JP2015017686A - ドライブプレートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス加工により一体成形されるドライブプレートの耐久性を向上させる。【解決手段】ドライブプレート1は、エンジンのクランクシャフトに連結されるプレート部2と、プレート部2の外周から軸方向に延びると共にエンジンをクランキングするセルモータのピニオンギヤPGと噛合する複数の外歯を有する環状のリングギヤ部3とを備え、プレート部2とリングギヤ部3とは、プレス加工により一体に成形され、リングギヤ部3の内周面には、少なくとも当該リングギヤ部3の遊端3b側で複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部30rが形成され、複数の外歯のそれぞれは、遊端3b側で歯先よりも内側に凹む段部30sを有している。【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンからの動力を動力伝達対象へと伝達するドライブプレートおよびその製造方法に関する。
従来、この種のドライブプレートとして、エンジンのクランクシャフトに連結されると共にセットブロックを介して動力伝達対象であるトルクコンバータに連結されるプレート部と、エンジンをクランキングするモータのピニオンギヤと噛合する複数の外歯を有するリングギヤ部とがプレス加工により一体に成形されたものが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。このようなドライブプレートでは、別体に形成されてボルト等により連結されるプレートとリングギヤとを有するものに比べて、リングギヤの切削工程やプレートとリングギヤとの溶接工程等が不要となることから、製造コストを大幅に低減化することができる。
また、上述のような一体型のドライブプレートの製造装置として、第1拘束パンチ、第2拘束パンチ、歯形パンチ、圧縮パンチおよびダイス部を含むものが知られている(例えば、特許文献3参照)。この製造装置により一体型のドライブプレート(歯形部品)を製造するに際しては、まず、第2拘束パンチ上に金属製の円盤状ワークを配置し、当該第2拘束パンチを固定した状態のまま第1拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとを第2拘束パンチとダイス部とに対して前進させる(ワーク配置工程)。次に、第2拘束パンチを固定した状態のまま、第1拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとを第2拘束パンチに対して更に前進させ、ワークに段差形状を形成する(段成形工程)。
続いて、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチとによりワークを挟んで拘束した状態を維持すると共に、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとをダイス部に対して前進させる(絞り成形工程)。これにより、歯形パンチとダイス部(絞りダイス)とによってワークに絞り成形が施される。更に、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチとによりワークを挟んで拘束した状態を維持したまま、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとをダイス部に対して前進させる(縮径歯形成形工程)。これにより、歯形パンチとダイス部(縮径ダイス)とによってワークに縮径成形が施される。
次いで、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチとによりワークを挟んで拘束した状態を維持したまま、圧縮パンチをダイス部に対して前進させる(増肉歯形成形工程)。これにより、ワークの縮径側壁部が圧縮パンチにより圧縮され、増肉された歯形形状が形成される。そして、第1拘束パンチと第2拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとをダイス部から後退させると共に、第1拘束パンチと歯形パンチと圧縮パンチとを第2拘束パンチから後退させ、成型品(ドライブプレート)を製造装置から取り出す(払い出し工程)。
