本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(実施形態1)
1−1.ランニング計測システムの概要
図1は、本実施形態のランニング計測システムの概要を示す図である。図2は、本実施形態のランニング計測システムの構成を示す図である。
ランニング計測システムは、走者のランニング時の走行時間を計測するためのシステムである。ランニング計測システムは、例えば、学校の校庭等に配置されて使用される。ランニング計測システムは、電子ピストル100、計測マット200、受信装置300、ランニングシューズ400、コンピュータ500、表示装置600、及びサーバ700等を有する。
ランニング計測システムの動作の概要について説明する。ランニング計測システムにおいて、電子ピストル100の引き金が引かれると、電子ピストル100は、スタートを示す無線信号を出力する。受信装置300がこの無線信号を受信すると、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。この信号を受信すると、コンピュータ500は、走行時間の計測を開始する。走者のランニングシューズ400にはICタグが装着されているとともに、計測マット200はICタグリーダを備えている。走者が計測マット200上を通過すると、計測マット200は走者(ICタグ)毎にゴールを示す無線信号を出力する。受信装置300がこの無線信号を受信すると、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。所定の形式の信号を受信すると、コンピュータ500は走行時間の計測を停止する。そして、コンピュータ500は、計測結果を示す信号に基づいて走者毎に走行時間を求め、当該レースの結果を示す表示用の画像データを生成し、表示装置600に出力する。表示装置600は、表示用の画像データに基づく画像を表示する。
1−2.各機器の構成
次に、ランニング計測システムを構成する各機器について説明する。
1−2−1.電子ピストル
図3は、本実施形態の電子ピストル100の構成を示す図である。
電子ピストル100は、引き金101、センサ102、制御部103、無線部104、アンテナ105、フライングスイッチ106、音発生部107を有する。
センサ102は、引き金101が引かれたことを検出する。検出すると、センサ102は、信号を出力する。
フライングスイッチ106は、スタート時に走者のフライングが発生したときに操作するためのスイッチである。スイッチは、押しボタンスイッチ、スライドスイッチ等種々のもので構成可能である。
制御部103は、センサ102から信号が出力されたときに、スタート(計測開始)を示す信号(トリガ信号)を生成して出力する。また、制御部103は、フライングスイッチ106が操作されたときに、フライングの発生を示す信号を生成して出力する。
無線部104は、制御部103から出力された信号に基づき、無線信号を生成し、アンテナ105を介して出力する。
なお、本ランニング計測システムにおいては、無線部104は、後述する受信装置300の無線部301との間で無線通信を行う。この無線通信において、本実施形態では、無線部104は、電波法で定められたいわゆる特定小電力無線の規格に適合した無線通信を行う。例えば、無線部104は、電波法施行規則で規定された920MHz帯の周波数を利用し、10mWの出力の無線信号を生成する。周波数としては、400MHz帯や2.4GHz帯を利用してもよい。
なお後述する受信装置300の無線部301と計測マット200の無線部240との間でも無線通信が行われるが、この無線通信においても、特定小電力無線の規格に適合した無線通信が行われる。
音発生部107は、制御部103から信号が出力されたときに、音を発生させる。音発生部107は、スピーカ、圧電素子等種々のもので構成可能である。音発生部107は、ピストル本体から分離して外付けのスピーカとして構成してもよい。
なお、フライングの報知は、フライングスイッチ106を操作する以外に、下記の方法で対応可能としてもよい。引き金101が所定時間内に連続して2回以上操作された場合、センサ102は、それぞれの操作に対して信号を出力する。そして、信号生成部103は、センサ102から信号が入力される都度、スタートを示す信号を生成して出力するとともに、無線部104も無線信号を出力する。そして、後述するコンピュータ500は、受信装置300を介して、スタートを示す信号を2回以上受信すると、フライングが発生したものと判断する。なお、この場合、フライングスイッチ106は、フライング解除信号を送信させることにより、本レースをリセットする操作を行うためのスイッチとして機能させる。なお、前記所定時間は、例えば数秒程度の固定時間とすることができる。また、前記所定時間は、前記受信装置300が電子ピストル100からの無線信号を受信してから、1人目の走者が装着するICタグからの無線信号を受信するまでの時間としてもよい。
1−2−2.ランニングシューズ
図4は、本実施形態のランニングシューズ400の構成を示す図である。図4(a)はランニングシューズ400の内部を側面から見た図であり、図4(b)は、ランニングシューズ400の内部を上方から見た図である。本実施形態のランニングシューズ400の内部の底面の前部には、ICタグアッセンブリ410が装着されている。
図5は、本実施形態のICタグアッセンブリ410の構成を示す図である。図5(a)は、本実施形態のICタグアッセンブリ410の構成を示す平面図である。図5(b)は、本実施形態のICタグアッセンブリ410の構成を示す断面図である。ICタグアッセンブリ410は、ICタグ420と、ICタグ420を挟んで保護する2枚のゴムシート430とを有する。ICタグアッセンブリ410は、例えば、両面テープにより、ランニングシューズ400の内部の底面の前部に装着される。
図6は、本実施形態のICタグ420の構成を示す図である。
ICタグ420は、ループアンテナ421、無線回路422、電源回路423、CPU424、及びメモリ425を有する。無線回路422、電源回路423、CPU424、及びメモリ425は、例えば1つのICチップにより構成される。なお、図6に示すICタグ420の構成は、一例であり、リーダとの間で通信を行うことができる限り他の構成でもよい。
メモリ425は、種々の情報を記憶する。メモリ425は、例えば、当該ICタグ420のシリアルナンバー等を記憶する。
ループアンテナ421は、例えば図に示すようにループ状に形成されている。ICタグ420は、ループアンテナ421のループ軸方向が、ランニングシューズ400の底面に直交するように配置されている。ループ軸方向とは、ループアンテナ421を含む面に垂直な方向である。
電源回路423は、コンデンサや整流回路等を備え、ループアンテナ421に誘起された電圧(電力)を整流等して、CPU424に供給する。
CPU424は、電源回路423から電力の供給を受けると、メモリ425に記憶されている情報を読み出し、当該情報に関する信号を無線回路422に出力する。
無線回路422は、CPU424から信号を受信すると、負荷変調を行い、ループアンテナ421に出力する。これにより、ループアンテナ421から無線信号が出力される。無線回路422は、13.56MHzの周波数を利用する。
