本発明の種々の実施形態の作成及び使用について以下に詳細に検討するが、多岐にわたる特定の状況において具現化され得る多くの適用可能な発明概念が本発明によって提供されることを理解されたい。本明細書において検討する特定の実施形態は、本発明を作成し使用するための特定の様式を示すのみであって、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の理解を容易にするため、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義する用語は、本発明に関連する分野における当業者によって一般的に理解される意味を有している。「a」、「an」及び「the」等の用語は単数の構成要素のみを指すことを意図しておらず、説明のためにその中の特定の例を使用することができる一般的な種類を含んでいる。本明細書における用語は本発明の特定の実施形態を記述するために使用されるが、特許請求の範囲にまとめたもの以外は、その使用によって本発明を限定するものではない。
本明細書において用いられる場合、「無機分子」は炭化水素基(単数又は複数)を含まない分子を指す。
本明細書において用いられる場合、「有機分子」は炭化水素基(単数又は複数)を含む分子を指す。
本明細書において用いられる場合、「ビタミン」はある種の生物学的種に必要な微量の有機物質を指す。
本明細書において用いられる場合、「生物分子」は生体の基本的成分として通常存在する有機化合物を指す。
本明細書において用いられる場合、「脂質」は、クロロホルム又はエーテル等の非極性溶媒によって細胞及び組織から抽出することができる水不溶性の油状又はグリース状の有機物質を指す。
本明細書において用いられる場合、「ホモシステイン」(Hcy)は、以下の分子式:HSCH2CH2CH(NH2)COOHを有する化合物を指す。生物学的には、Hcyはメチオニンの脱メチル化によって産生され、メチオニンからのシステインの生合成における中間体である。用語「Hcy」は遊離Hcy(還元形における)及び共役Hcy(酸化形における)を包含する。Hcyはジスルフィド結合を通してタンパク質、ペプチド、それ自身又はその他のチオールと共役し得る。
本明細書において用いられる場合、「血清」はフィブリン塊及び血液細胞を除去した後に得られる血液の流体部分を指し、循環血液中の血漿とは区別される。
本明細書において用いられる場合、「血漿」は流体で、血液の非細胞部分を指し、凝血の後に得られる血清とは区別される。
本明細書において用いられる場合、「実質的に純粋」は、純度を評価するために当業者によって使用される薄層クロマトグラフィー、ゲル電気泳動及び高性能液体クロマトグラフィー等の標準的分析方法によって決定される容易に検出可能な不純物を含まない充分に均一な組成物、又はさらなる精製によっても物質の酵素的及び生物学的な活性等の物理的及び化学的性質が検出可能な程には変化しない程度に充分に純粋であることを指す。
本明細書において用いられる場合、「試料」は分析物質アッセイが望まれる分析物質を含み得る全てのものを指す。試料は生物学的流体の上清等の生物学的試料、例えば尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水、その他であり得る。
本明細書において用いられる場合、「多重アッセイ」は単一のアッセイにおいて複数(12種以上)の分析物質を同時に測定する1種の手順を指し、一度に1つ又はいくつかの分析物質を測定する手順とは区別される。多重アッセイは生物学的試料中の所与の分子の種類を検出又はアッセイして治療効果を決定するために広く用いられている。
本明細書において用いられる場合、「分析物質」は、生物学的高分子及び低分子、元素又はイオン、有機又は無機分子、リガンド、アンチリガンド並びに本発明を用いて検出することができるその他の化学種を含む任意の分子(単数又は複数)を指す。本発明の方法、システム及び分離器は分析物質をアッセイするために用いることができる。例えば、無機分子はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ヨウ素、モリブデン、バナジウム、ニッケル、クロム、フッ素、ケイ素、スズ、ホウ素又はヒ素イオン等の無機イオンであってよい。アッセイすべき有機分子はアミノ酸、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ビタミン、単糖、オリゴ糖、脂質又はタンパク質であってよい。種々の分析物質について以下の略語が用いられる:ホモシステイン(tHcy)、メチルマロン酸(MMA)、メチオニン、S−アデノシルメチオニン(SAM)、S−アデノシルホモシステイン(SAH)、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB4(アデニン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB12、葉酸、又は鉄。
試験される分析物質(単数又は複数)に応じて、本発明は栄養欠乏症、臨床症状を含む障害若しくは疾患、並びに/又は血液学的、精神的及び/若しくは神経的疾患を含むが、これらに限定されない、いくつかの障害を決定、同定、及び/又は診断するために用いることができる。その他の疾患としては、血管系リスクファクター若しくは疾患、又は血管系疾患、末梢疾患、心臓血管系疾患、及び/若しくは脳血管系疾患等の障害が挙げられる。本発明によって遺伝性代謝障害、及び/又は腎不全も同定することができる。本発明を用いてまた検出することができる特定の病気の非限定的な例としては、アルギニン血症、アルギニノコハク酸尿症、カルバモイルリン酸シンテターゼ欠乏症1、シトルリン血症、ホモシスチン尿症、高メチオニン血症、高アンモニア血症、高オルニチン血症、ホモシトルリン尿症、メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症(古典的高フェニルアラニン血症/ビオプテリンコファクター欠乏症)、チロシン血症、メチルマロン酸血症、シスタチオニン β−シンテターゼ欠乏症(ホモシステイン及びメチオニンの上昇)、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素欠乏症(MTHFR、ホモシステインの上昇、低メチオニン)が挙げられる。
