JP2015040164A - 六フッ化リン酸リチウムの製造方法 - Google Patents
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【課題】六フッ化リン酸リチウムの製造方法であって、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の粒径を制御可能に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】六フッ化リン酸リチウムを含む溶液を貯留した晶析槽に、六フッ化リン酸リチウムを含む別の溶液を供給することにより、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させることを含み、晶析槽内の溶液の温度が、晶析槽に供給される別の溶液の温度より低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造方法を提供する。【選択図】図1
Description
本発明は、六フッ化リン酸リチウムの製造方法、詳細には六フッ化リン酸リチウムの晶析法に関する。
六フッ化リン酸リチウムは、リチウムイオン二次電池、有機合成反応用触媒等として広く用いられている。この六フッ化リン酸リチウムの製造方法としては、五塩化リンとフッ化水素を反応させて五フッ化リンを得、この五フッ化リンとフッ化リチウムを溶媒(例えば、フッ化水素、ジメチルカーボネート(DMC)等)中で反応させて六フッ化リン酸リチウムを得、溶液中から六フッ化リン酸リチウムの結晶を析出させる方法が知られている(特許文献1〜4)。このような方法において、結晶の析出は、例えば得られた六フッ化リン酸リチウムのフッ化水素溶液を1日かけて室温〜−20℃まで冷却して結晶を析出させる(特許文献1)、六フッ化リン酸リチウムのフッ化水素溶液からフッ化水素を蒸発させ、その潜熱により冷却して結晶を析出させる(特許文献2)、六フッ化リン酸リチウムのDMC溶液を−20〜150℃で蒸発させて結晶を析出させる(特許文献3)、または六フッ化リン酸リチウムの有機溶媒溶液から減圧下で有機溶媒を蒸発させて結晶を析出させる(特許文献4)ことにより行われている。
上記の特許文献1〜4の方法は、いずれも晶析工程をバッチ処理で行っている。一般的に、このようなバッチ処理では、粒径のばらつきが少なく純度が高い結晶を収率よく得るため、溶液をゆっくりと冷却して大きな粒径の結晶としている。実際に、引用文献1〜4においても、晶析を一晩から1日かけて行っている。しかしながら、このように時間をかけた晶析は、生産効率が悪いという問題がある。また、このようなバッチ処理では、1つの槽において五フッ化リンとフッ化リチウムを反応させて六フッ化リン酸リチウムを生成した後、冷却して結晶を得ているので、これらの反応工程および晶析工程を行う槽(反応・晶析槽)は、冷却と加熱を繰り返すことになりエネルギー効率が悪いという問題もある。また、上記の方法では、冷却が晶析槽の壁面から行われるので、晶析が晶析槽の壁面または壁面付近において生じ、析出した結晶が晶析槽の内壁面に付着しやすい。このような結晶の付着が生じると、冷却効率が低下し、さらにエネルギー効率が悪くなり、また、これを除去するメンテナンスも必要となる。さらに、溶媒、例えばフッ化水素を蒸発させることにより晶析を行うと、結晶中のフッ化リチウム濃度が上昇し結晶の純度が低下する問題がある。これは、溶液中でLiF+PF5⇔LiPF6の平衡があり、五フッ化リンが蒸発することにより平衡が左側に移動し溶液中のフッ化リチウム濃度が上昇することが原因と考えられる。さらに、バッチ処理においては、溶液からの六フッ化リン酸リチウムの結晶の析出量を多くするためには、晶析槽で十分に結晶を成長させる必要があるので、結晶の粒径が大きくなる。一方、粒径の小さな結晶を得るためには、結晶の成長を早期に止める必要があるので、母液中に未析出の六フッ化リン酸リチウムが多く残ってしまい無駄が多くなる。このように、バッチ処理では溶液からの結晶の析出量(収量)と粒径の制御の両立が難しいという問題がある。
したがって、本発明は、六フッ化リン酸リチウムの製造方法であって、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の粒径を制御可能に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の要旨によれば、六フッ化リン酸リチウムを含む溶液を貯留した晶析槽に、六フッ化リン酸リチウムを含む別の溶液を供給することにより、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させることを含み、晶析槽内の溶液の温度が、晶析槽に供給される別の溶液の温度より低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造方法が提供される。
本発明の第2の要旨によれば、本発明は、溶媒中で五フッ化リンとフッ化リチウムを反応させて六フッ化リン酸リチウムを生成する反応槽と、反応槽で得られた反応液が供給され、六フッ化リン酸リチウムを析出させる晶析槽とを有し、該晶析槽における溶液の温度が、反応槽における反応液の温度よりも低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造装置が提供される。
