本発明のある実施の形態における送受信切替装置は、第一のインダクタおよび第一のコンデンサを含み、信号を出力する送信部とアンテナとの間に接続される第一のリアクタンスと、第二のインダクタおよび第二のコンデンサを含み、所定の接続点と受信端子との間に接続される第二のリアクタンスと、第一のインダクタおよび第一のコンデンサの一方の出力端と所定の接続点で接続される高周波スイッチとを含み、第二のインダクタおよび第二のコンデンサの各定数は、信号受信時に第一のリアクタンスによって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れる値を有する。
これにより、送信時における電力損失を抑制し、電池寿命の低下を抑えることができる。また、アンテナで受信された受信信号の減衰を抑制して受信端子に出力することができる。
ある実施の形態において、第二のインダクタおよび第二のコンデンサの各定数は、信号受信時における第一のリアクタンスのリアクタンス成分を打ち消す値を有してもよい。
これにより、送信時における電力損失を抑制し、電池寿命の低下を抑えることができる。また、アンテナで受信された受信信号の減衰を抑制して受信端子に出力することができる。
ある実施の形態において、第一のリアクタンスは、送信部の出力インピーダンスを第一のインピーダンスに変換し、第一のインピーダンスをさらに第二のインピーダンスに変換するインピーダンス変換部をさらに含んでもよい。
インピーダンス変換部におけるリアクタンスの一部を所定の接続点とすることにより、部品数を削減することができる。
ある実施の形態において、高周波スイッチは、一端が直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続され、他端が第一のインダクタおよび第一のコンデンサの一方の出力端と所定の接続点で接続される半導体スイッチを含み、高周波スイッチは、送信部から出力される信号をアンテナから送信する送信時にスイッチONし、アンテナで受信された信号を受信端子へ出力する受信時にスイッチOFFしてもよい。
これにより、送信時における電力損失を抑制し、電池寿命の低下を抑えることができる。また、アンテナで受信された受信信号の減衰を抑制して受信端子に出力することができる。
ある実施の形態において、高周波スイッチは、第一の半導体スイッチおよび第二の半導体スイッチを含み、第一の半導体スイッチの一端と第二の半導体スイッチの一端とは所定の接続点で直列に接続され、第一の半導体スイッチの他端および第二の半導体スイッチの他端のそれぞれは、直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続されてもよい。
これにより、半導体スイッチの非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
ある実施の形態において、第一の半導体スイッチの他端は電源端子に接続され、高周波スイッチは、送信部から出力される信号をアンテナから送信する送信時に、電源端子に正電圧が印加されてスイッチONし、アンテナで受信された信号を受信端子へ出力する受信時に、電源端子にゼロ電圧が印加されてスイッチOFFしてもよい。
これにより、送信部とアンテナとの間に接続される、送受信を切り替えるためのダイオードが不要となるため、送信時における電力損失を抑制することができる。また、高周波スイッチへ印加する電圧を制御することで送受信の切り替えを行うことができる。
ある実施の形態において、第一の半導体スイッチである第一のダイオードのカソードと第二の半導体スイッチである第二のダイオードのアノードとが所定の接続点で直列に接続され、第一のダイオードのアノードおよび第二のダイオードのカソードのそれぞれは、直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続され、第一のダイオードのアノードは電源端子に接続され、高周波スイッチは、送信時に電源端子に正電圧が印加され、第一のダイオードおよび第二のダイオードに順方向電流を流すことでスイッチONし、受信時に電源端子にゼロ電圧が印加され、第一のダイオードおよび第二のダイオードに順方向電流を流さないことでスイッチOFFしてもよい。
これにより、ダイオードの非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
ある実施の形態において、第一の半導体スイッチであるP型MOSFETのドレインと第二の半導体スイッチであるN型MOSFETのドレインとが所定の接続点で直列に接続され、P型MOSFETのソースおよびN型MOSFETのソースのそれぞれは、直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続され、高周波スイッチは、送信部から出力される信号をアンテナから送信する送信時に、P型MOSFETのドレインとソースとを導通させるとともに、N型MOSFETのドレインとソースとを導通させることでスイッチONし、アンテナで受信された信号を受信端子へ出力する受信時に、P型MOSFETのドレインとソースとを導通させないとともに、N型MOSFETのドレインとソースとを導通させないことによりスイッチOFFしてもよい。
N型MOSFETがOFFの時にP型MOSFETがONし、P型MOSFETがOFFの時にN型MOSFETがONすることにより、非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
ある実施の形態において、第一の半導体スイッチであるPNPトランジスタのコレクタと第二の半導体スイッチであるNPNトランジスタのコレクタとが所定の接続点で直列に接続され、PNPトランジスタのエミッタおよびNPNトランジスタのエミッタのそれぞれは、リアクタンス素子を介してGNDに接続され、高周波スイッチは、送信部から出力される信号をアンテナから送信する送信時に、PNPトランジスタのベースおよびNPNトランジスタのベースのそれぞれにベース電流を流すことでスイッチONし、アンテナで受信された信号を受信端子へ出力する受信時に、PNPトランジスタのベースおよびNPNトランジスタのベースのそれぞれにベース電流を流さないことでスイッチOFFしてもよい。
NPNトランジスタがOFFの時にPNPトランジスタがONし、PNPトランジスタがOFFの時にNPNトランジスタがONすることにより、非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
本発明のある実施の形態における高周波スイッチは、第一のダイオードおよび第二のダイオードと、第一のダイオードおよび第二のダイオードにバイアス電流を流すための複数のバイアス素子であって、それぞれが第一のダイオードのアノードおよび第二のダイオードのカソードに接続される複数のバイアス素子とを含み、第一のダイオードのカソードと第二のダイオードのアノードとの接続点を第一の接続端とし、第一のダイオードのアノードと第二のダイオードのカソードとを複数の直流阻止用素子を介して接続した接続点を第二の接続端とし、バイアス電流を流したときに第一の接続端と第二の接続端とは導通状態になる。
これにより、簡単な構成により高調波スプリアスの発生を抑えることができ、かつ送信電力の効率化を実現できる。
