JP2015027867A - 自動車ホイール用ディスクおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハット部での疲労特性を向上させることが可能な自動車ホイール用ディスクを提供する。【解決手段】ホイールディスク1は、熱延鋼板をバルジ加工してなり、ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部2、内側湾曲部3、ハット部4、外側湾曲部5およびフランジ部6を有し、ハット部4の裏面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.7μm以上である。ハブ取付け部2は、内側湾曲部3に隣接し屈曲して内側湾曲部につながるハブ取付け外周部を有し、ハブ取付け外周部の裏面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.7μm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼板を塑性加工してなる自動車ホイール用ディスク(以下、「ホイールディスク」ともいう)に関し、特に、ハイドロフォーミングとも称されるバルジ加工を活用して成形される自動車ホイール用ディスク、およびその製造方法に関する。
一般に、自動車ホイールは、タイヤを装着して保持する円筒状のリムと、リムを支持して自動車のハブに取り付けられる円盤状のディスクとから構成される。これらのホイールリムとホイールディスクは、一体で成形することもできるが、別個に成形したものを溶接で接合して一体化することが多い。
図1は、自動車ホイール用ディスクの一例を示す断面図である。同図に示すように、ホイールディスク1は、鋼板を塑性加工してなり、ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部2、内側湾曲部3、ハット部4、外側湾曲部5およびフランジ部6を有する。ハブ取付け部2にはその中心にハブ穴2aが形成される。また、ハブ取付け部2には、ハブ穴2aの周囲に、平坦なナット座2bが形成され、このナット座2bには、ハブ穴2aを中心とする同一円周上に等間隔で複数のボルト穴2cが形成される。ハット部4は、ハブ取付け部2の外周から内側湾曲部3を介してディスク表面側に突き出す。フランジ部6は、ハット部4の外周から外側湾曲部5を介してディスク裏面側に延び出す。
ホイールディスク1は、フランジ部6がホイールリムの内側に嵌め込まれて溶接などで接合され、これにより、ホイールディスク1とホイールリムが一体化され、自動車ホイールとなる。自動車ホイールは、ハブ取付け部2のハブ穴2aに自動車ハブのセンターボスを挿通させるとともに、ハブ取付け部2の各ボルト穴2cに自動車ハブからのボルトを挿通させ、各ボルトにナットを螺合させて締め付けることにより、自動車ハブに固定される。
自動車の走行中、自動車ホイールには、ホイールディスク1を表裏方向に曲げるように曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントに対し、ホイールディスク1は、ハット部4によって形状的に剛性が高められ、変形の抑制が図られている。
一般に、ホイールディスクは、鋼板を素材とし、これをプレス加工することによって成形される(例えば、特許文献1、2参照)。このとき、ホイールディスクは形状が複雑であるため、プレス加工による成形は、多段階に分けて行われ、段階ごとに異なる幾種の金型を用いる必要がある。例えば、平板の鋼板に絞り加工を施し、さらにその逆方向からの絞り加工を施して、ハット部を突出させた大まかな形状を造形し、その後に、ホイールディスクの形状が彫り込まれた一対の金型によってプレス加工を行う。そして、実際には、トリミング、曲げ、穴抜き、コイニングなどの後工程を経て最終製品のホイールディスクが製造される。
特開昭64−66032号公報 特開2000−225432号公報
桜田栄作,他2名,「疲労特性に及ぼす表面摩擦の影響/Influence of surface friction on fatigue property」,CAMP-ISIJ,Vol.22,2009,p.546
上述のとおり、自動車の走行中、ホイールディスクは、ハット部によって変形が抑制される。このため、ホイールディスクには、特にハット部に繰り返し曲げ応力が作用することになり、ハット部での優れた疲労特性が要求される。
ところで、ホイールディスクの素材は主に熱延鋼板である。熱延鋼板は冷延鋼板に比べて表面が粗く表層の凹凸が大きい。このような熱延鋼板をプレス加工する場合、鋼板は、表裏面ともに金型が強く押し付けられて金型と擦れ合うので、表層の凹凸のうち、凸部は削られて平滑化され、これに伴って凹部は先鋭化した微小孔となる。平滑面に微小孔が存在すると、負荷を受けたときにその微小孔に応力が集中するため、プレス成形品は、素材鋼板(熱延鋼板)よりも疲労強度が低下し疲労特性が悪化する。このことは、非特許文献1に記述されている。
そうすると、プレス加工によって熱延鋼板をホイールディスクに成形する場合、金型との擦れ合いにより、ハット部を含めてホイールディスクの表裏面が平滑化され、その平滑面に先鋭化した微小孔が発生するため、ハット部での疲労特性の向上が望めない。
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、ハット部での疲労特性を向上させることが可能な自動車ホイール用ディスク、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、下記(I)の自動車ホイール用ディスク、並びに下記(II)および(III)の自動車ホイール用ディスクの製造方法にある。
(I)鋼板を塑性加工してなり、ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクであって、
前記ハット部の裏面の表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上である自動車ホイール用ディスクである。
上記(I)のホイールディスクの前記ハブ取付け部は、前記内側湾曲部に隣接し屈曲して前記内側湾曲部につながるハブ取付け外周部を有する。前記ハブ取付け外周部の裏面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.7μm以上であることが好ましい。
(II)ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクの製造方法であって、
被加工材として2枚の熱延鋼板を準備し、いずれか一方の前記鋼板の縁部に貫通穴を形成する準備工程と、
前記鋼板を積み重ね、互いの周縁を全周にわたり溶接接合する溶接工程と、
前記鋼板を膨らませて前記ディスクに成形するバルジ加工工程と、を含む自動車ホイール用ディスクの製造方法である。
ここで、前記バルジ加工工程は、
前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有し、互いに対向配置された一対からなる内側成形用金型と、
この内側成形用金型の外周に隣接して互いに対向配置された一対からなり、前記外側湾曲部および前記フランジ部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する外側成形用金型と、
この外側成形用金型の外周に隣接して互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板の周縁部を摺動可能に挟持する被加工材保持用金型と、を用いる工程であって、
前記内側成形用金型および前記外側成形用金型を所定位置から退避させた状態で、前記被加工材保持用金型によって前記鋼板の周縁部を挟持する第1工程と、
