JP2015038960A - 発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性を向上させることにより、高出力化、高輝度化を図ることができる発光装置を提供する。
【解決手段】基板11の上に、LEDよりなる複数の発光素子12が搭載されており、発光素子12の上には、発光素子12との間に空間15を挟んで波長変換部材16が配置されている。波長変換部材16は、粒子状の蛍光体材料と、バインダとを含み、バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化物となる酸化物前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。
【選択図】図1
【解決手段】基板11の上に、LEDよりなる複数の発光素子12が搭載されており、発光素子12の上には、発光素子12との間に空間15を挟んで波長変換部材16が配置されている。波長変換部材16は、粒子状の蛍光体材料と、バインダとを含み、バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化物となる酸化物前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、蛍光体材料を用いた発光装置に関する。
蛍光体を用いた発光装置としては、例えば、LEDまたはLDに接触するように、蛍光体をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂に分散させて配置したものが知られている(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。しかし、この発光装置では、LEDまたはLDの高出力化やLEDまたはLDの発熱に伴い、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂が劣化したり、変形、剥離したりして、高出力化を図ることが難しいという問題があった。
その解決策として、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂に代えて、例えば、ガラスにより蛍光体を封止した発光装置が開発されている(例えば、特許文献4から特許文献6参照)。この発光装置によれば、分散媒に無機材料を用いることにより構造的な耐熱性を向上させることができる。しかし、一般的な低融点ガラスは、実質500℃以上で加熱しなければ蛍光体を分散させることができる程度に軟化させることは難しい(特許文献5実施例参照)。例えば、鉛などの重金属を加えることで低融点化することはできるものの、それらの元素が許容される用途は環境や人体への影響の観点から現在では極めて少ない。そのため、蛍光体によっては、熱の影響により性能が劣化してしまう場合があるという問題があった。
また、分散媒に樹脂を用いる場合には、LEDまたはLDに接触するように配置しても、樹脂特有の柔軟性から形状への追従性も良く、どの材質に対しても密着性が高いのに対して、無機材料は硬く、他材質との親和性にも乏しいため、熱膨張差などによる応力を蓄積しやすく密着性が得られにくい。従って、蛍光体を無機材料に分散させてLED素子、LD素子または基板に直接塗布し定着させることは非常に難しいという問題があった。しかも、無機材料を用いる場合には、製造過程において高温での熱処理が必要となるためLED素子またはLD素子と無機材料(特にガラス)を接着させることは製造上も現実的ではない。
そこで、蛍光体を樹脂に分散し、発光と共に熱を発するLEDまたはLDと、LEDまたはLDの光を受けて波長変換を行う蛍光体とを距離を離して配置する方式の発光装置が開示されている(例えば、特許文献7参照)。この方式であれば、LED素子またはLD素子と蛍光体との距離を大きくとることにより、熱の影響を小さくすることができ、熱設計上の制約は少なくなる。
しかしながら、LED素子またはLD素子と蛍光体との距離を大きく離すとその分だけ空間が必要となる。そのため、LEDモジュールまたはLDモジュールが大型化し用途が限られてしまうという問題があった。LEDモジュールまたはLDモジュールを小型化するためには蛍光体をできるだけLED素子またはLD素子に近づける必要があるが、近づけると単位体積・単位面積当たりのエネルギー密度が高くなり熱の影響が排除できなくなる。すなわち、熱の影響を小さくし、かつ、LEDモジュールまたはLDモジュールを小型化することは難しかった
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、耐熱性を向上させることができ、かつ、小型化することができる発光装置を提供することを目的とする。
