本開示の実施態様は、硬化性エポキシ系と架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との反応生成物である熱硬化性架橋型網状体を提供する。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系中にこれが硬化するのに伴って完全に組み入れられるように、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又は硬化剤のうちの少なくとも一方と反応する。換言すれば、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、周りの硬化性エポキシ系との離散界面を形成するのではなく、硬化性エポキシ系の隣接部分として系内に化学的に組み入れられる。
本明細書中に論じられているように、本システムの硬化性エポキシ系は、硬化性エポキシ系から分離した架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を生成することができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系の現場以外又は現場で生成することができる。とりわけ、このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度が硬化性エポキシ系の架橋密度とは独立して規定されるのを可能にする。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は次いで硬化性エポキシ系内で分散させることができる。種々の実施態様の場合、このことは、本明細書中で論じるように、熱硬化性架橋型網状体がトポロジー的不均一性を有するのを可能にする。
“CROSS-LINKED REACTIVE POLYMER MICROPARTICLES”(書類番号70566及び1402.0719990)と題する同時係属中の米国特許出願は、界面活性剤を使用しない架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の製造を文書化している。これは全体的に参照することにより本明細書中に組み込まれる。本開示の実施態様は、これらの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加が本開示の熱硬化性架橋型網状体の硬化挙動及び機械特性に与える影響を説明する。具体的には、熱硬化性架橋型網状体の硬化性エポキシ系と一緒に使用される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成及び/又は量の影響を説明する。興味深いのは、硬化性エポキシ系、及びクリアな破面を生成する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する熱硬化性架橋型網状体を生成する能力である。このような架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系内に完全に埋め込まれることを実証する。さらに、硬化性エポキシ系とともに架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用すると、熱硬化性架橋型網状体のTg転移を、硬化性エポキシ系単独と比較してより高い温度範囲に動かすのを助ける。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、沈殿重合を介して合成し、続いて貯蔵し、そして硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び硬化剤と一緒に分散させることができる。本明細書中に示すように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件は、ミクロ粒子が界面活性剤なしに形成されるのを可能にする。加えて、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件はまた、ミクロ粒子がミクロ粒子合成の際に使用される分散剤を本質的に含まないことを可能にする。このようなものとして、本開示のミクロ粒子は、反応混合物(例えば本明細書中で論じるポリエーテル)中に使用される界面活性剤、又は有意な量の分散剤を含まない。むしろ、本明細書中で論じるように、ミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件は、ミクロ粒子表面にエポキシ反応基及び/又はアミン反応基を優先的に提供するように用いることができる。
種々の実施態様の場合、ミクロ粒子表面のエポキシ反応基及び/又はアミン反応基の存在は、ミクロ粒子が隣接状態で硬化済硬化性エポキシ系中に化学的に組み入れられるのを可能にする。このようなものとして、本開示のミクロ粒子が、ミクロ粒子と同じエポキシ樹脂及び硬化剤を有する硬化性エポキシ系と一緒に使用されると、結果として生じる硬化済硬化性エポキシ系は組成的に均一であり得る。
加えて、本開示のミクロ粒子はまた、結果として生じる硬化性エポキシ系が形態的に不均一であることを可能にする。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度は、粒子が化学的に組み入れられている硬化性エポキシ系の架橋密度とは異なっていてよい。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、粒子が化学的に組み入れられている硬化性エポキシ系の架橋密度とは異なる2種又は3種以上の架橋密度を有することも可能である。化学的に組み入れられた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系は組成的には均一であるが、しかし形態的且つトポロジー的には不均一であってよい。このことの理由は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応組成及び反応条件を、硬化性エポキシ系のそれとは独立して制御できることにある。
つまり「不均一性」は、組成的均一性をなおも維持しながら、ミクロ粒子が添加されている硬化性エポキシ系中に与えることができる(例えばミクロ粒子、又はミクロ粒子の混合物が、硬化性エポキシ系の残りとは異なる架橋密度を有する場合)。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の硬化性エポキシ系内へのこのような組み込みは、硬化性エポキシ系が不均一形態を有するのを可能にし、このことは硬化性エポキシ系の靱性を改善するのを助けることができる。このような硬化性エポキシ系の考えられる用途は、風車の羽根及び自動車パネルを含むことができる。
本明細書中に論じられるように、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、ミクロ粒子表面及び/又はミクロ粒子内部に存在する未反応のアミン基及び/又はエポキシ基を有することによって硬化性エポキシ系内に完全に組み入れることができる(例えば共有結合的に組み入れることができる)。例えば架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、ミクロ粒子が調製成分によって膨張させられ、完全には架橋されない場合、表面活性基又は硬化性エポキシ系網状体の体積内部で硬化性エポキシ系網状体と相互作用することができる。これらのミクロ粒子は強靱化剤として採用するか或いは、単に硬化性エポキシ系への添加剤として採用することができる。ミクロ粒子及び硬化性エポキシ系の組成が同一である場合には、組み入れは、識別可能な界面が存在することなしに完全に行うことができる。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成物は、分散媒の存在における、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種のアミン硬化剤との反応生成物であってよい。反応条件(例えば、とりわけ反応温度、反応時間、エポキシとアミンとの比)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に分散媒がほとんど又は全く結合されていない状態で離散非凝集形態を成して相分離するのを可能にする。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、分散媒中でエポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることによって生成することができる。この反応は攪拌なしに、そしてエポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び/又は分散媒の選択に応じて進行することが可能であり、反応に沿った特定の時点で相分離が発生し、この相分離において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が形成される。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の構造(例えば、とりわけサイズ、多分散性、表面化学特性、及びTg)、収率、及び相分離に影響を潜在的に及ぼすパラメータは、溶解されたモノマーの濃度(モノマーの重量パーセントで表す);アミン/エポキシ・モル比;反応温度及び反応時間;分散媒及びアミン硬化剤の化学構造を含む。
より具体的には、本開示の実施態様は、17時間以下の反応時間にわたって50℃〜120℃の温度で分散媒中で反応させられたエポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応生成物である架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物を含む。この反応時間中、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は分散媒から離散非凝集形態を成して相分離する。種々の実施態様の場合、分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量を基準として、0.001重量パーセント以下の濃度で架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合することができる。つまり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合された分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量を基準として、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下である。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は界面活性剤を使用することなしに沈殿重合プロセスを介して形成することができる。沈殿重合は、最初は連続相の均一系として始まる重合プロセスである。この場合、モノマー(例えばエポキシ樹脂及びアミン硬化剤)は分散媒中に完全可溶性であるが、開始されると、形成済ポリマーミクロ粒子は不溶性となり沈殿する。沈殿重合は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子がミクロン・サイズ範囲内で形成されるのを可能にする。本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、界面活性剤を必要とすることなしに、且つ/又は界面活性剤を使用することなしに沈殿重合法を介して生成することができる。
驚くべきことに、本開示のミクロ粒子は比較的単分散性である。加えて、いくつかの具体的な事例(本明細書中に示すような非溶媒の存在のような事例)では、サブミクロン直径の粒子を有する双峰性分布も可能である。このようなものとして、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、本明細書中で論じるようにミクロ粒子表面上に界面活性剤がないため、硬化性エポキシ系との界面を形成しにくい。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子生成に際して界面活性剤を使用しなかったので、ミクロ粒子表面上に界面活性剤が存在しない。
沈殿重合の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の相分離を可能にするように分散媒の溶解度パラメータをエポキシ樹脂及び硬化剤モノマーのそれと適合させ得る限り、分散媒はニート溶媒又は溶媒混合物であってよい。例えば、分散媒は、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール(PPG)及び/又はポリイソブチレンエーテル)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリブチレンオキシド、脂肪族ケトン、環状ケトン、例えばシクロヘキサン及び/又はシクロヘキサノン、ポリエーテル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。好ましくは、分散媒はポリプロピレングリコールである。
種々の実施態様の場合、非溶媒を分散媒と一緒に使用することもできる。好適な非溶媒の一例としては、アルケン(脂肪族(ドデカン)又は環状)、芳香族アルケン、オルトフタレート、アルキルアゼレート、他のアルキルキャップ型エステル及びエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施態様の場合、分散媒中にエポキシ樹脂とアミン硬化剤とを、それぞれの分散媒中の濃度が分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として5〜30重量パーセントになるように溶解させることにより、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を生成することができる。好ましくは、分散媒中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の濃度は、分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として10〜30重量パーセントである。最も好ましくは、分散媒中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の濃度は、分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として10重量パーセントである。
エポキシ樹脂及びアミン硬化剤は個別又は一緒に分散媒中に溶解させることができる。反応は、反応温度によって調節することができる反応速度で進行することが可能である。この過程中、最初はクリアである溶液が、ミクロ粒子が分散媒から沈殿するのに伴って分散体に変化する。分散媒中のポリマー粒子のサイズは、原材料、並びに分散媒中のそれらの濃度、反応時間、及び反応温度を選択することによって、影響を与えることができる。
種々の実施態様の場合、反応温度は50℃〜170℃、好ましくは80℃〜120℃であってよい。反応時間は、(とりわけ)温度、アミン/エポキシ・モル比;分散媒、触媒の使用の関数であり、また、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。例えばアミン硬化剤としてポリアミンを使用するときには、アミンの塩基度によって、また立体因子によって重付加反応速度に影響を与えることができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物を形成する際の反応時間は17時間以下であってよい。他の好適な反応時間の一例は5〜17時間を含むことができる。。好ましくは、反応時間は5時間以下であってよい。この場合もやはり反応時間は、温度、アミン/エポキシ・モル比;分散媒、触媒の使用、及びエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。
本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に触媒を使用することも可能である。このような触媒は当業者に知られている。好適な触媒は例えばアミン、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、取りエチレンテトラアミン、アミノエチルピペラジン、有機酸、例えばジカルボン酸、フェノール化合物、イミダゾール及びその誘導体、及び硝酸カルシウムである。
種々の実施態様の場合、本明細書中に示すような反応温度、分散媒、及びアミン硬化剤の選択は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の溶解度に影響を与える。これらの選択は、相当量の分散媒がアミン硬化剤及び/又はエポキシ樹脂のいずれかと反応する機会を有する前に、分散媒からの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の相分離が発生するのを可能にする。例えば、反応温度、アミン硬化剤、及び分散媒の溶解度パラメータを選択することに起因してミクロ粒子の相分離を迅速に発生させることにより、分散媒がエポキシ樹脂と反応する機会を大幅に低減することができる。換言すれば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の溶解度が低ければ低いほど、所与の反応温度及び時間において、これらは分散媒と反応又は相互作用しにくくなる。言うまでもなく、全ての分散媒がエポキシ基及び/又はアミン基と反応するわけではなく、ほとんどの分散剤は全く反応しない。
多種多様なエポキシ樹脂が、本開示の目的にとって有用である。エポキシ樹脂は1分子当たりの反応性1,2−エポキシ基数が平均で少なくとも1.5、一般に少なくとも2の有機材料である。これらのエポキシ樹脂は1分子当たりの反応性1,2−エポキシ基数が平均で最大6、好ましくは最大4、最も好ましくは最大3である。これらのエポキシ樹脂はモノマー又はポリマー、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であることが可能であり、また所望の場合には、エポキシ基に加えて他の置換基、例えばヒドロキシル基、アルコキシル基、又はハロゲン原子で置換されていてよい。
好適な例は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、アミンとエピハロヒドリン、硫黄含有化合物とエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、ポリイソシアネートと2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシド)との反応から、そしてオレフィン系不飽和化合物のエポキシ化からのエポキシ樹脂を含む。
好ましいエポキシ樹脂は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、との反応生成物である。ポリフェノール、ポリアルコール、アミン、硫黄含有化合物、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートの混合物をエピハロヒドリンと反応させることもできる。本明細書中で有用なエポキシ樹脂の例は、The Handbook of Epoxy Resins by H. Lee and K. Neville, published in 1967 by McGraw-Hill, New York, in appendix 4-1, pgs 4-56に記載されている。この内容は参照することにより本明細書中に組み込まれる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、平均エポキシ当量は有利には約170〜約3000、好ましくは約170〜約1500である。平均エポキシ当量は、樹脂の平均分子量を1分子当たりのエポキシ基数で割り算した値である。分子量は重量平均分子量である。
エポキシ樹脂の好ましい例は、平均エポキシ当量が約170〜約200のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。このような樹脂は、The Dow Chemical CompanyからD.E.R. 300, D.E.R. 331及びD.E.R. 332エポキシ樹脂として商業的に入手可能である。更なる好ましい例は、エポキシ当量がより高い樹脂、例えばD.E.R. 667, D.E.R. 669及びD.E.R. 732(これらは全てThe Dow Chemical Companyから入手可能)である。
本開示の目的にとって有用な別のクラスのポリマーエポキシ樹脂は、エポキシノボラック樹脂を含む。エポキシノボラック樹脂は、好ましくは塩基性触媒、例えばナトリウム又は水酸化カリウムの存在において、エピハロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンを、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドの樹脂状凝縮物、及び一価フェノール、例えばフェノール自体、又は多価フェノールと反応させることによって得ることができる。これらのエポキシノボラック樹脂の性質及び調製に関する更なる詳細は、Lee, H. 及び Neville, K., Handbook of Epoxy Resins, McGraw Hill Book Co., New York, 1967から得ることができる。この内容は参照することにより本明細書中に組み込まれる。他の有用なエポキシノボラック樹脂は、それぞれD.E.R. 431, D.E.R. 438及びD.E.R. 439としてThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を調製する際に種々様々なアミン硬化剤を使用することができる。採用され得るこれらのアミン硬化剤は、主に多官能性、好ましくは2〜6官能性、具体的には2〜4官能性第一アミンである。このようなアミン硬化剤の一例としては、イソホロンジアミン(IPDA)、エチレンジアミン、テトラエチレンアミン、及び2,4−ジアミノトルエン(DAT)ジアミンが挙げられる。アミン硬化剤のうちの2種又は3種以上の混合物を使用することもできる。アミンが極めて過剰にエポキシ樹脂と反応させられる改質硬化剤も、アミン硬化剤としてのよい候補である。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物の反応生成物は、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のうちの一方をモル過剰の状態で形成することができる。例えばエポキシ樹脂に対してモル過剰のアミン硬化剤を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。換言すれば、エポキシ基に対してモル過剰のアミン水素を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。或いは、アミン水素に対してモル過剰のエポキシ基を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。種々の実施態様の場合、このモル過剰は、エポキシ樹脂との反応に使用されるアミン硬化剤の当量比として表すことができる。例えばエポキシに対するアミンの、又はアミンに対するエポキシの当量比は0.7〜1.35であってよい。種々の実施態様の場合、当量比は1でもよい。本明細書中で使用される当量比は、アミン水素(アミン硬化剤に由来)のモル数とエポキシ基(エポキシ樹脂に由来)のモル数とを使用する。
本開示の更なる態様は、本明細書中で論じるように、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることにより、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法である。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法は、本明細書中に示される温度(例えば50℃〜120℃の温度)で分散媒中でエポキシ樹脂をアミン硬化剤と反応させることを含む。
本明細書中で論じるように、エポキシ樹脂をアミン硬化剤と混合することにより、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を調製する際に、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のうちの一方をモル過剰の状態で提供することができる。混合物は反応温度に加熱することにより、エポキシとアミンとの反応が反応時間にわたって進行するのを可能にすることができる。種々の実施態様の場合、反応混合物の攪拌は必要でない。
本明細書中に論じるように、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法のための反応時間は、17時間以下であってよい。本発明に従って製造される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下である。このことは、一つには、反応温度、反応時間、及び本明細書中に示される分散剤の選択によって容易にされる位相反転によって達成される。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。本明細書中に論じられるように、本開示のミクロ粒子形成方法では界面活性剤は使用されない。
種々の実施態様の場合、この方法はさらに、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と分散媒との相分離を含んでもよい。種々の実施態様の場合、ミクロ粒子は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合されたままの分散媒を0.001重量パーセント以下にするために、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子から分散媒を除去するように1回又は2回以上の洗浄を受けることもできる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。このことは、蒸発単独で可能になるはずのものよりも多くの分散媒を架橋型反応性ポリマーミクロ粒子から除去することが所望される場合に特に好ましい。例えばミクロ粒子の形成に続いて、分散媒とミクロ粒子とを分離することができる(例えば遠心分離、及びこれに続いてデカンティングによって)。このミクロ粒子は次いで室温(例えば23℃)で洗浄液中に再懸濁させることができる。ミクロ粒子は次いで洗浄液から分離することができる(例えば遠心分離、及びこれに続いてデカンティングによって)。ミクロ粒子は2回以上洗浄することができる。
種々の洗浄液が可能である。このような洗浄液の一例としては、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、ケトン、例えばメチルエチルケトン、エンドキャップ型エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中に示された溶媒を洗浄液として使用することもできる。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の単峰性分布に対応する数平均直径は10nm〜10000nm、好ましくは50nm〜5000nm、最も好ましくは100nm〜3000nmであってよい。種々の実施態様の場合、分散媒がポリブチレンオキシドを含む場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の第1直径及び第2直径から成る双峰性粒度分布を有することができる。第1数平均直径は100〜300ナノメートルであり、第2数平均直径は0.5〜10μmである。
下記例においてさらに十分に説明するように、本明細書中に論じられる反応条件(例えば、とりわけ反応温度、反応時間、エポキシ対アミン比)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の少なくとも寸法特性、形態特性、熱特性、及び表面特性に影響を与える。加えて、ミクロ粒子表面化学特性はまた、本明細書中で論じるようにアミン硬化剤とエポキシ樹脂との反応条件及びモル比に依存する。
本明細書中に論じるように、本開示の熱硬化性架橋型網状体は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に加えて、硬化性エポキシ系を含む。種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系は硬化性エポキシ系と固相の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との反応生成物が形成され始めるのに従って、少なくとも最初は液相を成している。本明細書中で論じるように、
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。
種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系はエポキシ樹脂及びアミン硬化剤を含む。種々の実施態様の場合、本開示の目的にとって多種多様のエポキシ樹脂が有用である。このようなエポキシ樹脂の例は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との関連において本明細書中で論じるものを含む。他のエポキシ樹脂も可能である。このようなエポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
芳香族エポキシ樹脂の一例としては、ポリフェノールのグリシジルエーテル化合物、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、トリスフェノール(トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂の一例としては、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、又はシクロヘキサン環又はシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキシド又はシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられる。いくつかの具体例としては、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;メチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン);2,2,−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン;ジシクロペンタジエンジエポキシド;エチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート;ジ−2−エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレート;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の一例としては、脂肪族ポリオール又はそのアルキレンオキシドアダクトのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートをビニル重合することによって合成されたホモポリマー、及びグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート及び他のビニルモノマーをビニル重合することによって合成されたコポリマー、及び他のビニルモノマーが挙げられる。いくつかの具体例としては、ポリオールのグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ソルビトールのテトラグリシジルエーテル;ジペンタエリトリトールのヘキサグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1つのタイプ、又は2つ以上のタイプのアルキレンオキシドを脂肪族ポリオール、例えばプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、及びグリセリンに添加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
同様に、種々多様なアミン硬化剤を、本開示の硬化性エポキシ系を調製する際に使用することができる。アミンは、N−H部分、例えば第1アミン及び第2アミンを含有する化合物を含む。このようなアミン硬化剤の例は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との関連において本明細書中に論じられたものを含む。他のアミン硬化剤も可能である。このようなアミン硬化剤は、脂肪族ポリアミン、アリール脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環式ポリアミン、ポリアルコキシポリアミン、ジシアンジアミド及びその誘導体、アミノアミド、アミジン、ケチミン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