本発明によれば、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の粒径を制御可能に得ることができる六フッ化リン酸リチウムの製造方法が提供される。
以下、本発明の六フッ化リン酸リチウムの製造方法について説明する。
まず、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を含有する溶液を得る。
上記六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の溶媒としては、特に限定されないが、例えば無水フッ化水素酸(HF)やジメチルカーボネート(DMC)等の電解液溶媒として使用される有機溶媒が挙げられる。前工程の反応原料であるフッ化リチウムは、有機溶媒への溶解度が非常に小さいため有機溶媒ではスラリーとなり扱い難い。また、有機溶媒中で晶析を行うと六フッ化リン酸リチウムと溶媒の相互作用が強いため、六フッ化リン酸リチウムと溶媒とで付加物結晶を形成するので結晶中の溶媒を除去することが困難である。したがって、反応溶媒としてはフッ化リチウムの溶解度が高い無水フッ化水素酸が好ましく、また、反応後の無水フッ化水素溶液をそのまま晶析槽へ移送し晶析を行えるため、晶析工程の溶媒も無水フッ化水素酸が好ましい。
当該溶液の調製方法は、特に限定されず、従来の方法により、例えばフッ化リチウム(LiF)の溶液に五フッ化リン(PF5)ガスを吹き込む方法、または五フッ化リンを溶解させた溶液にフッ化リチウムを添加する方法等によりフッ化リチウムと五フッ化リンを反応させて六フッ化リン酸リチウムを生成させることにより得ることができる。
このフッ化リチウムと五フッ化リンとから六フッ化リン酸リチウムを生成する工程は、フッ化リチウムと五フッ化リンとを連続的に反応させる連続工程であっても、一部をバッチ処理するセミバッチ工程であってもよい。
上記の反応の温度は、特に限定されないが、温度が低すぎると晶析槽内の温度を更に下げる必要がありエネルギー効率が悪く、また、温度が高すぎるとLiPF6の分解反応が起こり収率が悪化することから、例えば約−40℃〜100℃、好ましくは約−20℃〜80℃、より好ましくは約0〜40℃である。
上記の反応時の圧力は、特に限定されないが、大気圧〜1.0MPaG(ゲージ圧)、好ましくは大気圧〜0.6MPaGである。圧力が低すぎると五フッ化リンと同伴して不活性ガスが入ってきた場合この不活性ガスや、未反応の五フッ化リンと同伴して抜ける溶媒の量が多くなり後工程で溶媒の回収工程が必要となるので、上記の範囲の圧力が好ましい。
六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液における六フッ化リン酸リチウムの濃度は、反応槽の温度における飽和濃度以下であればよい。
六フッ化リン酸リチウムを含む溶液を貯留した晶析槽に、六フッ化リン酸リチウムを含む別の溶液を連続的にまたは間欠的に供給することにより、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる方法において、晶析槽に供給される六フッ化リン酸リチウムを含む溶液における六フッ化リン酸リチウムの濃度は、供給時の温度での飽和濃度以下であって、かつ、晶析槽中の溶液の温度における飽和濃度以上であれば特に限定されない。例えば、溶液の供給時の温度が25℃であり、晶析槽の温度が−20℃であれば、約17質量%以上、約26質量%以下、好ましくは、約20質量%以上、約25質量%以下である。
ついで、上記で得られた六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液を、晶析槽に供給する。当該溶液は、反応槽から直接晶析槽に供給されてもよく、また、いったん保持槽で保持し、そこから晶析槽に供給してもよい。
好ましい態様において、上記六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の晶析槽への供給は、連続的に行われる。なお、晶析において得られる結晶の平均粒径が晶析中に大きく変動せず安定であれば一時的に溶液の供給を停止しても問題なく、本明細書に記載の「連続的に供給する」とはこれを含む。
供給時の六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の温度は、六フッ化リン酸リチウムが析出せず、晶析槽の温度(液温)より高い温度であれば特に限定されないが、例えば約−40〜100℃、好ましくは約−20〜80℃、より好ましくは約0〜40℃である。
当該晶析槽では、六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液が供給され、当該溶液が冷却され、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子が析出し、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液が得られる。得られた懸濁液は、連続的または間欠的に晶析槽から抜き出すことができる。
上記晶析槽の温度(液温)は、六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の添加温度より低い温度であれば特に限定されない。例えば、晶析槽の温度(液温)は、約−60℃〜20℃、好ましくは約−40℃〜0℃、より好ましくは約−30℃〜0℃である。このような温度範囲とすることにより、供給された六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液を急冷することができ、微細な結晶粒子を得ることができる。