更に、一体型のドライブプレートの製造方法としては、予め成形された側壁部の歯形成形面裏側(内径側)に拘束パンチを配置して材料の移動を規制(拘束)し、この状態で鍛圧パンチにより側壁部の上端面に鍛圧荷重を印加し、側壁部を積極的に座屈させるものも知られている(例えば、特許文献4参照)。この製造方法において用いられる拘束パンチには複数の凸部が形成されており、当該凸部の存在によりリングギヤの側壁部の軸方向における中央付近は外側のダイへ向かって膨らむことになる。これにより、リングギヤ部の歯形成形(増肉)に際して、リングギヤの側壁部の軸方向における中央付近には、各外歯の内側(裏側)に位置するように空隙(凹部)が形成され、当該空隙の存在によって閉塞鍛造化が回避されることから歯形成形時の鍛圧荷重を高める必要が無くなる。
特開平10−132052号公報 特開2007−170596号公報 特開2012−200749号公報 特開平07−256377号公報
上述のようなプレス加工により一体成形されるドライブプレートでは、一般に、各外歯の内側に、両側から流れ込む材料同士が当接することにより合わせ目(皺部)が形成される。しかしながら、各外歯の内側に形成される合わせ目では、両側から流れ込んだ材料同士が完全に接合(融合)せず、当該合わせ目周辺の強度を向上させることは容易ではない。従って、一体成形されるドライブプレートには、耐久性の面でなお改善の余地がある。
そこで、本発明は、プレス加工により一体成形されるドライブプレートの耐久性をより向上させることを主目的とする。
本発明のドライブプレートおよびその製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
本発明のドライブプレートは、
エンジンのクランクシャフトに連結されるプレート部と、該プレート部の外周から軸方向に延びると共に前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤと噛合する複数の外歯を有する環状のリングギヤ部とを備え、前記エンジンからの動力を動力伝達対象へと伝達するドライブプレートにおいて、
前記プレート部と前記リングギヤ部とは、プレス加工により一体に成形され、
前記リングギヤ部の内周面には、少なくとも該リングギヤ部の遊端側で前記複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部が形成されており、
前記複数の外歯のそれぞれは、前記遊端側で歯先よりも内側に凹む段部を有することを特徴とする。
このドライブプレートは、プレス加工により一体に成形されるプレート部とリングギヤ部とを有する。このようなドライブプレートでは、一般に、リングギヤ部の各外歯の内側に、両側から流れ込む材料同士が当接することにより合わせ目(皺部)が形成されるが、本発明者らの研究・解析の結果、プレート部の外周から片持ち状に延びる環状のリングギヤ部において、各外歯の内側に位置する合わせ目に発生する応力はリングギヤ部の基端側に比べて遊端側で高まることが判明した。このような研究・解析の結果を踏まえて、このドライブプレートのリングギヤ部の内周面には、少なくとも当該リングギヤ部の遊端側で複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部が形成され、複数の外歯のそれぞれには、当該遊端側で歯先よりも内側に凹む段部が形成される。このように各外歯に対して内側凹部および段部を形成して各外歯の遊端側の径方向における厚みを抑えることで、リングギヤ部の遊端側の内周面に、特に外歯の増肉に際して両側から材料が流れ込むことに起因した上述のような合わせ目(皺部)が形成されないようにし、リングギヤ部の遊端側での応力集中の発生を抑制することができる。この結果、このドライブプレートでは、プレス加工によりプレート部と一体に成形されるリングギヤ部の強度を良好に確保して耐久性を向上させることが可能となる。
また、前記内側凹部は、前記遊端から前記プレート部の該遊端側の表面まで延在するものであってもよい。このように、リングギヤ部の内周面の軸方向における概ね全体にわたって複数の内側凹部を形成することで、ドライブプレートの形成に要する材料量を削減すること、すなわち同一寸法の材料から形成されるドライブプレートのサイズ(外径)や、リングギヤ部の軸長をより大きくすることが可能となる。
