JP2015044723A - 焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具において、耐欠損性を向上させる方策を提供する。【解決手段】第1硬質相粒子、第2硬質相粒子および結合材を有する焼結体において、前記第1硬質相粒子をサイアロン粒子とし、前記第2硬質相粒子は被覆層を備える立方晶型窒化ホウ素粒子とする。【選択図】なし

Description

本発明は焼結体および前記焼結体を用いた切削工具に関し、より特定的には、サイアロンと立方晶型窒化ホウ素を含む焼結体および前記焼結体を用いた切削工具に関する。
サイアロンは窒化ケイ素にアルミニウムと酸素が固溶した構造を有しており、通常六方晶系に属するα型サイアロンとβ型サイアロンの2種類の結晶系が存在する。かかるサイアロンを用いたサイアロン基焼結体は金属との反応性が低いという特性を有しており、切削工具用材料として開発が進められてきた。最近になって、硬度を増大させ、切削工具として用いる際の耐摩耗性を向上する目的で、α型サイアロンやβ型サイアロンに比べて硬度が高い立方晶型サイアロンを含有する焼結体が開発されている(特許文献1)。
また、硬度のさらなる増大と切削工具として用いる際のさらなる耐摩耗性向上を目的として、立方晶型サイアロンに加え、ダイヤモンドに次ぐ高い硬度を有する立方晶型窒化ホウ素(以下、cBNという。)をさらに含有する焼結体が開発されている(特許文献2)。かかるサイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具は、ニッケル基の耐熱合金であるインコネル(スペシャルメタルズ社の商標)などの難削材の加工において、優れた耐摩耗性を発揮する。
特開2011−121822号公報 特開2011−140415号公報
上記のサイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具は、インコネルなどの難削材の加工において優れた耐摩耗性を発揮する一方で、切削中に刃先が突発的に欠損することがあり、耐欠損性という点では未だ十分とはいえなかった。切削工具の欠損は、高い寸法精度と表面性状を要求される航空機や自動車のエンジン部品等の切削加工において、重大な問題となる。このため、サイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具においては、耐欠損性の向上が望まれていた。
本発明は、サイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた、インコネルなどの耐熱合金やチタン合金などの難削材を加工する切削工具において、耐欠損性を向上させることを目的とする。
本発明の第1の態様は、第1硬質相粒子、第2硬質相粒子および結合材を有する焼結体であって、前記第1硬質相粒子はサイアロン粒子であり、前記第2硬質相粒子は被覆層を備えるcBN粒子である焼結体である。
本発明によれば、サイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具を使って、インコネルなどの耐熱合金やチタン合金などの難削材を加工する際に、優れた耐摩耗性を維持しつつ、工具の刃先の欠損を低減することができる。
本発明者らは上記の要請に鑑み、サイアロンとcBNを含有する焼結体の組織、特に前記焼結体中のcBN粒子の形態に着目して、耐欠損性を向上させる方法について鋭意検討を重ねた。その結果、熱伝導率の高い前記cBN粒子の表面に、cBNよりも熱伝導率が低い材料を含む被覆層を存在させることにより、耐摩耗性に優れるという前記焼結体の特長を生かしつつ、前記焼結体を用いた切削工具の刃先の耐欠損性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
以下、本発明の第1の態様である焼結体の実施形態について説明する。
本発明の焼結体は、第1硬質相粒子、第2硬質相粒子および結合材を有する焼結体であって、前記第1硬質相粒子はサイアロン粒子であり、前記第2硬質相粒子は被覆層を備えるcBN粒子である焼結体である。
サイアロンとcBNを含有する焼結体を用いた切削工具は、インコネルなどの難削材の加工において優れた耐摩耗性を発揮する。その一方で、ダイヤモンドに次ぐ高い熱伝導率を有するcBNの結晶粒子同士が、前記焼結体中でネッキングを起こして連なり3次元網目状構造が形成されると、前記cBNの3次元網目状構造を経由して熱伝導が増大する。
本発明者らは、サイアロンとcBNを含有する工具材料の熱伝導率と切削抵抗の関係を調べた結果、前記工具材料の熱伝導率が高くなるにつれて、インコネルなどのNi基耐熱合金を切削したときの切削抵抗が増大することを見出した。Ni基耐熱合金においては、被削材が工具の刃先と接触する部分の温度が700℃程度まで上昇することによって、前記接触部分の被削材が軟化して変形応力の低下が生じ、これに伴って切削抵抗が減少する。しかしながら、前記cBNの3次元網目状構造が形成された冷却能の高い工具を用いて切削加工を行うと、切削時の刃先温度が低温に維持されるため、被削材が軟化せずに切削抵抗が増大すると考えられる。
さらに、本発明者らは、切削時に発生する切屑と工具の刃先の損傷の関係を調べた結果、Ni基耐熱合金を切削する際に被削材よりも硬度の高い切屑が発生し、前記切屑が工具のすくい面を連続的に擦過することによって、工具の逃げ面側から観察するとV字形状を呈する深い境界損傷が生じていることを見出した。前記損傷が工具内部まで進展することに伴い、刃先強度が低下する。加えて、本発明者らは、前記工具材料の熱伝導率と切屑の硬度の関係を調べた結果、工具材料の熱伝導率が高くなるにつれて切屑の硬度が増大し、切屑の硬度の増大に伴って前記損傷が大きくなることを見出した。Ni基耐熱合金は加工硬化しやすい材料であり、上述の通り前記工具材料の熱伝導率が高くなるにつれて切削抵抗が増大するため、切屑の硬度が増大していることが考えられる。