ある実施の形態において、複数の直流阻止用素子は、互いに直列に接続された少なくとも2つのキャパシタであり、少なくとも2つのキャパシタの接続点を第二の接続端としてもよい。
2つのキャパシタを使用したことによりそれらキャパシタの高周波特性を打ち消すことができ、その結果スプリアスの発生を抑えることができる。
ある実施の形態において、複数のバイアス素子はインダクタであり、第一の接続端および第二の接続端を通過する高周波信号に対するフィルタを構成するインダクタと共用されてもよい。
インダクタをフィルタの一部とすることにより、部品点数を増やすことなくフィルタ特性を強化でき、その結果スプリアスを減衰させることができる。
本発明のある実施の形態における送受信切替装置は、高周波スイッチを含み、高周波スイッチの第一の接続端および第二の接続端の一方に、信号を出力する送信部が接続され、第一の接続端および第二の接続端の他方に、アンテナ、受信端子および更なる高周波スイッチが接続される。
上記高周波スイッチを送受信切替装置に適用することにより、簡単な構成により高調波スプリアスの発生を抑えることができ、かつ送信電力の効率化を実現できる。
ある実施の形態において、送信部から出力される信号をアンテナから送信する送信時に、バイアス電流を流して第一の接続端と第二の接続端とを導通状態にし、アンテナで受信された信号を受信端子へ出力する受信時に、バイアス電流を流さないことで第一の接続端と第二の接続端とを非導通状態にしてもよい。
上記高周波スイッチを送受信切替装置に適用することにより、簡単な構成により高調波スプリアスの発生を抑えることができ、かつ送信電力の効率化を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、同様の分野における類似の用語または類似の描写を用いて表現することが可能であることは、当業者において容易に理解される。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における送受信切替装置の基本構成を示す。
図1に示される送受信切替装置100は、インダクタ8とコンデンサ7とを含み、信号を出力する送信部1とアンテナ17との間に接続される第一のリアクタンス2と、受信時に第一のリアクタンス2によって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れるように各定数が決定されるインダクタ15およびコンデンサ14を含み、接続点16と受信端子5との間に接続される第二のリアクタンス4と、インダクタ8またはコンデンサ7の出力端と接続点16で接続される高周波スイッチ3と、を具備する。
この送受信切替装置100により、送信時における電力損失を抑制し、電池寿命の低下を抑えることができる。
なお、図1において、インダクタ8を接続点16に接続しているが、第一のインダクタ8と第一のコンデンサ7とを配置換えし、インダクタ8をGNDに接続し、コンデンサ7を接続点16に接続しても、同様の効果を得ることができる。
図2は、本発明の実施の形態における高周波スイッチを用いた送受信切替装置の一例を示す。図2に示される送受信切替装置100は、送信部1と、第一のリアクタンス2と、高周波スイッチ3と、第二のリアクタンス4と、受信端子5と、アンテナ17とを含む。
第一のリアクタンス2は、インピーダンス変換部6と、コンデンサ7と、インダクタ8とを含む。第二のリアクタンス4は、コンデンサ14と、インダクタ15とを含む。
高周波スイッチ3は、一端が直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続され、かつ、一端とは異なる他端がインダクタ8またはコンデンサ7の出力端と接続点16で接続される半導体スイッチを含む。これにより、アンテナ17から受信された受信信号における減衰を抑制して、受信端子5に出力することができる。
より詳細には、高周波スイッチ3は、第一の半導体スイッチとしてのダイオード9および第二の半導体スイッチとしてのダイオード10を有する。そして、高周波スイッチ3は、ダイオード9およびダイオード10に直流バイアス電流を流すために、抵抗12と、抵抗19と、電源端子13とを有する。さらに、高周波スイッチ3は、ダイオード10のカソードを、送信する無線信号に対してGNDに接地するためのコンデンサ18と、ダイオード9のアノードを、送信する無線信号に対してGNDに接地するためのコンデンサ11とを含む。
高周波スイッチ3と第一のリアクタンス2と第二のリアクタンス4が、接続点16で接続される。
また、高周波スイッチ3は、第一の半導体スイッチ(ここではダイオード9)の一端と第二の半導体スイッチ(ここではダイオード10)の一端とが接続点16で直列に接続され、第一の半導体スイッチ(ここではダイオード9)の他端および第二の半導体スイッチ(ここではダイオード10)の他端がリアクタンス素子11およびリアクタンス素子18を介してGNDに接続される。
このように接続することで、半導体スイッチの非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
以下に、図2を参照しながら、本発明の実施形態における送受信切替装置100の動作について説明する。
図2において、第一の半導体スイッチ(ここではダイオード9)の一端(ここではアノード)が電源端子13に接続される。高周波スイッチ3では、送信部1から出力される信号をアンテナ17から送信する送信時に、電源端子13に正電圧が印加されてスイッチONし、アンテナ17で受信された信号を受信端子5へ出力する受信時に、電源端子13にゼロ電圧が印加されてスイッチOFFする。
従来の送受信切替装置では、送信部とアンテナとの間に、送受信を切り替えるためのダイオード設けられていたが、本実施形態ではそのようなダイオードが不要となる。このため、送信時における電力損失を抑制しつつ、高周波スイッチ3へ印加する電圧を制御することで送受信の切り替えを行うことができる。
次に、送信動作について説明する。送信時には、電源端子13に例えば3Vが印加される。なお、電源端子13に印加される電源電圧の制御は、例えばマイコン(図示せず)により行われる。
電源端子13の電位が3Vになると、抵抗12および抵抗19を介して、ダイオード9およびダイオード10に直流バイアス電流が流れる。そして、ダイオード9のアノード−カソード間が導通状態になる。同様に、ダイオード10のアノード−カソード間も導通状態になる。その結果、接続点16は、コンデンサ11およびコンデンサ18によって、送信する無線信号に対してGNDに接続された状態となる。
なお、コンデンサ11およびコンデンサ18は、送信周波数に対して十分小さなインピーダンスになるように設定されなければならない。例えば、送信周波数が169MHzの場合、コンデンサ11およびコンデンサ18は1000pFに設定される。
具体的な数値を用いた例を、以下に説明する。
送信部1は、169MHzの送信信号を出力する。電池駆動の場合、電池の電圧は3〜6V程度である。そして、送信部1の信号源電圧は電池の電圧に依存して決定される。具体的には、負荷インピーダンスをRLとすると、送信部1からの送信電力Woは、以下の数式(1)から求められる。
Wo≒Vs2/RL (1)
ここで、Vsは信号源電圧=電池の電圧である。例えば、1Wの電力を有する信号を送信したい場合、Vs=5Vとすると、RL=25Ωとなる。