追加的な代謝物及びこれに関連する病気は、例えばwww.ommbid.comに見出すことができ、これは分析物質及び充分に解説された状態との相関を提供する注釈付きの情報源である。以下の参考文献の関連する部分は、ある種の分析物質の代謝レベル及びそれらが関係する疾患又は病気の決定を教示するものであり、参照により本明細書に組み込まれる:C. D.M. van Karnebeek and S. Stockler, Treatable inborn errors of metabolism causing intellectual disability: A systematic literature review, Mol. Genetics and Metabolism, 105 (2012) 368-381; Editorial, Asymmetric dimethylarginine (ADMA): Is really a biomarker for cardiovascular prognosis? Intl. Journal of Cardiology 153 (2011) 123-125; A. Meinitzer, et al., Symmetrical and Asymmetrical Dimethylarginine as Predictors for Mortality in Patients Referred for Coronary Angiography: The Ludwigshafen Risk and Cardiovascular Health Study Clinical Chemistry 57:1 (2011) 112-121; C. Wagner and M. Koury A-S-Adenosylhomocysteine-a better indicator of vascular disease than homocysteine? Am J Clin Nutr 2007;86:1581-1585; S. Stabler, et al., Elevation of Serum Cystathionine Levels in Patients with Cobalamin and Folate Deficiency Blood Vol 81, No 12 (1993) 3404-3413; Physicians's Guide to the Laboratory Diagnosis of Metabolic Diseases, Blau, Duran and Blaskovics (Eds) (1996) Chapman and Hall, Alden Press Oxford, Chapter B, Amino Acid Analysis 24-28; and S. Stabler and R. Allen, Vitamin B12 Deficiency as a Worldwide Health Problem, Annu. Rev. Nutr. (2004) 24:299-326。
本発明には液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC−MS/MS)又はその等価物(例えばイオン駆動技術を有する多成分検出器)を用いることができ、これは臨床化学に導入されていて当業者には既知であり(例えばVogeser M., Clin. Chem. Lab. Med. 41 (2003) 117-126を参照)、より感度が高い同じもののより新規なバリアントを含んでもよい。この技術の利点は分析的特異性及び正確性が高いこと、並びに信頼できる分析法の開発における適応性である。LC−MS/MSは強固な技術であることが示されており、大規模な常用検査室の設定にも適用可能である。試料材料の調製に関する要求事項はGC−MSに比べると限られている;しかし最新技術によって提示される単なるタンパク質の沈殿はいくつかのLC−MS/MS法には充分であろうが、極めて高感度の方法におけるイオン抑制効果を避けるためには、より効率的な抽出法が通常必要となる(Annesley, T. M., Clin. Chem. 49 (2003) 1041-1044)。「オフライン」若しくは「オンライン」固相抽出又は溶媒抽出はこの問題を解決するために現在用いられている手法であるが、本発明においては他のバリアントも用いることができる。
本発明によって、LC−MS/MS手法を用いる診断検査に用いるための方法及び血漿分離デバイスが提供される。本発明によって、従来の採血法に比べて、瀉血医の必要がない、血漿を分離するために遠心分離機を用いることが避けられる、血液収集チューブを開けることによって病原体に曝されることが避けられる、冷凍庫における血漿の保存や標本の輸送におけるドライアイスの使用が避けられる、本発明を用いて収集した血液をマルチバリアパウチに入れてシールし、容易かつ安全に保存し、郵便で発送することができること等のいくつかの利点が提供される。さらに、本発明によって遠隔地における対象のスクリーニングを可能にするための収集及び輸送に関わるコストがより少なく、使用が容易な血漿分離デバイスが提供され、これは臨床研究又は調査研究におけるさらなる利点である。この血漿分離デバイスとともにLC−MS/MS手法を用いることによって、指穿刺による血液の小滴から得られた血漿においてその他の代謝物及び薬物を試験することが可能になる。
本発明の血漿分離デバイスによって、蛍光検出に連結されたHPLC(HPLC−Flu)、電気化学的検出に連結されたHPLC(HPLC−EC)及びLC−質量分析(LC−MS/MS)等の血漿tHcyの決定方法が提供される。