この第1工程に続いて、前記鋼板の前記貫通穴から前記鋼板同士の間に液体を導入して液圧を付与し、前記鋼板を膨らませる第2工程と、
この第2工程に続いて、前記外側成形用金型を所定位置に進出させる第3工程と、
この第3工程に続いて、前記内側成形用金型を所定位置に進出させる第4工程と、
この第4工程に続いて、前記液圧を高め、前記鋼板を前記内側成形用金型の前記彫刻部および前記外側成形用金型の前記彫刻部に沿うまで膨らませる第5工程と、を含む。
上記(II)のホイールディスクの製造方法において、
前記バルジ加工工程の前記第2工程では、前記鋼板の膨らみ部分の径方向断面での総延長が、前記ディスクの前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部、前記ハット部、前記外側湾曲部および前記フランジ部の径方向断面での総延長の90〜110%になるように、前記鋼板を膨らませることが好ましい。
(III)ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクの製造方法であって、
被加工材として1枚の熱延鋼板を準備する準備工程と、
前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を隆起させる絞り加工を施す予備加工工程と、
前記鋼板を膨らませて前記ディスクに成形するバルジ加工工程と、を含む自動車ホイール用ディスクの製造方法である。
ここで、前記予備加工工程は、
互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板における前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部に対応する領域を摺動不可能に挟持する被加工材保持用第1金型と、
この被加工材保持用第1金型の外周から前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を空けて互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板の周縁部を摺動可能に挟持する被加工材保持用第2金型と、
前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域に配置された環状のパンチと、を用いる工程であって、
前記被加工材保持用第1金型および前記被加工材保持用第2金型によって前記鋼板を挟持する第1予備加工工程と、
この第1予備加工工程に続いて、前記パンチを前記鋼板に押し込み、前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を隆起させる第2予備加工工程と、を含む。
そして、前記バルジ加工工程は、
前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する内側成形用金型と、
この内側成形用金型の外周に隣接して配置され、前記外側湾曲部および前記フランジ部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する外側成形用金型と、
この外側成形用金型の外周に隣接して配置された押さえ型、並びにこの押さえ型、前記内側成形用金型および前記外側成形用金型に対向して配置され、前記鋼板の隆起した面とは反対の面に宛がわれる台座型からなり、前記鋼板の周縁部を摺動不可能に挟持する被加工材保持用金型と、を用いる工程であって、
前記内側成形用金型および前記外側成形用金型を所定位置から退避させた状態で、前記被加工材保持用金型によって前記鋼板の周縁部を挟持する第1工程と、
この第1工程に続いて、前記鋼板と前記台座型との間に液体を導入して液圧を付与し、前記鋼板を膨らませる第2工程と、
この第2工程に続いて、前記外側成形用金型を所定位置に進出させる第3工程と、
この第3工程に続いて、前記内側成形用金型を所定位置に進出させる第4工程と、
この第4工程に続いて、前記液圧を高め、前記鋼板を前記内側成形用金型の前記彫刻部および前記外側成形用金型の前記彫刻部に沿うまで膨らませる第5工程と、を含む。
上記(III)のホイールディスクの製造方法において、
前記予備加工工程の前記第2予備加工工程では、前記鋼板における前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部に対応する領域の部分、並びに隆起部分の径方向断面での総延長が、前記ディスクの前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部、前記ハット部、前記外側湾曲部および前記フランジ部の径方向断面での総延長の90〜110%になるように、前記鋼板を隆起させることが好ましい。
上記(II)、(III)のホイールディスクの製造方法において、前記ハブ取付け部が、前記内側湾曲部に隣接し屈曲して前記内側湾曲部につながるハブ取付け外周部を有する場合、
前記内側成形用金型が、中心側に配置される第1内側成形用金型と、前記第1内側成形用金型の外周に隣接して配置される第2内側成形用金型とを含み、
前記第1内側成形用金型の外側面、および前記第2内側成形用金型の内側面が、前記ディスクの前記ハブ取付け外周部に対応する部分に位置しており、
前記第4工程が、前記第1および第2内側成形用金型の前記ディスクの最終形状に対応する状態に対して、前記第1内側成形用金型を、前記第2内側成形用金型より、所定長さだけ下方に突出させた状態で、前記第2内側成形用金型を所定位置に進出させる工程を含み、
当該製造方法が、前記第5工程に続いて、前記第1内側成形用金型を前記第2内側成形用金型に対して、前記所定長さだけ後退させる第6工程をさらに含むことが好ましい。
この場合、前記バルジ加工工程により、前記ハブ取付け外周部における前記鋼板の板厚に対するバルジ加工前後の板厚変化量の比率を平均で3.5%以上にすることが好ましい。
上記(II)、(III)のホイールディスクの製造方法において、
前記バルジ加工工程により、前記ハット部における前記鋼板の板厚に対するバルジ加工前後の板厚変化量の比率を平均で3.5%以上にすることが好ましい。
本発明の自動車ホイール用ディスクは、ハット部の裏面の表面粗さが素材鋼板の表面粗さと同等に維持されており、平滑化されてなく、先鋭化した微小孔も発生していないので、ハット部での疲労特性の向上が可能である。また、本発明の自動車ホイール用ディスクの製造方法は、バルジ加工を活用するため、本発明のホイールディスクを有効に製造することができる。
自動車ホイール用ディスクの一例を示す断面図である。 基礎試験の工程の概略を示す断面図である。 基礎試験で得られた成形品の表裏面それぞれの外観を示す写真である。 基礎試験で得られた成形品の裏面の一部を拡大したミクロ観察写真である。 基礎試験の結果として素材鋼板、プレス成形品およびバルジ成形品の裏面の断面プロファイルの一例を示す図である。 基礎試験の結果として素材鋼板、プレス成形品およびバルジ成形品の裏面の表面粗さをまとめた図である。 自動車ホイール用ディスクのハット部の領域を拡大して示す断面図である。 自動車ホイール用ディスクのハブ取付け部周辺を拡大して示す断面図である。 本発明の第1実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。 本発明の第2実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。 本発明の第3実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。 第1実施形態における実施例の試験結果としてホイールディスクにおける板厚変化率の分布を示す図である。 第3実施形態における実施例の試験結果としてホイールディスクにおける板厚変化率の分布を示す図である。