負荷インピーダンスRLは、第一のリアクタンス2の入力インピーダンスに相当する。すなわち、上記の例では、インピーダンス変換部6の入力インピーダンスを25Ωにする。
アンテナ17のインピーダンスは通常50Ωで設計される。よって、インピーダンス変換部6の出力に50Ωのアンテナ17が接続されたとき、インピーダンス変換部6の入力インピーダンスが25Ωになるように、インピーダンス変換部6でインピーダンス変換を行う。
先に説明したように、169MHzにおいて、接続点16は、送信信号に対してGNDに接続されるため、コンデンサ7とインダクタ8とは並列共振回路を形成する。そして、共振周波数が169MHzになるように、コンデンサ7の定数とインダクタ8の定数とが設定される。並列共振回路で送信信号が減衰することはなく、周波数が169MHzで送信電力が1Wの送信信号が、アンテナ17より空間に放射される。
なお、図2において、第一のリアクタンス2はインピーダンス変換部6を含んでいるが、送信部1の出力にアンテナ17のインピーダンスを接続したときに所望の電力が得られればインピーダンス変換部6は不要となり、第一のリアクタンス2は第一のインダクタ8と第一のコンデンサ7とで実現できる。
次に、受信動作について説明する。受信時には、電源端子13に電圧が印加されない。言い換えれば、電源端子13とGNDとの電位差がゼロ(例えば、電源端子13の電位が0V)になるように、マイコンは電源電圧を制御する。
電源端子13の電位が0Vになると、ダイオード9およびダイオード10には電流が流れず、それぞれのダイオードのアノードとカソード間は非導通状態となる。その結果、接続点16は、高周波スイッチ3側が169MHzにおいて、オープン状態となる。すなわち、接続点16と高周波スイッチ3とが非導通状態と同等の状態となる。
よって、アンテナ17で受信された周波数169MHzを有する受信信号は、インダクタ8を介して、第二のリアクタンス4に入力される。また、受信信号は、コンデンサ7およびインピーダンス変換部6にも入力される。
受信時には送信部1は動作しておらず、インピーダンス変換部6からは、送信部1は高抵抗とリアクタンス成分との並列回路のようになる。つまり、インピーダンス変換部6のインピーダンスは、アンテナ側からは、高抵抗とリアクタンス成分との並列回路のようになる。
このように、インピーダンス変換部6は高抵抗のため、インピーダンス変換部6のリアクタンス成分を打ち消すことで、アンテナ17で受信された受信信号の電力がインピーダンス変換部6で消費されることはない。
したがって、インピーダンス変換部6、コンデンサ7およびインダクタ8を含めたリアクタンス成分を打ち消すように、第二のリアクタンス4のインダクタ15の定数およびコンデンサ14の定数を決定する。つまり、受信時に第一のリアクタンス2によって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れるように、インダクタ15の定数およびコンデンサ14の定数が決定されることで、アンテナ17から受信された受信信号の減衰を抑制して、受信端子5に出力することができる。
よって、本発明の実施の形態における送受信切替装置100において、第一の半導体スイッチである第一のダイオード9のカソードと第二の半導体スイッチである第二のダイオード10のアノードとが所定の接続点16で直列に接続され、第一のダイオード9のアノードおよび第二のダイオード10のカソードが、リアクタンス素子11、18を介して、GNDに接続され、第一のダイオード9のアノードが電源端子13に接続され、高周波スイッチ3は、送信時に電源端子13に正電圧を印加して、第一のダイオード9および第二のダイオード10に順方向電流を流すことでスイッチONし、受信時に電源端子13にゼロ電圧を印加して、第一のダイオード9および第二のダイオード10に順方向電流を流さないことでスイッチOFFする。
これにより、ダイオードの非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
また、図2に示す第二のリアクタンス4では、インダクタ15が接続点16に接続され、コンデンサ14が受信端子5に接続されていたが、図3Aに示すように、コンデンサ14が接続点16に接続され、インダクタ15が受信端子5に接続されていてもよい。このような接続関係においても、受信時に第一のリアクタンス2によって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れるように、インダクタ15の定数およびコンデンサ14の定数が決定されることで、アンテナ17から受信された受信信号の減衰を抑制して、受信端子5に出力することができる。
第二のリアクタンス4は、少なくとも1つのインダクタおよび少なくとも1つのコンデンサを含むことで、上記と同様の効果を得ることができる。図3B、図3Cおよび図3Dは、2個のインダクタ15および15aと、2個のコンデンサ14および14aを含む第二のリアクタンス4を示す図である。
図3Bの例では、接続点16、インダクタ15a、コンデンサ14a、インダクタ15、コンデンサ14、受信端子5がこの順で接続されている。図3Cの例では、接続点16、コンデンサ14a、インダクタ15a、コンデンサ14、インダクタ15、受信端子5がこの順で接続されている。図3Dの例では、接続点16、コンデンサ14a、インダクタ15a、インダクタ15、コンデンサ14、受信端子5がこの順で接続されている。図3Eの例では、接続点16、インダクタ15a、コンデンサ14a、コンデンサ14、インダクタ15、受信端子5がこの順で接続されている。このような接続関係においても、受信時に第一のリアクタンス2によって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れるように、インダクタ15および15aの定数およびコンデンサ14および14aの定数が決定されることで、アンテナ17から受信された受信信号の減衰を抑制して、受信端子5に出力することができる。
また、図3Fは、1個のインダクタ15と、2個のコンデンサ14および14aを含む第二のリアクタンス4を示す図である。図3Gは、2個のインダクタ15および15aと、1個のコンデンサ14を含む第二のリアクタンス4を示す図である。図3Fの例では、接続点16、コンデンサ14a、インダクタ15、コンデンサ14、受信端子5がこの順で接続されている。図3Gの例では、接続点16、インダクタ15a、コンデンサ14、インダクタ15、受信端子5がこの順で接続されている。このような接続関係においても、受信時に第一のリアクタンス2によって生じる不整合の影響を考慮して整合が取れるように、インダクタ15および15aの定数およびコンデンサ14および14aの定数が決定されることで、アンテナ17から受信された受信信号の減衰を抑制して、受信端子5に出力することができる。
図4は、本発明の実施の形態における高周波スイッチを用いた送受信切替装置の例を示す。
図4に示される例において、送信部1は、NE5531079Aという品番のN型MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)TR1と、チョークコイルL1と、直流阻止用コンデンサC1と、インダクタL2とを含む。例えば、チョークコイルL1は1μH、インダクタL2は16nHである。
