JP2015046400A - 電池用活物質、非水電解質電池及び電池パック - Google Patents

電池用活物質、非水電解質電池及び電池パック Download PDF

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康宏 原田
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Abstract

【課題】優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する電池用活物質、非水電解質電池及び電池パックを提供する。【解決手段】実施形態によれば、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む電池用活物質が提供される。該複合酸化物は、単斜晶系の結晶構造を有し、比表面積が0.1m2/g以上、100m2/g未満である。活物質中における、チタンのモル数MTiに対するニオブのモル数MNbの比 MNb/MTiは下記式(II)を満たす。2<MNb/MTi<5 (II)【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は電池用活物質、非水電解質電池及び電池パックに関する。
非水電解質電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源、定置用蓄電池としても注目されている。このような用途のために、非水電解質電池は、急速充放電性能及び長期信頼性などの特性を有することが要求されている。しかし、炭素質物を負極用活物質として用いた従来の電池は急速充放電性能が不十分であった。そこで、金属複合酸化物を負極用活物質として用いた電池が開発された。中でも、チタンを含有する複合酸化物を用いた電池は、優れた急速充放電性能を有し、さらに、寿命も長いという利点を有する。
急速充放電が可能な非水電解質電池は、充電時間が大幅に短いという利点を有する。また、ハイブリッド自動車の動力性能を向上させることができ、さらに、動力の回生エネルギーを効率的に回収することができる。そのため、急速充放電性能のさらなる改善が求められている。
また、チタンを含有する複合酸化物は、炭素質物よりも金属リチウム基準の電位が高く、また、炭素質物よりも重量あたりの容量が低い。そのため、チタン酸化物を用いた電池は、炭素質物を用いた電池よりもエネルギー密度が低いという問題がある。
特開2008−91079号公報 特開2010−287496号公報
C.M. Reich et. al., FUEL CELLS No.3-4,1 pp249-255 (2001) M.Gasperin, Journal of Solid State Chemistry 53, pp144-147 (1984)
優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する電池用活物質、該活物質を用いた非水電解質電池、及び該電池を含む電池パックを提供することを目的とする。
実施形態によれば、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む電池用活物質が提供される。この活物質中における、チタンのモル数MTiに対するニオブのモル数MNbの比 MNb/MTiは下記式(I)及び(II)の何れかを満たす。
0.5≦MNb/MTi<2 (I)
2<MNb/MTi<5 (II)
Nb2TiO7の結晶構造を示す模式図。 図1の結晶構造を他の方向から見た模式図。 第2実施形態に係る扁平型非水電解質電池の断面図。 図3のA部の拡大断面図。 第2実施形態に係る他の扁平型非水電解質電池の部分切欠斜視図。 図5のB部の拡大断面図。 第3実施形態に係る電池パックの分解斜視図。 図7の電池パックの電気回路を示すブロック図。 合成例及び比較例の電気化学的測定結果を示すグラフ。 図9の一部を拡大したグラフ。
(第1実施形態)
第1実施形態において、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む電池用活物質が提供される。この電池用活物質は粒子形状を有し、典型的には粉末として用いられる。この電池用活物質は、非水電解質二次電池において使用することができ、典型的には、負極において使用される。
活物質中において、チタンのモル数MTiに対するニオブのモル数MNbの比 MNb/MTiは、下記式(I)及び(II)の何れかを満たす。
0.5≦MNb/MTi<2 (I)
2<MNb/MTi<5 (II)
本実施形態による活物質は、主としてニオブ及びチタンを含有する複合酸化物から構成される。該活物質は、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物のみを含んでもよい。或いは、該活物質は、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物に加えて、例えば二酸化チタンなどのチタン酸化物を含んでもよい。活物質がチタン酸化物を含んでいる場合、比 MNb/MTiは、活物質全体に含まれるニオブ及びチタンのモル数から算出される。
ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物は、主に単斜晶系の結晶構造を有する。その例として、Nb2TiO7の結晶構造の模式図を図1及び2に示す。
図1に示すように、Nb2TiO7の結晶構造は、金属イオン101と酸化物イオン102が骨格構造103を構成している。なお、金属イオン101には、NbイオンとTiイオンがNb:Ti=2:1の比でランダムに配置されている。この骨格構造103は、三次元的に交互に配置され、骨格構造103同士の間に空隙104が存在する。この空隙104は、リチウムイオンが挿入されるホストに成り得る。
領域105及び領域106において、リチウムイオンは[100]方向と[010]方向の2方向に移動可能である。それ故、領域105及び領域106は、リチウムイオンの2次元的なチャネルとして機能する。
図2に示すように、Nb2TiO7の結晶構造には、[001]方向にトンネル状の空隙(トンネル107)が存在する。このトンネル107は、リチウムイオンの[001]方向の移動経路となる。トンネル107は領域105と領域106とを連結しているため、リチウムイオンは領域105と領域106を行き来することが可能である。
