以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
まず、構成を説明する。本実施形態のポンプ装置1はブレーキ装置10に用いられる。図1は、ブレーキ装置10の一部を斜めから見た図である。ブレーキ装置10は、電動車両に適用される。電動車両は、車輪を駆動する原動機として、エンジンのほか電動式のモータ(ジェネレータ)を備えたハイブリッド車や、電動式のモータ(ジェネレータ)のみを備えた電気自動車等である。ブレーキ装置10は、2系統(プライマリP系統及びセカンダリS系統)のブレーキ配管を介して、車両の各車輪に設けられたブレーキ作動ユニットに接続される。ブレーキ装置10は、各ブレーキ作動ユニットにブレーキ液を供給し、ブレーキ液圧を発生させることで、各車輪に液圧制動力を付与する。ブレーキ装置10は、第1ユニット11と第2ユニット5を有する。第1ユニット11と第2ユニット5は、配管(供給配管12R等)によって互いに接続される。第1ユニット11は、運転者が操作するブレーキ操作部材(ブレーキペダル)とメカ的に接続される。
第1ユニット11は、マスタシリンダユニットであり、リザーバタンク111と、マスタシリンダ112と、ストロークシミュレータ113を有する。リザーバタンク111は、ブレーキ液を貯留するブレーキ液源である。マスタシリンダ112は、運転者によるブレーキペダルの操作に応じて軸方向に移動するピストンを有する。マスタシリンダ112は、タンデム型であり、上記ピストンとして、プッシュロッドを介してブレーキペダルに接続されるプライマリピストンと、フリーピストン型のセカンダリピストンとを、直列に有する。マスタシリンダ112の内部には、プライマリピストンおよびセカンダリピストンによってプライマリ室が画成され、セカンダリピストンによってセカンダリ室が画成される。各室は、リザーバタンク111からブレーキ液を補給され、上記ピストンの移動により液圧(マスタシリンダ圧)を発生する。第1ユニット11は、プライマリピストンのストローク(ペダルストローク)を検出するストロークセンサ114を有する。ストロークシミュレータ113は、ピストンと、このピストンにより画成される正圧室および背圧室と、正圧室の容積が縮小する方向にピストンを付勢する弾性体(コイルばね等)とを有する。運転者のブレーキ操作に応じてマスタシリンダ112(例えばプライマリ室)から正圧室にブレーキ液が流入することで、ペダルストロークが発生すると共に、弾性体の付勢力によりペダル反力が模擬される。
第2ユニット5は、供給配管12Rを介してリザーバタンク111に接続され、プライマリ配管12Pを介して上記プライマリ室に接続され、セカンダリ配管12Sを介して上記セカンダリ室に接続され、背圧室配管12Xを介して上記背圧室に接続され、ホイルシリンダ配管12Wを介してブレーキ作動ユニットのシリンダ(ホイルシリンダ)に接続される。第2ユニット5は、液圧制御ユニットであり、ハウジング50と、ポンプ装置1と、複数の電磁弁と、液圧センサと、電子制御ユニット100とを有する。ハウジング50の内部には、ブレーキ液が流通する2系統(P系統及びS系統)の回路が形成される。ポンプ装置1は、電動機(モータ)41により駆動される。モータ41は、ブラシレスモータでもよいし、ブラシ付きモータでもよい。電磁弁は、制御信号に応じて開閉動作し、上記回路の連通状態(ブレーキ液の流れ)を制御することで制御液圧を発生する。第2ユニット5は、リザーバタンク111またはマスタシリンダ112からブレーキ液を供給され、運転者によるブレーキ操作とは独立に、ホイルシリンダ内の液圧(ホイルシリンダ圧)を発生させる。第2ユニット5は、各ホイルシリンダ8にマスタシリンダ圧を供給可能であると共に、マスタシリンダ112とホイルシリンダ8との連通を遮断した状態で、ポンプ70が発生する液圧により各ホイルシリンダの液圧を個別に制御可能である。液圧センサは、ポンプ装置1の吐出圧やマスタシリンダ圧を検出する。
電子制御ユニット100は、ストロークセンサ114および液圧センサの検出値や車両側からの情報が入力され、内蔵されたプログラムに基づき、電磁弁の開閉動作やモータ41の回転数(すなわちポンプ装置1の吐出量)を制御する。電子制御ユニット100は、各車輪の液圧制動力を制御することで、各種のブレーキ制御(制動による車輪のスリップを抑制するためのアンチロックブレーキ制御や、運転者のブレーキ操作力を低減するための倍力制御や、先行車追従制御等の自動ブレーキ制御や、回生ブレーキとの協調制御等)を実行する。
ハウジング50は、略直方体の形状であり、その外表面は、比較的面積が広い第1面501と、第1面501に略平行な第2面502と、鉛直方向上側に配置される第3面503と、第3面503に略平行であって鉛直方向下側に配置される第4面504と、鉛直方向に沿って配置される第5面505および第6面506とを有する。第1面501と第3面503と第5面505とにより形成される頂点、および、第1面501と第3面503と第6面506とにより形成される頂点は、凹部53を有する切り欠かれた形状である。モータ41は有底円筒状のモータケース410を有する。モータ41の出力軸はモータケース410の軸心上を延びる。モータケース410の開口側の鍔部411は、ハウジング50の第1面501にボルトで締結される。電子制御ユニット100は第2面502に配置される。第4面504にはインシュレータ54を介してブラケット55が接続される。ハウジング50(第2ユニット5)はブラケット55を介して車体側に固定される。
図2は、第2ユニット5の断面図である。ハウジング50は、カム室51と複数(5個)のシリンダ収容孔52A〜52Eを有する。カム室51は、カム収容孔であり、その軸心510が第1面501の法線方向に延びる有底円筒状であって、第1面501に開口する。カム室51の内周面511は、その軸心方向から見て円形状である。シリンダ収容孔52は、段付きの円筒状であり、カム室51の径方向(軸心510を中心とする放射方向)に延び、カム室51の内周面511に開口する。シリンダ収容孔52は、軸心510の周り方向で略均等(略等間隔)に配置される。軸心510の周り方向で隣り合うシリンダ収容孔52の軸心がなす角度は略72°である。これらのシリンダ収容孔52の軸心は略同一の平面α内にある。平面αは、ハウジング50の第1面501および第2面502と略平行であり、第2面502よりも第1面501の側にある。図2は、平面αで切った第2ユニット5の断面を示す。ハウジング50の凹部53にはシリンダ収容孔52が開口する。シリンダ収容孔52の内周面において、カム室51に近い側には吸入側の通路が開口し、カム室51から遠い側には吐出側の通路が開口する。