一般的に切削工具の材料に対しては、工具自体の塑性変形(熱変形)や熱亀裂を防止する目的で、高い熱伝導率が求められることが多い。しかしながら、本発明者らは、Ni基耐熱合金の切削加工においては、上述の通り工具材料の熱伝導率の増大に伴って刃先の境界損傷が大きくなり、切削抵抗が増大することと相まって工具の刃先が欠損し易くなることを見出したことから、従来の発想とは逆に、サイアロンとcBNを含有する焼結体の熱伝導率を低下させることを検討した。その結果、cBN粒子の表面をcBNよりも熱伝導率の低い物質で被覆することで、前記焼結体中でのcBN粒子同士のネッキング形成を抑制し、前記焼結体の熱伝導率を低下させることに成功した。これに伴い、Ni基耐熱合金の切削加工において切削時の工具の刃先温度を高温に保つことができ、切削抵抗が低下し、刃先の境界損傷も低減することと相まって、工具の刃先の欠損を抑制することが可能になった。
前記焼結体において、その熱伝導率は5W/m・K以上かつ60W/m・K以下であることが好ましい。熱伝導率が5W/m・K未満であると、切削時の工具の刃先温度が過度に上昇するために工具の摩耗が加速することがある。一方、熱伝導率が60W/m・Kを超えると、切削時の工具の刃先温度が被削材の軟化温度未満となるため、工具の刃先の境界損傷の抑制が不十分になることがある。さらに、耐摩耗性と耐欠損性のバランスのとれた工具材料としての焼結体のより好ましい熱伝導率は、10W/m・K以上かつ30W/m・K以下である。
前記焼結体の熱伝導率は以下のようにして求める。前記焼結体から直径18mm、厚み1mmの熱伝導率測定用試料を切り出し、レーザフラッシュ法熱定数測定装置を用いて比熱と熱拡散率を測定する。前記熱拡散率に前記比熱と前記焼結体の密度を乗じて熱伝導率を算出する。
前記焼結体において、前記サイアロンは少なくとも立方晶型サイアロンを含むことが好ましい。立方晶型サイアロンは金属との反応性が低いというサイアロン特有の性質を備えていることに加え、α型サイアロンやβ型サイアロンに比べて硬度が高いため、立方晶型サイアロンを含む焼結体は切削工具として用いた際に耐摩耗性が向上するからである。
前記焼結体において、前記被覆層は、Ti、Zr、CrおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の、窒化物、炭窒化物のいずれか少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。前記化合物としては、例えばTiN、AlN、TiAlN、TiZrN、AlCrN、TiCNなどが好適に用いられる。前記化合物は熱伝導率が50W/m・K以下と低いため、前記焼結体中のcBN粒子間に介在することによってcBN粒子同士のネッキング形成を抑制すると同時に、前記化合物自体が熱障壁となるため、前記焼結体の熱伝導率を低下させることが可能になる。加えて、前記化合物は結合材との結合力にも優れるため、前記化合物を被覆したcBN粒子と結合材の結合が強固になる。その結果、前記焼結体の靭性が増大し、前記焼結体を用いた切削工具の耐欠損性が向上するという副次的な効果も奏する。
前記焼結体において、前記被覆層の厚みは0.01μm以上かつ2μm以下であることが好ましい。前記被覆層の厚みが0.01μm未満であると、cBN粒子同士が近接するため被覆層による熱伝導の遮蔽が不十分となり、前記焼結体の熱伝導率が60W/m・Kを超えることがある。一方、前記被覆層の厚みが2μmを超えると、第2硬質相に占める被覆層の割合が大きくなるため、前記焼結体の硬度が低下し、切削工具として用いた場合に耐摩耗性が不足することがある。
前記被覆層の厚みは以下のようにして測定する。前記焼結体の断面をCP(日本電子(株)製、クロスセクションポリッシャ)やFIB(Field Ion Beam)などを用いてビーム加工し、加工後の断面をTEM(Transmission Electron Microscope、透過型電子顕微鏡)を用いて50,000倍以上の高倍率で観察することにより、前記被覆層の厚みが測定できる。被覆層と結合材の組成が類似している場合は、第2硬質相粒子のみを樹脂に埋め込み、ビーム加工して得られた断面をTEM観察することによって、前記被覆層の厚みを測定する。
前記焼結体において、前記第1硬質相の体積に対する前記第2硬質相の体積の割合は、1/2以上かつ2以下であることが好ましい。前記割合が1/2未満であると、硬度の高いcBN粒子が少ないために前記焼結体の硬度が低下し、前記焼結体を用いた切削工具の耐摩耗性が不足することがある。一方、前記割合が2を超えると、前記焼結体中に熱伝導率の高いcBN粒子が過剰に存在するため、cBN粒子を被覆しても熱伝導率を60W/m・K以下に抑えることができないことがある。
前記第1硬質相と前記第2硬質相は、焼結する前にそれぞれ粉末の状態で所定量を添加し、混合する。焼結の前後でX線回折を行うと、第1硬質相と第2硬質相のピーク強度比に大きな変化はなく、粉末の状態で添加した第1硬質相と第2硬質相の体積比率が、焼結体においてもほぼそのまま維持されていることが確認された。上記のX線回折以外にも、CP装置等を用いて鏡面研磨した焼結体断面をSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)観察し、EDX(Energy Dispersive X−ray spectrometry、エネルギー分散型X線分析)を用いて結晶粒子を構成する元素を調べ、第1硬質相と第2硬質相の粒子を特定することによってその面積比率を求め、体積比率とみなすというやり方によっても、前記第1硬質相の体積に対する前記第2硬質相の体積の割合を特定することができる。