更に、前記内側凹部は、少なくとも前記段部の内側に位置すると共に前記プレート部の前記遊端側の表面に達しないように形成されてもよい。このように、リングギヤ部の内周面の基端側(プレート部側)に内側凹部が形成されないようにすることで、各外歯の基端側(プレート部側)における歯元の強度、ひいてはリングギヤ部全体の強度を向上させることが可能となる。
また、前記段部は、前記駆動ギヤが前記リングギヤ部の前記遊端から突出することなく前記外歯と噛合する際の該駆動ギヤの歯と該外歯との噛み合い部よりも前記遊端側に位置するものであってもよい。これにより、駆動ギヤの歯とリングギヤ部の外歯との噛み合い幅を良好に確保して、モータによりエンジンをクランキングする際のギヤノイズの音質や音圧の悪化を抑制することが可能となる。また、各外歯の段部を駆動ギヤがリングギヤ部の遊端から突出することなく外歯と噛合する際の両者の噛み合い部よりも遊端側に位置するように形成しておけば、製造ばらつき等により駆動ギヤがリングギヤ部の遊端から突出したとしても、駆動ギヤの歯とリングギヤ部の外歯との噛み合い幅を良好に確保することができる。
本発明によるドライブプレートの製造方法は、
エンジンのクランクシャフトに連結されるプレート部と、該プレート部の外周から軸方向に延びると共に前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤと噛合する複数の外歯を有する環状のリングギヤ部とをプレス加工により一体に成形するドライブプレートの製造方法において、
前記リングギヤ部の内周面に、少なくとも該リングギヤ部の遊端側で前記複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部を形成すると共に、前記複数の外歯のそれぞれに、前記遊端側で歯先よりも内側に凹む段部を形成することを特徴とする。
この方法によれば、プレス加工により一体成形されるドライブプレートの耐久性をより向上させることが可能となる。
また、前記製造方法は、ワークに形成された環状壁部の内側に拘束パンチが配置されると共に該環状壁部の外側にダイス部が配置された状態で、圧縮パンチにより前記環状壁部を圧縮する工程を含むものであってもよく、前記拘束パンチには、少なくとも前記環状壁部の遊端側で径方向に突出する複数の凸部が形成されてもよく、前記圧縮パンチには、前記ダイスに向けて突出する複数の突起部が形成されてもよい。これにより、拘束パンチおよびダイス部に対して圧縮パンチを移動させて環状壁部(リングギヤ部)の外歯を増肉させる際に、拘束パンチの複数の凸部により材料の移動を規制してリングギヤ部の複数の内側凹部を形成すると共に、圧縮パンチの複数の突起部により材料の移動を規制して各外歯の段部を形成することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るドライブプレートを示す平面図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 本発明によるドライブプレートの製造に用いられる成形金型を例示する断面図である。 成形金型を構成する第3拘束パンチを示す拡大斜視図である。 成形金型を構成する圧縮パンチを示す拡大斜視図である。 比較例のドライブプレートを示す要部拡大部分断面図である。 本発明および比較例のドライブプレートにおけるリングギヤ部の遊端からの距離とリングギヤ部の内周部に発生する応力との関係を示す図表である。 本発明によるドライブプレートが製造される様子を示す拡大断面図である。 本発明によるドライブプレートを示す要部拡大斜視図である。 本発明によるドライブプレートを示す要部拡大断面図である。 本発明によるドライブプレートを示す要部拡大部分断面図である。 本発明の変形態様に係るドライブプレートを示す要部拡大断面図である。
