JP2015032462A - 硫化物固体電解質材料 - Google Patents

硫化物固体電解質材料 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明は、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスであり、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2?、23.6?にピークを有し、上記オルトオキソ酸リチウムの割合が、20mol%未満であることを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することにより、上記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、Liイオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。さらに、このような固体電解質層に用いられる固体電解質材料として、硫化物固体電解質材料が知られている。
硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、従来から種々の研究がなされている。例えば、特許文献1においては、LiI−LiS−P系の硫化物ガラスを熱処理し、ガラスセラミックスを得ることが記載されている。また特許文献2においては、LiPO−LiI−LiS−P系の非晶質リチウムイオン導電性固体電解質が開示されている。特許文献3においては、LiSとPとを主成分とするガラス相と、LiPSを含有するガラス相とが存在する硫化物系結晶化ガラスが開示されている。また非特許文献1においては、硫化物固体電解質に、酸化物(具体的にはP)を添加する場合のLiイオン伝導性の変化について検討されている。
特開2013−016423号公報 特開平5−310417号公報 特開2002−109955号公報
Takamasa Ohtomo et al., "Electrical and electrochemical properties of Li2S-P2S5-P2O5 glass-ceramic electrolytes", Journal of Power Sources Volume 146, 2005, p.715-p.718
従来より、Liイオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料が求められている。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、LiXをドープした硫化物ガラスに熱処理を加えガラスセラミックスを合成する際、オルトオキソ酸リチウムをある限られた添加範囲において添加することで、Liイオン伝導性が高いガラスセラミックスを得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明においては、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスであり、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有し、上記オルトオキソ酸リチウムの割合が、20mol%未満であることを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供する。
本発明によれば、イオン伝導体、LiXおよびオルトオキソ酸リチウムから構成され、上記オルトオキソ酸リチウムの割合が特定の範囲であり、また2θ=20.2°、23.6°にピークを有する高Liイオン伝導相を備えることから、Liイオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料とすることができる。
本発明においては、Liイオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料を得ることができるという効果を奏する。
実施例1〜3および比較例1〜2で得られた硫化物固体電解質材料に対するLiイオン伝導度測定の結果である。
本発明の硫化物固体電解質材料は、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスであり、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有し、上記オルトオキソ酸リチウムの割合が、20mol%未満であることを特徴とするものである。
本発明によれば、イオン伝導体、LiXおよびオルトオキソ酸リチウムから構成され、上記オルトオキソ酸リチウムの割合が特定の範囲であり、また2θ=20.2°、23.6°にピークを有する高Liイオン伝導相を備えることから、Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料とすることができる。
ここで、非特許文献1では、酸化物を添加して作製する硫化物固体電解質材料のLiイオン伝導性が向上しないという結果が得られている。これに対して、本発明では、イオン伝導体、LiXおよびオルトオキソ酸リチウムから構成されることで、Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料を得ることができる。オルトオキソ酸リチウムを添加することで、高いLiイオン伝導性を得られる理由としては、オルトオキソ酸リチウムを添加することで、2θ=20.2°、23.6°にピークを有する高Liイオン伝導相の結晶性を高めることができるためと考えられる。これは、オルトオキソ酸リチウムを添加することで、析出結晶のイオン半径が最適となり、当該結晶が安定になり、その結果結晶性が高まるためと考えられる。