本発明の発光装置は、発光素子と、この発光素子との間に空間を挟んで配置された波長変換部材とを備え、波長変換部材は、粒子状の蛍光体材料と、バインダとを含み、バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化物となる酸化物前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。
本発明の発光装置によれば、発光素子と波長変換部材とを間に空間を挟んで配置し、かつ、波長変換部材のバインダに主として無機材料を用いるようにしたので、発光素子から発生する熱に対する耐熱性を向上させることができ、高出力化及び高輝度化を図ることができると共に、小型化することができる。また、波長変換部材のバインダは、常温で反応又は500℃以下の温度で熱処理することにより得られるので、低温でも形成することができ、高温で特性劣化する蛍光体材料の特性劣化を抑制することができる。
更に、波長変換部材は、形成基材の一面に、蛍光体材料とバインダ原料とを含む原料混合物を塗布し、バインダ原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理するようにすれば、容易に低温で形成基材に接着させて形成することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る発光装置10の構成を表わすものである。この発光装置10は、例えば、基板11の上に、LEDよりなる複数の発光素子12が搭載されている。発光素子12には、例えば、励起光として紫外光、青色光、又は緑色光を発するものが用いられ、中でも、青色光を発するものが好ましい。容易に白色を得ることができると共に、紫外光は周囲の部材を劣化させる等の影響があるのに対して、青色光はそのような影響が小さいからである。発光素子12は、例えば、基板11の上に形成された図示しない配線とワイヤ13により電気的に接続されている。発光素子12の周りには、例えば、全体を囲むように、リフレクタ枠14が形成されている。
発光素子12の上には、例えば、発光素子12との間に空間15を挟んで波長変換部材16が配置されている。波長変換部材16は、例えば、形成基材17の一面に形成されており、形成基材17は、例えば、波長変換部材16が発光素子12の側となるように発光素子12の上に配設されている。発光素子12と波長変換部材16との間の距離は、例えば、1mm以上であることが好ましく、更に2mm以上であることが好ましい。発光素子12から発せられる熱の影響を効果的に小さくすることができるからである。また、発光素子12と波長変換部材16との間の距離は、例えば、50mm未満であることが好ましい。発光素子12から発せられる熱の影響は十分に小さくなり、逆に、装置が大型化してしまうからである。
波長変換部材16は、例えば、粒子状の蛍光体材料と、この蛍光体材料を接着するバインダとを含んでおり、必要に応じて、フィラーを含んでいてもよい。
蛍光体材料は、例えば、蛍光体粒子を含んでおり、蛍光体粒子の表面に被覆層が形成されていてもよい。蛍光体粒子としては、例えば、BaMgAl10O17:Eu、ZnS:Ag,Cl、BaAl2S4:EuあるいはCaMgSi2O6:Euなどの青色系蛍光体、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd)BO3:Tb、ZnS:Cu,Al、(M1)2SiO4:Eu、(M1)(M2)2S:Eu、(M3)3Al5O12:Ce、SiAlON:Eu、CaSiAlON:Eu、(M1)Si2O2N:Euあるいは(Ba,Sr,Mg)2SiO4:Eu,Mnなどの黄色または緑色蛍光体、(M1)3SiO5:Eu、(M1)S:Euあるいは(M1)(M2)2S:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu,Y2O2S:Eu、(M1)2Si5N8:Eu、(M1)AlSiN3:EuあるいはYPVO4:Euなどの黄色、橙色または赤色系蛍光体が挙げられる。なお、上記化学式において、M1は、Ba,Ca,SrおよびMgからなる群のうちの少なくとも1つが含まれ、M2は、GaおよびAlのうちの少なくとも1つが含まれ、M3は、Y、Gd、LuおよびTeからなる群のうち少なくとも1つが含まれる。