このように、Nb2TiO7に代表されるニオブ及びチタンを含有する複合酸化物の結晶構造は、リチウムイオンが挿入できる空間が大きく且つ構造的に安定である。さらに、リチウムイオンの迅速な拡散を可能とする2次元的なチャネルと、それらを繋ぐ[001]方向の経路を有する。これらのことから、該結晶構造は、リチウムイオンが挿入できる空間が実質的に大きく、且つ、リチウムイオンの挿入脱離性が高い。
なお、上記のようなニオブ及びチタンを含有する複合酸化物は、これに限定されないが、主に空間群C2/mの対称性を有する。また、少なくともその一部は、非特許文献2(Journal of Solid State Chemistry 53, pp144-147 (1984))に記載の原子座標を有する結晶構造を有することが好ましい。
本実施形態の活物質中において、比 MNb/MTiを上記範囲内にすることにより、後述するように急速充放電性能とエネルギー密度を向上させることが可能である。比 MNb/MTiは、好ましくは、1.0以上1.99以下の範囲又は2.01以上5.0以下の範囲であり、より好ましくは、1.8以上1.9以下の範囲又は2.1以上3.0以下の範囲である。
活物質中の比 MNb/MTiは、誘導結合プラズマ(ICP)分析方法により測定することができる。電極材料として電池に含まれている活物質は、以下のように測定することができる。まず、金属箔などの電極基板から活物質が含まれる層(例えば、後述する活物質層)を剥離する。例えば、溶媒中で電極基板に超音波を照射することにより活物質層を剥離することができる。次に、活物質層を大気中で短時間加熱する(例えば、500℃で1時間)。加熱によって、結着剤及び導電剤などの他の成分が除去される。一方、活物質を構成する元素のモル比は、加熱後も変化しない。加熱後の残渣を酸に溶解し、測定試料を調製する。この測定試料をICP分析に供する。
上述したように、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物の結晶構造は、リチウムイオンが挿入できる空間が実質的に大きく、且つ、リチウムイオンの挿入脱離性が高い。よって、このような複合酸化物を含む活物質を用いることにより、高い容量と優れた急速充放電性能(放電レート性能)を有する電池を提供することが可能である。
さらに、本実施形態に従って、活物質中における比 MNb/MTiが2よりも小さい場合、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物は、結晶格子中のニオブの一部がチタンによって置換された固溶体となり得る。活物質は、主にこのような固溶体から構成されてもよい。活物質中における比 MNb/MTiが2よりも小さい場合、過剰なチタンが二酸化チタンとして析出する場合もある。この場合、活物質は、上記の固溶体からなる第一相と、二酸化チタンからなる第二相を含む。また或いは、活物質は、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物としてNb2TiO7を含み、Nb2TiO7からなる第一相と、二酸化チタンからなる第二相を含んでもよい。析出した二酸化チタンは、ルチル型及びアナターゼ型などの結晶構造を有する。活物質中に二酸化チタンからなる第二相が含まれるか否かは、粉末X線回折法(XRD)により検出することができる。
二酸化チタンは、リチウムイオンを吸蔵するとき、4価から3価に還元される。このような二酸化チタンがニオブ及びチタンを含有する複合酸化物と共存することにより、活物質の導電性が向上する。また、上記のような固溶体は、電荷の中性を保つために含有する酸素欠損や電子正孔等が生じるため、導電性が向上する。
一方、本実施形態に従って、活物質中における比 MNb/MTiが2よりも大きい場合、複合酸化物のチタンサイトの一部がニオブによって置換される。ニオブがチタンサイトに入ることで、電荷的中性を保つべくチタンの一部が還元されるため、複合酸化物の導電性が結晶構造を維持したまま向上する。これによって、活物質の導電性が向上する。
このように、本実施形態に従って比 MNb/MTiを2以外とし、電荷的な中性が保たれていない結晶を含むことにより、活物質の導電性が向上する。このような高い導電性を有する活物質を用いることにより、電池の急速充放電性能を向上させることが可能である。比 MNb/MTiが1.8以上1.99以下の範囲又は2.01以上3.0以下の範囲であるとき、より優れた急速充放電性能が得られる。
さらに、活物質の導電性が高いために、電池を製造する際に使用する導電剤の量を減少させることが可能である。Nb2TiO7は導電性が低いため、従来の電池では、カーボン等の導電剤を多量に添加することにより、急速充放電性能を改善していた。しかしながら、本実施形態の活物質を用いることにより導電剤の量を減少させることが可能である。それ故、電池の重量を減少させることができる。その結果、エネルギー密度を向上させることが可能である。
またさらに、比 MNb/MTiが2よりも小さい場合、以下のような利点が得られる。図1に示した空隙104にリチウムイオンが挿入されたとき、骨格を構成する金属イオン101が還元される。具体的には、チタンイオンは4価から3価へ還元され、ニオブイオンは5価から3価へと還元される。これによって結晶の電気的中性が保たれる。しかしながら、本発明者らは、リチウムイオンが挿入されたときに、還元されないニオブイオンが存在することを見出した。これは、結晶中に挿入されたリチウムイオンの量が多くなるほど、結晶中でリチウムイオン同士の反発が強くなり、その結果、リチウムイオンが挿入され難くなるためと考えられる。
しかしながら、活物質の比 MNb/MTiを2よりも小さくすることにより、還元されないニオブの量を低下させることができる。還元されないニオブは電池の容量に寄与しない。よって、容量を維持したまま電池の重量を減少させることができる。その結果、単位重量あたりのエネルギー密度を向上させることができる。また、高価なニオブの量を低下させることができるため、コストを低下させることも可能である。
一方、比 MNb/MTiが2よりも大きい場合、結晶性の高い複合酸化物を得ることができる。結晶性の高い複合酸化物は導電性が高いため、電池の急速充放電性能を向上させることが可能である。またさらに、結晶性が高いために、実効容量が高いという利点も有する。Nb2TiO7の理論容量は380 mAh/g以上であるにもかかわらず、これまで報告されているNb2TiO7の実効容量は260 mAh/g程度である。しかしながら、比 MNb/MTiを2よりも大きくすることにより、実効容量を上昇させることが可能である。従って、エネルギー密度を上昇させることが可能である。比 MNb/MTiが2.1以上3.0以下の範囲であるとき、より高い実効容量が得られる。