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るドライブプレート1を示す平面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。これらの図面に示すドライブプレート1は、車両に搭載された原動機としての図示しないエンジン(内燃機関)から出力される動力を動力伝達対象であるトルクコンバータや流体継手といった図示しない流体伝動装置へと伝達するのに用いられるものである。ドライブプレート1は、図示するように、エンジンのクランクシャフトおよび流体伝動装置に連結されるプレート部2と、エンジンをクランキングする図示しないセルモータのピニオンギヤ(駆動ギヤ)PG(図2参照)と噛合可能な環状のリングギヤ部3とを含む。そして、ドライブプレート1、すなわちプレート部2およびリングギヤ部3は、例えば冷間圧延鋼板といった可撓性を有する板材(金属板)をプレス加工することにより一体に成形される。
ドライブプレート1のプレート部2は、図示するように、中心部に形成された平坦な環状の第1連結部20を有する。第1連結部20には、その中心に位置するように中心孔21が形成されており、当該中心孔21の周囲には、複数(本実施形態では、8個)の第1連結孔22が等間隔に配設されている。第1連結部20の周囲には、当該第1連結部20から流体伝動装置側に突出するように環状の平坦部23が形成されており、平坦部23の周囲には、当該平坦部23から僅かに流体伝動装置側に突出するように平坦な環状の第2連結部24が形成されている。第2連結部24には、複数(本実施形態では、6個)の第2連結孔25が等間隔に形成されており、第2連結部24は、図1および図2に示すように、流体伝動装置の例えばフロントカバーに溶接されるセットブロックと当接する平坦な当接面を各第2連結孔25の周囲に含む。
また、プレート部2には、複数(本実施形態では、6個)の軽め穴26が等間隔に形成されている。本実施形態において、軽め穴26は、円穴であり、平坦部23と第2連結部24とに跨るように互いに隣り合う第2連結孔25の間に配置される。更に、プレート部2は、第2連結部24の周囲を囲むように形成された環状の絞り部27を有する。本実施形態において、絞り部27は、環状の凹部27aが流体伝動装置側に開口するように形成される。
そして、エンジンのクランクシャフトとプレート部2の第1連結部20とは、絞り部27の凹部27aが流体伝動装置側に位置するように各第1連結孔22に挿通されたボルトにより締結される。また、流体伝動装置に固定されるセットブロック5は、第2連結部24の凹部27a側の当接面に当接させられると共に、各第2連結孔25に挿通されたボルトによりプレート部2に締結される。これにより、ドライブプレート1を介してエンジンと流体伝動装置とが連結され、エンジンから出力される動力を動力伝達対象である流体伝動装置へと伝達することが可能となる。
リングギヤ部3は、プレート部2の外周からドライブプレート1の軸方向に片持ち状に延在して絞り部27の凹部27aを囲むように形成され、それぞれ例えばインボリュート曲線により構成された歯面と概ね平坦な歯先面とを含むと共にセルモータのピニオンギヤPGの歯と噛合可能な複数の外歯30を有する。本実施形態において、ピニオンギヤPGの各歯は、軸心と平行に延びる歯筋を有し、ピニオンギヤPGは、図示しないセルモータのロータに連結されると共にエンジンの始動に際して図2に示すようにエンジン側からドライブプレート1(流体伝動装置側)に向けて移動させられる。そして、ピニオンギヤPGの各歯は、リングギヤ部3の歯幅方向における一端すなわちエンジン側(飛び込み側)の基端3aから隣り合う外歯30同士の間に入り込む。ピニオンギヤPGの先端(流体伝動装置側の端部)は、基本的に、リングギヤ部3の他端すなわち流体伝動装置側(反飛び込み側)の遊端3bよりも基端3a側に位置するが、製造ばらつき等によっては、遊端3bから流体伝動装置側に突出することもある。
上述のようなドライブプレート1は、図3に例示する第1拘束パンチ101、第2拘束パンチ102、第3拘束パンチ103、圧縮パンチ104およびダイス部105を含む成形金型100を用いて製造される。
第1拘束パンチ101は、概ね円盤状に形成されており、第2拘束パンチ102に対して接近離間可能となるように当該第2拘束パンチ102の図中上方に配置される。第1拘束パンチ101の第2拘束パンチ102と対向する面には、上記プレート部2の第1連結部20や平坦部23、第2連結部24を形成するための凹凸形状が付与されている。第2拘束パンチ102は、概ね円柱状に形成されており、ダイス部105に対して図3における上下方向に第1拘束パンチ101と共に移動可能となるように当該ダイス部105内に配置される。第2拘束パンチ102の第1拘束パンチ101と対向する面にも、上記プレート部2の第1連結部20や平坦部23、第2連結部24、絞り部27を形成するための凹凸形状が付与されている。