1−2−3.受信装置
図7は、本実施形態の受信装置300の構成を示すブロック図である。
受信装置300は、無線部301、制御部302、及び外部インタフェース303を有する。
無線部301は、電子ピストル100及び計測マット200から出力される無線信号を受信して復調する。制御部302は、復調された信号に対して所定の信号処理を施して出力する。また、制御部302は、無線部301や外部インタフェース103に対する制御を行う。また、制御部302は、特定小電力無線の規格に沿った無線信号を出力する電子ピストル100の無線部104や計測マット200の無線部240等の特定小電力無線機器間の通信制御を行う。
外部インタフェース303は、無線部301から受信されたデータに対して制御部302で所定の信号処理が施されて出力される信号を、コンピュータ500との通信が可能な所定のフォーマットの信号に変換して出力する。
1−2−4.コンピュータ
図8は、本実施形態のコンピュータ500の構成を示すブロック図である。
コンピュータ500は、CPU501、メモリ502、ハードディスクドライブ503(以下、適宜「HDD503」という)、USBインタフェース504、ネットワークインタフェース505、及びディスプレイインタフェース506を有する。なお、HDDに代えて、ソリッドステートドライブ(SSD)を設けてもよい。
CPU501は、演算処理を行う。
HDD503は、CPU501で演算処理される種々のプログラム及びデータを記憶する。HDD503には、例えば、受信装置300で計測されたデータに対して所定の処理を施して表示装置600に表示させたり、計測されたデータや種々の処理を施したデータをHDD503に記録させたりするためのプログラムが記憶されている。
メモリ502は、CPU501で演算処理する際、上記プログラムやデータを一時的に記憶する。
USBインタフェース504及びネットワークインタフェース505は、外部機器との間でデータの伝送を行うためのインタフェースである。本実施形態では、ネットワークインタフェース505と、受信装置300の外部インタフェース303とが接続される。
ディスプレイインタフェース506は、CPU501から出力される画像データを所定のフォーマットで表示装置600に出力する。
コンピュータ500は、上記プログラムを実行することにより、計測装置として機能する。計測装置としてのコンピュータ500は、受信装置300からスタートを示す信号を受信したときに、走行時間の計測を開始する。また、コンピュータ500は、受信装置300からゴールを示す信号を受信したときに、走行時間の計測を停止する。なお、図1の概要図に示すように複数の走行レーンが存在し、複数の走者が同時に走るときは、計測マット200及び受信装置300は、ゴールを示す信号を、走行レーン毎に出力する。コンピュータ500は、ゴールを示す信号を受信したときに、走行レーン毎に、走行時間の計測を停止する。コンピュータ500は、ゴールを示す信号を所定回数受信すると、1レースにおける全ての(所定人数の)走者が全てゴールしたものと判断する。そして、コンピュータ500は、計測時間等の計測結果を示す信号に基づいて、表示用の画像データを生成し、表示装置600に出力する。
1−2−5.表示装置
表示装置600は、コンピュータ500から出力される画像データに基づく画像を表示する。
1−2−6.サーバ
サーバ700は、コンピュータ500とほぼ同様の構成を有している。そのため、構成の詳しい説明は省略する。HDD等に種々のデータを保存可能である。サーバ700には、インターネット800等を介して、コンピュータ500から種々のデータをアップロードすることができる。例えば、コンピュータ500は、ネットワークインタフェース505及びインターネット800等を介して、本ランニング計測システムで計測されたデータを、サーバ700にアップロードすることができる。サーバ700は、複数のユーザのコンピュータ500からアップロードされたデータに対して、種々の処理を加えて、ユーザのコンピュータ500に提供することができる。
1−2−7.計測マット
図9は、本実施形態の計測マット200の構成を示す図である。
計測マット200は、シート部201と、マット制御部205とで構成される。シート部201は、シート状の部材であり、ゴールライン上に配置される。シート部201は、複数のアンテナ部210を含む。マット制御部205は、リーダ部220、制御部230、無線部240、及び送信アンテナ250を備える。
アンテナ部210は、ICタグに記憶されている情報を読み出すための磁界(磁束)を生成するとともに、ICタグ420から出力される無線信号を受信する。アンテナ部210の具体的な構成については後述する。
リーダ部220は、アンテナ部210に磁界を発生させるため給電する。また、リーダ部220は、ICタグ420から受信した無線信号を復調して当該無線信号が示す情報を取得し、出力する。
制御部230は、計測マット200全体の動作を制御する。また、制御部230は、リーダ部220から、ゴールを示す信号を受信したときは、当該信号を無線部240に出力する。
無線部240は、制御部230から出力されたゴールを示す信号を変調して無線信号を生成し、送信アンテナ250を介して出力する。なお、このとき、特定小電力無線の規格に適合した無線信号を生成する。
アンテナ部210の具体的な構成について説明する。図10は、本実施形態のアンテナ部210の構成を示す図である。
アンテナ部210は、矩形状に形成されたループアンテナ211、及び整合回路212を有する。
ループアンテナ211は、例えば30cm×20cm程度の大きさを有する。
整合回路212は、リーダ部220の出力インピーダンスとアンテナ部210のループアンテナ211の入力インピーダンスとの整合をとる。各整合回路212の入力とリーダ部220の出力との間は、それぞれ同軸ケーブルで接続される。
図11は、本実施形態の計測マット200の走行レーンへの設置状態の一例を示す図である。
複数のアンテナ部210は、列状に2列に配置されている。各アンテナ列は、走行レーンの直交方向に配置される。
図12は、アンテナ部210のループアンテナ211により形成される磁界のイメージを示す図である。本実施形態では、アンテナ部210は、走行レーンへの設置時に、そのループアンテナ211(以後、適宜「マット側ループアンテナ211」という)のループ軸方向が、ほぼ鉛直方向を向くように配置される。マット側ループアンテナ211により形成される磁束は、おおよそ図12に示すように、ループアンテナ211の中心位置では、ほぼ鉛直方向上方へ向かい、中心位置から離れると、鉛直方向斜め上方、水平方向というように変化する。また、ICタグ420も、ループアンテナ211を有している。ICタグ420のループアンテナ421(以後、適宜「タグ側ループアンテナ421」は、そのループアンテナ421のループ軸方向が、マット側ループアンテナ211からの磁束の方向に平行なときに、最も大きな起電力を生じる。逆に、タグ側ループアンテナ421のループ軸方向が、マット側ループアンテナ211からの磁束の方向に垂直なときは、タグ側ループアンテナ421と、マット側ループアンテナ211からの磁束とが鎖交しないので、タグ側ループアンテナ421は起電力をほとんど生じない。つまり、マット側ループアンテナ211とタグ側ループアンテナ421との位置関係及びタグ側ループアンテナ421の傾きに応じて、タグ側ループアンテナ421での起電力が変化する。したがって、ICタグ420の検知可否が、上記位置関係及び傾きにより変化する。