また、Nb2TiO7の結晶性を向上させるためには、結晶を合成する際に1400℃程度の高い温度で焼成する必要がある。しかしながら、比 MNb/MTiを2よりも大きくすることにより、1000℃程度の低い温度で焼成しても結晶性の高い複合酸化物を得ることができる。よって、製造コストを低下させることが可能である。
比 MNb/MTiが小さすぎると、活物質中で二酸化チタンからなる相が支配的となる。この場合、容量及びエネルギー密度が著しく低下する。比 MNb/MTiが大きすぎると、容量及び急速充放電性能が低下する傾向がある。これは、結晶構造中に挿入可能なリチウム量に上限があるため、過剰にニオブが存在すると重量あたりの容量エネルギー密度が低下するためである。更に、骨格構造を構成する酸化物イオンと5価のニオブの結合性は、4価のチタンに比べて高い。このため骨格構造が強固になりすぎる。それ故、リチウムイオンの拡散性が低下すると考えられる。
ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2又は2<y<4であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表される複合酸化物であることが好ましい。このような複合酸化物は、化学式あたり4価から3価に還元可能なチタンを一つ有し、5価から3価まで還元可能なニオブを四つ未満有するため、理論上、最大で9つ未満のリチウムイオンを挿入することが可能である。これにより、電極密度が高くなるため、特に容積あたりのエネルギー密度が高いという利点を有する。一方で、yが2未満の場合、ニオブ量が少ないことから単位格子あたりの重量が低減できるため、リチウム挿入量に対する重量エネルギー密度を向上できるという利点を有する。更に、ニオブ量を削減することでコストを低減することができる。
なお、上記の式において、δは複合酸化物の還元状態及びニオブサイトのチタンによる置換の程度によって変動する。δが−0.5未満である場合(例えば、−0.6など)、ニオブがあらかじめ還元されて電極性能が低下する虞がある。一方、δが+0.5までは測定誤差の範囲である。
一つの態様において、本実施形態の活物質は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2又は2<y<4であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表される複合酸化物からなる第一相と、二酸化チタンからなる第二相を含む。このような活物質は、リチウムの挿入により二酸化チタンが電子導電性を有し、その結果、電極抵抗が低くなるため好ましい。
活物質中のチタンの状態は、粉末X線回折法(XRD)を用いて確認することができる。XRDによって結晶相を観察することにより、結晶構造中において、チタンが置換固溶されているか否かを判断することができる。具体的には、XRDにより、第二相の存在の有無、及び、複合酸化物の格子定数の変化(添加した元素(即ちチタン)のイオン半径が反映される)などを測定する。但し、添加した元素の量がわずかである場合は、XRDでは判断できないことがある。その場合、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察、及び、電子プローブ微量分析(EPMA)による測定を行う。これらの方法により、チタンの分布状態を知ることができる。チタンが活物質中に均一に分布している場合、活物質は複合酸化物からなる相を主に含んでいると考えられる。チタンが活物質中で偏析している場合、活物質は複合酸化物からなる第一相と共に、二酸化チタンからなる第二相を含むと考えられる。
XRDによる測定は、以下のように行うことができる。まず、活物質を粉砕し、平均粒子径が約5μmの試料を調製する。平均粒子径はレーザー回折法によって求めることができる。得られた試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填する。次いで、外部から別のガラス板を押し付けて、充填された試料の表面を平らにする。充填された試料にひび割れ、空隙、凹凸等が生じないように、過不足ない量の試料を充填するように注意する。また、ガラス板は十分な圧力で押し付けるように留意する。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu−Kα線を用いてXRDパターンを取得する。
なお、試料の配向性が高い場合は、試料の充填の仕方によってピークの位置がずれたり、ピーク強度比が変化したりする可能性がある。このような配向性が著しく高い試料は、キャピラリを用いて測定する。具体的には、試料をキャピラリに挿入し、このキャピラリを回転式試料台に載置して測定する。このような測定方法により、配向性を緩和することができる。
電極材料として電池に含まれている活物質は、以下のように測定することができる。まず、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物からリチウムイオンが完全に離脱した状態にする。例えば、該活物質が負極において用いられている場合、電池を完全に放電状態にする。これにより、活物質の結晶状態を観察することができる。但し、放電状態でも残留したリチウムイオンが存在することもある。次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極を取り出す。取り出した電極は、適切な溶媒で洗浄する。例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いることができる。洗浄した電極を、粉末X線回折装置のホルダーの面積とほぼ同じ面積に切断し、測定試料とする。試料をガラスホルダーに直接貼り付けて測定する。このとき、金属箔などの電極基板に由来するピークの位置を予め測定しておく。また、導電剤や結着剤などの他の成分のピークも予め測定しておく。基板のピークと活物質のピークが重なる場合、基板から活物質が含まれる層(例えば、後述する活物質層)を剥離して測定に供することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。例えば、溶媒中で電極基板に超音波を照射することにより活物質層を剥離することができる。活物質層をキャピラリに封入し、回転試料台に載置して測定する。このような方法により、配向性の影響を低減したうえで、活物質のXRDパターンを得ることができる。
