以下、本発明のポンプ装置を実現する形態を、図面に基づき説明する。
[実施例1]
まず、構成を説明する。実施例1のポンプ装置はブレーキ装置に適用される。ブレーキ装置は、車両(自動車)の各車輪にブレーキ液圧を付与して制動力を発生させる。ブレーキ装置は液圧ユニットを備えている。液圧ユニットは、運転者によるブレーキ操作(ブレーキペダルの操作)に応じて液圧を発生するマスタシリンダと、各車輪に設けられたホイルシリンダとの間に配置される。液圧ユニットは、ブレーキ液源(リザーバないしマスタシリンダ)からブレーキ液を供給され、ポンプ装置1を作動させることで、運転者によるブレーキ操作とは独立にホイルシリンダ液圧(ブレーキ液圧)を発生可能に設けられている。液圧ユニットは、内部にブレーキ液圧回路が形成されたハウジングと、このハウジングに一体的に取付けられた電磁弁、ポンプ装置1、モータ、及び電子制御ユニットとを有している。モータは、ポンプ装置1を駆動する駆動源である。電子制御ユニットは、ポンプ装置1(モータ)や電磁弁の作動を制御する。このような機電一体型ユニットとしてのブレーキ装置は、例えば車両のエンジンルーム内に設置され、ブラケットやインシュレータを介して車体側に取付けられる。
図1は、本実施例のポンプ装置1をその回転軸3の軸心を通る平面で切った断面を示す。ポンプ装置1は、静粛性等に優れたギヤ式のポンプ、具体的には外接歯車式のギヤポンプ(外接ギヤポンプ)である。ポンプ装置1は、ポンプ組立体としてのポンプユニットである。ポンプユニットとしてのポンプ装置1は、液圧ユニットのハウジングに取付けられる。ポンプ装置(ポンプユニット)は、ケース2と回転軸3とギヤ4とサイドプレート5と歯先シール部材6と軸受部材7と付勢部材8とシール部材(シール装置)9とを備えている。本実施例のポンプ装置1は、モータ(駆動軸3a)により1つのポンプ(一組のギヤ)を駆動する所謂シングル式である。以下、説明の便宜上、回転軸3が延びる方向にX軸を設定し、回転軸3の一端側(ケース2の第3部材23の側であってモータと反対側)に対して他端側(第1部材21の側であってモータ側)を正方向とする。
ケース2は、回転軸3やギヤ4やサイドプレート5等を内部に収容する収容部材である。ケース2は、第1部材21と第2部材22と第3部材23を有している。第1部材21は、有底円筒状のハウジング部材(フロントケース)であり、例えばアルミ系の金属材料で作られている。第1部材21の軸方向一端側(X軸負方向側)には、X軸方向に延びて第1部材21のX軸負方向側に開口する略円筒状の収容凹部210が設けられている。収容凹部210の上記開口側(X軸負方向側)の内周には、ねじ部210aが形成されている。第1部材21の軸方向他端側(X軸正方向側)には底部211が設けられている。底部211の内部には、回転軸3を収容すると共にこれを支持するための支持孔212がX軸方向に延びるように形成されている。支持孔212は、駆動軸3aの一端側(X軸正方向側)を支持するための駆動軸支持孔212aと、従動軸3bの一端側(X軸正方向側)を支持するための従動軸支持孔212bとを有している。駆動軸支持孔212aは、底部211のX軸負方向端面に開口する。底部211の内部には、駆動軸支持孔212aのX軸正方向側に連続して、駆動軸支持孔212aと略同軸上に、駆動軸支持孔212aよりも小径の孔213がX軸方向に延びるように形成されている。また、小径孔213のX軸正方向側に連続して、小径孔213と略同軸上に、駆動軸支持孔212aよりも大径のシール部材設置孔214がX軸方向に延びるように形成されている。また、シール部材設置孔214のX軸正方向側に連続して、シール部材設置孔214と略同軸上に、シール部材設置孔214よりも大径の孔215がX軸方向に延びるように形成されている。大径孔215は底部211のX軸正方向端面に開口する。従動軸支持孔212bは、底部211のX軸負方向端面に開口すると共に、X軸正方向側が閉塞した袋状に設けられている。各支持孔212のX軸方向の底部には、後述する付勢部材8の位置決め用突起部84が嵌合する凹部が設けられている。
第1部材21の外周には、環状の溝が軸周り方向に延びるように3つ形成されている。この環状溝には固定用のシール部材としてのOリング91が設置される。第1部材21は、その外周が、液圧ユニットのハウジングに設けられた嵌合孔に嵌合するように設置される。Oリング91は上記嵌合孔の内周面に当接する。上記嵌合孔の内周面と第1部材21の外周面との間で、2つのOリング91に挟まれる領域には吸入ポートが形成され、他の2つのOリング91に挟まれる領域には吐出ポートが形成される。第1部材21の内部にはポンプ装置1の吸入通路の一部が形成されており、第1部材21の外周において2つのOリング91に挟まれる領域(吸入ポート)に開口する。吸入通路は、ケース2の内部で図外の低圧室(吸入室)に接続している。また、第1部材21の内部にはポンプ装置1の吐出通路の一部が形成されており、第1部材21の外周において他の2つのOリング91に挟まれる領域(吐出ポート)に開口する。吐出通路は、ケース2の内部で高圧室(吐出室)20に接続している。
第2部材22は、段付きの有底円筒状のカバー部材(リアケース)であり、例えばアルミ系の金属材料で作られている。第2部材22の軸方向一端側(X軸正方向側)には、X軸方向に延びて第2部材22のX軸正方向側に開口する略円筒状の収容凹部220が設けられている。収容凹部220は、周壁221の内周側に形成されている。第2部材22の軸方向他端側(X軸負方向側)には底部222が設けられている。底部222の外径寸法は周壁221よりも小さく設けられており、底部222と周壁221との間には段差部223が形成されている。底部222の内部には、回転軸3を収容すると共にこれを支持するための支持孔224がX軸方向に延びるように形成されている。支持孔224は、駆動軸3aの他端側(X軸負方向側)を支持するための駆動軸支持孔224aと、従動軸3bの他端側(X軸負方向側)を支持するための従動軸支持孔224bとを有している各支持孔224は、底部222のX軸正方向端面に開口すると共に、X軸負方向側が閉塞した袋状に設けられている。周壁221の外周には、環状の溝が軸周り方向に延びるように形成されている。この環状溝には固定用のシール部材としてのOリング92が設置される。第2部材22は、その収容凹部220の開口部が第1部材21の底部211に対向しつつ、周壁221の外周が第1部材21の収容凹部210に嵌合し、収容凹部220の内周側と第1部材21の底部211との間に1つの空間が形成されるように、設置される。Oリング92は収容凹部210の内周面に当接する。
第3部材23は、筒状のプラグ部材である。第3部材23の一端側(X軸正方向側)の外周には、ねじ部231が形成されている。第3部材23の他端側(X軸負方向側)の外周には、ボルト頭部232が形成されている。第3部材22は、その内周が第2部材22の底部222の外周に嵌合するように設置される。この状態で、ボルト頭部232を用いて第3部材23を回転させることで、第3部材22のねじ部231が第1部材21の収容凹部210のねじ部210aに螺合する。これにより、第2部材22及び第3部材23が第1部材21に対して締結固定される。第3部材23のX軸正方向端は、第2部材22の段差部223に当接し、これをX軸正方向側に押圧する。第3部材23は、螺合による締結力により、収容凹部210に収容された第2部材22(周壁221)のX軸正方向端を第1部材21の底部211のX軸負方向端面に押し付ける。これにより、シール部材92が収容凹部210の内周面に当接していることと相俟って、第2部材22の収容凹部220の内周側の空間(後述する高圧室20)が、第1部材21と第2部材22との間の隙間を通って外部と連通することが抑制される。