高ホモシステイン血症をもたらすいくつかの先天性代謝異常は、血管系及び神経学的合併症と関連している。これらの症例の管理においては、療法中の血漿総ホモシステイン(tHcy)のモニタリングがしばしば必要となる。Chematics, Inc.社(North Webster, IN, US)から入手される血漿分離デバイス(PSD)を用いるtHcyの分析のための簡単、高感度、かつ費用効果の良い方法が認証されてきた。指穿刺から得た血液は、2層を含むPSDカードの血液導入部に添加される。上層には血液細胞が保持される一方、血漿は第2層に拡散し、小さなディスクに吸収される。血漿tHcyはディスクから溶出し、LC−MS/MS(4000QTRAP, ABSciex社)によって決定される。注入あたりの全分析時間は1.5分で、Hcyは0.9分で溶出した。較正曲線は2.5〜80μmol/Lで直線であることが示され、定量限界は0.5μmol/Lであった。3つの異なった濃度における血漿tHcyのアッセイ内及びアッセイ間CVはそれぞれ8.2〜8.9%及び7.7〜10.7%であった。この収集法を認証するため、指穿刺からの血液をPSD上に収集するのと同時に従来の静脈穿刺採血により血液を収集した。tHcy濃度の範囲を得るため、対照の対象及び腎不全患者から試料を得た。血漿tHcy値の比較(PSD対静脈穿刺)は優れた相関を示した(r=0.96、勾配=1.08、n=29、tHcy濃度範囲7〜36.6μmol/L)。PSD上に収集した血漿のtHcyは、4℃で保存した場合に2年間安定である。
図1はLC/MS/MSシステムのイメージである。LC/MS/MSシステム10はオリフィス14及びスキマー16と連通したソース12を含む。LC/MS/MSシステム10は高圧セル18、これに接続されたQ1セル20、これに続く衝突セル22、例えばLINAC衝突セル、及びQ3セル24、並びに最終的にレンズ26及び検出器28までを含む。Q1セル20は試料30を分離する一方、衝突セル20は分離された試料30を多数のフラグメント32にフラグメント化し、またQ3セル24において多数のフラグメント32を分離されたフラグメント34に再分離し、検出器28に送る方法を提供する。分離されたフラグメント34は次いで検出器28によって検出され、36にプロットされる。
本発明によって、診察を必要とせず、家庭で採血できる(例えば自己処理)方法及びデバイスが提供される。本発明によって収集時間を最適化できる(例えば早朝又は絶食)方法及びデバイスが提供される。さらに、本発明によって高ホモシステイン血症、再メチル化欠損及びCBS欠乏症の患者の頻繁なモニタリングが可能になる。本発明によって新生児、幼児及び小児に特に有用な方法及びデバイスが提供される。実用上、本発明によって遠心分離及び手動の血漿分離が必要ないため、診療所における試料処理が低減される。本発明によってドライアイスの必要がないダイレクトメール等による試料輸送が容易になり、通常の血漿輸送に時として付随する漏洩を避けられる。
図2A及び図2Bは、採血から及び指穿刺血漿分離デバイス(PSD)からの血漿におけるtHcy試験の相関を示すデータ及びプロットである。
図3は血漿分離デバイスのイメージである。血漿分離デバイス50は上面56に血液導入部54を有する血液分離器52を含む。血液試料58は血液導入部54の上に置かれてもよく、保持部材60が取り外されて血漿分離デバイス50から上面56が分離される。半透性膜62は上面56と基板64との間に位置している。半透性膜62と基板64との間には血漿収集貯槽66があり、血漿68を受容し、血漿収集貯槽66は例えば約2.0μl〜約3.5μlを含み得るが、1つの実施形態においては、容量は約2.4μlであった(より少量又はより多量、例えば0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、7.5、10、12.5、15、20、25、50マイクロリットル又はそれ以上も包含される)。
1つの実施形態においては、血漿分離デバイス50は個体から全血試料を血液導入部54に受容する。保持部材60は血漿分離デバイス50から上面56を取り外す。上面56と基板64との間に位置する半透性膜62によって血漿68が分離され、血漿68は半透性膜62と基板64との間の血漿収集貯槽66に収集される。ホモシステイン等の1又は2以上の代謝物又は分析物質について、2.4μlの血漿68の試料を試験した。
別の実施形態においては、血漿分離デバイス50は個体から全血試料を血液導入部54に受容する。保持部材60は血漿分離デバイス50から上面56を取り外す。
保持部材60の血液導入部54の上の全血試料を、血液細胞からDNAを抽出することによって処理し、遺伝子型分析を行った。上面56と基板64との間に位置する半透性膜62によって血漿68が分離され、血漿68は半透性膜62と基板64との間の血漿収集貯槽66に収集される。メチルマロン酸(MMA)、定量的アミノ酸、及びビタミンD等の1又は2以上の代謝物又は分析物質について、2.4μlの血漿68の試料を試験した。
本発明によって、血漿分離デバイス50を用いてtHcyレベルを決定するための手順が提供される。血漿分離デバイス50には2.4μlが保持される。血漿分離デバイス50についての1つの試料調製手順には、0.7mg/mlのジチオスレイトール(DTT)を含む5μMのIS(d4−Hcy)30μlと血漿分離デバイス50とを組み合わせ、ボルテックスし、室温で10分間インキュベートするステップが含まれる。10μl/mlのギ酸を含むアセトニトリル180μlを試料に加える。次いで試料をボルテックスし、4℃、14800rpmで10分間遠心分離し、75μlをLC−MSバイアルに移し、分析のために1μlを注入する。アセトニトリル75%及びギ酸0.1%からなる移動相を用い、32℃に維持したGemini 150×3mm 5μカラムで、Hcy及びd4−Hcyを定組成溶出させた。試料あたり全分析時間1.5分で、Hcyとd3−Hcyの両方が0.9分で溶出した。
