JP2014504585A - 新規外用製剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、代謝体の生成を抑制し、皮膚透過性に優れた(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(以下、「化合物1」とする)含有貼付製剤を提供することに関する。本発明の貼付製剤は、支持体を有し、かつ該支持体の片面に粘着剤層を形成してなり、該粘着剤層が、(i)化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩、(ii)粘着剤、および(iii)特定の皮膚透過促進剤からなる添加剤、を含有することを特徴とし、本発明の貼付製剤によれば、製剤中の化合物1の皮膚透過性を顕著に向上させることができる。

Description

本発明は、経皮吸収用貼付製剤に関する。具体的には、(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(以下、本明細書において「化合物1」ともいう)、またはその生理学的に許容される酸付加塩を活性成分として含有し、皮膚面に貼付したときの該活性成分の皮膚透過性が改善された貼付製剤に関するものである。
(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(化合物1)は、非定型抗精神病薬として有用な化合物であり、特許文献1に開示されている。
経皮吸収用貼付製剤は、経口投与に比較して、より持続的に血中薬物濃度を維持することができ、また、初回通過効果を回避することにより、肝代謝の低減および/または薬物相互作用の低減ができることから、有用な製剤の一形態である。また、経皮吸収製剤による投与は食事の影響を受けないこと、嚥下困難な患者への投与が可能であること、投薬の確認および中断が容易であること等、多くの優れた点がある。
従来、抗精神病薬の経皮吸収用貼付製剤として、ペロスピロンの経皮製剤(特許文献2)、ブロナンセリンの経皮製剤(特許文献3)等が報告されている。しかしながら、化合物1の経皮製剤について具体的な報告はこれまでになされていなかった。
また、実際の医療の観点、すなわち患者のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を改善する意義において、経皮吸収用貼付製剤の皮膚面への貼付による異物感や不快感を低減することが非常に重要であり、このため、貼付面積、すなわち、経皮吸収用貼付製剤のサイズを可能な限り小さくすることが求められている。その解決方法のひとつとして、薬物の皮膚透過を促進しうる添加剤の添加が考えられるが、該透過促進に有効な添加剤は、対象とする薬物毎に特異的であり、それぞれ異なるといわれている(非特許文献1)。前述のようにペロスピロンおよびブロナンセリンの経皮吸収製剤は報告があるが、化合物1については、これまでに経皮製剤に関する知見の報告はなく、有効な皮膚透過促進の手段は全く不明であった。
特許第2800953号公報(US 5532372 A) 国際公開第2006/025516号パンフレット 国際公開第2007/142295号パンフレット
Advanced Drug Delivery Reviews 56 (2004) 603-618.
本発明の目的は、化合物1の皮膚透過性が改善された経皮投与用の貼付製剤を提供することにある。
本発明者らは、化合物1の皮膚透過を促進する組成を鋭意検討した結果、化合物1の皮膚透過を効果的に促進する添加剤系を見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]支持体を有し、かつ該支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤において、該粘着剤層が、(i)(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(化合物1)またはその生理学的に許容される酸付加塩、(ii)粘着剤、(iii)第1の添加剤として、乳酸、ならびに(iv)第2の添加剤として、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸エステル、レシチン、脂肪酸、アルコール、ダイズ油、メチルイソブチルケトン、およびクロタミトンからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤、を含有することを特徴とする貼付製剤。
[2]第2の添加剤のアルキルグリセリルエーテルとして、α−モノイソステアリルグリセリルエーテルを含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[3]第2の添加剤のポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、およびラウロマクロゴールからなる群から選択される少なくとも1種を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[4]第2の添加剤として、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルを含む上記[3]に記載の貼付製剤。
[5]第2の添加剤として、ラウロマクロゴールを含む上記[3]に記載の貼付製剤。
[6]第2の添加剤の脂肪酸エステルとして、炭素数12〜18の脂肪酸(高級脂肪酸)のエステル、または炭素数6〜10のジカルボン酸のエステルを含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[7]第2の添加剤の脂肪酸エステルとして、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[8]第2の添加剤として、アジピン酸ジイソプロピルを含む上記[7]に記載の貼付製剤。
[9]第2の添加剤として、セバシン酸ジエチルを含む上記[7]に記載の貼付製剤。
[10]第2の添加剤として、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む上記[7]に記載の貼付製剤。
[11]第2の添加剤のレシチンとして、卵黄レシチンを含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[12]第2の添加剤の脂肪酸として、炭素数12〜18の脂肪酸を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[13]第2の添加剤の脂肪酸として、イソステアリン酸を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[14]第2の添加剤のアルコールとして、ベンジルアルコール、デカノール、オクチルドデカノール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[15]第2の添加剤として、ダイズ油を含む上記[1]に記載の貼付製剤。
