JP2015057829A - 電磁波シールドカバー及びその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 軟質樹脂ゾルに金型を浸漬して付着乾燥させ、次いで導電性樹脂液に浸漬し付着乾燥させることにより製造可能である。本発明の電磁波シールドカバーは、軟質樹脂層よりなる内層の外側に導電性樹脂層が積層されている。その外側にさらに軟質樹脂層を積層してもよい。導電性樹脂としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリ(4−スチレンスルホン酸)複合体が好ましい。本発明の電磁波シールドカバーの製造方法は工程が簡単で、得られた電磁波シールドカバーは、軟質樹脂層と導電性樹脂層の接着強度が優れている。全体として軟質なので、端子や部品にカバーし易く、密着性に優れ、その結果電磁シールド性が優れる。
【選択図】なし
Description
即ち本発明は以下のとおりである。
2.導電性樹脂液を付着乾燥後、さらに軟質樹脂ゾルに浸漬して導電性樹脂膜の表面の一部または全部に軟質樹脂層を付着乾燥させることを特徴とする前記1の電磁波シールドカバーの製造法。
3.軟質樹脂液が塩化ビニルゾルである前記1又は2の電磁波シールドカバーの製造法。
4.導電性樹脂がポリチオフェン構造を有するものである前記1〜3のいずれか1項の電磁波シールドカバーの製造法。
5.ポリチオフェン構造を有する有機導電性樹脂がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリ(4−スチレンスルホン酸)複合体である前記1〜4のいずれか1項の電磁波シールドカバーの製造法。
6.軟質樹脂層よりなる内層の外側に有機導電性樹脂層を積層してなる電磁波シールドカバー。
7.有機導電性樹脂層の外側の一部または全部にさらに軟質樹脂層を積層してなる前記6の電磁波シールドカバー。
軟質樹脂としては、例えば軟質塩化ビニル、軟質ポリウレタン、各種ゴム、軟質アクリル樹脂、シリコーンなどが例示できる。これらの中で、軟質塩化ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル樹脂ゾルを原料として成形される。
本発明の電磁波シールドカバーは、いわゆるディップ成形により製造される。ディップ成形は、金型を樹脂液に浸漬し、引き上げて金型表面に樹脂液層を形成させ、乾燥離型して成形品を得る方法で、工程が簡単で、装置も安価であるという特徴がある。
塩化ビニルゾルは、特化されたものである必要はなく、一般市販品が使用できる。その粘度に特に制限ないが、常温では1000mPa.S〜3000mPa.Sものであれば良い。
金型を塩化ビニルゾルに浸漬(ディッピング)する。この時金型温度は通常80℃〜150℃、好ましくは110℃〜120℃である。塩化ビニルゾルの温度は通常−10℃〜45℃、好ましくは18〜25℃である。
浸漬後金型を取り出し、熱乾燥炉で乾燥させる。乾燥は通常150℃〜400℃、好ましくは200℃〜300℃で行う。乾燥時間は通常5秒〜20秒、好ましくは10〜15秒である。ついで熱乾燥炉から取り出し、空気中で5秒〜20秒程度自然冷却させる。補助冷却がある場合は、冷却方式により冷却時間を調節すればよい。
次いで、好ましくは110℃〜130℃で乾燥を行う。この範囲の温度で乾燥することにより導電性膜に含有している水分を水泡・気泡形成させないようにゆっくり追い出し、品質の良い導電性膜を得ることができる。
導電膜の肉厚はPEDOT/PPS水溶液粘度で調整できる。上記全体成形条件を満した上、例えばPEDOT/PPS水溶液の粘度を200mPa.S〜400mPa.Sにすると、乾燥後導電膜厚は100〜300μmになる。
カバー表面の絶縁性、導電層を保護する等の必要な場合、PEDOT/PPS皮膜の上に、さらにディッピングによる塩化ビニルの皮膜を形成すれば良い。この場合導電層全面に皮膜を形成してもよく、一部に形成して一部は導電層をそのままむき出しにしてもよい。導電性樹脂層はその全部が塩化ビニル樹脂で積層されると、導電性樹脂層の耐候性、耐劣化が向上し、一部が積層される場合は、積層されていない導電性樹脂層からアースを取ることもできる。
また、本発明の成形工程は連続しているため、塩化ビニル膜と導電性膜との密着性が優れ、力学強度、耐劣化性も優れている。導電性、絶縁性、導電アース取りを好ましく実現でき、実用性かつ柔軟性の高い導電性シールドキャップである。