送信時において、電源端子22には、5Vの電圧が印加される。送信時には、送信端子21に周波数169MHzを有する送信信号が入力される。そして、MOSFETであるトランジスタTR1は、入力された送信信号の送信電力を増幅する。
図4の例では、第一のリアクタンス2は、図2のGNDに接続されたコンデンサ7と接続点16に接続されたインダクタ8とを含まない。よって、図4に示される第一のリアクタンス2は、図2におけるインピーダンス変換部6そのものである。
この場合の第一のリアクタンス2は、送信部1の出力インピーダンスを第一のインピーダンスに変換し、その変換された第一のインピーダンスをさらに第二のインピーダンスに変換するインピーダンス変換部6を含む。
より具体的には、インピーダンス変換部6は、インダクタL3とコンデンサC2とを含む第一のインピーダンス変換部20と、インダクタL4とコンデンサC3とを含む第二のインピーダンス変換部24とを含む。第一のリアクタンス2の出力端は、ローパスフィルタLPFを介して、アンテナ17に接続される。コンデンサC2は、接続点16に接続される。
このとき、第一のリアクタンス2のアンテナ側に50Ωの抵抗が接続されているようになる。そして、第二のインピーダンス変換部24のインダクタL4とコンデンサC3とによってインピーダンスが変換され、インダクタL4の左端では38Ωになる。このように抵抗を50Ωから38Ωに変換する場合、インダクタL4の定数は20nH、コンデンサC3の定数は10pFに設定される。
そして、第一のインピーダンス変換部20のインダクタL3とコンデンサC2とによってさらにインピーダンスが変換され、インダクタL3の左端では抵抗は25Ωになる。このように抵抗を38Ωから25Ωに変換する場合、インダクタL3の定数は17nH、コンデンサC2の定数は18pFに設定される。
したがって、送信部1の負荷インピーダンスは25Ωであり、電源端子22に印加された5Vの電圧により出力される1Wの送信電力を有する送信信号が、第一のリアクタンス2を介して、アンテナ17から放射される。
受信時において、送信端子21は0Vに固定される。そのため、トランジスタTR1はOFFとなり、高インピーダンスとなる。しかしながら、トランジスタTR1のドレイン−GND間には容量成分が若干残る。インダクタL2は、トランジスタTR1のドレイン−GND間に残った容量成分を打ち消す役割を有する。インダクタL2の役割により、送信部1の出力は、受信時にオープン状態になる。
また、高周波スイッチ3も接続点16からはオープン状態になる。そのため、アンテナ17で受信された受信信号は、インダクタL4とコンデンサC3とによって、抵抗が38Ωである信号源の信号に変換され、変換された信号は、コンデンサC2を介して、第二のリアクタンス4に入力される。
第二のリアクタンス4は、定数が51nFであるインダクタL5と、定数が27pFであるコンデンサC6とを含む。第二のリアクタンス4は、コンデンサC1およびインダクタL2によって打ち消されずに残った、送信部1の出力のリアクタンス成分を打ち消すとともに、抵抗を38Ωから50Ωに変換して、アンテナ17で受信された受信信号を受信端子5に出力する。
なお、図4に示される例では、コンデンサC3をGNDに接続し、コンデンサC2を接続点16に接続しているが、コンデンサC2をGNDに接続し、コンデンサC3を接続点16に接続しても良い。
しかしながら、コンデンサC2とインダクタL3との接続点−GND間のインピーダンスは、上記のように、第二のインピーダンス変換部24によって38Ωに変換される。すると、インダクタL4とコンデンサC3との接続点−GND間に生じる電圧レベルよりもインダクタL3とコンデンサC2との接続点に生じる電圧のほうが低いために、接続点16に印加される電圧レベルも低くなる。
したがって、コンデンサC2を接続点16に接続する利点として、高周波スイッチ3に大きな電圧が加わらなくなり、歪の発生をより小さくすることができる。
また、インピーダンス変換部6のリアクタンス素子のいずれかを接続点16に接続することにより、図2に示される例よりも部品数を削減することができる。
さらに、アンテナのインピーダンスを直接50Ωから25Ωに変換せずに、上記のように、第一のインピーダンス変換部20と第二のインピーダンス変換部24による2段階でインピーダンスを50Ωから25Ωに変換することにより、ローパスフィルタとしての機能が強化され、高調波スプリアスを減衰させることができる。
本発明の実施の形態においては、受信時に、第二のリアクタンス4によって、送信部1の出力に残留するリアクタンス成分を打ち消すことができる。そのため、受信時に送信部1の影響を除去するために必要となる半導体スイッチ(図15におけるダイオードDP1)を、送信伝送路中に設ける必要がない。その結果、送信時に半導体スイッチにおける電力損失が発生しないため、送信電力の高効率化を実現し、電池寿命が低下することを抑制することができる。
また、ダイオードの非線形特性によって、送信電力が大きくなるほど大きなスプリアスが発生する。特に、欧州において、送信周波数を169MHzとした場合、法規定により、3次高調波(スプリアス)の放射電力は−54dBm以下にしなければならない。よって、ダイオードの非線形特性によるスプリアスの発生は大きな課題である。
本発明の実施の形態においては、上記のとおり、ダイオードDP1を送信伝送路中に設ける必要がないため、送信電力が大きな場合でも、スプリアスの発生を抑制することができる。
次に、図4に示される送受信切替装置の動作について、図5を参照しながらさらに説明する。図4においては、例えば、ダイオードD1およびダイオードD2は、品番がRN242CSであるPINダイオードであり、R1=R2=600Ωである。
送信時には、抵抗R1およびR2を介して、直流バイアス電流が流れる。より詳細には、例えば送信時に、電源端子23には3Vの電圧が印加される。PINダイオードのON電圧を0.7Vとすると、ダイオードD1およびD2を流れる直流バイアス電流は、約1.3mAである。
図5は、図4に示される本発明の実施の形態における送受信切替装置100における、接続点16の電圧Vb.Vtおよび接続点16を流れる電流Ib.Itの時間的変化のシミュレーション結果を示す。横軸は時間軸、縦軸はそれぞれ接続点16の電圧Vb.Vtおよび接続点16を流れる電流Ib.Itである。
コンデンサC2とインダクタL3との接続点がHighレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが上昇する。すると、ダイオードD2がON状態時に流れる電流が増加する。一方、ダイオードD1は逆バイアスの方向に動作する。
コンデンサC2とインダクタL3との接続点がLowレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが下降する。すると、ダイオードD1がON状態時に流れる電流が増加する。一方、ダイオードD2は逆バイアスの方向に動作する。
ダイオードは蓄積効果を有する。順バイアスの方向に流れた電流の電荷がダイオードで蓄積され、逆バイアスの方向に変わったとき蓄積された電荷が流れることにより、逆バイアスの方向にも電流が流れる。すなわち、直流バイアス状態では、ダイオードはコンデンサのように動作する。
よって、図5に示されるように、接続点16における電圧Vb.Vtと電流Ib.It間はほぼ直交している(位相がほぼ90度ずれている)。その結果、Vb.VtとIb.Itとの積はほぼ零であり、高周波スイッチ3において電力は実質的に消費されない。