回転軸3は、駆動軸3aと従動軸3bを有している。駆動軸3aは、ギヤ設置部30aと被支持部31a,32aとシール部34と接続部35とを、略同軸上に有している。ギヤ設置部30aにはピン挿入孔300aが形成されている。被支持部31a,32aは、ギヤ設置部30aの軸方向両側に連続して形成されており、ギヤ設置部30aと略同径に設けられている。シール部34は、一方(X軸正方向側)の被支持部31aのX軸正方向側に連続して形成されており、被支持部31aよりも若干小径に設けられている。シール部34と被支持部31aとの間には段差部33が設けられている。接続部35は、シール部34のX軸正方向側に連続して形成されており、シール部34よりも若干小径に設けられている。従動軸3bは、駆動軸3aと同様のギヤ設置部30bと被支持部31b,32bを有している。
ギヤ4は、金属材料で形成されており、駆動軸3aと一体的に回転する駆動ギヤ4aと、従動軸3bと一体的に回転する従動ギヤ4bとを有している。駆動ギヤ4aは外歯車であり、ピンを介して駆動軸3aのギヤ設置部30aに連結(回り止め)されている。従動ギヤ4bは外歯車であり、ピンを介して従動軸3bのギヤ設置部30bに連結(回り止め)されている。各ギヤ4の内周側には、回転軸3のギヤ設置部30が貫通して設置される軸方向孔が形成されている。各ギヤ4には、上記軸方向孔に連続して径方向に延びると共に各ギヤ4の少なくとも軸方向一方側に開口する径方向孔が形成されている。この径方向孔には、回転軸3のギヤ設置部30に径方向に突出するように固定されたピンが係合する。従動ギヤ4bは、駆動ギヤ4aに歯合する(両ギヤ4a,4bは互いに噛合う)ように配置される。回転軸3のギヤ設置部30(及びギヤ4)が第2部材22の収容凹部220の内部に位置し、回転軸3のX軸負方向側の被支持部32が第2部材22の支持孔224の内部に位置し、回転軸3のX軸正方向側の被支持部31が第1部材21の支持孔212の内部に位置するように、設置される。また、駆動軸3aのシール部34が第1部材21の駆動軸支持孔212aのX軸正方向端部、小径孔213、及びシール部材設置孔214の内部に位置し、駆動軸3aの接続部35が第1部材21の大径孔215の内部に位置するように、設置される。
サイドプレート5及び歯先シール部材6(シールブロック)は、樹脂材料で形成されており、ギヤ4の周囲に配置され、図外の低圧室と高圧室20とを液密に画成する。なお、これらを(ギヤ4よりも硬度が低い)金属材料で形成してもよい。サイドプレート5は、その一側面が各ギヤ4の軸方向端面(X軸方向側面)に隣接して設けられる側板部材である。サイドプレート5は、その一側面の一部が各ギヤ4の軸方向端面の所定領域に僅かな隙間を介して対向するように配置されることで、各ギヤ4とサイドプレート5との間の隙間から作動液が漏れることを抑制する(シールする)。サイドプレート5は、各ギヤ4のX軸正方向側に配置されて各ギヤ4のX軸正方向端面をシールする第1サイドプレート51と、各ギヤ4のX軸負方向側に配置されて各ギヤ4のX軸負方向端面をシールする第2サイドプレート52とを有している。各サイドプレート5には、回転軸3(のギヤ設置部30や被支持部31a,32a)が設置される孔が軸方向に貫通形成されている。各サイドプレート5におけるギヤ4と対向する面とは反対側の面の外周には、環状の溝が軸周り方向に延びるように形成されている。この環状溝には、固定用のシール部材としてのOリング93が設置される。
第1サイドプレート51のX軸正方向側の面は第1部材21(収容凹部210)の底部211のX軸負方向端面に対向している。これにより、第1サイドプレート51のX軸正方向側への移動が規制される。第1サイドプレート51のX軸正方向側の面の外周に設置されたOリング93は第1部材21(収容凹部210)の底部211のX軸負方向端面に当接する。第1サイドプレート51のX軸負方向側の面には、各ギヤ4のX軸正方向側の端面に僅かな隙間を介して対向する突出部が形成されている。第2サイドプレート52のX軸正方向側の面には、各ギヤ4のX軸負方向側の端面に僅かな隙間を介して対向する突出部が形成されている。第2サイドプレート52のX軸負方向側の面は第2部材22(収容凹部220)の底部222のX軸正方向端面に対向している。これにより、第2サイドプレート52のX軸負方向側への移動が規制される。第2サイドプレート52のX軸負方向側の面の外周に設置されたOリング93は第2部材22の底部222のX軸正方向端面に当接する。ギヤ4及びサイドプレート5は、第1部材21の底部211と第2部材22の底部222との間に挟み込まれることで、ケース2に対してX軸方向に位置決めされると共に、X軸方向の移動が規制される。
歯先シール部材6は、その一部が各ギヤ4の歯先にそれぞれ僅かな隙間を介して対向するように配置されることで、各ギヤ4の歯先と歯先シール部材6との間の隙間から作動液が漏れることを抑制する(シールする)。歯先シール部材6は、各サイドプレート5の一部と径方向で対向して当該一部と液密に当接する当接部と、各ギヤ4の所定の回転角度域の歯先と僅かな隙間を介して径方向で対向するシール面60とを備えている。歯先シール部材6は、各サイドプレート5と液密に当接しつつ、各ギヤ4の歯先を部分的に(すなわち各ギヤ4の回転方向である軸周り方向における所定領域の歯先を)シールすることで、第2部材22の収容凹部220の内周側に低圧室と高圧室20を液密に画成する。歯先シール部材6のシール面60は、駆動ギヤ4a(駆動軸3a)の中心軸から見て所定の径方向であって所定の角度範囲、及び、従動ギヤ4b(従動軸3b)の中心軸から見て所定の径方向であって所定の角度範囲に設けられている。例えば、各ギヤ4の噛合い部よりも回転方向側であって、歯先シール部材6とサイドプレート5と各ギヤ4の歯先との間でシールされる領域内に、低圧室が画成される。収容凹部220の内周側と第1部材21の底部211との間の空間内であって、上記低圧室以外の領域(歯先シール部材6及び各ギヤ4の外周側)に、高圧室20が画成される。なお、サイドプレート5と第1,第2部材の底部211,222等との間の隙間を介して高圧室20が第1,第2部材の支持孔212,224と連通することは、Oリング93により抑制される。なお、歯先シール部材6をサイドプレート5(サイドプレート51,52のいずれか一方)と一体に(1つの部材として)設けてもよいし、別部材として設けてもよい。
軸受部材7は、回転軸3を回転自在に支持する軸受であり、保持器に複数のころ70(図12参照)が保持されたニードルベアリングである。軸受部材7は、第1軸受部材71と第2軸受部材72を有している。第1軸受部材71は、第1サイドプレート51のX軸正方向側に隣接して、第1部材21の支持孔212のX軸負方向側に固定設置され、各回転軸3のX軸正方向側の被支持部31(のX軸負方向側)を回転自在に支持する。第2軸受部材72は、第2サイドプレート52のX軸負方向側に隣接して、第2部材22の支持孔224のX軸正方向側に固定設置され、各回転軸3のX軸負方向側の被支持部32(のX軸正方向側)を回転自在に支持する。
付勢部材8は、回転軸3をその径方向に、歯先シール部材6のシール面60(シール面60におけるギヤ4の回転方向での略中央)に向けて付勢する。付勢部材8は、第1付勢部材81と第2付勢部材82を有している。第1付勢部材81は、第1軸受部材71のX軸正方向側に隣接して、第1部材21の支持孔212の底部側(X軸正方向側)に設置され、各回転軸3のX軸正方向側の被支持部31(のX軸正方向側)を付勢する。第2付勢部材82は、第2軸受部材72のX軸負方向側に隣接して、第2部材22の支持孔224の底部側(X軸負方向側)に設置され、各回転軸3のX軸負方向側の被支持部32(のX軸負方向側)を付勢する。付勢部材8の詳細については後述する。第1部材21のシール部材設置孔214には、回転用のシール部材としてのオイルシール90が固定設置されている。オイルシール90の内周側のリップ部は、駆動軸3aのシール部34(のX軸正方向側)の外周に摺接する。オイルシール90は、駆動軸3aの外周に沿ってケース2の内部(駆動軸支持孔212a等)から外部へ作動液が漏洩することを抑制する。駆動軸3aの接続部35は、カラー部材3cを介してモータの回転軸(出力軸)の端部と連結する。カラー部材3cは、接続部35を覆う筒状に設けられており、接続部35は、カラー部材3cのX軸負方向側の凹部に挿入固定される。モータの回転軸の略四角柱状の端部は、カラー部材3cのX軸正方向側の略四角柱状の凹部に嵌合することで、カラー部材3cに回り止め係合する。