上記晶析槽における六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の平均滞留時間は、特に限定されないが、例えば約1〜360分、好ましくは約10〜240分、より好ましくは約10〜120分である。
上記晶析槽内の圧力は、特に限定されないが、大気圧〜1.0MPaG(ゲージ圧)、好ましくは大気圧〜0.6MPaGである。
一の態様において、六フッ化リン酸リチウム懸濁液の抜き出しと同時に、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を分級してもよい。当該分級は、特に限定されるものではないが公知の分級機(例えば、化学工学会編:“改定六版化学工学便覧”,第16章,丸善株式会社(1999);粉体工学会編:“粉体工学便覧”,V編2章,日刊工業新聞社(1986);日本粉体工業技術協会編:“粉体分級技術マニュアル”,広信社(1990)を参照)を用いて行うことができ、例えば重力分級機(沈降分級機)や、水の代わりに溶媒を用いた水力分級機、液体サイクロンや遠心分離機等の遠心分級機によって行うことができる。
本発明の方法によれば、溶液から六フッ化リン酸リチウムを連続的に晶析させて、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を作製することができる。本発明の方法は、上記のように反応槽と晶析槽とを別個の槽とし、晶析を実質的に連続的に行うことができるので(連続晶析)、晶析毎に晶析槽の加熱と冷却を繰り返す従来のバッチ晶析と比較して、必要なエネルギー量を低減することが可能になる。また、六フッ化リン酸リチウムの溶液が供給される場所付近で晶析が生じることから、すなわち、壁面から離れた位置で晶析が生じることから、晶析槽の内壁への結晶の付着を抑制することができる。さらに急冷により晶析を行っているので、晶析時間も短い。また、装置の規模も、バッチ晶析と比較して小型化することが可能になる。
また、本発明の方法によれば、晶析槽に供給する六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の濃度、晶析槽の液温、および晶析槽における六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液の平均滞留時間等を調節することにより、所望の平均粒径を有する六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得ることができる。例えば、本発明の方法によれば、体積平均粒径が、約0.01〜1.0mm、好ましくは約0.01〜0.5mm、更に好ましくは0.01〜0.35mmである微細な六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得ることができる。このような微細な結晶粒子とすることにより、乾燥に要する時間を短縮することができる等、後の乾燥、精製に有利となる。なお、本明細書において、「体積平均粒径」は、例えば画像解析式粒度分布測定により算出することができる。
一の態様において、本発明の方法は、さらに、得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の分離、乾燥、精製工程を含み得る。
例えば、晶析槽から抜き出された六フッ化リン酸リチウムの懸濁液を、固液分離工程に付して、懸濁液から六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子(固体部分)を分離することができる。当該固液分離は、特に限定されないが、濾過、遠心分離などにより行うことができる。
上記固液分離工程により結晶粒子が除かれた母液(LiFおよびPF5含有溶液)は、反応槽に供給して、反応液として再利用することができる。この母液は、そのまま反応槽に戻してもよく、また、公知の方法で不純物の除去に付してから反応槽に戻してもよい。
ついで、上記固液分離工程により分離された六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を乾燥工程に付して、結晶粒子中および/またはその表面に残留する溶媒を除去することができる。当該乾燥は、特に限定されないが、自然乾燥、真空乾燥、送風乾燥、加熱乾燥などにより行うことができる。
また、得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子は、さらに精製することができる。
例えば、六フッ化リン酸リチウムを含有する溶液における溶媒がフッ化水素である場合、上記のように得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を、五フッ化リン雰囲気下で加熱することにより精製し、さらに高純度の六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得ることができる。