上述のとおり、従来のホイールディスクは、熱延鋼板を素材とし、この熱延鋼板をプレス加工して成形されるものであるため、プレス加工の過程で、ハット部を含めて表裏面が平滑化されるとともに、その平滑面に先鋭化した微小孔が発生する。すなわち、従来のホイールディスクは、成形前の素材鋼板(熱延鋼板)と比較し、表裏面ともに表面粗さが著しく小さくなっている。このような平滑化がハット部での疲労特性の悪化と相関がある。
そこで本発明者らは、この点に着目し、成形後のホイールディスクのハット部で素材鋼板の表面粗さを極力維持することが可能ならば、疲労特性の向上を図ることができると考えた。この考えのもとで、素材鋼板をホイールディスクに成形する塑性加工の手法について鋭意検討を重ねた結果、下記(1)および(2)の知見を得た。
(1)塑性加工法としてバルジ加工を適用し、熱延鋼板をバルジ加工する場合、鋼板は、表裏面のうちの一方の面、例えば裏面から液圧が付与され、これにより膨らむ。そして、鋼板は、表裏面のうちの他方の面、例えば表面に対向して配置されている金型の彫刻部に押し付けられ、その彫刻部の形状に成形される。この場合、鋼板において、液圧が付与される一方の面は、金型に押し付けられることも金型と擦れ合うこともないため、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持され、先鋭化した微小孔も発生しない。
このことを実証するために、以下に示すように、プレス加工による場合と、バルジ加工による場合とで成形品の表面性状を調査する基礎試験を実施した。
図2は、基礎試験の工程の概略を示す断面図である。図3は、基礎試験で得られた成形品の表裏面それぞれの外観を示す写真であり、図4は、その成形品の裏面の一部を拡大したミクロ観察写真である。これらの図2〜図4のいずれでも、(a)はプレス加工による場合を、(b)はバルジ加工による場合をそれぞれ示す。
プレス加工では、素材として、2.3mmの板厚で150mm角サイズの440MPa級汎用熱延鋼板(SPH440)を採用し、バルジ加工では、同じ板厚と鋼種で250mm角サイズの熱延鋼板を採用した。そして、図2に示すように、その素材の鋼板7に概ね半球状で高さが25mmの張り出し部を成形した。すなわち、プレス加工の場合、図2(a)に示すように、中央に直径が100mmの穴51aが形成された上型51と、中央に先端の曲率半径が50mmのパンチ53が収納された下型52とによって、素材鋼板7の周縁部を摺動不可能に強固に挟持し、この状態で、パンチ53を素材鋼板7の裏面に当てがい押し上げた。バルジ加工の場合、図2(b)に示すように、中央に直径が100mmの穴41aが形成された上型41と、中央に液体が充満される凹部42aが形成された下型42とによって、素材鋼板7の周縁部を摺動不可能に強固に挟持し、この状態で、下型42の凹部42aに液体43を導入して素材鋼板7に裏面から液圧を付与し、鋼板7を膨らました。
図3(a)に示すように、プレス加工で得られた成形品は、パンチが接触する裏面において、特に、張り出し部の頂部から約20mmの同一円周上に白色の領域が点在しているのがわかる。この白色領域は、金型(パンチ)との擦れ合いによって表層の凸部が削られて平坦化していることを示す。その白色領域を拡大した図4(a)のミクロ観察写真にも白色の領域が広く認められる。このため、プレス加工によれば、金型と接触する鋼板表層で平坦化が生じていることが確認できる。
これに対し、図3(b)、図4(b)に示すように、バルジ加工で得られた成形品は、液圧が付与される裏面において、特異に白色がかった領域は認められない。このため、バルジ加工によれば、液圧が付与される鋼板表層で平坦化が生じていないことが確認できる。
また、上記の基礎試験に先立ち、素材鋼板の断面プロファイルを接触式表面粗さ計によって測定した。そして、その素材鋼板をプレス加工して得られたプレス成形品、およびバルジ加工して得られたバルジ成形品について、それぞれの裏面(プレス成形品の場合はパンチと接触する面、バルジ成形品の場合は液圧が付与される面)の断面プロファイルを接触式表面粗さ計により測定した。さらに、各々の測定結果から、JIS B0601に準拠し、素材鋼板、プレス成形品およびバルジ成形品それぞれの表面粗さとして算術平均粗さRaを求めた。
図5は、基礎試験の結果として素材鋼板、プレス成形品およびバルジ成形品の裏面の断面プロファイルの一例を示す図であり、同図(a)は素材鋼板の場合を、同図(b)はプレス成形品の場合を、同図(c)はバルジ成形品の場合をそれぞれ示す。図6は、その素材鋼板、プレス成形品およびバルジ成形品の裏面の表面粗さをまとめた図である。なお、図6に示す表面粗さRaは、各対象材について、張り出し部の頂部から約20mmの位置において周方向に4箇所、半径方向に4箇所の合計8箇所でプロファイル測定を行い、その結果から求めた表面粗さRaの平均値である。
図5(a)、(b)に示すように、プレス成形品の場合、素材鋼板と比較し、表層の凹凸のうちの凸部が削られて平滑化されていることがわかる。これに対し、図5(a)、(c)に示すように、バルジ成形品の場合は、表層の凹凸が素材鋼板と同等でほとんど変わらないことがわかる。
また、図6に示すように、表面粗さRaは、素材鋼板の場合に0.9μm程度である。ところが、プレス成形品の場合は素材鋼板よりも著しく小さい0.5μm程度であり、0.7μmをはるかに下回る。バルジ成形品の表面粗さRaは、素材鋼板よりも僅かに小さい0.8μm程度であり、0.7μmを超える。
これらの試験結果より、熱延鋼板からホイールディスクを成形するのにバルジ加工を活用すれば、特にハット部の表裏面のうちの裏面は、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持されて、その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上に確保されることから、ハット部での疲労特性の向上が期待できる。
また、後述するように、ハブ取付け部において、内側湾曲部に隣接し屈曲して内側湾曲部につながる部分(ハブ取付け外周部)も、ハット部と同様に、優れた疲労特性が要求される。熱延鋼板からホイールディスクを成形するのにバルジ加工を活用すれば、ハブ取付け外周部の裏面も、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持されて、その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上に確保されるので、ハブ取付け外周部での疲労特性の向上が期待できる。
(2)ホイールディスクの成形にバルジ加工を活用する場合、素材鋼板は液圧の付与によって膨らみ、摩擦力の発生がなく等二軸変形するので、歪みが均一になるという利点もある。ただし、通常のバルジ加工の手法に従い、素材鋼板を一度に膨らましてホイールディスクを成形する場合、ハブ取付け部やハット部といったような小さいコーナーRを有する細部の形状を造形するために、過大な液圧を付与する必要がある。これに加えて、細部の板厚が過度に減少し、特にハット部での疲労特性に悪影響を及ぼすおそれもある。
このようなバルジ加工での不都合は、ホイールディスクの表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する金型を、ハブ取付け部、内側湾曲部およびハット部の形状を造形するための内側成形用金型と、外側湾曲部およびフランジ部の形状を造形するための外側成形用金型と、に分割し、これらの内側成形用金型と外側成形用金型の動作を個別に制御することにより、解消することが可能である。