図4A及び図4Bは、標準(図4A)及び試料(図4B)についての血漿tHcyのLC−MS/MS(MRM)決定のプロットのイメージである。プロットはd4−Hcy(1)、メチオニン(2)、及びHcy(3)のピークを明確に示している。
図5A〜図5Dは、対象1及び2についての血漿試料及びPSD試料からの回収を示す表であり、tHcyの予想濃度及び実測濃度並びに回収された添加標準の量を含む。
1つの試料調製法においては、単一の3/16インチの乾燥した血液スポットパンチを、ジチオスレイトール(DTT)、d3−メチルマロン酸(d3−MMA)、d3−メチルクエン酸(d3−MCA)、及びd8−ホモシステインを含む酸性アセトニトリル−水溶液で抽出する。1時間の撹拌の間に、遊離のホモシステイン、タンパク質結合ホモシステイン、及び加えたd8−ホモシステイン内部標準はホモシステインに還元される。抽出物を移して次に加熱窒素下で蒸発させる。乾燥した残留物をn−ブタノール中3N HClで処理してブチルエステルを形成させる。ブタノールを蒸発させた後、残留物を再構成し、遠心分離し、上清をマイクロバイアルに移し、LC−MS/MS分析に供する。
本発明によって、血漿分離デバイス50を用いてMMAレベルを決定するための手順が提供される。血漿分離デバイス50には2.4μlが保持される。血漿分離デバイス50についての1つの試料調製手順には、5μMのIS(d3−MMA)80μlと血漿分離デバイス50とを組み合わせ、ボルテックスし、室温で10分間インキュベートするステップが含まれる。試料溶液70μlをAmicon Ultra 0.5mL 10,000MWカットオフ超遠心分離フィルターに負荷し、室温で10分間、14800rpmで遠心分離する。濾液を取り出して分析のため、10μlの注入としてMTPに負荷する。アセトニトリル10%及びギ酸0.1%からなる移動相を用い、32℃に維持したWaters Symmetry 100×2.1mm 3.5μカラムで、MMA及びd3−MMAを定組成溶出させた。試料あたり全分析時間2分で、MMAとd3−MMAの両方が1.2分で溶出した。図6A〜図6Bは、血漿から及びPSDにスポットした血漿からの血漿中MMA試験の相関を示すデータ及びプロットである。
下表は、疾患との関連について検出される分析物質を比較するものである。例えば、本発明によって、単一のPSD試料を用いて多数の分析物質を検出し、例えば栄養欠乏症、血管系リスクファクター、先天性代謝異常、アミノ酸代謝異常症、腎不全等の障害を同定し、診断することができる。本発明を用いて他の化合物、例えばグルタチオンを分析することもできよう。
本発明のPSDを用いて検出することができる多数の分析物質のいくつかとしては、ホモシステイン(tHcy)、メチルマロン酸(MMA)、メチオニン、S−アデノシルメチオニン(SAM)、S−アデノシルホモシステイン(SAH)、ベタイン、コリン、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)、クレアチニン、アミノ酸(フルスクリーン42化合物)、グルタチオン、ビタミンD、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB4(アデニン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、及びビタミンB7(ビオチン)が挙げられる。分析物質の1つ又は全ての検出が、本明細書において意図されている。
血漿分離デバイスにおけるLC/MS/MSによるS−アデノシルメチオニン、S−アデノシルホモシステイン、ADMA、及びSDMAの測定。上表の方法1〜3においては、安定同位体希釈液体クロマトグラフィー−電気噴霧注入タンデム質量分析(LC−ESI−MS/MS, liquid chromatography-electrospray injection tandem mass spectrometry)を用いて血漿又は血清中のSAM、SAH、ADMA、SDMA、メチオニン、コリン、ベタイン、及びシスタチオニンを決定する。較正のため、それぞれの分析操作にはキャリブレーター及び内部標準(2H3−SAMe、L−(2,3,3,4,4,5,5−2H7−ADMA、2H3−メチオニン、2H3−コリン、2H3−ベタイン、2H3−シスタチオニン)を含めた。それぞれの標準の1mM保存溶液を蒸留水で希釈し、以下の濃度範囲、即ち12.5〜400nmol/L(SAM及びSAH)、125〜2000nmol/L(ADMA、SDMA、及びシスタチオニン)、並びに5〜80μmol/L(メチオニン、コリン、及びベタイン)にわたって5点較正曲線を作成した。
微小遠心フィルターユニット、Microcon YM-10、10kDa NMWL(Millipore社、USA)を用いた試料調製。試料は、10〜50μmol/Lの標識同位体内部標準を含む移動相A100μLを単一のPSD又は標準2.4μlに加え、続いてボルテックスし、室温で10分間インキュベートすることによって調製した。インキュベーション溶液90μlを微小遠心フィルターユニットに加え、4℃で20分間、14800×gで遠心分離した。試料濾液を取り出し、分析のためにマイクロタイタープレートに移した。4000 QTRAP(登録商標)LC−MS/MS(Applied Biosystems社)と連結したLC−MSシステム、Shimadzu Prominence LCシステムに10μlを注入した。
