電気式加熱容器はよく知られ、広く使用されている製品である。電気式加熱容器は水又はミルクのような液体を加熱する必要がある場面に用いられるのに適している。電気式加熱容器の実際的な例には、やかん(kettles)、熱水用水差し(hot water jugs)、スチーマー及びミルク泡立て器が含まれる。一般的に、電気式加熱容器は加熱される液体を収容する目的のための収容空間、及び収容空間に熱を供給するための加熱素子(heating element)を有する。多くの場合、加熱素子の種類はいわゆる平面加熱素子、すなわち平板及び収容空間の反対側に面するその平板の面に配置された熱生成手段を有する加熱素子である。熱生成手段は例えばワイヤーが巻かれた抵抗ヒーター又は抵抗加熱トラックを有していても良い。
加熱素子は通常、容器が通常の方向すなわち加熱工程中に向けられている方向にあるときに電気式加熱容器の底側になる側に配置される。このような場合、加熱素子の平板の収容空間に面する側は実際に収容空間の底を構成する。収容空間から加熱素子の他方の面への液体の漏れを避ける目的で、シールが適用される。一つの実際的な種類のシールが欧州特許公開1314385号公報により知られる。このシールは加熱素子の回りに設けられた弾性シールであり、容器の壁に対してその外縁をシールする。具体的に、このシールは一つ又はそれ以上の弾性周縁突出部を有する。その弾性周縁突出部は欧州特許公開1314385号公報の明細書においてフィンガー又はフィン(fingers or fins)と呼ばれ、外方へ延び、かつ容器の壁に接している。
この既知のシールは平面状の加熱素子と共に使用されることに特に適している。加熱素子の平板の寸法が組み込まれる位置で容器の寸法と実質的に適合するように選択される場合では、シールはその平板の周縁を取り囲み、多かれ少なかれ下方に延びている。平板の寸法がより小さく選択される場合は、環状に取り付けられたフランジが平板とシールの間の位置で使用されても良い。それ故に、このような場合は、シールは下方に延びるフランジの周縁部分を取り囲む。望まれる場合は、シールはフランジと一体に設けられていても良い。
加熱素子とともに、又は加熱素子及び前述の取り付けフランジの組み合わせとともに使用されるシールは、一つ又はそれ以上の比較的薄く、弾性を有する、半径方向に延長する周縁突出部を持つ。先に言及したように、周縁突出部はそれらが適合させられる容器の壁の形状をとるように変形し、通常プラスチックで作られる容器の壁の広い範囲の寸法及び形状の変化を吸収する。また、シールの適用には安全上の観点がある。それは加熱素子には容器の壁又は容器の壁に関連するシール以外の他の部材に接触する必要がなく、それにより容器の壁の熱損傷のリスクが低減されるという事実に存在する。さもなければ、例えば空焚きの状況で上述の熱損傷が起こりうる。
シールはシリコンゴムのような、弾性、熱的に絶縁性の材料で構成することができる。また、シールは、加熱素子の周縁部分の受容及び積極的な収容のための、位置決め溝又はその他の形状を有することができる。
実際には、たとえシールが弾性シールであり、加熱素子に内側で接し、容器の壁と外側で接していたとしても、液体がシールを通り抜けて実際の熱発生手段が配置されている加熱素子の一方側に到達する、漏れが起こる可能性が依然としてあるように見える。これは収容空間の外側に存在する金属部品がさびる結果となるかもしれず、かつ/あるいは液体が電気部品に到達すると危険で有り得るため、許容できない状況である。
本発明の一つの目的は、欧州特許公開1314385号公報により知られるシールのようなシールであって、漏れの回避に関心をもつ限りにおいて、より良い結果をもたらすものを提供することである。この目的は環形状を有し、外方へ延びる少なくとも一つの弾性周縁突出部を有し、突出部はその表面に少なくとも一つの不連続部を有するシールの手段によって達成される。
本発明は欧州特許公開1314385号公報により知られるシールが適用された状況において、容器の壁の実際の真円度の結果すなわち実際の容器の壁の形状と理論上の真円との半径方向のズレの結果として、漏れが起こり得るという洞察に基づく。容器の壁の真円度は、シールの永久的な変形が生じ得る程の高い圧力をシールに働かせ、その変形により石灰(酸化カルシウム)のスケールがシールと容器の壁との間に侵入することが可能となることが見いだされる。