前記焼結体において、前記サイアロンに含まれるα型サイアロン、β型サイアロンおよび立方晶型サイアロンの、それぞれのX線回折のメインピークの強度の合計に対する、立方晶型サイアロンのX線回折のメインピークの強度の比率Rは20%以上であることが好ましい。Rは第1硬質相に占める立方晶型サイアロンの割合に相当する指標である。前記焼結体を400番のダイヤ砥石を用いて平面研削し、Cu−Kαの特性X線を用いて前記平面研削面を測定したX線回折パターンから、立方晶型サイアロンのメインピークである(311)面のピーク強度Ic(311)と、α型サイアロンのメインピークである(201)面のピーク強度Iα(201)と、β型サイアロンのメインピークである(200)面のピーク強度Iβ(200)を求めることができる。これらのピーク強度の値を用いて、Rは下記の(I)式から算出することができる。Rが20%未満では、前記焼結体の硬度が低下し、切削工具として用いた場合に耐摩耗性が不足することがある。
=Ic(311)/(Ic(311)+Iα(201)+Iβ(200))×100 …(I)
前記焼結体において、前記結合材はTi、Zr、Al、NiおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、および/または前記元素の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒化物およびそれらの固溶体のいずれか少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、Al、Ni、Coなどの金属元素、TiAlなどの金属間化合物、TiN、ZrN、TiCN、TiAlN、TiAlN、Alなどの化合物が、前記結合材として好適に用いられる。前記結合材を含有することにより、前記焼結体中の前記第1硬質相と前記第2硬質相の結合が強固になる。加えて、前記結合材自体の破壊靭性が大きい場合には前記焼結体の破壊靭性も増大するため、切削工具として用いた場合の耐欠損性が増大する。
前記焼結体において、前記焼結体中の前記第1硬質相と前記第2硬質相の合計含有率は、60体積%以上かつ90体積%以下であることが好ましい。前記合計含有率が60体積%未満であると、焼結体の硬度が低下し、切削工具として用いた場合に耐摩耗性が不足することがある。一方、前記合計含有率が90体積%を超えると、焼結体の破壊靭性が低下し、切削工具として用いた場合に工具の刃先が欠損し易くなることがある。
前記第1硬質相、前記第2硬質相および前記結合材は、焼結する前にそれぞれ粉末の状態で所定量を添加し、混合する。焼結の前後でX線回折を行うと、第1硬質相、第2硬質相および結合材のピーク強度比に大きな変化はなく、粉末の状態で添加した第1硬質相、第2硬質相および結合材の体積比率が、焼結体においてもほぼそのまま維持されていることが確認された。上記のX線回折以外にも、CP装置等を用いて鏡面研磨した焼結体断面をSEM観察し、EDXを用いて結晶粒子を構成する元素を調べ、第1硬質相、第2硬質相および結合材の粒子を特定することによってその面積比率を求め、体積比率とみなすというやり方によっても、前記焼結体に含まれる第1硬質相、第2硬質相および結合材の体積比率を特定することができる。
前記焼結体において、そのビッカース硬度は22GPa以上であることが好ましい。ビッカース硬度が22GPa未満になると、切削工具として用いた場合に耐摩耗性が不足し、摩耗によって工具寿命が短くなることがある。さらに、工具材料としての焼結体のより好ましいビッカース硬度は、25GPa以上である。
本発明のサイアロン基焼結体のビッカース硬度は、ベークライト樹脂に埋め込んだ焼結体を9μmと3μmのダイヤモンド砥粒を用いてそれぞれ30分間研磨した後、焼結体の研磨面にビッカース硬度計を用いて、10kgfの荷重でダイヤモンド圧子を押し込むことにより測定した。ダイヤモンド圧子を押し込むことによって生じた圧痕からビッカース硬度Hv10を求めた。さらに、圧痕から伝播している亀裂長さを測定し、JIS R 1607(ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法)に準拠したIF法により破壊靭性値を求めた。
本発明の第2の態様は、上記の焼結体を用いた切削工具である。前記切削工具は耐熱合金やチタン合金などの難加工性材料を、高速度で切削加工するのに好適に用いることができる。航空機や自動車のエンジン部品に使用されるNi基耐熱合金は、高い高温強度を有しているために切削抵抗が高く、切削工具が摩耗、欠損しやすい難加工性材料であるが、本発明の焼結体を用いた切削工具は、Ni基耐熱合金の切削加工においても、優れた耐摩耗性、耐欠損性を発揮する。とりわけ、100m/分以上の高速度の切削加工において優れた工具寿命を有している。
本発明の焼結体の製造方法の実施形態について、以下、工程順に説明する。
(第1硬質相粉末を作製する工程)
Si6−ZAl8−Z(Zは0を超え、4.2以下の数値)の化学式で示されるβ型サイアロンは、SiO、Alと炭素を出発原料として、一般的な大気圧の窒素雰囲気下での炭素還元窒化法を用いて合成することができる。また、下記の(II)式で示される、大気圧以上の窒素雰囲気下での金属シリコンの窒化反応を応用した高温窒化合成法を用いることによっても、β型サイアロンの粉末を得ることができる。
3(2−0.5Z)Si+ZAl+0.5ZSiO+(4−0.5Z)N
→Si6−ZAl8−Z ・・・(II)