二相勾配を用い、全操作時間12分、流量250μL/分で、33℃に維持した250×2.0mm EZ-faast分析カラム(Phenomenex社)によってクロマトグラフ分離を行った。HPLC用溶媒は、(A)4mM酢酸アンモニウム、0.1%ギ酸、0.1%ヘプタフルオロ酪酸(pH=2.5)、(B)100%メタノール及び0.1%ギ酸であった。初期勾配条件はA75%:B25%で、6分間でB100%まで直線的に増加させ、1分間一定に保った。7.1分で移動相を初期条件に5分間リセットした。3〜8分の間のカラム流出液をESI源に送達し、それ以外は流出液を廃液に流した。滞在時間30msのポジティブESIを用いたMRMによって化合物を検出した。カーテンガスを15L/分に設定し、ソースガス1及び2を60L/分に設定した。イオン噴霧電圧5000Vでヒーターを700℃に設定し、CADガス(窒素)を3.5×10e−5Torrに設定した。分析物質特異的MRM遷移をモニターし、デクラスタリング電位(DP, declustering potentials)、入口電位(EP, entrance potential)、衝突エネルギー(CE, collision energy)、及び衝突出口電位(CXP, collision exit potential)を以前の表に示す。全てのデータはAnalyst software version 1.4.2を用いて収集した。
SAM、SAH、ADMA、SDMA、メチオニン、シスタチオニン、コリン及びベタインは、100%メタノールまでの勾配により、それぞれ7、6.6、6.5、6.5、4.3、6.1、及び3.8分の保持時間で分解された。HPLCクロマトグラフ条件によってはADMAとSDMAは完全に分離されなかったが、MS−MSモードで作動させたスペクトロメーターマスにおいてそれらが異なったフラグメント化パターンを有することから完全に識別された。フラグメントイオンの実測されたm/z値はSAMに対しm/z 399→250、SAHに対しm/z 385→136、2H3−SAMに対しm/z 402→250、ADMAに対しm/z 203→46、SDMAに対しm/z 203→172、2H7−ADMAに対しm/z 210→46、メチオニンに対しm/z 150→104、2H3−メチオニンに対しm/z 153→107、シスタチオニンに対しm/z 223→134、2H4−シスタチオニンに対しm/z 227→138、コリンに対しm/z 104→45、2H4−コリンに対しm/z 108→49、ベタインに対しm/z 118→59、2H3−ベタインに対しm/z 121→61であった。
血漿分離デバイスにおけるLC/MS/MSによるビタミンB種及びビタミンDの測定。PSDに付随する少量サイズに対応させるため、方法5を改変した。簡単に言えば、Bビタミン類の安定同位体を含む溶液30μlをPSD又は標準2.4μlに加え、暗所で光を遮断して10分間、氷上でインキュベートした。次に、Bビタミン類の安定同位体を含む6%TCA溶液30μlを加えて試料を脱タンパクする。試料をボルテックスし、光を遮断して1時間、氷上でインキュベートする。インキュベーション後に、試料を4℃で10分間、14800rpmで遠心分離する。上清をマイクロタイタープレートに負荷し、5μlをLC−MS/MSシステムに注入する。Bビタミン類の分離は、Agilent Eclipse Plus C18 150×3mm 3.5μ上で、勾配によって行われる。
血漿分離デバイスにおけるLC/MS/MSによる定量的血漿アミノ酸スクリーン。AB Sciex社によって提供されたaTRAQ法の試料調製を改変してPSDに付随する少量サイズに対応させることによって、PSDからの定量的アミノ酸スクリーンを含む方法4を実施する。使用時に対象は血液試料を採取してPSDに載せることができる。次いでPSD試料を分析してホモシステイン(tHcy)、メチルマロン酸(MMA)、メチオニン、S−アデノシルメチオニン(SAM)、S−アデノシルホモシステイン(SAH)、ベタイン、コリン、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)、クレアチニン、アミノ酸(フルスクリーン42化合物)、ビタミンD、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB4(アデニン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、及びビタミンB7(ビオチン)を決定する。次いで結果は栄養欠乏症、血管系リスクファクター、及び先天性代謝異常の診断を補助するために使用することができる。
血漿分離デバイス(PSD)は血液分離部材を有しており、血液分離部材は保持部材によって覆われ、保持されている。保持部材は下側に基板フィルム、上側にカバーフィルムを含んでおり、血液分離部材は基板フィルムとカバーフィルムとの間に固く挟まれている。血液分離部材と保持部材との間に全く空隙を残すことなく両者を接着することによって血液分離部材を保持部材によって固く覆い、保持すれば、全血から高純度の血漿又は血清を単離することが可能である。血液導入部がカバーフィルムの近位端部の上面に形成されており、血液導入部の反対側の保持部材の遠位端部に血漿又は血清採取用の開口が開けられている。
血液分離部材は血液導入部においてその外側が露出しており、損傷等からの保護のための保護部材で覆われている。保護部材としては、それが血液の浸透の結果としての表面張力の作用によって丸くならない限り、任意の材料を用いることができ、ナイロン等のプラスチック材料が用いられ得る。
血液導入部の形状は特に限定されず、円形又は多角形等の任意の他の形状でよい。血液導入部の形状は、カバーフィルムの近位端部が全て剥ぎ取られて大きな開口部を形成するように形成されていてもよい。血液導入部は好ましくは保護部材によって覆われているが、保護部材を設けず、血液分離部材が外気に曝されるような実施形態であっても、本発明の機能及び結果が達成され得ることは言うまでもない。
採取用開口は保持部材の上面、その底面、又は遠位端部の側面の任意の部分に開けることができ、特に限定はない。血漿又は血清採取用の開口のサイズは、0.02mm〜1mmの円形又は四角形であってよい。
血液分離部材として用いられる繊維状材料及び/又は多孔質材料としては、無機繊維、例えばガラス繊維及びアスベスト、天然有機繊維、例えば木綿、パルプ、絹等、半合成繊維又は合成繊維、例えばセルロース、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルホルマール、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ビスコースレーヨン等を挙げることができる。