得られたXRDパターンは、リートベルト法によって解析する。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標、占有率等)を精密に分析することができる。これにより、合成した酸化物の結晶構造の特徴を調べることができる。また、二酸化チタンなど他の結晶構造を持つ化合物との二相共存状態についても調べることができる。
上記で説明した電池用活物質は、以下の方法により製造することができる。
まず、出発原料を混合する。出発原料として、リチウム、チタン、ニオブを含む酸化物又は塩を用いる。出発原料として用いる塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。
出発原料は、チタンのモル数に対するニオブのモル数の比が0.5以上5未満(但し2は除く)となる割合で混合する。結晶の電荷が中性に保たれないような割合で合成しても、大部分で単斜晶系の結晶構造(例えば、LixNb2TiO7)を維持した複合酸化物の相(第一相)と二酸化チタンの相(第二相)とが共存した混合物を得ることができる。
次に、得られた混合物を粉砕し、できるだけ均一にする。次いで、粉砕した混合物を焼成する。焼成は、500〜1450℃の温度範囲で、延べ10〜40時間行う。これにより、チタンのモル数に対するニオブのモル数の比が0.5以上5未満(但し2は除く)であり、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む活物質を得ることができる。
なお、上記の方法において、リチウムを含まない出発原料を用いることにより、リチウムを含まない活物質を合成してもよい。そのような活物質は、電池を充電することによりリチウムイオンが挿入される。
ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物は粒子形状を有する。その平均粒子径は、特に限定されず、所望の電池特性に応じて変化させることができる。該粒子のBET比表面積は、特に限定されないが、0.1m/g以上、100m/g未満であってよい。BET比表面積が0.1m/g以上であれば、複合酸化物と電解液との接触面積を確保することができる。この場合、急速充放電性能が向上され、また、充電時間が短縮される。一方、BET比表面積が100m/g未満であれば、複合酸化物と電解液との反応性が高くなり過ぎない。それ故、寿命特性を向上させることができる。また、電極を製造する際に、活物質を含むスラリーを塗布しやすい。
BET比表面積は、BET法に従って測定された比表面積を指す。この方法では、吸着占有面積が既知である分子を用いて粒子の比表面積を測定する。まず、そのような分子を液体窒素の温度で粒子表面に吸着させる。次いで、粒子に吸着した分子の量から粒子の比表面積を求める。BET法では、不活性気体を低温低湿で物理吸着させる。BET法は、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した方法であり、比表面積の計算方法として最も有名である。
以上の実施形態によれば、優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する電池用を実現できる電池用活物質が提供できる。
(第2実施形態)
第2実施形態において、第1実施形態における電池用活物質を含む負極と、正極と、非水電解質と、セパレータと、外装部材とを含む非水電解質電池が提供される。
図3及び4に、非水電解質電池の一例として、扁平型の非水電解質二次電池を示す。図3は電池10の断面図であり、図4は図3のA部の拡大断面図である。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
電池10は、袋状の外装部材2と、外装部材2内に収容された扁平型の捲回電極群1を備える。外装部材2の内部には、図示しない非水電解質が含まれている。捲回電極群1は非水電解質により含浸されている。
捲回電極群1は、図4に示すように、外側から負極3、セパレータ4、正極5、セパレータ4の順で積層されている。負極3、セパレータ4、正極5、セパレータ4をこの順で重ねて積層体を作製し、この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回する。捲回した積層体を、加熱しながらプレスすることにより、偏平状の捲回電極群1を作製することができる。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質層3bとを含む。最外周に位置する負極3の部分は、図4に示すように負極集電体3aの内面側の片面のみに負極活物質層3bを有する。負極3のその他の部分は、負極集電体3aの両面に負極活物質層3bを有する。負極活物質層3bは、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
正極5は、正極集電体5aと、正極活物質層5bとを含む。正極活物質層5bは、正極集電体5aの両面に形成されている。正極活物質層5bは、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
図3に示すように、捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6が最外周の負極3の負極集電体3aに接続され、正極端子7が内側の正極5の正極集電体5aに接続されている。これらの負極端子6および正極端子7は、外装部材2の開口部から外部に延出されている。非水電解質は、外装部材2の開口部から注入される。外装部材2の開口部を負極端子6および正極端子7を挟んでヒートシールすることにより捲回電極群1および非水電解質が完全密封される。
負極端子6は、負極活物質のリチウム吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成されることができる。具体的には、銅、ニッケル、ステンレスまたはアルミニウムが挙げられる。負極端子6は、負極集電体3aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体3aと同様の材料から形成されることが好ましい。
正極端子7は、例えば、リチウムイオン金属に対する電位が3V以上5V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを有する材料から形成されることができる。具体的には、アルミニウム又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金から形成される。正極端子7は、正極集電体5aとの接触抵抗を低減するために、正極集電体5aと同様の材料から形成されることが好ましい。
