JP2015049277A - ワイヤーグリッド装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の自立型ワイヤーグリッドの一例は、直径5μm〜50μm程度の金属細線を、1本づつ設定された間隔で平行に並べ、金属枠に接着剤で貼り付けて作成されている。この自立型ワイヤーグリッドは、適用可能な周波数に限界があり、概ね1.5THz以上のテラヘルツ電磁波の偏光子に適用可能な構造のものは、微細な構造となることから実現することが困難とされている。
縦桟部111の幅(ワイヤー幅)や間隔は、ワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するバラメータであり、適用する光の周波数に応じて定まる。そして、ワイヤーグリッド用金属板101は、1.5THz以上のテラヘルツ電磁波にも適用可能な構造とすることができ、縦桟部111の幅Waは1.5μm〜50μmとすることができる。
なお、縦桟部111の幅Waはワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するバラメータとして一義的に定まるが、横桟部112の幅Wbや間隔(個数)等は、主にワイヤーグリッド用金属板101の強度を確保する観点から定まる。このため、横桟部112の幅Wbは、縦桟部111の幅以上の幅広に形成されている。具体的には、縦桟部111の幅Waを1.5μm〜50μmとし、横桟部112を15μm以上であって縦桟部111より幅広に形成する。
そこで、本発明は、従来のワイヤーグリッド装置では実現不可能であった強度透過率で約10-6クラスの消光比を1素子で簡易に実現できるワイヤーグリッド装置を提供することを目的としている。
本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置1は、図1(a)(b)に示すように所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体1aと、枠体1aの縦方向に枠体1aを貫通するよう多数形成されたスリット1bとから構成されている。枠体1aは金属製等の導電性とされ、枠体1aの奥行きはaとされる。多数のスリット1bの縦方向の長さはl(小文字のエル)とされ、スリット1は互いに平行に配置されている。スリット1b間の枠体1aの領域によりグリッド1cが形成される。スリット1bの幅はd、グリッド1cの幅はwとされている。第1実施例のワイヤーグリッド装置1では、枠体1aに多数のスリット1bが形成されることにより、平行平板とされる多数のグリッド1cが形成されて、ワイヤーグリッド装置として機能するようになる。なお、lはグリッド1cの長さでもあって、ワイヤーグリッド装置1の開口の寸法ともされている。
第1実施例のワイヤーグリッド装置1に入射したz軸方向に進行するテラヘルツ光は、スリット1bが形成された枠体1aに入射し、奥行きaとされた枠体1aに形成されているグリッド1c間を通過して出射されるようになる。これをモデル化したのが図2に示す解析モデルであり、入射するまでの枠体1aの前の領域を仮想した周期境界壁1eの領域と、周期境界壁1eにステップ構造#1で連結された間隔dで対向すると共に奥行きaとされた電気壁1dの領域と、この領域にステップ構造#2で連結された枠体1aの後の領域を仮想した周期境界壁1eの領域とからなる。なお、電気壁1dは奥行きa、幅wとされたグリッド1cにより構成されることから、ステップ構造#1,#2のステップ高さはw/2とグリッド1cの幅wの1/2となる。
入射波はTMモード(Transverse Magnetic mode)であり、磁界H(ベクトル)の入射波Hi y、反射波Hr y、透過波Ht yは、
1つ目のステップ構造#1の散乱行列は励振関数Am、Bn、Clにより導出でき、2つ目のステップ構造#2の散乱行列と距離(奥行き)aで接続することにより、図1(a)に示すワイヤーグリッド装置1の全体構造でのTMモードのテラヘルツ光を入射した際の透過、反射特性が求まる。また、消光比はTEモード(Transverse ElectroMagnetic mode)の伝搬定数を考慮して求めることができる。これは、テラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの延伸方向である縦方向と直交する(TMモード)場合に透過配置となり、テラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの延伸方向である縦方向(TEモード)の場合に阻止配置となるからである。
本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置2は、図4(a)(b)に示すように細長い矩形状の金属薄板12が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のポリマーフィルム11からなるフィルム基板10a,10b,10c,10d,10e・・・・を複数枚積層することにより構成されている。ポリマーフィルム11は、例えばテラヘルツ波帯において低損失なシクロオレフィンポリマーフィルムとされ、厚さがdとされている。金属薄板12は、ポリマーフィルム11の一面に蒸着あるいは貼着したり、ポリマーフィルム11の全面に成膜したCuの金属薄膜をエッチングすることにより形成されている。金属薄板12の長さはl(小文字のエル)、幅はa、厚さはtとされ、ポリマーフィルム11のほぼ中央に金属薄板12が配置されている。この場合、ポリマーフィルム11の長辺から金属薄板12の長辺までの長さが両辺ともbとされている。なお、ポリマーフィルム11の厚さdはフィルム基板10の厚さdとなる。