血液分離部材はコーティング材料、例えばヘキシレングリコール、ブトキシ基を有するプロパノール及びブトキシ基を有するアクリルアミドによってコートされた繊維状材料及び/又は多孔質材料であってよい。コーティング材料は単独で用いてもよく、又は例えばガラス繊維フィルター、ヘキシレングリコール、ブトキシ基を有するプロパノール及びブトキシ基を有するアクリルアミドからなる群から選択される1又は2種以上でコートされたガラス繊維の2種以上から併せてなっていてもよい。
血液分離部材のサイズは少なくとも血液試料の量に対応する容量である必要がある。その形状は特に限定されず、四角形、三角形、その他の多角形、円形、楕円形、遠位端が狭くなったテーパーを有する羽子板形状及びその他からなる群から選択される任意の形状であってよい。
血液分離部材の厚みは、全血中の血漿又は血清部分から血液細胞部分が分離され、血液導入部から供給される全血中の血液細胞部分が血液分離部材の中に留まり、血漿又は血清部分が横断方向に、即ち血漿又は血清採取用開口の方向に移動させられることを可能にするものであり、したがって血液分離部材の厚みは、血液分離部材がその上面から底面まで血液細胞部分によって充填され、血漿又は血清が血液細胞分離部材中で横断方向に流れるように設定される。血液分離部材のサイズは試験に必要な血漿又は血清の量に基づいて適正に決定するだけでよく、それに関して特に限定はない。
本発明の血漿又は血清分離法は血漿分離デバイスを利用するものであり、したがって血液細胞成分の漏洩や溶血を起こすことなく、少量の血液からでも効率的に血漿又は血清を単離することができる。
第1の態様において本発明の血漿採取法には、採血部分に刺され、その部分に出血を起こさせる穿刺デバイスが含まれる。採血部分には特に限定はなく、例えば手、足等である。出血の後、血漿分離デバイスの血液導入部又は保護部材は出血部位に接触させられ、血液が採取されて、血液導入部を通して血液が供給される。
吸収された血液は血液分離部材中を血液導入部から遠位端部の採取用開口に移動し、血漿又は血清と赤血球との移動速度の差を用いて赤血球は血液導入部側に単離される一方、血漿又は血清は血漿又は血清採取用開口側に単離される;したがって、血漿又は血清は血液分離部材中で単離される。保持部材、特にカバーフィルムは透明又は半透明であるので、分離プロセスはカバーフィルムを通して目視で確認できる。血漿又は血清の採取量は、血液のヘマトクリット値及び血液分離部材の血漿又は血清分離能力によって決定される。単離された試料円は、分析のため血漿分離デバイスから取り出すことができる。
本発明の血漿分離デバイス及び方法によれば、遠心分離機を用いることなく、少量の血液から高純度の血漿又は血清を容易に得ることができる。本発明によって定量分析に直接供することができる血漿又は血清試料が提供される。
血液分離積層体は血液分離部材から作られた第1層、溶血ブロック部材から作られた第2層、及び血漿又は血清吸収部材から作られた第3層からなる。第1層は血液分離作用を発揮し、血液分離部材から作られている。第2層は溶血が第3層に広がらないようブロック作用を発揮し、ニトロセルロース及びシクロポア等の多孔質フィルム材料から作られている。第3層は単離された血漿又は血清の吸収作用を発揮し、ガラス繊維、セルロース、不織布、濾紙等の吸水性材料から作られている。
本発明によって前臨床研究における血液収集量の低減がもたらされ、これは動物試験及びデータの品質に顕著な効果がある。例えば、研究に必要な齧歯類の数を最大75%低減することができ、試験に必要な化合物の分量も大幅に低減することができる。これは組成物がまだ最適化されておらず、獲得して精製するためのコストが高く、時間がかかり、困難な場合に特に適している。本発明により、齧歯類の追加を必要とせずに追加できる時点の数を増加すること、及び逐次的薬物動態(PK)プロファイリングを可能にすることによって、前臨床研究において高品質のデータを生成するための方法が提供される。逐次的PKプロファイリングにより、複合プロファイリングを用いた際に見られる動物間の変動が除去され、データの品質が大幅に改善される。
本発明により、より低侵襲性の採血を用いる方法を提供することによる薬物開発プログラムが提供され、これは小児科学研究及び重症の患者に特に有益である。さらに、HIV及びB型肝炎等の病原体が不活性化されるので、特別のバイオハザードの予防策を必要とせず、室温及び通常の条件下における試料の発送、取扱い及び保存が、本発明によって可能になる。本発明によって臨床現場における特別の設備(例えば冷却遠心分離機、モニター付き冷凍庫等)の必要性が低減され、発展途上国における臨床研究が可能になる。
指穿刺からの血漿中の総ホモシステイン及びメチルマロン酸のLC−MS/MSによる分析
いくつかの先天性代謝異常が、血管系及び神経学的合併症と関連する中度及び重度の高ホモシステイン血症をもたらし得ることを決定するため、本発明を用いた。療法中に血漿総ホモシステイン(tHcy)をモニターすることは、これらの症例の管理においてしばしば必要となる。血漿分離デバイス(PSD)を用いて得られるtHcyの分析のために、本発明の簡単、高感度、かつ費用効果の良いLC−MS/MS法を開発した。このデバイスを、B12欠乏症のマーカーであるメチルマロン酸(MMA)の決定のためにも用いて認証した。
Hcy及びMMAの標準をSigma社から、また同位体標識標準の2H4−Hcy(Cambridge Isotopes社)及び2H3−MMA(CDN Isotopes社)を入手した。MMAのキャリブレーター及び品質管理材料はRecipe Chemicals社(ドイツ)から入手した。