以上のように、回転軸3は、ケース2(第1,第2部材21,22)の底部211,222等に形成された支持孔212,224内に軸受部材7によって回転自在に支持されている。駆動軸3aの側についてみると、第1部材21の駆動軸支持孔212a及び第2部材22の駆動軸支持孔224aは互いに略同軸となるように配置され、駆動軸3aはこれらの孔内に収容設置される。駆動軸3aは、X軸正方向側の軸方向一端部(被支持部31a)において、第1軸受部材71aにより第1部材21に対して回転自在に支持されると共に、X軸負方向側の軸方向他端部(被支持部32a)において、第2軸受72aにより第2部材22に対して回転自在に支持される。組付けを容易化するため、被支持部31a(の外周面)と第1軸受部材71a(の内周面。具体的には、ころ70の内接円IC)との間には若干の隙間が設けられ、被支持部32aと第2軸受部材72aとの間にも若干の隙間が設けられている。従動軸3bの側についても同様であり、従動軸3bは、略同軸となるように配置された支持孔212b,224b内に収容設置され、その被支持部31bが第1軸受部材71bにより支持されると共に、被支持部32bが第2軸受72bにより支持される。組付け容易化のため、被支持部31bと第1軸受部材71bとの間、及び被支持部32bと第2軸受72bとの間には、それぞれ若干の隙間が設けられている。
駆動軸3aはモータにより回転駆動される。このとき、駆動軸3aに噛合う従動軸3bも回転する。ギヤ4、サイドプレート5、及び歯先シール部材6は、第2部材22の収容孔220の内周側に設置されており、これらはポンプ部を構成する。ポンプ部は、モータにより回転駆動されて吸入通路を介してブレーキ液を吸入し、吐出通路を介してホイルシリンダに向けてブレーキ液を吐出する。ブレーキ液(作動液)が吸入される部位が低圧部であり、ブレーキ液(作動液)が吐出される部位が高圧部20となる。本実施例では、ポンプ作動時、低圧部と高圧部20との圧力差により、各ギヤ4の歯先が歯先シール部材6のそれぞれ対応するシール面60に押し付けられるように設けている。これにより、各ギヤ4の歯先のシール性を向上し、低圧室と高圧室20との間の液密性を確保している。
次に、付勢部材8の構成について説明する。付勢部材8は樹脂材料により形成されている。付勢部材8は、第1部材21の支持孔212に設置される第1付勢部材81と、第2部材22の支持孔224に設置される第2付勢部材82とを有している。付勢部材8は、円板部83と位置決め用突起部84と半円筒部85と腕部87とストッパ用突起部88とを有している。これらは樹脂材料により例えば一体に型成形される。以下、説明の便宜上、直交座標系を設ける。付勢部材8(円板部83)の中心軸Oが延びる方向(軸方向)にx軸を設け、付勢部材8(円板部83)の径方向にy軸とz軸を設ける。円板部83を挟んで、位置決め用突起部84に対して半円筒部85等の側をx軸正方向側とする。中心軸Oを挟んで、半円筒部85に対してストッパ部88の側をz軸正方向側とする。x軸正方向側から見て、z軸正方向側を上側としたとき、z軸を挟んで右側をy軸正方向側とする。付勢部材8は、中心軸Oを挟み、z軸に関して(y軸方向で)略対称に設けられている。
図2〜図6は、第1部材21の駆動軸支持孔212aに設置される第1付勢部材81aを各方向から示す。図2は、第1付勢部材81aをx軸正方向側かつ僅かにy軸負方向側かつz軸正方向側から見た斜視図である。図3は、第1付勢部材81aをx軸負方向側かつ僅かにy軸正方向側かつz軸正方向側から見た斜視図である。図4は、第1付勢部材81aをx軸正方向側から見た正面図である。図5は、第1付勢部材81aをy軸正方向側から見た側面図である。図6は、第1付勢部材81aをx軸負方向側から見た背面図である。
円板部83は、略円盤状の板の中央(中心軸O上)に貫通孔830を設けたリング状の板部分である。円板部83の外径寸法は、駆動軸支持孔212aの内径寸法よりも若干小さく設けられている。貫通孔830の内径寸法は、駆動軸3aのシール部34の外径寸法よりも若干大きく、かつ被支持部31aの外径寸法よりも若干小さく設けられている。円板部83のx軸方向寸法(厚み)は、ポンプ装置1の組付け時の初期状態において駆動軸3aの段差部33(被支持部31aのx軸正方向端面)と駆動軸支持孔212aのx軸正方向端面との間に存在する隙間(x軸方向距離)よりも若干小さく設けられている。円板部83のx軸負方向端面の外周には、x軸負方向側からx軸正方向側へ向かうにつれて徐々に拡径するようなテーパが設けられている。位置決め用突起部84は、円板部83のz軸正方向側とz軸負方向側の2箇所に設けられており、円板部83のx軸負方向側面からx軸負方向側に略円柱状に突出する。位置決め用突起部84のx軸負方向端面の外周には、x軸負方向側からx軸正方向側へ向かうにつれて徐々に拡径するようなテーパが設けられている。
半円筒部85は、円板部83のx軸正方向側面からx軸正方向側に略半円筒状に突出するように、円板部83のz軸負方向側の半分に設けられている。x軸方向から見て、半円筒部85(の内周及び外周)は、円板部83(の外周)に対して、中心軸Oを中心とする略同心円上に設けられている。径方向(x軸方向から見て中心軸Oを通る直線方向)において半円筒部85の寸法は円板部83の寸法よりも小さく設けられている。半円筒部85の外径寸法は、円板部83の外径寸法と略同じに設けられている(半円筒部85の外周と円板部83の外周は略一致する)。半円筒部85の内径寸法は、貫通孔830の内径寸法よりも大きく、(駆動軸3aの被支持部31aの外径寸法よりも若干大きく、)かつ、第1軸受部材71aのころ70の内接円ICの直径よりも若干大きく設けられている。腕部87は、半円筒部85のx軸正方向側であってy軸方向両側のz軸正方向端からz軸正方向側に延びるように2つ設けられている。半円筒部85は、腕部87と円板部83との間に介在し、これらを接続する。腕部87のx軸正方向側面は、半円筒部85のx軸正方向側面と同一の平面をなしている。腕部87のx軸負方向側面と円板部83のx軸正方向側面との間には若干の隙間が設けられている。言換えると、腕部87は、円板部83を底部とする有底円筒状部材の円筒部から上記隙間を抉り取った後に残る部分である。図5に示すように、上記隙間のx軸方向寸法は腕部87のx軸方向寸法よりも小さく設けられている。
