(第1実施形態)
第1実施形態に係る電池用活物質は、一般式LixM1M22O(7±δ)(ここで、M1はTi、Zr、Si及びSnから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、M2はNb、V、Ta、Bi及びMoから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表され、空間群C2/m(International tables Vol.A No.12, unique axis b, cell choice 1)詳細表記C1 2/m 1に属する対称性を有し、結晶中の2aサイト及び4iサイトの各占有サイトに前記M2及びM1のうち一方の元素が偏在している単斜晶型複合酸化物を含む。
前記2aサイトとは、ワイコフ記号を用いたサイト表記のことであり、2/mの対称性を有し、原子座標(0,0,0)で表される占有サイトを指す。前記4iサイトとは、ワイコフ記号を用いたサイト表記のことであり、mの対称性を有し、原子座標(X,0,Y)(−X,0,−Y)で表される占有サイトを指す。ここでXとYは任意の数である。
このような単斜晶型複合酸化物は、1.5V(対Li/Li+)程度のリチウム吸蔵電位を有することにより安定した繰り返し急速充放電が可能である。
一般式LixM1M22O(7±δ)で表される単斜晶型複合酸化物の例として、単斜晶型TiNb2O7の結晶構造の模式図を図1及び図2に示す。
図1に示すように、単斜晶型TiNb2O7の結晶構造は、金属イオン101と酸化物イオン102が骨格構造部分103を構成している。なお、金属イオン101には、NbイオンとTiイオンがNb:Ti=2:1の比でランダムに配置されているのが公知の材料である。これに対して、実施形態の単斜晶型TiNb2O7は、図1のM(1)〜M(5)の各占有サイトにおいて、M1の占有率gM1がgM1>1/3±σjまたはgM1<1/3±σj、M2の占有率gM2がgM2>2/3±σjまたはgM2<2/3±σjとなっており、かつgM1+gM2は1.0である。ここでσjはリートベルト法で占有率を決定する際の標準偏差を意味する。
これは、結晶構造中のサイトが、5価カチオンを優先的に多く含むサイトと4価のカチオンを優先的に多く含むサイトとに分かれることを意味している。この場合、金属イオン−酸化物イオン間の結合がエンタルピー支配的になり結晶格子が安定化する。更に、5価カチオンを多く含むサイトの近傍では、周辺に配位する酸化物イオンとの電子相関が強くなるため、結果としてゲストとなるリチウムイオンと酸化物イオンの電子相関が弱まり、固体中のリチウムイオンの移動度を向上することができる。骨格構造部分103は三次元的に交互に配置され、骨格構造部分103同士の間に空隙部分104が存在する。この空隙部分104がリチウムイオンのホストとなる。リチウムイオンのホストとなるサイトは、上述のようにエンタルピー的に安定化した結晶格子間に配置されるため、従来公知のランダムに配置された結晶構造に比べてLiが安定的に挿入されることになる。
図1において、領域105及び領域106は、[100]方向と[010]方向に2次元的なチャネルを有する部分である。図2に示すように、単斜晶型TiNb2O7の結晶構造には、[001]方向に空隙部分107が存在する。この空隙部分107は、リチウムイオンの導電に有利なトンネル構造を有しており、領域105と領域106とを繋ぐ[001]方向の導電経路となる。この導電経路が存在することによって、リチウムイオンは領域105と領域106を行き来することが可能となる。
このように、実施形態における単斜晶型複合酸化物は、結晶構造中のサイトが、5価カチオンを優先的に多く含むサイトと4価のカチオンを優先的に多く含むサイトとに分かれることでリチウムイオンのホストとなる結晶格子を安定化できる。更に、リチウムイオン−酸化物イオン間の相互作用を弱めることに効果的な5価カチオンを優先的に多く含むサイトが存在し、リチウムイオンの拡散が速い2次元的なチャネルを有する領域とそれらを繋ぐ[001]方向の導電経路が共存することによって、リチウムイオンの挿入脱離性が向上する。これにより高い容量と高いレート性能を提供することが可能である。
なお、実施形態で示す結晶の面指数は、空間群C2/m(International
tables Vol.A No.12, unique axis b, cell
choice 1)の対称性を持ち、後述する表1に記載の原子座標に基づいて指数付けを行った場合のものである。
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される実施形態の単斜晶型複合酸化物は、Ti、Zr、Si及びSnから選択される4価のM1カチオンと、Nb、V、Ta、Bi及びMoから選択される5価または6価のM2カチオンとを含む。
リチウムイオンが空隙部分104に挿入されると、骨格を構成する金属イオン101が3価に還元され、これによって結晶の電気的中性が保たれる。実施形態の単斜晶型複合酸化物では、4価カチオンが4価から3価へ還元されるだけでなく、5価カチオンも5価から3価へと還元される。6価カチオンも還元電位に応じて還元される。このため、4価カチオンだけを含む化合物に比べて、活物質重量あたりの還元価数が大きい。それ故、多くのリチウムイオンが挿入されても結晶の電気的中性を保つことが可能である。このため、4価カチオンだけを含む酸化チタンのような化合物に比べて、エネルギー密度を高めることができる。その結果、実施形態の単斜晶型複合酸化物の理論容量は387mAh/g程度であり、これはスピネル構造を有するチタン酸化物の2倍以上の値である。
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される実施形態の単斜晶型複合酸化物は、単位構造あたり1つの4価のカチオンと2つの5価のカチオンを含むため、理論上、層間に最大5つのリチウムイオンを挿入することが可能である。このため、一般式LixM1M22O(7±δ)において、xは0以上5以下である。また、δは単斜晶型複合酸化物の還元状態によって変動する。δが−0.3を超えると、相分離するおそれがある。δ=+0.3までは測定誤差の範囲である。
実施形態における単斜晶型複合酸化物はTi及びNbを含むことが好ましく、TiNb2O7であることがより好ましい。これは、前記一般式において、y=0、z=0である酸化物、即ち、4価のカチオンがTi4+、5価のカチオンがNb5+である酸化物に相当する。TiNb2O7は、リチウムイオンの導電に理想的な結晶格子を提供できるため、より一層の急速充放電性能の向上と電極容量の向上を図ることが可能になる。