中でも、蛍光体粒子は、(M3)3Al5O12:Ce、SiAlON:Eu、CaSiAlON:Eu、(M1)Si2O2N:Eu、(M1)2Si5N8:Eu、(M1)AlSiN3:Eu、(M1)2SiO4:Eu、(M1)3SiO5:Eu、(M1)S:Euあるいは(M1)(M2)2S:Euにより構成されることが好ましい。M1、M2およびM3は上述した通りである。蛍光体粒子は、発光素子12の種類等に応じて選択される。蛍光体材料には、1種または2種以上の蛍光体粒子が用いられ、複数種を用いる場合には、混合して用いてもよく、また、複数層に分けて積層するようにしてもよく、各蛍光体を並べて配置してもよい。蛍光体粒子の粒子径は、前方への散乱が多くなることから平均粒子径が5μmから20μm程度であることが好ましい。平均粒子径が5μmよりも小さいと全方向に散乱し易くなり、平均粒子径が20μmを超えると波長変換部材16を後述するように塗布により形成することが難しくなるからである。
蛍光体粒子の被覆層は、例えば、希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウム・アルミニウム・ガーネットなどのイットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム,およびMgAl2O4などのアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。耐水性および耐紫外光などの特性を向上させることができるからである。中でも、希土類酸化物が好ましく、イットリウム,ガドリニウム,セリウムおよびランタンからなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物がより好ましく、特にY2O3が望ましい。より高い効果を得ることができ、また、コストを抑制することができるからである。
バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化物となる酸化物前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。酸化物前駆体としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、エチルシリケート、メチルシリケート、リン酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセト、イットリウムアセチルアセト、アルミニウムアルコート、クエン酸イットリウムを主成分としたものが好ましく挙げられる。これらの酸化物前駆体は、常温あるいは熱処理における加水分解あるいは酸化により容易に酸化物となり、バインダとして機能させることができるからである。なお、バインダとしては、酸化物前駆体が反応して完全に酸化物となっている必要はなく、未反応部分や不完全反応部分を含んでいてもよい。
中でも、バインダとしては、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものが好ましい。発行素子12からの光の透過率を高くすることができるからである。酸化ケイ素前駆体としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、エチルシリケート、メチルシリケートを主成分としたものが好ましく挙げられる。
また、ケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウムが好ましく挙げられる。ケイ酸化合物は、脱水状態のものを用いても、水和物を用いてもよい。シリカ又はアモルファスシリカとしては、例えば、ナノサイズの超微粒子粉末を用い、例えば、一次粒子径としての平均粒子径が5nm以上100nm以下の超微粒子粉末を用いることが好ましく、5nm以上50nm以下の超微粒子粉末を用いればより好ましい。これらケイ酸化合物、シリカ、又は、アモルファスシリカは、溶媒に溶解又は分散させて熱処理、乾燥させることにより固形化し、バインダとして機能させることができる。
バインダ原料の熱処理温度は、形成基材17及び蛍光体材料への熱的影響を小さくするために500℃以下とすることが好ましく、熱的影響をより小さくする必要がある場合には300℃以下とすればより好ましく、200℃以下とすれば更に好ましい。また、バインダ原料を常温で反応させるようにすれば、熱的影響がないのでより好ましい。用いる形成基材17及び蛍光体材料の耐熱特性に応じて、バインダ原料の種類を選択し、それによりバインダ原料を常温で反応させるのか、又は、何度で熱処理するのかを調節することが好ましい。また、熱処理の際の雰囲気は、蛍光体材料が熱により酸化して劣化しやすい場合には、窒素雰囲気などの非酸化雰囲気とすることが好ましい。このように、本実施の形態では、高温で特性劣化する蛍光体材料に対しても、低温でバインダの熱処理を行うことができ、更に、熱処理後は、蛍光体材料が酸化物により覆われることにより、蛍光体材料を高温状態に曝露しても特性劣化を抑制することができるようになっている。
