本開示は、ポリマー、特に架橋ポリマー粒子及びその製造方法に関するものである。
靭性は、応力下において、エネルギーを吸収して、破壊せずに塑性変形し、結果的に材料破壊に抵抗する材料の能力である。ポリマーは、しばしば、靭性を向上させるために変性される。これは、高架橋密度を有する熱硬化性樹脂などのガラス状ポリマーでは、特にそうである。そのような変性は、前記ガラス状ポリマー未満のガラス転移温度Tgを有するゴム状ポリマーであって、通常、球状の粒子からなる第二相を組み込むことを含み得る。この第二相の添加によって、ガラス状ポリマーの機械的挙動の改善をもたらすことができる。
Tgが低いことに加えて、ゴム状粒子は、通常ガラス状ポリマーよりも低い弾性率を有しており、機械的変形中に、応力集中を粒子の赤道に導く。この応力集中は、粒子の周囲や材料の至る所に、せん断降伏又はクレージングを導き得る。この方法では、ガラス状ポリマーは、変形中に大量のエネルギーを吸収することができ、強靭化される。
ゴム状ポリマーに加えて、アクリルからエポキシ乃至ウレタンに変化する化学的性質を有する架橋粒子も、強靭化剤として利用される。それらは、主に分散重合によって製造され、界面活性剤によって安定化される。これらの界面活性剤は、化学的又は物理的に前記粒子表面と結び付いている。強靭化剤は、一度最終製品に組み込まれると、粒子と周囲の網状構造との間に界面活性剤が介在することによって形成される界面が、通常、機械的に破壊される場所ではあるが、強靭化が達成される。
しかしながら、界面の存在は、とりわけ、未熟、劣化及び低バリア性の原因ともなり得る。加えて、強靭化粒子を含有する製剤は、しばしば、前記製剤に良好な濡れ性を付与する相溶化剤によって改質する必要がある。前記製剤中の界面活性化合物の存在は、しばしば、これら網状構造の被覆性に影響を及ぼす表面への前記界面活性化合物の移行をもたらし得る。したがって、コーティングや複合材料などの多くの用途では、強靭化剤を完全に取り込むことで、その利益を得ているのであろう。
本明細書で説明するように、本開示の実施形態は、硬化型エポキシ系に完全に取り込むことのできる強靭化剤を提供する。具体的には、本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を含み、該微粒子は、分散媒体中、50℃〜120℃、前記架橋反応性ポリマー微粒子が別々の非凝集形態で前記分散媒体から相分離している間の17時間以下の反応時間で、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とが反応した反応生成物であり、架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子の重量を基準として0.001重量%以下の濃度を有する。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の全重量を基準として、前記架橋反応性ポリマー微粒子の0.001重量%以下である。
種々の実施形態では、反応生成物は、当量比で表される過剰量のアミン硬化剤及びエポキシ樹脂のうちの1つによって形成されている。それで、前記反応生成物は、当量比で表される過剰量のアミン硬化剤又はエポキシ樹脂によって形成されている。種々の実施形態では、この過剰量は、例えば、過剰のアミン硬化剤では、1.35〜1とすることができる(例えば、エポキシ基のモル数に対して、0.35過剰molのアミン水素であって、エポキシに対するアミン比又は「a/e比」として本明細書に提供される)。本明細書で使用する当量比は、アミン水素(アミン硬化剤由来)のモル数及びエポキシ基(エポキシ樹脂由来)のモル数に用いる。
種々の実施形態では、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤のそれぞれは、分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、分散媒体中、5〜30重量%の濃度を有することができる。
種々の実施形態では、前記分散媒体は、ポリ(オキシプロピレン)、ドデカン、脂肪族ケトン、環状ケトン、脂肪族アルケン、芳香族アルケン、ポリエーテル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を含まない。
本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子の製造方法も含む。種々の実施形態では、前記方法は、架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子と結合した前記分散媒体を0.001重量%以下にするために、17時間以下の反応時間、50℃〜120℃の温度で、分散媒体中でエポキシ樹脂をアミン硬化剤と反応させる工程と、前記架橋反応性ポリマー微粒子と前記分散媒体を相分離させる工程とを含む。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子と化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、化学的に結合させることができる。種々の実施形態では、前記エポキシ樹脂を前記アミン硬化剤と反応させる工程は、前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂のうちの1つの過剰量により、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程を含む。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程は、当量比で表される過剰量の前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂を用いる。例えば、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程は、エポキシ樹脂1に対して、1.35の当量重量比のアミン硬化剤(例えば、前記エポキシ樹脂に対して0.35過剰当量の反応性の前記アミン硬化剤など)を用いて表される、過剰量のアミン硬化剤を用いることができる。換言すれば、前記エポキシ樹脂の1に対して、1.35の当量重量比の前記アミン硬化剤は、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の1モルに対して、0.35過剰モルの前記アミン硬化剤中のアミン水素を提供する。
種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、前記架橋反応性ポリマー微粒子から分散媒体を除去する工程を含むこともできる。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%にするために、化学的に結合させることができる。種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、前記架橋反応性ポリマー微粒子から分散媒体を除去する溶媒を使用する工程を含む。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した0.001重量%以下の前記分散媒体の基準は、前記反応性ポリマー微粒子の総重量である。種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子を製造する工程において界面活性剤を使用しないことを、更に含むことができる。
本開示によるDGEBA+DAT系(a/e比=1.35)のDSCサーモグラムを提供する。
本開示によるDGEBA+DAT系(a/e比=1.35)のガラス転移温度対a/e比を提供する。
本開示によるDGEBA+IPDA系(a/e比=1.35)のDSCサーモグラムを提供する。
本開示によるDGEBA+IPDA系(a/e比=1.35)のガラス転移温度(Tg)対a/e比を提供する。
本開示による相分離温度(T=130℃)を提供する。
図4A−4Cは、本開示によるSECを提供するものであり、図4Aは、初期化合物(PPG−1000:D.E.R.331:及びDAT) c=3mg/ml、RI信号であり、図4Bは、最終残留液及びPPG−1000 c=5mg/ml、RI信号であり、図4Cは、残留液 c=5mg/ml及びDAT c=0.01mg/mlである。
本開示による、130℃、15時間後の1回目走査及び2回目走査の架橋反応性ポリマー微粒子のサーモグラムを提供する。
図6Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図7Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で5時間)。
図7Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で5時間)。
図7Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で5時間)。
図7Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で5時間)。
図8Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で17時間)。
図8Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で17時間)。
図8Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で17時間)。
図8Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(100℃で17時間)。
図9Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で5時間)。
図9Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で5時間)。
図9Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で5時間)。
図9Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で5時間)。
図10Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で17時間)。
図10Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で17時間)。
図10Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で17時間)。
図10Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(120℃で17時間)。
図11Aは、実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
図11Bは、実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
図12Aは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図12Bは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図13Aは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図13Bは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図14Aは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(80℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図14Bは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(80℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図14Cは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(80℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図14Dは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(80℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図15Aは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(100℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図15Bは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(100℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図15Cは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(100℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図15Dは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(100℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図16Aは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で5時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図16Bは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で5時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図16Cは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で5時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図16Dは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で5時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図17Aは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図17Bは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図17Cは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
図17Dは、乾燥架橋反応性ポリマー微粒子(120℃で17時間)のMDSC及びTGA−MS結果である。
乾燥エポキシ粒子のMDSC結果(第一加熱)の重ね書きである。
乾燥した実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
乾燥した実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
乾燥した実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
80℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
80℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
本開示に係る130℃における反応時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る反応時間の関数(直線:ガウスフィッティング曲線)として、粒子の粒度分布を提供するものである。
本開示に係るモノマー濃度の関数(T=130℃)として、曇点を提供するものである。
本開示に係る反応時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径及び収率の比較を提供するものである。
本開示に係るTg(第二回目走査、長い反応時間)対モノマー濃度を提供する。
本開示に係る異なるモノマー濃度の溶液から得られたSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る時間とモノマー濃度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る時間とモノマー濃度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る別の化学量論組成を有する架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係るモル比及び反応時間の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係るモル比及び反応時間の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る温度の関数(黒ドット:光透過率測定、白抜きどっと:目視)として、曇点を提供するものである。
本開示に係る異なる温度で反応した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る反応時間及び温度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る反応時間及び温度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係るPPG及びドデカン混合物中で合成された架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
図40A及び40Bは、本開示に係る溶媒混合物中の反応時間及びドデカンのwt%の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径を提供するものである。
本開示に係るIPDA系架橋反応性ポリマー微粒子の頂部:80℃で17時間、底部:80℃で24時間のサーモグラムを提供するものである。
本開示に係るIPDA系架橋反応性ポリマー微粒子の頂部:80℃で17時間、底部:80℃で24時間のサーモグラムを提供するものである。
本開示に係る80℃における反応時間:4.5時間及び24時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る80℃における反応時間の関数として、粒径を提供するものである。
図44A及び44Bは、IPDAに基づく架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真、並びに本開示に係る反応温度及び時間の関数としての様々な粒径を提供するものである。
本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子を提供する。種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、硬化型エポキシ系において使用することができる。しかしながら、他の方法とは異なり、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、硬化した硬化型エポキシ系に完全に取り込まれるように、エポキシ樹脂及び/又は硬化型エポキシ系の硬化剤の少なくとも一方と反応することができる。換言すると、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、周囲の硬化型エポキシ系と個別の界面を形成するものではなく、硬化型エポキシ系の連続的部分として内部において化学的に一体化している。
種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、沈殿重合により合成した後、回収され、エポキシ樹脂及び硬化型エポキシ系硬化剤で分散させることができる。本明細書で提供されるような架橋反応性ポリマー微粒子を形成する際に用いられる反応条件は、微粒子が界面活性剤なしで形成されることを可能にする。加えて、架橋反応性ポリマー微粒子を形成する際に用いられる反応条件は、微粒子が、該微粒子の合成に用いられる分散剤や各種薬剤を実質的に含まないものとすることができる。このように、本開示の微粒子の表面は、界面活性剤又は反応混合物(例えば、本明細書で説明したようなポリエーテルなど)中に使用される有意な量の分散剤を含まない。寧ろ、本明細書で説明したように、微粒子を形成する際に使用される反応条件は、好ましくは、微粒子の表面にエポキシ反応性基及び/又はアミン反応性基のいずれかが存在するように用いることができる。
種々の実施形態では、微粒子の表面にエポキシ反応性基及び/又はアミン反応性基のいずれかが存在することは、硬化した硬化型エポキシ系に連続する形で化学的に一体化することを可能にする。このように、本開示の微粒子が、該微粒子のものと同一のエポキシ樹脂及び硬化剤を有する硬化型エポキシ系と使用されるときは、得られる硬化エポキシ系を、組成的に均一とすることができる。
また、本開示の微粒子は、得られる硬化型エポキシ系を形態学的に不均一とすることができる。例えば、架橋反応性ポリマー微粒子は、それらが化学的に一体化される硬化型エポキシ系の架橋密度とは異なる架橋密度を有することができる。また、架橋反応性ポリマー微粒子は、それらが化学的に一体化される硬化型エポキシ系の架橋密度とは異なる2種以上の架橋密度を有することも可能である。架橋反応性ポリマー微粒子が化学的に一体化される硬化型エポキシ系は、組成的に均一であるが、形態学的に及び位相幾何学的には不均一である。これは、架橋反応性ポリマー微粒子の反応組成物及び反応条件が硬化型エポキシ系のものから独立して制御することができるからである。
そして、「不均一性」は、組成的には均一性を維持しながら(例えば、微粒子又は微粒子の混合物が、前記硬化型エポキシ系の残りと異なる架橋密度を有することが可能な場合)、微粒子の添加された硬化型エポキシ系に付与することができる。この硬化型エポキシ系への架橋反応性ポリマー微粒子の一体化は、硬化型エポキシ系を、該硬化型エポキシ系の靭性の改善に役立ち得る形態学的に不均一なものとすることができる。そのような硬化型エポキシ系のための用途としては、風車翼や自動車のパネルなどを挙げることができる。
本明細書で説明したように、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、該微粒子の表面及び/又は微粒子内に存在する未反応のアミン及び/又はエポキシ基の作用によって、硬化型エポキシ系の網状構造内において完全に一体化(例えば、共有結合的に一体化)することができる。例えば、前記微粒子が配合成分により膨潤されており、完全に架橋されていない場合、それらは表面の活性基又はその容積内を介して、硬化型エポキシ系の網状構造と相互作用することができる。これらの微粒子は、強靭化剤として又は単に硬化型エポキシ系への添加剤として、用いることができる。前記微粒子及び前記硬化型エポキシ系の両方の組成が同一である場合は、識別可能な界面が存在することなく、完全に一体化することができる。