Si粉末(平均粒径0.5〜45μm、純度96%以上、より好ましくは純度99%以上)、SiO粉末(平均粒径0.1〜20μm)およびAl粉末(平均粒径1〜75μm)を所望のZ値に応じて秤量した後、ボールミルやシェイカーミキサー等で混合し、β型サイアロン合成用の原料粉末を準備する。このとき上記の(II)式以外にも、Al成分としてAlNやAlを適宜組み合わせて用いることも可能である。β型サイアロン粉末を合成する温度としては、2300〜2700℃が好ましい。また、β型サイアロンを合成する容器に充填する窒素ガスの圧力は1.5MPa以上であることが好ましい。このようなガス圧に耐え得る合成装置としては、燃焼合成装置、あるいはHIP(Hot Isostatic Pressing、熱間静水圧プレス)装置が適している。
また、市販のα型サイアロン粉末やβ型サイアロン粉末を用いてもよい。
次に、前記α型サイアロン粉末や前記β型サイアロン粉末を1800〜2000℃の温度、かつ40〜60GPaの圧力で処理することにより、その一部を立方晶型サイアロンに相変態させることができる。例えば、前記の処理に衝撃圧縮プロセスを用いる場合には、衝撃圧力を40GPa程度とし、温度を1800〜2000℃とすることによって、立方晶型サイアロンとα型サイアロンおよび/またはβ型サイアロンが混在した第1硬質相粉末を得ることができる。このとき、衝撃圧力と温度を変化させることにより、第1硬質相に占める立方晶型サイアロンの割合を制御することができる。
(第2硬質相粉末を作製する工程)
cBN粉末の表面に、Ti、Zr、CrおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の、窒化物、炭窒化物のいずれか少なくとも1種の化合物を被覆することにより、第2硬質相粉末を得ることができる。cBN粉末の表面に前記化合物を被覆するにあたっては、PVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長)法やボールミル法、ゾル−ゲル法などの手法を用いることができる。
PVD法を用いて前記化合物を被覆する場合、平均粒径0.1〜3μmのcBN粉末を準備し、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの装置を用いて、前記cBN粉末を揺動させながら、その表面に前記化合物を被覆する。例えば、TiやTiAlなどを金属源に用いて、窒素雰囲気中で前記金属のイオンと窒素ガスを反応させながらcBN粉末の表面に付着させることにより、TiNやTiAlNなどの窒化物を被覆することができる。このとき、処理時間を調節することによって、被覆層の厚みを制御することができる。
ボールミル法を用いて前記化合物を被覆する場合、平均粒径0.1〜3μmのcBN粉末と前記化合物の粉末を準備し、遊星型ボールミル等の高加速度ボールミルを用いて10〜150G程度の加速度で前記粉末を混合することによって、前記cBN粉末の表面に前記化合物を被覆する。このとき、最初に前記化合物粉末と粉砕ボールだけをポットに投入し、ボールミルを行って前記化合物粉末を予備粉砕した後、cBN粉末をポットに追加投入してさらにボールミルを行うと、cBN粉末の表面に前記化合物を均一に被覆することが容易になる。10Gよりも小さな加速度では前記化合物が粉末のままの状態で存在することがあるため、cBN粉末の表面に前記化合物を均一に被覆することが難しくなる。一方、150Gよりも大きな加速度ではcBN粉末自体が過度に粉砕されることがあり、好ましくない。また、前記化合物粉末の投入量を調節することによって、被覆層の厚みを制御することができる。
ゾル−ゲル法を用いて前記化合物を被覆する場合、平均粒径0.1〜3μmのcBN粉末の表面に、アルコキシドなどを用いた溶液プロセスにより、金属成分もしくは金属成分と炭素成分をゾル状態で析出させる。その後加熱によって前記析出物をゲル化し、前記ゲルをさらに1000℃程度の窒素雰囲気中で熱処理することにより、cBN粉末の表面に前記化合物を均一に被覆することができる。アルコキシド溶液の濃度、前記溶液へのcBN粉末の浸漬時間等を調節することによって、被覆層の厚みを制御することができる。
(第1硬質相粉末、第2硬質相粉末と結合材粉末を混合する工程)
上記のようにして作製した第1硬質相粉末と第2硬質相粉末に、Ti、Zr、Al、NiおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、および/または前記元素の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒化物およびそれらの固溶体のいずれか少なくとも1種の結合材粉末を添加して混合する。前記結合材粉末としては、例えば平均粒径0.01〜1μmのAl、Ni、Coなどの金属元素粉末、平均粒径0.1〜20μmのTiAlなどの金属間化合物粉末、平均粒径0.05〜2μmのTiN、ZrN、TiCN、TiAlN、TiAlN、Alなどの化合物粉末が好適に用いられる。前記結合材粉末は、第1硬質相粉末、第2硬質相粉末および結合材粉末の合計に対して10〜40体積%添加することが好ましい。結合材粉末の添加量が10体積%未満であると、焼結体の破壊靭性が低下し、切削工具として用いた場合に工具の刃先が欠損し易くなることがある。一方、前記添加量が40体積%を超えると、焼結体の硬度が低下し、切削工具として用いた場合に耐摩耗性が不足することがある。
混合に際しては、メディアとしてφ3〜10mm程度の窒化ケイ素製またはアルミナ製のボールを用いて、エタノールなどの溶媒中で12時間以内の短時間のボールミル混合を行うか、超音波ホモジナイザーや湿式ジェットミルなどのメディアレス混合装置を用いて混合することにより、第1硬質相粉末、第2硬質相粉末および結合材粉末が均一分散された混合スラリーを得ることができる。とりわけ、cBN粉末の表面に被覆層を形成した第2硬質相粉末を粉砕せず、前記表面の被覆層を維持するという観点から、メディアレス混合装置を用いることが好ましい。また、予めボールミルやビーズミルを用いて第1硬質相粉末と結合材粉末のみを十分に混合したスラリーを、第2硬質相粉末に加えて短時間のボールミル混合やメディアレス混合を行うことが効果的である。