また、本発明の硫化物固体電解質材料はガラスセラミックスであるため、硫化物ガラスに比べて耐熱性が高いという利点を有する。例えばLiS−P系の硫化物ガラスにLiIをドープすることで、Liイオン伝導性をより高くできる。しかしながら、LiIをドープすると、硫化物ガラスの結晶化温度が低下する場合がある。結晶化温度が低い硫化物ガラスを、例えば電池に用いた場合、電池の温度が硫化物ガラスの結晶化温度以上に達すると、硫化物ガラスの結晶化に伴う発熱が生じるという問題がある。その結果、電池を構成する各材料の変質(劣化)が生じたり、電池ケース等の破損が生じたりするという問題がある。これに対して、本発明によれば、予め結晶化させたガラスセラミックスとすることで、結晶化に伴う発熱の悪影響を防止した硫化物固体電解質材料とすることができる。さらに、電池の冷却機構および安全機構の簡略化を図れるという利点もある。
本発明の硫化物固体電解質材料は、Li、A(AはP、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスである。本発明においては、LiXおよびオルトオキソ酸リチウムの少なくとも一部は、通常、LiX成分およびオルトオキソ酸リチウム成分としてイオン伝導体の構造中に取り込まれた状態で存在する。
本発明におけるイオン伝導体は、Li、AおよびSを有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、オルト組成を有することが好ましい。化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本発明においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。例えば、LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当し、LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−B系ではLiBSがオルト組成に該当し、LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当し、LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
また、本発明において、「オルト組成を有する」とは、厳密なオルト組成のみならず、その近傍の組成をも含むものである。具体的には、オルト組成のアニオン構造(PS 3−構造、SiS 4−構造、GeS 4−構造、AlS 3−構造、BS 3−構造)を主体とすることをいう。オルト組成のアニオン構造の割合は、イオン伝導体における全アニオン構造に対して、60mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることがさらに好ましく、90mol%以上であることが特に好ましい。なお、オルト組成のアニオン構造の割合は、ラマン分光法、NMR、XPS等により決定することができる。
本発明の硫化物固体電解質材料は、LiSと、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物と、LiXと、オルトオキソ酸リチウムとを含有する原料組成物を非晶質化し、さらに熱処理してなるものが好ましい。
原料組成物に含まれるLiSは、不純物が少ないことが好ましい。副反応を抑制することができるからである。LiSの合成方法としては、例えば特開平7−330312号公報に記載された方法等を挙げることができる。さらに、LiSは、WO2005/040039に記載された方法等を用いて精製されていることが好ましい。一方、原料組成物に含まれる上記Aの硫化物としては、例えば、P、P、SiS、GeS、Al、B等を挙げることができる。
また、上記硫化物固体電解質材料は、LiSを実質的に含有しないことが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。LiSは水と反応することで、硫化水素が発生する。例えば、原料組成物に含まれるLiSの割合が大きいと、LiSが残存しやすい。「LiSを実質的に含有しない」ことは、X線回折により確認することができる。具体的には、LiSのピーク(2θ=27.0°、31.2°、44.8°、53.1°)を有しない場合は、LiSを実質的に含有しないと判断することができる。
また、上記硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を実質的に含有しないことが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。「架橋硫黄」とは、LiSと上記Aの硫化物とが反応してなる化合物における架橋硫黄をいう。例えば、LiSおよびPが反応してなるSP−S−PS構造の架橋硫黄が該当する。このような架橋硫黄は、水と反応しやすく、硫化水素が発生しやすい。さらに、「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定により、確認することができる。例えば、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、SP−S−PS構造のピークが、通常402cm−1に表れる。そのため、このピークが検出されないことが好ましい。また、PS 3−構造のピークは、通常417cm−1に表れる。本発明においては、402cm−1における強度I402が、417cm−1における強度I417よりも小さいことが好ましい。より具体的には、強度I417に対して、強度I402は、例えば70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。また、LiS−P系以外の硫化物固体電解質材料についても、架橋硫黄を含有するユニットを特定し、そのユニットのピークを測定することにより、架橋硫黄を実質的に含有していないことを判断することができる。
また、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。LiS−Al系の硫化物固体電解質材料の場合、LiS−B系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。一方、LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.7:33.3である。LiS−GeS系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。