本発明の電磁波シールドカバーは、電気・電子機器や部品の電磁波シールドに有効である。電磁波シールドは、外部からの電磁波による誤動作の防止または外部へ電磁波の放出防止、いずれにも有効である。例えば、電子回路のコンデンサ、コネクタ、ハーネスやケーブルの端末、バッテリーカバー、モーターカバー等の電磁波シールドに好適に使用できる。付加価値とし、導電性と防水性を兼ね備えた防水導電カバーにも応用できる。
実施例1
常温23℃、湿度50%R.Hの作業条件に軟質樹脂として常温粘度1250mPa.Sの市販塩化ビニルゾルを用い、導電性水溶液は常温粘度340mPa.SのPEDOT/PSSを使用した。金型は先端が半球状の円柱(半径11mm、全長30mm)を用いた。
表面温度が115℃程度になるまで予熱した金型を塩化ビニルゾルに浸漬し、直ちに引き上げ、雰囲気温度250℃の乾燥熱炉で10秒乾燥・固化した後、空中で冷却した。冷却時間は常温で約10秒程度であった。このとき金型の表面温度は約115℃、塩化ビニルキャップ膜の表面温度は約93℃であった。
ついで、金型全体を導電性液体へディッピングイングし、直ちに引き上げた。ディッピングイング速度は最初の1mm/秒から設計ディッピング深度を満たした時点で0mm/秒となるように徐々に落した。同様に導電性水溶液からの引き上げ速度は最初の1mm/秒程度から徐々に落とし、最後は0.5mm/秒程度で導電性液体から完全に離れるようにした。導電性液体からの引き上げた金型全体を120℃の熱炉で10分間水分を蒸発させ乾燥した。
このようにして、得られた本発明の電磁波シールドキャップを目視で観察したところ、気泡や水泡は見られなかった。
実施例1と同様にして、軟質塩化ビニルの表面に導電性樹脂皮膜を形成した後、離型せずに再度塩化ビニルゾルに浸漬し、直ちに引き上げ、乾燥した。浸漬は、アース取りに必要な面積が確保できるようにディッピングインの深度を調節した。軟質塩化ビニル膜は防水機能もあり、カバーの外層に軟質塩化ビニルをコーティングすることによって、実施例1で出来たシールド性を保持しながら、導電性と防水性を兼ね備えた防水導電カバーの応用になる。実施例1と同様に目視で観察したところ、気泡や水泡は見られなかった。
電磁波シールド効果の測定は次のようにして行った。
Agilent社ネットワークアナライザー5071C(測定周波数帯域300KHz〜20GHz)を使用し、S21パラメータを用いて評価した。S21パラメータは高周波伝送線路における電力・信号の減衰特性を評価する係数であり、無線妨害波電力放射特性を評価するためのものでもある。ネットワークアナライザー5071CのPort1と連結した同軸ケーブルコネクタ(N6314Aケーブル、N型−N型、発信アンテナの役割として)に実施例1で成形出来た電磁波シールキャップを被せて信号を発信し、Port1と同様にPort2と連結した同軸ケーブルコネクタを受信側(受信アンテナの役割として)としその信号を拾い、ネットワークアナライザーに返す。シールドカバーを被せることによってPort2側の受信量が減衰するので、シールドカバーを被せる前後の減衰量の差を用い電磁波シールド効果を評価する。
S21は下記により定義される。
S21(dB)=−20×log(減衰率)(マイナス符号“−”は正値を取るために入れたものである)
減衰率=シールド後の電界強度/シールド前の電界強度
横軸は周波数で縦軸はシールド効果(単位はデシベル、dB)である。dBは電磁波シールドカバーを被せた後伝送信号が相対的にどのぐらい減衰したかを数字的に表現するものである。曲線は上に行けば行くほどシールド効果が高いことを示す。
図1より、実施例1の電磁波シールド効果が優れていることが明らかである。
同様に、実施例2のシールド効果を測定したところ、実施例1と殆ど同様のシールド効果を示した。
また、塩化ビニル製のキャップのシールド効果を同様にして測定したところ、殆どシールド効果を示さなかった。
Claims (2)
- 塩化ビニル又はシリコーン樹脂層よりなる内層の外側に(3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリ(4−スチレンスルホン酸)複合体よりなる有機導電性樹脂層を積層してなる電磁波シールドカバー。
- 有機導電性樹脂層の外側の一部または全部にさらに塩化ビニル又はシリコーン樹脂層を積層してなる請求項3の電磁波シールドカバー。
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