上記のようにして得られたスラリーを、自然乾燥、スプレードライヤーあるいはスラリードライヤーなどにより乾燥させて、混合粉末を得る。
(焼結工程)
前記混合粉末を油圧プレスなどを用いて成形した後、ベルト型超高圧プレス装置などの高圧発生装置を用いて、3〜7GPaの圧力下、1200〜1800℃の温度域で焼結する。焼結に先立って混合粉末の成形体を予備焼結し、ある程度緻密化させたものを焼結することも可能である。また、パルス通電焼結(SPS、Spark Plasma Sintering)装置を用いて、30〜200MPaの圧力下、1200〜1600℃の温度域に保持することによっても焼結することができる。
(実施例1)
第1硬質相粉末を作製するため、組成がZ=2のβ型サイアロン粉末(Zibo Hengshi Technology Development Co.,Ltd製、品名:Z−2)500gと、ヒートシンクとして作用する銅粉末9500gを混合し、前記混合物を鋼管に封入した後、温度1900℃、衝撃圧力40GPaとなるように設定した量の爆薬を用いて衝撃圧縮することにより、立方晶型サイアロンを合成した。衝撃圧縮後鋼管内の混合粉末を取り出し、酸洗浄により銅粉を除去して合成粉末を得た。X線回折装置(パナリティカル製X’Pert Powder、Cu−Kα線、2θ−θ法、電圧×電流:45kV×40A、測定範囲:2θ=10〜80°、スキャンステップ:0.03°、スキャン速度:1ステップ/秒)を用いて、前記合成粉末を分析したところ、立方晶型サイアロン(JCPDSカード:01−074−3494)とβ型サイアロン(JCPDSカード:01−077−0755)が同定された。前記合成粉末のX線回折パターンから、立方晶型サイアロンのメインピークである(311)面のピーク強度Ic(311)と、β型サイアロンのメインピークである(200)面のピーク強度Iβ(200)を求め、(I)式からRを算出した結果、Rは95%であった。
上記のようにして衝撃圧縮で合成したRが95%の第1硬質相粉末に、それぞれ所定量のβ型サイアロン粉末を添加し、試料No.1−1〜1−14の焼結体の作製に用いる第1硬質相粉末を調製した。前記X線回折装置を用いて、試料No.1−1〜1−14の第1硬質相粉末のRを測定した結果を表1に示す。試料No.1−4についてはβ型サイアロン粉末を添加せず、衝撃圧縮で合成したRが95%の第1硬質相粉末をそのまま使用した。
Figure 2015044723
第2硬質相粉末を作製するため、平均粒径2μmのcBN粉末(Henan Funik Ultrahard Material Co.,Ltd製、品名:PM990)を準備し、前記cBN粉末の表面にTiNの被覆層を形成した。
試料No.1−1〜1−7に用いる第2硬質相粉末は、スパッタリング法を用いて被覆層を形成した。このとき、純Ti(純度99.9%)をターゲットとして、高純度窒素JIS1級の雰囲気中で前記cBN粉末100gを揺動させながらスパッタし、前記cBN粉末の表面にTiNの被覆層を形成することにより、第2硬質相粉末を作製した。前記第2硬質相粉末を熱硬化性樹脂に埋め込んだ後、CP装置を用いて被覆層厚み測定用の断面サンプルを作製した。前記サンプルをFE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope、電界放射型走査型電子顕微鏡)を用いて観察した結果、TiN被覆層の厚みは0.05μmであった。
試料No.1−8〜1−13に用いる第2硬質相粉末は、ボールミル法を用いて被覆層を形成した。このとき、前記cBN粉末50g、粒径20μm以下の純Ti粉末(東邦チタニウム(株)製、品名:TC−459)25g、およびTiN被覆を施したφ6mmの超硬合金製ボール100gを、容量200ccの超硬合金製ポットに封入し、前記ポット内部の雰囲気を高純度窒素JIS1級に置換した後、遊星ボールミルを用いて混合した。遊星ボールミルを行う際に、遠心力15Gで10分間回転させた後、Tiの窒化により減量する窒素ガスを前記ポット内に補充し、混合を再開した。この処理を10回繰り返して第2硬質相粉末を作製した。前記第2硬質相粉末を熱硬化性樹脂に埋め込んだ後、CP装置を用いて被覆層厚み測定用の断面サンプルを作製した。前記サンプルをFE−SEMを用いて観察した結果、TiN被覆層の厚みは0.4μmであった。
試料No.1−1〜1−13のそれぞれについて、第1硬質相粉末と第2硬質相粉末の合計量30gに、結合材としてTiCN粉末(日本新金属(株)製、品名:TiN−TiC50/50、平均粒径:1μm)を表1に示す割合で添加した。表1に記載する結合材粉末の添加量(体積%)は、第1硬質相粉末、第2硬質相粉末および結合材粉末の合計量に対する結合材粉末の体積割合である。このとき、試料No.1−1〜1−13のそれぞれについて、第1硬質相粉末の体積に対する第2硬質相粉末の体積の割合が表1に示す値になるように、第1硬質相粉末と第2硬質相粉末を配合した。配合後の試料No.1−1〜1−13の粉末をそれぞれ、60ミリリットルのエタノールおよびφ6mmの窒化ケイ素ボール200gと共に、容量150ミリリットルのポリスチレン製ポットに投入し、12時間のボールミル混合を行い、スラリーを調整した。ポットから取り出したスラリーを自然乾燥させた後、目開き45μmの篩を通して焼結用粉末を作製した。
比較のため、第1硬質相粉末と被覆層を形成していないcBN粉末の合計量30gに、結合材として前記TiCN粉末を表1に示す割合で添加した。このとき、第1硬質相粉末の体積に対する被覆層を形成していないcBN粉末の体積の割合が1になるように配合した。配合後の粉末を試料No.1−1〜1−13と同様にボールミル混合、自然乾燥と篩分を行い、試料No.1−14の焼結用粉末を作製した。