[16]乳酸に対する第2の添加剤の重量比が0.1倍〜9倍である上記[1]に記載の貼付製剤。
[17]粘着剤層中の乳酸の含有量が、0.01〜30重量%である上記[1]〜[16]のいずれかに記載の貼付製剤。
[18]粘着剤層が、化合物1に換算して0.1〜50重量%の濃度で成分(i)を含有する上記[1]〜[17]のいずれかに記載の貼付製剤。
[19]粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]〜[18]のいずれかに記載の貼付製剤。
[20]粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む上記[19]に記載の貼付製剤。
[21]アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である上記[20]に記載の貼付製剤。
[22]粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む上記[19]または[20]に記載の貼付製剤。
[23]ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、およびポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である上記[22]に記載の貼付製剤。
[24]テープ製剤の形態である上記[1]〜[23]のいずれかに記載の貼付製剤。
[25]統合失調症および/または双極性障害の治療剤である上記[1]〜[24]のいずれかに記載の貼付製剤。
[26]有効量の化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩を含有する上記[1]〜[25]のいずれかに記載の貼付製剤を投与することを含む、統合失調症および/または双極性障害の治療方法。
[27]支持体を有し、かつ該支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤において、該粘着剤層が、(i)化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩、(ii)粘着剤、ならびに(iii)乳酸、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、セチルアルコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、親油性モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ラウリルアルコール、デカノール、ラウロマクロゴール、乳酸セチル、オレイン酸オレイル、オクチルドデカノール、ミリスチン酸オクチルドデシル、大豆レシチン、卵黄レシチン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール#200、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、2−エチルヘキサン酸セチル、セタノール・モノステアリン酸ポリエチレングリコール混合ワックス、および液状ラノリンからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤、を含有することを特徴とする貼付製剤。
[28]粘着剤層が、化合物1に換算して0.1〜50重量%の濃度で前記成分(i)を含有する、上記[27]に記載の貼付製剤。
[29]粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種である上記[27]または[28]に記載の貼付製剤。
[30]粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む上記[29]に記載の貼付製剤。
[31]アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である上記[30]に記載の貼付製剤。
[32]粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む上記[29]または[30]に記載の貼付製剤。
[33]ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、およびポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である上記[32]に記載の貼付製剤。
[34]統合失調症および/または双極性障害の治療剤である上記[27]〜[33]のいずれかに記載の貼付製剤。
本発明の化合物1を活性成分として含有する貼付製剤は皮膚透過性に優れており、統合失調症等の患者の医療ニーズを満たすために有用な薬物療法の選択肢を提供する。また、その皮膚透過性が高いことから、該製剤のサイズを小さくすることができ、医療における使用性および経済性の向上に貢献することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明において、貼付製剤とは、皮膚に貼り付けられる製剤全般を意味し、例えば、テープ製剤、パッチ製剤、パップ製剤、プラスター製剤等を含む。
本特許請求の範囲および本明細書において、粘着剤層とは、支持体上に形成される、薬物を含有する層である。
本特許請求の範囲および本明細書において単に粘着剤層中の「重量%」で表示されたもの、および「粘着剤中の含有率(量)」と表記されたものは、乾燥等によって溶媒等を実質的に含まない状態となった粘着剤層の総重量を100重量%としたときの重量%を意味する。
(i)化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩
本発明にかかわる化合物1、即ち、(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(一般名「ルラシドン」)は、下記式:
で表される化合物である。化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩は、抗精神病薬としての薬理作用を有する。より具体的には、化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩、およびそれを含有する医薬製剤は、統合失調症、双極性障害等の疾患の治療薬として有用である。