なお、ダイオードD2のカソードを直接GNDに接続することもできるが、高周波スイッチ3の抵抗をR1=R2、およびコンデンサの容量をC4=C5に設定することで、ダイオードD1のアノード側のインピーダンスとダイオードD2のカソード側のインピーダンスとを同じにすることができる。その結果、ダイオードD1およびダイオードD2のそれぞれに流れる電流値が同じになり、ダイオードD1およびダイオードD2で発生する歪を打ち消すことができる。
以上説明したように、ダイオードD1とダイオードD2とを直列に接続することにより、損失が少なくかつ歪の発生の少ない高周波スイッチ3を実現することができる。
受信時には、マイコンによって電源端子23は0Vに制御され、ダイオードD1およびD2に直流バイアス電流は流れない。そのため、ダイオードD1およびD2はOFF状態となり、接続点16から高周波スイッチ3のインピーダンスはオープン(つまりインピーダンスは実質的に無限大)となる。その結果、アンテナ17を介して受信された受信信号は、接続点16から高周波スイッチ3へは出力されずに、第二のリアクタンス4を経由して、受信端子5へ出力される。
(実施の形態2)
以下に、高周波スイッチ3の他の例について説明する。図6は、本発明の実施の形態における高周波スイッチ3の他の例を示す。
図6に示される例は、図4におけるダイオードD1およびダイオードD2の代わりに、P型MOSFETであるトランジスタTR4およびN型MOSFETであるトランジスタTR5を用いた例である。
また、図6に示される高周波スイッチ3は、2つのゲートバイアス抵抗R4、R5と、ソースバイアス抵抗R3とを含む。電源端子23には、マイコンの制御によって、送信時には3Vの電圧が印加され、受信時には0Vの電圧が印加される。
実施の形態2における送受信切替装置100では、第一の半導体スイッチであるP型MOSFETのドレインと第二の半導体スイッチであるN型MOSFETのドレインとが所定の接続点16で直列に接続され、P型MOSFETのソースおよびN型MOSFETのソースが、直接またはリアクタンス素子を介してGNDに接続される。高周波スイッチ3は、送信時にP型MOSFETのドレインとソース間が導通するようにP型MOSFETのゲート電圧を制御するとともにN型MOSFETのドレインとソース間が導通するようにN型MOSFETのゲート電圧を制御し、受信時にP型MOSFETのドレインとソース間が導通しないようにP型MOSFETのゲート電圧を制御するとともにN型MOSFETのドレインとソース間が導通しないようにN型MOSFETのゲート電圧を制御する。
これにより、N型MOSFETがOFFの時にP型MOSFETがONし、P型MOSFETがOFFの時にN型MOSFETがONすることにより、非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
図7は、図6に示される高周波スイッチ3を用いた送受信切替装置100における、接続点16の電圧Vb.Vtおよび接続点16を流れる電流Ib.Itの時間的変化のシミュレーション結果を示す。
コンデンサC2とインダクタL3との接続点がHighレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが上昇する。すると、トランジスタTR5のドレイン電流が増加し、トランジスタTR4はOFF状態になる。
一方、コンデンサC2とインダクタL3との接続点がLowレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが下降する。すると、トランジスタTR4のドレイン電流が増加し、トランジスタTR5はOFF状態になる。
FET(Field−Effect Transistor)は、ダイオードが有する蓄積効果を有しない。そのため、FETがOFF状態の時には、電流が流れない。
したがって、トランジスタTR4がON状態の時には、コンデンサC7がトランジスタTR4を介して放電し(つまり、蓄積された電荷がトランジスタTR4に流れ込み)、トランジスタTR4がOFF状態の時には、ソースバイアス抵抗R3を介してコンデンサC7が充電される(つまり、電荷が蓄積される)。具体的には、図6の場合、トランジスタTR4がON状態の時には約100mAの電流が流れる。
このとき、ソースバイアス抵抗R3を小さくして直流バイアス電流を約100mAにすると、コンデンサC7における充放電のバランスを取ることができるが、一方で、ソースバイアス抵抗R3による損失が大きくなり、高効率化を実現することができない。
そこで、ソースバイアス抵抗R3を大きくすることで直流バイアス電流が小さくなるため、ソースバイアス抵抗R3による損失を小さくすることができる。しかしながら、コンデンサC7における充電能力が下がるため、トランジスタTR4のソース電圧がGNDレベルよりも低くなる。
その結果、図7に示されるように、接続点16の電圧波形Vb.Vtに若干の歪が発生する。しかしながら、電流波形Ib.Itは殆ど歪まないため、送信時に発生する高調波スプリアスはそれほど大きくない。
また、図6に示される高周波スイッチ3を用いる場合、接続点16の電圧Vb.Vtと電流Ib.Itはほぼ同相である。そして、接続点16とGND間で消費される電力は、電圧Vb.Vtと電流Ib.Itとの積を時間積分したものである。
電圧Vb.Vtと電流Ib.Itがほぼ同相であることは、接続点16とGND間で消費される電力が発生することを意味している。すなわち、高周波スイッチ3で電力損失が発生する。そして、発生した電力は、抵抗に電流が流れたときに消費される。
電力損失WLは、以下の数式(2)にて求められる。
WL = (トランジスタTR4に流れる電流の2乗)×(トランジスタTR4の
ドレイン−ソース間の抵抗値)
+(トランジスタTR5に流れる電流の2乗)×(トランジスタTR5の
ドレイン−ソース間の抵抗値)
(2)
トランジスタTR4がOFF状態の時には、トランジスタTR4には電流が流れないため、トランジスタTR4で電力は消費しない。同様に、トランジスタTR5がOFF状態の時には、トランジスタTR5には電流が流れないため、トランジスタTR5で電力は消費しない。よって、電力が消費されるのは、各トランジスタTR4、TR5がON状態のときである。
以上より、トランジスタTR4およびトランジスタTR5がON状態のときのドレイン−ソース間の抵抗値が小さいFETを使用することが望ましい。
(実施の形態3)
以下に、高周波スイッチ3のさらに別の例について説明する。図8は、高周波スイッチ3のさらに別の例を示す。
図8に示される例は、図6におけるトランジスタTR4およびトランジスタTR5の代わりに、PNPトランジスタであるトランジスタTR2およびNPNトランジスタであるトランジスタTR3を用いた例である。
また、図8に示される高周波スイッチ3は、2つのベースバイアス抵抗R8、R9と、電源端子23の電圧を分圧するための抵抗R6、R7とを含む。コンデンサC8は、トランジスタTR2のエミッタおよびトランジスタTR3のエミッタを、送信する無線信号に対してGNDに接地するためのコンデンサであり、169MHzに対して十分小さい定数(例えば1000pF)のコンデンサを用いる。電源端子23には、マイコンの制御によって、送信時には3Vの電圧が印加され、受信時には0Vの電圧が印加される。