実施形態の単斜晶型複合酸化物は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折の回折図において、2θ=26°±0.5°に最も強度の高いピークが現われることが好ましい。2θ=26°±0.5°に現れるピークは、主に(003)面のピークであると考えられる。2θ=26°±0.5°に現れるピークが最も強度の高いピークである場合、結晶構造中で(003)面の結晶子サイズが大きいことが推察され、[001]方向に結晶子が成長しているものと解釈できる。上述したように、[001]方向は、上下の2次元チャネルを結ぶ唯一のパスであることから、この部分が成長していることにより、挿入空間へのリチウムイオンの挿入脱離性が向上すると共に、リチウムイオンの挿入脱離空間が実効的に増加する。また4価のカチオンを優先的に含むサイトと5価のカチオンを優先的に含むサイトのそれぞれ近傍に挿入されるリチウムイオンの導電パスとしても使われる。これにより、高い充放電容量と高いレート性能を提供することが可能である。また、リチウムイオンの挿入脱離性が高いことからリチウムの損失も少なく、優れた充放電効率を提供することも可能である。
なお、2θ=26°±0.5°の範囲に(111)面のピークが現れる場合もあると考えられるが、(003)面のピークと(111)面は、面間隔が近いことからピークを分離することは困難である場合が多い。
第1実施形態に係る電池用活物質は、後述するように非水電解質電池の負極の材料として用いられるだけでなく、正極の材料としても用いることができる。いずれの場合にも、第1実施形態に係る電池用活物質が有する、優れた繰り返し急速充放電性能および高いエネルギー密度という効果を発揮することができる。
<粒子径及びBET比表面積>
実施形態における複合酸化物の平均粒子径は特に制限されず、所望の電池特性に応じて変化させることができる。しかし、リチウムの拡散性を向上するためには粒子径を小さくすることが好ましく、平均粒子径が0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.1μm〜1μmの範囲であることがより好ましい。
粒度分布(重量基準分布)及びアスペクト比の測定方法としては、粉体の場合レーザー回折計等による測定を適用することができる。レーザー回折計における粒度分布を測定し、重量分布(重量%)を算出する。このとき超音波で振動しながら凝集を防ぐと良い。測定条件はレーザー回折計メーカーが材料ごとに推奨する条件とする。このとき、対象とする材料が電極体の場合には、活物質を取り出すために、適宜裁断した電極を溶媒中(アルコール、NMPなどの有機溶媒が好ましい)に漬け、超音波をかける。これにより集電箔と活物質を剥離することができる。次に、集電箔を分離した分散溶媒を遠心分離器にかけて、カーボン等の導電助剤を含む電極体の粉末から、活物質だけを分離することが好ましい。又は、あらかじめ電極体以外の材料(カーボン、集電体、バインダー等)がある場合は、あらかじめ、それらを除去した粉末を準備して予備測定を行い、測定結果から除外できるようにすると良い。
実施形態における複合酸化物のBET比表面積は特に制限されないが、5m2/g以上、200m2/g未満であることが好ましい。比表面積が5m2/g以上であれば、電解液との接触面積を確保することができ、良好な放電レート特性が得られやすく、また充電時間を短縮できる。比表面積が200m2/g未満であれば、電解液との反応性が高くなり過ぎず、寿命特性を向上させることができる。また、後述する電極の製造に用いる、活物質を含むスラリーの塗工性を良好なものにすることができる。
ここで、比表面積の測定は、粉体粒子表面に吸着占有面積が既知である分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法を用いる。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法であり、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論である。これにより求められた比表面積のことをBET比表面積と称する。
<製造方法>
実施形態の単斜晶型複合酸化物は、以下の方法により製造することができる。
まず、Ti、Zr、Si及びSnから成る群から選択される少なくとも1つの元素M1を含む酸化物または塩、及び、Nb、V、Nb、Ta、Bi及びMoから成る群から選択される少なくとも1つの元素M2を含む酸化物又は塩を、LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物となるようなモル比で混合する。上記の塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。これらの原料化合物を平均粒子径が5μm以下となるまで粉砕し、できるだけ均一になるように混合する。
得られた混合物を800〜1200℃で仮焼して仮焼物を得た後、焼成して焼成物を得る。焼成は、1100〜1500℃の温度範囲で、複数回に分けて、延べ時間5〜30時間をかけて行う。複数回に分けて焼成することで冷却時に[001]方向への成長が促進されるため望ましい。また焼成の温度を段階的に変えることも良好な結晶性を得るために有効である。例えば、1回目の焼成を1100℃、2回目を1200℃、3回目を1350℃としてもよい。より好ましくは、複数回の焼成の合間に合成した粒子を粉砕することで、粗い粒子の成長を抑制することができる。
このように、複数回の焼成を繰り返すことにより、結晶性が向上し、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折の回折図において、2θ=26°±0.5°に最も強度の高いピークが現われる単斜晶型複合酸化物を得ることができる。
次に、焼成物を1000℃未満の温度で30分から40時間の範囲で焼きなまし(熱処理)をする。この結果、空間群C2/m 詳細表記C1 2/m 1(International tables Vol.A No.12, unique axis b,
cell choice 1)に属する対称性を有し、結晶中の2aサイト及び4iサイトの各占有サイトに、M2及びM1のうち一方の元素が偏在する単斜晶型複合酸化物を得ることができる。より好ましくは、300℃〜900℃の範囲で、30分〜12時間かけて焼きなまし熱処理する。熱処理温度が300℃未満では結晶中の原子の再配列が遅く、十分な焼きなまし効果が得られない。熱処理温度が900℃を超えると、原子に加わる熱振動が強くなりエントロピー支配的に原子がランダムに配置される傾向がある。
上記のように合成された単斜晶型複合酸化物には、充電によりリチウムイオンが挿入される。或いは、合成原料に炭酸リチウムのようなリチウムを含む化合物を用いることにより、予めリチウムを含む単斜晶型複合酸化物を得ることもできる。
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折(X-ray diffraction:XRD)による測定は、以下のように行うことができる。まず、活物質を粉砕し、平均粒子径が約5μm未満の試料を調製する。平均粒子径はレーザー回折法によって求めることができる。得られた試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填する。次いで、外部から別のガラス板を押し付けて、充填された試料の表面を平らにする。充填された試料にひび割れ、空隙、凹凸等が生じないように、過不足ない量の試料を充填するように注意する。また、ガラス板は十分な圧力で押し付けるように留意する。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu−Kα線を用いてXRDパターンを取得する。
