくは1重量ppm以上であり、通常、3000重量ppm以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは250重量ppm以下、特に好ましくは130重量ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、理由は未だ詳らかではないが、脂肪族ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が多くなる場合がある為、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大により脂肪族ポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴い脂肪族ポリエステル製造中に脂肪族ポリエステルの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示す脂肪族ポリエステルが得られにくくなる傾向がある。
本発明では、移送配管及び/又はスタティックミキサー内のエステル化物の液中に、触媒供給配管を介して、触媒を連続的に添加することが好ましい。
重縮合触媒は、溶媒に溶解した触媒溶液としてエステル化物の液中に添加することにより、重合速度を高めることが可能である。尚、触媒溶液は、液状であれば一部触媒成分が分散しているような完全な溶液でなくても良いが、触媒の安定な供給のためには、均一な溶液であるのが好ましい。
重縮合触媒を溶解させるための溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの1価アルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述の脂肪族ジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等
のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられる。中でも、溶媒として、脂肪族ポリエステルの脂肪族ジオールと同一のジオールを用いることは、留出不純物を低減できる点で好ましい。
触媒溶液中の重縮合触媒濃度の上限値は、触媒金属濃度として、通常10重量%、好ましくは3重量%、更に好ましくは1.5重量%、特に好ましくは0.5重量%であり、その下限値は、触媒金属濃度として、通常0.01重量%、好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%である。触媒金属濃度が高すぎる場合は、溶液中で触媒が析出しやすく触媒の安定な供給がしにくくなり、低すぎる場合は、希釈溶媒を多量に反応器に送り込むこととなるため、分子量の低下を招いたり、反応器や減圧装置、加熱装置など、重縮合設備への負荷が増大する傾向にある。
エステル化反応時に重縮合触媒が存在すると、エステル化反応によって生じる水により重縮合触媒が反応物に不溶の析出物を生じ、得られるポリエステルをフィルムなどの成形品とした際に透明性を損なう(即ちヘーズが高くなる)こととなり、又、脂肪族ポリエステル中で異物化することとなる。また、重縮合触媒を重合反応槽の気相部に添加すると、得られるポリエステルのヘーズか高くなったり、重縮合触媒が異物化することとなる。この観点から、最初の重縮合反応槽に先立つ段階の、第一のスタティックミキサーと最終のスタティックミキサーとの間の移送配管中のエステル化物中に触媒溶液として添加されることが好ましい。
尚、重縮合触媒添加時のエステル化物のエステル化率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上である。本発明でエステル化率とはエステル化反応物試料中の全酸成分に対するエステル化された酸成分の割合を示すものであり以下の式(2)で表される。
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価)/ケン化価)×100 (2)
重縮合触媒添加時のエステル化物のエステル化率が低いと残存脂肪族ジカルボン酸と重縮合触媒が反応して異物化する場合がある。
本発明においては、エステル化物に添加される重縮合触媒溶液の温度が、最終的に得られる脂肪族ポリエステルの融点以上200℃以下であることが好ましい。重縮合触媒溶液の温度の下限は、好ましくは(脂肪族ポリエステルの融点+5)℃、更に好ましくは(ポリエステルの融点+10)℃であり、上限は好ましくは180℃、更に好ましくは160℃である。重縮合触媒溶液の温度が低すぎると、添加口周辺で反応液が固化し、重縮合触媒溶液を安定して添加するのが困難となる傾向がある。重縮合触媒溶液の温度が高すぎると、重縮合触媒溶液中で触媒成分が変質し、析出して移送配管が閉塞を起こし、重縮合触媒の添加が困難となる。また、得られる脂肪族ポリエステルをフィルムとした時のフィッシュアイが増加するなど、脂肪族ポリエステルの性能が劣る場合がある。
尚、重縮合触媒溶液の温度の調節は、重縮合触媒溶液貯槽の温度コントロール、触媒供給配管の温度コントロールなどにより行うことができる。具体的には貯槽又は、触媒供給配管をジャケット付きとし、そのジャケット内に温度調節された熱媒を流通させることにより行うことができる。
重縮合触媒溶液のエステル化物への添加を触媒供給配管を通じて行う際、重縮合触媒溶液の触媒供給配管内線速は、触媒供給配管の閉塞を防止する観点から、好ましくは0.01m/s以上、より好ましくは0.02m/s以上、さらに好ましくは0.05m/s以上である。一方、好ましくは5m/s以下、より好ましくは2m/s以下、さらに好ましくは1m/s以下である。
<製造ライン例>
以下に、図面に基づき、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオール、多官能化合物としてリンゴ酸を原料とする脂肪族ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1はエステル化反応工程の一実施形態を示す概略図、図2は重縮合反応工程の一実施形態を示す概略図、図3はエステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管、移送配管に設けられたスタティックミキサー、及び触媒供給配管の一実施形態を示す概略図、図4は触媒供給用Y型弁の一実施形態を示す概略図、図5は触媒供給用注入弁の一実施形態を示す概略図、図6は、2個のスタティックミキサーを設けた移送配管を2系列有する移送配管の配列の一実施形態を示す概略図である。
図1において、原料のコハク酸及びリンゴ酸は、通常、スラリー調製槽(図示せず)で1,4−ブタンジオール(以下、「BG」という場合がある)と混合され、原料供給ライン(1)からスラリー又は液体の形態でエステル化反応槽(A)に供給される。また、エステル化反応時に触媒添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)でBGの溶液とした後、BG供給ライン(3)に触媒溶液を供給してなされる。図1では再循環1,4−ブタンジオールの再循環ライン(2)にBG供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、エステル化反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