ここで、第2実施例のワイヤーグリッド装置2の各部の寸法の例を図4(c)に示す。図4(c)に示す図表のように、金属薄板12の幅aは約1.0mmとされ、厚さtは約0.5μmとされ、長さlは約12.0mmとされる。また、ポリマーフィルム11の長辺から金属薄板12の長辺までの長さbは約2.0mmとされ、ポリマーフィルム11の厚さdは約50μmとされる。なお、フィルム基板10を積層する枚数は、フィルム基板10を積層していった寸法が、ワイヤーグリッド装置1に必要とされる開口の高さの寸法になる枚数とされる。
第2実施例のワイヤーグリッド装置2に入射したz軸方向に進行するテラヘルツ光は、まずポリマーフィルム11に入射し、ポリマーフィルム11を長さbだけ通過すると金属薄板12に達する。次いで、幅aとされた金属薄板12の間を通過すると再びポリマーフィルム11に達し、ポリマーフィルム11を長さbだけ通過すると出射されるようになる。これをモデル化したのが図5に示す解析モデルであり、ポリマーフィルム11の領域を仮想した長さbの周期境界壁15の領域Aと、周期境界壁15の領域Aにステップ状に連結された間隔dで対向すると共に幅(長さ)aとされた電気壁16aの領域Bと、この領域Bにステップ状に連結されたポリマーフィルム11の領域を仮想した長さbの周期境界壁17の領域Cとからなる。なお、領域Bは幅a、厚さt、間隔dで対向する金属薄板12からなる領域に相当することから、領域Aと領域Bとが接続されるステップのステップ高さは金属薄板12の厚さtの1/2であるt/2となると共に、領域Bと領域Cとが接続されるステップのステップ高さもt/2となる。
このように、第2実施例のワイヤーグリッド装置2において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対する図6,7に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が1%とされるが、その際の消光比は10-12以下となるから、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。
これらの図に示すように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3は、基台50と、複数のフィルム基板20を積層したフィルム基板積層体30と、押さえ板40を備えている。図11(a)(b)に示す基台50はアルミニウム合金等の金属製とされており、矩形の横長の平板状とされた底部51と、底部51の上面において1つの隅を除く3つの隅から所定の高さで立設された第1立設柱52、第2立設柱53、第3立設柱54とを備えている。第1立設柱52〜第3立設柱54の断面は、横長の矩形状とされており、基台50の中心に面している角にはR部が形成されて丸みを帯びている。また、底部51には4つのネジ孔55が形成されている。
フィルム基板積層体30を基台50に収納した後に、基台50上に押さえ板40を配置して基台50に収納したフィルム基板積層体30の上に載置する。この時、押さえ板40の第1切欠部42〜第3切欠部44に、基台50の第1立設柱52〜第3立設柱54がそれぞれ嵌合されて、基台50に対して押さえ板40が位置合わせされるようになる。また、押さえ板40の4つの挿通孔46が、フィルム基板積層体30における各フィルム基板20の4つの孔部27および基台50の4つのネジ孔55に位置合わせされる。
また、入射されたテラヘルツ光がTMモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する場合(透過配置)の透過電力%の実験結果(Measurement results)が上段の実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い最大30%の幅で上下に振動しながら若干低下していくが、0.1THz〜1.92THzにおいて約100%〜60%の透過電力%が得られ、解析結果の透過電力%と近似しているがより良好な透過電力%が得られていることが分かる。
このように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対する図13(a)に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が60%と良好な値が得られると共に、その際の消光比は10-4以下が得られることから、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。
また、入射されたテラヘルツ光がTMモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する場合(透過配置)の透過電力%の実験結果(Measurement results)が左矢印で示す実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い若干振動しながら低下していき、0.1THz〜1.92THzにおいて約80%〜2%の透過電力%が得られ、解析結果の透過電力%と近似しているがより良好な透過電力%が得られていることが分かる。
このように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対する図13(b)に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が2%とされるが、その際の消光比は10-4程度が得られることから、周波数0.1〜1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。
