JP2015054918A - 蓄熱材用組成物 - Google Patents

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Akihiko Morikawa
明彦 森川
健太郎 鼎
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健太郎 鼎
理夫 森田
Tadao Morita
理夫 森田
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Abstract

【課題】蓄熱材料として十分な蓄熱量を維持しつつ、蓄熱物質がブリードすることがなく、且つ難燃性に優れる蓄熱材料を提供すること。
【解決手段】脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(A)、ならびに脂肪酸金属塩(B)を含有することを特徴とする、蓄熱材用組成物。この蓄熱材用組成物は、好ましくはさらに脂肪酸(C)を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は蓄熱材用組成物に関する。詳しくは、物質の相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱を行う潜熱蓄熱方式の蓄熱材用組成物であって、蓄熱物質のブリードが防止されているとともに難燃性に優れる前記組成物に関する。
蓄熱材は、物質に蓄えたエネルギーを必要に応じて熱として取り出すことができる材料をいう。上記エネルギーとしては、例えば物質の同一相内の温度変化に要する熱量(顕熱)、物質の相変化または転移に要するエネルギー(潜熱)、物質の化学変化に伴って発生するエネルギー等を挙げることができる。
蓄熱材は、例えばゲル状、エマルジョン状、カプセル状等の種々の形態で、水等の熱搬送媒体の存在下または不存在下に、例えばヒートポンプ;ビルディング、家屋、地下街等の空調用途;自動車等の空調、キャニスター用途;ICチップ等の電子部品の昇温防止用途;衣類の繊維、生鮮食品または臓器輸送容器の保冷用途;道路、橋梁等における構造材料の恒温用途;カーブミラー等の鏡面の防曇用途;路面の凍結防止用途;冷蔵庫等の家電用品の冷却・恒温用途;生活用品としての保冷材、カイロ用途等、産業上種々の分野において利用されている。
潜熱蓄熱方式の蓄熱材は、顕熱蓄熱方式の蓄熱材と比較して蓄熱量が大きいという利点がある。
この潜熱蓄熱方式の蓄熱材としては、水の融解−凝固に伴う潜熱を用いた蓄熱材がよく知られている。潜熱型の蓄熱物質として水を用いると、蓄熱量の大きい蓄熱材を得ることができるという利点があるが、水の相変化温度が大気圧下において約0℃に限定されるため、0℃付近の温度領域にしかこれを適用することができない。
潜熱蓄熱方式の蓄熱材料として上記水以外には、例えばパラフィン、脂肪酸エステル等が知られている。これらはそれぞれ炭素数に応じた相変化温度を有するため、適宜の炭素数の化合物を採用することにより、所望の使用温度の近傍に相変化温度を示す蓄熱材を得ることができる。
蓄熱物質として、上記のパラフィン、脂肪酸エステル等を使用する場合、安全性の観点および工業上の適用可能性を拡張するとの観点から、蓄熱物質を拘束し、蓄熱物質のブリードが起こらないようにして用いる技術が提案されている。例えば特許文献1には、脂肪族エステル、脂肪族ケトン等からなる蓄熱物質に水添共役ジエンポリマーを添加することにより、前記蓄熱物質を拘束してなる蓄熱材組成物が提案されており;
特許文献2および3には、それぞれ、パラフィンからなる蓄熱物質に脂肪酸金属塩を添加することにより、前記蓄熱物質を拘束してなる蓄熱材組成物が提案されている。
ところで、蓄熱材を輸送用途に用いる場合、輸送上の難燃性に関する規格である国際連合危険物輸送勧告に基づく試験(国連勧告試験)が課される。上記特許文献1〜3の技術による蓄熱材には上記国連勧告試験のクラス4.1が適用され、該試験に一定の成績を収めないと「可燃性固体」に分類されて輸送時に輸送量および梱包形態上の制限を受けることとなる。しかしながら上記特許文献の技術によると、この意味における難燃性を充足できないのである。
特開2013−6944号公報 特開2009−120734号公報 特開平05−32964号公報 国際公開第2011/78340号パンフレット
本発明は、上記の現状を考慮してなされたものである。
従って本発明の目的は、蓄熱材料として十分な蓄熱量を維持しつつ、蓄熱物質がブリードすることがなく、且つ難燃性に優れる蓄熱材料を提供することである。
本発明によると、本発明の上記目的および利点は、
脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(A)、ならびに
脂肪酸金属塩(B)
を含有することを特徴とする、蓄熱材用組成物によって達成される。
本発明によれば、十分な蓄熱量を維持しつつ、蓄熱物質がブリードすることがなく、且つ難燃性に優れる蓄熱材料が提供される。
実施例1および3ならびに比較例1、2および5〜8で得られた蓄熱材用組成物の燃焼時間を、各例で使用した蓄熱物質の引火点に対してプロットしたグラフ。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ると理解されるべきである。
<蓄熱材用組成物>