種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物は、分散媒体の存在下、少なくとも1種のエポキシ樹脂及び少なくとも1種のアミン硬化剤の反応生成物とすることができ、ここで、反応条件(特に、反応温度、反応時間、アミンに対するエポキシ比など)は、前記架橋反応性ポリマー微粒子を、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体をほとんど又は全く含まない非凝集形態で相分離させることが可能である。
前記架橋反応性ポリマー微粒子は、エポキシ樹脂を分散媒体中でアミン硬化剤と反応させることにより製造することができる。この反応は、攪拌やエポキシ樹脂、アミン硬化剤及び/又は分散媒体の選択に依存することなく進行することができ、反応がある程度進行すると、架橋反応性ポリマー微粒子の形成される相分離が起こる。架橋反応性ポリマー微粒子の構造、収率及び相分離に潜在的に影響を与えるパラメータ(特に、サイズ、多分散性、表面化学、及びTgなど)としては、溶解したモノマーの濃度(モノマーの重量%として表される)、アミン/エポキシのモル比、反応温度及び時間、分散媒体及びアミン硬化剤の化学構造が挙げられる。
さらに具体的には、本開示の実施形態は、17時間以下の反応時間、50℃〜120℃で、分散媒体中で反応させたエポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応生成物である架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を含み、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、その反応時間の間に、前記分散媒体から非凝集形態で別々に相分離する。種々の実施形態では、前記分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子の重量を基準として、0.001重量%以下の濃度で、架橋反応性ポリマー微粒子と結合することができる。このように前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した(例えば、吸収された)前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の総重量を基準として、前記架橋反応性ポリマー微粒子の0.001重量%以下である。
種々の実施形態では、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用せずに沈殿重合法により形成することができる。沈殿重合法は、最初に連続相の均一系として開始する重合方法であり、ここでモノマー(例えば、エポキシ樹脂とアミン硬化剤など)は、前記分散媒体に完全に可溶性であるが、初期に形成されたポリマー微粒子は不溶性となり、沈殿する。沈殿重合法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子をミクロンサイズの範囲で形成することができる。本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を必要としない及び/又は使用しない沈殿重合法によって製造することができる。
驚くべきことに、本開示の微粒子は、比較的単分散である。さらに、いくつかの特定の場合(本明細書に記載される非溶媒の存在下など)では、サブミクロンの粒径を有する二峰性分布の粒子とすることも可能である。このように、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、前記微粒子の表面に界面活性剤がない硬化型エポキシ系によって、本明細書で説明したような界面を形成しにくい。種々の実施形態では、界面活性剤は架橋反応性ポリマー微粒子の製造に使用されていないため、前記微粒子の表面上に界面活性剤は存在しない。
沈殿重合法において、前記架橋反応性ポリマー微粒子の相分離を生じさせるための分散媒体は、該分散媒体の溶解パラメータがエポキシ樹脂と硬化剤モノマーで釣り合いさえすれば、純粋な溶媒でも溶媒の混合物でもよい。種々の実施形態では、多様な分散媒体を本開示の分散重合に用いることができる。例えば、分散媒体は、ポリエーテル(ポリプロピレングリコール(PPG)及び/又はポリイソブチレンエーテルなど)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリブチレンオキシド、脂肪族ケトン、シクロヘキサン及び/又はシクロヘキサノンなどの環状ケトン、ポリエーテル類及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、前記分散媒体は、ポリプロピレングリコールである。
種々の実施形態では、非溶媒もまた分散媒体に用いることができる。好適な非溶媒の例としては、これらに限定されないが、アルケン(脂肪族(ドデカン)又は環状のいずれでも)、芳香族アルケン、オルトフタル酸、アゼライン酸アルキル、他のアルキルでキャップされたエステル及びエーテル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施形態において、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、それぞれ5〜30重量%の前記分散媒体濃度を有するように、前記分散媒体中に前記エポキシ樹脂及びアミン硬化剤を溶解させることによって製造することができる。好ましくは、前記分散媒体中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、前記分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、10〜30重量%の分散媒体濃度を有する。最も好ましくは、前記分散媒体中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、前記分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、10重量%の分散媒体濃度を有する。
前記エポキシ樹脂及び前記アミン硬化剤は、別々に又は一緒に、前記分散媒体中に溶解させることができる。この反応は、反応温度の手段によって調節することのできる反応速度で、進行させることができる。このプロセスの間、初期の透明な溶液は、分散媒体から沈殿する微粒子の分散体によって変化する。前記分散媒体中のポリマー粒子のサイズは、純粋な材料の選択、並びにそれらの分散媒体中の濃度、反応時間、及び反応温度によって影響され得る。
種々の実施形態では、反応温度は50℃〜170℃、好ましくは80℃〜120℃とすることができる。反応時間は、温度、アミン/エポキシのモル比、分散媒体、(特に)触媒の使用の関数であり、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。前記アミン硬化剤としてポリアミンを使用する場合は、例えば、重付加反応の速度は、アミンの塩基性により並びに立体要因により影響され得る。種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を形成する反応時間は、17時間以下とすることができる。その他の好適な反応時間としては、これに限定されないが、5〜17時間という時間が挙げられる。好ましくは、前記反応時間は5時間以下とすることができる。またこれは、温度、アミン/エポキシのモル比、分散媒体、触媒の使用、並びに前記エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。
本開示の架橋反応性ポリマー微粒子を形成する、触媒を使用することも可能である。このような触媒は当技術分野において知られている。好適な触媒は、例えば、アミン、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アミノエチルピペラジン、例えばジカルボン酸などの有機酸、フェノール系化合物、イミダゾール及びその誘導体、並びに硝酸カルシウムである。
種々の実施形態では、本明細書に示すような反応温度、分散媒体及びアミン硬化剤の選択は、架橋反応性ポリマー微粒子の溶解度に影響を及ぼす。これらの選択は、相当量の分散媒体が、前記アミン硬化剤及び/又は前記エポキシ樹脂のいずれかと反応する機会を得る前に、前記分散媒体から前記架橋反応性ポリマー粒子の相分離を生じさせる。例えば、反応温度、アミン硬化剤及び分散媒体の溶解度パラメータの選択による微粒子の急速な相分離によって、前記分散媒体が前記エポキシ樹脂と反応する機会が大幅に減少し得る。換言すれば、架橋反応性ポリマー微粒子が所定の反応温度及び時間における溶解度が低いほど、前記架橋反応性ポリマー微粒子が、前記分散媒体と反応又は相互作用する可能性も低い。すべての前記分散媒体が、エポキシ基及び/又はアミン基と反応するわけではなく、ほとんどの分散媒体は全く反応しないことを理解されたい。
多種多様のエポキシ樹脂が、本開示の目的に有用である。エポキシ樹脂は、1分子当たり、平均的には1.5個以上、一般に2個以上の反応性1,2−エポキシ基を有する有機材料である。これらのエポキシ樹脂は、1分子当たり、平均的には最大6個、好ましくは最大4個、最も好ましくは最大3個の反応性1,2−エポキシ基を有する。これらのエポキシ樹脂は、モノマー又はポリマー、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式を用いることができ、所望であれば、エポキシ基に加えて、例えばヒドロキシル基、アルコキシル基又はハロゲン原子など、他の置換基で置換されていてもよい。
好適な例としては、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、アミンとエピハロヒドリン、硫黄含有化合物とエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、ポリイソシアネートと2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシド)との反応により得られるエポキシ樹脂やオレフィン系不飽和化合物のエポキシ化により得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
好ましいエポキシ樹脂は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン又はポリカルボン酸とエピハロヒドリンの反応生成物である。ポリフェノール、ポリアルコール、アミン、硫黄含有化合物、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートは、エピハロヒドリンと反応させることもできる。本明細書において有用なエポキシ樹脂の例示的な例は、H.Lee、K.Nevile著のエポキシ樹脂ハンドブック(1967年出版、マグローヒル(ニューヨーク)、付録4−1、4頁−56頁)に記載されており、参照により本明細書に援用される。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、有利には約170〜最大約3000、好ましくは約170〜最大約1500である。平均エポキシ当量は、1分子当たりのエポキシ基の数で割った樹脂の平均分子量である。この分子量は重量平均分子量である。
エポキシ樹脂の好ましい例としては、約170〜約200の平均エポキシ当量を有するビスフェノールA型のエポキシ樹脂である。そのような樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.331及びD.E.R.332エポキシ樹脂として、ダウ・ケミカル社から市販されている。更に好ましい例としては、D.E.R.667、D.E.R.669及びD.E.R.732などのエポキシ当量がより高い樹脂であり、これらはすべてダウ・ケミカル社から市販されている。
本開示の目的に有用な高分子のエポキシ樹脂の別の類いとしては、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。エポキシノボラック樹脂は、好ましくは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基性触媒の存在下、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンを、ホルムアルデヒド等のアルデヒドの樹脂の凝縮物と、フェノール等の一価のフェノール又は多価のフェノールと反応させることによって得ることができる。これらエポキシノボラック樹脂の性質及び調製に関する更なる詳細については、H.Lee、K.Nevile著、エポキシ樹脂ハンドブック(1967年、マグローヒル(ニューヨーク))から得ることができ、参照により本明細書に援用される。他の有用なエポキシノボラック樹脂としては、D.E.N.431、D.E.N.438及びD.E.N.439樹脂としてそれぞれダウ・ケミカル社から市販されているものが挙げられる。
種々の実施形態では、多様なアミン硬化剤を本開示の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いることができる。用いることのできるアミン硬化剤は、主に多官能であり、好ましくは二官能から六官能、特に二官能から五官能の第一級アミンである。このようなアミン硬化剤の例としては、これらに限定されないが、イソホロンジアミン(IPDA)、エチレンジアミン、テトラエチレンアミン及び2,4−ジアミノトルエン(DAT)ジアミンが挙げられる。二種類以上のアミン硬化剤の混合物を用いることもできる。アミンを大幅に過剰量のエポキシ樹脂と反応させた変性硬化剤は、アミン硬化剤の有力な候補となり得る。
種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子組成物の反応生成物は、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のいずれかのモル量を過剰にして形成することができる。例えば、エポキシ樹脂に対して過剰モル量のアミン系硬化剤は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。換言すれば、エポキシ基に対して過剰モル量のアミン水素は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。或いは、アミンの水素原子に対して過剰モル量のエポキシ基は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。種々の実施形態では、この過剰モル量は、エポキシ樹脂との反応に用いられるアミン硬化剤の当量比として表すことができる。例えば、エポキシに対するアミン、又はアミンに対するエポキシの当量比は、0.7〜1.35とすることができる。種々の実施形態では、この当量比を1とすることもできる。本明細書で使用する当量比は、アミンの水素原子(アミン硬化剤由来)のモルとエポキシ基(エポキシ樹脂由来)のモルを使用する。
本開示の更なる態様は、前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤とを本明細書で説明したように反応させることによって、前記架橋反応性ポリマー微粒子を製造する方法である。種々の実施形態では、前記架橋反応性ポリマー微粒子の製造方法は、前記エポキシ樹脂を、本明細書に示す温度(例えば、50℃〜120℃等)で、分散媒体中で前記アミン硬化剤と反応させる工程を含む。
本明細書で論じるように、前記エポキシ樹脂は、前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂のいずれかを過剰モル量で提供するように前記アミン硬化剤と混合させることができる。この混合物を、エポキシとアミンとの反応が所定の反応時間で進行する反応温度に、加熱することができる。種々の実施形態では、反応混合物の攪拌は必要ではない。
本明細書で説明したように、前記方法の反応時間は17時間以下とすることができる。この方法によって製造された前記架橋反応性ポリマー微粒子は、該架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体が0.001重量%以下である。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下で有するように、化学的に結合することができる。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の総重量を基準として、0.001重量%以下の架橋反応性ポリマー微粒子の構成要素となる。これは、反応温度、反応時間、及び本明細書で示す分散剤の選択によって促進される転相(phase inversion)を介して、部分的に達成される。本明細書で論じるように、界面活性剤は、本開示の微粒子を形成する方法には使用されない。
種々の実施形態では、前記方法は、更に架橋反応性ポリマー微粒子と分散媒体とを相分離させる工程を含み得る。種々の実施形態では、前記微粒子は、前記架橋反応性ポリマー微粒子から前記分散媒体を除去し、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合する分散媒体を0.001重量%以下の残留量となるように、1回又は複数回の洗浄工程を受けることもできる。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子が、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下で有するように、化学的に結合することができる。これは、蒸留のみで可能なものよりも、前記架橋反応性ポリマー微粒子からより多くの分散媒体を除去することが望ましい場合には、特に好適である。例えば、前記微粒子を形成した後、前記分散媒体と前記微粒子とを(例えば、遠心分離後に上澄み液を移すことによって)分離させることができる。その後、前記微粒子は室温(例えば、23℃)で洗浄液中に再懸濁させることができる。その後、前記微粒子は、洗浄液から(例えば、遠心分離後の上澄みを移すことによって)分離させることができる。前記微粒子は複数回洗浄することができる。
種々の洗浄液が可能である。このような洗浄液の例としては、これらに限定されないが、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エンドキャップされたエーテル類、及びそれらの組合せが挙げられる。種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、10nm〜10000nm、好ましくは50nm〜5000nm、最も好ましくは100〜3000nmの単峰性分布の数平均粒径を有することができる。種々の実施形態では、前記分散媒体がポリブチレンオキシドを含むとき、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、100〜300nmの第一数平均粒径と0.5〜10μmの第二数平均粒径である、第一粒径と第二粒径の二峰性の粒度分布を有することができる。
以下の実施例のセクションにおいてより詳細に示すように、本明細書で論じられる反応条件(例えば、反応温度、反応時間、特にアミンに対するエポキシ比など)は、架橋反応性ポリマー微粒子の少なくとも寸法、形態、熱特性及び表面特性に影響を及ぼす。さらに、本明細書で論じているように、前記微粒子の表面の化学的性質も、反応条件、アミン硬化剤及びエポキシ樹脂のモル比に依存する。
以下の実施例は本開示を例示するものである。特に断らない限り、すべての部及び%は、重量部及び重量%である。この実施例は、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例
以下の実施例は、本開示の範囲を例示するために提供するが、これに限定されない。実施例は、本開示の方法及び架橋反応性ポリマー微粒子の具体的な実施形態を提供する。本明細書で提供されるような架橋反応性ポリマー微粒子は、特に、硬化型エポキシ系(エポキシ配合物)の不均一性を増加させる能力を提供することができる。
材料
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA、D.E.R.331TM、ダウ・ケミカル社)。
2,4−ジアミノトルエン(DAT)、芳香族硬化剤(アルドリッチ、そのまま使用)。
イソホロンジアミン(IPDA)、環状脂肪族硬化剤(アルドリッチ、そのまま使用)。
ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、2つの異なる分子量(PPG−1000及びPPG−3500)、溶媒(アルドリッチ、そのまま使用)。
ドデカン、溶媒(アルドリッチ、そのまま使用)。
表1に提供されるような異なる分子量及び末端基のポリブチレンオキシド(PBO)(アルドリッチ、そのまま使用)。
アセトン(アルドリッチ、そのまま使用)。
テトラヒドロフラン(シグマアルドリッチ、分析グレード、そのまま使用)。
表1は、上記化合物の化学構造及び特性を示すものである。
実施例1−18、架橋反応性ポリマー微粒子のDGEBA及びDATに基づく調製
表2は、本明細書に論じられるように、DGEBAとDATとの反応に基づいた実施例1−18の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いた実験条件を示すものである。実施例1−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用しない分散重合法によって製造した。ポリプロピレングリコール(PPG)は、単独又は追加の非溶媒(ドデカン)とともに、分散媒体として使用した。
実施例1−18の各々では、表2に示すようにDGEBA及びDATを、それぞれT=40℃、20分及びT=40℃、30分で、別々に溶媒に溶解させ、表2に示すようなモノマー濃度を有する均一のモノマー溶液を得た。前記DGEBA溶液と前記DAT溶液を混合して、表2に示すようにエポキシに対するアミンのモル比が異なるように調製した。予め加熱したオーブン(表2に示す80℃〜160℃の温度)内に混合物を載置し、撹拌せずに、周期的サンプリングをしながら、表2に示す反応時間で、エポキシとアミンの反応を進行させた。
単位分当たり4000回転(4000rpms)で20分(min)、遠心分離することにより、前記架橋反応性ポリマー微粒子の各サンプルを溶媒から分離させ、ほとんどの溶媒を除去した。室温(23℃)で、過剰量のアセトンにより前記架橋反応性ポリマー微粒子を洗浄し、再び遠心分離した。室温(23℃)で真空により前記架橋反応性ポリマー微粒子を乾燥した。実験条件の詳細は表2に報告している。
基準架橋反応性ポリマー微粒子(表2の「基準A」を参照。)は、1.35 a/e比のアミン/エポキシ比、10重量%(wt%)のモノマー濃度、PPG−1000溶媒、反応温度:130℃及び反応時間:15時間である。