上記原料組成物が、LiSおよびPを含有する場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびAlを含有する場合、LiSおよびBを含有する場合も同様である。一方、上記原料組成物が、LiSおよびSiSを含有する場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、62.5mol%〜70.9mol%の範囲内であることが好ましく、63mol%〜70mol%の範囲内であることがより好ましく、64mol%〜68mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびGeSを含有する場合も同様である。
LiXにおけるXはハロゲンであり、具体的には、F、Cl、Br、Iを挙げることができ、中でもCl、Br、Iが好ましい。イオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。また、本発明の硫化物固体電解質材料におけるLiXの割合は、所望のガラスセラミックスを合成できる割合であれば特に限定されるものではないが、例えば14mol%より多く30mol%より少ないことが好ましく、15mol%以
上25mol%以下であることがより好ましい。
またオルトオキソ酸リチウムは、例えば、LiPO、LiSiO、LiGeO、LiAlO、LiBO、LiPOの少なくとも一種である。このようなオルトオキソ酸リチウムを加えることで、より安定な硫化物固体電解質材料とすることができる。また本発明においては、中でもLiPOを好適に使用することができる。硫化物固体電解質材料中のイオン伝導パスを最適化し、Liイオン伝導性をさらに向上させることができるからである。本発明の硫化物固体電解質材料におけるオルトオキソ酸リチウムの割合は、所望のガラスセラミックスを合成できる割合であれば特に限定されるものではなく、通常、0mol%より大きく、20mol%未満であり、中でも0.1mol%〜10mol%の範囲内であることが好ましく、0.4mol%〜4mol%の範囲内であることがより好ましい。
本発明の硫化物固体電解質材料は、ガラスセラミックスであることを一つの特徴とする。本発明におけるガラスセラミックスとは、硫化物ガラスを結晶化した材料をいう。ガラスセラミックスであるか否かは、例えばX線回折法により確認することができる。また、硫化物ガラスとは、原料組成物を非晶質化して合成した材料をいい、X線回折測定等において結晶としての周期性が観測されない厳密な「ガラス」のみならず、メカニカルミリング等により非晶質化して合成した材料全般を意味する。そのため、X線回折測定等において、例えば原料(LiI等)に由来するピークが観察される場合であっても、非晶質化して合成した材料であれば、硫化物ガラスに該当する。
本発明の硫化物固体電解質材料は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有する。このピークは、Liイオン伝導性が高い結晶相のピークである。なお、この結晶相を、高Liイオン伝導相と称する場合がある。ここで、2θ=20.2°のピークとは、厳密な2θ=20.2°のピークのみならず、2θ=20.2°±0.5°の範囲内にあるピークをいう。結晶の状態によって、ピークの位置が多少前後する可能性があるため、上記のように定義する。同様に、2θ=23.6°のピークとは、厳密な2θ=23.6°のピークのみならず、2θ=23.6°±0.5°の範囲内にあるピークをいう。また、高Liイオン伝導相は、2θ=20.2°、23.6°の他に、通常、2θ=29.4°、37.8°、41.1°、47.0°にピークを有する。これらのピーク位置についても、±0.5°の範囲内で前後していても良い。本発明の硫化物固体電解質材料は、高Liイオン伝導相を主体として有することが好ましく、具体的には、全結晶相における高Liイオン伝導相の割合が50mol%以上であることが好ましく、高Liイオン伝導相を単相として有することが好ましい。Liイオン伝導性が高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
また、本発明の硫化物固体電解質材料は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°、28.0°にピークを有する場合がある。このピークは、高Liイオン伝導相よりLiイオン伝導性が低い結晶相のピークである。なお、この結晶相を、低Liイオン伝導相と称する場合がある。ここで、2θ=21.0°のピークとは、厳密な2θ=21.0°のピークのみならず、2θ=21.0°±0.5°の範囲内にあるピークをいう。結晶の状態によって、ピークの位置が多少前後する可能性があるため、上記のように定義する。同様に、2θ=28.0°のピークとは、厳密な2θ=28.0°のピークのみならず、2θ=28.0°±0.5°の範囲内にあるピークをいう。また、低Liイオン伝導相は、2θ=21.0°、28.0°の他に、通常、2θ=32.0°、33.4°、38.7°、42.8°、44.2°にピークを有する。これらのピーク位置についても、±0.5°の範囲内で前後していても良い。本発明の硫化物固体電解質材料は、低Liイオン伝導相の割合が少ないことが好ましい。
また、本発明の硫化物固体電解質材料が特定のピークを有することは、X線回折測定の結果から判断することができる。例えば高Liイオン伝導相の割合が少なく、低Liイオン伝導相の割合が多い場合、2θ=20.2°、23.6°のピークが小さく現れ、2θ=21.0°、28.0°のピークが大きく現れる。ここで、2θ=21.0°のピーク強度に対する2θ=20.2°のピーク強度をI20.2/I21.0とし、2θ=21.0°のピーク強度に対する2θ=23.6°のピーク強度I23.6/I21.0とする。本発明の硫化物固体電解質材料が2θ=20.2°、23.6°のピークを有することは、I20.2/I21.0およびI23.6/I21.0が、それぞれ0.1以上(好ましくは0.2以上)であることを以って判断できる。本発明においては、I20.2/I21.0が1以上であることが好ましい。高Liイオン伝導相の割合が多い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