ポンプ装置1は、ハウジング50と、回転軸4と、運動変換部2(カム6、駆動ユニット7)と、複数(5個)のポンプ部3A〜3Eと、移動抑制部材8とを備える。図2では、運動変換部2の詳細な図示を省略する。図3は、図2における運動変換部2を含むポンプ装置1の一部の断面を示す。なお、ピストン36やハウジング50を模式化して描く。図2に対しカム6の回転位相が180°ずれている。図4は、図3のIV-IV視断面に相当しており、回転軸4の軸心40およびピストン36の軸心360を通る平面で切ったポンプ装置1の部分断面を示す。図3は図4のIII-III視断面に相当する。ハウジング50は、移動抑制部材8が設置される設置部512を有する。本実施形態では、カム室51の軸心方向におけるシリンダ収容孔52よりも第2面502側(カム室51の底部51a側)の内周面511をそのまま、設置部512として利用する。回転軸4は、ポンプ1の駆動軸であり、カム室51内に収容される。回転軸4は、その軸心40がモータ41の出力軸の軸心の延長上を延びるように、上記出力軸に固定され、モータ41により回転駆動される。回転軸4は、上記出力軸と同じ軸心40の周りを、上記出力軸と一体に回転する。軸心40はカム室51の軸心510と略一致する。ポンプ部3は、ピストンポンプ(往復ポンプ)であり、ピストン(プランジャ)36の往復運動に伴い、作動液としてのブレーキ液の吸入と吐出を行う。以下、各ポンプ部3の構成を互いに区別する場合、その符号に添字A〜Eを付す。運動変換部2は、カム室51内に収容され、回転軸4の回転運動をピストン36の往復運動に変換する。
各ピストン36は、運動変換部2の周りに配置され、それぞれシリンダ収容孔52に収容される。ピストン36の軸心360は、シリンダ収容孔52の軸心と略一致し、回転軸4の径方向に延びる。言換えると、ピストン36は、シリンダ収容孔52の数(5個)だけ設けられ、回転軸4の軸心40に対し放射方向に延びる。ピストン36A〜36Eは、回転軸4の周り方向(以下、単に周方向という。)で略均等に、すなわち回転軸4の回転方向で略等間隔に、配置される。これらのピストン36A〜36Eの軸心360A〜360Eは同一平面α内にある。これらのピストン36A〜36Eは、同一の回転軸4および運動変換部2により駆動される。
ポンプ部3は、シリンダスリーブ30と、フィルタ部材31と、栓部材32と、ガイドリング33と、第1シールリング34と、第2シールリング35と、ピストン36と、戻しばね37と、吸入弁38と、吐出弁39とを有し、これらはシリンダ収容孔52に設置される。シリンダスリーブ30は有底円筒状であり、底部300に孔301が貫通する。シリンダスリーブ30はシリンダ収容孔52に固定される。シリンダスリーブ30の軸心はシリンダ収容孔52の軸心360と略一致する。シリンダスリーブ30の開口側の端部302はカム室51に近い側に配置され、底部300はカム室51から遠い側に配置される。フィルタ部材31は有底円筒状であり、底部310に孔311が貫通すると共に、側壁部に複数の開口312が貫通する。開口312にはフィルタが設置される。フィルタ部材31は、シリンダスリーブ30の開口側の端部302に固定される。フィルタ部材31の軸心はシリンダ収容孔52の軸心360と略一致する。フィルタ部材31の開口側の端部313はカム室51から遠い側に配置され、底部310はカム室51に近い側に配置される。フィルタ部材31の開口312が開口する外周面とシリンダ収容孔52の内周面との間には隙間がある。吸入側の通路は上記隙間に連通する。栓部材32は、円柱状であり、その軸心方向一端側に、凹部320と溝(図外)を有する。この溝は、径方向に延びて凹部320と栓部材32の外周面とを接続する。栓部材32の上記軸方向一端側は、シリンダスリーブ30の底部300に固定される。栓部材32の軸心はシリンダ収容孔52の軸心360と略一致する。栓部材32は、シリンダ収容孔52に固定され、ハウジング50の外周面におけるシリンダ収容孔52の開口を閉塞する。吐出側の通路は栓部材32の上記溝に連通する。ガイドリング33は円筒状であり、シリンダ収容孔52におけるフィルタ部材31よりもカム室51の側に固定される。ガイドリング33の軸心はシリンダ収容孔52の軸心360と略一致する。第1シールリング34は、シリンダ収容孔52におけるガイドリング33とフィルタ部材31との間に設置される。
ピストン36は、円柱状であり、その軸心方向一方側に端面(以下、ピストン端面という。)361を有し、軸心方向他方側の外周に鍔部362を有する。ピストン端面361は、ピストン36の軸心360に対し略直交する方向に広がる平面状であり、軸心360を中心とする略円形状である。ピストン36は、その内部に軸方向孔363と径方向孔364を有する。軸方向孔363は、軸心360上を延びてピストン36の上記軸心方向他方側の端面に開口する。径方向孔364は、ピストン36の径方向に延びて、鍔部362よりも上記軸心方向一方側の外周面に開口すると共に、軸方向孔363の上記軸心方向一方側に接続する。ピストン36の上記軸心方向他方側の端部には、チェック弁ケース365が固定される。チェック弁ケース365は、薄板からなる有底円筒状であり、開口側の端部の外周に鍔部366を有し、側壁部および底部367に複数の孔368が貫通する。チェック弁ケース365の開口側の端部はピストン36の上記軸心方向他方側の端部に嵌合する。第2シールリング35は、チェック弁ケース365の鍔部366とピストン36の鍔部362との間に設置される。ピストン36の上記軸心方向他方側はシリンダスリーブ30の内周側に挿入され、鍔部362がシリンダスリーブ30により案内・支持される。ピストン36における径方向孔364よりも上記軸心方向一方側は、フィルタ部材31の底部310の内周側(孔311)およびガイドリング33の内周側に挿入され、これらにより案内・支持される。ピストン36の軸心360はシリンダスリーブ30等(シリンダ収容孔52)の軸心と略一致する。ピストン36の上記軸心方向一方側の端部(ピストン端面361)はカム室51の内部に突出する。