各腕部87は、本体部87aと係止部87bを有している。本体部87aは、半円筒部85から延びており、その径方向寸法がz軸負方向側からz軸正方向側に向うにつれて徐々に小さくなるように設けられている。x軸方向から見て、本体部87aの内周は、半円筒部85の内周と同様、円板部83(の外周)に対して、中心軸Oを中心とする略同心円上に設けられている。本体部87aの内径寸法は、半円筒部85の内径寸法と略同じに設けられている。x軸方向から見て、本体部87aの外周は、円板部83(の外周)よりも曲率が大きく、z軸正方向側に向かうにつれて徐々に中心軸Oの側に近づく曲面状に設けられている。本体部87aの外径寸法は、円板部83の外径寸法よりも若干小さく設けられている。係止部87bは、本体部87aのz軸正方向端に接続されている。係止部87bの内径側は、x軸方向から見て半円筒部85及び本体部87aの内周を延長することで描かれる仮想的な円よりも内径側(中心軸Oに向う側)に突出する曲面状に設けられている。図7は、図4のA-A視断面を示す。図7に示すように、係止部87bのx軸正方向端の内径側には、x軸正方向側からx軸負方向側へ向かうにつれて徐々に拡径するようなテーパが設けられている。第1付勢部材81aに入力される負荷が略ゼロの状態(以下、無負荷状態という。)で、y軸方向両側の係止部87bの内径側における最突出部(中心軸Oに最も近い部位)が中心軸Oに対してなす角度は、180度よりも小さく、好ましくは90度の近傍である。本実施例では90度よりも若干小さく設けられている。無負荷状態で、中心軸Oから上記最突出部までの距離は、駆動軸3a(被支持部31a)が駆動軸支持孔212aの中心軸上に位置しているときの当該中心軸から被支持部31aの外周面までの距離(すなわち被支持部31aの半径)よりも、若干小さく設けられている。係止部87bの外径側は、x軸方向から見て本体部87aの外周を延長することで描かれる仮想的な曲線よりも内径側(中心軸Oに向う側)に凹む曲面状に設けられている。
ストッパ用突起部88は、円板部83のz軸正方向側に、中心軸Oの周り方向で両腕部87の略中間位置に設けられており、円板部83のx軸正方向側面からx軸正方向側に略四角柱状に突出する。ストッパ用突起部88のx軸正方向側面は、半円筒部85及び腕部87のx軸正方向側面と略同一の平面上にある。ストッパ用突起部88の外径部分は曲面状に形成されており、その外周と円板部83の外周はx軸方向から見て略一致する。ストッパ用突起部88の内径部分は中心軸Oに対向する平面状である。径方向(x軸方向から見て中心軸Oを通る直線方向)における、貫通孔830の内周面からストッパ用突起部88の内径部分までの距離は、貫通孔830の内周面から半円筒部85及び腕部87の本体部87aの内周面までの距離よりも大きく設けられている。また、径方向における、ストッパ用突起部88の寸法、及び係止部87bの外周と円板部83の外周との間の隙間の寸法は、好ましくは、駆動軸3aの被支持部31aが第1付勢部材81aに対してz軸正方向に移動し、被支持部31aの外周がストッパ用突起部88に当接したときに、同時に被支持部31aに押圧されて外径方向に変形した係止部87bの外周が円板部83の外周からはみ出さないように設定されている。
第1付勢部材81aは、駆動軸支持孔212aにX軸負方向側から挿入される。なお、(駆動軸支持孔212aのX軸負方向側の開口部に対向する)円板部83のx軸負方向端面に設けたテーパにより上記挿入が円滑に行われる。第1付勢部材81aは、円板部83のx軸負方向側の面が駆動軸支持孔212aのX軸正方向側の底部に対向し、この底部に設けられた凹部に各位置決め用突起部84が嵌合するように、駆動軸支持孔212aに設置される。なお、位置決め用突起部84のx軸負方向端面に設けたテーパにより上記嵌合が円滑に行われるため、組付け性を向上することができる。上記設置により、第1部材21に対する第1付勢部材81aのX軸正方向側の移動が規制されると共に、第1部材21に対する第1付勢部材81aの回転が規制される。すなわち、位置決め用突起部84が上記凹部に嵌合することで、第1付勢部材81aが回り止めされる。このように組付けられた状態で、X軸方向から見て、第1付勢部材81aの各腕部87の係止部87bは、第1付勢部材81aの中心軸O(駆動軸支持孔212aの中心軸)を挟んで、歯先シール部材6の駆動ギヤ4a側のシール面60aの反対側に位置するように設けられている。具体的には、各腕部87の係止部87bの間の略中間位置と、歯先シール部材6の駆動ギヤ4a側のシール面60aにおけるギヤ4の回転方向での略中央位置とを結ぶ直線から、第1付勢部材81aの中心軸O(駆動軸支持孔212aの中心軸)までの距離ができるだけ小さくなる(より好ましくは上記直線上に中心軸Oが位置する)ように配置されている。また、組付けられた状態で、第1付勢部材81a(円板部83)のx軸正方向側(X軸負方向側)の面は、駆動軸3a(被支持部31aとシール部34との間)の段差部33のX軸正方向側の面に対向する。段差部33が第1付勢部材81aの貫通孔830の外径側(円板部83のx軸正方向側面)に当接することにより、第1付勢部材81a(すなわち第1部材21)に対する駆動軸3aのX軸正方向側の移動が規制される。
図8〜図11は、第2部材22の駆動軸支持孔224aに設置される第2付勢部材82aを各方向から示す。図8は図2と同様の斜視図、図9は図3と同様の斜視図、図10は図4と同様の正面図、図11は図6と同様の背面図である。第2付勢部材82aの構成は、貫通孔830を有しない点を除き、第1付勢部材81aと同様である。第2付勢部材82aは、そのx軸負方向側の面が駆動軸支持孔224aのX軸正方向側の底部に対向し、この底部に設けられた凹部に各位置決め用突起部84が嵌合するように、駆動軸支持孔224aに設置される。この設置により、第2部材22に対する第2付勢部材82aのX軸負方向側の移動が規制されると共に、第2部材22に対する第2付勢部材82aの回転が規制される。このように組付けられた状態で、X軸方向から見て、第2付勢部材82aの各腕部87の係止部87bは、第1付勢部材81aと同様、中心軸O(駆動軸支持孔224aの中心軸)を挟んで、歯先シール部材6の駆動ギヤ4a側のシール面60aの反対側に位置するように設けられている。また、第2付勢部材82a(円板部83)のx軸正方向側(X軸正方向側)の面は、駆動軸3a(被支持部32a)のX軸負方向側の面に対向する。被支持部32aが第2付勢部材82a(円板部83のx軸正方向側面)に当接することにより、第2付勢部材82a(すなわち第2部材22)に対する駆動軸3aのX軸負方向側の移動が規制される。
第1部材21の従動軸支持孔212bに設置される第1付勢部材81b、及び、第2部材22の従動軸支持孔224bに設置される第2付勢部材82bの構成は、第2付勢部材82aと同様であるため、説明を省略する。第1付勢部材81bは、そのx軸負方向側の面が従動軸支持孔212bのX軸正方向側の底部に対向して設置されることで、第1部材21に対するX軸正方向側の移動が規制される。また、第1付勢部材81aと同様にして、第1部材21に対する回転が規制される。組付けられた状態で、X軸方向から見て、第1付勢部材81bの各腕部87の係止部87bは、中心軸O(従動軸支持孔212bの中心軸)を挟んで、歯先シール部材6の従動ギヤ4b側のシール面60bの反対側に位置するように設けられている。具体的には、各腕部87の係止部87bの間の略中間位置と、歯先シール部材6の従動ギヤ4b側のシール面60bにおけるギヤ4の回転方向での略中央位置とを結ぶ直線から、第1付勢部材81bの中心軸O(従動軸支持孔212bの中心軸)までの距離ができるだけ小さくなる(より好ましくは上記直線上に中心軸Oが位置する)ように配置されている。また、第1付勢部材81b(円板部83)のx軸正方向側(X軸負方向側)の面は、従動軸3b(被支持部31b)のX軸正方向側の面に対向する。被支持部31bが第1付勢部材81b(円板部83のx軸正方向側面)に当接することにより、第1付勢部材81b(すなわち第1部材21)に対する従動軸3bのX軸正方向側の移動が規制される。第2付勢部材82bは、第2付勢部材82aが駆動軸支持孔224aに設置されるのと同様にして、従動軸支持孔224bに設置される。組付けられた状態で、X軸方向から見て、第2付勢部材82bの各腕部87の係止部87bは、第1付勢部材81bと同様、中心軸O(従動軸支持孔224bの中心軸)を挟んで、歯先シール部材6の従動ギヤ4b側のシール面60bの反対側に位置するように設けられている。また、第2付勢部材82b(円板部83)のx軸正方向側(X軸正方向側)の面は、従動軸3b(被支持部32b)のX軸負方向側の面に対向する。被支持部32bが第2付勢部材82b(円板部83のx軸正方向側面)に当接することにより、第2付勢部材82b(すなわち第2部材22)に対する従動軸3bのX軸負方向側の移動が規制される。