脂肪族ポリアミンの一例としては、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA),トリメチルヘキサンジアミン(TMDA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N3−アミン)、N,N’−1,2−エタンジイルビス−1,3−プロパンジアミン(N4−アミン)、ジプロピレントリアミン、及び過剰のこれらのアミンとエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
アリール脂肪族ポリアミンの一例としては、m−キシリレンジアミン(mXDA)、及びp−キシリレンジアミンが挙げられる。脂環式ポリアミンの一例としては、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、及び4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミンが挙げられる。芳香族ポリアミンの一例としては、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、及びジアミノジフェニルスルホン(DDS)が挙げられる。複素環式ポリアミンの一例としては、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリアルコキシポリアミンの一例としては、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン;1−プロパンアミン;(2,1−エタンジイルオキシ)−ビス−(ジアミノプロピル化ジエチレングリコール)(ANCAMINE(登録商標)1922A);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、アルファ−(2−アミノメチルエチル)オメガ−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D-230, D-400);及びオリゴマー((JEFFAMINE(登録商標)XTJ-504, JEFFAMINE(登録商標) XTJ-512);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、アルファ,アルファ’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス(オメガ−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-511);ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350;ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750;ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル));2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールを有するα−ヒドロ−ω−(2−アミノメチルエトキシ)エーテル(JEFFAMINE(登録商標)T-403);ジアミノプロピルジプロピレングリコール;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、熱硬化性架橋型網状体に対して種々様々な重量パーセントを有することができる。例えば、硬化性エポキシ系は、熱硬化性架橋型網状体に対して10重量パーセント(wt%)〜90wt%のエポキシ樹脂を有することができる。硬化性エポキシ系が熱硬化性架橋型網状体に対して20wt%〜80wt%のエポキシ樹脂を有することも可能である。硬化性エポキシ系が熱硬化性架橋型網状体に対して30wt%〜70wt%のエポキシ樹脂を有することも可能である。アミン硬化剤は、熱硬化性架橋型網状体に対して1wt%〜70wt%であってよい。アミン硬化剤が熱硬化性架橋型網状体に対して5wt%〜45wt%であることも可能である。アミン硬化剤が熱硬化性架橋型網状体に対して10wt%〜40wt%であることも可能である。
種々の実施態様の場合、熱硬化性架橋型網状体の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系は、同じ又は異なるエポキシ樹脂及びアミン硬化剤から形成することができる。つまり例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤との第1の規定の組み合わせから形成することができ、そして硬化性エポキシ系は、第1の規定の組み合わせとは異なるエポキシ樹脂とアミン硬化剤との第2の規定の組み合わせから形成することができる。
本明細書中に論じられるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、熱硬化性架橋型網状体に不均一な網状体・トポロジーを導入するのを助ける。種々の実施態様の場合、トポロジー的不均一性は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度とは異なる硬化性エポキシ系の反応生成物の架橋密度によって熱硬化性架橋型網状体に与えることができる。加えて、架橋密度差は、硬化性エポキシ系に対して架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTGに差が生じる(例えばより高いか又はより低い)のを可能にする。この場合ミクロ粒子はトポロジー的不均一性の座を提供することができる。
この不均一な網状体・トポロジーは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度及び反応基が単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応することに少なくとも一部は起因して、熱硬化性架橋型網状体に靱性を加えるのを助けることができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が表面に反応基を含有しているので、これらは、周りの硬化性エポキシ系網状体と共有結合し、これにより架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面を最小化又は排除する。このような架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系中に組み入れられている証拠(充填剤が使用されていないことを条件とする)は、下記例の項で示されるように、「クリア」であることである。
しかし他の系とは異なり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系が硬化するのに伴って、完全に組み入れられ得る。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系中にこれが硬化するのに伴って完全に組み入れられるように、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又は硬化剤のうちの少なくとも一方と反応する。換言すれば、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、周りの硬化性エポキシ系との離散界面を形成するのではなく、硬化性エポキシ系の隣接部分として系内に化学的に組み入れられる。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基は、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂と反応するアミン基であってよい。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基は、硬化性エポキシ系のアミン基と反応するエポキシ基であってよい。本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が固相を成し、これらが界面活性剤を含まないので、粒子の存在は熱硬化性架橋型網状体の形成を妨害することがなく、硬化性エポキシ系に付加的な化合物を添加することもない。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は硬化性エポキシ系の発熱反応のためのヒートシンクとして作用することもできる。それというのも、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の大部分が既に架橋されているからである。このことはまた、熱硬化性物質中にしばしば存在する硬化収縮を低減するのを助ける。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、界面活性剤を必要とすることなしに、且つ/又は界面活性剤を使用することなしに硬化性エポキシ系中に分散させることができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、熱硬化性架橋型網状体を調製する際に、アミン硬化剤、エポキシ樹脂、及び/又はその両方と一緒に且つ/又はこれに添加することができる。種々の実施態様の場合、熱硬化性架橋型網状体は、1〜70重量パーセントの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を含むことができる。つまり、熱硬化性架橋型網状体は、熱硬化性架橋型網状体の総重量を基準として、1〜70重量パーセントの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を含む。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は本明細書中で論じるように、現場以外で生成することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系の現場で生成することもできる。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の沈殿重合及び相分離に使用される溶媒又は溶媒混合物を、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又はアミン硬化剤と一緒に使用することもできる。ここでは溶媒又は溶媒混合物は、発生した熱硬化性架橋型網状体から蒸発させることができる。
本開示の更なる態様は、熱硬化性架橋型網状体を製造する方法である。種々の実施態様の場合、この方法は、本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合された分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下となるように、17時間以下の反応時間にわたって50℃〜120℃の温度で分散媒中で、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることを含む。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。この方法はさらに、本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と分散媒とを相分離することを含む。この方法はさらに、液相の硬化性エポキシ系と固相の該架橋型反応性ポリマーミクロ粒子とを反応させることを含む。ここで、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、本明細書中で論じるように、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合されたままの分散媒を0.001重量パーセント以下にするために、分散媒を除去するように架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を洗浄することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。種々の実施態様の場合、このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基であるアミン基(及び/又はエポキシ基)が、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂(及び/又はアミン基)と反応するのを可能にする。
下記例は本開示を説明する。他に言及がない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量部及び重量パーセントである。例は本開示を限定すると解釈されるべきではない。
例
下記例は説明のために示すのであって、本発明の範囲を限定するものではない。これらの例は本開示の、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系とを含む熱硬化性架橋型網状体の両方の方法及び具体的な実施態様を提供する。本明細書中に示されているように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はとりわけ、熱硬化性架橋型網状体の不均一性を増大させる能力を提供することができる。本明細書中に示された実施態様は、熱硬化性架橋型網状体の機械特性並びに硬化挙動全体に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の影響を示している。
材料
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA, D.E.R. 331(登録商標)、The Dow Chemical Company)
2,4−ジアミノトルエン(DAT)、芳香族硬化剤(Aldrich 受け取った状態で使用)
イソホロンジアミン(IPDA)、脂環式硬化剤(Aldrich 受け取った状態で使用)
ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、2つの異なる分子量(PPG-1000及びPPG-3500)、溶媒(Aldrich 受け取った状態で使用)
ドデカン、溶媒(Aldrich 受け取った状態で使用)
アセトン(Aldrich 受け取った状態で使用)
テトラヒドロフラン(Sigma Aldrich、分析グレード、受け取った状態で使用)
表1は上記化合物の化学構造及び特徴を示す。
例1〜18 架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のDGEBA及びDATを基剤とする調製
表2は、本明細書中で論じるように、DGEBAとDATとの反応に基づく架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の参照A及び例1〜18を調製する際に用いるための試験条件を示す。参照A及び例1〜18の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を、界面活性剤を使用することなしに分散重合法を介して生成した。分散媒としてポリプロピレングリコール(PPG)を、単独で又は非溶媒(ドデカン)の添加とともに利用した。
参照A及び例1〜18のそれぞれに対して、表2に示されているようにDGEBA及びDATを溶媒中に別々に、それぞれT=40℃で20分間、そしてT=40℃で30分間にわたって溶解させることによって、表2に示されているモノマー濃度を有するそれぞれのモノマーに対応する均一溶液を得た。DGEBA溶液とDAT溶液とを混合することにより、表2に示されているようにアミン対エポキシの異なるモル比(a/e比)を調製した。混合物を予熱された炉(表2に示されているように80℃〜160℃)内に入れることにより、エポキシとアミンとの反応を、攪拌させることなしに、そして定期的にサンプリングしながら、表2に示された反応時間にわたって進行させておく。
それぞれの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子試料を溶媒から、1分当たり4000回転(rpm)で遠心分離することにより分離し、これにより溶媒のほとんどを除去する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を過剰のアセトンによって室温(23℃)で洗浄し、遠心分離を繰り返す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を室温(23℃)で真空乾燥させる。試験条件に関する詳細は表2に報告されている。
参照架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(表2では参照Aと称される)は、アミン対エポキシ・モル比1.35(a/e比)、モノマー濃度10重量パーセント(wt%)、PPG−1000溶媒、反応温度:130℃及び反応時間:15時間、を示す。
例19〜32 架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のDGEBA及びIPDAを基剤とする調製
表3は、本明細書中で論じるように、DGEBAとIPDAとの反応に基づく架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の参照B及び例19〜32を調製する際に用いるための試験条件を示す。例19〜32の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を、界面活性剤を使用することなしに分散重合法を介して生成した。分散媒としてPPGを、単独で又は非溶媒(ドデカン)の添加とともに利用した。
参照B及び例19〜32のそれぞれに対して、表3に示されているようにDGEBA及びIPDAを溶媒中に別々に、それぞれT=40℃で20分間、そしてT=80℃で30分間にわたって溶解させることによって、表3に示されているモノマー濃度を有するそれぞれのモノマーに対応する均一溶液を得た。DGEBA溶液とIPDAとを混合することにより、表3に示されているようにアミン対エポキシの異なるモル比(a/e比)を調製した。混合物を予熱された炉(表3に示されているように80℃〜130℃)内に入れることにより、エポキシとアミンとの反応を、攪拌させることなしに、そして定期的にサンプリングしながら、表3に示された反応時間にわたって進行させておく。
それぞれの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子試料を例1〜18に関して上述したように分離する。室温(23℃)で真空乾燥させる前に試料25をTHFでさらに洗浄した。
試験条件に関する詳細は表3に報告されている。参照架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(表3では参照B)は、アミン対エポキシ・モル比1.35(a/e比)、モノマー濃度10重量パーセント(wt%)、PPG−1000溶媒、反応温度:80℃及び反応時間:17時間、を示す。
バルク・エポキシ網状体
DGEBA及びDAT(比較エポキシ例A)、並びにDGEBA及びIPDA(比較エポキシ例B)で調製されたバルク・エポキシ網状体を異なるアミン/エポキシ・モル比で合成した。この場合4時間にわたって130℃の予熱炉、次いで4時間にわたって180℃の予熱炉における硬化サイクルを伴った。DSCを用いることによって、比較エポキシ例A及びBのそれぞれの反応エンタルピー、及びガラス転移温度を割り出した。これらの値を、例1〜26に関して得られた値と比較するために用いた。比較エポキシ例A及びBを用いて、本明細書中に示すように、他のデータ、例えば元素分析及びXPSを検証した。
特徴づけ方法
光透過率測定(曇り点測定)
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の合成中、溶液を通して光透過率を測定した。光透過率は、電気的加熱装置と、加熱装置のための温度制御装置と、電気的加熱装置に取り付けられたガラス試験管(管は被分析試料で満たされる)と、光源及びセンサ(Zeiss KL1500 LCD)と、データ(例えば光強度)取得のためのコンピュータとから成る機器を使用して測定した。
上記光透過率装置で曇り点を割り出した。この技術によって、試料を通る光の強度を、温度の関数として、又は時間の関数として記録する。試料が透明から曇り/不透明へ(又はその反対)になるときに、試料を透過する光の強度が減少(又はそれぞれ増大)を示す。この減少の開始は曇りテント呼ばれる。これは、直径が0.1μmオーダーの粒子の(相分離過程による)出現に相当する。
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
反応終了時に反応溶液中のDGEBA,DAT及びPPGモノマーの含量を分離して計算するためにSECを使用した。異なる濃度を用いて、それぞれの化合物に対して較正を予め実現した。使用する溶離媒質はテトラヒドロフラン(THF)であり、流量は1ミリリットル/分(ml/min)であり、分離のために3つのカラム(Waters HR0.5, HR1及びHR2)を使用した。屈折率検出器及びUV−Vis検出器(λ=254nm)を使用して検出を行った。
変調示差走査熱量測定(MDSC)試験
熱特性
冷蔵された冷却システムを備えたTA Instruments model Q2000 DSCにおいてMDSC試験を実施した。Thermal Advantage for Q series (version 2.7.0.380)ソフトウェア・パッケージを使用してデータを収集し、Universal Analysis 2000ソフトウェア・パッケージのバージョン4.4Aを使用して減少させた。走査速度10℃/分でアダマンタン(Mp=−64.53℃)、n−オクタデカン(Mp=28.24℃)、インジウム(Mp=156.60℃)、及び亜鉛(Mp=419.47℃)で温度に関して較正した。エンタルピー信号をインジウム(ΔH=28.71J/g)分析から較正した。約7mgの試料をMettler分析用天秤を使用して正確に秤量した。軽量(約25mg)Alパンを架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の試験のために採用した。試料/パンの接触状態を改善するためにパンをクリンプしたが、しかしシールは密閉状態ではない。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の第2分析の前に、試料を約64時間にわたって真空炉(圧力:10mbar)内で40℃で乾燥させた。密閉蓋を有するT−ゼロ・パンを採用して、比較エポキシ(DER 331プラスIPDA)マトリックスの硬化を調べた。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子試料と同じ温度プロフィールを採用した。
質量分析を併用する熱重量分析(TGA−MS)試験
Balzer Thermostar GSD 300 MSにカップリングされたTA Instruments model Q5000 TGAを介してTGA−MS試験を実施した。Thermal Advantage for Q series (version 2.7.0.380)ソフトウェア・パッケージを使用してデータを収集し、TGAデータのためにはUniversal Analysis 2000ソフトウェア・パッケージのバージョン4.4Aを、そしてMSデータのためにはQuadstar 422ソフトウェア(バージョン6.0)を使用して減少させた。MSデータをASCIIフォーマットでエクスポートし、そしてUniversal Analysisパッケージでさらに減少させた。試料をPtパン上に置き、目盛付きTGA天秤によって正確に秤量した。
示差走査熱量測定(DSC)
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応(もしあれば)及びガラス転移温度を得るためにDSCを使用して、乾燥させた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子粉末を分析した。硬化性エポキシ系の反応(もしあれば)及びガラス転移温度を得るためにもDSCを用いた。
DSC測定はQ20 (TA)及びMettler DSC 30 (Mettler Toledo GmbH)熱量計を用いて行った。−60〜250℃の第1加熱勾配(10℃/分)に続いて0℃までの冷却段(50℃/分)を実施し、そして200℃までの第2加熱勾配を施した。試験全てをヘリウム下(25ml/分、TA Q20熱量計)、又はアルゴン下(25ml/分、Mettler DSC 30熱量計)で行った。データをUniversal Analysis 2000 v.4.2E (Q20)及びSTARe v.8.10 (Mettler DSC 30)で分析した。バルク・網状体を特徴づけるためにもDSCを用いた。(第1加熱走査中に得られる)架橋反応のエンタルピーに関して、そして(第2加熱走査中に得られる)硬化済網状体のガラス転移温度に関して材料を特徴づけた。
顕微鏡法
光学顕微鏡法
硬化性エポキシ系中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の分散を評価するために光学顕微鏡法を用いた。未硬化及び硬化済双方の熱硬化性架橋型網状体のためのOrtholux II顕微鏡(Zeiss)を透過モードで使用することによって顕微鏡写真を取得した。硬化済熱硬化性架橋型網状体の場合、付加的な調製処理なしにフィルムを観察した。
走査電子顕微鏡法(SEM)
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形態を調査し、これらのサイズを推定するために、SEMを実施した。乾燥させた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をPhilips XL20 SEMで観察した。試料の調製は次の通りであった:導電性グラファイト接着剤でカバーし、次いでスパッタリングにより金を被覆した金属スタブ上に架橋型反応性ポリマーミクロ粒子粉末を置いた。典型的には15kVの電圧を印加することによっていくつかの倍率で顕微鏡写真を収集した。SEM顕微鏡写真を使用して粒度分布を割り出した。粒度分布は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の非加重カウント処置を用いて計算した。この事実は実際には、寸法の小さい方のテールが系の小さな重量(又は体積)分率を表すとしても、粒度分布の2つのテールが同じ重量を有することを意味する。これらの測定は、オープンソース・ソフトウェアImageJ (Version 1.42q. http://rst.info.nih.gov/ij)を使用することにより行った。それぞれの試料に対して少なくとも300個の粒子を測定することによって、データの統計的意味を有するようにした。
熱硬化性架橋型網状体から成るフィルムを、液体窒素を使用することにより凍結破断し、破面をPhilips XL20 SEMで観察した。導電性グラファイト接着剤でカバーし、次いでスパッタリングにより金を被覆した金属スタブ上に試料を置いた。15kVの電圧を印加することによっていくつかの倍率で顕微鏡写真を収集した。
化学レオロジー
ニート硬化性エポキシ系上で(すなわち架橋型反応性ポリマーミクロ粒子なしで)、そして熱硬化性架橋型網状体(硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子)上でARESレオメーター(TA)を使用して、化学レオロジー試験を行うことにより、系のゲル化挙動を調査した。プレート間の平均ギャップ1mmの平行プレート・ジオメトリを用いて、80℃で動的モードにおいて試験を実施した。2つのタイプの試験を採用した:(1)30rad/sの単一周波数試験及び歪み30%;(2)1,3,10,30,100rad/sの多周波数試験及びそれぞれの歪み0.8%、0.6%、0.3%、0.15%、0.08%。
両方の事例において、機器によって許容される最大トルク(すなわち約2000g・cm)に達するまで材料の物理特性(すなわち複素粘度係数及び損失係数)を時間の係数としてモニタリングした。
赤外線分光法(FT−IR)
ニート硬化性エポキシ系、及び熱硬化性架橋型網状体の反応速度を、赤外線分光法を用いて調査した。Magna-IR 550分光計(Nicolet)を透過モードで使用することにより、赤外スペクトルを取得した:2つのKBrペレット間に未反応の硬化性エポキシ系の小滴を入れ、80℃の温度に維持した。ソフトウェア OMNIC v.7.3を使用してデータを分析した。
動的機械分析(DMA)
公称幅5mm及び長さ22.32mmの熱硬化性架橋型網状体から成る小さなストリップ上で、RSA II機器(Rheometrics)を使用することによって、DMA試験を引張りモードで行った。硬化性エポキシ系試料を30℃から200℃まで3℃/分で加熱し、周波数1Hzで0.05%の正弦波歪みを印加した。貯蔵弾性率、損失弾性率、及び損失係数を試験中に記録した。
結果及び考察
例1〜26は、狭い粒度分布を有する非凝集架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を提供する。直径はマイクロメートル・サイズ範囲にあったが、いくつかの具体的な事例(非溶媒の存在のような事例)では、サブミクロン直径粒子を有する双峰性分布が観察された。反応において用いられる反応条件は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のサイズ、収率、及び相分離に影響を与える。従って、有効アミン対エポキシ比、反応温度、及び反応時間が、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子合成のパラメータとして考えられた。PPG調製物中のDAT/D.E.R. 331(登録商標)を使用することにより、反応パラメータと架橋型反応性ポリマーミクロ粒子特性とのいくつかの関係を確立した。これらの関係は、エポキシ対アミン比が増大するのに伴って架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径が小さくなるという観察を含む。反応時間が長くなるのに伴って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径は大きくなる。反応温度が高くなるのに伴って反応速度も増大し、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はより小さな直径を有した。最後に、モノマー含量が増大するのに伴って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径は増大する一方、多分散性は比較的一定のままである。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に使用されるモノマー(例えばエポキシ樹脂及びジアミン)の重量パーセント(wt%)も、反応収率に影響を与える。50wt%のモノマーローディング率の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、反応が進行するに従ってより高速に相分離し、凝集した。従って10wt%のモノマーローディング率を用いることによって、十分に高い収率をより良好に保証し、そして粒子凝集を防止した。PPG中の反応収率は90%を上回った(SECによって割り出した)。
参照架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
参照A(表1,DGEBA+DAT,a/e比=1.35)で得られたDSCサーモグラムの例を図1Aに示す。反応前の参照Aのエポキシ化合物のガラス転移温度(Tg0)、及び反応の発熱ピークを観察する。このピークは約160℃において最大値を有し、そして反応エンタルピーΔH=378J/gを有する。a/e比の関数としてのTg値(硬化済試料)の結果を図1Bに示す。a/e比=1の場合に最大Tg=157℃を有するトレンドが観察される。このプロットは、例1〜12の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTg値と比較するのに有用である。
同様の試験を参照B(表2,DGEBA+IPDA,a/e比=1.35)に対して行った。図2Aは、IPDAがより低い温度で反応することを示している。最大発熱ピークの温度は約100℃であり、反応エンタルピーはΔH=390J/gに等しい。a/eに対するTgの変化は、図2Bに示されているように、トレンド、すなわちa/e比=1に対する最大Tgに従う。
参照Aの特徴づけ
モル比a/e比=1.35(すなわち過剰のアミン)の参照Aの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子表面上のアミノ基の存在を好むことが予想された。溶媒は、DATを使用して妥当な反応時間を有するために、その高沸点(反応温度は130℃であった)に基づいてPPG-1000であった。モノマー濃度は10wt%であった。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の構造を、いくつかの技術を採用することにいよって調査した。
参照Aの合成
反応の進行中、最初は無色の透明な均一モノマー溶液は曇り、僅かに黄色を帯びるようになった。上記のような遠心分離、洗浄、及び乾燥後、黄色を帯びた/褐色の粉末を得た。