本発明の蓄熱材用組成物は、化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)を含有する。この蓄熱材用組成物は、上記化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)のほかに、さらに脂肪酸(C)を含有していてもよい。
[化合物(A)]
本発明の蓄熱材用組成物における化合物(A)は、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。この化合物(A)は、蓄熱材用組成物における蓄熱物質として機能する。
化合物(A)は、より広い範囲の用途への適用が可能な蓄熱材を得るとの観点から、広い温度範囲から適宜の融点を有する化合物を選択して使用することが好ましい。化合物(A)の融点は、−30〜130℃の範囲にあることが好ましく、−20〜100℃の範囲にあることがより好ましい。本明細書において、融点とは、示差走査熱量測定法(DSC法)の測定結果から、JIS K−7121に準拠して決定した補外融解開始温度(Tim)を意味する。化合物(A)は、大きな潜熱量を担保して熱交換効率の高い蓄熱材料を得るとの観点から、DSC法によって測定した潜熱量が、100kJ/kg以上であることが好ましく、170kJ/kg以上であることがより好ましく、200kJ/kg以上であることが特に好ましい。化合物(A)の潜熱量の上限値には技術上の制限は特にないが、原料調達コストを低廉化することおよび取扱いの容易性の観点から、潜熱量は350kJ/kg以下とすることが好ましい。
本発明における化合物(A)としては、1種類の化合物のみを単独で使用してもよく、2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。しかしながら、明確且つシャープな相変化温度を得るとの観点から、化合物(A)として1種類の化合物のみを単独で使用することが好ましい。
以下に、本発明における化合物(A)としての脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルの好ましい態様について、順に説明する。
−脂肪酸エステル−
本発明における脂肪酸エステルとしては、
飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸と、
飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルコールと
のエステル化合物であることが好ましい。上記飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸は、それぞれ、一塩基酸であってもよく、多塩基酸であってもよい。
上記飽和脂肪酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素を含めた総炭素数として、1〜30であることが好ましく、12〜20であることがより好ましく;
上記不飽和脂肪酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素を含めた総炭素数として、3〜30であることが好ましく、12〜20であることがより好ましく;
上記飽和脂肪族アルコールの炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく;そして
上記不飽和脂肪族アルコールの炭素数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。これらアルコールの炭素数は、さらに好ましくは、
氷点下〜室温程度の温度領域における蓄熱効果を獲得する点を重視すると、飽和脂肪族アルコールについて1〜4であり、不飽和脂肪族アルコールについて2〜4であり;
室温を超える温度領域における蓄熱効果を獲得する点を重視すると、飽和脂肪族アルコールおよび不飽和脂肪族アルコールの双方について10〜20である。
上記飽和脂肪酸としては、一塩基酸として例えばオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等を;
二塩基酸として、例えばスベリン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジカルボン酸等を、それぞれ挙げることができる。上記不飽和脂肪酸としては、一塩基酸として例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸等を;
二塩基酸として、例えばマレイン酸、フマル酸、アリルマロン酸、メサコン酸、4−ドデセン−1,2−ジカルボン酸等を、それぞれ挙げることができる。
エステル化合物を構成する脂肪族アルコールとしては、上記飽和脂肪族アルコールとして例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール等を;
上記不飽和脂肪族アルコールとして例えばビニルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコール、リノールアルコール、リノレルアルコール等を、それぞれ挙げることができる。
上記飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が多塩基酸の場合には、上記エステル化合物はフルエステルであることが好ましい。
本発明における脂肪族エステルの好ましい具体例を、その融点とともに以下に列挙する。融点はカッコ内に示した。
