以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るモータシステムMSの構成を示すブロック図である。本実施形態では、例えばモータシステムMSは、制御装置1、複数の三相ブラシレス直流モータ(以下、単にモータとも呼ぶ)を備える。前記複数のモータは、任意の数でよいが、図1に示す例では2つのモータ21、22である。制御装置1は、モータ21およびモータ22の2つのモータに接続される。また、制御装置1は、電源Vdcに接続される。
電源Vdcは、例えば電力を供給する直流電圧源であり、電池(例えば二次電池)、太陽電池、および燃料電池等の直流電源、または商用電源等の交流電源に接続され交流電力を交直変換して直流電力を出力するAC−DC(Alternating Current−Direct Current)コンバータ等である。具体的には、電源Vdcは、制御装置1に含まれる後述の正極側端子Pe1、負極側端子Pe2を介して駆動制御部12に接続される。
制御装置1は、1台で、複数のモータの回転動作を制御する。本実施形態では、制御装置1は、複数のモータの回転動作を同期させる制御を行う。なお、前記回転動作の同期制御は、前記回転子の回転数または前記回転子の回転速度を、複数のモータ間で略一致させる制御である。本実施形態では、制御装置1は、例えばモータ21、22を含めたモータシステムMS全体の制御や各種演算等を行う。制御装置1は、例えば信号入力部13と、信号出力部14と、検出部17と、駆動制御部12とを有する。信号入力部13は、検出部17に接続され、また駆動制御部12に接続される。信号出力部14は、駆動制御部12に接続される。制御装置1は、例えば電源Vdcに接続するための一対の電源端子Pe(正極側端子Pe1、負極側端子Pe2)、およびモータ21、22のホールIC211、221に電源供給するために使用される、電源供給部15と、GND端子16とをさらに有する。電源端子Peは、駆動制御部12に接続される。電源供給部15は、例えば5Vの電圧を生成する不図示の低圧直流電源部と、駆動制御部12とに接続される。GND端子16は、接地され、基準電位例えば0Vとされる。
信号入力部13(13u、13v、13w)は、各相に対応して複数の端子を備え、複数のブラシレス直流モータにおける複数の位置検出センサの各々から出力された、固定子に対する回転子の回転位置を表す複数の回転位置信号(以下、個別回転位置信号とも呼ぶ)を各相(例えばu相、v相、w相)毎に重畳した各相の重畳信号(以下、重畳回転位置信号とも呼ぶ)が入力される。各個別回転位置信号は、複数の位置検出センサの一例であるモータ21のホールIC211u、211v、211w、およびモータ22のホールIC221u、221v、221wのそれぞれから出力される。なお、符号末尾のu、v、wの文字は、各々u相、v相、w相に対応することを表し、三相を区別する場合に符号末尾に添付されており、以下も同様である。
検出部17は、信号入力部13に入力された各相の重畳回転位置信号のうちの特定の相の重畳回転位置信号に基づいて前記複数のモータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する。本実施形態の制御装置1は、例えば三相のうちの何れか一相の重畳回転位置信号を使用して複数のモータの回転動作を同期させる制御を行う。すなわち本実施形態の制御装置1は、前記三相のうちの何れか一相を特定の相とし、前記特定の相の重畳回転位置信号に基づいて、特定のモータにおける個別回転位置信号を検出し、複数のモータの回転動作を同期させる制御を行う。なお、特定のモータについては後述する。
検出部17は、例えば、前記各相ごとに設けられ重畳回転位置信号の電流変化を検出する複数の電流変化検出部の一例である抵抗Ru、Rv、Rwと、前記各相ごとに設けられ重畳回転位置信号の電圧変化を検出する複数の電圧変化検出部(u相電圧変化検出部、v相電圧変化検出部、w相電圧変化検出部)を含む検出回路11aと、前記複数のモータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する回転位置検出部11bと、前記特定の相を決定する検出対象決定部11cとを有する。なお、電流検出用の抵抗Ru、Rv、Rwは、予め既知な抵抗値であり、信号入力部13u、13v、13wと前記GNDとの各間に各々接続される。検出回路11aは、これら抵抗Ru、Rv、Rwの各両端電圧を各々検出する。
検出部17は、制御装置1に接続されるモータが2個の場合は、例えば第1モータおよび第2モータの2個のモータのうち、前記特定の相の個別回転位置信号が後述の所定の条件を満たした方のモータを前記特定のモータとする。制御装置1に接続されるモータが3個以上の場合は、検出部17は、前記3個以上のモータのうちの前記特定の相の個別回転位置信号が所定の条件を満たした方のモータを前記特定のモータとする。このように検出部17が特定のモータを決定することで、本実施形態の駆動制御部12は、例えば前記特定の相の重畳回転位置信号の電流変化等から前記複数のモータのうちの特定のモータについて個別回転位置信号を検出して、当該個別回転位置信号に基づいた制御を行う。よって、当該特定のモータに負荷が加わっても、駆動制御部12は、その負荷を加味して当該特定のモータを例えば速度一定に制御できる。すなわち、モータが2個の場合、検出部17が、2個のうちの第1モータと第2モータのうちの前記所定の条件を満たしたモータを前記特定のモータとすることで、第1のモータ(例えばモータ21)および第2のモータ(例えばモータ22)のいずれに負荷が加わっても、駆動制御部12は、速度一定に制御できる。また、モータが3個以上の場合は、検出部17が、3個以上のモータのうちの前記所定の条件を満たしたモータを前記特定のモータとすることで、前記3個以上のモータのいずれに負荷が加わっても、駆動制御部12は、速度一定に制御できる。
信号出力部14(14u、14v、14w)は、駆動制御部12で生成した前記特定のモータを駆動する駆動信号を、前記複数のモータそれぞれの駆動信号として、前記複数のモータそれぞれに出力する。本実施形態では、信号出力部14は、モータ21および22の各々に回転動作をさせる同じ三相の駆動信号(以下、駆動電力とも呼ぶ)をモータ21および22の各々に出力する。
駆動制御部12は、検出部17で検出された前記特定のモータにおける個別回転位置信号に基づいて、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する。駆動制御部12は、例えば制御演算部11と複数のスイッチング素子Swを有する。制御演算部11は、複数のスイッチング素子Sw、電源供給部15および信号入力部13(13u、13v、13w)に接続され、さらに前記GNDに接地される。複数のスイッチング素子Swは、電源端子Peおよび信号出力部14に接続され、また制御演算部11に接続される。
複数のスイッチング素子Swは、電源Vdcからの電力供給を受け、制御演算部11から出力される制御信号Sxに従い、前記特定のモータを駆動する駆動信号(駆動電力)を生成する。複数のスイッチング素子Swは、モータ21、22が三相で駆動されることから、6つのスイッチング素子a1、a2、b1、b2、c1、c2を含む。各スイッチング素子a1〜c2は、例えばパワートランジスタ(パワーMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を含む)であり、本実施形態ではパワーMOS−FETである。なお、スイッチング素子a1、b1、c1は例えばPチャネルMOS−FETであり、スイッチング素子a2、b2、c2は例えばNチャネルMOS−FETである。複数のスイッチング素子Swは、所謂三相フルブリッジインバータを構成している。
スイッチング素子a1およびスイッチング素子a2は直列に接続され、スイッチング素子b1およびスイッチング素子b2は直列に接続され、スイッチング素子c1およびスイッチング素子c2は直列に接続されている。また、各スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2には、それぞれ還流電流を流すためのダイオードd1、ダイオードd2、ダイオードd3、ダイオードd4、ダイオードd5、ダイオードd6が並列に接続されている。より具体的には、電源端子Peの正極側端子Pe1に、各スイッチング素子a1、スイッチング素子b1、スイッチング素子c1のドレイン、および、ダイオードd1、ダイオードd3、ダイオードd5のカソード端子がそれぞれ接続される。負極側端子Pe2に、各スイッチング素子a2、スイッチング素子b2、スイッチング素子c2のソース、および、ダイオードd2、ダイオードd4、ダイオードd6のアノード端子がそれぞれ接続される。なお、スイッチング素子a2のソースおよびゲートの間にはコンデンサCpaが接続され、スイッチング素子b2のソースおよびゲートの間にはコンデンサCpbが接続され、スイッチング素子c2のソースおよびゲートの間にはコンデンサCpcが接続されている。