フィラーは、例えば、透光性を有する無機材料よりなるものが好ましく、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、または、酸化ジルコニウム粒子などが挙げられる。より好ましくは酸化ケイ素粒子が好ましく、その形態は、結晶でもガラスでもよい。また、フィラーは、バインダと同質材料により構成すればより好ましい。バインダと屈折率が同じくなり、散乱を低減することができるからである。フィラーの平均粒子径は、蛍光体粒子の平均粒子径と同程度の10μmから20μm程度が好ましい。前方への散乱が多く、蛍光体粒子間距離を制御しやすいからである。
波長変換部材16の膜厚は、例えば、30μm以上1mm以下であることが好ましく、50μm以上500μm以下であればより好ましく、50μm以上200μm以下であれば更に好ましい。30μmよりも薄い場合には、蛍光体材料の量が少なくなり、発光輝度が低下するからである。また、1mmよりも厚い場合には、光の散乱・吸収が増え、外部に光が取り出しにくくなってしまうからである。
形成基材17は、例えば、ガラスなどの透光性を有するものにより構成されている。ガラスの特性としては、例えば、400nmから800nmの波長域において光透過率が90%以上有していることが好ましい。なお、形成基材17は、どのような形でもよく、円形板状でも、四角板状でもよい。また、図1では平面状の場合を示したが、凹面状、凸面状、又は、電球形状でもよい。
波長変換部材16は、例えば、形成基材17の一面に、蛍光体材料と、バインダ原料とを含む原料混合物を塗布し、バインダ原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成される。具体的には、まず、例えば、1種又は2種以上の蛍光体材料と、バインダ原料と、必要に応じて希釈溶媒と、必要に応じてフィラーとを混合してペースト状の原料混合物とし、形成基材17の一面に、例えば、スクリーン印刷等の印刷法、ディスペンサ法、又は、スプレー法により塗布する。特に、印刷法であれば、対応できるスラリー粘度範囲が広いので好ましい。また、塗布は、必要な膜厚となるまで繰り返し行ってもよい。次いで、例えば、塗布した原料混合物を乾燥させて希釈溶媒を除去する。その際、必要に応じて500℃以下、より好ましくは300℃以下、更には200℃以下の範囲で加熱してもよい。これにより、バインダ原料が常温あるいは熱処理により反応し、又は、熱処理により固形化する。
このように本実施の形態によれば、発光素子12と波長変換部材16とを間に空間15を挟んで配置し、かつ、波長変換部材16のバインダに主として無機材料を用いるようにしたので、発光素子から発生する熱に対する耐熱性を向上させることができ、高出力化及び高輝度化を図ることができると共に、小型化することができる。また、波長変換部材16のバインダは、常温で反応又は500℃以下の温度で熱処理することにより得られるので、低温でも形成することができ、高温で特性劣化する蛍光体材料の特性劣化を抑制することができる。
更に、波長変換部材16は、形成基材17の一面に、蛍光体材料とバインダ原料とを含む原料混合物を塗布し、バインダ原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理するようにすれば、容易に低温で形成基材に接着させて形成することができる。
(実施例1〜4の発光装置の作製)
まず、蛍光体材料と、バインダ原料と、フィラーと、希釈溶媒とを混合し、原料混合物を作製した。蛍光体材料としては、平均粒子径が15μm程度のY3Al5O12:Ceよりなる蛍光体粒子とCaSrS:Euよりなる蛍光体粒子とを用いた。バインダ原料としては、実施例1ではエチルシリケート、実施例2ではペルヒドロポリシラザン、実施例3ではケイ酸ナトリウムの水和物、又は、実施例4ではシリカあるいはアモルファスシリカの超微粒子粉末を溶剤で懸濁化したものをそれぞれ用いた。フィラーとしては、平均粒子径が15μm程度の二酸化ケイ素粒子を用いた。希釈溶媒としては、テルピネオールを用いた。次いで、透明なガラス板よりなる形成基材17の一面に、作製した原料混合物を印刷し、必要な厚みとなるように塗布した。そののち、150℃で乾燥させることにより、希釈溶媒を除去した。これにより得られた各波長変換部材16を用い、図1に示したような発光装置10をそれぞれ作製した。発光素子12には、青色LEDを用いた。