4時間未満の反応で相分離が発生し、相分離反応速度のより正確な値を有するために、溶液の光透過率を130℃でモニタリングし、そして図3にプロットで示した。所与の反応条件に対して、相分離は187分後(3.1時間)に発生する。
また残留溶液を(残留溶液をTHF(3ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)及び5mg/ml、2回)で希釈することによって)SECによって分析した。初期化合物(DGEBA/DAT/PPG−1000)及び最終反応生成物(反応時間=15時間)で得られた典型的なクロマトグラムの例を図4に示す。PPG−1000,DGEBA及びDATの溶離体積はそれぞれVe=20.3ミリリットル(ml)、24.7ml及び26.7mlである(図4A)。全ての化合物は極めて良好に分離される。図4bでは、PPG−1000に相当する主ピーク(RI信号)、及び未反応DGEBA(n=0)に相当する極めて小さなピークが観察される。26.7mlのDATに相当するピークはなく、これは、屈折率検出器の検出限界内であり得る極めて小さな量である。また、254nmのUV信号(図4C)を利用して、最終反応生成物を検出した。それというのもこの信号はDEGBA及びDATに対してより高い感受性である(芳香族環の存在に起因する)からである。DATピーク、並びにオリゴマーの存在が観察される。
それぞれの成分に対して確立された較正曲線から、残留溶液中に存在するDGEBA及びDATの量を推定することが可能である。初期DGEBAの12パーセント(%)及び初期DATの2%が溶液中に残っている(3回の試験にわたる平均値)。つまりこれはエポキシ+アミン反応に関して86%の収率をもたらす(溶液中に残るオリゴマーを無視する場合)。SECによる収率は、重量測定法によって得られた値よりも僅かに低い。なぜならば、SECは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子へのエポキシ−アミン変換しか考えないからである。この差が参照Aの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中のPPGの存在に起因するものなのか、又は参照Aの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の沈降に起因するものなのかは見極められなかった。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の特徴づけ
熱特性
乾燥済架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対するDSC試験から得られた、温度の関数としての熱流束曲線の例(例1は130℃で15時間の反応後に得られた)が図5に示されている。第1加熱走査のサーモグラフはかなり複雑である。50℃〜100℃の温度領域内に吸熱ピークがあり、次いでガラス転移が観察される。吸熱ピークは、(洗浄過程で使用された)残留アセトンと関連している。アセトンの蒸発比熱、すなわち538.9J/gを用いて、アセトンの残留量が5〜7wt%であることが推定された。第2加熱走査は、第1走査中に観察されたもとの極めて類似して、147℃で明らかなガラス転移を示した。これらのコメントは全ての例1〜12に対して当てはまる。すなわち第1走査と第2走査との間には有意な差はない。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が、供給混合物a/e=1.35中の最初のものと同様のストイキオメトリを有するならば、Tgは137℃に等しいはずである。得られた値はより高いので、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効ストイキオメトリは、DGEBA及びDATだけから成る場合には1.2に近くなければならない(図1)。しかし収率、TGA、及びXPSからの結果は、例1〜12の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にPPG−1000があることを示唆した。下記の仮説を展開することができる:(1)PPGがミクロ粒子表面で吸着されるか又は反応させられ、その量は極めて小さい(いくつかの洗浄処理の理由から)、そして(2)PPGが相分離領域においてミクロ粒子内部に存在し得る。PPGは混和性ポリマーとして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中に存在することができない。なぜならばこれはTgの低下を招くからである(数種のポリマーしかエポキシ網状体と混和性でない、例えばPMMA)。
MDSC試験:
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の例13〜18の挙動が図6〜18に示されている。第1加熱時の例13〜18のそれぞれは、本質的に非可逆性の大きな吸熱ピークを有した(すなわちMDSCの反応速度信号を発生させる)。このピークの規模及び幅は、蒸発プロセスを示す。下記表6は、DSC試験中の例13〜18による重量損失を挙げている。重量損失は約5.5wt%〜最大9wt%である。相当量の溶媒(洗浄に由来するアセトン及びTHF)が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にまだ存在していると考えられる。次いで真空炉を介して乾燥させた。これらの重量損失レベルを、同じ試料上で行われたTGA−MS分析によって確認した。
第1加熱におけるTgは、100℃で5時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例15)の約50℃から、80℃で17時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例14)の約75℃まで、最終的には架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の残り(例13及び16〜18)の約100〜105℃までである。Tg転移の形態は特に転移の高温側で興味深い。これは、材料の更なる反応を示しているかもしれず、或いは、溶媒の同時損失に由来することもあり得る。大きな溶媒蒸発ピークにより、残留発熱硬化プロセスは観察されない。加えて、残留発熱プロセスが弱く、広幅な温度にわたって広がる場合には、たとえ溶媒蒸発からの干渉がないとしてもこれを見ることができないことがある。
第2加熱において、Tg転移は第1加熱結果と比較して「ノーマル」に見える(図6〜18参照)。大きな吸熱ピークは存在せず、通常のエンタルピー関連ピーク(約2J/g)が存在するだけである。転移は著しく高い温度にシフトしており、大抵の場合、著しくシャープになっている(すなわち転移に対する温度範囲がより狭い)。ここでは、Tgは、100℃で5時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例15)の約110℃から、80℃で17時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例14)の約115℃まで、そして100℃及び120℃でそれぞれ17時間及び5時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例16及び17)の約120℃まで、そしさ最終的には、120℃で17時間にわたって生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例18)の約130℃までである。
Tg転移幅は、80℃で生成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例13及び14)が最も狭い。これらの例のTgは、架橋された系ではなく標準的な熱可塑性材料に類似している。加えて、これら例13及び14のTg転移は、標準的な熱可塑性材料とほぼ同様に狭い。架橋密度はより高温で生成された材料よりも低い(5時間、100℃のものは除く)ものの、網状体の均一性はより良好であるように見える。反応温度及び時間が増大するのに伴って、Tg転移幅も増大する。これはより不均一なポリマー網状体と一致する。
例14〜18の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、TGA及びMDSCの両方によって確認される、有意なレベル(5〜9wt%)の揮発性材料を含有している。MDSC試験後に同じレベルがTGA及び重量損失によって測定された。この重量損失は、残留ポリプロピレングリコール(PPG)を洗浄するために使用された残留溶媒(THF及びアセトン)の蒸発に由来する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のいずれかに残留PPGが存在する明らかな証拠はなかった。レベルは約0.1重量パーセント(wt%)又は1000ppm未満であることが推定される。
残留溶媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の可塑剤として作用する。第1加熱中に測定されたTgは、第2加熱中に測定されたものよりも著しく低く且つ広幅である。部分乾燥させた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の初期Tgは、受け取った状態での架橋型反応性ポリマーミクロ粒子よりも高いが、しかし完全な溶媒除去後に測定されたものよりもまだかなり低い。最終Tgは反応温度及び反応時間の関数である。反応温度80℃で、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の最終Tgは約115℃であり、これは、100℃の反応に対応して約122℃にシフトし、次いで最終的に約120℃の反応に対応して約130℃にシフトする。所与の温度において反応時間が長ければ長いほどTgの増大は小さくなり、そして転移は広幅になる。最高温度及び最長反応時間において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは比較エポキシ例よりも僅かに高い。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び比較エポキシ例は、極めて類似の熱劣化挙動を有している。発生した種は本質的に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び比較エポキシ例の化学組成が同じであることを示す種である。図6a〜13bは、例14〜18の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対するMDSC及びTGA−MS測定値を示している。
乾燥後の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の分析
乾燥済架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(例14〜18)のMDSC結果が図14a〜19aに示されており、表8及び9に要約されている。第1加熱の結果からは、例14〜18がまだ揮発性材料を含むことがさらに明らかである。すなわち、溶媒の全てが約64時間にわたって40℃で実施される真空乾燥工程によって除去されたわけではない。分析の前後に測定された例14〜18の重量(表8参照)から、例14〜18の全てがなおも約2wt%を失うことが観察された。この低温重量損失は、受け取った状態での架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と比較してより高温にシフトされ、結果として、測定Tgはより高い温度にシフトされ、そして転移はより狭い温度範囲にわたって発生する。しかし、第2加熱時に測定された最終Tgは前に測定されたものと多少の差こそあれ同じである。
反応温度が高くなるのに伴って架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の最終Tgも高くなる。また、所与の温度における反応時間が長ければ長いほど、最終Tgが高くなりTg転移が広幅になるように見える。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTGA−MS
TGA−MS試験を実施する主な理由は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にPPGがまだ存在するかどうかを見極めることであった。PPGを重合中の溶媒として採用することにより架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成し、最終生成物を数回THF及びアセトンで洗浄したにもかかわらず、何らかのPPGがまだ存在することがある。PPGの存在をチェックするために、種々異なる架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を純粋PPG及び自己硬化型エポキシ樹脂とともに分析した。これらの2種の材料を分析することにより、基準データを提供した。
PPG、エポキシ・マトリックス、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の例17に対するMS信号のいくつかのオーバーレイ・プロットが、図20A〜20B及び21A〜21Bに示されている。比較される試料の全ては同様の出発重量(約5.5mg)を有するので、MS信号はいかなる改変も施すことなしに定量的に比較することができる。MS信号の選択は、純粋PPG材料に対応するこれらの信号の強度及び/又は形状に基づいて行われた。
図20A及び20Bにおいて、m/e=15及び17のMS信号を、PPG、エポキシ・マトリックス、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の例17に関して比較する。m/e=15信号は全ての材料に対して極めて強い。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、残留溶媒(THF及びアセトン)の損失に起因して低温でピークをもたらすのに対して、他の2種の材料は200〜250℃までこのm/eに対応する有意な信号をもたらさない。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対する信号の強度及び形状はエポキシ・マトリックスのものと極めて類似することが明らかである。この信号の強度は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対するものがエポキシ・マトリックスと比較して同じであるか又は弱い。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中に相当量のPPGがまだ存在しているならば、この信号の強度は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対してより強いはずである。m/e=17(水)のMS信号はPPG信号に関して特徴的な形状を有しており、これはエポキシ・マトリックス及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関しては観察されない。ここでもやはり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中に相当量のPPGが残されている証拠はない。
図21A及び21Bにおいて、m/e=31及び45のMS信号を、3種の材料に関して比較する。これらの信号はPPG材料に関して特に強く、そしてエポキシ・マトリックス及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関して比較的弱い。両事例において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対する信号はエポキシ・マトリックスに対する信号よりも僅かに強い。このことは低レベルのPPGが架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にまだ存在するのを暗示し得る。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対するこのような僅かに強い信号が、なんらかのPPGが粒子とまだ関連していることを確かに意味しているのならば、その量は約0.1wt%(すなわち1000ppm)以下と推定される。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の例14〜18は、150℃未満の温度で相当の重量(5〜8wt%)を失う。これらの重量損失値は、MDSC試験中に失われた重量から見いだされたものと良好に合致する。試料はTHF及びアセトンで洗浄されるので、これらの溶媒のうちの一方又は両方がこの重量損失を生じさせたと考えるのが論理的である。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のm/e=42,43,59及び72の選択されたMS信号が図22A〜26Bに示されている。MS基準スペクトルの試験は、低温で、m/e=42及び72のMS信号が主にTHFに由来し、またm/e=43及び58のMS信号が主にアセトンに由来することを示している。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の粒子形状及び粒度分布
例1〜12の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子粉末のSEM顕微鏡写真を取得することにより、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形状及び寸法を評価した。図27は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の画像を示しており、ここでは、これらの直径に対する反応時間の影響を見ることができる。全ての架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は球形である。
SEM顕微鏡写真を使用して粒度分布を割り出した。図28は粒度分布を示し、図30は、反応時間の関数としての架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の平均直径を示している。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の寸法は、の単峰性ガウス分布に従う。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の平均寸法は、直径のプラトー値に達したときの4時間の反応後の2.02±0.13μmから、15時間の反応後の3.9±0.3μmへ漸増する。0.13〜0.3μmの標準偏差、及び1.01未満の多分散性指数が極めて狭い分布を裏付けた。
モノマー濃度の影響
例1〜12の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の合成及び特徴に対する同じ溶媒(PPG−1000)中のモノマー濃度(DGEBA+DAT,a/e比=1.35)の影響を調べた。
モノマー濃度が増大するのに伴って、曇り点は明らかな減少を示す、すなわち、図29に示されているように、濃度が5wt%から30wt%へ変化するのに伴って380分から41分への減少を示す。この影響が予想される理由は、先ず第一に、濃度が高められるのに伴ってエポキシ/アミン反応がより急速に進行するからであり、また第二に、より高いモノマー濃度は、より低い変換率で相分離を誘発する状態図領域に相当するからである。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の特徴づけ
図31は、Tgに対するモノマー濃度の強い影響を実証する。すなわち、モノマー濃度が高められるのに伴ってTgは減少し、モノマー濃度1wt%における158℃からモノマー濃度30wt%における136℃へ減少する(最長反応時間後に、そして第2DSC走査中に得られた値)。このことは有意な差である。このトレンドは、第1DSC走査中に測定されたTg(合成終了時の値である)、又は第2走査中に測定されたTg(完全硬化後に粒子が達し得る最大値を表す)に関しても同じである。より高いTgはより高い架橋密度を意味するので、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効ストイキオメトリは1に近い。この高いTgは、粒子中に混和性ポリマーとしてPPGが存在することを排除する。なぜならば、PPG(混和性であるならば)は可塑化効果を有することになるからである。より低いTgはより低い架橋密度を意味する。このことにはいくつかの理由があり得る。すなわち、数ある理由の中でも、不完全な硬化、1から離れたストイキオメトリ、及び/又はPPGの可塑化効果が挙げられる。
SEM顕微鏡写真は、球状マイクロメートル・サイズの粒子の形成を裏付けた。図32は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の取得されたSEM顕微鏡写真のいくつかの例を示す。これらは、異なるモノマー含量を有する溶液から生成された。1wt%のモノマー濃度から調製された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のSEG画像上にはいくつかの凝集体が観察される。SEM顕微鏡写真を使用して、平均架橋型反応性ポリマーミクロ粒子直径(標準偏差を含む)を計算し、図33A及び33Bに示す。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の収率及び曇り点と同様に、異なるモノマー含量は異なる粒子成長反応速度及びプラトーにおける異なる平均架橋型反応性ポリマーミクロ粒子直径値をもたらした。この値はモノマー含量とともにほとんど線形に増大する。すなわち長い反応時間における直径は、1wt%の約1μmから30wt%の約6μmまで増大する。最小粒子(1μm)は、Tgが最高(158℃)ではあるがしかし収率が最低である粒子である。濃度が増大するのに伴って、たとえこれが極めて狭い分布範囲(1.002〜1.03)にあり続けるとしても、多分散性の増大が観察される。標準偏差は100時間の反応後の1wt%の場合の0.7μmから、5時間の反応後の30wt%の場合の1μmに増大した。
モル比の影響
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効アミン対エポキシ比(a/e比)は、供給物中の比(これはa/e比=1.35であった)とは異なる。供給物中のモル比の変動が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成及び特徴に与える影響を以下に説明する。4種のa/e比:0.7(過剰のエポキシ)、1(アミンとエポキシとの数が同じ)、1.35及び2(過剰のアミン)を試験した。
合成
アミン/エポキシ比が増大するのに伴って相分離までの時間が短くなり、a/e比=0.7の267分からa/e比=2の159分になる。この挙動はオリゴマー構造に関連し得る。この構造はモル比に強く依存する。すなわちa/e比>1において形成されるオリゴマーは、a/e比<1の時に得られるオリゴマーよりも、残りの−NH基とともに線形の構造を有し、a/e比<1の時に得られるオリゴマーは、ダングリングするエポキシ基を備えた分枝構造を有する。これらのオリゴマーは同じ化学構造を有さないので、異なる溶解度パラメータを有しており、結果としてこれらは、状態図が異なることによって同時に分離することはない。この挙動は、架橋反応速度と関連させ得る。この特性は相対モノマー組成によって影響される。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の特徴づけ
反応時間(5時間を超え次第)及び第1DSC走査又は第2DSC走査中に得られるTgの値は、所与のa/eモル比に依存するようには見えない。反対に、モル比の影響があるが、しかしこれは予測通りではない。具体的にはa/e比=1に対する最大Tgである。初期混合物中のa/e比が増大するのに伴って、Tgの減少が観察される。これらの値を表10に報告する。
a/e比=1及び1.35の場合、初期混合物中のa/e比と架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中のa/e比の差は小さい。しかしこの差は、a/e比=0.7及び2の場合、より大きくなる。双方の事例において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgはバルク試料(比較エポキシ例A)中よりも高い。たとえ架橋型反応性ポリマーミクロ粒子合成が広いa/e比範囲(0.7〜2)を用いて行われたとしても、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のa/e比は著しく狭い範囲(1〜1.44)内にある。得られた高いTg値は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中の混和性ポリマーとしてPPGを有する可能性を排除する。
図34に示されたSEM顕微鏡写真は、凝集を形成することなしに、球形ミクロ粒子を形成したことを裏付ける。顕微鏡写真を利用して、異なるのa/e比に対する反応時間(図35a及び35b)の関数としての平均直径を計算した。直径は反応時間とともに増大し、次いで10時間の反応後に一定値に達する。モル比は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子によって達成されるサイズに小さな影響を与える。すなわちa/e比=2及び1.35で最大粒子3.6/3.9μmが得られ、a/e比=0.7及び1で最小粒子2.9/3.2μmが得られる。
反応温度の影響
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応速度に影響を与えるパラメータは反応温度である。分散重合を介して架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を調製する際に、供給溶液中のモル比がa/e比=1.35、そしてモノマー濃度が10wt%である状態で、反応温度を80℃から160℃までとした。
合成
エポキシ−アミン反応は温度によって活性化される。予想通り、温度の増大とともに、相分離までの時間の短縮が観察される。相分離が行われる変換はより急速に生じる。すなわち曇り点は100℃の1時間から63℃の11.5時間へシフトする。より低い温度では、曇り点を溶液の光学的観察によっておおざっぱに推定した。曇り点は80℃で48時間に近く、50℃で144時間に近い(図36)。6ヶ月間にわたって溶液を室温で放置し、30〜60日間で溶液は不透明になり、90日後に沈殿した架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が観察された。反応温度が高い(160℃及び130℃)ときにのみ、完全な変換に達する。同じ反応速度的理由から、所与の反応時間にわたって温度を低下させた場合には収率がより低くなることが予測される。
反応を停止させた後、DGEBA及びDATの残留量に関して、残留溶液をSECによって分析した。実際に反応が80,100又は130℃で行われたときには、残留モノマーを検出することができ、例えばDGEBAについては約10〜12wt%、そしてDATについては2〜3wt%が、100℃の反応の場合にモノマーの初期供給物から未反応のまま残された。温度がより高い場合には、残留溶液中にSECによって存在が見いだされるオリゴマーは少なくなった。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の特徴づけ
所与の温度において、Tgに対する反応時間の強い影響はない(160℃を除く:この場合、1.5時間の反応後に求められた第1点は140℃に近いTgを有するが、しかしプラトー値には5時間後に達する)。第1走査中及び第2走査中に記録された値を表11に報告する。合成の直後に得られた値(第1走査)、又はDSC炉内の後硬化サイクル後に得られた値(第2走査)は、反応温度に依存する差を示す。ガラス化現象(ここではTg値が所与の系の硬化温度にほぼ等しい)が反応を停止させることがよく知られている。この反応は温度が増大すると直ぐに再開する。にもかかわらず、低い温度でも高いTgが得られた(例えばT=80℃での反応の場合Tg=125℃)。注目すべきなのは、最終Tg値が反応温度に依存することである。つまり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子構造は、初期モノマー供給物が同じであるという事実にもかかわらず同じではない。比較としては、低い温度で部分的に反応させられ、次いでより高い温度で後硬化される同じ系(比較エポキシ例A及び/又は比較エポキシ例B)から合成されたバルク・網状体は同じ最終Tgを示すことになる。溶液重合に関してはこれは当てはまらない。
2つの理由がTgの変化を説明し得る。第一に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効ストイキオメトリである。参照A(a/e=1.35,T=130℃)は1.2に近い真のストイキオメトリを有している。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子がエポキシ及びアミンだけから形成されるという仮定に基づいて、有効ストイキオメトリの同じ計算を行った。反応温度が低下するのに伴って、有効ストイキオメトリは増大して、T=160及び50℃に対してそれぞれ1から1.5になることが判っている。第二にPPGは、Tgを低下させることができる、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中の混和性ポリマーである。
図37に示された顕微鏡写真は、球形のミクロ粒子が温度とは無関係に、そして明白な凝集なしに形成されることを裏付ける。反応時間及び反応温度の関数としてのこれらのミクロ粒子の平均直径を図38a及び38bに示す。平均架橋型反応性ポリマーミクロ粒子直径の大きな変化はない。反応温度80〜160℃の場合、直径は3.1〜3.9μmであり、50℃においてのみ、直径は僅かに大きく、約5μmである。
PPG−ドデカン混合物
異なる分子量及び組成に対してエポキシ樹脂の溶解度パラメータが変化するのに伴って、分散媒への非溶媒の添加が分散重合にどのように影響を与えるかを見ることが必要であった。この目的のためにドデカンを選んだ。それというのもドデカンはエポキシ及びアミンのための非溶媒であり、沸点が比較的高いからである。非溶媒の添加は混合物の溶解度パラメータの3つの全ての成分を変化させる。分散媒として10wt%及び50wt%のドデカンを含有する2種のドデカン/PPG−ドデカン混合物を調製した。下記段落において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の曇り点、反応収率、並びにTg及び形態に対するドデカン添加の影響について説明する。
合成
ドデカンをPPGに添加すると、相分離までの時間が短縮され、純粋PPG−1000の場合の380分から溶液中50wt%のドデカンの場合の58分になる。この結果は、ドデカン添加によって促進されて溶解度パラメータが変化するという理由によるものと予測された。アミン−エポキシ反応の速度は同じままのはずである。それというのも、温度、a/e比及びオリゴマー濃度が不変のままだからである。
50wt%ドデカンを有する溶液は、10wt%ドデカン混合物と比較して、より高い架橋型反応性ポリマーミクロ粒子収率をもたらす。
PPG/ドデカン=90/10,反応時間15時間(例10)、及びPPG/ドデカン=50/50、反応時間10時間(例12)、双方ともT=130℃、を用いて合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を分析するために、TGAを利用した。PPG又は50/50のPPG/ドデカン混合物中で合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、T5%=338℃(バルク・網状体、参照Aよりも低い)を伴う同じ挙動を有しており、溶液中僅か10wt%のドデカンを使用して合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、140℃で1.5%の最初の質量損失、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と比較して約20℃低いT5%=319℃を伴う僅かに異なる挙動を有する。この差はおそらく、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子清浄化処置後に残された溶媒に由来する。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の特徴づけ
異なる反応時間後にサンプリングされた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgも調べる。所与の系の場合、Tgは、値がプラトーに達するまで反応が進行するのに伴って増大する。100〜160℃の温度で合成された、DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合、5時間の反応後に「Tgプラトー」に達する。このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の化学組成及び構造が5時間の反応後に変化していないことを示すと考えられる。