具体的には、先ず、内側成形用金型および外側成形用金型をいずれも所定位置から退避させた状態で素材鋼板に液圧を付与し、その鋼板をある程度膨らませる。その後、外側成形用金型を所定位置に進出させ、次いで内側成形用金型を所定位置に進出させて、鋼板の膨らみ部分に外側成形用金型と内側成形用金型をこの順に押し付ける。これにより、鋼板の膨らみ部分は、ハット部に対応する領域が折り曲げられて突出した形状になり、全体としてもホイールディスクの形状に概ね沿った形状が造形される。そして、鋼板に付与する液圧を高め、鋼板を内側成形用金型および外側成形用金型の彫刻部に沿うまで膨らませる。このようにすれば、過大な液圧を付与しなくても、小さいコーナーRを有するハット部を成形することができ、ハット部の板厚が過度に減少することもない。
本発明は、上記の知見に基づき完成させたものである。以下に、本発明のホイールディスクおよびその製造方法について、その好ましい態様を説明する。
1.ホイールディスク
本発明のホイールディスクは、前記図1に示すホイールディスク1と同様に、ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部2、内側湾曲部3、ハット部4、外側湾曲部5およびフランジ部6を有する。特に、本発明のホイールディスク1は、熱延鋼板を素材とし、この熱延鋼板を塑性加工して成形されるものであり、ハット部4の裏面の表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上である。すなわち、ハット部4の裏面は、その表面粗さが素材鋼板(熱延鋼板)の表面粗さと同等に維持されており、平滑化されていない。このため、本発明のホイールディスク1は、ハット部4での疲労特性の向上が可能である。
ハット部4の裏面の表面粗さRaが0.7μm未満であると、ハット部4の裏面が平滑化し、その平滑面に先鋭化した微小孔が存在するといえるので、疲労特性の向上が望めない。このため、ハット部4の裏面の表面粗さRaは、上記のとおり、0.7μm以上とする。より好ましくは、0.8μm以上とする。なお、素材鋼板に適用される熱延鋼板の表面粗さRaが最大でも3.0μm程度であることから、ハット部4の裏面の表面粗さRaの上限は、現実的には、3.0μm以下である。
ここで、ハット部4の領域の具体的な範囲について、その一例を、下記図7Aを参照して説明する。
図7Aは、自動車ホイール用ディスクのハット部の領域を拡大して示す断面図である。同図に示すように、ホイールディスクの径方向断面において、ハット部4は、ディスク表面側に突き出した領域である。具体的には、ハブ取付け部2のナット座2bを基準にし、このナット座2bに垂直な方向で表面側に最も突き出した部分をハット頂部4aとする。このハット頂部4aを中心にナット座2bと平行な方向で6mmの範囲のコーナーR部分における平均曲率半径がRaveであるとき、ハット頂部4aを中心にナット座2bと平行な方向で2Raveの範囲の領域をハット部4と規定することができる。
このようにハット部4の領域を規定する理由は、この領域で疲労亀裂が発生し易いからである。すなわち、ハット部4の疲労亀裂は、ハット部4の曲率が増減するような曲げが負荷されることによって発生するわけであるが、これは、ハット頂部4a近傍の曲率半径と密接な関係性を有しており、おおよそハット頂部4aを中心に2Raveの範囲の領域で疲労亀裂が発生し易いからである。
図7Bは、図1のハブ取付け部2周辺を拡大して示す断面図である。ハブ取付け部2は、平坦部2dを含む。ナット座2bは、傾斜部2eを介して平坦部2dに接続されており、平坦部2dからディスク表面側に突き出す。ナット座2b、および傾斜部2eは、大略的に円錐台の形状を有し、ホイールディスク1の中心軸周りに、複数個形成されている。図7Bの断面では、平坦部2dは、ナット座2bに対して、ハブ穴2a側と、内側湾曲部3側とに存在するが、ナット座2b、および傾斜部2eが形成されていない部分の断面では、連続した領域に存在する。ハブ穴2aは、ハブ取付け部2において、平坦部2dから、ディスク表面側に突き出した部分に形成される。
平坦部2d、傾斜部2e、ナット座2b、および内側湾曲部3において、隣接する部分には、コーナーR部分(丸みを帯びた屈曲部)が形成されている。このうち、平坦部2dと内側湾曲部3との間、すなわち、ハブ取付け部2において、内側湾曲部3との隣接部のコーナーR部分であるハブ取付け外周部2hには、ハット部4と同様に、大きな曲げ応力が繰り返し作用し、疲労亀裂が発生し易い。これは、ホイールディスク1において、ハブ取付け外周部2hより中心側の部分は、車軸に密接して固定され、変形がほとんど生じないのに対して、ハブ取付け外周部2h、およびそれより中心から遠い部分は、他の部材に固定されておらず、変形しやすいことによる。ハブ取付け外周部2hは、他の部材に固定されている部分に隣接しているため、大きな曲げ応力が生じ得る。
ハブ取付け外周部の範囲は、ハブ取付け外周部2hに隣接する平坦部2dから内側湾曲部3に向けて断面プロファイルを測定した際の1つ目の変曲点から2つ目の変曲点までの間の領域と規定することができる。ハブ取付け外周部2hの裏面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.7μm以上である。すなわち、ハブ取付け外周部2hの裏面は、その表面粗さが素材鋼板(熱延鋼板)の表面粗さと同等に維持されており、平滑化されていない。このため、このホイールディスク1は、ハブ取付け外周部2hにおいても、疲労特性の向上が可能である。
本発明のホイールディスク1は、例えば、以下に示すように、バルジ加工を活用した塑性加工法によって成形することができる。
2.ホイールディスクの製造方法
<第1実施形態>
図8は、本発明の第1実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。本第1実施形態の製造方法は、図8(a)に示すように、被加工材(素材)として2枚の熱延鋼板7を準備する準備工程と、両鋼板7を互いに溶接接合する溶接工程とを含む。さらに、図8(b)〜(f)に示すように、両鋼板7を同時に膨らませて各々をホイールディスク1に成形するバルジ加工工程を含む。
準備工程では、図8(a)に示すように、2枚の熱延鋼板7を準備し、いずれか一方の鋼板7の縁部7aに貫通穴7bを形成する。この貫通穴7bは、バルジ加工工程で両鋼板7に液圧を付与するための液体の導入口となる。鋼板7は、矩形でも円形でも構わない。さらに、溶接工程では、図8(a)に示すように、両鋼板7を積み重ね、互いの周縁を全周にわたり溶接接合する。この溶接部8は、バルジ加工工程で両鋼板7に液圧を付与する際に液体の漏出を防止する役割を担う。
次に、バルジ加工工程では、図8(b)〜(f)に示すように、内側成形用金型11と、外側成形用金型12と、被加工材保持用金型13と、から構成される分割金型を用いる。本第1実施形態の内側成形用金型11は、互いに上下に対向配置された一対からなる。内側成形用金型11は、ホイールディスク1のハブ取付け部2、内側湾曲部3およびハット部4の表面形状が彫り込まれた彫刻部11aを有する。
外側成形用金型12は、内側成形用金型11の外周に隣接して互いに上下に対向配置された一対からなる。外側成形用金型12は、ホイールディスク1の外側湾曲部5およびフランジ部6の表面形状が彫り込まれた彫刻部12aを有する。
被加工材保持用金型13は、外側成形用金型12の外周に隣接して互いに上下に対向配置された一対からなる。被加工材保持用金型13は、鋼板7の周縁部7aを摺動可能に挟持する役割を担う。
これらの分割金型を用いたバルジ加工工程は、以下に示す第1工程〜第5工程を順に経る。先ず、第1工程において、図8(b)に示すように、内側成形用金型11および外側成形用金型12をいずれも所定位置から退避させた状態にし、この状態で、被加工材保持用金型13によって鋼板7の周縁部7aを挟持する。これにより、内側成形用金型11および外側成形用金型12と鋼板7との間に、大きく広がった空間が形成される。鋼板7の周縁部7aは、被加工材保持用金型13によって比較的緩い圧力で挟み込まれており、被加工材保持用金型13に対し摺動することが許容されている。