ダイオードd1のアノードおよびスイッチング素子a1のソースと、ダイオードd2のカソードおよびスイッチング素子a2のドレインとは、信号出力部14uに接続される。ダイオード3のアノードおよびスイッチング素子b1のソースと、ダイオード4のカソードおよびスイッチング素子b2のドレインとは、信号出力部14vに接続される。ダイオードd5のアノードおよびスイッチング素子c1のソースと、ダイオードd6のカソードおよびスイッチング素子c2のドレインとは、信号出力部14wに接続される。
なお、電源端子Peの正極側端子Pe1と負極側端子Pe2との間には、ノイズ低減のためのコンデンサCp1およびCp2が接続される。コンデンサCp1は、スイッチング素子a1およびスイッチング素子a2で構成される直列回路に接続される。コンデンサCp2は、スイッチング素子c1およびスイッチング素子c2で構成される直列回路に接続される。また、電源供給部15と前記GNDとの間には、ノイズ低減のためのコンデンサCp3が接続される。
制御演算部11は、検出部17で検出された前記特定のモータにおける個別回転位置信号に基づいて、複数のスイッチング素子Swに対して、複数のスイッチング素子Swが前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成するための制御信号Sxを出力する。制御信号Sxは、例えばモータ21を特定のモータとする場合には信号出力部14から三相ブラシレス直流モータ21に、互いに120度ずつ位相がずれた三相の駆動電流(駆動信号)が供給されるように、各スイッチング素子a1〜c2のオンオフを制御するための信号である。制御演算部11は、さらに例えばモータシステムMSの全体制御、および各種演算等を行う。制御演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)およびそれらの周辺回路を備えて構成される。
本実施形態では、制御演算部11は内部に、例えば信号入力部13u、13v、13wからの重畳回転位置信号の電流変化を抵抗Ru、Rv、Rwによって電流電圧変換し電圧変化で検出する検出回路11aを有する。さらに検出回路11aは、重畳回転位置信号のハイレベル(High Level)、ローレベル(Low Level)の電圧変化も検出する。制御装置1は、これら重畳回転位置信号の電流変化、および電圧変化に基づいて、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する制御信号Sxを生成し、この生成した制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。本実施形態では、制御演算部11は内部に、例えば検出回路11a中の前記複数の電圧変化検出部(u相電圧変化検出部、v相電圧変化検出部、w相電圧変化検出部)のうちの前記特定の相に対応した電圧変化検出部によって検出された重畳回転位置信号の電圧変化と、前記複数の電流変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された重畳回転位置信号の電流変化と、に基づいて、前記複数のモータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する回転位置検出部11bをさらに有する。すなわち、回転位置検出部11bは、例えば検出回路11aから重畳回転位置信号の各電流変化(電圧変化)の通知を受け、重畳回転位置信号の各変化タイミングに対応する各モータの個別回転位置信号の変化タイミングを各々検出する。
制御演算部11は内部に、例えば複数の電流変化検出部(本実施形態では、抵抗Ru、Rv、Rw)によって各相の重畳回転位置信号の電流変化を検出した後、最初に重畳回転位置信号の電圧変化を検出した検出回路11a中の電圧変化検出部に対応する相を前記特定の相とする検出対象決定部11cをさらに有する。なお、検出回路11a、回転位置検出部11b、および検出対象決定部11cは、検出部17の一例である。制御演算部11は、さらに、例えば前記複数のモータを強制転流で駆動する強制転流駆動信号を生成し、前記生成した強制転流駆動信号を信号出力部14から出力させる強制転流駆動制御部11dを備える。強制転流の制御では、前記各ホールICからの個別回転位置信号は使用されず、制御装置1に接続されている全てのモータを、同様に回転動作を開始させるために、制御装置1に設定されている予め実験等で得られた所定の周波数(回転数)が用いられる。
制御演算部11は、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2の各ゲートに接続され、前記制御信号Sxとして、各スイッチング素子a1〜c2のオンオフを切り換える各スイッチング信号Sa1、Sa2、Sb1、Sb2、Sc1、Sc2を出力する。なお、各スイッチング素子a1〜c2と、前記スイッチング信号Sa1〜Sc2の信号はこの順に対応する。
なお、本実施形態では、制御演算部11は、例えば重畳回転位置信号の電流の最大値とホールIC211(またはホールIC221)からの出力電流の定格値とから、例えば前記最大値を前記定格値で除算することで、接続されているモータの台数を算出する。なお、接続されているモータの台数は、例えば当該モータが回転始動する前に、運転員が不図示の入力部から入力して外部から設定するものであってもよい。
検出回路11aは、検出回路11aに入力される信号の電圧を検出する機能を有し、例えば複数の電流変化検出部の一例である抵抗Ru、Rv、Rwの前記各両端電圧を検出することで、前記各相の重畳回転位置信号の電流変化を検出する。具体的に例えば、検出回路11aは、前記各重畳回転位置信号の電圧値(Vu、Vv、Vw)をm値(mは3以上の自然数)で量子化して検出する機能を有する。制御装置1に接続されたモータがN台のとき、重畳回転位置信号の電圧値は(N+1)個となり、検出値は(N+1)値で表される。なお本実施形態では、モータは2台なので3値である。検出回路11aに入力される前記各重畳回転位置信号の電圧値Vu、Vv、Vwは、各々電流変化検出部である前記抵抗Ru、Rv、Rwの各抵抗の両端の電圧に略等しく、重畳回転位置信号の電流変化のタイミングと前記両端電圧の変化のタイミングは一致するので、検出回路11aでm値で検出された電圧変化により、電流Iu、Iv、Iwの電流変化は、検出可能である。
また、本実施形態では、検出回路11aは、前記各相ごとに設けられ重畳回転位置信号のハイレベル、ローレベルの電圧変化を検出する複数の電圧変化検出部(u相電圧変化検出部、v相電圧変化検出部、w相電圧変化検出部)を含む。具体的には、各電圧変化検出部は、前記信号入力部13u、13v、13wから制御演算部11に各々入力される重畳回転位置信号の電圧を所定の閾値でハイレベルとローレベルで2値化して検出する(以下、バイナリ電圧とも称する)。検出回路11aは、信号入力部13u、13v、13wから入力された各相の信号の電圧を計測することで、前記2値の電圧値(ハイレベル、ローレベル)と、前記各相の重畳回転位置信号の電流値に対応する前記m値の電圧値とを同時に検出する。
回転位置検出部11bは、例えばモータが2個の場合は、前記複数の電圧変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電圧変化検出部によって検出された重畳回転位置信号の電圧変化と、前記複数の電流変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された重畳回転位置信号の電流変化と、を交互に優先することによって、前記複数のモータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する。また、回転位置検出部11bは、例えばモータが3個以上の場合は、前記複数の電流変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された連続する2つの前記電流変化によって、前記3個以上のモータのうちの前記特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する。本実施形態では、回転位置検出部11bは、例えば検出回路11aによる重畳回転位置信号の前記電圧変化および前記電流変化の検出結果に基づいて、制御装置1につながる複数のモータの各々の前記回転子について個別回転位置信号の電流変化の変化タイミングを検出する。なお制御演算部11は、当該検出結果を使用して、複数のスイッチング素子Swに対して、前記制御信号Sxを出力する。