図39から、非溶媒をPPGに加えた時に球形粒子が形成されることが判る。粒度分布及び平均架橋型反応性ポリマーミクロ粒子直径を反応時間の関数として計算し、そしてこれを図40a及び40bに示した。いくつかの相違点が明らかになる。第一に、短時間の反応後には、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の寸法は1μm未満であり、すなわち3.5時間後には10wt%ドデカンで0.9±0.4μm、そして1.7時間後には50wt%ドデカンで0.7±0.3μmであった。このことは、ドデカンが存在するとクラウド点までの時間を短くなることに関連させることができた。第二に、50wt%ドデカンの場合の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の平均寸法は、反応時間とは無関係に、PPG−1000単独で合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の平均寸法と同じである。しかし、図39の顕微鏡写真を比較することによって明らかなように、ドデカンの主な作用は、粒度分布を広げることである。反応が停止されたとき、直径はそれぞれ3.5±1.5μm及び3.9±0.3μmであった。ドデカンの添加は、500nmという小ささの直径を有する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成を可能にした。第三に、10wt%ドデカンの場合の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の平均直径は、PPG−1000単独、及びPPG/50wt%ドデカンの場合におけるよりも小さい。すなわち架橋型反応性ポリマーミクロ粒子平均直径は1.8±0.7μmに達する。
結論
PPG及びドデカンの混合物中で架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を合成することによって、より広い粒度分布を得ることができる(特に50wt%ドデカンを使用)。広い粒度分布は潜在的に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が充填されたエポキシ・網状体中の不均一度を高くし、加えて、10wt%ドデカンを使用することにより、平均直径を2分の1減少させる。他のパラメータ、例えば収率、ガラス転移温度、及び粒子中のPPGの存在は非溶剤の添加によって影響を受けることはなかった。
ジアミン構造の影響
イソホロンジアミン(IPDA)は、エポキシ樹脂と一緒に使用される硬化剤である。その化学構造(脂環式)に起因して、これはより低い温度で反応する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を合成するためにIPDAを使用することにより、反応温度を低下させることができた。このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を合成する際に低沸点の溶媒を使用するのを可能にした。ストイキオメトリ、温度、及び溶媒の、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形態及び組成に対する影響をここで論じる。
参照系の特徴づけ
IPDAを基剤とするミクロ粒子(例19〜25)に対してDATを基剤とする粒子(例1〜12)と同じプロトコルを適用した。但しこの場合参照Bの反応温度は130℃ではなく80℃とした(a/e比=1.35,c=10wt%,溶媒:PPG−1000)。次の(1)〜(4)が観察された。(1)4時間後に80℃で相分離が生じる(これはDATの場合同じ条件でほぼ48時間であった);(2)反応収率は24時間の反応後に76wt%に等しいことが判った(PPG−3500中で行われた同様の合成が収率94%をもたらす);この値は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の異なるバッチで確認された;(3)架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTGA分析は、DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子において得られるものと極めて似た質量損失対温度プロフィールを明らかにした。すなわち劣化開始は同じ温度である(T5%は336℃に等しい)が、しかし、曲線はより低い温度に僅かにシフトされる;(4)所与の反応時間後にサンプリングされた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のガラス転移温度は、曖昧さなしに所与の方法で割り出すことは難しかった。
図41A及び41Bは、17時間の反応後(図41A)及び24時間の反応後(図42B)の、2つの連続した走査中に得られたサーモグラムを示す。既に述べた(架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の熱特性)ように、第1走査中の信号は残留溶媒蒸発によって極めて頻繁に攪乱される。これは図41Aに当てはまる。従って、このグラフから抽出された53℃に等しいTgは、溶媒蒸発の吸熱ピークの存在に起因して過小評価されているのかもしれない。より長時間の反応後、信号は溶媒によって攪乱されることはなく、93℃に等しい明白なTgを観察することができる。
表12に示されているように、このエポキシ−アミン複合系の最大限達成可能なTgは149℃もの高さである。従ってエポキシ基及びアミン基のうちのいくらかはこれらの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中に未反応のまま残る。このことは、反応が停止した(T=130℃で15時間)ときに最大Tg値に達し得る、DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と比較して異なる挙動である。しかし、この反応温度並びに反応時間は、DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合には、より高いTgをもたらすのにより有利である。アミン/エポキシ比が1.35のバルク・網状体の場合、Tg温度は125℃に等しいが、しかし第2走査後でさえ、図41a及び41bに示されているように、IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対応するこれらの値には達しない。
このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効ストイキオメトリが初期モノマー溶液中のものとは大幅に異なることを裏付ける。DSC中の後硬化後の第2走査中に得られるTgを考えると、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中には残留溶媒(PPG)が存在しないことを考えると、a/e比の関数としてのTgの変化から有効ストイキオメトリを推定することができる。2つの値が可能である:0.8/0.85(過剰のエポキシ)又は1.5/1.6(過剰のアミン)。第2の値は、反応開始時にIPDAが過剰であるため、より現実的と思われる。
SEM顕微鏡写真が示すように、IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は球形粒子であり、しばしば凝集されている(特に短い反応時間(4.5時間)後の試料の場合、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgが低い場合)。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、特に短い反応時間では、残留アミノ基又はエポキシ基を有するかもしれないと考えられる。これらの基は乾燥工程中に反応して凝集を招くことがある。反応時間は粒径に影響を与え、2μmを3.5μmに増大させるが、しかし、分布は狭いままである。反応終了時の直径は、参考のDATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に見いだされるものと同じ範囲内にある。
モル比の影響
例26,19及び24(それぞれアミン対エポキシ・モル比:0.7,1及び1.35)の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形態及びTgを試験することにより、モル比の影響を調べた。Tgは表13に報告する。17時間の反応後、第1走査は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(第1走査信号はまた溶媒蒸発によって攪乱された)のTgを49〜57℃という低いものとして明らかにした。しかし後硬化後、Tgは特に初期a/e比が低い場合に増大した。DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合のように、最大Tgがa/e比=0.7に関して得られた。SEM顕微鏡写真は球形の、非凝集ミクロ粒子を示している。高Tg架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(a/e比=0.7)画像の一例が図43に示されている。直径は初期a/e比値とともに僅かにだけ増大し、それぞれa/e比=0.7,1及び1.35に対して2.7μmから3μm及び3.2μmとなる。
合成温度(80,100及び130℃)及び非溶媒(分散媒に対して10wt%のドデカン)の添加の影響
この一連の試験を通して、供給物a/e比をa/e比=1.35に、そしてモノマー濃度を10wt%に維持した。異なる溶媒(1−オクタノール、シクロヘキサノン及びシクロヘキサン)を分散媒として利用する合成処置において、いくつかの事例では架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が得られたが、しかし収率が低く架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の凝集を伴った。
非溶媒添加及び温度の、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形態及び組成に対する作用は次の通りである:(1)表14は、温度に対する収率の依存性を示す。短い反応時間(4.5時間)では、いくつかの相関関係が存在する。しかし長い反応時間(17時間)では、収率は温度と無関係に90%を上回る。(2)架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは、17時間の反応後に反応温度とともに変化することはなく、反応温度が高いほどTgも高くなることが予想されるにもかかわらず、50℃に近い。50℃という温度は、IPDAの高い反応性を考慮すると、130℃で長い反応時間が経過しているにしては明らかに低すぎる。
SEM画像は図44aに示されているような球形ミクロ粒子を明らかにする。反応時間及び温度の関数としての平均直径は、同じ図44bに示されている。これら2つのパラメータは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の粒度に対して有意な影響を与えないことが明らかである。
結論
DGEBA及びIPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の合成は、分散媒としてのPPG中又はPPG+10wt%ドデカンの混合物中で使用して、DATよりも低い温度で実施することができた。両溶媒中で球形ミクロ粒子が得られ、これらのミクロ粒子の粒度分布は狭い。DATを基剤とするミクロ粒子に関しては、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有効ストイキオメトリは、DSC分析に基づく供給物中の値とは異なる。直径は、PPG中の合成では3μmの範囲にあり、またPPGとドデカンとの混合物中の合成では約5μmである。後硬化後、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは、合成条件に応じて102℃〜141℃である。
熱硬化性架橋型網状体の調製
熱硬化性架橋型網状体の最終フィルム/網状体特性に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子添加の影響をここに示す。数多くの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子で充填された熱硬化性架橋型網状体を、DER及びIPDAを基剤とする調製物で合成した。利用した架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はIPDA又はDATを基剤とした。いくつかの調製パラメータの影響を調べた:調製物(硬化性エポキシ系)a/e比:0.7,1及び1.35;架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のタイプ:種々の合成パラメータ(a/e比、温度、時間)を介して合成され、ひいては異なるTg及び直径を有する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子;及び、熱硬化性架橋型網状体を基準とした架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率<1,3,5,10,20,40重量パーセント(wt%)。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加は、硬化反応速度を遅くすることにより、熱硬化性架橋型網状体の硬化挙動に反映した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が部分硬化又は完全硬化されると同時に、粒子は熱硬化性架橋型網状体の硬化発熱を減少させるヒートシンクとして作用した。初期粘度はこれらの粒子の添加時に増大したが、しかしさほど大幅ではなく、従って、まさに硬化開始時には、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた熱硬化性架橋型網状体の粘度は、ニート調製物の粘度よりも低かった。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた熱硬化性架橋型網状体の機械特性に関しては、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との組み合わせに応じて、いくつかのシナリオを区別することができた。第一に、DMAによって分析して、単一のα転移を有する熱硬化性架橋型網状体である。これらの網状体は、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgが接近しており、組成が同じであるときに得られた。電子顕微鏡法は、クリアな破面(裂け目が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子内を伝搬する)によって示された良好な粒子埋め込みを示唆し、ひいては熱硬化性架橋型網状体のための1つの均一な網状体を示す。
2つの転移を有する熱硬化性架橋型網状体:このような熱硬化性架橋型網状体は、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgが異なるときに得られる。調製物(ここでは、硬化性エポキシ系のa/e比が0.7に近く、これに対して架橋型反応性ポリマーミクロ粒子がアミン官能化されることによって提供される)間の相容性は次の通りである。電子顕微鏡法は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系に対して強い付着力を有していないこと、及び裂け目が硬化性エポキシ系内及び粒子−硬化性エポキシ系界面を伝搬することを示している。ガラス転移は極めて広幅である。分散相及び硬化性エポキシ系のために同様の化学組成を用いて、このような不均一網状体を得ることは注目に値する。
1つよりも多いα転移を有する一方で、完全に埋め込まれた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を維持する網状体はSEM画像化によって示されるように、クリアな破面を有している。Tg転移は高温範囲内の第2ピークによって拡張された(ニート硬化性エポキシ系と比較して)。高い架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング・レベル(20wt%超)の場合、Tg転移は、おそらく硬化レベルが低いことにより、より低い温度範囲にも拡張する。熱硬化性架橋型網状体の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面を有さない状態で、同じ樹脂/硬化剤からこのような不均一網状体を得ることは注目に値する。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が少量であっても熱硬化性架橋型網状体の動的機械挙動に影響を与えることに注目するのは興味深い。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移の規模は、添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量パーセント(wt%)に対して比例しない。
主な目的は、熱硬化性架橋型網状体を生成することにより、ニート硬化性エポキシ系と比較して異なる材料特性を達成し得ることを証明することであった。具体的には、Tg転移は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を添加することにより、所与の硬化レジームのために拡張した。この場合、これらの粒子は熱硬化性架橋型網状体中に完全に埋め込まれることを条件とした。
硬化性エポキシ系の組成は、熱硬化性架橋型網状体形成に際して、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成と類似した。硬化性エポキシ系のモル比a/e比は0.7,1又は1.35であった。硬化性エポキシ系のほとんどは、種々異なる条件でIPDAから合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用して調製した。少数のサンプルだけが、DAT(ジアミノトルエン)を基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用して調製された。なお、これら2つのタイプの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子間の主な違いはそのエポキシ変換レベル、ひいてはTgである。
IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
分散前に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を上記のように洗浄し遠心分離した後で−25℃のアセトン中に懸濁液として貯蔵した。熱硬化性架橋型網状体調製のための種々異なるプロトコルをテストし、下記プロトコルが最も適切なものと考えられた:
テトラヒドロフラン(THF)中にエポキシ樹脂(D.E.R.331(登録商標))を50wt%の濃度で溶解させる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をエポキシ樹脂溶液に添加し、そして超音波プローブで15分間にわたって超音波処理した。真空下でTHFを除去する(15時間室温23℃)。アミン硬化剤、IPDAを架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及びエポキシ樹脂混合物に添加し、手動で混合する。混合物を真空下で約30分間にわたって室温(23℃)で脱ガスする。次いで熱硬化性架橋型網状体をPTFE接着フィルム上に流延する。熱硬化性架橋型網状体の乾燥膜厚は100μmに近かった。熱硬化性架橋型網状体・フィルムを80℃で2時間にわたって炉内で架橋し、続いて後硬化工程を施した(160℃で2時間)。
調製済フィルムのリストを、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の説明(ミクロ粒子のTg及び直径)とともに表15で報告する。
熱硬化性架橋型網状体フィルム調製
調製前に、超音波プローブを使用して粒子をTHF中に分散させた(所与のwtローディング・レベル)(15分)。エポキシ樹脂(DER331)をTHF(50wt%/50wt%)中に溶解させた。分散体を溶液と混合させた後、THFを真空下で除去した(室温、4時間)。アミン硬化剤(IPDA)をエポキシ樹脂中の粒子分散体に添加した。ここでエポキシ樹脂とアミン硬化剤とは、表15及び16に示されているようなa/e比を有した。硬化反応速度/レオ反応速度を直ぐに測定する一方、PTFE接着フィルム上の膜を硬化させることにより、自立フィルムを形成した。乾燥膜厚は約100μmであった。フィルムを80℃で炉内で硬化させ、続いて後硬化工程を施した(160℃で2時間)。
熱硬化性架橋型網状体・フィルム
フィルムの例27〜36を下記表15及び16に示す。
結果及び考察
化学レオロジー
熱硬化性架橋型網状体中のゲル化現象は、異なる試験方法によって観察することができる。動的モードで用いられる化学レオロジー測定:時間による粘度の変化、及び反応時間の関数としてのtanδの変化が異なる周波数及び等温条件で記録される。目的は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在が熱硬化性架橋型網状体のゲル化に影響を与えるかどうかを見極めることであった。80℃の等温硬化中の粘度(η)の変化が、a/e比によって異なる硬化性エポキシ系の3種のニート調製物に関して、図45にプロットされている。所与の反応時間において、ゲル化(Mw及びηの分岐によって表される)に相当する粘度の増大が観察された。ゲル化時間は、a/e比に依存する:すなわちこれはa/e比(過剰のエポキシ)の減少とともに増大する。ゲル化時間をより正確な観察するために、多周波数試験を実施した。一連の異なる周波数に対してtanδ曲線を交差させることにより、ゲル化時間をマーキングした。
得られた曲線の一例を、硬化性エポキシ系のニート調製物に関して図46に示す。ここではアミン対エポキシ比はa/e比=0.7であった。80℃で26分間の反応後、ゲル化が明らかに観察される。a/e比=1及びa/e比=1.35を有する調製物に対する同様の試験は、それぞれ、18分又は12分のゲル化時間をもたらす。
異なるローディング率の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(1wt%〜40%)を硬化性エポキシ系(a/e比=1.35のDGEBA−PIDA調製物)中に添加した。複素粘度の発生を図47にプロットし、多周波数試験から得られたゲル化時間を図48にプロットする。これらの曲線から2つの結論を引き出すことができる。すなわち第一に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系に添加するとゲル化時間が遅れ、そして第二には、熱硬化性架橋型網状体の初期粘度はニート系と比較して(最高量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子、40wt%を除く)低い。先験的には、これらの結果は予測されなかった。にもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在におけるゲル化までの時間の増大は、硬化性エポキシ系(a/e比=0.7)及び10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対する異なるストイキオメトリを用いて実現された試験によって裏付けられる。これはさらに顕著である。
初期粘度の低下は、これらの熱硬化性架橋型網状体が硬化前に過剰に真空蒸発されたにもかかわらず、残留溶媒(THF)の存在によって説明することができる。ゲル化時間の増大は、硬化性エポキシ系のストイキオメトリの低下、又は希釈効果により硬化性エポキシ系の反応性が低下したことに起因し得る。熱硬化性架橋型網状体の発見事項を比較すると、1wt%〜10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加は初期粘度に影響を与えることがなく、そして20wt%及び40wt%というより多くの量の場合には初期粘度の増大が観察されると結論づけることができる。多周波数試験から得られるゲル時間は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング・レベルとは無関係のように見える。
赤外線分光法による反応速度
赤外線分光法を用いて、熱硬化性架橋型網状体の硬化反応の反応時間を割り出した。全ての試料に対して等温モードで硬化を行った(T=80℃)。3つの異なるa/e比を有するニート硬化性エポキシ系及び熱硬化性架橋型網状体(例35及び例41〜47の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系)を調べた。図49は反応時間の関数としてのIRスペクトルの発生を示している。当該ピークは915cm−1(エポキシ基に関連する)及び3450cm−1(ヒドロキシル基に関連する)であり、第1ピークは反応時間の関数として低下するのに対して第2ピークは増大する。エポキシ基の変換をエポキシ属性ピークの消失として計算し、これを830cm−1(=CH−p−フェニレン基に由来する)におけるピークによって基準化し、そして図50で報告する。前述の図面から、エポキシ基の変換はアミノ硬化剤が過剰であるとき(a/e比=1.35)により速く、到達される最大変換率はより高い(90%)。エポキシ過剰(a/e比=0.7)の場合、試験時間内の観察し得る最大変換率は65%に近い。これらの結果は、粘度測定に対する前の観察と合致する。
上記ゲル化時間の値を用いて、ゲル点における変換率を推定し、理論変換率と比較することができる。これらの値を表17に報告する。試験値は理論値に極めて近い。小さな差異は、2つの異なる機器を使用したという事実による。これらの機器はそれぞれ、試料及び温度平衡化に対して異なる設定を有する(レオメータ及びIR分光計参照)。理論計算において、全てのアミノ基及びエポキシ基の等反応性が想定された。このことはエポキシ基の変換に関しては正確な想定であるが、しかしIPDAに関しては2つのアミノ基の反応性が異なり、ひいては、ゲル点における理論変換率の僅かな増大を招く(モルA4+B2混合物の場合、0.58から0.62になる)。ゲル点における変換率の試験値と理論値との合致は、ニート・エポキシ系におけるレオロジー測定値及び反応速度測定値が信頼性高いものである証拠である。
熱硬化性架橋型網状体の硬化反応速度に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加の影響を図51及び52に示す。ローディング・レベルが十分に高い場合、ヒドロキシル・ピークの初期形状が修正される。なぜならば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はヒドロキシル基を含有するからである。図51(上及び下)の曲線間の相違点は、IRスペクトル(上)から抽出された基礎データが架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の初期エポキシ変換率により補正されている(下)ことである。この初期変換を計算するために、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のガラス転移温度値が使用され(Tg=49℃)、そしてこの値は、Tgを変換率に関連させるDiBenedetto等式で実行される。他方において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が供給物(この特定事例においてa/e比=1)と同じストイキオメトリを有するという想定がなされた。
初期変換率は、熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の量に直接に関連づけられるので、多量のミクロ粒子(20及び40wt%)が添加されると、曲線形状は大幅に異なってくる。多量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(40wt%)の存在においては反応速度が低下し、そして最大変換率が低くなると考えられる。より少量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合、ニート系と高充填系との間の中間的挙動が観察されるが、しかし架橋型反応性ポリマーミクロ粒子wt%の硬化反応速度に対する明確なトレンドを伴うことはない。
DSC
DSCを用いて、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が熱硬化性架橋型網状体の反応性に影響を与えるかどうかを評価した。反応エンタルピー値、ΔH、及び最大ピーク時温度から反応性を推定した。第2走査中に測定されたTgの値も報告する。図53は、ニート硬化性エポキシ系(ダイヤグラム左側)、及び熱硬化性架橋型網状体(架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系−ダイヤグラム右側)系(10wt%)において得られるDSC信号の比較をフィルム中の異なるa/e比に関して示している。アミン基の過剰に伴い、単一の広幅なピークが観察され、モル・アミン対エポキシの比では、高温側にショルダ(100℃及び150℃におけるピーク)が出現する。このショルダはまたエポキシ含量の更なる増加によって維持される。この挙動はおそらくIPDA中の第一アミンと第二アミンとの反応性の差、又はエポキシ単独重合に由来する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在において、a/e比=0.7の信号が変化する:先ずDSC信号は100℃の近くで何らかのノイズを示し、2つのピークの規模が逆転する。150℃のピークは100℃のピークよりも高い。
反応熱値(ΔH)を表18に報告する。熱硬化性架橋型網状体に対して得られる値は、ニート硬化性エポキシ系調製物の値よりも不相応に低い。
他の熱硬化性架橋型網状体調製物において同様の試験を実現した。ΔHと架橋型反応性ポリマーミクロ粒子量との関係のプロットを図54に報告する。トレンドは常に同じである。すなわち、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量の増大に伴ってΔHが減少するが、しかしこの減少は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率に対して比例しない。これらの結果を説明するためにいくつかの理由を想起することができる。第一に、エンタルピーの割り出しがあまり正確ではない。(ベースライン決定における小さなシフトがエンタルピー値を変化させ得る)。第二に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在において、信号は極めてしばしばノイズを発生する。これは残留溶媒の存在に起因し得る。最後に、反応はDSC走査中に完了に達しない。実際に、反応は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在においてより低速で進行することが前に示された。
DSCによって得られた第2パラメータは、第2加熱走査から求められた硬化済熱硬化性架橋型網状体のガラス転移温度である。いくつかの事例(例えば硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の異なるストイキオメトリ)において、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量が10wt%を上回る場合、DSCサーモグラムにおいて2つのガラス転移を観察することができる。一例を図55に示す。調製物及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を変化させることによるTgの変化を図56にプロットする。前の試験から、後硬化済のIPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは約130℃であり、これは、第2転移がエポキシ充填系内で見いだされた値とほぼ同じである(第1転移は硬化済マトリックスに由来する)。充填された系内の硬化性エポキシ系に関して見いだされた平均値は、ニート硬化性エポキシ系のTgに近い。これらの値は散乱し、充填剤添加量とは無関係である。硬化性エポキシ系と架橋型反応性ポリマーミクロ粒子とのTgに最大の差が出るのは、硬化性エポキシ系が過剰のエポキシ(a/e比=0.7)を有する場合である。
熱硬化性架橋型網状体の形態
視覚的観察
熱硬化性架橋型網状体・フィルムの厚さは約100μmであり、幅は8.5cmである。全てのフィルムは透明であるが、但し、例37の1つの高充填網状体は不均質で極めて脆弱に見えた。
光学顕微鏡法
熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子分散体の品質を評価するために、光学顕微鏡法を用いた。しかし、硬化性エポキシ系と熱硬化性架橋型網状体(両方とも同じ成分(DGEBA+IPDA)を基剤としており、その結果同様の屈折率を有する)との間のコントラストが欠乏しているので、個々の粒子を観察することは難しかった。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は均一に分散されたように見える。
熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在をよりよく観察するために、ガラス・スライド上に調製物を流延した。乾燥済フィルムの厚さは約30〜50μmであった。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子密度が1から10wt%まで増大するのが観察された(図20)。
DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を利用すると、これらは光学顕微鏡法を用いて硬化済フィルム内で明確に見ることができた。それというのも、粒子と硬化性エポキシ系との間のコントラストがより高いからである。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は均一に分散されているように見えるが、しかしフィルムの厚さが単一の粒子の識別を阻む。この分析は定量的にすぎないが、しかし熱硬化性架橋型網状体中には架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の大型凝集体は存在しないことが示される。
電子顕微鏡法
凍結破面をSEMで観察することにより、熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との相互作用の質を評価した。
熱硬化性架橋型網状体のa/e比の破面に対する影響を図57A〜57Cに示す(熱硬化性架橋型網状体は10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を有している)。硬化性エポキシ系がモル組成(IPDA−1)又は過剰のアミン(IPDA−1.35)を有するように調製される場合、破面は平滑に見える。すなわち架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、より高い倍率でも観察できない。このような平面は典型的には脆弱なニート・網状体である。反対に、過剰のエポキシモノマー(IPDA−0.7)を有するように調製された熱硬化性架橋型網状体の顕微鏡写真は、球面形状の存在によって特徴づけられる粗面を示した。これはおそらく、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面に裂け目が伝搬することに関連する。硬化性エポキシ系のa/e比が表面形態に強い影響を与えることを結論づけることができる。
熱硬化性架橋型網状体の破面に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量の影響も調査した。2つのタイプの硬化性エポキシ系、つまり、エポキシ過剰で調製された硬化性エポキシ系(IPDA−0.7)に基づく第1のタイプ、そしてアミン過剰で調製された硬化性エポキシ系(IPDA−1.35)に基づく第2のタイプを考察する。これらは10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を有して、最初は異なる破面を示した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はIPDAを基剤としており、初期モノマー供給物中、a/e比=1であった。
2種の最高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対して得られた顕微鏡写真を、a/e比=0.7に基づく硬化性エポキシ系に関して図58a〜cに示す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量が20wt%である場合、10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子だけを充填された熱硬化性架橋型網状体と比較して、より多くの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び孔を観察することができる。破断経路は主に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子−硬化性エポキシ系界面に従って延びる。それにもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を通る裂け目に関連するように見えるいくつかの裂け目を観察することもできる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量が40wt%である場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(又は関連孔)は多数存在する。注目すべきなのは、単分散球体のランダム充填は50vol%という係数を有するため、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子では網状体の完全特別充填には達しないことである。裂け目は本質的には、硬化性エポキシ系中を伝搬する。加えて、顕微鏡写真は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との悪い相互作用を証明する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面は明確に画定されている。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の表面は湿潤されているが、しかし完全に平滑である(対応孔も同様)。このことは、硬化性エポキシ系が最初はこれらの粒子を完全湿潤し、屈折率が同じであるにもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と0.7a/e比の硬化性エポキシ系との相互作用は弱いという結論を導き出すことができる。
熱硬化性架橋型網状体が過剰のアミン(a/e比=1.35)で調製される時には、完全に異なる破面を観察することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はもはや明確に見ることはできない。さらにこれらはボイドがない。裂け目は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中を移動し、従って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との相互作用は極めて強力であるように見える。両事例(IPDA−0.7及びIPDA−1.5)において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の理論上の密度を計算し、試験観測値と比較した。計算は直径4μmの球体の均一充填に基づいている。40wt%の含量の場合、100平方μm当たり480個の球体を与える。この値は試験値に近い。加えて、熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の粒度は、合成終了時にこれらの粒度に類似する。このことは、エポキシプレポリマー又は硬化剤による架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有意な膨潤が処理中に発生しないことを意味する。
充填された全ての熱硬化性架橋型網状体は透明である。SEM試験は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系中に良分散されることを示す。このことは高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合に特に見ることができるが、しかし低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関しても状況は同じと考えられる。硬化性エポキシ系のモル比(0.7又は1.35)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との弱い又は強い界面相互作用を形成することに対して優勢な影響を与え、結果として、裂け目が材料中を伝搬する仕方が異なる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系の組成は同一なので、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との強い相互作用は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系内に埋め込むことと見なすことができる。
動的機械分析
動的固体挙動修正を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量、及び硬化性エポキシ系のモル比に応じて試験した。さらに、動的機械分析は、硬化性エポキシ系中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在によって誘発される不均一度の特徴付けを可能にする。
このような試験の典型的な例は、ニート硬化性エポキシ系(a/e比=1)に関して図59に示されている。貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び損失係数(tan δ)が温度の関数としてプロットされる。主転移δは、大きな分子運動に相当し、DSCによって測定されたガラス温度範囲に密接に関係する。損失係数Tδの最大値における温度値、及び半分の高さΔδで測定された損失係数の幅に特別な興味が集められる。半分の高さΔδは硬化性エポキシ系の不均一度に関連する。
ニート硬化性エポキシ系に対するストイキオメトリの影響
図60に示されているように、硬化性エポキシ系のa/e比はTg転移に強い影響を与える。DSCデータと同様に、Tgは157℃に等しいモル組成に関する最大値であり、次いでこれは低下して過剰のアミン(IPDA−1.35)に関しては136℃に達し、また過剰のエポキシ(IPDA−0.7)に関しては98℃に達する。さらに、後者の場合、114℃で見ることができる高温側のショルダに基づき、損失ピークはより広幅である。このような挙動は均一であるニート・エポキシ・網状体中では普通ではない。実際には2つのピークは熱可塑性/熱硬化性ブレンドに見られるように材料中の2つの区別可能な相を意味する。仮説を立てるならば、それは、高度に過剰のDGEBAとアミノ基の全てとが反応し、次いで残留エポキシがある程度までエーテル化を施されるか、又は硬化サイクル中にエポキシ単独重合を施されることである。この第2のタイプの反応は、支配的なエポキシ−アミン相と比較して異なる架橋密度を有する相の形成をもたらし得る。
熱硬化性架橋型網状体中の硬化性エポキシ系ストイキオメトリの影響
ニート・エポキシ・網状体と同じa/e比の硬化性エポキシ系中に10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を添加することの影響を図61に示す。これらの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTG初期値は51℃であり、完全硬化後には131℃である(DSCによって測定)。硬化性エポキシ系ストイキオメトリが1の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有意な影響を損失係数に見ることはできない。転移の幅広さはおそらく、硬化性エポキシ系転移を架橋型反応性ポリマーミクロ粒子転移にスーパーインポーズすることに起因して、ニート硬化性エポキシ系と類似するように見える。硬化性エポキシ系ストイキオメトリが0.7の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移は、T=138/139℃で現れる付加的なピークとして明確に見ることができ、これに対して、(硬化性エポキシ系に由来する)主転移はニート硬化性エポキシ系と極めて類似したままである。興味深いことに、a/e比が1.35であるとき、Tg転移は高温範囲のショルダによって拡張される。この転移は、ニート硬化性エポキシ系に関しては見ることはできず、従ってこれは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に由来する。
熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量の影響
熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量は、2つのタイプの硬化性エポキシ系中1wt%〜40wt%であった。一方の硬化性エポキシ系はエポキシ過剰で調製され、他方の硬化性エポキシ系はアミン過剰で調製される。DMAによって得られる結果は次の通りである。
IPDA−0.7を基剤とする調製物。
試料に関して、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移はtanδと、常に同じ温度に近い温度との関係を示すグラフ上で見ることができる(図64A〜64B)。これらのピークの規模が、添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量分率とは独立していることを見るのも極めて驚くべきことである。同じ曲線が線形スケール上でも示される。このスケールを用いて、中央高さのtanδピークの幅を測定する。低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関しても、転移を見ることができる。これは表15の例33に対応する図63で実証される。ここでは、温度の関数としてのE’及びE’’の変化も報告されている。E’の降下は、5.5MPaにおけるゴム状プラトーに達する前の、2つの転移に相当する2つの明確なステップを示す。
上で報告されたスペクトルの付加的な特徴は、いくつかの事例において主転移(硬化性エポキシ系に対応する転移)が修正されることである。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が低含量(<5wt%)である場合、αピークの形状は、ニート硬化性エポキシ系中に観察されるピーク、すなわちショルダを有する広幅ピークと類似して見える。しかしその規模は著しく低下させられ、今や、ニート硬化性エポキシ系に対応する1.1ではなく0.4に近い。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が高含量(10及び20wt%)である場合、唯一のより狭幅の転移がT=106/107℃で観察される。このシリーズの種々異なる網状体の場合、E’R,Tα,ΔTα及びTgの値を表19に報告する。ここに報告されたΔTαは主α転移に相当する。2つの群を区別することができる。すなわち、主ピーク基準のΔTαを考えるとより不均一な低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を充填された熱硬化性架橋型網状体の群であって、これらはまた、ニート硬化性エポキシ系の値に近いゴム弾性率(5.5〜7.1MPa)を有し、高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は主ピークを狭くし(ニート硬化性エポキシ系と比較しても)、熱硬化性架橋型網状体は、ニート硬化性エポキシ系と比較して高いゴム弾性率(8.8〜12.1MPa)を有している。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量分率とともにE’が増大することが予測される。それというのも、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系よりも高い架橋密度を有しており、従って、より高いゴム弾性率を有するからである。熱硬化性架橋型網状体の弾性率は、2つの異なる相(硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子)の組み合わせの結果であり、従って、2つの異なるTαがDMA曲線内に現れる。電子顕微鏡法はまた、2つの相の存在を明示した。なお、破面のSEMは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系内に完全には埋め込まれなかったことを示している。
充填済網状体の不均一性を見ると、最も驚くべき点は、少量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の強い影響である。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の強い影響である。ここでは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子転移の規模はwt%とは無関係であるように見える。転移はΔT=70℃もの幅広さである。このことは、より高いローディング率の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子にまで範囲が及ぶ。
IPDA−1.35を基剤とする調製物
硬化性エポキシ系を過剰のアミンで調製する場合、状況は著しく異なってくる。この硬化性エポキシ系は、完全硬化済架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のガラス転移温度に極めて近いガラス転移温度(DSCによって割り出して)127〜131℃を有する。図64に示されたグラフには、1つの主転移とともに、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子量の増大に伴うより高い温度への僅かなシフト、及び同時に規模の低下のトレンドを見ることができる。
最高量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(20及び40wt%のローディング率)の場合、付加的な転移が、T=110/112℃の近くの損失係数の低温側に付加的な転移が現れる。これは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の周りに界面ゾーンが存在すること、又は完全には硬化されていない熱硬化性架橋型網状体が存在することに起因し得る。破面の電子顕微鏡法は、粒子は破断されており、剥離はされていないことを示している。このことは唯一の相がこの事例では存在することを意味する。硬化性エポキシ系中のアミン過剰によって、おそらくは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にIPDAがより多く拡散されており、そして、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に属するエポキシ基との反応が行われ得る。ローディング・レベルが高くなるのに伴って、ピークはまた、ニート硬化性エポキシ系(T=約160℃)と比較して高いTg側にショルダを有するように見える。このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の膨潤、及び粒子のエポキシ及び/又はアミンモノマーとの反応の結果、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が熱硬化性架橋型網状体中に埋め込まれることに起因し得る。
最も顕著なピーク及びTgのE’R,Tα,ΔTαを表20に報告する。40wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を充填された網状体を除いて、全ての網状体は主ピークの同じΔTα値を示す。このシリーズの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子充填網状体において、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の両方、並びにこれらの相互作用はゴム弾性率に関与する。つまり約10/12℃の値は、第1シリーズの充填済網状体(IPDA−0.7)において測定された50〜70の値と比較されなければならない。
両調製物(過剰のアミンを有する調製物、及び過剰のアミンを有する調製物)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加がこれらの弾性率を高めたことを示す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた全ての熱硬化性架橋型網状体の高Tg領域内の付加的なピークはおそらく、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に由来する。しかし、エポキシ過剰の場合には、2つの区別可能な相が存在することが(SEMからも)明らかであるのに対して、アミン過剰網状体は唯一の相から成る。加えて、網状体内の高レベルの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、IRを介しても示されているようにおそらくは一様でない架橋(「充填剤」の高いローディング率に起因してモノマーの拡散が制限される)に起因して、より低い温度範囲でα転移を引き起こした。
熱硬化性架橋型網状体の機械特性に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成の影響
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の調製処置が熱硬化性架橋型網状体特性及び硬化挙動に影響を与えるかどうかを調べた。この調査では、溶媒混合物(PPG+10%ドデカン)中のDGEBA+IPDAから異なる温度で架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を合成した。PPG中のDGEBA+DATから130℃で合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子もこの比較研究のために利用した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系(IPDA−1)中に添加した。
IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
熱硬化性架橋型網状体中への10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加はDMAスペクトルに強い影響を与えることはない。いくつかのパラメータを表21に示す。この一連の試験において使用される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、a/e比=1.35(前はa/e比=1)の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の供給物中のa/e比を有しており、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは合成終了時には50℃に近く、後硬化後では102℃〜125℃であった。
a/e比1の硬化性エポキシ系に上記架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(10wt%)を有する調製物の場合、Tαは、ニート硬化性エポキシ系と比較して数度低下し、149〜153℃である。このことは、硬化性エポキシ系よりも低いTgを有するミクロ粒子の影響である。
硬化性エポキシ系のTg転移に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子合成の影響全体は、弾性率にのみ反映される。加えて図65は、より低温で、そしてより短い反応時間にわたって反応させられる架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を利用する場合、tanデルタ転移は広幅になることを示す。
DATから合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
熱硬化性架橋型網状体のTαに対する、10wt%DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加の強い影響はない。それというのも架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系のTgは、153℃及び157℃(DSCを介して割り出した)と極めて接近しているからである。tanデルタ転移は僅かに広幅となり、ニート硬化性エポキシ系の12℃から、中間ピーク高さの熱硬化性架橋型網状体の14.5/15.5℃までである。粒子が硬化性エポキシ系とは異なる組成を有しており、網状体構造内に完全には組み入れられていないことを考えれば、エポキシ・網状体の機械特性に対する強い影響がないことは興味深い。
本開示の実施態様は、硬化性エポキシ系と架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との反応生成物である熱硬化性架橋型網状体を提供する。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系中にこれが硬化するのに伴って完全に組み入れられるように、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又は硬化剤のうちの少なくとも一方と反応する。換言すれば、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、周りの硬化性エポキシ系との離散界面を形成するのではなく、硬化性エポキシ系の隣接部分として系内に化学的に組み入れられる。
本明細書中に論じられているように、本システムの硬化性エポキシ系は、硬化性エポキシ系から分離した架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を生成することができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系の現場以外又は現場で生成することができる。とりわけ、このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度が硬化性エポキシ系の架橋密度とは独立して規定されるのを可能にする。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は次いで硬化性エポキシ系内で分散させることができる。種々の実施態様の場合、このことは、本明細書中で論じるように、熱硬化性架橋型網状体がトポロジー的不均一性を有するのを可能にする。
“CROSS-LINKED REACTIVE POLYMER MICROPARTICLES”(書類番号70566及び1402.0719990)と題する同時係属中の米国特許出願は、界面活性剤を使用しない架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の製造を文書化している。これは全体的に参照することにより本明細書中に組み込まれる。本開示の実施態様は、これらの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加が本開示の熱硬化性架橋型網状体の硬化挙動及び機械特性に与える影響を説明する。具体的には、熱硬化性架橋型網状体の硬化性エポキシ系と一緒に使用される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成及び/又は量の影響を説明する。興味深いのは、硬化性エポキシ系、及びクリアな破面を生成する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する熱硬化性架橋型網状体を生成する能力である。このような架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系内に完全に埋め込まれることを実証する。さらに、硬化性エポキシ系とともに架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用すると、熱硬化性架橋型網状体のTg転移を、硬化性エポキシ系単独と比較してより高い温度範囲に動かすのを助ける。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、沈殿重合を介して合成し、続いて貯蔵し、そして硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び硬化剤と一緒に分散させることができる。本明細書中に示すように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件は、ミクロ粒子が界面活性剤なしに形成されるのを可能にする。加えて、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件はまた、ミクロ粒子がミクロ粒子合成の際に使用される分散剤を本質的に含まないことを可能にする。このようなものとして、本開示のミクロ粒子は、反応混合物(例えば本明細書中で論じるポリエーテル)中に使用される界面活性剤、又は有意な量の分散剤を含まない。むしろ、本明細書中で論じるように、ミクロ粒子を形成する際に用いられる反応条件は、ミクロ粒子表面にエポキシ反応基及び/又はアミン反応基を優先的に提供するように用いることができる。
種々の実施態様の場合、ミクロ粒子表面のエポキシ反応基及び/又はアミン反応基の存在は、ミクロ粒子が隣接状態で硬化済硬化性エポキシ系中に化学的に組み入れられるのを可能にする。このようなものとして、本開示のミクロ粒子が、ミクロ粒子と同じエポキシ樹脂及び硬化剤を有する硬化性エポキシ系と一緒に使用されると、結果として生じる硬化済硬化性エポキシ系は組成的に均一であり得る。
加えて、本開示のミクロ粒子はまた、結果として生じる硬化性エポキシ系が形態的に不均一であることを可能にする。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度は、粒子が化学的に組み入れられている硬化性エポキシ系の架橋密度とは異なっていてよい。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、粒子が化学的に組み入れられている硬化性エポキシ系の架橋密度とは異なる2種又は3種以上の架橋密度を有することも可能である。化学的に組み入れられた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系は組成的には均一であるが、しかし形態的且つトポロジー的には不均一であってよい。このことの理由は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応組成及び反応条件を、硬化性エポキシ系のそれとは独立して制御できることにある。
つまり「不均一性」は、組成的均一性をなおも維持しながら、ミクロ粒子が添加されている硬化性エポキシ系中に与えることができる(例えばミクロ粒子、又はミクロ粒子の混合物が、硬化性エポキシ系の残りとは異なる架橋密度を有する場合)。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の硬化性エポキシ系内へのこのような組み込みは、硬化性エポキシ系が不均一形態を有するのを可能にし、このことは硬化性エポキシ系の靱性を改善するのを助けることができる。このような硬化性エポキシ系の考えられる用途は、風車の羽根及び自動車パネルを含むことができる。
本明細書中に論じられるように、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、ミクロ粒子表面及び/又はミクロ粒子内部に存在する未反応のアミン基及び/又はエポキシ基を有することによって硬化性エポキシ系内に完全に組み入れることができる(例えば共有結合的に組み入れることができる)。例えば架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、ミクロ粒子が調製成分によって膨張させられ、完全には架橋されない場合、表面活性基又は硬化性エポキシ系網状体の体積内部で硬化性エポキシ系網状体と相互作用することができる。これらのミクロ粒子は強靱化剤として採用するか或いは、単に硬化性エポキシ系への添加剤として採用することができる。ミクロ粒子及び硬化性エポキシ系の組成が同一である場合には、組み入れは、識別可能な界面が存在することなしに完全に行うことができる。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成物は、分散媒の存在における、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種のアミン硬化剤との反応生成物であってよい。反応条件(例えば、とりわけ反応温度、反応時間、エポキシとアミンとの比)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に分散媒がほとんど又は全く結合されていない状態で離散非凝集形態を成して相分離するのを可能にする。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、分散媒中でエポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることによって生成することができる。この反応は攪拌なしに、そしてエポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び/又は分散媒の選択に応じて進行することが可能であり、反応に沿った特定の時点で相分離が発生し、この相分離において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が形成される。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の構造(例えば、とりわけサイズ、多分散性、表面化学特性、及びTg)、収率、及び相分離に影響を潜在的に及ぼすパラメータは、溶解されたモノマーの濃度(モノマーの重量パーセントで表す);アミン/エポキシ・モル比;反応温度及び反応時間;分散媒及びアミン硬化剤の化学構造を含む。