概して、本発明のシールは欧州特許公開1314385号公報により知られるシールと同じデザインを有する。しかしながら、本発明によれば、少なくとも一つの不連続部がシールの突出部の表面に存在するという事実に顕著な差異がある。既知のシールにおいては、突出部の表面は滑らかで連続的な外形を有するが、本発明によればこれは当てはまらない。切り込み又は窪み(notch)、又は隆起部(bulged area)のような不連続部を有することで、突出部が、スケールがその領域内で移動することを妨げ、スケールがシーツ及び容器の壁の間に侵入することを回避する機能を有することが可能である。表面の粗さのような通常の実際上の現象は本明細書において用いられている”不連続部”(disconticuity)に含まれず、この用語は例えば少なくとも一つの一般的な滑らかな表面からのズレが実際に突出部表面に見られるというような、先行技術と異なる可能性をカバーすることを意図することが理解されるであろう。
一つの実際的な本発明によるシールの実施形態において、突出部は少なくとも一つの隆起部を有する。このような場合、隆起部は環状であって、それによって突出部上に周縁リブを形成することが可能である。そのようにして、隆起部はシールの周縁の全体において効果を発揮することができる。隆起部の数は少なくとも二つとしても良く、隆起部を環状とすることを選択した場合は、突出部上に同心の周縁リブを形成するように配置しても良い。突出部の数に関する限り、突出部は少なくとも一つであるが、十分かつ信頼できるシール能力のためには少なくとも二つの突出部を持つことが好ましいことが留意される。
欧州特許公開1314385号公報により知られるシールの場合、スケールはまたシートと加熱素子の間に侵入し、その部位からも漏れが発生する可能性もあるように見える。この問題を回避するために、シールの内側に傾斜部を備え、傾斜部の位置においてはシールが弾性材料を含むようにすることが提案される。シールが加熱素子の回りの位置に配置された場合に傾斜部は徐々に圧迫され、シールと加熱素子の間で追加的に圧力が高められる。それにより、傾斜部がない場合よりもシールの加熱素子への連結がより密接なものとなることができる。網羅性のために、シールの材質に関して、シールは全体を弾性材料によって作られても良く、最も効果的なシールの機能はこのような場合に達成されることが留意される。
本発明はまた電気式加熱容器に関連する。電気式加熱容器は液体を収容するための収容空間、該収容空間に熱を供給するための加熱素子、及びその突出部の表面に少なくとも一つの不連続部及び場合によって前述の傾斜部をまた提供されたシールを有する。またシールは、収容空間の反対側に面する加熱素子の一方側に存在する容器の一部を、収容空間からの液体の侵入から保護するために容器内に配置される。そのシールは加熱素子の回りに提供されて、突出部を介して容器の内面に接することによって、内面に対して加熱素子の外縁を密閉する。
上記の特定の観点から離れて、欧州特許公開1314385号公報により知られるシール及びシールを備える電気式加熱容器の特徴はまた本発明の場合においても適用することができる。前述したように、これらの特徴は、シールは全体を適切な弾性材料、好ましくは熱的に絶縁性の材料で作られても良いという事実、加熱素子が容器内における加熱素子の取り付け位置における容器の半径に対して大幅に小さな半径を有している場合にシールは容器の内面と加熱素子の間を完全に橋渡しをするための環状の取り付けフランジを有していても良いという事実、及びシールは加熱素子の環状部分を受容及び取り付けるための位置決め溝又は他の形状を有していても良いという事実を含む。
本発明の上記の及びその他の特徴は電気式加熱容器に使用するためのシールの以下の詳細な説明を参照することによって明白かつ明りょうになるであろう。
図1は液体を収容するための収容空間10、収容空間に熱を供給するための加熱素子20、及び、収容空間10の反対側に面するの加熱素子20の一方側に存在する容器1の部分2を、収容空間10からの液体の侵入から保護するためのシール30、を有する電気式加熱容器1の断面を概略的に示す。図1において、容器1は通常の直立位置で示されている。この位置では蛇口などの供給源から液体を受けるための容器1の開口部は上を向いている。さらに、図1において、本発明の文脈(context)に相当する(relevant)電気式加熱容器1の構成要素のみが示されている。このことは斯様な容器1はよく知られ、広く使用される製品であるという事実に鑑みて正当化される。