ここで、本発明の硫化物固体電解質材料は、上述したように、X線回折測定において特定のピークを有するものである。X線回折測定は、結晶格子によるX線の回折結果を解析することで、結晶内部の原子配列を特定する手法である。そのため、原理上、X線回折測定におけるピークのパターンは、結晶構造に依存するものの、結晶構造を構成する原子の種類には大きく依存しない。従って、イオン伝導体に含有されるA、LiXに含有されるX、およびオルトオキソ酸リチウムに含有される原子の種類によらず、同一の結晶構造が形成されていれば、同様のパターンが得られる。すなわち、イオン伝導体に含有されるA、LiXに含有されるX、およびオルトオキソ酸リチウムに含有される原子の種類によらず、高Liイオン伝導相が形成されていれば、同様のパターンが得られる。なお、このパターンの位置は、多少前後する可能性があり、この点からも、2θ=20.2°、23.6°のピークを、それぞれ±0.5°の範囲で定義することが好ましい。
本発明の硫化物固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。粒子状の硫化物固体電解質材料の平均粒径(D50)は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、常温におけるLiイオン伝導度は、例えば1×10−4S/cm以上であることが好ましく、1×10−3S/cm以上であることがより好ましい。
本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法としては、例えば、LiS、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、LiX(Xはハロゲンである)、およびオルトオキソ酸リチウムを含有する原料組成物を非晶質化して硫化物ガラスを合成し、得られた硫化物ガラスを熱処理(例えば結晶化温度以上の温度で加熱)して、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有するガラスセラミックスを合成する方法を挙げることができる。なお、上記原料組成物に含まれるLiXおよびオルトオキソ酸リチウムの割合や、熱処理温度は、所望のガラスセラミックスが得られるように調整する。
本発明の硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができ、中でも、リチウム電池に用いられるものであることが好ましい。このようなリチウム電池は、通常、正極活物質層と、負極活物質層と、電解質層とを有するものである。さらに、本発明においては、上述した正極活物質層、負極活物質層および電解質層の少なくとも一つが、本発明の硫化物固体電解質材料を含有するものであればよく、固体電解質層を有する全固体電池であってもよく、液状電解質を用いた電池であってもよい。
上記正極活物質層としては、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて固体電解質材料、導電化剤、および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。また正極活物質層に含有される固体電解質材料は、本発明の硫化物固体電解質材料であることが好ましい。正極活物質層における硫化物固体電解質材料の含有量は、例えば、0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。結着材としては、例えば、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCuPO等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有酸化物を正極活物質として用いても良い。
なお、正極活物質の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。また、正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、例えば10体積%〜99体積%の範囲内であることが好ましく、20体積%〜99体積%の範囲内であることがより好ましい。
正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
また上記負極活物質層としては、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて固体電解質材料、導電化剤、および結着材の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。また負極活物質層に含有される固体電解質材料は、本発明の硫化物固体電解質材料であることが好ましい。ここで、負極活物質層における硫化物固体電解質材料の含有量、導電化剤および結着材については、正極活物質層と同様である。
負極活物質としては、例えば、金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、例えば10体積%〜99体積%の範囲内であることが好ましく、20体積%〜99体積%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
上記電解質層としては、正極活物質層および負極活物質層の間に形成され、金属イオン(例えばリチウムイオン)の伝導を行うことができる層であれば特に限定されないが、固体電解質材料から構成される固体電解質層であることが好ましい。また固体電解質層に含まれる固体電解質材料が、本発明の硫化物固体電解質材料であることが好ましい。固体電解質層における硫化物固体電解質材料の含有量は、所望の絶縁性が得られる割合であれば特に限定されるものではなく、例えば、10体積%〜100体積%の範囲内、中でも、50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。また固体電解質層が上記硫化物固体電解質材料のみから構成されていることが特に好ましい。