検出対象決定部11cは、例えば検出回路11aが抵抗Ru、Rv、Rwの前記各両端電圧変化を検出することで重畳回転位置信号の電流変化を検出した後、最初に重畳回転位置信号の電圧変化を検出した検出回路11a中の電圧変化検出部に対応する相を前記特定の相とする。強制転流駆動制御部11dは、本実施形態では、モータ21、22の始動時に、モータ21、22に前記強制転流により回転動作を開始させる。
次に、モータ21および22について説明する。モータ21および22は、例えば製造ラインで使用される搬送機器の搬送用モータ等である。なお、モータ21とモータ22の構成は同じであるので、以下では代表してモータ21の構成について主に説明する。モータ21は、複数の位置検出センサの一例であるホールIC211(211u、211v、211w)、位置信号出力部212(212u、212v、212w)、固定子および回転子を有するモータ本体部213、電力入力部214(214u、214v、214w)、ホールIC211への電源供給のための電源供給部215およびGND端子216を有する。ホールIC211(211u、211v、211w)の各々には、電源供給部215、GND端子216がそれぞれ接続され、また各位置信号出力部212(212u、212v、212w)がその相を合わせて接続される。モータ本体部213の各相の入力には、電力入力部214(214u、214v、214w)がその相を合わせてそれぞれ接続される。
モータ本体部213は、例えば、電力入力部214から入力される三相の駆動信号によって回転磁界を発生する所謂スター結線された3極の界磁コイル(u相、v相、w相)を有する固定子、および前記界磁コイルにN極およびS極を対向させた2極の永久磁石を有し前記固定子に対して回転軸を中心に回転する回転子を備え、前記三相の駆動電力の入力を受け、前記回転子の回転により前記回転軸から回転力を出力する。電力入力部214(214u、214v、214W)は、各相の前記界磁コイルに接続され、電力入力部214には、モータ21(モータ本体部213)を回転動作させる前記三相の駆動電力が入力される。
ホールIC211(211u、211v、211w)は、固定子に対する回転子の回転位置を検出して前記回転位置を表す個別回転位置信号を出力し、回転方向に所定の間隔を空けて複数の相に対応させて配置された複数の位置検出センサの一例である。具体的には、ホールIC211(211u、211v、211w)は、例えば電源供給部215およびGND端子216により電源供給され、前記回転子が有する永久磁石の接離を検出することで固定子に対する回転子の回転位置を検出し、個別回転位置信号H1(H1u、H1v、H1w)を各位置信号出力部212に出力する。具体的には、ホールIC211u、211v、211w各々は、例えば前記回転子が1回転する間に、前記回転子におけるN極永久磁石の接近を検出してローレベルからハイレベルへ切り換わり(以下、ローレベルからハイレベルへの切り換わりをアップエッジと呼ぶ)、例えばその半回転後に前記回転子におけるN極永久磁石の離間を検出してハイレベルからローレベルへ切り換わる個別回転位置信号H1u、H1v、H1wを各々出力する(以下、ハイレベルからローレベルへの切り換わりをダウンエッジと呼ぶ)。各モータからの個別回転位置信号H1u、H1v、H1wが切り換わるタイミングを検出することで、各モータにおける前記固定子に対する前記回転子の回転位置を検出することが可能となる。なお、ホールIC211u、211v、211wは各々、例えば回転子の回転方向に120度(機械角)ずつ間隔を空けて前記固定子の所定の位置に配設される。よって、個別回転位置信号H1u、H1v、H1wは、互いに位相が120度ずれている。
なお、モータ21とモータ22との対応関係について説明すると、モータ22のホールIC221(221u、221v、221w)、位置信号出力部222(222u、222v、222w)、モータ本体部223、電力入力部224(224u、224v、224w)、電源供給部225およびGND端子226は、各々、モータ21のホールIC211(211u、211v、211w)、位置信号出力部212(212u、212v、212w)、モータ本体部213、電力入力部214(214u、214v、214w)、電源供給部215およびGND端子216に対応する。モータ22からは、個別回転位置信号H1(H1u、H1v、H1w)に対応する個別回転位置信号H2(H2u、H2v、H2w)が出力される。
次に、モータ21およびモータ22と制御装置1との接続関係について説明する。
モータ21の電力入力部214u、214v、214wは、制御装置1の信号出力部14u、14v、14wと各々接続される。モータ21の位置信号出力部212u、212v、212wは、制御装置1の信号入力部13u、13v、13wと各々接続される。また、モータ21の電源供給部215、およびGND端子216は、制御装置1の電源供給部15、およびGND端子16と各々接続される。一方、モータ22の電力入力部224u、224v、224wは、制御装置1の信号出力部14u、14v、14wと各々接続される。モータ22の位置信号出力部222u、222v、222wは、制御装置1の信号入力部13u、13v、13wと各々接続される。また、モータ21の電源供給部225、およびGND端子226は、制御装置1の電源供給部15、およびGND端子16と各々接続される。なお、モータ21の電力入力部214u、214v、214wの各々と、モータ22の電力入力部224u、224v、224wの各々とは、信号出力部14u、14v、14wにおいて、または制御装置1の外部で相毎に互いに接続される。したがって、信号出力部14から出力される駆動信号は、モータ21およびモータ22に共通に出力される。また、モータ21の位置信号出力部212u、212v、212wの各々とモータ22の位置信号出力部222u、222v、222wの各々とは、信号入力部13u、13v、13wにおいて、または制御装置1の外部で相毎に互いに接続される。したがって、位置信号出力部212の個別回転位置信号と、位置信号出力部222の個別回転位置信号とは相毎に重畳される。以上の構成により、モータ21の各相の位置信号出力部212から出力された個別回転位置信号H1(H1u、H1v、H1w)とモータ22の各相の位置信号出力部222から出力された個別回転位置信号H2(H2u、H2v、H2w)とが各相ごとに重畳された重畳回転位置信号H(Hu、Hv、Hw)は、制御装置1の信号入力部13(13u、13v、13w)に相を合わせて入力される。また、モータ21の電力入力部214u、214v、214w各々とモータ22の電力入力部224u、224v、224w各々とは、相を合わせて同じ前記駆動電力が入力される。
次に、前記個別回転位置信号が重畳された重畳回転位置信号Hについて説明する。
図2は、制御装置1の信号入力部13(13u、13v、13w)に各々重畳されて入力された重畳回転位置信号H(Hu、Hv、Hw)の波形の変化タイミングを説明するためのタイミングチャートである。図2(a)には、上から順に重畳回転位置信号Hu、Hv、Hwのバイナリ電圧波形図が示されており、横軸は前記回転子の回転位置(機械角)である。図2(b)には、上から順にモータ21の個別回転位置信号H1uのバイナリ電圧波形図、モータ22の個別回転位置信号H2uのバイナリ電圧波形図、および重畳回転位置信号Huのバイナリ電圧波形図、ならびに重畳回転位置信号Huの電流Iuのm値で表された電流波形の模式図が示されており、横軸は前記回転子の回転位置(機械角)である。なお、本実施形態では、モータは2台であるので、3値(m=3)に量子化された電流波形の模式図が示されている。図2(a)において、重畳回転位置信号Huの波形とHvの波形、および重畳回転位置信号Hvの波形とHwの波形とは位相は各々120度ずれているだけで、3つの波形は同様に変化する。図2(a)に示すように、重畳回転位置信号Huは、機械角θ2〜θ3間の信号はローレベルであり、機械角0度〜θ2間と機械角θ3〜360度間の信号はハイレベルである(0度<θ1<θ2<θ3<θ4<360度)。