エステル化反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸点成分と低沸点成分とに分離される。通常、高沸点成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸点成分の主成分は、水及びBGの分解物であるテトラヒドロフラン(以下、「THF」という場合がある)である。精留塔(C)で分離された高沸点成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部はBG再循環ライン(2)からエステル化反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された低沸点成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた低沸点成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽(A)内で生成したエステル化物は、抜出ポンプ(B)及び移送配管(4)を経て最初の重縮合反応槽(a)に供される。なお、抜出ポンプ(B)は、必要に応じて設けても設けなくてもよい。
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)にBG供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)はエステル化反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。
本実施態様では、エステル化反応槽(A)と最初の重縮合反応槽(a)との間のエステル化物に重縮合触媒溶液を添加する。図の例では、図3の移送配管(4)に設けられた第一のスタティックミキサー(H)と最終のスタティックミキサー(I)との間に接続された触媒供給配管(L7)を通じて重縮合触媒溶液を添加する。重縮合触媒溶液添加部には、公知の各種バルブが使用可能であるが、重縮合触媒溶液の添加流量を調整可能なグローブ弁、Y型弁、又は注入弁が好ましく、Y型弁、又は注入弁がより好ましく、弁周りでの重縮合触媒溶液の滞留や逆流が少ない注入弁が最も好ましい。Y型弁としては図4の様な形式が、注入弁としては図5の様な形式が例示される。
図4及び図5において、エステル化反応槽から抜き出されたエステル化物は、移送配管を通して31の方向で供給され、一方、重縮合触媒溶液は、移送配管と連結するY型弁又は注入弁から、32の方向で供給される。その際、ステム35をハンドル36で移動させ
ることにより、流路の開度を変化させて重縮合触媒液の供給量を調節することが可能である。尚、図4における移送配管及びY型弁及び図5における移送配管及び注入弁は、移送配管用熱媒ジャケット33及び触媒供給配管用熱媒ジャケット34により保温されており、触媒の添加温度の調節は、触媒供給配管のジャケット温度で調節され、具体的には移送配管及び弁に敷設するジャケットに流通する熱媒の温度を調節することができる。
上記配管で、触媒溶液が添加されたエステル化物(脂肪族ポリエステル低重合体)は、最初の重縮合反応槽(a)で減圧下に重縮合されて重縮合が進む。その後、抜出用ギヤポンプ(c)及び抜出ライン(L1)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、最初の重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合反応が進む。得られた重縮合物は、抜出用ギヤポンプ(e)及び抜出ライン(L3)を経て、第3重縮合反応槽(k)(最終の重縮合反応槽)に供給される。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入された重縮合反応物は、ここで更に重縮合反応が進められた後、抜出用ギヤポンプ(n)、抜出ライン(L5)を経てダイ(r)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(u)で切断されて脂肪族ポリエステルペレットとなる。なお、抜出用ギヤポンプ(c、e)は必要に応じて設けても設けなくてもよい。符号(L2)、(L4)、(L6)は、それぞれ、最初の重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)のベントラインである。移送配管(4)、L1、L3、L5には必要に応じて各ラインの途中に異物除去効果と運転安定性とを考慮してフィルターを適宜設置することができる。
本発明によれば、エステル化反応槽と重縮合反応槽とを連結する移送配管を備え、移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられ、触媒供給配管が移送配管及び/又はスタティックミキサーに接続されているため、移送配管の内壁に重縮合触媒の固形物が付着しにくく、その結果、図7に示すような移送配管の内壁に付着した析出物の発生を抑制することが可能となり、脂肪族ポリエステルを長期間安定的に製造可能な脂肪族ポリエステルの製造装置を提供できるため、産業界への寄与は大きい。
1:原料供給ライン
2:再循環ライン
3:BG供給ライン
4:移送配管
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
A:エステル化反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D、E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
H:第一のスタティックミキサー
I:最終のスタティックミキサー
L1、L3、L5:反応物抜出ライン
L2、L4、L6:減圧ライン
L7:触媒供給配管
a:最初の重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、n:抜出用ギヤポンプ
r:ダイ
u:回転式カッター
31:エステル化物の流れ
32:触媒供給の流れ
33:移送配管用熱媒ジャケット
34:触媒供給配管用熱媒ジャケット
35:弁のステム
36:弁の開閉ハンドル

Claims (7)

  1. 少なくとも脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールをエステル化するエステル化反応槽、該エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する重縮合反応槽、及び該エステル化反応槽と該重縮合反応槽とを連結する移送配管を備えた脂肪族ポリエステルの製造装置であって、該移送配管に少なくとも1個のスタティックミキサーが設けられ、さらに触媒供給配管が該移送配管及び/又は該スタティックミキサーに接続されている脂肪族ポリエステルの製造装置。
  2. 前記移送配管に少なくとも2個のスタティックミキサーが設けられている請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
  3. 前記触媒供給配管が、スタティックミキサーに接続されている請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
  4. 前記触媒供給配管が、前記エステル化反応槽と、前記エステル化反応槽の側から最後のスタティックミキサーとの間の移送配管及び/又はスタティックミキサーに接続されている請求項1〜3の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
  5. 前記スタティックミキサーを設けた移送配管を2系列以上有する請求項1〜4の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
  6. 少なくとも何れかのスタティックミキサーは、内径(d)と長さ(L)との比(L/d)が2〜200である請求項1〜5の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
  7. 少なくとも何れかのスタティックミキサー内を流れるエステル化物のレイノルズ数(Re)が500〜100,000となるように設計されている請求項1〜6の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造装置。
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