なお、試料の配向性が高い場合は、試料の充填の仕方によってピークの位置がずれたり、ピーク強度比が変化したりする可能性がある。このような配向性が著しく高い試料は、キャピラリを用いて測定する。具体的には、試料をキャピラリに挿入し、このキャピラリを回転式試料台に載置して測定する。このような測定方法により、配向性を緩和することができる。キャピラリには、リンデマンガラス製のものを用いる。
電極材料として電池に含まれている活物質は、以下のように測定することができる。まず、ニオブ及びチタンを含有する複合酸化物からリチウムイオンが完全に離脱した状態にする。例えば、この活物質を負極に用いた場合、電池を完全に放電状態にする。これにより、活物質の結晶状態を観察することができる。但し、放電状態でも残留したリチウムイオンが存在することもある。次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極を取り出す。取り出した電極を、適切な溶媒で洗浄する。例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いることができる。洗浄した電極を、粉末X線回折装置のホルダーの面積とほぼ同じ面積に切断し、測定試料とする。試料をガラスホルダーに直接貼り付けて測定する。このとき、金属箔などの電極基板に由来するピークの位置を予め測定しておく。また、導電剤や結着剤などの他の成分のピークも予め測定しておく。基板のピークと活物質のピークが重なる場合、基板から活物質が含まれる層(例えば、後述する活物質層)を剥離して測定に供することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。例えば、溶媒中で電極基板に超音波を照射することにより活物質層を剥離することができる。活物質層をキャピラリに封入し、回転試料台に載置して測定する。このような方法により、配向性の影響を低減したうえで、活物質のXRDパターンを得ることができる。この際に取得するXRDパターンは、リートベルト解析に適用できるものでなければならない。リートベルト用データを収集するには、ステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3〜1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000〜10000カウントとなるように適宜、測定時間またはX線強度を調整する。
得られたXRDパターンを、リートベルト法によって解析する。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標、占有率等)を精密に分析することができる。これにより、合成した酸化物の結晶構造の特徴を調べることができる。また、構成元素の各サイト中の占有率を調べることが可能である。リートベルト解析における観測強度と計算強度の一致の程度を見積もるための尺度としてフィッティングパラメータSを用いる。このSが1.8より小さくなるように解析を行う必要がある。また、各サイトの占有率を決定する際には、標準偏差σjを考慮に入れなければならない。ここで定義するフィッティングパラメータS及び標準偏差σjについては、「粉末X線解析の実際」日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店)に記載の数式で推定するものとする。この方法により、実施形態のLixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)中の2aまたは4iの各占有サイトにおいて、M1の占有率gM1がgM1>1/3±σjまたはgM1<1/3±σjであり、M2の占有率gM2がgM2>2/3±σjまたはgM2<2/3±σjであり、かつgM1+gM2が1.0であることを確かめることで、それぞれの元素の偏在を確認することができる。
以上の実施形態によれば、優れた繰り返し急速充放電性能を有し、且つ、高いエネルギー密度を有する電池用活物質を提供することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、上記第1実施形態における電池用活物質を含む負極と、正極と、非水電解質と、セパレータと、外装部材を含む非水電解質電池が提供される。
以下、負極、正極、非水電解質、セパレータ、外装部材について詳細に説明する。
1)負極
負極は、集電体と、負極層(負極活物質含有層)とを含む。負極層は、集電体の片面若しくは両面に形成され、活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
負極活物質には、第1実施形態で説明したLixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表され、空間群C2/mに属する対称性を有し、結晶構造中の2aまたは4iの各占有サイトにおいて、M1の占有率gM1がgM1>1/3±σjまたはgM1<1/3±σjであり、M2の占有率gM2がgM2>2/3±σjまたはgM2<2/3±σjであり、かつgM1+gM2が1.0である単斜晶型複合酸化物を含む電池用活物質が用いられる。ここで、M1はTi、Zr、Si及びSnから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、M2はV、Nb、Ta及びBiから成る群から選択される少なくとも1つの元素である。
このような負極活物質を用いた負極は、優れた急速充放電性能を有し、且つ、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を提供することが可能である。
上述したように、一般的LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折の回折図において、2θ=26°±0.5°に最も強度の高いピークが現われることが好ましい。上記の条件を満たす単斜晶型複合酸化物は結晶構造の安定性に優れつつ、高い結晶性を有するため、このような負極活物質を用いた負極は、より優れた急速充放電性能を有し、且つ、より高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を提供することが可能である。
負極活物質には、一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物を単独で用いてもよいが、他の活物質を混合して用いてもよい。他の活物質の例には、アナターゼ構造を有する二酸化チタン(TiO2)、あるいは単斜晶型構造を有するTiO2(B)、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2Ti3O7)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)が含まれる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、及びスチレンブタジェンゴムが含まれる。