図2(b)に示すように、重畳回転位置信号Huは、図2(b)の1点鎖線波形のモータ21の個別回転位置信号H1uおよび図2(b)の2点鎖線波形のモータ22の個別回転位置信号H2uが重畳された信号である。個別回転位置信号H1uは、機械角θ1のタイミングで永久磁石のN極が離間したことをホールIC211uが検出したため機械角θ1〜θ3間の信号はローレベルであり、機械角θ3のタイミングで永久磁石のN極が接近したことをホールIC211uが検出したため機械角θ3〜360度間および機械角0度〜θ1間の信号はハイレベルである。ここで、機械角θ1〜θ3間の角度差(機械角)を、モータ21の個別回転位置信号H1uにおける基準値と呼ぶ。なお、通常、機械角θ1〜θ3間と、機械角θ3〜(機械角0度)〜θ1間は、各々機械角で略180度である。個別回転位置信号H2uは、機械角θ2のタイミングで永久磁石のN極が離間したことをホールIC221uが検出したため機械角θ2〜θ4間の信号はローレベルであり、機械角θ4のタイミングで永久磁石のN極が接近したことをホールIC221uが検出したため機械角θ4〜360度間および機械角0度〜θ2間の信号はハイレベルである。ここで、機械角θ2〜θ4間の角度差(機械角)を、モータ22の個別回転位置信号H2uにおける基準値と呼ぶ。なお、通常、機械角θ2〜θ4間と、機械角θ4〜(機械角0度)〜θ2間は、各々機械角で略180度である。こうした個別回転位置信号H1uと個別回転位置信号H2uとが重畳された重畳回転位置信号Huは、上記のように機械角θ2〜θ3間の信号はローレベル、機械角θ3〜360度間および機械角0度〜θ2間で信号はハイレベルとなっているが、機械角θ2〜θ3間と、機械角θ3〜(機械角0度)〜θ2間は、各々機械角で略180度とはならない。これは次の理由による。
個別回転位置信号H1uの電圧および個別回転位置信号H2uの電圧は、機械角0度〜θ1および機械角θ4〜360度で共にハイレベルであり、機械角θ1〜θ2で個別回転位置信号H1uの電圧はローレベルかつ個別回転位置信号H2uの電圧はハイレベル、機械角θ2〜θ3で個別回転位置信号H1uの電圧および個別回転位置信号H2uの電圧は共にローレベル、機械角θ3〜θ4で個別回転位置信号H1uの電圧はハイレベルかつ個別回転位置信号H2uの電圧はローレベルである。個別回転位置信号の電圧がハイレベルのときは、当該個別回転位置信号の電圧をハイレベルで維持する電流がホールICから出力されている。よって、この個別回転位置信号H1uの電圧および個別回転位置信号H2uの電圧波形の変化に合わせて、重畳回転位置信号Huの電流Iuの波形は、機械角0度〜θ1および機械角θ4〜360度で電流値Ia、機械角θ1〜θ2で電流値Ib、機械角θ2〜θ3で電流値ゼロ、機械角θ3〜θ4で電流値Ibとなる。ここで、電流値Ia>電流値Ibであり、通常電流値Iaは電流値Ibの約2倍である。このように、各個別回転位置信号(ここでは、H1uおよびH2u)間には各回転子の回転位置の変化に対応して変化する各個別回転位置信号の変化タイミングに応じた位相差が存在しており、当該位相差に起因して電流波形の変化におけるアップエッジ及びダウンエッジの組合わせは複数生じる。
電圧Vuは抵抗Ruの抵抗値と電流Iuとの積であることから、重畳回転位置信号Huの電圧Vuのm値で表された波形は、電流Iuの波形と同様の傾向となり、電圧Vuの変化タイミングは電流Iuの変化タイミングに略一致する。よって、個別回転位置信号H1uおよび個別回転位置信号H2uのハイレベルの電圧値をVbとすると、電圧Vuは、機械角θ2〜θ3では電圧値はゼロであり、機械角θ1〜θ2および機械角θ3〜θ4の区間の電圧値はVbとなり、機械角0度〜θ1および機械角θ4〜360度の区間の電圧値は、電圧値Vbの約2倍の電圧値Vaとなる。電圧値Vbは2値の量子化の際にはハイレベルとされるので、電圧値Vb以上である機械角0度〜θ2および機械角θ3〜360度の区間は、重畳回転位置信号Huの2値で表された電圧波形においてハイレベルとなる。以上のことから、信号入力部13u、13v、13wから入力された各相の信号の電圧値から、前記2値の電圧値(ハイレベル、ローレベル)と、前記各相の重畳回転位置信号の電流値に対応する前記m値の電圧値は、検出回路11aで同時に検出可能となる。なお、図2(a)に示した機械角θ1〜θ2間の1点鎖線波形部分と機械角θ3〜θ4間の2点鎖線波形部分は、図2(b)のように、個別回転位置信号H1uおよび個別回転位置信号H2uのどちらか一方はローレベルであり、上記理由により、重畳回転位置信号Huの電圧はハイレベルとなっている区間である。
以上の説明から、検出回路11aが検出した重畳回転位置信号Huの電流波形から、回転位置検出部11bは、所定の機械角において個別回転位置信号H1uおよび個別回転位置信号H2uは、共にハイレベルであるか、共にローレベルであるか、または何れか一方のみハイレベル(またはローレベル)であるかを検出することができる。よって、重畳回転位置信号Huの電流波形の変化(たとえば電流値がIaからIbへ変化するダウンエッジおよび電流値がIbからゼロへ変化するダウンエッジ、ならびに、電流値がゼロからIbへ変化するアップエッジおよび電流値がIbからIaへ変化するアップエッジ)のタイミングから、回転位置検出部11bは、個別回転位置信号H1uおよび個別回転位置信号H2uの電流の変化タイミングを検出することができ、各モータにおける前記回転子の前記回転位置を個別に検出できる。制御装置1は、当該検出結果を使用して、次で述べるように2つのモータの回転動作を同期制御する。なお、検出回路11aは、重畳回転位置信号Huのバイナリ電圧の波形がハイレベルからローレベルへ切り換わるダウンエッジまたは前記バイナリ電圧の波形がローレベルからハイレベルへ切り換わるアップエッジを検出するので、本実施形態の制御装置1は、検出回路11aが検出したバイナリ電圧の波形変化も使用して、2つのモータの回転動作を同期制御する。
なお、上記では、2つのモータの回転動作についての説明であったが、N個のモータでも同様であり(Nは3以上の整数)、機械角0度から一連の立下がり電流変化が開始され、一番最初の立下がり電流変化が1番目の立下がり電流変化であり、一番最後の立下がり電流変化がN番目の立下がり電流変化である。この後、一連の立上がり電流変化が開始され、一番最初の立上がり電流変化が1番目の立上がり電流変化であり、一番最後の立上がり電流変化がN番目の立上がり電流変化である。
次に、本実施形態のモータシステムMSの動作を説明する。図3は、本実施形態のモータシステムMSの動作の一例を示すフローチャートである。なお以下では、モータシステムMSが例えば搬送機器等に使用され、モータ21,22の駆動により搬送物が搬送される例について説明する。
モータシステムMSが始動されると、まず強制転流駆動制御部11dは、所謂強制転流の駆動信号によりモータ21、22の回転動作を開始させる(ステップS101)。すなわち、強制転流の制御では、強制転流駆動制御部11dは、前記所定の周波数でモータ21、22を強制転流で駆動するために、複数のスイッチング素子Swのオンオフ制御によって、互いに120度だけ位相をずらした各相の強制転流駆動信号を生成し、前記生成した強制転流駆動信号を信号出力部14から入力部214uおよび入力部224u、入力部214vおよび入力部224v、ならびに入力部214wおよび入力部224wの各々に対し出力する。
なお強制転流が開始された後に、ステップS103では、例えば制御演算部11は、制御装置1に接続されているモータの台数を、前記最大電流値と前記定格値とから算出し、算出したモータの台数を不図示のEEPROMに保存する。また、ステップS103では、例えば、検出回路11aは、信号入力部13に入力される信号(以下、入力部信号とも呼ぶ)H(Hu、Hv、Hw)の何れか一つの相の電圧変化を検出し、入力部信号が常にハイレベルとなっているか否かを検出する。複数のモータが制御装置1に接続されている場合、複数のモータからの個別回転位置信号が重畳されることで、入力部信号(この場合、重畳回転位置信号)の電圧は常にハイレベルとなる場合がおこりうる。重畳回転位置信号が常にハイレベルとなると、重畳回転位置信号の電圧変化(アップエッジおよびダウンエッジ)は検出できないため、各モータ(本実施形態ではモータ21,22)の回転動作は停止される。
次に、制御演算部11は、ステップS103で算出されたモータ台数の算出結果を前記不図示のEEPROMから読み出して、制御装置1に接続されているモータ台数は複数か否かを判断する(ステップS105)。制御装置1に接続されているモータの台数が複数の場合(ステップS105でYES)、次に制御演算部11は後で説明する周期制御を所定回数だけ行う(ステップS107)。制御装置1に接続されているモータの台数が1台の場合(ステップS105でNO)、次に制御演算部11は、通常制御を行う(ステップS301)。