化合物1は遊離塩基であってもよいし、その生理学的に許容される酸付加塩であってもよい。これらに限らないが、例えば、有機酸の付加塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。さらに、化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩は、溶媒和物であってもよく、水和物および非水和物であってもよい。
上記化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩は、例えば、特許文献1に記載の方法またはこれに準じる方法によって製造することができる。製造された化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩は、適宜通常用いられる方法にて粉砕化してもよい。
本発明の貼付製剤に配合される「化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩」の配合量は、化合物1に換算して、粘着剤層100重量%中、通常、約0.1〜約50重量%であり、貼付製剤の面積にもよるが、好ましくは約0.1〜約40重量%、より好ましくは約0.1〜約30重量%であり、あるいは、好ましくは、約0.5〜約50重量%、より好ましくは約0.5〜約40重量%、さらに好ましくは約0.5〜約30重量%である。なお、ここで「化合物1に換算して」とは、化合物1が塩の形態をとっている場合、または化合物1が結晶水を有する場合に、当該塩または結晶水相当量は成分(1)の重量には含めないものとする意味である。言い換えれば、化合物1の塩またはその水和物について、それと等モルの化合物1(遊離塩基非水和物)の重量に置き換えて計算することを意味する。
(ii)粘着剤
本発明の粘着剤としては、高分子粘着剤であるシリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等が例示できる。
シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とするものが挙げられ、またゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプロピレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が例示できる。
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、具体的には、アクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体、メタアクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体、アクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体、メタアクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体、アクリル酸アルキルエステルとメタアクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体が挙げられる。この(共)重合体は、上述のような2種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよく、また(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合しうる官能性モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であってもよい。
なお、ここで「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸またはメタアクリル酸」、あるいは「アクリル酸および/またはメタアクリル酸」を意味しており、また、「(共)重合体」とは、「重合体または共重合体」、あるいは「重合体および/または共重合体」を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖または分枝鎖の炭素数が1〜18のアルキルでエステル化された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル等が挙げられる。官能性モノマーとしては、例えば、水酸基を有するモノマー((メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル等)、カルボキシル基を有するモノマー(マレイン酸ブチル、クロトン酸等)、アミド基を有するモノマー((メタ)アクリルアミド等)、アミノ基を有するモノマー(ジメチルアミノアクリル酸エステル等)、ピロリドン環を有するモノマー(N−ビニル−2−ピロリドン等)等が挙げられる。
本発明のアクリル系粘着剤は、単独、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、他の粘着剤との混合物であってもよい。他の粘着剤としては、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
具体的な好ましいアクリル系粘着剤としては、これらに限らないが、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸シルクフィブロイン共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体等であり、例えば、市販品の三洋化成工業株式会社製「ポリシック410−SA」、東洋インキ製造株式会社製「オリバインBPS−4849−40」、ナショナルスターチ&ケミカル社製「DURO−TAK 87−2194(登録商標)」、「DURO−TAK 387−2516(登録商標)」、コスメディ製薬株式会社製「MAS811」、「MAS683」、「MAS955」等が挙げられる。
また、皮膚に対して適度な粘着性を持たせるために、必要に応じて硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては、例えば、市販品の三洋化成工業株式会社製の「ポリシックSC−75」、東洋インキ製造株式会社製の「BHS8515」等が例示できる。その配合量としては、粘着剤の特性に合わせて適宜選択すればよく、例えば、粘着剤1重量部に対して0.001〜0.05重量部程度である。
粘着剤の配合量は、粘着剤層中、化合物1または生理学的に許容される酸付加塩、下記添加剤、および必要に応じて添加する下記の各種製剤化成分を除いた残余であり、その量は粘着剤層を完成させるに必要な量である。したがって、例えば、粘着剤層が化合物1を10重量%、添加剤を10重量%含むものである場合、粘着剤は、約80重量%となる。
