本発明は、基板上に薄膜コーティングを効率的に被覆するための装置に関する。より詳細には、本発明は、特定の薄膜の被覆を商業的に実現可能な被覆速度において行うことが可能でありかつ従来の被覆装置では不可能であった所望の特性を有する装置に関する。
薄膜について、2つのカテゴリーが近年公知である。これら2つのカテゴリーを区別する方法は多数有るが、本出願の目的のため、主な区別方法として、(1)被覆方法(すなわち、オンラインかまたはオフライン)と、(2)このような方法によってそれぞれ主に生成される膜の種類(ハードコート(または熱分解)あるいはソフトコート)とがある。
オンラインコーティングは好適には、ガラス製造プロセス(典型的には連続フロートガラス製造プロセス)時において例えばガラス基板上の1つ以上の薄膜層の被覆によって生成される。フロートガラス製造プロセスの特性に起因して、薄膜被覆プロセスを商業的に実現可能とするためには、薄膜被覆プロセスを比較的高温において極めて短い化学反応時間でかつ高い被覆速度で行う必要がある。
オンラインコーティング動作が成功した場合、得られた薄膜は、ほとんどのソフトコート膜よりも比較的に機械的耐久性および化学的耐久性が高い。
オフライン膜被覆においては、いくつかの公知の種類のスパッタコーティングプロセスのうち1つが用いられることが多い。そのようなスパッタコーティングプロセスにおいて、ガラスパネルを1つ以上のコーティングチャンバ中に配置し、「ターゲット」材料の物理反応または化学反応に起因して発生する雰囲気にガラスパネルを露出させて、ガラスパネル表面上をこの材料で被覆する。スパッタリングプロセスは、ガラス製造プロセスの速度によって制御されないため、より複雑な膜スタックをスパッタリングプロセスによって被覆することが可能である。これらの膜スタックは、場合によっては熱分解薄膜の特性よりも優れた特性を持ち得るが、このようなスパッタ膜の場合も、製造するのが大幅に高コストになる可能性がある。
オンラインコーティングのための装置は、例えば、以下の特許文献から公知である。
米国特許第4,446,815号において、ノズルの3つの集中的羽口から、気相状態の試薬を基板上へと噴出する。偏向器部材は、偏向器部材と基板との間のガスを導くように適合され、ノズルのいずれかの側部上に延びる。第1の偏向器部材の表面は、基板がノズルに対して移動する方向と反対方向に延び、基板に対して平行であり、第3の羽口の延びる外壁と鋭角を形成して、第1の羽口の軸方向中央の面に対する基板の移動方向において横方向にオフセットする。これとは対照的に、第2の偏向器部材の表面は、第2の羽口の対応する長手方向壁と鈍角縁部を形成する。そのため、第1の偏向器部材および第2の偏向器部材との間の縁部の間のノズルの開口部は有効に屈曲され、この開口部からのガスは、基板の移動方向において規則的に偏向される。
米国特許第4,934,020号において、コンベヤを用いた大気化学蒸着装置についての記載がある。この大気化学蒸着装置は、高温のマッフル炉と、コーティング対象物を炉を通じて搬送するためのコンベヤベルトとを含む。少なくとも1つの化学蒸着ゾーンがマッフル炉中に設けられる。インジェクタアセンブリも設けられる。インジェクタアセンブリは、第1の反応ガスおよび第2の反応ガスをコンベヤベルトの幅にわたる被覆ゾーン中に均等に注入し、コーティング対象物の表面に対して注入する。これらのガスは、分配プレナムへ接続されたスロットから出て行く。表面上の化学物質の被覆を最小化する目的のために、研磨された冷却表面をインジェクタアセンブリ上において用いる。
米国特許第5,041,150号において、高温ガラス製の移動するリボンを化学蒸着によってコーティングするプロセスについての記載がある。このコーティングは、ガラスの移動方向に対して実質的に平行な高温ガラス表面に沿って第1の反応ガスの第1の流れを確立し、第2の反応ガスの第2の流れを乱流としてガラス表面に対して角度を以て確立することによって行われ、これにより、第1の流れ中の第2の反応ガスの上流流れを回避しつつ、第1の流れ中に第2の流れを上記角度において導入し、第1のガスおよび第2のガスの組み合わせを乱流として高温ガラス表面上において方向付ける。
米国特許第5,122,391号において、非バッチプロセスにおいてデュアル電子供与体を生成すると言われているスズおよびフッ素双方を用いて酸化インジウム膜をドープするための大気圧化学蒸着システムについての記載がある。被覆システムは、窒素パージカーテンによって分離された1つ以上の反応チャンバを通じた連続処理を行うためのコンベヤベルトおよび駆動システムを有する。システムを通過した基板は、いくつかのヒーターによって加熱されたマッフル炉内へと進入し、反応チャンバは、ソース化学物質送達システムから供給される。ソース化学物質送達システムは、酸化剤源、フッ素化学物質源、窒素源、上記源のためのロタメータ、質量流コントローラ、スズ化学バブラー、高温ライン、インジウム化学バブラー、ヒーターを備えた一対の水槽、および関連付けられたバルビングを含む。