続いて、第2工程において、図8(c)に示すように、鋼板7同士の間に液体14を導入して液圧を付与する。この液体14の導入は、被加工材保持用金型13に設けられている液体供給路15から鋼板7の貫通穴7bを通じて行われる。これにより、鋼板7は、退避状態の内側成形用金型11および外側成形用金型12との間の広い空間内に、ある程度膨らむ。このとき、鋼板7の周縁部7aは、被加工材保持用金型13によって挟持されつつ、その一部が退避状態の外側成形用金型12との間の空間内に引き込まれる。このため、鋼板7の膨らみ部分で板厚の減少が抑制される。
なお、図8(c)〜(f)では、上下で対になる鋼板7、並びに内側成形用金型11、外側成形用金型12および被加工材保持用金型13のうち、下側に配置されたものの図示を省略している。それらの挙動は上下で対象だからである。
続いて、第3工程において、図8(d)に示すように、外側成形用金型12のみを所定位置に進出させる。これにより、鋼板7の膨らみ部分のうちの外側部分に、外側成形用金型12の彫刻部12aが押し付けられ、外側湾曲部5およびフランジ部6の形状に概ね沿った形状が造形される。これと同時に、ハット部4に対応する領域の外側湾曲部5側が急峻に立ち上がった形状になる。その際、鋼板7の膨らみ部分の裏面には、液体14による液圧が付与され続けている。
続いて、第4工程において、図8(e)に示すように、内側成形用金型11を所定位置に進出させる。これにより、鋼板7の膨らみ部分のうちの残りの内側部分に、内側成形用金型11の彫刻部11aが押し付けられ、ハブ取付け部2、内側湾曲部3およびハット部4の形状に概ね沿った形状が造形される。これと同時に、ハット部4に対応する領域が折り曲げられて突出した形状になる。その際、鋼板7の膨らみ部分の裏面には、液体14による液圧が付与され続けている。
続いて、第5工程において、図8(f)に示すように、さらに液体14を導入して液圧を高める。これにより、鋼板7の膨らみ部分は、内側成形用金型11の彫刻部11aおよび外側成形用金型12の彫刻部12aに沿うまで膨らむ。これでバルジ加工工程が終了する。
このようにして、図8(g)に示すホイールディスク1を成形することができる。そして、トリミング、曲げ、穴抜き、コイニングなどの後工程を経て最終製品のホイールディスク1が製造される。
第1実施形態の製造方法によれば、バルジ加工工程において、上記のとおりに内側成形用金型と外側成形用金型の動作を個別に制御することにより、過大な液圧を付与しなくても、ハット部を成形することができる。しかも、ハット部の裏面は、成形中に液圧が付与されるのみであるため、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持され、先鋭化した微小孔も発生しない。さらに、ハット部は、バルジ加工工程において、板厚の減少を抑制しつつ鋼板を一旦膨らませ、この膨らみ部分を折り曲げることにより成形されるので、ハット部の板厚が過度に減少することはない。
また、第1実施形態の製造方法によれば、従来のプレス加工による場合と比較して、金型の数を削減できる。
これらに加えて、第1実施形態の製造方法では、同時に2枚のホイールディスクを成形できるという利点もある。
ところで、第1実施形態の製造方法の場合、バルジ加工工程の第2工程において、鋼板の膨らみ部分の径方向断面での総延長(以下、「鋼板膨らみ部分の総延長」という)が、ホイールディスクのハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部の径方向断面での総延長(以下、「ホイールディスクの総延長」という)の90〜110%になるように、鋼板を膨らませることが好ましい。その理由は次のとおりである。
鋼板膨らみ部分の総延長があまりに短いと、バルジ加工工程の第2工程に続く第3工程、第4工程において、鋼板の膨らみ部分と内側成形用金型および外側成形用金型との間の隙間が広くなる。このため、それに続く第5工程において、鋼板が膨らむことに伴って板厚が減少し、その結果としてハット部の板厚が過度に減少するおそれがある。一方、鋼板膨らみ部分の総延長があまりに長いと、バルジ加工工程の第2工程に続く第3工程〜第5工程において、鋼板の膨らみ部分が余剰になり、かぶり疵といった品質不具合が生じるおそれがある。したがって、鋼板膨らみ部分の総延長は、ホイールディスクの総延長の90〜110%の範囲とするのが好ましい。
ここで、素材鋼板の板厚をt0とし、成形後のホイールディスクの板厚をt1としたとき、下記(1)式で表される、素材鋼板の板厚に対するバルジ加工前後の板厚変化量の比率(以下、「板厚変化率」という)T(%)を考える。
T=(t1−t0)/t0×100 ・・・(1)
板厚変化率Tが+(プラス)であるときは素材鋼板に対して板厚が増加していることを意味し、逆に−(マイナス)であるときは素材鋼板に対して板厚が減少していることを意味する。ハット部の板厚が素材鋼板の板厚に対して増加すると、ハット部での疲労特性がより向上する。このため、ハット部における平均の板厚変化率Tが3.5%以上であることが好ましい。これにより、ハット部に発生する最大主応力が低減し疲労亀裂の発生を抑制することが可能となる。
ハット部における平均の板厚変化率Tを3.5%以上に確保するには、鋼板膨らみ部分の総延長をホイールディスクの総延長の100%以上にすればよい。
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。本第2実施形態の製造方法は、図9(a)に示すように、被加工材(素材)として1枚の熱延鋼板7を準備する準備工程と、図9(b)、(c)に示すように、その鋼板7に絞り加工を施す予備加工工程とを含む。さらに、図9(d)〜(h)に示すように、予備加工後の鋼板7を膨らませてホイールディスク1に成形するバルジ加工工程を含む。
準備工程では、図9(a)に示すように、1枚の単なる熱延鋼板7を準備する。
次に、予備加工工程では、図9(b)、(c)に示すように、被加工材保持用第1金型21と、被加工材保持用第2金型22と、環状のパンチ23とを用いる。被加工材保持用第1金型21は、互いに上下に対向配置された一対からなる。被加工材保持用第1金型21は、鋼板7におけるハブ取付け部、内側湾曲部およびハット部に対応する領域を摺動不可能に挟持する役割を担う。
被加工材保持用第2金型22は、被加工材保持用第1金型21の外周から鋼板7における外側湾曲部およびフランジ部に対応する領域を空けて互いに上下に対向配置された一対からなる。被加工材保持用第2金型22は、鋼板7の周縁部7aを摺動可能に挟持する役割を担う。
パンチ23は、鋼板7における外側湾曲部およびフランジ部に対応する領域、すなわち下側の被加工材保持用第1金型21と被加工材保持用第2金型22との間に同心状に配置される。
これらの金型を用いた予備加工工程は、以下に示す第1予備加工工程および第2予備加工工程を順に経る。先ず、第1予備加工工程において、図9(b)に示すように、被加工材保持用第1金型21および被加工材保持用第2金型22によって鋼板7を挟持する。このとき、鋼板7の内側の領域は、被加工材保持用第1金型21によって強い圧力で挟み込まれており、被加工材保持用第1金型21に対しての摺動が阻止されている。一方、鋼板7の周縁部7aは、被加工材保持用第2金型22によって比較的緩い圧力で挟み込まれており、被加工材保持用第2金型22に対し摺動することが許容されている。
続いて、第2予備加工工程において、図9(c)に示すように、パンチ23を突き上げる。これにより、鋼板7にパンチ23が押し込まれ、鋼板7は、外側湾曲部およびフランジ部に対応する領域が隆起する。このとき、鋼板7の周縁部7aは、被加工材保持用第2金型22によって挟持されつつ、その一部が被加工材保持用第1金型21と被加工材保持用第2金型22との間の空間内に引き込まれる。このため、鋼板7の隆起部分で板厚の減少が抑制される。