この精製工程に付される六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子は、体積平均粒径が約0.01〜1.0mmであるものが好ましく、体積平均粒径が約0.01〜0.5mmであるものがより好ましく、体積平均粒径が約0.1〜0.3mmであるものがさらに好ましい。該粒径が大きすぎると、精製の際、目標とするところまで不純物を低減できなかったり、低減できたとしても時間がかかったりする。また、該粒径が小さすぎると、晶析後の懸濁液から結晶粒子を分離する際の濾過で結晶粒子が詰まったり、乾燥時に結晶粒子が舞い上がったりなどして、取り扱いが難しくなる。なお、精製工程の前後で、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の体積平均粒径は、実質的に変化しない。
上記五フッ化リン雰囲気とは、実質的に100%の五フッ化リンガスの雰囲気、または五フッ化リンを主成分とするガスの雰囲気を意味し、例えば五フッ化リンを50〜99体積%、好ましくは80〜99体積%、より好ましくは95〜99体積%含むガスの雰囲気を意味する。残部として、空気、HF等が存在してもよい。
加熱温度は、約100〜300℃、好ましくは約150〜250℃、より好ましくは約180〜230℃である。
加熱時間は、約10分〜10時間、好ましくは約1〜5時間である。
当該精製方法によれば、六フッ化リン酸リチウムの結晶中のフッ化水素(遊離酸)を、短時間で効率よく除去することができ、高純度の結晶を得ることができる。本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、その理由は次のように考えられ得る。五フッ化リン雰囲気下で処理を行っていることから、LiF+PF5⇔LiPF6の反応の平衡が右に移動し、結晶中のフッ化リチウムが五フッ化リンと反応して六フッ化リン酸リチウムに変換され、さらに加熱による六フッ化リン酸リチウムの分解が抑制されることから結晶中のフッ化リチウムの濃度が小さくなると考えられる。また、結晶中に残存するフッ化水素が、五フッ化リンに押し出されることにより、または五フッ化リンとの親和性により結晶中から除去されることにより、結晶中のフッ化水素の濃度が小さくなると考えられる。このフッ化水素の除去は、温度が高いほど効率良く進むと考えられるため、加熱した状態で行うことが好ましい。
一の態様において、本発明は、
1)六フッ化リン酸リチウムを生成する工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;および
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法を提供する。
1)六フッ化リン酸リチウムを生成する工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;および
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法を提供する。
かかる態様において、好ましくは、無水フッ化水素酸を溶媒として用いる。
好ましくは、上記の工程2における晶析槽への溶液の供給は、連続的に行われる。
別の態様において、本発明は、
1)反応槽において、五フッ化リンとフッ化リチウムを溶媒中で反応させ、六フッ化リン酸リチウムを生成する工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
4)抜き出した六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液から、固液分離により、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を分離する工程;
5)分離した結晶粒子を乾燥して該粒子に残留する溶媒を除去する工程;
6)前記工程で得られた結晶粒子を加熱により精製する工程;および
7)工程4)の固液分離の残液を工程1の溶媒に再利用する工程
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法を提供する。
1)反応槽において、五フッ化リンとフッ化リチウムを溶媒中で反応させ、六フッ化リン酸リチウムを生成する工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
4)抜き出した六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液から、固液分離により、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を分離する工程;
5)分離した結晶粒子を乾燥して該粒子に残留する溶媒を除去する工程;
6)前記工程で得られた結晶粒子を加熱により精製する工程;および
7)工程4)の固液分離の残液を工程1の溶媒に再利用する工程
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法を提供する。
かかる態様において、好ましくは、無水フッ化水素酸を溶媒として用いる。
好ましくは、上記の工程2における晶析槽への溶液の供給は、連続的に行われる。
本発明の第2の要旨によれば、上記六フッ化リン酸リチウムの製造方法(連続晶析)を実施するための装置も提供される。具体的には、溶媒中で五フッ化リンとフッ化リチウムを反応させて六フッ化リン酸リチウムを生成する反応槽と、反応槽で得られた反応液が連続的に供給され、六フッ化リン酸リチウムを析出させる晶析槽とを有し、該晶析槽における反応液の温度が、反応槽における反応液の温度よりも低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造装置が提供される。
以下に、本発明の製造装置の1つの実施形態について、図1を参照しながら説明する。