図13は、ICタグ420の傾きとICタグ420を検知可能な領域との関係、及び走者の走行時におけるランニングシューズ400の軌跡の一例を示す図である。本図は、図において左側から右側に走者が走った場合を示している。図13には、マット側ループアンテナ211のループ軸とタグ側ループアンテナ421のループ軸方向とがなす角度(以下、適宜「ループ交差角」という)が、0度、30度、60度、及び90度の場合のICタグ検知可能領域を一例として示している。例えば、ループ交差角が0度の場合、マット側ループアンテナ211の直上方を中心として検知可能領域が広がる。これに対し、ループ交差角が90度の場合は、マット側ループアンテナ211の中心の直上方位置では、検知可能領域の高さが低く、マット側ループアンテナ211の中心から水平方向に離れると、検知可能領域の高さが高くなる。
図13において、各楕円E1、E2は、走者の走行時におけるランニングシューズ400の所定部分の位置を示し、この楕円E1、E2を貫通する線Lの水平方向に対する傾きはランニングシューズ400の底面の水平方向に対する傾きを示す。本実施形態では、前述の図4に示すように、ICタグ420は、そのループアンテナ421のループ軸方向がランニングシューズ400の底面に直交するように、配置されている。そのため、本図における線Lの水平方向に対する傾きは、タグ側ループアンテナ421のループ軸方向に直交する方向の水平方向に対する傾きでもある。また、黒及び白の塗り潰しの楕円E1が示す軌跡は、走者の左足または右足のうちのいずれか一方の足の軌跡を示す。格子模様の楕円E2が示す軌跡は、走者の左足または右足のうちの他方の足の軌跡を示す。白抜きの楕円E1となっている部分は、タグ側ループアンテナ421の上記傾きを考慮した上で、計測マット200によりICタグ420を検出可能な位置である。したがって、図13の例では、走者のランニングシューズ400の上記所定部分が白抜きの楕円Eが示す軌跡中に存在するときに、計測マット200によりICタグ420を検出することが可能となる。
図14は、ICタグ420の傾きとICタグ420を検知可能な領域との関係、及び走者の走行時におけるランニングシューズ400の軌跡の一例を、より広い範囲において示した図である。これらの図は、図において左側から右側に走者が走った場合を示している。図14(a)は、図13に対応する例を示している。図14(b)は、図14(a)と走者の走行時におけるランニングシューズ400の軌跡は同じであるが、軌跡と計測マット200との位置関係が異なる場合を示している。この例では、計測マット200の上方を走者のランニングシューズ400が通過した場合でも、タグ側ループアンテナ211が、その傾き(ランニングシューズ400の底面の傾き)を考慮した検知可能領域の範囲内に入らず、そのため、計測マット200において、ICタグ420は検知されない。
このような課題に対処するため、本実施形態では、前述の図11で示したように、複数のアンテナを、列状に2列に配置している。図14(c)は、アンテナ部210を2列に配置した場合を示している。図において左側のアンテナ部210(走行方向において後側のアンテナ部210。以後適宜単に「後側アンテナ部210」という)は、図14(b)の場合と同じ位置に配置されている。右側のアンテナ部210(走行方向において前側のアンテナ部210。以後適宜「前側アンテナ部210」という)は、後側アンテナ部210に対して70cm離して配置した場合を示している。
図14(c)のように2列に配置した場合、各アンテナ部210の検知可能領域の高さは、1列に配置した場合と比べて、約70%に低くなる。これは、2つのアンテナ部210で発生する磁界が相互に影響を与えるためである。
このように2列に配置することにより、後側アンテナ部210の検知可能領域内にICタグ420が入らず、ICタグ420を検知出来ない場合でも、前側アンテナ部210の検知可能領域内にICタグ420が入り、ICタグ420を検知することができる。
また、本実施形態では、アンテナ列方向において、一走行レーンに複数のアンテナ部210が配置される。本実施形態では、一走行レーンに5個のアンテナ部210が配置される。これは、以下の理由による。すなわち、1個のアンテナ部210のループアンテナ211の幅(アンテナ列方向の長さ)を走行レーンの幅と同じくらいに大きくした場合、複数個のアンテナ部210を設けた場合と比較して、走行レーンの幅方向、特に幅方向中間位置においてループアンテナ211により生じる磁束の大きさが小さくなる。その結果、ランニングシューズ400のICタグ420において発生する電力が小さくなり、ICタグ420から無線信号が発生しない可能性がある。つまり、計測マット200上を走者が通過した場合でも、走者の通過を検知できない可能性がある。これに対処するため、本実施形態では、一走行レーンに複数のアンテナ部210が配置される。
また、本実施形態において、各アンテナ部210は、前述の図11に示すように、走行レーンをまたがないように配置される。各アンテナ部210を走行レーンをまたがないように配置することにより、走行レーンとアンテナ部210とを対応付けることができる。したがって、どのアンテナ部210でICタグ420からの無線信号を受信したかを判定することにより、どの走行レーンの走者がゴールしたかを判定することができる。
本実施形態では、前述の図11に示すように、2列のアンテナ部210の中間の位置がゴールラインと一致するように、計測マット200が配置される。計測装置としてのコンピュータ500は、無線信号を受信したアンテナ部210が属する列に基づき、計測した時間を補正する。具体的に、コンピュータ500は、ICタグ420からの信号がスタートラインに近い方のアンテナ列210Fで受信されたときは、以下の式1に従って、計測時間の記録として残す、補正後の計測時間Taを求める。
(式1)
Ta=T+T/(Lsg−L1)×L1
ここで、Tは実計測時間、Lsgはスタートラインからゴールラインまでの距離、L1は2つのアンテナ列の中心位置の走行レーン方向における距離(間隔)の半分の値である。
これに対し、ICタグ420からの信号がスタートラインから遠い方のアンテナ列210Rで受信されたときは、コンピュータ500は、以下の式2に従って、補正後の計測時間Taを求める。
(式2)
Ta=T−T/(Lsg+L1)×L1
また、ICタグ420からの信号が両方のアンテナ列210F、210Rで受信されたときは、コンピュータ500は、スタートラインから近い方のアンテナ列210Fでの実計測時間を(式1)に適用して、補正後の計測時間Taを求める。なお、コンピュータ500は、スタートラインから遠い方のアンテナ列210Rでの実計測時間を(式2)に適用して、補正後の計測時間Taを求めてもよい。
このように計測時間を補正することにより、ゴールラインを挟んでその前後に2列にアンテナ部210を配置した場合でも、計測誤差を少なくすることができる。