米国特許第5,136,975号において、大気圧化学蒸着機器において用いられる上記種類のインジェクタが記載されている。このインジェクタは、複数の直線状穴アレイを備えた複数のプレートを含む。これらのプレートを積層することで、複数のいわゆるカスケード式穴アレイが得られる。これらの積層プレートは、協働して穴マトリックスを規定すると言われる。穴マトリックスの下側に、シュートが配置される。シュートの両側に、冷却プレートが設けられる。シュートは、通路と、冷却プレートとシュート型ダクトとの間の領域とを含む。穴マトリックスの上部は、複数の気体化学物質を受容し、これらの化学物質を個々のカスケード穴アレイの上部へと別個に搬送する。その後、これらの気体化学物質を、カスケード式穴アレイを通じて強制移動させる。カスケード式穴アレイ中において、気体はますます均等に送られる。その後、これらの気体化学物質は個々に通路およびダクトへと送られて、表面の上方の領域へと送られる。この領域において、これらの化学物質は相互に接触および反応して、基板表面上に層を形成する。
米国特許第5,704,982号において、少なくとも1つの前駆体ガスの流れを、移動しているガラス基板の表面上に熱分解/分解反応によって分配するためのノズルについての記載がある。このノズルは、ノズル本体と、少なくとも1つの前駆体ガスの流れを本体ノズル中へ供給するための主要ガス供給システムと、主要ガス供給システムから独立した補助ガス供給システムとを含む。補助ガス供給システムは、少なくとも1つの前駆体ガスをノズル本体の主要ガスの近隣のノズル本体へ供給して、主要ガスの化学組成を局所的に変化させる。ノズル本体中への補助ガス流れは、経時的に変化する流量で制御される。
米国特許第6,022,414号において、表面へガスを送達する単一の本体インジェクタについての記載がある。このインジェクタは、細長部材と、少なくとも1つのガス送達表面とを含む。細長部材は、端面を含む。少なくとも1つのガス送達表面は、部材の長さに沿って延び、内部に複数の細長通路が形成される。また、部材内には、複数の肉薄の分配チャンネルが設けられる。これらの分配チャンネルは、細長通路と、ガス送達表面との間に延びる。ガスは、細長通路へと搬送され、分配チャンネルを通じてガス送達表面へと送られて、所望の領域へと方向付けられる。この所望の領域において、これらのガスの混合および反応により、インジェクタの下側に配置された基板上に薄膜が形成される。ガス送達表面は、曲線状の側領域と、ガス送達表面の中央凹領域とを含む。
米国特許第6,206,973号において、化学蒸着システムについての記載がある。このシステムは、高温マッフルと、チャンバと、ベルトとを含む。チャンバは、気化化学反応体を導入するためのインジェクタアセンブリを有する。ベルトにより、基板がマッフルおよびチャンバを通じて移動する。ベルトは、ベルト上の被覆(特に、酸化クロムの被覆)を低減するための抗酸化コーティングを有する。
米国特許第6,521,048号において、被覆チャンバおよび主要チャンバを含む化学蒸着装置についての記載がある。この被覆チャンバは、少なくとも1つの単一のインジェクタと、1つ以上の排出チャンネルとを含む。主要チャンバは、被覆チャンバを支持し、少なくとも1つの気体入口を含む。これらの気体入口により、少なくとも1つの気体が主要チャンバ中へと注入される。これらの気体を排出チャンネルを通じて除去することで、被覆チャンバを隔離する機能を果たす、内側方向に流れるパージが得られる。少なくとも1つのいわゆるセミシールを被覆チャンバと基板との間に形成することで、反応性化学物質を各被覆領域内に閉じ込める。
米国特許第6,890,386号において、ガスを基板へ送達するためのインジェクタおよび排出アセンブリについての記載がある。これらのインジェクタおよび排出アセンブリは、少なくとも2つのインジェクタと、取付用プレートとを含む。これらのインジェクタは、相互に隣接して配置され、間隔を空けて配置されて、相互間に少なくとも1つの排出チャンネルを形成する。取付用プレートは、これら少なくとも2つのインジェクタを固定するために用いられる。これら少なくとも2つのインジェクタはそれぞれ、取付用プレートへ個々に取り付けられるかまたは取付用プレートから取り外され、取付用プレートには、少なくとも1つの排出チャンネルと流体連通する少なくとも1つの排出スロットが設けられる。排出アセンブリは、インジェクタからの排出ガスを除去するように、取付用プレートへと接続される。
本発明は、基板(例えば、透明ガラス基板)上に薄膜コーティングを被覆するための装置に関する。
好適には、ガラス基板製造時において、移動中の高温ガラス基板上に薄膜コーティング(例えば、金属、金属酸化物)を好適にはフロートガラス方法によって被覆する。好適には、これらの薄膜は化学蒸着によって被覆され、最も好適には大気化学蒸着によって被覆される。一例として、酸化亜鉛コーティングの化学蒸着がある(例えば、米国特許出願第61/466,498号に記載のもの)。同文献の開示内容全体を参考のため援用する。
もちろん、選択された薄膜コーティングを被覆するためのコーティング装置を用いて、任意の適切なCVDおよび/またはAPCVD化学作用を実行することが可能である。しかし、コーティング装置は、混合されたときおよび/または公知のコーティング装置から排出される前に実質的に反応する気体前駆体化合物を送達する際において、特に有用である。混合されたときおよび/または他の公知のコーティング装置から排出される前に実質的に反応することが公知である気体前駆体化合物を挙げると、例えば、特定のアミン化合物を含むZn(CH3)2およびH20、Zn(C2H5)2およびH20、TiCl4およびNH3、およびTiCl4がある。理解されるように、本明細書中に記載のコーティング装置と共に適切に用いられる上記の気体前駆体化合物のリストは、網羅的なものを意図していない。また、このコーティング装置は、相互に「事前反応する」気体前駆体化合物の利用に限定されないことが理解されるべきである。よって、相互に混合された際に実質的に反応しない気体前駆体化合物をこのコーティング装置と共に用いることが可能である。例えば、コーティング装置と共に適切に用いられる気体前駆体化合物のうち、混合された際に実質的に反応しないものを挙げると、例えばSn(CH3)2Cl2およびH20がある。