戻しばね37は、圧縮コイルばねであり、シリンダスリーブ30の内周側に設置される。戻しばね37の一端はシリンダスリーブ30の底部300に設置され、他端はチェック弁ケース365の鍔部366に設置される。戻しばね37は、シリンダスリーブ30(シリンダ収容孔52)に対しピストン36をカム室51の側へ常に付勢する。吸入弁38は、弁体としてのボール380と、戻しばね381とを有し、これらはチェック弁ケース365の内周側に収容される。ピストン36の上記軸心方向他方側の端面における軸方向孔363の開口の周りには弁座369が設けられる。ボール380が弁座369に着座することで軸方向孔363が閉塞される。戻しばね381は、圧縮コイルばねであり、その一端はチェック弁ケース365の底部367に設置され、他端はボール380に設置される。戻しばね381は、チェック弁ケース365(ピストン36)に対しボール380を弁座369の側へ常に付勢する。吐出弁39は、弁体としてのボール390と、戻しばね391とを有し、これらは栓部材32の凹部320に収容される。シリンダスリーブ30の底部300における貫通孔301の開口部の周りには弁座303が設けられる。ボール390が弁座303に着座することで貫通孔301が閉塞される。戻しばね391は、圧縮コイルばねであり、その一端は凹部320の底面に設置され、他端はボール390に設置される。戻しばね391は、ボール390を弁座303の側へ常に付勢する。
シリンダ収容孔52の内部において、ピストン36の鍔部362よりもカム室51の側の空間R1は、ハウジング50内の吸入側の通路に連通する吸入側の空間である。具体的には、フィルタ部材31の外周面とシリンダ収容孔52の内周面との間の上記隙間から、フィルタ部材31の複数の開口312、およびピストン36の外周面とフィルタ部材31の内周面との間の隙間を通り、ピストン36の径方向孔364および軸方向孔363へと至る空間は、吸入側空間R1として機能する。この吸入側空間R1は、第1シールリング34により、カム室51との連通が抑制される。シリンダ収容孔52の内部において、シリンダスリーブ30と栓部材32との間の空間R3は、ハウジング50内の吐出側の通路に連通する吐出側の空間である。具体的には、栓部材32の上記溝から吐出側の通路へと至る空間は吐出側空間R3として機能する。シリンダスリーブ30の内周側において、ピストン36の鍔部362とシリンダスリーブ30の底部300との間の空間R2は、シリンダスリーブ30に対するピストン36の往復移動(ストローク)により容積が変化する。この空間R2は、吸入弁38の開弁により吸入側空間R1と連通し、吐出弁39の開弁により吐出側空間R3と連通する。
図5は図4のV-V視断面に相当する。図6は図4のVI-VI視断面に相当する。運動変換部2は、カム6と駆動ユニット7を有する。運動変換部2は、回転軸4の軸心40に対し偏心する軸心20を有する。この軸心20は、運動変換部2の形状および質量の中心である。この軸心20が回転軸4の軸心40の周りを回転する。すなわち、運動変換部2は、軸心40に対して偏心し、軸心40の周りを揺動する。カム6は、カム室51内に配置される偏心部である。カム6は、回転軸4と別体に形成された後、回転軸4と一体となるように組付けられる。なお、カム6は、回転軸4と一体に形成されてもよい。カム6は、回転軸4の軸心40に対して偏心する軸心(偏心軸心)60を有する。軸心60は軸心40に沿って(軸心40と略平行に)延びる。軸心60はカム6の形状および質量の中心である。カム6は円柱状であり、カム6の軸心方向から見たカム6の輪郭(輪郭曲線)は、回転軸4の中心40から偏心量δだけずれた位置に中心60を有する略円形状である。カム6は、モータ41により回転軸4と共に回転駆動され、回転軸4と一体に回転する。カム6は、回転軸4の回転により、軸心40の周りを回転しつつ揺動する。
駆動ユニット7は、カム室51内でカム6の外周側に配置され、回転軸4の軸心40に対し偏心量δだけずれた軸心(形状および質量の中心)を有する。駆動ユニット7の軸心はカム6の軸心60と略一致する。駆動ユニット7は、複数の転動体70と駆動部材71とを有する。転動体70はころである。具体的には針状ころであり、回転軸4の軸心方向に沿って延びる。転動体70は、回転軸4の軸心方向に1列設けられ、周方向に複数(18個)並んで配置される。駆動部材71は、有底円筒状であり、円筒状の内周面710および円筒状の外周面711を有する。駆動部材71の軸心方向から見た内周面710および外周面711の輪郭は略円形である。駆動部材71の軸心方向寸法(長さ)は、ピストン端面361の直径よりも大きく、カム室51の軸心方向寸法以下である。駆動部材71は、その軸心方向一方側に、径方向内側に広がる鍔部712を有する。言い換えると、駆動部材71の軸心方向一方側の底部は、その中心に円形状の孔713を有する円板状であり、鍔部712として機能する。孔713には回転軸4が貫通する。駆動部材71は、例えば薄い鋼板を精密深絞り加工することで形成される。駆動部材71は、転がり軸受の外輪と同様の構成を有しており、複数の転動体70の外周側に配置される。転動体70は、カム6の外周面61と駆動部材71の内周面710との間に配置される。転動体70は、面60,710に接触しつつ転がる(回転する)ことが可能である。駆動部材71は、カム6の軸心60の周りをカム6に対して回転可能である。駆動部材71の軸心はカム6の軸心60と略一致する。なお、複数の転動体70を互いに独立して回転自在に保持する保持器を設け、この保持器(保持器付き針状ころ)の外周側に駆動部材71を配置し、転動体70が面60,710に接触しつつ転がるようにしてもよい。この場合、複数の転動体70および保持器と駆動部材71との組立体は、所謂シェル形の針状ころ軸受と同様の構成を有する。