ここで用いる粘着剤の粘着性は、医療用の貼付製剤として用いる程度のものであり、皮膚に貼付しやすく、また剥がすことにも特に問題のない程度の粘着性を意図する。
添加剤
本発明の貼付製剤に配合される添加剤の配合量は、粘着剤層100重量%中、通常、約0.01〜約50重量%、好ましくは、約0.1〜約40重量%、より好ましくは、約0.3〜約40重量%である。
本発明の添加剤は、単独、または2種以上組み合わせて用いてもよく、乳酸、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、セチルアルコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、親油性モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ラウリルアルコール、デカノール、ラウロマクロゴール、乳酸セチル、オレイン酸オレイル、オクチルドデカノール(2-オクチルドデカン-1-オール;本明細書中において以下同様)、ミリスチン酸オクチルドデシル、大豆レシチン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノ-p-イソオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール#200、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、2−エチルヘキサン酸セチル、セタノール・モノステアリン酸ポリエチレングリコール混合ワックス、および液状ラノリンから選ばれ、特に好ましくは、乳酸、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、セチルアルコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、親油性モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ラウリルアルコール、デカノール、ラウロマクロゴール、乳酸セチル、およびオレイン酸オレイル、さらに好ましくは、乳酸、およびα−モノイソステアリルグリセリルエーテルから選ばれる。
また、本発明では、驚くべきことに、第1の添加剤として乳酸を含有する粘着剤層に乳酸以外の特定の添加剤(第2の添加剤)を加えることによって、化合物1の皮膚透過性がさらに顕著に改善されることを見出した。具体的には、乳酸および第2の添加剤の総量と同量の乳酸のみを添加した、透過性の良好な化合物1を含有する貼付製剤と比較して、乳酸および第2の添加剤を含有する貼付製剤は、皮膚透過性を顕著に改善することを見出した。
本発明における第2の添加剤は、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸エステル、レシチン、脂肪酸、アルコール、およびダイズ油からなる群から選ばれる1種または複数の添加剤の組み合わせである。以下で限定されるものではないが具体的には、アルキルグリセリルエーテルとしてはα−モノイソステアリルグリセリルエーテル、セチルグリセリルエーテル、オレイルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル等が挙げられ、脂肪酸エステルとしては、炭素数12〜18の脂肪酸(高級脂肪酸)のエステル、または炭素数6〜10のジカルボン酸のエステルが好ましく、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられ、レシチンとしては、卵黄レシチン、大豆レシチン等が挙げられ、脂肪酸としては、炭素数12〜18の脂肪酸が好ましく、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、アルコールとしては、ベンジルアルコール、デカノール、オクチルドデカノール、プロピレングリコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ポリエチレングリコール#200等が挙げられ、およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、本発明における第2の添加剤は、上記の他にも、メチルイソブチルケトン、クロタミトン、炭酸プロピレン、精製マイクロクリスタリンワックス、ポリブチレン、スクワラン、l−メントール、トリアセチン、流動パラフィン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、酢酸、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれた1種または複数の添加剤の組み合わせであってもよい。
本発明における第2の添加剤の好ましい例として、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、卵黄レシチン、イソステアリン酸、オレイン酸、ベンジルアルコール、デカノール、オクチルドデカノール、プロピレングリコール、セチルアルコール、ダイズ油、メチルイソブチルケトン、クロタミトン、スクワラン、トリアセチン、精製マイクロクリスタリンワックス、およびこれらから選ばれる複数の添加剤の組み合わせが挙げられる。
本発明における第2の添加剤のさらに好ましい例として、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ラウロマクロゴール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、卵黄レシチン、イソステアリン酸、オレイン酸、ベンジルアルコール、デカノール、オクチルドデカノール、プロピレングリコール、ダイズ油、メチルイソブチルケトン、クロタミトン、およびこれらから選ばれる複数の添加剤の組み合わせが挙げられる。
乳酸と組み合わせる第2の添加剤の配合量は、乳酸に対する重量比で0.1倍〜9倍が通常であるが、好ましくは、0.1倍〜7倍、さらに好ましくは0.3倍〜3倍である。
乳酸は、ラセミ体のDL−乳酸であってもよく、それぞれ光学活性体のL−乳酸あるいはD−乳酸であってもよい。本明細書でいう乳酸は、これらのいずれであってもよい。
本発明の、乳酸および第2の添加剤を含有する貼付製剤に配合される乳酸の配合量は、粘着剤層100重量%中、通常、約0.01〜約30重量%であり、好ましくは、約0.1〜約20重量%であり、より好ましくは、約0.1〜約15重量%である。
本発明の、乳酸および第2の添加剤を含有する貼付製剤に配合される添加剤の合計量(乳酸+第2の添加剤)は、粘着剤層100重量%中、通常、約0.1〜約60重量%であり、好ましくは、約0.1〜約40重量%であり、より好ましくは、約0.3〜約40重量%である。
粘着剤層