本発明の装置は、公知の化学蒸着装置から逸脱する。公知の化学蒸着装置の設計の場合、多様な化学成分を制御された様態で事前混合することで混合物の反応温度を下回る温度において均等な事前混合物を発生させた後、薄膜が被覆されるガラス基板表面またはその近隣において反応させる。なぜならば、高温ガラス基板の温度は、事前混合された化学反応体の温度よりも高いからである。
これとは対照的に、本発明の被覆装置の場合、多様な反応物質を被覆装置内において相互に離隔して保持するように設計されており、また、記載の多様な方法により、均等な膜を商業的に実現可能な速度で生成できるくらいに高速で化学反応体をガラス表面またはその近隣において混合および反応させることが可能であり、また、例えばソーラー制御コーティングに適するように所望の範囲内の特性を有する。被覆装置を用いた被覆された膜は、所望であれば、極めて均等な色および導電性も示す。
より詳細には、本発明の被覆装置の主要本体は、適切な材料(好適には金属材料)からなる少なくとも1つのブロックから生成され得る。これらのブロックは、内部に気体状反応物質入口開口部が形成され、複数の流路を介して気体状反応物質出口開口部へと接続される。これら複数の流路は、多様な細流をコーティング装置中において相互に離隔して保持するように設計される。好適には、これらの気体状反応物質出口開口部は、スロット状の構成を有する(すなわち、各出口開口部の幅よりも長い長さを有する)。好適には、これらのスロットは、平行に配置され、相互に間隔を空けて配置される。これらの気体状反応物質出口開口部は、相互に同じ寸法であってよいし、異なる寸法であってもよい。
実施形態において、上記流路のうち少なくとも1つは、実質的に直線状であり得る。他の実施形態において、これらの流路のうち少なくとも1つは、実質的に直線状である部分(単数または複数)を有する。さらなる実施形態において、これらの流路のうち少なくとも1つは、これらの流路の実質的に直線状な部分へ接続されたかまたは接続する屈曲部を持ち得る。これらの実施形態において、流路は、複数の屈曲部を持ち得る。さらなる実施形態において、流路は、ほぼ同一の形状、長さおよび幅を持つように構成される。しかし、図8に示すように、特定の流路の幅を隣接する流路と同じにしてもよいし、あるいは異なるようにしてもよい。
1つ以上の気体流れ調節デバイスを、気体状反応物質入口開口部と、気体状反応物質出口開口部との間において流路のうち1つ以上内に配置することができる。このような流れ調節デバイス(単数または複数)は、気体状反応物質出口開口部のうち1つ以上からの気体流れの層流化を増加させることができる。
気体状反応物質出口開口部間の分離距離は均等にしてもよいし、あるいは、ある出口開口部と隣接する出口開口部との間で分離距離は異なっていてもよい。
気体状反応物質の細流がガラス基板表面またはその近隣において反応することが望ましいタイミングになるまでこれらの細流を分離した状態でさらに確実に保持するために、少なくとも1つの気体吐出方向付け器により、気体状反応物質の流れをガラス基板表面に向かう規定パターンとして方向付けることを支援することができる。不活性ガスの細流を用いて、化学反応体気体細流の反応が望まれるタイミングになるまで、この化学反応体気体細流を分離した状態で保持することも可能である。
気体状反応物質が各気体状反応物質出口開口部から流れる速度は、気体状反応物質出口開口部からの集合的吐出の乱流のレベルを制御するための手段として用いることが可能であり、よって、膜被覆速度および膜厚さの均一性に対して大きな影響を持つ。そのため、気体流れ速度は、所望の目的に応じて、ある気体状反応物質出口開口部と隣接する出口開口部との間において同じにしてもよいし、別個にしてもよい。
特に気体状反応物質出口開口部の領域内において、装置温度を所定の範囲内に収まるように公知の方法によって制御することが好ましい。このような所望の温度範囲は、1つ以上の要素(例えば、装置によって処理されている特定の化学反応体)によって異なり得る。
図面を参照して、本被覆装置10は、1つ以上の活性気体化学物質反応体を被覆装置10中の別個の流路中に維持するように設計され、特定の実施形態において、少なくとも1つの気体状反応物質が被覆装置10の主要本体12から吐出された後、流路ジオメトリを一定の時間/距離にわたって制御するように設計される。後述する方法により、本発明の装置は、その場合もなお、基板被覆表面14上に均等な膜を商業的に実現可能な速度(例えば、5nm/秒以上、好適には50nm/秒以上、およびさらには350nm/秒以上)で生成できるだけの高速でガラス基板被覆表面14またはその近隣において化学反応体の混合および反応を可能にし、一例としてソーラー制御性、低放射率または透明導電性を有する薄膜コーティングに適した所望の特性を有する。