移動抑制部材8は、樹脂材料で形成される弾性体(弾性部材)である。移動抑制部材8は、その軸心方向一方側に底部82を有する有底筒状であり、内側に凹部800を有する。凹部800は、有底の円筒状である。移動抑制部材8(凹部800)の内周面80は、移動抑制部材8の軸心方向から見て、略円形である。移動抑制部材8の外周面81は、上記軸心方向から見て、五角形状と五芒星形状(星形正五角形状)との中間的な形状(以下、略五芒星形状という。)である。移動抑制部材8は、その外周側に、凸部83と凹部(溝部)84を有する。凸部83と凹部84は、移動抑制部材8の軸心の周り方向で互い違いに並ぶ。凸部83と凹部84は上記軸心方向に延びる。凸部83は、上記軸心から離れる方向(移動抑制部材8の径方向外側)に向って凸の滑らかな曲面状である。凹部84は、上記軸心に近づく方向(移動抑制部材8の径方向内側)に向って凸の滑らかな曲面状である。上記軸心方向から見て、凸部83と凹部84は、変曲点を介して滑らかに接続する。移動抑制部材8は、設置部512に設置される。移動抑制部材8の軸心は設置部512(カム室51)の軸心510と略平行である。移動抑制部材8の底部82がカム室51の底部に対向し、凹部800の開口部がシリンダ収容孔52の側に開口する。
移動抑制部材8は、駆動部材71の軸心方向一方側に設置される。移動抑制部材8の内周面80は、圧入により、その全周で、駆動部材71の外周面711に固定される。駆動部材71と移動抑制部材8との組み付け前における内周面80の直径は、外周面711の直径よりも若干小さい。移動抑制部材8の外周面81は、圧入により、凸部83の頂点付近で、設置部512の内周面に固定される。移動抑制部材8が設置部512に組み付けられる前における全ての凸部83の頂点を通る円(外接円)の直径は、設置部512の内周面の直径よりも若干大きい。移動抑制部材8が設置部512に設置された状態で、凹部84と設置部512の内周面との間に、隙間(溝)CLが形成される。図5,図6に示すように、軸心510の周り方向で、凸部83がピストン36に対応し、凹部84が、隣接するピストン36の間に対応する。軸心510が延びる方向から見て、凸部83がピストン36に重なり、凸部83の頂点付近がピストン36の軸心360に重なる。凹部84が、隣接するピストン36間の空間に重なり、凹部84の最低点付近が、隣接するピストン36間の中間位置に重なる。
次に、作用を説明する。各ポンプ部3のピストン36は往復運動して、ポンプ作用を行う。すなわち、ピストン36がカム室51(軸心510)へ近づく側へストロークすると、空間R2の容積が大きくなり、R2内の圧力が低下する。吐出弁39が閉弁し、吸入弁38が開弁することで、吸入側空間R1から空間R2へ作動液としてのブレーキ液が流入し、吸入側の通路から空間R2へブレーキ液が供給される。ピストン36がカム室51から離れる側へストロークすると、空間R2の容積が小さくなり、R2内の圧力が上昇する。吸入弁38が閉弁し、吐出弁39が開弁することで、空間R2から吐出側空間R3へブレーキ液が流出し、吐出側の通路へブレーキ液が供給される。各ポンプ部3が吐出するブレーキ液は1つの通路に集められ、2系統の回路で共通に用いられる。第2ユニット5は、ポンプ装置1により昇圧されたブレーキ液をブレーキ作動ユニットへ供給し、ブレーキ液圧(ホイルシリンダ圧)を発生させる。
ピストン36の往復運動を行わせる機構は、偏心カム機構である。カム6はこの機構の原動節として機能する。駆動部材71は、カム6の外周側に配置され、カム6の回転により軸心40(カム6の回転軸心)の周りを揺動する。ピストン36は、駆動部材71の周りに配置され、上記機構の従動節として機能する。ピストン36は、駆動部材71の揺動により、駆動部材71に押されて、シリンダ収容孔52の軸方向に沿って往復運動する。なお、カム6の輪郭曲線は円形状に限らない。本実施形態では、カム6の外周面61は円筒状であるため、カム6の製造が容易であり、コストを低減できる。ポンプ装置1は、カムの運動により往復運動するピストンを備えたものであればよく、その具体的構成は本実施形態のものに限らない。例えば、ポンプ部3(ピストン36)の数は1つでもよいし2つでもよく、5個に限定されない。本実施形態では、上記数が5個であり、各ポンプ部3A〜3Eが吸入・吐出行程の位相をずらして作動することで、流れの脈動が低く抑えられ、ブレーキ装置10の音振が低減される。特に、各ピストン36が周方向で略等間隔に配置されることで、脈動が効果的に抑制される。
ピストン36に対して運動変換部2の部材(駆動部材71)が移動し、ピストン36の端面361に対して上記部材の外周面(駆動部材71の外周面711)が摺動(両者間で摩擦抵抗力を発生した状態で相対移動)すると、この摺動(以下、スリップという。)により、音振性能が悪化するおそれがある。また、ピストン36の端面361等が摩耗し、耐久性が低下するおそれがある。これに対し、複数の転動体70は、カム6と駆動部材71との相対変位(回転)を許容する。駆動部材71は、その内周側ではカム6に対し相対変位(回転)する。駆動部材71は、その外周側ではピストン36をカム6(回転軸4)の径方向外側へ押し、ピストン36を駆動する。このように複数の転動体70が相対回転許容部材として機能することで、カム6の回転に伴う駆動部材71の(ハウジング50に対する)回転を抑制し、ピストン36に対する軸心40の周り方向における駆動部材71の移動を抑制することが可能である。これによりスリップを抑制可能である。なお、転動体70は玉でもよい。本実施形態では、転動体70はころであるため、転動体70の組付けが容易であり、負荷能力も向上する。転動体70は円筒ころでもよい。本実施形態では、転動体70は針状ころであるため、転動体70の直径を小さくし、ポンプ1(運動変換部2)の径方向寸法を抑制できる。なお、相対回転許容部材として、転動体70の代わりに、滑り軸受を構成するブッシュ等の部材を設けてもよい。また、軸受を構成する部材を別途設ける代わりに、カム6と駆動部材71との摺動部位(カム6の外周面61または駆動部材71の内周面710)に、低摩擦性の材質や皮膜を設けてもよい。