負極層中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極層と集電体の結着性が十分で、優れたサイクル特性を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。更に、粒子間の導電性を向上するためには、粒子表面にカーボンコートをすることが好ましい。カーボンコートの手段は特に限定されないが、炭素源となりうる有機物を粒子表面に付着させて焼成により炭化することで優れた導電性を確保することができる。カーボンコートの付着量は特に限定されないが、0.5質量%以上とすることにより、電極の電子導電性向上効果が得られる。
集電体は、負極活物質のリチウムの吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作ることが好ましい。集電体の厚さは5〜20μmであることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
負極は、例えば負極活物質、結着剤および導電剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、負極層を形成した後、プレスを施すことにより作製することができる。負極はまた、負極活物質、結着剤及び導電剤をペレット状に形成して負極層とし、これを集電体上に配置することにより作製してもよい。
2)正極
正極は、集電体と、正極層(正極活物質含有層)とを含む。正極層は、集電体の片面若しくは両面に形成され、活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
活物質は、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。酸化物及び硫化物の例には、リチウムを吸蔵する二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1−yO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2−yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4、LixFe1−yMnyPO4、LixCoPO4)、硫酸鉄[Fe2(SO4)3]、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
より好ましい活物質の例には、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCoyO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2−yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1−yO2)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。上記の式において、0<x≦1であり、0<y≦1である。
電池の非水電解質として常温溶融塩を用いる場合に、好ましい活物質の例には、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、及び、リチウムニッケルコバルト複合酸化物が含まれる。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムが含まれる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。
正極層において、活物質及び結着剤はそれぞれ80質量%以上98質量%以下、2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤を2質量%以上の量にすると、十分な電極強度が得られる。結着剤を20質量%以下にすると、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、活物質、結着剤及び導電剤はそれぞれ77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤を3質量%以上の量にすると、上述した効果を発揮することができる。導電剤を15質量%以下にすると、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。
集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下にすることが好ましい。
正極は、例えば活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤を適当な溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体に塗布し、乾燥して正極層を形成した後、プレスを施すことにより作製することができる。正極はまた、活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して正極層とし、これを集電体上に配置することにより作製してもよい。
3)非水電解質
非水電解質は、例えば、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、又は、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質が挙げられる。
液状非水電解質は、電解質を0.5モル/L以上2.5モル/L以下の濃度で有機溶媒に溶解したものであることが好ましい。
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質は高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)が含まれる。
或いは、非水電解質には、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンの組合せからなる有機塩の内、常温(15〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩が含まれる。一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または、合成樹脂製不織布から形成される。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるため、安全性を向上できる。
5)外装部材
外装部材は、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルムまたは厚さ1mm以下の金属製容器が用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは0.2mm以下であることがより好ましい。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましく、厚さ0.2mm以下であることがさらに好ましい。