上述のようにして作製した試料No.1−1〜1−14の焼結用粉末を、直径φ20mmの高融点金属カプセルに真空封入した後、ベルト型超高圧プレス装置を用いて圧力5GPaに加圧しながら、温度1500℃に通電加熱して焼結体を作製した。
前記焼結体の表面を400番のダイヤ砥石を用いて平研研削した後、前記X線回折装置を用いて前記研削面のX線回折を行った。得られた回折パターンから、立方晶型サイアロンの(311)面のピーク強度IC(311)とβ型サイアロンの(200)面のピーク強度Iβ(200)を求め、これらの強度比R(IC(311)/(IC(311)+Iβ(200)))を算出した。その結果、試料No.1−1〜1−14のいずれの焼結体においても、Rの値は焼結の前後でほとんど変化がなかった。
前記焼結体の断面をCP装置を用いて鏡面研磨した後、FE−SEMを用いて前記焼結体の組織を観察し、FE−SEMに付属のEDXを用いて前記組織の結晶粒子を構成する元素を調べ、前記SEM画像における第1硬質相、第2硬質相および結合材の粒子を特定した。前記SEM画像を三谷商事製WinROOFを用いて画像処理することにより、第1硬質相、第2硬質相および結合材の面積比率を求め、前記面積比率を体積比率とみなすというやり方によって、前記焼結体に含まれる第1硬質相、第2硬質相および結合材の体積比率を特定した。その結果、試料No.1−1〜1−14のいずれの焼結体においても、前記焼結体中の第1硬質相の体積に対する前記第2硬質相の体積の割合は、粉末配合時の第1硬質相粉末の体積に対する第2硬質相粉末の体積の割合にほぼ一致していた。また、前記焼結体中の第1硬質相と第2硬質相の合計含有率(体積%)は、第1硬質相粉末と第2硬質相粉末の合計配合比率(体積%)にほぼ一致していた。
前記焼結体から直径18mm、厚み1mmの熱伝導率測定用試料を切り出し、レーザフラッシュ法熱定数測定装置(NETZCH社製、LFA447)を用いて比熱と熱拡散率を測定した。前記熱拡散率に前記比熱と前記焼結体の密度を乗じて熱伝導率を算出した。その結果を表2に示す。
Figure 2015044723
前記焼結体から硬度測定用の試料を切り出し、ベークライト樹脂に埋め込んだ後、前記試料を9μmと3μmのダイヤモンド砥粒を用いてそれぞれ30分間研磨した。前記試料の研磨面にビッカース硬度計(AKASHI製、HV−112)を用いて、10kgfの荷重でダイヤモンド圧子を押し込み、ダイヤモンド圧子を押し込むことによって生じた圧痕からビッカース硬度Hv10を求めた。さらに、圧痕から伝播している亀裂長さを測定し、JIS R 1607(ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法)に準拠したIF法により破壊靭性値を求めた。その結果を表2に示す。
次に、焼結体をCNGA120412型のロウ付けチップ形状に加工し、インコネル718(大同スペシャルメタル社製、登録商標)の旋削加工における工具寿命を評価した。下記の条件で外径円筒旋削試験を行い、工具刃先の逃げ面摩耗量または欠損量のいずれかが、先に0.2mmに達する切削距離を求め、前記切削距離を工具寿命(km)とした。その結果を表2に示す。工具寿命に到った原因が摩耗によるものか、あるいは欠損によるものかという寿命要因についても表2に記載する。
<切削条件>
・被削材:インコネル718(溶態化・時効硬化処理材、ロックウェル硬度HRC=45相当品)
・工具形状:CNGA120412(ISO型番)
・刃先形状:チャンファー角度−20°×幅0.1mm
・切削速度:200m/分
・切り込み:0.2mm
・送り速度:0.1mm/rev
・湿式条件(水溶性油剤)
試料No.1−1においては、焼結体を構成する第1硬質相のRが18%と小さく、第1硬質相に含まれる立方晶型サイアロンの割合が小さいため、ビッカース硬度が21.5GPaに止まった。その結果、切削距離0.3kmで摩耗により工具寿命に到った。
試料No.1−5においては、焼結体を構成する第1硬質相の体積に対する第2硬質相の体積の割合が0.4と小さいため、ビッカース硬度が21.8GPaに止まった。その結果、切削距離0.3kmで摩耗により工具寿命に到った。
試料No.1−7においては、焼結体を構成する第1硬質相の体積に対する第2硬質相の体積の割合が2.2と大きいため、熱伝導率が55W/m・Kとなった。その結果、切削時の工具の刃先温度の低下に伴い切削抵抗が増大し、刃先の境界損傷の増大と相まって、工具の刃先が欠損することにより切削距離0.3kmで工具寿命に到った。
試料No.1−8においては、焼結体中の第1硬質相と第2硬質相の合計含有率が95体積%と大きいため、破壊靭性が4.8MPa・m1/2となった。その結果、工具の刃先が欠損することにより切削距離0.3kmで工具寿命に到った。
試料No.1−10においては、焼結体中の第1硬質相と第2硬質相の合計含有率が55体積%と小さいため、ビッカース硬度が20.5GPaに止まった。その結果、切削距離0.3kmで摩耗により工具寿命に到った。
これに対して、焼結体を構成する第1硬質相のR、焼結体を構成する第1硬質相の体積に対する第2硬質相の体積の割合、焼結体中の第1硬質相と第2硬質相の合計含有率を適切な範囲に制御した試料No.1−2〜1−4、1−6、1−9、1−11〜1−13では、ビッカース硬度と破壊靭性をうまくバランスさせることができ、結果として、摩耗もしくは欠損により工具寿命に到る切削距離を0.5km以上に延ばすことができた。
一方、被覆層を形成していないcBN粉末を用いた試料No.1−14は、熱伝導率が70W/m・Kとなった。その結果、切削時の工具の刃先温度の低下に伴い切削抵抗が増大し、刃先の境界損傷の増大と相まって、工具の刃先が欠損することにより切削距離0.1kmで工具寿命に到った。
(実施例2)