数ある中で、容器1はコードレス電気式水加熱器の部品として知られており、コードレス電気式水加熱器は更に容器1を保持し、容器1がその上に導入されたときに加熱素子20に電力を供給するための基部を有している。また、容器1は蓋又は他の適切な覆いを上側に提供されること、及び容器1は必要に応じて使用者が容易に容器1を握ることができるハンドル又は同種のものを有することが知られている。容器1の底部2には、とりわけ、前述のように基部のコネクターと協働するための電気コネクターが存在している。とはいえ、基部及びその他の上述した構成要素は図1に示されていない。容器1の区切り壁11、加熱素子20及びシール30を除いて、示されている唯一の構成要素は加熱素子20及びシール30を容器1に固定するための環状クリップ12である。クリップ12の機能性は、例えば容器の壁11の内面13はクリップ12を組み付けるための適切な溝を提供され得るという事実に基づいて容易に理解されることができる。本発明の範囲内において、加熱素子20及びシール30を容器1内に支持する他の手段を使用することが可能であることが理解されるであろう。また、本発明の範囲内において、コードレス水加熱器の一部であること、又は一般的に知られた方法でカバー又はハンドルと共に形成されることが容器1にとって本質的でないことが理解されるであろう。
通常、容器1は傾斜した形状を有しており、底部の容器1の半径は上端部の半径よりも大きい。また、丸い外周の環状断面を有することは容器1にとって一般的な用法である。図1に示されるように、加熱素子20は加熱板21及び加熱板21の底側に配置された管状抵抗ヒーター22を有する、平らな加熱素子20である。加熱板21は丸い外形を有し、容器1の内側にほんの小さな環状の隙間をもって適合するような寸法を有する。一つの加熱板21の適切な材料はアルミニウムである。本実施形態において示されたヒーター22の代わりに他の適切な手段が使用され得ることが留意される。例えば、抵抗加熱トラックを有することが可能である。
本実施形態において示された加熱板21は階段状の外形を有する。図2に示された図1の細部に明確に見られるように、底側において、おおよそ容器の壁11と平行に延びる部分23が存在する。部分23は外表面24及び外側に折れ曲がった底縁部25を有する。基本的には、本発明の容器1は欧州特許公開1314385号公報により知られる容器と同様であっても良く、他の、改良されたデザインを有するシール30を除いて同じ構成要素を有していても良い。シール30のデザインは、本発明によるシール30の実施形態が詳細に示された図2及び図3を参照して以下に説明される。さらに、シール30が加熱板21の底側の部分23の外表面24及び容器1の内表面13の間の位置に取り付けられる正確な方法は図2を参照して明らかになるであろう。
シール30は環状の外形を有し、ゴムのような弾性材料から作られる。網羅性のため、“環状”及び“環形状”の用語は、シール30が、その内側の周縁及び外側の周縁はいかなる適切な形状を取り得、必ずしも円形である必要はない輪のような形状を有することを意味すると解されるべきことが留意される。また、輪の軸方向に見られるように底部及び上端部にある縁部は、必ずしも輪の長軸に直角に交差する平面上にある必要はなく、例えば、傾斜した方向を含む平面上にあっても良く、かつ/あるいは波形の外形を持っていても良い。とりわけシール30については、シール30が要求されるシール機能を発揮できる限りにおいて、どのような形状が最も適切であるかは容器の壁11の形状に依存する。
欧州特許公開1314385号公報により知られるシールのように、本発明によるシール30は少なくとも一つの外方へ突出する弾性周縁突出部31を有する。本実施形態においては、二つの突出部31が提供されており、両方の突出部はシール30が取り付けられた状態で容器の壁11の内表面13と接するのに適するように構成されている。さらに、シール30の内表面32は加熱板21の底部23の外表面24と接するのに適している。このようにして、シール30が弾性的な性質を有し、容器1内に取り付けられた場合に容器の壁11及び加熱板21の両方に接する一続きの構成要素であるという事実の結果として、もしシール30が適用されない場合には存在したであろう底部23及び加熱板21の間の空間を通り抜けようとする液体をシール30が完全に遮断することによって、収容空間10から加熱板21の下方の空間2への液体の漏れが起こらない。
シールは加熱板21の底縁部25を組み合わせるための溝33を有する。このようにして、溝33は加熱板21に対するシール30の正しい位置決定の機能を有する。網羅性のため、本発明の範囲内において、シール30にとって本実施形態で記述したような溝33を持つことは本質的でないこと、及び当業者はシール30の正しい配置を確保する多くの方法を考えることが可能であることが留意される。
本発明によるシール30の二つの特別な特徴を以下に説明する。第一に、シール30の突出部31には隆起部34が設けられることが留意される。有利には、隆起部34は環状であり、それにより突出部31上に周縁リブを形成し、リブの同心状の配置を実現することができる。本実施形態において、突出部31毎の隆起部34の数は三つであるが、その他の隆起部34の数もまた可能である。また、一つの突出部31のみが少なくとも一つの隆起部34を備えることも可能である。いずれの場合でも、本発明によればシール30の少なくとも一つの突出部31の表面35に不連続部(discontinuity)34が設けられている。不連続部は本実施例において示された隆起部34でも良く、また、例えば切り込み又は窪み(notch)でも良い。不連続部34は、前述したとおり、本実施形態のように収容空間10に面していることが好ましい。