まず、蛍光体材料と、バインダ原料と、フィラーと、希釈溶媒とを混合し、原料混合物を作製した。蛍光体材料としては、平均粒子径が15μm程度のY3Al5O12:Ceよりなる蛍光体粒子とCaSrS:Euよりなる蛍光体粒子とを用いた。バインダ原料としては、実施例1ではエチルシリケート、実施例2ではペルヒドロポリシラザン、実施例3ではケイ酸ナトリウムの水和物、又は、実施例4ではシリカあるいはアモルファスシリカの超微粒子粉末を溶剤で懸濁化したものをそれぞれ用いた。フィラーとしては、平均粒子径が15μm程度の二酸化ケイ素粒子を用いた。希釈溶媒としては、テルピネオールを用いた。次いで、透明なガラス板よりなる形成基材17の一面に、作製した原料混合物を印刷し、必要な厚みとなるように塗布した。そののち、150℃で乾燥させることにより、希釈溶媒を除去した。これにより得られた各波長変換部材16を用い、図1に示したような発光装置10をそれぞれ作製した。発光素子12には、青色LEDを用いた。
(比較例1の発光装置の作製)
比較例1として、酸化ケイ素前駆体に変えてシリコーン樹脂を用い、蛍光体材料とシリコーン樹脂と混合して形成基材の一面に印刷により塗布し、乾燥させて波長変換部材を形成したことを除き、実施例1〜4と同様にして発光素子を作製した。
比較例1として、酸化ケイ素前駆体に変えてシリコーン樹脂を用い、蛍光体材料とシリコーン樹脂と混合して形成基材の一面に印刷により塗布し、乾燥させて波長変換部材を形成したことを除き、実施例1〜4と同様にして発光素子を作製した。
(評価方法1)
実施例1〜4及び比較例1で作製した波長変換部材16について、85℃、85%RHの高温高湿度環境下における曝露試験を行い、輝度の経時変化を調べた。得られた結果のうち実施例1及び比較例1の結果を図2に示す。図2において縦軸は、それぞれの初期輝度を100とした場合の相対的な輝度値である。輝度の定義は、青色LEDで励起され、波長変換部材16により波長変換された後の光のスペクトルのピーク高さの値とする。なお、図2には、実施例1の結果を代表して示したが、実施例2〜4についても同様の結果が得られた。
実施例1〜4及び比較例1で作製した波長変換部材16について、85℃、85%RHの高温高湿度環境下における曝露試験を行い、輝度の経時変化を調べた。得られた結果のうち実施例1及び比較例1の結果を図2に示す。図2において縦軸は、それぞれの初期輝度を100とした場合の相対的な輝度値である。輝度の定義は、青色LEDで励起され、波長変換部材16により波長変換された後の光のスペクトルのピーク高さの値とする。なお、図2には、実施例1の結果を代表して示したが、実施例2〜4についても同様の結果が得られた。
(評価結果1)
実施例1〜4については2000時間後も95%以上の輝度を維持していたのに対し、比較例1については20時間を過ぎたところから徐々に輝度維持率が低下し、2000時間後には83%まで輝度維持率が低下した。
実施例1〜4については2000時間後も95%以上の輝度を維持していたのに対し、比較例1については20時間を過ぎたところから徐々に輝度維持率が低下し、2000時間後には83%まで輝度維持率が低下した。
(評価方法2)
実施例1〜4及び比較例1の波長変換部材16を大気オーブンで加熱し、100℃から500℃までの乾燥高温環境曝露試験を行い、輝度の経時変化を調べた。また、200℃を超える高温領域では波長変換部材16が破壊するなどの可能性があるため、目視での外観確認も同時に行った。各温度の曝露時間は24時間とし、実用温度域の上限に近い150℃、200℃のみ2000時間までの長期曝露を実施した。得られた結果のうち実施例1及び比較例1の結果を図3から図5に示す。図3は、24時間曝露後における曝露温度と発光輝度との関係を示すものであり、図4は、150℃における乾燥高温環境曝露試験の結果であり、図5は、200℃における乾燥高温環境曝露試験の結果である。図3から図5において縦軸は、それぞれの初期輝度を100とした場合の相対的な輝度値である。なお、図3から図5には、実施例1の結果を代表して示したが、実施例2〜4についても同様の結果が得られた。
実施例1〜4及び比較例1の波長変換部材16を大気オーブンで加熱し、100℃から500℃までの乾燥高温環境曝露試験を行い、輝度の経時変化を調べた。また、200℃を超える高温領域では波長変換部材16が破壊するなどの可能性があるため、目視での外観確認も同時に行った。各温度の曝露時間は24時間とし、実用温度域の上限に近い150℃、200℃のみ2000時間までの長期曝露を実施した。得られた結果のうち実施例1及び比較例1の結果を図3から図5に示す。図3は、24時間曝露後における曝露温度と発光輝度との関係を示すものであり、図4は、150℃における乾燥高温環境曝露試験の結果であり、図5は、200℃における乾燥高温環境曝露試験の結果である。図3から図5において縦軸は、それぞれの初期輝度を100とした場合の相対的な輝度値である。なお、図3から図5には、実施例1の結果を代表して示したが、実施例2〜4についても同様の結果が得られた。