本発明の被覆装置10の主要本体12は、適切な材料(例えば、金属(高グレードのスチールまたはスチール合金))からなる少なくとも1つのブロックから生成され得るが、ガラスフロート槽の環境に耐えることが可能なものであれば、装置10の主要本体12を形成する際、他の材料および方法も用いてよい。図4に示すように、主要本体の多様な面は、x16、y18、およびz20、22(z1およびz2)として従来指定されている。1つ以上の気体状反応物質入口開口部24を、任意の適切な方法によって上面z120内に形成する。1つ以上の気体状反応物質入口開口部は、任意の所望の幾何学的形状を持ち得る。好適には、複数のこのような気体状反応物質入口開口部24は、装置10のz1面20内にこのように形成される。特定の実施形態において、例えば図5に示すように、いわゆる「カバーブロック」72を1つ以上の流路28内に配置することができる。このようなカバーブロック72を用いて、流れを所望の様態で個々の流路28内に制限することができる。よって、このようなカバーブロック72を1つ以上の流路28のうち1つ以上の気体状反応物質入口開口部24の近隣の部分内に配置すると好適である。
以下にさらに詳述するように、少なくとも1つの気体状反応物質出口開口部26を、被覆装置10の主要本体12の下面またはz2面22またはその近隣に形成する。少なくとも1つの別個の流路28が主要本体12を通じて延びて、少なくとも1つの気体状反応物質入口開口部24を少なくとも1つの気体状反応物質出口開口部26へと流動接続する。好適には、複数の別個の流路28(例えば、3、5、7または9本の流路28)が装置10の主要本体12を通じて延びて、複数の気体状反応物質入口開口部24を複数の気体状反応物質出口開口部26へと接続する。このような流路28は、任意の所望の幾何学的構成を持ち得る。
被覆装置10の特定の実施形態において、「バッフルブロック」74は、例えば図5に示すように1つ以上の流路28内に配置され得る。好適には、バッフルブロックが存在する場合、このバッフルブロックは、カバーブロック72と流れ調節器30との間において流路28内に配置される。好適には、バッフルブロックは、各流路内に配置される。バッフルブロック74は、流路28内の気体状反応物質細流の均一性を増加させることを意図する。
気体状反応物質出口開口部26は、任意の所望の形状を持ち得るが、好適にはスロット状の構成にするとよい(すなわち、気体状反応物質出口開口部26は好適には、被覆装置10の主要本体12の「y」寸法においてよりも、被覆装置10の主要本体12の「x」寸法において大きくなっている)。好適には、スロット状の気体状反応物質出口開口部26は平行に配置され、相互に間隔を空けて配置される。任意の所望の数の気体状反応物質出口開口部26が利用可能であるが、3個、5個、7個または9個の出口開口部26が好適である。このような出口開口部26間の分離距離は典型的には、約0.5mm〜3mmであり得る。気体状反応物質出口開口部26間の好適な分離距離は約1mmを超えず、より好適には、このような分離距離は約0.5mmである。
気体状反応物質出口開口部26は、被覆装置10の主要本体12のz2面22内に形成してもよいし、あるいは、所定の距離(例えば約5.5mmの距離)まで被覆装置10の主要本体12中に凹ませてもよい。気体状反応物質出口開口部26を凹ませることで、溶融スズ槽および高温ガラス基板被覆表面14からの熱から被覆装置10の気体吐出部分を一定レベルまで保護できるため有利であることが分かっている。このような温度は、1050°F(566℃)〜1400°F(750℃)のオーダーであり得る。好適には、ガラス表面温度は、1100°F(600℃)〜1200°F(650℃)である。
気体状反応物質出口開口部26は、サイズ(特に、被覆装置10の主要本体12の「y」寸法)が異なり得る。場合によっては、不活性ガスを吐出する気体状反応物質出口開口部26の「y」寸法(すなわち、出口開口部の幅)を、活性気体化学物質反応体を吐出する気体状反応物質出口開口部26よりも大きくすると有利であることが分かっている。
少なくとも1つの気体状反応物質入口開口部24と少なくとも1つの気体状反応物質出口開口部26との間に延びる気体流路28のうち1つ以上内に、1つ以上の気体流れ調節デバイス30を固定することができる。このような気体流れ調節デバイス30は、1つ以上の気体状反応物質出口開口部26からの1つ以上の気体吐出細流の層流化を高めることを意図している。図9に示すような「ハニカム」構成は、1つ以上の気体流れ調節デバイス30において好適である。他の面積ももちろん可能であるが、ハニカムのセルの好適な面積は約1平方ミリメートルである。このハニカムの好適な垂直方向寸法(厚さ)は好適には、約5mm〜約25mmであり得る。