負極活物質層3bに含まれる負極活物質として、第1実施形態で説明した電池用活物質が用いられる。これにより、優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する非水電解質電池と実現することができる。負極活物質は、第1実施形態で説明した電池用活物から構成されてもよいが、さらに他の酸化物を含んでもよい。他の酸化物の例には、アナターゼ構造を有する二酸化チタン(TiO2)、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2Ti3O7)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)が含まれる。他の酸化物は、負極活物質の総質量に対して50%以下の割合で含まれることが好ましい。負極活物質が第1実施形態で説明した電池用活物質の他に酸化物を含む場合、負極活物質全体におけるチタンのモル数に対するニオブのモル数の比が0.5以上5未満(但し、2を除く)であることが望ましい。
負極活物質層3bに含まれる導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と負極集電体3aとの接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、及びスチレンブタジェンゴムが含まれる。
負極活物質層3bにおいて、負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層と集電体の結着性が十分で、優れたサイクル特性を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
負極集電体は、負極活物質のリチウムの吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。負極集電体の厚さは5〜20μmであることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
負極は、例えば負極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体に塗布し、乾燥して負極活物質層を形成した後、プレスを施すことにより作製される。負極はまた、負極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して負極層とし、これを負極集電体上に配置することにより作製されてもよい。
正極活物質層5bに含まれる正極活物質として、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。酸化物及び硫化物の例には、リチウムを吸蔵する二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物 (例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4)、硫酸鉄[Fe2(SO4)3]、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。正極活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
より好ましい正極活物質の例には、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。
電池の非水電解質として常温溶融塩を用いる場合、好適に用いられる正極活物質の例には、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、及び、リチウムニッケルコバルト複合酸化物が含まれる。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。
正極活物質の平均一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。平均一次粒径が100nm以上の正極活物質は、電極製造時に取り扱い易い。平均一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散がスムーズである。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、電極製造時に取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を提供できる。
結着剤は、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムが含まれる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。
正極活物質層5bにおいて、活物質及び結着剤はそれぞれ80質量%以上98質量%以下、2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な電極強度が得られる。また、20質量%以下にすることにより電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤はそれぞれ77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。また、15質量%以下にすることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。
正極集電体5aは、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下、より好ましくは15μm以下にすることが望ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下にすることが好ましい。
正極は、例えば正極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体に塗布し、乾燥して正極層を形成した後、プレスを施すことにより作製される。正極はまた、正極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して正極層とし、これを正極集電体上に配置することにより作製されてもよい。