ハウジング50に対する駆動部材71の回転が無制限に許容されていると、ピストン36の端面361に対して駆動部材71の外周面711が、回転軸4の軸心40の周り方向(以下、周方向という。)に摺動しやすい。これにより、スリップを十分に抑制できず、音振性能の悪化や耐久性の低下が発生するおそれがある。これに対し、本実施形態のポンプ装置1は、移動抑制部材8を有する。移動抑制部材8は、弾性部材であり、ハウジング50と駆動部材71との間に挟持され、回転軸4の軸心40に対して直交する方向(以下、径方向という。)に押し縮められる部分を有する。すなわち、移動抑制部材8は、凸部83と凹部84を有する。移動抑制部材8の軸心周り方向において凸部83が位置する部分が押し縮められ、この部分が設置部512の内周面と駆動部材71の外周面711との間に押し縮められた状態で保持される。移動抑制部材8の軸心周り方向において凹部84が位置する部分は押し縮められない。移動抑制部材8は、上記押し縮められる部分において、その弾性力により、駆動部材71に対して押付けられる。これにより、上記径方向の押付け力を駆動部材71に対し発生する。この押付け力により、ハウジング50に対する少なくとも周方向における駆動部材71の移動が抑制される。よって、ピストン36に対する駆動部材71のスリップが抑制される。したがって、音振性能の悪化や耐久性の低下を抑制できる。すなわち、移動抑制部材8の内周面80は駆動部材71の外周面711に固定される。移動抑制部材8の凸部83の頂点付近が設置部512の内周面に固定されることで、ハウジング50に対する移動抑制部材8(駆動部材71)の周方向移動が抑制される。また、ハウジング50に対する移動抑制部材8(駆動部材71)の軸心方向の移動も抑制される。周方向移動が最大限抑制された理想的な状態では、駆動部材71は、その姿勢を変えないまま揺動する。駆動部材71の各点(例えば外周面711上の各点)は、軸心40に直交する平面内で、駆動ユニット7(駆動部材71)の軸心60と軸心40との間の距離(偏心量δ)を半径とする小円上を移動するのみとなる。よって、駆動部材71とピストン36との間の相対変位を上記小円の範囲内に制限し、スリップを最大限抑制することができる。なお、上記押付け力により、ハウジング50に対する回転軸4の軸心方向における駆動部材71の移動も抑制される。これにより、上記スリップの抑制効果が向上する。
戻しばね37は、その弾性力により、ピストン36(端面361)が駆動部材71(外周面711)から離れないようにする機能(以下、接触維持機能という。)を有する。従来、ピストンの戻しばねは、その弾性力により、接触維持機能と共に、ピストンを駆動部材に押付けることで駆動部材のスリップを抑制する機能(以下、スリップ抑制機能という。)を担っていた。しかし、両方の上記機能を実現しようとすると、戻しばねがピストンを駆動部材に対して押付ける力が大きくなる。これにより、ポンプの回転軸を駆動するためのエネルギー消費が多くなり、ポンプの動きが鈍くなる。すなわち、ポンプの機械効率が低下するおそれがあった。これに対し、本実施形態のポンプ装置1では、戻しばね37とは別に移動抑制部材8を有する。移動抑制部材8がスリップ抑制機能を実現することで、戻しばね37がこのスリップ抑制機能を担う必要が少なくなる。よって、戻しばね37の弾性力を小さく設定し、戻しばね37がピストン36を駆動部材71に対して押付ける力を小さくできる。したがって、ポンプ装置1の機械効率を向上できる。
なお、駆動部材71に対し押付け力に限らず引張り力を発生することで、駆動部材71の移動を抑制するようにしてもよい。また、移動抑制部材8は弾性部材に限らない。本実施形態の移動抑制部材8は弾性部材である。よって、駆動部材71の揺動(上記小円の範囲内での相対変位)を許容しつつ駆動部材71に対し押付け力を発生することが容易であり、スリップ抑制のための構造を簡素化することができる。なお、移動抑制部材8の材料は、弾性力を発生可能なものであればよく、ゴム等でもよい。運動変換部2(駆動部材71)の揺動中、移動抑制部材8は、常には上記押付け力を発生しなくてもよい。すなわち、移動抑制部材8は径方向に常に押し縮められた状態でなくてもよい。例えば、カム6の回転位相が特定の範囲内にあるときのみ押し縮められた状態となり、その範囲外では押し縮められず弾性力を発揮しないようにしてもよい。本実施形態の移動抑制部材8は、カム6の回転位相に関わらず常に、凸部83の位置する部分が径方向に押し縮められた状態であり、上記部分で上記押付け力を常時発生する。よって、押付け力を安定的に発生し、スリップ抑制機能をより確実に発揮できる。また、移動抑制部材8は、上記部分で、ハウジング50と駆動部材71との間に挟持される。すなわち、ハウジング50と駆動部材71との間に挟み込まれた状態で移動抑制部材8が支持される。よって、移動抑制部材8の組付け性が向上する。
移動抑制部材8は、その周方向全範囲にわたり、上記押付け力を発生してもよい。本実施形態の移動抑制部材8は、その周方向の一部の範囲(凸部83が位置する部分)でのみ上記押付け力を発生する。よって、ピストン36の戻しばね37の弾性力と移動抑制部材8の上記押付け力との干渉を抑制することができる。すなわち、戻しばね37の弾性力は、ピストン36を駆動部材71の側に付勢する。ピストン36が駆動部材71を押すこの力は、カム6の軸心60がピストン36に近い側からピストン36から遠い側へ移動するようカム6が回転する際、カム6をその回転軸心40の周りに回転させようとすることで、回転軸4の回転を助力する。ここで、移動抑制部材8が径方向の押付け力を駆動部材71に対し発生するようにした場合において、軸心40を挟んでピストン36の丁度反対側に移動抑制部材8を設けた(移動抑制部材8がこの位置で押付け力を発生するようにした)ときは、カム6の軸心60がピストン36から遠い側へ移動するようカム6が回転する際、「移動抑制部材8の押付け力がカム6を回転軸心40の周りに逆回転させようとするモーメント(抵抗トルク)」が最大となる。よって、カム6の回転運動を上記押付け力が妨げ、上記助力を削減してしまう。すなわち、戻しばね37の弾性力がピストン36を介してカム6を回転させようとするのに対し、これに真っ向から対抗する方向に移動抑制部材8の押付け力が作用すると、回転軸4がカム6を回転させるために大きなトルクが必要となる。これに対し、本実施形態のポンプ装置1では、移動抑制部材8は、軸心40を挟んでピストン36(シリンダ収容孔52)の反対側にピストン36(シリンダ収容孔52)の軸心360(ピストン36の運動方向)を延ばした線(=延長線)から周方向にずれる位置で、径方向の押付け力を駆動部材71に対し発生する。これにより、上記逆回転させようとするモーメント(抵抗トルク)が、軸心40を挟んでピストン36の丁度反対側に移動抑制部材8(の押付け力の発生部位)を設けたときよりも、小さくなる。すなわち、カム6の軸心60がピストン36から遠い側へ移動するようカム6が回転する際、上記抵抗トルクが最大とならない。よって、戻しばね37の弾性力がピストン36を介してカム6を回転させようとする力に対し、移動抑制部材8の押付け力が真っ向から妨げになることが回避されるため、回転軸4がカム6を回転させるためのトルクが小さくてすむ。