実施の形態3における送受信切替装置100では、第一の半導体スイッチであるPNPトランジスタのコレクタと第二の半導体スイッチであるNPNトランジスタのコレクタとが所定の接続点16で直列に接続され、PNPトランジスタのエミッタおよびNPNトランジスタのエミッタが、リアクタンス素子を介して、GNDに接続される。高周波スイッチ3は、送信時に電源端子23に正電圧を印加して、PNPトランジスタのベースおよびNPNトランジスタのベースのそれぞれにベース電流を流すことでスイッチONし、受信時に電源端子23にゼロ電圧を印加して、PNPトランジスタのベースおよびNPNトランジスタのベースのそれぞれにベース電流が流れないことでスイッチOFFする。
これにより、NPNトランジスタがOFFの時にPNPトランジスタがONし、PNPトランジスタがOFFの時にNPNトランジスタがONすることにより、非線形性を補正することができ、スプリアスの発生を抑えることができる。
図9は、図8に示される高周波スイッチ3を用いた送受信切替装置における、接続点16の電圧Vb.Vtおよび接続点16を流れる電流Ib.Itの時間的変化のシミュレーション結果を示す。
コンデンサC2とインダクタL3との接続点がHighレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが上昇する。すると、トランジスタTR3のコレクタ電流が増加し、トランジスタTR2はOFF状態になる。
一方、コンデンサC2とインダクタL3との接続点がLowレベルになると、接続点16の電圧Vb.Vtが下降する。すると、トランジスタTR2のコレクタ電流が増加し、トランジスタTR3はOFF状態になる。
トランジスタは、ダイオードが有する蓄積効果を有しない。そのため、トランジスタがOFF状態の時には、電流が流れない。
したがって、トランジスタTR2がON状態の時には、コンデンサC8がトランジスタTR2を介して放電し(つまり、蓄積された電荷がトランジスタTR2に流れ込み)、トランジスタTR3がON状態の時には、トランジスタTR3を介してコンデンサC8が充電される(つまり、電荷が蓄積される)。
このように、コンデンサC8における充電電流と放電電流とのバランスを取ることができる。図9に示されるように、接続点16の電圧波形Vb.Vtおよび接続点16の電流波形Ib.Itに歪が発生しない。よって、送信時に発生する高調波スプリアスは抑制される。
また、図8に示される高周波スイッチ3を用いる場合、接続点16とGND間で消費される電力は、電圧Vb.Vtと電流Ib.Itとの積を時間積分したものである。
よって、電圧Vb.Vtと電流Ib.Itがほぼ同相であることは、接続点16とGND間で消費される電力が発生することを意味している。すなわち、高周波スイッチ3で電力損失が発生する。そして、発生した電力は、抵抗に電流が流れたときに消費される。
電力損失WLは、以下の数式(3)にて求められる。
WL = (トランジスタTR2に流れる電流の2乗)×(トランジスタTR2の
コレクタ−エミッタ間の抵抗値)
+(トランジスタTR3に流れる電流の2乗)×(トランジスタTR3の
コレクタ−エミッタ間の抵抗値)
(3)
トランジスタTR2がOFF状態の時には、トランジスタTR2には電流が流れないため、トランジスタTR2で電力は消費しない。同様に、トランジスタTR3がOFF状態の時には、トランジスタTR3には電流が流れないため、トランジスタTR3で電力は消費しない。よって、電力が消費されるのは、各トランジスタTR2、TR3がON状態のときである。以上より、トランジスタTR2およびトランジスタTR3がON状態のときのコレクタ−エミッタ間の抵抗値が小さいトランジスタを使用することが望ましい。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における高周波スイッチを説明する。図10は、実施の形態4における高周波スイッチ30を示す図である。
図10に示される高周波スイッチ30は、インダクタL11、L12およびダイオードD11、D12およびキャパシタC11、C12を含む。高周波スイッチ30は、第一の接続端41と、第二の接続端42と、バイアス電流を流すためのバイアス電流端43と、バイアス電源端子44と、バイアス電流を制限するための抵抗R11と、第一および第二の接続端に入力する高周波信号に対して低インピーダンスとなるように定数が設定されたキャパシタC13とを含む。インダクタL11およびL12はバイアス電流端43を介してダイオードD11およびD12に直流バイアス電流を流すためのバイアス素子である。
以下、図10を参照しながら本発明の実施の形態の高周波スイッチ30の動作について説明する。まず高周波スイッチ30が導通状態となる動作について説明する。導通状態時にはバイアス電源端子44が例えば3Vに制御される。バイアス電源端子44の電源制御は、例えばマイコン(図示せず)により行うことができる。
バイアス電源端子44が3Vになると抵抗R11を介してバイアス電流端43に直流バイアス電流が流れ込む。するとバイアス素子であるインダクタL11およびL12を介してダイオードD11およびダイオードD12に直流バイアス電流が流れる。そしてダイオードD11のアノードとカソード間が導通状態になる。同様にダイオードD12のアノードとカソード間も導通状態になる。したがって、第一の接続端41と第二の接続端42はキャパシタC11およびC12を介して接続された状態となる。
ここでインダクタL11およびL12のインピーダンスは、高周波スイッチ30が高周波スイッチとして使用される高周波信号において、第一の接続端41および第二の接続端42に接続されるインピーダンスよりも十分大きな値に設定されている。例えば、高周波信号の周波数を169MHz、第一の接続端41および第二の接続端42に接続されるインピーダンスを50Ωとした場合、インダクタL11、L12をそれぞれ1μHにすると、インダクタL11、L12のインピーダンスは50Ωの20倍以上という大きな値に設定できる。
キャパシタC11およびC12は、前記高周波信号において第一の接続端41および第二の接続端42に接続される前記インピーダンスに対して十分小さなインピーダンスになるように設定されている。例えば、送信周波数を169MHzとし、キャパシタC11およびC12を1000pFに設定すれば、キャパシタC11およびC12のインピーダンスは0.94Ωになり、50Ωに比べ非常に小さい値にできる。
第一の接続端41の電圧が上昇すると、ダイオードD12はより順バイアス状態となりダイオードD12に流れる電流が増加する。一方、ダイオードD11は逆バイアスの方向に動作することになる。次に、第一の接続端41の電圧が下降すると、ダイオードD11はより順バイアス状態となりダイオードD11に流れる電流が増加する。一方、ダイオードD12は逆バイアスの方向に動作することになる。ダイオードには蓄積効果という現象があり、順バイアス時に流れた電流がダイオード内で蓄積されており、逆バイアスになったときでも蓄積された電荷により電流が流れるということが生じる。すなわち周期的に順バイアス状態になる場合には、ダイオードはキャパシタのように動作する。そして、ダイオードD11に流れる電流はキャパシタC11を介して第二の接続端42に流れ、ダイオードD12に流れる電流はキャパシタC12を介して第二の接続端42に流れるので、第一の接続端41と第二の接続端42は、2つのキャパシタが並列に接続された状態となる。