第3拘束パンチ103は、第1拘束パンチ101の外周を囲むと共に第2拘束パンチ102の外周部(絞り部27を形成するための凹部)と対向する環状成形部103aを有し、第1拘束パンチ101に対して図3における上下方向に移動可能となると共に、ダイス部105に対して図3における上下方向に第1および第2拘束パンチと共に移動可能となるように第1拘束パンチ101の図中上方に配置される。また、第3拘束パンチ103の環状成形部103aの外周面には、図4に示すように、ドライブプレート1のリングギヤ部3の歯数に応じた数(複数)の凸部103pが径方向に突出すると共に図中上下方向、すなわち第3拘束パンチ103の移動方向(リングギヤ部3の軸方向)に沿って延びるように形成されている。本実施形態において、各凸部103pの図中上下方向における長さは、ドライブプレート1の凹部27aの深さよりも長く定められている。
圧縮パンチ104は、概ね環状に形成されており、第3拘束パンチ103等に対して図3における上下方向に移動可能となるように当該第3拘束パンチ103を囲むように配置される。また、圧縮パンチ104の内周面には、図5に示すように、それぞれ第3拘束パンチ103の環状成形部103aに形成された凸部103pと係合する複数の凹部104rが形成されている。更に、圧縮パンチ104は、ダイス部105と対向する平坦な先端面104a(図3および図5における下端面)と、当該先端面104aからダイス部105に向けて(リングギヤ部3の軸方向)に突出するリングギヤ部3の歯数に応じた数(複数)の突起部104pとを有する。複数の突起部104pは、それぞれ成形金型100の径方向において第3拘束パンチ103の対応する凸部103pと隙間を隔てて対向するように形成される。また、各突起部104pの先端面104aからの高さ(図3および図5における上下方向における長さ)は、ドライブプレート1のサイズ等に応じて、リングギヤ部3の軸長(外歯30の歯幅)の例えば10〜40%程度、より好ましくは、10〜20%程度に定められる。
ダイス部105は、概ね環状に形成されており、第2拘束パンチ102を囲むように配置される。ダイス部105の内周面105aは、第1拘束パンチ101側、すなわち図3における上側に位置する絞り成形部と、当該絞り成形部よりも図3中下方に位置する縮径歯形成形部とを有する。そして、ダイス部105の内周面105aには、リングギヤ部3の複数の外歯30を形成するための歯形が付与されている。
上述のような成形金型100を用いて一体型のドライブプレート1を製造するに際しては、まず、第2拘束パンチ102上に例えば冷間圧延鋼板等からなる円盤状のワークを配置し、当該第2拘束パンチ102をダイス部105に対して固定した状態で、第1拘束パンチ101と第3拘束パンチ103とを第2拘束パンチ102とダイス部105に向けて(図3における下方に)移動させる。次に、第2拘束パンチ102をダイス部105に対して固定した状態で、第1拘束パンチ101と第3拘束パンチ103と圧縮パンチ104とを第2拘束パンチ102に向けて更に移動させてワークにプレス荷重を加える。これにより、ワークには、上記プレート部2の第1連結部20や平坦部23、第2連結部24に対応した段差形状が形成される。
続いて、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103とによりワークを挟んで拘束した状態を維持すると共に、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103と圧縮パンチ104とをダイス部105に対して移動させてワークにプレス荷重を加える(縮経成形工程)。これにより、第3拘束パンチ103とダイス部105の絞り成形部とによってワークの外周部に絞り成形が施され、絞り部27(凹部27a)やリングギヤ部3の成形が開始される。更に、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103とによりワークを挟んで拘束した状態で、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103と圧縮パンチ104とをダイス部105に対して移動させてワークにプレス荷重を加える。これにより、第3拘束パンチ103とダイス部105の縮径成形部とによってワークの最外周に形成された環状壁部が縮径化されると共に歯形が形成されていく。