実施例19−25、架橋反応性ポリマー微粒子のDGEBA及びIPDAに基づく調製
表3は、本明細書に論じられるように、DGEBAとIPDAの反応に基づいた実施例19−25の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いた実験条件を示すものである。実施例19−25の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用しない分散重合法により製造した。PPGは、単独で又は非溶媒(ドデカン)とともに、分散媒として使用した。
実施例19−25の各々では、表3に示すようにDGEBA及びIPDAを、それぞれT=40℃、20分及びT=80℃、30分で、別々に溶媒に溶解させ、表3に示すようなモノマー濃度を有する均一の溶液を得た。前記DGEBA溶液と前記IPDA溶液を混合して、表3に示すようにアミン/エポキシ比が異なるように調製した。予め加熱したオーブン(表3に示す80℃〜130℃の温度)内に混合物を載置し、撹拌せずに、周期的サンプリングをしながら、表3に示す反応時間でエポキシとアミンの反応を進行させた。
上述の実施例1−18のように、前記架橋反応性ポリマー微粒子の各サンプルを単離した。実験条件の詳細は表3に報告している。基準架橋反応性ポリマー微粒子(表3の「基準B」を参照。)は、1.35 a/e比のアミン/エポキシモル比、10重量%(wt%)のモノマー濃度、PPG−1000溶媒、反応温度:80℃及び反応時間:17時間である。
バルクなエポキシ網目構造体(Bulk Epoxy Networks)
DGEBA及びDAT(エポキシ比較例A)と、DGEBA及びIPDA(エポキシ比較例B)を用いて形成されるバルクなエポキシ網目構造体は、130℃に予め加熱したオーブンで4時間、更に180℃に予め加熱したオーブンで4時間という硬化サイクルを用いて、異なるアミン/エポキシのモル比で合成した。DSCを使用して、前記エポキシ比較例A及びBのそれぞれの反応のエンタルピー及びガラス転移温度を測定した。これらの値は、実施例1−25で得られた値との比較に用いた。エポキシ比較例A及びBは、本明細書に示すような元素分析やXPSなどの他のデータの検証にも使用した。
特性評価方法
光透過率測定(曇点測定)
光透過率は、架橋反応性ポリマー微粒子の合成中の溶液により測定した。前記光透過率は、電気加熱機器、加熱機器の温度制御装置、前記電気加熱機器に取り付けられ、分析用サンプルが充填されたガラス試験管、光源及びセンサ(Zeiss KL 1500 LCD)からなる装置と、データ(例えば、光強度)取得用のコンピュータとを使用して測定した。
曇点は、上述の光透過率測定装置で測定した。この技術では、サンプルを透過する光の強度は、温度の関数として又は時間の関数として記録される。サンプルが透明から曇った/不透明となった(又はその逆となった)とき、前記サンプルを透過した光の強度は、低下(又はそれぞれ増大)を示す。この低下の始まりは曇点と呼ばれ、それは0.1μmのオーダーの粒径を有する粒子(相分離法による)の外形に対応する。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SECは、反応終了時における反応溶液中のDGEBA、DAT及びPPGモノマーの分離及び含有量の計算に使用した。異なる濃度を用いて事前に明らかにされた各化合物をキャリブレーションとした。使用した溶出媒体はテトラヒドロフラン(THF)であり、流速は1ml/minであり、そして分離用に3列カラム(Waters HR0.5, HR1 and HR2)を使用し、検出は、屈折率検出器及びUV−Vis検出器(λ=254nm)を使用した。
変調示差走査熱量測定(MDSC)による熱的性質実験
MDSC実験は、冷蔵された冷却系を備えたTAインスツルメンツ Q2000 型 DSC装置で実施した。データは、Qシリーズ(バージョン2.7.0.380)ソフトウェアパッケージ用Thermal Advantageを使用して収集し、Universal Analysis 2000 ソフトウェアパッケージのバージョン4.4Aを使用して圧縮した。熱量計は、10℃/minの走査速度で、アダマンタン(Mp=−64.53℃)、n−オクタデカン(Mp=28.24℃)、インジウム(Mp=156.60℃)及び亜鉛(Mp=419.47℃)を用いて温度の校正を実施した。エンタルピー信号は、インジウム(ΔΗ=28.71 J/g)の分析により校正した。凡そ7mgのサンプルを、メトラー分析天秤を用いて正確に秤量した。軽量(凡そ25mg)のアルミパンを、架橋反応性ポリマー微粒子の実験に用いた。前記パンは、サンプル/パンの接触を改善するように圧着されるが、密封状態は気密ではない。架橋反応性ポリマー微粒子の第二の分析の前に、サンプルを真空オーブン中(圧力:20mbar)、40℃で約64時間乾燥させた。密封蓋付きのT0パンを、比較のエポキシ(DER 331+IPDA)マトリックスの硬化を調査するために用いた。架橋反応性ポリマー微粒子サンプルについては、同じ温度プロファイルを用いた。
質量分析付き熱重量分析(TGA−MS)実験
TGA−MS実験は、Balzer Thermostar GSD 300 MS付きのTAインスツルメンツQ5000型TGAを用いて実施した。データは、Qシリーズ(バージョン2.7.0.380)ソフトウェアパッケージ用Thermal Advantageを使用して収集し、TGAデータ用のUniversal Analysis 2000 ソフトウェアパッケージのバージョン4.4A及びMSデータ用のQuadstar 422ソフトウェア(バージョン6.0)を使用して圧縮した。MSデータは、ASCII形式でエクスポートし、Universal Analysis パッケージで更に圧縮した。サンプルをPtパン上に載せ、校正されたTGA天秤により正確に秤量した。
示差走査熱量測定(DSC)
反応の残差エンタルピー(もしあれば)及び架橋反応性ポリマー微粒子のガラス転移温度を得るために、乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子粉末を、DSCを用いて分析した。DSC測定は、Q20(TA)及びMettler DSC 30 (Mettler Toledo社)熱量計を用いて実施した。−60℃から250℃までの第一加熱勾配(10℃/min)の後に、0℃までの冷却段階及び200℃までの第二加熱勾配が続いている。すべての試験は、ヘリウム(TA Q20 熱量計)又はアルゴン(Mettler DSC 30 熱量計)雰囲気下で実施した。データは、Universal Analysis 2000 v.4.2E(Q20)及びSTARe v.8.10(Mettler DSC 30)のソフトウェアを使用することにより分析した。DSCは、前記バルクな網目構造体の特性評価にも使用した。
走査型電子顕微鏡(SEM)
SEMは、架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジーを調査するため、また、そのサイズを評価するために実施した。乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子を、Philips XL20 SEMにより観察した。サンプルの調製は次のとおりである:架橋反応性ポリマー微粒子粉末を導電性グラファイト接着剤で覆われた金属製の台(stub)上に置き、スパッタリングによりコーティングした。顕微鏡写真は、通常の15kVの電圧を用いて、複数の倍率で収集した。そのSEM顕微鏡写真を粒径分布の測定に用いた。粒径分布は、架橋反応性ポリマー微粒子の非荷重測定手順を用いて算出した。この事実は、例え、粒径分布の尾が小さい寸法で、その系の一部の小さい重さ(又は体積)を表すとしても、前記粒径分布の二つの尾は、同じ重さを有するということを実質的に意味する。測定は、オープンソースのソフトウェアImageJの(http://rsb.info.nih.gov/ijから入手できるバージョン1.42q)を使用して実施し、データが統計的に有意となるように300個以上の粒子の各サンプルを測定した。
結果と考察
実施例1−25は、狭い粒度分布と非凝集の架橋反応性ポリマー微粒子が得られた。その粒径は、サブミクロンの粒径を有する二峰性分布が観察された、いくつかの特殊な場合(非溶媒の存在など)もあるが、μmサイズの範囲であった。反応に用いられる反応条件は、架橋反応性ポリマー微粒子の大きさ、収率及び相分離に影響を及ぼす。したがって、有効なアミン/エポキシ比、反応温度及び反応時間は、架橋反応性ポリマー微粒子合成のパラメータとして考慮した。PPG製剤中のDAT/DER 331TMは、反応パラメータと架橋反応性ポリマー微粒子の特性との間のいくつかの関係が成立するように使用した。これらの関係としては、エポキシ/アミン比の増大や架橋反応性ポリマー微粒子の粒径の減少として観察されるものが挙げられる。反応時間が増加するにつれて、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径が増大する。反応温度が上昇するにつれて、反応速度が上昇し、架橋反応性ポリマー微粒子は小さい粒径を有する。最後に、モノマー含有量が増加するにつれて、多分散性は比較的一定のまま、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径が増大する。
また、架橋反応性ポリマー微粒子を形成するのに使用されるモノマー(例えば、エポキシ樹脂とジアミンなど)の重量パーセント(wt%)は、反応収率に影響を及ぼす。50wt%のモノマーを装填した場合は、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、反応が進行したように素早く相分離し、凝集した。したがって、十分な高収率を確保し、粒子の凝集をより防止するために10wt%のモノマー装填を採用した。PPGにおける反応収率は、90%を超えていた(SECCにより測定)。
基準架橋反応性ポリマー微粒子
基準A(表1参照、DGEBA+DAT、a/e比=1.35)で得られたDSCのサーモグラムの例を、図1Aに示す。反応前の基準Aのエポキシ化合物のガラス転移温度(Tg0)及び反応の発熱ピークが観察される。このピークは、約160℃における最大値と、Δ=378J/gの反応エンタルピーを有する。a/e比の関数として(硬化したサンプルの)Tg値の結果を図1Bに示す。a/e比=1でTg=157℃の最大値の傾向が得られた。このプロットは、実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子のTg値を比較するのに有用である。
同様の実験を基準B(表2参照、DGEBA+IPDA、a/e比=1.35)についても実施した。図2Aは、より低い温度におけるIPDAの反応を示すものであり、該温度は、発熱ピークの最大値が約100℃であり、反応エンタルピーがΔH=390J/gに等しい。Tg対a/e比は、a/e比=1でTgの最大値となる等の図2Bに示すような傾向となる。
基準Aの特性
a/e=1.35(すなわち、アミンが過剰の)モル比を有する基準Aの架橋反応性ポリマー微粒子は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の表面にアミノ基が存在し易いと予想された。溶媒は、DATを使用して合理的な反応時間となるように高沸点(反応温度は130℃であった)のPPG−100を用い、モノマー濃度は10wt%であった。前記架橋反応性ポリマー微粒子の構造を、複数の技術的手段を用いて調査した。
基準Aの合成
最初は無色透明の均一モノマー溶液は、反応の進行中に濁り、僅かに黄色味がかった色に変色した。上述のように、遠心分離、洗浄及び乾燥後に、黄色味がかった/茶色の粉状体が得られた。
4時間未満の反応で生じる相分離について、相分離速度のより正確な値を得るために、前記溶液を透過する光の透過率を130℃においてモニターし、相分離が187分(3.1時間)後に生じる所与の反応条件のためのプロットを図3に示す。
また、残留溶液(前記残留溶液をTHF(3mg/ml及び5mg/mlで2回)により希釈)は、SECによって分析した。初期の化合物(DGEBA/DAT/PPG−1000)及び反応の最終生成物(反応時間=15時間)について得られたクロマトグラムの典型例を図4に示す。PPG−1000、DGEBA及びDATの溶出量は、それぞれVe=20.3ml、24.7ml及び26.7mlである(図4A)。すべての化合物は非常によく分離する。図4Bにおいて、PPG−1000に対応するメインピーク(RI信号)と、未反応のDGEBA(n=0)に対応する非常に小さなピークが観察される。26.7mlにおけるDATに対応するピークはないが、これは屈折率検出器の検出限界といえる非常に少ない量ということである。また、254nmにおけるUV信号(図4C)は、DEGBA及びDATに対して非常に感度がよいため(芳香環の存在に起因する)、反応最終生成物の検出に用いた。DATのピークは、オリゴマーの存在と同様に観察される。
各成分に対して設けられた検量線から、残留溶液中に存在するDGEBAとDATの量を推定することができる。前記溶液中に、(3回の試験の平均値で)初期のDGEBAの12%及び初期のDATの2%が残存しているため、エポキシ+アミンの反応は86%の収率となる(前記溶液中に残存するオリゴマーを無視した場合)。SECは、エポキシ−アミンの前記架橋反応性ポリマー微粒子への転化のみが考慮されることから、SECによる収率は、重量法により得られる値よりも僅かに低い。その差が、基準Aの前記架橋反応性ポリマー微粒子中のPPGの存在によるものなのか、基準Aの架橋反応性ポリマー微粒子の沈殿によるものなのかは特定できなかった。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性
熱的性質
乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子(130℃での反応の15時間後に得られた実施例1)のDSC実験から温度の関数として得られる熱流束の曲線の例を図5に示す。第一加熱走査のサーモグラフィはかなり複雑であり、50℃〜100℃の温度範囲内に吸熱ピークがあり、次いでガラス転移が観察される。前記吸熱ピークは、残留アセトン(洗浄工程に使用される)に関連しており、アセトンの蒸発の比熱、すなわち、538.9J/gを用いて、前記アセトンの残留量が5〜7wt%の範囲内にあると推定した。第二加熱走査は147℃で明確なガラス転移を示し、前記第一の走査の間に観察されたものと非常に類似している。これらの説明は、すべての実施例1−12に有効であり、第一走査と第二走査との間に有意差はない。架橋反応性ポリマー微粒子が、a/e比=1.35の供給混合物の初期と同様の化学量論組成を有する場合は、Tgは137℃と等しくなる筈である。得られる値は、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成がDGEBA及びDATの製造のみであるとしても(図1参照)1.2に近い値にならざるを得ないので、より高くなる。しかしながら、収率、TGA及びXPSから得られた値は、実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子内にPPG−1000が存在することを示唆していた。次のような仮説を立てることができる。(1)PPGが前記微粒子の表面に吸着又は反応し、その量が少なく(数回の洗浄処理のため)、また、(2)PPGは、Tgの減少のため(ほんの僅かなポリマーがPMMA等のエポキシ網状体と混和する)、混和性ポリマーとして前記架橋反応性ポリマー微粒子内には存在し得ず、相分離したドメインの前記微粒子の内側に存在し得る。
MDSC実験:
実施例13−18の架橋反応性ポリマーの挙動を図6−18に示す。第一加熱工程において、各実施例13−18は本質的に非対称の(すなわち、MDSCの動的信号に当たる)大きな吸熱ピークを有していた。このピークの大きさ及び幅は、蒸発過程を示すものである。以下の表6は、DSC実験中の実施例13−18による重量損失(weight loss)を一覧にしたものである。重量損失は、約5.5wt%〜最大9wt%までの範囲である。それは、相当量の溶媒(洗浄工程によるアセトン及びTHF)が、依然として、前記架橋反応性ポリマー微粒子内に存在することを表している。そして、真空オーブンによる乾燥工程を行った。これらの重量損失のレベルを同じサンプルについて実施したTGA−MS分析により確認した。
前記第一加熱工程におけるTgは、100℃において5時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例15)の約50℃から、80℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14)の約75℃に及び、最終的には、残りの架橋反応性微粒子(実施例13、16−18)の約100℃−105℃に及ぶ。Tgの転移の形状は、特に転移の高温側において重要である。これは、材料の更なる反応を示している可能性があり、又は溶媒の同時損失に起因している可能性もある。残りの発熱硬化過程は、溶媒の大きな蒸発ピークにより観察できない。さらに、残りの発熱ピークが、弱く、幅広い範囲に亘って広がっているような場合は、例え、溶媒の蒸発による干渉がなくても、見えない可能性がある。
第二加熱工程におけるTgの転移は、第一加熱工程の結果と比べると、より「普通」なものを表している(図6〜図18を参照)。通常のエンタルピー関連ピーク(約2J/g)は存在しているが存在しているだけで、大きな吸熱ピークは存在しない。前記転移は、非常に高温側にシフトしており、ほとんどの場合において非常に鋭くなっている(すなわち、狭い温度範囲で転移している)。ここで、前記Tgは、100℃において5時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例15)の約110℃から、80℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14)の約115℃に及び、さらに100℃及び120℃において17時間及び5時間で製造された各架橋反応性ポリマー微粒子の120℃に及び、最終的には、120℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例18)の約130℃に及ぶ。
前記Tgの転移の幅は、80℃で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例13及び14)において最も狭い。これらの実施例は、架橋された系の代わりに、より標準的な熱可塑性材料のようなTgを有している。さらに、これら実施例13及び14のTgの転移は、標準的な熱可塑性材料とほぼ同程度に狭かった。架橋密度は、高い温度で製造された材料(100℃において5時間のものを除く)よりも低いが、網状体の均一性(Tgの転移の幅により示される)は優れている。反応温度及び時間が増加するにつれて、Tgの転移の幅も増加する。これは、多くの異種のポリマー網状体とも一致している。
TGA及びMDSCの両方によって確認されるように、実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、揮発性物質を有意なレベル(5〜9wt%)で含んでいる。MDSC実験後においても、TGA及び重量損失によって同様のレベルが測定された。この重量損失は、残留ポリプロピレングリコール(PPG)の洗浄に使用した残留溶媒(THF、アセトン)の放出に由来するものである。いずれかの架橋反応性ポリマー微粒子中に残留するPPGの存在についての明確な証拠はなかった。なお、そのレベルは、約0.1重量%(wt%)又は1000ppm未満であると推定される。
前記残留溶媒は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の可塑剤として作用する。第一加熱工程中に測定されたTgは、第二加熱工程中に測定されたものよりもはるかに低く、幅広い。部分的に乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子の初期Tgは、受け入れられた架橋反応性ポリマー微粒子のものよりも高いが、依然として溶媒を完全に除去した後に測定されたものよりも相当低い。最終的なTgは、反応温度及び時間の関数である。80℃の反応温度における架橋反応性ポリマー微粒子の最終的なTgは約115℃であり、これが100℃の反応において約122℃にシフトし、更に最終的には、約120℃の反応において約130℃にシフトする。所定温度における長い反応時間は、Tgの小さな増加とより広範な転移をもたらす。最高温度及び最長反応時間における架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、エポキシ比較例よりも僅かに高い。前記架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシ比較例は、非常によく似た熱劣化挙動を呈する。進行した活性種は、架橋反応性ポリマー微粒子とエポキシ比較例の化学組成が同じであることを示すことと本質的に同じである。図6A−13Bは、実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子のMDSCとTGA−MS測定結果を示すものである。
乾燥工程後の架橋反応性ポリマー微粒子の分析
4つの乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14−18)のMDSC結果を図14A−19Bに図示し、表8及び9に纏めた。実施例14−18が依然として揮発性物質を含んでいることは、第一加熱工程の結果から明らかである。すなわち、40℃で約64時間の真空乾燥工程では、溶媒のすべてが取り除かれるというわけではない。分析前後に測定された実施例14−18の重量から(表8参照)、実施例14−18のいずれも依然として約2wt%の損失があることが観察された。この低温の重量損失は、受け入れられた架橋反応性ポリマー微粒子よりも高温側にシフトし、Tgの測定結果も高温側にシフトし、さらに転移はより狭い温度範囲で生じている。しかし、第二加熱工程で測定された最終的なTgは、以前測定したものと大体同じである。
反応温度が増加するにつれて、架橋反応性ポリマー微粒子の最終的なTgも増加している。また、所定温度における長い反応時間も、前記最終的なTgを増加させるとともに、Tgの転移を広範にしている。
架橋反応性ポリマー微粒子のTGA−MS
TGA−MS実験を行う主な理由は、任意のPPGが依然として前記架橋反応性ポリマー微粒子内に存在しているかどうかを判定するためであった。PPGは、架橋反応性ポリマー微粒子を形成するための重合中に溶媒として使用されており、最終生成物はTHF及びアセトンで数回洗浄したものの、ある程度のPPGが依然として存在している可能性がある。PPGの有無を調べるために、異なる架橋反応性微粒子を、純粋PPG及び自己硬化型エポキシ樹脂と一緒に分析した。これら後者の二つの材料は、参照データを提供するために分析した。
PPG、エポキシマトリックス及び実施例17の架橋反応性ポリマー微粒子のMS信号のいくつかの重ね書きプロットを図20A−20B及び21A−21Bに示す。すべての比較対象サンプルは、MS信号をそのまま定量比較できるように、同様の開始重量(約5.5mg)とした。MS信号の選択は、純粋PPG材料における信号の強度及び/又は形状に基づいて行った。