しかしながら蓄積効果で流せる電流には限界があり、ダイオードD11或いはD12が順バイアス時に流れる電流に比べ、逆バイアスされたときに蓄積効果で流れる電流の方が少ない。そのためそれぞれのダイオードD11、D12は個別では完全なキャパシタとしては機能せず、ダイオード毎に見れば流れる方向により電流の大きさが異なることとなる。したがって、ダイオード毎に見れば歪が発生することになる。しかしながら、第一の接続端41の電圧が上昇し、ダイオードD12が順方向にバイアスされているときにはダイオードD11が逆方向にバイアスされ、第一の接続端41の電圧が下降し、ダイオードD11が順方向にバイアスされているときにはダイオードD12が逆方向にバイアスされるため、第一の接続端41の電圧が上昇した場合であっても下降した場合であっても、必ず一方のダイオードが順方向、他方のダイオードが逆方向にバイアスされることになり、総和としての電流は第一の接続端41の電圧が上昇した場合であっても下降した場合であっても同じである。すなわち、それぞれのダイオードD11、D12で発生する歪は打ち消され、歪は発生しないこととなる。
上記ダイオードD11、D12で発生する歪を効果的に打ち消すためには、ダイオードD11とD12は同じ特性のダイオードを使用し、キャパシタC11とC12は同一の特性かつ同一の容量値を用い、インダクタL11とL12も同一の特性かつ同一のインダクタ値を用いることが望ましい。
なお、バイアス素子としてインダクタL11およびL12を用いているが、バイアス素子として抵抗を用いることもできる。しかし、ダイオードD11およびD12に所定の直流バイアス電流を流すためにはバイアス素子の抵抗値を大きくはできない。そのため、バイアス素子のインピーダンスを第一の接続端41および第二の接続端42に接続されるインピーダンスに比べて十分に大きくすることができない場合には、高周波スイッチ30で伝送損失が発生することになる。よって伝送損失を少なくするためにはバイアス素子としてインダクタを用いることが望ましい。
図11は、第一の接続端41に169MHzの高周波信号を入力した場合の、第一の接続端41と第二の接続端42との間の電位差および第二の接続端42を流れる電流の時間的変化のシミュレーション結果を示したものである。ダイオードD11およびD12は、RN242CSという品番のPINダイオードを採用し、キャパシタC11およびC12はキャパシタのインピーダンスの影響を少なくするために0.01uFという大きな値を採用してシミュレーションを行った例である。横軸は時間軸である。図11に示すように、第一の接続端41と第二の接続端42の電位差と第二の接続端42を流れる電流は正負対称であり歪が打ち消されていることがわかる。また電位差と電流はほぼ直交している。そのため高周波スイッチ30で電力損失はほとんど発生しない。
以上説明したごとく、本発明の実施の形態の高周波スイッチ30を用いれば、従来構成において順バイアス時と逆バイアス時で流れる電流の違いにより発生するスプリアスをなくすことができる。さらに、ダイオードD11とダイオードD12の2個のダイオードを使用することにより、1個あたりのダイオードに流れる電流を半減させることができ、小さな電流容量のダイオードを使用できるという効果がある。さらに、ダイオードD11とダイオードD12の総和としてのコンデンサ機能が増加することにより、損失を減らすこともでき、損失の少ない高周波スイッチを実現でき、電池駆動の送受信装置において電池寿命を延ばすことができるという効果がある。
次に、高周波スイッチ30が非導通状態となる動作について説明する。非導通状態時にはバイアス電源端子44が0Vに制御される。バイアス電源端子44の電源制御は、例えばマイコン(図示せず)により行うことができる。このとき、バイアス電流端43に直流バイアス電流が流れ込まず、ダイオードD11およびダイオードD12には直流バイアス電流が流れない。したがって、ダイオードD11およびダイオードD12は逆バイアス状態であり、第一の接続端41或いは第二の接続端42の電圧が上昇しても下降してもダイオードD11およびダイオードD12に電流は流れない。すなわち、第一の接続端41と第二の接続端42は非導通状態となる。
図12は、本発明の実施の形態の高周波スイッチ30を送受信切替装置100に用いた第一の例を示す図である。まず送信時の動作について図12を参照しながら説明する。送信部45から送信したい高周波信号が出力する。前記高周波信号は例えば169MHzの信号である。
インピーダンス変換部46ではアンテナインピーダンスにマッチングするように送信部45の出力インピーダンスをインピーダンス変換する。そしてインピーダンス変換された前記169MHzの信号が高周波スイッチ30の接続端41に入力する。キャパシタC14の機能については後述する。高周波スイッチ30は図10で説明した高周波スイッチであり、導通状態になるようにバイアス電流端43に直流バイアス電流が流れ込んでいる。そのため接続端41と接続端42は導通状態となり、前記169MHzの信号が接続端42に出力する。
キャパシタC15はインダクタL11とインダクタL12の影響を除去するために挿入されている。第二の接続端42とGNDの間にはインダクタL11とインダクタL12により決まるインダクタンスが生じている。キャパシタC15は前記インダクタンスを打ち消すためのキャパシタであり、インダクタL11およびL12とキャパシタC15で並列共振回路を形成している。そして共振周波数は送信周波数である169MHzになるようにキャパシタC15の値が決定される。これにより、図10で説明したよりもインダクタL11とL12の値を小さくすることができる。インダクタL11およびL12をそれぞれ100nHとすると、第二の接続端42とGNDの間のインダクタンスは50nHとなりインピーダンスは169MHzにおいて53Ωとなる。アンテナインピーダンス50Ωに対して前記53Ωは影響を与える値であり、このままでは送信出力を低下させてしまう。しかしキャパシタC15のインピーダンスが169MHzにおいて−53Ωになるようにすれば、前記インダクタンスによるインピーダンス53Ωを打ち消し、第二の接続端42とGNDの間のインピーダンスを大きくできる。さらにキャパシタC15とインダクタL11およびL12による並列共振回路は169MHzを中心周波数とするバンドパスフィルタとしても機能するため、169MHz以外のスプリアス信号を除去する効果がある。このようにキャパシタC15を挿入することにより、インダクタL11およびL12の値を小さくすることができるとともに、スプリアス信号を除去できる。
また、キャパシタC11およびC12は、第二の接続端42に接続されるアンテナインピーダンス50Ωに影響を与えないために、169MHzにおいてキャパシタC11およびC12のインピーダンスが十分小さくなるように、1000pFのような大きな値が望ましいが、100pFのような小さな値を用いることもできる。前記100pFのような小さな値を用いた場合、図12には記載していないが、第二の接続端42とキャパシタC15の接続点の間にキャパシタC11およびC12の並列インピーダンスを打ち消すためのインダクタを挿入すればよい。