より具体的には、本開示の実施態様は、17時間以下の反応時間にわたって50℃〜120℃の温度で分散媒中で反応させられたエポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応生成物である架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物を含む。この反応時間中、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は分散媒から離散非凝集形態を成して相分離する。種々の実施態様の場合、分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量を基準として、0.001重量パーセント以下の濃度で架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合することができる。つまり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合された分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量を基準として、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下である。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は界面活性剤を使用することなしに沈殿重合プロセスを介して形成することができる。沈殿重合は、最初は連続相の均一系として始まる重合プロセスである。この場合、モノマー(例えばエポキシ樹脂及びアミン硬化剤)は分散媒中に完全可溶性であるが、開始されると、形成済ポリマーミクロ粒子は不溶性となり沈殿する。沈殿重合は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子がミクロン・サイズ範囲内で形成されるのを可能にする。本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、界面活性剤を必要とすることなしに、且つ/又は界面活性剤を使用することなしに沈殿重合法を介して生成することができる。
驚くべきことに、本開示のミクロ粒子は比較的単分散性である。加えて、いくつかの具体的な事例(本明細書中に示すような非溶媒の存在のような事例)では、サブミクロン直径の粒子を有する双峰性分布も可能である。このようなものとして、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、本明細書中で論じるようにミクロ粒子表面上に界面活性剤がないため、硬化性エポキシ系との界面を形成しにくい。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子生成に際して界面活性剤を使用しなかったので、ミクロ粒子表面上に界面活性剤が存在しない。
沈殿重合の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の相分離を可能にするように分散媒の溶解度パラメータをエポキシ樹脂及び硬化剤モノマーのそれと適合させ得る限り、分散媒はニート溶媒又は溶媒混合物であってよい。例えば、分散媒は、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール(PPG)及び/又はポリイソブチレンエーテル)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリブチレンオキシド、脂肪族ケトン、環状ケトン、例えばシクロヘキサン及び/又はシクロヘキサノン、ポリエーテル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。好ましくは、分散媒はポリプロピレングリコールである。
種々の実施態様の場合、非溶媒を分散媒と一緒に使用することもできる。好適な非溶媒の一例としては、アルケン(脂肪族(ドデカン)又は環状)、芳香族アルケン、オルトフタレート、アルキルアゼレート、他のアルキルキャップ型エステル及びエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施態様の場合、分散媒中にエポキシ樹脂とアミン硬化剤とを、それぞれの分散媒中の濃度が分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として5〜30重量パーセントになるように溶解させることにより、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を生成することができる。好ましくは、分散媒中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の濃度は、分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として10〜30重量パーセントである。最も好ましくは、分散媒中のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の濃度は、分散媒、エポキシ樹脂、及びアミン硬化剤の総重量を基準として10重量パーセントである。
エポキシ樹脂及びアミン硬化剤は個別又は一緒に分散媒中に溶解させることができる。反応は、反応温度によって調節することができる反応速度で進行することが可能である。この過程中、最初はクリアである溶液が、ミクロ粒子が分散媒から沈殿するのに伴って分散体に変化する。分散媒中のポリマー粒子のサイズは、原材料、並びに分散媒中のそれらの濃度、反応時間、及び反応温度を選択することによって、影響を与えることができる。
種々の実施態様の場合、反応温度は50℃〜170℃、好ましくは80℃〜120℃であってよい。反応時間は、(とりわけ)温度、アミン/エポキシ・モル比;分散媒、触媒の使用の関数であり、また、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。例えばアミン硬化剤としてポリアミンを使用するときには、アミンの塩基度によって、また立体因子によって重付加反応速度に影響を与えることができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物を形成する際の反応時間は17時間以下であってよい。他の好適な反応時間の一例は5〜17時間を含むことができる。。好ましくは、反応時間は5時間以下であってよい。この場合もやはり反応時間は、温度、アミン/エポキシ・モル比;分散媒、触媒の使用、及びエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の化学構造に依存する。
本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に触媒を使用することも可能である。このような触媒は当業者に知られている。好適な触媒は例えばアミン、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、取りエチレンテトラアミン、アミノエチルピペラジン、有機酸、例えばジカルボン酸、フェノール化合物、イミダゾール及びその誘導体、及び硝酸カルシウムである。
種々の実施態様の場合、本明細書中に示すような反応温度、分散媒、及びアミン硬化剤の選択は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の溶解度に影響を与える。これらの選択は、相当量の分散媒がアミン硬化剤及び/又はエポキシ樹脂のいずれかと反応する機会を有する前に、分散媒からの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の相分離が発生するのを可能にする。例えば、反応温度、アミン硬化剤、及び分散媒の溶解度パラメータを選択することに起因してミクロ粒子の相分離を迅速に発生させることにより、分散媒がエポキシ樹脂と反応する機会を大幅に低減することができる。換言すれば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の溶解度が低ければ低いほど、所与の反応温度及び時間において、これらは分散媒と反応又は相互作用しにくくなる。言うまでもなく、全ての分散媒がエポキシ基及び/又はアミン基と反応するわけではなく、ほとんどの分散剤は全く反応しない。
多種多様なエポキシ樹脂が、本開示の目的にとって有用である。エポキシ樹脂は1分子当たりの反応性1,2−エポキシ基数が平均で少なくとも1.5、一般に少なくとも2の有機材料である。これらのエポキシ樹脂は1分子当たりの反応性1,2−エポキシ基数が平均で最大6、好ましくは最大4、最も好ましくは最大3である。これらのエポキシ樹脂はモノマー又はポリマー、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であることが可能であり、また所望の場合には、エポキシ基に加えて他の置換基、例えばヒドロキシル基、アルコキシル基、又はハロゲン原子で置換されていてよい。
好適な例は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、アミンとエピハロヒドリン、硫黄含有化合物とエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、ポリイソシアネートと2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシド)との反応から、そしてオレフィン系不飽和化合物のエポキシ化からのエポキシ樹脂を含む。
好ましいエポキシ樹脂は、ポリフェノールとエピハロヒドリン、ポリアルコールとエピハロヒドリン、ポリカルボン酸とエピハロヒドリン、との反応生成物である。ポリフェノール、ポリアルコール、アミン、硫黄含有化合物、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートの混合物をエピハロヒドリンと反応させることもできる。本明細書中で有用なエポキシ樹脂の例は、The Handbook of Epoxy Resins by H. Lee and K. Neville, published in 1967 by McGraw-Hill, New York, in appendix 4-1, pgs 4-56に記載されている。この内容は参照することにより本明細書中に組み込まれる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、平均エポキシ当量は有利には約170〜約3000、好ましくは約170〜約1500である。平均エポキシ当量は、樹脂の平均分子量を1分子当たりのエポキシ基数で割り算した値である。分子量は重量平均分子量である。
エポキシ樹脂の好ましい例は、平均エポキシ当量が約170〜約200のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。このような樹脂は、The Dow Chemical CompanyからD.E.R. 300, D.E.R. 331及びD.E.R. 332エポキシ樹脂として商業的に入手可能である。更なる好ましい例は、エポキシ当量がより高い樹脂、例えばD.E.R. 667, D.E.R. 669及びD.E.R. 732(これらは全てThe Dow Chemical Companyから入手可能)である。
本開示の目的にとって有用な別のクラスのポリマーエポキシ樹脂は、エポキシノボラック樹脂を含む。エポキシノボラック樹脂は、好ましくは塩基性触媒、例えばナトリウム又は水酸化カリウムの存在において、エピハロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンを、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドの樹脂状凝縮物、及び一価フェノール、例えばフェノール自体、又は多価フェノールと反応させることによって得ることができる。これらのエポキシノボラック樹脂の性質及び調製に関する更なる詳細は、Lee, H. 及び Neville, K., Handbook of Epoxy Resins, McGraw Hill Book Co., New York, 1967から得ることができる。この内容は参照することにより本明細書中に組み込まれる。他の有用なエポキシノボラック樹脂は、それぞれD.E.R. 431, D.E.R. 438及びD.E.R. 439としてThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を調製する際に種々様々なアミン硬化剤を使用することができる。採用され得るこれらのアミン硬化剤は、主に多官能性、好ましくは2〜6官能性、具体的には2〜4官能性第一アミンである。このようなアミン硬化剤の一例としては、イソホロンジアミン(IPDA)、エチレンジアミン、テトラエチレンアミン、及び2,4−ジアミノトルエン(DAT)ジアミンが挙げられる。アミン硬化剤のうちの2種又は3種以上の混合物を使用することもできる。アミンが極めて過剰にエポキシ樹脂と反応させられる改質硬化剤も、アミン硬化剤としてのよい候補である。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成物の反応生成物は、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のうちの一方をモル過剰の状態で形成することができる。例えばエポキシ樹脂に対してモル過剰のアミン硬化剤を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。換言すれば、エポキシ基に対してモル過剰のアミン水素を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。或いは、アミン水素に対してモル過剰のエポキシ基を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形成に際して使用することができる。種々の実施態様の場合、このモル過剰は、エポキシ樹脂との反応に使用されるアミン硬化剤の当量比として表すことができる。例えばエポキシに対するアミンの、又はアミンに対するエポキシの当量比は0.7〜1.35であってよい。種々の実施態様の場合、当量比は1でもよい。本明細書中で使用される当量比は、アミン水素(アミン硬化剤に由来)のモル数とエポキシ基(エポキシ樹脂に由来)のモル数とを使用する。
本開示の更なる態様は、本明細書中で論じるように、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることにより、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法である。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法は、本明細書中に示される温度(例えば50℃〜120℃の温度)で分散媒中でエポキシ樹脂をアミン硬化剤と反応させることを含む。
本明細書中で論じるように、エポキシ樹脂をアミン硬化剤と混合することにより、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を調製する際に、アミン硬化剤又はエポキシ樹脂のうちの一方をモル過剰の状態で提供することができる。混合物は反応温度に加熱することにより、エポキシとアミンとの反応が反応時間にわたって進行するのを可能にすることができる。種々の実施態様の場合、反応混合物の攪拌は必要でない。
本明細書中に論じるように、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を製造する方法のための反応時間は、17時間以下であってよい。本発明に従って製造される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下である。このことは、一つには、反応温度、反応時間、及び本明細書中に示される分散剤の選択によって容易にされる位相反転によって達成される。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。本明細書中に論じられるように、本開示のミクロ粒子形成方法では界面活性剤は使用されない。
種々の実施態様の場合、この方法はさらに、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と分散媒との相分離を含んでもよい。種々の実施態様の場合、ミクロ粒子は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合されたままの分散媒を0.001重量パーセント以下にするために、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子から分散媒を除去するように1回又は2回以上の洗浄を受けることもできる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。このことは、蒸発単独で可能になるはずのものよりも多くの分散媒を架橋型反応性ポリマーミクロ粒子から除去することが所望される場合に特に好ましい。例えばミクロ粒子の形成に続いて、分散媒とミクロ粒子とを分離することができる(例えば遠心分離、及びこれに続いてデカンティングによって)。このミクロ粒子は次いで室温(例えば23℃)で洗浄液中に再懸濁させることができる。ミクロ粒子は次いで洗浄液から分離することができる(例えば遠心分離、及びこれに続いてデカンティングによって)。ミクロ粒子は2回以上洗浄することができる。
種々の洗浄液が可能である。このような洗浄液の一例としては、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、ケトン、例えばメチルエチルケトン、エンドキャップ型エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中に示された溶媒を洗浄液として使用することもできる。
種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の単峰性分布に対応する数平均直径は10nm〜10000nm、好ましくは50nm〜5000nm、最も好ましくは100nm〜3000nmであってよい。種々の実施態様の場合、分散媒がポリブチレンオキシドを含む場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の第1直径及び第2直径から成る双峰性粒度分布を有することができる。第1数平均直径は100〜300ナノメートルであり、第2数平均直径は0.5〜10μmである。
下記例においてさらに十分に説明するように、本明細書中に論じられる反応条件(例えば、とりわけ反応温度、反応時間、エポキシ対アミン比)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の少なくとも寸法特性、形態特性、熱特性、及び表面特性に影響を与える。加えて、ミクロ粒子表面化学特性はまた、本明細書中で論じるようにアミン硬化剤とエポキシ樹脂との反応条件及びモル比に依存する。
本明細書中に論じるように、本開示の熱硬化性架橋型網状体は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に加えて、硬化性エポキシ系を含む。種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系は硬化性エポキシ系と固相の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との反応生成物が形成され始めるのに従って、少なくとも最初は液相を成している。本明細書中で論じるように、
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。
種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系はエポキシ樹脂及びアミン硬化剤を含む。種々の実施態様の場合、本開示の目的にとって多種多様のエポキシ樹脂が有用である。このようなエポキシ樹脂の例は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との関連において本明細書中で論じるものを含む。他のエポキシ樹脂も可能である。このようなエポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
芳香族エポキシ樹脂の一例としては、ポリフェノールのグリシジルエーテル化合物、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、トリスフェノール(トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂の一例としては、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、又はシクロヘキサン環又はシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキシド又はシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられる。いくつかの具体例としては、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;メチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン);2,2,−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン;ジシクロペンタジエンジエポキシド;エチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート;ジ−2−エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレート;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の一例としては、脂肪族ポリオール又はそのアルキレンオキシドアダクトのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートをビニル重合することによって合成されたホモポリマー、及びグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート及び他のビニルモノマーをビニル重合することによって合成されたコポリマー、及び他のビニルモノマーが挙げられる。いくつかの具体例としては、ポリオールのグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ソルビトールのテトラグリシジルエーテル;ジペンタエリトリトールのヘキサグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1つのタイプ、又は2つ以上のタイプのアルキレンオキシドを脂肪族ポリオール、例えばプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、及びグリセリンに添加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
同様に、種々多様なアミン硬化剤を、本開示の硬化性エポキシ系を調製する際に使用することができる。アミンは、N−H部分、例えば第1アミン及び第2アミンを含有する化合物を含む。このようなアミン硬化剤の例は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子との関連において本明細書中に論じられたものを含む。他のアミン硬化剤も可能である。このようなアミン硬化剤は、脂肪族ポリアミン、アリール脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環式ポリアミン、ポリアルコキシポリアミン、ジシアンジアミド及びその誘導体、アミノアミド、アミジン、ケチミン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
脂肪族ポリアミンの一例としては、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA),トリメチルヘキサンジアミン(TMDA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N3−アミン)、N,N’−1,2−エタンジイルビス−1,3−プロパンジアミン(N4−アミン)、ジプロピレントリアミン、及び過剰のこれらのアミンとエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
アリール脂肪族ポリアミンの一例としては、m−キシリレンジアミン(mXDA)、及びp−キシリレンジアミンが挙げられる。脂環式ポリアミンの一例としては、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、及び4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミンが挙げられる。芳香族ポリアミンの一例としては、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、及びジアミノジフェニルスルホン(DDS)が挙げられる。複素環式ポリアミンの一例としては、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリアルコキシポリアミンの一例としては、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン;1−プロパンアミン;(2,1−エタンジイルオキシ)−ビス−(ジアミノプロピル化ジエチレングリコール)(ANCAMINE(登録商標)1922A);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、アルファ−(2−アミノメチルエチル)オメガ−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D-230, D-400);及びオリゴマー((JEFFAMINE(登録商標)XTJ-504, JEFFAMINE(登録商標) XTJ-512);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、アルファ,アルファ’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス(オメガ−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-511);ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350;ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750;ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル));2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールを有するα−ヒドロ−ω−(2−アミノメチルエトキシ)エーテル(JEFFAMINE(登録商標)T-403);ジアミノプロピルジプロピレングリコール;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
種々の実施態様の場合、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及びアミン硬化剤は、熱硬化性架橋型網状体に対して種々様々な重量パーセントを有することができる。例えば、硬化性エポキシ系は、熱硬化性架橋型網状体に対して10重量パーセント(wt%)〜90wt%のエポキシ樹脂を有することができる。硬化性エポキシ系が熱硬化性架橋型網状体に対して20wt%〜80wt%のエポキシ樹脂を有することも可能である。硬化性エポキシ系が熱硬化性架橋型網状体に対して30wt%〜70wt%のエポキシ樹脂を有することも可能である。アミン硬化剤は、熱硬化性架橋型網状体に対して1wt%〜70wt%であってよい。アミン硬化剤が熱硬化性架橋型網状体に対して5wt%〜45wt%であることも可能である。アミン硬化剤が熱硬化性架橋型網状体に対して10wt%〜40wt%であることも可能である。
種々の実施態様の場合、熱硬化性架橋型網状体の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系は、同じ又は異なるエポキシ樹脂及びアミン硬化剤から形成することができる。つまり例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤との第1の規定の組み合わせから形成することができ、そして硬化性エポキシ系は、第1の規定の組み合わせとは異なるエポキシ樹脂とアミン硬化剤との第2の規定の組み合わせから形成することができる。
本明細書中に論じられるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、熱硬化性架橋型網状体に不均一な網状体・トポロジーを導入するのを助ける。種々の実施態様の場合、トポロジー的不均一性は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度とは異なる硬化性エポキシ系の反応生成物の架橋密度によって熱硬化性架橋型網状体に与えることができる。加えて、架橋密度差は、硬化性エポキシ系に対して架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTGに差が生じる(例えばより高いか又はより低い)のを可能にする。この場合ミクロ粒子はトポロジー的不均一性の座を提供することができる。
この不均一な網状体・トポロジーは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の架橋密度及び反応基が単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応することに少なくとも一部は起因して、熱硬化性架橋型網状体に靱性を加えるのを助けることができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が表面に反応基を含有しているので、これらは、周りの硬化性エポキシ系網状体と共有結合し、これにより架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面を最小化又は排除する。このような架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系中に組み入れられている証拠(充填剤が使用されていないことを条件とする)は、下記例の項で示されるように、「クリア」であることである。