図20A及び20Bにおいて、M/E=15及び17のMS信号は、PPG、エポキシマトリックス及び実施例17の架橋反応性ポリマー微粒子を比較したものである。M/E=15の信号はすべての材料で非常に強い。架橋反応性ポリマー微粒子は、残留溶媒(THF及びアセトン)の損失に由来する低温におけるピークが検出されているのに対し、他の二つの材料は200−250℃まで、このm/e値においていかなる有意な信号も検出されていない。前記架橋反応性ポリマー微粒子における信号の強度及び形状が、エポキシマトリックスのそれと非常に類似しているは明らかである。架橋反応性ポリマー微粒子における信号の強度は、前記エポキシマトリックスと比べると同じか又は弱い。任意の有意な量のPPGが、依然として架橋反応性ポリマー粒子内に存在する場合、この場合の信号の強度は、架橋反応性ポリマー微粒子に対してより強くならなければならない。m/e=17(水)のMS信号は、PPG信号の特徴的な形状を有し、これは、エポキシマトリックス及び架橋反応性ポリマー微粒子が観察されていない。また、架橋反応性ポリマー微粒子から出た任意の有意量のPPGが存在する証拠はない。
図21A及び21Bにおいてm/e=31と45のMS信号を3つの材料で比較した。これらの信号には、特に強いPPG材料の信号と、比較的弱いエポキシマトリックス及び架橋反応性ポリマー微粒子の信号がある。両方の場合において、架橋反応性ポリマー微粒子の信号は、エポキシマトリックスの信号よりも僅かに強い。これは、低レベルのPPGが依然として架橋反応性ポリマー微粒子内に存在することを意味する。この架橋反応性ポリマー微粒子の僅かに強い信号が、実際にいくらかのPPGが依然として前記粒子に付随していることを意味しているとしても、その量は約0.1wt%(すなわち、1000ppm)以下と推定される。
実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、150℃以下の温度における有意量の重量(5−8wt%)を失っている。これらの重量損失の値は、MDSC実験中に損失した重量から求められるものと一致している。サンプルをTHF及びアセトンで洗浄したため、これら溶媒の一方又は両方がこの重量損失を生じさせていると考えるのが論理的である。架橋反応ポリマー微粒子のm/e=42、43、59及び72の選択されたMS信号を図22A−26Bに示す。MS基準スペクトルの試験では、低温において、m/e=42及び72のMS信号は主にTHFに由来し、m/e=43及び58のMS信号は主にアセトンに由来する。
架橋反応性ポリマー微粒子の粒子形状及び粒径分布
実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子粉末のSEM顕微鏡写真を、架橋反応性ポリマー微粒子の形状及び寸法を評価するために撮影した。図27は、反応時間の粒径に係る効果が可視である場合の架橋反応性ポリマー微粒子の画像を示す。すべての架橋反応性ポリマー微粒子は、球状形状を有していた。SEM顕微鏡写真は、粒子径分布を決定するために用いた。図28は粒子径分布を示し、図30は、反応時間の関数としての架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径を示す。架橋反応ポリマー微粒子の寸法は、単峰性の狭いガウス分布に従う。架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法は、粒径の安定値に達したときに、反応時間の4時間後の2.02±0.13μmから、15時間後の3.9±0.3μmにまで徐々に増加する。0.13−0.3μmの範囲の標準偏差及び他分散性指数は、1.01より低く、非常に狭い分布を確認した。
モノマー濃度の影響
同じ溶媒(PPG−1000)中のモノマー濃度(DGEBA+DAT、a/e比=1.35)の実施例1〜12の架橋反応性ポリマー微粒子の合成及び特性への影響を調べた。
図29において、濃度が5wt%から30wt%に変化するにつれて、曇点が380分から41分となっているように、前記曇点は、モノマー濃度が増加するにつれて明確に減少する。この予期された効果は、第一に、前記濃度が増加するにつれてエポキシ/アミン反応が速く進行すること、第二に、高いモノマー濃度が、低い転化率における相分離を引き起こす相図の領域に対応することに起因している。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
図31は、モノマー濃度がTgに強い影響を及ぼすこと示しており、モノマー濃度が増加するにつれて、1wt%のモノマー濃度における158℃から、30wt%のモノマー濃度における136℃(最長反応時間後、2回目のDSC走査中に得られた値)に、Tgは減少する。これは有意な差である。この傾向は、1回目のDSC走査中(合成終了時の値である)又は2回目の走査(完全硬化後に到達できる粒子の最大値を表す)に測定されたTgでも同じである。前記架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成は1に近いため、高いTgは高い架橋密度を意味する。PPGは(混和する場合)可塑化作用を有するので、この高いTgは、粒子内の混和性ポリマーとしてのPPGの存在を許容しない。低いTgは低い架橋密度を意味し、これには、とりわけ不完全な硬化、1から遠い化学量論組成及び/又はPPGの可塑化作用などのいくつかの理由がある。
SEM顕微鏡写真でμmサイズの球状粒子の形成を確認した。図32は、異なるモノマー含量を有する溶液から製造した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真のいくつかの例を示す。いくつかの凝集体が、1wt%のモノマー濃度から調製した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM画像で観察される。SEM顕微鏡写真を用いて、架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径(標準偏差)を算出し、図33A及び33Bに示した。
架橋反応性ポリマー微粒子の収率及び曇点と同様に、異なるモノマー含有量から、異なる粒子成長速度及び安定状態における異なる架橋反応性ポリマー微粒子の粒径の平均値を得た。この値はモノマー含量とともにほぼ直線的に増加し、長い反応時間では、粒径が、1wt%の約1μmから30wt%の約6μmまで増加する。最小粒子(1μm)は最高のTg(158℃)を有するが、最も低収率である。非常に狭い分布(1.002−1.03)の範囲内のままであっても、濃度が増加するにつれて多分散性の増加が観察された。標準偏差は、100時間後の1wt%の場合の0.7μmから反応の5時間後の30wt%の場合の1μmまで増加した。
モル比の影響
前記架橋反応性ポリマー微粒子の有効なエポキシに対するアミン比(a/e比)は、供給材料中のそれとは異なり、a/e比=1.35であった。以下は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成及び特性への供給材料中の多様なモル比の影響について示す。4つのa/e比、0.7(エポキシ過剰)、1(同数のアミン及びエポキシ)、1.35及び2(アミン過剰)について調査した。
合成
アミン/エポキシ比が増加するにつれて相分離の時間の減少があり、a/e比=0.7の267分からa/e比=2の159分への減少があった。この挙動は、オリゴマー構造に関連している可能性があり、さらにそのオリゴマー構造は、モル比に強く依存し、a/e比>1において形成されるオリゴマーは、得られるものよりも残存する−NH基を伴ったより直線状な構造を有し、a/e比<1においては、エポキシ基がぶら下がった分岐構造を有している。これらのオリゴマーは同じ化学構造を有していないので、それらは異なる溶解度パラメータを有し、結果的に異なる相図のために、それらは同時に分離しない。この挙動もまた、架橋速度に関連している可能性があり、相対的なモノマー組成によって影響を受ける。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
反応時間(5時間以降できるだけ早い時間)及び1回目のDSC走査又は2回目のDSC走査中に得られたTg値は、所定のa/e比に依存しているようにはみえない。それどころか、モル比の影響はあるものの、予期したほどではない。特に、a/e比=1で最大Tgである。初期の混合物におけるa/e比が増加するにつれて、Tgの減少が観察される。これらの値は、表10に報告している。
a/e比=1及び1.35における、初期混合物中のa/e比と架橋反応性ポリマー微粒子のa/e比との差は小さい。しかし、この差は、a/e比=0.7及び2で大きくなる。両方の場合において、前記架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、バルクサンプル(エポキシ比較例A)のそれよりも高い。前記架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、幅広い範囲のa/e比(0.7〜2)を使用していなかったとしても、架橋反応性ポリマー微粒子のa/e比は、非常に狭い範囲(1〜1.44)となる。得られた高いTg値は、前記架橋反応性ポリマー微粒子内の混和性ポリマーとしてのPPGを有する可能性を排斥する。
図34に示すSEM顕微鏡写真により、凝集が形成されることなく、球状微粒子が形成されていることが確認できる。顕微鏡写真は、異なるa/e比の反応時間(図35A及び35B)の関数としての平均粒径の計算に利用した。前記粒径は反応時間に伴って増加し、その後、反応の10時間後に一定の値に達する。モル比は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が到達するサイズに小さい影響を与え、a/e比=2及び1.35で3.6/3.9μmの最大粒子が得られ、a/e比=0.7及び1で2.9/3.2μmの最小粒子が得られた。
反応温度の影響
前記架橋反応性ポリマー微粒子の反応速度に影響を与えるパラメータは、反応温度である。分散重合による架橋反応性ポリマー微粒子の調製においては、供給材料溶液中a/e比=1.35のモル比及び10wt%のモノマー濃度で、80℃から160℃まで変化させた。
合成
エポキシ−アミン反応は温度によって活性化され、温度の増加に伴って相分離に掛かる時間が減少することが観察された。相分離により転化が急速に起こり、曇点が、100℃の1時間から63℃の11.5時間にシフトする。低い温度で、曇点を溶液の光学観察によって概略的に推定すると、80℃で48時間及び50℃で144時間に近い値となった(図36)。前記溶液を6か月間、室温で放置すると、30〜60日で溶液は不透明になり、90日後には、沈殿した架橋反応性ポリマー微粒子が観察された。完全な転化は、反応温度が高い(160℃及び130℃)ときにのみ達成した。同じ動的理由で、所定の反応時間における温度が減少すると、低収率に繋がるものと予想される。反応停止後に、DGEBA及びDATの残留量のために、SEMによって残留溶液を分析した。実際に、反応を80、100又は130℃で行ったときの残留モノマーは、例えば、100℃での反応の場合における初期供給材料のモノマーの未反応のまま残ったDGEBAが10〜12wt%、DATが2〜3wt%程度、検出された。高い温度では、残留溶液中にSECによって存在が確認されたオリゴマーは、ほとんどなかった。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
所定の温度では、反応時間のTgに対する影響は強くない(反応の1.5時間後の最初の点は140℃近くのTgを有するが、5時間後に安定値に達する、160℃を除く)。1回目及び2回目の走査中に記録された値は、表11に示しており、まさに合成後(1回目の走査)又はDSCのオーブンで硬化サイクル後(2回目の走査)で得られた値は、反応温度に対する依存性が異なることを示している。ガラス化現象(Tgの値が、所定の系の硬化温度にほぼ等しくなる)が反応を停止させることはよく知られており、この反応は、温度が上昇すると直ぐに、反応が再開する。それにも拘わらず、高いTgは低温でも得られた(例えば、T=80℃での反応で、Tg=125℃)。最終的なTgの値は、反応温度に依存することに留意すべきである。そのため、初期のモノマー供給材料が同じという事実があっても、前記架橋反応性ポリマー微粒子の構造は同じにはならない。比較のために、低温で部分的に反応させ、その後、高温で本硬化してなる同じ系から合成されたバルクの網状体(エポキシ比較例A及び/又はエポキシ比較例B)は、同じ最終Tgを示している。溶液重合では、こうはいかない。二つの理由によりTgの変化を説明することができる。第一は、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成である。基準A(a/e比=1.35、T=130℃)は、現実には1.2に近い化学量論組成を有している。
前記架橋反応性ポリマー微粒子が、エポキシとアミンのみで構成されているという仮説に基づいて、有効な化学量論組成について同様の計算を行った。反応温度がT=160℃から50℃に減少すると、有効な化学量論組成は、それぞれ1から1.5に増加することがわかる。第二に、PPGは、Tgを減少させることのできる、架橋反応性ポリマー内の混和性ポリマーである。
図37に示す顕微鏡写真により、球状微粒子が温度に関係なく、凝集せずに形成されていることが確認できる。これら微粒子の反応時間及び反応温度の関数としての平均粒径を図38A及び38Bに示す。前記架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径に大きな変化はなく、80℃〜160の反応温度において粒径は3.1〜3.9μmであり、50℃の場合のみ、粒径が僅かに大きく、約5μmである。
PPG−ドデカン混合物
エポキシ樹脂の溶解度パラメータが分子量及び組成の違いによって変化するとき、分散媒体への非溶媒の添加が、分散重合にどのような影響を与えるのかを確認する必要があった。この目的のために、エポキシ及びアミンの両方に対して非溶媒であり、比較的高い沸点を有するものとしてドデカンを選択した。非溶媒の添加については、混合物の3つの成分の溶解度パラメータをすべて変えている。2つのドデカン/PPG混合物を、10及び50wt%でドデカンを含有する分散媒体として調製した。以下の段落においては、ドデカンの添加が、曇点、反応収率、並びに架橋反応性ポリマー微粒子のTg及びモルフォロジーに与える影響について説明する。
合成
ドデカンをPPGに添加すると、相分離に掛かる時間が減少し、純粋PPG−1000の場合の380分から、溶液中のドデカン含有量が50wt%の場合の58分にまで減少する。この結果は、ドデカンの添加で促進された溶解度パラメータの変化によるものと推測される。温度、a/e比及びオリゴマー濃度は変化していないので、アミン−エポキシ反応の速度は、依然として同じ筈である。
50wt%のドデカンを含む溶液は、10wt%のドデカン混合物と比較して、前記架橋反応性ポリマー微粒子の高い収率をもたらす。
PPG/ドデカン=90/10、T=130℃、15時間の反応時間(実施例10)及びPPG/ドデカン=50/50、T=130℃、10時間の反応時間(実施例12)で合成した前記架橋反応性ポリマー微粒子の分析には、TGAを用いた。PPG又は50/50のPPG/ドデカン混合物中で合成された架橋反応性ポリマー微粒子は、T5%=338℃(バルクな網状体、基準Aよりも低い温度)で同様の挙動を有しており、溶液中にドデカンを10wt%のみ含む溶液を用いて合成した架橋反応性ポリマー微粒子は、140℃における1.5%の最初の重量損失及び前記架橋反応性ポリマー粒子と比較して約20℃低いという319℃におけるT5%によって、僅かに異なる挙動を示している。この違いは、恐らく、架橋反応性ポリマー微粒子の洗浄工程後の溶媒の除去に起因している。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
異なる反応時間後にサンプリングされた架橋反応性ポリマー微粒子のTgについても調査している。所定の系において反応が進行すると、Tgは、その値が安定状態に達するまで増加する。100〜160℃の温度で合成されるDAT系の架橋反応性ポリマー微粒子においては、「Tgの安定状態」は、反応の5時間後に達成される。これは、架橋反応性ポリマー微粒子の化学組成及び構造が、反応の5時間後に変化していないことを示している。
図39から、非溶媒をPPGに添加したときに、球状の粒子が形成されていることが分かる。粒度分布及び架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径を反応時間の関数として計算し、図40A及び40Bに示した。いくつかの違いが現出している。第一に、短い反応時間では、架橋反応性ポリマー微粒子の寸法は1μmより小さく、3.5時間後の10wt%のドデカンで0.9±0.4μm、1.7時間後の50wtのドデカンで0.7±0.3μmであった。これは、ドデカンの存在下、曇点の短い時間に関連している可能性がある。第二に、ドデカンが50wt%の場合の架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法は、どのような反応時間でも、PPG−1000のみで合成した架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法と同じである。しかしながら、図39の顕微鏡写真を比較することによって分かるように、ドデカンの主な効果は粒度分布の広幅化である。反応が停止したとき、粒径は、それぞれ3.5±1.5μm及び3.9±0.3μmであった。ドデカンの添加により、500nm程度の小さい粒径を有する架橋反応性ポリマー微粒子の形成を可能にした。第三に、ドデカンが10wt%の場合の架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径は、PPG−1000のみ及びPPG/50wt%のドデカンの場合よりも小さく、架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径は、1.8±0.7μmに達している。
結論
PPG及びドデカンの混合物中における架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、架橋反応性ポリマー微粒子が充填されたエポキシ網状体において、潜在的に高い不均一性をもたらす可能性のある幅広の粒度分布(特に、50wt%のドデカンを用いた場合)を得るために使用することができ、さらに、10wt%のドデカンを使用すると、平均粒径は2まで減少する。収率、ガラス転移温度及び粒子中のPPG含有量等の他のパラメータは、非溶媒の添加によっては影響を受けなかった。
ジアミン構造の影響
イソホロンジアミン(IPDA)は、エポキシ樹脂とともに用いられる硬化剤である。その化学構造(脂環式)に起因して、低温で反応する。IPDAを架橋反応性ポリマー微粒子の合成に使用することによって、反応温度を低下させることができ、前記架橋反応性ポリマー微粒子の合成において低沸点溶媒の使用を可能にした。化学量論組成、温度及び溶媒の架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及び組成への影響については、現在検討中である。
基準系の特性評価
基準Bの反応温度として130℃の代わりに80℃を採用したこと以外は、DAT系粒子(実施例1−12)の場合と同様の実験要領をIPDA系微粒子(実施例19−25)の合成にも適用した(a/e比=1.35、c=10wt%、溶媒:PPG−1000)。(1)相分離が、80℃で4時間後(DAT系の同条件においては、〜48時間であった)に生じたこと、(2)反応の収率が、反応の24時間後で76wt%に等しいことが分かり(PPG−3500中で行われた同様の合成では94%の収率が得られている)、この値は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の異なるバッチにおいて確認されたこと、(3)前記架橋反応性ポリマー微粒子のTGA分析が、DAT系架橋反応性ポリマー微粒子において得られたものと非常に類似した重量損失対温度のプロファイルとなることが明らかとなり、分解(degradation)の開始は同じ温度(T5%は336℃に等しい)であるものの、曲線は僅かに低温側にシフトしていること、(4)所定の反応時間後にサンプリングした架橋反応性ポリマー微粒子のガラス転移温度を、明確に、所定の方法によって決定することが難しかったことが、観察された。
図41A及び41Bは、反応の17時間後(図41A)と反応の24時間後(図41B)の2つの連続走査中に得られたサーモグラムを示す。既に述べたように、(架橋反応性ポリマー微粒子の熱的特性に関し)1回目の走査中の信号は、図41Aの場合、残留溶媒の蒸発によって非常に頻繁に乱されている。したがって、このグラフから抽出された53℃に等しいTgは、溶媒蒸発の吸熱ピークの存在のために過小評価されている可能性がある。長い反応時間においては、溶媒によって信号は乱されず、93℃に等しい明確なTgを観察することができる。
表12に示すように、このエポキシ−アミンの組み合わせ系の達成可能なTgは、149℃程度に高く、それ故に、エポキシ基及びアミン基のいくつかは、前記架橋反応性ポリマー微粒子内で、依然として未反応のままである。これは、反応が停止したとき(T=130℃で15時間)に最大Tg値に到達し得るというDAT系架橋反応性ポリマー微粒子と比較すると、異なった挙動である。しかしながら、反応時間と同様に反応温度は、DAT系架橋反応性ポリマー微粒子の場合よりも、より有利に高Tgをもたらす。1.35のアミン/エポキシ比によるバルク網状体では、Tg温度は125℃に等しいものの、2回目の走査の後では、図41A及び41Bに示されているように、IPDA系架橋反応性ポリマー微粒子におけるこれらの値は、達していない。
架橋反応性ポリマー微粒子の有利な化学量論組成が、初期のモノマー溶液のそれと実質的に異なることを確認している。2回目の走査中、DSCにおける硬化後、及び架橋反応性ポリマー微粒子中に残留溶媒(PPG)が存在しない場合において得られた各Tgを考慮すると、有効な化学量論組成は、a/e比の関数としてのTgの変動から推定することができる。0.8/0.85(エポキシ過剰)又は1.5/1.6(アミン過剰)の二つの値が可能である。2番目の値は、反応の開始時にIPDAが過剰であるときに、より現実的であると考えられる。
SEM顕微鏡写真は、IPDA系架橋反応性ポリマー微粒子が、少し凝集された(特に、短い反応時間(4.5時間)の後のサンプルで、架橋反応性ポリマー微粒子のTgが低い場合は)球状粒子であることを示している。架橋反応性ポリマー微粒子は、特に、短い反応時間の場合において、残留するアミノ基又はエポキシ基を有している可能性があり、これらは乾燥工程中に反応することができ、凝集をもたらすものである。反応時間は粒径に影響を与え、2μmから3.5μmに増加させても、分布は狭いままである。反応終了時の粒径は、基準のDAT系架橋反応性ポリマー微粒子で判明しているものと同じ範囲内である。
モル比の影響