指穿刺からの血液滴をCHEMCARD(商標)(Chematics社、North Webster, USA)の試験領域に添加する(図1)。3分以内に濾過及び吸収を行って血液試料の残りから血漿を分離し、血漿2.4μlを含む単一のディスクを残す。血漿ディスクが付着したカードを発送及び保存のため、分析時までマルチバリアパウチに入れる。ジチオスレイトール及び内部標準(2H4−Hcy及び2H3−MMA)を加えて血漿ディスクを室温で10分間インキュベートすることにより、血漿tHcy及びMMAの抽出を行う(図3に示す)。tHcy及びMMAの血漿及びPSDレベルを、既に述べた安定同位体希釈液体クロマトグラフィー−電気噴霧注入タンデム質量分析(LC−ESI−MS/MS)の変法によって測定した(Ducros V, Belva-Besnet H, Casetta B, Favier A. A robust liquid chromatography tandem mass spectrometry method for total plasma homocysteine determination in clinical practice. Clin Chem Lab Med 2006;44(8):987-990)。
図7に本発明の試料抽出及び分析の手順の1つを示す。PSDディスク又は標準2.4マイクロリットル(Hcyのみ)を、IS溶液10マイクロリットルとともにチューブに入れ、オービタル振盪器により室温、10分間、900rpmで混合する。チューブを室温、14,800rpmで5分間遠心分離する。液相を2つの試料に分離する。第1の試料については液相60マイクロリットルを分離し、10マイクロリットルをLC−MS/MSに負荷してMMAを測定する。残りに対して0.1%ギ酸含有アセトニトリル180マイクロリットルを加えてボルテックスする。チューブを遠心分離し、1マイクロリットルをLC−MS/MSに注入してtHcyを測定する。
以下はtHcy分析法の概要である。機器:ABSciex 4000 QTRAPに連結されたShimadzu Prominence HPLC;HPLCカラム:Gemini 150×3mm 5μ(Phenomenex社):HPLC溶出液(定組成):0.1%ギ酸含有75%アセトニトリル(流量=0.6ml/分)。保持時間:Hcy及び2H4−Hcy4=0.9分。較正曲線範囲2.5〜80μmol/L(水で調製2.4μl)。試料調製:図7参照。内部標準(IS, Internal standard)溶液:2H4−Hcy 10μM及び2H3−MMA 2μM、0.1%DTT含有水で調製。MS/MSの設定を以下の表にまとめる。
以下はMMA分析法の概要である。機器:ABSciex 5500 QTRAPに連結されたShimadzu Nexera HPLC;HPLCカラム:Synergi Hydro-RP 250×3mm 4μ(Phenomenex社)。HPLC溶出液A−0.1%ギ酸含有水、B−0.1%ギ酸含有メタノール。以下の表は勾配プロファイルを含む。
保持時間:MMA及び2H3−MMA=5.5分。較正曲線範囲221〜1499nmol/L(Recipe社)。試料調製は図7に従った。内部標準(IS)溶液:2H4−Hcy 10μM及び2H3−MMA 2μM、0.1%DTT含有水で調製。以下の表はMS/MSの設定を含む。
本発明を用いて、アッセイ内及びアッセイ間でtHcy及びMMAを矛盾なく測定することが可能であった。例えば、以下の表はアッセイ内及びアッセイ間の両方の方法の精度を示す。
図8は0日、14日及び42日を比較した、室温におけるPSD上のtHcyの安定性を示すグラフである。図9は種々の量の血漿をPSDに適用した場合のPSD tHcyの容量依存性を示すグラフである。図10はESRDを有する対象において静脈穿刺とPSD収集を同時に行った場合の結果を示すグラフである。
本発明のPSDは従来の採血法に対していくつかの利点を提供することが見出された:1.瀉血医の必要がない;2.血漿を分離するために遠心分離機を用いることが避けられる;3.血液収集チューブを開けることによって病原体に曝されることが避けられる;4.標本の輸送におけるドライアイスの使用が避けられる;5.冷凍庫における血漿の保存スペースが低減される;及び6.PSDを用いて収集した血液をマルチバリアパウチに入れてシールし、容易かつ安全に保存し、郵便で発送することができる。試料の取扱い、発送、及び保存の要求事項は、血漿tHcy及びMMAの試験に付随するコストを総合的に低減する。
さらに、進行中の予備的研究によれば、この手法を用いて他の代謝物(例えばS−アデノシルメチオニン、S−アデノシルホモシステイン、メチオニン、非対称性ジメチルアルギニン、対称性ジメチルアルギニン及びその他のアミノ酸)も決定できるであろうことが示唆される。この方式の収集は高ホモシステイン血症の症例におけるモニタリング療法に有用であるが、臨床研究又は調査研究のために遠隔地において対象をスクリーニングするためにも有用であろう。
血漿分離デバイスを用いた指穿刺からのPKUモニタリング
本発明は、フェニルアラニンの分析のための改善された在宅収集法として用いることができる、指穿刺から血漿を収集する新規な方法においても用いられた。
簡単に言えば、本発明はフェニルアラニンを分析するために用いられた。フェニルケトン尿症(PKU)の管理には、フェニルアラニンの食事制限と個体のフェニルアラニン血中レベルの頻繁なモニタリングの両方が含まれる。本発明者らによって、血漿分離デバイス(PSD)を用いるフェニルアラニン及びチロシンの分析のための簡単、正確、かつ費用効果の良い方法が開発され、認証された。
方法:指穿刺血液(1又は2滴)をPSDカードに添加し、ここで上層に細胞が保持される一方、血漿はディスクを通って第2層に濾過される。血漿(2.4μl)をディスクから抽出し、液体クロマトグラフィー−電気噴霧タンデム質量分析(4000QTRAP, ABSciex社)によってフェニルアラニン及びチロシンを決定する。