本発明の貼付製剤における粘着剤層中に、特に支障のない限り、貼付製剤の製造に用いられる薬学的に許容される製剤化成分を必要に応じて適宜配合してもよい。このような成分としては、配合しても不都合がなく、且つ、配合の必要性があるものならばいずれでもよく、例えば、安定化剤、粘着付与剤、可塑剤、香料、充填剤、増粘剤等が例示できる。
安定化剤としては、これらに限らないが、例えば、アスコルビン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
粘着付与剤としては、これらに限らないが、例えば、エステルガム、グリセリン、水素添加ロジングリセリンエステル、石油樹脂、ロジン、ポリブテン等が挙げられる。可塑剤としては、これらに限らないが、例えば、ポリブテン、流動パラフィン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。香料としては、これらに限らないが、例えば、dl−メントール、オレンジ油、ハッカ油、レモン油、ローズ油等が挙げられる。充填剤としては、これらに限らないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン100等が挙げられる。
増粘剤としては、これらに限らないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、N−ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体等が挙げられる
また、粘着剤層中の医薬有効成分においても、化合物1以外の他の医薬有効成分を含んでいてもよく、例えば、ハロペリドール、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、アセナピン、アミスルプリド、イロペリドン、カリプラジン、セルチンドール、ゾテピン、パリペリドン、ビフェプロノックス等の抗精神病薬(これらは、フリー体の形態でも、生理学的に許容される塩の形態であっても良い)、またはリチウム製剤(炭酸リチウム等)、バルプロ酸もしくはその誘導体(Divalproex sodium等)等の躁病治療薬等を含んでいてもよい。
本発明の貼付製剤
本発明における貼付製剤とは、支持体を有し、かつ該支持体の片面(一面)に上述の粘着剤層が形成され、粘着剤層の支持体と接触しない他方面には適宜、剥離ライナーが施されたものである。使用時にはこの剥離ライナーを剥がし、該貼付製剤の粘着剤層を皮膚に貼付することで経皮投与がなされることとなる。
本発明の貼付製剤には、(1)経皮吸収された有効成分を全身血流に到達させて薬効を期待する全身作用型外用剤、および(2)貼付部位あるいはその近くの患部へ有効成分を到達させることを目的とした局所作用型外用剤、の両方が含まれる。
本発明の貼付製剤としては、前述の通りテープ製剤、パッチ製剤、パップ製剤、プラスター製剤等が含まれ、好ましくは、テープ製剤またはパッチ製剤である。
支持体としては、薬物を透過しないもしくは透過しにくい素材のもの、薬物の放出に影響を及ぼさないものもしくは及ぼしにくいものであれば特に限定されず、伸縮性のものであっても、非伸縮性のものであってもよい。例えば、これらに限らないが、エチルセルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリプロピレン等の樹脂フィルム、およびこれらの組合せが例示できる。また、粘着剤層が形成されない支持体の一面にPET製等の不織布が形成されていてもよい。また、単層構造の支持体であっても、複数の素材が積層された構造の支持体であってもよい。支持体は、無色透明であっても、白色あるいは肌色等に着色したものであってもよく、白色あるいは肌色等に着色したものは、支持体の表面を色素でコーティングしたものであっても、支持体中に色素または顔料等を均一に練り込んだものであってもよい。
粘着剤層が形成される支持体面は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等の表面処理をおこなっているものが好ましい。
本発明の貼付製剤は通常の方法で製造することができる。例えば、「経皮適用製剤開発マニュアル」松本光男監修(1985)に記載のプラスター剤の製造に関する項等に従って製造することができる。また、例えば、「経皮治療システム用貼付剤製造装置の開発(膜, 32(2), 116-119 (2007))」に記載の装置、方法等により製造することができる。
具体的には、本発明の貼付製剤、特にテープ製剤の調製において、粘着剤層を形成するには、通常の粘着テープの製造方法が適用できる。その代表例は溶剤塗工法であり、これ以外にもホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法等が用いられる。
粘着剤層を溶剤塗工法で形成するには、例えば、化合物1またはその酸付加塩、アクリル系粘着剤を含む混合液、および必要に応じて透過促進剤や硬化剤等の製剤化成分と、有機溶媒とを混合して粘着剤層混合液を調製し、該混合液を支持体または剥離ライナーの片面に塗布し、乾燥させて有機溶媒を除去し、乾燥の前後のいずれかのタイミングで剥離ライナーまたは支持体をもう一方に貼り合わせることによって製造することができる。得られる粘着剤層の厚さは約10〜約400μm程度、好ましくは約20〜約200μm程度の範囲である。但し、該粘着層の厚さはこれらの範囲に制限されず、これらより厚くても薄くても本発明の範囲である。
粘着剤層の表面を被覆する剥離ライナーは、適宜選択される。該剥離ライナーは、その表面に剥離性能を有する剥離層を形成したものとして、例えば、これらに限らないが、シリコーン樹脂処理等をした紙ライナーやプラスチックフィルム等が挙げられる。
かくして得られた本発明の貼付製剤は、投与量等の要因に合わせて適当な大きさで製造されるか、またはカットしてそのような形態とされる。なお、その大きさの貼付製剤は実際に貼付する大きさよりも大きなテープとしていてもよく、また逆に小さなテープとしていてもよく、使用に際しては適宜切り取って使用したり、適当な枚数を並べて貼付してもよい。貼付される身体の部位は特に制限はないが、例えば、腕、肩、頸部、背中、腰、腹部、胸部、臀部、足等が挙げられる。本発明の貼付製剤は、貼付製剤に関する情報を記載した記載物とともに包装され、流通する。記載物はパッケージ上であってもよいし、パッケージ内に指示書として含めてもよい。ここにおいて、「貼付製剤に関する情報」としては、例えば、本製剤は統合失調症および/または双極性障害の治療に使用することができる、または使用すべきであるといった情報が挙げられる。
以下に、実施例、比較例、試験例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の実施例等において「%」とあるのは「重量%」を意味する。