モル比の影響について、実施例25、19及び24(エポキシに対するアミンのモル比が、それぞれ0.7、1及び1.35)の架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及びTgを試験することにより調査した。以下のことが観察され、各Tgは表13に示している。17時間反応時間の後、1回目の走査で架橋反応性ポリマー微粒子のTgが、49〜57℃程度に低いことが明らかになった(1回目の走査信号も、溶媒の蒸発によって乱されていた)。しかしながら、硬化後のTgは、特に、初期a/e比が低いときに増加した。DAT系架橋反応性ポリマー微粒子の場合のように、a/e比=0.7で最大Tgが得られ、SEM顕微鏡写真は、球状の非凝集微粒子を示している。高Tg架橋反応性ポリマー微粒子の例(a/e比=0.7)の画像を図43に示す。粒径は、a/e比の初期値とともに僅かに増加しており、前記比が0.7、1及び1.35のとき、前記粒径は、それぞれ2.7μmから、3μm及び3.2μmになる。
合成温度(80、100及び130℃)並びに非溶媒の添加(分散媒体に対して10wt%のドデカン)の影響
この一連の実験を通して、供給材料のa/e比を、モノマー濃度10wt%でa/e比=1.35に維持した。合成過程に、分散媒体として異なる溶媒(1−オクタノール、シクロヘキサノン及びシクロヘキサン)が用いられ、いくつかの場合において、低収率であり、架橋反応性ポリマー微粒子の凝集を伴った架橋反応性ポリマー微粒子が得られた。
非溶媒及び温度を追加した架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及び組成への影響は、次のとおりである。(1)収率の温度依存性については表14に示す。短い反応時間(4.5時間)では、ある程度の相関関係が存在している。しかしながら、長い反応時間(17時間)では、収率は温度に拘わらず90%を超えている。(2)架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、高い反応温度では高いTgが期待されたが、反応時間の17時間後では反応温度によって変化せず、50℃に近い値であった。50℃は、IPDAの高い反応性を考慮すると、130℃での長い反応時間にとっては、決定的に低過ぎる温度である。
図44Aに示すように、SEM画像は、球状微粒子を明らかにしている。反応時間及び温度の関数としての平均粒径を、同じ図44Bに示す。これら2つのパラメータが、架橋反応性ポリマー微粒子のサイズに有意な影響を及ぼしていないことは明らかである。
結論
DGEBA及びIPDAに基づく架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、分散媒体としてPPG又はPPG+10wt%ドデカンの混合物のいずれかを用いたDATによるものよりも、低い温度で行うことができる。球状の微粒子が両方の溶媒において得られ、さらに狭い粒度分布を有している。DAT系架橋反応性ポリマー微粒子のように、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成は、DSC分析に基づく供給材料中のそれとは異なる。粒径は、PPG中の合成では3μm、PPG及びドデカンの混合物中の合成では約5μmの範囲である。硬化後において、架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、合成条件に応じて102℃〜141℃である。
本開示は、ポリマー、特に架橋ポリマー粒子及びその製造方法に関するものである。
靭性は、応力下において、エネルギーを吸収して、破壊せずに塑性変形し、結果的に材料破壊に抵抗する材料の能力である。ポリマーは、しばしば、靭性を向上させるために変性される。これは、高架橋密度を有する熱硬化性樹脂などのガラス状ポリマーでは、特にそうである。そのような変性は、前記ガラス状ポリマー未満のガラス転移温度Tgを有するゴム状ポリマーであって、通常、球状の粒子からなる第二相を組み込むことを含み得る。この第二相の添加によって、ガラス状ポリマーの機械的挙動の改善をもたらすことができる。
Tgが低いことに加えて、ゴム状粒子は、通常ガラス状ポリマーよりも低い弾性率を有しており、機械的変形中に、応力集中を粒子の赤道に導く。この応力集中は、粒子の周囲や材料の至る所に、せん断降伏又はクレージングを導き得る。この方法では、ガラス状ポリマーは、変形中に大量のエネルギーを吸収することができ、強靭化される。
ゴム状ポリマーに加えて、アクリルからエポキシ乃至ウレタンに変化する化学的性質を有する架橋粒子も、強靭化剤として利用される。それらは、主に分散重合によって製造され、界面活性剤によって安定化される。これらの界面活性剤は、化学的又は物理的に前記粒子表面と結び付いている。強靭化剤は、一度最終製品に組み込まれると、粒子と周囲の網状構造との間に界面活性剤が介在することによって形成される界面が、通常、機械的に破壊される場所ではあるが、強靭化が達成される。
しかしながら、界面の存在は、とりわけ、未熟、劣化及び低バリア性の原因ともなり得る。加えて、強靭化粒子を含有する製剤は、しばしば、前記製剤に良好な濡れ性を付与する相溶化剤によって改質する必要がある。前記製剤中の界面活性化合物の存在は、しばしば、これら網状構造の被覆性に影響を及ぼす表面への前記界面活性化合物の移行をもたらし得る。したがって、コーティングや複合材料などの多くの用途では、強靭化剤を完全に取り込むことで、その利益を得ているのであろう。
本明細書で説明するように、本開示の実施形態は、硬化型エポキシ系に完全に取り込むことのできる強靭化剤を提供する。具体的には、本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を含み、該微粒子は、分散媒体中、50℃〜120℃、前記架橋反応性ポリマー微粒子が別々の非凝集形態で前記分散媒体から相分離している間の17時間以下の反応時間で、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とが反応した反応生成物であり、架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子の重量を基準として0.001重量%以下の濃度を有する。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の全重量を基準として、前記架橋反応性ポリマー微粒子の0.001重量%以下である。
種々の実施形態では、反応生成物は、当量比で表される過剰量のアミン硬化剤及びエポキシ樹脂のうちの1つによって形成されている。それで、前記反応生成物は、当量比で表される過剰量のアミン硬化剤又はエポキシ樹脂によって形成されている。種々の実施形態では、この過剰量は、例えば、過剰のアミン硬化剤では、1.35〜1とすることができる(例えば、エポキシ基のモル数に対して、0.35過剰molのアミン水素であって、エポキシに対するアミン比又は「a/e比」として本明細書に提供される)。本明細書で使用する当量比は、アミン水素(アミン硬化剤由来)のモル数及びエポキシ基(エポキシ樹脂由来)のモル数に用いる。
種々の実施形態では、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤のそれぞれは、分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、分散媒体中、5〜30重量%の濃度を有することができる。
種々の実施形態では、前記分散媒体は、ポリ(オキシプロピレン)、ドデカン、脂肪族ケトン、環状ケトン、脂肪族アルケン、芳香族アルケン、ポリエーテル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を含まない。
本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子の製造方法も含む。種々の実施形態では、前記方法は、架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子と結合した前記分散媒体を0.001重量%以下にするために、17時間以下の反応時間、50℃〜120℃の温度で、分散媒体中でエポキシ樹脂をアミン硬化剤と反応させる工程と、前記架橋反応性ポリマー微粒子と前記分散媒体を相分離させる工程とを含む。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子と化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、化学的に結合させることができる。種々の実施形態では、前記エポキシ樹脂を前記アミン硬化剤と反応させる工程は、前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂のうちの1つの過剰量により、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程を含む。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程は、当量比で表される過剰量の前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂を用いる。例えば、前記架橋反応性ポリマー微粒子を形成させる工程は、エポキシ樹脂1に対して、1.35の当量重量比のアミン硬化剤(例えば、前記エポキシ樹脂に対して0.35過剰当量の反応性の前記アミン硬化剤など)を用いて表される、過剰量のアミン硬化剤を用いることができる。換言すれば、前記エポキシ樹脂の1に対して、1.35の当量重量比の前記アミン硬化剤は、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の1モルに対して、0.35過剰モルの前記アミン硬化剤中のアミン水素を提供する。
種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、前記架橋反応性ポリマー微粒子から分散媒体を除去する工程を含むこともできる。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が有する、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%にするために、化学的に結合させることができる。種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体を0.001重量%以下にするために、前記架橋反応性ポリマー微粒子から分散媒体を除去する溶媒を使用する工程を含む。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した0.001重量%以下の前記分散媒体の基準は、前記反応性ポリマー微粒子の総重量である。種々の実施形態では、前記方法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子を製造する工程において界面活性剤を使用しないことを、更に含むことができる。
本開示によるDGEBA+DAT系(a/e比=1.35)のDSCサーモグラムを提供する。
本開示によるDGEBA+DAT系(a/e比=1.35)のガラス転移温度対a/e比を提供する。
本開示によるDGEBA+IPDA系(a/e比=1.35)のDSCサーモグラムを提供する。
本開示によるDGEBA+IPDA系(a/e比=1.35)のガラス転移温度(Tg)対a/e比を提供する。
本開示による相分離温度(T=130℃)を提供する。
図4A−4Cは、本開示によるSECを提供するものであり、図4Aは、初期化合物(PPG−1000:D.E.R.331:及びDAT) c=3mg/ml、RI信号であり、図4Bは、最終残留液及びPPG−1000 c=5mg/ml、RI信号であり、図4Cは、残留液 c=5mg/ml及びDAT c=0.01mg/mlである。
本開示による、130℃、15時間後の1回目走査及び2回目走査の架橋反応性ポリマー微粒子のサーモグラムを提供する。
図6Aは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Bは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Cは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図6Dは、架橋反応性ポリマー微粒子のMDSC及びTGA−MS結果である(80℃で17時間)。
図7Aは、実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
図7Bは、実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
図8Aは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図8Bは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図9Aは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
図9Bは、実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
乾燥エポキシ粒子のMDSC結果(第一加熱)の重ね書きである。
乾燥した実施例14−18の第一加熱結果の重ね書きプロットである。
乾燥した実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
乾燥した実施例14−18の第二加熱結果の重ね書きプロットである。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
PPG、架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシマトリックスのTGA−MS結果の比較である。
80℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
80℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
100℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で5時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
120℃で17時間を超える時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子の低温における活性種の進化の同定である。
本開示に係る130℃における反応時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る反応時間の関数(直線:ガウスフィッティング曲線)として、粒子の粒度分布を提供するものである。
本開示に係るモノマー濃度の関数(T=130℃)として、曇点を提供するものである。
本開示に係る反応時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径及び収率の比較を提供するものである。
本開示に係るTg(第二回目走査、長い反応時間)対モノマー濃度を提供する。
本開示に係る異なるモノマー濃度の溶液から得られたSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る時間とモノマー濃度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る時間とモノマー濃度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る別の化学量論組成を有する架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係るモル比及び反応時間の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係るモル比及び反応時間の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る温度の関数(黒ドット:光透過率測定、白抜きどっと:目視)として、曇点を提供するものである。
本開示に係る異なる温度で反応した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る反応時間及び温度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係る反応時間及び温度の関数として、平均粒径を提供するものである。
本開示に係るPPG及びドデカン混合物中で合成された架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
図32A及び32Bは、本開示に係る溶媒混合物中の反応時間及びドデカンのwt%の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径を提供するものである。
本開示に係るIPDA系架橋反応性ポリマー微粒子の頂部:80℃で17時間、底部:80℃で24時間のサーモグラムを提供するものである。
本開示に係るIPDA系架橋反応性ポリマー微粒子の頂部:80℃で17時間、底部:80℃で24時間のサーモグラムを提供するものである。
本開示に係る80℃における反応時間:4.5時間及び24時間の関数として、架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真を提供するものである。
本開示に係る80℃における反応時間の関数として、粒径を提供するものである。
図36A及び36Bは、IPDAに基づく架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真、並びに本開示に係る反応温度及び時間の関数としての様々な粒径を提供するものである。
本開示の実施形態は、架橋反応性ポリマー微粒子を提供する。種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、硬化型エポキシ系において使用することができる。しかしながら、他の方法とは異なり、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、硬化した硬化型エポキシ系に完全に取り込まれるように、エポキシ樹脂及び/又は硬化型エポキシ系の硬化剤の少なくとも一方と反応することができる。換言すると、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、周囲の硬化型エポキシ系と個別の界面を形成するものではなく、硬化型エポキシ系の連続的部分として内部において化学的に一体化している。
種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、沈殿重合により合成した後、回収され、エポキシ樹脂及び硬化型エポキシ系硬化剤で分散させることができる。本明細書で提供されるような架橋反応性ポリマー微粒子を形成する際に用いられる反応条件は、微粒子が界面活性剤なしで形成されることを可能にする。加えて、架橋反応性ポリマー微粒子を形成する際に用いられる反応条件は、微粒子が、該微粒子の合成に用いられる分散剤や各種薬剤を実質的に含まないものとすることができる。このように、本開示の微粒子の表面は、界面活性剤又は反応混合物(例えば、本明細書で説明したようなポリエーテルなど)中に使用される有意な量の分散剤を含まない。寧ろ、本明細書で説明したように、微粒子を形成する際に使用される反応条件は、好ましくは、微粒子の表面にエポキシ反応性基及び/又はアミン反応性基のいずれかが存在するように用いることができる。
種々の実施形態では、微粒子の表面にエポキシ反応性基及び/又はアミン反応性基のいずれかが存在することは、硬化した硬化型エポキシ系に連続する形で化学的に一体化することを可能にする。このように、本開示の微粒子が、該微粒子のものと同一のエポキシ樹脂及び硬化剤を有する硬化型エポキシ系と使用されるときは、得られる硬化エポキシ系を、組成的に均一とすることができる。
また、本開示の微粒子は、得られる硬化型エポキシ系を形態学的に不均一とすることができる。例えば、架橋反応性ポリマー微粒子は、それらが化学的に一体化される硬化型エポキシ系の架橋密度とは異なる架橋密度を有することができる。また、架橋反応性ポリマー微粒子は、それらが化学的に一体化される硬化型エポキシ系の架橋密度とは異なる2種以上の架橋密度を有することも可能である。架橋反応性ポリマー微粒子が化学的に一体化される硬化型エポキシ系は、組成的に均一であるが、形態学的に及び位相幾何学的には不均一である。これは、架橋反応性ポリマー微粒子の反応組成物及び反応条件が硬化型エポキシ系のものから独立して制御することができるからである。
そして、「不均一性」は、組成的には均一性を維持しながら(例えば、微粒子又は微粒子の混合物が、前記硬化型エポキシ系の残りと異なる架橋密度を有することが可能な場合)、微粒子の添加された硬化型エポキシ系に付与することができる。この硬化型エポキシ系への架橋反応性ポリマー微粒子の一体化は、硬化型エポキシ系を、該硬化型エポキシ系の靭性の改善に役立ち得る形態学的に不均一なものとすることができる。そのような硬化型エポキシ系のための用途としては、風車翼や自動車のパネルなどを挙げることができる。
本明細書で説明したように、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、該微粒子の表面及び/又は微粒子内に存在する未反応のアミン及び/又はエポキシ基の作用によって、硬化型エポキシ系の網状構造内において完全に一体化(例えば、共有結合的に一体化)することができる。例えば、前記微粒子が配合成分により膨潤されており、完全に架橋されていない場合、それらは表面の活性基又はその容積内を介して、硬化型エポキシ系の網状構造と相互作用することができる。これらの微粒子は、強靭化剤として又は単に硬化型エポキシ系への添加剤として、用いることができる。前記微粒子及び前記硬化型エポキシ系の両方の組成が同一である場合は、識別可能な界面が存在することなく、完全に一体化することができる。
種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物は、分散媒体の存在下、少なくとも1種のエポキシ樹脂及び少なくとも1種のアミン硬化剤の反応生成物とすることができ、ここで、反応条件(特に、反応温度、反応時間、アミンに対するエポキシ比など)は、前記架橋反応性ポリマー微粒子を、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体をほとんど又は全く含まない非凝集形態で相分離させることが可能である。
前記架橋反応性ポリマー微粒子は、エポキシ樹脂を分散媒体中でアミン硬化剤と反応させることにより製造することができる。この反応は、攪拌やエポキシ樹脂、アミン硬化剤及び/又は分散媒体の選択に依存することなく進行することができ、反応がある程度進行すると、架橋反応性ポリマー微粒子の形成される相分離が起こる。架橋反応性ポリマー微粒子の構造、収率及び相分離に潜在的に影響を与えるパラメータ(特に、サイズ、多分散性、表面化学、及びTgなど)としては、溶解したモノマーの濃度(モノマーの重量%として表される)、アミン/エポキシのモル比、反応温度及び時間、分散媒体及びアミン硬化剤の化学構造が挙げられる。