実施例1と同様にして衝撃圧縮で合成したRが95%の第1硬質相粉末に、それぞれ所定量のβ型サイアロン粉末を添加し、試料No.2−1〜2−16の焼結体の作製に用いる第1硬質相粉末を調製した。前記X線回折装置を用いて、試料No.2−1〜2−16の第1硬質相粉末のRを測定した結果を表3に示す。
Figure 2015044723
第2硬質相粉末を作製するため、実施例1で用いたものと同じcBN粉末を準備した。試料No.2−1〜2−15について、前記cBN粉末の表面にそれぞれ表3に示す材料の被覆層を形成した。
試料No.2−1〜2−9に用いる第2硬質相粉末は、スパッタリング法を用いて被覆層を形成した。このとき、純Ti(純度99.9%)、TiAl合金(純度99.9%)、TiZr合金(純度99%)、純Al(純度99.9%)、AlCr合金(純度99%)のいずれかをターゲットとして用いて、高純度窒素JIS1級の雰囲気中で前記cBN粉末200gを揺動させながらスパッタし、前記cBN粉末の表面に表3に示す材料の被覆層を形成することにより、第2硬質相粉末を作製した。試料No.2−1〜2−5については、スパッタ時間を調整することにより、cBN粉末表面のTiN被覆層の厚みを変化させた。前記第2硬質相粉末を熱硬化性樹脂に埋め込んだ後、CP装置を用いて被覆層厚み測定用の断面サンプルを作製した。前記サンプルをFE−SEMを用いて観察した結果、試料No.2−1〜2−9の前記被覆層の厚み(層厚)は表3に示す通りであった。
試料No.2−10〜2−15に用いる第2硬質相粉末は、ボールミル法を用いて被覆層を形成した。まず、TiCN粉末(日本新金属(株)製、品名: TiN−TiC 50/50、平均粒径:1μm)13g、およびTiN被覆を施したφ6mmの超硬合金製ボール100gを、容量200ccの超硬合金製ポットに封入し、前記ポット内部の雰囲気を高純度窒素JIS1級に置換した後、遠心力15Gの遊星ボールミルを用いて60分予備粉砕した。その後、前記ポットに前記cBN粉末50gを追加投入し、再度前記ポット内部の雰囲気を高純度窒素JIS1級に置換して、遠心力15Gの遊星ボールミルを用いて60分混合することにより、第2硬質相粉末を作製した。前記第2硬質相粉末を熱硬化性樹脂に埋め込んだ後、CP装置を用いて被覆層厚み測定用の断面サンプルを作製した。前記サンプルをFE−SEMを用いて観察した結果、TiCN被覆層の厚みは0.25μmであった。
試料No.2−1〜2−15のそれぞれについて、第1硬質相粉末と第2硬質相粉末の合計量30gに、第1硬質相粉末、第2硬質相粉末および結合材粉末の合計量に対する結合材粉末の体積割合が20体積%となるように、表3に示す結合材粉末を配合した。このとき、試料No.2−1〜2−15のそれぞれについて、第1硬質相粉末の体積に対する第2硬質相粉末の体積の割合が1となるように、第1硬質相粉末と第2硬質相粉末を配合した。また、結合材粉末としてTiCN粉末(日本新金属(株)製、品名: TiN−TiC 50/50、平均粒径:1μm)、TiN粉末(日本新金属(株)製、品名: TiN−1、平均粒径:1μm) 、TiAl粉末(共立マテリアル(株)製、品名:TiAl)、Al粉末(ミナルコ(株)製、品名:300F)、Co粉末(Umicore製、品名:HMP)、ZrN粉末(日本新金属(株)製、品名:ZrN−1)、Al粉末(大明化学工業(株)製、品名:TM−D)、およびTiAlN粉末(平均粒径:1μm)を使用した。配合後の試料No.2−1〜2−15の粉末をそれぞれ、60ミリリットルのエタノールおよびφ6mmの窒化ケイ素ボール200gと共に、容量150ミリリットルのポリスチレン製ポットに投入し、12時間のボールミル混合を行い、スラリーを調整した。ポットから取り出したスラリーを自然乾燥させた後、目開き45μmの篩を通して焼結用粉末を作製した。
比較のため、第1硬質相粉末と被覆層を形成していないcBN粉末の合計量30gに、結合材粉末として前記TiN粉末を配合した。このとき、第1硬質相粉末、第2硬質相粉末および結合材粉末の合計量に対する結合材粉末の体積割合が20体積%となるようにした。また、第1硬質相粉末の体積に対する被覆層を形成していないcBN粉末の体積の割合が1になるように配合した。配合後の粉末を試料No.2−1〜2−15と同様にボールミル混合、自然乾燥と篩分を行い、試料No.2−16の焼結用粉末を作製した。
上述のようにして作製した試料No.2−1〜2−16の焼結用粉末を、直径φ20mmの高融点金属カプセルに真空封入した後、ベルト型超高圧プレス装置を用いて圧力5GPaに加圧しながら、温度1500℃に通電加熱して焼結体を作製した。
前記焼結体の表面を400番のダイヤ砥石を用いて平研研削した後、前記X線回折装置を用いて前記研削面のX線回折を行った。得られた回折パターンから、立方晶型サイアロンの(311)面のピーク強度IC(311)とβ型サイアロンの(200)面のピーク強度Iβ(200)を求め、これらの強度比R(IC(311)/(IC(311)+Iβ(200)))を算出した。その結果、試料No.2−1〜2−16のいずれの焼結体においても、Rの値は焼結の前後でほとんど変化がなかった。
前記焼結体の断面をCP装置を用いて鏡面研磨した後、実施例1と同様のやり方によって、前記焼結体に含まれる第1硬質相、第2硬質相および結合材の体積比率を特定した。その結果、試料No.2−1〜2−16のいずれの焼結体においても、前記焼結体中の第1硬質相の体積に対する前記第2硬質相の体積の割合はほぼ1であった。また、前記焼結体中の第1硬質相と第2硬質相の合計含有率は、ほぼ80体積%であった。
前記焼結体から直径18mm、厚み1mmの熱伝導率測定用試料を切り出し、実施例1と同様にして、試料No.2−1〜2−16のそれぞれの焼結体の熱伝導率を算出した。その結果を表4に示す。
Figure 2015044723