本実施例において記述された隆起部34は石灰(酸化カルシウム)のスケール(薄片)のシール30及び容器11の間への侵入を回避する機能を有している。電気式加熱容器1が使用されると、時間と共にスケールが形成されることはよく知られた事実である。本発明の基礎となる洞察によると、収容空間10からシール30を下方向に通り抜ける液体の漏れは、スケール片がシール30及び容器の壁11の間の位置に到達した場合に起こり得る。また、液体の漏れはスケール片がシール30及び加熱素子20の間の位置に到達した場合にも起こり得る。隆起部34はスケール片がシール30及び容器11の間に詰まり、そして液体が侵入しうる通路を与える位置まで実際に到達する前に、スケール片を止める。
石灰スケールがシール30及び加熱素子20の間への侵入を回避するために、本発明によるシール30はその内表面32に傾斜部36を設けられている。本実施形態において、前述の傾斜部36は、図3に示されるようにシール30の上端側に存在している。シール30が取り付けられた状態にある場合に、傾斜部36が圧縮され、傾斜部36の位置において追加的な圧力が得られ、傾斜部がない状態と比較してシール30の加熱素子20へのより密接な適合が実現する。
シール30の突出部31の表面35における不連続部としての隆起部34の存在、及びシール30の内面32における傾斜部36の存在に基づいて、シール30の改良されかつ耐久性に優れた密閉機能が実現される。この密閉機能は、欧州特許公開1314385号公報により知られるシールなどの、従来の、比較可能なシールの場合のように石灰スケールの侵入によって容易に阻害されることがない。網羅性のため、シール30の突出部31の表面35に不連続部34を有するという特徴、及び、シール30の内面32に傾斜部36を有するという特徴は、これらの特徴の組み合わせがシール30の外側の周縁及びシール30の内側の周縁の両方で効果を有し、好ましい結果を生み出すことが理解され、一方で、これらの特徴は独立して適用可能な漏れの課題に対する解決策であることが留意される。
本発明の範囲は本明細書において記述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の記載によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、それに関するいくつかの修正及び変更が可能であることが当業者にとって明らかであろう。本発明は図面及び本明細書において詳細に例示され、記述されているが、これらの例示及び記述は例示的又は典型的なものとしてのみ理解されるべきであり、限定的なものではない。本発明は開示された実施形態に限定されない。
図面、明細書及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態の様々な変形が当業者によって理解され、もたらされ得る。特許請求の範囲において、“有する”及び“含む”の用語はその他の工程又は要素を排除せず、また不定冠詞“一つの”は複数存在することを排除しない。ある複数の手段が相互に異なる従属項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。特許請求の範囲における如何なる引用符号は本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
本明細書において記述された本発明の実施形態は以下のように要約することができる。電気式加熱容器1に使用するためのシール30であって、該電気式加熱容器1は液体を収容するための収容空間10、及び該収容空間に熱を供給するための加熱素子20を有する。前記シール30は、前記収容空間10の反対側に面する前記加熱素子20の一方側に存在する容器の部分2を、前記収容空間10からの液体の侵入から保護するために、容器1内の位置で使用されている。この目的を達成するために、前記シール30は、環形状を有しかつ外方へ延びる少なくとも一つの弾性周縁突出部31を有する。該突出部31はその表面35に少なくとも一つの不連続部34を有し、漏れの問題を引き起こし、導くかもしれないスケール片の前記シール30及び容器内面の間への侵入を防止することが可能である。さらに、シール30の内面32には弾性的な性質を有する傾斜部36が与えられ、シール30の加熱素子20への十分に密接な適合が実現するようになっており、これもまたシール30を越えた漏れが生じるリスクの低減に導く。