本実施形態において、本発明の反応装置は、反応槽1、保持槽2、晶析槽3、固液分離槽4、および乾燥機5を有する。
反応槽1は、フッ化リチウムの無水フッ化水素酸溶液の供給口、五フッ化リンガスの吹き込み口、および反応液を排出する排出口を有する。
一の態様において、反応槽1は、さらに下記の固液分離槽4において分離された母液の供給口を有していてもよい。
当該反応槽1では、フッ化リチウムの無水フッ化水素酸溶液に五フッ化リンガスを吹き込むことにより六フッ化リン酸リチウムが生成する。反応後の溶液は、排出口から排出され、保持槽2を介して晶析槽3に供給される。
保持槽2は、反応槽1から反応溶液が供給される供給口と、反応溶液を晶析槽3に連続的に供給する排出口を有する。保持槽2は、反応槽1で得られた反応溶液を一時保持して、晶析槽3への反応溶液の供給量およびその温度を調節することができる。
一の態様において、保持槽2を省略して、反応槽1から直接晶析槽3に反応溶液を連続的に供給してもよい。
晶析槽3は、保持槽2(または反応槽1)から反応溶液が供給される供給口と、得られたスラリーを排出する抜き出し口と、撹拌機6を有する。この晶析槽3における溶液の温度は、保持槽2(または反応槽1)から供給される反応溶液の温度よりも低い。このようにすることにより、晶析槽3に供給された反応溶液は急冷され、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を連続的に析出させることができる。得られたスラリーは、連続的または間欠的に晶析槽3から抜き出される。
一の態様において、晶析槽3は、スラリーの排出と同時に得られた結晶粒子の分級を行う、分級手段を備えていてもよい。
晶析槽3から抜き出されたスラリーは、固液分離槽4において、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子が分離される。
一の態様において、固液分離槽4において六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子が分離された後の母液を、反応槽1に供給して、反応液として再利用することができる。
固液分離槽4で分離された六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子は、乾燥機5に供給され、そこで残留溶媒が除去される。
上記で乾燥した六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子は、加熱炉6に供給される。ここで加熱処理されることにより、さらに高純度の六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子が得られる。
本発明の製造装置を用いることにより、急冷による晶析が可能になり、微細な六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を効率よく製造することができる。
以上、一の実施形態により本発明の製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、反応槽を、特開平11−92135号公報に記載の方法のような向流接触式の反応槽において連続反応を行うことができる。
実施例1
撹拌機および横抜き配管付き500mlのステンレス鋼製オートクレーブに、無水フッ化水素酸(340g)および六フッ化リン酸リチウム(100g)を仕込み、−2℃まで冷却し、均一なスラリー液が得られるまで撹拌した。ついで、このオートクレーブに、3Lのステンレス鋼製容器において別途調製した六フッ化リン酸リチウムの無水フッ化水素酸溶液(30.4g/100g−HF;20℃)を、9.4g/分の速度で供給し、同時にスラリー液をオートクレーブの横抜き配管からオーバーフローで別の3Lのステンレス鋼製容器に抜き出した。平均滞留時間の5倍以上が経過してから抜き出したスラリー液の一部をサンプリングし、すぐに濾過し、得られた結晶粒子を減圧下で乾燥して無水フッ化水素酸を除去し、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。得られた結晶粒子の体積平均粒径を画像解析式粒度分布測定を行うことにより算出した。体積平均粒径は0.43mmであった。この結晶粒子を、ステンレス鋼(SUS316)製容器に入れ、容器内を脱気した後、五フッ化リンを大気圧まで封入し、容器を200℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、容器内を脱気し、精製六フッ化リン酸リチウムを得た。六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸(HF):82ppm、フッ化リチウム61ppmであった。