(評価結果2)
図3に示したように、各温度における24時間曝露試験では、比較例1は、温度が高くなるにつれ輝度維持率が低下し、300℃以上では熱による化学変化により波長変換部材が粉々に剥離した。これに対して、実施例1〜4では、外観上の変化は無く、輝度維持率の低下も見られなかった。
図3に示したように、各温度における24時間曝露試験では、比較例1は、温度が高くなるにつれ輝度維持率が低下し、300℃以上では熱による化学変化により波長変換部材が粉々に剥離した。これに対して、実施例1〜4では、外観上の変化は無く、輝度維持率の低下も見られなかった。
図4及び図5に示したように、150℃及び200℃における1000時間までの長期曝露試験では、実施例1〜4は150℃、200℃共に変化が見られなかったのに対し、比較例1は、150℃では50時間後から徐々に輝度維持率の低下が見られ、2000時間後には87%まで輝度維持率が低下し、200℃では10時間後で輝度維持率の低下傾向が見られ1000時間後には67%まで輝度維持率が低下し、1200時間後の時点で外観確認を行ったところ熱による化学変化により波長変換部材が粉々に剥離した。
(実施例5〜40,比較例2〜7)
まず、蛍光体材料と、バインダ原料と、場合により希釈溶媒と、場合によりフィラーとを混合し、原料混合物を作製した。各実施例及び各比較例における蛍光体材料の蛍光体粒子の材質・蛍光体粒子の平均粒子径(粒径)・添加量・被覆層の材質、フィラーの材質・平均粒子径(粒径)・添加量、バインダー原料の材質・添加量を表1〜4に示す。なお、蛍光体材料としては、蛍光体材料Aと蛍光体材料Bの両方、又は、どちらか一方を用いた。蛍光体材料Aは蛍光体粒子に被覆層を形成しておらず、蛍光体材料Bは蛍光体粒子に場合により被覆層を形成した。希釈溶媒としてはα-テルピネオールを用いた。
まず、蛍光体材料と、バインダ原料と、場合により希釈溶媒と、場合によりフィラーとを混合し、原料混合物を作製した。各実施例及び各比較例における蛍光体材料の蛍光体粒子の材質・蛍光体粒子の平均粒子径(粒径)・添加量・被覆層の材質、フィラーの材質・平均粒子径(粒径)・添加量、バインダー原料の材質・添加量を表1〜4に示す。なお、蛍光体材料としては、蛍光体材料Aと蛍光体材料Bの両方、又は、どちらか一方を用いた。蛍光体材料Aは蛍光体粒子に被覆層を形成しておらず、蛍光体材料Bは蛍光体粒子に場合により被覆層を形成した。希釈溶媒としてはα-テルピネオールを用いた。
次に、ガラス板よりなる形成基材17の一面に、作製した原料混合物を塗布し、熱処理又は室温でバインダー原料を反応させて、所定の厚さの波長変換部材16を得た。各実施例及び各比較例における原料混合物の塗布法、熱処理温度、及び、波長変換部材16の厚みを表2,4に示す。波長変換部材16の厚みは、熱処理又は室温で反応させた後の厚みである。
これにより得られた各波長変換部材16について、初期特性として初期の発光輝度を調べた。また、高温高湿試験として、85℃、85%RHの高温高湿度環境下における曝露試験を行い、2000時間経過後の発光輝度の低下率を調べた。更に、乾燥高温試験として、150℃又は200℃の乾燥高温環境下における暴露試験を行い、2000時間経過後の発光輝度の低下率を調べた。各波長変換部材16の発光輝度は、図1に示したような発光装置10に各波長変換材16を設置して、300Wの青色LED素子より励起光を当て、その時の発光輝度をパワーメータにより測定した。波長変換部材16と発光素子12の距離は10mmとした。
得られた結果を表5,6に示す。表5,6において、初期特性の発光輝度は実施例14の発光輝度を100とした場合の相対発光輝度である。また、高温高湿試験及び乾燥高温試験における発光輝度の低下率は、各実施例及び各比較例における初期特性の発光輝度からの低下率である。
表5,6に示したように、本実施例によれば、初期特性としての相対発光輝度は80%以上であったが、550℃以上で熱処理した比較例3〜7では、70%以下と低かった。また、シリコーン樹脂を用いた比較例2では、高温高湿試験における発光輝度低下率が15%、150℃の高温乾燥試験における発光輝度低下率が12%、200℃の乾燥高温試験では1200時間後には波長変換部材が剥離し、1000時間後における発光輝度低下率が33%であった。これに対して、本実施例によれば、高温高湿試験、150℃の高温乾燥試験、及び、200℃の乾燥高温試験のいずれにおいても、発光輝度低下率は3%以下と大幅に改善することができた。