(作用)
次に、作用を説明する。図12は、ケース2の第1部材21の駆動軸支持孔212aに組み込んだ状態の第1付勢部材81aと第1軸受部材71aをx軸正方向側(X軸負方向側)かつz軸負方向側から見た斜視図である。図13は、上記状態の第1付勢部材81aと第1軸受部材71aをx軸正方向側(X軸負方向側)から見た正面図を模式的に示す。第1軸受部材71aのころ70の内接円ICを実線で示す。図13に示すように、駆動軸支持孔212aに固定設置された第1付勢部材81aの中心軸Oは、同じく駆動軸支持孔212aに固定設置された第1軸受部材71aの中心軸(内接円ICの中心)と略一致している。無負荷状態で、第1付勢部材81aの係止部87bの内径側(中心軸Oに向う側)は、内接円ICよりも内径側に突出している。
図14は、図13の状態で駆動軸支持孔212aに駆動軸3aの被支持部31aをx軸正方向側(X軸負方向側)から挿入したときの各部材の位置を模式的に示す、図13と同様の正面図である。歯先シール部材6の駆動ギヤ4a側のシール面60aを併せて示す。図14の矢印に示すように、第1付勢部材81aの内径側への被支持部31aの挿入により、第1付勢部材81aの両腕部87は、円板部83や半円筒部85に対して弾性変形し、腕部87と半円筒部85との接続部付近を支点としてy軸方向両側に開く。なお、各係止部87bのx軸正方向端の内径側に設けたテーパにより、上記挿入が円滑に行われるので、組付け性を向上することができる。ここで、被支持部31a(の外周面)と内接円ICとの間には若干の隙間が設けられている。また、各腕部87は、弾性変形により反力を発生する。この反力は、被支持部31aに対し、両係止部87bを介してz軸負方向側に作用する。よって、被支持部31aは、内接円ICに対してz軸負方向側に偏心し、z軸正方向側では腕部87の両係止部87bと当接し、z軸負方向側では内接円IC(ころ70)と当接して、回転自在に3点で支持される。この状態で、被支持部31aは、ケース2(第1部材21)に対して最もz軸負方向側すなわちシール面60a(におけるギヤ4の回転方向での略中央位置)の側に偏心している。よって、上記状態で更に駆動軸3a(ギヤ設置部30a)に駆動ギヤ4aを組み込もうとすると、図14の二点鎖線で囲んだ部分で示すように、その歯先がシール面60aに干渉することとなる。
図15は、図14の状態の駆動軸3aに駆動ギヤ4aを設置した(ポンプ装置1の各部材を組立ててアセンブリ化した)ときの各部材の位置を模式的に示す、図14と同様の正面図である。上記干渉を解消するため、駆動軸3a(被支持部31a)を図15の大きな矢印で示すようにz軸正方向側に移動させ、図15の二点鎖線で囲んだ部分で示すように駆動ギヤ4aの歯先をシール面60aに当接させることで、駆動ギヤ4aを組付ける。このように被支持部31aをz軸正方向側に移動させる際、図15の小さな矢印で示すように、第1付勢部材81aの両腕部87が更にy軸方向両側に開き、図14の状態よりも両腕部87の弾性変形量が大きくなる。なお、本実施例では、被支持部31aがz軸正方向側に所定量だけ移動すると、被支持部31aの外周がストッパ用突起部88に当接するよう設けている。これにより、両腕部87の弾性変形量が過大となって第1付勢部材81aの耐久性が低下することを抑制している。
図16は、図15の状態からポンプ装置1を作動させて駆動ギヤ4aを回転し、駆動ギヤ4aの歯先により歯先シール部材6(シール面60a)を適当な量αだけ削った(すなわち当り付けした)状態の各部材の位置を模式的に示す、図14と同様の正面図である。当り付けによりシール面60aがz軸負方向側に後退するように削られる。このとき、弾性変形している第1付勢部材81aの両腕部87の反力により、被支持部31aは、図16の大きな矢印で示すように、上記削られた分だけz軸負方向側すなわちシール面60aの側に移動する。シール面60aは、被支持部31aが内接円ICに対してz軸負方向側に最大変位するまで、すなわち被支持部31aがz軸負方向側で内接円IC(ころ70)と当接するまで、削られる。図16に示すように、シール面60aが量αだけ削られ、被支持部31aがz軸負方向側に最大変位すると、当り付けが終了する。この状態で、被支持部31aは、図14の状態と同様、両腕部87から反力を受けつつ、z軸正方向側では腕部87の両係止部87bと当接し、z軸負方向側では内接円IC(ころ70)と当接して、回転自在に3点で支持される。このように、第1付勢部材81aは、当り付け時には駆動軸3a(被支持部31a)の付勢手段として機能すると共に、当り付け後は駆動軸3a(被支持部31a)を駆動軸支持孔212aに対して偏心した状態に保持する偏心カラー部材として機能する。以上、駆動軸3a及び第1部材21の側の第1付勢部材81aについて説明したが、第2部材22の側の第2付勢部材82a、及び従動軸3bの側の第1付勢部材81b、第2付勢部材82bについても同様である。
よって、ポンプ装置1の組付け性を向上しつつ、ポンプ性能を向上することができる。すなわち、第1,第2部材21,22は回転軸3を回転自在に支持する支持孔212,224をそれぞれ有することから、ポンプ装置1の組付けに際しては、これらの第1,第2部材21,22を位置決めして組付ける。ここで、支持孔212,224にそれぞれ設置される第1,第2軸受部材71,72と回転軸3との間の隙間(クリアランス)を若干大きくしている。よって、第1,第2部材21,22同士その他の部品の組付け精度を緩和し、これによりポンプ装置1の組付けを容易化することができる。また、部品の製造精度を緩和することが可能になるため、ポンプ装置1の生産性を向上することができる。
しかし、上記隙間を大きくした場合、ポンプ性能が低下するおそれがある。第1に、ポンプ装置1の昇圧応答性が不足し、スムーズな昇圧を実現できないおそれがある。すなわち、本実施例では、ポンプ作動時、低圧部と高圧部20との圧力差により、各ギヤ4の歯先が歯先シール部材6のそれぞれ対応するシール面60に押し付けられるように設けている。しかし、ポンプ作動開始直後等の吐出圧(高圧部20の圧力)が低い状態では、上記圧力差が不足し、例えば駆動ギヤ4aの歯先とシール面60aとの間のシール性が不充分となる。よって、吐出圧が上昇するまでに時間がかかり、吐出圧をゼロから急速に立ち上げたい等の要求に十分応えることができないおそれがある。第2に、上記隙間内で回転軸3が振れ回り(がたつきが生じ)、これによりポンプ装置1の吐出圧の波形が乱れるおそれがある。これに対し、本実施例では、付勢部材8を設けたことにより、上記圧力差の有無やその大小に関わらず、回転軸3を歯先シール部材6のシール面60に向けて常に付勢することができる。よって、上記シール性を向上し、昇圧応答性を向上することができる。特に、粘度の低い作動液(ブレーキ液)に対して有効である。本実施例では、ポンプ装置1が自動車のブレーキ装置に適用されているため、結果的にブレーキ性能を向上することが可能である。例えば、VDC(車両挙動制御)の作動時にポンプ装置1の昇圧応答性を向上することで、車両挙動をより安定化することが可能である。また、回転軸3の振れ回りを抑制し、吐出圧を安定化することができる。したがって、ポンプ装置1の組付け性を向上しつつ、ポンプ性能を向上することができる。なお、付勢部材8の付勢力は、上記シール性を確保するために上記圧力差が十分な大きさとなるまでの間(ポンプ駆動初期)だけ、この付勢力により上記シール性をある程度向上できる大きさに制限することが好ましい。それ以上の大きさの付勢力はポンプ装置1のフリクションの増加につながるからである。
付勢部材8(特に円板部83)は樹脂材料により形成されているため、金属材料等により形成されている場合に比べ、ある程度柔らかい。よって、ケース2の支持孔212,224への付勢部材8の挿入性が良好であるため、ポンプ装置1の組付け性をより向上できる。