パルミチン酸n−プロピル(10℃)、パルミチン酸イソプロピル(11℃)、ステアリン酸i−プロピル(16℃)、テトラデカン酸メチル(17.0℃)、ステアリン酸n−ブチル(19℃)、セバシン酸ジメチル(21℃)、ヘキサデカン酸メチル(27.7℃)、ステアリン酸ビニル(28℃)、オクタデカン酸メチル(37.5℃)、パルミチン酸n−ヘキサデシル(55℃)、ステアリン酸ステアリル(65℃)等。
−脂肪族ケトン−
本発明における脂肪族ケトンとしては、炭素数8〜30のものを使用することが好ましい。この脂肪族ケトンは、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、環状である場合には単環および多環のいずれであってもよい。脂肪族ケトンのうちのカルボニル基以外の部分は飽和であることが好ましい。さらに、脂肪族ケトンにおける酸素数は1個であることが好ましい。
上記脂肪族ケトンの具体例を、その融点とともに以下に列挙する。
2−ノナノン(−9℃)、2−ペンタデカノン(40℃)、3−ヘキサデカノン(43℃)、8−ペンタデカノン(43℃)、4,4−ビシクロヘキサノン(118℃)等。
本発明における脂肪族ケトンとしては、大きな潜熱量を確保するとの観点から、直鎖状のケトンであることが好ましい。
−脂肪族アルコール−
本発明における化合物(A)としての脂肪族アルコールは、モノアルコールであってもポリオールであってもよい。この脂肪族アルコールは、炭素数8〜60の直鎖の脂肪族アルコールであることが好ましい。また、大きな潜熱量を得るとの観点から、1級アルコールであることが好ましい。
本発明における化合物(A)としての脂肪族アルコールとしては、炭素数8〜30の直鎖飽和状の1級アルコールである。この脂肪族アルコールがポリオールである場合、水酸基のうちの少なくとも1つが末端にあれば、1級アルコールの要件を満たすものと考えてよい。
本発明における化合物(A)としての脂肪族エステル化合物の好ましい具体例を、その融点とともに以下に列挙する。
1−デカノール(5〜7℃)、2−ドデカノール(19℃)、1−テトラデカノール(39℃)、7−テトラデカノール(42℃)、1−オクタデカノール(59℃)、1−エイコサノール(65℃)、1,10−デカンジオール(73℃)等。
−脂肪族エーテル−
本発明における脂肪族エーテルの炭素数は、14〜60であることが好ましく、14〜40であることがより好ましい。
脂肪族エーテルとしては、酸素原子数が1個であり、対称構造を有するエーテル(対称型エーテル化合物)であることが、大きな潜熱量を確保するとの観点から好ましい。この対称型エーテル化合物を構成する2個の脂肪族基は、それぞれ、直鎖飽和のアルキル基であることが、潜熱量の観点から好ましい。
本発明におけるエーテルの好ましい具体例を、その融点とともに以下に列挙する。
ヘプチルエーテル(−24℃)、オクチルエーテル(−7℃)、テトラデシルエーテル(45℃)、ヘキサデシルエーテル(55℃)等。
−好ましい化合物(A)−
本発明の蓄熱材用組成物における化合物(A)としては、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールまたは脂肪族エーテルが好ましく、特にデカン酸メチル、ラウリン酸メチル、2−ノナノン、1−デカノール、ヘプチルエーテルおよびオクチルエーテルよりなる群から選択される1種以上(好ましくは1種)を使用することが好ましい。
[脂肪酸金属塩(B)]
本発明における脂肪酸金属塩(B)は、本発明の蓄熱材用組成物中で化合物(A)を包摂して拘束し、該蓄熱材用組成物から化合物(A)がブリードすることを防止する拘束剤として機能する。
脂肪酸金属塩(B)としては、例えば炭素数4〜24の脂肪族カルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸の金属塩であることが好ましく、炭素数4〜24の脂肪族カルボン酸の金属塩であることがより好ましい。さらに好ましくは炭素数6〜24、特に好ましくは炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸の金属塩である。
脂肪酸金属塩(B)を構成する脂肪族カルボン酸としては、例えば2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。脂肪酸としてとりわけ好ましくは2−エチルヘキサン酸である。
脂肪酸金属塩(B)を構成する金属種としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属;
マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;
アルミニウム、マンガン、鉛等のその他の金属塩等を挙げることができる。これらのうち、リチウム塩または2価以上の金属イオンの塩が好ましく、特にリチウム塩またはアルミニウム塩が好ましい。
本発明における脂肪酸金属塩(B)としては、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムおよび2−エチルヘキサン酸アルミニウムを、とりわけ好ましい例として挙げることができる。12−ヒドロキシステアリン酸リチウムの市販品としては、例えばS−7000H(堺化学(株)製)等を;
2−エチルヘキサン酸アルミニウムの市販品としては、例えばオクトープアルミA(ホープ製薬(株)製)等を、それぞれ挙げることができる。
脂肪酸金属塩(B)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