1−3.まとめ
以上説明したように、本実施形態の電子ピストル100は、ランニング計測システムに用いられる電子ピストル100である。この電子ピストル100は、引き金101と、引き金101が操作されたときに無線信号を発生させる信号発生器(制御部103、無線部104、及びアンテナ105)を備える。
これにより、電子ピストル100は、引き金101が操作されたときに無線信号を発生する。したがって、電子ピストル100が発生させた信号を有線で伝送する必要がなくなる。そのため、簡易な設備で走者の走行時間を計測可能なランニング計測システムを提供することができる。
また、本実施形態の電子ピストル100は、フライング時に操作するためのフライングスイッチ106と、フライングスイッチ106が操作されたときに、引き金101が操作されたときとは異なる態様の無線信号を発生させる第2信号発生器(制御部103、無線部104、及びアンテナ105)と、をさらに備える。
これにより、電子ピストル100は、フライングスイッチ106が操作されたときに、引き金101が操作されたときとは異なる態様の無線信号を発生する。したがって、フライングが発生したことに関しても、有線で伝送する必要がなくなる。そのため、ランニング計測システムを、より簡易な設備で実現することができる。
また、本実施形態の電子ピストル100は、引き金101が操作されたときに音を発生させる音発生部101をさらに備える。
これにより、火薬式のピストルの場合同様に、スタートやフライングを走者に知らせることができる。
本実施形態のランニング計測システムは、走者が装着するICタグ420から受信した無線信号に基づいて走行時間を計測するランニング計測システムである。このランニング計測システムは、上述の電子ピストル100と、ICタグ420からの無線信号を受信するアンテナ部210を有する計測マット200と、電子ピストル100からの無線信号を受信する受信装置300と、受信装置300が電子ピストル100からの無線信号を受信したときに走行時間の計測を開始し、計測マット200がICタグ420からの無線信号を受信したときに走行時間の計測を停止するコンピュータ500と、を含む。
これにより、走行時間の計測の開始及び停止を自動化できる。特に、走行時間の計測の開始は電子ピストル100からの無線信号により、走行時間の計測の停止は計測マット200からの無線信号により行うことができる。したがって、走行時間の計測の開始や停止のための信号を有線で伝送する必要がなくなる。そのため、簡易な設備で走者の走行時間を計測可能なランニング計測システムを提供することができる。
なお、本実施形態のランニング計測システムにおいて、受信装置300が電子ピストル100からの無線信号の受信後所定時間内に再度電子ピストル100からの無線信号を受信したときは、コンピュータ500はフライング信号を発生させてもよい。
これにより、フライングが発生したことに関しても、有線で伝送する必要がなくなる。後で受信される無線信号は、引き金を引くことにより発生する無線信号と、フライングスイッチ106を引くことにより発生する無線信号とのいずれでもよい。なお、後の無線信号を引き金101を引くことにより発生させ、これによりフライングが発生したとして処理を確定させる構成とすれば、電子ピストル100は、フライングスイッチ106を備えなくてもよい。この場合、ランニング計測システムを、より簡易な設備で実現することができる。
また、本実施形態のランニング計測システムにおいて、コンピュータ500は、引き金101が所定時間内に複数回操作されたときは、フライング信号を発生させ、その後、フライングスイッチ106が操作されたときに、フライング解除信号を発生させてもよい。
これにより、引き金101が所定時間内に複数回操作されたことによりフライング信号を発生させる場合に、フライング解除信号により初期状態に戻すことができる。
また、本実施形態のランニング計測システムにおいて、前記所定時間は固定時間であってもよい。
これにより、所定時間の計時をタイマー等により容易に行うことができる。
また、本実施形態のランニング計測システムは、複数の走行レーンを走行する複数の走者の走行時間を計測するシステムである。計測マット200は、複数の走者が装着するICタグ420からの無線信号をそれぞれ受信し、前記所定時間は、受信装置300が電子ピストル100からの無線信号を受信してから、1人目の走者が装着するICタグ420からの無線信号を受信するまでの時間であってもよい。
これにより、2回目以後の操作が遅れた場合でも、1人目の走者がゴールするまでの間は、フライング信号を発生させることができる。
また、本実施形態のランニング計測システムにおいて、ICタグ420は、走者のランニングシューズ400に装着されている。
これにより、走者の走行時にICタグ420の位置が地面に近い低い位置になる。したがって、走者の走行時に計測マット200とICタグ420との距離が近くなる。そのため、計測マット200がICタグ420からの無線信号を受信しやすくなる。
本実施形態の計測マット200は、走者が装着するICタグ420から受信した無線信号に基づいて走行時間を計測するランニング計測システムにおいて用いられる。この計測マット200は、ICタグ420から出力される無線信号を受信する複数のアンテナ部210を備え、複数のアンテナ部210は列状に少なくとも1列で配置されている。
これにより、計測マット200を用いたランニング計測システムを提供することができる。ICタグ420から出力される無線信号は一般に微弱である。そこで、本実施形態では、走者が装着するICタグ420に近い位置にある計測マット200により、ICタグ420から出力される無線信号を受信する。これにより、ICタグ420から出力される無線信号を良好に受信することができる。
また、本実施形態の計測マット200において、複数のアンテナ部210は2列に配置されている。
これにより、1列の場合よりも走行方向におけるICタグの検知可能領域が広がる。
また、本実施形態の計測マット200において、複数のアンテナ部210の列は、走行レーンの直交方向に配置されるものであり、列方向において、一走行レーンに複数のアンテナ部210が配置される。
これにより、一走行レーン内における磁界強度(磁束強度)の差を少なくすることができる。
また、本実施形態の計測マット200において、複数のアンテナ部210の列は、走行レーンの直交方向に配置されるものであり、各アンテナ部210は、走行レーンをまたがないように配置される。
これにより、走行レーンとアンテナ部210とを対応付けることができる。したがって、どのアンテナ部210でICタグ420からの無線信号を受信したかを判定することにより、どの走行レーンの走者がゴールしたかを判定することができる。
また、本実施形態の計測マット200において、ICタグ420は、走者のランニングシューズ400に装着されている。
これにより、走者の走行時にICタグ420の位置が地面に近い低い位置になる。したがって、走者の走行時に計測マット200とICタグ420との距離が近くなる。そのため、計測マット200がICタグ420からの無線信号を受信しやすくなる。