外装部材の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等がある。外装部材は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材がある。
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層が介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作る。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含むことが好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量%以下にすることが好ましい。
6)非水電解質二次電池
次に、第2実施形態に係る非水電解質電池を、図面を参照してより具体的に説明する。図3は、扁平型非水電解質二次電池の断面図である。図4は図3のA部の拡大断面図である。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
扁平状の捲回電極群1は、2枚の樹脂層の間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装部材2内に収納されている。扁平状の捲回電極群1は、図4に示すように、外側から負極3、セパレータ4、正極5、セパレータ4の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。
負極3は、負極集電体3aと負極層3bとを含む。負極層3bには、上記の負極活物質が含まれる。最外殻の負極3は、図4に示すように負極集電体3aの内面側の片面のみに負極層3bを形成した構成を有する。その他の負極3は、負極集電体3aの両面に負極層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aの両面に正極層5bが形成されている。
図3に示すように、捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6が最外殻の負極3の負極集電体3aに接続され、正極端子7が内側の正極5の正極集電体5aに接続されている。これらの負極端子6および正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。例えば液状非水電解質は、袋状外装部材2の開口部から注入される。袋状外装部材2の開口部を負極端子6および正極端子7を挟んでヒートシールすることにより捲回電極群1および液状非水電解質が完全密封される。
負極端子6は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成されることができる。具体的には、銅、ニッケル、ステンレスまたはアルミニウムが挙げられる。負極端子6は、負極集電体3aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体3aと同様の材料から形成されることが好ましい。
正極端子7は、例えば、リチウムイオン金属に対する電位が3V以上5V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを有する材料から形成されることができる。具体的には、アルミニウム又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金から形成される。正極端子7は、正極集電体5aとの接触抵抗を低減するために、正極集電体5aと同様の材料から形成されることが好ましい。
第2実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図3および図4に示す構成のものに限らず、例えば図5および図6に示す構成の電池であってもよい。図5は、第2実施形態に係る別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示す部分切欠斜視図であり、図6は図5のB部の拡大断面図である。
積層型電極群11は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる外装部材12内に収納されている。積層型電極群11は、図6に示すように正極13と負極14とをその間にセパレータ15を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極13は複数枚存在し、それぞれが集電体13aと、集電体13aの両面に担持された正極活物質含有層13bとを備える。負極14は複数枚存在し、それぞれが負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に担持された負極活物質含有層14bとを備える。各負極14の負極集電体14aは、一辺が負極14から突出している。突出した負極集電体14aは、帯状の負極端子16に電気的に接続されている。帯状の負極端子16の先端は、外装部材11から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極13の正極集電体13aは、負極集電体14aの突出辺と反対側に位置する辺が正極13から突出している。正極13から突出した正極集電体13aは、帯状の正極端子17に電気的に接続されている。帯状の正極端子17の先端は、負極端子16とは反対側に位置し、外装部材11の辺から外部に引き出されている。
以上の実施形態によれば、優れた繰り返し急速充放電性能を有し、且つ、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を提供することが可能である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電池パックについて、図面を参照して説明する。電池パックは、上記第2実施形態に係る非水電解質電池(単電池)を1個又は複数有する。複数の単電池を含む場合、各単電池は、電気的に直列もしくは並列に接続して配置される。
図7及び図8に、電池パック20の一例を示す。この電池パック20は、図3に示した構造を有する扁平型電池21を複数含む。図7は電池パック20の分解斜視図であり、図8は図7の電池パック20の電気回路を示すブロック図である。
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図8に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24は、負極端子6および正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図8に示すようにサーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、プリント配線基板24が組電池23と対向する面には、組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29、31は、プリント配線基板24に形成された配線32、33を通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34aおよびマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図7および図8の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