[脂肪酸(C)]
本発明の蓄熱材用組成物は、上記のような化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)を必須の成分として含有する。しかしながら任意的な成分として、さらに脂肪酸(C)を含有していてもよく、そうすることが好ましい。
上記脂肪酸金属塩(B)と脂肪酸(C)とを併用することにより、本発明の蓄熱材用組成物の粘度が上昇し、その結果、化合物(A)のブリードをより効果的に防止することができることとなるため、好ましいのである。
本発明における脂肪酸(C)としては、例えば炭素数10〜30の飽和または不飽和の長鎖脂肪酸を使用することができる。長鎖飽和脂肪酸としては、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸等を;
長鎖不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、オレイン酸およびリノール酸から選択される1種以上を使用することが特に好ましく、オレイン酸を使用することがとりわけ好ましい。オレイン酸の市販品としては、例えばゲル化補助剤Nsp(ホープ製薬(株)製)等を挙げることができる。
脂肪酸(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
[その他の成分]
本発明の蓄熱材用組成物は、上記のような化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)を必須の成分として含有し、好ましくはさらに脂肪酸(C)を含有するが、本発明が奏する効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含有していていもよい。ここで使用することのできるその他の成分としては、例えば結晶性ポリオレフィン、充填材、結晶核材(発核材)、凝固点降下剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、防錆剤、増粘剤、重金属不活性化剤、比重調整剤等を挙げることができる。
−結晶性ポリオレフィン−
本発明の蓄熱材用組成物は、任意的に、結晶性ポリオレフィンを含有することができる。本発明の蓄熱材用組成物が結晶性ポリオレフィンを含有することにより、該蓄熱材用組成物に剛性を付与し、形状をより安定化することができる点で好ましい。
結晶性ポリオレフィンについてDSC法によって測定した潜熱量は、化合物(A)のブリード防止および蓄熱材用組成物の加工性の観点から、50kJ/kg以上であることが好ましく、60kJ/kg以上であることがより好ましい。結晶性ポリオレフィンの潜熱量の上限値には技術上の制限は特にないが、原料調達コストを低廉化することおよび取扱いの容易性の観点から、潜熱量は200kJ/kg以下とすることが好ましい。
結晶性ポリオレフィンについてX線回折法によって測定した結晶化度は、25%以上であることが好ましく、28%以上であることがより好ましく、特に30%以上であることが好ましい。
結晶性ポリオレフィンについて、JIS K−7210に準拠して温度190℃および荷重2.16kg下において測定したメルトフローレート(MFR)は、得られる蓄熱材用組成物の加工性を維持するとの観点から、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜50g/10分であることがより好ましい。
このような結晶性ポリオレフィンとしては、炭素数2〜12のα−オレフィンに由来する繰り返し単位を主成分とする結晶性ポリオレフィンであることが好ましい。上記α-オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ウンデセンから選択される1種以上であることができる。
結晶性ポリオレフィンは、上記のようなα−オレフィン以外の重合性化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。このα−オレフィン以外の重合性化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、クロロプレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。
本発明における結晶性ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手性の観点から、結晶性ポリエチレンおよび結晶性ポリプロピレンから選択される1種以上を使用することが好ましく、結晶性ポリプロピレンを使用することが特に好ましい。この結晶性ポリプロピレンとしては、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム重合体、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体、バイオマス由来のポリプロピレン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
本発明における結晶性ポリオレフィンとしては、その融点が、80〜180℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、さらに100〜140℃であることが好ましい。特に、使用する化合物(A)の融点を超える融点を有する結晶性ポリプロピレンを使用することが好ましく、化合物(A)の融点よりも20℃以上高い融点を有するものを使用することがとりわけ好ましい。