非水電解質として、液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状非水電解質は、液状電解質と高分子材料を複合化することにより調製される。
液状非水電解質中の電解質の濃度は0.5モル/L以上2.5モル/L以下であることが好ましい。
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質は高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)が含まれる。
また或いは、非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンの組合せからなる有機塩の内、常温(15〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩が含まれる。一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
セパレータ4は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または、合成樹脂製不織布から形成されてよい。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるため、安全性を向上できる。
外装部材2として、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルム製容器または厚さ1mm以下の金属製容器を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは0.2mm以下であることがより好ましい。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましく、厚さ0.2mm以下であることがさらに好ましい。
外装部材2の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等であってよい。外装部材2は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材であってよい。
ラミネートフィルムとして、樹脂層間に金属層が介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って袋状などの所望の形状に成形することができる。
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量%以下であることが好ましい。
図5及び6に、他の形状を有する扁平型の非水電解質二次電池を示す。図5は電池10´の部分切欠斜視図であり、図6は図5のB部の拡大断面図である。
電池10´は、袋状の外装部材12と、外装部材12内に収容された積層型電極群11を備える。外装部材12の内部には、図示しない非水電解質が含まれている。積層型電極群11は非水電解質により含浸されている。
積層型電極群11は、図6に示すように正極13と負極14とをその間にセパレータ15を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極13は複数枚存在し、それぞれが正極集電体13aと、正極集電体13aの両面に担持された正極活物質層13bとを備える。負極14は複数枚存在し、それぞれが負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に担持された負極活物質層14bとを備える。各負極14の負極集電体14aは、一辺が負極14から突出している。突出した負極集電体14aは、帯状の負極端子16に電気的に接続されている。帯状の負極端子16の先端は、外装部材12から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極13の正極集電体13aは、負極集電体14aの突出辺と反対側に位置する辺が正極13から突出している。正極13から突出した正極集電体13aは、帯状の正極端子17に電気的に接続されている。帯状の正極端子17の先端は、負極端子16とは反対側に位置し、外装部材12の辺から外部に引き出されている。
電池10´において、正極、負極、セパレータ、非水電解質、外装部材などは、図3及び4に示した電池10について述べたものと同様のものを用いることができる。
以上の実施形態によれば、優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する非水電解質電池が提供できる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電池パックについて、図面を参照して説明する。電池パックは、上記第2実施形態に係る非水電解質電池(単電池)を1個又は複数有する。複数の単電池を含む場合、各単電池は、電気的に直列もしくは並列に接続して配置される。
図7及び図8に、電池パック20の一例を示す。この電池パック20は、図3に示した構造を有する扁平型電池21を複数含む。図7は電池パック20の分解斜視図であり、図8は図7の電池パック20の電気回路を示すブロック図である。
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図8に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24は、負極端子6および正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図8に示すようにサーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、プリント配線基板24が組電池23と対向する面には、組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29,31は、プリント配線基板24に形成された配線32,33を通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34aおよびマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図7および図8の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