正極端子7および負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36およびプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36およびプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
図7、図8では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。あるいは、直列接続と並列接続を組合せてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列又は並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル特性が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、デジタルカメラの電源として、又は、例えば二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車の車載用電池として用いられる。特に、車載用電池として好適に用いられる。
以上の実施形態によれば、優れた繰り返し急速充放電性能を有し、且つ、高いエネルギー密度を有する電池パックを提供することが可能である。
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。なお、合成した単斜晶型複合酸化物の結晶相の同定及び結晶構造の推定は、Cu−Kα線を用いた粉末X線回折法によって行った。また、生成物の組成をICP法により分析し、目的物が得られていることを確認した。
<合成例1>
(合成方法)
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti、M2=NbであるTiNb2O7を合成した。
出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5とTiO2を用いた。これらの原料酸化物を、モル比で1:1になるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1400℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間焼きなまし熱処理を行った。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、粉末X線回折測定は次のように行った。まず、対象試料を平均粒子径が5μm未満となるまで粉砕した。本実施例における粒度分布はレーザー回折計(ニッキソー・マイクロトラックシリーズ MT3300 反射法・超音波照射あり)を用いて測定した。粉砕した試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填した。次いで、外部から別のガラス板を使い、充分に押し付けて平滑化した。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu−Kα線を用いて回折パターンを取得した。まず、測定条件を決定するために連続法で、X線出力40kV、100mAとして、スキャン速度3deg/minで測定を行った。その結果、最小半値幅が0.15degであったため、その1/5とした0.03degをステップ幅として決定した。次に、FT法にて本測定を行い、メインピークの強度が10000カウントとなるように各ステップにおける計測時間を決定した。測定したXRDデータをリートベルト解析によって、Nb及びTiのサイト占有率を調べた。
表1に、解析に用いたM1及びM2が占有する金属占有サイトM(1)〜M(5)の各サイトにおける原子座標の初期値を示す。表2に、リートベルト解析結果によって得られた各金属占有サイトにおけるM1及びM2の占有率を示す。
この結果から、M(1)及びM(2)はM2すなわちNbがリッチであり、M(3)及びM(4)は若干M2が多いためM1:M2が1:2の一般的な比率から外れており、M(5)はM1すなわちTiがリッチである。このことから、M1とM2が偏在していることが明らかとなった。
解析結果のうち、M2の偏在が分かりやすい代表的なサイトとして、以降はM(1)サイトすなわち2aサイトにおける各元素の占有率をまとめて表4に示す。表4に示すように、合成例1ではM1=Tiが0.186±0.04、M2=Nbが0.814±0.04となり、ランダムに配列している場合の想定値であるM1=0.33±0.03、M2=0.667±0.03の範囲から大幅に外れている。このことから、合成例1で得られた単斜晶型複合酸化物では、サイト内でNbとTiが偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.33、σj=0.03であることから、サイトの占有率から得られた結果は十分に有意であると考えられる。
(電気化学測定)
上記で合成した単斜晶型複合酸化物100重量部に対し、導電剤としてアセチレンブラックを10重量部の割合で混合した。この混合物をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)中に分散させ、酸化物100重量部に対して結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を10重量部の割合で混合することで、電極スラリーを作製した。このスラリーを、ブレードを用いて、アルミ箔から成る集電体上に塗布した。これを真空下、130℃で12時間乾燥し、電極を得た。
この電極と、対極として金属リチウム箔と、非水電解質を用いて、電気化学測定セルを作製した。非水電解質として、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)中に六フッ化リン酸リチウムを1Mの濃度で溶解させたものを用いた。その後、金属リチウム電極基準で1.0V〜3.0Vの電位範囲で充放電を行った。充放電電流値を0.2C(時間放電率)とし、室温にて充放電試験を行った。
次に、負極活物質が、安定的に充放電が可能であるか否かを確認するため、電気化学測定セルに50サイクル繰り返し充放電を行い(充電/放電で1サイクルとする)、50回放電容量維持率を調べた。充放電は、金属リチウム電極基準で1.0V〜3.0Vの電位範囲で、電流値を1C(時間放電率)とし、室温にて行った。50回後の放電容量維持率を確認するため、再び0.2C(時間放電率)で充放電を行い、初回放電容量を100%として容量維持率を算出した。また、レート性能の指標として、0.2C放電容量と1.0C放電容量の比を算出した。