更に、実施例5と比較例2の波長変換部材16について、更に、波長変換部材16と発光素子12の距離を1mm、2mm、5mm、又は、10mmと変化させて、図1に示したような発光装置10を作製し、5000時間連続発光させた後、初期特性の発光輝度からの相対発光輝度低下率を調べた。得られた結果を表7に示す。
表7に示したように、実施例5によれば、波長変換部材16と発光素子12との距離を1mmとしても相対発光輝度低下率は2%であったのに対して、比較例2では、10mmまで離さないと相対発光輝度低下率を2%以下とすることはできなかった。
(まとめ)
以上の結果から、本実施例によれば、耐熱性を大幅に向上させることができることが分かった。
以上の結果から、本実施例によれば、耐熱性を大幅に向上させることができることが分かった。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、発光装置10の構造について具体的に説明したが、他の構造を有するように構成してもよい。また、上記実施の形態では、波長変換部材16を形成基材17の一面に塗布して形成する場合について説明したが、他の方法により形成してもよい。例えば、原料混合物を目的とする形状の型に入れて酸化させることにより波長変換部材16を形成し、型から取り出して配設するようにしてもよい。
LEDまたはLDなどの発光装置に用いることができる。
10…発光装置、11…基盤、12…蛍光素子、13…ワイヤ、14…リフレクタ枠、15…空間、16…波長変換部材、17…形成基材
Claims (14)
- 発光素子と、この発光素子との間に空間を挟んで配置された波長変換部材とを備え、
前記波長変換部材は、粒子状の蛍光体材料と、バインダとを含み、
前記バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化物となる酸化物前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである
ことを特徴とする発光装置。 - 前記波長変換部材は、形成基材の一面に、前記蛍光体材料と前記バインダ原料とを含む原料混合物を塗布し、前記バインダ原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項1記載の発光装置。 - 前記バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。 - 前記蛍光体材料は蛍光体粒子を含み、この蛍光体粒子の平均粒子径は、5μmから20μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記波長変換部材の膜厚は、30μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記波長変換部材の膜厚は、50μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記波長変換部材は、形成基材の一面に、前記蛍光体材料と前記バインダ原料とを含む原料混合物を印刷法により塗布し、前記バインダ原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の発光装置。 - 前記発光素子と前記波長変換部材との間の距離は、1mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記発光素子と前記波長変換部材との間の距離は、2mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記蛍光体材料は、蛍光体粒子を含み、この蛍光体粒子の表面には被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記被覆層は酸化イットリウムを含むことを特徴とする請求項10記載の発光装置。
- 前記波長変換部材は、更に、フィラーを含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1に記載の発光装置。
- 前記フィラーは、前記バインダと同質材料であることを特徴とする請求項12記載の発光装置。
- 前記フィラーの平均粒子径は、10μmから20μmであることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の発光装置。
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