以下の試験例において、「化合物1の透過量」とは、化合物1の遊離塩基に換算しての透過量を表す。
支持体は、藤森工業株式会社製の25μmポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。剥離ライナーは、藤森工業株式会社製のバイナシート64S−018Bを使用した。
実施例1
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38%)4.16g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75%)25mg、酢酸エチル1.2mL、および、粘着剤層中の含有率が10%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.2gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例2〜24
実施例1のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに表1に示す種々の添加剤を用いてテープ製剤を製造した。
比較例1
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38%)4.68g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75%)28mg、および酢酸エチル1.2mLを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
試験例1
ヘアレスラット皮膚透過実験
in vitro拡散セルを用いて、ヘアレスラットの腹部の皮膚に対して、実施例1〜24および比較例1で得られたテープ製剤についての化合物1の皮膚透過性を調べた。すなわち、透過面積1.13cmのin vitro拡散セルにヘアレスラットの皮膚をセットし、レシーバー液としてプロピレングリコールとリン酸緩衝液の3:1混合液0.75mLを使用して、ドナー側の皮膚には各製剤を貼付した(n=4)。24時間にわたり37℃保温下、レシーバー液を撹拌した後、レシーバー液中の化合物1濃度を高速液体クロマトグラフィー(カラム:SymmetryTMC18 3.5μm 4.6×50mm;Waters,移動相:5mMリン酸一ナトリウム(トリエチルアミンによりpH7.0に調整)/メタノール(1:4),カラム温度:30℃,流速:0.9mL/分)により測定し、各製剤の透過量を求めた。結果を表1に示した。
試験例1により、実施例1〜24で製造した特定の各添加剤を含有した各テープ製剤は、比較例1で製造した添加剤を含有しないテープ製剤と比較して、化合物1の皮膚透過性が非常に高いことが示された。
実施例25
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38%)4.16g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75%)25mg、酢酸エチル1.2mL、粘着剤層中の含有率が5%となるように乳酸0.1g、および粘着剤層中の含有率が5%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例26〜40
実施例25のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに表2に示す種々の添加剤を用いてテープ製剤を製造した。
参考例1〜10
実施例1と同様の方法で、α−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに、表2に示した数種の添加剤を用いてテープ製剤を製造した。
比較例2
実施例25のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに乳酸セチルを用いてテープ製剤を製造した。
試験例2
ヘアレスラット皮膚透過実験
試験例1と同様に、in vitro拡散セルを用いて、ヘアレスラットの腹部の皮膚に対して、実施例25〜40、参考例1〜10および比較例2で得られたテープ製剤についての化合物1の皮膚透過性を調べた。結果を表2に示した。
(注)「乳酸と第2の添加剤の組み合わせによる透過性に対する相乗効果」とは、「乳酸5%と第2の添加剤5%を組み合わせて添加した製剤での化合物1の透過量 (c)」を、『「乳酸のみを10%添加した製剤での化合物1の透過量 (a)」と「第2の添加剤のみを10%添加した製剤での化合物1の透過量 (b)」の平均値』で除した値、すなわち、(c)÷ [(a)と(b)の平均値](=(c)÷ [{(a)+(b)}/2])なる指標により表される。この指標が1より大きいとき、透過性に対する効果が相乗的であると認められる。また、特に好ましくは、表2においてこの指標が2以上となる組み合わせである。
試験例2の結果からわかるように、乳酸のみを10%添加した製剤に比較して、その乳酸10%中の5%を特定の第2の添加剤に置きかえた製剤では、化合物1の皮膚透過性が顕著に改善された。このことにより、乳酸と第2の添加剤の組み合わせによって化合物1の皮膚透過性を促進するという本発明製剤の優れた特徴が示された。
さらに、これらの得られた透過性のデータから比較を行うと、乳酸のみを10%添加した製剤での化合物1の透過量と第2の添加剤のみを10%添加した製剤での化合物1の透過量の平均値に比較して、乳酸5%と第2の添加剤5%を組み合わせて添加した製剤での化合物1の透過量の方が顕著に高くなった((c)÷ [(a)と(b)の平均]>>1)。このことは、乳酸と第2の添加剤を組み合わせることによって化合物1の皮膚透過性を相乗的に促進するという本願発明の優れた特徴を示すものである。
実施例41〜47
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38%)3.64g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75%)22mg、酢酸エチル1.2mL、および表3に示す組成になるように乳酸とα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを使用して、実施例25と同様の方法により各テープ製剤を製造した。
実施例48
実施例41〜47の乳酸とα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの両方の添加の代わりに、乳酸のみを20%となるように用いてテープ製剤を製造した。
実施例49
実施例48の乳酸の代わりにα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを用いてテープ製剤を製造した。
試験例3
ヘアレスラット皮膚透過実験