また、本実施形態のランニング計測システムは、走者が装着するICタグ420から受信した無線信号に基づいて走行時間を計測するランニング計測システムである。このランニング計測システムは、無線信号を受信するアンテナ部210を有する計測マット200と、計測マット200が無線信号を受信したタイミングに基づいて、走者が計測マット200を通過した時間を計測する計測部(コンピュータ500)と、計測部で計測された時間を補正する補正部(コンピュータ500)と、を備え、計測マット200は、ICタグ420から出力される無線信号を受信する複数のアンテナ部210を備え、複数のアンテナ部210は、走行レーンの直交方向に列状に2列で配置されるものであり、補正部(コンピュータ500)は、無線信号を受信したアンテナ部210が属する列に基づき、計測部(コンピュータ500)で計測された時間を補正する。
これにより、走行方向に2列にアンテナ部200を配置した場合でも、計測誤差を少なくすることができる。
また、本実施形態のランニング計測システムにおいて、ICタグ420は、走者のランニングシューズ400に装着されている。
これにより、走者の走行時にICタグ420の位置が地面に近い低い位置になる。したがって、走者の走行時に計測マット200とICタグ420との距離が近くなる。そのため、計測マット200がICタグ420からの無線信号を受信しやすくなる。
以上のように、本実施形態のランニングシューズ400は、ICタグ420との間で無線信号を送受信可能なアンテナ部210を備えた計測マット200と組み合わせて使用されるランニングシューズ400であって、ICタグ420はランニングシューズ400内部の底面の前部側に配置されている。
これにより、走者が計測マット200上を通過する際、ランニングシューズ全体の中でもICタグ420が、計測マット200に近い位置を通ることとなる。そのため、計測マット200によるICタグ420の検知が良好なものとなる。
本実施形態のランニングシューズ400において、ICタグ420は、ゴムシート430に挟まれた状態で、ランニングシューズ400内部の底面の前部側に配置される。
これにより、ICタグ420をゴムシート430で良好に保護することができる。
(実施形態2)
実施形態1のように複数のアンテナ部210を列状に配置した場合、隣接するアンテナ部210から発生する磁界の影響により、ICタグ420が計測マット200上を通過したことの検出が不安定となる可能性がある。これに対処するため、本実施形態では、計測マット200の制御部230は、以下のような制御を行う。
図15は、実施形態2の複数のアンテナ部210への給電制御を説明する図である。
本実施形態においては、計測マット200の制御部230は、複数のアンテナ部210に対して、所定時間毎に2つのモードを切り替えながら給電するように、リーダ部220を制御する。所定時間は、例えば5msであるが、これに限定されない。第1モードは、アンテナ列の一端側から奇数番目のアンテナ部210には給電するが、偶数番目のアンテナ部210には給電しないモードである。これに対し、第2モードは、アンテナ列の一端側から奇数番目のアンテナ部210には給電しないが、偶数番目のアンテナ部210には給電するモードである。これにより、全てのアンテナ部210において、所定時間毎に給電状態が切り替えられる。また、隣接するアンテナ部210に対して同時には給電されない。このように隣接するアンテナ部210が同時にONしないようにすることで、隣接するアンテナ部210から発生する磁界の影響により、ICタグ420が計測マット200上を通過したことの検出が不安定となるのが抑制される。
図16は、実施形態2の計測マット200での通信制御を説明する図である。
アンテナ部210への給電が行われていないとき、制御部230とリーダ部220とが通信を行う。具体的に、制御部230はリーダ部220に対してリードコマンドを発行する。リーダ部220はリードコマンドを受信するとICタグ420から読み取ったデータを制御部230に送信する。アンテナ部210への給電が行われているとき、リーダ部220とランニングシューズ400のICタグ420とがアンテナ部210を介して通信を行う。具体的に、ランニングシューズ400のICタグ420は、アンテナ部210が発生する上記磁界の検知可能領域内に入ると、ループアンテナ421に生じた電力を利用してメモリ425に記録されている情報をリーダ部220に送信する。
以上のように、本実施形態の計測マット200は、走者が装着するICタグ420から受信した無線信号に基づいて走行時間を計測するランニング計測システムにおいて用いられる。計測マット200は、ICタグ420から出力される無線信号を受信する複数のアンテナ部210と、複数のアンテナ部210に給電するリーダ部220と、を備え、リーダ部220は、隣接するアンテナ部210が同時に磁界を発生させないように給電対象のアンテナ部210を切替えながら給電する。
以上のように、本実施形態では、リーダ部220は、隣接するアンテナ部210が同時に磁界を発生させないように給電対象のアンテナ部210を切替えながら給電する。これにより、隣接するアンテナ部210から発生する磁界の影響により、ICタグ420が計測マット200上を通過したことの検出が不安定となるのが抑制される。
なお、本実施形態では、2つのモードを設けた場合について説明した。しかし、例えば3つのモードを設け、1番目のアンテナ部210に給電するときは、2番目、3番目のアンテナ部210には給電せず、4番目のアンテナ部210に給電し、5番目のアンテナ部210には給電しないように、制御部230はリーダ部220を制御してもよい。
(実施形態3)
給電状態にあるアンテナ部210において、隣接するアンテナ部210から間接的に放射される自己の送信波の影響で、ICタグ420の検知性能にばらつきが生じる可能性がある。これに対処するため、本実施形態の各アンテナ部210は、実施形態2のアンテナ部210の構成に加え、ループアンテナ211のインピーダンスを変更するための回路(以下、適宜「インピーダンス変更回路」という)をさらに備えている。
図17は、実施形態3のアンテナ部210の構成を示す図である。図18は、実施形態3のアンテナ部のインピーダンス変更回路の構成を示す図である。
インピーダンス変更回路260は、第2ループアンテナ261とインピーダンス制御回路268とを含む。インピーダンス制御回路268は、整合素子262、及び切替部263を有する。なお、本実施形態では、便宜上、実施形態1、2で説明したループアンテナ211を「第1ループアンテナ211」という。
第2ループアンテナ261は、第1ループアンテナ211とほぼ同形状であるが、寸法が若干小さい。