さらに具体的には、本開示の実施形態は、17時間以下の反応時間、50℃〜120℃で、分散媒体中で反応させたエポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応生成物である架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を含み、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、その反応時間の間に、前記分散媒体から非凝集形態で別々に相分離する。種々の実施形態では、前記分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子の重量を基準として、0.001重量%以下の濃度で、架橋反応性ポリマー微粒子と結合することができる。このように前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した(例えば、吸収された)前記分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の総重量を基準として、前記架橋反応性ポリマー微粒子の0.001重量%以下である。
種々の実施形態では、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用せずに沈殿重合法により形成することができる。沈殿重合法は、最初に連続相の均一系として開始する重合方法であり、ここでモノマー(例えば、エポキシ樹脂とアミン硬化剤など)は、前記分散媒体に完全に可溶性であるが、初期に形成されたポリマー微粒子は不溶性となり、沈殿する。沈殿重合法は、前記架橋反応性ポリマー微粒子をミクロンサイズの範囲で形成することができる。本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を必要としない及び/又は使用しない沈殿重合法によって製造することができる。
驚くべきことに、本開示の微粒子は、比較的単分散である。さらに、いくつかの特定の場合(本明細書に記載される非溶媒の存在下など)では、サブミクロンの粒径を有する二峰性分布の粒子とすることも可能である。このように、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、前記微粒子の表面に界面活性剤がない硬化型エポキシ系によって、本明細書で説明したような界面を形成しにくい。種々の実施形態では、界面活性剤は架橋反応性ポリマー微粒子の製造に使用されていないため、前記微粒子の表面上に界面活性剤は存在しない。
沈殿重合法において、前記架橋反応性ポリマー微粒子の相分離を生じさせるための分散媒体は、該分散媒体の溶解パラメータがエポキシ樹脂と硬化剤モノマーで釣り合いさえすれば、純粋な溶媒でも溶媒の混合物でもよい。種々の実施形態では、多様な分散媒体を本開示の分散重合に用いることができる。例えば、分散媒体は、ポリエーテル(ポリプロピレングリコール(PPG)及び/又はポリイソブチレンエーテルなど)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリブチレンオキシド、脂肪族ケトン、シクロヘキサン及び/又はシクロヘキサノンなどの環状ケトン、ポリエーテル類及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、前記分散媒体は、ポリプロピレングリコールである。
種々の実施形態では、非溶媒もまた分散媒体に用いることができる。好適な非溶媒の例としては、これらに限定されないが、アルケン(脂肪族(ドデカン)又は環状のいずれでも)、芳香族アルケン、オルトフタル酸、アゼライン酸アルキル、他のアルキルでキャップされたエステル及びエーテル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施形態において、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、それぞれ5〜30重量%の前記分散媒体濃度を有するように、前記分散媒体中に前記エポキシ樹脂及びアミン硬化剤を溶解させることによって製造することができる。好ましくは、前記分散媒体中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、前記分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、10〜30重量%の分散媒体濃度を有する。最も好ましくは、前記分散媒体中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、前記分散媒体、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の総重量を基準として、10重量%の分散媒体濃度を有する。
前記エポキシ樹脂及び前記アミン硬化剤は、別々に又は一緒に、前記分散媒体中に溶解させることができる。この反応は、反応温度の手段によって調節することのできる反応速度で、進行させることができる。このプロセスの間、初期の透明な溶液は、分散媒体から沈殿する微粒子の分散体によって変化する。前記分散媒体中のポリマー粒子のサイズは、純粋な材料の選択、並びにそれらの分散媒体中の濃度、反応時間、及び反応温度によって影響され得る。
種々の実施形態では、反応温度は50℃〜170℃、好ましくは80℃〜120℃とすることができる。反応時間は、温度、アミン/エポキシのモル比、分散媒体、(特に)触媒の使用の関数であり、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。前記アミン硬化剤としてポリアミンを使用する場合は、例えば、重付加反応の速度は、アミンの塩基性により並びに立体要因により影響され得る。種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子の組成物を形成する反応時間は、17時間以下とすることができる。その他の好適な反応時間としては、これに限定されないが、5〜17時間という時間が挙げられる。好ましくは、前記反応時間は5時間以下とすることができる。またこれは、温度、アミン/エポキシのモル比、分散媒体、触媒の使用、並びに前記エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。
本開示の架橋反応性ポリマー微粒子を形成する、触媒を使用することも可能である。このような触媒は当技術分野において知られている。好適な触媒は、例えば、アミン、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アミノエチルピペラジン、例えばジカルボン酸などの有機酸、フェノール系化合物、イミダゾール及びその誘導体、並びに硝酸カルシウムである。
種々の実施形態では、本明細書に示すような反応温度、分散媒体及びアミン硬化剤の選択は、架橋反応性ポリマー微粒子の溶解度に影響を及ぼす。これらの選択は、相当量の分散媒体が、前記アミン硬化剤及び/又は前記エポキシ樹脂のいずれかと反応する機会を得る前に、前記分散媒体から前記架橋反応性ポリマー粒子の相分離を生じさせる。例えば、反応温度、アミン硬化剤及び分散媒体の溶解度パラメータの選択による微粒子の急速な相分離によって、前記分散媒体が前記エポキシ樹脂と反応する機会が大幅に減少し得る。換言すれば、架橋反応性ポリマー微粒子が所定の反応温度及び時間における溶解度が低いほど、前記架橋反応性ポリマー微粒子が、前記分散媒体と反応又は相互作用する可能性も低い。すべての前記分散媒体が、エポキシ基及び/又はアミン基と反応するわけではなく、ほとんどの分散媒体は全く反応しないことを理解されたい。
多種多様のエポキシ樹脂が、本開示の目的に有用である。エポキシ樹脂は、1分子当たり、平均的には1.5個以上、一般に2個以上の反応性1,2−エポキシ基を有する有機材料である。これらのエポキシ樹脂は、1分子当たり、平均的には最大6個、好ましくは最大4個、最も好ましくは最大3個の反応性1,2−エポキシ基を有する。これらのエポキシ樹脂は、モノマー又はポリマー、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式を用いることができ、所望であれば、エポキシ基に加えて、例えばヒドロキシル基、アルコキシル基又はハロゲン原子など、他の置換基で置換されていてもよい。
好適な例としては、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、アミンとエピハロヒドリン、硫黄含有化合物とエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、ポリイソシアネートと2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシド)との反応により得られるエポキシ樹脂やオレフィン系不飽和化合物のエポキシ化により得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
好ましいエポキシ樹脂は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン又はポリカルボン酸とエピハロヒドリンの反応生成物である。ポリフェノール、ポリアルコール、アミン、硫黄含有化合物、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートは、エピハロヒドリンと反応させることもできる。本明細書において有用なエポキシ樹脂の例示的な例は、H.Lee、K.Nevile著のエポキシ樹脂ハンドブック(1967年出版、マグローヒル(ニューヨーク)、付録4−1、4頁−56頁)に記載されており、参照により本明細書に援用される。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、有利には約170〜最大約3000、好ましくは約170〜最大約1500である。平均エポキシ当量は、1分子当たりのエポキシ基の数で割った樹脂の平均分子量である。この分子量は重量平均分子量である。
エポキシ樹脂の好ましい例としては、約170〜約200の平均エポキシ当量を有するビスフェノールA型のエポキシ樹脂である。そのような樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.331及びD.E.R.332エポキシ樹脂として、ダウ・ケミカル社から市販されている。更に好ましい例としては、D.E.R.667、D.E.R.669及びD.E.R.732などのエポキシ当量がより高い樹脂であり、これらはすべてダウ・ケミカル社から市販されている。
本開示の目的に有用な高分子のエポキシ樹脂の別の類いとしては、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。エポキシノボラック樹脂は、好ましくは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基性触媒の存在下、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンを、ホルムアルデヒド等のアルデヒドの樹脂の凝縮物と、フェノール等の一価のフェノール又は多価のフェノールと反応させることによって得ることができる。これらエポキシノボラック樹脂の性質及び調製に関する更なる詳細については、H.Lee、K.Nevile著、エポキシ樹脂ハンドブック(1967年、マグローヒル(ニューヨーク))から得ることができ、参照により本明細書に援用される。他の有用なエポキシノボラック樹脂としては、D.E.N.431、D.E.N.438及びD.E.N.439樹脂としてそれぞれダウ・ケミカル社から市販されているものが挙げられる。
種々の実施形態では、多様なアミン硬化剤を本開示の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いることができる。用いることのできるアミン硬化剤は、主に多官能であり、好ましくは二官能から六官能、特に二官能から五官能の第一級アミンである。このようなアミン硬化剤の例としては、これらに限定されないが、イソホロンジアミン(IPDA)、エチレンジアミン、テトラエチレンアミン及び2,4−ジアミノトルエン(DAT)ジアミンが挙げられる。二種類以上のアミン硬化剤の混合物を用いることもできる。アミンを大幅に過剰量のエポキシ樹脂と反応させた変性硬化剤は、アミン硬化剤の有力な候補となり得る。
種々の実施形態では、架橋反応性ポリマー微粒子組成物の反応生成物は、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のいずれかのモル量を過剰にして形成することができる。例えば、エポキシ樹脂に対して過剰モル量のアミン系硬化剤は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。換言すれば、エポキシ基に対して過剰モル量のアミン水素は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。或いは、アミンの水素原子に対して過剰モル量のエポキシ基は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成に用いることができる。種々の実施形態では、この過剰モル量は、エポキシ樹脂との反応に用いられるアミン硬化剤の当量比として表すことができる。例えば、エポキシに対するアミン、又はアミンに対するエポキシの当量比は、0.7〜1.35とすることができる。種々の実施形態では、この当量比を1とすることもできる。本明細書で使用する当量比は、アミンの水素原子(アミン硬化剤由来)のモルとエポキシ基(エポキシ樹脂由来)のモルを使用する。
本開示の更なる態様は、前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤とを本明細書で説明したように反応させることによって、前記架橋反応性ポリマー微粒子を製造する方法である。種々の実施形態では、前記架橋反応性ポリマー微粒子の製造方法は、前記エポキシ樹脂を、本明細書に示す温度(例えば、50℃〜120℃等)で、分散媒体中で前記アミン硬化剤と反応させる工程を含む。
本明細書で論じるように、前記エポキシ樹脂は、前記アミン硬化剤又は前記エポキシ樹脂のいずれかを過剰モル量で提供するように前記アミン硬化剤と混合させることができる。この混合物を、エポキシとアミンとの反応が所定の反応時間で進行する反応温度に、加熱することができる。種々の実施形態では、反応混合物の攪拌は必要ではない。
本明細書で説明したように、前記方法の反応時間は17時間以下とすることができる。この方法によって製造された前記架橋反応性ポリマー微粒子は、該架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体が0.001重量%以下である。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下で有するように、化学的に結合することができる。そして、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の総重量を基準として、0.001重量%以下の架橋反応性ポリマー微粒子の構成要素となる。これは、反応温度、反応時間、及び本明細書で示す分散剤の選択によって促進される転相(phase inversion)を介して、部分的に達成される。本明細書で論じるように、界面活性剤は、本開示の微粒子を形成する方法には使用されない。
種々の実施形態では、前記方法は、更に架橋反応性ポリマー微粒子と分散媒体とを相分離させる工程を含み得る。種々の実施形態では、前記微粒子は、前記架橋反応性ポリマー微粒子から前記分散媒体を除去し、前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合する分散媒体を0.001重量%以下の残留量となるように、1回又は複数回の洗浄工程を受けることもできる。前記架橋反応性ポリマー微粒子に結合した分散媒体は、架橋反応性ポリマー微粒子が、該架橋反応性ポリマー微粒子に化学的に結合した分散媒体を0.001重量%以下で有するように、化学的に結合することができる。これは、蒸留のみで可能なものよりも、前記架橋反応性ポリマー微粒子からより多くの分散媒体を除去することが望ましい場合には、特に好適である。例えば、前記微粒子を形成した後、前記分散媒体と前記微粒子とを(例えば、遠心分離後に上澄み液を移すことによって)分離させることができる。その後、前記微粒子は室温(例えば、23℃)で洗浄液中に再懸濁させることができる。その後、前記微粒子は、洗浄液から(例えば、遠心分離後の上澄みを移すことによって)分離させることができる。前記微粒子は複数回洗浄することができる。
種々の洗浄液が可能である。このような洗浄液の例としては、これらに限定されないが、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エンドキャップされたエーテル類、及びそれらの組合せが挙げられる。種々の実施形態では、本開示の架橋反応性ポリマー微粒子は、10nm〜10000nm、好ましくは50nm〜5000nm、最も好ましくは100〜3000nmの単峰性分布の数平均粒径を有することができる。種々の実施形態では、前記分散媒体がポリブチレンオキシドを含むとき、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、100〜300nmの第一数平均粒径と0.5〜10μmの第二数平均粒径である、第一粒径と第二粒径の二峰性の粒度分布を有することができる。
以下の実施例のセクションにおいてより詳細に示すように、本明細書で論じられる反応条件(例えば、反応温度、反応時間、特にアミンに対するエポキシ比など)は、架橋反応性ポリマー微粒子の少なくとも寸法、形態、熱特性及び表面特性に影響を及ぼす。さらに、本明細書で論じているように、前記微粒子の表面の化学的性質も、反応条件、アミン硬化剤及びエポキシ樹脂のモル比に依存する。
以下の実施例は本開示を例示するものである。特に断らない限り、すべての部及び%は、重量部及び重量%である。この実施例は、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例
以下の実施例は、本開示の範囲を例示するために提供するが、これに限定されない。実施例は、本開示の方法及び架橋反応性ポリマー微粒子の具体的な実施形態を提供する。本明細書で提供されるような架橋反応性ポリマー微粒子は、特に、硬化型エポキシ系(エポキシ配合物)の不均一性を増加させる能力を提供することができる。
材料
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA、D.E.R.331TM、ダウ・ケミカル社)。
2,4−ジアミノトルエン(DAT)、芳香族硬化剤(アルドリッチ、そのまま使用)。
イソホロンジアミン(IPDA)、環状脂肪族硬化剤(アルドリッチ、そのまま使用)。
ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、2つの異なる分子量(PPG−1000及びPPG−3500)、溶媒(アルドリッチ、そのまま使用)。
ドデカン、溶媒(アルドリッチ、そのまま使用)。
表1に提供されるような異なる分子量及び末端基のポリブチレンオキシド(PBO)(アルドリッチ、そのまま使用)。
アセトン(アルドリッチ、そのまま使用)。
テトラヒドロフラン(シグマアルドリッチ、分析グレード、そのまま使用)。
実施例1−18、架橋反応性ポリマー微粒子のDGEBA及びDATに基づく調製
表1は、本明細書に論じられるように、DGEBAとDATとの反応に基づいた実施例1−18の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いた実験条件を示すものである。実施例1−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用しない分散重合法によって製造した。ポリプロピレングリコール(PPG)は、単独又は追加の非溶媒(ドデカン)とともに、分散媒体として使用した。
実施例1−18の各々では、表1に示すようにDGEBA及びDATを、それぞれT=40℃、20分及びT=40℃、30分で、別々に溶媒に溶解させ、表1に示すようなモノマー濃度を有する均一のモノマー溶液を得た。前記DGEBA溶液と前記DAT溶液を混合して、表1に示すようにエポキシに対するアミンのモル比が異なるように調製した。予め加熱したオーブン(表1に示す80℃〜160℃の温度)内に混合物を載置し、撹拌せずに、周期的サンプリングをしながら、表1に示す反応時間で、エポキシとアミンの反応を進行させた。
単位分当たり4000回転(4000rpms)で20分(min)、遠心分離することにより、前記架橋反応性ポリマー微粒子の各サンプルを溶媒から分離させ、ほとんどの溶媒を除去した。室温(23℃)で、過剰量のアセトンにより前記架橋反応性ポリマー微粒子を洗浄し、再び遠心分離した。室温(23℃)で真空により前記架橋反応性ポリマー微粒子を乾燥した。実験条件の詳細は表1に報告している。
基準架橋反応性ポリマー微粒子(表1の「基準A」を参照。)は、1.35 a/e比のアミン/エポキシ比、10重量%(wt%)のモノマー濃度、PPG−1000溶媒、反応温度:130℃及び反応時間:15時間である。
実施例19−25、架橋反応性ポリマー微粒子のDGEBA及びIPDAに基づく調製
表2は、本明細書に論じられるように、DGEBAとIPDAの反応に基づいた実施例19−25の架橋反応性ポリマー微粒子の調製に用いた実験条件を示すものである。実施例19−25の架橋反応性ポリマー微粒子は、界面活性剤を使用しない分散重合法により製造した。PPGは、単独で又は非溶媒(ドデカン)とともに、分散媒として使用した。
実施例19−25の各々では、表2に示すようにDGEBA及びIPDAを、それぞれT=40℃、20分及びT=80℃、30分で、別々に溶媒に溶解させ、表2に示すようなモノマー濃度を有する均一の溶液を得た。前記DGEBA溶液と前記IPDA溶液を混合して、表2に示すようにアミン/エポキシ比が異なるように調製した。予め加熱したオーブン(表2に示す80℃〜130℃の温度)内に混合物を載置し、撹拌せずに、周期的サンプリングをしながら、表2に示す反応時間でエポキシとアミンの反応を進行させた。
上述の実施例1−18のように、前記架橋反応性ポリマー微粒子の各サンプルを単離した。実験条件の詳細は表2に報告している。基準架橋反応性ポリマー微粒子(表2の「基準B」を参照。)は、1.35 a/e比のアミン/エポキシモル比、10重量%(wt%)のモノマー濃度、PPG−1000溶媒、反応温度:80℃及び反応時間:17時間である。
バルクなエポキシ網目構造体(Bulk Epoxy Networks)
DGEBA及びDAT(エポキシ比較例A)と、DGEBA及びIPDA(エポキシ比較例B)を用いて形成されるバルクなエポキシ網目構造体は、130℃に予め加熱したオーブンで4時間、更に180℃に予め加熱したオーブンで4時間という硬化サイクルを用いて、異なるアミン/エポキシのモル比で合成した。DSCを使用して、前記エポキシ比較例A及びBのそれぞれの反応のエンタルピー及びガラス転移温度を測定した。これらの値は、実施例1−25で得られた値との比較に用いた。エポキシ比較例A及びBは、本明細書に示すような元素分析やXPSなどの他のデータの検証にも使用した。