気体状反応物質細流および不活性ガス細流を反応させることが望ましいタイミングまで両者をさらに確実に分離するために、ガラス基板被覆表面14またはその近隣において、少なくとも1つの気体吐出方向付け器32により、流路の1つ以上の部分が規定される。図6に示すような特定の実施形態において、少なくとも1つの気体吐出方向付け器32は、出口開口部26を超える距離にわたって、気体状反応物質出口開口部26のいずれかの側部上において延び得、これにより、気体状反応物質の流れをガラス基板の被覆表面14へ向かう規定されたパターンとして方向付ける。気体状反応物質を混合するゾーンのサイズおよび位置と、このような混合を行うための機構とは、本発明のいくつかの実施形態において異なり得る。例えば、気体状反応物質の拡散による混合は、流れ調節器またはその近隣、被覆装置10のz2面またはその近隣、および基板被覆表面14またはその近隣において行うことができる。少なくとも1つの気体吐出方向付け器が気体状反応物質出口開口部26を超えて延びる実施形態において、少なくとも1つの気体吐出方向付け器32は肉薄の突起(好適には肉薄の金属材料)であり、1つ以上の気体状反応物質出口開口部26の近隣の被覆装置10の主要本体12から、好適には移動している約5.5mmの高温の移動しているガラス基板の被覆表面14内において延びる。1つ以上の気体化学物質反応体出口開口部26に隣接する1つ以上の不活性気体状反応物質出口開口部26からの不活性ガスの細流を用いて、気体化学物質反応体細流を反応させることが望ましいタイミングまで、気体化学物質反応体細流を分離した状態で保持することもできる。
各気体状反応物質出口開口部26から気体状反応物質の流れの速度は、気体状反応物質出口開口部26からの集合的吐出の乱流のレベルを制御するための手段として用いることが可能であり、よって、膜被覆速度および膜厚さの均一性に対して大きな影響を持つ。そのため、気体流れ速度は、所望の目的に応じて、ある気体状反応物質出口開口部26と隣接する出口開口部26との間において同じにしてもよいし、別個にしてもよい。しかし、好適には、気体流れ速度は、気体出口開口部26間において実質的に等しい。
本発明の装置は、1つ以上の気体排出開口部36も有利に含む。1つ以上の気体排出開口部36は、被覆装置10の主要本体12を通じて延びて、使用後または未使用の気体状反応物質を連続的に除去することを可能にする。このような使用後または未使用の気体状反応物質に起因して、基板14の被覆表面上に望ましくない汚染物質が発生し得る。このような気体排出抽出を用いて、高温ガラス基板の被覆表面またはその近隣において発生する気体流れ乱流および反応物質混合物の量に影響を与えることも可能であり、これにより、薄膜被覆速度を向上させる可能性が得られる。
任意の公知の方法により、特に少なくとも1つの気体状反応物質出口開口部26の近隣の領域および少なくとも1つの気体状反応物質出口開口部26を含む領域において、被覆装置10の温度を所定の範囲内に収まるように制御すると好適である。例えば、温度制御方法は好適には油冷却および水冷却を含むが、空気冷却も可能である。
例えば図4〜図7中に、代表的な冷却材料通路76を示す。当業者であれば、このような温度制御システムを実行するためには多様な熱デバイスおよび電子デバイスが必要になることが多いことを理解する。装置10の所望の温度制御範囲は、1つ以上の要素に応じて異なり得る(例えば、被覆装置10によって処理されている特定の化学反応体)が、典型的には装置の温度を±50°F(±10℃)の範囲内に制御すると好適である。他の利点として、このような温度制御システムは、被覆装置10の気体吐出部分(例えば、気体吐出方向付け器32)と関連付けられたコンポーネントの熱安定性および構造完全性を維持することが分かっている。化学事前反応を回避することも、本温度制御システムの目的である。
本明細書中上述したように、本発明の装置10の主要本体12は、好適には金属材料製の少なくとも1つのブロックから形成され得る。装置の主要本体を複数の金属ブロックから組み立てると有利である。複数の金属ブロックを用いることによって得られる利点を挙げると、例えば容易な組み立ておよびメンテナンス、被覆装置10の個々の領域の温度制御の向上、および被覆装置10の構造および熱安定性の向上がある。
本発明の装置10について説明してきた。ここで、被覆装置10を用いて薄膜コーティングを被覆する方法について説明する。本明細書中において別の箇所において説明したようなフロートガラス製造プロセスにおいて、より詳細にはフロートガラス製造プロセスのフロート浴部において、本発明による少なくとも1つの薄膜被覆装置10を、溶融スズ槽上に支持された連続移動するガラス基板の被覆表面14の上方において所定の距離を以て配置する。
別個の供給ラインが、気体化学物質反応体の少なくとも1つの源から延び、同様に、不活性ガスの少なくとも1つの源から延びる。これらの不活性ガスの少なくとも1つの源は好適には、フロート槽の外部に配置されて、被覆装置10の主要本体12内の気体入口開口部24を分離する。少なくとも1つの気体化学物質反応体および少なくとも1つの不活性ガスの所定の流量における流動を開始させ、供給ラインを通じて少なくとも1つの気体入口開口部24へと搬送する。少なくとも1つの気体入口開口部24において、少なくとも1つの気体化学物質反応体および少なくとも1つの不活性ガスは、被覆装置10の主要本体12を通じて延びた別個の流路28を通じて所定の速度で流動する。
好適には、各気体流路28内の所定の位置において、少なくとも1つの気体状反応物質および少なくとも1つの不活性ガスは、流れ調節デバイス30と接触する。流れ調節デバイス30は、各別個の気体流路28の層流化を向上させることを意図する。好適には、少なくとも1つの流れ調節デバイス30は、図9に示すような「ハニカム」構成であるが、他の構成も可能である。ハニカムのセルの寸法は、サイズおよび形状が異なっていてもよい。特定の気体細流の層流化を変化させることが所望される範囲に応じて、図10に示すような流れ調節デバイス30の垂直方向寸法または「厚さ」も、変化し得る。