表3に、合成した試料のXRDメインピーク位置、平均粒子径、BET比表面積、電極化時の導電助剤の種類をまとめて示す。表4に、その他の電気化学特性等を示す。
<合成例2>
(合成方法)
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti、M2=NbであるTiNb2O7を合成した。
出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5とTiO2を用いた。これらの原料酸化物を、モル比で1:1になるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。次に、得られた前駆体粉末量に対し炭素被覆を行った。粉末量に対し30重量%のスクロースを含む水溶液中で攪拌混合し、過熱して水分を飛ばした後に、Ar雰囲気下で600℃、5Hの焼成を行い、炭素被覆粉末を得た。炭素被覆量を計測するために大気中で、1000℃、5時間焼成して炭素を分解し、焼成前後の重量の差分から炭素被覆量を計算したところ、8.02重量%であった。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った。その結果、表4に示したように、2aサイトにおける各元素の占有率はM1=Tiが0.191±0.04、M2=Nbが0.809±0.04となり、サイト内でNbとTiが偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.65、σj=0.03であることから、サイトの占有率から得られた結果は十分に有意であると考えられる。
(電気化学測定)
上記で合成した単斜晶型複合酸化物100重量部に対し、導電剤としてアセチレンブラックを5重量部の割合で混合した。この混合物をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)中に分散させ、酸化物100重量部に対して結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を10重量部の割合で混合することで、電極スラリーを作製した。このスラリーを、ブレードを用いて、アルミ箔から成る集電体上に塗布した。これを真空下、130℃で12時間乾燥し、電極を得た。その他の測定方法は合成例1と同様に行った。測定結果を表4に示す。
<合成例3〜5>
(合成方法)
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti0.98Zr0.02、M2=NbであるTi0.98Zr0.02Nb2O7を合成した(合成例3)。また、x=0、M1=Ti0.98Si0.02、M2=NbであるTi0.98Si0.02Nb2O7を合成した(合成例4)。さらに、x=0、M1=Ti0.98Sn0.02、M2=NbであるTi0.98Sn0.02Nb2O7を合成した(合成例5)。
合成例3の出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2、及びZrO2を用いた。これらの原料酸化物を、所望のTi0.98Zr0.02Nb2O7を構成する比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
合成例4の出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2、及びSiO2を用いた。これらの原料酸化物を、所望のTi0.98Si0.02Nb2O7を構成する比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
合成例5の出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2、及びSnO2を用いた。これらの原料酸化物を、所望のTi0.98Sn0.02Nb2O7を構成する比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った。2aサイトにおける各元素の占有率を求めた結果、合成例3では、M1=Ti0.98Zr0.02が0.156±0.03、M2=Nbが0.844±0.03となり、サイト内でM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.46、σj=0.03であった。合成例4では、M1=Ti0.98Si0.02は0.159±0.03、M2=Nbは0.841±0.03となり、同様にM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.56、σj=0.03であった。合成例5では、M1=Ti0.98Sn0.02は0.153±0.03、M2=Nbは0.847±0.03となり、同様にM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.36、σj=0.03であった。これらのフィッティングパラメータから、これらのサイトの占有率から得られた結果は十分に有意であると考えられる。
(電気化学測定)
合成例1と同様に測定を行った。表4に測定結果を示す。
<合成例6および7>
(合成方法)
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti、M2=Nb1.95V0.05であるTiNb1.95V0.05O7を合成した(合成例6)。また、x=0、M1=Ti、M2=Nb1.95Ta0.05であるTiNb1.95Ta0.05O7を合成した(合成例7)。
合成例6の出発原料に市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2、及びV2O5を用いた。これらの原料酸化物を、TiNb1.95V0.05O7の所定の組成比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
合成例7の出発原料に市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2、及びTa2O5を用いた。これらの原料酸化物を、TiNb1.95Ta0.05O7の所定の組成比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却した後、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った。その結果、2aサイトにおける各元素の占有率は、合成例6では、M1=Tiが0.179±0.04、M2=Nb1.95V0.05が0.821±0.04となり、サイト内でM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.51、σj=0.04であった。また、合成例7では、M1=Tiが0.175±0.04、M2=Nb1.95Ta0.05が0.825±0.04となり、こちらもM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.45、σj=0.04であった。これらのフィッティングパラメータから、これらのサイトの占有率から得られた結果は十分に有意であると考えられる。