次に、バルジ加工工程では、図9(d)〜(h)に示すように、内側成形用金型11と、外側成形用金型12と、被加工材保持用金型13と、から構成される分割金型を用いる。本第2実施形態の内側成形用金型11は、上方にのみ配置される。内側成形用金型11は、ホイールディスク1のハブ取付け部2、内側湾曲部3およびハット部4の表面形状が彫り込まれた彫刻部11aを有する。
外側成形用金型12は、内側成形用金型11の外周に隣接して配置される。外側成形用金型12は、ホイールディスク1の外側湾曲部5およびフランジ部6の表面形状が彫り込まれた彫刻部12aを有する。
被加工材保持用金型13は、押さえ型16と台座型17とからなる。押さえ型16は、外側成形用金型12の外周に隣接して配置される。台座型17は、押さえ型16、内側成形用金型11および外側成形用金型12に対向して下方に配置され、予備加工後の鋼板7の隆起した面(表面)とは反対の面(裏面)に宛がわれる。本第2実施形態の被加工材保持用金型13は、鋼板7の周縁部7aを摺動不可能に挟持する役割を担う。
これらの分割金型を用いたバルジ加工工程は、上記した第1実施形態とほぼ同じ、第1工程〜第5工程を順に経る。以下、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。
先ず、第1工程において、図9(d)に示すように、内側成形用金型11および外側成形用金型12をいずれも所定位置から退避させた状態にし、この状態で、被加工材保持用金型13によって予備加工後の鋼板7の周縁部7aを挟持する。このとき、鋼板7の周縁部7aは、被加工材保持用金型13に対しての摺動が阻止されている。この摺動の阻止は、被加工材保持用金型13を構成する押さえ型16と台座型17とに、互いに嵌まり合う環状の突起と溝(いわゆるロックビード)を設けておくことで行える。また、被加工材保持用金型13による挟み込みの圧力を強くすることでもよい。
続いて、第2工程において、図9(e)に示すように、鋼板7と台座型17との間に液体14を導入して液圧を付与する。この液体14の導入は、台座型17に設けられている液体供給路15を通じて行われる。これにより、予備加工後の鋼板7は、退避状態の内側成形用金型11および外側成形用金型12との間の広い空間内に、ある程度膨らむ。このとき、鋼板7は、隆起部分よりはむしろ、その内側の窪んだ領域が主体的に膨らみ、この膨らみ部分で板厚の減少はほとんどない。
続いて、上記した第1実施形態と同様に、第3工程において、図9(f)に示すように、外側成形用金型12のみを所定位置に進出させ、これに続いて、第4工程において、図9(g)に示すように、内側成形用金型11を所定位置に進出させる。これにより、鋼板7の膨らみ部分は、ハット部4に対応する領域が折り曲げられて突出した形状になり、全体としてもホイールディスク1の形状に概ね沿った形状が造形される。
続いて、第5工程において、図9(h)に示すように、さらに液体14を導入して液圧を高める。これにより、鋼板7の膨らみ部分(隆起部分も含む)は、内側成形用金型11の彫刻部11aおよび外側成形用金型12の彫刻部12aに沿うまで膨らむ。これでバルジ加工工程が終了し、図9(i)に示すホイールディスク1を成形することができる。そして、トリミング、曲げ、穴抜き、コイニングなどの後工程を経て最終製品のホイールディスク1が製造される。
第2実施形態の製造方法によっても、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。もっとも、第2実施形態の製造方法では、予備加工工程で鋼板の裏面とパンチが擦れ合うが、その擦れ合う領域は、ホイールディスクの外側湾曲部およびフランジ部に対応する領域に限定されるため、ハット部の裏面の表面性状には全く影響しない。
加えて、上記の第1実施形態では、同時に2枚のホイールディスクを成形できるものの、第2実施形態の製造方法は、第1実施形態のような煩雑な溶接工程が不要である点で有利である。
また、第2実施形態の製造方法の場合、上記の第1実施形態と同様の理由から、第2予備加工工程において、鋼板におけるハブ取付け部、内側湾曲部およびハット部に対応する領域の部分、並びに隆起部分の径方向断面での総延長(以下、「鋼板隆起部分を含む総延長」という)、すなわち上記の第1実施形態でいう「鋼板膨らみ部分の総延長」が、ホイールディスクの総延長の90〜110%になるように、鋼板を隆起させることが好ましい。ハット部における平均の板厚変化率Tを3.5%以上に確保するには、鋼板隆起部分を含む総延長をホイールディスクの総延長の100%以上にすればよい。
<第3実施形態>
図10は、本発明の第3実施形態である自動車ホイール用ディスクの製造方法を説明するための製造工程を模式的に示す断面図である。第3実施形態は、図9に示す第2実施形態を変形したものであり、図10において、図9に示す構成要素に対応する部分には、図9と同じ参照符号を付して説明を省略する。本第3実施形態の製造方法は、第2実施形態と同様に、被加工材(素材)として1枚の熱延鋼板7を準備する準備工程(図9(a)参照)と、その鋼板7に絞り加工を施す予備加工工程(図9(b)および(c)参照)とを含み、さらに、第2実施形態とは一部異なるバルジ加工工程を含む。
バルジ加工工程では、図10に示すように、内側成形用金型として、中心側に配置される第1内側成形用金型11Aと、第1内側成形用金型11Aの外周に隣接して配置される第2内側成形用金型11Bとを備えたものと、外側成形用金型12と、被加工材保持用金型13と、から構成される分割金型を用いる。
第1内側成形用金型11Aは、ホイールディスク1のハブ取付け部2の大部分の表面形状が彫り込まれた彫刻部11Aaを有する。第2内側成形用金型11Bは、内側湾曲部3およびハット部4の表面形状が彫り込まれた彫刻部11Baを有する。第1内側成形用金型11Aの外側面、および第2内側成形用金型11Bの内側面は、ホイールディスク1のハブ取付け外周部2hに対応する部分に位置している。
先ず、第1〜第3工程を、第2実施形態と同様に実施する。すなわち、鋼板7の周縁部を、台座型17と被加工材保持用金型13とで挟持し、第1および第2の内側成形用金型11A、11B、並びに外側成形用金型12を、所定位置から退避した状態とし(図10(a)参照)、鋼板7と台座型17との間に液体14を導入し、鋼板7に液圧を付与して、鋼板7を膨らませる(図10(b)参照)。そして、外側成形用金型12を所定位置まで進出させて、鋼板7の膨らみ部分の一部を、外側成形用金型12の彫刻部12aに沿う形状にする(図10(c)参照)。
次に、第4工程において、図10(d)に示すように、第1および第2内側成形用金型11A、11Bのディスクの最終形状に対応する状態に対して、第1内側成形用金型11Aを、第2内側成形用金型11Bより、所定長さDだけ下方に突出させた状態を維持して、第2内側成形用金型11Bを所定位置に進出させる(図10(e)参照)
これにより、鋼板7の膨らみ部分のうち、外側成形用金型12の彫刻部12aが押し付けられている部分以外の大部分に、第1内側成形用金型11Aの彫刻部11Aa、または第2内側成形用金型11Bの彫刻部11Baが押し付けられ、ハブ取付け部2、内側湾曲部3およびハット部4の形状に概ね沿った形状が造形される。これと同時に、ハット部4に対応する領域が折り曲げられて突出した形状になる。その際、鋼板7の膨らみ部分の裏面には、液体14による液圧が付与され続けている。
続いて、第5工程において、図10(f)に示すように、さらに液体14を導入して液圧を高める。これにより、鋼板7の膨らみ部分は、第1内側成形用金型11Aの彫刻部11Aa、第2内側成形用金型11Bの彫刻部11Ba、および外側成形用金型12の彫刻部12aに沿うまで膨らむ。第1内側成形用金型11Aと第2内側成形用金型11Bとが隣接する部分では、第1内側成形用金型11Aが上述の態様で下方に突出していることにより、鋼板7の傾斜が大きくなっている(図10(g)参照)。