好適には少なくとも1つの流れ調節デバイス30を通過した後、別個の気体流路28内を流動する気体は、各別個の気体出口開口部26に近づく。各別個の気体出口開口部26は好適には、スロット状の構成を有する。特定の実施形態において、少なくとも1つの流れ調節デバイスは、気体出口開口部26に近接する。
あるいは、別個の気体出口開口部26から吐出された後、被覆装置の特定の実施形態において、気体化学物質反応体および不活性ガスの別個の流れを、本明細書中に上記したような少なくとも1つの気体吐出方向付け器32により、未だに分離されている流路において基板14の被覆表面へとさらに方向付ける。上記した理由のため、被覆装置10の温度(特に、気体状反応物質出口開口部26の近隣領域の温度)を±50°F(±10℃)の範囲内に制御すると好適であることが分かっている。
移動している高温ガラス基板の被覆表面14またはその近隣において、別個の気体流れ細流を所望の混合ゾーン内において混合し、所定の様態で化学反応させる。このような反応の結果、移動している高温ガラス基板14の被覆表面上に、薄膜が商業的に実現可能な被覆速度で被覆される。
上述したように、本発明の方法は、連続ガラスリボン基板の形成と関連して実行されることが多い。活性気体状反応物質は、ガラスの表面14またはその近隣において組み合わされることが企図される。気体混合物中には、搬送ガスまたは希釈剤(例えば、窒素、空気またはヘリウム)も含まれることが多い。この気体混合物を混合ゾーンへ送る温度は、この気体混合物が反応して薄膜コーティングを形成する温度よりも低く、基板表面14は、この反応温度よりも高い温度である。本発明により、薄膜コーティングの生成を商業的に実現可能な被覆速度(好適には、5nm/秒以上、より好適には50nm/秒以上、さらには350nm/秒以上)で行うことが可能になる。高い被覆速度は、ガラス製造プロセスにおいてガラス基板上に薄膜を被覆する際に重要である。なぜならば、ガラスリボンがラインを移動する速度は、数百インチ/分の範囲内であり、特定の厚さの薄膜を僅か数分の1秒で被覆する必要があるからである。反応物質の任意の特定の組み合わせについて、高い被覆速度を達成するための最適な濃度および流量を試験またはコンピュータモデリングによって決定することができる。より高濃度の反応物質および高気体流量を用いた場合、反応物質を薄膜へと全体的に変換するための効率が低くなる可能性が高くなるため、商用動作のための最適な条件は、最高被覆速度が得られる条件と異なり得ることが理解される。
フロートガラス製造導入は、本発明の方法を実行するための手段として用いることができる。本明細書中に記載されるフロートガラス導入は、このような導入の例示であり、本発明について限定するものではない。
より詳細には、図1に示すようなフロートガラス導入は、管部を含む。この管部に沿って、溶融炉からの溶融ガラスがフロート槽部42へと送達され、連続ガラスリボン51が周知のフロートプロセスに従って形成される。フロート槽部中の温度は典型的には、1050°F(566℃)〜1400°F(750℃)である。好適には、温度は1100°F(600℃)〜1200°F(650℃)である。ガラスリボン51は、槽部42から隣接する焼きなまし炉44および冷却部46を通じて前進する。連続ガラスリボン51は好適には基板であり、その表面上に本発明の装置10によって薄膜が形成される。フロート槽部42は、溶融スズ50の槽を収容する下部48と、対向する側壁(図示せず)の屋根部52と、端壁54とを含む。屋根部52、側壁および端壁54は、協働して筺体56を規定する。筺体56内において、溶融スズ50の酸化を回避するための非酸化性雰囲気が保持される。
動作時において、溶融ガラスは、制御された量で調節綾織部の下側の管に沿って流れて、スズ槽50の表面上に下方に流れる。溶融スズ表面50上において、重力および表面張力の影響下ならびに特定の機械的影響下において溶融ガラスが横方向に拡散し、スズ槽42上を前進してガラスリボン51を形成する。ガラスリボン51は、リフトアウトロール64上においてスズ槽部42から除去され、その後、アライメントされたロール上において焼きなまし炉44および冷却部46を通じて搬送される。本発明の薄膜の被覆は好適にはフロート槽部42内において行われるが、さらにガラス製造ラインに沿って(例えば、フロート槽42と焼きなまし炉44との間の隙間45中または焼きなまし炉44中)において被覆を行うことも可能である。
適切な非酸化性雰囲気(一般的には、窒素または窒素を主成分として含む窒素および水素の混合物)をフロート槽筺体56中において維持することで、スズ槽50を構成する溶融スズの酸化を回避する。分配マニホルド68へ動作可能に接続された導管66を通じて、雰囲気ガスを送る。非酸化性ガスを導入する際、正常損失を補償しかつ若干の陽圧を維持するに充分な速度で、環境大気圧を約0.001〜約0.01気圧超えるオーダーで導入を行い、これにより、外部雰囲気の浸入を回避する。本発明の目的のため、上記した圧力範囲は、通常の大気圧を構成するものとして考えられる。スズ槽42および筺体56中において所望の温度体制を維持するための熱は、筺体56内の放射ヒーターによって提供される。炉44内の雰囲気は典型的には大気である。なぜならば、冷却部46は封入されておらず、その内部のガラスリボン51は大気に露出されるからである。冷却部中のファン70などによって、外気をガラスリボンへ当てることができる。焼きなまし炉44内にヒーターを設けて、内部を搬送されるガラスリボン51の温度を所定の体制に従って徐々に低下させてもよい。