第二の接続端42に生じた169MHzの送信信号は、インダクタL13を介して第二の高周波スイッチ31の接続端49に入力する。第二の高周波スイッチ31が図10に示す高周波スイッチ30と異なる点は、高周波スイッチ30がバイアス素子としてインダクタL11およびL12を使用しているのに対し、第二の高周波スイッチ31はバイアス素子として抵抗R12およびR13を使用していることである。前記バイアス素子の違いを除き高周波スイッチ31の動作は高周波スイッチ30と同じである。第二の高周波スイッチ31のバイアス電流端51にはバイアス電流が流れ込み、第二の高周波スイッチ31を導通状態にしている。したがって接続端49と接続端50は導通状態であり、接続端49はGNDに接続されたことになる。導通状態において接続端49をGNDに接続したことになるため、バイアス素子R12およびR13の値が導通状態に影響を与えることはない。よって高周波スイッチ31においてはバイアス素子としてインダクタを用いる必要はなく、直流バイアス電流を流せる値の抵抗素子で良い。
キャパシタC14は、高周波スイッチ31を介してGNDに接続されたインダクタL13の影響を除去するために挿入されている。キャパシタC14とインダクタL13は並列共振回路を形成しており、共振周波数は送信信号周波数である169MHzになるようにキャパシタC14の値が設定されている。そのため第二の接続端42に接続されるインダクタL13によるインピーダンスの低下は発生せず、第二の接続端42に生じる169MHzの送信信号は減衰することなくアンテナ47から放射されることになる。なおキャパシタC14とインダクタL13の並列共振回路は中心周波数169MHzのバンドパスフィルタとしても機能し、スプリアス信号を減衰させる効果がある。
次に受信時の動作について説明する。受信時には高周波スイッチ30のバイアス電流端43および第二の高周波スイッチ31のバイアス電流端51にバイアス電流が流れ込まないように制御される。したがって、図10で説明したように、高周波スイッチ30および第二の高周波スイッチ31は非導通状態となる。第二の接続端42における高周波スイッチ30の入力インピーダンスはインダクタL11およびL12で決まるインダクタンスである。そして前記インダクタンスはすでに説明したごとくキャパシタC15により打ち消される。したがってアンテナ47には高周波スイッチ30およびキャパシタC15は接続されていないことと同等になる。そしてアンテナ47で受信した169MHzの受信信号はインダクタL13およびキャパシタC16を介して受信端8に出力する。高周波スイッチ31は非導通のため接続端49は開放されていることと同等である。インダクタL13とキャパシタC16は直列共振回路を形成している。前記直列共振回路の共振周波数は受信信号周波数である169MHzである。以上の動作により、アンテナ47で受信した169MHzの受信信号は減衰することなく受信端8に伝送される。
図13は、本発明の実施の形態の高周波スイッチを送受信切替装置100に用いた第二の例を示す図である。図13において第一の例である図12と異なる点は、高周波スイッチ30の第一の接続端41がアンテナ47に接続され、第二の接続端42がインピーダンス変換部46に接続されていること、キャパシタC15がないこと、そしてキャパシタC14の代わりにキャパシタC19を用いていることである。
まず送信時の動作について図13を参照しながら説明する。送信時には図12の場合と同様に高周波スイッチ30および高周波スイッチ31が導通状態になるように制御される。第一の接続端41或いは第二の接続端42とGNDとの間のインピーダンスは、インダクタL11およびL12で決まるインダクタンスである。さらにインダクタL13は第二の高周波スイッチ31を介してGNDに接続されており、前記インダクタンスにインダクタL13のインダクタンスが並列に接続されたことになる。そしてキャパシタC19は前記インダクタL11およびL12で決まるインダクタンスとインダクタL13によるインダクタンスとの並列インダクタンスを打ち消すために挿入されている。すなわち前記並列インダクタンスとキャパシタC19は、共振周波数が送信周波数である169MHzの並列共振回路を形成している。つまり送信時にあっては、図12におけるキャパシタC14とC15の働きに相当するものが、図13におけるキャパシタC19である。上記動作によりインピーダンス変換部46の送信出力は減衰することなくアンテナ47より放射することができる。
次に、図13の第二の例における受信時の動作を説明する。受信時には図12の第一の例と同様に、高周波スイッチ30および高周波スイッチ31は非導通状態になるように制御される。したがって、高周波スイッチ30はアンテナ47に接続されていないのと同等になり、第二の高周波スイッチ31もインダクタL13とキャパシタC16に接続されていないのと同等になる。当然、キャパシタC19もアンテナ47に接続されていないことと同等であり、受信動作に影響を与えることはない。よってアンテナ47で受信した169MHzの受信信号は減衰することなくインダクタL13およびキャパシタC16を介して受信端8に伝送される。インダクタL13とキャパシタC16は、共振周波数が受信周波数の169MHzである直列共振回路を形成している。
上記説明したごとく、図13に示す第二の例によれば、キャパシタC14およびC15の2つのキャパシタを1つのキャパシタC19にすることができ、部品数を減らすことができる。
図14は、本発明の実施の形態の高周波スイッチを送受信切替装置100に用いた第三の例を示す図である。図14の第三の例において第二の例である図13と異なる点は、キャパシタC19がないこと、そしてインダクタL13の代わりにキャパシタC20を用い、キャパシタC16の代わりにインダクタL14を用いていることである。
まず送信時の動作について図14を参照しながら説明する。送信時には図13の場合と同様に高周波スイッチ30および高周波スイッチ31が導通状態になるように制御される。第一の接続端41或いは第二の接続端42とGNDとの間のインピーダンスは、インダクタL11およびL12で決まるインダクタンスである。そしてキャパシタC20は第二の高周波スイッチ31を介してGNDに接続されている。そして前記インダクタンスとキャパシタC20は、共振周波数が送信周波数である169MHzの並列共振回路を形成している。上記動作によりインピーダンス変換部46の送信出力は減衰することなくアンテナ47より放射されることができる。
次に図14の第三の例について受信時の動作を説明する。受信時には図13の第二の例と同様に、高周波スイッチ30および高周波スイッチ31は非導通状態になるように制御される。したがって高周波スイッチ30はアンテナ47に接続されていないのと同等になり、第二の高周波スイッチ31もインダクタL14とキャパシタC20に接続されていないのと同等になる。よってアンテナ47で受信した169MHzの受信信号は減衰することなくキャパシタC20およびインダクタL14を介して受信端8に伝送される。インダクタL14とキャパシタC20は、共振周波数が受信周波数の169MHzである直列共振回路を形成している。
上記説明したごとく、図14に示す第三の例を用いればキャパシタC19をなくすことができ、さらなる部品点数削減に貢献できるという効果が得られる。
なお、上述の実施形態の説明では、送受信切替装置および高周波スイッチは無線装置に適用したが、本発明は無線通信に限定されない。本発明は、高周波信号を送受信する回路に適用可能であり、有線の通信装置に適用されてもよい。