また、固体電解質層は、結着材を含有していても良い。結着材を含有することにより、可撓性を有する固体電解質層を得ることができるからである。結着材としては、例えば、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。
固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも、0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の硫化物固体電解質材料を用いた電池としては、上述した正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層以外に、通常、正極活物質層の集電を行う正極集電体、負極活物質層の集電を行う負極集電体をさらに有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また電池ケースとしては、例えば、SUS製電池ケース等を用いることができる。
本発明の硫化物固体電解質材料を用いた電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
LiS(日本化学工業製)、P(アルドリッチ製)、LiI(アルドリッチ製)およびLiPOを出発原料として、LiSを0.5486g、Pを0.8845g、LiIを0.5380g、LiPOを0.029g秤量し、メノウ乳鉢で5分混合した。その混合物を遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrOボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、20時間メカニカルミリングを行った。その後、110℃で1時間乾燥することによりヘプタンを除去し、硫化物ガラスを得た。
得られた硫化物ガラス0.5gを石英管中に真空封入し、200℃で熱処理を行った。具体的には、予め200℃に保った炉内にサンプルを投入し、3時間熱処理を行い、ガラスセラミックスである硫化物固体電解質材料を得た。
[実施例2]
出発原料として、LiSを0.5298g、Pを0.8543g、LiIを0.5303g、LiPOを0.0856gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た。
[実施例3]
出発原料として、LiSを0.5116g、Pを0.8249g、LiIを0.5228g、LiPOを0.1407gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た。
[比較例1]
出発原料として、LiSを0.55816g、Pを0.9000g、LiIを0.5419gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た。
[比較例2]
出発原料として、LiSを0.3541g、Pを0.5709g、LiIを0.4583g、LiPOを0.6167gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た。
[評価]
(X線回折測定)
実施例1〜3で得られたガラスセラミックスに対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。具体的には、リガク製のXRD装置(RINT-UltimaIII)を用いて、粉末XRD測定を行った。ドーム状の冶具中に試料を設置し、Arガスの不活性雰囲気で2θ=10°〜60°の範囲で測定した。スキャンスピードは5°/min、サンプリング幅は0.02°とした。
実施例1〜3では、2θ=20.2°、23.6°、29.4°、32.7°等にピークが観察された。すなわち、実施例1〜3の硫化物固体電解質材料が、高Liイオン伝導相を有すると考えられる。
(Liイオン伝導度測定)
実施例1〜3および比較例1〜2で得られた硫化物固体電解質材料について、Liイオン伝導度測定を行った。まず、試料100mgを4ton/cmの圧力でコールドプレスすることで、φ11.29mm、厚さ約500μmのペレットを作製した。次に、ペレットを、Arガスで充填した不活性雰囲気の容器内に設置して測定を行った。測定には、東陽テクニカ社製のソーラトロン(SI1260)を用いた。また、恒温槽で測定温度を25℃に調整した。その結果を図1に示す。
図1に示されるように、実施例1〜3では、オルトオキソ酸リチウムであるLiPOを添加していない比較例1よりもLiイオン伝導度が向上することが実証された。またLiPOの割合が20mol%である比較例2では、比較例1に比べてLiイオン伝導度が低下していることが確認された。ここで、リチウム−酸素(Li−O)間では、リチウム−硫黄(Li−S)間に比べてLiの束縛が強くなるため、一般的に酸化物は硫化物よりもLiイオン伝導度が低いと考えられる。したがって、酸化物であるオルトオキソ酸リチウムの添加量が増えると、その効果も大きくなり、Liイオン伝導度が低下するためと考えられる。

Claims (1)

  1. Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有するイオン伝導体と、LiX(Xはハロゲンである)と、オルトオキソ酸リチウムとから構成されるガラスセラミックスであり、
    CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有し、
    前記オルトオキソ酸リチウムの割合が、20mol%未満であることを特徴とする硫化物固体電解質材料。
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