ステップS301では、モータが1台であるので、制御演算部11は、前記ホールICからの入力部信号を使用して、モータを制御する(通常制御)。なお、制御装置1に接続されているモータの台数は1台であるので、入力部信号は個別回転位置信号であり、重畳された回転位置信号ではない。なお、通常制御では、制御演算部11は、搬送物の搬送速度を一定とするため、例えばモータの個別回転位置信号の周期から算出されるモータの回転数等をフィードバックして、所謂PI(Proportional Integral)制御、またはPID(Proportional Integral Derivative)制御を行う。次に、制御演算部11は、モータシステムMSの運転員によってシステムの停止信号が不図示の停止処理部に入力されたかどうかを判断する(ステップS303)。停止信号が入力されたときとき(ステップS303でYES)、制御演算部11は、モータシステムMSの動作を停止する。停止信号が入力されていないとき(ステップS303でNO)、制御演算部11は、処理をステップS301に戻し、上記の通常制御および停止の判断を繰り返す(ステップS301、S303)。
ステップS107で、制御演算部11は、前記周期制御を所定回数だけ行った後に、モータシステムMSの運転員によってシステムの停止信号が不図示の停止処理部に入力されたかどうかを判断する(ステップS109)。停止信号が入力されたとき(ステップS109でYES)、制御演算部11は、モータシステムMSの動作を停止する。停止信号が入力されていないとき(ステップS109でNO)、次に前記負荷の大きさに変動があるか否かが、例えば信号出力部14から出力される駆動電流値と所定の第2閾値とを比較することで制御演算部11は判断する(ステップS111)。なお、負荷が増加すると駆動電流値は増加するので、例えば駆動電流値が所定の第2閾値よりも大きいことは、負荷の大きさに変動があったことを示す。負荷の大きさに変動がある場合は(ステップS111でYES)、制御演算部11は再度、前記周期制御を再度所定回数行なう(ステップS107)。負荷の大きさに変動はない場合は(ステップS111でNO)、次に制御演算部11は、モータ21,22を所定の第2周波数で回転動作させる制御を行ない(ステップS113)、上記の停止の判断および負荷変動の判断を繰り返す(ステップS109、ステップS111)。
なお、前記周期制御を行っている際、制御演算部11は、各モータが所謂脱調を起こしたか否かを判断してもよい。例えば、駆動電圧は所定の範囲内にあり、かつモータ21またはモータ22の周波数(回転数)が所定値よりも下である場合に、制御演算部11は、モータが脱調したと判断する。モータが前記脱調をおこした場合、モータ21、22の回転動作は停止される。モータ21,22は前記停止後に、再始動されてもよい。また、当該脱調発生の判断は、前記通常制御において行われてもよい。
次に、前記周期制御について説明する。周期制御は、例えば制御装置1につながる複数のモータの前記特定の相の個別回転位置信号を検出部17が各々検出し、前記複数のモータのうち一のモータの個別回転位置信号が所定の条件を満たした場合には、検出部17は前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応する前記一のモータを前記特定のモータとし、回転位置検出部11bで検出された前記特定のモータにおける個別回転位置信号に基づいて制御演算部11が制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する制御である。所定の条件は、例えば前記複数のモータのうちの何れかのモータ(特定のモータ)の個別回転位置信号の周期が予め設定された閾値以上となることである。この特定のモータの個別回転位置信号の周期が予め設定された閾値以上となることは、例えば負荷により当該特定のモータの回転数が通常動作の許容回転数よりも低下していることを示す。本実施形態では、モータ21の個別回転位置信号H1uまたはモータ22の個別回転位置信号H2uにおける前記基準値の2倍の値が各モータの個別回転位置信号の周期であるので、前記基準値の2倍が予め設定された閾値以上となることが所定の条件である。なお前記所定の条件は、検出部17で判断される。また、前記特定のモータは以下のようにして決定される。モータが2個の場合は、検出部17は、モータ21の前記特定の相の個別回転位置信号とモータ22の前記特定の相の個別回転位置信号とを交互に検出し、前記検出している個別回転位置信号のうち、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。また、モータが3個以上の場合は、検出部17は、前記3個以上のブラシレス直流モータの前記特定の相の個別回転位置信号を各々順番に検出し、前記検出している個別回転位置信号のうち、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。
本実施形態では、重畳回転位置信号は、少なくとも、重畳回転位置信号の電流が変化する第1変化の後に重畳回転位置信号の電圧が変化する第2変化が発生する第1変化態様と、重畳回転位置信号の電圧が変化する第3変化の後に重畳回転位置信号の電流が変化する第4変化が発生する第2変化態様とを含み、前記第1変化態様より以降に前記第2変化態様が発生する第1変化パターンを周期的に繰り返す。よって、本実施形態では、検出部17は、前記特定の相の各個別回転位置信号を検出し、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。そして、回転位置検出部11bは、特定の相の重畳回転位置信号の周期的に繰り返される第1変化パターンに基づき、検出回路11a内の複数の電圧変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電圧変化検出部によって検出された前記電圧変化と、前記複数の電流変化検出部たる抵抗Ru、Rv、Rwのうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された前記電流変化と、を交互に優先することによって、複数のモータのうちの前記特定のモータにおける前記回転位置信号の電流変化のタイミングを検出する。制御演算部11は、前記所定の条件が満たされた場合に、この検出された前記特定のモータにおける前記回転位置信号に基づいて、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。なお、周期制御では、制御演算部11は、搬送物の搬送速度を一定とするため、例えば特定のモータの個別回転位置信号の周期から算出される特定のモータの回転数等をフィードバックして、所謂PI制御、またはPID制御を行う。
図4は、ステップS107の前記周期制御の動作の一例について示すフローチャートである。ステップS107は、上記のように前記ステップS105または前記ステップS111の後に制御演算部11によって実行される。前記周期制御では、重畳回転位置信号Hu、Hv、Hwの何れか一つの信号が使用される。まず検出回路11aは、上記のように複数の電流変化検出部たる抵抗Ru、Rv、Rwの両端電圧の電圧変化を検出することで、各相の重畳回転位置信号の電流変化を検出する。そして、検出対象決定部11cは、例えば、前記抵抗Ru、Rv、Rwによって各相の重畳回転位置信号のダウンエッジ等の電流変化が検出された後、重畳回転位置信号Hu、Hv、Hwの電圧波形のうち最初にダウンエッジが発生した信号を検出回路11a内の各相の電圧変化検出部が検出することで、当該ダウンエッジを検出した電圧変化検出部に対応する相を、前記使用される信号の相(特定の相)とする(ステップS1071)。重畳回転位置信号Hu、Hv、Hwの何れか一つの信号が使用されることにより、重畳回転位置信号Hu、Hv、Hwのうちの複数の信号が使用される場合と比べて、一定の周期で変化を検出することができる。以下では、重畳回転位置信号Huのダウンエッジが最初に検出され、検出対象決定部11cはu相を前記特定の相とし、重畳回転位置信号Huを使用した説明を行う。
前記周期制御は所定回数だけ行われるので、次に、制御演算部11は、回数カウント用の変数Tをリセットする(ステップS1072)。その後、検出回路11aは、複数の電流変化検出部たる抵抗Ruの両端電圧の電圧変化から、重畳回転位置信号Huの電流波形の第1変化を検出する。具体的には、ステップS1071での重畳回転位置信号Huの電圧波形の最初のダウンエッジ検出後において、例えば重畳回転位置信号Huの電流波形に複数のダウンエッジが含まれるので、検出回路11aは、そのうちの最初のダウンエッジを検出する(ステップS1073)。続いて、検出回路11aは、重畳回転位置信号Huの電圧波形の第2変化を検出する。具体的には、検出回路11aは、例えば重畳回転位置信号Huの電流波形の全てのダウンエッジ後で最初の、重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジを検出する(ステップS1074)。検出部17は、このように検出された前記電流変化および前記電圧変化をこの順番で優先することによって、個別回転位置信号を検出する。