特性評価方法
光透過率測定(曇点測定)
光透過率は、架橋反応性ポリマー微粒子の合成中の溶液により測定した。前記光透過率は、電気加熱機器、加熱機器の温度制御装置、前記電気加熱機器に取り付けられ、分析用サンプルが充填されたガラス試験管、光源及びセンサ(Zeiss KL 1500 LCD)からなる装置と、データ(例えば、光強度)取得用のコンピュータとを使用して測定した。
曇点は、上述の光透過率測定装置で測定した。この技術では、サンプルを透過する光の強度は、温度の関数として又は時間の関数として記録される。サンプルが透明から曇った/不透明となった(又はその逆となった)とき、前記サンプルを透過した光の強度は、低下(又はそれぞれ増大)を示す。この低下の始まりは曇点と呼ばれ、それは0.1μmのオーダーの粒径を有する粒子(相分離法による)の外形に対応する。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SECは、反応終了時における反応溶液中のDGEBA、DAT及びPPGモノマーの分離及び含有量の計算に使用した。異なる濃度を用いて事前に明らかにされた各化合物をキャリブレーションとした。使用した溶出媒体はテトラヒドロフラン(THF)であり、流速は1ml/minであり、そして分離用に3列カラム(Waters HR0.5, HR1 and HR2)を使用し、検出は、屈折率検出器及びUV−Vis検出器(λ=254nm)を使用した。
変調示差走査熱量測定(MDSC)による熱的性質実験
MDSC実験は、冷蔵された冷却系を備えたTAインスツルメンツ Q2000 型 DSC装置で実施した。データは、Qシリーズ(バージョン2.7.0.380)ソフトウェアパッケージ用Thermal Advantageを使用して収集し、Universal Analysis 2000 ソフトウェアパッケージのバージョン4.4Aを使用して圧縮した。熱量計は、10℃/minの走査速度で、アダマンタン(Mp=−64.53℃)、n−オクタデカン(Mp=28.24℃)、インジウム(Mp=156.60℃)及び亜鉛(Mp=419.47℃)を用いて温度の校正を実施した。エンタルピー信号は、インジウム(ΔΗ=28.71 J/g)の分析により校正した。凡そ7mgのサンプルを、メトラー分析天秤を用いて正確に秤量した。軽量(凡そ25mg)のアルミパンを、架橋反応性ポリマー微粒子の実験に用いた。前記パンは、サンプル/パンの接触を改善するように圧着されるが、密封状態は気密ではない。架橋反応性ポリマー微粒子の第二の分析の前に、サンプルを真空オーブン中(圧力:20mbar)、40℃で約64時間乾燥させた。密封蓋付きのT0パンを、比較のエポキシ(DER 331+IPDA)マトリックスの硬化を調査するために用いた。架橋反応性ポリマー微粒子サンプルについては、同じ温度プロファイルを用いた。
質量分析付き熱重量分析(TGA−MS)実験
TGA−MS実験は、Balzer Thermostar GSD 300 MS付きのTAインスツルメンツQ5000型TGAを用いて実施した。データは、Qシリーズ(バージョン2.7.0.380)ソフトウェアパッケージ用Thermal Advantageを使用して収集し、TGAデータ用のUniversal Analysis 2000 ソフトウェアパッケージのバージョン4.4A及びMSデータ用のQuadstar 422ソフトウェア(バージョン6.0)を使用して圧縮した。MSデータは、ASCII形式でエクスポートし、Universal Analysis パッケージで更に圧縮した。サンプルをPtパン上に載せ、校正されたTGA天秤により正確に秤量した。
示差走査熱量測定(DSC)
反応の残差エンタルピー(もしあれば)及び架橋反応性ポリマー微粒子のガラス転移温度を得るために、乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子粉末を、DSCを用いて分析した。DSC測定は、Q20(TA)及びMettler DSC 30 (Mettler Toledo社)熱量計を用いて実施した。−60℃から250℃までの第一加熱勾配(10℃/min)の後に、0℃までの冷却段階及び200℃までの第二加熱勾配が続いている。すべての試験は、ヘリウム(TA Q20 熱量計)又はアルゴン(Mettler DSC 30 熱量計)雰囲気下で実施した。データは、Universal Analysis 2000 v.4.2E(Q20)及びSTARe v.8.10(Mettler DSC 30)のソフトウェアを使用することにより分析した。DSCは、前記バルクな網目構造体の特性評価にも使用した。
走査型電子顕微鏡(SEM)
SEMは、架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジーを調査するため、また、そのサイズを評価するために実施した。乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子を、Philips XL20 SEMにより観察した。サンプルの調製は次のとおりである:架橋反応性ポリマー微粒子粉末を導電性グラファイト接着剤で覆われた金属製の台(stub)上に置き、スパッタリングによりコーティングした。顕微鏡写真は、通常の15kVの電圧を用いて、複数の倍率で収集した。そのSEM顕微鏡写真を粒径分布の測定に用いた。粒径分布は、架橋反応性ポリマー微粒子の非荷重測定手順を用いて算出した。この事実は、例え、粒径分布の尾が小さい寸法で、その系の一部の小さい重さ(又は体積)を表すとしても、前記粒径分布の二つの尾は、同じ重さを有するということを実質的に意味する。測定は、オープンソースのソフトウェアImageJの(http://rsb.info.nih.gov/ijから入手できるバージョン1.42q)を使用して実施し、データが統計的に有意となるように300個以上の粒子の各サンプルを測定した。
結果と考察
実施例1−25は、狭い粒度分布と非凝集の架橋反応性ポリマー微粒子が得られた。その粒径は、サブミクロンの粒径を有する二峰性分布が観察された、いくつかの特殊な場合(非溶媒の存在など)もあるが、μmサイズの範囲であった。反応に用いられる反応条件は、架橋反応性ポリマー微粒子の大きさ、収率及び相分離に影響を及ぼす。したがって、有効なアミン/エポキシ比、反応温度及び反応時間は、架橋反応性ポリマー微粒子合成のパラメータとして考慮した。PPG製剤中のDAT/DER 331TMは、反応パラメータと架橋反応性ポリマー微粒子の特性との間のいくつかの関係が成立するように使用した。これらの関係としては、エポキシ/アミン比の増大や架橋反応性ポリマー微粒子の粒径の減少として観察されるものが挙げられる。反応時間が増加するにつれて、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径が増大する。反応温度が上昇するにつれて、反応速度が上昇し、架橋反応性ポリマー微粒子は小さい粒径を有する。最後に、モノマー含有量が増加するにつれて、多分散性は比較的一定のまま、架橋反応性ポリマー微粒子の粒径が増大する。
また、架橋反応性ポリマー微粒子を形成するのに使用されるモノマー(例えば、エポキシ樹脂とジアミンなど)の重量パーセント(wt%)は、反応収率に影響を及ぼす。50wt%のモノマーを装填した場合は、前記架橋反応性ポリマー微粒子は、反応が進行したように素早く相分離し、凝集した。したがって、十分な高収率を確保し、粒子の凝集をより防止するために10wt%のモノマー装填を採用した。PPGにおける反応収率は、90%を超えていた(SECCにより測定)。
基準架橋反応性ポリマー微粒子
基準A(DGEBA+DAT、a/e比=1.35)で得られたDSCのサーモグラムの例を、図1Aに示す。反応前の基準Aのエポキシ化合物のガラス転移温度(Tg0)及び反応の発熱ピークが観察される。このピークは、約160℃における最大値と、Δ=378J/gの反応エンタルピーを有する。a/e比の関数として(硬化したサンプルの)Tg値の結果を図1Bに示す。a/e比=1でTg=157℃の最大値の傾向が得られた。このプロットは、実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子のTg値を比較するのに有用である。
同様の実験を基準B(表1参照、DGEBA+IPDA、a/e比=1.35)についても実施した。図2Aは、より低い温度におけるIPDAの反応を示すものであり、該温度は、発熱ピークの最大値が約100℃であり、反応エンタルピーがΔH=390J/gに等しい。Tg対a/e比は、a/e比=1でTgの最大値となる等の図2Bに示すような傾向となる。
基準Aの特性
a/e=1.35(すなわち、アミンが過剰の)モル比を有する基準Aの架橋反応性ポリマー微粒子は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の表面にアミノ基が存在し易いと予想された。溶媒は、DATを使用して合理的な反応時間となるように高沸点(反応温度は130℃であった)のPPG−100を用い、モノマー濃度は10wt%であった。前記架橋反応性ポリマー微粒子の構造を、複数の技術的手段を用いて調査した。
基準Aの合成
最初は無色透明の均一モノマー溶液は、反応の進行中に濁り、僅かに黄色味がかった色に変色した。上述のように、遠心分離、洗浄及び乾燥後に、黄色味がかった/茶色の粉状体が得られた。
4時間未満の反応で生じる相分離について、相分離速度のより正確な値を得るために、前記溶液を透過する光の透過率を130℃においてモニターし、相分離が187分(3.1時間)後に生じる所与の反応条件のためのプロットを図3に示す。
また、残留溶液(前記残留溶液をTHF(3mg/ml及び5mg/mlで2回)により希釈)は、SECによって分析した。初期の化合物(DGEBA/DAT/PPG−1000)及び反応の最終生成物(反応時間=15時間)について得られたクロマトグラムの典型例を図4に示す。PPG−1000、DGEBA及びDATの溶出量は、それぞれVe=20.3ml、24.7ml及び26.7mlである(図4A)。すべての化合物は非常によく分離する。図4Bにおいて、PPG−1000に対応するメインピーク(RI信号)と、未反応のDGEBA(n=0)に対応する非常に小さなピークが観察される。26.7mlにおけるDATに対応するピークはないが、これは屈折率検出器の検出限界といえる非常に少ない量ということである。また、254nmにおけるUV信号(図4C)は、DEGBA及びDATに対して非常に感度がよいため(芳香環の存在に起因する)、反応最終生成物の検出に用いた。DATのピークは、オリゴマーの存在と同様に観察される。
各成分に対して設けられた検量線から、残留溶液中に存在するDGEBAとDATの量を推定することができる。前記溶液中に、(3回の試験の平均値で)初期のDGEBAの12%及び初期のDATの2%が残存しているため、エポキシ+アミンの反応は86%の収率となる(前記溶液中に残存するオリゴマーを無視した場合)。SECは、エポキシ−アミンの前記架橋反応性ポリマー微粒子への転化のみが考慮されることから、SECによる収率は、重量法により得られる値よりも僅かに低い。その差が、基準Aの前記架橋反応性ポリマー微粒子中のPPGの存在によるものなのか、基準Aの架橋反応性ポリマー微粒子の沈殿によるものなのかは特定できなかった。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性
熱的性質
乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子(130℃での反応の15時間後に得られた実施例1)のDSC実験から温度の関数として得られる熱流束の曲線の例を図5に示す。第一加熱走査のサーモグラフィはかなり複雑であり、50℃〜100℃の温度範囲内に吸熱ピークがあり、次いでガラス転移が観察される。前記吸熱ピークは、残留アセトン(洗浄工程に使用される)に関連しており、アセトンの蒸発の比熱、すなわち、538.9J/gを用いて、前記アセトンの残留量が5〜7wt%の範囲内にあると推定した。第二加熱走査は147℃で明確なガラス転移を示し、前記第一の走査の間に観察されたものと非常に類似している。これらの説明は、すべての実施例1−12に有効であり、第一走査と第二走査との間に有意差はない。架橋反応性ポリマー微粒子が、a/e比=1.35の供給混合物の初期と同様の化学量論組成を有する場合は、Tgは137℃と等しくなる筈である。得られる値は、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成がDGEBA及びDATの製造のみであるとしても(図1参照)1.2に近い値にならざるを得ないので、より高くなる。しかしながら、収率、TGA及びXPSから得られた値は、実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子内にPPG−1000が存在することを示唆していた。次のような仮説を立てることができる。(1)PPGが前記微粒子の表面に吸着又は反応し、その量が少なく(数回の洗浄処理のため)、また、(2)PPGは、Tgの減少のため(ほんの僅かなポリマーがPMMA等のエポキシ網状体と混和する)、混和性ポリマーとして前記架橋反応性ポリマー微粒子内には存在し得ず、相分離したドメインの前記微粒子の内側に存在し得る。
MDSC実験:
実施例13−18の架橋反応性ポリマーの挙動を図6−10に示す。第一加熱工程において、各実施例13−18は本質的に非対称の(すなわち、MDSCの動的信号に当たる)大きな吸熱ピークを有していた。このピークの大きさ及び幅は、蒸発過程を示すものである。以下の表5は、DSC実験中の実施例13−18による重量損失(weight loss)を一覧にしたものである。重量損失は、約5.5wt%〜最大9wt%までの範囲である。それは、相当量の溶媒(洗浄工程によるアセトン及びTHF)が、依然として、前記架橋反応性ポリマー微粒子内に存在することを表している。そして、真空オーブンによる乾燥工程を行った。これらの重量損失のレベルを同じサンプルについて実施したTGA−MS分析により確認した。
前記第一加熱工程におけるTgは、100℃において5時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例15)の約50℃から、80℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14)の約75℃に及び、最終的には、残りの架橋反応性微粒子(実施例13、16−18)の約100℃−105℃に及ぶ。Tgの転移の形状は、特に転移の高温側において重要である。これは、材料の更なる反応を示している可能性があり、又は溶媒の同時損失に起因している可能性もある。残りの発熱硬化過程は、溶媒の大きな蒸発ピークにより観察できない。さらに、残りの発熱ピークが、弱く、幅広い範囲に亘って広がっているような場合は、例え、溶媒の蒸発による干渉がなくても、見えない可能性がある。
第二加熱工程におけるTgの転移は、第一加熱工程の結果と比べると、より「普通」なものを表している(図6〜図10を参照)。通常のエンタルピー関連ピーク(約2J/g)は存在しているが存在しているだけで、大きな吸熱ピークは存在しない。前記転移は、非常に高温側にシフトしており、ほとんどの場合において非常に鋭くなっている(すなわち、狭い温度範囲で転移している)。ここで、前記Tgは、100℃において5時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例15)の約110℃から、80℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14)の約115℃に及び、さらに100℃及び120℃において17時間及び5時間で製造された各架橋反応性ポリマー微粒子の120℃に及び、最終的には、120℃において17時間で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例18)の約130℃に及ぶ。
前記Tgの転移の幅は、80℃で製造された架橋反応性ポリマー微粒子(実施例13及び14)において最も狭い。これらの実施例は、架橋された系の代わりに、より標準的な熱可塑性材料のようなTgを有している。さらに、これら実施例13及び14のTgの転移は、標準的な熱可塑性材料とほぼ同程度に狭かった。架橋密度は、高い温度で製造された材料(100℃において5時間のものを除く)よりも低いが、網状体の均一性(Tgの転移の幅により示される)は優れている。反応温度及び時間が増加するにつれて、Tgの転移の幅も増加する。これは、多くの異種のポリマー網状体とも一致している。
TGA及びMDSCの両方によって確認されるように、実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、揮発性物質を有意なレベル(5〜9wt%)で含んでいる。MDSC実験後においても、TGA及び重量損失によって同様のレベルが測定された。この重量損失は、残留ポリプロピレングリコール(PPG)の洗浄に使用した残留溶媒(THF、アセトン)の放出に由来するものである。いずれかの架橋反応性ポリマー微粒子中に残留するPPGの存在についての明確な証拠はなかった。なお、そのレベルは、約0.1重量%(wt%)又は1000ppm未満であると推定される。
前記残留溶媒は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の可塑剤として作用する。第一加熱工程中に測定されたTgは、第二加熱工程中に測定されたものよりもはるかに低く、幅広い。部分的に乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子の初期Tgは、受け入れられた架橋反応性ポリマー微粒子のものよりも高いが、依然として溶媒を完全に除去した後に測定されたものよりも相当低い。最終的なTgは、反応温度及び時間の関数である。80℃の反応温度における架橋反応性ポリマー微粒子の最終的なTgは約115℃であり、これが100℃の反応において約122℃にシフトし、更に最終的には、約120℃の反応において約130℃にシフトする。所定温度における長い反応時間は、Tgの小さな増加とより広範な転移をもたらす。最高温度及び最長反応時間における架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、エポキシ比較例よりも僅かに高い。前記架橋反応性ポリマー微粒子及びエポキシ比較例は、非常によく似た熱劣化挙動を呈する。進行した活性種は、架橋反応性ポリマー微粒子とエポキシ比較例の化学組成が同じであることを示すことと本質的に同じである。図6A−9Bは、実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子のMDSCとTGA−MS測定結果を示すものである。
乾燥工程後の架橋反応性ポリマー微粒子の分析
4つの乾燥した架橋反応性ポリマー微粒子(実施例14−18)のMDSC結果を図10−19Bに図示し、表7及び8に纏めた。実施例14−18が依然として揮発性物質を含んでいることは、第一加熱工程の結果から明らかである。すなわち、40℃で約64時間の真空乾燥工程では、溶媒のすべてが取り除かれるというわけではない。分析前後に測定された実施例14−18の重量から(表7参照)、実施例14−18のいずれも依然として約2wt%の損失があることが観察された。この低温の重量損失は、受け入れられた架橋反応性ポリマー微粒子よりも高温側にシフトし、Tgの測定結果も高温側にシフトし、さらに転移はより狭い温度範囲で生じている。しかし、第二加熱工程で測定された最終的なTgは、以前測定したものと大体同じである。
反応温度が増加するにつれて、架橋反応性ポリマー微粒子の最終的なTgも増加している。また、所定温度における長い反応時間も、前記最終的なTgを増加させるとともに、Tgの転移を広範にしている。
架橋反応性ポリマー微粒子のTGA−MS
TGA−MS実験を行う主な理由は、任意のPPGが依然として前記架橋反応性ポリマー微粒子内に存在しているかどうかを判定するためであった。PPGは、架橋反応性ポリマー微粒子を形成するための重合中に溶媒として使用されており、最終生成物はTHF及びアセトンで数回洗浄したものの、ある程度のPPGが依然として存在している可能性がある。PPGの有無を調べるために、異なる架橋反応性微粒子を、純粋PPG及び自己硬化型エポキシ樹脂と一緒に分析した。これら後者の二つの材料は、参照データを提供するために分析した。
PPG、エポキシマトリックス及び実施例17の架橋反応性ポリマー微粒子のMS信号のいくつかの重ね書きプロットを図12A−12B及び13A−13Bに示す。すべての比較対象サンプルは、MS信号をそのまま定量比較できるように、同様の開始重量(約5.5mg)とした。MS信号の選択は、純粋PPG材料における信号の強度及び/又は形状に基づいて行った。
図12A及び12Bにおいて、M/E=15及び17のMS信号は、PPG、エポキシマトリックス及び実施例17の架橋反応性ポリマー微粒子を比較したものである。M/E=15の信号はすべての材料で非常に強い。架橋反応性ポリマー微粒子は、残留溶媒(THF及びアセトン)の損失に由来する低温におけるピークが検出されているのに対し、他の二つの材料は200−250℃まで、このm/e値においていかなる有意な信号も検出されていない。前記架橋反応性ポリマー微粒子における信号の強度及び形状が、エポキシマトリックスのそれと非常に類似しているは明らかである。架橋反応性ポリマー微粒子における信号の強度は、前記エポキシマトリックスと比べると同じか又は弱い。任意の有意な量のPPGが、依然として架橋反応性ポリマー粒子内に存在する場合、この場合の信号の強度は、架橋反応性ポリマー微粒子に対してより強くならなければならない。m/e=17(水)のMS信号は、PPG信号の特徴的な形状を有し、これは、エポキシマトリックス及び架橋反応性ポリマー微粒子が観察されていない。また、架橋反応性ポリマー微粒子から出た任意の有意量のPPGが存在する証拠はない。
図13A及び13Bにおいてm/e=31と45のMS信号を3つの材料で比較した。これらの信号には、特に強いPPG材料の信号と、比較的弱いエポキシマトリックス及び架橋反応性ポリマー微粒子の信号がある。両方の場合において、架橋反応性ポリマー微粒子の信号は、エポキシマトリックスの信号よりも僅かに強い。これは、低レベルのPPGが依然として架橋反応性ポリマー微粒子内に存在することを意味する。この架橋反応性ポリマー微粒子の僅かに強い信号が、実際にいくらかのPPGが依然として前記粒子に付随していることを意味しているとしても、その量は約0.1wt%(すなわち、1000ppm)以下と推定される。
実施例14−18の架橋反応性ポリマー微粒子は、150℃以下の温度における有意量の重量(5−8wt%)を失っている。これらの重量損失の値は、MDSC実験中に損失した重量から求められるものと一致している。サンプルをTHF及びアセトンで洗浄したため、これら溶媒の一方又は両方がこの重量損失を生じさせていると考えるのが論理的である。架橋反応ポリマー微粒子のm/e=42、43、59及び72の選択されたMS信号を図14A−18Bに示す。MS基準スペクトルの試験では、低温において、m/e=42及び72のMS信号は主にTHFに由来し、m/e=43及び58のMS信号は主にアセトンに由来する。