結果:本方法によって広い直線作動範囲(10〜2000μmol/L)にわたって全分析不正確度10%未満で、フェニルアラニン及びチロシンの両方の正確な決定が可能になる。血漿フェニルアラニン及びチロシンの値の比較(PSD対血漿)は、優れた相関を示した(それぞれPearson r=0.992、勾配=1.1;Pearson r=0.969、勾配=1.02;n=10)。PSD上に収集した血漿フェニルアラニン及びチロシンは4℃で保存した場合、2年間安定である。
本方法により、PSDからのチロシン及びフェニルアラニンの正確な決定が可能になる。以下の表に本発明のPSDを使用した結果を示す。
図11は血漿及びPSDにおけるチロシンについての相関を示すグラフである。図12は血漿及びPSDにおけるフェニルアラニンについての相関を示すグラフである。
本発明はADMA、SDMA及びアルギニンの回収を測定するためにも用いられた。以下の表に本発明を用いたADMA、SDMA及びアルギニンの回収の結果を示す。
図13は血漿及びPSDにおけるADMAについての相関を示すグラフである。図14は血漿及びPSDにおけるSDMAについての相関を示すグラフである。図15は血漿及びPSDにおけるアルギニンについての相関を示すグラフである。
PSD上に血液試料を収集し、引き続いて濾過して血漿を得ることは単に少量を必要とするのみであり、それにより従来の濾紙上の全血に比べて試験室における標本の廃棄が少なくなることが見出された。PSD収集法により、在宅設定又は臨床研究及び/若しくは調査研究のための遠隔地における対象の疾患又は治療の正確なモニタリングが可能になる。
本明細書において検討したいかなる実施形態も、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に関して実施でき、逆もそうであることが意図されている。さらに、本発明の組成物は本発明の方法を実現するために用いることができる。
本明細書に記載した特定の実施形態は説明のために示されており、本発明を限定するためではないことが理解されよう。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において本発明の主要な特徴を利用することができる。当業者は本明細書に記載した特定の手順に対する多数の等価物を日常の実験の範囲内で認識し、又は確認することができよう。そのような等価物は本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲に含められている。
本明細書に記述した全ての出版物及び特許出願は本発明が関係する技術分野における当業者の技能レベルを示すものである。全ての出版物及び特許出願は、各々の個別の出版物又は特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含む(comprising)」と併せて用いられる場合には、単語「a」又は「an」の使用は「1つの」を意味し得るが、「1又は2以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも矛盾しない。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを指すと明確に示されない限り、又は選択肢が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために用いられるが、本開示は選択肢のみ、及び「及び/又は」を指す定義を支持している。本出願を通して用語「約」は、値がデバイス、その値を決定するために用いられる方法、又は研究対象の間に存在する変動に固有の誤差変動を含むことを示すために用いられる。
本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、単語「含む(comprising)」(並びに「comprise」及び「comprises」等のcomprisingの任意の形)、「有する(having)」(並びに「have」及び「has」等のhavingの任意の形)、「含む(including)」(並びに「includes」及び「include」等のincludingの任意の形)又は「含む(containing)」(並びに「contains」及び「contain」等のcontainingの任意の形)は、包括的又はオープンエンドであって、追加的な、言及されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。
本明細書において用いられる場合、用語「又はそれらの組み合わせ」は、その用語に先立つ列挙された項目の全ての順列及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの、及び特定の文脈において順序が重要である場合には、またBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つを含むことを意図している。この例を続ければ、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等の1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。文脈から他が明白でない限り、いかなる組み合わせにおいても典型的には項目又は用語の数に限定はないことは、当業者には理解されよう。
本明細書において開示し特許請求する全ての組成物及び/又は方法は、本開示を考慮することにより、不必要な実験をすることなく、作成及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は好ましい実施形態に関して記述されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、組成物及び/又は方法に対し、並びに本明細書に記載した方法のステップ又はステップの順列において変化させることができることは、当業者には明らかであろう。当業者には明らかなそのような同様の置換物及び改変の全ては、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の中にあるとみなされる。