−充填材−
本発明の蓄熱材用組成物が任意的に含有することのできる充填材としては、例えば酸化チタン;カーボンブラック等の着色剤;フェライト等の金属粉末;ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維;炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維;窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛等の伝熱性付与剤;ガラスビーズ;ガラスバルーン;ガラスフレーク;グラスファイバー;アスベスト;炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等の無機ウィスカー;シリカ;ケイ酸カルシウム;カオリン;ケイソウ土;モンモリロナイト;グラファイト;軽石;エボ粉;コットンフロック;コルク粉;硫酸バリウム;フッ素樹脂等を挙げることができる。これらのうち、増粘によるストランド成形性を向上するとの観点からはシリカが望ましく、伝熱性を向上するとの観点からは炭素繊維または膨張黒鉛を使用することが好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物において、充填剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−結晶核材−
本発明の蓄熱材用組成物は、任意的に結晶核材(発核材)を含有することができる。本発明の蓄熱材用組成物が結晶核材(発核材)を含有することにより、化合物(A)の相変化を促進することが可能となるため、好ましい。
本発明における結晶核材としては、化合物(A)よりも融点が高く、得られる蓄熱材を高温状態から冷却していったときに、早期に凝固する物質であることが好ましい。結晶核材の融点は、化合物(A)の融点よりも10℃以上高いことが好ましい。
このような結晶核材としては、例えばタルク等を挙げることができる。
[各成分の含有量]
本発明の蓄熱材用組成物における脂肪酸金属塩(B)の含有量は、化合物(A)100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜45質量部であることがより好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物が脂肪酸(C)を含有する場合、その含有量は、得られる蓄熱材用組成物の粘度を効果的に増大させるとの観点から、脂肪酸金属塩(B)100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、10〜70質量部であることがさらに好ましく、特に25〜55質量部であることが好ましい。本発明の蓄熱材用組成物が脂肪酸(C)を含有する場合、脂肪酸金属塩(B)と脂肪酸(C)との合計の含有量は、化合物(A)100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜45質量部であることがより好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物における化合物(A)の含有量は、蓄熱材用組成物の全体に対して、20〜97質量%とすることが好ましく、50〜95質量%とすることがより好ましく、特に70〜95質量%とすることが好ましい。工業的に有用な大きな潜熱量を確保するとの観点からは化合物(A)の含有量を20質量%以上とすることが好ましく、蓄熱材用組成物の形状維持性を重視すると化合物(A)の含有量を97質量%以下にとどめることが好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物における脂肪酸金属塩(B)の含有量は、蓄熱材用組成物の全体に対して、3〜80質量%とすることが好ましく、5〜50質量%とすることがより好ましく、特に5〜30質量%とすることが好ましい。化合物(A)のブリードを効果的に防止するとの観点からは脂肪酸金属塩(B)の含有量を3質量以上とすることが好ましく、工業的に有用な大きな潜熱量を確保するとの観点からは脂肪酸金属塩(B)の含有量を80質量%以下にとどめることが好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物が結晶性ポリオレフィンを含有する場合、その含有量は、蓄熱材用組成物の全体に対して、50質量%以下であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、さらに3〜10質量%であることが好ましい。結晶性ポリオレフィンの含有量が前記範囲にあることにより、高温下における蓄熱材用組成物の形状維持性と潜熱量のバランスが良好となる点で好ましい。
本発明の蓄熱材用組成物が、化合物(A)、脂肪酸金属塩(B)、脂肪酸(C)および結晶性ポリオレフィン以外のその他の成分を含有する場合、該その他の成分の合計の含有量は、蓄熱材用組成物の全体に対して、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
<蓄熱材用組成物の調製方法>
本発明の蓄熱材用組成物は、上記のような各成分を含有するものである限り、どのような方法によって調製されたものであってもよい。例えば上記のような各成分を、一度にまたは順次に混合撹拌することにより、調製することができる。