しかし他の系とは異なり、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系が硬化するのに伴って、完全に組み入れられ得る。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。種々の実施態様の場合、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系中にこれが硬化するのに伴って完全に組み入れられるように、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又は硬化剤のうちの少なくとも一方と反応する。換言すれば、本開示の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、周りの硬化性エポキシ系との離散界面を形成するのではなく、硬化性エポキシ系の隣接部分として系内に化学的に組み入れられる。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基は、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂と反応するアミン基であってよい。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基は、硬化性エポキシ系のアミン基と反応するエポキシ基であってよい。本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が固相を成し、これらが界面活性剤を含まないので、粒子の存在は熱硬化性架橋型網状体の形成を妨害することがなく、硬化性エポキシ系に付加的な化合物を添加することもない。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は硬化性エポキシ系の発熱反応のためのヒートシンクとして作用することもできる。それというのも、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の大部分が既に架橋されているからである。このことはまた、熱硬化性物質中にしばしば存在する硬化収縮を低減するのを助ける。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、界面活性剤を必要とすることなしに、且つ/又は界面活性剤を使用することなしに硬化性エポキシ系中に分散させることができる。種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、熱硬化性架橋型網状体を調製する際に、アミン硬化剤、エポキシ樹脂、及び/又はその両方と一緒に且つ/又はこれに添加することができる。種々の実施態様の場合、熱硬化性架橋型網状体は、1〜70重量パーセントの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を含むことができる。つまり、熱硬化性架橋型網状体は、熱硬化性架橋型網状体の総重量を基準として、1〜70重量パーセントの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を含む。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は本明細書中で論じるように、現場以外で生成することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系の現場で生成することもできる。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の沈殿重合及び相分離に使用される溶媒又は溶媒混合物を、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂及び/又はアミン硬化剤と一緒に使用することもできる。ここでは溶媒又は溶媒混合物は、発生した熱硬化性架橋型網状体から蒸発させることができる。
本開示の更なる態様は、熱硬化性架橋型網状体を製造する方法である。種々の実施態様の場合、この方法は、本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合された分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下となるように、17時間以下の反応時間にわたって50℃〜120℃の温度で分散媒中で、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを反応させることを含む。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。この方法はさらに、本明細書中で論じるように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と分散媒とを相分離することを含む。この方法はさらに、液相の硬化性エポキシ系と固相の該架橋型反応性ポリマーミクロ粒子とを反応させることを含む。ここで、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、本明細書中で論じるように、トポロジー的不均一性を有する単一隣接相の熱硬化性架橋型網状体を提供するように硬化性エポキシ系と共有結合反応する架橋密度及び反応基を有している。
種々の実施態様の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合されたままの分散媒を0.001重量パーセント以下にするために、分散媒を除去するように架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を洗浄することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に結合される分散媒は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に化学結合される分散媒が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の0.001重量パーセント以下であるように化学結合することができる。種々の実施態様の場合、このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応基であるアミン基(及び/又はエポキシ基)が、硬化性エポキシ系のエポキシ樹脂(及び/又はアミン基)と反応するのを可能にする。
下記例は本開示を説明する。他に言及がない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量部及び重量パーセントである。例は本開示を限定すると解釈されるべきではない。
例
下記例は説明のために示すのであって、本発明の範囲を限定するものではない。これらの例は本開示の、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系とを含む熱硬化性架橋型網状体の両方の方法及び具体的な実施態様を提供する。本明細書中に示されているように、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はとりわけ、熱硬化性架橋型網状体の不均一性を増大させる能力を提供することができる。本明細書中に示された実施態様は、熱硬化性架橋型網状体の機械特性並びに硬化挙動全体に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の影響を示している。
材料
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA, D.E.R. 331(登録商標)、The Dow Chemical Company)
2,4−ジアミノトルエン(DAT)、芳香族硬化剤(Aldrich 受け取った状態で使用)
イソホロンジアミン(IPDA)、脂環式硬化剤(Aldrich 受け取った状態で使用)
ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、2つの異なる分子量(PPG-1000及びPPG-3500)、溶媒(Aldrich 受け取った状態で使用)
ドデカン、溶媒(Aldrich 受け取った状態で使用)
アセトン(Aldrich 受け取った状態で使用)
テトラヒドロフラン(Sigma Aldrich、分析グレード、受け取った状態で使用)
例1〜18 架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のDGEBA及びDATを基剤とする調製
表1は、本明細書中で論じるように、DGEBAとDATとの反応に基づく架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の参照A及び例1〜18を調製する際に用いるための試験条件を示す。参照A及び例1〜18の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を、界面活性剤を使用することなしに分散重合法を介して生成した。分散媒としてポリプロピレングリコール(PPG)を、単独で又は非溶媒(ドデカン)の添加とともに利用した。
参照A及び例1〜18のそれぞれに対して、表1に示されているようにDGEBA及びDATを溶媒中に別々に、それぞれT=40℃で20分間、そしてT=40℃で30分間にわたって溶解させることによって、表1に示されているモノマー濃度を有するそれぞれのモノマーに対応する均一溶液を得た。DGEBA溶液とDAT溶液とを混合することにより、表1に示されているようにアミン対エポキシの異なるモル比(a/e比)を調製した。混合物を予熱された炉(表1に示されているように80℃〜160℃)内に入れることにより、エポキシとアミンとの反応を、攪拌させることなしに、そして定期的にサンプリングしながら、表1に示された反応時間にわたって進行させておく。
それぞれの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子試料を溶媒から、1分当たり4000回転(rpm)で遠心分離することにより分離し、これにより溶媒のほとんどを除去する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を過剰のアセトンによって室温(23℃)で洗浄し、遠心分離を繰り返す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を室温(23℃)で真空乾燥させる。試験条件に関する詳細は表1に報告されている。
参照架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(表1では参照Aと称される)は、アミン対エポキシ・モル比1.35(a/e比)、モノマー濃度10重量パーセント(wt%)、PPG−1000溶媒、反応温度:130℃及び反応時間:15時間、を示す。
例19〜32 架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のDGEBA及びIPDAを基剤とする調製
表2は、本明細書中で論じるように、DGEBAとIPDAとの反応に基づく架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の参照B及び例19〜32を調製する際に用いるための試験条件を示す。例19〜32の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を、界面活性剤を使用することなしに分散重合法を介して生成した。分散媒としてPPGを、単独で又は非溶媒(ドデカン)の添加とともに利用した。
参照B及び例19〜32のそれぞれに対して、表2に示されているようにDGEBA及びIPDAを溶媒中に別々に、それぞれT=40℃で20分間、そしてT=80℃で30分間にわたって溶解させることによって、表2に示されているモノマー濃度を有するそれぞれのモノマーに対応する均一溶液を得た。DGEBA溶液とIPDAとを混合することにより、表2に示されているようにアミン対エポキシの異なるモル比(a/e比)を調製した。混合物を予熱された炉(表2に示されているように80℃〜130℃)内に入れることにより、エポキシとアミンとの反応を、攪拌させることなしに、そして定期的にサンプリングしながら、表2に示された反応時間にわたって進行させておく。
それぞれの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子試料を例1〜18に関して上述したように分離する。室温(23℃)で真空乾燥させる前に試料25をTHFでさらに洗浄した。
試験条件に関する詳細は表2に報告されている。参照架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(表2では参照B)は、アミン対エポキシ・モル比1.35(a/e比)、モノマー濃度10重量パーセント(wt%)、PPG−1000溶媒、反応温度:80℃及び反応時間:17時間、を示す。
バルク・エポキシ網状体
DGEBA及びDAT(比較エポキシ例A)、並びにDGEBA及びIPDA(比較エポキシ例B)で調製されたバルク・エポキシ網状体を異なるアミン/エポキシ・モル比で合成した。この場合4時間にわたって130℃の予熱炉、次いで4時間にわたって180℃の予熱炉における硬化サイクルを伴った。DSCを用いることによって、比較エポキシ例A及びBのそれぞれの反応エンタルピー、及びガラス転移温度を割り出した。これらの値を、例1〜26に関して得られた値と比較するために用いた。比較エポキシ例A及びBを用いて、本明細書中に示すように、他のデータ、例えば元素分析及びXPSを検証した。
特徴づけ方法
質量分析を併用する熱重量分析(TGA−MS)試験
Balzer Thermostar GSD 300 MSにカップリングされたTA Instruments model Q5000 TGAを介してTGA−MS試験を実施した。Thermal Advantage for Q series (version 2.7.0.380)ソフトウェア・パッケージを使用してデータを収集し、TGAデータのためにはUniversal Analysis 2000ソフトウェア・パッケージのバージョン4.4Aを、そしてMSデータのためにはQuadstar 422ソフトウェア(バージョン6.0)を使用して減少させた。MSデータをASCIIフォーマットでエクスポートし、そしてUniversal Analysisパッケージでさらに減少させた。試料をPtパン上に置き、目盛付きTGA天秤によって正確に秤量した。
示差走査熱量測定(DSC)
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の反応(もしあれば)及びガラス転移温度を得るためにDSCを使用して、乾燥させた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子粉末を分析した。硬化性エポキシ系の反応(もしあれば)及びガラス転移温度を得るためにもDSCを用いた。
DSC測定はQ20 (TA)及びMettler DSC 30 (Mettler Toledo GmbH)熱量計を用いて行った。−60〜250℃の第1加熱勾配(10℃/分)に続いて0℃までの冷却段(50℃/分)を実施し、そして200℃までの第2加熱勾配を施した。試験全てをヘリウム下(25ml/分、TA Q20熱量計)、又はアルゴン下(25ml/分、Mettler DSC 30熱量計)で行った。データをUniversal Analysis 2000 v.4.2E (Q20)及びSTARe v.8.10 (Mettler DSC 30)で分析した。バルク・網状体を特徴づけるためにもDSCを用いた。(第1加熱走査中に得られる)架橋反応のエンタルピーに関して、そして(第2加熱走査中に得られる)硬化済網状体のガラス転移温度に関して材料を特徴づけた。
顕微鏡法
光学顕微鏡法
硬化性エポキシ系中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の分散を評価するために光学顕微鏡法を用いた。未硬化及び硬化済双方の熱硬化性架橋型網状体のためのOrtholux II顕微鏡(Zeiss)を透過モードで使用することによって顕微鏡写真を取得した。硬化済熱硬化性架橋型網状体の場合、付加的な調製処理なしにフィルムを観察した。
走査電子顕微鏡法(SEM)
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の形態を調査し、これらのサイズを推定するために、SEMを実施した。乾燥させた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をPhilips XL20 SEMで観察した。試料の調製は次の通りであった:導電性グラファイト接着剤でカバーし、次いでスパッタリングにより金を被覆した金属スタブ上に架橋型反応性ポリマーミクロ粒子粉末を置いた。典型的には15kVの電圧を印加することによっていくつかの倍率で顕微鏡写真を収集した。SEM顕微鏡写真を使用して粒度分布を割り出した。粒度分布は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の非加重カウント処置を用いて計算した。この事実は実際には、寸法の小さい方のテールが系の小さな重量(又は体積)分率を表すとしても、粒度分布の2つのテールが同じ重量を有することを意味する。これらの測定は、オープンソース・ソフトウェアImageJ (Version 1.42q. http://rst.info.nih.gov/ij)を使用することにより行った。それぞれの試料に対して少なくとも300個の粒子を測定することによって、データの統計的意味を有するようにした。
熱硬化性架橋型網状体から成るフィルムを、液体窒素を使用することにより凍結破断し、破面をPhilips XL20 SEMで観察した。導電性グラファイト接着剤でカバーし、次いでスパッタリングにより金を被覆した金属スタブ上に試料を置いた。15kVの電圧を印加することによっていくつかの倍率で顕微鏡写真を収集した。
化学レオロジー
ニート硬化性エポキシ系上で(すなわち架橋型反応性ポリマーミクロ粒子なしで)、そして熱硬化性架橋型網状体(硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子)上でARESレオメーター(TA)を使用して、化学レオロジー試験を行うことにより、系のゲル化挙動を調査した。プレート間の平均ギャップ1mmの平行プレート・ジオメトリを用いて、80℃で動的モードにおいて試験を実施した。2つのタイプの試験を採用した:(1)30rad/sの単一周波数試験及び歪み30%;(2)1,3,10,30,100rad/sの多周波数試験及びそれぞれの歪み0.8%、0.6%、0.3%、0.15%、0.08%。
両方の事例において、機器によって許容される最大トルク(すなわち約2000g・cm)に達するまで材料の物理特性(すなわち複素粘度係数及び損失係数)を時間の係数としてモニタリングした。
赤外線分光法(FT−IR)
ニート硬化性エポキシ系、及び熱硬化性架橋型網状体の反応速度を、赤外線分光法を用いて調査した。Magna-IR 550分光計(Nicolet)を透過モードで使用することにより、赤外スペクトルを取得した:2つのKBrペレット間に未反応の硬化性エポキシ系の小滴を入れ、80℃の温度に維持した。ソフトウェア OMNIC v.7.3を使用してデータを分析した。
動的機械分析(DMA)
公称幅5mm及び長さ22.32mmの熱硬化性架橋型網状体から成る小さなストリップ上で、RSA II機器(Rheometrics)を使用することによって、DMA試験を引張りモードで行った。硬化性エポキシ系試料を30℃から200℃まで3℃/分で加熱し、周波数1Hzで0.05%の正弦波歪みを印加した。貯蔵弾性率、損失弾性率、及び損失係数を試験中に記録した。
結果及び考察
例1〜26は、狭い粒度分布を有する非凝集架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を提供する。直径はマイクロメートル・サイズ範囲にあったが、いくつかの具体的な事例(非溶媒の存在のような事例)では、サブミクロン直径粒子を有する双峰性分布が観察された。反応において用いられる反応条件は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のサイズ、収率、及び相分離に影響を与える。従って、有効アミン対エポキシ比、反応温度、及び反応時間が、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子合成のパラメータとして考えられた。PPG調製物中のDAT/D.E.R. 331(登録商標)を使用することにより、反応パラメータと架橋型反応性ポリマーミクロ粒子特性とのいくつかの関係を確立した。これらの関係は、エポキシ対アミン比が増大するのに伴って架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径が小さくなるという観察を含む。反応時間が長くなるのに伴って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径は大きくなる。反応温度が高くなるのに伴って反応速度も増大し、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はより小さな直径を有した。最後に、モノマー含量が増大するのに伴って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の直径は増大する一方、多分散性は比較的一定のままである。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を形成する際に使用されるモノマー(例えばエポキシ樹脂及びジアミン)の重量パーセント(wt%)も、反応収率に影響を与える。50wt%のモノマーローディング率の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、反応が進行するに従ってより高速に相分離し、凝集した。従って10wt%のモノマーローディング率を用いることによって、十分に高い収率をより良好に保証し、そして粒子凝集を防止した。PPG中の反応収率は90%を上回った(SECによって割り出した)。
熱硬化性架橋型網状体の調製
熱硬化性架橋型網状体の最終フィルム/網状体特性に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子添加の影響をここに示す。数多くの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子で充填された熱硬化性架橋型網状体を、DER及びIPDAを基剤とする調製物で合成した。利用した架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はIPDA又はDATを基剤とした。いくつかの調製パラメータの影響を調べた:調製物(硬化性エポキシ系)a/e比:0.7,1及び1.35;架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のタイプ:種々の合成パラメータ(a/e比、温度、時間)を介して合成され、ひいては異なるTg及び直径を有する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子;及び、熱硬化性架橋型網状体を基準とした架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率<1,3,5,10,20,40重量パーセント(wt%)。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加は、硬化反応速度を遅くすることにより、熱硬化性架橋型網状体の硬化挙動に反映した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が部分硬化又は完全硬化されると同時に、粒子は熱硬化性架橋型網状体の硬化発熱を減少させるヒートシンクとして作用した。初期粘度はこれらの粒子の添加時に増大したが、しかしさほど大幅ではなく、従って、まさに硬化開始時には、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた熱硬化性架橋型網状体の粘度は、ニート調製物の粘度よりも低かった。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた熱硬化性架橋型網状体の機械特性に関しては、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との組み合わせに応じて、いくつかのシナリオを区別することができた。第一に、DMAによって分析して、単一のα転移を有する熱硬化性架橋型網状体である。これらの網状体は、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgが接近しており、組成が同じであるときに得られた。電子顕微鏡法は、クリアな破面(裂け目が架橋型反応性ポリマーミクロ粒子内を伝搬する)によって示された良好な粒子埋め込みを示唆し、ひいては熱硬化性架橋型網状体のための1つの均一な網状体を示す。
2つの転移を有する熱硬化性架橋型網状体:このような熱硬化性架橋型網状体は、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgが異なるときに得られる。調製物(ここでは、硬化性エポキシ系のa/e比が0.7に近く、これに対して架橋型反応性ポリマーミクロ粒子がアミン官能化されることによって提供される)間の相容性は次の通りである。電子顕微鏡法は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系に対して強い付着力を有していないこと、及び裂け目が硬化性エポキシ系内及び粒子−硬化性エポキシ系界面を伝搬することを示している。ガラス転移は極めて広幅である。分散相及び硬化性エポキシ系のために同様の化学組成を用いて、このような不均一網状体を得ることは注目に値する。
1つよりも多いα転移を有する一方で、完全に埋め込まれた架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を維持する網状体はSEM画像化によって示されるように、クリアな破面を有している。Tg転移は高温範囲内の第2ピークによって拡張された(ニート硬化性エポキシ系と比較して)。高い架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング・レベル(20wt%超)の場合、Tg転移は、おそらく硬化レベルが低いことにより、より低い温度範囲にも拡張する。熱硬化性架橋型網状体の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面を有さない状態で、同じ樹脂/硬化剤からこのような不均一網状体を得ることは注目に値する。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が少量であっても熱硬化性架橋型網状体の動的機械挙動に影響を与えることに注目するのは興味深い。例えば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移の規模は、添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量パーセント(wt%)に対して比例しない。
主な目的は、熱硬化性架橋型網状体を生成することにより、ニート硬化性エポキシ系と比較して異なる材料特性を達成し得ることを証明することであった。具体的には、Tg転移は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を添加することにより、所与の硬化レジームのために拡張した。この場合、これらの粒子は熱硬化性架橋型網状体中に完全に埋め込まれることを条件とした。
硬化性エポキシ系の組成は、熱硬化性架橋型網状体形成に際して、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の組成と類似した。硬化性エポキシ系のモル比a/e比は0.7,1又は1.35であった。硬化性エポキシ系のほとんどは、種々異なる条件でIPDAから合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用して調製した。少数のサンプルだけが、DAT(ジアミノトルエン)を基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を使用して調製された。なお、これら2つのタイプの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子間の主な違いはそのエポキシ変換レベル、ひいてはTgである。
IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
分散前に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を上記のように洗浄し遠心分離した後で−25℃のアセトン中に懸濁液として貯蔵した。熱硬化性架橋型網状体調製のための種々異なるプロトコルをテストし、下記プロトコルが最も適切なものと考えられた:
テトラヒドロフラン(THF)中にエポキシ樹脂(D.E.R.331(登録商標))を50wt%の濃度で溶解させる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をエポキシ樹脂溶液に添加し、そして超音波プローブで15分間にわたって超音波処理した。真空下でTHFを除去する(15時間室温23℃)。アミン硬化剤、IPDAを架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及びエポキシ樹脂混合物に添加し、手動で混合する。混合物を真空下で約30分間にわたって室温(23℃)で脱ガスする。次いで熱硬化性架橋型網状体をPTFE接着フィルム上に流延する。熱硬化性架橋型網状体の乾燥膜厚は100μmに近かった。熱硬化性架橋型網状体・フィルムを80℃で2時間にわたって炉内で架橋し、続いて後硬化工程を施した(160℃で2時間)。
調製済フィルムのリストを、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の説明(ミクロ粒子のTg及び直径)とともに表4で報告する。
熱硬化性架橋型網状体フィルム調製
調製前に、超音波プローブを使用して粒子をTHF中に分散させた(所与のwtローディング・レベル)(15分)。エポキシ樹脂(DER331)をTHF(50wt%/50wt%)中に溶解させた。分散体を溶液と混合させた後、THFを真空下で除去した(室温、4時間)。アミン硬化剤(IPDA)をエポキシ樹脂中の粒子分散体に添加した。ここでエポキシ樹脂とアミン硬化剤とは、表4及び5に示されているようなa/e比を有した。硬化反応速度/レオ反応速度を直ぐに測定する一方、PTFE接着フィルム上の膜を硬化させることにより、自立フィルムを形成した。乾燥膜厚は約100μmであった。フィルムを80℃で炉内で硬化させ、続いて後硬化工程を施した(160℃で2時間)。
熱硬化性架橋型網状体・フィルム
フィルムの例27〜36を下記表4及び5に示す。
結果及び考察
化学レオロジー
熱硬化性架橋型網状体中のゲル化現象は、異なる試験方法によって観察することができる。動的モードで用いられる化学レオロジー測定:時間による粘度の変化、及び反応時間の関数としてのtanδの変化が異なる周波数及び等温条件で記録される。目的は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在が熱硬化性架橋型網状体のゲル化に影響を与えるかどうかを見極めることであった。80℃の等温硬化中の粘度(η)の変化が、a/e比によって異なる硬化性エポキシ系の3種のニート調製物に関して、図1にプロットされている。所与の反応時間において、ゲル化(Mw及びηの分岐によって表される)に相当する粘度の増大が観察された。ゲル化時間は、a/e比に依存する:すなわちこれはa/e比(過剰のエポキシ)の減少とともに増大する。ゲル化時間をより正確な観察するために、多周波数試験を実施した。一連の異なる周波数に対してtanδ曲線を交差させることにより、ゲル化時間をマーキングした。
得られた曲線の一例を、硬化性エポキシ系のニート調製物に関して図2に示す。ここではアミン対エポキシ比はa/e比=0.7であった。80℃で26分間の反応後、ゲル化が明らかに観察される。a/e比=1及びa/e比=1.35を有する調製物に対する同様の試験は、それぞれ、18分又は12分のゲル化時間をもたらす。
異なるローディング率の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(1wt%〜40%)を硬化性エポキシ系(a/e比=1.35のDGEBA−PIDA調製物)中に添加した。複素粘度の発生を図3にプロットし、多周波数試験から得られたゲル化時間を図4にプロットする。これらの曲線から2つの結論を引き出すことができる。すなわち第一に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系に添加するとゲル化時間が遅れ、そして第二には、熱硬化性架橋型網状体の初期粘度はニート系と比較して(最高量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子、40wt%を除く)低い。先験的には、これらの結果は予測されなかった。にもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在におけるゲル化までの時間の増大は、硬化性エポキシ系(a/e比=0.7)及び10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対する異なるストイキオメトリを用いて実現された試験によって裏付けられる。これはさらに顕著である。
初期粘度の低下は、これらの熱硬化性架橋型網状体が硬化前に過剰に真空蒸発されたにもかかわらず、残留溶媒(THF)の存在によって説明することができる。ゲル化時間の増大は、硬化性エポキシ系のストイキオメトリの低下、又は希釈効果により硬化性エポキシ系の反応性が低下したことに起因し得る。熱硬化性架橋型網状体の発見事項を比較すると、1wt%〜10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加は初期粘度に影響を与えることがなく、そして20wt%及び40wt%というより多くの量の場合には初期粘度の増大が観察されると結論づけることができる。多周波数試験から得られるゲル時間は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング・レベルとは無関係のように見える。
赤外線分光法による反応速度