(電気化学測定)
合成例1と同様に測定を行った。表4に測定結果を示す。
<合成例8>
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0.2、M1=Ti、M2=Nb1.8Bi0.2であるLi0.2TiNb1.8Bi0.2O7を合成した。
出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5及びTiO2を用いた。また、硝酸リチウム及び硝酸ビスマスを用いて5価のBiを含むLiBiO3をあらかじめ合成し、Li及びBi源として用いた。これらの原料酸化物を、所望のLi0.2TiNb1.8Bi0.2O7を構成する比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却したのち、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った結果、2aサイトにおける各元素の占有率は、M1=Tiは0.190±0.05、M2=Nb1.95V0.05は0.810±0.05となり、こちらもM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.55、σj=0.05であることから、このサイトの占有率から得られた結果は十分に有意差であると考えられる。
(電気化学測定)
合成例1と同様に測定を行った。表4に測定結果を示す。
<合成例9>
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti、M2=Nb1.9Ti0.05Mo0.05であるTi1.05Nb1.9Mo0.05O7を合成した。
出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5、TiO2及びMoO3を用いた。これらの原料酸化物を、所望のTi1.05Nb1.9Mo0.05O7を構成する比となるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、800℃で12時間仮焼きをしたのち、1100℃で述べ20時間焼成した。室温まで冷却したのち、再び電気炉に入れ、600℃で6時間熱処理を行った。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った結果、2aサイトにおける各元素の占有率は、M1=Tiは0.188±0.05、M2=Nb1.9Ti0.05Mo0.05は0.812±0.05となり、こちらもM1とM2が偏在していることが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.55、σj=0.05であることから、このサイトの占有率から得られた結果は十分に有意差であると考えられる。
(電気化学測定)
合成例1と同様に測定を行った。表4に測定結果を示す。
<比較例>
(合成方法)
一般式LixM1M22O(7±δ)(0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表される単斜晶型複合酸化物のうち、x=0、M1=Ti、M2=NbであるTiNb2O7を合成した。
出発原料には市販の酸化物試薬Nb2O5とTiO2を用いた。これらの原料酸化物を、モル比で1:1になるように秤量し、乳鉢で混合した。次に、電気炉に入れ、1400℃で連続20時間焼成した。その後の熱処理は一切行わない公知の合成方法とした。
(粉末X線回折測定)
得られた試料について、合成例1と同様の方法で粉末X線回折測定及びリートベルト解析を行った。その結果、2aサイト及び4iサイトにおける各元素の占有率は、M1=Tiが0.335±0.03、M2=Nbが0.665±0.03となり、ランダムに配列している場合の想定値であるM1=0.33±0.03、M2=0.667±0.03の範囲内に収まり、M1とM2がランダムに存在することが分かった。ここで得られたフィッティングパラメータはS=1.32、σj=0.03であることから、サイトの占有率から得られた結果は十分に有意であると考えられる。
(電気化学測定)
合成例1と同様に測定を行った。表4に測定結果を示す。
表4の充放電試験結果から以下のことがわかる。すなわち、結晶構造中に4価のカチオンと5価のカチオンが偏在した複合酸化物である合成例1〜8、および結晶構造中に4価のカチオンと6価のカチオンが偏在した複合酸化物である合成例9は、結晶構造中に4価のカチオンと5価のカチオンがランダムに配列した比較例に比べて、充放電容量、充放電効率、容量維持率、レート性能が高い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]一般式LixM1M22O(7±δ)(ここで、M1はTi、Zr、Si及びSnから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、M2はNb、V、Ta、Bi及びMoから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表され、空間群C2/m(International tables Vol.A No.12)に属する対称性を有し、結晶中の2aサイト及び4iサイトの各占有サイトに前記M2及びM1のうち一方の元素が偏在している単斜晶型複合酸化物を含むことを特徴とする電池用活物質。
[2]前記単斜晶型複合酸化物は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折の回折図において、2θ=26°±0.5°に最も強度の高いピークが現われることを特徴とする[1]に記載の電池用活物質。
[3]前記単斜晶型複合酸化物がTiNb2O7±δであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電池用活物質。
[4][1]〜[3]の何れか1つに記載の電池用活物質を含む負極と、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする非水電解質電池。
[5][4]に記載の非水電解質電池を含むことを特徴とする電池パック。
[6]Ti、Zr、Si及びSnから成る群から選択される少なくとも1つの元素M1を含む原料化合物と、Nb、V、Ta、Bi及びMoから成る群から選択される少なくとも1つの元素M2を含む原料化合物とを粉砕および混合して混合物を得る工程と、前記混合物を1100〜1500℃で焼成する工程と、前記焼成物を1000℃未満の温度で焼きなまし熱処理して、一般式LixM1M22O(7±δ)(ここで、M1及びM2は上で定義したとおりであり、0≦x≦5、0≦δ≦0.3)で表され、空間群C2/m(International tables Vol.A No.12)に属する対称性を有し、結晶中の2aサイト及び4iサイトの各占有サイトに前記M2及びM1のうち一方の元素が偏在している単斜晶型複合酸化物を含む電池用活物質を得る工程を有することを特徴とする電池用活物質の製造方法。