本発明の蓄熱材用組成物が化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)のほかに脂肪酸(C)を含有するものである場合、化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)を予め混合した後に、脂肪酸(C)を追加してさらに混合撹拌することが好ましい。この場合、脂肪酸金属塩(B)の十分な分散を担保するために、化合物(A)および脂肪酸金属塩(B)の混合撹拌を開始した後10分以上経ってから脂肪酸(C)を追加することが好ましい。その他の任意的成分は、どのタイミングで添加してもよい。
本発明の蓄熱材用組成物を調製するための混合撹拌は、例えば2本ロール、押出機、2軸混錬押出機、撹拌式混合機等の適宜の混錬装置を使用して、例えば20〜180℃において行うことができる。
<蓄熱材>
上記のようにして調製された本発明の蓄熱材用組成物は、これをそのまま、もしくは任意の形状に成形して、または適当な包装材料または容器に封入したうえで、蓄熱材として用いることができる。
蓄熱材用組成物を任意の形状に成形して使用する場合、加熱されて流動する状態にある蓄熱材組成物を、例えば型に流し込んで冷却することにより所望の形状として使用することができ、あるいは適当な基体状に塗布または含侵することによって成形してもよい。これらの方法によって得られる形状としては、例えばシート状、板状、棒状、パイプ状、ペレット状等の形状を例示することができる。
なお、本発明の蓄熱材用組成物は、使用する化合物(A)の融点よりも50℃程度高い温度においても流動することなく固体状態を維持することができる。従って、例えば融点が氷点下の化合物(A)を用いた場合でも、得られる蓄熱材用組成物は室温で固体状であるから、上記の方法によって好ましく成形することが可能であり、この点も本発明の利点の1つである。
本発明の蓄熱材用組成物は、生産性、取扱いの容易性、長期安定性を担保する観点から、適当な包装材料または容器に封入したうえで、蓄熱材として使用することが好ましい。
ここで使用することのできる包装材料としては、例えば特許文献4(国際公開第2011/78340号)に記載された材料を挙げることができる。具体的には、例えばポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体製フィルム等;これらのフィルム上に、ラミネートまたは蒸着によって金属層を設けたもの;これらのフィルムの複数からなる多層フィルム等を用いて製造された包装材料を挙げることができる。上記包装材料が多層フィルムを用いて製造されたものである場合、該多層フィルムは上記に例示したフィルムからなる層のほかに、接着剤層を有していてもよい。
本発明における好ましい包装材料は、
熱融着性を有するフィルム(熱融着性層)のみを用いて製造されたものであるか、あるいは
熱融着性層を最内層とし、これに他のフィルムを積層してなる多層フィルムを用いて製造されたものである。これらのうち、後者の態様が特に好ましい。
上記において、熱融着性層はヒートシール層として働く。従って、本発明の蓄熱材用組成物を上記の好ましい包装材料中に封入するには、例えば一端を開口して袋状に成形した上記の好ましい包装材料中に、公知の適宜の充填装置によって本発明の蓄熱材用組成物を充填した後、開口部をヒートシールすることによって蓄熱材用組成物を密封する方法(ヒートシール法)を採用することが、生産性の面から好ましい。
上記熱融着性層であるフィルムとしては、例えばポリオレフィンフィルムを使用することが好ましい。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルムを挙げることができる。
本発明における包装材料が多層フィルムを用いて製造されたものである場合、上記熱融着性を有するフィルム以外の層としては、例えばバリア層、耐熱層等を挙げることができる。
上記バリア層としては、例えばポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等を使用することができる。
上記耐熱層としては、例えばポリエステルフィルムを使用することができ、その具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムを挙げることができる。
本発明における包装材料としては、最内層、最外層およびこれらの中間に位置する少なくとも1層の中間層を有し、
最内層が熱融着性を有するフィルムからなる層であり、
最外層が耐熱層であり、そして、
中間層のうちの少なくとも1層がバリア層である包装材料が最も好ましい。この場合の包装材料は、中間層としてのバリア層を2層以上有していてもよく、
熱融着性層、耐熱層およびバリア層以外の機能を有するフィルムからなる層を有していてもよく、層間に接着剤層を有していてもよい。
上記容器としては、例えば合成樹脂をブロー成形して得たブロー容器、金属容器等を挙げることができる。これらのうち、容器形状の自由度および取扱いの容易性から、ブロー容器を使用することが好ましい。
ブロー容器を構成する材料としては、例えば、少なくとも
ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)等からなる非極性層と、
エチレン−ビニルアルコール共重合体等からなる極性層と、
上記両層間に配置され両層を結合する機能を有する接着層と