架橋反応性ポリマー微粒子の粒子形状及び粒径分布
実施例1−12の架橋反応性ポリマー微粒子粉末のSEM顕微鏡写真を、架橋反応性ポリマー微粒子の形状及び寸法を評価するために撮影した。図19は、反応時間の粒径に係る効果が可視である場合の架橋反応性ポリマー微粒子の画像を示す。すべての架橋反応性ポリマー微粒子は、球状形状を有していた。SEM顕微鏡写真は、粒子径分布を決定するために用いた。図20は粒子径分布を示し、図22は、反応時間の関数としての架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径を示す。架橋反応ポリマー微粒子の寸法は、単峰性の狭いガウス分布に従う。架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法は、粒径の安定値に達したときに、反応時間の4時間後の2.02±0.13μmから、15時間後の3.9±0.3μmにまで徐々に増加する。0.13−0.3μmの範囲の標準偏差及び他分散性指数は、1.01より低く、非常に狭い分布を確認した。
モノマー濃度の影響
同じ溶媒(PPG−1000)中のモノマー濃度(DGEBA+DAT、a/e比=1.35)の実施例1〜12の架橋反応性ポリマー微粒子の合成及び特性への影響を調べた。
図21において、濃度が5wt%から30wt%に変化するにつれて、曇点が380分から41分となっているように、前記曇点は、モノマー濃度が増加するにつれて明確に減少する。この予期された効果は、第一に、前記濃度が増加するにつれてエポキシ/アミン反応が速く進行すること、第二に、高いモノマー濃度が、低い転化率における相分離を引き起こす相図の領域に対応することに起因している。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
図23は、モノマー濃度がTgに強い影響を及ぼすこと示しており、モノマー濃度が増加するにつれて、1wt%のモノマー濃度における158℃から、30wt%のモノマー濃度における136℃(最長反応時間後、2回目のDSC走査中に得られた値)に、Tgは減少する。これは有意な差である。この傾向は、1回目のDSC走査中(合成終了時の値である)又は2回目の走査(完全硬化後に到達できる粒子の最大値を表す)に測定されたTgでも同じである。前記架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成は1に近いため、高いTgは高い架橋密度を意味する。PPGは(混和する場合)可塑化作用を有するので、この高いTgは、粒子内の混和性ポリマーとしてのPPGの存在を許容しない。低いTgは低い架橋密度を意味し、これには、とりわけ不完全な硬化、1から遠い化学量論組成及び/又はPPGの可塑化作用などのいくつかの理由がある。
SEM顕微鏡写真でμmサイズの球状粒子の形成を確認した。図24は、異なるモノマー含量を有する溶液から製造した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM顕微鏡写真のいくつかの例を示す。いくつかの凝集体が、1wt%のモノマー濃度から調製した架橋反応性ポリマー微粒子のSEM画像で観察される。SEM顕微鏡写真を用いて、架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径(標準偏差)を算出し、図25A及び25Bに示した。
架橋反応性ポリマー微粒子の収率及び曇点と同様に、異なるモノマー含有量から、異なる粒子成長速度及び安定状態における異なる架橋反応性ポリマー微粒子の粒径の平均値を得た。この値はモノマー含量とともにほぼ直線的に増加し、長い反応時間では、粒径が、1wt%の約1μmから30wt%の約6μmまで増加する。最小粒子(1μm)は最高のTg(158℃)を有するが、最も低収率である。非常に狭い分布(1.002−1.03)の範囲内のままであっても、濃度が増加するにつれて多分散性の増加が観察された。標準偏差は、100時間後の1wt%の場合の0.7μmから反応の5時間後の30wt%の場合の1μmまで増加した。
モル比の影響
前記架橋反応性ポリマー微粒子の有効なエポキシに対するアミン比(a/e比)は、供給材料中のそれとは異なり、a/e比=1.35であった。以下は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の形成及び特性への供給材料中の多様なモル比の影響について示す。4つのa/e比、0.7(エポキシ過剰)、1(同数のアミン及びエポキシ)、1.35及び2(アミン過剰)について調査した。
合成
アミン/エポキシ比が増加するにつれて相分離の時間の減少があり、a/e比=0.7の267分からa/e比=2の159分への減少があった。この挙動は、オリゴマー構造に関連している可能性があり、さらにそのオリゴマー構造は、モル比に強く依存し、a/e比>1において形成されるオリゴマーは、得られるものよりも残存する−NH基を伴ったより直線状な構造を有し、a/e比<1においては、エポキシ基がぶら下がった分岐構造を有している。これらのオリゴマーは同じ化学構造を有していないので、それらは異なる溶解度パラメータを有し、結果的に異なる相図のために、それらは同時に分離しない。この挙動もまた、架橋速度に関連している可能性があり、相対的なモノマー組成によって影響を受ける。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
反応時間(5時間以降できるだけ早い時間)及び1回目のDSC走査又は2回目のDSC走査中に得られたTg値は、所定のa/e比に依存しているようにはみえない。それどころか、モル比の影響はあるものの、予期したほどではない。特に、a/e比=1で最大Tgである。初期の混合物におけるa/e比が増加するにつれて、Tgの減少が観察される。これらの値は、表9に報告している。
a/e比=1及び1.35における、初期混合物中のa/e比と架橋反応性ポリマー微粒子のa/e比との差は小さい。しかし、この差は、a/e比=0.7及び2で大きくなる。両方の場合において、前記架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、バルクサンプル(エポキシ比較例A)のそれよりも高い。前記架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、幅広い範囲のa/e比(0.7〜2)を使用していなかったとしても、架橋反応性ポリマー微粒子のa/e比は、非常に狭い範囲(1〜1.44)となる。得られた高いTg値は、前記架橋反応性ポリマー微粒子内の混和性ポリマーとしてのPPGを有する可能性を排斥する。
図26に示すSEM顕微鏡写真により、凝集が形成されることなく、球状微粒子が形成されていることが確認できる。顕微鏡写真は、異なるa/e比の反応時間(図27A及び27B)の関数としての平均粒径の計算に利用した。前記粒径は反応時間に伴って増加し、その後、反応の10時間後に一定の値に達する。モル比は、前記架橋反応性ポリマー微粒子が到達するサイズに小さい影響を与え、a/e比=2及び1.35で3.6/3.9μmの最大粒子が得られ、a/e比=0.7及び1で2.9/3.2μmの最小粒子が得られた。
反応温度の影響
前記架橋反応性ポリマー微粒子の反応速度に影響を与えるパラメータは、反応温度である。分散重合による架橋反応性ポリマー微粒子の調製においては、供給材料溶液中a/e比=1.35のモル比及び10wt%のモノマー濃度で、80℃から160℃まで変化させた。
合成
エポキシ−アミン反応は温度によって活性化され、温度の増加に伴って相分離に掛かる時間が減少することが観察された。相分離により転化が急速に起こり、曇点が、100℃の1時間から63℃の11.5時間にシフトする。低い温度で、曇点を溶液の光学観察によって概略的に推定すると、80℃で48時間及び50℃で144時間に近い値となった(図28)。前記溶液を6か月間、室温で放置すると、30〜60日で溶液は不透明になり、90日後には、沈殿した架橋反応性ポリマー微粒子が観察された。完全な転化は、反応温度が高い(160℃及び130℃)ときにのみ達成した。同じ動的理由で、所定の反応時間における温度が減少すると、低収率に繋がるものと予想される。反応停止後に、DGEBA及びDATの残留量のために、SEMによって残留溶液を分析した。実際に、反応を80、100又は130℃で行ったときの残留モノマーは、例えば、100℃での反応の場合における初期供給材料のモノマーの未反応のまま残ったDGEBAが10〜12wt%、DATが2〜3wt%程度、検出された。高い温度では、残留溶液中にSECによって存在が確認されたオリゴマーは、ほとんどなかった。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
所定の温度では、反応時間のTgに対する影響は強くない(反応の1.5時間後の最初の点は140℃近くのTgを有するが、5時間後に安定値に達する、160℃を除く)。1回目及び2回目の走査中に記録された値は、表10に示しており、まさに合成後(1回目の走査)又はDSCのオーブンで硬化サイクル後(2回目の走査)で得られた値は、反応温度に対する依存性が異なることを示している。ガラス化現象(Tgの値が、所定の系の硬化温度にほぼ等しくなる)が反応を停止させることはよく知られており、この反応は、温度が上昇すると直ぐに、反応が再開する。それにも拘わらず、高いTgは低温でも得られた(例えば、T=80℃での反応で、Tg=125℃)。最終的なTgの値は、反応温度に依存することに留意すべきである。そのため、初期のモノマー供給材料が同じという事実があっても、前記架橋反応性ポリマー微粒子の構造は同じにはならない。比較のために、低温で部分的に反応させ、その後、高温で本硬化してなる同じ系から合成されたバルクの網状体(エポキシ比較例A及び/又はエポキシ比較例B)は、同じ最終Tgを示している。溶液重合では、こうはいかない。二つの理由によりTgの変化を説明することができる。第一は、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成である。基準A(a/e比=1.35、T=130℃)は、現実には1.2に近い化学量論組成を有している。
前記架橋反応性ポリマー微粒子が、エポキシとアミンのみで構成されているという仮説に基づいて、有効な化学量論組成について同様の計算を行った。反応温度がT=160℃から50℃に減少すると、有効な化学量論組成は、それぞれ1から1.5に増加することがわかる。第二に、PPGは、Tgを減少させることのできる、架橋反応性ポリマー内の混和性ポリマーである。
図29に示す顕微鏡写真により、球状微粒子が温度に関係なく、凝集せずに形成されていることが確認できる。これら微粒子の反応時間及び反応温度の関数としての平均粒径を図30A及び30Bに示す。前記架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径に大きな変化はなく、80℃〜160の反応温度において粒径は3.1〜3.9μmであり、50℃の場合のみ、粒径が僅かに大きく、約5μmである。
PPG−ドデカン混合物
エポキシ樹脂の溶解度パラメータが分子量及び組成の違いによって変化するとき、分散媒体への非溶媒の添加が、分散重合にどのような影響を与えるのかを確認する必要があった。この目的のために、エポキシ及びアミンの両方に対して非溶媒であり、比較的高い沸点を有するものとしてドデカンを選択した。非溶媒の添加については、混合物の3つの成分の溶解度パラメータをすべて変えている。2つのドデカン/PPG混合物を、10及び50wt%でドデカンを含有する分散媒体として調製した。以下の段落においては、ドデカンの添加が、曇点、反応収率、並びに架橋反応性ポリマー微粒子のTg及びモルフォロジーに与える影響について説明する。
合成
ドデカンをPPGに添加すると、相分離に掛かる時間が減少し、純粋PPG−1000の場合の380分から、溶液中のドデカン含有量が50wt%の場合の58分にまで減少する。この結果は、ドデカンの添加で促進された溶解度パラメータの変化によるものと推測される。温度、a/e比及びオリゴマー濃度は変化していないので、アミン−エポキシ反応の速度は、依然として同じ筈である。
50wt%のドデカンを含む溶液は、10wt%のドデカン混合物と比較して、前記架橋反応性ポリマー微粒子の高い収率をもたらす。
PPG/ドデカン=90/10、T=130℃、15時間の反応時間(実施例10)及びPPG/ドデカン=50/50、T=130℃、10時間の反応時間(実施例12)で合成した前記架橋反応性ポリマー微粒子の分析には、TGAを用いた。PPG又は50/50のPPG/ドデカン混合物中で合成された架橋反応性ポリマー微粒子は、T5%=338℃(バルクな網状体、基準Aよりも低い温度)で同様の挙動を有しており、溶液中にドデカンを10wt%のみ含む溶液を用いて合成した架橋反応性ポリマー微粒子は、140℃における1.5%の最初の重量損失及び前記架橋反応性ポリマー粒子と比較して約20℃低いという319℃におけるT5%によって、僅かに異なる挙動を示している。この違いは、恐らく、架橋反応性ポリマー微粒子の洗浄工程後の溶媒の除去に起因している。
架橋反応性ポリマー微粒子の特性評価
異なる反応時間後にサンプリングされた架橋反応性ポリマー微粒子のTgについても調査している。所定の系において反応が進行すると、Tgは、その値が安定状態に達するまで増加する。100〜160℃の温度で合成されるDAT系の架橋反応性ポリマー微粒子においては、「Tgの安定状態」は、反応の5時間後に達成される。これは、架橋反応性ポリマー微粒子の化学組成及び構造が、反応の5時間後に変化していないことを示している。
図31から、非溶媒をPPGに添加したときに、球状の粒子が形成されていることが分かる。粒度分布及び架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径を反応時間の関数として計算し、図32A及び32Bに示した。いくつかの違いが現出している。第一に、短い反応時間では、架橋反応性ポリマー微粒子の寸法は1μmより小さく、3.5時間後の10wt%のドデカンで0.9±0.4μm、1.7時間後の50wtのドデカンで0.7±0.3μmであった。これは、ドデカンの存在下、曇点の短い時間に関連している可能性がある。第二に、ドデカンが50wt%の場合の架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法は、どのような反応時間でも、PPG−1000のみで合成した架橋反応性ポリマー微粒子の平均寸法と同じである。しかしながら、図31の顕微鏡写真を比較することによって分かるように、ドデカンの主な効果は粒度分布の広幅化である。反応が停止したとき、粒径は、それぞれ3.5±1.5μm及び3.9±0.3μmであった。ドデカンの添加により、500nm程度の小さい粒径を有する架橋反応性ポリマー微粒子の形成を可能にした。第三に、ドデカンが10wt%の場合の架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径は、PPG−1000のみ及びPPG/50wt%のドデカンの場合よりも小さく、架橋反応性ポリマー微粒子の平均粒径は、1.8±0.7μmに達している。
結論
PPG及びドデカンの混合物中における架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、架橋反応性ポリマー微粒子が充填されたエポキシ網状体において、潜在的に高い不均一性をもたらす可能性のある幅広の粒度分布(特に、50wt%のドデカンを用いた場合)を得るために使用することができ、さらに、10wt%のドデカンを使用すると、平均粒径は2まで減少する。収率、ガラス転移温度及び粒子中のPPG含有量等の他のパラメータは、非溶媒の添加によっては影響を受けなかった。
ジアミン構造の影響
イソホロンジアミン(IPDA)は、エポキシ樹脂とともに用いられる硬化剤である。その化学構造(脂環式)に起因して、低温で反応する。IPDAを架橋反応性ポリマー微粒子の合成に使用することによって、反応温度を低下させることができ、前記架橋反応性ポリマー微粒子の合成において低沸点溶媒の使用を可能にした。化学量論組成、温度及び溶媒の架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及び組成への影響については、現在検討中である。
基準系の特性評価
基準Bの反応温度として130℃の代わりに80℃を採用したこと以外は、DAT系粒子(実施例1−12)の場合と同様の実験要領をIPDA系微粒子(実施例19−25)の合成にも適用した(a/e比=1.35、c=10wt%、溶媒:PPG−1000)。(1)相分離が、80℃で4時間後(DAT系の同条件においては、〜48時間であった)に生じたこと、(2)反応の収率が、反応の24時間後で76wt%に等しいことが分かり(PPG−3500中で行われた同様の合成では94%の収率が得られている)、この値は、前記架橋反応性ポリマー微粒子の異なるバッチにおいて確認されたこと、(3)前記架橋反応性ポリマー微粒子のTGA分析が、DAT系架橋反応性ポリマー微粒子において得られたものと非常に類似した重量損失対温度のプロファイルとなることが明らかとなり、分解(degradation)の開始は同じ温度(T5%は336℃に等しい)であるものの、曲線は僅かに低温側にシフトしていること、(4)所定の反応時間後にサンプリングした架橋反応性ポリマー微粒子のガラス転移温度を、明確に、所定の方法によって決定することが難しかったことが、観察された。
図33A及び33Bは、反応の17時間後(図33A)と反応の24時間後(図34B)の2つの連続走査中に得られたサーモグラムを示す。既に述べたように、(架橋反応性ポリマー微粒子の熱的特性に関し)1回目の走査中の信号は、図33Aの場合、残留溶媒の蒸発によって非常に頻繁に乱されている。したがって、このグラフから抽出された53℃に等しいTgは、溶媒蒸発の吸熱ピークの存在のために過小評価されている可能性がある。長い反応時間においては、溶媒によって信号は乱されず、93℃に等しい明確なTgを観察することができる。
表11に示すように、このエポキシ−アミンの組み合わせ系の達成可能なTgは、149℃程度に高く、それ故に、エポキシ基及びアミン基のいくつかは、前記架橋反応性ポリマー微粒子内で、依然として未反応のままである。これは、反応が停止したとき(T=130℃で15時間)に最大Tg値に到達し得るというDAT系架橋反応性ポリマー微粒子と比較すると、異なった挙動である。しかしながら、反応時間と同様に反応温度は、DAT系架橋反応性ポリマー微粒子の場合よりも、より有利に高Tgをもたらす。1.35のアミン/エポキシ比によるバルク網状体では、Tg温度は125℃に等しいものの、2回目の走査の後では、図33A及び33Bに示されているように、IPDA系架橋反応性ポリマー微粒子におけるこれらの値は、達していない。
架橋反応性ポリマー微粒子の有利な化学量論組成が、初期のモノマー溶液のそれと実質的に異なることを確認している。2回目の走査中、DSCにおける硬化後、及び架橋反応性ポリマー微粒子中に残留溶媒(PPG)が存在しない場合において得られた各Tgを考慮すると、有効な化学量論組成は、a/e比の関数としてのTgの変動から推定することができる。0.8/0.85(エポキシ過剰)又は1.5/1.6(アミン過剰)の二つの値が可能である。2番目の値は、反応の開始時にIPDAが過剰であるときに、より現実的であると考えられる。
SEM顕微鏡写真は、IPDA系架橋反応性ポリマー微粒子が、少し凝集された(特に、短い反応時間(4.5時間)の後のサンプルで、架橋反応性ポリマー微粒子のTgが低い場合は)球状粒子であることを示している。架橋反応性ポリマー微粒子は、特に、短い反応時間の場合において、残留するアミノ基又はエポキシ基を有している可能性があり、これらは乾燥工程中に反応することができ、凝集をもたらすものである。反応時間は粒径に影響を与え、2μmから3.5μmに増加させても、分布は狭いままである。反応終了時の粒径は、基準のDAT系架橋反応性ポリマー微粒子で判明しているものと同じ範囲内である。
モル比の影響
モル比の影響について、実施例25、19及び24(エポキシに対するアミンのモル比が、それぞれ0.7、1及び1.35)の架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及びTgを試験することにより調査した。以下のことが観察され、各Tgは表12に示している。17時間反応時間の後、1回目の走査で架橋反応性ポリマー微粒子のTgが、49〜57℃程度に低いことが明らかになった(1回目の走査信号も、溶媒の蒸発によって乱されていた)。しかしながら、硬化後のTgは、特に、初期a/e比が低いときに増加した。DAT系架橋反応性ポリマー微粒子の場合のように、a/e比=0.7で最大Tgが得られ、SEM顕微鏡写真は、球状の非凝集微粒子を示している。高Tg架橋反応性ポリマー微粒子の例(a/e比=0.7)の画像を図35に示す。粒径は、a/e比の初期値とともに僅かに増加しており、前記比が0.7、1及び1.35のとき、前記粒径は、それぞれ2.7μmから、3μm及び3.2μmになる。
合成温度(80、100及び130℃)並びに非溶媒の添加(分散媒体に対して10wt%のドデカン)の影響
この一連の実験を通して、供給材料のa/e比を、モノマー濃度10wt%でa/e比=1.35に維持した。合成過程に、分散媒体として異なる溶媒(1−オクタノール、シクロヘキサノン及びシクロヘキサン)が用いられ、いくつかの場合において、低収率であり、架橋反応性ポリマー微粒子の凝集を伴った架橋反応性ポリマー微粒子が得られた。
非溶媒及び温度を追加した架橋反応性ポリマー微粒子のモルフォロジー及び組成への影響は、次のとおりである。(1)収率の温度依存性については表13に示す。短い反応時間(4.5時間)では、ある程度の相関関係が存在している。しかしながら、長い反応時間(17時間)では、収率は温度に拘わらず90%を超えている。(2)架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、高い反応温度では高いTgが期待されたが、反応時間の17時間後では反応温度によって変化せず、50℃に近い値であった。50℃は、IPDAの高い反応性を考慮すると、130℃での長い反応時間にとっては、決定的に低過ぎる温度である。
図36Aに示すように、SEM画像は、球状微粒子を明らかにしている。反応時間及び温度の関数としての平均粒径を、同じ図36Bに示す。これら2つのパラメータが、架橋反応性ポリマー微粒子のサイズに有意な影響を及ぼしていないことは明らかである。
結論
DGEBA及びIPDAに基づく架橋反応性ポリマー微粒子の合成は、分散媒体としてPPG又はPPG+10wt%ドデカンの混合物のいずれかを用いたDATによるものよりも、低い温度で行うことができる。球状の微粒子が両方の溶媒において得られ、さらに狭い粒度分布を有している。DAT系架橋反応性ポリマー微粒子のように、架橋反応性ポリマー微粒子の有効な化学量論組成は、DSC分析に基づく供給材料中のそれとは異なる。粒径は、PPG中の合成では3μm、PPG及びドデカンの混合物中の合成では約5μmの範囲である。硬化後において、架橋反応性ポリマー微粒子のTgは、合成条件に応じて102℃〜141℃である。