次いで、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103とによりワークを挟んで拘束した状態で、圧縮パンチ104のみをダイス部105に対して移動(前進)させてワークにプレス荷重を加える(増肉歯形成形工程)。これにより、ワークの環状壁部が圧縮パンチ104により圧縮され、当該環状壁部に増肉化された複数の歯(外歯30)が形成される。そして、第1拘束パンチ101と第2拘束パンチ102と第3拘束パンチ103と圧縮パンチ104とをダイス部105から離間(後退)させると共に、第1拘束パンチ101と第3拘束パンチ103と圧縮パンチ104とを第2拘束パンチ102から離間(後退)させ、成型品(ドライブプレート1)を成形金型100から取り出す。なお、上記縮経成形工程が完了した段階で第1〜第3拘束パンチ101〜103によるワークの拘束を解除し、上記増肉歯形成形工程を他の圧縮パンチやダイス等を用いて(別工程で)実行してもよい。
ここで、図6に示すように、上述のようなプレス加工により一体成形される一般的な比較例としてのドライブプレート10では、リングギヤ部13の内周面、すなわち各外歯130の内側に、両側から流れ込む材料同士が当接することにより合わせ目(皺部)131が形成される。ただし、各外歯130の内側に形成される合わせ目131では、両側から流れ込んだ材料同士が完全に接合(融合)せず、当該合わせ目131周辺の強度を向上させることは容易ではない。そして、本発明者らの研究・解析の結果、環状のリングギヤ部13がプレート部(図6では図示省略)の外周から片持ち状に延びる場合、図7において点線で示すように、各外歯130の内側に位置する合わせ目131に発生する応力は、リングギヤ部130の基端側に比べて遊端側で高まることが判明した。
このような研究・解析の結果を踏まえて、ドライブプレート1の製造に用いられる成形金型100の第3拘束パンチ103には、径方向に突出する複数の凸部103pが形成され、圧縮パンチ104には、先端面104aからダイス部105に向けて(リングギヤ部3の軸方向)に突出するように複数の突起部104pが形成される。これにより、図8に示すように、ワークWに形成された環状壁部RWの内側に第3拘束パンチ103が配置されると共に当該環状壁部RWの外側にダイス部105が配置された状態で、第3拘束パンチ103およびダイス部105に対して圧縮パンチ104を移動させて環状壁部RWを圧縮する際、すなわち、第3拘束パンチ103やダイス部105に対して圧縮パンチ104を移動させて環状壁部RW(リングギヤ部)の外歯を増肉させる際には、第3拘束パンチ103の複数の凸部103pと、圧縮パンチ104の複数の突起部104pとにより材料の移動が規制される。つまり、外歯の増肉に際しては、第3拘束パンチ103の各凸部103pと、圧縮パンチ104の各突起部104pとの間への両側からの材料の流れ込みが抑制されることになる。
この結果、成形金型100を用いて製造されるドライブプレート1のリングギヤ部3の内周面には、図9から図11に示すように、複数の外歯30のそれぞれの内側に位置すると共に、遊端3bから凹部27aの底面、すなわちプレート部2の遊端3b側の表面まで延在する複数の内側凹部30rが形成される。また、リングギヤ部3の複数の外歯30のそれぞれには、遊端3bと当該遊端3bから距離lだけ基端3a側に離間した位置までの範囲、すなわち遊端3b側で歯先30t(図10参照)よりも内側(軸心側)に凹む段部(外側凹部)30sが形成される。