切替部263は、切替スイッチ264と、インピーダンスの異なる第1の終端素子265と第2の終端素子266とを備え、第1の終端素子265と第2の終端素子266との一方を第2ループアンテナ261に整合回路262を介して選択的に接続する。これにより、インピーダンス変更回路260は、第1ループアンテナ211のインピーダンスを、間接的に、第1の値と第2の値との間で切り替える。第1の値は、第1の終端素子265の接続時(ON)に第1ループアンテナ211のVSWRが1となる値に設定されている。第1の値は、第1ループアンテナ211の共振周波数が、上記13.56MHzとなる値でもある。第2の値は、第2の終端素子266の接続時(OFF)に第1ループアンテナ211のVSWRが5となる値に設定されている。第2の値は、第1ループアンテナ211の共振周波数が、上記13.56MHz以外の周波数となる値でもある。なお、VSWRの第2の値の5という値は、一例であり、5でなく、5よりも大きい値でも小さい値でもよい。要は、第1ループアンテナ211の共振周波数が、上記13.56MHz以外の周波数となる値であればよい。なお、VSWRの第2の値を5以上とすることにより、前述の作用をより確実に得られる。
図19は、実施形態3の複数のアンテナ部210への給電制御及び切替制御を説明する図である。本実施形態では、受信装置300は、実施形態2同様に、複数のアンテナ部210に対して、2つのモードを所定時間毎に切り替えながら、給電する。その場合に、本実施形態では、給電対象のアンテナ部210に関し、切替部263は、第1の終端素子265を第2ループアンテナ261に接続する。これにより、第1ループアンテナ211のインピーダンスが第1の値となるとともに、第1ループアンテナ211の共振周波数が上記13.56MHzとなる。これに対し、アンテナ部210に給電していないときは、切替部263は、第2の終端素子266を第2ループアンテナ261に接続する。これにより、第1ループアンテナ211のインピーダンスが第2の値となるとともに、第1ループアンテナ211の共振周波数が上記13.56MHz以外の周波数となる。
なお、第1の値は、第1の終端素子265の接続時(ON)に第1ループアンテナ211のVSWRが完全に1となる値でなくてもよい。要は、一般的にインピーダンスの整合がとれているといわれる、第1の値に対して例えば数%ずれている値であってもよい。第2の値は、一般的にインピーダンス整合がとれていないといわれる状態になるインピーダンスの値である。
上述のように制御することにより、給電状態にあるアンテナ部210において、隣接するアンテナ部210から間接的に放射される自己の送信波の影響で、ICタグ420の検知性能にばらつきが生じるのが抑制される。
なお、本実施形態では、2つのモードを設けた場合について説明した。しかし、例えば図20に示すように3つのモードを設け、1番目のアンテナ部210に給電するときは、2番目、3番目のアンテナ部210には給電せず、4番目のアンテナ部210に給電し、5番目のアンテナ部210には給電しないように、制御部230は、リーダ部220を制御してもよい。このとき、切替部263は、リーダ部220に対する制御状態に対応させて同様に制御すればよい。
以上説明したように、本実施形態の計測マット200は、複数のアンテナ部210のうち給電対象でないアンテナ部210のインピーダンスを変化させるインピーダンス変更回路260を、備える。
これにより、給電状態にあるアンテナ部210が、隣接するアンテナ部210から間接的に放射される自己の送信波の影響で、ICタグ420の検知性能にばらつきが生じるのが抑制される。
また、本実施形態の計測マット200において、インピーダンス変更回路260は、複数のアンテナ部210のうち給電対象でないアンテナ部210のVSWRが所定値以上となるように、当該給電対象でないアンテナ部210のインピーダンスを変化させる。
これにより、給電状態にあるアンテナ部210が、隣接するアンテナ部210から間接的に放射される自己の送信波の影響で、ICタグ420の検知性能にばらつきが生じるのがより一層抑制される。
また、本実施形態の計測マット200において、インピーダンス変更回路260は、各アンテナ部210に対応させてそれぞれ設けられた第2のアンテナ261と、第2のアンテナ261を終端するための複数の異なる第1終端素子265及び第2終端素子266と、第2のアンテナ261に第1終端素子265と第2終端素子266とを選択的に接続する切替部263と、給電対象でないアンテナ部210に関し、第1終端素子265及び第2終端素子266のうち、当該アンテナ部210のVSWRを所定値以上とさせる終端素子を第2のアンテナ261に接続させるように、切替部263を制御する制御部230と、を備える。
これにより、給電対象でないアンテナ部210に関し、不整合状態とすることができる。
(実施形態4)
本実施形態では、実施形態1のランニング計測システムの構成において、隣接して配置した2つのアンテナ部に対して、逆相で給電する。なお、2つのアンテナ部は、走行レーン方向に並べて配置されるものである。
図21は、実施形態4に係るアンテナ部の構成を示す図である。
2つのアンテナ部210a、210bは、実施形態1で説明したアンテナ部210とそれぞれ同一のものであるが、本実施形態では便宜上別の符号を付して説明する。2つのアンテナ部210a、210bは、前述のように、走行レーン方向に並べて配置されるものである。2つのアンテナ部210a、210bの整合回路212には、分配器270を介して分配給電される。そして、一方のアンテナ部210bには、さらに位相器280を介して給電される。位相器280は、位相を180度ずらす、つまり位相を反転させる。
図22は、2つのアンテナ部210a、210bに逆相で給電した場合の磁界を説明するための図である。
2つのアンテナ部210a、210bに逆相で給電することにより、図22に示すように、磁界の向きが逆となるとともに、一方のアンテナ部210aから他方のアンテナ部210bに向かう磁界が生成される。なお、図22はある一のタイミングにおける磁界の状態を図示したものであり、実際には、前記一方のアンテナ部210aから前記他方のアンテナ部210bに向かう磁界と、前記他方のアンテナ部210bから前記一方のアンテナ部210aに向かう磁界とが交互に生成される。そして、この磁界は、2つのアンテナ部210a、210bの間の中央付近ではほぼ水平になる。ここで、走者が装着するランニングシューズ400は、走行時、その向きが変化する。例えば、ランニングシューズ400の前後方向がほぼ鉛直方向に向く場合がある。このとき、ランニングシューズ400に装着されたICタグ420のループアンテナ421のループ軸方向は、ほぼ水平状態となる。したがって、本実施形態によれば、ICタグ420のループアンテナ421と水平方向の磁界の磁束が良好に鎖交し、ICタグ420の検知性能が良好なものとなる。これに対し、2つのアンテナ部に同相で給電した場合、2つのアンテナ部の間の領域には、水平方向の磁界は生じない。そのため、上記のようにランニングシューズ400の前後方向がほぼ鉛直方向に向いた場合、ICタグ420を検知しにくい。
以上のように、本実施形態の計測マット200は、走者が装着するICタグ420から受信した無線信号に基づいて走行時間を計測するランニング計測システムにおいて用いられる。この計測マット200は、平面状に並べて配置される2個のアンテナ部210a、210bと、2個のアンテナ部210a、210bに給電するリーダ部220とを、備え、リーダ部220は、2個のアンテナ部210a、210bに互いに逆位相となるように給電する。
これにより、2つのアンテナ部210a、210bの間の中央付近にほぼ水平な磁界が発生する。そのため、ランニングシューズ400の前後方向がほぼ鉛直方向に向いた場合、換言すればICタグ420のループアンテナ421のループ軸が水平方向を向いた場合でも、ICタグを良好に検知することが可能となる。