を有する多層ブロー容器を挙げることができ、これを使用することが好ましい。ブロー容器は、用途の必要に応じて適当な表面処理(例えばハロゲン処理、コロナ処理、プラズマ処理、フッ素樹脂コーティング、DLCコーティング、化学蒸着等)を行ったうえで使用に供してもよい。
上記のような包装材料または容器中に蓄熱材用組成物を封入する方法は特に限定されない。例えば蓄熱材用組成物が流動化する温度に加熱したうえで包装材料または容器中に注ぎ入れて冷却・固化させる方法、ペレット状に成形して包装材料または容器中に充填する方法等によることができる。
本発明の蓄熱材用組成物を使用して製造された蓄熱材は、熱交換媒体の存在下または不存在下に、所望の用途における調温材料として使用することができる。上記いずれの場合においても、蓄熱材を断熱材ともに使用することにより、環境温度の影響を遮断して蓄熱材の物理状態(相状態)を長期間維持することができ、従って熱交換効率を高くすることができることとなる点で好ましい。
ここで使用される断熱材としては、例えばポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、(メタ)アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリオレフィン樹脂発泡体(例えばポリエチレン樹脂発泡体)、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック、真空遮断部材等およびこれらの複合体を挙げることができる。
断熱材の形状としては、例えばシート状、布帛状、ビーズ状等を挙げることができる。
断熱材の使用態様としては、例えば以下の態様を挙げることができる;
蓄熱材と断熱材とを、単に近接して配置する態様、
蓄熱材と断熱材とを接着して使用する態様、
断熱材中に(好ましくはペレット状の)蓄熱材を分散して配置する態様等。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例における評価は、それぞれ、以下のようにして行った。
(1)蓄熱材用組成物の凝固点、融点および潜熱量
実施例および比較例で得られた蓄熱材用組成物の凝固点、融点および潜熱量は、以下の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って得た測定データから求めた。
試料を140℃まで加熱し、該温度において10分間保持した後、10℃/分の冷却速度で−50℃まで冷却しつつ、冷却方向の測定を行った。次いで、この温度(−50℃)で10分間保持した後、10℃/分の昇温速度で140℃まで昇温しつつ、昇温方向の測定を行った。
JIS K−7121に準拠して、上記で得た冷却方向のDSC曲線において、使用した化合物(A)に相当する凝固ピークの補外凝固開始温度を決定し、これを蓄熱材組成物の凝固点とした。また、昇温方向のDSC曲線において、融解ピークの補外融解開始温度および融解熱量をそれぞれ決定し、前者を蓄熱材用組成物の融点とし、後者を蓄熱材用組成物の潜熱量とした。
複数の凝固ピークまたは融解ピークを有する蓄熱材用組成物の場合は、凝固熱量または融解熱量が最も大きいピークを採用して凝固点、融点または潜熱量を決定した。
(2)蓄熱材用組成物の形態
実施例および比較例で得られた蓄熱材用組成物を約50gとり、これをシャーレ上で、化合物(A)の融点よりも20℃高い温度において10分間保持した後に目視で観察し、以下の基準で形態を評価した。
ゲル状:流動性を有さず、固体状態を維持している場合
液体状:固体状態が維持されず、流動性を有するに至った場合
(3)蓄熱材用組成物中のブリード性
実施例および比較例で得られた蓄熱材用組成物につき、プレス機を用いて5MPaの加圧条件下で2mm厚のシート状に成形した。このシートを40mm×40mmの大きさに切り出したものを3枚重ねにして、ポリエチレンフィルム(内層)およびポリアミドフィルム(外層)からなる積層フィルムにより包装して、試料とした。この試料を、化合物(A)の融点よりも20℃高い温度に設定したギアオーブン中に1時間静置した。その後、試料を取り出して室温まで冷却した後、試料を目視観察し、以下の基準でブリード性を評価した。
AA:分離が認められなかった場合(ブリード性なし=良好)
BB:蓄熱材用組成物から化合物(A)がわずかに分離しているのが認められた場合(ブリード性あり=不良)
CC:蓄熱材用組成物から化合物(A)が分離しているのが明らかに認められた場合(ブリード性が高い=極めて不良)
(4)燃焼時間
蓄熱材用組成物の燃焼時間は、国連勧告試験クラス4.1(可燃性固体)の試験法に準拠して以下の方法によって評価した。
実施例および比較例で得られた蓄熱材用組成物を90℃のギアオーブン中で融解し、三角柱(底面は二等辺三角形(底辺20mm、高さ10mm)であり、三角柱の高さは250mmである。)形状の凹部を有するアルミニウム製成形器具に流し込んで充填した。これを室温で30分間静置して得た蓄熱材用組成物の固化物を試験片とした。
上記試験片を、最も面積の広い側面を下方として寝かせた状態で、ドラフト内に設置した酸化マグネシウム製の不燃性断熱板の上に置き、該試験片の片端にガスバーナーの火炎を接触させて着火した。着火後、80mmの長さまで燃焼が伝播した時点で計時を開始し、さらに次の100mmの長さを燃焼するために要した時間(燃焼時間)を測定した。