撹拌機および横抜き配管付き500mlのステンレス鋼製オートクレーブに、無水フッ化水素酸(340g)および六フッ化リン酸リチウム(100g)を仕込み、−2℃まで冷却し、均一なスラリー液が得られるまで撹拌した。ついで、このオートクレーブに、3Lのステンレス鋼製容器において別途調製した六フッ化リン酸リチウムの無水フッ化水素酸溶液(30.4g/100g−HF;20℃)を、9.4g/分の速度で供給し、同時にスラリー液をオートクレーブの横抜き配管からオーバーフローで別の3Lのステンレス鋼製容器に抜き出した。平均滞留時間の5倍以上が経過してから抜き出したスラリー液の一部をサンプリングし、すぐに濾過し、得られた結晶粒子を減圧下で乾燥して無水フッ化水素酸を除去し、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。得られた結晶粒子の体積平均粒径を画像解析式粒度分布測定を行うことにより算出した。体積平均粒径は0.43mmであった。この結晶粒子を、ステンレス鋼(SUS316)製容器に入れ、容器内を脱気した後、五フッ化リンを大気圧まで封入し、容器を200℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、容器内を脱気し、精製六フッ化リン酸リチウムを得た。六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸(HF):82ppm、フッ化リチウム61ppmであった。
実施例2
オートクレーブへの供給速度を、3.2g/分とした以外は実施例1と同様にして六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は0.47mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:90ppm、フッ化リチウム70ppmであった。
オートクレーブへの供給速度を、3.2g/分とした以外は実施例1と同様にして六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は0.47mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:90ppm、フッ化リチウム70ppmであった。
実施例3
オートクレーブ中のスラリー液の温度を−15℃とした以外は実施例1と同様にして六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は0.32mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:78ppm、フッ化リチウム60ppmであった。
オートクレーブ中のスラリー液の温度を−15℃とした以外は実施例1と同様にして六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は0.32mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:78ppm、フッ化リチウム60ppmであった。
比較例1
撹拌機および横抜き配管付き500mlのステンレス鋼製オートクレーブに、無水フッ化水素酸(340g)および六フッ化リン酸リチウム(100g)を仕込み溶液とした。これを−20℃まで20℃/hrで冷却し、結晶を析出させ濾過器へスラリー液を抜出した。得られた結晶粒子を減圧下で乾燥して無水フッ化水素酸を除去し約29gの六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。得られた結晶粒子の体積平均粒径を画像解析式粒度分布測定を行うことにより算出した。体積平均粒径は1.21mmであった。この結晶粒子を、ステンレス鋼(SUS316)製容器に入れ、容器内を脱気した後、五フッ化リンを大気圧まで封入し、容器を200℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、容器内を脱気し、精製六フッ化リン酸リチウムを得た。六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:1203ppm、フッ化リチウム90ppmであった。
撹拌機および横抜き配管付き500mlのステンレス鋼製オートクレーブに、無水フッ化水素酸(340g)および六フッ化リン酸リチウム(100g)を仕込み溶液とした。これを−20℃まで20℃/hrで冷却し、結晶を析出させ濾過器へスラリー液を抜出した。得られた結晶粒子を減圧下で乾燥して無水フッ化水素酸を除去し約29gの六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。得られた結晶粒子の体積平均粒径を画像解析式粒度分布測定を行うことにより算出した。体積平均粒径は1.21mmであった。この結晶粒子を、ステンレス鋼(SUS316)製容器に入れ、容器内を脱気した後、五フッ化リンを大気圧まで封入し、容器を200℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、容器内を脱気し、精製六フッ化リン酸リチウムを得た。六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:1203ppm、フッ化リチウム90ppmであった。
比較例2
冷却温度を、―10℃とした以外は比較例1と同様にして約19gの六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は1.05mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:980ppm、フッ化リチウム89ppmであった。
冷却温度を、―10℃とした以外は比較例1と同様にして約19gの六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を得た。体積平均粒径は1.05mmであった。精製後の六フッ化リン酸リチウム中の不純物を分析したところ遊離酸:980ppm、フッ化リチウム89ppmであった。