さらに、この第3実施形態では、鋼板7に液圧を付与したまま、第1内側成形用金型11Aを、第2内側成形用金型11Bに対して、所定長さDだけ後退させる。これにより、第1内側成形用金型11Aと、第2内側成形用金型11Bとは、ディスクの最終形状に対応する状態となる。
第1内側成形用金型11Aに接する部分の鋼板7は、第1内側成形用金型11Aとともに後退する(図10(h)において、後退前の鋼板7を破線で示し、後退後の鋼板7を実線で示す。)。このとき、第1内側成形用金型11Aと第2内側成形用金型11Bとが隣接する部分近傍では、鋼板7は、その表面に沿う長さが短くなり、その結果、その部分が増肉される(図10(h)において、増肉される部分を、符号「T」で示す。)。このような加工をするためには、鋼板7の板厚は、1〜10mmであることが好ましく、また、所定長さDは、増肉すべき部分の径方向断面での実長(表面に沿う長さ;mm)の0.5〜1.5倍であることが好ましい。これでバルジ加工工程が終了する。
第3実施形態の製造方法によれば、ハット部、およびハブ取付け外周部の裏面は、成形中に液圧が付与されるのみであるため、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持され、先鋭化した微小孔も発生しない。さらに、ハブ取付け外周部は、バルジ加工工程において増肉されるので、板厚が大きいハブ取付け外周部を得ることができる。
第3実施形態の製造方法の場合、第2実施形態の場合と同様に、バルジ加工工程の第2工程において、鋼板膨らみ部分の総延長が、ホイールディスクの総延長の90〜110%になるように、鋼板を膨らませることが好ましい。
ハブ取付け外周部での疲労特性を高くするため、ハブ取付け外周部における平均の板厚変化率T(上記(1)式参照)が3.5%以上であることが好ましい。これにより、ハブ取付け外周部に発生する最大主応力が低減し疲労亀裂の発生を抑制することが可能となる。
第1の実施形態においても、内側成形用金型11の代わりに、第1内側成形用金型11Aと、第2内側成形用金型11Bとを含むものを用いて、これらの金型に関して、第3実施形態と同様の工程を実施することができる。この場合も、ハット部、およびハブ取付け外周部の裏面は、平滑化されずに素材鋼板の表面粗さが維持され、先鋭化した微小孔も発生しない。さらに、この場合も、ハブ取付け外周部は、バルジ加工工程において増肉されるので、板厚が大きいハブ取付け外周部を得ることができる。
以上のように第1実施形態を変形した場合も、バルジ加工工程の第2工程において、鋼板膨らみ部分の総延長が、ホイールディスクの総延長の90〜110%になるように、鋼板を膨らませることが好ましい。
〈実施例1〉
本発明の効果を確認するため、前記図8に示す第1実施形態の製造方法を採用し、バルジ加工を活用してホイールディスクを成形することを想定した数値解析シミュレーションを行った。その際、バルジ加工工程の第2工程において、鋼板膨らみ部分の総延長がホイールディスクの総延長の100%になるように、鋼板を膨らませた。また、比較のために、同形状のホイールディスクを従来のプレス加工によって成形することを想定した数値解析シミュレーションを行った。素材鋼板としては、板厚が2.3mmの440MPa級汎用熱延鋼板(SPH440)を用いた。
本発明例としてバルジ加工を活用して得られたホイールディスクについて、径方向に沿って表面と裏面の断面プロファイルを抽出した。また、比較例として、プレス加工によって得られたホイールディスクについて、径方向に沿って表面と裏面の断面プロファイルを抽出した。比較例では、ディスク中心回りに45度ずれた2方向で抽出を行った。そして、各々の結果より、ディスク中心からの径方向距離ごとに板厚を算出し、上記(1)式に従って板厚変化率Tを求めた。
図11は、実施例として汎用FEMソフトのLS−DYNAバージョン971を用いて検討したホイールディスクにおける板厚変化率の分布を示す図である。同図に示すように、本発明例では、ハット部における平均の板厚変化率Tが3.5%以上になり、ハット部の板厚を素材鋼板の板厚よりも大幅に増加させることができた。一方、比較例では、ハット部における平均の板厚変化率Tが3.5%をはるかに下回り、ハット部の板厚がむしろ素材鋼板の板厚よりも減少した。
〈実施例2〉
前記図10に示す第3実施形態の製造方法を採用し、バルジ加工を活用してホイールディスクを成形することを想定した数値解析シミュレーションを行った。その際、バルジ加工工程の第2工程において、鋼板膨らみ部分の総延長がホイールディスクの総延長の100%になるように、鋼板を膨らませた。また、比較のために、同形状のホイールディスクを従来のプレス加工によって成形することを想定した数値解析シミュレーションを行った。素材鋼板としては、板厚が2.3mmの440MPa級汎用熱延鋼板(SPH440)を用いた。
本発明例としてバルジ加工を活用して得られたホイールディスクについて、径方向に沿って表面と裏面の断面プロファイルを抽出した。また、比較例として、プレス加工によって得られたホイールディスクについて、径方向に沿って表面と裏面の断面プロファイルを抽出した。比較例では、ディスク中心回りに45度ずれた2方向で抽出を行った。そして、各々の結果より、ディスク中心からの径方向距離ごとに板厚を算出し、上記(1)式に従って板厚変化率Tを求めた。
図12は、実施例として汎用FEMソフトのLS−DYNAバージョン971を用いて検討したホイールディスクにおける板厚変化率の分布を示す図である。同図に示すように、本発明例では、ハブ取付け外周部における平均の板厚変化率Tが3.5%以上になり、ハット部の板厚を素材鋼板の板厚よりも大幅に増加させることができた。一方、比較例では、ハブ取付け外周部における平均の板厚変化率Tが3.5%をはるかに下回り、ハブ取付け外周部の板厚がむしろ素材鋼板の板厚よりも減少した。
本発明は、自動車ホイール用ディスクおよびその製造に有効に利用できる。
1:ホイールディスク、 2:ハブ取付け部、 2a:ハブ穴、
2b:ナット座、 2c:ボルト穴、 2h:ハブ取付け外周部、
3:内側湾曲部、 4:ハット部、 4a:ハット頂部、 5:外側湾曲部、
6:フランジ部、 7:鋼板、 7a:鋼板の周縁部、 7b:貫通穴、
8:溶接部、
11:内側成形用金型、 11a:彫刻部、 11A:第1内側成形用金型、
11B:第2内側成形用金型、 12:外側成形用金型、 12a:彫刻部、
13:被加工材保持用金型、 14:液体、 15:液体供給路、
16:押さえ型、 17:台座型、
21:被加工材保持用第1金型、 22:被加工材保持用第2金型、
23:環状パンチ

Claims (9)

  1. 鋼板を塑性加工してなり、ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクであって、
    前記ハット部の裏面の表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上である
    ことを特徴とする自動車ホイール用ディスク。
  2. 前記ハブ取付け部が、前記内側湾曲部に隣接し屈曲して前記内側湾曲部につながるハブ取付け外周部を有し、
    前記ハブ取付け外周部の裏面の表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の自動車ホイール用ディスク。
  3. ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクの製造方法であって、
    被加工材として2枚の熱延鋼板を準備し、いずれか一方の前記鋼板の縁部に貫通穴を形成する準備工程と、
    前記鋼板を積み重ね、互いの周縁を全周にわたり溶接接合する溶接工程と、
    前記鋼板を膨らませて前記ディスクに成形するバルジ加工工程と、を含み、
    前記バルジ加工工程は、