正極端子7および負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36およびプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36およびプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
図7、図8では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。あるいは、直列接続と並列接続を組合せてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列又は並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。本実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル特性が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、デジタルカメラの電源として、又は、例えば二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車の車載用電池として用いられる。特に、車載用電池として好適に用いられる。
以上の実施形態によれば、優れた急速充放電性能と高いエネルギー密度を有する電池パックが提供できる。
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
<合成例1〜9>
市販の酸化物試薬Nb2O5とTiO2の粉末を、チタンに対するニオブのモル比がそれぞれ0.50、0.85、1.07、1.33、1.90、1.99、2.01、2.10、又は3.00になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。これらの混合物を電気炉に入れ、1250℃で延べ20時間焼成した。これにより、合成例1〜9の生成物を得た。ここで用いた合成方法は、非特許文献2(M. GASPERIN, Journal of Solid State Chemistry 53, pp144-147 (1984))に記載された方法に基づくものである。
(粉末X線回折測定)
合成例1〜9の生成物のそれぞれをXRDにより測定した。まず、生成物を平均粒子径が約10μmになるまで粉砕し、試料を調製した。試料をガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填した。次いで、外部から別のガラス板を押し付け、表面を平らにした。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu−Kα線を用いて回折パターンを取得した。
その結果、合成例1〜9の生成物の主な結晶相はいずれも、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物(Nb2TiO7)であり、それらの複合酸化物はいずれも単斜晶系の結晶構造を有することが確認された。また、合成例1〜5の生成物では、二酸化チタンからなる第2相の存在が確認された。
(電気化学測定セルの作製)
合成例1〜9の生成物のそれぞれを用いて、電気化学測定セルを作製した。まず、生成物に、導電剤としてアセチレンブラックを、生成物に対して10質量部の割合で混合した。この混合物をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)中に分散した。この分散液に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、生成物に対して10質量部の割合で添加した。これにより、電極製造用のスラリーを調製した。このスラリーを、ブレードを用いて、アルミ箔から成る集電体上に塗布した。これを真空下、130℃で12時間乾燥し、電極を得た。
この電極と、対極として金属リチウム箔と、非水電解質を用いて、電気化学測定セルを作製した。非水電解質の溶媒として、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)を用いた。非水電解質の溶質として、六フッ化リン酸リチウムを用いた。六フッ化リン酸リチウムの濃度は1Mとした。
(電気化学的測定)
合成例1〜9のそれぞれの測定セルの初回放電容量を測定した。金属リチウム電極基準で1.0V〜3.0Vの電位範囲で充放電を行った。充放電電流値は0.2C(時間放電率)とした。試験は室温で行った。その結果を表1に示す。
また、合成例1〜9のそれぞれの測定セルの30サイクル後の放電容量維持率を調べた。まず、各測定セルの充放電を30サイクル繰り返した(充電/放電で1サイクルとする)。充放電は、金属リチウム電極基準で1.0V〜3.0Vの電位範囲で、1C(時間放電率)の電流値で、室温にて行った。次に、0.2C(時間放電率)で充放電を行い、30サイクル後の放電容量を測定した。0.2Cで測定した初回放電容量を100として、30サイクル後の放電容量の維持率(%)を算出した。その結果を表1に示す。
また、合成例1〜5のそれぞれの測定セルの急速充放電性能(レート性能)を調べた。0.2C、1.0C、及び5.0Cのそれぞれにおける放電容量を測定した。0.2Cでの放電容量を100として、1.0C及び5.0Cでの放電容量の維持率(%)を算出した。その結果を表1に示す。
<比較例1>
従来公知の合成方法に従ってNb2TiO7を合成した。合成は、特許文献2(特開2010−287496号公報)に記載の生成物の中で最も高いレート性能を有する実施例3と同様に行った。具体的には、酸化チタンの粉末と五酸化ニオブの粉末を、モル比で1:1になるように秤量した。それらの粉末を、乳鉢中でエタノールを用いて湿式混合した。この混合物を白金るつぼに入れて、1300℃で熱処理した。これにより、比較例1の生成物を得た。
比較例1の生成物を、合成例と同様にXRDにより測定した。その結果、XRDパターンにおけるピークは、Nb2TiO7のピークとすべて一致した。
比較例1の生成物を用いて、合成例と同様に電気化学測定セルを作製し、電気化学的測定を行った。その結果を表1に示す。
<比較例2〜4>
市販の酸化物試薬Nb2O5とTiO2の粉末を、チタンに対するニオブのモル比がそれぞれ5.00、14.00、又は24.00になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。これらの混合物を電気炉に入れ、1250℃で延べ20時間焼成した。これにより、比較例2〜4の生成物を得た。