試験例1と同様に、in vitro拡散セルを用いて、ヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例41〜49で得られたテープ製剤についての化合物1の皮膚透過性を調べた。結果を表3に示した。
試験例3により、乳酸とα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを含有する製剤において、乳酸に対するα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの含有量比(重量比)が少なくとも0.1倍から7倍の範囲で、乳酸単独あるいはα−モノイソステアリルグリセリルエーテル単独の製剤に比較して、乳酸とα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを組み合わせることによる化合物1の皮膚透過についての顕著な相乗効果が確認された。好ましくは、乳酸に対するα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの含有量比が0.3倍から3倍の範囲であった。
第2の添加剤として、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル以外の添加剤を選択した場合も、乳酸に対する第2の添加剤の含有量比(重量比)としては0.1倍から7倍の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.3倍から3倍の範囲である。
実施例50〜55
表4に示す原料を使用して、実施例25と同様の方法によりテープ製剤を製造した。
表4において、アクリル系粘着剤としてはポリシック410−SA(三洋化成工業株式会社製、固形分38%)を用い、硬化剤としてはポリシックSC−75(三洋化成工業株式会社製、固形分75%)を用いた。アクリル系粘着剤、硬化剤、および酢酸エチルはいずれも仕込み量で表す。乳酸、α−モノステアリルグリセリルエーテル、および化合物1の「粘着剤中の含有率(%)」とは、いずれも製造したテープ製剤における粘着剤中の各含有率(重量%)を表す。
実施例56
アクリル系粘着剤(DURO−TAK 387−2516(登録商標)、ナショナルスターチ&ケミカル社製、固形分41.5%)3.86g、酢酸エチル1.2mL、粘着剤層中の含有率がそれぞれ5%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.1gと乳酸0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例57
アクリル系粘着剤(MAS683、コスメディ製薬社製、固形分36.5%)4.38g、酢酸エチル1.2mL、粘着剤層中の含有率がそれぞれ5%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.1gと乳酸0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例58
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クインタック3421、日本ゼオン株式会社製)0.4g、流動パラフィン0.4g、ポリブテン(HV−300、日本石油化学株式会社製)0.3g、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP−100、荒川化学工業株式会社製)0.5g、酢酸エチル3.0mL、粘着剤層中の含有率がそれぞれ5%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.1gと乳酸0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例59
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38%)4.12g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75%)25mg、酢酸エチル1.2mL、粘着剤層中の含有率がそれぞれ5%となるようにα−モノイソステアリルグリセリルエーテル0.1gと乳酸0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10.74%となるように化合物1塩酸塩(化合物1の遊離塩基として10%)を0.215g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
実施例60
N−ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体(アドヒーローGE−167、昭和電工株式会社製)30mgにメタノール0.6mLを加えて、1日放置した。この溶液にアクリル系粘着剤(MAS683、コスメディ株式会社製、固形分36.5%)4.30g、メタノール0.6mL、粘着剤層中の含有率がそれぞれ5%となるように乳酸0.1gとラウロマクロゴール0.1gを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が10%となるように化合物1を0.2g添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、粘着剤層に剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
本発明の貼付製剤によれば、代謝体の生成を抑制し、化合物1の血中薬物濃度を持続的に維持できる。また、本発明の貼付製剤は、粘着剤層に特定の添加剤を配合することにより化合物1の皮膚透過性を顕著に向上させることが可能なため、使用性および経済性に優れた、実用上好適な貼付製剤を提供することができる。
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の教示と利点から実質的に逸脱しない範囲で様々な修正と変更をなすことは可能である。従って、そのような修正及び変更も、すべて後記の請求の範囲で請求される本発明の思想と範囲内に含まれるものである。
本出願は、米国仮出願61/438,787を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (27)