本実施形態の計測マット200において、
2個のアンテナ部210a、210bは、走行レーン方向に並べて配置されるものである。
ランニングシューズ400の前後方向がほぼ鉛直方向に向くことが生じやすいのは、走行レーン方向である。そこで、2個のアンテナ部210a、210bを走行レーン方向に並べて配置することにより、走者の装着するICタグを良好に検知することが可能となる。
(実施形態5)
実施形態5では、ランニングシューズの他の態様について説明する。
図23は、実施形態5に係るランニングシューズの構成を示す図である。
本実施形態に係るランニングシューズ400Bは、ランニングシューズ400Bの内部の底面の前部側だけでなく、ランニングシューズ400Bの内部の先端部に第2ICタグモジュール440を備えている。第2ICタグモジュール440は、第2ICタグ450と、第2ICタグ450を挟んで保護する2枚のゴムシート460とを有する。なお、本実施形態においては、便宜上、ランニングシューズ400Bの内部の底面の前部側のICタグ420を第1ICタグ420という。また、第2ICタグ450の構成は、第1ICタグ420と同一であり、説明を省略する。
ランニングシューズ400の内部の底面の前部側に設けられた第1ICタグ420は、そのループアンテナ421のループ軸方向がランニングシューズ400Bの上下方向となるように配置されている。これに対し、先端部に設けられた第2ICタグ450は、そのループアンテナのループ軸方向がランニングシューズ400Bの前後方向となるように配置されている。つまり、第1ICタグ420と第2ICタグ450とは、互いのループ軸方向が直交するように配置されている。
本実施形態に係るランニングシューズ400Bによれば、ランニングシューズ400Bの前後方向が水平方向と鉛直方向の間のいずれの方向に傾いた場合でも、計測マット200により、ICタグを検知しやすくなる。
以上のように、本実施形態のランニングシューズ400Bにおいて、ICタグ420として第1ICタグ420及び第2ICタグ450が備えられ、第1ICタグ420は、そのループアンテナ421のループ軸方向が当該ランニングシューズ400Bの上下方向となるように配置され、第2ICタグ450は、そのループアンテナ421のループ軸方向が当該ランニングシューズ400Bの前後方向となるように配置される。
これにより、ランニングシューズ400の前後方向が水平方向と鉛直方向の間のいずれの方向に傾いた場合でも、計測マット200により、ICタグを検知しやすくなる。
(実施形態6)
実施形態6では、ランニングシューズ400に代えて靴用中敷き内部にICタグ420を設けた場合について説明する。
図24は、実施形態6に係る靴用中敷きの構成を示す図である。
本実施形態に係る靴用中敷き800は、前部側にICタグ420を備えている。ICタグ420は、実施形態1〜3と同一のものである。ICタグ420は、靴用中敷き800の本体部材810に内蔵されている。ICタグ420は、そのループアンテナ421のループ軸方向が靴用中敷き800の上下方向となるように配置されている。したがって、靴に靴用中敷き800を装着したときに、ループアンテナ421のループ軸方向は靴用中敷き800の上下方向となる。
本実施形態に係る靴用中敷き800によれば、ランニング用でない一般的な靴に当該靴用中敷き800を挿入するだけで、当該靴を容易に本ランニング計測システム用の靴として用いることができる。
以上のように、本実施形態の靴用中敷き800は、ICタグ420との間で無線信号を送受新可能なアンテナ部210を備えた計測マット200と組み合わせて使用される靴用中敷き800であって、ICタグ420は靴用中敷き800の前部側に配置されている。
これにより、走者が計測マット200上を通過する際、靴全体の中でもICタグ420が、計測マット200に近い位置を通ることとなる。そのため、計測マット200によるICタグ420の検知が良好なものとなる。
(実施形態7)
実施形態1では、コンピュータ500が電子ピストル100からのスタートを示す信号を受信装置300を介して受信したときに、走行時間の計測を開始する。しかし、特定小電力無線の無線信号が他の無線信号やノイズと干渉して、受信装置300において受信できない場合がある。この場合、再送制御により、スタートを示す信号の再送を行えばよいが、実際のスタートのタイミングよりも計測開始タイミングが遅れることとなる。これに対し、計測マット200からのゴールを示す信号が例えば再送されることなく一度で受信装置300を介してコンピュータ500で受信された場合、計測された走行時間は、実際の走行時間よりも短くなる。本実施形態ではこの問題を解決することを目的とし、以下の構成を採用する。
具体的に、本実施形態では、電子ピストル100は、引き金101が引かれたときに出力する無線信号として、スタートを示す情報に加え、当該情報の再送回数を示す情報を含む無線信号を送信する。コンピュータ500は、計測された走行時間を式3に基づいて補正する。
(式3)
To=A+B×N+T
ここで、Toは補正後の計測時間、Tは実計測時間、Nはスタートを示す信号の再送回数、Aは1回目のスタートを示す無線信号を出力してから再送を開始するまでの時間(定数)、Bは再送間隔の時間(定数)である。
このように本実施形態では、電子ピストル100は、引き金101が操作されたときに発生させる無線信号を、受信装置300から当該無線信号を受信したとのレスポンスを受けるまで再送し、コンピュータ500は、計測時間を、前記再送の回数に基づいて補正する。
このように補正を行うことにより、補正を行うことにより、再送制御を行った場合でも、精度のよい計測時間を得ることができる。
(実施形態8)
実施形態8では、実施形態7と同じ課題に対処するため、以下の構成を採用する。
具体的に、本実施形態では、電子ピストル100は、引き金101が引かれたときに出力する無線信号として、スタートを示す情報に加え、1回目のスタートを示す信号を送信してから当該再送までの時間Tiを示す情報を含む無線信号を送信する。コンピュータ500は、計測された走行時間を式4に基づいて補正する。
(式4)
To=A+Ti+T
ここで、Toは補正後の計測時間、Tは実計測時間、Tiは1回目のスタートを示す信号を送信してから当該再送までの時間、Aは1回目のスタートを示す無線信号を出力してから再送を開始するまでの時間(定数)である。
このように本実施形態では、電子ピストル100は、引き金101が操作されたときに発生させる無線信号を、受信装置300から当該無線信号を受信したとのレスポンスを受けるまで再送し、コンピュータ500は、計測時間を、最初に無線信号を出力してから、受信装置300から当該無線信号を受信したとのレスポンスを受けた無線信号を出力するまでの時間に基づいて補正する。
このように補正を行うことにより、再送制御を行った場合でも、精度のよい計測時間を得ることができる。
(実施形態9)
実施形態9では、実施形態7と同じ課題に対処するため、以下の構成を採用する。