ここで、仮に、軸受部材7と駆動ギヤ4(具体的にはサイドプレート5)との間に付勢部材8が配置されていると、軸受部材7から駆動ギヤ4までの距離が比較的大きくなる。すなわち、回転軸3の支持点(軸受部材7)から回転軸3への力の作用点(ギヤ4)までの距離が長くなる。よって、ギヤ4から回転軸3へ入力される同じ荷重に対し、回転軸3の撓み量が増加する。したがって、ギヤ4の歯面同士が片当りして摩耗量が増加したり、ギヤ4の歯面や歯先シール部材6のシール面60により形成されるポンプ室のシール性が悪化してポンプの容積効率が低下したりするおそれがある。例えば、回転軸3の撓み量が増加すると、当り付け時における歯先シール部材6の削れ量が比較的(撓み量の増加分だけ)多くなる。これにより、当り付け後の歯先隙間が増加して、結果的にポンプの容積効率が低下するおそれがある。これに対し、本実施例では、ギヤ4(具体的には、サイドプレート5のギヤ4に隣接する面とは反対側の面)と付勢部材8との間に軸受部材7を配置した。よって、軸受部材7からギヤ4までの距離を短縮できるため、回転軸3の撓みを抑制し、これにより上記問題を解消できる。例えば容積効率の低下を抑制することができる。言換えると、回転軸3の撓み量を減少させるため、軸受部材7をできるだけギヤ4(サイドプレート5のギヤ4に対向する面とは反対側の面)に近づけて配置すると共に、この軸受部材7を挟んでギヤ4(サイドプレート5)の反対側に付勢部材8を配置している。なお、ギヤ4の少なくとも一方の側面に近接して軸受部材7が配置されていればよく、これにより回転軸3の撓み量をある程度減少させることができる。本実施例では、ギヤ4の両側面に軸受部材71,72が近接して配置されているため、回転軸3の撓み量をより効果的に減少させることができる。また、ギヤ4と付勢部材8との間に軸受部材7を配置したことに伴い、付勢部材8からギヤ4までの距離が比較的長くなる。よって、付勢部材8をギヤ4の一方の側面の側にのみ設けた場合には、付勢部材8により付勢される回転軸3がケース2(支持孔212,224の軸)に対して傾き、ギヤ4の歯先を歯先シール部材6のシール面60に十分に押し付けることができないおそれが高くなる。これに対し、本実施例では、付勢部材8をギヤ4の両側面の側に設けたため、上記傾きの発生を抑制し、ギヤ4の歯先を歯先シール部材6に十分に押し付けてシール面60との間の液密性を向上することができる。
付勢部材8の腕部87は、回転軸3を弾性的に付勢する弾性部(ばね部)として機能する。一方、半円筒部85、円板部83及び位置決め用突起部84は、ケース2に対して位置決めされると共に腕部87(弾性部)を固定支持する支持部として機能する。すなわち、半円筒部85及び円板部83は、位置決め用突起部84が支持孔212,224の底部に設けられた凹部に嵌合することで、支持孔212,224の軸回り方向におけるケース2に対する変位(回転)が規制される(軸回り方向に位置決めされる)。よって、半円筒部85及び円板部83に固定支持された各腕部87が回転軸3(被支持部31,32)を付勢する方向も、軸回り方向に位置決めされる。具体的には、付勢方向が、歯先シール部材6のシール面60に向かう方向に位置決め固定される。よって、付勢部材8に対する外部からの入力に関わらず、より安定的かつ確実に、回転軸3をシール面60に向けて付勢することができる。言換えると、腕部87(弾性部)の付勢方向を半円筒部85、円板部83及び位置決め用突起部84(支持部)によりコントロールすることで、付勢部材8の付勢方向を安定化させることができる。なお、位置決め用突起部84の数や形状や配置は、円板部83等の軸回り方向の変位を規制できるものであればよく、例えば数が1つでもよい。本実施例では、位置決め用突起部84を2つ、中心軸Oに関して対称位置に設けたため、簡素な構造で効率的かつ効果的に軸回り方向の位置決めを実現できる。
本実施例では、腕部87は1つの付勢部材8に2つ設けられており、回転軸3をその軸周り方向の2箇所で弾性的に付勢する。よって、ポンプ装置1の作動初期にギヤ4から回転軸3を介して付勢部材8(腕部87)に入力される荷重が、上記2箇所で分散される。よって、付勢部材8(腕部87及びその付け根部分)の耐久性を向上することができる。また、回転軸3の付勢ポイントを2箇所設けることで、付勢部材8の付勢方向をコントロールすることがより容易となり、付勢方向をより安定化させることができる。すなわち、より安定的かつ確実に、回転軸3をシール面60に向けて付勢することができる。なお、付勢部材8が回転軸3の軸周り方向における2以上の箇所を付勢するようにしてもよい。本実施例では、付勢ポイントを2箇所、中心軸Oとシール面60(の略中央)とを通る径方向直線に関して対称位置に設けたため、簡素な構造で効率的かつ効果的に付勢方向をコントロールすることができる。
付勢部材8の円板部83は、回転軸3に当接して回転軸3の軸方向の移動を規制する軸方向移動規制部として機能する。これにより、ポンプ装置1の耐久性を向上し、また、その作動性を良好に維持することができる。すなわち、例えば各ギヤ4の軸同士が傾いた状態で噛合っている等の原因で、回転軸3が軸方向に変位(移動)する場合がある。特に、本実施例では、軸受部材7と回転軸3との間に意図的に若干の隙間を設ける構成であるため、軸受部材7により回転軸3の軸方向移動を抑制することが困難である。回転軸3が軸方向に移動すると、構成部材同士の衝突により摩耗が発生して耐久性が低下したり、ポンプ装置1の性能が損なわれたりするおそれがある。例えば、回転軸3の軸方向端部とケース2(支持孔212,224の底部)とが衝突すると、ケース2等の摩耗が発生する。また、回転軸3とギヤ4とを連結するピンの位置がX軸方向に所定量以上ずれると、ギヤ4を円滑に回転駆動できなくなるおそれもある。これに対し、本実施例では、付勢部材8の円板部83は、軸方向に移動しようとする回転軸3に当接して回転軸3の上記軸方向の移動を規制するように設けられている。よって、構成部材同士、例えば回転軸3の軸方向端部とケース2(支持孔212,224の底部)との衝突及びそれによる摩耗を抑制することができる。また、第1付勢部材81aの円板部83は、駆動軸3aがX軸正方向側(モータの側)へ移動することを抑制する抜け止め機能を有している。したがって、ポンプ装置1の耐久性を向上し、また、その作動性を良好に維持することができる。ここで、付勢部材8(特に円板部83)は樹脂材料により形成されているため、アルミや鉄等により形成されている場合に比べ、摩耗しにくい。よって、軸方向移動規制部としての機能を向上できる。
本実施例では、弾性部としての腕部87と支持部としての円板部83等を一体化した1つの部品として設けている。よって、構成を簡素化し、部品点数及び組付け工数を削減することができる。また、円板部83は支持部としてだけでなく軸方向移動規制部としても機能する。このように1つの部品で多くの機能を実現させるようにしたことで、構成をより簡素化し、部品点数及び組付け工数をより削減することができる。具体的には、付勢部材8の全体を樹脂材料により形成し、弾性部と支持部と軸方向移動規制部とを一体に成形したことで、コストを削減することができる。
[実施例1の効果]
以下、本実施例のポンプ装置1が奏する効果を列挙する。
