オフィスビル等の建物では、室内に複写機、パソコン等の多数の電子機器を配置しており、これらの電子機器の配線を収納するため床面上にフロアを敷設するフリーアクセスフロアが普及してきている。フリーアクセスフロアでは、フロアを支持する支持脚を建物の床面に設置して、床面とフロアとの間に配線を収納する空間を確保することで、フロアの上面に電子機器の配線が露出することがなくなり、快適なオフィス環境を実現することができる。
建物の床面は、特に床面積が大きい場合などに、水平度に誤差が生じやすくなる。そのため、フリーアクセスフロアでは、フロアを支持する支持脚にフロアの上下位置を調整する機能を持たせ、フロア面が水平状態に設定されるように支持脚を調整してフロアを敷設している。こうした調整機能を有する支持脚としては、例えば、特許文献1では、ベースプレートに下端を固定されて外周面に雄ねじを形成された支柱と、支柱に螺合するレベル調整ナットと、レベル調整ナットの外周面に嵌合するキャップ部を下端に備えるパイプ支柱とを備えたフロアパネルの支持脚が記載されている。この従来例では、支柱に対してレベル調整ナットの上下位置を調整することで、フロアパネルを水平状態に設定することができる。また、支持脚には、レベル調整ナットの側面に形成されたネジ穴及びキャップ部の側面形成された貫通穴に螺入する横ビスが設けられており、レベル調整されたレベル調整ナットにキャップ部を嵌合するようにパイプ支柱をセットし、レベル調整ナットをパイプ支柱とともに支柱に固定してガタツキを抑えるようにした点が記載されている。
特許文献2では、パネル受台の下面に、挿入孔及び挿入孔とは中心のずれたネジ孔を連設した長ナットを固着し、支持脚に設けたネジ部を長ナットのネジ孔に捩じ込んで、長ナットの挿入孔内に支持脚を差し込んだとき、支持脚のネジ部の側周面の少なくとも一部分が長ナットの挿入孔の内壁に接触するようにした点が記載されている。この従来例では、長ナットをネジ部に螺合させることで、パネル受台の上下位置を調整して水平状態に設定し、長ナットとネジ部とが接触した状態となることで、パネル受台のガタツキが防止されるようになっている。
特許文献3では、基礎床面に略軸状に立設される支柱と、支柱の上端側に略キャップ状に被せられるパネル支持台と、支柱に螺合されてパネル支持台を下方から受ける高さ調整ナットとを備え、パネル支持台における略キャップ状の部分に、支柱と交差する方向へ固定ネジを貫挿させ、固定ネジと高さ調整ナットとを係合させるフリーアクセスフロア用支持脚が記載されている。この従来例では、支柱に螺合された高さ調整ナットの上下位置を調整することで、パネル支持台を水平状態に設定し、固定ネジを高さ調整ナットと係合させることで、パネル支持台が支柱から上方へ抜けないようにしている。
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る実施形態であるフロア用支持脚に関する平面図(図1(a))及び正面図(図1(b))である。フロア用支持脚1は、建物の床面Bに設置される矩形状のベースプレート2と、ベースプレート2のほぼ中心に立設するように設けられたボルト部材からなる支柱3と、支柱3に螺合して取り付けられる調整ナット4と、調整ナット4の上面に固定されたプレート状の台座5と、台座5の上面に載置されたシート状のクッション部材6とを備えている。
調整ナット4は、六角ナットに形成されて内周面にネジ溝を有する雌ネジ部となっており、支柱3は、外周面にネジ山を有する雄ネジ部となっている。そして、支柱3に調整ナット4が螺合しているので、調整ナット4を支柱3に対して回転させることで、調整ナット4が台座5とともに上下方向に移動して台座5の上下位置を調整することができる。調整ナット4の内径に合わせて台座5の中心部には円形の開口が形成されており、調整ナット4の上下方向の移動に伴い支柱3の上端が台座5の開口に挿入又は離間するようになっている。