本被覆装置は、ベルトコンベヤ炉(より詳細には、基板加熱ゾーン、コーティングゾーンおよび冷却ゾーンを有する3つのゾーン炉)を通じて搬送されるガラス基板上にコーティングを被覆するために用いられる。先行被覆されたシリカバリア層を表面上に備えたソーダ石灰シリカガラスのシートおよびソーダ石灰シリカガラスのシートを、炉から出てきた搬送ベルト上にロードして、ガラス温度を650℃にした後、コーティングゾーン内へと進入させた。その後、高温ガラス基板を被覆装置の下側を通過させた。この被覆装置は、ガラス基板表面から約4mmだけ上方に配置した。寸法が100×300mmであり厚さが3mmであるガラスシート上において、0.5〜3メートル/分のライン速度で被覆を行った。被覆装置は、150℃の温度で維持した。被覆プロセスとの干渉を回避するために、入力された使用後/未使用のガスのうち実質的に全てをコーティングゾーンから排出した。以下の実施例において、「スロット」とは、気体流路28と同様のものとして解釈されるべきであり、対応する気体状反応物質出口開口部26を通じて被覆装置から出て行く。
実施例1−5スロット塗工機を用いた添加化合物を用いた酸化亜鉛の被覆
塗工機の左側にスロット1を設け、塗工機の右側にスロット5を設けて、各スロットへの前駆体の入力を以下のように行った。
スロット1およびスロット5−これらの2つのスロットにより、N2およびH20(蒸気状)の混合物を搬送した。簡潔さのため、単一の蒸発器を用いて、蒸気およびN2の混合物を生成し、この混合物を均等に分割して、例えばスロット1および5に送達した。凝縮を回避するため、全ての反応物質送達ラインを、露点を超えた温度において維持した。蒸気およびN2の混合物は、加熱された蒸発器中に水を注入することによって生成した。N2搬送ガスを蒸発器に付加して、蒸気およびN2の混合物をスロット1および5へ搬送した。10ml/分の水を蒸発器中に注入し、蒸発器へ付加するN2の量は、N2+蒸気の流量合計が20slmに等しくなり、そのうち10slmが各スロット1および5へと移動するように設定した。
スロット2およびスロット4−計量された10slmN2搬送ガスの流れを、各スロット2および4において下方に流した。
スロット3−スロット3内を流れる気体状反応物質を、ジメチル亜鉛(DMZ)および添加化合物(すなわち、アセチルアセトネート)の混合物を含むように変更した。2つのバブラーを用いて、これら2つの化学物質の混合物を生成した。温度36℃で維持された基準バブラーを用いることにより、DMZ前駆体混合物を生成した。Heの流れをバブラー内に通過させることにより、0.077mol/分の気体DMZを蒸発させた。第2のアセチルアセトネートバブラーを温度60℃で維持した。N2ガスを第2のバブラー内に通過させて、アセチルアセトネートを生成した。これら2つの化学物質をパイプ中において事前混合し、さらなるN2を付加して、気体流れ合計をスロット3内において10slmで生成した。
これらの条件下において、ガラスシートを塗工機下において1.8m/分のライン速度で移動させた。厚さ450nmの酸化亜鉛膜を68nm/秒の被覆速度で被覆したところ、得られたコーティングガラスは、ヘイズが4.8%でありかつ可視光透過率が76%と高かった。
実施例2−5スロット塗工機を用いた添加化合物を用いたGaドープ酸化亜鉛被覆
実施例1に関連して上述した実験条件を用いて、N2+H20の気体混合物をスロット1およびスロット5を通じて送った。水を24ml/分で蒸発器中に注入し、0.5slmのN2を付加した。DMZ、アセチルアセトネートおよびドーパント化合物の混合物(すなわち、トリメチルガリウム(TMG))を含むように、スロット3中を通る気体状反応物質の流れを変更した。3つのバブラーを用いて、これら3つの化学物質の混合物を生成した。DMZバブラーおよびアセチルアセトネートバブラーを、実施例1に記載のように操作した。DMZをHeによって第1のバブラー内を通過させて、DMZを0.077mol/分で蒸発させた。第2のトリメチルガリウムバブラーを温度10℃で維持した。N2ガスを第2のバブラー中に通過させて、ガリウム流れを発生させた。これら3つの前駆体をパイプ中において事前混合した後、さらなるN2を付加して、10slmのスロット3を通る気体流れ全体を生成した。これらの条件下において、ガラスシートを塗工機下においてライン速度3.0m/分において移動させ、厚さ200〜230nmでありかつ抵抗が1×10−3オームcmである導電性酸化亜鉛コーティングを被覆速度50〜60nm/秒で被覆した。DMZ/ドーパント混合物の組成を変更することにより、抵抗がより高いかまたはより低い膜を生成することが可能であることが理解される。例えば、気相の0.002モル/分のTMGを用いて被覆された膜の場合、抵抗が1.3×10−2オームcmである一方、気相の0.004モル/分のTMGを用いたコーティングガラスの場合、抵抗は4.3×10−3オームcmであった。また、これらのコーティングガラスは、可視光透過率が60〜70%と高く、IR放射線吸収が13〜20%と低く、またヘイズは0.6〜1.1%と低かった。比較のため、上記のTMGと同量を用いかつアセチルアセトネートを添加していない膜の場合、抵抗は3.9×10−1オームcmおよび9.3×10−2オームcmとそれぞれずっと高かった。