(1)モータ(駆動源)により駆動され、ケース2に形成された支持孔212a,224a内に軸受部材71a,72aによって支持された駆動軸3aと、駆動軸3aと一体的に回転する駆動ギヤ4aと、駆動ギヤ4aに歯合する従動ギヤ4bと、各ギヤ4の両側面に一面が隣接して設けられ、各ギヤ4の側面からの作動液の漏れを抑制するサイドプレート5と、ギヤ4の歯先をシールするシール面60を備え、サイドプレート5と液密に当接してケース2内に低圧室(吸入室)と高圧室20(吐出室)を画成する歯先シール部材6と、駆動軸3a(被支持部31a,32a)を歯先シール部材6のシール面60aに向けて付勢する付勢部材81a,82aとを備え、付勢部材81a,82aは、駆動軸3aを弾性的に付勢する腕部87(弾性部)と、ケース2に対して位置決めされると共に腕部87(弾性部)を固定支持する半円筒部85、円板部83及び位置決め用突起部84(支持部)とを有し、サイドプレート5の他面側と付勢部材81a,82aとの間に軸受部材71a,72aをそれぞれ配置した。
よって、駆動軸3aの撓みを抑制し、ギヤ4の歯先のシール性を向上して、ポンプ性能を向上することができる。
(2)腕部87(弾性部)は、駆動軸3a(被支持部31a,32a)の軸周り方向における2以上の箇所を付勢する。
よって、付勢部材81a,82aの耐久性を向上し、また、その付勢方向をより安定化させることができる。
(3)付勢部材81a,82aは、駆動軸3aに当接して駆動軸3aの軸方向の移動を規制する円板部83(軸方向移動規制部)を備えた。
よって、ポンプ装置1の耐久性を向上し、また、その作動性を良好に維持することができる。
[実施例2]
実施例2のポンプ装置1は、付勢部材8の構成が実施例1と相違する。まず、構成を説明する。実施例1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図17〜図19は、第2部材22の駆動軸支持孔224aに設置される第2付勢部材82aを各方向から示す。図17は、第2付勢部材82aをx軸正方向側かつy軸負方向側かつz軸負方向側から見た斜視図である。図18は、第2付勢部材82aをx軸正方向側から見た正面図である。図19は、第2付勢部材82aをy軸正方向側から見た側面図である。付勢部材8は、円板部材83とばね部材84とを有している。これらは別体の部品であり、組合わされることで1つの付勢部材8を構成する。
円板部材83は、略円盤状の板部材であり、樹脂材料により形成されている。円板部材83は、保持用孔831と保持用突起部832とストッパ用突起部833とを有している。これらは樹脂材料により例えば一体に型成形される。保持用孔831は、円板部材83のy軸正方向側とy軸負方向側の2箇所に、円板部材83を貫通するように設けられている。保持用突起部832は、円板部材83のz軸負方向側に設けられており、円板部材83のx軸正方向側面からx軸正方向側に略四角柱状に突出する。保持用突起部832の外径部分は曲面状に形成されており、その外周と円板部材83の外周はx軸方向から見て略一致する。保持用突起部832の内径部分は中心軸Oに対向する平面状である。ストッパ用突起部833は、円板部材83のz軸正方向側に設けられており、円板部材83のx軸正方向側面からx軸正方向側に略四角柱状に突出する。ストッパ用突起部833の外径部分は曲面状に形成されており、その外周と円板部材83の外周はx軸方向から見て略一致する。ストッパ用突起部833の内径部分は中心軸Oに対向する凹曲面状であり、x軸方向から見て、ストッパ用突起部833の内周は、円板部材83(の外周)に対して、中心軸Oを中心とする略同心円上に設けられている。
ばね部材84は、帯状の板ばね材を曲げて作られており、ばね鋼等の金属材料により形成されている。ばね部材84は、半円筒部840と位置決め用突起部841と腕部842とを有している。半円筒部840は、x軸方向から見て半円状に曲げられた部分であり、そのz軸負方向端が円板部材83の保持用突起部832のz軸正方向側の面に当接するように、円板部材83のx軸正方向側面に保持される。位置決め用突起部841は、半円筒部840のy軸方向両側のz軸正方向端に2つ設けられている。位置決め用突起部841は、x軸方向から見て外径側(中心軸Oから離れる側)に膨らむ小さな半円状であり、半円筒部840よりもx軸負方向側に延びるように設けられている。位置決め用突起部841は、上記小さな半円状の外周部位で保持用孔831の内周に保持されるように、円板部材83(保持用孔831)を貫通して設置される。位置決め用突起部841のx軸負方向側部分は、円板部材83のx軸負方向側の面からx軸負方向側に突出する。腕部842は、y軸方向両側の位置決め用突起部841からz軸正方向側に湾曲して延びるように2つ設けられており、円板部材83のx軸正方向側面に保持される。各腕部842は、そのz軸正方向端に係止部843を有している。係止部843は、x軸方向から見て内径側(中心軸Oに向う側)に膨らむ小さな半円状に設けられている。中心軸Oの周り方向で両係止部843の略中間位置には、円板部材83のストッパ用突起部833が配置されている。
円板部材83の保持用突起部832にばね部材84の半円筒部840が係止し、円板部材83の保持用孔831にばね部材84の位置決め用突起部841が係止することで、円板部材83にばね部材84が固定設置される。半円筒部840の内径寸法は、(駆動軸3aの被支持部32aの外径寸法よりも若干大きく、)第2軸受部材72aのころ70の内接円ICの直径よりも若干大きく設けられている。第2付勢部材82a(腕部842)の無負荷状態で、両係止部843の内径側における最突出部は内接円ICの内側に位置する。上記最突出部が中心軸Oに対してなす角度は、本実施例では略60度に設けられている。上記無負荷状態で、中心軸Oから上記最突出部までの距離は、駆動軸3a(被支持部32a)が駆動軸支持孔224aの中心軸上に位置しているときの当該中心軸から被支持部32aの外周面までの距離(被支持部32aの半径)よりも、若干小さく設けられている。
第1付勢部材81aの構成は、円板部材83が実施例1と同様の貫通孔830を有する点を除き、上記第2付勢部材82aと同様である。第1付勢部材81b及び第2付勢部材82bの構成は、上記第2付勢部材82aと同様である。
次に、作用を説明する。円板部材83のストッパ用突起部833は、実施例1のストッパ用突起部88に相当する。円板部材83のx軸負方向側の面から突出する位置決め用突起部841は、実施例1の位置決め用突起部84に相当する。ばね部材84の腕部842は、実施例1の腕部87と同様、回転軸3を弾性的に付勢する弾性部として機能する。一方、ばね部材84の半円筒部840と位置決め用突起部841、及び円板部材83は、実施例1の半円筒部85、円板部83及び位置決め用突起部84と同様、ケース2に対して位置決めされると共に腕部842を固定支持する支持部として機能する。
本実施例では、弾性部としての腕部842と支持部としての円板部材83を別体の部品として構成し、これらを一体的に組み付けることで付勢部材8を構成している。よって、弾性部と支持部の各機能を担うそれぞれの部材の構成を簡素化しつつ、その材料や形状として最適なものを選択・設計することができる。例えば、ばね材により腕部842を構成することで、付勢部材8の付勢力をより精度良く調整することが可能になる。また、本実施例では、ばね部材84の位置決め用突起部841を円板部材83への係止用とケース2に対する位置決め用との両方に用いるようにしたことで、各部材の構成を簡素化することができる。なお、(軸方向移動規制部としての)円板部材83を省略してばね部材84を直接ケース2(支持孔212,224)に設置することとしてもよい。他の作用は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
[実施例3]
実施例3のポンプ装置1は、1つの駆動軸3aにより2つのポンプ(二組のギヤ4)を駆動する所謂タンデム式である。まず、構成を説明する。実施例1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図20は、本実施例のポンプ装置1を回転軸3の軸心を通る平面で切った断面を示す。ケース2は、第1〜第3部材21〜23のほか、第4部材24を有している。第1部材21の底部211には、収容凹部210よりも小径の第1ポンプ収容凹部216が形成されている。第1部材21は、実施例1の大径孔215を有していない。