台座5は、平面視において円形をベースプレート2の周縁に合わせて切欠いた形状に形成されている。切り欠いて形成された4つの辺部の内側には、打ち抜き加工により上方に向かって折り曲げて略矩形状に形成された位置合せ用の突起部5aが突設されている。4つの突起部5aは、それぞれ台座5の上面に対してほぼ直立するように設けられており、長辺方向が台座5の中心に向かうように設定されている。そして、台座5の中心から等距離に配置されてそれぞれ90度ずつずれるように等間隔に設定されている。そのため、突起部5aの間に矩形状のフロアパネルFの角部を挿入してフロアパネルFの辺部を突起部5aに沿うように載置して支持することで、フロアパネルFを容易に位置合せして敷設することができる。そして、台座5の上面に載置されたクッション部材6を介してフロアパネルFが台座5に敷設されるため、クッション部材6の緩衝作用によりフロアパネルFの振動等が吸収されるようになる。
図2は、フロア用支持脚1に関する上下方向の概略断面図である。調整ナット4の側面には、支柱3の中心軸に向かって貫通する小径のネジ穴4aが穿設されており、ネジ穴4aには、調整ナット4を回転不能とする変形手段である止めネジ7が螺合している。止めネジ7は、六角ボルト状に形成されて先端面が凹形状で杯状に形成されており、止めネジ7をネジ穴に螺入することで、止めネジ7の先端面を支柱3の外周面に押し当てて、外周面のネジ山の一部を潰すように変形させる。ネジ山が潰れることで、ネジ山の間の谷部分が埋まるように変形するようになる。調整ナット4は、ネジ穴4aの穿設によりネジ溝が部分的に切欠かれた状態となっており、ネジ穴4aの内側周端ではネジ溝の間に突起状の切欠き断面が形成されている。
調整ナット4は、ネジ溝を支柱3のネジ山に係合させて回転することで螺合しているが、ネジ山が部分的に潰れた変形部分3aでは、ネジ山の間の谷部分が埋められているため、ネジ穴4aの内側周端の切欠き断面が変形部分3aの両側に突き当るようになる。そのため、調整ナット4は、支柱3のネジ山に沿っていずれの方向にも回転することができなくなり、回転不能な状態に設定される。
フリーアクセスフロアを敷設する場合、まず、床面Bに所定間隔を空けて複数のフロア用支持脚1を配置し、基準となるフロア用支持脚1の調整ナット4を回転させて台座5の上下位置を調整し、レベラー等により基準位置に設定する。そして、基準となるフロア用支持脚1の台座5の基準位置に合わせて長棒等により他のフロア用支持脚1の台座5の上下位置を調整ナット4を回転して調整する。すべてのフロア用支持脚1の台座5の上下位置を調整した後、調整ナット4に螺合されている止めネジ7を螺入させて支柱3のネジ山を部分的に潰すように変形させ、調整ネジ4を回転不能な状態に設定する。そして、各フロア用支持脚1のベースプレート2を床面Bに接着剤等により固定する。フロア用支持脚1を固定した後、矩形状のフロアパネルFの角部をフロア用支持脚1の台座5の突起部5aの間に嵌め込むように載置して支持するように取り付けていく。こうして、床面BとフロアパネルFとの間に空間を確保したフリーアクセスフロアが敷設される。
調整ナット4が回転不能な状態に設定されることで、フロアを敷設した後にフロア用支持脚1に振動等が加わった場合でも、調整ナット4が不用意に回転することがなく、設定された上下位置が確実に固定されてフロアの水平状態が維持されるようになる。
上述した例では、止めネジ7を調整ナット4に螺入して先端面を支柱3の外周面に押し当ててネジ山の谷部分を埋めるように変形させているが、ネジ山を変形可能な部材であれば、止めネジ7に代えて変形手段として使用することができる。例えば、先端面が円錐台形状にテーパ状に形成されている止めネジを用いてネジ山を潰すこともできる。