実施例3−7スロット塗工機を用いた添加化合物を用いたGaドープ酸化亜鉛被覆
実施例(3−1)において、実施例1、実施例2および実施例3と同様の表記法を7スロット塗工機のスロットに用い、スロット1およびスロット7をそれぞれ塗工機の左端および右端に配置した。
スロット1およびスロット7−これらの2つのスロットを本実施例において用いて、N2+H20の混合物を(蒸気形態で)搬送した。実施例1と同様に、単一の蒸発器を用いて、蒸気およびN2の混合物を生成し、スロット1とスロット7との間に均等に分配した。ここでも、全ての前駆体送達ラインを露点よりも高く維持した。水を6ml/分で蒸発器に注入した。ここでも、N2を蒸気およびN2の混合物のための搬送ガスとして用いた。スロット1およびスロット7をそれぞれ下方に流れる10slmの蒸気およびN2の混合物の総流量はここでも20slmであった。
スロット2、3および5、6−N2搬送ガスの計量された流れを5slmでスロット2、3および5、6それぞれにおいて下方に流動させて、スロット4を下方に流れる化学混合物と、スロット1および7を下方に流れる化学混合物との間を確実に分離した。
スロット4−このスロットをここでも用いて、ジメチル亜鉛(DMZ)、アセチルアセトネートおよびトリメチルガリウム(TMG)の前駆体混合物を搬送した。基準バブラーを36℃でここでも用いて気体DMZを生成し、DMZをHeによってバブラー内を通過させて、DMZを0.077mol/分で蒸発させた。第2の基準バブラーを60℃でここでも用いて気体アセチルアセトネートを生成し、バブラーを通じてN2によって送った。第3の基準バブラーを温度10℃においてここでも用いて気体TMGを生成し、バブラーを通じてHeによって送って、TMGを0.005mol/分で蒸発させた。3つの化学物質をパイプ中において事前混合し、さらにN2を付加して、スロット4を通る気体流れ合計を10slmで生成した。これらの条件下において、ガラスシートを塗工機下においてライン速度0.5〜3.0m/分で移動させ、厚さ280〜1420nmの導電性酸化亜鉛コーティングを被覆速度60〜70nm/秒で被覆した。得られたコーティングの抵抗は<1×10−3オームcmであった。このコーティングガラスの他の特性を挙げると、高い可視光透過率>71%および低いヘイズ<2.0%がある。ここでも、DMZ/ドーパント混合物の組成を変更することにより、抵抗がより高いかおよびより低い膜を生成することが可能であることが理解される。
実施例(3−2)スロット1およびスロット7−計量された10slmのN2搬送ガスの流れをこれらのスロットにおいて下方に流動させて、スロット2およびスロット6中における流れの混合を向上させた。
スロット2およびスロット6−これら2つのスロットを本実施例において用いて、実施例4−1と同様にN2+H20の混合物を(蒸気の形態で)搬送した。単一の蒸発器を用いて蒸気およびN2の混合物を生成し、スロット2および6間において均等に分配した。ここでも、全ての前駆体送達ラインを露点よりも高く維持した。6ml/分の水を蒸発器中に注入した。ここでも、N2を蒸気およびN2の混合物搬送ガスとして用いた。ここでも、総流量は20slmであり、10slmの蒸気およびN2の混合物をスロット2および6それぞれにおいて下方に流動させた。
スロット3およびスロット5−計量された10slmのN2の搬送ガスをこれらのスロットそれぞれにおいて下方に流動させて、スロット4を下方に流れる化学混合物と、スロット2および6を下方に流れる化学混合物とを確実に分離した。
スロット4−このスロットをここでも用いて、ジメチル亜鉛(DMZ)、アセチルアセトネートおよびトリメチルガリウム(TMG)の前駆体混合物を搬送した。基準バブラーを36℃でここでも用いて気体DMZを生成し、DMZをHeによってバブラー内を通過させて、DMZを0.077mol/分で蒸発させた。第2の基準バブラーを60℃でここでも用いて気体アセチルアセトネートを生成し、バブラーを通じてN2によって送った。第3の基準バブラーを温度10℃においてここでも用いて気体TMGを生成し、バブラーを通じてHeによって送って、TMGを0.005mol/分で蒸発させた。これら3つの化学物質をパイプ中において事前混合し、さらにN2を付加して、13.5slmのスロット4を通気体流れにした。
これらの条件下において、ガラスシートを塗工機下においてライン速度3.0m/分で移動させ、厚さ570nmでありかつ抵抗8.5×10−4オームcmである導電性酸化亜鉛コーティングを被覆速度141nm/秒で被覆した。得られたコーティングガラス物品のTvisは約62%であり、ヘイズは約7.7%であった。
アセチルアセトネートに加えて、本発明に関連して適切であると考えられる他の添加化合物を挙げると、トリフルオロアセチルアセトネートおよびヘキサフルオロアセチルアセトネートである。
特許法の規定に従い、本発明について、その好適な実施形態を示すものと思われるものを説明してきた。しかし、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、本発明を特定の図示および記載以外の様態で実行することが可能である点に留意されたい。