その後、検出回路11aは、重畳回転位置信号Huの電圧波形の第3変化を検出する。具体的には、検出回路11aは、例えば重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジ後で最初の、重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジを検出する(ステップS1075)。続いて、検出回路11aは、複数の電流変化検出部たる抵抗Ruの両端電圧の電圧変化から、重畳回転位置信号Huの電流波形の第4変化を検出する。具体的には、検出回路11aは、上記ステップS1075の重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジ検出後で最初の電流波形のアップエッジを検出する。なお、例えば重畳回転位置信号Huの電流波形に複数のアップエッジが含まれるので、検出回路11aは、前記最初に検出した電流波形のアップエッジに続く複数のアップエッジのうちから最後のアップエッジを検出する(ステップS1076)。なお、前記電流波形の最後のアップエッジは、回転位置検出部11bが電流波形のアップエッジ数等をカウントしているので、当該アップエッジが電流変化において「制御装置1に繋がるモータの総数」番目であることから判明する。なお、重畳回転位置信号のアップエッジは、最初の1台については上記のように電圧波形から検出されるので、本実施形態では、回転位置検出部11bが検出する前記電流波形の最後のアップエッジは「(制御装置1に繋がるモータの総数)−1」番目となる。検出部17は、このように検出された前記電圧変化および前記電流変化をこの順番で優先することによって、個別回転位置信号を検出する。
前記ステップS1073〜ステップS1076の各工程において、モータ21またはモータ22の個別回転位置信号が前記所定の条件を満たした場合、検出部17は前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータ(モータ21またはモータ22)を前記特定のモータとする。そして、回転位置検出部11bは、前記電圧変化と前記電流変化とを交互に優先することによって、複数のモータのうちの前記特定のモータ(モータ21またはモータ22)における前記回転位置信号を検出し、この特定のモータにおける個別回転位置信号に基づいて、制御演算部11は制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。例えば、特定のモータの個別回転位置信号の周期が予め設定された閾値以上となり特定のモータの回転数が低下している場合、低下している回転数を通常動作の回転数へ回復させるべく、制御演算部11は駆動信号の電圧を上昇させるための制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。なお、モータ21およびモータ22の個別回転位置信号が前記所定の条件を満たしていない場合は、制御演算部11は、それまで出力していた駆動信号をそのまま維持するべく、制御信号Sxの出力をそのまま維持する。
次に、前記周期制御は所定回数だけ行われたか否かが、変数Tと所定回数とが比較されることで制御演算部11にて判断される(ステップS1077)。変数Tが所定回数に達していない場合は(ステップS1077でNO)、制御演算部11は、変数Tをインクリメントして(ステップS1078)、ステップS1073〜ステップS1077のフローを繰り返す。変数Tが所定回数に等しい場合は(ステップS1077でYES)、次に制御演算部11による図3の前記ステップS109の判断が実行される。
なお、ステップS1074、およびステップS1075では、検出回路11aは、重畳回転位置信号Huの電圧変化を検出して、前記ステップS1074のアップエッジ、および前記ステップS1075のダウンエッジを各々検出したが、前記電圧変化と略同じ変化タイミングである、複数の電流変化検出部たる抵抗Ru、Rv、Rwの両端電圧の電圧変化から電流波形変化を検出して、当該検出を行ってもよい。この場合、回転位置検出部11bが検出する前記電流波形の最後のアップエッジは「制御装置1に繋がるモータの総数」番目である。
前記周期制御のフローチャートでは、重畳回転位置信号の第1変化態様を検出するステップS1073およびステップS1074からなる工程Aと、重畳回転位置信号の第2変化態様を検出するステップS1075およびステップS1076からなる工程Bとは所定回数繰り返される。例えば、図2(b)において個別回転位置信号H1uはモータ21からの出力であり、個別回転位置信号H2uはモータ22からの出力であるので、前記工程Aは、モータ21の個別回転位置信号が検出される工程であり、前記工程Bは、モータ22の個別回転位置信号が検出される工程である。すなわち、検出部17は、上記の工程Aの検出動作および工程Bの検出動作が交互に繰り返される中で、工程Aの繰り返しにより、前記電流変化および前記電圧変化をこの順番で交互に優先することによって、モータ21の前記特定の相の前記回転位置信号を検出し、また工程Bの繰り返しにより、前記電圧変化および前記電流変化をこの順番で交互に優先することによって、モータ22の前記特定の相の前記回転位置信号を検出する。
工程Aおよび工程Bにおいて、ステップS1073では、重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジからは個別回転位置信号H1uの電圧波形のダウンエッジ波形は検出されないが、図2(b)に示すように、個別回転位置信号H1uの電圧波形のダウンエッジ波形変化タイミングは、個別回転位置信号H1uの電流波形の変化タイミングから検出可能である。続いて、ステップS1074では、重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジから個別回転位置信号H1uの電圧波形のアップエッジ波形は検出可能である。また、ステップS1075では、重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジから個別回転位置信号H2uの電圧波形のダウンエッジ波形は検出可能である。続いて、ステップS1076では、重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジからは個別回転位置信号H2uの電圧波形のアップエッジ波形は検出されないが、図2(b)に示すように、個別回転位置信号H2uの電圧波形のアップエッジ波形変化タイミングは、個別回転位置信号H2uの電流波形の変化タイミングから検出可能である。この構成によれば、上記の制御装置1は、モータ21の個別回転位置信号とモータ22個別回転位置信号とを交互に検出し、前記所定の条件を満たした前記回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとし、特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する回転位置検出部11bを備えることによって、モータ21およびモータ22のいずれに負荷が加わっても速度一定に制御できる。
なお、上記の例とは逆に、図2(b)における個別回転位置信号H1uがモータ22からの出力であり、個別回転位置信号H2uがモータ21からの出力であった場合、搬送機器が搬送物を搬送できるトルクをモータ21,22が出力できているとき、上記周期制御によって、1個の制御装置1で上記接続のモータ21およびモータ22の2つの回転動作を同期制御することは可能である。搬送機器が搬送物を搬送できるトルクをモータ21,22は出力できないとき、モータ21またはモータ22は脱調するので、モータ21またはモータ22は停止される。
次に、1個の制御装置に1台のモータが接続された従来技術について説明する。なお、ここでは図1を使用し、制御装置1にモータ21のみが接続されている例で説明する。この場合、回転位置信号H(Hu、Hv、Hw)は重畳されず、モータ21の個別回転位置信号である。
図5は、前記従来技術の制御装置が行う制御を説明するためのタイミングチャートである。図5では、上から順に回転位置信号の波形図、信号出力部14の出力電圧の波形図、ゲートにオン信号が入力されているスイッチング素子が、横軸を機械角として表されている。回転位置信号の波形図では、上から順に回転位置信号Hu、Hv、Hwの波形が示されている。出力電圧波形図では、上から順に信号出力部14u、14v、14wの出力電圧の波形が示されている。ゲートにオン信号が入力されているスイッチング素子については、機械角の所定の区間において、ゲートにオン信号が入力される2つのスイッチング素子の符号が示されている。