国連勧告試験においては、上記燃焼時間が45秒未満であった場合には、「可燃性固体」に分類されて輸送時に輸送量および梱包形態上の制限を受けることから、燃焼時間が45秒以上であった場合に難燃性は良好であると判断することができる。
実施例1
ガラス製フラスコ中で、蓄熱物質としてラウリン酸メチル(和光純薬工業(株)製)90質量部、拘束剤として2−エチルヘキサン酸アルミニウム(ホープ製薬(株)製、品名「オクトープアルミA」)7質量部を仕込み、室温において15分間撹拌して分散した。ここに、脂肪酸としてオレイン酸(ホープ製薬(株)製、品名「ゲル化補助剤Nsp」)3質量部を加えて室温においてさらに1時間撹拌することにより、蓄熱材用組成物を調製した。
この蓄熱材用組成物を用いて、上述の手順によって各種評価を行った結果を第1表に示した。
実施例2〜10および比較例1〜8
上記実施例1において、蓄熱物質、拘束剤および脂肪酸の種類および使用量を、それぞれ第1表に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして蓄熱材用組成物を調製し、各種評価を行った。第1表中の使用量の単位は「質量部」である。
実施例10においては、フラスコ中に蓄熱物質および拘束剤を仕込んだ後、100℃において1時間撹拌することにより、蓄熱材用組成物を調製した。比較例2〜5、7および8においては、フラスコ中に蓄熱物質および拘束剤を仕込んだ後、室温において1時間撹拌することにより、蓄熱材用組成物を調製した。
評価結果は第1表に示した。
上記第1表における各成分としては、それぞれ、以下の市販品を使用した。
[蓄熱物質]
−化合物(A)−
ラウリン酸メチル:和光純薬工業(株)製
デカン酸メチル:和光純薬工業(株)製
2−ノナノン:東京化成工業(株)製
n−ヘプチルエーテル:東京化成工業(株)製
デカノール:東京化成工業(株)製
パルミチン酸ヘキサデシル:純正化学(株)製
ステアリン酸ステアリル:花王(製)、品名「エキセパールSS」
−その他の蓄熱物質−
n−ドデカン:JX日鉱日石エネルギー(株)製、品名「カクタスノルマルパラフィンN−12」
n−テトラデカン:JX日鉱日石エネルギー(株)製、品名「TS4」
[拘束剤]
−脂肪酸金属塩(B)−
2−エチルヘキサン酸アルミニウム:ホープ製薬(株)製、品名「オクトープアルミA」
12−ヒドロキシステアリン酸リチウム:堺化学(株)製、品名「S−7000H」
−その他の拘束剤−
EPDM:JSR(株)製、エチレン/プロピレン/2−エチリデンノルボルネン共重合体、品名「EP22」
CEBC:JSR(株)製、オレフィン結晶/エチレン・ブチレン/オレフィン結晶ブロックポリマー、品名「DYNARON6100P」
[脂肪酸(C)]
オレイン酸:ホープ製薬(株)製、品名「ゲル化補助剤Nsp」
上記実施例1および3ならびに比較例1、2および5〜8において得られた蓄熱材用組成物の燃焼時間と、各実施例および比較例で使用した蓄熱物質の引火点との関係を第2表に;
燃焼時間を引火点に対してプロットしたグラフを図1に、それぞれ示した。
第2表および図1を参照すると、拘束剤としてCEBC(JSR(株)製、DYNARON6100P)を使用した場合には、蓄熱物質として本発明所定の化合物(A)およびその他の蓄熱物質のいずれを使用しようとも、高い回帰係数で1本の直線上に乗ることが分かる(比較例2、5、7および8)。
これに対して、拘束剤として本発明所定の脂肪酸金属塩(B)である2−エチルヘキサン酸アンモニウムを使用すると;
蓄熱物質としてその他の蓄熱物質を使用した場合には、燃焼時間と引火点との関係は上記と同じ直線上に乗るのに対して(比較例1および6):
蓄熱物質として本発明所定の化合物(A)を使用した場合には、それぞれの燃焼時間が上記直線からジャンプアップした値を示すことが確認される(実施例1および3)。
化合物(A)と脂肪酸金属塩(B)との組み合わせによってこのような燃焼時間のジャンプアップが起きることは従来知られておらず、当業者にとって実に驚くべき現象である。

Claims (7)

  1. 脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(A)、ならびに
    脂肪酸金属塩(B)
    を含有することを特徴とする、蓄熱材用組成物。
  2. 脂肪酸金属塩(B)の含有量が、化合物(A)100質量部に対して5〜100質量部である、請求項1に記載の蓄熱材用組成物。
  3. 化合物(A)が、
    炭素数1〜30の飽和脂肪酸または炭素数3〜30の不飽和脂肪酸と、
    炭素数1〜30の飽和脂肪族アルコールまたは炭素数2〜30の不飽和脂肪族アルコールと
    のエステル化合物である、請求項1または2に記載の蓄熱材用組成物。
  4. さらに、脂肪酸(C)を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄熱材用組成物。
  5. 脂肪酸(C)の含有量が、脂肪酸金属塩(B)100質量部に対して5〜100質量部である、請求項4に記載の蓄熱材用組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄熱材用組成物から形成されてなることを特徴とする、蓄熱材。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄熱材用組成物が包装材料または容器に封入されてなることを特徴とする、蓄熱材。
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