前記焼結体から硬度測定用の試料を切り出し、実施例1と同様にして、試料No.2−1〜2−16のそれぞれの焼結体のビッカース硬度Hv10と破壊靭性値を求めた。その結果を表4に示す。
次に、焼結体をCNGA120412型のロウ付けチップ形状に加工し、インコネル718の旋削加工における工具寿命を評価した。下記の条件で外径円筒旋削試験を行い、工具刃先の逃げ面摩耗量または欠損量のいずれかが、先に0.2mmに達する切削距離を求め、前記切削距離を工具寿命(km)とした。その結果を表4に示す。工具寿命に到った原因が摩耗によるものか、あるいは欠損によるものかという寿命要因についても表4に記載する。
<切削条件>
・被削材:インコネル718(溶態化・時効硬化処理材、ロックウェル硬度HRC=45相当品)
・工具形状:CNGA120412(ISO型番)
・刃先形状:チャンファー角度−20°×幅0.1mm
・切削速度:100m/分
・切り込み:0.2mm
・送り速度:0.1mm/rev
・湿式条件(水溶性油剤)
試料No.2−1においては、焼結体の第2硬質相粒子を構成するcBN粒子表面のTiN被覆層の厚みが0.005μmと小さいため、熱伝導率が55W/m・Kとなった。その結果、切削時の工具の刃先温度の低下に伴い切削抵抗が増大し、刃先の境界損傷の増大と相まって、工具の刃先が欠損することにより切削距離0.3kmで工具寿命に到った。
試料No.2−5においては、焼結体の第2硬質相粒子を構成するcBN粒子表面のTiN被覆層の厚みが2.3μmと大きいため、ビッカース硬度が21.5GPaに止まった。その結果、切削距離0.3kmで摩耗により工具寿命に到った。
これに対して、焼結体の第2硬質相粒子を構成するcBN粒子表面の被覆層の厚みを適切な範囲に制御した試料No.2−2〜2−4、2−6〜2−15では、熱伝導率とビッカース硬度をうまくバランスさせることができ、結果として、摩耗もしくは欠損により工具寿命に到る切削距離を0.5km以上に延ばすことができた。
一方、被覆層を形成していないcBN粉末を用いた試料No.2−16は、熱伝導率が75W/m・Kとなった。その結果、切削時の工具の刃先温度の低下に伴い切削抵抗が増大し、刃先の境界損傷の増大と相まって、工具の刃先が欠損することにより切削距離0.1kmで工具寿命に到った。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は上記の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲でのすべての変更が含まれる。
上述のサイアロン粒子とcBN粒子を含有する焼結体は、熱伝導率の高いcBN粒子の表面に、cBNよりも熱伝導率が低い材料を含む被覆層を存在させることにより、耐熱合金などの難削材料の切削加工において耐摩耗性に優れるという特長に加え、切削工具の刃先の耐欠損性を向上させる工具材料を提供するものである。実施例においてはインコネルの切削における効果を開示したが、本焼結体は、インコネルなどの耐熱合金以外に、Tiなどの難削材料の切削加工においても、優れた耐摩耗性と耐欠損性を発揮し、特に高速切削加工への適用が可能である。

Claims (11)

  1. 第1硬質相粒子、第2硬質相粒子および結合材を有する焼結体であって、
    前記第1硬質相粒子はサイアロン粒子であり、
    前記第2硬質相粒子は被覆層を備える立方晶型窒化ホウ素粒子である、
    焼結体。
  2. 前記焼結体の熱伝導率が5W/m・K以上かつ60W/m・K以下である請求項1に記載の焼結体。
  3. 前記サイアロンは少なくとも立方晶型サイアロンを含む請求項1または請求項2に記載の焼結体。
  4. 前記被覆層は、Ti、Zr、CrおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の、窒化物、炭窒化物のいずれか少なくとも1種を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の焼結体。
  5. 前記被覆層の厚みが0.01μm以上かつ2μm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の焼結体。
  6. 前記第1硬質相の体積に対する前記第2硬質相の体積の割合が、1/2以上かつ2以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の焼結体。
  7. 前記サイアロンに含まれるα型サイアロン、β型サイアロンおよび立方晶型サイアロンの、それぞれのX線回折のメインピークの強度の合計に対する、立方晶型サイアロンのX線回折のメインピークの強度の比率が20%以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の焼結体。
  8. 前記結合材はTi、Zr、Al、NiおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、および/または前記元素の窒化物、炭化物、酸化物、炭窒化物およびそれらの固溶体のいずれか少なくとも1種を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の焼結体。
  9. 前記焼結体中の前記第1硬質相と前記第2硬質相の合計含有率が、60体積%以上かつ90体積%以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の焼結体。
  10. 前記焼結体のビッカース硬度が22GPa以上である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の焼結体。
  11. 請求項1または請求項2に記載の焼結体を用いた切削工具。
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