シリンダ収容孔52(ピストン36)は、カム室51の軸心510の周り方向で略等間隔に5個配置される。これらシリンダ収容孔52の軸心(ピストン36の軸心360)は略同一の平面α内にあって放射状に延びる。この平面α内で上記押付け力の発生部位を各ピストン36の上記延長線に対し周方向にずれる位置に配置しようとすると、上記押付け力の発生部位がピストン36と重なるおそれが高く、上記押付け力の発生が困難となる。このことは、シリンダ収容孔52(ピストン36)の数が3以上の奇数個であれば言えることである。これに対し、移動抑制部材8は、ハウジング50の内部で平面αに対してずれた位置に配置される。カム室51の軸心方向(平面αに直交する方向)から見て上記押付け力の発生部位がピストン36と重なるよう配置されても、カム室51の軸心510に対し直交する方向(平面αに平行な方向)から見れば上記押付け力の発生部位がピストン36と重ならないため、上記押付け力の発生部位とピストン36との干渉が回避される。よって、移動抑制部材8が上記押付け力を発生してスリップ抑制機能を実現することと、「カム6の回転が妨げられることを上記押付け力の発生部位の上記配置により抑制すること」とを、両立できる。
具体的には、移動抑制部材8の上記押し縮められる部分は、周方向で上記延長線からずれる位置に配置され、この位置で、上記押付け力を発生する。言換えると、移動抑制部材8は、上記延長線上の位置では、常には、上記押し縮められた状態とはならず、上記押付け力を駆動部材71に対し発生しない。具体的には、上記延長線上には、ハウジング50と移動抑制部材8との間に、隙間CLがある。よって、カム6の軸心60がピストン36から遠い側へ移動するようカム6が回転する際、上記延長線上で駆動部材71の外周面711が設置部512の内周面に最も近づいても、隙間CLが逃げとなって、移動抑制部材8の外周面81が設置部512の内周面に当接せず、駆動部材71の外周面711と設置部512の内周面との間に移動抑制部材8が挟まれて弾性変形することがない。または、移動抑制部材8の外周面81が設置部512の内周面に当接しても、移動抑制部材8の変形量が小さい。すなわち、上記延長線上では、移動抑制部材8が駆動部材71に対して上記押付け力を発生しないか、または、発生してもその大きさが小さい。移動抑制部材8が、上記延長線上の位置で、常に、上記押し縮められた状態とはならず、上記押付け力を駆動部材71に対し発生しないようにすれば、上記作用効果がより確実に得られる。なお、駆動部材71と移動抑制部材8との間に、隙間CLがあってもよい。また、駆動部材71と移動抑制部材8との間、および、移動抑制部材8とハウジング50との間に、隙間CLがあってもよい。また、隙間CLを構成する部分(溝)の形状は、逃げを構成したり変形量を抑制したりすることが可能であれば、任意である。
移動抑制部材8の外周側に、凸部83と凹部(溝部)84がある。よって、設置部512の内周面が円筒状である場合において、ハウジング50と駆動部材71との間に移動抑制部材8を挟持すると共に、ハウジング50と移動抑制部材8との間に隙間CLを設けることが、容易である。設置部512の内周面を円筒状とすれば、その製造が容易である。なお、設置部512をカム室51とは軸心方向に離れて形成してもよい。すなわち、移動抑制部材8は、カム室51内に設置されてもよいし、カム室51外に設置されてもよい。なお、移動抑制部材8の内周側に、凸部と凹部(溝部)があってもよい。例えば、移動抑制部材8の外周面81を円筒状とし、内周面80を(凸部と凹部が交互に並ぶ)五芒星形状としてもよい。この場合、例えば、移動抑制部材8の外周面81が、例えば圧入により、その全周で、設置部512の内周面に固定される。移動抑制部材8の内周面80は、例えば圧入により、凸部の頂点付近で、駆動部材71の外周面711に固定される。移動抑制部材8の凹部と駆動部材71の外周面711との間に隙間CLが形成される。また、移動抑制部材8の外周面81および内周面80を円筒状とし、駆動部材71の外周面711を(凸部と凹部が交互に並ぶ)五芒星形状としてもよい。この場合、移動抑制部材8の外周面81が、例えば圧入により、その全周で、設置部512の内周面に固定される。移動抑制部材8の内周面80は、例えば圧入により、駆動部材71の凸部の頂点付近で、駆動部材71の外周面711に固定される。駆動部材71の凹部と移動抑制部材8の内周面80との間に隙間CLが形成される。さらに、駆動部材71の外周面711が、5つの平面部を有することで、五角形状となるようにしてもよい。この場合、駆動部材71の外周面711は、駆動部材71の平面部間の頂部付近で、移動抑制部材8の内周面80に固定される。駆動部材71の平面部と移動抑制部材8の内周面80との間に隙間CLが形成される。駆動部材71の外周面711を五角形状とする上記構成と、本実施形態のように移動抑制部材8の外周面81を五芒星形状とする上記構成とを組み合わせてもよい。
また、移動抑制部材8の外周側は、移動抑制部材8の軸心方向における全領域で設置部512の内周面に接しなくてもよい。移動抑制部材8の内周側は、駆動部材71の端部と軸心方向で重なる全領域において駆動部材71の外周面711に接しなくてもよい。
ピストン36毎に別々の(別体の)移動抑制部材8を設けてもよい。例えば、各移動抑制部材8を設置部512の内周面と駆動部材71の外周面711との間に圧入する。周方向で隣接する移動抑制部材8の間の空間を隙間CLとする。本実施形態では、1つの移動抑制部材8が、複数のピストン36に対応して凸部83と凹部84をそれぞれ有する。よって、1つの移動抑制部材8をハウジング50に設置するだけで、複数のピストン36について上記構成を得ることができる。移動抑制部材8を設置部512に設置する際、移動抑制部材8のハウジング50に対する回転位相(凸部83と凹部84の周方向位置)を調整することで、上記延長線上に隙間CLを設けることができる。移動抑制部材8は、弾性部材であるため、逃げ用の凹部84と回り止め用の凸部83を各ピストン36に対応して複数有する一体の部材とすることが容易である。一体の部材とすることで、移動抑制部材8の組付け性をより向上できる。