    前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有し、互いに対向配置された一対からなる内側成形用金型と、
    この内側成形用金型の外周に隣接して互いに対向配置された一対からなり、前記外側湾曲部および前記フランジ部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する外側成形用金型と、
    この外側成形用金型の外周に隣接して互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板の周縁部を摺動可能に挟持する被加工材保持用金型と、を用いる工程であって、
    前記内側成形用金型および前記外側成形用金型を所定位置から退避させた状態で、前記被加工材保持用金型によって前記鋼板の周縁部を挟持する第1工程と、
    この第1工程に続いて、前記鋼板の前記貫通穴から前記鋼板同士の間に液体を導入して液圧を付与し、前記鋼板を膨らませる第2工程と、
    この第2工程に続いて、前記外側成形用金型を所定位置に進出させる第3工程と、
    この第3工程に続いて、前記内側成形用金型を所定位置に進出させる第4工程と、
    この第4工程に続いて、前記液圧を高め、前記鋼板を前記内側成形用金型の前記彫刻部および前記外側成形用金型の前記彫刻部に沿うまで膨らませる第5工程と、を含む
    ことを特徴とする自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  4. 前記バルジ加工工程の前記第2工程では、前記鋼板の膨らみ部分の径方向断面での総延長が、前記ディスクの前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部、前記ハット部、前記外側湾曲部および前記フランジ部の径方向断面での総延長の90〜110%になるように、前記鋼板を膨らませる
    ことを特徴とする請求項3に記載の自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  5. ディスク中心側から順に、同心状に、ハブ取付け部、内側湾曲部、ハット部、外側湾曲部およびフランジ部を有する自動車ホイール用ディスクの製造方法であって、
    被加工材として1枚の熱延鋼板を準備する準備工程と、
    前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を隆起させる絞り加工を施す予備加工工程と、
    前記鋼板を膨らませて前記ディスクに成形するバルジ加工工程と、を含み、
    前記予備加工工程は、
    互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板における前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部に対応する領域を摺動不可能に挟持する被加工材保持用第1金型と、
    この被加工材保持用第1金型の外周から前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を空けて互いに対向配置された一対からなり、前記鋼板の周縁部を摺動可能に挟持する被加工材保持用第2金型と、
    前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域に配置された環状のパンチと、を用いる工程であって、
    前記被加工材保持用第1金型および前記被加工材保持用第2金型によって前記鋼板を挟持する第1予備加工工程と、
    この第1予備加工工程に続いて、前記パンチを前記鋼板に押し込み、前記鋼板における前記外側湾曲部および前記フランジ部に対応する領域を隆起させる第2予備加工工程と、を含み、
    前記バルジ加工工程は、
    前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する内側成形用金型と、
    この内側成形用金型の外周に隣接して配置され、前記外側湾曲部および前記フランジ部の表面形状が彫り込まれた彫刻部を有する外側成形用金型と、
    この外側成形用金型の外周に隣接して配置された押さえ型、並びにこの押さえ型、前記内側成形用金型および前記外側成形用金型に対向して配置され、前記鋼板の隆起した面とは反対の面に宛がわれる台座型からなり、前記鋼板の周縁部を摺動不可能に挟持する被加工材保持用金型と、を用いる工程であって、
    前記内側成形用金型および前記外側成形用金型を所定位置から退避させた状態で、前記被加工材保持用金型によって前記鋼板の周縁部を挟持する第1工程と、
    この第1工程に続いて、前記鋼板と前記台座型との間に液体を導入して液圧を付与し、前記鋼板を膨らませる第2工程と、
    この第2工程に続いて、前記外側成形用金型を所定位置に進出させる第3工程と、
    この第3工程に続いて、前記内側成形用金型を所定位置に進出させる第4工程と、
    この第4工程に続いて、前記液圧を高め、前記鋼板を前記内側成形用金型の前記彫刻部および前記外側成形用金型の前記彫刻部に沿うまで膨らませる第5工程と、を含む
    ことを特徴とする自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  6. 前記予備加工工程の前記第2予備加工工程では、前記鋼板における前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部および前記ハット部に対応する領域の部分、並びに隆起部分の径方向断面での総延長が、前記ディスクの前記ハブ取付け部、前記内側湾曲部、前記ハット部、前記外側湾曲部および前記フランジ部の径方向断面での総延長の90〜110%になるように、前記鋼板を隆起させる
    ことを特徴とする請求項5に記載の自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  7. 前記ハブ取付け部が、前記内側湾曲部に隣接し屈曲して前記内側湾曲部につながるハブ取付け外周部を有し、
    前記内側成形用金型が、中心側に配置される第1内側成形用金型と、前記第1内側成形用金型の外周に隣接して配置される第2内側成形用金型とを含み、
    前記第1内側成形用金型の外側面、および前記第2内側成形用金型の内側面が、前記ディスクの前記ハブ取付け外周部に対応する部分に位置しており、
    前記第4工程が、前記第1および第2内側成形用金型の前記ディスクの最終形状に対応する状態に対して、前記第1内側成形用金型を、前記第2内側成形用金型より、所定長さだけ下方に突出させた状態で、前記第2内側成形用金型を所定位置に進出させる工程を含み、
    当該製造方法が、前記第5工程に続いて、前記鋼板に前記液圧を付与したまま、前記第1内側成形用金型を前記第2内側成形用金型に対して、前記所定長さだけ後退させる第6工程をさらに含む
    ことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  8. 前記バルジ加工工程により、前記ハブ取付け外周部における前記鋼板の板厚に対するバルジ加工前後の板厚変化量の比率を平均で3.5%以上にする
    ことを特徴とする請求項7に記載の自動車ホイール用ディスクの製造方法。
  9. 前記バルジ加工工程により、前記ハット部における前記鋼板の板厚に対するバルジ加工前後の板厚変化量の比率を平均で3.5%以上にする
    ことを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の自動車ホイール用ディスクの製造方法。
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