このように各外歯30に対して内側凹部30rおよび段部30sを形成して各外歯30の遊端3b側の径方向における厚みを抑えることで、図11に示すように、リングギヤ部3の遊端3b側の内周面に、特に外歯の増肉に際して両側から材料が流れ込むことに起因した上述の合わせ目(皺部)が形成されないようにすることができる。そして、各外歯30に対して内側凹部30rおよび段部30sを形成することで、図7において実線で示すように、リングギヤ部3の遊端3b側で各外歯30の内側に発生する応力を極めて良好に低減化し、各外歯30の内側に発生する応力をリングギヤ部3の全体で予め定められた充分に低い許容応力以下にすることが可能となる。この結果、ドライブプレート1では、リングギヤ部3の遊端3b側での応力集中の発生を良好に抑制することが可能となり、プレス加工によりプレート部2と一体に成形されるリングギヤ部3の強度を良好に確保して耐久性を向上させることができる。
また、ドライブプレート1では、複数の内側凹部30rが遊端3bから凹部27aの底面(プレート部2の当該遊端3b側の表面)まで、すなわち、リングギヤ部3の内周面の軸方向における概ね全体にわたって形成される。これにより、ドライブプレート1の形成に要する材料量を削減すること、すなわち同一寸法の材料から形成されるドライブプレート1のサイズ(外径)や、リングギヤ部3の軸長をより大きくすることが可能となる。
そして、ドライブプレート1の製造に用いられる圧縮パンチ104の各突起部104pは、リングギヤ部3の軸長L(外歯30の歯幅、図10参照)の例えば10〜40%(より好ましくは10〜20%)程度の長さを有するように形成される。従って、リングギヤ部3の軸方向における各段部30sの遊端3bからの長さlも当該リングギヤ部3の軸長L(外歯30の歯幅)の10〜40%(より好ましくは10〜20%)程度となり、各段部30sは、基本的に、ピニオンギヤPGがリングギヤ部3の遊端3bから突出することなく外歯30と噛合する際の当該ピニオンギヤPGの歯と外歯30との噛み合い部(噛み合い面)よりも遊端3b側に位置することになる。
これにより、ピニオンギヤPGの歯とリングギヤ部3の外歯30との噛み合い幅を良好に確保して、セルモータによりエンジンをクランキングする際のギヤノイズの音質や音圧の悪化を抑制することが可能となる。また、上述のように各外歯30の段部30sをピニオンギヤPGがリングギヤ部3の遊端3bから突出することなく外歯30と噛合する際の両者の噛み合い部よりも遊端3b側に位置するように形成しておけば、製造ばらつき等によりピニオンギヤPGがリングギヤ部3の遊端3bから突出したとしても、ピニオンギヤPGの歯とリングギヤ部3の外歯30との噛み合い幅を良好に確保することができる。
ここまで説明したように、プレス加工によりプレート部2とリングギヤ部3とが一体に成形されるドライブプレート1では、少なくともリングギヤ部3の遊端3b側で複数の外歯30のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部30rがリングギヤ部3の内周面に形成され、複数の外歯30のそれぞれは、遊端3b側で歯先30tよりも内側に凹む段部30sを有している。このように各外歯30に対して内側凹部30rおよび段部30sを形成して各外歯30の遊端3b側の径方向における厚みを抑えることで、リングギヤ部3の遊端3b側の内周面に、特に外歯の増肉に際して両側から材料が流れ込むことに起因した合わせ目(皺部)が形成されないようにし、リングギヤ部3の遊端3b側での応力集中の発生を抑制することができる。従って、ドライブプレート1では、プレス加工によりプレート部2と一体に成形されるリングギヤ部3の強度を良好に確保して耐久性を向上させることが可能となる。
なお、図7において点線で示す解析結果からわかるように、リングギヤ部の遊端から遠ざかるほど、各外歯の内側に位置する合わせ目に発生する応力は小さくなることから、リングギヤ部の基端側の内周面に合わせ目が存在していても、リングギヤ部3の強度を良好に確保することができる。従って、複数の内側凹部30rを必ずしもリングギヤ部3の内周面の軸方向における概ね全体にわたって形成する必要はない。すなわち、内側凹部30rは、図12に示すドライブプレート1Bのように、少なくとも各外歯30Bの段部30sの内側(リングギヤ部3Bの軸心側)に位置すると共にプレート部2の遊端側の表面(凹部27aの底面)に達しないようにリングギヤ部3Bの内周面に形成されてもよい。このように、リングギヤ部3Bの内周面の基端3a側、すなわち凹部27aの底面側(プレート部2側)に内側凹部30rが形成されないようにすることで、各外歯30Bの基端3a側(プレート部2側)における歯元の強度、ひいてはリングギヤ部3B全体の強度を向上させることが可能となる。