第4部材24は、円柱状の隔壁部材(センタプレート)である。第4部材24には、回転軸3を収容するための収容孔240がX軸方向に延びるように貫通形成されている。収容孔240は、駆動軸3aを収容するための駆動軸収容孔240aと、従動軸3bを収容するための従動軸収容孔240bを有している。収容孔240のX軸正方向側には、支持孔240に連続して、回転軸3の外周をシールするためのシール部材94が設置されるシール部材設置孔241が、収容孔240よりも大径に形成されている。第4部材24のX軸方向両側の面の外径側には、シール部材92(例えばOリング)が設置される環状溝が軸周り方向に延びるように形成されている。第4部材24のX軸正方向側の面の外径側は、第1部材21の底部211における第1ポンプ収容凹部216の開口部の外径側の面に対向している。これにより第4部材24のX軸正方向側への移動が規制される。第4部材24のX軸正方向側の面の外径側に設置されたシール部材92は第1部材21の底部211における第1ポンプ収容凹部216の開口部の外径側の面に当接する。第4部材24のX軸負方向側の面の外径側は、第2部材22の周壁221のX軸正方向端面に対向している。これにより第4部材24のX軸負方向側への移動が規制される。第4部材24のX軸負方向側の面の外径側に設置されたシール部材92は第2部材22の周壁221のX軸正方向端面に当接する。
駆動軸3aのギヤ設置部30aの軸方向一方側(X軸正方向側)の端には、第1駆動ギヤ41aが一体的に連結される。ギヤ設置部30aの軸方向他方側(X軸負方向側)の端には、第2駆動ギヤ42aが一体的に連結される。従動軸3bのギヤ設置部30bの軸方向一方側(X軸正方向側)の端には、第1従動ギヤ41bが一体的に連結される。ギヤ設置部30bの軸方向他方側(X軸負方向側)の端には、第2従動ギヤ42bが一体的に連結される。第1駆動ギヤ41aと第1従動ギヤ41bは、互いに噛合うように配置されており、第1ギヤ41を構成する。第2駆動ギヤ42aと第2従動ギヤ42bは、互いに噛合うように配置されており、第2ギヤ42を構成する。第1ギヤ41、サイドプレート51(第1サイドプレート511及び第2サイドプレート512)、及び歯先シール部材61は第1部材21の第1ポンプ収容凹部216の内周側に設置され、第1ポンプ部を構成する。第2ギヤ42、サイドプレート52(第1サイドプレート521及び第2サイドプレート522)、及び歯先シール部材62は、実施例1と同様、第2部材22の収容凹部220の内周側に設置され、第2ポンプ部を構成する。第1、第2ポンプ部は、モータにより同時に回転駆動されて吸入通路及び低圧部を介してブレーキ液を吸入し、それぞれの高圧部201,202及び吐出通路を介してホイルシリンダに向けてブレーキ液を吐出する。各ポンプ部は例えば自動車の各ブレーキ系統に対応して設けられる。
第1部材21の第1ポンプ収容凹部216と第2部材22の収容凹部220とは第4部材24により隔てられている。シール部材92が第1、第2部材21,22に当接していることにより、第4部材24の外周と第1、第2部材21,22との間の隙間を通って、第1ポンプ収容凹部216と収容凹部220とが連通することが抑制される。シール部材94は、シール部材設置孔241に固定設置されるリテーナと、回転軸3の外周に摺接する摺接部材と、リテーナに設置されて摺接部材を回転軸3の外周に向けて付勢する弾性部材とを有する。シール部材94により、回転軸3の外周と第4部材24の収容孔240の内周との間の隙間を通って、第1ポンプ収容凹部216と収容凹部220とが連通することが抑制される。
シール装置90は、リテーナ部材900とシール部材本体901と弾性部材902とリップ部材本体903と支持部材904とから構成されている。リテーナ900は、シール部材設置孔214に圧入により固定設置される円筒状の保持部材である。シール部材本体901は、樹脂製であり、カラー部材3cの外周面に摺接するように設けられている。弾性部材902は、ゴム製であり、シール部材本体901とリテーナ部材900との間に圧縮状態で保持され、シール部材本体901をカラー部材3cへ向けて付勢する。シール部材本体901と弾性部材902は1つのシール部材を構成しており、リテーナ900に保持され、ポンプ装置1の内部から外部への作動液の漏れを抑制する。リップ部材本体903は、シール部材本体901のX軸正方向側に配置され、カラー部材3cの外周面に摺接するように設けられている。支持部材904は、リップ部材本体903が固定保持されるドーナツ円板状の部材である。リップ部材本体903と支持部材904は1つのリップ部材を構成しており、リテーナ900に保持され、上記シール部材から漏れた作動液の外部への漏れを抑制する。このように、上記シール部材に加えてリップ部材を設けた二重シール構造としたため、シール性能を向上できる。また、シール装置90(上記シール部材とリップ部材)は、駆動軸31a及びモータ回転軸の連結部(カラー部材3c)と径方向に重なるように、配置されている。これにより、(同一の駆動軸31a上に2つのポンプが直列に配置される)タンデム式のポンプ装置1の軸方向の大型化が抑制される。なお、シール部材設置孔214内の(X軸負方向側の)底部とシール装置90の間には、中空円盤状の円板状部材905が配置されている。円板状部材905は、シール部材本体901をX軸正方向側に付勢することで、リテーナ部材900のX軸正方向側の底部との間に、上記シール部材とリップ部材を挟恃する。これによりシール部材本体901が駆動軸31aと一緒に回転して摩耗することを抑制されるため、シール性の低下が抑制される。
次に、作用を説明する。本実施例では、2つのポンプ部が1つの駆動軸3aを共用しているため、両ポンプ部間で作動液の圧力が異なる場合には、各ポンプ部のギヤ41,42に作用する力も異なることとなる。よって、例えば第1ポンプ部で駆動軸3aが低圧側に径方向移動し、第2ポンプ部で駆動軸3aが高圧側に径方向移動することで、駆動軸3aがケース2(支持孔212,224の軸)に対して傾くおそれがある。従動軸3bについても同様である。回転軸3が傾くと、軸受部材7とのフリクションが増加したり、ギヤ41,42の歯先等のシール性が低下したりして、ポンプ装置1の効率が低下するおそれがある。これに対し、本実施例では、付勢部材8により、回転軸3を常に歯先シール部材6に向けて付勢している。よって、ポンプ部間の作動液の圧力差に関わらず、回転軸3が傾くことを抑制し、これによりポンプ装置1の効率低下を抑制することが可能である。他の作用は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、ポンプ装置を構成するケース等の部材の具体的な構成は、実施例のものに限らない。回転軸を支持する軸受部材は、ころ軸受(ニードルベアリング)に限らず、例えば玉軸受でもよい。また、転がり軸受に限らず、すべり軸受(例えばメタルブッシュ)でもよい。
付勢部材を駆動軸の側だけに設け、従動軸の側で付勢部材を省略することとしてもよい。例えば、ポンプ作動開始直後等の吐出圧が低い状態で、従動ギヤの側では駆動ギヤとの噛合いの反力により歯先が歯先シール部材のシール面に向けて付勢される一方、駆動ギヤの側では上記反力により歯先が歯先シール部材のシール面から離れるような構成の場合は、付勢部材を駆動軸の側だけに設けても、シール性をある程度向上することが可能である。
ポンプ装置は外接ギヤポンプに限らず、内接ギヤポンプでもよい。内接ギヤポンプにあっては、例えばインナギヤ(駆動ギヤ)の歯先とアウタギヤ(従動ギヤ)の歯先とが僅かな隙間を介して対向する閉じ込み部が、ギヤの歯先をシールして低圧部(吸入部)と高圧部(吐出部)を画成するシール部となる。付勢部材は、回転軸を上記シール部に向けて付勢する。