この場合、第2,3実施例のワイヤーグリッド装置におけるワイヤーグリッドを構成する平行平板とされる金属薄板の間隔は、ワイヤーグリッド装置の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板の厚さで一義的に決定される。すなわち、本発明の第2,3実施例のワイヤーグリッド装置では、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、当該ワイヤーグリッド装置の歩留まりを向上することができる。また、フィルム基板の厚さを変更するだけで、適用される周波数帯を変更することができるようになる。さらに、ポリマーフィルムは、シクロオレフィンポリマーフィルムを用いるようにしたが、これに限ることはなくテラヘルツ波帯において誘電正接の小さいフィルムならばいずれの材料からなるフィルムでも用いることができる。また、フィルムに替えてフィルム状の物質を金属薄板の面に形成しても良い。例えば、金属薄板の面に所定の厚さになる樹脂等の絶縁性の物質を塗布あるいは貼着することにより、金属薄板を所定間隔で対向させるようにしても良い。
なお、第1実施例のワイヤーグリッド装置において、スリットを縦方向に形成したが、横方向に形成するようにしても良いことは当然のことであり、スリットは枠体の辺に平行に枠体のほぼ全領域に形成すればよい。
本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置1は、図1(a)(b)に示すように所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体1aと、枠体1aの縦方向に、枠体1aを貫通するよう多数形成されたスリット1bとから構成されている。枠体1aは金属製等の導電性とされ、枠体1aの奥行きはaとされる。多数のスリット1bの縦方向の長さはl(小文字のエル)とされ、スリット1bは互いに平行に配置されている。スリット1b間の枠体1aの領域によりグリッド1cが形成される。スリット1bの幅はd、グリッド1cの幅はwとされている。第1実施例のワイヤーグリッド装置1では、枠体1aに多数のスリット1bが形成されることにより、平行平板とされる多数のグリッド1cが形成されて、ワイヤーグリッド装置として機能するようになる。なお、lはグリッド1cの長さでもあって、ワイヤーグリッド装置1の開口の寸法ともされている。
本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置1は、図1(a)(b)に示すように所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体1aと、枠体1aの縦方向に、枠体1aを貫通するよう多数形成されたスリット1bとから構成されている。枠体1aは金属製等の導電性とされ、枠体1aの奥行きはaとされる。多数のスリット1bの縦方向の長さはl(小文字のエル)とされ、スリット1bは互いに平行に配置されている。スリット1b間の枠体1aの領域によりグリッド1cが形成される。スリット1bの幅はd、グリッド1cの幅はwとされている。第1実施例のワイヤーグリッド装置1では、枠体1aに多数のスリット1bが形成されることにより、平行平板とされる多数のグリッド1cが形成されて、ワイヤーグリッド装置として機能するようになる。なお、lはグリッド1cの長さでもあって、ワイヤーグリッド装置1の開口の寸法ともされている。
Claims (4)
- 細長い矩形状の金属薄板が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板を複数枚積層することにより構成されており、
前記フィルム基板が複数枚積層された状態において、各フィルム基板に形成された前記金属薄板により平行平板が構成されてワイヤーグリッドが構成されていることを特徴とするワイヤーグリッド装置。 - テラヘルツ波帯に適用する際に、前記金属薄板の幅aが約1.0mm、前記金属薄板の長さlが約12.0mm〜約30mm、前記フィルム基板の厚さdが約0.5μm〜約50μmとされることを特徴とする請求項1記載のワイヤーグリッド装置。
- 平板状の底部と、該底部の上面から立設した複数本の立設柱とを有する基台と、
前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれた前記フィルム基板を複数枚積層したフィルム基板積層体と、
平板状の平板部と、該平板部において前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれている押さえ板とを備え、
前記フィルム基板積層体が前記複数本の立設柱により位置合わせされて前記基台に収納され、該フィルム基板積層体の上に前記押さえ板が載置され、該押さえ板に挿通されたネジが前記基台に螺着されていることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤーグリッド装置。 - 所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体と、該枠体の一辺に平行に前記枠体を貫通するよう多数形成されたスリットとから構成され、
前記スリットが多数形成されることにより、前記スリット間に多数のグリッドが形成され、テラヘルツ波帯に適用する際に、前記スリットの幅dが約50μm、前記スリットの長さlが約18mm、前記枠体の奥行きaが約2.0mm、前記グリッドの幅wが約50μm以下とされることを特徴とするワイヤーグリッド装置。
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