そして、図12に示すような内側凹部30rを構成する場合には、第3拘束パンチ103に対して、図8に示す環状壁部RWの遊端側のみで径方向に突出するように複数の凸部を形成すればよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。また、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本発明は、エンジンからの動力を動力伝達対象へと伝達するドライブプレートの製造産業において利用可能である。
1,1B,10 ドライブプレート、2 プレート部、3,3B,13 リングギヤ部、3a 基端、3b 遊端、5 セットブロック、20 第1連結部、21 中心孔、22 第1連結孔、23 平坦部、24 第2連結部、25 第2連結孔、26 軽め穴、27 絞り部、27a 凹部、30,30B,130 外歯、30r 内側凹部、30s 段部、30t 歯先、100 成形金型、101 第1拘束パンチ、102 第2拘束パンチ、103 第3拘束パンチ、103a 環状成形部、103p 凸部、104 圧縮パンチ、104a 先端面、104p 突起部、104r 凹部、105 ダイス部、105a 内周面、131 合わせ目。

Claims (6)

  1. エンジンのクランクシャフトに連結されるプレート部と、該プレート部の外周から軸方向に延びると共に前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤと噛合する複数の外歯を有する環状のリングギヤ部とを備え、前記エンジンからの動力を動力伝達対象へと伝達するドライブプレートにおいて、
    前記プレート部と前記リングギヤ部とは、プレス加工により一体に成形され、
    前記リングギヤ部の内周面には、少なくとも該リングギヤ部の遊端側で前記複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部が形成されており、
    前記複数の外歯のそれぞれは、前記遊端側で歯先よりも内側に凹む段部を有することを特徴とするドライブプレート。
  2. 請求項1に記載のドライブプレートにおいて,
    前記内側凹部は、前記遊端から前記プレート部の該遊端側の表面まで延在することを特徴とするドライブプレート。
  3. 請求項1に記載のドライブプレートにおいて,
    前記内側凹部は、少なくとも前記段部の内側に位置すると共に前記プレート部の前記遊端側の表面に達しないように形成されることを特徴とするドライブプレート。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載のドライブプレートにおいて,
    前記段部は、前記駆動ギヤが前記リングギヤ部の前記遊端から突出することなく前記外歯と噛合する際の該駆動ギヤの歯と該外歯との噛み合い部よりも前記遊端側に位置することを特徴とするドライブプレート。
  5. エンジンのクランクシャフトに連結されるプレート部と、該プレート部の外周から軸方向に延びると共に前記エンジンをクランキングするモータの駆動ギヤと噛合する複数の外歯を有する環状のリングギヤ部とをプレス加工により一体に成形するドライブプレートの製造方法において、
    前記リングギヤ部の内周面に、少なくとも該リングギヤ部の遊端側で前記複数の外歯のそれぞれの内側に位置するように複数の内側凹部を形成すると共に、前記複数の外歯のそれぞれに、前記遊端側で歯先よりも内側に凹む段部を形成することを特徴とするドライブプレートの製造方法。
  6. 請求項5に記載のドライブプレートの製造方法において、
    ワークに形成された環状壁部の内側に拘束パンチが配置されると共に該環状壁部の外側にダイス部が配置された状態で、圧縮パンチにより前記環状壁部を圧縮する工程を含み、
    前記拘束パンチには、少なくとも前記環状壁部の遊端側で径方向に突出する複数の凸部が形成されており、
    前記圧縮パンチには、前記ダイス部に向けて突出する複数の突起部が形成されていることを特徴とするドライブプレートの製造方法。
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