赤外線分光法を用いて、熱硬化性架橋型網状体の硬化反応の反応時間を割り出した。全ての試料に対して等温モードで硬化を行った(T=80℃)。3つの異なるa/e比を有するニート硬化性エポキシ系及び熱硬化性架橋型網状体(例35及び例41〜47の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系)を調べた。図5は反応時間の関数としてのIRスペクトルの発生を示している。当該ピークは915cm−1(エポキシ基に関連する)及び3450cm−1(ヒドロキシル基に関連する)であり、第1ピークは反応時間の関数として低下するのに対して第2ピークは増大する。エポキシ基の変換をエポキシ属性ピークの消失として計算し、これを830cm−1(=CH−p−フェニレン基に由来する)におけるピークによって基準化し、そして図6で報告する。前述の図面から、エポキシ基の変換はアミノ硬化剤が過剰であるとき(a/e比=1.35)により速く、到達される最大変換率はより高い(90%)。エポキシ過剰(a/e比=0.7)の場合、試験時間内の観察し得る最大変換率は65%に近い。これらの結果は、粘度測定に対する前の観察と合致する。
上記ゲル化時間の値を用いて、ゲル点における変換率を推定し、理論変換率と比較することができる。これらの値を表6に報告する。試験値は理論値に極めて近い。小さな差異は、2つの異なる機器を使用したという事実による。これらの機器はそれぞれ、試料及び温度平衡化に対して異なる設定を有する(レオメータ及びIR分光計参照)。理論計算において、全てのアミノ基及びエポキシ基の等反応性が想定された。このことはエポキシ基の変換に関しては正確な想定であるが、しかしIPDAに関しては2つのアミノ基の反応性が異なり、ひいては、ゲル点における理論変換率の僅かな増大を招く(モルA4+B2混合物の場合、0.58から0.62になる)。ゲル点における変換率の試験値と理論値との合致は、ニート・エポキシ系におけるレオロジー測定値及び反応速度測定値が信頼性高いものである証拠である。
熱硬化性架橋型網状体の硬化反応速度に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加の影響を図7及び8に示す。ローディング・レベルが十分に高い場合、ヒドロキシル・ピークの初期形状が修正される。なぜならば、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はヒドロキシル基を含有するからである。図7(上及び下)の曲線間の相違点は、IRスペクトル(上)から抽出された基礎データが架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の初期エポキシ変換率により補正されている(下)ことである。この初期変換を計算するために、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のガラス転移温度値が使用され(Tg=49℃)、そしてこの値は、Tgを変換率に関連させるDiBenedetto等式で実行される。他方において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が供給物(この特定事例においてa/e比=1)と同じストイキオメトリを有するという想定がなされた。
初期変換率は、熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の量に直接に関連づけられるので、多量のミクロ粒子(20及び40wt%)が添加されると、曲線形状は大幅に異なってくる。多量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(40wt%)の存在においては反応速度が低下し、そして最大変換率が低くなると考えられる。より少量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合、ニート系と高充填系との間の中間的挙動が観察されるが、しかし架橋型反応性ポリマーミクロ粒子wt%の硬化反応速度に対する明確なトレンドを伴うことはない。
DSC
DSCを用いて、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が熱硬化性架橋型網状体の反応性に影響を与えるかどうかを評価した。反応エンタルピー値、ΔH、及び最大ピーク時温度から反応性を推定した。第2走査中に測定されたTgの値も報告する。図9は、ニート硬化性エポキシ系(ダイヤグラム左側)、及び熱硬化性架橋型網状体(架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を有する硬化性エポキシ系−ダイヤグラム右側)系(10wt%)において得られるDSC信号の比較をフィルム中の異なるa/e比に関して示している。アミン基の過剰に伴い、単一の広幅なピークが観察され、モル・アミン対エポキシの比では、高温側にショルダ(100℃及び150℃におけるピーク)が出現する。このショルダはまたエポキシ含量の更なる増加によって維持される。この挙動はおそらくIPDA中の第一アミンと第二アミンとの反応性の差、又はエポキシ単独重合に由来する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在において、a/e比=0.7の信号が変化する:先ずDSC信号は100℃の近くで何らかのノイズを示し、2つのピークの規模が逆転する。150℃のピークは100℃のピークよりも高い。
反応熱値(ΔH)を表7に報告する。熱硬化性架橋型網状体に対して得られる値は、ニート硬化性エポキシ系調製物の値よりも不相応に低い。
他の熱硬化性架橋型網状体調製物において同様の試験を実現した。ΔHと架橋型反応性ポリマーミクロ粒子量との関係のプロットを図10に報告する。トレンドは常に同じである。すなわち、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量の増大に伴ってΔHが減少するが、しかしこの減少は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率に対して比例しない。これらの結果を説明するためにいくつかの理由を想起することができる。第一に、エンタルピーの割り出しがあまり正確ではない。(ベースライン決定における小さなシフトがエンタルピー値を変化させ得る)。第二に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在において、信号は極めてしばしばノイズを発生する。これは残留溶媒の存在に起因し得る。最後に、反応はDSC走査中に完了に達しない。実際に、反応は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在においてより低速で進行することが前に示された。
DSCによって得られた第2パラメータは、第2加熱走査から求められた硬化済熱硬化性架橋型網状体のガラス転移温度である。いくつかの事例(例えば硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の異なるストイキオメトリ)において、そして架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量が10wt%を上回る場合、DSCサーモグラムにおいて2つのガラス転移を観察することができる。一例を図11に示す。調製物及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を変化させることによるTgの変化を図12にプロットする。前の試験から、後硬化済のIPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは約130℃であり、これは、第2転移がエポキシ充填系内で見いだされた値とほぼ同じである(第1転移は硬化済マトリックスに由来する)。充填された系内の硬化性エポキシ系に関して見いだされた平均値は、ニート硬化性エポキシ系のTgに近い。これらの値は散乱し、充填剤添加量とは無関係である。硬化性エポキシ系と架橋型反応性ポリマーミクロ粒子とのTgに最大の差が出るのは、硬化性エポキシ系が過剰のエポキシ(a/e比=0.7)を有する場合である。
熱硬化性架橋型網状体の形態
視覚的観察
熱硬化性架橋型網状体・フィルムの厚さは約100μmであり、幅は8.5cmである。全てのフィルムは透明であるが、但し、例37の1つの高充填網状体は不均質で極めて脆弱に見えた。
光学顕微鏡法
熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子分散体の品質を評価するために、光学顕微鏡法を用いた。しかし、硬化性エポキシ系と熱硬化性架橋型網状体(両方とも同じ成分(DGEBA+IPDA)を基剤としており、その結果同様の屈折率を有する)との間のコントラストが欠乏しているので、個々の粒子を観察することは難しかった。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は均一に分散されたように見える。
熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在をよりよく観察するために、ガラス・スライド上に調製物を流延した。乾燥済フィルムの厚さは約30〜50μmであった。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子密度が1から10wt%まで増大するのが観察された(図20)。
DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を利用すると、これらは光学顕微鏡法を用いて硬化済フィルム内で明確に見ることができた。それというのも、粒子と硬化性エポキシ系との間のコントラストがより高いからである。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は均一に分散されているように見えるが、しかしフィルムの厚さが単一の粒子の識別を阻む。この分析は定量的にすぎないが、しかし熱硬化性架橋型網状体中には架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の大型凝集体は存在しないことが示される。
電子顕微鏡法
凍結破面をSEMで観察することにより、熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在、及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との相互作用の質を評価した。
熱硬化性架橋型網状体のa/e比の破面に対する影響を図13A〜13Cに示す(熱硬化性架橋型網状体は10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を有している)。硬化性エポキシ系がモル組成(IPDA−1)又は過剰のアミン(IPDA−1.35)を有するように調製される場合、破面は平滑に見える。すなわち架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、より高い倍率でも観察できない。このような平面は典型的には脆弱なニート・網状体である。反対に、過剰のエポキシモノマー(IPDA−0.7)を有するように調製された熱硬化性架橋型網状体の顕微鏡写真は、球面形状の存在によって特徴づけられる粗面を示した。これはおそらく、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面に裂け目が伝搬することに関連する。硬化性エポキシ系のa/e比が表面形態に強い影響を与えることを結論づけることができる。
熱硬化性架橋型網状体の破面に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量の影響も調査した。2つのタイプの硬化性エポキシ系、つまり、エポキシ過剰で調製された硬化性エポキシ系(IPDA−0.7)に基づく第1のタイプ、そしてアミン過剰で調製された硬化性エポキシ系(IPDA−1.35)に基づく第2のタイプを考察する。これらは10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子ローディング率を有して、最初は異なる破面を示した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はIPDAを基剤としており、初期モノマー供給物中、a/e比=1であった。
2種の最高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に対して得られた顕微鏡写真を、a/e比=0.7に基づく硬化性エポキシ系に関して図14A−14Cに示す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量が20wt%である場合、10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子だけを充填された熱硬化性架橋型網状体と比較して、より多くの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び孔を観察することができる。破断経路は主に、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子−硬化性エポキシ系界面に従って延びる。それにもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を通る裂け目に関連するように見えるいくつかの裂け目を観察することもできる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量が40wt%である場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(又は関連孔)は多数存在する。注目すべきなのは、単分散球体のランダム充填は50vol%という係数を有するため、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子では網状体の完全特別充填には達しないことである。裂け目は本質的には、硬化性エポキシ系中を伝搬する。加えて、顕微鏡写真は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との悪い相互作用を証明する。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との界面は明確に画定されている。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の表面は湿潤されているが、しかし完全に平滑である(対応孔も同様)。このことは、硬化性エポキシ系が最初はこれらの粒子を完全湿潤し、屈折率が同じであるにもかかわらず、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と0.7a/e比の硬化性エポキシ系との相互作用は弱いという結論を導き出すことができる。
熱硬化性架橋型網状体が過剰のアミン(a/e比=1.35)で調製される時には、完全に異なる破面を観察することができる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子はもはや明確に見ることはできない。さらにこれらはボイドがない。裂け目は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中を移動し、従って、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との相互作用は極めて強力であるように見える。両事例(IPDA−0.7及びIPDA−1.5)において、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の理論上の密度を計算し、試験観測値と比較した。計算は直径4μmの球体の均一充填に基づいている。40wt%の含量の場合、100平方μm当たり480個の球体を与える。この値は試験値に近い。加えて、熱硬化性架橋型網状体中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の粒度は、合成終了時にこれらの粒度に類似する。このことは、エポキシプレポリマー又は硬化剤による架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有意な膨潤が処理中に発生しないことを意味する。
充填された全ての熱硬化性架橋型網状体は透明である。SEM試験は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系中に良分散されることを示す。このことは高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の場合に特に見ることができるが、しかし低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関しても状況は同じと考えられる。硬化性エポキシ系のモル比(0.7又は1.35)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との弱い又は強い界面相互作用を形成することに対して優勢な影響を与え、結果として、裂け目が材料中を伝搬する仕方が異なる。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系の組成は同一なので、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子と硬化性エポキシ系との強い相互作用は架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系内に埋め込むことと見なすことができる。
動的機械分析
動的固体挙動修正を、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子含量、及び硬化性エポキシ系のモル比に応じて試験した。さらに、動的機械分析は、硬化性エポキシ系中の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の存在によって誘発される不均一度の特徴付けを可能にする。
このような試験の典型的な例は、ニート硬化性エポキシ系(a/e比=1)に関して図15に示されている。貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び損失係数(tan δ)が温度の関数としてプロットされる。主転移δは、大きな分子運動に相当し、DSCによって測定されたガラス温度範囲に密接に関係する。損失係数Tδの最大値における温度値、及び半分の高さΔδで測定された損失係数の幅に特別な興味が集められる。半分の高さΔδは硬化性エポキシ系の不均一度に関連する。
ニート硬化性エポキシ系に対するストイキオメトリの影響
図16に示されているように、硬化性エポキシ系のa/e比はTg転移に強い影響を与える。DSCデータと同様に、Tgは157℃に等しいモル組成に関する最大値であり、次いでこれは低下して過剰のアミン(IPDA−1.35)に関しては136℃に達し、また過剰のエポキシ(IPDA−0.7)に関しては98℃に達する。さらに、後者の場合、114℃で見ることができる高温側のショルダに基づき、損失ピークはより広幅である。このような挙動は均一であるニート・エポキシ・網状体中では普通ではない。実際には2つのピークは熱可塑性/熱硬化性ブレンドに見られるように材料中の2つの区別可能な相を意味する。仮説を立てるならば、それは、高度に過剰のDGEBAとアミノ基の全てとが反応し、次いで残留エポキシがある程度までエーテル化を施されるか、又は硬化サイクル中にエポキシ単独重合を施されることである。この第2のタイプの反応は、支配的なエポキシ−アミン相と比較して異なる架橋密度を有する相の形成をもたらし得る。
熱硬化性架橋型網状体中の硬化性エポキシ系ストイキオメトリの影響
ニート・エポキシ・網状体と同じa/e比の硬化性エポキシ系中に10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を添加することの影響を図17に示す。これらの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTG初期値は51℃であり、完全硬化後には131℃である(DSCによって測定)。硬化性エポキシ系ストイキオメトリが1の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の有意な影響を損失係数に見ることはできない。転移の幅広さはおそらく、硬化性エポキシ系転移を架橋型反応性ポリマーミクロ粒子転移にスーパーインポーズすることに起因して、ニート硬化性エポキシ系と類似するように見える。硬化性エポキシ系ストイキオメトリが0.7の場合、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移は、T=138/139℃で現れる付加的なピークとして明確に見ることができ、これに対して、(硬化性エポキシ系に由来する)主転移はニート硬化性エポキシ系と極めて類似したままである。興味深いことに、a/e比が1.35であるとき、Tg転移は高温範囲のショルダによって拡張される。この転移は、ニート硬化性エポキシ系に関しては見ることはできず、従ってこれは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に由来する。
熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量の影響
熱硬化性架橋型網状体中に添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の含量は、2つのタイプの硬化性エポキシ系中1wt%〜40wt%であった。一方の硬化性エポキシ系はエポキシ過剰で調製され、他方の硬化性エポキシ系はアミン過剰で調製される。DMAによって得られる結果は次の通りである。
IPDA−0.7を基剤とする調製物。
試料に関して、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に起因する転移はtanδと、常に同じ温度に近い温度との関係を示すグラフ上で見ることができる(図20A〜20B)。これらのピークの規模が、添加された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量分率とは独立していることを見るのも極めて驚くべきことである。同じ曲線が線形スケール上でも示される。このスケールを用いて、中央高さのtanδピークの幅を測定する。低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に関しても、転移を見ることができる。これは表4の例33に対応する図19で実証される。ここでは、温度の関数としてのE’及びE’’の変化も報告されている。E’の降下は、5.5MPaにおけるゴム状プラトーに達する前の、2つの転移に相当する2つの明確なステップを示す。
上で報告されたスペクトルの付加的な特徴は、いくつかの事例において主転移(硬化性エポキシ系に対応する転移)が修正されることである。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が低含量(<5wt%)である場合、αピークの形状は、ニート硬化性エポキシ系中に観察されるピーク、すなわちショルダを有する広幅ピークと類似して見える。しかしその規模は著しく低下させられ、今や、ニート硬化性エポキシ系に対応する1.1ではなく0.4に近い。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が高含量(10及び20wt%)である場合、唯一のより狭幅の転移がT=106/107℃で観察される。このシリーズの種々異なる網状体の場合、E’R,Tα,ΔTα及びTgの値を表8に報告する。ここに報告されたΔTαは主α転移に相当する。2つの群を区別することができる。すなわち、主ピーク基準のΔTαを考えるとより不均一な低含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を充填された熱硬化性架橋型網状体の群であって、これらはまた、ニート硬化性エポキシ系の値に近いゴム弾性率(5.5〜7.1MPa)を有し、高含量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は主ピークを狭くし(ニート硬化性エポキシ系と比較しても)、熱硬化性架橋型網状体は、ニート硬化性エポキシ系と比較して高いゴム弾性率(8.8〜12.1MPa)を有している。
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の重量分率とともにE’が増大することが予測される。それというのも、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、硬化性エポキシ系よりも高い架橋密度を有しており、従って、より高いゴム弾性率を有するからである。熱硬化性架橋型網状体の弾性率は、2つの異なる相(硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子)の組み合わせの結果であり、従って、2つの異なるTαがDMA曲線内に現れる。電子顕微鏡法はまた、2つの相の存在を明示した。なお、破面のSEMは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が硬化性エポキシ系内に完全には埋め込まれなかったことを示している。
充填済網状体の不均一性を見ると、最も驚くべき点は、少量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の強い影響である。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の強い影響である。ここでは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子転移の規模はwt%とは無関係であるように見える。転移はΔT=70℃もの幅広さである。このことは、より高いローディング率の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子にまで範囲が及ぶ。
IPDA−1.35を基剤とする調製物
硬化性エポキシ系を過剰のアミンで調製する場合、状況は著しく異なってくる。この硬化性エポキシ系は、完全硬化済架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のガラス転移温度に極めて近いガラス転移温度(DSCによって割り出して)127〜131℃を有する。図20に示されたグラフには、1つの主転移とともに、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子量の増大に伴うより高い温度への僅かなシフト、及び同時に規模の低下のトレンドを見ることができる。
最高量の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(20及び40wt%のローディング率)の場合、付加的な転移が、T=110/112℃の近くの損失係数の低温側に付加的な転移が現れる。これは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の周りに界面ゾーンが存在すること、又は完全には硬化されていない熱硬化性架橋型網状体が存在することに起因し得る。破面の電子顕微鏡法は、粒子は破断されており、剥離はされていないことを示している。このことは唯一の相がこの事例では存在することを意味する。硬化性エポキシ系中のアミン過剰によって、おそらくは架橋型反応性ポリマーミクロ粒子中にIPDAがより多く拡散されており、そして、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に属するエポキシ基との反応が行われ得る。ローディング・レベルが高くなるのに伴って、ピークはまた、ニート硬化性エポキシ系(T=約160℃)と比較して高いTg側にショルダを有するように見える。このことは、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の膨潤、及び粒子のエポキシ及び/又はアミンモノマーとの反応の結果、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子が熱硬化性架橋型網状体中に埋め込まれることに起因し得る。
最も顕著なピーク及びTgのE’R,Tα,ΔTαを表9に報告する。40wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を充填された網状体を除いて、全ての網状体は主ピークの同じΔTα値を示す。このシリーズの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子充填網状体において、硬化性エポキシ系及び架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の両方、並びにこれらの相互作用はゴム弾性率に関与する。つまり約10/12℃の値は、第1シリーズの充填済網状体(IPDA−0.7)において測定された50〜70の値と比較されなければならない。
両調製物(過剰のアミンを有する調製物、及び過剰のアミンを有する調製物)は、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加がこれらの弾性率を高めたことを示す。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子をローディングされた全ての熱硬化性架橋型網状体の高Tg領域内の付加的なピークはおそらく、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子に由来する。しかし、エポキシ過剰の場合には、2つの区別可能な相が存在することが(SEMからも)明らかであるのに対して、アミン過剰網状体は唯一の相から成る。加えて、網状体内の高レベルの架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、IRを介しても示されているようにおそらくは一様でない架橋(「充填剤」の高いローディング率に起因してモノマーの拡散が制限される)に起因して、より低い温度範囲でα転移を引き起こした。
熱硬化性架橋型網状体の機械特性に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子組成の影響
架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の調製処置が熱硬化性架橋型網状体特性及び硬化挙動に影響を与えるかどうかを調べた。この調査では、溶媒混合物(PPG+10%ドデカン)中のDGEBA+IPDAから異なる温度で架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を合成した。PPG中のDGEBA+DATから130℃で合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子もこの比較研究のために利用した。架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を硬化性エポキシ系(IPDA−1)中に添加した。
IPDAを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
熱硬化性架橋型網状体中への10wt%の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加はDMAスペクトルに強い影響を与えることはない。いくつかのパラメータを表10に示す。この一連の試験において使用される架橋型反応性ポリマーミクロ粒子は、a/e比=1.35(前はa/e比=1)の架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の供給物中のa/e比を有しており、架橋型反応性ポリマーミクロ粒子のTgは合成終了時には50℃に近く、後硬化後では102℃〜125℃であった。
a/e比1の硬化性エポキシ系に上記架橋型反応性ポリマーミクロ粒子(10wt%)を有する調製物の場合、Tαは、ニート硬化性エポキシ系と比較して数度低下し、149〜153℃である。このことは、硬化性エポキシ系よりも低いTgを有するミクロ粒子の影響である。
硬化性エポキシ系のTg転移に対する架橋型反応性ポリマーミクロ粒子合成の影響全体は、弾性率にのみ反映される。加えて図21は、より低温で、そしてより短い反応時間にわたって反応させられる架橋型反応性ポリマーミクロ粒子を利用する場合、tanデルタ転移は広幅になることを示す。
DATから合成された架橋型反応性ポリマーミクロ粒子
熱硬化性架橋型網状体のTαに対する、10wt%DATを基剤とする架橋型反応性ポリマーミクロ粒子の添加の強い影響はない。それというのも架橋型反応性ポリマーミクロ粒子及び硬化性エポキシ系のTgは、153℃及び157℃(DSCを介して割り出した)と極めて接近しているからである。tanデルタ転移は僅かに広幅となり、ニート硬化性エポキシ系の12℃から、中間ピーク高さの熱硬化性架橋型網状体の14.5/15.5℃までである。粒子が硬化性エポキシ系とは異なる組成を有しており、網状体構造内に完全には組み入れられていないことを考えれば、エポキシ・網状体の機械特性に対する強い影響がないことは興味深い。