  1. 支持体を有し、かつ該支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤において、該粘着剤層が、(i)(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン(化合物1)またはその生理学的に許容される酸付加塩、(ii)粘着剤、(iii)第1の添加剤として、乳酸、ならびに(iv)第2の添加剤として、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸エステル、レシチン、脂肪酸、アルコール、ダイズ油、メチルイソブチルケトン、およびクロタミトンからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤、を含有することを特徴とする貼付製剤。
  2. 第2の添加剤のアルキルグリセリルエーテルとして、α−モノイソステアリルグリセリルエーテルを含む請求項1に記載の貼付製剤。
  3. 第2の添加剤のポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、およびラウロマクロゴールからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の貼付製剤。
  4. 第2の添加剤の脂肪酸エステルとして、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の貼付製剤。
  5. 第2の添加剤のレシチンとして、卵黄レシチンを含む請求項1に記載の貼付製剤。
  6. 第2の添加剤の脂肪酸として、イソステアリン酸を含む請求項1に記載の貼付製剤。
  7. 第2の添加剤のアルコールとして、ベンジルアルコール、デカノール、オクチルドデカノール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の貼付製剤。
  8. 第2の添加剤として、ダイズ油を含む請求項1に記載の貼付製剤。
  9. 乳酸に対する第2の添加剤の重量比が0.1倍〜9倍である請求項1〜8のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  10. 粘着剤層中の乳酸の含有量が、0.01〜30重量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  11. 粘着剤層が、化合物1に換算して0.1〜50重量%の濃度で成分(i)を含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  12. 粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜11のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  13. 粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む請求項12に記載の貼付製剤。
  14. アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項13に記載の貼付製剤。
  15. 粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む請求項12または13に記載の貼付製剤。
  16. ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、およびポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項15に記載の貼付製剤。
  17. テープ製剤の形態である請求項1〜16のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  18. 統合失調症および/または双極性障害の治療剤である請求項1〜17のいずれか一項に記載の貼付製剤。
  19. 有効量の化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩を含有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の貼付製剤を投与することを含む、統合失調症および/または双極性障害の治療方法。
  20. 支持体を有し、かつ該支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤において、該粘着剤層が、(i)化合物1またはその生理学的に許容される酸付加塩、(ii)粘着剤、ならびに(iii)乳酸、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、セチルアルコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、親油性モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ラウリルアルコール、デカノール、ラウロマクロゴール、乳酸セチル、オレイン酸オレイル、オクチルドデカノール、ミリスチン酸オクチルドデシル、大豆レシチン、卵黄レシチン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール#200、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、2−エチルヘキサン酸セチル、セタノール・モノステアリン酸ポリエチレングリコール混合ワックス、および液状ラノリンからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤、を含有することを特徴とする貼付製剤。
  21. 粘着剤層が、化合物1に換算して0.1〜50重量%の濃度で前記成分(i)を含有する、請求項20に記載の貼付製剤。
  22. 粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項20または21に記載の貼付製剤。
  23. 粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む請求項22に記載の貼付製剤。
  24. アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項23に記載の貼付製剤。
  25. 粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む請求項22または23に記載の貼付製剤。
  26. ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、およびポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項25に記載の貼付製剤。
  27. 統合失調症および/または双極性障害の治療剤である請求項20〜26のいずれか一項に記載の貼付製剤。
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