モータ21は、固定子側の界磁コイルが3極で、回転子の永久磁石が2極なので、回転位置信号Huは、例えば機械角60度でローレベルからハイレベルへと切り換わり、機械角240度でハイレベルからローレベルへと切り換わる。回転位置信号Hvは、例えば機械角180度でローレベルからハイレベルへと切り換わり、機械角360度(0度)でハイレベルからローレベルへと切り換わる。回転位置信号Hwは、例えば機械角300度でローレベルからハイレベルへと切り換わり、機械角120度でハイレベルからローレベルへと切り換わる。こうした各回転位置信号の変化に応じて、制御演算部11は、例えば複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して、次のような規則性で各スイッチをオンする信号を出力する。すなわち、制御演算部11は、機械角0度〜60度でスイッチング素子c1、b2に対して、機械角60度〜120度でスイッチング素子a1、b2に対して、機械角120度〜180度でスイッチング素子a1、c2に対して、機械角180度〜240度でスイッチング素子b1、c2に対して、機械角240度〜300度でスイッチング素子b1、a2に対して、機械角300度〜360度(0度)でスイッチング素子c1、a2に対して、各々ハイレベルの信号を出力する。
この結果、信号出力部14uの出力電圧は、機械角0〜60度で0v、機械角60〜180度で正の電圧、機械角180〜240度で0v、機械角240〜360度で負の電圧となっている。また、信号出力部14vの出力電圧は、機械角0〜120度で負の電圧、機械角120〜180度で0v、機械角180〜300度で正の電圧、機械角300〜360度で0vとなっている。信号出力部14wの出力電圧は、機械角0〜60度で正の電圧、機械角60〜120度で0v、機械角120〜240度で負の電圧、機械角240〜300度で0v、機械角300〜360度で正の電圧となっている。
以上のように、1個の制御装置にモータが1台のみ接続されている従来技術では、制御演算部11は、図5に示した各回転位置信号Hu、Hv、Hwに対応して各スイッチング素子a1〜c2のオンオフ制御を行う。しかし、本願実施形態のように、1個の制御装置に複数のモータが接続された場合、各モータからの回転位置信号(個別回転位置信号)が重畳されて制御装置に入力されるので、既に述べたように各(重畳)回転位置信号Hu、Hv、Hwのハイレベルの区間とローレベルの区間とは各々機械角で180度とならない上、従来技術の制御装置は各モータ毎の各回転位置信号Hu、Hv、Hwを検出することができない。よって、従来技術の制御装置は、前記複数のモータの回転動作を同期させることはできない。
一方、本実施形態のブラシレス直流モータ制御装置1およびモータシステムMSは、前記回転子の各々の前記回転位置に応じて生じる各個別回転位置信号間の位相差に起因して変化する重畳回転位置信号(重畳回転位置信号Hu等)の電流変化から、例えば重畳回転位置信号に重畳された個別回転位置信号(個別回転位置信号H1u等)の電流の変化タイミングを検出できる。よって、本実施形態のブラシレス直流モータ制御装置1およびモータシステムMSは、上記の検出された前記特定のモータの個別回転位置信号によって、図5に示すような所定の相(例えばu相)の回転位置信号の変化タイミングに基づいて各スイッチング素子に対して所定の機械角でオン信号を出力する制御が可能である。
このように、本実施形態のブラシレス直流モータ制御装置1およびモータシステムMSは、検出部17によって、信号入力部13に入力された各相の重畳回転位置信号のうちの特定の相(例えばu相)の重畳回転位置信号に基づいて複数のモータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出し、駆動制御部12によって、検出部17で検出された前記特定のモータにおける個別回転位置信号に基づいて特定のモータを駆動する駆動信号を生成する。すなわち、このようなブラシレス直流モータ制御装置1およびモータシステムMSは、信号入力部13に複数のモータによる重畳回転位置信号が入力されても、信号出力部14から駆動信号を出力することによって、複数のモータを駆動できる。したがって、このようなブラシレス直流モータ制御装置1およびモータシステムMSは、1個の装置で、複数のモータを駆動できる。
次に、本実施形態のモータシステムMSが製造ラインで使用される搬送機器に適用された例について説明する。図6は、本実施形態のモータシステムMSを使用したモータ内蔵ローラの構成を示す図である。図7は、本実施形態のモータシステムMSを使用した搬送機器の構成を示す図である。図8は、本実施形態のモータシステムMSを使用した他の搬送機器の構成を示す図である。図6には、1本のローラに2つのモータ21,22をその両端部に内蔵した、搬送機器で使用されるモータ内蔵ローラの例が示されている。図7には、製造ラインにおいて、モータは内蔵されず自由回転する従動ローラ6本と、その間に配設され1台のモータ21が内蔵されたモータ内蔵ローラ1本とが使用された搬送機器L、および搬送方向が平行かつ同方向となるように搬送機器Lに対し離間されて並列設置されており、前記従動ローラ6本と、その間に配設され1台のモータ22が内蔵されたモータ内蔵ローラ1本とが使用された搬送機器Rの例が示されている。図7には、製造ラインの一部における搬送機器LおよびRが示されている。図8には、複数の前記従動ローラと、それらの間に所定の間隔を空けて配設された複数のモータ内蔵ローラ(図8ではモータ21とモータ22の2台)とを備えた搬送機器SIの例が示されている。図8には、製造ラインの一部における搬送機器SIが示されている。
図6では、2つのモータで一つのローラを回転させるので、2つのモータは同期して回転動作する必要がある。図7では、前記2本の製造ラインは例えば細長い搬送物を搬送する場合に使用され、前記2本の製造ラインの進行方向と前記搬送物の長手方向とは直交して前記2本の製造ラインで前記搬送物を搬送している場合に、2つのモータは同期して回転動作する必要がある。また、図8では、1つの搬送物が同時に2つのモータ内蔵ローラで搬送される場合、2つのモータは同期して回転動作する必要がある。そのため、本実施形態のモータシステムMSが使用されることで、1個の制御装置で2つのモータの回転動作を同期制御することが可能となるので、各図に示す装置に好適に用いられる。
上記実施形態では、1個の制御装置1に接続されたモータは2つの例であったが、1個の制御装置1にN台(Nは3以上の整数)の三相ブラシレス直流モータが接続されてもよい。回転位置検出部11bは、検出回路11aでの重畳回転位置信号の電流変化の検出結果に基づいて、例えば1〜N台の三相ブラシレス直流モータの全ての前記回転子について特定のモータの個別回転位置信号の電流の変化タイミングを検出し、制御演算部11は、一のモータの個別回転位置信号が所定の条件を満たした場合には、前記検出結果を使用して、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。この場合、重畳回転位置信号は、少なくとも、前記第1変化態様と、重畳回転位置信号の電流が変化する第5変化の後に重畳回転位置信号の電流が変化する第6変化が発生する第3変化態様と、前記第2変化態様とを含み、前記第1変化態様より以降に前記第3変化態様が発生し、前記第3変化態様より以降に前記第2変化態様が発生する第2変化パターンを周期的に繰り返す。よって、検出部17は、前記特定の相の各個別回転位置信号を検出し、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。そして、回転位置検出部11bは、特定の相の重畳回転位置信号の周期的に繰り返される第2変化パターンに基づき、前記複数の電流変化検出部たる抵抗Ru、Rv、Rwのうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された連続する2つの電流変化によって、前記3個以上のブラシレス直流モータのうちの前記特定のモータにおける個別回転位置信号の電流変化のタイミングを検出する。制御演算部11は、前記所定の条件が満たされた場合に、この検出された前記特定のモータにおける前記回転位置信号に基づいて、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。この場合、以下のような前記周期制御が行われる。図9は、ステップS107の前記周期制御の動作において、モータが3つ以上存在する別の動作を示すフローチャートである。図9を用いて、以下では図4と異なる点を中心に重畳回転位置信号Huを例に説明する。
例えば制御装置1に接続されたモータが5台(N=5)の場合、まず1台目のモータについて、検出回路11aは、複数の電流変化検出部たる抵抗Ruの両端電圧の電圧変化から、重畳回転位置信号Huの電流変化の最初のダウンエッジを検出し(ステップS1073’。前記ステップS1073に相当)、その後重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジを検出(ステップS1074’。前記ステップS1074に相当)する(工程A’)。