実施形態9では、実施形態1のランニング計測システムの構成に加え、電子ピストル100の制御部103及び計測マット200の制御部230はそれぞれ、時計部を有している。そして、ランニング計測システムは、以下のように動作する。
すなわち、電子ピストル100の引き金101が引かれると、電子ピストル100は、スタートを指示する情報及びスタート時刻の情報を含む無線信号を出力する。受信装置300がこの無線信号を受信すると、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。走者が計測マット200上を通過すると、計測マット200は走者(ICタグ)毎にゴールを示す情報及びゴール時刻の情報を含む無線信号を出力する。受信装置300がこの無線信号を受信すると、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。コンピュータ500は、スタート時刻の情報及びゴール時刻の情報に基づいて、走者(ICタグ)毎に走行時間を演算する。そして、コンピュータ500は、当該レースの結果を示す表示用の画像データを生成し、表示装置600に出力する。表示装置600は、表示用の画像データに基づく画像を表示する。なお、電子ピストル100の制御部103の時計部と計測マット200の制御部230の時計部とは、所定の方法により時刻の同期を取る。両時計部間の同期は、公知の種々の同期方法が適用可能である。
本実施形態によれば、電子ピストル及び計測マット200から出力されるスタート時刻の情報及びゴール時刻に関する情報に基づいて走行時間が求められる。したがって、再送制御を行った場合でも、精度のよい計測時間を得ることができる。
(実施形態10)
実施形態1では、電子ピストル100で発生した無線信号を受信装置300により受信した。本実施形態では、電子ピストル100で発生した無線信号を計測マット200において受信する。以下、そのための構成について説明する。なお、実施形態1と同一のものについての説明は適宜省略する。また、実施形態1の図3〜図14に示す内容はそのまま本実施形態に適用可能である。
図25は、実施形態10のランニング計測システムの概要を示す図である。図26は、実施形態10のランニング計測システムの構成を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態では、電子ピストル100で発生した無線信号を計測マット200により受信する。
具体的に、図9に示すように、計測マット200のマット制御部205の無線部240は、電子ピストル100から出力された無線信号を、アンテナ部250を介して受信する。
計測マット200の制御部230は、無線部240が電子ピストル100からスタートを示す信号を受信したときは、無線部240及びアンテナ250を介して、受信装置300に転送する。
本実施形態のランニング計測システムの動作について説明する。ランニング計測システムにおいて、電子ピストル100の引き金101が引かれると、電子ピストル100は、スタートを指示する無線信号を出力する。計測マット200は、この無線信号を受信すると、受信装置300に転送する。この信号を受信すると、受信装置300は、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。この信号を受信すると、コンピュータ500は、走行時間の計測を開始する。走者が計測マット200上を通過すると、計測マット200は走者(ICタグ)毎にゴールを示す無線信号を出力する。受信装置300がこの無線信号を受信すると、所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。所定の形式の信号を受信すると、コンピュータ500は走行時間の計測を停止する。そして、コンピュータ500は、計測結果を示す信号に基づいて走者毎に走行時間を求め、当該レースの結果を示す表示用の画像データを生成し、表示装置600に出力する。表示装置600は、表示用の画像データに基づく画像を表示する。
本実施形態によれば、電子ピストル100で発生した無線信号の受信に関する別の態様が提供される。
なお、本実施形態において、実施形態2〜9の構成を適用することもできる。この場合、電子ピストル100で発生した無線信号を、受信装置300でなく、計測マット200で受信するものとすればよい。これにより、本実施形態において、実施形態2〜9で説明した効果も得ることができる。
(実施形態11)
前記各実施形態では、走行時間の計測をコンピュータ500で行う。本実施形態では、走行時間の計測を計測マット200で行う。計測マット200のマット制御部205の制御部230は時計部を有しており、走行時間の計測は、時計部の計測結果に基づき制御部230により行われる。それ以外の構成は、前記各実施形態と同様である。以下、その動作を説明する。
電子ピストル100の引き金101が引かれると、電子ピストル100は、スタートを指示する無線信号を出力する。計測マット200は、この無線信号を受信したタイミングで、走行時間の計測を開始する。走者が計測マット200上を通過すると、計測マット200は走者毎に走行時間の計測を停止する。そして、計測マット200は、計測結果を示す信号を受信装置300に送信し、受信装置300は計測結果を示す信号を所定の形式の信号に変換して、コンピュータ500に出力する。コンピュータ500は、計測結果を示す信号に基づいて、当該レースの結果を示す表示用の画像データを生成し、表示装置600に出力する。表示装置600は、表示用の画像データに基づく画像を表示する。
なお、本実施形態において、実施形態2〜9の構成を適用することもできる。この場合、電子ピストル100で発生した無線信号を、受信装置300でなく、計測マット200で受信するものとすればよい。これにより、本実施形態において、実施形態2〜9で説明した効果も得ることができる。
(その他の実施形態)
前記実施形態では、電子ピストル100は、フライングスイッチ106及び音発生部107を有する。しかし、電子ピストル100は、フライングスイッチ106及び音発生部107を有していなくてもよい。
前記実施形態では、計測マット200において、リーダ部220はマット制御部205に設けられている。しかし、リーダ部は、各アンテナ部に設けてもよい。
前記実施形態では、受信装置300の制御部302において、特定小電力無線機器間の通信制御を行う。しかし、この通信制御機能は、電子ピストル100や計測マット200に設けてもよい。
前記実施形態では、アンテナ部210を2列に設けた例について説明した。しかし、1列や3列以上であってもよい。
前記実施形態4では、位相を反転させるために移相器を設けた。しかし、移相器を設けず、2つのアンテナ部のうちの一方の裏表を反転させて配置することにより、位相を反転させることもできる。
前記実施形態1では、2列のアンテナ部210の中間の位置がゴールラインと一致するように、計測マット200が配置される。そして、コンピュータ500は、無線信号を受信したアンテナ部210が属する列に基づき、計測した時間を補正する。しかし、2列のアンテナ部210の中間の位置はゴールラインと一致しなくてもよい。この場合、コンピュータ500は、2列のアンテナ部210のそれぞれとゴールラインとの距離に応じて、計測した時間を補正すればよい。