比較例2〜4のそれぞれの生成物を、合成例と同様にXRDにより測定した。その結果、比較例2〜4の生成物の結晶相はそれぞれ、Nb10Ti2O29、Nb14TiO37、Nb24TiO62であり、いずれも単斜晶系の結晶構造を有することが確認された。
比較例2〜4の生成物を用いて、合成例と同様に電気化学測定セルを作製し、電気化学的測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2015046400
<結果>
表1に示されているように、合成例1〜9はいずれも比較例1〜4よりも5C放電容量維持率が高かった。よって、合成例1〜9は優れた急速充放電性能を有することが示された。また、合成例1〜9はいずれも比較例1〜4よりも30サイクル後の放電容量の維持率が高かった。よって、合成例1〜9はいずれも、充放電を安定に繰り返すことが可能であることが確認された。
比較例2〜4の1C放電容量維持率は比較的高かった。これは、1C程度のレートの場合、結晶性が高いほど有利であるためと考えられる。一般に高い温度で焼成するほど結晶性が高くなる。合成例及び比較例はいずれも同じ温度で焼成している。しかしながら、ニオブの含有量が多いほど融点が低下する。このため、ニオブの含有量が多い比較例2〜4は、他の例に比べて結晶性が向上したと考えられる。一方、5C程度の高いレートの場合、上述したとおり結晶を構成する元素比の影響が強くなる。そのため、合成例1〜9は、比較例2〜4よりも高い5C放電容量維持を有すると考えられる。
各合成例及び比較例について測定された、0.2C初回放電容量、30サイクル後の放電容量維持率及び5C放電容量維持率と、比MNb/MTiとの関係を表すグラフを図9に示す。また、図9の一部を拡大したグラフを図10に示す。
図9及び10に示されているように、比MNb/MTiがちょうど2である比較例1は、5C放電容量維持率が著しく低い。しかしながら、比MNb/MTiを2より大きくするか小さくすることにより、5C放電容量維持率が上昇することが示された。
また、比MNb/MTiが3のときに最も高い0.2C初回放電容量が得られた。これは、ニオブがチタンサイトを置換することによる結晶性の向上と導電性の上昇とが、バランスよく発現したためと考えられる。
比MNb/MTiが2より小さい場合、0.2C放電容量は低くなるものの、5C放電容量維持率は高かった。比MNb/MTiが2より小さい活物質は、ニオブの含有量が相対的に小さい。ニオブは高価であるため、そのような活物質は低コスト材料としての利点を有する。
比MNb/MTiが5以上である場合、0.2C初回放電容量、30サイクル後の放電容量維持率及び5C放電容量維持率のいずれも低下する傾向が見られた。また、比MNb/MTiが5以上である活物質は、ニオブの含有量が相対的に大きい。それ故、コストも高くなる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[付記]
[項1] ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む電池用活物質であって、前記活物質中における、チタンのモル数MTiに対するニオブのモル数MNbの比 MNb/MTiは下記式(I)及び(II)の何れかを満たす電池用活物質
0.5≦MNb/MTi<2 (I)
2<MNb/MTi<5 (II)。
[項2] 前記電池用活物質は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2又は2<y<4であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表されるニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む、項1に記載の電池用活物質。
[項3] 前記電池用活物質は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2又は2<y<4であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表される複合酸化物からなる第一相と、二酸化チタンからなる第二相を含む、項1又は2に記載の電池用活物質。
[項4] 項1〜3の何れか一項に記載の電池用活物質を含む負極と、正極と、非水電解質と、を含む非水電解質電池。
[項5] 項4に記載の非水電解質電池を含む電池パック。
1…捲回電極群,2…外装部材、3…負極、4…セパレータ、5…正極、6…負極端子、7…正極端子、10…電池、11…積層型電極群、20…電池パック、21…単電池、24…プリント配線基板、25…サーミスタ、26…保護回路、37…収納容器、101…金属イオン、102…酸化物イオン、103…骨格構造、104…空隙、105,106…領域、107…トンネル。

Claims (5)

  1. ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む電池用活物質であって、
    前記複合酸化物は単斜晶系の結晶構造を有し、比表面積が0.1m/g以上、100m/g未満であり、
    前記活物質中における、チタンのモル数MTiに対するニオブのモル数MNbの比 MNb/MTiは下記式(II)を満たす電池用活物質。
    2<MNb/MTi<5 (II)
  2. 前記電池用活物質は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2又は2<y<4であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表されるニオブ及びチタンを含有する複合酸化物を含む、請求項1に記載の電池用活物質。
  3. 前記電池用活物質は、式LixNbyTiO{(5y+4)/2}+δ(式中、0≦x≦9であり、0.5≦y<2であり、-0.5≦δ≦0.5である)により表される複合酸化物からなる第一相と、二酸化チタンからなる第二相を含む、請求項1又は2に記載の電池用活物質。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の電池用活物質を含む負極と、
    正極と、
    非水電解質と、を含む非水電解質電池。
  5. 請求項4に記載の非水電解質電池を含む電池パック。
JP2014214041A 2014-10-20 2014-10-20 電池用活物質、非水電解質電池及び電池パック Pending JP2015046400A (ja)

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