次に2台目のモータについて、検出回路11aは、複数の電流変化検出部たる抵抗Ruの両端電圧の電圧変化から、重畳回転位置信号Huの電流変化の次の(2番目の)ダウンエッジを検出し、その後重畳回転位置信号Huの電流変化の2番目のアップエッジを検出(ステップS1079)する(工程A(2))。3、4台目のモータ各々について、検出回路11aは、同様に、順次、重畳回転位置信号Huの電流変化の3番目のダウンエッジと該ダウンエッジ後に生ずる3番目のアップエッジを検出(ステップS1080)し(工程A(3))、また4番目のダウンエッジと該ダウンエッジ後に生ずる4番目のアップエッジを検出(ステップS1081)する(工程A(4))。なお、工程A(2)〜工程A(4)では、重畳回転位置信号の第3変化態様が検出される。なお、回転位置検出部11bは、前記5台のモータのうちの2〜4台目のモータについては、上記の工程A(2)〜A(4)のように、抵抗Ru、Rv、Rwのうちの前記特定の相に対応した抵抗Ru、Rv、Rw(本実施形態では、抵抗Ru)によって検出された連続する2つの重畳回転位置信号の電流変化(上記重畳回転位置信号Huの電流変化のダウンエッジおよびそれに続くアップエッジ)によって、前記3個以上のブラシレス直流モータのうちの特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する。
次に5台目のモータについて、検出回路11aは、重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジを検出し(ステップS1075’。前記ステップS1075に相当)、その後複数の電流変化検出部たる抵抗Ruの両端電圧の電圧変化から、重畳回転位置信号Huの電流変化の5番目のアップエッジを検出(ステップS1076’。前記ステップS1076に相当)する(工程B’)。なお、工程B’の後は、所定の回数まで工程A’以下は繰り返される(ステップS1077でNO)。
上記の工程A’、工程A(2)、A(3)、A(4)および前記工程B’の各工程において、検出部17は、上記5台のモータの個別回転位置信号を各々順番に検出し、前記5台のモータのうちのいずれかが個別回転位置信号が所定の条件を満たしたことを検出した場合には、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。回転位置検出部11bは、前記5台のモータのうちの所定の2個のモータ(例えば前記1台目のモータおよび前記5台目のモータ等)が前記特定のモータである場合は、回転位置検出部11bは、前記複数の電圧変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電圧変化検出部によって検出された前記電圧変化と、前記複数の電流変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された前記電流変化と、を交互に優先することによって、前記回転位置信号を検出する。また、前記5台のモータのうちの前記所定の2個のモータ以外のモータ(例えば前記2台目のモータないし前記4台目のモータ)が前記特定のモータである場合は、回転位置検出部11bは、前記複数の電流変化検出部のうちの前記特定の相に対応した電流変化検出部によって検出された連続する2つの前記電流変化によって、前記回転位置信号を検出する。制御演算部11は制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。なお、モータ21およびモータ22の個別回転位置信号が所定の条件を満たしていない場合は、制御演算部11は、それまで出力していた駆動信号の出力をそのまま維持する制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する。
図2(b)には図示されていないが、モータが3つ以上存在する場合では、図2(b)の個別回転位置信号H1uと個別回転位置信号H2uとの間の位相差αが最も大きいとき、個別回転位置信号H1uとの位相差が前記位相差αより小さい個別回転位置信号が一つ以上存在する。前記不図示の個別回転位置信号は、次のように検出可能である。重畳回転位置信号Huの電流信号を観測することで、電流信号の最初のダウンエッジである個別回転位置信号H1uのダウンエッジは検出可能であり、重畳回転位置信号Huの電圧波形のダウンエッジのタイミングは電流信号の最後のダウンエッジである個別回転位置信号H2uのダウンエッジのタイミングと略一致するので、電流信号の最後のダウンエッジのタイミングは検出可能である。また、回転位置検出部11bは、電流信号のダウンエッジの数をカウントすることで、電流信号の最初のダウンエッジと最後のダウンエッジの間の各ダウンエッジも検出可能であり、複数の前記不図示の個別回転位置信号の各ダウンエッジは検出可能である。一方、重畳回転位置信号Huの電圧波形のアップエッジのタイミングは電流信号の最初のアップエッジである個別回転位置信号H1uのアップエッジのタイミングと略一致するので、電流信号の最初のアップエッジのタイミングは検出可能である。また、重畳回転位置信号Huの電流信号を観測し、回転位置検出部11bは、アップエッジの数をカウントすることで、電流信号の最後のアップエッジである個別回転位置信号H2uのダウンエッジは検出可能である。また、回転位置検出部11bは、前記ダウンエッジの数のカウントにより、電流信号の最初のアップエッジと最後のアップエッジの間の各アップエッジも検出可能であり、複数の前記不図示の個別回転位置信号の各アップエッジは検出可能である。以上のように、前記工程A’、工程A(2)、A(3)、A(4)および前記工程B’の各工程において、各モータからの個別回転位置信号のアップエッジ及びダウンエッジは検出可能となる。
この構成によれば、前記工程A’、工程A(2)、A(3)、A(4)および前記工程B’等が含まれる前記周期制御により、上記の制御装置1は、前記3個以上のモータの個別回転位置信号を順番に検出し、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとし、特定のモータにおける個別回転位置信号を検出する回転位置検出部11bを備えることによって、前記3個以上のモータのいずれに負荷が加わっても速度一定に制御できる。
なお、上記のN台(Nは3以上の整数)の三相ブラシレス直流モータの回転動作を同期させる制御は、上記に限られず、例えば図4を用いて説明した前記工程Aおよび前記工程Bが含まれる前記周期制御であってもよい。これは次の理由による。すなわち、図2(b)において、1台目のモータの個別回転位置信号H1uとN台目のモータの個別回転位置信号H2uとの間の位相差αが最も大きいとき、2〜(N−1)台目のモータの個別回転位置信号の1台目のモータの個別回転位置信号との位相差は1台目のモータの個別回転位置信号とN台目のモータの個別回転位置信号との位相差αよりも小さい。よって、1台目のモータとN台目のモータとが同期して回転動作していれば、残りの2〜(N−1)台目のモータも同期して回転動作することができるからである。この場合、特定のモータとされるのは1台目のモータまたはN台目のモータである。このとき、検出部17は、前記1台目のモータの前記特定の相の各個別回転位置信号とを前記N台目のモータの前記特定の相の各個別回転位置信号とを交互に検出し、前記所定の条件を満たした個別回転位置信号に対応したモータを前記特定のモータとする。そして、回転位置検出部11bは、前記第1変化態様と前記第2変化態様を含んで周期的に繰り返される前記第1変化パターンに基づいて、前記1台目およびN台目の三相ブラシレス直流モータの2つの前記回転子について個別回転位置信号の電流の変化タイミングを検出する。制御演算部11は、前記検出結果を使用して、前記特定のモータを駆動する駆動信号を生成する制御信号Sxを複数のスイッチング素子Swの各ゲートに対して出力する周期制御を行う。
各モータにかかる負荷が脱調にまで至らない程度の場合、前記工程Aおよび前記工程B(図4)が含まれる前記周期制御により、図9を使用して説明した前記工程A’、工程A(2)、A(3)・・・A(N−1)および前記工程B’が含まれる前記周期制御より簡易な制御で、1個の制御装置1で複数のブラシレス直流モータの回転動作を同期制御できる。
本発明を表現するために、上記において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上記の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。