実施例1〜3および比較例1〜2の結果を下記表2にまとめて示す。
以上の結果から、本発明の連続晶析法によれば、体積平均粒径が0.5mm未満の微細な結晶粒子を得ることができることが示された。また、晶析槽の温度および/または滞留時間を調節することにより、結晶粒子の粒径を制御できることが示された。また、オートクレーブの内壁に結晶の付着はみられなかった。さらに、本発明の方法によれは、バッチ法である比較例と比べて小さな粒度の結晶粒子が得られることに加え、精製後の不純物濃度が低く、高純度の結晶粒子を得ることができることが確認された。
本発明は、所望の粒度を有する六フッ化リン酸リチウムの結晶を効率よく製造するのに利用可能である。
1:反応槽
2:保持槽
3:晶析槽
4:固液分離槽
5:乾燥機
6:加熱炉
7:撹拌機
2:保持槽
3:晶析槽
4:固液分離槽
5:乾燥機
6:加熱炉
7:撹拌機
Claims (14)
- 六フッ化リン酸リチウムを含む溶液を貯留した晶析槽に、六フッ化リン酸リチウムを含む別の溶液を供給することにより、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させることを含み、晶析槽内の溶液の温度が、晶析槽に供給される別の溶液の温度より低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 六フッ化リン酸リチウムを含む別の溶液の供給が連続的に行われる、請求項1に記載の製造方法。
- 前記溶液の溶媒が無水フッ化水素酸である、請求項1または2に記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 晶析槽内の溶液の温度が、−60℃〜20℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 晶析槽内における溶液の滞留時間が、1〜360分である、請求項1〜4のいずれかに記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- さらに、晶析槽から六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を連続的または間欠的に抜き出すことを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 晶析槽からの前記懸濁液の抜き出しを、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を分級しながら行う、請求項6に記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子の体積平均粒径が、0.01〜1.0mmである、請求項1〜7のいずれかに記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 1)六フッ化リン酸リチウム溶液を得る工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;および
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法。 - 1)反応槽において、五フッ化リンとフッ化リチウムを溶媒中で反応させ、六フッ化リン酸リチウムを生成する工程;
2)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの溶液を、この溶液よりも低い温度の別の六フッ化リン酸リチウムの溶液を含む晶析槽に供給して、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を析出させる工程;
3)前記工程で得られた六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液を抜き出す工程;
4)抜き出した六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を含む懸濁液から、固液分離により、六フッ化リン酸リチウムの結晶粒子を分離する工程;
5)分離した結晶粒子を乾燥して該粒子に残留する溶媒を除去する工程;
6)前記工程で得られた結晶粒子を加熱により精製する工程;および
7)工程4)の固液分離の母液を工程1の溶媒に再利用する工程
を含む、六フッ化リン酸リチウムの製造方法。 - 六フッ化リン酸リチウムの溶液の晶析槽への供給が連続的に行われる、請求項9または10に記載の製造方法。
- 溶媒が無水フッ化水素酸である、請求項9〜11のいずれかに記載の六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
- 溶媒中で五フッ化リンとフッ化リチウムを反応させて六フッ化リン酸リチウムを生成する反応槽と、反応槽で得られた反応液が連続的に供給され、六フッ化リン酸リチウムを析出させる晶析槽とを有し、該晶析槽における溶液の温度が、反応槽における溶液の温度よりも低いことを特徴とする、六フッ化リン酸リチウムの製造装置。
- 晶析槽が分級手段を備えている請求項13に記載の製造装置。
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- 2013-08-23 JP JP2013173765A patent/JP2015040164A/ja active Pending
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