また、調整ナット4を回転不能な状態に設定した後、止めネジを取り外すことも可能である。そのため、止めネジ等の変形手段を他のフロア用支持脚1に使用して調整ナット4を回転不能な状態に設定することもできる。また、調整ナット4の側面に貫通穴を形成しておき、貫通穴に専用の工具を挿し込んで支柱3の外周面のネジ穴を潰すようにして、調整ナット4を回転不能な状態に設定することもできる。
図3は、フロア用支持脚に関する別の実施形態に関する平面図(図3(a))及び正面図(図3(b))である。フロア用支持脚10は、建物の床面Bに設置される矩形状のベースプレート11と、ベースプレート11のほぼ中心に立設するように設けられたボルト部材からなる支柱12と、支柱12に螺合して取り付けられて上下位置を設定する調整ナット13と、支柱12の上側に嵌合するパイプ支柱14を下面に固着したプレート状の台座15と、台座15の上面に載置されたシート状のクッション部材16とを備えている。
調整ナット13は、六角ナットに形成されて内周面にネジ溝を有する雌ネジ部となっており、支柱12は、外周面にネジ山を有する雄ネジ部となっている。そして、支柱12に調整ナット13が螺合しているので、調整ナット13を支柱12に対して回転させることで、調整ナット13が上下方向に移動して上下位置の調整を行う。台座15の下面のほぼ中心に垂設されたパイプ支柱14は、円筒形に形成されており、内径が支柱12の外径よりわずかに大きく形成されている。そのため、パイプ支柱14は、下端側から支柱12に摺動自在に挿着することができる。そして、パイプ支柱14の下端が調整ナット13の上面に当接した状態となり、調整ナット13の上下位置の調整に伴いパイプ支柱14も上下位置が調整されるため、調整ナット13を回転させることで、台座15の上下位置を調整することができる。
台座5は、平面視円形状に形成されており、内側には、台座15の中心から等距離に配置されてそれぞれ90度ずつずれるように等間隔に位置合せ用の突起部15aが形成されている。突起部15aは、打ち抜き加工により上方に向かって折り曲げて略矩形状に形成されて上側に突設されている。4つの突起部15aは、それぞれ台座15の上面に対してほぼ直立するように設けられており、長辺方向が台座15の中心に向かうように設定されている。突起部15aの間に矩形状のフロアパネルFの角部を挿入してフロアパネルFの辺部を突起部15aに沿うように載置して支持することで、フロアパネルFを容易に位置合せして敷設することができる。そして、台座15の上面に載置されたクッション部材16を介してフロアパネルFが台座15に敷設されるため、クッション部材16の緩衝作用によりフロアパネルFの振動等が吸収されるようになる。
調整ナット13の側面には、支柱12の中心軸に向かって貫通する小径のネジ穴が穿設されており、ネジ穴には、調整ナット13を回転不能とする変形手段である止めネジ17が螺合している。止めネジ17は、六角ボルト状に形成されて先端面が凹形状で杯状に形成されており、止めネジ7と同様に、ネジ穴に螺入して止めネジ17の先端面を支柱12の外周面に押し当てることで、支柱12の外周面のネジ山の一部を潰すように変形させる。ネジ山が潰れることで、ネジ山の間の谷部分が埋まるように変形し、調整ナット13を回転不能な状態に設定する。
パイプ支柱14の下端側にも支柱12の中心軸に向かって貫通する小径のネジ穴が穿設されており、ネジ穴には、止めネジ17と同様の止めネジ18が螺合されている。止めネジ18を螺入させて支柱12の外周面に押し当ててネジ山を潰すように圧着させた状態にすることで、パイプ支柱14の抜け止め及び回転防止を図ることができる。
この例においても、調整ナット13を回転不能な状態に設定するとともにパイプ支柱14を抜け止め及び回転防止の状態とすることで、フロアを敷設した後にフロア用支持脚10に振動等が加わった場合でも、調整ナット13が不用意に回転することはなくなり、パイプ支柱14が脱落したり回転することもなくなるので、台座15は、設定された上下位置で確実に固定されてフロアの水平状態が維持されるようになる。