移動抑制部材8は底部82を有する。回転軸4の軸心方向端面が底部82に当接することで、回転軸4の軸方向変位を規制できる。すなわち、底部82をスラスト軸受として機能させることができる。
ポンプ装置1の駆動源は、モータ41に限らず、内燃機関等でもよい。本実施形態では、ポンプ装置1の駆動源として、他の駆動源よりも静粛性に優れたモータ41を用いることで、ポンプ装置1の音振性向上の効果が際立つ。また、ポンプ装置1をブレーキ装置10以外の装置に用いてもよい。本実施形態では、ブレーキ装置10にポンプ装置1を用いることで、ポンプ装置1の作動によりブレーキ制御を行う際の振動や騒音を低減し、運転者に与える違和感を低減できる。
[第2実施形態]
まず、構成を説明する。本実施形態のポンプ装置1では、移動抑制部材8の外周面81でなく、設置部512の内周面が、略五芒星形状である。図7は、ポンプ装置1の図4と同様の部分断面を示す。図8は図7のVIII-VIII視断面に相当する。図9は図7のIX-IX視断面に相当する。設置部512は、カム室51において、その軸心方向におけるシリンダ収容孔52よりも第2面502の側にある。なお、カム室51の軸心方向でシリンダ収容孔52よりも第1面501の側に設置部512があってもよい。設置部512の軸心はカム室51の軸心510と略一致する。設置部512の内周面は、その軸心方向から見て、略五芒星形状である。設置部512は、凸部513と凹部514を有する。凸部513と凹部514は軸心510の周り方向(以下、周方向)に互い違いに並ぶ。凸部513と凹部514は軸心方向に延びる。凸部513は、軸心510に近づく方向(径方向内側)に向って凸の滑らかな曲面状である。凹部514は、周方向で隣接する凸部513に挟まれ、軸心510から離れる方向(径方向外側)に向って凸の溝部である。設置部512の全ての凸部513の頂点を通る円(内接円)の直径(軸心510から凸部513の頂点までの距離)は、カム室51(設置部512以外の本体部)の内周面511の直径よりも若干小さい。設置部512の全ての凹部514の底面(最低点)を通る円の直径(軸心510から凹部514の底面までの距離)は、カム室51(本体部)の内周面511の直径よりも若干大きい。周方向で、凸部513がピストン36(シリンダ収容孔52)に対応し、凹部514が、隣接するピストン36(シリンダ収容孔52)の間に対応する。カム室51の軸心方向から見て、凸部513はピストン36に重なり、凸部513の頂点付近が軸心360に重なる。凹部514の最低点付近が、隣接するピストン36間の中間位置に重なる。
移動抑制部材8は樹脂材料で形成される弾性体(弾性部材)であり、円筒状(円環状)である。移動抑制部材8の軸心方向寸法(長さ)は、設置部512の軸心方向寸法(長さ)と略同じである。組み付け前において、移動抑制部材8の内周面80の直径は駆動部材71の外周面711の直径よりも若干小さく、移動抑制部材8の外周面81の直径は上記内接円の直径よりも若干大きい。移動抑制部材8の外周面81は、圧入により、設置部512の凸部513の頂点付近で、設置部512の内周面に固定される。設置部512に設置された状態で、設置部512の凹部514と移動抑制部材8の外周面81との間に、隙間CLが形成される。他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、作用を説明する。設置部512は、凸部513と凹部(溝部)514を有する。よって、駆動部材71の外周面711が円筒状である場合において、ハウジング50と駆動部材71との間に移動抑制部材8を挟持すると共に、ハウジング50と移動抑制部材8との間に隙間(溝)CLを設けることが、容易である。すなわち、設置部512における凸部513と駆動部材71の外周面711との間に、移動抑制部材8が上記押し縮められた状態で保持される。このとき、設置部512における凹部514と駆動部材71の外周面711との間に隙間CLが形成される。移動抑制部材8が設置部512における凸部513の頂点付近で固定されることで、ハウジング50に対する移動抑制部材8(駆動部材71)の周方向移動および軸心方向移動が抑制される。移動抑制部材8を設置部512に設置する際、移動抑制部材8の設置部512に対する回転位相を調整しなくても、上記延長線上に隙間CLを設けることができる。設置部512において、複数のピストン36に対応して凸部513と凹部514をそれぞれ設けることで、1つの移動抑制部材8をハウジング50に設置するだけで、複数のピストン36について上記構成を得ることができる。移動抑制部材8が円筒状(円環状)であるため、その製造が容易である。
なお、移動抑制部材8の外周面81および内周面80を(凸部と凹部が交互に並ぶ)略五芒星形状としてもよい。この場合、移動抑制部材8の外周面81が、例えば圧入により、その全周で、設置部512の内周面に固定される。移動抑制部材8の内周面80は、例えば圧入により、その凸部の頂点付近で、駆動部材71の外周面711に固定される。移動抑制部材8の内周面80の凹部と駆動部材71の外周面711との間に上記隙間CLが形成される。また、移動抑制部材8の外周面81および内周面80を円筒状としつつ、軸心方向から見て、駆動部材71の外周面711を(凸部と凹部が交互に並ぶ)略五芒星形状や略5角形状としてもよい。この場合、駆動部材71の外周面711は、その凸部の頂点付近(または5角形状とした場合の平面部間の頂部付近)で、移動抑制部材8の内周面80に固定される。駆動部材71の外周面711の凹部(または平面部)と移動抑制部材8の内周面80との間に隙間CLが形成される。
他の作用効果は第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
まず、構成を説明する。本実施形態のポンプ装置1では、移動抑制部材8と駆動部材71との間に補強部材9がある。図10は、ポンプ装置1の図4と同様の部分断面を示す。図11は図10のXI-XI視断面に相当する。図12は図10のXII-XII視断面に相当する。設置部512は、カム室51における円筒状(円環状)の溝であり、カム室51の軸心方向でシリンダ収容孔52よりも第2面502の側にある。なお、カム室51の軸心方向でシリンダ収容孔52よりも第1面501の側に設置部512があってもよい。設置部512の軸心はカム室51の軸心510と略一致する。設置部512の内周面の直径は、カム室51(設置部512以外の本体部)の内周面511の直径よりも大きい。
移動抑制部材8は、樹脂材料で形成される筒状の弾性体(弾性部材)であり、その外周面81は、その軸心方向から見て略五芒星形状である。移動抑制部材8は、その外周側に、凸部83と凹部(溝部)84を有する。組み付け前における移動抑制部材8の全ての凸部83の頂点を通る円(外接円)の直径は、設置部512の内周面の直径よりも若干大きい。移動抑制部材8の内周面80は、その軸心方向から見て、略円形である。移動抑制部材8の軸心方向寸法(長さ)は、設置部512の軸心方向寸法(長さ)と略同じである。
移動抑制部材8と駆動部材71との間には、円筒状(円環状)の補強部材9が設置される。補強部材9は、金属材料で形成される。補強部材9の軸心方向寸法(長さ)は、移動抑制部材8の軸心方向寸法(長さ)と略同じである。組み付け前における移動抑制部材8の内周面80の直径は、補強部材9の外周面91の直径よりも若干小さい。補強部材の内周面90は、圧入により、その全周で、駆動部材71の外周面711に固定される。補強部材の外周面91は、圧入により、その全周で、移動抑制部材8の内周面80に固定される。他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、作用を説明する。移動抑制部材8を樹脂やゴムにより形成した場合でも、駆動部材71と移動抑制部材8との間に補強部材9を介在させることで、移動抑制部材8の摩耗を抑制し、その耐久性を向上できる。すなわち、揺動する駆動部材71に接する部分を、移動抑制部材8よりも耐摩耗性に優れた金属製の補強部材9とすることで、上記部分の耐久性を向上できる。また、駆動部材71と移動抑制部材8との間に補強部材9を介在させることで、より確実に駆動部材71を移動抑制部材8に対して固定できる。よって、移動抑制部材8のスリップ抑制機能をより確実に発揮させることができる。
他の作用効果は第1実施形態と同様である。
[第4実施形態]
まず、構成を説明する。本実施形態のポンプ装置1では、移動抑制部材8がコイルばね8bを有する。図13は、ポンプ装置1の図4と同様の部分断面を示す。図14は図13のXIV-XIV視断面に相当する。図15は図13のXV-XV視断面に相当する。設置部512は、カム室51において、その軸心方向におけるシリンダ収容孔52よりも第2面502の側にある。なお、カム室51の軸心方向でシリンダ収容孔52よりも第1面501の側に設置部512があってもよい。設置部512は、複数の凹部515を有する。これらの凹部515は、周方向で略等間隔に並ぶ。各凹部515は、有底円筒状であり、設置部512の径方向に延びる。複数の凹部515の軸心は略同一平面上にある。周方向で、各凹部515は各ピストン36(シリンダ収容孔52)に対応する。カム室51の軸心方向から見て、凹部515はピストン36に重なり、凹部515の軸心はピストン36の軸心360に重なる。
移動抑制部材8は、当接部材8aとコイルばね8bを有する。移動抑制部材8は、複数のピストン36に対応して複数設けられている。当接部材8aは樹脂材料で形成されており、円板状である。当接部材8aの軸心方向一方側の面85は平面状である。面85は駆動部材71の外周面711に当接する。当接部材8aの軸心方向他方側の面には、当接部材8aの軸心周り方向に延びるリング状の溝86がある。コイルばね8bは金属ばねであり、一端側が設置部512の凹部515に設置され、他端側が当接部材8aの溝86に設置される。コイルばね8bは、ハウジング50と当接部材8aとの間に押し縮められた状態で配置され、当接部材8a(面85)を駆動部材71(外周面711)に向けて常時付勢する。
次に、作用を説明する。コイルばね8bは、設置部512の径方向に押し縮められることで、当接部材8aを駆動部材71に向けて付勢する付勢部材として機能する。当接部材8aは、コイルばね8bにより、駆動部材71に対して押付けられる。この押付け力により、ハウジング50に対する少なくとも周方向における駆動部材71の移動が抑制されるため、スリップが抑制される。なお、ハウジング50に対する回転軸4の軸心方向における駆動部材71の移動も抑制されるため、上記スリップの抑制効果が向上する。なお、駆動部材71に当接する当接部材8aの面85の形状は任意であり、例えば駆動部材71の外周面711に倣う凹曲面状でもよい。
移動抑制部材8において駆動部材71に接触する部分(当接部材8aの面85)が多少摩耗しても、コイルばね8bの付勢力により、当接部材8aの駆動部材71に対する押付け力が確保される。よって、移動抑制部材8の機能をより長期間にわたり安定的に得ることができる。なお、コイルばね8bに代えて、樹脂等により形成された弾性体を、上記付勢部材として用いてもよい。本実施形態では、コイルばね8bを用いることで、当接部材8aが摩耗してもその分だけコイルばね8bが伸長する。その際、コイルばね8bの付勢力の変化量は少ない。よって、摩耗分を埋めつつ押付け力を安定的に確保することが容易である。なお、当接部材8aは金属材料で形成されてもよい。他の作用効果は第1実施形態と同様である。
[他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明したが、本発明の具体的な構成は、実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、ピストン36と駆動部材71との間(ピストン36の側または駆動部材71の側)に、両者間の摩擦係数を低減するための部材として、転動体を設置してもよい。また、両者間の摩擦係数を低減するため、ピストン36または駆動部材71に表面処理を施してもよい。